第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは1946年の創業以来、「化粧品で人々に夢と希望を与え、明るい世の中をつくりたい」という使命を掲げ、化粧品ひとすじに、美と誠実に向き合ってきました。「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する。」という存在理念(パーパス)とコーポレートメッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」のもと、人と地球に寄り添い、かけがえのない生涯をともに美しく彩る企業へと進化してまいります。

 

(2) コーセーグループのありたい姿:Your Lifelong Beauty Partner

2024年11月に策定した中長期ビジョンでは、多彩な美の選択肢を提供することで、世界中の一人ひとりが生涯にわたり自分だけの輝きを見つけられるよう、長い時間軸で寄り添い、美の力で明るく彩り続けたいという、創業以来当社が大切にしている強い想いを込めております。

お客さまに限らず、ビジネスパートナー、働く仲間、世界中のあらゆる人々や未来を生きる次世代、そして地球上の美しい自然とより長く、より深く、より強い絆を築き、企業価値の向上を目指してまいります。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

日本での盤石な事業基盤の構築と圧倒的な存在感の確立により、確実な成長リソースを生み出し、持続的な成長に向けた投資に繋げます。グローバルでの事業成長は、「脱・自前」による地域への最適化をコアな考えとして、現地起点のマーケティング・モノづくりへの転換やM&A/提携による地域に根付いたブランドの獲得を積極的に進めます。また、これからの成長領域として、ジェンダー・ジェネレーションの垣根を超えた価値提供を強化いたします。これらにより世界中のお客さまにコーセーの多様な美の価値を提供することを目指します。

 

 

■2030年をマイルストーンとした定量目標

 

 

指標

マイルストーン

財務

目標

売上高成長率

CAGR+5%以上

営業利益率

12%以上

EBITDAマージン

18%以上

ROIC ※1

10%以上

非財務

目標

グローバルポスト人材充足率 ※2

2.5倍以上

アダプタビリティ∞に基づく商品/サービス提供率 ※3

100%

ウェルビーイングを叶える取り組み件数 ※4

500件以上

環境意識の啓発人数

1,000万人以上

CO2排出量削減率  ※5

Scope1・2 ▲55% / Scope3 ▲30%

 

 

※1:税引後営業利益 / (有利子負債と純資産の合計の期中平均値) × 100

※2:グローバル人材÷グローバルキーポストで算出

※3:コーセー独自の8つの取り組みテーマ「アダプタビリティ∞」から、各ブランドが毎年注力する項目を決定し、その項目数に対して達成したサービス・商品数をカウントし総合達成率を算出

※4:2020年からの累積

※5:2018年対比での削減率

 

中長期ビジョンの詳細は以下のURLからご参照ください。

(日)https://corp.kose.co.jp/ja/ir/library/strategy/

(英)https://corp.kose.co.jp/en/ir/library/strategy/

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) コーセーグループ サステナビリティ戦略

①ガバナンス

当社グループでは、経営課題の一部としてサステナビリティに関連する課題を捉え、その解決に向けた推進体制を整えております。代表取締役社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ戦略を経営会議に提案、承認を受け、取締役会に報告を行う体制を構築しております。取締役会では、企業の持続可能な成長を支えるために、サステナビリティ戦略に関連する人権、気候変動、生物多様性をはじめとする重要課題に対し、当社グループを取り巻く社会や環境の課題とリスクや機会を包括的に分析・特定し、短期・中長期の視点で検討した対応策について、審議・決議することで、企業全体のサステナビリティ推進活動の監督機能を担っております。これらの体制により、企業全体のサステナビリティ推進活動に対する管理・監督を強化し、社会的責任を果たしながら、長期的な企業価値を向上させることを目指しております。また、当社グループのサステナビリティ戦略に基づき、サステナビリティ委員会の下部組織である「サステナビリティ推進委員会」 において個別テーマごとの分科会やプロジェクトを設置し、全社部門横断の取り組みとして実効性を高めた活動を推進しております。なお、サステナビリティの推進体制は以下のとおりであります。

 

サステナビリティ推進体制


 

 

②戦略

当社グループは、コーポレートメッセージ「美しい知恵 人へ、地球へ。」をサステナビリティ指針に、基盤となるポリシーとして、行動規範と同じ「正しきことに従う心」を設定し、人々や地球環境の未来をよりよいものとするため、2020年にコーセーグループのサステナビリティ戦略と目標をまとめた「コーセー サステナビリティ プラン」を策定いたしました。その後、2024年に策定した、コーセーグループの中長期ビジョン「Vision for Lifelong Beauty Partner」では、サステナビリティプランをサステナビリティ戦略として刷新し、ビジョンに組み込むことで、社会の在り方や地球環境まで包含した考え方で、人と地球に寄り添い、社会と企業の持続的成長の両立を通じて、真の「Your Lifelong Beauty Partner」となることを目指しております。サステナビリティ戦略では、中長期ビジョンの重点課題(マテリアリティ)を特定するために、コーセーグループを取り巻く社会や環境の変化や課題と、関連する機会とリスクを抽出後、社会からの期待における視点と、社内関連部門による当社グループへのビジネス(財務)インパクトの視点という二軸による評価を実施しております。これらの課題を解決するために、各課題ごとの目標を設定し、取り組みを推進しております。

 


 

 

③リスク管理

当社における「コンプライアンス」とは、法令遵守のみならず、「正しきことに従う心」をもって社会的倫理に則った行動をとることを示しております。コンプライアンス推進体制及び活動は、「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」を通じて、定期的に取締役会に報告され、「コンプライアンス推進委員会」は取締役・従業員に対する研修などで啓発を行います。社内外に相談窓口を設け、報告・相談に対応する体制も整えております。また、当社の持続的発展を脅かすリスク、特にコンプライアンス・品質・情報セキュリティ・市場の問題や、災害発生など様々なリスクに対処すべく、リスクマネジメント・コンプライアンス規程を定め、「リスクマネジメント推進委員会」を設置してリスク管理体制の充実に努めております。危機管理規程のもと、重大なリスクが顕在化した場合に被害を最小限に抑制する体制を構築しております。

サステナビリティに関する人権、気候変動、生物多様性をはじめとするリスク・機会の識別、評価、管理の体制については(1) コーセーグループ サステナビリティ戦略 ①ガバナンスをご参照ください。

 

④指標及び目標

「サステナビリティ戦略」では、中長期ビジョンの重点課題(マテリアリティ)で特定した、当社グループを取り巻く社会や環境の変化や課題と、関連するリスク・機会を解決するために、2030年を中期マイルストーンとした「人に寄り添う」「地球に寄り添う」の側面からコミットメントと目標を定めております。具体的には、「多様な美の価値観の尊重」という課題の対応が企業として遅れた場合のリスクは、顧客数の成長鈍化・既存顧客の離反という状況に陥る可能性がある一方で、グループ全体で積極的に取り組みを推進することで、機会として新たな顧客層の開拓が見込める可能性があります。このような課題分析を経て「多様な美の尊重」という重要課題と、それを達成していくための目標として「アダプタビリティ∞に基づく商品サービス提供率」を設定しております。また、「気候変動への具体的な対策」については、対応が遅れることで、台風や干ばつなどの極端な気象現象による、原材料調達への影響がリスクとして考えられます。一方で、気候変動対策として、気温上昇による発汗にも耐えられる機能性化粧品や日やけ止め、環境配慮型化粧品などを上市することで、エシカル志向な消費者の支持獲得にもつなげていくことができると考えております。このような課題分析を経て、「環境負荷低減の推進」という重要課題と、それを達成していくための目標として「CO2排出量の削減」を設定しております。この様に、当社グループは特定したリスクや機会に対する目標を設定し達成に向け、年度ごとに取り組み状況をまとめ、進捗状況を公表しております。

 

「サステナビリティ戦略」 重要課題と中期目標(人に寄り添う)

取り組み
テーマ

コミットメント

指標

目標値

達成年

具体的方策例

多彩な

美しさの尊重

アダプタビリティを通じて、

多様なバックボーンを持つ

お客さまが、

自分らしさを大切にした

美しさを実感できる

商品やサービスを提供します

アダプタビリティ∞

に基づく

商品サービス

提供率

100%

(*1)

2030

・多様な肌、髪の色や肌、髪質に沿った商品設計
・ユニバーサルデザインの採用
・多様性に応えるビューティテクニックの開発

・様々なポリシーに対応する商品開発

心まで健やかな

毎日を支える

社会の人々が、

美を通じて

ウェルビーイングを

実感できる活動に取り組みます

ウェルビーイング

を叶える

取り組み件数

500件
以上

2030

・健やかな肌を守るための次世代啓発活動
・コミュニティ活性化や健康促進に向けた支援

・スポーツ振興支援

認証原料の調達と

ブック&クレーム方式

によるRSPO

認証クレジットの購入

100%

2030

・認証原料の調達とブック&クレーム方式による

 認証パーム油の使用
・調達先との人権側面での協働
(強制労働・児童労働などのない調達)

社会的機会の

あと押し

社会・社員の誰もが、

多様な個性を発揮しながら

社会参加の機会を得られる

取り組みと啓発を行います

3G(*2)を主軸とした

DE&Iの啓発と

取り組み

100万人以上

2030

・社内DE&Iの推進

・ジェンダーギャップに関する啓発

・属性を理由とした格差解消の取り組み

 

*1 コーセー独自の8つの取り組みテーマ「アダプタビリティ∞」から、各ブランドが毎年注力する項目を決定し、その項目数に対して達成したサービス商品数をカウントし総合達成率を算出

*2 グローバル、ジェンダー、ジェネレーションを表す造語 

 

「サステナビリティ戦略」 重要課題と中期目標(地球に寄り添う)

取り組み
テーマ

コミットメント

指標

目標値

達成年

具体的方策例

環境意識の向上

お客さまに、

商品サービスと

情報発信を通じて、

環境課題への気づきの

機会を提供します

商品/サービスと

情報発信を通じた

環境意識の啓発

1,000万人

以上

2030

・雪肌精「SAVE the BLUE」、

 コスメデコルテ「DECORTÉ Sustainable

 Ingredients Project」、BIOLISS

 「PEACEFUL GREEN」等の活動

・メディアやWebサイトを通じた情報発信

・環境啓発イベントへの参加

環境問題解決への貢献

地球上の様々な地域の

環境課題の解決や

保全に取り組みます

植サンゴ

面積

20,000m2

25m公認プール

面積約53倍

2030

・雪肌精「SAVE the BLUE」活動の進化

 ※目標値は2009年からの累積面積

地球環境

貢献活動

100件

以上

2030

・森林・海・里山の保全

・事業地域の環境活動

 (クリーン活動、環境イベント等)

・資源循環の取り組み

 (容器回収・アップサイクル)

事業地域の

環境保全

地域と共存共栄し、地域環境へ影響を与えうる生産拠点を中心に、環境保全に対する取り組みを行います

地域環境

保全活動

20件

以上

2030

・南アルプス周辺など、関連会社も含む生産、研究拠点などを中心とした事業地域での環境保全活動

 

 

取り組み
テーマ

コミットメント

指標

目標値

達成年

具体的方策例

 

環境負荷

低減の推進

CO2排出量の削減

Scope 1・2

▲55%
2018年比・
総量目標

2030

・再生可能エネルギーの利用

・エネルギー効率のよい設備等導入

・水素エネルギーの導入

・燃料転換の実施

・カーボンプライシング制度の導入

・バリューチェーン全体でのCO2削減

・低炭素製品の開発

※コーセーグループが排出しうる温室効果ガスはCO2のみと特定

カーボン
ニュートラル

2040

Scope 3

▲30%

2018年比・
総量目標

2030

Scope 

1・2・3

ネットゼロ

2050

プラスチック容器包装の

環境配慮設計

4Rに適合した

容器包装資材の採用

100%(*1)

2030

・4R※に適合した容器包装資材の採用
※Reduce/Reuse/Recycle/Renewable
・2030年までにバイオマス/リサイクル樹脂の採用比率(樹脂量)を50%まで高める

再生プラスチック

バイオマスプラスチック採用率

50%(*1)

・4R※へ適合した容器包装資材の採用
※Reduce/Reuse/Recycle/Renewable
 ・再生樹脂・バイオマス樹脂の採用

・樹脂由来の既存品資材切り替え

・つめかえ容器の採用推進

石油由来

バージンプラスチック使用量

▲50%(*1)

2018年比生産原単位

レフィル化率

2025年開示予定

廃棄物削減と資源循環の推進

リサイクル率

100%(*1)

2025

・廃棄物削減の3R※の推進

 ※Reduce/Reuse/Recycle

・未使用資材やバルクの有効活用

・リサイクラーとの関係強化

責任ある水資源利用

水使用量削減

▲12%(*2)

2018年比・
生産原単位

2030

・水資源の3Rの推進など

・水循環システムの導入と

 リサイクル水の活用

責任ある

パーム油の調達

認証原料の調達と

ブック&クレーム方式

によるRSPO

認証クレジットの購入

100%

2030

・認証パーム油の調達と使用

・サプライヤーとの協働強化

・生産国ステークホルダーとの関係構築

 

*1 対象年に発売した新製品の実績

*2 当社グループ生産部門

 

(2) 気候変動への対応 ~TCFD提言に基づいた対応~

 当社グループでは、2019年度に自社を取り巻く社会・環境課題のマテリアル分析を行いました。その結果、グループ全体のサステナビリティに関する取り組みと2030年までの目標をまとめた「サステナビリティ戦略」の中で、環境・気候変動問題への対応を「事業成長」と「持続可能な社会の実現」の両立を図るために、欠かすことのできない重要な経営課題の一つとして認識しております。

また、2020年には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同するとともに、国内賛同企業などによる組織「TCFDコンソーシアム」に加入し、2021年にはTCFD提言に基づいた対応を実施いたしました。

 

①ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティ戦略に組み込まれているため、(1)コーセーグループ サステナビリティ戦略をご参照ください。

 

②戦略

当社グループは、気候変動における移行リスク及び物理的リスクを検討するため、シナリオ分析を実施し、1.5℃/2℃及び4℃の気温上昇がもたらす世界の気候変動が与える財務的な影響を評価、企業としての取り組み情報の開示を行うと同時に、将来の社会と地球の姿を実現するための経営戦略などを検討する材料としても活用しております。更に、シナリオ分析の結果から、事業活動によるCO2排出に対して気温上昇の削減目標を設定する重要性を強く認識し、2022年に「低炭素移行計画」を策定、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しております。

 

③リスク管理

組織の気候変動に関連するリスクは、ERM(統合型リスク管理)におけるコーポレートレベルでの評価を「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」を中心に特定・評価しております。気候変動に関する課題の監視は、これらの枠組みをもとに、「サステナビリティ委員会」及び「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」によってモニタリングしております。

 

 

コーセーグループの捉えるリスクと機会

分類

リスク・機会

影響項目

自社への

影響の大きさ

概要

対応策

1.5℃

2℃

4℃

リスク

(移行)

消費者の環境配慮商品への需要シフト/
消極的な対応による
レピュテーション低下

売上高減

++

1.5℃/2℃シナリオでは、消費者の環境意識の高まりに伴い、消極的な環境対応が自社製品の販売減につながる。

・低炭素、節水、プラスチック削減やサステナブル素材の採用など環境配慮型製品開発の強化

・先端技術の導入による製品開発、販売方法等の検討と推進

GHG排出量規制の強化/
カーボンプライシング
の導入
(自社・サプライヤー)

コスト増

++

1.5℃/2℃シナリオでは、サプライヤーを含めて炭素税が課され、自社の運営コスト及び調達コストが増加。

・SBT認定の中期排出量削減目標の設定と削減策の実践

・環境配慮に関する設備投資計画の策定と計画的な投資(省エネ設備の順次入れ替えなど)

プラスチック規制の導入
によるプラスチック資材
の代替

コスト増

++

1.5℃/2℃シナリオでは、プラスチック規制の強化によりバイオマスプラスチックや再生プラの調達の必要が生じ、コスト増につながる。

・プラスチック削減やサステナブル素材の採用

・規制に対応した資材の開発、リサイクルシステム構築の検討

取水排水制限の導入に
よる商品の生産制限

売上高減

++

気候変動により操業地域の水ストレスが増加し、取水制限が生じると、操業停止による販売機会損失につながる。1.5℃/2℃でも影響が生じるが、特に4℃シナリオで顕著な影響を想定。

・水使用の更なる効率化(節水・水のリサイクルシステム導入検討など)

リスク

(物理)

気候の変化による
原材料調達リスクの上昇

コスト増

++

パーム油などの自社製品や容器に使用する原材料において、グローバル各地での収穫量が温度上昇により変化すると調達コストが変化する。

・原材料コストの上昇の可能性に関して、グループ会社や他社との共同購買

・代替原材料の開発や調達をサプライヤーとのエンゲージメントにより推進

洪水等災害に伴う製造・
物流設備の機能停止

売上高減

++

浸水などによる自然災害の影響が自社における生産・物流拠点に及んだ場合、機能停止により自社製品の売上高が減少する。

・BCP対応の強化(現状より更に悪化が想定される環境への対応検討。気候変動適応に向けたソリューションの活用)

異常気象を原因とする
製造施設損壊やサプライ
チェーンの混乱

売上高減

コスト増

++

温暖化が引き起こす影響で自社施設が損壊した場合、修繕費用や建て替え費用などのコストが発生する。また、サプライヤーの生産・物流拠点でも同様に自然災害の影響が発生した場合、自社の製品供給が停止するリスクがある。

・BCP対応の強化(現状より更に悪化が想定される環境への対応検討。製造拠点の分散化)

・災害に強いサプライチェーン体制の構築(主要サプライヤーにおける強固なBCPの確立、調達先の複線化など)

 

 

分類

リスク・機会

影響項目

自社への

影響の大きさ

概要

対応策

1.5℃

2℃

4℃

機会

紫外線増加に伴う
日やけ止め製品や
紫外線ケア商品の
需要増

売上高増

++

日常生活における紫外線の増加に伴い、紫外線ケアを必要とする人の数や使用頻度が増加することで、当該商品の売上が増加する。

・紫外線ケア商品などの積極的な製品開発と展開

・日焼け止めの習慣化など消費者への訴求の強化

気温上昇による
冷感商品・
化粧崩れ止商品の
需要増

売上高増

++

気温上昇に伴い、化粧水やファンデーションなどの化粧関連商品において、冷感性や化粧崩れ防止に対するニーズが増加することで、当該商品の売上が増加。

・冷感性や化粧崩れ防止商品の積極的な製品開発と展開

自社製品の環境フットプリント削減による
ブランド価値向上

売上高増

++

社会全体の環境配慮の意識が高まる中で、自社の環境フットプリントを削減し訴求していくことがマーケティング上もプラスの効果をもたらす可能性がある。

・低炭素製品要求等に対応(製品ごとのカーボンフットプリントなどの計算、使用時における節水可能な商品の開発)

環境負荷低減商品、
サービスの
開発及び拡大

売上高増

++

脱炭素型や脱プラスチック型の商品やサービスを提供していくことが付加価値となり、収益にプラスの効果をもたらす可能性がある。

・アダプタブルな商品への対応
 (エシカル消費等への対応)

・協業や先端技術の導入による製品開発、販売方法の推進(ビューティパートナーシップ)

・低炭素、プラスチック削減やサステナブル素材の採用など環境配慮型商品開発の強化

・デジタル先端技術を積極的に取り入れた販売方法の確立

再生可能エネルギー、
省エネルギー策の
導入による
コスト競争力強化

コスト減

++

再生可能エネルギー(再エネ)の購入や省エネ設備の導入により、自社のエネルギーコスト削減につながる。特に1.5℃/2℃シナリオにおいて、電力価格は現在より上昇する一方で再エネ調達価格は低減することで、再エネ調達によるコストメリットが発生。

・再生可能エネルギーの調達(各種PPAなどの導入)

・自家発電、自家消費の再生可能エネルギーの開発

 

※ -:影響は軽微 +:一定の影響がある ++:大きな影響がある

 

 

指標と目標

気候変動のシナリオ分析の結果から、事業活動によるCO2排出に対して、精力的な削減目標を設定する重要性を強く認識いたしました。そして、「サステナビリティ戦略」の中で、当社グループが排出しうる温室効果ガスとしてCO2の排出削減を取り組みテーマの一つとして掲げ、2030年までのGHG排出量削減目標をScope1・2で55%削減(SBT1.5℃目標※に準じた設定)バリューチェーン全体(Scope3)で30%削減と設定(いずれも2018年度を基準)いたしました。

※SBT:Science Based Targetsイニシアチブが提唱する、パリ協定が求める水準と整合した目標。

世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えるための科学的な根拠に基づき設定。

 

2024年度CO2排出量目標に対する実績

コミットメント

指標

2024年度実績

目標値

達成年

CO2排出量の削減

Scope1・2

▲45.1%*

(2018年比・総量)

▲55%

(2018年比・総量目標)

2030

14,088.1 t-CO2*

カーボンニュートラル

2040

Scope3

▲19.3%*

(2018年比・総量)

▲30%

(2018年比・総量目標)

2030

Scope1・2・3

 

803,236.5 t-CO2*

ネットゼロ

2050

 

* 2024年度実績については会社算定値であり、第三者検証後、下記「サステナビリティ戦略実績報告データ」(https://corp.kose.co.jp/ja/sustainability/plan/)にて更新予定

 

具体的な取り組み

当社の主力生産工場である群馬工場(群馬県伊勢崎市)において、2021年より、購入している全ての電力を再生可能エネルギーへ切り替えを実施し、2023年からは狭山工場(埼玉県狭山市)等、国内拠点でも段階的に再生可能エネルギーへの切り替えを推進しております。

 

 

更に、コーセー化粧品販売株式会社では、営業車
の利用台数を削減するために、カーシェアリングの
活用を推進するとともに、営業業務の抜本的見直し
を行い、利用数を削減する取り組みを実施いたしま
した。

 


コーセーインダストリーズ株式会社 群馬工場

 

 

商品・サービスにおけるCO2排出量可視化

当社グループでは、「サステナビリティ戦略」中で、2040年までにCO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル、2030年までにSBT1.5℃目標に準じたCO2排出量削減目標を掲げ、脱炭素戦略を推進しております。また2022年には、環境省が実施した「製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業」に参加し、カーボンフットプリント算定・表示における実務上のノウハウの蓄積や、サステナブル対応の効果測定、ライフサイクルにおける環境負荷ホットスポットの特定を行いました。2023年以降には、『雪肌精』をはじめとする商品算定を拡大し、情報発信を実施しております。今後も本取り組みを通じ、バリューチェーン全体のCO2排出量削減を加速させ、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

 


 

2024年3月発売の「薬用雪肌精 ブライトニング エッセンス ローション」でもカーボンフットプリント算定による商品のCO2排出量可視化を実施

 

(3) 人的資本への取り組み

① ガバナンス

人的資本への取り組みに関するガバナンスは、当社グループのサステナビリティ戦略に組み込まれているため、(1) コーセーグループ サステナビリティ戦略「コーセーグループサステナビリティ戦略 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

 戦略及び指標と目標

◆人材戦略の基本方針

当社グループは、更なる成長ステージを目指した中長期ビジョン「Vision for Lifelong Beauty Partner―Milestone2030」を推進しております。当社の存在理念「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する。」の追求に向け、新たにありたい姿“Your Lifelong Beauty Partner”を策定いたしました。美を通じて世界に寄り添い、一人ひとりの生涯を彩る活動により、持続的な成長と企業価値向上を目指します。ビジョンの達成に向けた人材戦略として「成長を支える人的基盤の拡充」を推進するとともに、各種施策に取り組んでまいります。

 

(ⅰ) 人材育成理念と育成方針

当社では、「コーセーグループ行動指針」の中で、各人の人権と多様な能力・個性・価値観を尊重することを明記しております。それを前提として、下記の「人材育成理念」・「人材育成方針」を定めております。

人材育成理念

コーセーは「豊かな人間性と創造性」を発揮できる社員とともに未来を拓きます。

人材育成方針

一人ひとりの向上心と主体性を尊重し「自ら磨く」を基本とする。

「自ら磨く」人を積極的に支援する職場環境をつくる。

段階に応じて幅広く、そして継続的に「自ら磨く」機会を提供する。

「専門領域」の実践的教育・研修は、各部門で実施する。

 

 

 

◆人材育成とイノベーションの創出

当社では、人材育成方針に掲げられた「自ら磨く」を実践するために、理念や目標を共有しながら、一人ひとりの多様性を活かして自ら学び成長する姿勢を重視しております。その支援のための制度として、自らキャリアを考察し実現させる「人材公募制度」「自己申告制度」などを活用し自身の夢の実現を叶えた社員が多くおります。また成長のための各種研修制度や通信教育補助等も充実しております。人材育成のプログラムとしては、階層別研修として新卒~中堅~管理職とキャリア段階に応じた研修を行っている他、次世代リーダー育成のためのイノベーション創出プログラム「LINK※」、シニアのためのキャリア支援などを実施しております。タレントマネジメントシステムの導入や360度評価の実施も行っており、各自の適性に合わせた人材育成に努めております。また、各部門の特性に応じた実務研修の機会を設け成長を促しております。その他、化粧品の新しい価値提供の検討と立案を行う組織横断プロジェクト形式の研修なども実施し、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンによるイノベーションの創出を目指しております。

※LINK(Leadership and Innovation program for New KOSÉ):2017年に発足した社内ベンチャー制度

 

人材育成プログラム

 


 

 

◆従業員の働きがいを向上するために

当社では、従業員は企業価値向上を支える大切な財産であり基盤と捉えております。従業員のエンゲージメントや貢献意欲が高まることが、組織の活性化につながり、競争力強化につながると考えております。そのため、働きやすく、働きがいのある職場づくりを目指して、定期的に社員意識調査や360度評価を実施しております。調査の結果は、経営層や政策検討会議などで報告し、調査結果の分析、課題の整理、施策の検討・実施を進めております。2022年度の調査では、会社へのロイヤルティや仕事への充実感が、社会全体の平均値と比べて高い傾向にあることがわかった他、前回の調査と比較して、女性社員の会社に対する満足度が有意に向上していることがわかりました。

また、2017年度からは「働きがい創出実行委員会」を設置し、委員長・副委員長は主に経営幹部や人事部門責任者が務め、活動メンバーは部門横断型の多様な社員を選出し、従業員の更なるエンゲージメント向上に向けた様々な取り組みを推進しております。

 

◆ビューティコンサルタントの活躍のために

 店頭などで活躍するビューティコンサルタントに対しては、販売職としての職務のスキルアップはもちろん、将来的に教育職や店舗責任者などへキャリアパスが選択できるように支援してまいりました。

<取り組みの一例>

2019年度

営業職、本社スタッフ職などへとキャリアチェンジ制度を導入

2020年度

キャリアデザインを考える研修の計画をスタート。キャリア意識の調査、キャリア意識の醸成、個々のキャリア形成支援の3つのステップで、まずは美容教育職に実施

2021年度

独自のオンライン接客プラットフォーム「WEB-BC SYSTEM」による遠隔地のお客さまへの接客業務など、多様な働き方を選択でき、なおかつキャリアの継続につながる環境を提供

2022年度

社内キャリアコンサルタントがキャリアデザインにむけてカウンセリングをする「キャリアデザインルーム」の運用を開始

 

 


 

 

◆採用の多様化と早期登用・抜擢の推進

グローバル化とボーダーレス化が進み、市場環境や顧客ニーズが急速に変化する中においては、多様な個性やバックボーンを持つ人材の育成が必要不可欠であります。そこで当社ではキャリア採用を強化し、多様な人材の獲得に取り組んでおります。グローバルな事業成長を実現するため、新中長期ビジョンにおいては定量目標として「グローバルキーポスト人材充足率」を設定し、グローバルな人的基盤を強化してまいります。

また2022年度には総合職の評価制度を見直し、年功的な昇格モデルから脱却し、早期登用・抜擢が可能な制度に改定を行い、社歴や年齢にとらわれず能力ある社員が活躍する組織づくりを推進しております。

 

<人材育成関連指標>

指標

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

対象範囲

能力開発・スキル向上研修延べ参加者数()<管理職・非管理職(美容職除く)>

2,893

3,996

5,353

国内グループ会社

能力開発・スキル向上研修時間(合計/h)<管理職・非管理職(美容職除く)>

50,386.0

38,289.0

55,109.0

国内グループ会社

能力開発・スキル向上研修時間(一人平均/h)<管理職・非管理職(美容職除く)>

17.8

11.6

18.4

国内グループ会社

エンゲージメントサーベイ(点数/満点) <管理職・非管理職>

※毎年に1回実施予定

3.78/5

※2018年度調査より、0.6%上昇 

 

4.01/5

㈱コーセー・コーセー化粧品販売㈱・コーセーインダストリーズ㈱・コーセーコスメポート㈱

 

 

(ⅱ) ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

世界中で「独自の美しい価値と文化を創造する」ためには、世界の変化を先取りして独自の価値を創出し続ける、世界に通用する人材の力が必要であります。
 一人ひとりのダイバーシティ(多様性)をお互いにインクルージョン(包摂)することで、企業の推進力へつなげるために、コーセーグループでは、中長期ビジョンの達成に向けてダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン経営の実践に取り組んでおります。さらに、さまざまな情報や機会へのアクセスを公平に保障していくべきというエクイティ(公正性)の概念を加え、頭文字をとったDE&Iの取り組みを加速させております。

コーセーは美の創造企業として、「英知と感性を融合し、独自の美しい価値と文化を創造する。」を存在理念として掲げております。その実現には、すべての働く仲間一人ひとりの違いを尊重し、違いを受け入れる風土づくりと、それぞれに合わせた環境を整えることが重要であります。社員がお互いの多様な個性を理解し、高め合っていくことは、ひいてはグローバル社会や市場の変化に対応し、多様なお客さまに向けた独自の価値を創造し続けるための源泉となると考えております。そのため、経営戦略の一環として、全社でDE&Iの取り組みを推進しております

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン宣言

多様性をチカラに変える

コーセーは、独自の価値創造の源泉として、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進します。

一人ひとりの“Individuality(個性)”によって構成され、“Individuality(個性)”が結束することで、

最高のチカラを発揮し独自の価値をグローバルに生み出す組織、企業を目指します。

 

 

 

◆ジェンダーにとらわれずに誰もが活躍するために  

1946年の創業以来、全ての社員が、性差に関わらず自分らしく自信をもって生きる社会へ貢献したいと思いを一つにして、お客さま一人ひとりのための“きれい”を提供できる化粧品をお届けしてまいりました。社内では、1999年の「男女共同参画社会基本法」の施行に先駆け、1985年には当社グループで初めて女性の取締役が就任するなど、多様な価値観を企業のチカラへ反映する企業文化が、現在に至るまで根付いております。現在、当社グループでは、美容職を含めた女性の割合が従業員全体の約8割を占めております。そのため、性差に関わらず、それぞれのライフイベントに合わせた柔軟な働き方ができる環境を整備し、安心して自身の能力を発揮できるための様々な取り組みを実施しております。

また、「コーセーグループサステナビリティ戦略」の取り組みテーマの一つ、「ジェンダーにとらわれずに活躍できる社会への貢献」を実現するために、社内に対して、女性活躍を含めた性差に関わらず自分らしさを最大限発揮できる環境整備の推進はもちろん、社会に対しても、女性のエンパワメントなどの支援の輪を広げていきたいと考えております。

 また、当該方針について以下のKPIを設定し、目標達成に向けて取り組んでおります。

 

<ジェンダーダイバーシティ関連指標>

指標

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

2026年度

目標

対象範囲

女性管理職比率

28.9%

31.1%

32.8%

33.0%

コーセーグループ

指導的地位にある社員の女性比率

35.2%

33.2%

34.4%

50.0%

コーセーグループ

有給休暇取得率

69.2%

62.6%

74.6%

80.0%

国内グループ会社

育児休業取得率(女性)

100.0%

100.0%

99.8%

100.0%

国内グループ会社

育児休業取得率(男性)

88.2%

82.4%

85.7%

100.0%

国内グループ会社

育児休業後の復職率(女性)

96.7%

97.2%

95.7%

100.0%

国内グループ会社

育児休業後の復職率(男性)

100.0%

100.0%

100.0%

100.0%

国内グループ会社

 

 

◆障がい者と健常者がともに働く環境づくり

 障がい者と健常者がそれぞれの役割を果たしながら、いきいきと働ける環境づくりを進めております。本人の意欲と適性をもとにさまざまな部門に配置され、健常者とともに活躍をしております。専門的なサポートが必要な場合は、障害者職業生活相談員や産業医へ気軽に相談を行うことができる体制はもちろん、社外にも健康相談窓口を設け、安心して働くことができる環境を整備しております。

 また、化粧品会社として初めて設立された特例子会社「アドバンス」においても、障がいをもつ人と健常者が、同じミッションを果たすために働いております。

 

◆年齢を問わず活躍できる職場

 長年、各分野で培った経験を活かして、本人の意欲と能力に合わせて働き続けられるように、定年後の再雇用制度を導入しております。50代の従業員に向けたライフプランセミナーや、定年退職時の各種制度等を理解できる機会を設け、自分らしい人生選択ができるよう、サポートを行っております。また、定年退職後も就業継続を希望する社員には再雇用制度を提供し、熟年層ならではの技能やノウハウを次世代社員へと引き継ぎつつ、当事者の働く意欲を活かす体制にしております。

また、チャレンジ精神を醸成するために、若手のうちから責任のある仕事を任せ、アクセラレータープログラムと融合したイノベーション創出プログラム「LINK」を実施するなど、年齢を問わずに活躍できる企業風土を形成しております。

 

 

健康経営

従業員が心身ともに健康であることは、会社の成長を支える重要な経営基盤となります。

当社グループでは、代表取締役社長が健康経営推進責任者となり、従業員の健康増進を重要な経営課題の一つと位置付け、従業員の健康リスク=経営リスクである「健康経営」という考え方を持ち、このリスク低減を目的に健康管理を重要な経営課題の一つとして取り組んでおります。

健康経営を通じた企業の持続的な成長を目指すため、人事担当役員を責任者としてコーセーグループ会社と健康保険組合、労働組合、産業保健スタッフが一体となって「健康管理強化プロジェクト」会議を推進し、健康促進に取り組んでおります。

具体的には健康診断100%受診やメンタルヘルス支援などの取り組みを推進するとともに「健康経営優良法人認定2024」を取得し、働きがいのある職場を整備しております。今後も従業員の活力を高め、持続的な成長につなげてまいります。

また近年では以下のKPIを設定し、女性の健康課題への取り組みを強化しております。

<健康経営関連指標>

指標

2021年度

実績

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

2025年度

目標

対象範囲

乳がん検診受診率

61.1%

70.5%

66.8%

69.1%

80.0%

国内グループ会社

子宮頸がん検診 受診率

47.3%

52.7%

53.3%

56.5%

65.5%

国内グループ会社

 

 

 

④リスク管理

人的資本への取り組みに関するリスク管理は、当社グループのサステナビリティ戦略に組み込まれているため、(1) コーセーグループ サステナビリティ戦略「コーセーグループサステナビリティ戦略 ③リスク管理」をご参照ください。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響が及ぶ可能性のあるリスク並びに投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、以下のようなものがあると考えております。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が主要なリスクと判断したものでありますが、ここに掲げられているものに限定されるものではありません。

 

当社では、将来にわたる事業の継続性と安定的発展の確保のため、全社横断的な組織として、「リスクマネジメント推進委員会」を設置し、リスクを網羅的に洗い出し、定性的な分析・評価を行うとともに、甚大な影響を及ぼす可能性のあるリスクに対し、必要な対策を講じております。具体的には、毎年、関係会社及び各部門の責任者へのアンケートを通じて、リスク項目を抽出するとともに、「リスクが顕在化した場合の経営成績等の状況に与える影響」「リスクが顕在化する可能性の程度」の2つの評価軸で優先付けを行っております。

 

リスクアセスメントで抽出したリスクは、リスクカテゴリーごとに集約し、「戦略リスク」「事業・財務リスク」「政治・経済リスク」「事故・災害リスク」「人事・労務リスク」「法令違反・賠償リスク」に分類し、定期的にそれぞれのリスク対応の現状と進捗状況をモニタリングする仕組みを構築・運用しております。

 

2025年の世界経済においては、各国の中央銀行による金融政策に加え、米国の新政権の経済政策による影響に注目が集まっております。

 

日本については、雇用・所得環境が改善する中で、各種政策の効果や訪日客数の増加による後押しを背景に、緩やかな景気回復が続くことが期待されます。しかし、2024年から続く物価高による個人消費回復の足踏みや海外景気の下振れ等により、経済成長は鈍化する可能性があります。

アジアにおいて、中国本土では一連の経済政策によって2024年のGDP目標は達成したものの、引き続き個人消費の回復に時間を要すると予想されます。

米国では、経済政策の動向に注視が必要なものの、足元の労働市場及び物価指数は安定した推移を見せており、米国経済は底堅く推移すると予想されます。

 

リスクカテゴリー

主要リスクの内容

主な取り組み

戦略リスク

価格競争

ブランド価値の毀損

市場シェアの低下

マーケットニーズ・顧客志向の変化を考慮した商品開発・マーケティング・販売活動を行うとともに、機能的・情緒的な付加価値での差別化により、競合優位性を維持・向上させるべく取り組んでおります。

競合の新規参入

異業種からの参入や競合他社の新たなチャネル進出による市場シェアの低下

お取引先や営業・販売現場からの情報を随時把握するとともに、定期的な消費者調査により、市場の情報をタイムリーに把握することに取り組んでおります。また、積極的に異業種と協業し、外部リソースや技術と連携することで、独自の価値追求にも戦略的に取り組んでおります。

研究開発の遅れ

ブランドの市場競争力の低下

イノベーションの減退

先端技術研究所においては、データサイエンスを用いた基礎的・応用的な研究を行うとともに、フランスのリヨンに分室も開設し、最先端の皮膚科学研究に取り組んでおります。また、外部リソースを活用したオープンイノベーションにも積極的に取り組んでおります。

消費者嗜好の変化

消費者ニーズとの乖離によるブランド価値の低下

消費者の情報を適切に入手するための市場調査の定期的な実施と、日本国内の消費者調査に加え、海外進出国における調査も強化しております。またデジタルの積極的な活用による新たな顧客体験を追求しております。

 

気候変動対応への遅れ

低炭素化社会に対応できないことによる事業収益性の低下

 

温室効果ガス削減をはじめとした気候変動の緩和に向けた様々な取り組みを積極的に行っております。また「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の提言に基づく気候変動が事業に及ぼす「リスク」と「機会」についての情報開示など、国際的な動きへの対応にも努めております。

 

人権問題・雇用差別対応の遅れ

人権リスクに対応できていないことによる事業収益性およびレピュテーションの低下

 

「国連ビジネスと人権の指導原則」などの国際規範に基づき、「コーセーグループ人権方針」を策定し、取締役会の監督のもと、サプライチェーン・自社グループ・消費者および社会の各段階における人権リスクを毎年調査の上、適切な対応の後、結果を積極的に情報開示しております。さらに、コンプライアンス遵守の側面から、各種ハラスメントや個別人権課題に関する教育啓発活動に加え、社内外に向けた相談窓口を設置しております。

 

 

 

リスクカテゴリー

主要リスクの内容

主な取り組み

事業・財務リスク

原材料の価格高騰

原料高騰による利益率の低下

市場リスクを最小限にするために、海外を含めたグローバル調達を推進しております。また、サプライヤー様と良好な関係を保ちながら、必要な原材料や外注生産品を適切な価格でタイムリーに調達できるよう努めております。更に、「原価在庫廃棄低減推進委員会」の設置により、適切な原価の維持や在庫を確保するための取り組みも行っております。

原材料の供給途絶

製品の安定的な供給への支障

売上高・利益率への影響

当社の信用の低下

政治・経済リスク

法的規制の改変・対応

需要変動のリスク

商品の輸出への影響

事業に関連する法規制の情報を日々収集するとともに、製品開発においては、法規制変更に伴う原料規格内容の見直し、代替原料の確保に向け、国内外の情報ネットワークを有効活用し、対応を進めております。

海外進出国エリアの政治情勢の急変

需要変動による売上への影響

従業員の安全リスク

海外現地法人・取引先様との連携を高め、各国、各エリアの経済・政治・社会的状況についてタイムリーな情報収集を通じて、必要な対策を講じております。

事故・災害リスク

自然災害(地震・噴火・津波など)

生産・物流機能の停止による事業活動の停滞や中断

災害発生や感染症が蔓延した場合、速やかに対策本部を設置し、対応策を協議の上、実行いたします。また、災害時に備え、危機管理規程・防災マニュアル・BCP(事業継続計画)等を作成し、職場安全性の確認及び不具合箇所の是正、代替手段の確保にも努めております。

強毒性の感染症の蔓延

生産・供給・販売など事業活動の停滞や中断

人事・労務リスク

優秀な人材の確保

企業競争力の低下

多様な人材が活躍できる環境づくりの取り組みを進めるとともに、採用活動においては、職種別採用の実施による専門人材の獲得や、ビューティーコンサルタント職の処遇制度の改定による優秀な人材の獲得を進めております。

法令違反・賠償リスク

製品事故に関わる問題

重篤な製品事故発生による、お客様からの信用損失と企業

ブランド価値の低下

お客様に安全・安心な商品をお届けすることを第一に考え、商品づくりに取り組んでおります。当社グループの品質に対する考えを「品質方針」として表現し、それを象徴する品質方針メッセージと5つの活動宣言を定め、日々活動しております。

機密漏洩・個人情報の漏洩

情報の漏洩による信用損失・損害賠償

「コンプライアンス推進委員会」によるコンプライアンスの啓蒙に加え、個人情報については法律や経済産業省のガイドラインに基づき「個人情報管理委員会」を設置するとともに、情報セキュリティの強化により、万全な管理体制の構築に取り組んでおります。また、社内研修を定期的に実施し、リスクの共有、防止を徹底しております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

 

セグメントの名称

2023年12月

2024年12月

前期比較

金額

(百万円)

構成比

(%)

金額

(百万円)

構成比

(%)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

化粧品事業

240,450

80.0

255,349

79.1

14,898

6.2

コスメタリー事業

57,656

19.2

64,719

20.1

7,063

12.3

その他

2,299

0.8

2,689

0.8

389

16.9

売上高計

300,406

100.0

322,758

100.0

22,351

7.4

 

 

区分

2023年12月

2024年12月

前期比較

金額

(百万円)

売上比

(%)

金額

(百万円)

売上比

(%)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

営業利益

15,985

5.3

17,364

5.4

1,378

8.6

経常利益

20,252

6.7

21,646

6.7

1,394

6.9

親会社株主に帰属する
当期純利益

11,663

3.9

7,510

2.3

△4,153

△35.6

 

 

当期(2024年1月1日から2024年12月31日まで)における日本経済は、一時的に停滞感が見られたものの、緩やかな景気回復基調を維持いたしました。物価上昇により、個人消費に一部足踏みが残るものの、雇用・所得環境が改善している中、持ち直していくことが期待されます。

当社グループが主に事業展開しているアジア・米国経済において、中国では景気下支えのための金融緩和や一連の経済対策が発動されるも、不動産不況や個人消費の低迷により、景気は減速しております。米国では物価上昇率は穏やかな推移を示し、かつ失業率も引き続き大きな悪化は見られない一方で、新政権の経済政策を巡る動向には注視が必要であります。

 

日本の化粧品市場においては、リオープニング効果の一服感により、売上成長率は下期に入って緩やかになったものの、訪日客の増加を受けたインバウンド売上の後押しもあり、堅調に推移いたしました。

アジアの化粧品市場においては、中国では市場全体で停滞が見られる中で、客単価の低下や消費のダウングレードといった厳しい環境が続いております。11月の大型ECセールでは、多くのプラットフォームが過去最長の販売期間を設定したにもかかわらず、化粧品市場全体で減収となりました。

米国の化粧品市場においては、売上成長率が年初より徐々に減速する中、ホリデー商戦は前年を上回る売上高となりました。しかし、多くの消費者が価格に対してより敏感になっていること等、今後の消費者動向については留意する必要があります。

 

このような市場環境の中、当社グループは2024年11月に公表した中長期ビジョン「Vision for Lifelong Beauty Partner―Milestone2030」を推進しております。現在は、フェーズ1「構造改革の完遂と基盤再構築」に位置付けており、日本事業の収益性向上に向けた事業構造の見直しとアジア事業の売上拡大に向けた投資を実施いたします。詳細は、第2[事業の状況][1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等]をご覧ください。

 

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ11,463百万円増加し、383,121百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,870百万円増加し、92,490百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,592百万円増加し、290,630百万円となりました。

 

b. 経営成績

当期における当社グループの業績については、中国市場において減収となった一方、日本の主要ブランド及び欧米を中心に展開する「タルト」が売上高を大きく伸ばしたことにより、連結売上高は前期比7.4%増の322,758百万円(為替の影響を除くと前期比5.0%増)となり、連結売上高に占める海外売上高の割合は34.5%となりました。

利益については、プロダクトミックスの変化やグローバルな原料規制への対応に伴う廃棄増等により原価率が上昇しましたが、増収及び販売費のコントロールを実施した結果、営業利益は17,364百万円(前期比8.6%増)、経常利益は為替差益の増加により21,646百万円(同6.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、第3四半期以降に実施した中国の構造改革に伴う特別損失の計上により、7,510百万円(同35.6%減)となりました。

 

1) 化粧品事業

化粧品事業における売上高は、ハイプレステージ・プレステージともに増収となりました。

ハイプレステージでは、「コスメデコルテ」が減収となるも、「タルト」や「アルビオン」が好調に推移したことで、ハイプレステージ全体では増収となりました。「コスメデコルテ」は、日本国内で過去最高の売上高を記録するも、アジアにおける減収を打ち返すことができませんでした。プレステージでは、主要ブランドである「雪肌精」や「ONE BY KOSÉ」、「エスプリーク」の好調により、増収となりました。

同セグメントにおける営業利益は、プロダクトミックスの変化やグローバルな原料規制に伴う廃棄増等を要因に原価率が上昇したことで、減益となりました。

これらの結果、売上高は255,349百万円(前期比6.2%増)、営業利益は15,052百万円(同15.8%減)となりました。

 

2) コスメタリー事業

コスメタリー事業における売上高は、特にコーセーコスメポート㈱の「ソフティモ」「クリアターン」やコーセーセルフブランドの「メイクキープミスト」が寄与し、増収となりました。

同セグメントにおける営業利益は、増収効果に加えて、販売費のコントロールを主因に、大幅な増益となり、営業利益率は10%台となりました。

これらの結果、売上高は64,719百万円(前期比12.3%増)、営業利益は6,980百万円(同137.3%増)となりました。

 

3) その他

その他の事業は、主にアメニティ事業での増収に加えて、原価率の低下が寄与したことで、増益となりました。

これらの結果、売上高は2,689百万円(前期比16.9%増)、営業利益は1,427百万円(同45.9%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より2,088百万円増加107,757百万円(前期比2.0%増)となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、18,379百万円の収入(同39.6%減)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益18,656百万円、非資金費用である減価償却費9,778百万円、退職給付に係る資産の増加3,122百万円、売上債権の増加3,776百万円、仕入債務の減少7,150百万円、その他の資産の減少2,829百万円、その他の負債の増加2,897百万円及び法人税等の支払い6,546百万円等であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、8,932百万円の支出(同20.4%減)となりました。主な要因は、定期預金の減少による純収入21,621百万円、有形固定資産の取得による支出18,761百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出11,588百万円及び無形固定資産の取得による支出2,286百万円等であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、8,684百万円の支出(同10.3%減)となりました。主な要因は、配当金の支払い7,988百万円等であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

化粧品事業

169,103

99.0%

コスメタリー事業

41,808

114.3%

その他

1,457

113.3%

合計

212,369

101.7%

 

(注) 金額は製造会社販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
 

 

b. 受注実績

重要な受注生産を行っておりませんので記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

化粧品事業

255,349

106.2

コスメタリー事業

64,719

112.3

その他

2,689

116.9

合計

322,758

107.4

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は下記のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。なお、本表作成に際しては経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告に影響を与える見積りが必要ですが、この判断及び見積りには過去の実績を勘案するなど、可能な限り合理的な根拠を有した基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点の見積りと異なる場合も考えられます。

当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計上の見積り及び見積りに用いた重要な仮定は、第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表]の[注記事項](連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)及び第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表]の[注記事項](重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績等
1) 財政状態

当連結会計年度末の流動比率は337.7%、前連結会計年度末に比べ27.9ポイント減少、当座比率は230.4%、前連結会計年度末に比べ22.0ポイントの減少となりました。主な理由は下記のとおりであります。

資産は、前期末に比べ11,463百万円の増加となりました。

受取手形及び売掛金の増加5,615百万円、土地の増加1,467百万円、建設仮勘定の増加11,645百万円、のれんの増加9,888百万円、投資有価証券の増加911百万円、繰延税金資産の増加1,115百万円、現金及び預金の減少18,875百万円、原材料及び貯蔵品の減少1,084百万円、機械装置及び運搬具の減少925百万円等によるものであります。

負債は、前期末に比べ3,870百万円の増加となりました。

未払法人税等の増加1,853百万円、未払費用の増加1,816百万円、支払手形及び買掛金の減少1,271百万円、電子記録債務の減少3,631百万円等によるものであります。なお、有利子負債残高は11,224百万円、デット・エクイティ・レシオは0.04倍となりました。

 

2) 経営成績
(売上高)

当連結会計年度の売上高は、322,758百万円(前期比7.4%増22,351百万円増)となりました。

これをセグメントごとに分析すると、当社グループの主力事業である化粧品事業及びコスメタリー事業の売上高がそれぞれ255,349百万円(同6.2%増14,898百万円増)、64,719百万円(同12.3%増7,063百万円増)となりました。その他の事業の売上高は2,689百万円(同16.9%増389百万円増)となりました。

(営業費用)

当連結会計年度の売上原価は、100,185百万円(前期比12.3%増10,975百万円増)となりました。

販売費及び一般管理費は、205,208百万円(同5.1%増9,997百万円増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高比率は1.4ポイント減少いたしました。

(営業外損益)

当連結会計年度の営業外損益は、4,281百万円の利益(前期比0.4%増、前期比15百万円増)となりました。当連結会計年度は為替差益2,708百万円(同36.9%増、730百万円増)を計上しております。

(特別損益)

当連結会計年度の特別損益は、2,989百万円の損失(前期比2,243百万円増)となりました。事業整理損4,572百万円(前期比4,236百万円増)を特別損失に計上しております

 

3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より2,088百万円増加107,757百万円(前年比2.0%増)となりました。当連結会計年度の各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因につきましては第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

当社グループは「Vision for Lifelong Beauty Partner―Milestone2030」の実現に向け、生産設備の新設及び更新、新規市場進出のための投資、デジタルトランスフォーメーション推進への投資などを実施してまいります。それぞれの投資のタイミングにつきましては、資金残高及び資金調達のバランスを検証し、優先順位をつけて実施してまいります。

自己資金による事業運営、設備投資、株式投資、配当などを行っておりますが、金融機関とは28,000百万円のコミットメントラインを締結しており、事業運営上必要な投資などへの資金につきましては、外部調達も可能となっております。

当社グループの財務状況、安定した業績については、金融機関及び金融市場からの評価は高く、自己資金が不足した場合においても外部調達は可能と判断しております。

利益配分につきましては安定配当を基本としておりますが、今後の事業拡大のための内部資金の確保に配慮しつつ、財政状態、業績、配当性向などを勘案し、配当金額を決定しております。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

化粧品市場においては、リオープニング効果の一服感により、売上成長率は緩やかになったことに加え、一部地域の市場停滞が売上に影響を与えました。
 2025年の世界経済においては、各国の中央銀行による金融政策に加え、米国の新政権の経済政策による影響に注目が集まっており、市場変化に対するタイムリーな対応の成否が、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼすことが想定されます。

 

c. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資金調達の状況につきましては、事業継続に必要と考える資金は確保していると認識しております。

今後の資金使途につきましては、内部留保により財務体質の強化を図る一方、設備投資やM&Aに取り組むことで将来のキャッシュ・フローの創出につなげ、資本効率の向上を図ってまいります。また、一時的な余剰資金の運用につきましても、安全性を第一に考慮し運用商品の選定を行ってまいります。

 

d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、売上高成長率、売上高営業利益率、EBITDAマージン、ROICを重要な経営指標としております。それぞれの前連結会計年度、当連結会計年度推移及び「Vision for Lifelong Beauty Partner―Milestone2030」でのそれぞれの目標に対する進捗については、以下のとおりです。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

Milestone2030

売上高成長率

+3.9%

+7.4%

CAGR+5%以上

売上高営業利益率

5.3%

5.4%

12%以上

EBITDAマージン

8.8%

8.8%

18%以上

ROIC

3.1%

2.6%

10%以上

 

 

 

当連結会計年度は売上高成長率及び売上高営業利益率は前連結会計年度を上回ったものの、EBITDAマージン及びROICは前連結会計年度を下回りました。その要因として、経営成績が前連結会計年度を上回ったものの、新規連結子会社の買収及び南アルプス工場の建設等により投下資本が増加したためであります当連結会計年度における各重要な経営指標につきましては、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況で述べたとおりであります。

(注) ROIC=税引後営業利益/ (有利子負債と純資産の合計の期中平均値)×100

 

e. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1) 財政状態
(化粧品事業)

グメント資産は、現金及び預金の増加2,100百万円、売掛金及び受取手形の増加3,296百万円、棚卸資産の減少1,747百万円、有形固定資産の増加4,668百万円、無形固定資産の増加8,963百万円等により、前連結会計年度末に比べ18,110百万円増加266,180百万円となりました。

(コスメタリー事業)

グメント資産は、現金及び預金の増加133百万円、売掛金及び受取手形の増加2,149百万円、棚卸資産の増加337百万円、有形固定資産の増加4,910百万円等により、前連結会計年度末に比べ9,561百万円増加53,015百万円となりました。

(その他)

グメント資産は、現金及び預金の減少269百万円、売掛金及び受取手形の増加181百万円、有形固定資産の増加527百万円等により、前連結会計年度末に比べ345百万円増加4,454百万円となりました。

 

2) 経営成績

当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績につきましては、第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b. 経営成績で述べたとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

2024年12月10日付でPURI CO.,LTD.の株式譲渡について株式譲渡契約書を締結し、2024年12月26日に株式を取得いたしました。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、お客様のニーズに合った化粧品を市場に提供するために、主に、以下の国内二拠点を中心として研究開発活動に取り組んでおります。

コーセー製品開発研究所‥‥‥‥‥‥‥製品開発研究・管理、海外市場研究、薬事戦略、

サステナビリティ研究、研究戦略・管理

コーセー先端技術研究所‥‥‥‥‥‥‥先端技術研究、皮膚科学研究、基盤技術研究、品質保証研究、

IT関連技術開発・管理

当連結会計年度におきましては、更なる顧客価値創出のための技術開発力と品質保証体制の強化、グローバル化への対応を進め、研究開発活動のより一層の向上に努めました。

当連結会計年度における研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

製品研究分野の研究成果として、当連結会計年度において開発いたしました主な製品は以下のとおりであります。

 

 

スキンケア製品・ヘアケア製品

製品名称等

特徴

セグメントの

名称

コスメデコルテ リポソーム アドバンストリペアリップセラム

肌とは異なる口唇の細胞間脂質特性を明らかにした独自性の高い研究成果に基づき、口唇の角層バリアに効果的にアプローチするリポソーム技術を搭載。とろけるようなリップセラムベースに多重層リポソームを安定配合することに成功し、口唇荒れを根本原因から改善するだけでなくエイジングケアまでも叶える、シリーズ初の唇リペア美容液。

化粧品事業

コスメデコルテ 薬用マイクロバーム ローション

独自のカプセル化技術を深化させ、一般的な化粧水の約100倍量の油分を微細な薄層カプセルに閉じ込めることに成功。化粧水ならではの、みずみずしい使用感と、バームのようなリッチなシールド効果とを併せ持ち、年齢、性別、肌質を問わずオールスキンタイプに使用できる品質を具現化。また医薬部外品として肌あれ、あれ性やにきびを防ぐ等の効果も有している。

化粧品事業

薬用雪肌精 ブライトニングエッセンスローション

美白と肌あれ防止の効能を併せ持つ、甘草由来の有効成分 グリチルレチン酸ステアリルSWを独自に開発。これを、独自の高圧微細リン脂質乳化技術を用いて生体類似エマルジョンカプセルに安定配合し、薬用雪肌精ならではのみずみずしい使用感と角層深くまでの浸透感を具現化した。

化粧品事業

ONE BY KOSE クリアピール セラム

脂腺細胞のオートファジー不全により脂腺細胞が分解されずに堆積し角栓になるという角栓形成メカニズムを世界で初めて解明。この研究成果に基づいて角質ケア成分トレハロースを高濃度配合し、角栓や古い角質を一掃できる毛穴ケア美容液を具現化した。

化粧品事業

ONE BY KOSE セラムヴェール ディープリペア

角層バリアを担うセラミド等の細胞間脂質充填構造に着目し、バリア能を低下させる悪玉セラミド®の発生メカニズムを新たに解明。アセチルアミノ酸が悪玉セラミド®発生を抑制することを見出した独自知見と、『肌の水分保持能改善』効果を有する有効成分ライスパワー®No.11とを組み合わせ、うるおいの隙間がない肌へ導く高機能保湿美容液を開発した。

化粧品事業

雪肌精

スキンケアUVエッセンスジェル

スキンケアUVエッセンスミルク

2019年から継続している『サンゴにやさしい日やけ止め』の研究知見に基づき、みずみずしい使用感のジェルタイプと、汗・水・動きにも強いミルクタイプとを、いずれもサンゴフレンドリー処方と両立して品質具現化(SPF50+, PA++++)。

化粧品事業

ジュレームiP

タラソリペア キューティクルボンド ヘアオイル

若年層に多い、枝毛の悩みに着目し、水系成分の中に高濃度の油分を閉じ込めたオイルゲルを新規に開発。濡れた髪にもなじみが良く、枝毛やぱさつきなどの毛髪ダメージを効果的に補修。

コスメタリー事業

ディアチャイルドスキン

ぬるミルク

新生児から敏感肌の大人まで使える薬用高保湿乳液『ぬるミルク』を開発。新生児期からのスキンケアによりバリア機能を健全に保つことで、アトピー性皮膚炎などの予防に繋げられることを期待し、都内数か所の保育施設等でPoCを実施。幼児期からのスキンケアの習慣化、定着化を目指し今後も啓発活動に取り組む。

化粧品事業

 

 

メイクアップ製品

製品名称等

特徴

セグメントの

名称

コスメデコルテ ゼンウェアグロウ

上質な使用感と高い化粧持ちで評価を得ているリキッドファンデーションゼンウェアからグロウタイプを発売。ツヤのある仕上がりの持続効果と共に、落とした後も続くうるおい効果も実証済み。

化粧品事業

メイクキープミスト EX+

高い市場評価を受けているメイクキープミストのパワーアップリニューアル。自社オリジナルの耐久性と柔軟性を併せ持つ新素材を配合し、機能性をさらに向上した。シリーズ累計販売1400万本を突破。

コスメタリー事業

アディクション ザ 

アイシャドウ パレット +

 

市場で高い評価を得ていたザ アイシャドウ パレットのリニューアル。より「上質なテクスチュア」と「クリアな発色」にこだわり、グローバルでも通用する品質に作りこむ。多彩な質感要望に応えるため、色ごとに最適なベースを選択し開発。

化粧品事業

ジルスチュアート ブルームニュアンス ブロウパレット

 

人気のアイブロウパウダーをアップデートして新発売。自社オリジナルの弾力ゲルを粉体表面に均一にコートさせる技術を開発し、パウダー特有のふんわりとした仕上がりで、こすれにも強く化粧持ちの高いパウダーアイブロウを具現化。市場での評価も高く、ベスコスを多数受賞。

化粧品事業

ヴィセ

ネンマクフェイク リキッド

ツヤと色が続くネンマクフェイクルージュのリキッド版。OW乳化ベースでオイルのツヤとティント成分の色もちを併せ持つ粘膜カラーのリキッドルージュ。みずみずしい使用感と色ツヤが長持ちする機能性を両立した新ベースを開発した。

コスメタリー事業

アディクション ザ リップバーム ソフトマット

唇に自然になじむソフトマット質感でありながらマットリップにありがちな乾燥感がなく保湿効果が持続するリップ。ソフトマット質感をパウダーだけでなく乾燥感がないフロストゲルと保湿効果のある成分の配合によって具現化した。ミラーレスで使いやすい細身スティック新容器を採用。

化粧品事業

 

 

基礎研究分野では、皮膚老化に関わる細胞の老化連鎖因子を発見し、また、iPS細胞から新たな皮膚モデルを作成することにも成功し、それぞれ国内の学会で受賞するなど高い評価を得ております。本成果は、皮膚の若返りに関する成分や化粧品のパーソナライズ化に向けた評価系の開発につなげてまいります。フランスリヨンでは、心理的ストレスと肌のバリアの関係性を示すウェルビーイング研究を進め、化粧品分野における代表的な国際学会であるIFSCCにて高い注目を集めました。また、臨床試験により日やけは運動時の疲労を高めること、そして日やけ止めの使用が運動時の疲労軽減の面でも有用であることを示す化粧品の新たな価値づけの研究や、質量分析機による化粧塗膜中の成分の可視化技術を経皮吸収試験に応用し、3Dで成分の浸透性を見るといった新たな評価技術の開発などを進めております。

一方でデジタル技術を駆使した先端的な研究にも取り組んでおります。関西大学との共同研究では、化粧品のオンラインカウンセリングサービスにおいて、お客さまの気分を音声からリアルタイムで推定する数理モデル(気分推定モデル)の開発に成功いたしました。また、2020年にサービス化したシワ予測モデルのさらなる進化を目指し、個々の老化特性をより深く理解するための新たなエイジング予測モデルの開発にも着手しています。これらの研究成果は、今後、新製品の開発や製剤のパーソナライズサービスに随時応用し、より個々のニーズに合ったソリューションの提供を目指してまいります。

また、顧客層のさらなる拡大を目指し、子どもや男性のニーズに焦点を当てた調査研究も進行中であります。特に、化粧品のグローバル市場において新たに注目されるZalpha世代を対象とした独自調査を実施した結果、化粧品使用の低年齢化が顕著であることが確認されております。この世代は、外見や容姿に対する意識が高く、容姿や外見とポジティブに向き合うための教育や支援の必要性が明らかになっております。さらに、ウェルビーイング領域や感性研究にも注力しており、多様性を重視した製品開発やサービスの方向性を探る活動を強化していく方針であります。

 

以上の結果、当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は6,384百万円であり、セグメントごとの内訳は、化粧品事業5,077百万円、コスメタリー事業893百万円であります。また、各事業部門に配分できない基礎研究費用は413百万円であります。