第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当連結会計年度末現在における経営方針、経営指標及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

1.ミッション

ホスピスの研究と推進

 

2.ビジョン

あなたの笑顔と尊厳をさいごまで支えます

 

3.コーポレートスローガン

すべては笑顔のために ~ For The Smile ~

 

(2) 経営戦略等

当社グループは、末期がんや難病患者等の「ターミナルケア」に特化したサービスを提供しており、在宅での「看取り」を含む同分野での先進的な事業モデルの構築と人材の育成に注力してまいりました。今後、同分野における社会的ニーズがより一層高まり続ける中で、短期的には、この先進事業モデルを北海道、関東、東海及び関西地区に展開し、中長期的には日本全国への普及を目指すことを計画しております。

当社グループにおきましては、在宅ホスピス事業を中心とした、地域ニーズに即応しうる機動的な事業推進体制を構築し、更なる事業運営効率の向上、収益力の向上を図ってまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長による企業価値の向上を目的として、収益力を高め、経営の効率化を図るため、経常利益率を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題の改善に取り組んでまいります。

また、当社グループは、ホスピス施設における提供可能室数及び平均入居率(延べ入居室数÷(提供可能室数×稼働日数))を経営成績に影響を与える主要な経営指標として捉えております。

 

(4) 経営環境

施設数の増加にともないドミナント展開が進んでいるため、機会損失を減らし業務効率を向上させる目的で、複数施設を1つのユニットとみなし、ユニット単位で入居の受入判断と医療スタッフの配置を考える形としました。また、入居と採用の判断を、従来の施設単位からユニット単位に変えることで、施設業務の負担を軽減し、将来の施設開設数を増やすことが可能になりました。当連結会計年度は計8施設の開設を行い、2025年12月期は11施設を新規開設する予定です。

 

(5) 当社グループの対処すべき課題

①  事業展開に伴う課題

当社グループのサービスは高い専門性によるターミナルケアを特徴としているため、当社グループの事業を地域・行政機関・病院などの関係者に理解して頂き、浸透させていくことが重要と考えております。また、当社グループに共感を持って頂く複数の提携医との関係構築も同じく重要であり、今後の課題であると考えております。

 

②  人材の確保と社員育成

今後の事業展開を図る上で、看護師・介護士等の適時適切な採用及び配置が求められ、その中でも各ホスピス施設及び事業所の管理者クラスの人材確保が早急の課題となってまいります。

また、末期がんやALS(筋萎縮性側索硬化症)等の難病のケアには非常に高い専門性が求められることから、訪問看護・介護業務に関する経験の浅い看護師・介護士に対して、経験豊富なベテラン社員によるOJT(職場内実施研修)をはじめとした、個々人のスキルアップを図る施策を積極的に行ってまいります。

 

③  内部管理体制の強化

質の高いサービスを提供するために社員1人1人の意識向上を図り、また安定的に事業を拡大するためには内部管理体制の更なる強化が不可欠であると考えております。そのために、内部統制体制を構築し、ガバナンスを強化するとともに、情報セキュリティ、労務管理、事故防止をはじめとするコンプライアンス体制の構築に取り組んでまいります。

 

④  財務基盤の強化

安定的かつ継続的に当社グループのサービスを提供するため、財務の健全性の確保が不可欠であります。今後は、フリーキャッシュ・フローの確保と自己資本比率の向上に取り組み、財務基盤の強化に取り組んでまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組については、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、中長期的な企業価値の向上のために、サステナビリティに関連するリスク及び機会に対処するためのガバナンス体制の構築は重要な課題と認識しており、今後、サステナビリティを巡る課題に適切に対応していくための体制整備や基本方針の策定に努めてまいります。現状、サステナビリティに関する基本方針を定めておらず、サステナビリティ関連のリスク及び機会の監視及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続等の体制を、その他のコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。

 詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(2)戦略

 当社グループは、「在宅ホスピスの研究と推進」というミッションのもと、増加する看取り難民を解消するため在宅ホスピスを推進することを企業理念としております。様々なステークホルダーの期待に応え、グループの健全な成長と社会への貢献を持続的に可能にするため、以下の取り組みを行っております。

 

①ホスピスの研究と推進

 当社グループでは、入居者を第一に考えた生活の質へのこだわり、きめ細かいケアサービスの提供を可能とする30室前後の居室数の確保やホスピスチーム作りによる施設の全国展開を行っており、また、外部機関との共同研究等を行うことでホスピス品質の向上を図ります。

 

②地域医療ネットワークへの貢献

 看護小規模多機能型居宅介護の併設やご自宅への訪問看護サービスの提供を行うなど複合型サービスの提供により、地域医療ネットワークへ貢献します。

 

③ホスピス人材の育成と女性の活躍

 当社グループは、女性従業員や中途採用者の比率が高いことから、女性従業員等が安心して活躍できる環境整備が必要事項と認識しており、新たなやりがいの場を提供することで看護師の多様な働き方を実現しております。

 また、緩和ケアを提供する看護師に必須とされる能力修得のための看護師教育プログラム等の実施や緩和ケアを代表する看護師の経営参画等、ホスピス人材の育成と女性活躍に取り組んでおります。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、トータル・リスクマネジメント体制の実践的運用を確保するため、リスク管理規程を定め、リスク管理委員会を設置してグループ全体のリスクを網羅的・総括的に管理し、リスク管理体制を明確化しております。リスク管理体制に係る各部門責任者はその職責に応じて調査・監査し適切な対応を行うとともに、その結果を定期的に取締役会及び監査役会に報告しております。

 詳細は、「「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社グループの人的資本を適切に育成・活用することは、組織の成長や競争力を高めるために不可欠と考えております。当社グループの管理職に占める女性労働者の割合は71.0%を占めており、今後も、女性を含む人材の多様性の確保を経営課題の一つと捉え、社会全般の変化を踏まえる中で、女性労働者比率・管理職に占める女性労働者割合を高めてまいります。

 また、管理職に占める女性労働者の割合等の実績については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しており、当社グループは各指標の向上を目標としております。なお、具体的な目標につきましては、女性従業員等が活躍できる環境整備の構築に取り組んでいるものの、女性を含む人材の多様性の確保等に関する適切な目標水準の設定が困難なことから、当社グループにおける指標化による目標管理は行っておりません。

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には、以下のようなものがあります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)   事業展開のための人員の確保について

当社グループは、在宅ホスピス事業を展開するにあたり、看護師及び介護士の積極的な採用を行い、組織体制の強化及び質の高いケアサービスを提供することで、医療機関等をはじめとした地域医療との連携を図っていく方針であります。

また、末期がんやALS等の難病のケアには、高い専門性が求められることから、訪問看護又は訪問介護の経験の浅い看護師並びに介護士でも安心して働けるように、ベテラン看護師並びに介護士によるOJT制度による教育研修を行ってまいります。またそれと同時に、マネジメント研修等の管理職に対する教育体制の充実を図り、安定した人員の確保に努めてまいります。しかし、今後、必要とする看護師及び介護士の採用及び確保ができない場合、十分な研修等を実施できず、看護師及び介護士等の育成が困難となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)   訪問看護及び訪問介護に関する法的規制について

①  訪問看護及び訪問介護の医療及び介護報酬に係るリスク

当社グループは、「医療保険制度」「介護保険制度」「障害者総合支援法」のそれぞれに基づく訪問看護及び訪問介護を行っております。このうち「医療保険制度」に基づく診療報酬は2年に1度、「介護保険制度」に基づく介護報酬は3年に1度の頻度で制度の改定が行われます。今後、診療報酬及び介護報酬の見直しにより、大幅な改定が行われた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②  訪問看護及び訪問介護等に必要な指定に係るリスク

当社グループは、訪問看護及び訪問介護を行うために「健康保険法」並びに「介護保険法」に基づく、各サービス事業者の指定を各都道府県知事から受けております。それぞれの指定には、資格要件、人員要件、設備要件及び運営要件が規定されており、これらの規定に従って事業を運営しております。

当社グループでは、看護師・介護士等の有資格者の入退社や新規施設の開設に伴い、自治体等の基準の確認及び変更に必要な届け出を怠らないよう細心の注意を払って運営しており、本書提出日現在、事業運営の継続に支障を来すような状況は生じておりません。しかしながら、これらの基準を遵守できなかった場合や診療報酬及び介護報酬等の不正請求が認められた場合には、指定の取消又は停止等の処分を受けるおそれがあります。特に介護保険法に基づく各種指定について、当社グループ内のいずれかの会社が指定取消を受けた場合、当該会社において、指定取消から5年以内における新たな指定の取得及び介護サービス事業所としての更新が出来なくなります。その場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社各事業所が受けている指定は次のとおりです。

 

取得

所轄官庁

許認可名称

許認可内容

有効期限

主な許認可取消事由

当社

各事業所

厚生労働省

地方厚生局

指定訪問看護事業者

健康保険法の訪問看護事業

6年毎

の更新

健康保険法 第95条(指定訪問看護事業者の指定の取消し)

都道府県又は

政令指定都市

指定訪問看護事業者

介護保険法の訪問看護事業

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

都道府県又は

政令指定都市

指定訪問介護事業者

介護保険法の訪問介護

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

障害者総合支援法 第50条(指定の取消し等)

都道府県又は

政令指定都市

指定居宅介護支援事業者

介護保険法の居宅介護支援

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

都道府県又は

政令指定都市

通所介護事業者

介護保険法の通所介護

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

都道府県又は

政令指定都市

看護小規模多機能型居宅介護

介護保険法の看護小規模多機能型居宅介護

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

 

(3)   訴訟リスクについて

当社グループの看護師は、主治医の訪問看護指示書に基づいて訪問看護を行っており、訪問介護士はケアマネージャーの作成するケアプランに沿って訪問介護を行っております。また、当社グループでは、社内でのOJTによる研修をはじめとした教育研修の充実を図り、安全衛生管理に係る規程や各種の運営マニュアルを遵守することにより、事故防止や緊急事態の対応が出来るように取り組んでおります。しかしながら、従業員の人為的なミス又は不測の事態の発生等によって利用者の健康状態が悪化し、利用者、そのご家族又は主治医等からの信頼が失われる等により訴訟が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)   個人情報の漏洩について

当社グループは事業を運営するにあたり、利用者あるいはそのご家族の重要な個人情報を取り扱っております。当社グループは、「個人情報保護規程」を制定し、個人情報については厳重に管理する等、様々な情報漏洩防止対策を講じていますが、万が一情報の流出等により、当社の信用が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)   風評等の影響について

当社グループの事業は、利用者やそのご家族に限らず、行政や医療機関等との連携によって円滑な運営が可能になっているものと考えております。当社グループでは、安定的かつ質の高いサービスを提供するために、技術的な研修を行うとともに、企業方針を浸透させる等の教育を行っております。しかし、従業員の不祥事等何らかの事象の発生や、当社グループに関する不利益な情報や風評が広まった場合には、利用者、行政、医療機関等との関係が悪化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)   利用者の逝去、退去等について

当社グループは、行政や医療機関等との連携によって、安定的な利用者の確保に努めており、当社グループのサービスは、高齢者の増加と共に市場が拡大し需要が増加している状況にあると認識しております。しかしながら、新規開設施設等において想定通り入居者が集まらない場合、ターミナルケアに特化した施設であることから、当社グループが想定する以上の入居者の逝去、退去等があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)   差入保証金の返還について

当社グループは、ホスピス施設又は事務所等を賃借する場合に、契約時に賃貸人に対し保証金を差し入れている場合があります。当該保証金は期間満了等による契約解消時に契約に従い返還されることになっておりますが、賃貸人の経済的破綻等によりその一部又は全額が回収できなくなる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)   賃貸借契約に係る解約違約金について

当社グループは、一部のホスピス住宅施設に関しては、ホスピス施設を保有するオーナーと賃貸借契約の締結に際し、株式会社LAリビングソリューションズとの間で賃貸借契約の中途解約に関する契約を締結しております。ホスピス施設に係る賃貸借契約の中途解約時の解約違約金支払義務の免責を図っておりますが、賃貸借契約の中途解約に関する契約を締結していないホスピス施設については、賃貸借契約に定められた期間満了日前に中途解約をした場合は、契約内容に従って多額の解約違約金の支払いが必要となります。何らかの理由によりホスピス施設の運営を中止し、多額の解約違約金を支払う場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)  大規模な災害等の影響について

当社グループは、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び北海道にて事業展開を行っておりますが、大規模な地震、台風等の災害により、事業所建物や看護師、介護士及び利用者が損害を被った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)  有利子負債について

当連結会計年度末における有利子負債残高(リース債務を含む)は13,188,214千円、有利子負債依存度(リース債務を含む)は72.0%となっており、有利子負債依存度が高い状況となっております。そのため、金利水準が上昇した場合や、計画通りの資金調達が出来なかった場合には、支払利息が増加し、当社グループの事業展開のスピードが減速する等、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(11)  特定経営者への依存について

当社の代表取締役社長CEOである高橋正は、当社グループの経営方針や事業戦略の立案・決定における中枢として重要な役割を果たしております。取締役会や経営戦略会議等において、役員及び社員への情報共有や権限移譲を進める等、組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由で同氏が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)  新株予約権行使の影響について

当社は、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、これらの新株予約権による潜在株式数は237,500株であり、発行済株式総数8,266,100株の2.9%に相当しております。

 

(13)  配当政策について

当社グループは将来に向けた事業の拡大に向け、必要な人材の確保及び新規開設に係る設備投資等の先行投資を行うため、また迅速な経営に備えるために、内部留保の充実が重要であると認識しております。一方で、株主に対する利益還元として配当を行うことも重要な経営課題の1つであることから、利益を確実に計上できる体制の強化を図ることによって財務体質の強化を行い、財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施していく方針であります。ただし、当社グループの業績が計画通り進展しない場合等、当社グループの業績が悪化した場合には、継続的に配当を行えない可能性があります。

 

(14)  集団感染・自然災害・事故等に関するリスク

当社グループでは、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、感染症や医療依存度が高い高齢者や障害者が共同生活を営むホスピス施設ならではの食中毒等への集団感染及び地震、津波、台風等の自然災害、及び火災等の生命に関わりうる事故のリスクがあります。当社グループでは、地震や風水害への備えを行い、防犯環境を整える等の対応により利用者の安全管理などに細心の注意を払っております。この他に、利用者と従業員の健康管理に注意を払い、日ごろ手洗いや手指消毒を励行、定期的に社内研修では感染症の予防、流行及び対応を学ばせ、マニュアルを整備し、これを適切に運用することで集団感染の発生リスクの低減に努めています。しかしながら、想定を上回る規模の集団感染や自然災害、事故が発生し、当該ホスピス施設の稼働が長期に亘って困難になった場合には、当社グループの管理責任が問われ、当該ホスピス施設のみならず当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)  物価高騰に関するリスク

木材、鋼材、エネルギー資源、ホスピス施設で使用する消耗品等のインフレにより、既存ホスピス施設の運営費が増加する可能性があります。また、今後更なるインフレによって、前述の費用に加え、地代家賃や建築費用等の新規ホスピス施設の調達コストが増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)  経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財務状況及び経営成績の状況

1.市場環境

当社グループの事業が関わる医療・看護・介護の環境につきましては、高齢者の増加と共に市場が拡大し需要が増加する一方で、社会保障費の抑制を目的として、病院を中心とした施設から在宅を中心とした医療へのシフトが進み、医療と介護の連携や地域単位でのケア体制の整備等が促進されると予想しております。

 

2.2024年におけるホスピス施設の状況

このような状況の中、当社グループは「すべては笑顔のために」というコーポレートスローガンを掲げ、在宅での看取りを前提とした在宅ホスピスの事業を推進し、当連結会計年度においては、以下のホスピス施設を新たに開設しました。

名称

所在地

居室数

開設年月

ファミリー・ホスピスたまプラーザハウス

横浜市青葉区

34室

2024年3月

ファミリー・ホスピス西新井ハウス

東京都足立区

49室

2024年4月

ファミリー・ホスピス国立ハウス

東京都国立市

34室

2024年5月

ファミリー・ホスピス北海道ボールパーク

北海道北広島市

37室

2024年11月

ファミリー・ホスピス東千葉ハウス

千葉市中央区

38室

2024年11月

ファミリー・ホスピスさがみ野ハウス

神奈川県海老名市

36室

2024年12月

ファミリー・ホスピス鎌ヶ谷ハウス

千葉県鎌ケ谷市

38室

2024年12月

ファミリー・ホスピス堀之内ハウス

東京都八王子市

51室

2024年12月

合計

8施設

317室

 

 

これら8施設の新規開設により、当社グループの運営するホスピス住宅は、全48施設1,609室となり、前期末より317室増加(前期比24.5%増)しました。

 

3.前期比較

既存の安定稼働施設は高い水準の稼働率を維持し、前期に立ち上げ過程にあった施設の稼働率が上昇した一方で、ユニット制及び本部サポート制への組織改革で人員数が増加し、一時的に売上高人件費率が上昇しました。また、2024年に開設した施設8施設のうち5施設が第4四半期に開設されたことで、第4四半期に多額の開設コスト負担が生じたことに加え、2024年に開設した施設の殆どは単月黒字化に至る前のコストが先行するステージにあったため、前期に比べ、増収減益となりました。

 

4.当社グループの施設損益

当社グループの運営する施設は、開設に先立って看護師等の従業員を採用することでホスピスチームを作り、ホスピスチームが確立した事を確認して施設を開設し、開設した後に順次入居者を受け入れる形で運営を行っていることから、一定の稼働率に至るまでは売上に対して人件費等の費用が先行して発生することになります。また、施設の居室数が30室前後の場合は施設開設から約1年をかけて、40室前後の場合は施設開設から約1年半をかけて、当社グループが満室の目安とする85%の稼働率に至る計画で展開しております。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,150,244千円増加し、18,310,551千円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,396,043千円増加し、14,863,927千円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ754,200千円増加し、3,446,624千円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高12,115,287千円(前年同期比22.7%増)、営業利益1,286,885千円(前年同期比0.2%増)、経常利益は1,007,973千円(前年同期比2.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は639,580千円(前年同期比6.2%減)となりました。

なお、当社グループは、在宅ホスピス事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末と比べて357,714千円減少し、1,526,291千円となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、835,741千円(前連結会計年度は1,130,463千円の収入)となりました。これは主に、売掛金の増加額341,802千円があった一方で、税金等調整前当期純利益1,007,973千円、減価償却費470,226千円、未払費用の増加額122,324千円等が生じたことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、2,791,650千円(前連結会計年度は1,011,935千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出3,083,753千円(純増減1,002,300千円)、差入保証金の差入れによる支出128,963千円があった一方で、有形固定資産の売却による収入380,528千円が生じたことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、1,598,193千円(前連結会計年度は256,454千円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の借入による収入2,472,300千円、長期借入金の借入れによる収入1,000,000千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入99,022千円があった一方で、長期借入金の返済による支出332,330千円が生じたことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

該当事項はありません。

 

b.受注実績

該当事項はありません。

 

 

c.販売実績

当社グループは、在宅ホスピス事業の単一セグメントであるため、地域別の販売実績を記載しております。

地域別

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

北海道地区(千円)

1,053,404

246.4

関東地区(千円)

6,895,572

122.4

東海地区(千円)

3,150,608

107.0

関西地区(千円)

1,015,702

117.0

合計(千円)

12,115,287

122.7

(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

神奈川県国民健康保険団体連合会

2,443,681

24.8

2,666,966

22.0

愛知県国民健康保険団体連合会

2,402,839

24.3

2,441,105

20.1

東京都国民健康保険団体連合会

2,150,366

21.8

2,143,127

17.7

 

(2)  経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行ってまいりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。この連結財務諸表の作成にあたって重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.  経営成績等

1) 財政状態の分析

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、3,787,112千円(前連結会計年度末3,602,309千円)となり、前連結会計年度末に比べて184,803千円増加しました。その主な要因は、売上規模の拡大に伴って売掛金が増加したことによるものであります。

当連結会計年度末における固定資産は、14,523,438千円(前連結会計年度末11,557,997千円)となり、前連結会計年度末に比べて2,965,441千円増加しました。その主な要因は、新規施設開設に伴う固定資産の購入及びリース資産が増加したことによるものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、2,989,415千円(前連結会計年度末1,885,445千円)となり、前連結会計年度末に比べて1,103,969千円増加しました。その主な要因は、短期借入金が増加したことによるものであります。

当連結会計年度末における固定負債は、11,874,511千円(前連結会計年度末10,582,437千円)となり、前連結会計年度末に比べて1,292,074千円の増加となりました。その主な要因は、ホスピス施設の新規施設開設に伴って長期借入金が増加したことや、建物施設の賃借が開始されたことによりリース債務が増加したことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、3,446,624千円(前連結会計年度末2,692,423千円)となり、前連結会計年度末に比べて754,200千円の増加となりました。その主な要因は、ストック・オプション行使及び譲渡制限付株式の発行により、資本金及び資本準備金がそれぞれ58,131千円増加したこと、親会社株主に帰属する当期純利益639,580千円を計上したことによるものであります。

この結果自己資本比率は、18.8%(前連結会計年度は17.7%)となりました。

 

2) 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高の合計は、12,115,287千円(前連結会計年度は9,871,866千円)となりました。その主な要因は、前連結会計年度に立ち上げた施設の稼働率が向上したこと及び、当連結会計年度において、新たなホスピス施設を8施設オープンしたことにより当社グループのホスピス施設における提供可能室数が317室増加したことによるものであります。

 

(売上原価)

当連結会計年度における売上原価の合計は、10,003,141千円(前連結会計年度は7,948,356千円)となりました。その主な要因は、新規開設したホスピス施設に伴って開設準備費用や運営費用が増加したこと、看護師・介護士を新規採用したことにより労務費が増加したことによるものであります。

 

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費の合計は、825,261千円(前連結会計年度は639,815千円)となりました。また売上高に対する割合は6.8%(前連結会計年度は6.5%)となりました。その主な要因は、会社規模の拡大に伴う管理部門の強化によるものであります。

 

(経常利益)

当連結会計年度における営業外収益は、155,679千円(前連結会計年度は96,634千円)となりました。その主な要因は、助成金収入によるものであります。

当連結会計年度における営業外費用は、434,592千円(前連結会計年度は351,996千円)となりました。その主な要因は、支払利息によるものであります。

この結果、当連結会計年度における経常利益は1,007,973千円(前連結会計年度は1,028,334千円)となりました。

 

(税金等調整前当期純利益)

当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、1,007,973千円(前連結会計年度は1,028,334千円)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度における法人税等の合計は、368,392千円(前連結会計年度は346,453千円)となりました。

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、639,580千円(前連結会計年度は681,880千円)となりました。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、在宅ホスピス事業を展開するにあたり、組織体制の強化及び質の高いケアサービスを提供することで、医療機関等をはじめとした地域医療との連携を図っていく方針でありますが、必要とする看護師及び介護士の採用及び十分な人数の確保ができない場合又は十分な研修等を実施できない場合には、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があると考えております。

また、従業員の人為的なミス又は不測の事態の発生等による訴訟が生じた場合、個人情報の流出等により当社の信用が著しく低下した場合に、経営成績に重要な影響を与えると考えております。

この対応策として、看護師及び介護士の積極的な採用を行い、研修等を通じて経営理念を浸透させるとともに、質の高いホスピスサービスを提供するよう従業員に対する指導、教育体制の充実を図っております。

 

c.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、従業員の給与及び手当、ホスピス施設の賃借料のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入やリースによる調達を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高(リース債務を含む)は13,188,214千円、有利子負債依存度(リース債務を含む)は72.0%と依然として高い水準にありますが、事業運営上、必要な資金を安定的に確保していると認識しております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,526,291千円となっており、事業運営上、必要な流動性を確保していると認識しております。

 

d.主要な経営指標等の状況

当社グループは、経常利益率並びにホスピス施設における提供可能室数及び平均入居率(延べ入居室数÷(提供可能室数×稼働日数))を経営成績に影響を与える主要な経営指標として捉えております。それぞれの状況については次のとおりです。

 

1)経常利益率

2024年12月期における当社グループの経常利益率は、8.3%(前年は10.4%)となりました。既存の安定稼働施設は高い水準の稼働率を維持し、前連結会計年度に立ち上げ過程にあった施設の稼働率が上昇した一方で、ユニット制及び本部サポート制への組織改革で人員数が増加し、一時的に売上高人件費率が上昇しました。また、2024年に開設した施設8施設のうち5施設が当期第4四半期に開設されたことで、当期第4四半期に多額の開設コスト負担が生じたことに加え、2024年に開設した施設の殆どは単月黒字化に至る前のコストが先行するステージにあったため、経常利益率が下落しました。

当社グループとして、経常利益率を重要な経営指標として捉えており、経常利益率の安定と向上を目指してまいりますが、一方で当社グループは成長途上にあると考えており、今後の新規ホスピス施設の開設数及び開設時期によっては、一時的に経常利益率が変動する可能性があります。

 

2)提供可能室数及び平均入居率

当連結会計年度において8施設(317室)を開設した結果、2024年12月末日時点において、当社グループのホスピス施設における提供可能室数は、1,609室(2023年12月末日時点は1,292室)となりました。

当社グループでは、安定稼働に至ったのちのホスピス施設における目標平均入居率を85.0%に設定しておりますが、2024年12月期において開設後1年(12か月)超経過した施設(以下、既存施設)の年平均入居率(年間延べ入居室数 ÷ (提供可能室数 × 年間日数)は79.2%となりました。

従来は、各施設が地域需要に応じてそれぞれ施設運営を行っていましたが、施設のドミナント展開が進んだことにより、複数施設を一つのユニットとみなし、特にご利用者の入居と採用に関してはユニット単位で柔軟な判断をすることによるメリット(スタッフの移動による機会損失の削減、業務効率向上等)が多いと考え、ユニット制及び本部サポート体制を構築しました。このユニット制及び本部サポート体制により入居及び採用業務の効率化及び機会損失の削減を図り、平均入居率の向上に努めます。

また、新規開設のホスピス施設を含む、開設後1年(12か月)以内の施設(以下、新規施設)の年平均入居率は43.1%となりました。これは、当社グループのホスピス施設は、開設後に順次利用者を受け入れていく運営方法を採用しており、新規施設の居室数が30室前後の場合は施設開設から約1年、40室前後の場合は施設開設から約1年半をかけているためであります。

それぞれの経営指標の具体的な推移は次のとおりです。

(施設数及び提供可能室数の推移)

 

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

施設数(施設)

31

40

48

提供可能室(室)

979

1,292

1,609

(注)施設数及び提供可能室数は各期末日時点における数値を記載しております。

 

(年平均入居率の推移)

(単位:%)

 

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

既存施設

(開設後1年(12か月)超経過した施設)

82.0

79.7

79.2

新規施設

(開設後1年(12か月)以内の施設)

41.2

37.3

43.1

(注)1.年平均入居率は下記の方法により算出しております。

年平均入居率(%) = 延べ入居室数 ÷ (提供可能室数 × 稼働日数) × 100

2.新規施設の入居率について、年度ごとの数値に差が生じているのは、主に各年度における開設数や開設月が異なることによるものです。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。