第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項目における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月27日)現在において、当社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

<企業理念「鳥居薬品の志」>

当社は、長い歴史の中で培ってきた企業風土や各ステークホルダーからの信頼を受け継ぎつつ、将来へ向けても変わらない当社の志を「鳥居薬品の志」と定め、企業理念としております。

また、当社従業員が中心となり策定した「TORII's POLICY」を「鳥居薬品の志」の実現のために大切にする価値観として位置づけるとともに、各ステークホルダーへの責任をバランスよく果たし、満足の総和を高めていくことを表す「4Sモデル」を経営の基本的考え方と位置づけ、「鳥居薬品の志」の実現に向けて取り組んでおります。

 

1)企業理念:鳥居薬品の志

患者さんとそのご家族や医療に携わる方々に誠実に向き合い、

患者さんの健康回復と、病に縛られない豊かで笑顔多い人生に貢献する

 

長い歴史の中で培った皆様からの信頼を受け継ぎながら、

時代や環境に合わせて柔軟に変革・進化し、

私たちだからこそ出来る医療への貢献に挑戦し続ける

 

 

2)大切にする価値観:TORII's POLICY

・つながる“ひと”すべてを大切に

・誠実・まじめがトリイのトリエ

・全員当事者 脱・評論家

・新しいことでもおそれずにやってみよう

・すべての経験を糧に、私たちは成長し続ける

 

 

3)経営の基本的考え方:4Sモデル

私たちは、高品質の事業活動によって生み出される資金を循環/拡大することを通じて、お客様、株主、社会、社員の四者に対する責任をバランス良く果たし、満足の総和を高めていきます。

 

CS(Customer Satisfaction):お客様に対する責任

より良い薬、正しい情報を医療関係者を通じて患者さんに提供することにより、人々のQOL(Quality Of Life)向上に貢献するように努めます。

IS(Investor Satisfaction):株主に対する責任

適時適切に会社情報を開示するとともに、適正な利潤の還元と企業価値の増大を図るように努めます。

SS(Social Satisfaction):社会に対する責任
高度な倫理観を保持し、社会要請に応じた事業活動を通じて、より良き企業市民となるように努めます。

ES(Employee Satisfaction):社員に対する責任
個々人を尊重し、成長の機会を均等に与え、公正な評価に基づく処遇を推進することにより、働きがいを実感できるように努めます。

 

 

<中長期事業ビジョン「VISION2030」>

当社は、企業理念である「鳥居薬品の志」を実現するために、2030年に向けて当社が目指す姿として「VISION2030」を策定しております。

 

(中長期事業ビジョン:VISION2030)

医療ニーズを深く理解し、その充足のために

高い専門性と機動力を持って

関係する皆様との共創を最適な形で進め、

価値ある新薬を見いだし届ける 

存在感のある製薬企業

 

 

「VISION2030」のターゲットである2030年には、計数面では以下の姿を目指します。

・売上高  :800億円超

・営業利益:2032年の過去最高益(133億円)※更新を射程に入れる

※過去最高の営業利益 133億円(2001年3月期)

 

「VISION2030」の実現と、以降の持続的成長を確実なものとすべく、導入に向けた事業投資に従来以上に積極的に取り組むとともに、製品の価値を正しく医療関係者や患者さんに伝えるための社内体制整備や能力向上に取り組んでいく考えです。

以下2点を事業戦略とし、これに基づき中期経営計画の各施策を実施しております。

1)導入活動の強化

2)製品価値最大化のための仕組み作り

 

(2) 中期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

「中期経営計画2024-2026」2024年度の進捗状況

当社は、2024年度から2026年度までの3ヶ年を対象期間とする「中期経営計画2024-2026」を策定し、中長期事業ビジョン「VISION2030」の実現に向けて、成長戦略の各施策とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでおります。進捗状況は、以下のとおりです

 

 計数指標の進捗状況


※1:中期経営計画の利益面の計数指標としては、将来の導入品獲得に向けて、当面は研究開発投資を積極的に実施することから、研究開発費控除前営業利益を設定しております。

※2:「VISION2030」計数目標としては、2030年以降も研究開発投資を継続的に実施するものの、集中的な投資は一定程度完了している予定であることから、営業利益を指標として設定しております。過去最高の営業利益133億円(2001年3月期)。

 

医薬品業界を取り巻く事業環境は、研究開発の高度化・難化による投資リスクが増大する中で、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクの高まりに伴う資源・原材料価格の高騰、円安を背景とした物価上昇に加え、薬価制度の改革(毎年薬価改定等)、後発品の使用促進の影響等、厳しい事業環境が継続しましたが、「中期経営計画2024-2026」において計画していた各諸施策を着実に遂行し、売上高は604億円、営業利益(研究開発費控除前)は96億円とそれぞれ当初計画を上回ることができました。

また、新薬開発の推進(ブイタマークリーム1%の販売開始、TO-208の製造販売承認申請の実施、TO-210の国内第Ⅰ相臨床試験の実施等)が計画どおり進捗する等、中長期事業ビジョン「VISION2030」目標の達成、そして以降の持続的成長に向けた各施策についても着実に取り組んでおります。引き続き、1)導入活動の強化 2)製品価値最大化のための仕組み作りを事業戦略とし、これに基づき中期経営計画の各施策を実施してまいります。

 

主要施策の主なトピック(2025年2月7日時点)

成長戦略

■  成長期新薬の売上高は着実に伸長

・計数指標である売上高、研究開発費控除前営業利益ともに前年度比2桁%の伸長

■  ブイタマークリーム1%(JTE-061) 開発が順調に進捗

・小児アトピー性皮膚炎患者(2歳以上12歳未満)対象の国内第Ⅲ相臨床試験の速報結果を公表

(2024年5月)

・ブイタマークリーム1%の日本国内における製造販売承認取得(2024年6月)

・ブイタマークリーム1%の販売開始(2024年10月)

■  TO-208 開発が順調に進捗

・伝染性軟属腫を適応症とした日本国内における製造販売承認申請を実施(2024年12月)

■  TO-210 開発が順調に進捗

・国内第I相臨床試験を実施(2024年4月開始)

ステークホルダーからの信頼維持

■  安定供給

・シダキュア原薬製造設備の増設や花粉採取は当初計画どおりに進捗

(2023年4月に開始した限定出荷措置は継続)

■  コーポレートガバナンスの充実

・監査等委員会設置会社への移行を株主総会承認(2024年3月)

・指名・報酬諮問委員会の設置(2024年3月)

■  サステナビリティへの取り組み

・サステナビリティ委員会を設置(2025年1月)

 

 

<「中期経営計画2025-2027」の概要>

1)「中期経営計画2025-2027」の策定

当社は、中長期事業ビジョン「VISION2030」の達成に向け、2025年度から2027年度を対象期間とする「中期経営計画2025-2027」を策定しました。「VISION2030」の実現に向けて、前中期経営計画に引き続き成長戦略の各施策とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでまいります。

 

2)「中期経営計画2025-2027」主要施策

(1)成長戦略

(2)ステークホルダーからの信頼維持

1.成長期新薬の普及・育成・価値最大化

2.新薬開発の推進

3.新規導入品の獲得

4.経営戦略に沿った人事制度等の整備と働き方改革

5.企業風土改革

1.安定供給体制の整備・強化

2.薬事規制の遵守と品質保証

3.コンプライアンスの強化

4.コーポレートガバナンスの充実

5.サステナビリティへの取り組み

 

 

3)計数指標

「VISION2030」の目指す姿の実現に向け、「中期経営計画2025-2027」の計数指標としては、引き続き売上高及び研究開発費控除前の営業利益を設定します。


※1:中期経営計画の利益面の計数指標としては、将来の導入品獲得に向けて、当面は研究開発投資を積極的に実施することから、研究開発費控除前営業利益を設定しております。

※2:薬価に関しては複数シナリオが考えられるものの、本ガイダンスにおいては2026年に市場拡大再算定によりシダキュア・ミティキュアが15%程度の薬価引き下げとなる前提で策定しております。なお、現時点で市場拡大再算定について決定した事実はありません。

 

<企業価値向上に向けた取り組み>

1)企業価値向上に向けた目標と取り組みについて

2025年2月7日付「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を含む企業価値向上に向けた取り組みの更新について」にて開示のとおり、当社は、更なる企業価値向上を実現するために、以下の目標を設定し、中長期事業ビジョン「VISION2030」の目指す姿の実現、ROE(自己資本利益率)の改善、株主還元、コーポレートガバナンスの充実等、様々な取り組みを実施しております。

※具体的な取り組みについては当社ホームページの「企業価値向上に向けた取り組み」

(https://www.torii.co.jp/ir/value/)をご参照ください。

目標

① 中長期事業ビジョン「VISION2030」計数目標の達成

(「売上高:800億円超」、「営業利益:2032年の過去最高益(133億円)更新を射程に入れる」)

② 2030年以降、早期にROE8%以上を実現

(なお、具体的なROE目標値と達成時期は、集中的な事業投資が一定程度進捗し、中長期的な成長を見通すことが可能となる時期にお示しする予定です)

③ 事業投資を通じた売上及び利益成長を重視しつつ、同業他社と遜色のないDOE(株主資本配当率)水準(現時点では3.5%程度)を実現

(なお、具体的な目標達成時期は、集中的な事業投資が一定程度進捗し、中長期的な成長を見通すことが可能となる時期にお示しする予定です)

 

 

 

2)株主還元について

当社は、株主の皆様に対する適正な利潤の還元を経営の重要課題と認識しております。株主還元については、継続的かつ安定的な配当の実施を基本方針としつつ、事業投資を通じた中長期的な企業価値の向上を実現することが株主の期待に応えることになると認識しております。

当事業年度の配当につきましては、当事業年度の業績は堅調であったものの、2027年度までを集中的な事業投資期間とした位置づけに変更はなく、今後も新薬の導入をはじめとした積極的な事業投資を実行する方針であり、当面の間、一定水準の手元資金の確保が必要であることから、従前からお示ししているとおり、1株当たり年間120円(中間配当金60円は実施済み、期末配当金60円)といたしました。

株主還元につきましては、継続的かつ安定的な配当の実施を基本方針としつつ、更なる充実を図る考えであり、引き続き、開発パイプラインの充実度合や財務状況等を定期的に評価しながら中長期的なDOEの向上に努め、将来的に同業他社と遜色のないDOE水準(現時点では3.5%程度)を目指してまいります。(なお、具体的な達成時期につきましては、集中的な事業投資の進捗及び中長期事業ビジョン「VISION2030」の達成が一定程度見通すことが可能となる時期にお示しする予定です。)

また、2025年度の配当につきましては、1株当たり年間120円(中間配当金60円、期末配当金60円)の配当を実施する予定ですが、開発パイプラインの充実度合や財務状況等を評価し、株主還元方針に基づき総合的に検討・判断してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月27日)現在において当社が判断したものです。

 

<サステナビリティ基本方針>

当社は、企業理念である「鳥居薬品の志」の恒久的な実現に向け、経営の基本的考え方である「4Sモデル」に基づき、各ステークホルダーに対する責任をバランス良く果たし、満足の総和を高めていく不断の努力により、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上だけでなく、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。

当社は、サステナビリティに関する取り組みを推進するため、ステークホルダーの方々とのコミュニケーションや連携といった協働を通して得られた期待やニーズ等を踏まえ、社会の持続性と事業の持続性の両面からインパクトが大きく優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、課題解決に向け適切に対応します。

 

<マテリアリティ>

事業に関わる

マテリアリティ

アンメットメディカルニーズを満たす価値ある新薬の探索と開発による患者さんへの貢献

 

質の高い医療情報の医療関係者への提供による患者さんへの貢献

 

製品の品質保証と安全性確保

 

医療現場へ届ける価値を最大化するための、各専門機能を有する多様なパートナーとの共創

 

サプライチェーン全体での取り組みによる安定供給

 

経営基盤に関わる

マテリアリティ

高い専門性を持った社員の育成と成長機会の提供

 

TORII's POLICY(大切にする価値観)を実践する風土の醸成

 

社員一人ひとりがいきいきと働ける環境の実現

 

コーポレートガバナンス

 

コンプライアンス

 

環境保全に配慮した企業活動

 

 

 

(1) ガバナンス

当社は、取締役会において、ステークホルダーからの信頼維持の観点、また、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現のため、サステナビリティの基本方針を策定するとともに、当社が取り組むべきマテリアリティを特定し、課題解決に向け適切に対応しております。特定したマテリアリティについては、事業戦略、中期経営計画主要施策等との関わりを整理するとともに、その対応状況につき、中期経営計画の策定に合わせ、取締役会にて確認しております。

また、当社は、サステナビリティに関連する課題やマテリアリティへの対応を一層推進するため、代表取締役が委員長を務めるサステナビリティ委員会を2025年1月に設置しております。サステナビリティ委員会は、定期的に開催するほか、必要に応じ随時開催することとしており、マテリアリティの推進計画策定、マテリアリティの推進状況のモニタリング、マテリアリティの管理・運用等を行います。サステナビリティ委員会の活動内容については、年1回以上取締役会に報告する体制としております。

当社のサステナビリティ推進体制の概要については、「第4 [提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要] ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。

 

(2) リスク管理

当社は、中期経営計画の策定に合わせ、事業戦略、中期経営計画主要施策等に影響を与えうる事業環境を確認・整理するとともに、事業戦略等の見直しの必要性について、取締役会にて議論しております。

当社のリスク管理については、「第4 [提出会社の状況] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要] ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ.内部統制システムの整備の状況 c.損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご参照ください。

今後は、サステナビリティ委員会の下部組織としてリスクマネジメントに関するワーキンググループを設置し、リスク・機会の影響について定期的に見直し、その状況についてサステナビリティ委員会へ報告をすることを予定しております。

 

(3) 戦略・指標及び目標

1) 人的資本に関する取組み

<背景及び戦略>

「VISION2030」の実現・事業戦略遂行のために、当社の組織・人財には「専門性」「機動力」「共創」が必要と考えています。この考え方に基づき、人財育成及び組織・環境整備を行っています。

・専門性:価値ある医薬品を探索・獲得し、医療現場のニーズを正確に把握しつつその価値を高め、正しく医療関係者や患者さんにお届けするために、当社の人財には高度な専門性が求められます。

・機動力:価値ある医薬品を少しでも早く医療関係者や患者さんにお届けするために、また、医療現場のニーズに即した適時適切な情報提供収集活動等のために、当社の組織には迅速な判断・行動が求められます。加えて当社の人財には生産性高く自律的に仕事に取り組むことが求められます。

・共創:自社資源はバリューチェーンのコア機能に集中し、環境変化に柔軟に対応しながら高い専門能力を持つ外部企業等と連携する当社のビジネスモデルにおいては、社外の多様な組織や関係者との適切な協働が求められます。また、社内の多様な組織や人財が相互に連携することも求められます。

 

<主要施策及び指標>

① 事業戦略上必要となる人財の確保

中長期の事業戦略遂行に必要となる人財の量・質を見通すとともに、現状とのギャップを可視化し、そのギャップを埋めるための採用・育成・配置施策を実施しています。これにより、高度な専門性を持った人財を安定的に確保できる環境整備を進めています。

② 医薬情報担当者(MR)の中長期的・体系的な育成体制整備

当社では中長期の事業計画を踏まえて、事業戦略遂行に必要と考えるMR人財が具備すべき知識やスキル項目及びそれらのレベルを体系的に整理し、ロードマップを作成した上で計画的な育成にあたっています。育成の成果や課題は定期的に検証し、より効果的な育成プログラムとなるよう毎年度見直しを行います。これらを通じ、高度な専門性を備え、価値の高い情報提供収集活動を行うMRの育成を進めています。

多様な人財が活躍できる環境整備

社内外の多様な組織・関係者と関わりながら、価値を共創するためには、多様な人財が活躍できる環境が重要です。そのため当社は、性別や採用(新卒・キャリア)の違い等の個人の属性、育児や介護等の個人の事情に関わらず、多様な個が活躍できる環境整備に取り組んでいます。本施策に関連する指標及び実績は以下のとおりです。

指標 

当事業年度(前事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合 (注) 1

10.5(9.8%)

労働者に占める女性労働者の割合

24.7(23.7%)

男性労働者の育児休業取得率 (注) 2

56.5(64.5%)

 

(注) 1.管理職に占める女性労働者の割合の目標値は、2022年4月から2025年3月までの3ヶ年において11%以上、2025年4月から2028年3月までの3ヶ年において12%以上としております。

2.男性労働者の育児休業取得率の目標値を2025年4月より新たに設定しており、2025年4月から2028年3月までの3ヶ年において50%以上としております。

④ 経営戦略に沿った人事制度の整備

「VISION2030」の実現や社員と会社の持続的な成長に向けて、「社員の専門性伸長を促進と、現状以上に役割・成果に応じた処遇を実現する人事制度」を人事制度改定の方向性として検討を進めています。期待する役割・レベルをより適切に示すことや評価・処遇のメリハリをつけること等で、成長を促す仕組みとすることを目指しています。

 

⑤ 企業風土改革

当社は、多様な価値観を尊重しつつも、企業理念である「鳥居薬品の志」実現に向けて大切にすべき価値観として「TORII's POLICY」を策定し、共有・実践に努めています。TORII's POLICY実践度合の測定を含めた企業風土改革アンケートを毎年実施し、理解・実践状況を把握するとともに、得られた課題についての改善策を検討・実行しています。これにより、個人と組織が一貫してTORII's POLICYを実践している状態を実現し、「鳥居薬品の志」の実現に向けた外部組織体制の整備・人財の育成を目指します。

⑥ 自律的なキャリア形成支援

当社では、社員が自律的にキャリア形成をするための支援を行っています。社員の自己理解・組織や職務に対する理解の促進・応募式の研修実施による機会提供等を通じて、自律的なキャリアプランの作成・実現を支援しています。階層・課題別の研修やライフプラン研修実施、通信教育・eラーニングの提供も実施しています。また、組織の計画的な人財育成を促し、個人の自律的なキャリア形成とのマッチングを行っています。

⑦ 健康経営の実践

会社と社員が持続的に成長を成し遂げるためには、社員一人ひとりが心身ともに健康に、いきいきと働ける環境作りが重要です。当社では「健康宣言」のもと、社員の健康保持増進施策(アブセンティーイズム・プレゼンティーイズムの低減等)を実施しています。本施策の実施により、将来にわたる労働損失の防止とワークエンゲージメントの向上を目指し、社員一人ひとりがいきいきと働ける環境の実現を目指しています。本施策に関連する指標及び実績は以下のとおりです。

指標

当事業年度(前事業年度)

年次有給休暇の取得率 (注) 1

79.6(79.3%)

年次有給休暇の平均取得日数 (注) 1、 (注) 2

16.4(16.3日)

フルタイムで働く労働者の時間外労働及び休日労働の合計時間(一月当たりの平均) (注) 3

15.2時間(15.2時間)

 

(注) 1.年次有給休暇の取得率及び平均取得日数は、2023年4月から2024年3月までの実績です。

2.年次有給休暇の平均取得日数の目標値は、2022年4月から2025年3月までの3ヶ年において年間14日以上、2025年4月から2028年3月までの3ヶ年において年間16日以上としております。

3.フルタイムで働く労働者の時間外労働及び休日労働の合計時間(一月当たりの平均)の目標値を2025年4月より新たに設定しており、2025年4月から2028年3月までの3ヶ年において17時間以下としております。

 

2) 気候変動に関する取組み

① ガバナンス

当社は、マテリアリティの一つとして「環境保全に配慮した企業活動」を特定し、サステナビリティ委員会の下部組織であるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース;Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に関するワーキンググループが、気候変動が当社事業に及ぼす影響について、TCFD提言の枠組みに基づき議論・検討を行い、サステナビリティ委員会に報告することとしております。

② 戦略

気候変動に関するリスク・機会について、シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル第5次報告書の1.5℃並びに4℃シナリオを用いて、当社事業に及ぼす影響について短期・中期・長期の観点でリスクと機会を洗い出しています。そのリスクと機会に対して発生度※1と影響度※2を検討し、重要度が高いと判断されたリスク・機会については財務的な影響を検討しています。

※1:自然災害など物理的リスクの場合は発生頻度、脱炭素社会への移行リスクの場合は想定される度合

※2:気候関連事象の影響を受けると想定される対象事業の規模

 

● 気候変動に係るリスク(1.5℃シナリオ/ 4℃シナリオ)

シナ

リオ

項目名

内容詳細

想定される

財務的影響

1.5℃

炭素税導入

炭素税導入による配送料の増加

炭素税導入によるエネルギー使用料の増加

炭素税導入による原材料の高騰

低炭素製品化への要請対応

再生可能エネルギー調達によるエネルギー使用料の増加

環境へ配慮した取組による配送料の増加

信頼性の低下

環境目標未達時の信頼性の低下

省エネ規制の強化

省エネ規制の強化による設備投資

再生可能エネルギー拡充のための設備投資

4℃

異常気象の

激甚化

浸水による製品の輸送中断

浸水による委託先・自社拠点の一時操業停止

浸水による不良在庫化

気温上昇に伴う空調コストの増加

保険料・BCP

コストの増加

風水害による火災保険料の増加

海面上昇

海面上昇による対策費増加

 

(注) 想定される財務的影響 大:10億円以上、中:1億円以上10億円未満、小:1億円未満、

-:重要度が高いと判断されたリスク・機会に該当しないため定量化未実施

● 気候変動に係る機会(1.5℃シナリオ / 4℃シナリオ)

シナ

リオ

項目名

内容詳細

想定される

財務的影響

1.5℃

再生可能エネルギーの拡大

再生可能エネルギー導入での排出量削減に伴う炭素税の減少

投資家の

評判変化

気候変動への取組により評価が向上し企業価値創出に寄与

4℃

原料調達

気温上昇に影響を受けない製品の安定供給

気象パターンの変化

気温上昇に伴う特定の疾病リスクや感染症増加による医薬品需要の増加

 

(注) 想定される財務的影響 大:10億円以上、中:1億円以上10億円未満、小:1億円未満、

-:重要度が高いと判断されたリスク・機会に該当しないため定量化未実施

上記の気候変動に関するリスク・機会が当社事業に及ぼすと想定される財務的影響について、大(10億円以上)と評価されたリスク・機会は現在ありませんが、中(1億円以上10億円未満)または小(1億円未満)と判断したリスク項目については、以下の取り組みを中心に進めています。

・ 物流拠点の集約と物流業務の効率化

現在、当社は医薬品の物流業務について外部委託を実施しており医薬品卸向け配送までの物流業務全般を全面委託しています。この取り組みを継続することにより物流コストの低減を図るとともに、輸送の効率化に伴うエネルギー使用量低減に努めています。

・ エコドライブへの取り組み

ハイブリッド車をはじめとした低燃費車の導入と継続的な車種検討を行うとともに、エコドライブ推進施策として社員啓発並びに教育を実施しています。

・ 再生可能エネルギーの導入

本社ビルで使用する電力を再生可能エネルギーに変更することでGHG排出量の低減に努めています。

 

なお、スギ花粉を原料とするシダキュアの安定供給に関するリスク・機会について現時点では特定されていませんが、気温上昇がスギ花粉症患者数の増減やスギの生育へ影響を及ぼす可能性も否定できないこと等から、継続的な状況把握や分析を進めています。

③ リスク管理

サステナビリティ委員会の下部組織であるTCFDに関するワーキンググループがリスクマネジメントに関するワーキンググループと連携して定期的にリスク・機会について見直し、議論・検討を行い、サステナビリティ委員会に報告することを予定しています。

④ 指標と目標

指標としては、scope1、scope2のGHG排出量を設定し、日本政府の定めた「2050年カーボンニュートラル宣言」に呼応した日本製薬団体連合会による「2050年CO2排出量ネットゼロ」を長期目標とし、2030年度には2013年度比でCO2排出量50%削減を目標として設定しています。

また、環境基本方針に基づき、経営会議の審議を経て環境行動計画を策定し、環境負荷の低減に向けた活動を推進しています。環境行動計画においては、CO2排出量の削減に加えて、廃棄物再資源化率の維持・向上の2つの項目について数値目標を掲げ、その達成に向けて取り組んでいます。2024年度の環境行動実績及び2025年度の環境行動計画は以下のとおりです。

項目

 

2024年度環境行動計画

2024年度実績

評価

2025年度環境行動計画

温室効果ガス排出量の削減

本社

2024年度目標:344t-CO2以下

 

 

 

主な施策

・省エネ推進機器、照明等の利用法の見直し

・環境保全に対する社員への意識付け

・再生可能エネルギーへの変更検討継続

2024年度実績:335t-CO2

 

 

 

実施施策

・省エネ推進機器、照明等の利用法の見直し

・環境保全に対する社員への意識付け(eラーニングの実施)

・再生可能エネルギーへの変更検討継続

達成

2025年度目標:348t-CO2以下

(実質のCO2排出量目標は116t-CO2以下)

 

主な施策

・省エネ機器への変更

・再生可能エネルギー導入(2025年5月から100%導入)

・電休日の設定

営業車

2024年度目標:1,000t-CO2以下

 

主な施策

・ハイブリッド車をはじめとした低燃費車の選定継続

・エコドライブ推進の啓発/教育の継続

・テレマティクス装着における急発進/急ブレーキ等抑制による燃費削減継続

2024年度実績:882t-CO2

 

 

実施施策

・ハイブリッド車をはじめとした低燃費車を導入

・エコドライブ推進の啓発/教育の継続

・テレマティクス装着における急発進/急ブレーキ等の抑制による燃費削減

達成

2025年度目標:882t-CO2以下

 

 

主な施策

・ハイブリッド車をはじめとした低燃費車の選定継続

・エコドライブ推進の啓発/教育の継続

・テレマティクス装着における急発進/急ブレーキ等の抑制による燃費削減継続

 

 

 

その他の実績(廃棄物資源化率)

項目

 

2024年度環境行動計画

2024年度実績

評価

2025年度環境行動計画

廃棄物再資源化率の維持・向上

本社

2024年度目標:98%以上

 

主な施策

・再資源化率の高い産業廃棄物処理業者への処理委託及び処理業者のモニタリングの継続

・ペーパーレスの取組強化

・紙書類のリサイクル強化

2024年度実績:99.5%

 

実施施策

・再資源化率の高い産業廃棄物処理業者への処理委託及び処理業者のモニタリングの継続

・ペーパーレスの取組強化

・機密文書処理方法の見直し

達成

2025年度目標:98%以上

 

主な施策

・産業廃棄物処理業者のモニタリングの継続

・ペーパーレスの取組強化

・紙書類のリサイクル強化

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の業績は、今後起こりうる様々な要因により影響を受ける可能性があります。当社の業績に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとしては、以下のようなものが考えられます。

なお、本項目における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月27日)現在において、当社が判断したものです。

 

(1) 医療用医薬品に関する法規制、薬事行政の動向に関するリスク

医療用医薬品は、開発・製造・販売等において医薬品医療機器法等関連法規の規制を受けており、規制が強化された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の医療制度改正、後発品使用の促進及び薬価基準の改定等の行政施策の動向によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、各種規制、医療制度、行政制度に関する最新の情報を収集するとともに、各種規制等に対して適切に対応を行っております。

 

(2) 研究開発に関するリスク

新薬の研究開発は、長期に亘りかつ多額な費用の投入を必要としますが、上市までの過程で、遅れや変更が生じる可能性や、断念しなければならない可能性があります。さらには、製造販売承認申請を行っても承認されない可能性もあります。このような場合には、将来の成長性・収益性が低下することとなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、開発ステージ移行時期において各種会議体を通じて研究開発の継続を確認し、適切にポートフォリオの管理を行うことにより、様々な不確実性への対応を行っております。

 

(3) 副作用に関するリスク

医薬品には副作用発現の可能性があります。重篤な副作用が発現した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、製商品に関する副作用などの安全性に関する情報を収集し、集積された安全性情報を評価・分析し、その結果から適正使用情報の追加が必要な場合は、RMP(医薬品リスク管理計画)や添付文書を改訂し、医薬品の情報を更新するとともに、医療関係者に情報提供することにより、製商品の安全性の確保や適正使用の推進を行います。

 

(4) 製商品の供給停止、回収に関するリスク

当社の販売する製商品は、国内又は海外における特定の製造元で生産しております。また、特定の製造元等から調達している原材料、スギ花粉等の天然由来の原材料から生産している製商品もあります。このため、技術上もしくは規制上の問題、又は火災、地震その他の災害等により、これらの製造元が閉鎖又は操業停止となった場合、あるいは、気候変動等の理由により原材料や光熱等の調達に支障が生じ生産の継続が困難となった場合、及び、物流機能等が停滞した場合には、製商品の供給が停止し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の製商品に関し、品質上の問題等が発生した場合、国又は地方自治体からの命令に基づき、あるいは当社が自主的に判断し、回収を行う場合があります。この場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、災害に対する事業継続計画(BCP)を定めることにより製商品の安定供給を確保する体制を整備し、原薬や原材料を複数社から調達可能にするなどの取り組みを進めるとともに、大規模災害の発生などを想定し、東日本・西日本の2拠点に物流センターを置き、一方が被災した場合に備えた体制を敷いております。また、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)に基づいた品質管理体制の下、工程ごとに品質を確認しながら製商品の製造を行うとともに、製商品の製造元を定期的に訪問し、製造管理及び品質管理の状況を確認しています。なお、製商品の回収が必要となる品質不良が発生した場合には、患者様の安全確保を最優先とし、総括製造販売責任者の指示の下、行政当局への報告、医療機関などへの情報提供及び当該製商品の回収を迅速に行うとともに、原因究明と改善措置を行い、供給スケジュールの見直しや代替品の情報提供などを行います。

 

(5) 製商品を取り巻く環境に関するリスク

当社が販売する製商品に関して、競合品や後発品の上市、新規治療法や新技術の登場等により、製商品を取り巻く環境が変化した場合、製商品に関する売上減少により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、競合状況や薬価制度等の情報をもとに製品ポートフォリオの見直しを図るとともに、製商品の効能追加、剤形等の開発に取り組むことにより影響の低減を図っております。

 

(6) 他社との提携関係に関するリスク

当社は、研究開発、製造、販売等において、他社と様々な形で業務提携を行っております。何らかの事情により提携関係が変更又は解消された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、業務提携に関する契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、リスクを低減する契約の締結に努めております。また、当社は提携先との連携を密にとり、提携におけるリスクの把握と管理を行っております。

 

(7) 親会社との提携関係に関するリスク

当社は、親会社であるJTとの業務提携により、医療用医薬品事業における新薬の研究開発機能をJTへ集中化し、製造、販売機能は当社が担っております。また、JTと連携して新規導入品の探索及び共同開発も実施しております。何らかの事情により提携関係が変更又は解消された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、JTとの新規導入品の探索、共同開発等を通じて、提携関係の維持・発展に努めております。

また、親会社との提携関係に変更等が生じる場合には、必要に応じて外部の有識者から見解を入手したうえ、親会社と利害関係を有しない社外取締役に意見を求める等の措置を講じます。

 

(8) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

当社は、各種ITシステムを利用しているため、システムの障害やコンピューターウイルス等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有しており、予期せぬ事態によりその情報が社外に流出した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、ITセキュリティ及び情報管理に関する社内規則・マニュアル等の制定及び継続的な見直しを行うとともに、社内教育を継続的に実施することにより適切な管理、運用を行っております。

 

(9) 訴訟に関するリスク

当社は、事業活動を継続して行っていく過程において、製造物責任(PL)、副作用の発現、特許侵害等に関わる訴訟を提起される可能性があります。これにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、弁護士等の専門家と連携、協議のうえで適切な対応を講じます。

 

(10) コンプライアンスに関するリスク

当社は、事業活動を行うにあたって、労務関連、独占禁止法、製造物責任等の様々な法令等の規制の適用を受けております。重大な法令等の違反が発生した場合、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、コンプライアンスの推進を、企業理念実現のための重要な経営課題の一つと位置づけ、取締役、グループリーダーで構成するコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス推進事項の審議等を行うほか、コンプライアンス推進部による、社員に対するコンプライアンスアンケートの実施、コンプライアンス研修、勉強会等を行い、コンプライアンスの徹底を図っています。また、社内通報・社外通報窓口(弁護士)を設置し、法令違反等の事実を早期認識し、違法行為等による当社のリスクの極小化に努めております。

 

(11) 感染症に関するリスク

当社は、感染症の大流行等により、製商品の供給停止や医療関係者への情報提供に支障をきたす等、事業活動に様々な影響を及ぼす可能性があります。

当社は、感染症に対する事業継続計画を定めることにより、従業員の安全確保、製商品の安定供給の確保、事前に選定した重要業務(医療関係者への情報提供等を含む)を遂行するための体制を整備する等、必要な対応を行っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、本項目における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月27日)現在において、当社が判断したものです。

 

(1) 経営成績

当事業年度の医薬品業界を取り巻く事業環境は、研究開発の高度化・難化による投資リスクが増大する中で、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクの高まりに伴う資源・原材料価格の高騰、円安進行に伴う物価上昇に加え、医療費抑制策としての薬価制度の改革(毎年薬価改定等)、後発品の使用促進の影響等により大変厳しいものとなりました。

このような状況の下、当社では、「中期経営計画2024-2026」※を策定し、中長期事業ビジョン「VISION2030」の実現に向けて、成長戦略の各施策とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでまいりました。

※「中期経営計画2024-2026」2024年度の進捗状況につきましては、「1 [経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]」に記載しております。

 

当事業年度の経営成績につきましては、以下のとおりです。

 

前事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

(百万円)

当事業年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

(百万円)

増減額
(百万円)

増減率
(%)

売上高

54,638

60,426

5,788

10.6

営業利益

5,035

6,798

1,762

35.0

 

研究開発費控除前営業利益

8,526

9,622

1,096

12.9

経常利益

5,307

6,926

1,618

30.5

当期純利益

4,119

5,042

922

22.4

 

(注)中期経営計画の利益面の計数指標としては、将来の導入品獲得に向けて、当面は研究開発投資を積極的に実施することから、
研究開発費控除前営業利益を設定しております。

 

 

 

(売上高)

売上高は、皮膚疾患領域及びアレルゲン領域における販売数量の伸長等により、60,426百万円と前事業年度に比べ5,788百万円(10.6%)増加しました。

各フランチャイズ領域における主要な製品・商品の販売状況につきましては、以下のとおりです。

・腎・透析領域におきましては、「リオナ錠(高リン血症治療剤、鉄欠乏性貧血治療剤)」が8,151百万円と前事業年度に比べ636百万円(8.5%)増加しましたが、「レミッチ(透析患者における経口そう痒症改善剤)」は長期収載品の選定療養制度導入の影響を含む後発品及び競合品の影響に加えて薬価改定もあり1,396百万円と前事業年度に比べ1,329百万円(48.8%)減少しました。

・皮膚疾患領域におきましては、「コレクチム軟膏(外用JAK阻害剤)」は小児向け処方を含む販売数量の伸長により8,846百万円と前事業年度に比べ1,395百万円(18.7%)増加し、「アンテベート(外用副腎皮質ホルモン剤)」は5,381百万円と前事業年度に比べ848百万円(18.7%)増加しました。なお、アトピー性皮膚炎(12歳以上)及び尋常性乾癬を適応症として、JTが2024年6月に日本国内における製造販売承認を取得し、2024年8月に薬価基準に収載されました「ブイタマークリーム(アトピー性皮膚炎治療剤、尋常性乾癬治療剤)」につきまして、2024年10月に販売を開始しました。

・アレルゲン領域におきましては、「シダキュア スギ花粉舌下錠(アレルゲン免疫療法薬)」は12,812百万円と前事業年度に比べ1,456百万円(12.8%)増加し、「ミティキュア ダニ舌下錠(アレルゲン免疫療法薬)」は11,241百万円と前事業年度に比べ1,092百万円(10.8%)増加しました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

費用面におきましては、売上原価は販売数量が伸長したほか、為替影響及び仕入単価の上昇等により33,719百万円と前事業年度に比べ3,872百万円13.0%)増加しました。販売費及び一般管理費は、ライセンス契約一時金を研究開発費に計上していた前事業年度との比較となることから研究開発費が減少したものの、売上連動経費及び新製品販売開始に伴う販売促進費等が増加したことにより19,908百万円と前事業年度に比べ152百万円(0.8%)増加しました。

 

(営業利益、経常利益、当期純利益)

以上の結果、営業利益は、6,798百万円と前事業年度に比べ1,762百万円(35.0%)増加しました。経常利益は、営業外費用の投資事業組合運用損が増加したものの、営業利益が増加したことにより、6,926百万円と前事業年度に比べ1,618百万円(30.5%)増加しました。当期純利益は前事業年度に政策保有株式の縮減に伴い特別利益に投資有価証券売却益を計上していましたが、経常利益が増加したことにより、5,042百万円と前事業年度に比べ922百万円(22.4%)増加しました。

なお、研究開発費控除前営業利益は9,622百万円と前事業年度に比べ1,096百万円(12.9%)増加しました。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

生産実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

35,715

121.4

合計

35,715

121.4

 

(注) 金額は正味販売価格換算によっております。

 

② 商品の仕入実績

商品の仕入実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

17,831

124.4

合計

17,831

124.4

 

(注) 金額は実際仕入価格によっております。

 

③ 受注実績

該当事項はありません。

 

④ 販売実績

販売実績は次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

60,426

110.6

合計

60,426

110.6

 

(注) 1.医薬品事業の販売実績には不動産賃貸収入209百万円が含まれております。

2.主な相手先別販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

前事業年度
(自 2023年1月1日
 至 2023年12月31日)

当事業年度
(自 2024年1月1日
 至 2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱メディセオ

12,425

22.7

13,804

22.8

㈱スズケン

11,615

21.3

13,269

22.0

アルフレッサ㈱

12,138

22.2

13,262

21.9

東邦薬品㈱

6,626

12.1

7,065

11.7

 

 

 

(3) 財政状態

当事業年度末の総資産は、140,664百万円と前事業年度末に比べ7,231百万円(5.4%)増加しました。流動資産につきましては、現金及び預金が1,684百万円減少しましたが、商品及び製品が3,822百万円、売掛金が2,572百万円、有価証券が980百万円増加したこと等により94,640百万円と前事業年度末に比べ6,492百万円(7.4%)増加しました。固定資産につきましては、投資有価証券が772百万円、長期前払費用が641百万円減少しましたが、投資その他の資産のその他に含まれるその他投資等が1,815百万円増加したこと等により46,023百万円と前事業年度末に比べ738百万円(1.6%)増加しました。

負債につきましては、19,130百万円と前事業年度末に比べ5,831百万円(43.9%)増加しました。これは、買掛金が3,467百万円、未払金が2,347百万円増加したこと等によるものです。

純資産につきましては、121,533百万円と前事業年度末に比べ1,399百万円(1.2%)増加しました。これは、剰余金の配当が3,654百万円、当期純利益が5,042百万円となったこと等によるものです。

 

(4) キャッシュ・フロー

当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、30,805百万円と前事業年度末に比べ3,876百万円(11.2%)減少しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益が6,725百万円、減価償却費が408百万円、仕入債務の増加額が3,467百万円、利息及び配当金の受取額が540百万円となり、棚卸資産の増加額が3,475百万円、売上債権の増加額が2,565百万円、法人税等の支払額が1,695百万円となったこと等により3,639百万円の収入となりました。(前事業年度は3,123百万円の支出)

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却及び償還による収入が17,000百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入が12,500百万円となりましたが、投資有価証券の取得による支出が21,065百万円、有価証券の取得による支出が10,007百万円、その他が1,817百万円となったこと等により3,571百万円の支出となりました。(前事業年度は3,779百万円の支出)

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払額が3,654百万円となったことにより3,944百万円の支出となりました。(前事業年度は3,835百万円の支出)

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性

当社の主な資金需要につきましては、製品製造に使用される原材料の調達、商品の仕入れ、営業活動で使用される財・サービス等の運転資金のほか、設備投資、持続的成長の実現に向けた新規導入品の獲得、JTとの共同開発等の戦略的投資、配当金の支払であり、これらの必要資金は自己資金で賄っております。また、資金の流動性につきましては、運転資金、一定の戦略的投資に備えられる現預金等の流動性資産を確保しております。

なお、有価証券報告書提出日(2025年3月27日)現在における重要な資本的支出の予定はありません。

 

(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因を考慮して見積りを行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。詳細については、「第5 [経理の状況] 1 [財務諸表等] (1) [財務諸表] [注記事項] (重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

対価の支払

日本たばこ産業株式会社

日本

研究開発及び販売に関する基本契約

2018年6月~

期限の定めなし

東レ株式会社

日本

経口そう痒症改善剤「レミッチカプセル」の血液透析患者におけるそう痒症を対象とする日本国内における共同開発及び販売権に関する契約

2005年3月~特許満了日
以後別途協議

契約一時金他

日本たばこ産業株式会社

Keryx

Biopharmaceuticals, Inc.

米国

高リン血症治療剤「リオナ錠」の日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約

2007年9月~特許満了日
以後別途協議

契約一時金他

日本たばこ産業株式会社

日本

ALK-Abello A/S

デンマーク

室内塵ダニアレルギー疾患を対象としたアレルゲン免疫療法薬等の日本国内における独占的開発・販売権に関する契約

2011年1月~
期限の定めなし

契約一時金他

日本たばこ産業株式会社

日本

JAK阻害剤「コレクチム軟膏」の皮膚外用製剤について、日本国内における今後の共同開発及び販売に関する契約

2016年10月~15年間又は
特許満了日のいずれか長
い期間
以後1年毎更新

契約一時金他

BioCryst

Pharmaceuticals, Inc.

米国

血漿カリクレイン阻害剤「オラデオカプセル」について、日本国内における独占的販売権に関するライセンス契約の一部変更契約

2023年11月~発売から10
年間又は特許満了日のい
ずれか長い期間

一定料率のロイヤリティ

日本たばこ産業株式会社

日本

アトピー性皮膚炎治療剤、尋常性乾癬治療剤「ブイタマークリーム」について、日本国内における共同開発及び販売に関する契約

2020年1月~15年間又は特許満了日のいずれか長い期間
以後1年毎更新

契約一時金

Verrica

Pharmaceuticals Inc.

米国

皮膚疾患治療薬「TO-208」について、伝染性軟属腫及び尋常性疣贅を対象とした日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約(上記治療薬の国際共同治験に要する費用の負担及び支払方法に関する同修正契約を含む)

2021年3月~発売から10年間又は特許満了日のいずれか長い期間

契約一時金他

Nogra Pharma Limited

アイルランド

尋常性ざ瘡治療薬「TO-210」について、尋常性ざ瘡を対象とした日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約

2023年1月~発売から12年間又は特許満了日のいずれか長い期間

契約一時金他

ALK-Abello A/S

デンマーク

イネ科花粉を原因抗原とする花粉症を対象としたアレルゲン免疫療法薬の日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約

2023年12月~
期限の定めなし

開発マイルストーン他

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、親会社であるJTと医薬事業の研究開発に係る機能分担を行っており、新規化合物の研究開発機能はJTに集中しております。また、当社は、JTと連携して新規導入品の探索及び開発も実施しております。

当事業年度の研究開発費の総額は2,824百万円です。

 

なお、研究(共同)開発・導入活動の主な進捗及び成果につきましては、以下のとおりです。

(皮膚疾患領域)

尋常性ざ瘡治療薬「TO-210」(Nogra Pharma Limited 開発番号:NAC-GED-0507)

・ Nogra Pharma Limitedと日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結した「TO-210」につきまして、2024年4月、尋常性ざ瘡を適応症とした日本国内における第Ⅰ相臨床試験を開始しております。

 

アトピー性皮膚炎治療剤、尋常性乾癬治療剤「ブイタマークリーム」
(一般名:タピナロフ、開発番号:JTE-061)

・ JTと日本国内における共同開発及び販売に関する契約を締結した芳香族炭化水素受容体(AhR)調節薬「タピナロフクリーム」につきまして、2024年5月、日本国内で実施中の小児アトピー性皮膚炎患者(2歳以上12歳未満)を対象とした第Ⅲ相臨床試験(比較試験)の速報結果を得ました。得られた速報結果では、有効性の主要評価項目について基剤に対する「タピナロフクリーム」の優越性が確認されました。また、安全性について確認し、忍容性に関して特に大きな問題は認められませんでした。今後、本試験の成績等をもとに、日本国内における製造販売承認申請を目指します。

 

皮膚疾患治療薬「TO-208」(Verrica Pharmaceuticals Inc. 開発番号:VP-102)

・ Verrica Pharmaceuticals Inc.と日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結した「TO-208」につきまして、2024年12月、伝染性軟属腫を適応症として、日本国内における製造販売承認申請を実施しております。