当社は、“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、「流汗悟道(Commitment)」、「実証(Actualization)」、「創造性(Creativity)」という経営の真髄に基づき、ユニークかつ多様な事業と世の中の真のニーズ・インサイト、サイエンスやテクノロジーを有機的に結合させることから生まれる新しいコンセプトや、多様な事業との重なりや派生、ニッチな領域の開拓により新たな価値を創造してきました。
引き続き、急速に変化する社会情勢や事業環境、社会からの要請に柔軟に対応できるレジリエンスを強化し、新たな市場と社会価値を同時に創造するサステナビリティ経営を通じて、「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」を目指してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 第4次中期経営計画について
当社は、2024年度から2028年度を対象期間とする第4次中期経営計画を2024年6月に発表いたしました。第4次中期経営計画では、大塚グループが2035年に目指す姿を示すとともに、この長期ビジョンに沿って第4次中期経営計画の位置づけを明確にし、業績目標を策定いたしました。
長期ビジョン|大塚グループが2035年に目指す姿
大塚グループは「地球環境」「女性の健康」「少子高齢社会」の3つを重点課題と捉え、2035年に目指す姿として長期ビジョンを示し、以下の取り組みを強化してまいります。
■「個別化医療や病気の克服を目指す治療法の開発」「個別化されたヘルスデータとデジタルを活用した新規健康価値の提供」「世の中の変化に適応し、ライフステージに合わせた健康ソリューションの提案」に取り組みます。
■トータルヘルスケアをコンセプトに、「地球環境」「女性の健康」「少子高齢社会」という社会課題に向き合い、「予防・健康増進」「治療・診断」に明確にカテゴライズできない新しい健康価値を提供します。
■「Better healthからBeyond health、そしてWell-beingへ」というテーマで健康をより広い範囲で捉え、一人ひとりの健康に向き合い事業を推進します。
第4次中期経営計画の位置づけと主な施策
第4次中期経営計画は、「新規事業の拡大と次世代の成長を生み出す投資を促進~創造と成長の5年間~」と位置づけ、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業をコア事業として、独自の事業基盤への更なる投資、Well-beingにつながる新たな価値創造、持続的成長を支える積極的な財務戦略、という3つの取り組みに注力します。
第4次中期経営計画骨子
<業績目標>進化した売上・利益成長ステージの確立
・新製品群を背景とする新しい売上成長ドライバーの確立
・LOE*による調整局面を短期にとどめ、再び事業利益成長率2桁以上の成長ステージへ
<事業戦略>進化した事業成長ステージの確立
・充実した開発後期の新薬候補群から着実に上市を実現
・過去最高水準の安定的な財務状況を背景に、3,000億円規模の研究開発投資を継続
・医療関連事業、NC関連事業において、新製品・新サービスによる事業領域の拡大・深化を実現
・経営計画実現後の新ステージでは、利益の規模と質が大きく向上
<財務戦略>資本コストを意識した経営の実践
・ROIC、ROEによる業績管理
・積極的な成長投資の継続
・株主還元の充実
*独占販売期間終了|Loss of exclusivity
(2) 第4次中期経営計画の進捗
第4次中期経営計画の初年度である2024年度の進捗、2025年の見通し、今後の目標は以下のとおりです。
<業績目標の進捗>
・2024年度の売上収益は、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業を中心に増収となり、2,329,861百万円(前期比15.4%増)となりました。主な要因は、医療関連事業において、第4次中期経営計画の成長ドライバーとして位置付けた抗精神病薬「レキサルティ」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」の『コア2』製品に加え、持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ/エビリファイ アシムトファイ」、V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」等の売上増加によるものです。また、ニュートラシューティカルズ関連事業においても、成長ドライバーとして新たに設定した3つの社会課題別カテゴリーにおいて、「ポカリスエット」や「ネイチャーメイド」を中心に全カテゴリーが成長したことから売上収益は増収となりました。
・研究開発費投資前事業利益は、744,696百万円(同20.0%増)となりました。主な要因は、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業の増収を受け売上総利益が増加したことなどによります。
・研究開発費は、314,233百万円(同2.1%増)となりました。開発品目ではIgA腎症を対象に開発中のシベプレンリマブ/VIS649、住友ファーマ株式会社より導入した新規抗精神病薬ウロタロント/SEP-363856の開発費が増加した一方で、AVP-786の開発中止に伴う開発費は減少しました。
・順調な売上成長により、事業利益は430,463百万円(同37.7%増)と大幅な増益となりました。
<事業戦略の進捗>
・医療関連事業において、アンメット・ニーズの解決に貢献する後期開発パイプラインの中で、シベプレンリマブはIgA腎症を対象としたグローバルフェーズⅢ試験の中間解析で主要評価項目を達成しました。また、ジュナナ社の買収に伴いフェニルケトン尿症を対象に開発中のrepinatrabit/JNT-517が新たにパイプラインに加わりました。安定的な財務状況を背景に3,000億円超の研究開発投資を継続し、新製品育成についても着実に進捗しております。
・ニュートラシューティカルズ関連事業において、成長ドライバーとして新たに設定した3つの社会課題別カテゴリー全てのカテゴリーが成長したことから売上収益は増収となり、前期に続き売上収益、事業利益ともに過去最高となりました。また、米国やアフリカなど、新規エリアへの拡大を積極的に進めております。引き続き高成長市場においてブランドを確立することにより、さらなる事業規模の拡大と収益性の向上を目指します。
(3) 経営環境及び対処すべき課題
第4次中期経営計画初年度となる2024年は、ロシア・ウクライナや中東情勢に伴う地政学的リスクの高まりにより社会情勢は引き続きより一層不透明さを増し、当社グループの事業活動においても一定の影響を受けました。そのような環境の中、新たな事業環境に対応するマーケティング活動や営業活動等を積極的に進め、また、原材料価格の高騰、為替変動による物価上昇等にも対処してまいりました。
根本的なヘルスケア業界を取り巻く事業環境は、高齢化、高額医薬品の発売、感染症対策等による医療費の増加傾向が続き、日米欧諸国において治療に対する医療コストへの関心が高まっております。限られた財源の中で、医療指針が医療コストと治療効果のバランスの中で捉えられ、薬価制度の改革やジェネリック医薬品の浸透が進む一方、AI、機械学習や遺伝子治療等の新テクノロジーが台頭してきています。
このような中、当社グループは、健康の維持・増進、病気の診断から治療までを担う「トータルヘルスケア企業」として事業を展開しています。社会環境が変化し続ける中、「人を取り巻く社会全体で考え、社会課題を解決するトータルヘルスケア企業」として、新しい技術やニーズを取り入れながら、持続的成長の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
医療関連事業は、治療満足度の低い疾患が多く残されている精神・神経、がん、循環器・腎領域を中心に、多様な事業のシナジーを活かした独自のアプローチにより、革新的な新薬の創出を目指します。また、医療の最適化に向けた体系的なソリューションに挑戦してまいります。さらに、アライアンスやオープンイノベーション、ベンチャーキャピタルとの協業等による創薬基盤の強化、創薬モダリティの多様化に取り組み、持続的な進化と成長を目指してまいります。
ニュートラシューティカルズ関連事業は、健康への意識が高まる中、医療関連事業で培われたサイエンス・ノウハウを活かしながら、顕在化されていないニーズや社会課題に対して新しいコンセプトのソリューションを提案し、世界の人々の健康維持・増進による健康寿命の延伸に貢献することを目指します。グローバルにおける環境変化を見据え、最新のサイエンスやテクノロジーと独自のビジネスモデルを組み合わせて、新たな価値の創造、新カテゴリー・新エリア展開への挑戦を進めます。健康を取り巻く様々な社会課題に対して、課題の顕在化から啓発活動を継続的に実施し、各ブランドからそのソリューションをこれからも提案し続けます。さらに外部機関との連携を強化し、これらの活動を推進してまいります。
また、当社グループは、企業理念のもと、事業を通じた社会課題の解決に取り組み、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の実現を目指します。
大塚グループは1921年の創業時から受け継がれてきた「品質第一」の精神に基づき、強固なガバナンス体制のもと、研究・開発から製品・サービスの提供までバリューチェーン全てにおける品質の追求、そして、従業員、顧客、ビジネスパートナー、社会、株主等のステークホルダーとの信頼構築に努めてきました。
当社グループは、「品質第一」と「ステークホルダーとの信頼構築」を礎に、事業を通じた社会課題の解決に取り組み、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の実現を目指します。
詳細につきましては当社ホームページをご参照下さい。
大塚ホールディングス ウェブサイト
https://www.otsuka.com/jp/sustainability/
(1) サステナビリティ
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティ推進責任者である当社代表取締役副社長を委員長とする「大塚グループ サステナビリティ推進委員会」を2018年に設置しました。
本委員会は当社サステナビリティ推進部を事務局とし、経営企画、研究、生産、環境、人事、コンプライアンス、広報、IR、総務等の関連部署から部門長および担当者がメンバーとして参加し、サステナビリティ経営の方向性と計画の討議・決定、活動進捗報告、社会からの期待や要請・意見を活動に反映し、より取り組みを推進させるための講習会等をする場としています。
■サステナビリティ推進体制
■テーマ毎の会議体・タスクフォース
環境、調達、顧客対応、人権、従業員エンゲージメント等、テーマごとの委員会やタスクフォースを設置し、具体的な施策立案と実行によりグループ横断的に活動しています。これらの活動は、年1回定期開催するサステナビリティ推進委員会で共有され、大塚グループのサステナビリティ経営を推進しています。
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組織体 |
内容 |
構成 |
会議開催頻度 |
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大塚グループ サステナビリティ 推進委員会 |
- サステナビリティ経営の方向性と計画の討議・決定 - 活動進捗報告 - 社会要請の伝達による社内意識形成および活動推進 |
- 大塚ホールディングス 代表取締役副社長 - サステナビリティ推進委員会 |
年1回 |
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大塚ホールディングス 環境委員会 |
- 環境戦略の審議と戦略の決定 - 環境目標や活動計画の承認 |
- 大塚ホールディングス 代表取締役副社長 - グループ各事業会社 環境管掌役員 |
年2回 |
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大塚グループ グローバル環境会議 |
- 環境の目標や活動計画の立案 - 活動実績の報告 |
- 大塚ホールディングス・グループ各事業会社 環境管理責任者 |
年12回 |
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サステナブル 調達強化プロジェクト |
- ビジネスパートナーと協働したサステナブル調達活動推進 - 強固な安定調達体制の構築を目指す「安定調達」 - 倫理的かつ持続可能な調達活動を目指す「責任ある調達」 |
- 大塚ホールディングス 代表取締役副社長 - グループ各事業会社 調達担当及び関連部門 |
委員会:年3回 ワーキングチーム:適宜開催 |
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大塚グループ 人権タスクフォース |
- 大塚グループ人権方針の策定・改定の検討 - グループ内組織構築・活動推進 - 人権デュー・ディリジェンスの実施 - 人権救済のメカニズムの構築 - 人権教育と啓発活動の計画策定 |
- 大塚ホールディングス コンプライアンス・人事・サステナビリティ推進担当 |
適宜開催 |
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従業員エンゲージメント タスクフォース |
- 従業員エンゲージメントの位置づけと評価方法の確立 - 組織分析及び改革等の連携強化 |
- 大塚ホールディングス 代表取締役副社長 - グループ各事業会社 人事担当 |
委員会:年3回 ワーキングチーム:適宜開催 |
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大塚グループ お客様対応担当者連絡会 |
- 消費者志向経営推進の各事業会社窓口の活動状況共有 - 顧客対応質的向上の施策検討と取り組み推進 - 弁護士等、外部専門家を招いた研修会の開催 |
- 大塚ホールディングス 代表取締役副社長 - グループ各事業会社顧客対応窓口担当 |
連絡会:年2回 研修:年6回 |
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サステナビリティ レポーティング |
- サステナビリティ開示基準を適用した対応 - 報告方法の決定 |
- 大塚ホールディングス コンプライアンス・財務・人事・IR・経営企画・サステナビリティ推進担当 - グループ各事業会社 関連部門 |
適宜開催 |
■取締役会で報告・決議されたサステナビリティに関連する議題と内容(2024年)
当社では、サステナビリティ推進責任者が取締役会でサステナビリティに関する具体的な取り組みや進捗について報告するほか、審議が必要とされた関連する事項に関しては討議のうえ取締役会の承認を経て決議します。
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開催月 |
議題 |
内容 |
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1月 |
サステナビリティと経営戦略 |
第4次中期経営計画における大塚グループが目指すサステナビリティ経営について協議 |
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内部通報年次報告 |
内部通報の内容、件数等の報告、内部通報体制強化に向けた取り組みの報告 |
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2月 |
役員報酬への非財務(ESG)指標の組込み |
第4次中期経営計画期間中を対象とし、サステナビリティ経営の推進度として当社の役員株式報酬の評価指標の一つにESG指標(FTSE)を採用すること、主要事業会社の業績連動賞与において、サステナビリティに関する取り組みを評価指標とすることを決議 |
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ビジネスパートナー行動規準の制定 |
大塚グループ全てのビジネスパートナーを対象とした行動規準の制定 |
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3月 |
人財育成状況報告 |
次世代経営人財・グローバルリーダー育成研修報告 |
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4月 |
環境投資 |
海外生産拠点における再生可能エネルギーの利用拡大について検討 |
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8月 |
グリーンボンド |
グリーンボンド発行の決議 |
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11月 |
太陽光発電設備導入の進捗と |
国内の大型太陽光発電設備導入の進捗と計画 今後のエネルギーマネジメントについて |
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12月 |
ビジネスパートナー通報ラインの設置 |
ビジネスパートナー向け通報窓口(スピークアップライン)設置の報告 |
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統合報告書の投資家フィードバック |
統合報告書に対する投資家からのフィードバックについて協議 |
当社の取締役報酬の詳細については、「
② 戦略
大塚グループは、事業を通じた社会課題の解決と自らの持続的な成長を両立させる「サステナビリティ経営」を推進しています。その基本方針として、「企業理念のもと、事業を通じた社会課題の解決に取り組み、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の実現を目指す」ことを「サステナビリティミッション」として掲げ、新たな市場創造による事業成長と同時に、社会課題解決による社会価値を創造する取り組みを進めています。
■大塚グループのサステナビリティ経営
上記のサステナビリティミッション達成に向けて、事業環境および社会情勢の変化を考慮し、企業が優先して取り組むべき重要項目であるマテリアリティを再特定しました。大塚グループは、このマテリアリティを第4次中期経営計画に組み込み、事業戦略と一体化させることで、サステナビリティ経営をより一層加速させています。
マテリアリティの特定プロセスの詳細につきましては当社ホームページをご参照下さい。
大塚ホールディングス ウェブサイト
■大塚グループのマテリアリティ
<(a)トータルヘルスケア企業として世界の人々へウェルビーイングを提供>
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社会課題 ・満たされていない医療ニーズ/消費者が気づいていない健康ニーズの存在 ・変化する健康価値観への対応 |
<(b)企業理念を実現する人財の育成と環境整備>
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社会課題 ・グローバル競争の激化/デジタル化の進展による経営競争環境の変化 ・画一的組織の限界による個人の価値観や働き方の多様化/流動性の高まり |
<(c)ビジネスパートナーと協働したサステナブルな社会の実現>
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社会課題 ・(パンデミック/地政学的リスクなどによる)サプライチェーン寸断による原料調達や製品供給の不安定化 ・持続可能なサプライチェーンの構築 |
<(d)地球環境への負荷低減>
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社会課題 ・気候変動による地球環境負荷の増大 |
③ リスク管理
当社のリスク管理については、「
④ 指標及び目標
当社グループでは、各マテリアリティにつき、指標及び目標を定め、取り組みを進めています。
(a) トータルヘルスケア企業として世界の人々へウェルビーイングを提供
日々の健康の維持・増進、疾病の診断から治療までを担うトータルヘルスケア企業として、当社グループは顕在化しているが満たされない医療ニーズと消費者が気付いていないニーズに対し、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業を主として独創的な製品やサービスを通じた様々なソリューションにより、ウェルビーイングを提供します。
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<戦略> グループ内外の多様な資産を活用した製品価値の最大化 <施策> 疾患に対するアンコンシャスバイアスを打開するシームレスな診断法、治療法、サービスの提供 <指標> グローバルアクセスの拡大、精神・神経、がん、循環器・腎における疾患啓発への取り組み推進、結核撲滅 |
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当社グループが重要領域とする精神・神経、がん、循環器・腎領域での治療支援に加え、診療支援や介護負担軽減、疾患啓発、社会復帰支援を推進し、患者さんや患者さんを支える方々のウェルビーイングに寄り添うソリューションを提供することを目標に活動しています。また、医薬品アクセスの向上に貢献すべく、新たな治療薬の研究開発に取り組むだけでなく、経済的な問題やその他の理由によって医薬品へのアクセスが制限される方々へのサポートも行っています。
■精神・神経領域 世界的な高齢化に伴いアルツハイマー型認知症の増加が予想される中、本疾患に伴うアジテーション*は、介護者の負担を重くし、患者さん自身や家族、介護者の生活の質(QOL)を低下させるなど、大きな社会課題となっています。当社グループは、治療薬の提供に留まらず、ユニークで多様性のある事業をもつトータルヘルスケア企業としての強みを生かし、疾患に対するアンコンシャスバイアス(偏見)を打開するシームレスな診断法、治療法、サービスによる包括的アプローチにより、この社会課題の解決を目標に取り組んでいます。 *アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動
■がん領域 がん治療を継続しながらも働き続けることができる社会の創造を目的とした新会社「アリルジュ」を2024年に設立しました。同社は、治療と仕事の両立に関する教育サービス、医療機関との連携機能などで復帰復職/両立をサポートできる企業向けクラウドサービス、がん検診の受診率を向上させるための企業向け受診勧奨サービスを提供し、がんに関する社会課題の解決を目指しています。
■結核撲滅に向けて 当社グループでは、医薬品アクセスの向上にむけて、新たな治療薬や輸液の研究開発に取り組むだけでなく、経済的な理由等によって医薬品へのアクセスが制限される方々へのサポートも行っています。例えば、世界三大感染症の一つである結核に関しては、結核治療薬「デルティバ」を通じてアクセスの拡大・適正使用の体制構築を目標としています。本製品は2015年にWHO必須医薬品モデルリストに掲載され、現在では120カ国以上で使用が可能になっています。加えて、現在新たな結核治療薬の研究開発も進めており、結核の撲滅、ひいては世界の公衆衛生改善への貢献を目指しています。 |
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<戦略> 満たされていない医療ニーズに対応する研究開発力の強化 <施策> グローバル研究拠点とアカデミアネットワークを最大限活用した自社創薬力強化、最新テクノロジーとノウハウを利用した開発力の強化 <指標> 自社創薬力、アンメットメディカルニーズに貢献する製品開発力 |
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当社グループでは、病気の治癒に寄与し、健康をサポートする革新的な製品を研究、開発するために、国内外のグループの研究所とネットワークを構築し、グローバルな体制で多様な創薬研究に取り組んでいます。 2024年度の医療関連事業における研究開発費は296,422百万円(前期比1.5%増)であり、対売上研究開発費比率は18.2%となりました。独創的かつ多様な研究基盤を持つことが当社グループの強みと捉え、長年の新薬研究で蓄積してきた低分子を中心とする創薬研究基盤と、最先端技術を有機的に融合させ、自社創薬力の強化により満たされない医療ニーズへ貢献します。 |
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<戦略> 世の中の変化に適応し、複合的な健康ソリューションを生活者に提供 <施策> 熱中症などへの水分電解質補給の啓発、女性の健康カテゴリーの成長 <指標> ポカリスエットの浸透度、女性の健康への貢献度 |
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地球温暖化、変化する健康価値観、少子高齢化等の社会課題を見据えた新しいコンセプトの創出、新カテゴリーへの挑戦を機会として捉え、課題解決に向けたソリューションによりウェルビーイングを提供します。
■気候及び環境リスク 地球温暖化による健康課題の一つである熱中症対策や環境負荷低減に貢献する製品群 目標:海外「ポカリスエット」1,000億円ブランドへの挑戦 ■女性の健康 科学的根拠に基づいた製品開発で女性特有の社会課題に対する健康ソリューションを提供する製品群 目標:北米を中心としたカテゴリーの育成に注力し、カテゴリーリーダーとしての基盤を構築 ■ヘルシアーライフ ライフステージに合わせた様々なニーズに対応する製品群 目標:ライフステージに合わせた独自の製品展開により、更なる価値最大化へ
上記についての実績及び目標・進捗等の詳細については、「 |
(b) 企業理念を実現する人財の育成と環境整備
当社グループでは、企業理念の実現を目的に、イノベーションの源泉である人財力を強化するとともに、人財力を最大化させるための環境整備を推進しています。多様な事業を通じて、従業員に挑戦の機会を提供し、エンゲージメントの向上を支援することで、柔軟で創造的な企業文化を醸成し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
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<戦略> 企業理念の実現に向け、イノベーションの源泉である人財力を強化 人財力を最大化させるための環境整備 <施策> 独自の人財育成プログラムを通じた「流汗悟道」「実証」「創造性」を実践する人財の育成 多様な事業を有する大塚ならではの多彩な人財が活躍できる職場・組織づくりと機会の提供 従業員エンゲージメントを向上させる仕組みづくり <指標> 企業文化の浸透度、次世代を担う人財を育てる仕組みづくり 社員挑戦指数、社員挑戦応援指数 大塚の企業理念を実現するための従業員エンゲージメント |
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詳細については、「 |
(c) ビジネスパートナーと協働したサステナブルな社会の実現
パンデミックや地政学リスクなどによるサプライチェーンの寸断は原料調達や製品供給の不安定化に繋がるため、それらへの対応に加え、環境や人権等の社会課題に配慮した持続可能な調達の重要性は、近年より一層高まっています。当社グループではビジネスパートナーの皆様とともに、サプライチェーン全体で持続可能な社会の実現に取り組み、双方の企業価値の向上を目指し、「安定調達」と「責任ある調達」を2本柱としたサステナブル調達活動を推進しています。
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<戦略> リスクに対応した強固な安定調達体制の構築 責任ある調達の推進 <施策> サプライチェーン上流の可視化とリスクの特定および対応 人権や環境等に配慮した「責任ある調達」を実現するためのビジネスパートナーとの強固なエンゲージメントの構築 <指標> 特定したリスクへの対応率、本施策へのサプライヤー参加率、インシデント発生時のアンケート回答率、サプライヤーとのコミュニケーション実施数 |
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■安定調達:リスクに対応した強固な安定調達体制の構築 高品質な製品をお届けするための強固な安定調達体制の構築を目的としたグループ横断のワーキンググループを結成し、従来個社ごとに管理していた調達情報を一括管理するためのプラットフォームを構築しました。本プラットフォームの運用は、ビジネスパートナーとの情報連携及び協力が前提となっているため、2024年には日本国内の直接材サプライヤーを対象に説明会を実施し、約280社に参加いただきました。
■責任ある調達:倫理的かつ持続可能な調達活動 グループ横断のワーキンググループを結成し、ビジネスパートナーとの強固なエンゲージメントを構築するための活動を行っています。2022年には、環境、人権、労働、腐敗防止に対するサプライヤーの取り組みを把握するために、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)が作成した「CSR 調達セルフ・アセスメント質問表」を用いたサプライヤーアセスメントを実施しました。これまで当社グループの国内主要事業会社のサプライヤー(国内597社、海外56社)にアセスメントを実施し、重大なサステナビリティ関連リスクがないことを確認しました。 2024年には「大塚グループ 調達方針」「大塚グループ サステナブル調達ガイドライン」の改定および新たなアセスメントツールの導入を含めて本施策を再構築し、第4次中期経営計画の期間中(2024年~2028年)に対象とする全ての事業会社に本施策を導入することを目指し、活動を継続しています。
また、ビジネスパートナーとともに、高い倫理観に基づいて企業活動を行う意思を表すため、2024年3月に、「大塚グループ ビジネスパートナー行動規準」を制定しました。さらに、当社グループ関係者による不正行為や法令違反、またはその疑いについて、ビジネスパートナー対象の報告・相談窓口(スピークアップライン)を同年11月に設置しました。 |
(d) 地球環境への負荷低減
当社グループの事業特性を鑑みた環境負荷低減の取り組みとして、既存の「カーボンニュートラル」「サーキュラーエコノミー」「ウォーターニュートラル」に加え、新たに「バイオダイバーシティ(生物多様性)」を追加し、各施策について目標を再評価の上、2024年6月には、新たな5ヵ年目標(2024~2028年)を設定しました。
詳細については、「
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<戦略> 事業活動におけるすべての環境負荷をゼロにする2050年環境ビジョン「ネットゼロ」の実現 |
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<施策> |
<指標> |
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カーボンニュートラル: 地球温暖化による気候変動の抑制 |
2028年 |
・CO2排出量の削減 Scope1,2:50%削減(2017年比)/ Scope3:2050年カーボンニュートラルに向けた取り組み ・自己創出再生可能エネルギー20% |
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サーキュラーエコノミー: 資源利用の抑制循環利用 |
2028年 |
・単純焼却と埋立を50%削減(2019年比) ・食品ロス削減計画の策定と実行 |
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2030年 |
・PETボトルにおけるリサイクル原料および植物由来原料の使用割合100% |
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ウォーターニュートラル: 水資源の維持・保全 |
2028年 |
・水ストレス地域の事業拠点での水利用戦略の立案 ・水管理プログラムの全拠点展開 ・水使用量10%削減(2023年比) |
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バイオダイバーシティ: 自然資源の持続可能な安定調達 |
2028年 |
・RSPO認証パーム油を100%利用 ・サステナブルな紙を100%利用 |
当社のサステナビリティ活動の最新情報、実績については「統合報告書」「環境報告書」をご参照ください。
「統合報告書」
https://www.otsuka.com/jp/sustainability/library/
「環境報告書」
https://www.otsuka.com/jp/sustainability/environmental_report.html
(2) 人財育成と多様性
当社グループは、”Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、持続的な成長及びサステナブルな社会の実現に向け、人財こそが事業成長の源泉であると認識し、人的資本経営を推進しています。第4次中期経営計画において「企業理念を実現する人財の育成と環境整備」をマテリアリティとして特定し、戦略的かつ中長期的な視点で取り組んでいます。特に企業理念を実現する人財の育成に関しては、独自の研修プログラムの継続的な実施を通じ、企業文化「流汗悟道」「実証」「創造性」の維持・発展を図っています。
また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の強化、健康経営の推進、従業員エンゲージメントの向上ならびに内部通報制度の整備を含む職場環境の充実を掲げ、各種施策を実施しています。これらの取り組みを進めていくことで、従業員一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整備し、企業全体の持続的な成長および企業価値の向上に努めてまいります。
① ガバナンス
当社グループは、人的資本の最大化をサステナビリティ経営における戦略の中心に据え、「企業理念の実現に向け、イノベーションの源泉である人財力を強化」と「人財力を最大化させるための環境整備」をグループ全体の優先事項とし、各事業会社の独自性を尊重しつつ、連携を強化する人的資本ガバナンス体制を構築しています。従業員の人権やエンゲージメント等、各社の課題解決やプラクティスの共有を目的としたグループ横断型の委員会やタスクフォースを設置し、シナジー効果を創出しています。また、従業員の人権尊重はサステナビリティ経営の基盤であると捉え、内部通報制度の充実や、企業理念・企業文化の醸成及び体現を可能とする人財育成や従業員スキルアップを目的とした教育支援を強化しています。タスクフォース等の具体的な取り組みや進捗については取締役会に報告し、必要に応じて取締役会での審議・承認を経て決議を行います。
② 戦略
・企業理念の実現に向け、イノベーションの源泉である人財力を強化
イノベーションの源泉である「人財力の強化」を重視し、独自の人財育成プログラムと継続的な研修を通じて社員一人ひとりの成長を支援しています。
また、DE&Iを人的資本の取り組みの重要な戦略的要素として取り入れることで、様々なバックグラウンドを持つ人財が活躍できる職場づくりを推進しています。多様な事業を展開する当社グループならではの強みを活かし、すべての社員に平等な成長の機会を提供することで、グループの持続的な成長とイノベーションを支える強固な人的資本の基盤を構築しています。
1)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
多彩な社員の活躍がイノベーションやグローバル化を促進し、革新的な製品開発につながると考え、積極的にDE&Iを推進しています。2008年に設置した当社グループ各社のDE&I推進チームが中心となり、グループ共通の制度策定やセミナーの企画、各社のプラクティスの共有等を通じて、DE&Iを促進しています。
2)人財育成
企業理念の浸透と企業文化の醸成を通じて、全従業員が自己の能力を最大限に発揮できる環境を提供しています。従業員には多様なキャリア機会を提供し、幅広い視野と経験を得ることで新たな価値を創出しています。企業文化の実践を従業員一人ひとりが追求し、試行錯誤を重ね、創造的な解決策を見つけることを奨励しています。
a.経営人財・グローバル人財
多様な環境変化に対応するため、従業員が失敗を恐れずに新たな挑戦を行い、企業理念を実現する経営人財及びグローバル人財の育成を推進しています。グローバルなビジネス環境に対応し、グループ全体の競争力をさらに強化するため、異文化間でのリーダーシップやチームワークの能力を発揮できる人財、DE&Iを理解し、自己成長の意欲を持ち、企業理念や文化を体現できる人財の育成に注力しています。
b.研究開発人財
創薬部門では、新たな視点からの問題解決や持続的なイノベーション創出を目指し、重要な分野で専門知識と視野を持つ博士号保持者や、国内外のアカデミアからの研究者を積極的に採用しています。国内外の研究所間の人財交流や異なる部門への人財ローテーションを通じて、広範囲の知識獲得、専門性の強化、そして多角的な視点の育成に努めています。新薬開発部門では、部門独自の語学研修や選抜型の次世代リーダー研修を行い、現代の変わりゆく臨床開発環境に対する柔軟な対応と、グローバル開発を主導的に推進できる人財育成に注力しています。
c.デジタル人財
デジタル化の推進を個々の働き方や価値観の最大化、競争力の強化、イノベーションの創出に結びつけるべく、デジタル人財の育成に注力しています。
・人財力を最大化させるための環境整備
企業文化を実践する人財の育成の実現には、社員一人ひとりが健康で活力に満ち、成長し続けることが不可欠です。当社グループは、多様な社員の活躍がイノベーションやグローバル化の推進につながると考え、個々の能力や個性を最大限に活かせる環境を整備しています。
a.企業文化の伝承・人財育成の拠点
当社グループの理念である「創造性」を具現化するために設立された「能力開発研究所」は、既成概念を払拭し、創造的な人財を育成する場として機能しています。2021年には創業100周年にあたり、「100周年記念施設」を開設しました。本施設は、大塚の文化を体感する展示棟と、未来を創る研修棟から成り、次世代を担う人財育成の拠点となっています。
b.従業員の人権の尊重
2024年より当社コンプライアンス・人事・サステナビリティ推進担当で構成される「大塚グループ 人権タスクフォース」が発足しました。「大塚グループ 人権方針」の策定と改訂を検討し、グループ内で横断的な組織を構築しています。加えて、人権デュー・ディリジェンスの実施、人権救済のメカニズムの構築、人権教育と啓発活動の計画策定等、活動を推進しています。
c.従業員エンゲージメントの向上
当社グループのマテリアリティ「企業理念を実現する人財の育成と環境整備」において、従業員エンゲージメントに関する指標を設定しました。2024年にグループ横断的なタスクフォースを立ち上げ、当社グループにおける従業員エンゲージメントの位置づけや、求める人財に関する共通理解、評価方法の確立等について議論を進めています。このタスクフォースは、グループ共通の価値基準や評価方法と各事業会社独自の観点を組み合わせ、組織分析や改革等に取り組んでいます。
③ リスク管理
④ 指標及び実績
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戦略 |
項目 |
指標 |
バウンダリー(注)1 |
実績 |
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企業理念の実現に向け、イノベーションの源泉である人財力を強化 |
人財育成 |
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グローバル(注)3 |
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グローバル(注)3 |
約 |
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人財力を最大化させるための環境整備 |
DE&I |
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グローバル(注)3 |
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国内(注)4 |
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国内(注)4 |
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国内(注)4 |
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国内(注)4 |
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国内(注)5 |
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健康経営 |
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国内(注)6 |
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国内(注)6 |
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労働安全衛生 |
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グローバル(注)3 |
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グローバル(注)3 |
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(注)1.各実績は、連結グループにおける記載が困難であるため、提出会社および主要な連結子会社のバウンダリーで算出しております。
2.次世代リーダー育成、管理職研修、階層別研修、評価者研修、新入社員研修などに費やした時間(実務に関連した研修を除く)
3.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO、大塚ビジネスサポート㈱、イーエヌ大塚製薬㈱、㈱ジェイ・オー・ファーマ、大塚ファーマシューティカルD&C Inc.、大塚アメリカファーマシューティカル Inc.、ファーマバイト LLC、大塚ファーマシューティカルヨーロッパ Ltd.
4.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO、大塚ビジネスサポート㈱、イーエヌ大塚製薬㈱、㈱ジェイ・オー・ファーマ
5.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO、大塚ビジネスサポート㈱、イーエヌ大塚製薬㈱、日本理化学工業㈱、大塚メカトロニクス㈱、㈱ジェイ・オー・ファーマ
6.大塚製薬健康保険組合(大塚グループ国内企業対象)の被保険者と被扶養者
(3) 気候変動への取組
① ガバナンス
当社グループは、世界の人々の健康に貢献するトータルヘルスケア企業として、事業を通じた地球環境の負荷低減に真摯に取り組み、地球の自然と未来を守る持続可能な社会づくりに貢献していきたいと考え、ガバナンス体制を構築しています。気候変動に関わる重要課題は、当社代表取締役副社長と、グループ各社の取締役、または役員で構成される「大塚ホールディングス 環境委員会」において審議・決定しています。グループ全体の方向性に係る審議内容は当社取締役会の承認決議を経て、当社グループの対応方針として各社に共有され、各グループ事業会社 生産部門の取締役をはじめ環境管理担当者で構成される「大塚グループ グローバル環境会議」によって実行、展開されます。本会議では、検討されたリスクや機会の評価、モニタリング結果の報告を行い、「大塚ホールディングス 環境委員会」は改善の指示、企画立案の承認を行います。また、モニタリング結果内容が事業戦略や経営資源に影響を及ぼす場合は、当社の取締役会で決議案件として都度、経営計画に組み込まれます。本委員会は、サステナビリティ全体の戦略や方向性を決定する「大塚グループ サステナビリティ推進委員会」の傘下に位置づけられており、グループのサステナビリティ活動の一つとして役割を担っています。
■大塚グループ環境マネジメント体制
② 戦略
当社グループは、事業活動におけるすべての環境負荷をゼロにするという2050年環境ビジョン「ネットゼロ」を掲げています。グループの事業活動におけるCO2 排出量の削減に加え、サプライチェーン全体での環境負荷をゼロにすることを目指し、気候変動に関する重要な財務、及び戦略に影響を及ぼす可能性のあるリスクと機会の評価・分析を実施しています。また、気候変動に対応する脱炭素化への取り組みが必要と認識し、再生可能エネルギーの積極的な導入や、エネルギー利用効率の最大化など、環境負荷低減と事業成長への貢献の両立に取り組んでいます。
a.シナリオ分析プロセス
気候変動関連の2℃未満シナリオおよび4℃シナリオにおける事業リスクと機会を、IEA(国際エネルギー機関)、及びIPCC(気候変動に関する政府間パネル)等が示すシナリオを用いて分析し、適応策と財務影響等について検証しました。今後もリスクと機会の評価・分析を継続的に実施し、シナリオ分析の拡充を進めていきます。
■気候関連リスクに伴う財務影響および対応
■気候関連機会に伴う財務影響および対応
b.レジリエンス強化に向けた適応策
気候変動が事業に与えるリスク・機会と財務インパクトを把握するため、シナリオ分析を実施しました。その結果、炭素税をはじめとする地球温暖化対策の政策手段の導入や規制強化によるエネルギーコストの上昇に関して、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があることが分かりました。これらのリスクを回避・軽減する適応策として、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える「1.5℃水準」に対応した気候変動目標を改定し、再生可能エネルギーの導入拡大やメガソーラー設備の導入、燃料転換などを推進し、さらなる事業活動のレジリエンス強化に取り組んでいます。
③ リスク管理
当社グループは気候関連リスクによる重大な財務、及び戦略に影響を及ぼす可能性のあるリスクを「大塚ホールディングス 環境委員会」及び「大塚グループ グローバル環境会議」にて定期的に評価・分析しています。リスク評価の中で重要と判断された場合には、「大塚ホールディングス 環境委員会」委員長が取締役会に報告し、審議
・承認された内容は、当社グループの対応方針として各社に共有し、気候関連リスク低減へのマネジメントを図っています。
④ 指標及び目標
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指標 |
2017年度実績 |
2023年度実績 |
2017年度比 |
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CO2排出量(Scope1,2) |
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-36.1% |
2028年目標:CO2排出量を2017年比50%削減
当社の気候変動における指標および目標等の詳細については、「環境報告書」をご参照ください。
大塚ホールディングス
https://www.otsuka.com/jp/sustainability/environmental_report.html
当社グループ事業の運営及び展開等については、様々なリスク要因があります。当社グループは、それらの想定されるリスク要因に対し、事前に低減・移転・回避・保有を判断し、事実上可能な範囲での施策を検討・実施しておりますが、すべてのリスク要因を排除又は低減することは不可能又は著しく困難であり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
以下、当社グループのリスクマネジメント体制、及び当社グループが重要なリスクであると判断する項目を記載いたしますが、当社グループの事業等に係るリスクをすべて網羅するものではありません。また、将来に関する事項については、当連結会計年度末時点において、当社グループが判断又は予想する主要なものであり、事業等に係るリスクはこれらに限るものではありません。
1. 当社グループのリスクマネジメント体制
<リスクマネジメント体制の全体像>
当社グループは、当社及び主要事業会社における全社リスク管理の一層の充実に取り組むため、リスクを全社包括的に認識・評価し、経営資源を重要なリスクに対する統制へ優先的に配分すること等を目的として、2020年からエンタープライズリスクマネジメント(ERM)を導入しております。2022年には、ISO31000やCOSOをはじめとしたグローバル基準を参照し、「大塚グループ・グローバルERMポリシー」を制定しました。
ERMの取り組みでは、企業理念の実現や事業戦略の目標達成に大きな影響を与える不確実性を「リスク」と定義し、全社リスク管理のフレームワーク及びリスク評価の仕組みを構築しています。そのうえで、主要事業会社におけるリスク評価を通して当社グループにおける重要なリスクを識別・評価し、リスクの低減・移転・回避・保有を判断、管理方針の策定、その実行及びモニタリングを継続的に行うことで、効果的かつ効率的に当社グループのリスクを管理しております。
当社では、財務・経営企画・総務を担当する当社取締役を委員長とする「グローバルリスク監督委員会」を設置しています。当社の取締役会にて重要なリスクの審議や報告を行うことに加え、同委員会が、重要なリスクに対する管理方針の立案、主要事業会社への必要な指示や支援、管理方針の実施状況のモニタリング等、ERM活動の全般を統括しています。これらの取り組みは当社の取締役会へ報告され、取締役会が必要に応じて指示を行うことで、ERMの有効性のレビューならびに実効性を監督しています。
<リスク管理活動の内容>
重要なリスクの特定にあたっては、まず当社及び主要事業会社において、マネジメントインタビューによる経営上のリスク認識の共有(トップダウンアプローチ)と、現場従業員によるリスクとそのコントロール状況のアセスメント(ボトムアップアプローチ)を行い、当社グループに存在するリスクを識別しております。この中で、各社において主要なリスクと判断されたものについては、各社でリスク管理方針及びリスク管理のアクションプランを策定、定期的にリスク状況やアクションプランの進捗状況を把握し、見直しを行っております。当社では各社の主要なリスクを集約・見える化し、当社グループに存在するリスクとコントロール状況を俯瞰的に把握しています。そのうえで、グループ全体に共通するリスクについて精査し、当社グループとしての重要なリスクの取りまとめを行っております。その結果に基づき、全社的な観点からグローバルリスク監督委員会において、経済的損失や事業継続性等に繋がりうる当社グループとして影響が大きなリスクを、優先度の高い重要なリスクとして選定しています。
重要なリスクについては、当社及び主要事業会社にてリスク内容や許容範囲を踏まえた各種対策を立案・実行しています。当社は主要事業会社に対して必要な指示や支援を行い、主要事業会社は当社に対して適宜報告や相談を行う等、相互に連携しながらERMを推進・運用しています。
また、当社及び主要事業会社は定期的にリスクのモニタリングを実施し、リスクの顕在化を可能な限り防止するとともに、リスクが許容範囲内に収まっているかの適切な管理に努めております。
(当社グループのリスク管理体制)
2. 認識している重要なリスク
「1. 当社グループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、当社グループでは、当社及び主要事業会社において、全社的にリスクのアセスメントを実施した結果、以下の重要なリスクを認識しており、リスク低減等のための取り組みを実施しています。
(1) コア事業領域における重要なリスク
① 医療関連事業における重要なリスク
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医療費抑制策に関するリスク |
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<リスクの概要> 各国政府は増え続ける医療費に歯止めをかけるため、医療費を適正化する方針を示しており、日本においては定期的な薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用が促進されております。 また、当社グループの重要市場である米国においても、インフレ抑制法による先発医薬品(ブランド品)の価格抑制方針のほか、低価格のジェネリック医薬品やバイオシミラー(バイオ後続品)の使用促進も進んでおり、今後の医療費政策の動向が当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループは、革新的な新薬を適正価格で提供し、医療を取り巻く環境整備等にも配慮すると同時に、新薬が持つ価値の立証に努めております。 また、日本における薬価の中間年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政施策の動向を継続的に注視しており、各種規制を遵守したうえで適時に対応策を検討しております。 一方で、人々の病気の予防・健康に対する意識の高まりに対し、トータルヘルスケアをコンセプトに、ウェルビーイングというテーマで健康をより広い範囲で捉え、一人ひとりの健康に向き合い事業を進める当社グループの特徴を活かし、社会課題を解決する製品やサービスを提供し続けることで「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」を目指しております。 |
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新薬開発の不確実性に関するリスク |
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<リスクの概要> 医療用医薬品・医療機器等の開発には多額の研究開発投資を必要とし、厳格な審査に基づく承認取得等のプロセスは長期にわたります。臨床試験で想定した有効性と安全性が確認できないこと等による開発の遅延・中止により、独占販売期間の短縮、競合品の先行、あるいは当該開発品の上市断念等により研究開発費に見合う売上収益が計上できず、中長期的な事業計画に影響を与える可能性があります。また、投資した設備等の稼働率が想定を下回ることによる利益率の低下や資産の減損損失の計上等により、当社グループ業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、精神・神経領域、がん領域、及び循環器・腎領域等を重点領域とし、顕在化しているが満たされない医療上のニーズに焦点を当てた研究開発に注力し、当該領域におけるパイプラインの充実化と開発の成功確度を高めることに努めております。また、試験のモニタリングを強化し、課題が認められた場合は関連部門と連携した対応策を実施しております。一方で、開発計画通りにプロジェクトが進まない場合も想定した影響分析や、外部からの導入による開発品目の拡充等によりリスクを低減しております。 これらの取り組みに加え、当社グループでは、医薬品開発に関する主要な計画について各社の取締役会で意思決定を行うとともに、諮問機関であるグローバル戦略会議等で開発に関する予算順位付け等を行い、適宜研究開発方針を見直し、適切にポートフォリオを管理しております。 |
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副作用等に関するリスク |
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<リスクの概要> 医薬品・医療機器等では、安全性プロファイルに影響する予期せぬ重大な副作用が生じることがあります。そのような場合、開発中止、販売中止、添付文書の改訂、回収等の対応が必要になり、事業全体の売上収益や開発計画への影響が発生する可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、前述のポートフォリオ管理に加え、安全管理に係るグローバルな組織体制を構築し、全世界で業務実施手順を定め、従業員への教育を行うことで安全性情報の収集に努めております。医薬品・医療機器等を開発・販売しているすべての国・地域において、グループ各社又は提携会社等により収集された安全性情報は、各社のグローバルデータベースで管理しております。安全性情報は適切に医学的評価を行い、各国・地域の規制に応じ適切に当局に報告するとともに、安全対策を実施する体制を整備しております。 |
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品質に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループの製品に関して、原材料調達先、自社工場・製造委託先の製造プロセスにおける不備により、最終製品の品質に問題が生じた場合や関連法令が遵守されない場合には、回収、販売停止等が生じ、製品供給の不安定化により、患者さんへ適切な医療が提供できなくなる可能性があります。 さらに、社会的信頼の喪失等により、当社グループのブランド価値や信用が低下し業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループは、すべての人々に信頼される安全・安心な製品を安定供給するために、技術の開発・取得、人財育成を進め、継続的な品質改善を行っています。「大塚グループ 品質ポリシー」を掲げて品質文化(Quality Culture)の醸成を推進し、各国・地域の規制に準拠するとともに、「ICH Q10医薬品品質システムに関するガイドライン」に基づいた品質システムを強化しています。当社グループの各事業会社は、特性に合わせた品質方針のもと、製造工程ごとの品質管理試験の実施とデータの信頼性確保に努め、トレーサビリティを徹底し、品質保証体制の強化に常に取り組んでおります。加えて、製造委託先や原材料の取引先に対しても、品質管理・保証のための明確な基準を定め、厳格な監査基準による製造管理及び品質保証体制の定期的な確認・評価等を実施し、当社グループと同様の製品品質を確保しております。 |
② ニュートラシューティカルズ関連事業における重要なリスク
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新カテゴリー・新エリア展開に関するリスク |
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<リスクの概要> ニュートラシューティカルズ関連事業では、「柔軟性を持つグローバル企業へ、ライフステージに合わせた健康ソリューションの提案」をテーマに、グローバル視点での社会課題への貢献、次世代の成長ドライバーの創出・育成、高利益率体制の継続に取り組んでいます。これらを推進するにあたり、顧客の潜在ニーズを取り入れた製品を市場に適応させられない場合や、新エリアでの法的規制、経済情勢、政情不安や事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績や事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、各市場でのブランド価値を維持・向上するため、市場環境の変化をマクロ・ミクロの両面から注視しています。製品や地域の特性を踏まえ、必要に応じて長期的な視点で戦略を最適化することで、リスクの低減に努めています。また、関連部門では、新たなグローバルブランドやカテゴリーの創出に向けた情報収集・分析・戦略策定を実施することで、関連事業の効果的なグローバル展開に繋げています。 |
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食の安全性・品質に関するリスク(消費者関連事業も共通) |
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<リスクの概要> 近年、国内外の食品業界においては、有害物質の混入等の様々な問題が発生しており、当社グループの品質管理体制の範囲を超えた事態が生じた場合は、当社グループの業績、財政状態並びに社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループは、すべての人々に信頼される安全・安心な製品を安定供給するために、技術の開発・取得、人財育成を進め、継続的な品質改善を行っています。「大塚グループ 品質ポリシー」を掲げて品質文化(Quality Culture)の醸成を推進し、各国・各地域の規制に準拠するとともに、「ISO9001」(品質)、「ISO22000」「FSSC22000」(食品安全)などの認証取得を進め、それぞれの事業会社が特性に合わせた品質方針のもと、製造管理・品質管理の実施とデータの信頼性確保に努め、トレーサビリティを徹底し、品質保証体制の強化に常に取り組んでおります。また、自社製造品のみならず委託製造品を含む国内外すべての製品の品質管理や安全性保証等に関して万全を期すよう努め、各国・各地域で制度や規程が異なるなか、製造委託先や原材料の取引先に対しても、品質管理・保証のための明確な基準を定め、厳格な監査手順により製造管理及び品質保証体制の定期的な確認・評価等を実施し、当社グループと同様の製品品質を確保しております。事業会社では顧客の声を聴く適切な窓口体制を整えており、製品やサービスに対するご指摘に対しては速やかに関連部署の連携のもと情報収集と調査が行われ、重大な事態を未然に防ぐための適切な対応を行っています。 |
(2) 各事業領域共通の重要なリスク
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グループ統治・戦略に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループにおいて、適切な経営資源配分、グループ戦略立案や見直し及びグループ会社の監視・監督等といった持株会社統治、さらに国内外の事業展開を進める中で主要事業会社を通じたグループ会社管理による効果が十分発揮されなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、世界的な経済状況の変化により、資金調達が計画どおりに実施できない、もしくは資金調達コストが上昇する場合は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、グループ各社からの事業の報告とその分析を基にして、グループ全体として適切な戦略判断と経営資源の配分を行っております。当社グループでは、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業をコア事業としており、特に、医療関連事業では、「顕在化しているが満たされない医療上のニーズ」をテーマに、重点領域として精神・神経領域、がん領域、及び循環器・腎領域等に注力しています。また、ニュートラシューティカルズ関連事業では、日々の健康の維持・増進をサポートする機能性飲料・機能性食品、サプリメント等を中心に、経営資源の重点配分に取り組んでおります。 また、国内外の市場環境変化を機動的に捉え、適切に対応するために、様々なリスクの顕在化の可能性を検討したうえで、その検討結果を速やかに経営層に報告しております。具体的には、潜在的な ニーズや社会課題に対して新しいコンセプトのソリューションを提案し、ユニークかつ多様な事業をベースとする独創的な製品・サービスの創出に注力しております。加えて、当社グループらしい多様な製品を保有することにより、事業全体のリスク分散を図り、個人消費動向の変動に関する環境変化に対応しております。 当社グループは、「大塚グループ・グローバル行動規準」や関連するグローバルポリシーを制定し、それらに基づく世界共通の教育研修を徹底することで、グループ会社全体を統制する仕組みを作っております。また、「取締役会規程」及び「関係会社管理規程」に規定された事項に基づき、国内外のグループ各社から定期的に情報収集・情報交換を実施し、重要な事項については当社の承認を得ることを求めることで、グループの連携体制を確立しております。加えて、国内外のグループ各社に対して定期的に当社からの内部監査を実施し、モニタリング体制を構築するとともに当社グループとして内部通報制度を整備しております。 当社グループは、金融機関等との良好な関係の維持を図るとともに、資金調達手段の多様化に積極的に取り組み、必要に応じて、社債発行等の手段を通じて調達を行っております。また、市場が不安定な混乱状況に陥り、これらの手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、複数の金融機関との間でのコミットメントラインも保持しております。加えて、最新の情報に基づいた資金計画の見直しを適時に行っております。 |
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人財確保・育成、企業文化・企業理念の浸透に関するリスク |
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<リスクの概要> 企業文化や企業理念が十分に浸透せず、グループ戦略を踏まえた事業運営が可能な人財が確保できない場合、長期的に当社グループの競争力や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外展開やM&A・アライアンス、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった重要かつ高度な戦略推進のために必要十分な人財を確保することができない場合、競争力・収益力が想定されたように成長せず、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、経営幹部自らのリーダーシップのもと、国内外を含む大塚グループ全体の従業員を対象に、経営人財として必要な人財像やビジネススキルを学ぶプログラムを提供し、グループ戦略・グローバル戦略を踏まえた事業運営が可能な人財を持続的に創出しております。また、企業理念の浸透や、企業文化の醸成を通じてすべての従業員のエンゲージメントを高め、自己の能力を最大限に発揮できるよう環境を整備し、それらを評価・改善する仕組み作りを進めています。さらに、イノベーションの持続的な創出と企業競争力の強化のために、研究開発人財の確保や定着、デジタル人財の育成等にも注力するとともに、「大塚グループ・グローバル行動規準」においては、ダイバーシティの推進を宣言し、多様な人財の活躍を支える制度や仕組みを整備しております。また、働き方の多様化を取り入れたハイブリッド型勤務体制下、従業員同士の円滑なコミュニケーションを図るための体制を整備し柔軟性の高い働き方を推奨しております。なお、内部通報制度の基本原則を明確化し、制度の実効性を高めることを目的に「大塚グループ・グローバルスピークアップポリシー」を制定し、教育や啓発活動等を通じたスピークアップ文化の醸成に取り組んでいます。 |
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人権に関するリスク |
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<リスクの概要> 世界的な人権尊重の潮流のなか、人権リスクへの対応を義務付ける法律が世界各国に広がりを見せています。人権リスクとは事業に関わる全ての人が人権侵害を受けるリスクであり、それを放置した場合、顧客・社会からの信頼が失墜するレピュテーションリスク、業務停滞、ビジネスパートナーとの取引停止やサプライチェーンの寸断といったオペレーショナルリスク、訴訟・行政罰等の法務リスク、そして投資引き揚げ・株価低下の財務リスク等、グループの業績や持続可能性に重大な影響を与える可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは「大塚グループ・グローバル行動規準」のもと、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠し、「大塚グループ 人権方針」を2020年に策定。ステークホルダーごとに想定される重要な人権課題を「大塚グループ 人権に関する重点課題」として定め、大塚グループ人権推進責任者(大塚ホールディングス取締役)のもと「大塚グループ 人権タスクフォース」が活動を推進しています。人権を尊重し、社会に対してポジティブインパクトをもたらすために、独立した外部有識者とも連携しながら、人権尊重の仕組みを構築しています。 サプライチェーン上の人権リスク評価を実施し、必要に応じて、社外ステークホルダーに対しても対話等を通じて直接確認・調査を行う等、当リスクの適切な管理に努めています。また、社内においても人権に関する社員教育や定期的なモニター等を実施しています。 また当社グループでは、各社に匿名でも利用できる内部通報窓口を設置するとともに、社外ステークホルダーが当社グループ各社との取引・契約関係において認識した不正や人権問題を含む不適切な事案を匿名で通報できる窓口を設置し、ご相談、ご報告についてグループ各社と連携して適切に調査と対応を行っています。 |
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気候変動に関するリスク |
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<リスクの概要> 地球温暖化に伴う気候変動については、酷暑や渇水、洪水等の予期せぬ事象の発生により、原材料農作物の収量が減少することによる調達コストの増加、また、脱炭素化の移行が適切に遂行されない場合、炭素税等によるエネルギーコストの高騰、国際競争力の低下が生じ、当社グループの業績あるいは持続的成長に重大な影響を与える可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、「大塚ホールディングス 環境委員会」のもと「大塚グループ環境方針」や「環境活動指針」をはじめとする環境に関する方針、目標を制定し、各グループ事業会社 生産部門の取締役をはじめ環境管理担当者で構成される「大塚グループ グローバル環境会議」によって、活動の実行と展開をしています。 気候変動に伴う調達コストの増加、および炭素税等によるエネルギーコストの高騰等による財務リスクに対しては、TCFD提言に基づくシナリオ分析を実施し、財務影響や戦略のレジリエンスを評価し、方針や戦略の見直しや取り組みの深化を進め、リスク低減に努めております。 |
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サプライチェーンの透明性に関するリスク |
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<リスクの概要> 自社、製造委託先、原材料供給元、物流会社、販売会社等を含むサプライチェーンにおいて、人権、労働、環境、腐敗防止、その他サステナビリティ全般に関する不適切な事態が発生した場合には、事業遂行体制の見直しを迫られるとともに、当社グループのブランド価値や信用が失墜し、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 「大塚グループ・グローバル行動規準」では大塚グループで業務に携わるすべての人々に高い倫理観を持って行動することを求めています。調達活動に際しては、「大塚グループ調達方針」を制定し、公平・公正で透明性を持ったサプライヤーの選定や、関連する法令・ルールを遵守し、高い倫理観を持って社会通念に基づき行動することを定めています。また品質・安全性・安定供給に加え、倫理的かつ持続可能なサプライチェーンの構築を目的に「大塚グループ サステナブル調達ガイドライン」を策定し、サプライヤーから同意を得るとともに、各項目における取り組み状況の確認とモニタリング等を実施しております。そして2024年には、すべての取引先を対象とした「大塚グループ ビジネスパートナー行動規準」を制定しております。 |
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コーポレートブランド管理に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループのコーポレートブランド育成・管理が適切に実行されていない場合、コーポレートブランドが毀損され、企業イメージに影響を及ぼす可能性があります。当社グループの広告等における不適切な表現等がSNS等を通じて拡散した場合や、当社グループの事業活動やイメージについて批判的な評価や誤った情報が拡散した場合等、様々な要素によって当社グループのブランド価値や信用が低下し、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループのコーポレートブランドを適切に育成・管理するために、コーポレートブランドのグループ各企業における使用ルールを整備し、コーポレートブランドの管理とその価値の維持・向上に向けた取り組みを推進しております。当社グループのコーポレートシンボルは、「CI管理委員会」(注)を中心に、グループ統一ルールのもと適切な管理を行っております。また、広告及びSNS等での不適切表現防止等を社内教育に取り込んでいるほか、コーポレートブランドに影響を及ぼす事象についてグループ各社から情報を収集する体制を整備しております。当社グループのレピュテーションに影響を及ぼす問題が発生した場合の適切なメディア対応に備え、「大塚グループPRガイドライン」において、メディアとの適切なコミュニケーションや職責をあらかじめ明確化しております。また、グループ各社の関連部門等を対象とした、リスク発生時における外部との適切なコミュニケーションについての研修や演習を実施しております。 |
(注) CIはコーポレート・アイデンティティを表します。
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各種業務提携及び買収に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループとしての重要な成長戦略に資する各種業務提携及び買収について、提携・買収の実施後に事業環境等が変化することにより、当初計画されていたグループシナジーを得られない可能性があります。その場合、提携・買収により見込まれていた利益が実現できず、提携の解消やのれん・無形資産の減損損失を計上すること等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループは、業務提携及び買収を適切に実施し、その後の持続的な成長を目指すため、対象企業や資産に対する詳細なデュー・ディリジェンスと価値評価、取締役会での十分な審議、提携又は買収後の事業運営のモニタリング等を実施しております。また、外部の専門家を適宜起用するとともに、案件執行能力を備えた社内の人財育成にも努めております。 |
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デジタライゼーションに関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループとしてのデジタライゼーションに対する取り組み方針や、その支援施策が適切になされない場合、当社グループの各事業会社においてDXの遅れが発生し、競争の優位性の確保やシェアの拡大ができなくなり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、グループの総合力を活かしながらグループ各社及び各事業部門を中心として、スピード感を持った最新テクノロジーの導入を目指しております。具体的な取り組みとして、研究部門・生産部門・販売部門から患者さん向けのスマートフォンアプリケーションまで、様々な場面で実証実験や実務適用を行っております。また、ITリテラシー向上を目的としたAI・機械学習やIoT等の最新テクノロジーに関する従業員向けセミナー等の開催及びグループ内の好事例の共有により、グループ全体のIT知識・スキルの底上げを推進しております。 |
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自然災害・パンデミックに関するリスク |
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<リスクの概要> 地震、津波、台風、洪水等の大規模な自然災害による物的被害や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等のパンデミックが発生した場合、当社グループの工場・研究所・事業所等施設の稼働停止、当社グループの人的資産の喪失、医療関連事業の臨床試験中断による新製品開発の遅延、患者さんへ適切な医療が提供できないことによる製品売上の減少、消費低迷によるニュートラシューティカルズ関連事業の製品売上減少等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループのみならずサプライチェーン全体が大きな被害を受けることが予想され、当社グループ製品・サービスの提供に支障をきたす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、大規模地震等の災害発生時にも最大限事業活動を継続し、製品の安定供給が図れるよう、事業継続計画(BCP)を策定しております。具体的には、自然災害の発生に備えて、従業員及び家族の安否確認、グループ各社の拠点間の通信手段、災害対応備蓄品等を備え、定期的な訓練等を実施しております。事業継続マネジメント(BCM)の観点では、生産、受注、物流等の各業務において、グループ各社が協働してグループ全体で事業継続に取り組む体制を構築し、適正な原材料・製品在庫量の確保、複数購買体制、代替生産体制及び物流体制等に関する対策の強化に努めております。その一環として、毎年テーマを定めグループ会社合同のBCP演習を実施しております。 COVID-19等の感染症に対してはグローバルリスク監督委員会が主体となり、パンデミック発生時における、基本的な感染防止策の徹底、在宅勤務の推進、生産拠点における来訪者の制限、サーモグラフィカメラによる発熱者チェック等の対応方針を策定しています。 自然災害やパンデミックによるコア事業をはじめとする各事業に関する国内外の動向に適切に対応するために、様々なリスクの顕在化の可能性を検討したうえで、その検討結果を速やかに経営層に報告し対策を講じております。 |
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原材料価格の高騰等に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害、市場価格、経済情勢、燃料費、為替等によって変動します。当該価格がこれらの原因等により高騰した場合には、当該製品の原価が上昇し、または原材料が調達できなくなり、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは主要原材料の価格の高騰等によるリスクを低減させるために、複数の供給元からの原材料調達、上流原料や素材を含む原材料の市場動向等の情報収集、代替原料の確保、適正在庫の確保及び生産性向上による原価低減等の様々な対応策を実施しております。また、このような対策を実施したうえで、原材料価格の上昇については販売価格に転嫁することにより対応する可能性もあります。 |
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知的財産権の侵害に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループでは、当社グループが保有し又は当社グループが他社からライセンスを受けている知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社グループの製造又は販売する製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該製品を回収し、又はその製造もしくは販売を中止することを求められる他、多額の損害賠償を請求される可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、特許権を含む知的財産権を適切に管理する体制を整え、また、継続的なモニタリングを実施することで、第三者からの知的財産権の侵害のリスクに常に注意を払っております。また、専門家、データベース及び調査機関等を利用した調査・情報収集等を行うことで、第三者の知的財産権に対する侵害のリスクに常に注意を払っております。加えて、実際に知的財産係争が発生した場合には、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。 |
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訴訟に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任、労務問題、知的財産権の侵害、契約の不履行、環境汚染等に関して第三者から訴訟を提起される可能性があり、当社グループに不利益な内容の判決、決定又は和解がなされた場合、当社グループの業績及び財政状態並びに事業戦略及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、訴訟情報の前兆を把握するため当社グループ内での報告体制を構築するとともに、当社法務部がグループ各社と情報を交換し、必要な指示、サポートを行っております。また、適宜、顧問弁護士等と協議を行い、訴訟リスクの低減に努めております。 |
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ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループでは、情報管理において、システム障害や事故及び外部からのサイバー攻撃、従業員や業務委託先等第三者の過失等による行為を含む様々な原因により、システムの停止による事業活動の中断、情報の改ざん、悪用又は漏洩等が発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績、財政状態並びに社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、情報管理及びセキュリティについての基本的な考え方を示した「大塚グループ・グローバル情報セキュリティポリシー」を制定し、グループ各社に向けて情報管理及びセキュリティの重要性に関して認識を統一させるとともに、役員・従業員へ教育研修等を通じて重要性の周知徹底を図っております。また、各種サイバー攻撃等への対策として、「統治」、「特定」、「防御」、「検知」、「対応」、「復旧」のためのセキュリティインフラの強化及びプロセスの整備をグループ全体で図るとともに、国内外のグループ各社のセキュリティリスクのアセスメントにより管理状況を可視化、改善することで、継続的なセキュリティの強化に努めています。一方で、社内のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)により、情報セキュリティインシデント等に対応できる体制を構築しております。 加えて、情報管理及びセキュリティに関する具体的な施策の検討や最新情報の共有等を目的とした「グループ情報セキュリティ委員会」を組織するとともに、グループ各社のセキュリティ担当者のスキル向上を目的としたサイバー人財育成研修を実施し、グループ全体の包括的なセキュリティレベルの底上げを推進しています。 |
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海外展開に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループは、日本以外にも米国、欧州及びアジアを中心に、研究開発、製造及び販売活動を行っております。グローバルな事業活動を行うにあたり、各国の法的規制の変更・強化、経済情勢の変化、政情不安や事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、事業活動の停滞や事業展開の遅延・中止等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、地政学的な要因に関する突発的な不測の事態が発生した場合、従業員・家族等の安全確保や雇用の確保に影響を与えることも想定され、その場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループでは、現地経営環境及び経営状況、地政学的リスクに係る影響を把握し、必要に応じて長期的な視点による経営戦略の見直し等を実施するとともに、関連部門が適宜連携して対応することで、海外展開におけるリスク低減に取り組んでおります。 さらには、危機管理対策マニュアルの作成、演習等を通じた緊急事態発生時の訓練の実施、定期的なリスク情報の収集・共有等、当社グループ全体で危機管理体制の向上に取り組んでおります。 |
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地政学に関するリスク |
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<リスクの概要> 当社グループは、世界各地域で事業活動を展開しており、その結果、地政学的緊張の高まりの影響を大きく受ける可能性があります。近年、各国・地域間における重要情報、物資への規制強化をはじめとした各国・地域の経済安全保障法制の強化や、国際紛争による物流の制限等、地政学的緊張の高まりが企業活動に大きく影響を与える環境となっています。特に、国際情勢の急激な変化や武力衝突の発生によって、関連地域における事業制限やサプライチェーン停滞・供給遅延等のリスクが顕在化したり、為替市場が不安定になり相場に急激な変動が生じることにより、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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<対応> 当社グループは、各地域の政治・経済・社会情勢を綿密にモニタリングし、リスクを早期に認識し対応する体制を整えています。定期的に、グループ全体の事業活動への影響を分析・可視化し、有事を想定したBCPの見直しや継続的な更新、サプライチェーン全体の最適化を推進しております。また、公平・公正で透明性を持った調達方針と調達先との良好な関係構築を通じて、安定調達・供給の実現とサプライチェーンの安定化に努めております。特に、重要原料の調達先や供給拠点の分散化多様化を進めることで、一地域におけるリスクの影響を最小限に抑えるよう取り組んでおります。さらに、リスク発生時の対応策を事前に準備し、必要に応じて事業構造の見直しや供給網の再構築を行う等、柔軟に対応できる体制を確立しています。加えて、為替予約等のデリバティブを活用し、為替リスクをヘッジするとともに、日々のモニタリングにより、急激な変動の影響を最小限に留めるよう取り組んでおります。 |
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社グループは、経常的な収益力を示す指標として事業利益を採用しております。
事業利益とは、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費並びに研究開発費を控除した額に持分法による投資損益を加減算した額であります。
(単位:百万円)
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前連結会計年度 (2023年12月期) |
当連結会計年度 (2024年12月期) |
増減額 |
増減率 |
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売上収益 |
2,018,568 |
2,329,861 |
311,293 |
15.4% |
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研究開発費投資前事業利益 |
620,358 |
744,696 |
124,338 |
20.0% |
|
事業利益 |
312,553 |
430,463 |
117,909 |
37.7% |
|
営業利益 |
139,612 |
323,564 |
183,951 |
131.8% |
|
税引前当期利益 |
142,655 |
335,854 |
193,198 |
135.4% |
|
当期利益 |
125,499 |
347,271 |
221,771 |
176.7% |
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親会社の所有者に帰属する |
121,616 |
343,120 |
221,504 |
182.1% |
|
|
|
|
|
|
|
研究開発費 |
307,804 |
314,233 |
6,428 |
2.1% |
|
減損損失 |
172,419 |
126,040 |
△46,378 |
△26.9% |
これまで当社グループは、健康の維持・増進、病気の診断から治療までを担う「トータルヘルスケア企業」として事業を展開してまいりました。社会環境が変化し続ける中、「人を取り巻く社会全体で考え、社会課題を解決するトータルヘルスケア企業」として、新しい技術やニーズを取り入れながら、持続的成長の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
当連結会計年度の売上収益は、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業を中心に増収となり、2,329,861百万円(前期比15.4%増)となりました。主な要因は、医療関連事業において、第4次中期経営計画の成長ドライバーとして位置付けた抗精神病薬「レキサルティ」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」の『コア2』製品に加え、持続性注射剤「エビリファイ メンテナ/エビリファイ アシムトファイ」、V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」等の売上増加によるものです。また、ニュートラシューティカルズ関連事業においても、成長ドライバーとして新たに設定した3つの社会課題別カテゴリーにおいて、「ポカリスエット」や「ネイチャーメイド」を中心に全カテゴリーが成長したことから売上収益は増収となりました。
研究開発費投資前事業利益は、744,696百万円(同20.0%増)となりました。主な要因は、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業の増収を受け売上総利益が増加したことなどによります。
研究開発費は、314,233百万円(同2.1%増)となりました。開発品目ではIgA腎症を対象に開発中のシベプレンリマブ/VIS649、住友ファーマ株式会社より導入した新規抗精神病薬ウロタロント/SEP-363856の開発費が増加した一方で、AVP-786の開発中止に伴う開発費は減少しました。
順調な売上成長により、事業利益は430,463百万円(同37.7%増)と大幅な増益となりました。
営業利益においても、323,564百万円(同131.8%増)と大幅な増益となりました。これは、AVP-786及びデジタルメディスン関連資産等に係る減損損失が計上されたものの、売上収益が想定以上に伸長したことによります。
また、米国子会社における一過性の税務調整の影響により、当期の法人所得税費用が11,417百万円(前期は
△17,155百万円、△は費用)となりました。
その結果、当期利益は347,271百万円(同176.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は343,120百万円(同182.1%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりです。
当連結会計年度より、報告セグメントの内容の一部を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 5.事業セグメント」をご参照ください。
なお、前連結会計年度については、変更後の報告セグメントの内容に組替えた数値を記載しております。
(単位:百万円)
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医療関連 |
ニュートラシューティカルズ |
消費者 |
その他 |
調整額 |
連結 |
|
売上収益 |
1,629,032 |
557,043 |
33,760 |
113,657 |
△3,631 |
2,329,861 |
|
事業利益 |
390,608 |
64,147 |
23,662 |
6,952 |
△54,907 |
430,463 |
(参考-前連結会計年度)
(単位:百万円)
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医療関連 |
ニュートラシューティカルズ |
消費者 |
その他 |
調整額 |
連結 |
|
売上収益 |
1,391,155 |
483,463 |
37,081 |
110,211 |
△3,343 |
2,018,568 |
|
事業利益 |
282,089 |
60,462 |
18,101 |
3,134 |
△51,234 |
312,553 |
(医療関連事業)
当連結会計年度における売上収益は1,629,032百万円(前期比17.1%増)、事業利益は390,608百万円(同38.5%増)となりました。
<主要製品の状況>
・抗精神病薬「レキサルティ」
米国では、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに関する疾患啓発活動を積極的に進めております。情報提供活動の強化により処方数が伸長し、増収となりました。日本では、統合失調症の情報提供活動の強化により新規処方数が伸長し、また、2023年12月にうつ病・うつ状態の効能の承認を取得、2024年9月にアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション*1の効能の承認を取得し、大幅増収となりました。これらの結果、売上収益は267,441百万円(前期比25.8%増)となりました。
*1 日本の添付文書上の効能・効果は「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」
・抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」
米国では、2023年8月に大腸がんにおけるベバシズマブ併用療法の適応追加が承認され、NCCNガイドライ ン*2による併用療法の推奨により処方数が伸長し大幅増収となりました。欧州では、同併用療法が適用される一部の国において、情報提供活動を開始したことに伴い処方数が伸長し、大幅増収となりました。日本では、同併用療法の論文掲載等による認知向上や、2024年3月の添付文書改訂により情報提供活動が可能になったこと、同年7月の大腸癌治療ガイドライン改訂もあり増収となりました。これらの結果、売上収益は104,394百万円(前期比30.3%増)となりました。
*2 世界的に広く利用されているがん診療ガイドライン
・アリピプラゾール持続性注射剤(1ヵ月製剤)「エビリファイ メンテナ」
米国では、服薬アドヒアランスに課題がある双極Ⅰ型障害や統合失調症患者に対する製品の有用性の訴求や情報提供活動により増収となりました。欧州では、各国で堅調に推移したことにより増収となりました。日本では、統合失調症に加え、双極Ⅰ型障害の情報提供活動を強化し、増収となりました。これらの結果、売上収益は218,973百万円(前期比10.8%増)となりました。
・アリピプラゾール持続性注射剤(2ヵ月製剤)「エビリファイ アシムトファイ」
米国では、服薬アドヒアランスに課題がある双極Ⅰ型障害や統合失調症患者に対する製品の有用性の訴求や情報提供活動、及びアリピプラゾール持続性注射剤(1ヵ月製剤)「エビリファイ メンテナ」からの切り替えにより処方数が伸長し、大幅増収となりました。欧州では、2024年3月に統合失調症維持療法を対象とした欧州初となる2ヵ月持続性注射剤の承認を取得し、売上収益は堅調に推移しています。これらの結果、売上収益は18,937百万円(前期比286.8%増)となりました。
・V2-受容体拮抗剤「サムスカ/ジンアーク」
米国では、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)治療薬として継続的な疾患啓発や臨床データの情報提供活動等により処方数が伸長し、大幅増収となりました。欧州と日本では、後発医薬品の影響を受け減収となりました。これらの結果、売上収益は281,403百万円(前期比21.4%増)となりました。
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当連結会計年度における売上収益は557,043百万円(前期比15.2%増)、事業利益は64,147百万円(同6.1%増)となりました。
<社会課題別カテゴリーの状況>
・For Climate & Environmental Risk(気候及び環境リスク)
水分・電解質補給飲料「ポカリスエット」は、販売数量は伸長し増収となりました。日本では、以前から取り組んでいる季節やシーンに合わせた水分・電解質補給の啓発活動や、生活者への熱中症対策の情報発信等ブランド価値を訴求する活動を継続した一方で、昨年よりも猛暑日が増加したことにより外出をはじめとする生活者の活動量の減少等の影響を受け、販売数量は減少しました。海外では、各地の文化や状況に応じた水分・電解質補給の重要性の啓発活動を通じてブランド価値が向上したことにより、販売数量は伸長しています。欧州を中心に健康食品を展開するニュートリション エ サンテ社ブランドは、「ジェルブレ」等の主力製品の成長等により、増収となりました。これらの結果、当カテゴリーの売上収益は198,580百万円(前期比8.2%増)となりました。
・For Women’s Health(女性の健康)
女性の健康と美をサポートするエクオール含有食品「エクエル」は、増収となりました。日本では女性の健康に関するセミナーの開催等、幅広い情報提供活動により製品の認知が進んでいます。また、米国ではeコマースで販売数量が伸長しています。北米で展開している女性の泌尿器系健康分野をサポートする「ユコラ」は、eコマースの拡大に加えて薬局での店頭販売が順調に推移し増収となりました。また、当カテゴリーでは、2023年11月に女性の健康分野をサポートするボナファイドヘルス社を買収したことにより、同社ブランド「ボナファイド」を獲得しております。これらの結果、当カテゴリーの売上収益は56,613百万円(前期比52.3%増)となりました。
・For Healthier Life(ヘルシアーライフ)
ファーマバイト社のサプリメント「ネイチャーメイド」は、米国では生活者へのプロモーション活動を継続しており、ブランドや品質に対する高い信頼性を背景にシェアが拡大*3し増収となりました。植物由来のサプリメント「メガフード」は、新製品の発売等により増収となりました。これらの結果、当カテゴリーの売上収益は219,332百万円(前期比19.3%増)となりました。
*3 Circana Data; Market Advantage; YTD wks 12/29/2024, Food, Drug, Mass Excluding Amazon and Costco (MULO) © 2024 Circana
[カテゴリーを構成する製品]
For Climate & Environmental Risk|ポカリスエット、OS-1、デイヤ、ニュートリション エ サンテ社ブランド
For Women’s Health|エクエル、ボナファイド、ユコラ、コスメディクス*4(インナーシグナル、サクラエ)
For Healthier Life|ネイチャーメイド、メガフード、カロリーメイト
*4 Cosmedics(健粧品)=cosmetics(化粧品) + medicine(医薬品)
(消費者関連事業)
当連結会計年度における売上収益は33,760百万円(前期比9.0%減)、事業利益は持分法投資利益の貢献等により23,662百万円(同30.7%増)となりました。
減収の主な要因は、米国のスパークリングウォーター事業の見直しによるものです。「クリスタルガイザー」は、日本では、価格改定の影響もあり販売数量は減少しましたが、軽量ボトル・軽量キャップ、50%リサイクルペットボトルによる環境への取り組みを発信したブランド価値の訴求を継続しています。ビタミン炭酸飲料「マッチ」は、高校生を中心とした体感施策、絆づくりなどの継続したマーケティング活動により既存品のユーザー層が拡大しました。加えて、2024年10月にリニューアル発売した「マッチ ビタミンみかん」の販売も貢献し、販売数量が伸長しました。
(その他の事業)
当連結会計年度における売上収益は113,657百万円(前期比3.1%増)、事業利益は持分法投資利益の貢献等により6,952百万円(同121.8%増)となりました。
機能化学品分野は、増収となりました。主に自動車市場やスマートフォン市場の回復によるものです。
運輸・倉庫分野は、物流のデータ連携によるトータルヘルスケア物流プラットフォーム強化に取り組んでおり、売上収益は前期並となりました。
※ その他、製品別の売上収益等につきましては、決算補足資料(ファクトブック)をご参照ください。
https://www.otsuka.com/jp/ir/library/materials.html
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
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前連結会計年度 (2023年12月31日) |
当連結会計年度 (2024年12月31日) |
増減額 |
|
流動資産 |
1,326,797 |
1,366,972 |
40,175 |
|
非流動資産 |
2,034,446 |
2,372,278 |
337,831 |
|
資産合計 |
3,361,244 |
3,739,251 |
378,006 |
|
流動負債 |
667,233 |
632,664 |
△34,569 |
|
非流動負債 |
257,692 |
328,421 |
70,728 |
|
負債合計 |
924,926 |
961,085 |
36,159 |
|
資本合計 |
2,436,317 |
2,778,165 |
341,847 |
a. 資産
当連結会計年度末における総資産は3,739,251百万円(前連結会計年度末は3,361,244百万円)となり、378,006百万円増加しました。その内訳は、流動資産が40,175百万円の増加、非流動資産が337,831百万円の増加であります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,366,972百万円(前連結会計年度末は1,326,797百万円)となり、40,175百万円増加しました。その主たる内訳は、現金及び現金同等物が87,168百万円減少したものの、売上債権及びその他の債権が41,202百万円、棚卸資産が48,710百万円、その他の流動資産が37,667百万円増加したこと等によるものです。
(非流動資産)
当連結会計年度末における非流動資産は2,372,278百万円(前連結会計年度末は2,034,446百万円)となり、337,831百万円増加しました。その主たる内訳は、有形固定資産が75,186百万円、のれんが主として為替の影響及びジュナナ社の買収等により70,416百万円、無形資産は研究開発中のAVP-786等の減損損失計上による減少要因はあったもののジュナナ社の買収等により53,276百万円、米国子会社における一過性の税務調整の影響等により繰延税金資産が86,874百万円増加したこと等によるものです。
b. 負債
当連結会計年度末における負債合計は961,085百万円(前連結会計年度末は924,926百万円)となり、36,159百万円増加しました。その内訳は、流動負債が34,569百万円の減少、非流動負債が70,728百万円の増加であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は632,664百万円(前連結会計年度末は667,233百万円)となり、34,569百万円減少しました。その主たる内訳は、仕入債務及びその他の債務が13,626百万円、その他の流動負債が32,928百万円増加したものの、社債及び借入金が62,074百万円、未払法人所得税が25,689百万円減少したこと等によるものです。社債及び借入金の減少は、主に米国子会社における銀行借入の返済及び第1回無担保社債20,000百万円を償還したことによるものです。
(非流動負債)
当連結会計年度末における非流動負債は328,421百万円(前連結会計年度末は257,692百万円)となり、70,728百万円増加しました。その主たる内訳は、社債及び借入金が18,075百万円、リース負債が16,896百万円、その他の金融負債が36,352百万円増加したこと等によるものです。社債及び借入金の増加は、主として環境課題の解決を目指す投資を資金使途とするグリーンボンド20,000百万円を発行したことによるものです。また、その他の金融負債の増加は、主としてジュナナ社買収による条件付対価を計上したことによるものです。
c. 資本
当連結会計年度末における資本は2,778,165百万円(前連結会計年度末は2,436,317百万円)となり、341,847百万円増加しました。その主な要因は、資本効率の向上及び株主還元のため、50,000百万円を上限とした自己株式の取得及び取得した全株式の消却を実施したことにより自己株式が22,729百万円増加するとともに、資本剰余金が27,743百万円減少し、資本を減少させたものの、親会社の所有者に帰属する当期利益343,120百万円の計上、配当金の支払い65,135百万円等により利益剰余金が283,186百万円増加し、その他、主として円安の影響によりその他の資本の構成要素が107,183百万円増加した結果、資本は増加いたしました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は426,173百万円となり、前連結会計年度末より87,168百万円減少しました。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、354,638百万円となりました。一方で、将来の持続的成長に向けて、主に医療関連事業におけるジュナナ社等の買収、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業において設備投資等を行ったことにより、投資活動によるキャッシュ・フローは、△265,793百万円となりました。また、ジュナナ社買収のための短期資金の借入やグリーンボンド発行を行った一方で、資本効率の向上及び株主還元のため、自己株式の取得及び消却を行うとともに、リース負債の返済、第1回無担保社債の償還、配当金の支払いを行ったことにより、財務活動によるキャッシュ・フローは、△189,367百万円となりました。
これらの結果、投資活動と財務活動をあわせたキャッシュ・アウト・フローは、営業活動によるキャッシュ・イン・フローを上回り、現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より減少し、426,173百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、354,638百万円(対前期比71,405百万円増)となりました。
当連結会計年度の主な内容は、税引前当期利益335,854百万円、減価償却費及び償却費107,979百万円、減損損失及びその戻入益126,040百万円、持分法による投資損益△33,614百万円、棚卸資産の増減額△38,578百万円、売上債権及びその他の債権の増減額△9,510百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額△14,635百万円、法人所得税等の支払額△111,217百万円となっております。当連結会計年度における対前期比71,405百万円のキャッシュ・フロー増加の主な要因は、法人所得税等の支払額が30,235百万円増加したこと及びその他営業活動によるキャッシュ・フロー等の影響によりキャッシュ・フローが減少した一方で、医療関連事業において、主にAVP-786及びデジタルメディスン関連資産等に係る減損損失を計上しましたが、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業の増収が業績を牽引したこと等によりキャッシュ・フローが増加し、それらの結果、キャッシュ・フローの増加がキャッシュ・フローの減少を上回ったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△265,793百万円(同75,254百万円支出増)となりました。
当連結会計年度の主な内容は、有形固定資産の取得による支出△95,558百万円、無形資産の取得による支出△33,804百万円、投資の売却及び償還による収入71,947百万円、投資の取得による支出△79,018百万円、ジュナナ社等の買収による子会社の取得による支出△115,558百万円等であります。当連結会計年度における対前期比75,254百万円のキャッシュ・フロー減少(支出増)の主な要因は、医療関連事業におけるジュナナ社等の買収により子会社の取得による支出が44,514百万円増加したこと、契約一時金、マイルストーン等の支払い増により、無形資産の取得による支出が9,866百万円増加したこと、投資の取得による支出が50,920百万円増加したこと、定期預金の増減額が対前期比△18,136百万円となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△189,367百万円(同129,106百万円支出増)となりました。
当連結会計年度の主な内容は、自己株式の取得による支出△50,016百万円、短期借入金の増減額△41,069百万円、長期借入金の返済による支出△6,224百万円、リース負債の返済による支出△22,969百万円、配当金の支払額△66,763百万円であります。当連結会計年度における対前期比129,106百万円のキャッシュ・フロー減少の主な要因は、環境課題の解決を目指す投資を資金使途とするグリーンボンドの発行を行ったものの、資本効率の向上及び株主還元のため、自己株式の取得及び消却を行うとともに、中間配当を1株につき50円から60円としたことにより、配当金の支払額が増加したこと等により支出増となった結果、キャッシュ・フローの減少がキャッシュ・フローの増加を上回ったことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
医療関連事業 |
215,664 |
109.4% |
|
ニュートラシューティカルズ関連事業 |
260,491 |
116.5% |
|
消費者関連事業 |
19,850 |
92.4% |
|
その他の事業 |
52,551 |
105.0% |
|
合計 |
548,557 |
111.5% |
(注)1.ニュートラシューティカルズとは、栄養「Nutrition」+薬「Pharmaceuticals」の造語であり、科学的根拠をもとに開発された医薬部外品や機能性食品及び栄養補助食品等を取り扱うセグメントです。
2.金額は、製造原価によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.当連結会計年度より、「その他の事業」としてきた一部事業を各セグメントへ含める方法に変更を行っております。これに伴い、変更後のセグメント区分による生産実績に基づき前年同期比を算出しております。
b. 受注実績
連結子会社は主として受注見込みによる生産方式をとっております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
医療関連事業 |
1,629,032 |
117.1% |
|
ニュートラシューティカルズ関連事業 |
557,006 |
115.2% |
|
消費者関連事業 |
33,752 |
91.1% |
|
その他の事業 |
110,070 |
102.8% |
|
合計 |
2,329,861 |
115.4% |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.当連結会計年度より、「その他の事業」としてきた一部事業を各セグメントへ含める方法に変更を行っております。これに伴い、変更後のセグメント区分による販売実績に基づき前年同期比を算出しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要性がある会計方針及び重要な会計上の見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要性がある会計方針及び重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループのキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は426,173百万円であり、社債及び借入金の合計額94,626百万円を上回っております。
当社グループにおける経常的な資金需要としましては、主に事業の拡大に伴う運転資本の増加、生産設備の増強・更新に伴う設備投資及び研究開発投資がありますが、基本的に営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。一方、事業の買収等に伴う非経常的な資金需要につきましては、必要に応じて外部から調達しております。
(1) アライアンス契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年 |
|
大塚製薬㈱ |
H.ルンドベックA/S |
デンマーク |
共同開発・商業化 (注)1 |
2011年 |
|
大鵬薬品工業㈱ 及び アステックスセラピューティクス Ltd. |
Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A. (米国及びカナダ以外ではMSD) |
米国 |
戦略的提携 (注)2 |
2019年 |
|
大塚製薬㈱ |
住友ファーマ㈱ Sumitomo Pharma America, Inc. |
日本 米国 |
共同開発・販売(注)3 |
2021年 |
(注)1.大塚製薬㈱は、H.ルンドベックA/Sと中枢神経領域におけるグローバル・アライアンス契約を2011年11月に締結しております。本契約は、「Abilify Maintena」(アリピプラゾール持続性注射剤(月1回製剤))、「REXULTI(レキサルティ)」(一般名:ブレクスピプラゾール)、Lu AE58054(一般名:idalopirdine)及びH.ルンドベックA/Sが研究開発を進めている中枢神経疾患を対象にした最大2つの新規化合物をあわせた最大5つの化合物についての共同開発・商業化に関する契約であります。
2.大鵬薬品工業㈱及びアステックスセラピューティクス Ltd.は、Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A(米国及びカナダ以外はMSD)とKRASがん遺伝子を含む複数の薬剤ターゲットに対して開発中の低分子阻害剤に特化したグローバルでの研究提携とライセンスに関する独占的契約を2019年12月に締結しております。
3.大塚製薬㈱は、住友ファーマ㈱及びその米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)と、住友ファーマ㈱とSMPA社が精神神経領域で開発中の4つの新薬候補化合物(SEP-363856(以下、「ウロタロント」)、SEP-4199、SEP-378614、SEP-380135)について、全世界を対象とした共同開発及び販売に関するライセンス契約を2021年9月に締結しております。販売については、米国、カナダ、日本、アジア(中国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア)においては住友ファーマグループが売上を計上し、国・地域ごとに住友ファーマグループと大塚製薬㈱が原則共同プロモーションを行います。欧州を含む41の国・地域では大塚製薬㈱が売上を計上します。また、本契約下で実施されるすべての臨床試験、各国・地域における承認申請や販売に関する費用及び利益については、SMPA社と大塚製薬㈱で折半します。
なお、2024年3月15日に、大塚製薬㈱は住友ファーマ㈱とSMPA社との間で締結された上記ライセンス契約を改定いたしました。このたびの契約改定により、(1)対象としていた4化合物のうちSEP-4199およびSEP-378614はライセンス契約の許諾対象から外れ、大塚製薬㈱はSMPA社より、「ウロタロント」およびSEP-380135の全適応症について、全世界における開発、製造および販売を独占的に行う権利を得ること、(2) 「ウロタロント」およびSEP-380135の開発と商業化に成功した場合、マイルストーンとして両化合物合計で最大30百万米ドル、および売上に応じたロイヤリティをSMPA社に支払う可能性があること、(3) 契約改定に係る契約一時金は発生せず、一部の試験を除き、現在、住友ファーマグループおよび大塚製薬㈱が実施している試験の2024年1月以降の費用は大塚製薬㈱が全額負担することとなりました。
(2) 技術導出
|
契約会社名 |
契約品目 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年 |
|
大鵬薬品工業㈱ |
抗悪性腫瘍剤 |
セルヴィエ社 (LES LABORATOIRES SERVIER) |
フランス |
契約一時金等(注) 一定料率のロイヤリティ |
2015年 |
(注)大鵬薬品工業㈱とセルヴィエ社は、大鵬薬品工業㈱が創製し、現在グローバルで開発中の抗悪性腫瘍剤TAS-102(一般名:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩、日本での製品名:「ロンサーフ®配合錠T15・T20」)について、欧州・その他地域(北米・アジア以外)における開発・販売権に関するライセンス契約を2015年6月に締結しております。
(3) 販売契約
|
契約会社名 |
契約品目 |
相手方の名称 |
国名 |
販売地域 |
契約年 |
|
大塚製薬㈱ |
酸関連疾患治療薬 |
武田薬品工業㈱ |
日本 |
日本 |
2014年 |
(注)大塚製薬㈱は、武田薬品工業㈱が創製した酸関連疾患治療薬「タケキャブ®錠」(一般名:ボノプラザンフマル酸塩)について日本国内での販売に関する共同プロモーション契約を2014年3月に締結しております。本契約に関して、大塚製薬㈱は、武田薬品工業㈱に対して契約一時金と製造販売承認時マイルストーンを支払い、「タケキャブ®錠」の売上に応じた一定の対価を武田薬品工業㈱から受領することになっております。
(4) 合弁関係
|
契約会社名 |
合弁会社 |
相手方の名称 |
国名 |
設立の目的 |
契約年 |
|
大塚製薬㈱ |
中国大塚製薬有限公司 |
中国医薬投資有限公司 |
中国 |
注射薬の製造・販売 |
1980年 |
|
〃 |
韓国大塚製薬㈱ |
Jeil Pharmaceutical Co., Ltd. |
韓国 |
循環・呼吸器官用薬の製造・販売 |
1982年 |
|
〃 |
東亜大塚㈱ |
Dong-A Socio Holdings Co., Ltd.他 |
韓国 |
飲料品・健康食品・栄養製品の製造・販売 |
1987年 |
|
クリスタルガイザーウォーターカンパニー |
CGロクサーヌ LLC |
Cameron Investment Group,Inc. |
米国 |
飲料製品の製造、販売及び輸出 |
1990年 |
|
大塚製薬㈱ |
イーエヌ大塚製薬㈱ |
雪印メグミルク㈱ |
日本 |
経腸栄養剤の製造・販売 |
2002年 |
|
大塚化学㈱ |
エムジーシー大塚ケミカル㈱ |
三菱瓦斯化学㈱ |
日本 |
水加ヒドラジンの製造・販売 |
2004年 |
|
大塚製薬㈱ |
アルマ S.A. |
ROX INVEST |
フランス |
飲料製品の製造、販売及び輸出 |
2008年 |
|
大塚化学㈱ |
シンクレスト㈱ |
横河電機㈱ |
日本 |
中分子医薬品向けの受託研究開発製造 |
2023年 |
|
大塚製薬工場 アメリカ Inc. |
未定(注) |
ICU Medical, Inc. |
米国 |
基礎輸液・臨床栄養製品を中心とした医薬品、医療機器の製造、輸入及び販売 |
2024年 |
(注)新会社の事業開始は、2025年第2四半期中を予定しております。
当連結会計年度における研究開発費は、
主な研究開発分野及び新製品の開発のセグメント別の状況は、次のとおりです。
(医療関連事業)
当社グループは、「顕在化しているが満たされない医療上のニーズ」をテーマに、重点領域として精神・神経領域、がん領域、および循環器・腎領域等の研究開発を進めています。
医療関連事業における研究開発費は、
当連結会計年度の医療関連事業における研究開発の主な進捗状況は、以下のとおりです。
|
領域 |
開発コード |
製品名 |
一般名 |
エリア |
対象・適応症 |
状況*1 |
|
精神・ |
アリピプラゾール2ヵ月持続性 注射剤 |
エビリファイ メンテナ*2 |
アリピプラゾール |
欧州 |
統合失調症の維持療法 |
2024年3月、承認取得 |
|
|
OPC-34712 |
レキサルティ |
ブレクスピプラゾール |
米国 |
成人の心的外傷後ストレス障害 |
2024年4月、承認申請 |
|
|
|
|
|
中国 |
統合失調症 |
2024年6月、承認取得 |
|
|
|
|
|
日本 |
アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション*3 |
2024年9月、承認取得 |
|
|
AVP-786 |
― |
重水素化デキストロメトルファン・キニジン |
米国・ 欧州 |
アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション |
開発戦略上、開発中止 |
|
|
ION363 |
― |
ulefnersen |
日本・米国・欧州 |
筋萎縮性側索硬化症 |
フェーズⅠ/Ⅱ/Ⅲ実施中 |
|
|
SEP-380135 |
― |
― |
米国 |
未定 |
2024年12月、フェーズⅠ 開始 |
|
がん領域 |
AB122 + AB154 |
― |
zimberelimab + domvanalimab |
日本 |
非小細胞肺がん |
2024年1月、フェーズⅢ 開始 |
|
|
TAS-120 |
リトゴビ |
フチバチニブ |
米国・ 欧州 |
固形がん(食道がん、膵がん) |
2024年2月、フェーズⅡ 開始 |
|
|
ASTX030 |
― |
azacitidine・cedazuridine |
米国 |
骨髄異形成症候群、慢性骨髄単球性白血病、急性骨髄性白血病 |
2024年4月、フェーズⅡ/Ⅲ開始 |
|
|
AP24534 |
アイクルシグ |
ポナチニブ |
中国 |
慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病 |
2024年9月、承認取得 |
|
|
ASTX727 |
INQOVI/INAQOVI |
decitabine・cedazuridine |
欧州 |
骨髄異形成症候群 |
開発戦略上、開発中止 |
|
|
OPB-111077 |
― |
― |
日本 |
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 |
開発戦略上、開発中止 |
|
|
OPB-111077 |
― |
― |
米国 |
血液がん |
開発戦略上、開発中止 |
|
|
OPC-415 |
― |
― |
日本 |
多発性骨髄腫 |
開発戦略上、開発中止 |
|
|
TAS0313 |
― |
― |
日本 |
尿路上皮がん |
開発戦略上、開発中止 |
|
|
OPF-501C |
― |
塩化亜鉛 |
日本 |
がん性皮膚潰瘍 |
開発戦略上、開発中止 |
|
循環器・ |
― |
ルプキネス |
ボクロスポリン |
日本 |
ループス腎炎 |
2024年9月、承認取得 |
|
ETC-1002 |
― |
ベムペド酸 |
日本 |
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症 |
2024年11月、承認申請 |
|
|
その他領域 |
JNT-517 |
― |
repinatrabit |
米国 |
フェニルケトン尿症 |
(追記事項) 2024年9月にジュナナ社を買収し、獲得した開発品 フェーズⅠ/Ⅱ実施中 |
|
|
OPF-109 |
キドパレン輸液 |
糖・電解質・アミノ酸・ビタミン |
日本 |
慢性腎不全用高カロリー輸液 |
2024年9月、承認取得
|
|
|
EN-P09 |
イノソリッド配合経腸用半固形剤 |
― |
日本 |
経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給 |
2024年9月、承認取得 |
|
|
ISIS 721744
|
― |
donidalorsen |
欧州 |
遺伝性血管性浮腫 |
2024年12月、申請受理 |
*1 米国・欧州における承認申請は、当局へ承認申請、あるいは当局による申請受理を意味します。それ以外の国・地域では当局に承認申請を提出したことを意味します
*2 欧州におけるアリピプラゾール2ヵ月持続性注射剤の製品名は「エビリファイメンテナ」
*3 日本の添付文書上の効能・効果は「アルツハイマー型認知症に伴う焦燥感、易刺激性、興奮に起因する、過活動又は攻撃的言動」
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当事業においては、医療関連事業で培ったノウハウを活かし、人々の健康の維持・増進のための科学的根拠をもった独創的な製品の研究開発に取り組んでいます。
ニュートラシューティカルズ関連事業における研究開発費は、
(消費者関連事業)
当事業においては、食品事業、飲料事業を中核とし、生活に身近な食と健康をテーマに革新的な製品の研究開発に取り組んでいます。
消費者関連事業における研究開発費は、
(その他の事業)
当事業においては、有機、無機の合成技術を主体とし、独自の技術を核とした新製品や次世代分野の研究開発を行っています。
その他の事業における研究開発費は、