(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「紙媒体」と「電子媒体」両方でのサービス、ソリューションを提供するユニークな情報ベンダーとして、証券会社、機関投資家、上場会社の各セクター間での情報伝達とドキュメント処理の各サービス、ソリューションを提供しております。これらのサービス・インフラを強化するとともに顧客基盤をさらに拡大し、インタラクティブな情報仲介サービスへ発展させることを会社の基本方針としております。
各種情報の処理・伝達方法の効率化への要求はますます高まっており、多様化、増大化する情報サービスの領域で、当社の企業理念である以下の4つを掲げ、コンプライアンス、社会環境に十分配慮し、事業の発展、企業価値の向上を目指します。
1. Innovation「革新」
「Idea」「Action」「Identity」におけるInnovationを追求。独創的な発想を確実にカタチに変え、市場へ継続投入しながら卓越した価値を創造します。
2. Fair「公正」
公明公正なお客様への対応で最良のパートナーシップを構築。社内では公平かつ正当な人事制度を確立。社内外で強固な信頼関係と組織作りを実現します。
3. Initiative「先取」
技術・サービス・マーケットにおいて常にイニシアチブを取り、アイフィスジャパンならではの高い付加価値を提供しながら金融情報サービス業界をリードします。
4. Satisfaction「充足」
創意工夫と自立の精神を養い、お客様の満足に確実に応える姿勢を徹底。社員の自己実現の喜びと企業価値が比例して高まる組織づくりを目指します。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの主な事業は、1.投資情報事業、2.ドキュメントソリューション事業、3.ファンドディスクロージャー事業、4.ITソリューション事業、5.ランゲージソリューション事業の5事業に分かれております。これら5つの事業をバランス良く拡大しながら売上の増加を図りつつ、それぞれの事業が粗利率の高いサービスを拡大させることで、収益性の向上を目指しております。主な成長性・収益性の財務的な指標として、営業利益率の平均水準を15%、自己資本利益率(ROE)の平均水準を15%として目標に掲げております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは「情報提供」サービスの電子配信ビジネスと「情報処理」を主としたドキュメントビジネスを両輪とした事業展開を行ってまいりました。ここ数年では印刷会社向けW2Pクラウドサービスや機関投資家向け運用業務支援アプリケーションサービスなどのサービス・ラインアップを拡充してきております。また、今後は翻訳・通訳事業についても一つの大きな柱として事業展開を行ってまいります。これらのサービスを統合することで顧客ニーズの高度化・多様化に応え競争力の向上を図ることを基本的な経営戦略としております。今後の具体的な事業展開としては、以下の市場・サービスに重点をおいてまいります。
① 発行市場に関する情報配信
連結子会社の株式会社キャピタル・アイでは、債券や株式の発行市場情報を取材して作成したニュースを、インターネットまたは金融情報端末を通して配信するサービスを提供しており、大手の証券会社、投資銀行、発行体から順調に購読契約を獲得し業績を拡大してきております。株式会社キャピタル・アイの事業は安定的に推移しており、今後も、当社グループの収益基盤の一つとして寄与するものと位置づけております。
② 個人向け投資情報サービスの拡大
当社では、機関投資家向けに提供しているIFIS Consensusを加工し、オンライン証券会社やメディア(雑誌、新聞、金融ポータルサイト)等を通じ、個人投資家向けの情報提供サービスを行っております。また2008年4月からはポータルサイト「Yahoo! JAPAN」上のファイナンス情報サービス「Yahoo!ファイナンス」のパートナーサイトとして、個人投資家向け情報提供サービス『IFIS 株予報』を開始し、業績予想や企業開示情報などを連動したコンテンツにより、多くのユーザーに利用されております。今後も新規コンテンツの追加などにより収益性の強化に努めてまいります。
③ ITソリューション事業の拡大
当社及び子会社の株式会社インフォーテックのITソリューション力と、これまで当社が提供してきたドキュメント関連のサービスや情報提供のサービスを組み合わせることで、当社の顧客の業務の生産性向上に寄与する付加価値の高いサービスを提供していく方針です。
④ 「IFISブランド」の確立
機関投資家における証券調査レポートの閲覧サービスに関して、機関投資家の当社グループに対する認知度はかなり高いものと考えておりますが、個人投資家における当社グループの認知度は競合他社に比べ低いものと認識しております。当社グループとしては、個人向けサービスの開発やメディアへの露出度を高めることで、個人投資家市場における「IFISブランド」の確立に努めます。
⑤ ランゲージソリューション事業の拡大
翻訳・通訳サービスについて、子会社の株式会社アイコスと株式会社テンナイン・コミュニケーションの双方のナレッジを組み合わせることによりシナジー効果を発揮し、より顧客のニーズを捉えた高品質のサービス提供に努めます。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 組織体制について
当社では、継続的に企業価値を高めていくために、事業規模に応じた内部管理体制の充実が不可欠であると認識しております。現在、当社グループは国内に8社の連結子会社、海外に2社の子会社と1社の関連会社を有する規模に拡大してまいりました。各社が適正に事業活動を行っていくために、業容拡大に対応した組織の整備を行い、内部統制が有効に機能する経営管理体制の確立が重要であると認識しております。
② 人材の確保と育成について
当社は金融情報サービスベンダーとして、金融市場の進歩や変化に対応できる専門家、IT技術の進化と高度化に対応した技術者、各部門を統括できるマネジメントスキルを備えた人材等の確保及び育成が重要な経営課題であると認識しております。
これまでも即戦力となる人材の採用や、パートナー企業との協業により、必要な専門知識・リソースを確保してきましたが、競合他社を超える革新的な金融情報サービスを提供していくためには、当社グループ各部門の従業員の専門性の維持・向上が不可欠と認識しております。そのために当社グループでは社内外研修やOJTを通じて従業員の能力向上を図るとともに、優秀な人材の採用も積極的に進めております。
③ システム障害の防止と対応
当社グループの主力サービス「IFIS Research Manager」や「IFIS Consensus Manager」は、独自に開発したシステムにより運営されております。既に多くの投資家の情報インフラとして日々活用されていることから、システムの安定運用は経営上最も重要な課題の一つと認識しております。
対策として、効率的なキャパシティ管理のほか、2重化構成、24時間監視、バックアップシステム等の施策により、障害発生を防ぐとともに障害発生時の混乱及び損害の軽減に努めております。
④ 情報セキュリティの強化
機密性の高い情報を扱う当社グループとしましては、現在も万全の情報セキュリティの体制をとっておりますが、個人情報保護法が普及したことにより、その重要性はますます高まるものと思われます。当社グループといたしましては、ネットワークにおけるデータやプログラムの保護、またはプライバシー保護に関する様々なネットワークセキュリティにおいて、より厳格なセキュリティ体制を構築することを推進してまいります。
以上を実現するためには、企業基盤を整備し、正確でタイムリーな情報提供ができる情報処理体制、クオリティーの高いサービスを提供できる営業体制を維持する必要があります。そのためには優秀な人材の採用と社内教育の充実が不可欠であると考えております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社では、サステナビリティに関するリスク及び機会についても、その他の経営上のリスク及び機会と一体的に監視及び管理する体制を取っております。当該体制の下、取締役会が経営の意思決定機能と業務担当取締役による業務執行を管理監督する機能を有しており、毎月定例で開催し、必要に応じて臨時取締役会を開催の上、審議を行っております。また、当社は「監査等委員会設置会社」であり、取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員(社外取締役)が取締役会の構成員として、業務執行に関する監査、コンプライアンスや社内規程の順守状況、業務活動の適正性かつ有効性に関する確認を行っております。また、当社では「企業行動規範」の中に環境保全への寄与について定め、従業員が日常業務の中で「ムリ・ムダ・ムラ」をなくし、省資源・省エネルギーを徹底して、環境にやさしい職場を実現できるよう努めております。
(2)戦略
当社グループは、「紙媒体」と「電子媒体」両方でのサービス、ソリューションを提供するユニークな情報ベンダーとして、証券会社、機関投資家、上場会社の各セクター間での情報伝達とドキュメント処理の各サービス、ソリューションを提供しております。これらのサービス・インフラを強化するとともに顧客基盤をさらに拡大し、インタラクティブな情報仲介サービスへ発展させることを会社の基本方針としております。
各種情報の処理・伝達方法の効率化への要求はますます高まっており、多様化、増大化する情報サービスの領域で、当社の企業理念である「革新」「公正」「先取」「充足」を掲げ、コンプライアンス、社会環境に十分配慮し、事業の発展、企業価値の向上を目指します。また、当社グループが主に行っている金融業界向けのドキュメントソリューション・DXソリューション等の各種サービスの開発・提供を通じて、エコ素材の活用・普及、省エネルギー、カーボンニュートラル等の実現に向けた活動に努めてまいります。
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針)
人材の育成につきましては、目標値等は定めておりませんが能力開発・研鑽のため、資格取得の推奨、社内教育、外部研修支援等を実施し、人的資本の充実に取り組んでおります。
社内環境整備につきましては、目標値等は定めておりませんがフレックスタイム制度やテレワーク勤務を導入し、ワークライフバランスを実現しやすい社内環境を構築しております。
(3)リスク管理
サステナビリティに関する事項を含む経営戦略上のリスクについて、当社では「コンプライアンス規程」を定め、当該規程の下に設置したリスク・コンプライアンス委員会にて、リスクの識別、リスク発生防止及びリスク発生時の対応策の検討を行い、取締役会に報告の上、リスクを低減させる施策を実施しております。
(4)指標及び目標
現在、当社及び連結子会社に適用される統一的な指標の管理や取組みは行っておりません。以下は、当社が女性活躍推進法及び次世代育成支援対策推進法に基づき策定、公表している一般事業主行動計画における指標及び目標であります。
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計画期間 |
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内容 |
(目標) (対策)有給休暇の取得を促す情報発信等の活動を行う。各部署のKPIに有給取得率を加えていく。 (実績)10.3日/年(2024年12月31日現在) |
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(目標) (対策)昇進・昇格に関する意識調査を実施する。女性社員に管理職育成を目的とした研修を積極的に受講してもらう。 (実績) |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 「IFIS Research Manager」における開示許諾について
「IFIS Research Manager」は、主要証券会社の証券調査レポートを主なコンテンツとする、機関投資家や上場企業のIR部署を対象とした情報提供サービスです。「IFIS Research Manager」における証券調査レポートは、証券会社がユーザーである機関投資家や上場企業に対する開示許諾を行っており、当社にはその権限がありません。したがって、証券会社の開示許諾の状況によっては機関投資家や上場企業といったユーザーの満足度が左右され、解約の発生や新規顧客の獲得が困難になり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 情報ベンダーとしての信頼性の低下について
当社グループの主要顧客である金融機関、証券会社、機関投資家において「IFIS Research Manager」などのウェブサービスは広く利用されており、高い認知度を有しているものと当社では認識しております。しかしながら、何らかの原因により情報提供ベンダーとしての信頼性を損なわせるような事態が生じた場合、あるいは当社の提供する情報の価値が損なわれるような事態が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
③ ウェブサービスにおける技術革新等への対応力について
当社グループが提供するウェブサービスはインターネット関連技術を基盤としておりますが、今後の技術革新や技術的な顧客ニーズの変化への対応に遅れが生じることとなる場合には、今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
④ システムトラブルの影響について
当社グループのウェブサービスは、主にインターネット上において金融情報サービスを提供しているという性格上、当社グループの事業運営は社内外の様々なネットワーク・システム及びコンピューター・システムに依存しております。
ⅰ 当社グループにおけるシステムトラブル
当社グループでは、システムの主要な部分を占めるインターネットを介しての情報配信やアプリケーションサービス、コンテンツの提供において、そのサーバー等の管理はセキュリティを重視したシステム構成を整えています。
サーバーについてはハードウエア管理をアウトソーシングし、システム的・人的なモニター監視を行い、障害発生時に即座に対応できる体制とシステムの二重化やバックアップ体制を整えております。
しかしながら、アクセスの急激な増加等の一時的な負荷増大によって委託先のサーバーが動作不能な状態に陥った場合や、火災・震災をはじめとする自然災害、停電等の予期せぬ事由により委託先のシステムやサーバーに障害が生じた場合、またはインターネットの通信業者であるISP等のシステムに障害が生じた場合、当社グループのサービスを停止せざるを得ない状況が起こる可能性があります。
これらの事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
ⅱ 事業パートナー、その他のシステムトラブル
当社グループのプロダクトの一部は、そのサービスを顧客に提供する際に事業パートナーやISP等のシステムに依存しております。そのプロダクトはインターネット上における利用を前提にしており、当社グループのプロダクトを利用する証券会社、機関投資家、上場企業では何らかの形でISP等のシステムを利用することになります。
このような状況であるため、事業パートナーやISP等のネットワーク環境やハードウエアの不具合により、当社グループの提供するサービスに障害が生じるおそれがあります。また、アクセスの急激な増加等の一時的な負荷増大によって事業パートナーやISP等のサーバーが動作不能な状態に陥った場合や、火災・震災をはじめとする自然災害、停電等の予期せぬ事由により事業パートナーやISP等のシステムに障害が生じた場合、当社グループのサービスを停止せざるを得ない状況が起こる可能性があります。これらの事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 証券会社再編等による調査レポートの発行数の影響について
当社の主要な顧客基盤の一つである証券会社において、株式市場の低迷や証券会社間の競争激化等の環境変化により、合併、統合などによる証券会社数の減少、調査レポート総数の減少の可能性があります。このような事態が生じた場合、「IFIS Research Manager」の顧客満足度の低下に伴う解約の発生や新規顧客の獲得が困難となり、当社の業績に影響を与える可能性があります。
⑥ 外注依存について
当社グループは、ドキュメントソリューション事業、ファンドディスクロージャー事業において、印刷、製本、宛名印字・封入・封緘、配送までをトータルにサービス展開してきました。多様な顧客要求に柔軟に対応するため、印刷、配送の多くを外注とするファブレス経営を行っており、複数の印刷会社及び配送会社と外注契約を締結しております。これにより、印刷物の特性に応じた最適な印刷会社を選定することが可能となっております。このように当社グループは、外注印刷配送のインフラを拡大強化することで業務量増大に対応してきたため、外注委託先の経営動向は当社グループの事業戦略上重要な要素となっております。当社グループとしては、外注委託先の多様化を図ることによってリスク分散を行っておりますが、外注委託先の経営に問題が生じたり、外注委託先に自然災害や不慮の事故が発生し、顧客要求に柔軟に対応することが困難な状況になった場合には、事業の収益性に影響が及ぶ可能性があります。
⑦ 投資信託市場における電子交付制度の普及について
ファンドディスクロージャー事業においては、ファンド募集の際に必要となる目論見書の印刷・配送業務を行っております。電子交付とは、販売会社から投資家へ交付が義務付けられている書類のうち、法令により定められた目論見書等について、紙媒体に代えて電磁的な方法で交付するものであり、投資信託における目論見書の電子交付制度も既に存在いたしますが、現状の活用度合いは高くないものと認識しております。しかし、今後の規制緩和や技術革新などでその利用が促進されることとなった場合には、目論見書印刷が減少する可能性があります。目論見書印刷市場が大幅に縮小した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 経済、株式市場の低迷の影響について
世界経済・金融情勢の悪化、また国内外の株式市場が低迷した場合、当社グループの主要顧客である金融機関、証券会社、機関投資家の業績が悪化する可能性があります。その場合、情報提供ベンダーへの予算縮小・削減が想定され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 競合環境について
当社グループは、投資情報事業におけるウェブサービスと、ドキュメントソリューション事業及びファンドディスクロージャー事業における印刷・配送サービスを主力に事業展開していますが、それぞれの競合環境は以下のとおりです。
ⅰ 投資情報事業におけるウェブサービス
現在、証券調査レポート閲覧サービスを行っている企業は、国内系大手証券情報ベンダー、外資系大手情報ベンダー合わせて数社あります。当社グループ以外は、主にリアルタイムのマーケット情報を提供する情報端末ベンダーであり、証券情報のフルラインの情報提供を主力サービスとしている企業です。
「IFIS Research Manager」はウェブサービスであることから、他社の端末サービスのように初期導入コストが発生せず、また証券調査レポートに特化したサービスであることから、金融情報のフルラインサービスと比べて1ID毎の低価格化を実現しております。また、全文検索機能を備えたユーザーフレンドリーなインターフェースを提供し、機関投資家を中心に高い満足度を得ていると認識しております。しかしながら、今後競合関係の激化、この機能に特化したサービスに他の競合企業が参入した場合、プロダクトやサービスの質への要求及び価格競争が激しくなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、コンセンサスについては、現在コンセンサスを提供している競合他社は外資系情報ベンダーを含めて数社あります。『IFIS Consensus』は、データの精緻性・即時性追求のために社内の専門スタッフがデータ制作に従事し、また、当社独自のチェック体制を確立しており、精緻性・即時性の面でユーザーから高い評価をいただいていると認識しており、競合他社に対する優位性はこの点にあると考えております。しかしながら、今後競合関係の激化、また即時性・精緻性の点で優れた企業が現れた場合は、プロダクトやサービスの質への要求及び価格競争が激しくなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
ⅱ ドキュメントソリューション事業及びファンドディスクロージャー事業における印刷・配送サービス
証券・生命保険資料、投信目論見書並びに決算短信・決算説明会資料といった金融・財務関連ドキュメントの印刷・配送サービスにおいては、大手印刷会社をはじめ競合企業が数社あります。当社グループは、金融・財務関連ドキュメントに特化することで専門性の高い印刷・配送サービスを提供しており、価格面・品質面において競合企業との間で差別化が可能であると考えています。
しかしながら、今後の競合関係の激化や金融・財務関連ドキュメント印刷・配送に特化した他の競合企業が市場に参入した場合には、価格及び品質における競争が激しくなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑩ 情報セキュリティ等について
ⅰ 情報セキュリティ及び個人情報保護について
当社グループでは、システムダウンやコンピューターウイルス、不正アクセスなどにより、システム障害や情報の流出、漏洩、改ざんなどのリスクを防止し、安全な情報環境を確保することが情報セキュリティの観点から重要であると認識しております。特に利害関係者や外部関係機関から受領した重要な情報資産を適切に保護することは、業務運営上最重要事項と認識しております。このため、当社グループでは情報セキュリティ基本方針を策定するとともに徹底した社員へのモラル教育や内部監査の強化を行うことで、内部からの漏洩防止に努めております。また現在当社はISMS認証基準の国際規格であるISO27001の認証を2006年9月に取得し、そのガイドラインに基づき情報セキュリティシステムを構築・運用しております。一方当社が保有する個人情報の取扱いについては、個人情報保護方針及び個人情報保護規程を策定することによって、不正利用、不正アクセス、情報漏洩、改ざんなどのリスクから個人情報を保護するための安全管理措置を講じております。個人情報の取扱いについてもISMSの管理手法に基づく適正管理を実施し、その社内運用プロセスとして、情報セキュリティポリシー文書の策定(Plan)→運用(Do)→運用チェック(Check)→改善(Act)を継続的に行うことにより個人情報の保護体制を構築しております。しかしながら、上記のような対策を講じていたとしても、利害関係者や外部関係機関から受領した重要な情報資産である証券調査レポートや決算短信資料並びに個人情報の漏洩、改ざんが発生した場合、当社グループに対する何らかの形による損害賠償の請求、訴訟その他責任追及がなされる可能性があります。
ⅱ 提供情報の制作・配信ミスによる影響
当社グループは、証券会社、機関投資家やメディアに対し、『IFIS Consensus』等の情報コンテンツを提供しておりますが、その提供に当たりデータの制作、配信は自社で行っております。データの制作、配信の工程に関しては、独自のチェック体制を確立しております。しかしながら、技術的な問題や人為的なミスなどからデータの欠落や誤謬が発生する場合、当社グループへの損害賠償請求、信用の低下等により、事業運営及び業績に重要な影響を与える可能性があります。
⑪ 小規模組織であることについて
当社は本有価証券報告書提出日現在、取締役(監査等委員である取締役を除く)4名、監査等委員である取締役3名、従業員103名の小規模な組織であります。そのため内部管理体制も当社の組織規模に応じたものとなっております。今後も事業拡大に伴い人員増強を図っていく方針であり、内部管理体制もそれに合わせて強化・充実させていく予定であります。
⑫ 投資情報事業及びファンドディスクロージャー事業における人員の維持・確保
当社グループが今後、投資情報事業の拡大を図っていくためには、企業財務データやアナリスト業績予想データの分析能力、データ運用コンサルティングの知見を備えた人材の採用及び育成が必要であると考えております。また、ファンドディスクロージャー事業の持続的拡大を行うためには、金融商品取引法を中心とした関係法令知識、金融商品知識並びに印刷ドキュメント処理提案のスキルを備えた人材の採用及び育成が必要であると考えております。当社グループでは、継続的に優秀な人材の確保を図るための努力を続けており、今後も継続していく方針でありますが、今後人材が流出した場合、または適切な人材確保及び育成ができなかった場合には、当社グループの経営成績及び今後の事業展開に影響を与える可能性があります。
⑬ 法律や制度の変更による受注への影響
当社は、投資信託の目論見書、運用報告書や各種販売用資料などの企画・制作から印刷・配送までトータルにサポートするサービスを提供しておりますが、それらの多くは金融商品取引法をはじめとする諸法令により規定されており、関連する諸法令の改正によって、提供する製品やサービスの需要・仕様・内容が変化することがあります。その変化の影響により、印刷・配送の受注量の減少や、提供するサービスの競争力が著しく落ちるケースがあります。
⑭ ITソリューション事業における価格競争について
当社グループのITソリューション事業においては、顧客からのIT投資に対する要求が厳しさを増しており、価格面、品質面から常に同業他社との競争に晒されております。このような市場環境の中で当社グループでは、プロジェクト管理のノウハウ等得意分野を活かし、より付加価値の高いサービスを提供することにより、単なるコストダウンのみの価格競争の影響を最小限にとどめるように努めておりますが、当社の見込みを超えた何らかの外的要因による価格低下圧力を受けた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 翻訳・通訳事業における瑕疵・納期遅延等について
当社グループのランゲージソリューション事業においては、顧客への通訳・翻訳サービスの提供に対して十分な人材を確保し、納期遵守や品質管理の徹底を行っておりますが、それらの成果物の内容や納期遅延等により、顧客に対し重大な損害を与えた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の状況の概要
連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境が改善するなか、社会経済活動の正常化が進み、景気は緩やかに回復しております。
一方で、世界経済では欧米における高い金利水準の継続に伴う影響、中国経済における不動産市場の停滞の継続やウクライナ情勢の長期化、国内では日銀がマイナス金利政策の解除を決定するなど金融市場の環境は大きく変動していることに加え、物価上昇や円安傾向が継続しており、依然として不透明な状況が続いております。
また、当社事業と関連性が高い証券市場においては、新NISA制度の開始等を背景に、日経平均株価は2月下旬にバブル期以来となる史上最高値を更新し、その後7月には42,000円を超える最高値を更新するも8月には過去最大の下げ幅を記録するなど、値動きの激しい展開が続き2024年12月末では39,000円台となっております。また、投資信託市場における公募投資信託の純資産総額については、前年度から引き続き増加傾向が継続しております。
当社グループの状況としましては、連結子会社の株式会社東京ロジプロにおける舎人ロジスティクスセンター(東京都足立区舎人)の設立、株式会社テンナイン・コミュニケーションの株式取得による連結子会社化など、業容拡大に努めてまいりました。
このような状況の中、当連結会計年度の売上高は5,859百万円(前期比5.5%増)となりました。利益面につきましては、本社移転による地代家賃の減少や今期は移転関連費用が発生していないこと等の費用の減少要因はありましたが、株式取得による関連費用が発生したため、営業利益は677百万円(前期比3.0%減)となりました。また、経常利益は678百万円(前期比3.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は422百万円(前期比5.9%減)となりました。
セグメントの経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度において株式会社テンナイン・コミュニケーションの連結子会社化に伴い経営管理区分の変更を行ったため、新たに「ランゲージソリューション事業」を報告セグメントに追加しております。このため、前連結会計年度との比較情報につきましては、変更後の報告セグメントの区分と比較分析したものを開示しております。
<投資情報事業>
機関投資家、証券会社等に対して展開している各種サービスは、連結子会社の株式会社キャピタル・アイが展開する資本市場関係者向けリアルタイムニュース『キャピタルアイ・ニュース』が堅調に推移しているものの、証券調査レポート作成システムに関する開発案件が想定より伸びず、また、セキュリティ強化に伴う体制強化を実施したため、前期比で減収減益となりました。
その結果、売上高は1,441百万円(前期比0.2%減)、営業利益は575百万円(前期比4.9%減)となりました。
<ドキュメントソリューション事業>
生命保険関連の印刷・物流サービスは、生命保険会社からの印刷依頼部数が増加したことにより前期比で増収増益となりましたが、企業年金関連サービスは、DC加入者向けスターターキットに関し、印刷内容の変更や電子化の影響により印刷依頼が減少したため、本セグメント全体としては前期比で減収減益となりました。
また、配送サービスを事業展開している連結子会社の株式会社東京ロジプロでは、大量案件、在庫発送案件の対応力強化を目的として、舎人ロジスティクスセンター(東京都足立区舎人)を設立いたしました。これに伴う設立費用を当期に計上したことにより、利益面で減益となりました。
その結果、売上高は1,691百万円(前期比1.5%減)、営業利益は164百万円(前期比22.7%減)となりました。
<ファンドディスクロージャー事業>
投資信託市場の純資産総額の増加傾向は継続しております。また、従前から印刷部数は減少傾向にありましたが、2024年スタートの新NISA制度や株価上昇等が追い風となり、当社サービスの金融ドキュメントオーダーマネジメントシステム(通称FDOS)を通じて受注した印刷物や販促資料等の印刷部数が増加したこと、またWEB/動画のデジタル需要の取り込み強化により、前期比で増収増益となりました。
その結果、売上高は1,425百万円(前期比4.8%増)、営業利益は285百万円(前期比12.9%増)となりました。
<ITソリューション事業>
事業会社向けの受託開発を行っているビジネスソリューションの受注は、証券系ソリューションと就業、給与系ソリューションにおいて堅実な成長が続いているものの、前年度で追い風となったインボイス制度や改正電子帳簿保存法に対するIT投資の反動減により、前期比で減収減益となりました。
その結果、売上高は764百万円(前期比10.4%減)、営業利益は78百万円(前年比16.5%減)となりました。
<ランゲージソリューション事業>
グローバル企業等に提供している翻訳・通訳サービスは、連結子会社の株式会社アイコスが通訳サービスの受注件数増加により、今期は堅調に推移しました。一方、2024年10月に株式会社テンナイン・コミュニケーションが子会社となり、連結範囲の対象となったため、当該子会社の2024年10月から12月までの業績を取込んだ結果、本セグメント全体としても前期比で増収となりました。しかし、当該子会社の株式取得に際し発生した取得関連費用やのれん償却費を計上したことにより、利益面では減益となりました。
その結果、売上高は535百万円(前期比200.1%増)、営業損失は33百万円(前期比40百万円減)となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ674百万円増加し、6,866百万円となりました。
流動資産合計は12百万円増加し、5,608百万円となりました。主な要因は、売掛金及び契約資産が178百万円増加、前払費用が24百万円増加、現金及び預金が189百万円減少したことによるものであります。
固定資産合計は661百万円増加し、1,257百万円となりました。主な要因は、のれんが476百万円増加、ソフトウェアが36百万円増加、差入保証金が29百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ424百万円増加し、1,196百万円となりました。
流動負債合計は273百万円増加し、927百万円となりました。主な要因は、未払法人税等が123百万円増加、未払金が43百万円増加、買掛金が41百万円増加したことによるものであります。
固定負債合計は前連結会計年度末より151百万円増加し、268百万円となりました。主な要因は、未払いの役員退職慰労金が130百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ250百万円増加し、5,670百万円となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益422百万円の計上による増加と、剰余金の配当178百万円の支払によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度末と比べ
639百万円減少(前期比12.6%減)し、4,431百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果取得した資金は、582百万円(前期は606百万円の取得)となりました。
収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益679百万円、減価償却費75百万円、のれん償却額47百万円であります。また、支出の主な内訳は、法人税等の支払額172百万円、仕入債務の減少42百万円、賞与引当金の減少18百万円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、1,043百万円(前期は233百万円の支出)となりました。
支出の主な内訳は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,278百万円、無形固定資産の取得による支出73百万円、有形固定資産の取得による支出32百万円であります。また、収入の主な内訳は、保険積立金の解約による収入135百万円、定期預金の払戻による収入118百万円、有形固定資産の売却による収入80百万円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、178百万円(前期は193百万円の支出)となりました。
支出の主な内訳は、配当金の支払額178百万円であります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
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ITソリューション事業 |
(千円) |
628,974 |
△10.5 |
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合計 |
(千円) |
628,974 |
△10.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.ITソリューション事業以外のセグメントは、売上高に対し金額的重要性が乏しいため、記載を省略しております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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ITソリューション事業 |
828,184 |
5.4 |
211,918 |
42.7 |
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合計 |
828,184 |
5.4 |
211,918 |
42.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.ITソリューション事業以外のセグメントは受注から納品までの期間が短く、受注管理を行う必要性が乏しいため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
前年同期比(%) |
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投資情報事業 |
(千円) |
1,441,268 |
△0.2 |
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ドキュメントソリューション事業 |
(千円) |
1,691,951 |
△1.5 |
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ファンドディスクロージャー事業 |
(千円) |
1,425,902 |
4.8 |
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ITソリューション事業 |
(千円) |
764,780 |
△10.4 |
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ランゲージソリューション事業 |
(千円) |
535,103 |
200.1 |
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合計 |
(千円) |
5,859,006 |
5.5 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主要な販売顧客については、該当するものはありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討結果につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載しております。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資などの長期資金需要と、製品製造のための労務費、外注費等の製造費用、販売費及び一般管理費等の運転資金需要であります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、事業活動に必要な資金を安定的に確保することを基本としております。資金需要につきましては、自己資金において賄っております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績及び現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用しております重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
当社は、2024年10月11日開催の取締役会において株式会社テンナイン・コミュニケーションを完全子会社化することについて決議を行い、同日付で株式取得に関する契約の締結と全株式の取得を完了しております。なお、株式取得の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
記載すべき重要な研究開発活動はありません。