文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが入手している情報に基づいて判断したものであります。
脱炭素に向けた世界的規模の潮流は大きくは変わらず、再生可能エネルギー供給は急伸する見込みですが、一方で世界的なエネルギー需要も増加する見込みであり、石油・ガスは今後も世界にとって必要不可欠なエネルギーとしてあり続けると考えております。足元で堅調に推移する石油・ガス需要の下、特に当社の競争力を活かせる超大水深及び大水深油田・ガス田は今後も高いニーズが期待され、FPSO事業開発に引き続き注力していく方針であります。また同時に、世界的課題である気候変動に対応する中で、エネルギー・トランジションに対する現実解を積極的に提案・発信し、事業のさらなる展開を進めてまいります。
当社は、2024年2月に、2024年から始まる3年間を期間とする中期経営計画2024-2026『イノベーションで持続可能な未来を拓く』を発表しました。
当社を取り巻く事業環境や加速する世界的な脱炭素の流れを踏まえ、全体としてまず収益力の強化を掲げ、その上で事業面においては、中核事業であるFPSO事業の脱炭素化の推進、新事業の開拓・育成を行い、並行して人的資本を含めた事業基盤の強化を進める計画を策定いたしました。

当社グループの業績は、各種取組みの効果により、中期経営計画策定時の想定を大きく上回って収益力の向上が進んだことから、中期経営計画の最終年度目標値として掲げた純利益(175百万米ドル)を2024年に2年前倒しで達成しており、中期経営計画の1年目として順調に進捗しております。これに加え、FPSO事業の脱炭素化、新規事業の開拓・育成、ガバナンス・内部統制の体制強化を含めた事業基盤の強化に取り組んでおり、残りの中期経営計画期間中に着実に推進していく予定であります。
① 収益力の強化
Uaruプロジェクト(ガイアナ)とRaiaプロジェクト(ブラジル)という2つの大型FPSO建造プロジェクトの順調な進捗に加え、既存船においては近年集中的に取り組んできた保守・修繕工事の実施により操業が大きく改善し、また、古い契約が順次終了し、過去の教訓を活かして締結した新契約への入れ替えが進んでいることから、コロナ禍以降の最高益を達成しました。優良顧客との関係を強化し、引き続き優良な新規案件の受注、並びに、一層のアセット・マネジメントの強化を追求してまいります。
② 戦略的な経営資源の配分と獲得
当社の優位性や業界内ポジションを改めて整理し、石油・ガス市場動向や気候変動等外部環境を踏まえ、経営資源を優先的に配分するプロジェクトや事業を選別し、また人的資本や外部パートナーシップ等新たな経営資源の戦略的な獲得に向けた取組みを開始しております。
③ FPSO脱炭素化の推進
将来のFPSO事業のための次世代船の開発を推進し、FPSO事業の脱炭素化に向け、当社と協業可能性のあるCarbon Capture & Storage (CCS)技術を有する事業者の選定、脱炭素化に資する新技術の開発や検証を行っております。CCSを始めとする脱炭素化技術や新事業開発に向けて、研究開発活動を促進させてまいります。
④ 新事業具現化への布石
化石燃料社会から低炭素社会へのトランジションに貢献すべく、洋上風力発電や代替エネルギー事業における当社独自の新浮体式技術の開発を追求してまいります。2025年1月に東洋エンジニアリング株式会社と共同でFPSOより生産される随伴ガスからアンモニアを製造するブルーアンモニアFPSOの基本設計承認を米国船級協会より取得いたしました。実用化には更なる改良が必要となりますが、早期の実証に向けて開発を継続していく予定であります。また、新事業専任組織を発足させ、新規領域での事業開発体制を一元化し、取組みを加速させていく予定であります。
⑤ グループコラボレーションとシナジーの深化
デジタルを活用したグループ共通のマネジメントツールの導入を促進させております。人的資本経営の更なる推進に向けてワーキンググループを立ち上げ、専門家の知見を活用して当社グループ全体の人材戦略の策定を推進しております。
⑥ サステナビリティ・グループガバナンスの向上:
当社の重要なサステナビリティ課題として「気候変動」、「人権」、「人的資本・ダイバーシティ」の3分野を重点取組分野に選定の上、それぞれのワーキンググループを組成し、ロードマップを作成しながら具体的な取組みを開始しております。GHG削減に関する取組みについては、GHG排出量の開示対象を拡大し、第三者による検証にも取組み始めております。また、当社グループの企業価値向上に向けた価値創造プロセスを明示し、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションも進めていくべく、2025年6月に統合報告書を発行する予定であります。
(4) 中期経営計画における定量目標の再設定
上述の通り、中期経営計画の最終年度目標値として掲げた純利益を初年度である2024年に達成したことから、これらの業績動向を踏まえ、中期経営計画の最終年度である2026年の数値目標を上方修正し、新たな目標値として親会社の所有者に帰属する当期利益:300百万米ドル、ROE:20.0%、調整後EBITDA:450百万米ドルを公表しております。
なお、定性的な取組みについては、中期経営計画の内容を変更しておりませんが、これらも着実に進め、企業価値の持続的向上に取り組んでまいります。
(1) サステナビリティ共通
当社グループでは重要なサステナビリティ課題として6つのマテリアリティを特定いたしました。
これらのマテリアリティを当社グループの事業戦略と結び付け、組織と人材の両面から経営基盤を強化して、当社グループならではの価値を創造し、持続可能なエネルギー供給と気候変動対応というグローバルな社会課題の解決に貢献してまいります。

当社はサステナビリティ課題に関連した活動をグループ一丸となって企画・推進し、同時にそれらの管理・評価を行うことを目的とした「サステナビリティ委員会」を経営会議の諮問機関として設置しております。同委員会は副社長(副社長を定めないときは経営企画担当執行役員)を委員長、主要子会社の社長/CEO等を委員として構成されており、経営会議に対し報告・提言を行い、取締役会に対しても適宜報告しております。

2024年度はサステナビリティ委員会を6回開催し、重要テーマと位置付けた「気候変動」、「人権」、「人的資本」の3つのテーマについて各ワーキンググループを設置してロードマップの作成やアクションプランの検討を行いました。
経営上の重要課題の一つであるサステナビリティに関する基本方針や重要事項は、サステナビリティ委員会での審議を経て、経営会議及び取締役会に報告しております。
② リスク管理
当社では、「サステナビリティ委員会規程」に基づき、サステナビリティ委員会が当社グループのサステナビリティ課題のリスクと機会の評価を定期的に行うこととしております。具体的には、マテリアリティの特定のプロセスの中で当社に関するサステナビリティ課題をリストアップし、各課題の重要度について当社とステークホルダーの両方の観点から評価した上で、重要度の高い課題についてリスクの分類と機会の特定を行い、それらの発現可能性やビジネスへの影響度を評価することとしております。また、社内での議論やビジネスパートナーからのヒアリング及び外部有識者との対話による示唆を基に、経営レベルでの議論を踏まえて、マテリアリティを定期的に見直すこととしております。さらに、委員会の職務を遂行するために設置される各ワーキンググループは、リスクと機会の分析及び再評価を行い、委員会を支援することとしております。
(2) 気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)
当社は2023年4月にTCFD提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づいて、複数のシナリオを用いた気候変動リスク及び機会の特定や事業インパクトの評価等を行い、それらへの対策とともに
① ガバナンス
(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンスをご参照ください。サステナビリティ委員会の重要テーマの一つとして「気候変動」を位置付け、ワーキンググループを設置して対応しております。
② リスク管理
気候変動のリスクと機会の評価は継続的なプロセスであり、気候変動がもたらすリスクを特定し管理することが重要です。当社では、潜在的なリスクと機会を整理するために、TCFD提言に基づいて事業に対する初期的な検証・評価を行いました。
(a) シナリオの選択と世界観
1.5°Cシナリオの2050年時点での世界観として、炭素規制他の政策が拡大し再生可能エネルギー(再エネ)や低炭素技術への投資が進展した、再エネと低炭素が強く確立された世界と想定しました。
(b) 移行リスク
政策や規制の変更、技術の進歩、消費者嗜好の変化といった、低炭素経済への移行に伴ってリスクが発生します。また、移行リスクは、市場における需要、資源の供給力及びコスト、ならびに競争環境の変化を通じて、事業に影響を与える可能性があります。
(c) 物理的リスク
異常気象、海面上昇、熱波等、気候変動による物理的な影響から発生するリスクが挙げられます。これらの物理的リスクは、サプライチェーンや操業中の地域社会を通じて、直接または間接的に当社の事業やバリューチェーンの多方面に影響を及ぼす恐れがあります。
(d) 機会
気候変動の緩和と適応に向けた取り組みは事業機会も創出します。当社事業において見込まれる機会としては、再エネ市場における新しい事業機会の開拓、化石燃料から排出されるGHG削減のための炭素回収・貯留技術に基づく事業の持続可能性向上等が考えられます。
(e) 想定される事業へのインパクト
上記分析を踏まえ、当社は1.5°Cシナリオにおけるリスクと機会についての事業へのインパクトの初期評価を行い、既存の市場が停滞する一方で、脱炭素技術の開発と新規市場の創出による事業拡大が見込まれると評価しております。この評価は当社の初期的な評価であり、今後も更なる評価を継続して行っていく予定です。特に、今後関連した情報やデータが更新または入手可能となった際には、当該シナリオにおける結果と紐づいている不確実性を再評価する必要性が出てくることが考えられます。
③ 戦略
当社は半世紀に渡りエネルギーの安定供給に貢献してまいりました。今後は未来への架け橋となるべく、エネルギーの「安定的」かつ「持続可能」な供給に取り組むとともに、当社の強みとコンピテンシーを活用し、エネルギー・トランジションにおける以下2つの重要な役割を担ってまいります。
A) FPSOからのGHG排出量を低減しつつ、FPSOによる石油・ガスの安定供給に継続的に貢献
B) クリーンエネルギーの提供に貢献するため、事業モデルの進化を加速


④ 指標及び目標
当社は透明性を持って気候変動に対する取り組みを進めるために、以下のように具体的な指標と目標を設定しております。
1. FPSOからの炭素排出原単位
・「FPSOからの炭素排出原単位」※1を戦略的なKPIの1つとして設定し、大幅な削減に向けて取り組んでまいります。
※1 炭化水素の生産あたりで排出される二酸化炭素換算値(トン)
2. 2050年ネットゼロに向けた道筋
FPSOの脱炭素化やその他新規事業開発といった上記の戦略を進め、2050年「ネットゼロ」*1 達成に向けて取り組んでまいります。
・スコープ1及びスコープ2でのGHG排出量を2030年までにゼロにすることを目標としております。
・スコープ3の排出量についてもFPSOの脱炭素化やその他新規事業開発といった戦略を進め、2050年「ネットゼロ」 達成に向けて取り組んでまいります。

※1 当社のScope 1、 Scope 2 及び Scope 3(Category 13 - リース資産のみ)排出を削減の対象とし、その残存量については新規事業によるGHG排出量削減を削減貢献としてオフセット
(3) 人的資本への対応
当社は「人材が競争力の源泉である」との考えに基づき、グループ全体の従業員の力を結集し、ビジョンとして掲げているとおり「海洋と人が調和しながら共生共栄できる社会」の実現を目指しております。また中期経営計画2024-2026では、FPSOの脱炭素化や新事業具現化と共に、成長と変革の礎となる人的資本への投資を積極的に行うことを掲げており、本年、人的資本経営に向けた方針の再整理を進めております。具体的な人的資本に関する取り組みとしては、事業戦略の実現に必要な人材を充足させること、そして人材が最大限価値発揮できるよう、グループ経営の基盤づくりや多様で働きやすい環境づくりを進めてまいります。

① ガバナンス
(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンスをご参照ください。サステナビリティ委員会の重要テーマの一つとして「人的資本」を位置付け、ワーキンググループを設置して対応しております。
② リスク管理
(1)サステナビリティ共通 ②リスク管理をご参照ください。
③ 戦略
中期経営計画2024-2026でも掲げているとおり、当社は、経営リソースを戦略的に配分することで、コア事業であるFPSOで収益力を強化しながら、新事業を創出し、長期的に持続可能なビジネスモデルを構築することを目指しております。この事業戦略を実現するためには、それぞれの事業領域で課題を解決する優秀な人材が充足しており、各人材が最大限に価値を発揮することが不可欠であります。そのため、人的資本戦略として、「Ⅰ.人材ポートフォリオの充足」「Ⅱ.グループ一体となった事業推進のための基盤整備」「Ⅲ.多様で働きやすい職場環境づくり」を重点テーマとして取り組み、人材の確保、活躍促進を推進してまいります。各テーマの方針と具体的な施策は、以下のとおりとなります。
Ⅰ.人材ポートフォリオの充足
中期経営計画2024-2026に掲げる事業戦略の達成に向けて、人材確保が必要な領域を大きく3つに整理しております。1つ目は、「コア事業の拡大」で、コア事業であるFPSOにおいて収益力の強化や脱炭素化に取り組む領域となります。2つ目は、「新事業の創出」で、浮体式洋上風力・デジタル・代替エネルギー・その他の潜在的新事業を具現化していく領域となります。3つ目は、「グループ経営基盤の構築」で、戦略的な経営資源の配分や、グループコラボレーション・シナジーの深化、サステナビリティ・グループガバナンスの向上に取り組む領域となります。そして、それぞれの領域で優秀な人材を確保・育成をしていくために、「コア事業における安定的な人材確保と付加価値向上に向けた人材育成」、「新事業を拡大していくための人材育成」、「グループ経営の基盤をつくるリーダーの育成強化」に取り組み、必要な人材のポートフォリオを充足させることに注力いたします。
・コア事業における安定的な人材確保と付加価値向上に向けた人材育成
当社は、コア事業であるFPSOにおいて、着実なプロジェクト遂行、及び脱炭素化やデジタルを活用した効率的なオペレーションにより、収益力を強化していくことを目指しております。これらの実現のためには、各国拠点での安定的な事業運営や、プロジェクトの開発・推進のなかで得た知見をグループ全体に共有することで新たな付加価値を創出していくことが必要であり、人的資本の面では、安定的に人材を確保し、より幅広い経験・知見を兼ね備えた人材を育成していく必要があると考えております。事業特性や業界特性上、当社の人材の流動性は高く、現状は各拠点にて採用手法の拡充や処遇の改善等を実施することで、継続的に人材を確保することに努めております。今後はより一層安定的に人材を確保するために、人材に選ばれるための労働条件やキャリア機会を整備することで、働く場として社内外の人材にとって魅力的な環境を整えてまいります。また、人材育成においては、現状、各拠点が自律的に各種トレーニングやローテーションを実施しておりますが、今後はグループ共通のトレーニング施策拡充などを通して、より幅広い社員に育成やキャリア機会を提供し、人材のスキル・経験を向上させることに取り組んでまいります。
・新事業の拡大に向けた人材育成
当社は、コア事業であるFPSO以外の事業を創出し、変化する経営環境に適応しながら、持続可能な企業となることを目指しております。新たな事業創出に向けては、FPSOで培った強みを活かしつつ、様々なステークホルダーと関わりながら新たなビジネスモデルを模索・育成していく必要があり、人的資本の面は、FPSOの事業知見と新事業開発の知見を兼ね添えた人材を育成することが必要であると考えております。デジタルソリューション事業においては、デジタルソリューションに特化した会社を2021年に立ち上げており、新事業開発に関する研修を実施するなど、知見の蓄積・人材育成に取り組んでおります。今後も、研修等を通じた人材育成を進めつつ、2025年1月に新事業開発グループを設置し、現有人材で新事業開発に携わってきた社内人材を集結させました。新たな事業機会の発見と事業化に向けた戦略と方針の策定と実行を通じ、従来のFPSO事業部門と連携して、バランス感覚の優れた人材を育成してまいります。
・グループ経営の基盤を作るリーダーの育成強化
当社はグローバルに事業を展開しており、各国拠点の知見をグループとしての知として蓄積すること、またグループ最適のリソース配分を行うことで、MODECグループの企業価値を最大化することを目指しております。この実現に向けては、各国拠点の事業特性を踏まえつつ、グループとしてのあるべき姿を定め、変革に向けた戦略的判断を行っていく必要があり、人的資本の面では、これらを担うリーダー人材を育成する必要があると考えております。現在、経営陣の後任人材の育成検討や、機能・各国拠点をまたいだローテーションを行っておりますが、今後はグローバル共通の枠組みで中長期的に経営幹部候補となるリーダーの発掘・育成を行っていき、また、リーダー人材の長期的な活躍を促進するための環境を整備してまいります。
Ⅱ. グループ一体となった事業推進のための基盤整備
各国拠点の自律性を確保しつつ、グループシナジーを生み出す経営体制を整えていくためには、グループ全体で共通の指針に基づいた事業運営が必要であると考えております。そのため、グループ共通のValueの浸透をさらに強化し、グループ全体で、各拠点・従業員が同じ方向性で業務を遂行する体制の構築を進めております。
<具体的な施策>
コア・バリュー浸透のためのトレーニングの実施
昨年同様、コア・バリュー「OCEAN」に基づく文化を醸成するために、その要素である「Care」「Empowered」「Agile」を体現できるようなトレーニング施策や、チームワークを向上させ「One Team」を実現するためのコミュニケーションスキルの強化、企業人の根幹となる「iNtegrity」の強化等を推進しております。また、グループ全体でのバリュー浸透に向け、「Ocean」に対する経営層の思いを従業員に伝えるコミュニケーション施策、各拠点において「Ocean」について考えるワークショップ等を実施しております。
Ⅲ. 多様で働きやすい職場環境づくり
当社では、多様な視点により生まれる新たな発想が競争力のさらなる強化につながると考えております。この考えにもとづき、性別、国籍、年齢等の属性にとらわれず、広く優秀な人材を獲得し、多様な人材が安心して働ける職場風土を醸成することを目指しております。
<具体的な施策>
社内コミュニケーションの強化(国内)
風通しが良く、安心して働ける職場風土の醸成に向け、評価・キャリア形成における上司・部下間のコミュニケーションを促進することや、経営トップ層と従業員との交流の場を創出することを行っております。
柔軟な働き方の整備(国内)
従業員の就労ニーズが多様化する中、働き方の柔軟性を高めるための施策として、月の半分を上限として自宅からのテレワークを可とするハイブリッド型の就業制度の導入や、フレックスタイム制の拡充(コアタイムの短縮、育児・介護短時間勤務者への適用)などを実施しております。
女性・外国籍・中途採用(国内)
・女性従業員:東京本社では、オフショア等に赴くエンジニアを除いた女性比率が同業種における水準と同等となるよう女性の採用を強化しております。また、女性従業員が中長期的に当社で活躍できる環境づくりのため、関連法を踏まえて「育児と仕事の両立支援」に取り組んでおります。
・外国籍従業員:グローバルでビジネスを展開する当社では、拠点ごとに、国籍によらない従業員一人ひとりの能力、成果を踏まえた育成・登用を行っております。
・中途採用:当社では新卒採用/中途採用の入社形態に関わらず、従業員一人ひとりの能力、成果を踏まえた育成・登用を行っております。
(女性従業員に関する指標)
(注)提出会社を対象。オフショア等に赴くエンジニアを除く
④ 人材育成に関する方針
当社が既存事業でも新規事業でも安定的に価値を出し続けていくためには、常にアンテナを高く張り、どのような状況にも適応し続け、持続可能な組織であり続けることが必要だと考えております。当社では、そのような組織を創り出す人材を育てるべく、人材育成を推進しようと考えております。
具体的には、Core Values「OCEAN」に基づく文化醸成のため、その要素である「Care」「Empowered」「Agile」を体現できるようなトレーニング施策や、チームワークを向上させ「One Team」を実現するためのコミュニケーションスキルの強化、企業人の根幹となる「iNtegrity」の強化等を推進しようと考えております。また、グループ全体をグローバルに率いていく人材を育成すべく、次世代リーダー候補の育成施策の強化にも着手しております。
⑤ 健康と安全に関する方針
当社は、従業員の健康・安全を確保し、自らの持てる力を最大限に発揮できる職場環境を提供することが、企業としての重要な責務の一つであると考えております。すべての役職員、コントラクター及びベンダーは、当社の労働安全衛生に関するポリシー及び手順を理解し、これに従うことが求められており、特に、洋上でFPSOやFSO等の操業に関わる従業員は、閉鎖的な環境の中での生活を余儀なくされることを考慮し、その健康と安全の確保に配慮しております。また、当社グループは、従業員の健康と安全の確保を目的とした「健康安全宣言」を策定し、その実現に努めており、 各拠点でHSSE Committee(環境安全衛生委員会)を組織し活動を行っております。また東京本社の環境安全衛生委員会では、統括環境安全衛生管理者(HSSE担当執行役員)、産業医、衛生管理者、労働者代表を委員とし、従業員の健康増進・安全確保、労働災害の防止、環境保護活動の推進等を行っております。
(4) 人権への対応
当社は、グローバルな事業活動において、人権の尊重が不可欠であると考えており、世界各国の国際的な人権基準を尊重しております。ステークホルダーに対する責務を果たすため、すべての人々の尊重、人権の保護に取り組んでおります。
また世界各国でビジネスを展開するにあたり、人権への配慮が不可欠であると考え、Policy for Human Rightsを定め、性別や国籍による差別を行わないことや、児童労働・強制労働を禁止することを規定しております。
① ガバナンス
(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンスをご参照ください。サステナビリティ委員会の重要テーマの一つとして「人権」を位置付け、ワーキンググループを設置して対応しております。
② リスク管理
(1)サステナビリティ共通 ②リスク管理をご参照ください。
なお、人権に関してはワーキンググループにて2024年度に外部専門家を起用し、各種国際規範を踏まえて当社の人権への取組に対する分析及び評価を実施しております。引き続きサステナビリティ委員会及びワーキンググループの主導により、当社サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの実施に向けて取引先と協働して当社内プロセス構築の取組を進めてまいります。
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
<特に重要なリスク>
(1) 不透明な世界情勢による影響
また、昨今の世界情勢を踏まえ、今後関税強化、米中摩擦等当社サプライチェーンに影響し得る要因が様々にありますが、過度に一極集中しないサプライチェーンの構築が必要と認識し、リスク分散の為に主要サブコンの多角化を図っております。当該影響は顧客にも及ぶことから、顧客と連携・協力してこれらリスクの低減に努めております。
技術の進歩と共に、海洋油田の探査が超大水深海域に拡大していることを背景として、浮体式海洋石油・ガス生産設備のニーズは拡大しており、また、脱炭素に向けた世界的な潮流は今後も継続する一方でエネルギー需要も増加する見込みであり、石油・ガス需要は堅調に推移すると考え、当社は引き続きFPSO事業開発に取り組んでいく方針であります。
しかしながら、原油価格の低迷が長期化すると新規プロジェクトが遅延するため、当社グループもプロジェクトの受注が一時的に減少するといった影響を受ける可能性があります。
(3) アセット・インテグリティの低下
当社グループが石油開発会社に提供しているFPSO等のリース、チャーター及びオペレーションに関わるサービスは、契約期間が長期にわたり、安定した収入を期待できる事業できる一方で、2000年代に受注した初期のFPSOの経年劣化が急速に進み、安全性の確保を最優先で対応した結果、想定外の操業率の低下やアセット・インテグリティの維持・強化費用の負担を余儀なくされておりました。直近の数年間アセット・インテグリティの改善に集中的に取り組んだ結果、初期のFPSOの状況も改善し、また順次チャーター期間の終了を迎えていくことから、このような喫緊の課題は徐々に解決されつつあるものの、引き続き当社グループの最重要課題として捉えており、一層のアセット・マネジメントの強化に努め、収益力の向上に繋げてまいります。
(4) 価格変動リスク
ロシアによるウクライナ侵攻や中東地域における衝突、米国新政権の貿易政策の影響等、世界情勢はより不透明性を増し、インフレ、為替等価格変動要因に大きく作用し、当社グループのFPSO事業に負の影響をもたらす可能性があります。これら価格変動リスクは顧客との契約で一定程度ヘッジされており、為替については客先からの入金や主要サプライヤーへの支払いを米ドルにて決済することでリスク低減に努めております。また、資機材の調達先の多様化、要求仕様の標準化による納期短縮、コスト削減を図っております。
(5) 化石燃料需要の減少
先述のとおり、石油・ガス需要は引き続き堅調に推移する見込みですが、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが進み、長期的には石油開発企業の化石燃料関連への投資抑制や事業内容の変更により、需要が漸減していくことが予測されます。当社グループは中期経営計画の中で、洋上風力発電や代替エネルギー事業における当社独自の浮体式構造及び係留技術の開発を推進することを目標に掲げております。しかしながら、事業環境の変化に対し当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの事業及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
<その他の重要なリスク>
FPSO等の浮体式海洋石油・ガス生産設備の建造にあたっては多額の資金を要するほか、これを当社グループが保有して石油開発事業者にリース、チャーターを行う場合は、そのリース、チャーター期間が10年を超えるなど建造資金の回収に長期間を要することになります。
当社グループはこうした事業資金を主に社債及び借入金により調達しており、当連結会計年度末における社債及び借入金残高は514,434千米ドルとなっております。
当社グループでは金利スワップを用いるなど借入に係る金利変動リスクの低減に努めておりますが、金利の変動によっては当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、今後もFPSO等に係る新規プロジェクトを開始する場合には、新たに資金調達を行う必要があります。当社グループは、プロジェクトの推進にあたり海運会社及び総合商社をはじめとする事業パートナーとの連携によって資金負担の低減を図るほか、プロジェクトファイナンスの利用によるリスクの遮断も行う方針であります。
しかしながら、入札にあたって所要資金を十分に調達することが困難な場合や、金利等の資金調達条件が悪化した場合には、プロジェクトの受注及び収益性に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 大規模災害について
当社グループは、地震、風水害、感染症の世界的流行(パンデミック)など各種災害に対して発生時の損失を最小限に抑えるため、危機発生時の対応体制や対応指針をまとめたグループ危機管理ガイドラインを策定しております。しかしながら、このような災害による物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等により、FPSO等の建造工事、リース、チャーター及びオペレーションといった当社グループの事業活動に影響が生じる可能性があります。
当社グループは、国内外での事業の遂行にあたり、それぞれの国での各種法令、行政による許認可や規制等を遵守しております。しかしながら、これら法令の改廃や新たな法的規制が設けられる等の場合には、その結果が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(業績等の概要)
当連結会計年度における世界経済は、主要地域においてインフレの緩やかな減速と利下げの動きが進み、米国を中心に景気が底堅く推移する一方、中国の停滞の継続に伴う影響や中東地域及びウクライナをめぐる情勢などの地政学リスクへの懸念があり、先行きは依然として不透明な状況が続きました。
原油価格は、中東情勢の一層の不安定化から、供給量減少の懸念が高まったことなどにより、一時1バレル80米ドル台後半へ上昇しました。その後、中国経済の成長鈍化による原油需要の伸び悩みが意識された一方、OPECプラスが自主的な減産を継続したほか、米国経済が好調を維持するなど、強弱材料が混在し、概ね1バレル70米ドルから80米ドルのレンジで推移しました。
脱炭素の流れと並存しつつ、安定したエネルギー供給を維持することは依然重要な課題であり、石油会社による深海油ガス田開発は将来的にも十分な埋蔵量が確認され、併せてコスト競争力に優れた領域として継続して進められております。当社グループの主要事業である浮体式海洋石油・ガス生産設備に関する事業、特に当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトに対する需要も堅調に推移しております。
当社グループの当期経営成績は、受注高については、新規の大型建造工事の受注はなかったものの、既存のFPSO建造プロジェクトの仕様変更、期間延長等に伴う契約金額の増額やオペレーションの期間延長や整備、改修工事の受注等により、1,240,853千米ドル(前年比85.8%減)となり、受注残高については、既存の大型建造案件の工事が順調に進んだこともあり、12,944,335千米ドル(前年比23.0%減)となりました。
売上収益及び利益面では、FPSO建造プロジェクトの順調な進捗による売上収益及び売上総利益の増加に加え、オペレーション及びチャーター事業についても、これまで実施してきた大規模修繕の効果により操業率の改善や、追加修繕費用の軽減などによる採算の向上が図れたことから、売上収益は4,186,461千米ドル(前年比17.1%増)、また持分法による投資利益154,004千米ドル(前年比19.7%増)を加えた営業利益は322,901千米ドル(前年比67.4%増)と大幅増益となりました。
また、関連会社向けの貸付金に対する損失評価引当金の計上による金融収益の押し下げ要因があったものの、収益基盤強化による将来見込利益の改善に伴う繰延税金資産の計上もあり、親会社の所有者に帰属する当期利益は220,404千米ドル(前年比128.3%増)となりました。
当社グループの事業は、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスの提供を中心としたほぼ単一の事業を展開しているため、セグメント別の事業等の記載は省略しております。
(2) 財政状態について
当連結会計年度末の資産合計は、主に現金及び現金同等物並びに持分法で会計処理されている投資の増加により、前連結会計年度末から608,730千米ドル増加し、4,496,651千米ドルとなりました。
負債合計は、主に契約負債の増加により、前連結会計年度末から445,553千米ドル増加し、3,298,183千米ドルとなりました。
資本合計は、主に利益剰余金の増加により、前連結会計年度末から163,177千米ドル増加し、1,198,468千米ドルとなりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末から239,363千米ドル増加し1,253,276千米ドルとなりました。各キャッシュ・フローの概況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べて75,003千米ドル増加し、560,890千米ドルの収入となりました。これは主にFPSO等の建造工事に関わる売上債権の回収時期と買掛金の支払時期のバランスによる変動であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に持分法で会計処理されている投資の取得による支出133,331千米ドルにより、122,581千米ドルの支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に長期借入金の返済による支出57,799千米ドル及び配当金の支払による支出61,238千米ドルにより、186,267千米ドルの支出となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループは、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスを提供する単一の事業を展開しているため、セグメント別の記載は省略しており、以下の各項目は当社グループ全体の実績を記載しております。
(注)1 上記の金額は、FPSO、FSO及びTLPの設計・建造・据付並びにその他の工事に係る完成工事高であります。
2 金額は、販売価格によっております。
主な顧客の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
(注)1 該当年度において売上収益の10%未満であるため、記載を省略しております。
2 当社の直接の販売先の主な顧客は上記の記載のとおりですが、当社の持分法適用会社が行うチャーター事業の最大顧客はPetrobras Brasileiro S.A.であり、チャーター事業収入全体の約半分程度を占めております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績に重要な影響を与える要因
第2「事業の状況」における1「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び3「事業等のリスク」に記載しているとおりであります。
(2) 経営成績に関する分析
① 受注の状況
当連結会計年度は、既存のFPSO建造プロジェクトの仕様変更、期間延長等に伴う契約金額の増額やオペレーションの期間延長や整備、改修工事の受注等により1,240,853千米ドルの受注高となりました。受注残高は、前連結会計年度末から3,873,603千米ドル減少し、12,944,335千米ドルとなりました。また、持分法適用会社のリース及びチャーターに関する当社グループ持分相当の受注残高は、5,212,362千米ドルとなりました。
② 売上収益の状況
売上収益は、主にFPSO等の建造工事の進捗とチャーター及びオペレーションサービスの提供により、4,186,461千米ドルとなりました。
③ 営業損益の状況
営業損益は、持分法による投資利益の増加により、322,901千米ドルの営業利益となりました。
④ 当期損益の状況
当期損益は、関連会社向けの貸付金に対する損失評価引当金の計上による金融収益の押し下げ要因があったものの、収益基盤強化による将来見込利益の改善に伴う繰延税金資産の計上もあり、263,305千米ドルの当期利益となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期損益の状況
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、220,404千米ドルの利益となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要)(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資本の財源
当社グループの資金の源泉は、主に営業活動からのキャッシュ・フローと外部からの借入となりますが、FPSO等の建造工事においては、工事代金の回収時期と工事費用の支払時期のずれにより当該建造工事に関わる債権債務が一時的に大きく変動し、営業キャッシュ・フローに大きな影響を与えます。当社グループではこれらの建造工事に関わる債権と債務のバランスを案件毎に管理することで資金効率の向上に努めております。また、当社グループは、「CMS預貸制度(キャッシュ・マネジメント・システム)」によりグループ内で資金融通を行うことで資金効率を高めております。
② 建造工事期間における資金負担
FPSO等を客先に売り渡すプロジェクトの場合、建造工事に要する費用は工事の進行度合いに応じて前受金にて回収しているため、当社グループでは運転資金の調達を必要としません。一方、リース及びチャータープロジェクトの場合、当社グループと海運会社及び総合商社等が合弁で設立する事業会社が建造工事の発注者となるため、当社グループには事業会社に対する出資比率に相当する建造工事費用の負担が生じます。
当社グループは、建造工事期間における必要資金を、主に当社の債務保証によって関係会社が借り入れる方法によって調達しております。
③ 総リスク額の管理
当社グループでは、建造工事費用にかかる関係会社での借入金を、チャーター開始後に、プロジェクトファイナンスによる調達へ切り替えております。それによって当社における大型プロジェクトのための長期かつ多額の資金負担と債務保証が不要となり、プロジェクト個々のリスクを軽減する効果をもたらします。
当社グループでは、プロジェクトファイナンスを活用すると共に、海運会社及び総合商社などの事業パートナーをプロジェクトに招聘する等の方策により、総リスク額をコントロールして事業を展開する方針であります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、それぞれ合理的な方法により、会計上の見積りを行なっており、詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の「連結財務諸表注記」、「2. 作成の基礎 (4)判断及び見積りの使用」及び「3. 重要性がある会計方針」に記載しております。
当社グループの経営上の重要な契約は、以下のとおりであります。
当社グループでは、中期経営計画 2024-2026「イノベーションで持続可能な未来を拓く」の実現のため、①FPSOによる社会への石油エネルギーの安定供給とその際に発生する温室効果ガスの削減の両立、及び ②石油やガスの代替エネルギー社会への橋渡し をテーマに、革新的な研究開発活動を展開しております。
① FPSOによる社会への石油エネルギーの安定供給とその際に発生する温室効果ガスの削減の両立
当社グループが設計・建造・据付(EPCI)並びにリース・オペレーションを行うFPSOからエネルギー資源を安全かつ安定的に社会に対し供給し続けること、そして同時にFPSOのライフサイクルを通じた温室効果ガス(GHG)排出を削減することを両立することによって脱炭素社会に向けた過渡期における化石燃料需要を支え、エネルギー・トランジションの実現に寄与するべく、研究開発を実施しております。
安定的に稼働する高いアセット・インテグリティのFPSOを建造すべく、デジタル技術を用いた設計データ整合性確認の自動化、3Dスキャンデータや3Dモデルを活用した建造工程の管理等、設計・建造段階での効率化やそれに伴うヒューマンエラーの低減といった研究開発を行っており、オペレーションにおいては安定的・安全な操業のために火気工事を伴わない船体補修法であるCFRP補修手法等、洋上の環境においても適用が容易な補修技術の開発・評価を行うと同時に、限られた洋上人員による効率的な設備保全を実現すべく、無人小型潜水艇や自立型無人潜水機によるダイバー作業の代替、板厚測定ドローンやロボットを活用したクリーニング作業等、ロボット技術で高所・閉所等の危険作業の代替を進める研究開発を実施しております。さらに、グループ会社のShape社と共同でアセット・インテグリティを保つための効果的なメンテナンスを実現すべくコンディション・ベースド・メンテナンス(CBM)やプレディクティブ・メンテナンス(PdM)等に関する研究開発を行っております。
温室効果ガス排出量の削減においては、ライフサイクル全体にわたって責任感を持って取り組む立場から、あらゆるスコープ1、2、3排出をその削減対象としております。ライフサイクルにわたるGHG排出量を細かな粒度で定量化する手法を開発し、その分析を通じてGHG削減に有効な注力領域を特定することで、効果的な研究開発活動を展開しております。FPSOにおける原油生産に伴うGHG排出において主要なGHG発生源である発電機からの排出低減を目的とした、高発電効率を実現するコンバインドサイクル発電モジュールの実用化や、発電機排ガスからCO2を抽出する燃焼後カーボンキャプチャー(PCC)技術の開発を実施しております。PCC技術開発においては、陸上で実績のあるPCCシステムのFPSO搭載に向けた技術評価と、洋上環境により適した革新的なPCC技術について、パイロットプラントのFPSO搭載に向けた研究開発活動を行っております。さらに、ガスタービンやボイラーといった従来型の発電機を代替するような低GHG排出の発電手段についても、将来の実用化・FPSOへの搭載に向けた研究開発活動を行っております。フレアの削減については、クローズドフレアシステムの既存プラットフォームへの搭載や、予知運転による機械の異常停止低減を支援するデジタルツールの開発に向けた活動を行っております。ベントや漏洩ガスに関してもロボット技術を用いた検出自動化等を通じての排出削減を研究開発活動の対象として実施しております。
② 石油やガスの代替エネルギー社会への橋渡し
当社グループはエネルギー・トランジションにおける現実解に貢献すべく、一足飛びにグリーンソリューションだけを追求するのではない、将来の代替エネルギー社会への着実な移行において必要不可欠なソリューションの実現を目指して研究活動を実施しております。主力産業である海底油田開発の周辺領域での知見を獲得し、FPSOのEPCI及びオペレーションから得た知見や、当社の技術資産と組み合わせることで、当社独自の実現可能なソリューションを追求しております。
代替燃料の生産ソリューションにおいては、原油を生産するFPSOにおいて発生する随伴ガスを受け取り、液体アンモニアに変換・貯蔵し、発生したCO2を海底に圧入することができる「ブルーアンモニアFPSO」のコンセプト開発を行い、設計基本承認を取得しております。
その他のソリューションにおいては、当社の強みであるTLP型浮体技術と係留技術を組み合わせた、コスト競争力のあるTLP型洋上風力発電設備・変電設備の開発やCCS設備を備えた発電バージのコンセプト開発、浮体式CO2受取・圧入プラットフォームのコンセプト開発、更にはバッテリーの原料として不可欠なリチウムの油井水や海水からの回収設備といった新規ソリューション開発に向けた取り組みを実施しております。
グループ会社のSOFEC社におきましては、高電圧電気スイベルの開発や、アンモニアや液体CO2の海上払い出し設備の開発といった研究開発活動を展開しております。
当連結会計年度におけるこれらの研究開発に係る金額は
なお、当社グループは、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスを提供する単一の事業を展開しているため、セグメント別の記載は省略しております。