文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、取り巻く環境の変化に適切に対応しながら経営を進めるため、当社グループの存在意義を改めて定義し、揺るがない経営の志とするために、2022年に当社グループパーパス「人と創造力をつなぐ。」を制定しております。
当社グループは、100年にわたり、筆記具を作り、販売することで、創造力の一端である「書く」を通じ、世界中の人々が思索し、記し、描き、伝え、残すことを支えてきました。これからも、「人と創造力をつなぐ。」のもと、「書く」だけでなく、「書く」以外の領域でも、製品、モノづくりだけにとどまらない、サービスや体験、コトづくり等の提供や新たな価値の創造に取り組んでまいります。
〈パイロットグループ パーパス〉

当社グループを取り巻く経営環境は、世界的なデジタル化の進展に伴い、消費者の購買チャネルが多様化する等、急激な変化に直面しております。さらに、世界的な紛争や自然災害の発生、材料費の高騰に伴う生産および物流のリスク等、サプライチェーンにおけるさまざまなリスクへの対策や社会的課題の解決も重要なテーマとして位置づけられており、これらの課題に対しての解決も求められております。このような経営環境の変化の中で当社グループを持続的に成長させるため、パーパスのもとで将来達成されるべき姿からバックキャストして2030年ビジョンを定め、この2030年ビジョンを実現するための中期経営計画を、創業の精神であり行動指針である社是を通じて実行しております。
当社グループは、パーパス「人と創造力をつなぐ。」に基づいた将来達成されるべき姿からバックキャストし、2030年ビジョンを「世界中の書く、を支えながら、書く、以外の領域でも人と社会・文化の支えとなる」と定めております。

2030年ビジョンの実現に向けて、2025-2027中期経営計画を策定いたしました。
a.注力する経営課題
2025-2027中期経営計画においては、注力する経営課題を設定しております。

b.注力する経営課題に対する主なアクション

c.財務目標
財務目標は、連結売上高、営業利益率、ROE、総還元性向とし、グローバル筆記具市場No.1を実現するため、毎期4~5%の増収を目指します。営業利益率については、成長投資に伴う減価償却費の増加や材料費の上昇により伸び悩みますが、コストコントロール、資本収益性の改善に取り組んでまいります。

d.資本コストについての認識
株主資本コストは、6.5~7.5%と認識しています。ROEとのスプレッドを拡げるべく、コストコントロール、効率改善等の取組みを進めてまいります。
e.キャッシュアロケーション
営業キャッシュ・フローと一部、手元資金を原資とし、設備投資・システム投資を実施いたします。経営効率の改善に取り組みつつ、株主還元を強化いたします。

当社グループは、2030年ビジョンの実現に向けて、筆記具事業のグローバルマーケットでの伸長が最優先の課題と認識しております。また、非筆記具事業の体制強化、筆記具事業の伸長、非筆記具事業の創出を遂行するためにアライアンスパートナーの開拓を進めること、持続可能なグループ経営の推進が重要な課題と認識しております。
また、バランスシートに関して、2010年代と比して現金及び預金は高水準に、棚卸資産は回転期間が長くなっていると認識しております。人財確保のための労務費の上昇、高水準が続く設備投資、海外市場での低調な消費需要等の厳しい収益環境は当面継続する見込みであることから、販管費率の抑制、キャッシュの適正ポジジョンへの調整、在庫水準の削減を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社グループは、主力事業である筆記具の展開自体が教育や文化を通じて社会貢献につながっていると考え、この事業のグローバル展開を強化することが事業を通じた社会課題の貢献であると認識しております。そのうえで、さらに現在の社会や環境の変化に伴い、事業活動を通じて、グローバルな視点から様々なサステナビリティの課題解決に取り組む事が重要であると認識しております。なお、当社グループは、パーパス「人と創造力をつなぐ。」の基、パイロットグループ及び社会のサステナビリティに資する取組みを進めていくための「パイロットグループサステナビリティ方針」を2025年1月に定めました。
・パイロットグループサステナビリティ方針
「私たちは「人と創造力をつなぐ。」というパーパスの基に、事業活動を通じて、人が人らしく生活し、創造力を発揮できる環境を創るとともに、社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献します。」
当社は、担当執行役員のリーダーシップのもと、気候変動を含む環境への取組み等、サステナビリティに係る各取組みを推進しております。取締役会では、サステナビリティに係る各取組みに関して、担当執行役員あるいは各部門から報告がなされ、サステナビリティに配慮した事業活動の進捗状況に対する監督が適切になされる体制を整備しております。

② リスク管理
当社は、「経営リスク管理規程」及びこれに付帯して定めた細則やマニュアルに従い、組織横断的なリスク状況の監視を行い、経営上の重要事項に係るリスクに対応いたします。
また、必要に応じて関連する細則やマニュアル等の社内ルールの見直しを行い、社員に周知して危機管理の徹底とモラルの向上が実践できる体制の構築・整備に務めております。今後も継続して、サステナビリティ全般の取組みを推進してまいります。
当社グループの持続的な成長と、環境・社会問題の解決に貢献するために、当社グループは「気候変動」と「人的資本」をサステナビリティの重要な要素として捉え、以下の取組みを実施してまいります。
(2) 気候変動
当社グループは、事業活動を通じてグローバルな視点から様々な環境課題の解決に取り組むことが重要であると認識し、事業活動のあらゆる面において環境への影響を低減するとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。当社グループは、「気候変動への対応」をサステナビリティ重要課題の一つとして特定し、気候変動対策に取り組んでおり、2023年3月、気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)提言に賛同を表明いたしました。
当社は、各拠点において気候変動を含む環境への取組みを推進しております。気候変動に関わる取組みの進捗状況は、中期経営計画の進捗状況と併せて、取締役会に対して各部門から定期的に報告を行っており、その適切性を審議すること等、取締役会で監督しております。
② 戦略及びリスク管理
a. 気候変動関連リスク・機会の特定、シナリオ分析
気候変動関連リスク・機会は、TCFD提言で示された事例や筆記具業界におけるリスク・機会の情報を収集し、当社にとっての気候変動関連リスク・機会を特定いたしました。特定されたリスク・機会のうち、発生可能性と事業への影響の2軸で重要度を評価いたしました。重要度が高いと評価したリスク・機会は以下のとおりであります。なお、リスク・機会の整理において考慮した時間軸は、短期:0~1年、中期:1~3年、長期:3年以上です。
また、気候変動関連リスク・機会が事業にもたらす影響を考察するために、当社の国内筆記具事業を対象に、シナリオ分析を実施いたしました。分析対象年は当社グループの「2030年ビジョン」と合わせて2030年としております。分析においては、「脱炭素社会シナリオ(産業革命以前に比べて平均気温が1.5℃~2℃上昇)」と「成り行き社会シナリオ(同4℃上昇)」の2つのシナリオを設定いたしました。各シナリオの社会像の設定においては、2030年以降の社会動向に関するメガトレンドレポートやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気温上昇シナリオを参考にいたしました。
シナリオ分析の前提


b. 気候関連リスク・機会への対応策
シナリオ分析を通じて特定された重要度の高い気候関連リスク・機会について、以下のとおり対応策を検討いたしました。対応策を推進・管理し、リスクの低減と事業機会の獲得を実現していきたいと考えております。


③ 指標及び目標
a. 温室効果ガス排出量の削減目標
当社では、2023年2月に気候変動関連の目標として、2030年までの温室効果ガス排出量の削減目標を取締役会の承認を経て新たに策定いたしました。なお、目標の対象範囲は、提出会社としております。
b. 温室効果ガス排出量の実績(スコープ1・2)
当社では、温室効果ガス排出量について、スコープ1・2の算定を行っております。
[エネルギー使用量及びスコープ1・2排出量(2021年~2024年)]
(対象範囲:提出会社)
当社グループは、人的資本をグループの持続的な成長のための重要な要素の1つと考えております。2030年ビジョン「グローバル筆記具市場No.1」「非筆記具事業を第2の柱として成長」「環境・社会・従業員への価値提供」を実現するためには、多様な人財が、伝統や技術を受け継ぎつつ自律性や創造力を伸ばし、自ら学んで活き活きと活躍することが必要不可欠と考えております。2023年に定めた人財戦略に基づき、「自らの創造力を発揮しながらユーザーの創造力も引き出す組織」へと進化できるよう、人的資本に係る施策を実施してまいります。
<パイロットグループ 人財戦略>
・多様な人財の獲得
・世界で活躍できる自律的で創造力に富んだ人財の育成
・従業員エンゲージメントの向上
・心身ともに健康に働ける環境の整備
<パイロットグループ 人財投資額>
2024年実績 266百万円
(注)1 採用費と教育研修費を合わせた金額であります。
2 提出会社及び連結子会社のうちパイロットインキ株式会社、Pilot Corporation of America、Pilot Corporation of Europe S.A.S.、Pilot Pen(Shenzhen)Co.,Ltd.を含めた実績値であります。

② 指標及び目標
a.多様な人財の獲得
当社グループでは、あらゆる面でのグローバル化が進む中でイノベーションを生み出していくため、性別や年齢、国籍等を問わず、多様な人財を確保していくことが重要と考えております。
当社においては、前年に引き続き、パーパスや会社が求める人財像を軸として、人員構成のアンバランス解消と技術・技能継承を重視することを採用基本方針とし、技術・開発系を中心に、売上伸長率や業務改善率等に基づく必要な従業員数をシミュレーションのうえ、計画的に採用を行っているところであります。
<求める人財像>
・自律できる人財 高い規範意識のもと自ら学び自分の考えを大切にして発信できる人財
・挑戦できる人財 変化の兆しを感じ取り変化を恐れず行動できる人財
・協働できる人財 異なる価値観を受入れ尊重し周囲と連携できる人財
(注)2025年2月に内容がより明確になるよう再定義を行いました。
また、2023年に改定した定年再雇用制度では、2024年の定年到達者のうち86.7%の従業員が制度を活用し、引き続き当社で力を発揮しております。新制度においては、モチベーションを下げることなく、今までの経験や能力、技術を発揮できているとの声があります。同じく2023年7月に設けた退職者復職制度では、配偶者の転勤帯同やスキルアップ等の理由で当社を離れることになった従業員に当社で再び力を発揮できる機会を残しており、2024年には実際に制度を活用して復職した従業員が出てまいりました。その他、障害者雇用については法定雇用率を維持しており、他の従業員とともに自らの力を発揮しやすい環境づくりを、双方話し合いのうえで進めているところです。
今後も引き続き多様な人財の獲得に積極的に取り組んでまいります。
(対象範囲:提出会社)
(注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、目標を設定しております。
2 ( )内は、提出会社及び国内連結子会社を含めた実績値であります。
3 厚生労働省の雇用動向調査の定義に基づく数値であります。
4 目標を設定していない指標であります。
b.世界で活躍できる自律的で創造力に富んだ人財の育成
当社グループでは、従業員一人一人の自律性や創造力を伸ばしていくことが、世界の予測困難な変化に柔軟かつ適切に対応しつつ、新たな価値を創造することにつながっていくと考えております。
当社においては、従来から、業務の中で行うOJTだけではなく、入社年数や役職に応じた各種研修や特定の能力向上を目的とした研修を実施しておりますが、2024年には主任研修やDX研修を実施するとともに、グローバルリーダーシップ育成研修のバージョンアップを行いました。主任研修では、正解がないテーマや未経験の状況に対し、自分なりの問いを立てた上で仮説を描き、納得感のある結論・主張に導くための思考法・思考習慣を学ぶプログラムを行い、また、グローバルリーダーシップ育成研修では、アジア新興国で短期間に複数のミッションを遂行する挑戦型体験プログラム、新興国のNGOや社会的企業の組織の一員として現地で社会課題の解決に挑む海外越境プログラムに加えて、駐在員育成のための数ヶ月間の語学留学コースを実施いたしました。いずれも参加者のみならず、参加者からの受講報告を受けて組織全体に良い影響が広がっております。
また、経営幹部候補の育成については、人脈の構築や視野を広げる機会として、他部門での業務を体験する社内留学研修を実施しております。さらに、昨年再構築した役員サクセッションプロセスの運用を開始し、各人の特性分析やメンターとの対話に基づいた成長支援に取り組んでおります。その他、女性を始めとする多様な人財の更なる活躍を推進するため、ダイバーシティ推進室を新設し、アクションプランの検討を進めているところであります。
同時に、従業員の自律性を尊重するため、営業やマーケティング、開発といった専門的分野のみならず、セルフマネジメントやペン習字といった、幅広い分野の通信教育講座を受講できる能力開発ガイドを2024年も設けました。特に、推奨する語学や財務、IT、その他業務に必要な資格取得を目指すコースに対しては、一定の要件を満たした場合に会社が全額費用負担を行うことで、更なる自己啓発を促しております。
今後も従業員の創造力及び自律性の向上に向けた施策を実施してまいります。
(対象範囲:提出会社)
(注)1 従業員満足度調査において、「指標(項目)について満足している」という設問に対して、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した従業員の割合であります。
2 2024年7月1日時点の実績であります。
3 ( )内は、提出会社及び国内連結子会社を含めた実績値であります。
4 ( )内は、提出会社及び連結子会社のうちパイロットインキ株式会社、Pilot Corporation of America、Pilot Corporation of Europe S.A.S.、Pilot Pen(Shenzhen)Co.,Ltd.を含めた実績値であります。ただし、2022年及び2023年の実績値については集計していないため記載を省略しております。
5 2023年から開始した研修であるため、2022年の実績はありません。
6 目標を設定していない指標であります。
7 当事業年度末現在において、目標を検討中の指標であります。
c.従業員エンゲージメントの向上
当社グループでは、従業員のエンゲージメントを高めることが、グループ全体の活性化、ひいては生産性の向上につながると考えております。エンゲージメントの向上には、企業活動の根幹であるパーパスを全従業員と共有することが第一義的な意味を持つことから、経営層と従業員の結節点となる管理職を対象としたワークショップや、パーパスを体現する行動を表彰する表彰制度等を実施しております。
さらに、当社では、2024年から主体的なキャリア形成に向けての支援を開始いたしました。初年には社長から従業員へのメッセージ発信、他部署の仕事内容を明確にした「PILOT お仕事図鑑」の作成と公開、キャリアチャレンジのためのアンケートの実施等を行い、今後はキャリアオーナーシップの考え方がより全ての従業員に浸透していくよう、様々な施策を実施していく予定であります。
一方、人事制度については、報酬の一部である退職給付制度を改定し、2025年1月から確定拠出企業型年金を導入いたしました。対面での投資教育やファイナンシャルプランナーによる個別相談等を実施し、従業員の金融リテラシー向上に努めております。また、評価者マニュアルも改定し、目標設定の方法をメインとしつつ、評価や効果的な面談の方法等も盛り込んだ育成目的の実践的な内容に更新することで、より納得感のある公正な評価制度の運用を目指しております。その他、従業員の希望に基づいた異動や専門職制度の運用、従業員満足度調査等を引き続き実施し、従業員と会社の相互理解や信頼感の醸成を図っているところであります。
今後も、全従業員の仕事に対する誇りややりがい、熱意を高める取組みを推進してまいります。
(対象範囲:提出会社)
(注) 従業員満足度調査において、「指標(項目)について満足(納得)している」という設問に対して、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した従業員の割合であります。
d.心身ともに健康に働ける環境の整備
当社グループでは、従業員に能力を最大限に発揮してもらうためには、誰もが働きやすい環境を整備することが不可欠と考えております。
そのため、当社では、フレックスタイム制や裁量労働制、短時間勤務や在宅勤務といった多様な働き方を整備するとともに、ITツールを活用したコミュニケーションの活性化、年次有給休暇を取得しやすい環境づくり、ハラスメント・メンタルヘルス対策等に取り組んでおります。特に、ハラスメント・メンタルヘルス対策については、従来から実施している新任の管理監督職を対象としたハラスメント研修に加えて、管理監督職全員を対象としたラインケア研修や役職を問わず参加できるセルフケア研修等を、主要な事業所ごとに実施することで、全ての従業員の理解を深めているところであります。
また、健康保険組合とも連携し、ウォーキングキャンペーン等の健康増進施策についても、引き続き実施しております。
加えて、製造現場においては、安全衛生対策に力を入れております。主な製造拠点である平塚工場及び伊勢崎工場では、安全衛生委員会の下部組織として各種委員会を設置し、個別課題の検証を行っております。さらに、暑熱作業対策や5S活動を推進し、整理・整頓・清掃・清潔・しつけを通じて、労働環境の改善と生産効率の向上を図っているところであります。
今後も、健康問題や事故・災害を未然に防ぎつつ、より働きやすい環境の整備を進めてまいります。
(対象範囲:提出会社)
(注)1 従業員満足度調査において、「指標(項目)について満足している」という設問に対して、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した従業員の割合であります。
2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、目標を設定しております。算定期間は、対象年の3月21日から翌年3月20日であります。2024年実績値につきましては、後日、女性活躍推進企業データベースで公表予定であります。
3 ( )内は、提出会社及び国内連結子会社を含めた実績値であります。
4 派遣社員の発生件数を含みます。不休業災害及び通勤災害は含めておりません。
5 研修に参加した延べ人数であります。
6 目標を設定していない指標であります。
当社は、グループの事業に係るリスクを適切かつ一元的に管理することを目的にリスクマネジメント委員会を設置し、優先すべきリスクから対応策を講じることで、グループへのリスクの低減とリスク顕在化時の損失の最小化を図っております。様々な想定をもとに特定したリスクを、顕在化した場合の影響度と発生の可能性により評価を行った結果、有価証券報告書に記載した事業の状況や経理の状況等に関して、連結会社の財政状態や経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると経営者が認識したリスクは以下のとおりであります。
なお、本事項の文中に将来に関する事項が含まれておりますが、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場の変化に関連するリスク
当社グループの主たる事業であるステイショナリー用品事業において、各国及び地域のそれぞれの市場における競合他社との競争激化、大手通販会社や流通による販売の寡占化や再編の要因による販売価格の下落が予想を超えて進行した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社製品群が陳腐化するような著しい成長可能性を持つ製品やサービスが出現した場合、販売の減少により棚卸資産の評価損が計上される可能性があります。
当社グループでは、お客様に喜んでいただけるような付加価値の高い魅力的な製品の開発や販路の整備による「企業価値とブランド力の向上」に取り組んでおり、製品及びサービスの革新を実現するために研究開発投資を継続的に行っております。また、世界の各市場における動向を的確に特定するためマーケティング力を強化し、競争力の更なる向上と市場喚起を図っております。しかしながら、当社グループが市場動向を特定できなかった場合やそれらを把握できなかった場合は売上高の減少及び研究開発投資の空費につながる等、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替相場の変動に関連するリスク
当社グループは全世界で販売活動を展開しており、海外における売上高の割合はおおよそ全体の4分の3程度と非常に高くなっております。一方で、その製造の多くは国内で行われております。連結財務諸表の作成にあたっては、在外連結子会社の外貨建財務諸表を円に換算しているため、為替レートの変動が当該外貨建財務諸表の換算に影響を与え、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、グループ内外の取引において、外貨建の通貨による決済も存在することから、為替相場の変動リスクを負っております。
当社グループでは、各社の決済金額に応じた為替変動リスクのヘッジを行っておりますが、各国通貨に対して想定の範囲を超えて為替相場が変動した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)投資資本に関連するリスク
当社グループは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁、資本的支出及びその他の戦略的出資を行う可能性があります。その際、買収コスト又は統合費用の発生、シナジーが実現できないこと、期待された収益の創出とコスト改善の失敗、主要人員の喪失や債務の引き受けによって、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループが第三者と合弁会社を設立する又は戦略的パートナーシップを構築する場合、パートナーとの戦略の相違又は文化的相違、利害の対立、シナジーが実現できないこと、合弁会社及びパートナーシップ維持のために必要となる追加出資や債務保証、合弁パートナーからの持分買取義務、当社グループが保有する合弁持分の売却義務、もしくはパートナーシップの解消義務、キャッシュ・フローの管理を含む不十分な経営管理、特許技術やノウハウの喪失、減損損失、及び合弁会社の行為又は事業活動から受ける風評被害により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、重要な経営判断を行う際は、取締役会や経営執行会議等で社外取締役や監査等委員の意見を含めて議論を行い、多様な視点や専門知識を取り入れた意思決定をしております。また、経営判断の基準は、経済的な観点や経営の戦略的な目標に基づいて設定され、法令、経営の基本方針、パーパスに則った基準として策定されております。しかしながら、事業環境の急激な変化や想定を超えた事態が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 国際税務に関連するリスク
当社グループはグローバルに事業を展開しており、またグループ内でも相互に取引を行っていることから、その事業の推進には移転価格税制等の国際税務リスクが伴います。
当社グループでは、各国の税法に準拠した適正な納税を行うため、海外現地スタッフ及び国際税務に精通した専門家と連携し、情報を共有することでリスクの低減に努めております。しかしながら、税務当局との見解の相違等により予期せぬ税負担が発生し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 自然災害に関連するリスク
当社グループは、国内及び海外の各地で事業展開しており、大規模地震等予測不能の自然災害により、生産拠点、販売拠点、物流拠点に甚大な被害を受けた場合、製品の生産、販売及び物流サービス等に遅延や停止が生じる可能性があります。対応策としまして、社屋施設の耐震強化や災害備蓄の確保、事業継続計画を整備し、緊急時における体制整備を行っており、また、生産設備につきましては拠点の分散を進めておりますが、被害の程度によっては、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 原材料等調達に関連するリスク
当社グループの製品の主要原材料である金属及び樹脂等の購入価格は、国内及び海外の市況並びに為替相場の変動の影響を受けます。これらに予期せぬ異常な変動が生じた場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、一部の製造機械や原材料の仕入においては、効率的かつ安定的に調達するために特定の取引先に依存する部分があり、国際情勢、サプライチェーン上の大規模な自然災害、事故、又は法令遵守の状況等の影響によってその供給に支障をきたした場合は、当社の生産活動に影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、生産効率の更なる向上等による原価低減を一層進めつつ、重要度が高い原材料は複数社を調達先に設定することで供給の安定度を向上させております。調達先とは原材料調達の安定性に関する状況確認を定期的に行いつつ、調達方針同意書を取り交すことで相互の社会的な責務の履行に取り組んでおります。しかしながら、原材料供給の源流付近における自然災害や戦争、暴動等、サプライチェーンに対する被害が甚大な場合は、原材料供給の断絶又は大幅な遅延によって当社の生産活動も大きく阻害され、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事業展開に関連するリスク
当社グループは、日本、米州、欧州、アジア等、190以上の国と地域で事業展開しており、主要販売国である日本、米国、欧州主要国、中国及びその他の国と地域の政治・経済環境の変動、環境規制をはじめとした各国特有の法的規制、戦争・暴動・テロ等による社会の混乱、感染症の流行等予測不能な事態による事業活動の制約が発生した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループでは、販路を多様化することでリスクの分散と事業の安定性向上に努めております。法規制、環境規制等については、情報の早期収集と共有により迅速な対応策の策定を図り、また、海外の政治・紛争・災害等によるリスクについては、海外現地スタッフ等との連携によりリスク予測を行っております。なお、戦争・暴動・テロ等の緊急事態の発生を認識したとき又は発生する蓋然性が相当程度高いと判断したときは適切かつ迅速な対応にて経営への影響を最低限に抑えることに努めておりますが、想定を超える事態が突然発生した場合は、当該エリアの事業活動に支障をきたし、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)情報システムに関連するリスク
当社グループの事業展開においては各拠点間のコンピューターシステムを結ぶ通信ネットワークに依存しております。従って、予測不能な災害等の事由によりネットワークの機能が停止した場合、生産及び販売活動に多大な影響が出ることが予想されます。
当社グループでは、データの遠隔地バックアップや冗長化によりデータの損失や中断を防ぐ、セキュリティリスクを最小限に抑えるための基盤を整えております。サイバー攻撃に対しては適切なツールの導入により、攻撃の監視や検知、迅速な対応が可能となっております。関連する規程類は最新のセキュリティ基準に合わせて更新されておりますが、合わせて社内教育を定期的に実施し、従業員のセキュリティ意識を高めております。しかしながら、悪意を持って外部から不正な手段によりコンピューターシステム内に侵入され、ホームページの改ざんや個人情報等重要なデータの詐取、破壊がなされた場合、あるいはランサムウェアへの感染等により当社の情報システムに大規模な障害が発生した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼし、また、タイミングによっては決算開示の遅延等につながる可能性があります。
(9) 人財の確保や育成及び退職に関するリスク
日本国内では恒常的な人手不足が問題となっており、人財の流動化は今後も進んで行くものと考えられますが、一方で雇用の長期化と当社における従業員の高齢化という側面もあり、当面の間は見込みを超えた従業員数の増減があることも想定しております。これらの情勢を総合し、当社においては「今後も求人難が続き、退職者が増加する」ことを前提に、新卒者の採用はもちろん、不足している世代や機能を補完することを目的としたキャリア採用を積極的に行っております。当社グループにおいては、人財は成長の源泉であると捉えております。当社では、自らの挑戦を促す制度づくりや働きやすい環境の整備に取り組むことで着実な人財確保を目指しており、従業員一人ひとりが、自身が思い描いたキャリアで、より高いパフォーマンスを発揮していけるように、自律的な成長の機会の提供と育成支援を行っております。しかしながら、計画通りに人財を確保・育成ができなかった場合は事業戦略の達成が阻害され、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 製品の品質管理及び製造物責任に関連するリスク
当社グループは、企業理念を実践する活動の一環として製品の企画からアフターサービスに至る全ての活動の質を高めるため、品質方針を定めております。また、製品の企画・生産にあたっては当社独自の品質管理基準の設定により品質の維持向上に努め、上市後の品質に係る問題や製品の欠陥発生リスクの低減を図っております。しかしながら、製品の品質や安全性に関するリスクが、製造業には常に課題として残っております。また、製品については販売先の国や地域の法律や規制に基づいて適正に製造、販売しておりますが、急速な環境の変化や法制の変更に対応できない場合は製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があり、その結果、当社グループの評判に影響を及ぼし、製品回収やアフターサービス等の費用が発生する可能性があります。同時に、当社グループの既存の製品及びサービスについて、顧客満足を維持できない可能性や、需要の減少、競争力の低下、あるいは陳腐化を招き、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 知的財産権の保護及び訴訟に関連するリスク
当社グループは、製品開発に伴って多くの知的財産権を取得し、重要な経営資源の1つとして保有するとともに、その知的財産権を他社にライセンス供与する場合もあり、これらの知的財産権の維持・保護については最善の努力で臨んでおります。製品の企画や販促物等の作成に際しては知的財産の調査を徹底し、承認していくフローを組み込んでおり、知的財産権に関する問題を発生させる可能性の低減に努めております。他社による知的財産権の侵害についてはグループスタッフによる市場監視により問題を早期に発見し、知的財産部が中心となり適切な措置をとることで損失の最小化に努めております。しかしながら、当社グループの知的財産権を他社が無断使用すること等に起因して提訴に至った場合、あるいは、当社グループが競合他社等から知的財産権を侵害したとして提訴された場合は、当社グループの業績と財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 環境規制に関連するリスク
当社グループは、国内及び海外におけるエネルギー、温室効果ガス、大気、水、土壌汚染、有害化学物質、製品、電池、容器包装材のリサイクル、廃棄物等様々な環境に関する法令及び規制等の適用を受けております。今後、気候変動抑制のため、世界的規模でのエネルギー使用量の大幅な削減や地球温暖化対策が求められた場合、これら規制の強化に伴う新たな税負担、事業活動における諸資材・燃料の変更、設備の変更等の対応費用が増加する可能性があります。また、消費者の環境に関する意識が高まり、当社製品が消費者の購買志向に合致しなくなった場合は販売計画に乖離が生じ、売上及び利益計画に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは「パイロットグループ環境方針」に基づき、法規制への対応、環境に配慮した製品作り、環境負荷の軽減等、様々な活動を行っております。漸増する国内外の環境に関連する法規制への適合と、それに付随して高まる費用については、各地域のスタッフやサプライヤー等と連携し、情報収集と対応の早期化を図っております。また、環境配慮製品については今後も各市場や消費者のニーズを的確に把握し、環境課題解決に貢献できる製品の開発を継続してまいります。しかしながら、規制強化への対応に関する費用が莫大であった場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)コンプライアンスに関連するリスク
当社グループは国内及び海外の各地で事業展開しているため、様々な関連する法令や規制の適用を受けております。当社グループは、法規制を遵守し社会倫理に基づいた企業活動を実現するためにコンプライアンス体制を構築しており、その遵守に努めております。内部統制基本方針に基づく「コンプライアンス基本規程」等各種規程を整備し、法規制に従った活動の推進については定期的な社員教育や啓発活動によって法令遵守の徹底を図っておりますが、今後国内外において法令違反等や不適切な行為・不作為が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼし、ブランドイメージの毀損に繋がる可能性があります。
(14) 固定資産に関連するリスク
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。経営環境の著しい悪化等により、固定資産の収益性が低下した場合は減損損失を認識する必要が生じ、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(経営成績等の状況の概要)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度(2024年1月1日~2024年12月31日)における経済環境は、国内においては物価高を背景に個人消費に足踏みも見られましたが、所得環境の改善に支えられ、景気は緩やかに回復しております。海外においては、長期化するウクライナ情勢に加え、欧米における物価高の継続や長引く中国経済の低迷に伴う影響等により、世界経済の先行きは依然不透明な状況が続いております。
このような環境の下、当社グループにおきましては、国内では、筆記具市場は堅調に推移しました。海外では、前期より引き続き、一部の主要マーケットの需要は低調に推移しました。また、『2030年ビジョン』に向けて持続的な成長を実現するために、未来に向けた投資を拡大していることから、労務費や減価償却費等の費用は増加しました。
この結果、当期間の連結売上高は1,261億68百万円(前期比106.4%)となりました。国内外別では、国内市場における連結売上高は303億12百万円(前期比104.8%)、海外市場における連結売上高は958億55百万円(前期比106.9%)となりました。中期経営計画に基づく事業別実績では、筆記具事業における連結売上高は1,130億3百万円(前期比106.3%)、非筆記具事業における連結売上高は131億65百万円(前期比106.9%)となりました。
また、損益につきましては連結営業利益が178億5百万円(前期比93.7%)、連結経常利益が201億10百万円(前期比96.5%)、親会社株主に帰属する当期純利益は151億81百万円(前期比111.1%)となりました。
各セグメント別の状況は以下のとおりです。
なお、セグメント利益については、セグメント間取引消去前の金額で記載しております。
また、当連結会計年度より、持分法非適用関連会社であったPilot Pen(Malaysia)Sdn. Bhd.の株式を追加取得したため、同社を新たに連結の範囲に含めております。なお、2024年9月30日をみなし取得日としており、第3四半期連結会計期間においては貸借対照表のみを連結し、当連結会計年度においては同社の2024年10月1日以降の損益計算書を連結しております。
また、当連結会計年度において、インドネシア共和国にPT PILOT PEN SOUTH EAST ASIAを設立したため、同社を新たに連結の範囲に含めております。
(日本セグメント)
ステイショナリー用品事業においては、国内では、高級木軸の「S20(エストゥエンティ)」や「ドクターグリップ クラシック」等のシャープペンシルが好調な販売成果を収め、万年筆「カクノ」は新色「まどろみカラー」を発売したことで、新規ユーザーからの支持を獲得しました。また、蛍光ペンの新製品「KIRE-NA(キレーナ)」は、文字をにじみにくくするペン先の構造等がユーザーから高い評価を得て、大変好調な滑り出しとなりました。加えて前期より当社グループとなった、手帳・ノート類等のデザインステイショナリーの企画・製造を行うマークス社の売上も伸長しました。一方、輸出においては、サウジアラビア等、一部の国において在庫調整が長引き、減収となりました。
玩具事業においては、主力商品である「メルちゃん」シリーズや「おふろのおもちゃ」シリーズが好調に推移し、売上は増加しました。
産業資材・その他事業においては、産業資材事業の主力のセラミックス製品は半導体市況が回復途上にあることから依然として減収となりましたが、その他事業でマークス商品が売上に貢献しました。また、宝飾品事業は取引が拡大し堅調に推移しました。
以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は395億40百万円(前期比101.2%)、セグメント利益は135億79百万円(前期比100.7%)となりました。
また、当セグメントにおける主要な事業の売上高につきましては、ステイショナリー用品事業は322億21百万円(前期比100.0%)となり、玩具事業は41億70百万円(前期比106.9%)、産業資材・その他事業は31億47百万円(前期比107.0%)となりました。なお、ステイショナリー用品事業の内訳は、筆記具が284億80百万円(前期比99.5%)、文具・その他が37億41百万円(前期比104.0%)となりました。
(米州セグメント)
米州地域につきましては、米国市場においてゲルインキボールペン市場でトップシェアを維持している「G-2(ジーツー)」の販売は引き続き好調に推移しました。また、ブラジル市場においてはホワイトボード用マーカー「Vボードマスター」を中心に伸長しました。さらに、円安の影響も加わり、増収増益となりました。
以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は388億87百万円(前期比110.0%)、セグメント利益は19億20百万円(前期比162.5%)となりました。
(欧州セグメント)
欧州地域につきましては、依然、本格的な個人消費の回復には至っておりませんが、欧州市場での主力製品である「フリクション」シリーズ等の売上が回復してきたこと、また円安の影響もあり、増収増益となりました。
以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は269億23百万円(前期比110.7%)、セグメント利益は17億82百万円(前期比105.6%)となりました。
(アジアセグメント)
アジア地域につきましては、中国において長引く景気低調の影響を強く受けましたが、中国市場での主力製品であるゲルインキボールペン「P-500/700」等は健闘し、円安の影響もありセグメント全体は増収となりました。
一方、セグメント利益は、労務費や広告費等の販管費増加により減益となりました。
以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は208億17百万円(前期比104.9%)、セグメント利益は3億56百万円(前期比44.0%)となりました。
以上、各地域セグメント利益の合計は176億38百万円(前期比102.8%)と増益となりました。一方で、連結営業利益は178億5百万円(前期比93.7%)と減益となりました。これは、主に棚卸資産に係る未実現利益による連結調整額が1億67百万円(前連結会計年度は18億42百万円)となったことによるものです。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ102億32百万円増加し、1,767億1百万円(前期比106.2%)となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ11億56百万円増加し、1,082億94百万円(前期比101.1%)となりました。これは主に、「受取手形及び売掛金」が15億23百万円増加したことによるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ90億76百万円増加し、684億7百万円(前期比115.3%)となりました。これは主に、有形固定資産が61億18百万円、「のれん」が13億2百万円、「投資有価証券」が10億77百万円それぞれ増加したことによるものであります。
なお、当該「のれん」は持分法非適用関連会社であったPilot Pen (Malaysia)Sdn. Bhd.の株式を第3四半期連結会計期間において追加取得し、新たに連結の範囲に含めたことにより発生したものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べ9億98百万円増加し、351億22百万円(前期比102.9%)となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ11億80百万円増加し、327億48百万円(前期比103.7%)となりました。これは主に、「短期借入金」が13億58百万円減少した一方で、「未払法人税等」が15億57百万円、「その他」に含まれる設備関係支払手形が14億58百万円それぞれ増加したことによるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ1億81百万円減少し、23億73百万円(前期比92.9%)となりました。これは主に、「長期借入金」が3億28百万円減少した一方で、「繰延税金負債」が1億34百万円増加したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ92億33百万円増加し、1,415億79百万円(前期比107.0%)となりました。これは主に、「利益剰余金」が70億10百万円、「為替換算調整勘定」が17億82百万円それぞれ増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ7億83百万円増加し、391億12百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、227億27百万円(前連結会計年度は101億75百万円の増加)となりました。収入の主な内訳は、「税金等調整前当期純利益」213億83百万円、「減価償却費」50億90百万円、「棚卸資産の減少額」30億12百万円であり、支出の主な内訳は、「仕入債務の減少額」23億72百万円、「法人税等の支払額」41億19百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、110億54百万円(前連結会計年度は107億7百万円の減少)となりました。これは主に、「有形固定資産の取得による支出」111億92百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、110億39百万円(前連結会計年度は73億80百万円の減少)となりました。これは主に、「短期借入金の純減少額」16億92百万円、「自己株式の取得による支出」40億円、「配当金の支払額」40億48百万円によるものであります。
(生産、受注及び販売の実績)
当社グループにおきましては、「日本」セグメントが当社の生産活動の中心となっております。
(注) 1 上記の金額は工場出荷価格によっております。
2 上記の金額には外部への製造委託を含めております。
3 当社グループの生産は、当社、連結子会社であるパイロットインキ㈱及びパイロットファインテック㈱でその大半を占めているため、上記の金額は日本セグメントの金額を表示しております。
見込生産を主体としており、受注生産は僅少であるため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。
連結財務諸表の作成におきましては、当社グループにおける過去の実績等を踏まえ合理的に見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
当社グループは、棚卸資産の評価基準として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価を下回っている場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。棚卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
退職給付に係る負債、退職給付に係る資産及び退職給付費用は、数理計算上使用される前提条件に基づいております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率等の要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の連結売上高は前期比6.4%増加し1,261億68百万円となり、過去最高の売上高を達成いたしました。
主力のステイショナリー用品事業においては、米州及び欧州市場における販売が好調に推移したこと、前連結会計年度より当社グループとなった、手帳・ノート類等のデザインステイショナリーの企画・製造を行うマークス社の売上が伸長したこと、これらに加えて前年と比較し、為替が円安に推移したことが主な増収要因となりました。
一方、輸出においては、サウジアラビア等、一部の国において在庫調整が長引き、減収となりました。また、回復の期待された中国市場においては長引く景気低調の影響を強く受けました。
これらの強弱要因が入り交じった結果、ステイショナリー用品事業の外部顧客への売上高は、前期比6.4%増加し1,188億37百万円となりました。
また、玩具事業及びその他事業の売上高は、前期比6.9%増加し73億30百万円となりました。主な要因はその他事業における産業装置向けのセラミックス部品が減収となった一方、玩具及び前連結会計年度より新たに連結グループに加わったマークス社商品が売上に貢献したことによるものであります。
当連結会計年度の連結営業利益は前期比6.3%減少し178億5百万円となり、連結売上高営業利益率は前期より低下し14.1%となりました。主に原材料費の上昇や設備投資による減価償却費の増加、労務費等の増加による原価率の上昇、販売費及び一般管理費における労務費及び広告費等の増加から減益となりました。
当連結会計年度の連結経常利益は前期比3.5%減少し201億10百万円となり、連結売上高経常利益率は15.9%となりました。営業外収益は、主に関係会社からの受取配当金の増加、及び受取利息が増加いたしました。加えて、営業外費用は、主に米国における短期借入金減少に伴い支払利息が減少いたしました。これらにより、営業外収支は増加いたしました。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比11.1%増加し151億81百万円となりました。これは主に、連結経常利益に加え、特別利益として投資有価証券売却益、Pilot Pen (Malaysia)Sdn. Bhd.を新たに連結の範囲に含める際に発生した段階取得に係る差益を計上した一方、減損損失及び災害による損失を計上したことによるものであります。
当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要)(2) 財政状態の状況」をご参照ください。
なお、連結ベースの財政状態に関する主な指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注)流動比率 : 流動資産/流動負債
固定比率 : 固定資産/自己資本
有利子負債自己資本比率 : 有利子負債/自己資本
・各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
・有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要)(3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
なお、連結ベースのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。
(注)自己資本比率 : 自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額/総資産
債務償還年数 : 有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー/利払い
・各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
・株式時価総額は、期末株価数値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。
・有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
・営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。
当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び設備投資によるものであります。
運転資金につきましては主に自己資金により充当しており、必要に応じて金融機関からの短期借入金による調達も行っております。設備投資資金につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入金による調達を基本としております。
また、重要な設備投資の予定及びその資金の調達源につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」をご参照ください。
なお、資金の流動性を維持するため、主要取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン)及び当座貸越契約を締結しております。
当社グループは、2030年ビジョンの実現に向け、2025-2027中期経営計画において掲げた経営課題に取り組んでまいります。掲げた財務目標を達成するため、資本収益性の改善、株主還元の強化をし、更なる企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指してまいります。
2025-2027中期経営計画において設定した経営課題、取組み内容、財務目標は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な会社の経営戦略・目標とする経営指標」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、「人と創造力をつなぐ。」企業として筆記具を中心とした品質重視の製品開発を行っております。
ステイショナリー用品事業においては、お客様が「書く」ことを通じて、より「創造力」を発揮して高める事ができる各種筆記具を中心とした開発を進めております。当社グループが長年開発・製造しているインキ技術、万年筆やボールペンをはじめとした各種筆記具の設計技術、万年筆やボールペンのペン先の加工及び開発技術、シャープ替芯等の固形芯の加工及び開発技術、これらの技術を応用して、高品質で付加価値の高い各種筆記具の開発を進めております。これらの各種筆記具は、長年培った基礎技術を活用する事により、安全性と環境保全に配慮しております。
その他事業においては、筆記具の開発と製造にて長年培った基礎技術を中心とした開発を進めております。当社グループ独自のインキ技術を応用した新しい玩具の開発、当社グループの原点である万年筆の加工技術で培った貴金属加工技術を応用した宝飾リング製品の開発、筆記具の設計技術を応用した他社との共創によるデジタルペンの開発、シャープ替芯製造で培った技術を応用した高精度な微細孔・多孔のセラミックスの産業資材の開発を行っております。このセラミックの産業資材については、小型化が進む自動車部品、半導体製造装置等の市場に向けた付加価値の高い産業資材として、お客様にご愛顧いただいております。
なお、当社グループは日本国内においてのみ研究開発を行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額