当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループ(以下、「アークスグループ」という場合もあります。)は、小売業界における淘汰・再編の動きが加速するなか、クリティカル・マス(企業が存続していくために最低限必要な事業規模)を確保し、経営資源の特大化(膨張=極大化ではなく、成長=特大化を目指す)を図ることが、企業価値の更なる向上と、地域のお客様のライフラインを守る道であるとの共通認識のもと、2002年11月1日にスタートいたしました。
当社グループは、どの様な領域で社会的使命を果たすべきなのかを明確にする基本的な考え方として、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献」していくことを、グループ各社が共有するグループ理念として掲げております。
また、「私たちは何のために存在するのか」という存在意義に関する考え方を表明するコーポレートステートメントとして「豊かな大地に輝く懸け橋(Bridge on the Rich Land for Your Life)」を定めております。これは、各地域にドミナントエリアを築き、多くのお客様へ新鮮で、安全・安心な食品を提供することにより、生産地とお客様を結ぶ懸け橋になりたいという思いと、同じ志を持って事業展開を進めていく地域企業同士が、海外流通資本も含めた大手流通企業に対抗していくための受け皿会社として、企業と企業を結ぶ懸け橋になりたいという思いが込められています。
グループ名「ARCS」は、Always(常に)、Rising(上昇する)、Community(地域社会に)、Service(奉仕する)の頭文字で構成され、「1つひとつの企業が強い“弧”となり、大きな円=ARCSを創りあげ、地域社会に貢献していく」ことをうたったもので、経営の基本理念とコーポレートステートメントを体現したものであります。
当社グループは、徹底した顧客志向に基づくお客様への奉仕の精神を持ち続け、将来の大同団結に向けた母体企業としての役割も認識しながら、更なる事業の発展を目指してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略
当社グループは「八ヶ岳連峰経営」を標榜し、旧来型の垂直的な企業統合からイメージされる富士山のように高い大きな企業グループを目指すのではなく、同じような規模の山々が横に連なることで、企業とお客様の距離を短く保ち続けることを目指しております。
純粋持株会社である当社は、グループのシンクタンク的な役割として、「中核企業としての業務執行責任の明確化と意思決定のスピードアップ」、「グループ共通の課題解決を目的とした企業横断的な委員会・プロジェクトの活用」、「グループ統一の基幹システム徹底活用による生産性の向上」、「既存組織の見直しと再編成」そして「グループ統一の人事制度による人的資本経営の高度化」を主要テーマに、グループ全体の業務改革に取り組んでおります。
具体的施策としては、2019年10月から稼働した現行の基幹システムを軸に、マンアワー(MH)の日次・週次データ分析による作業効率化、単品管理による品揃え最適化、さらに顧客データ・購買情報の利活用、RPAによるバックオフィス業務自動化、電子棚札の展開など、デジタル技術を用いた業務改革を進めております。また、グループ横断での「商品調達プロジェクト」や「物流改革プロジェクト」、「店舗運営情報共有会」等を通じ、商流・物流の統一や店舗運営の効率化など、生産性向上に資する取り組みを強化してまいります。加えて、今後のM&A等による企業規模の拡大に対応すべく、より拡張性のある基幹システムの基盤拡充も目指してまいります。
サステナビリティ推進については、アークスグループとしての「サステナビリティ推進方針」を定め、同方針に基づくサステナビリティ重点課題(マテリアリティ)として、①地域社会との共生、②地球環境への配慮、③お客様の豊かな暮らしへの貢献、④ダイバーシティ&インクルージョンの推進の4つを策定しております。これらの重点課題に紐づくグループ各社共通の取り組みとして「サステナビリティアクションプラン」を設定し、具体的な活動を推進しております。また、サステナビリティ推進体制につきましては、「サステナビリティ推進室」を設置し専任者を配置し、同推進室を事務局とする「サステナビリティ推進委員会」を通じて環境対応・社会貢献・ダイバーシティ推進のPDCAをグループ横断的に管理しております。
サステナビリティに関する詳しい取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
2018年12月に株式会社バローホールディングス、株式会社リテールパートナーズ及び当社の3社間で結成した「新日本スーパーマーケット同盟」につきましては、それぞれの展開エリアを越え、食品流通企業の全国的な結集軸として業界再編の中心核になることを目指しており、5つの分科会活動のもと具体的な相乗効果を実現するための取り組みを進めてまいりました。より現状の経営課題に資する取り組みとなるよう、厳しさを増す経営環境下ではあるものの、今後も将来にわたり生き残りを図り、地域のライフライン企業として地域の食文化・食生活を守っていくことで、食品スーパーマーケットとしての共通課題へ適切に対処すると考え、ビジネスモデルの革新に向けて取り組んでまいります。
(3) 優先的に対処すべき課題
今後のわが国経済は、物価上昇や実質賃金のマイナス傾向が続いており、消費者の節約志向はなお根強いと見込まれ、米国発の通商政策の不確実性などもあり、先行きは一層不透明感を増しております。
このような状況のもと、当社グループは「インフレ続く時 賃金物価の壁を 生産性向上で突破し 好循環実現に全力投球」を年頭方針として掲げ、賃金・物価の好循環の実現に向けてローコスト経営のさらなる徹底を図るとともに、技術革新と人材育成を基盤とした生産性向上が不可欠と捉え、その実現のための施策に全力で取り組んでまいります。
営業面につきましては、業界再編の動きが活発化する環境下において、お客様の多様化するニーズと節約志向への対応が求められる中、価格政策を強化・徹底するとともに、鮮度やおいしさにこだわった商品を拡充し、競合店との差別化を図ってまいります。具体的には、各事業会社における生産者や地域メーカーと連携した商品の品揃えの強化や、CGC商品並びに新日本スーパーマーケット同盟オリジナル商品の更なる拡販に注力いたします。また、「商品調達プロジェクト」によるグループの商流統一をさらに進めるほか、店舗運営は「店舗運営情報共有会」、物流は「物流改革プロジェクト」が中心となり、グループ内好事例の横展開による営業力強化に引き続き取組んでまいります。
加えて、2025年10月には「RARAプリカ(※1)」をより快適にご利用いただけるように、銀行口座チャージやクレジットチャージに対応する予定です。お客様が指定された銀行口座またはクレジットカードをご登録いただくことにより、アークスアプリでのチャージが可能となる機能を追加いたします。
生産性向上の施策として、電子棚札のグループ各社への横展開を進めてまいります。㈱ユニバースでの先行導入とその検証結果によって、POP・プライスカードの貼替作業の削減や売価表示ミスの低減が明確となったことを踏まえ、売場における部門横断的な作業の標準化・効率化に取組んでまいります。また、バックオフィスにおいてはRPA(※2)化を継続して実施し、定型業務の自動化、省力化をさらに徹底してまいります。
現行の基幹システムについては、2027年10月に切替時期を迎えることから、生鮮食品の自動発注など生産性向上に資する機能強化に加え、プロセスセンターや外部委託センターを含めたグループ内物流システムの統一を図ってまいります。スーパーマーケットの基幹システムとして、店舗・センター・本部における業務の操作性を高め、グループ全体で利活用可能なシステム基盤の構築を進めてまいります。併せて、今後のM&A等による企業規模の拡大に対応すべく、より拡張性のある基盤拡充も目指してまいります。
店舗展開につきましては、少子高齢化による人口減少や競合店の出店動向及び、設備投資のコスト水準も見据えながら、お客様の支持を高めるべく、スーパーアークス業態への転換を中心に店舗改装を積極的に進め、年間で24店舗の改装を実施する予定です。新規出店は現在1店舗を計画しておりますが、費用対効果を見極めながら機会を捉えてさらに検討を進めてまいります。
サステナビリティに関する活動につきましては、今期に策定・公表した「アークスグループ カスタマーハラスメント対応基本方針」に基づき、具体的なマニュアルの作成、研修及び相談体制を充実してまいります。加えて、2025年3月に経済産業省より「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を取得し、当社グループ並びに地域社会全体に健康経営の考え方を普及拡大してまいります。また、気候変動問題への取組みとして、2023年4月に開示した「TCFD提言に基づく情報開示のお知らせ」に従い、スコープ1・2に基づく温室効果ガスの排出量削減に向け、冷蔵・照明機器及び空調設備等の入替えによる省エネの推進、非化石電源や再生可能エネルギー由来の電力導入などの移行計画を策定、実行してまいります。このほか、サステナビリティ推進委員会に4つの目的別チーム(投資家対応チーム、統合報告書チーム、人的資本チーム、廃棄物・資源物チーム)を新たに立ち上げ、各取り組みの実行度を高めることで現在策定中の統合報告書2025年版の内容を充実してまいります。
(※1)RARAプリカは、店舗に設置しているチャージ機で現金をカードに入金(チャージ)することにより、お会計時にキャッシュレスでお買い物いただけるカードです。
(※2)ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略で、作成したシナリオに基づいて動作するロボットにより、主にデータ入力等のルーチン業務や事務ミスの検知等を自動化する仕組みであり、業務の効率性並びに正確性を向上させることが期待されます。
(4) 目標とする客観的な指標等
当社グループは、主要経営指標のなかでも、ROE(自己資本利益率)及びROA(総資産経常利益率)を重視しており、毎期継続した利益成長と資本の効率的な運用、積極的な株主還元を図ることで、ROE8.0%以上、ROA10.0%以上を中長期的な目標数値に設定しております。具体的な取り組みとして、新規出店や店舗改装といった設備投資の拡大、従来に増して積極的なM&Aの推進といった施策に経営資源を注力し、利益水準の引き上げを図ります。そのほか、デジタルトランスフォーメーションの推進によるコスト削減や事業子会社の生産性向上に向けた支援、増配等の利益還元の強化の取り組みなどにより、各指標の向上に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ推進方針及びサステナビリティに関する重点課題(マテリアリティ)
持続可能な社会の実現に向けた活動の重要性が一段と増すなか、当社グループは、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献します」というグループ理念のもと、当社並びにグループ各社が一丸となってこれらの活動を更に深化させ、事業活動を通じてサステナビリティ経営を推進するための指針として、以下の通りサステナビリティ推進方針及びサステナビリティに関する重点課題(マテリアリティ)を策定しております。
①サステナビリティ推進方針
②サステナビリティに関する重点課題(マテリアリティ)
重点課題の策定においては、以下の4つのステップを経て、社内外の様々なステークホルダーの意見を取り入れながら、グループ全体の合意形成を図りました。
上記「STEP②」のマッピングの結果につきましては以下の通りです。
重点課題(マテリアリティ)に関する具体的な取り組みにあたっては、地域密着の強みを生かしたサステナビリティ活動を推進する為、グループ共通施策と各社個別施策を仕分け、各社別の年間アクションプランに落とし込み、半期に一度サステナビリティ推進委員会にて進捗確認を行うことで取り組みの実効性を高めています。
重点課題に紐づくリスクと機会、戦略及び目標/指標については以下の通りです。
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重点課題 (マテリアリティ) |
リスク/機会 |
戦略 |
目標/指標 |
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①地域社会との共生 |
(リスク) ・人口減少/少子高齢化による客数減 ・出店余地の減少 (機会) ・地域インフラとしてのブランド価値の向上 |
・小規模自治体への出店 ・地域行事への協力・支援 ・レジ袋収益の寄付 ・地元自治体/団体との連携協定の締結 ・災害時におけるBCPプラン構築 |
・小商圏採算モデル店舗の開発 ・フードバンク/子ども食堂との連携強化 ・お取引先様とのサステナビリティ分野における連携強化 |
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②地球環境への配慮 |
(リスク) ・CO2排出コスト増 ・気候変動による災害リスク (機会) ・廃棄物削減による処理コスト減 ・発注/製造計画の精緻化によるロス削減 |
・食品ロスの排出削減 ・プラスチック容器包装の削減 ・エネルギー・CO2対策 ・TCFD提言への対応 |
・食品ロス・プラ削減のグループ各社における目標達成 ・CO2排出量スコープ1・2を2013年度比50%削減 |
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③お客様の豊かな暮らしへの貢献 |
(リスク) ・設備/IT投資の増加 ・専門人材の確保難 (機会) ・新規顧客の創出 ・リピート顧客の増加 |
・地域密着の食の提案 ・オンラインショップの取り組み ・中途採用の強化と研修/教育のレベルアップ ・RARAカード機能の充実・キャッシュレス化推進 |
・地場産品や健康/環境配慮商品の提案強化 ・宅配サービスのエリア拡充 ・RARAカード申込のペーパーレス化 |
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④ダイバーシティ&インクルージョンの推進(※1) |
(リスク) ・マネジメントの複雑化 ・合意形成の遅延リスク (機会) ・雇用キャパシティの拡大 ・多様な視点からのイノベーション創出 ・人材の定着とモチベーションアップ |
・ダイバーシティ推進プロジェクトによる啓発活動 ・事業各社単位のボトムアップの制度改革 ・KPIの設定と経営目標への織り込み |
・人的資本経営の深化 ・グループ全社にて「えるぼし」2つ星以上を取得 ・グループ全社にて女性管理職比率10%達成(2027年2月末まで) ・従業員エンゲージメント調査の実施 ・グループ各社における現場教育(OJT)の充実 |
(※1)ダイバーシティ&インクルージョン:様々なバックグラウンドや属性、考え方を持つ人たちが共生できる環境を整えることで、組織や社会を活性化し新たな価値を生み出すという考え方です。多様性(ダイバーシティ)のメリットを発揮するためには、お互いを認めて受け入れること(インクルージョン)が必要となります。
(2)サステナビリティ推進体制(ガバナンスとリスク管理)
当社サステナビリティ推進委員会は代表取締役社長・COOを委員長とし、グループ各社よりメンバーを招集し、概ね四半期に1回の頻度で開催しています。また、各事業会社においても個別にサステナビリティ推進委員会を設置しております。本委員会の活動進捗や意思決定の内容は年に1回の頻度で取締役会に報告しています。当社内に専任組織としてサステナビリティ推進室を設置し、当社サステナビリティ推進委員会を事務局として運営すると共に、各社の年度活動計画である「サステナビリティアクションプラン」の策定を通じて取り組み項目の合意形成を行うと共に、PDCAを含めた実行体制を整備しております。
なお、サステナビリティ推進委員会の内容はコンプライアンス・リスク管理委員会と共有し、サステナビリティ関連リスクは適宜全社の事業リスクに反映しています。詳細は「
(3) 気候変動対策(TCFDへの対応)
当社及びグループ各社は、気候変動問題をグループ横断で取り組むべき重要課題と考え、当社グループのサステナビリティに関する重点課題の一つとして「地球環境への配慮」を定めております。エネルギーマネジメントシステムの導入や冷蔵・冷凍ケースの入替え、最新型LED照明への更新、太陽光発電の導入等、設備関連のCO2排出量削減を加速しております。また、2008年より継続している(一社)北海道CGCみどりとこころの基金(※1)への有料レジ袋売上高の全額寄付(2008年度からの累計総額9億6,334万円)を通じて、植林等の環境保全活動に役立てられています。また、野菜くずや廃油等の食品残渣のリサイクルや、再生原料を使用した食品トレーの利用促進、一般顧客からのペットボトルやトレーの店頭回収を強化し水平リサイクルを促進するなどプラスチック廃棄物の資源化活動も進めております。2024年度の当社グループのレジ袋辞退率は84.4%と、スーパーマーケット業界の平均値77.4%(※2)を上回っております。
また、2023年4月3日に「TCFD(Task Force on Climate-Related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同いたしました。TCFD提言への対応につきましては、気候変動がもたらす事業活動に係る重要なリスクと機会に関し、シナリオ分析に基づく対応策の立案・検討・実施に取り組み、各種KPIの設定・モニタリングを実施し、その結果を開示しております。脱炭素に向けた中長期目標として、2030年までに売上高1億円当たりのCO2排出量(スコープ1,2)を2013年度比50%削減、また2050年までにカーボンニュートラルを目指しております。これらの目標に対して、Plan(計画)、Do(実行)、Check(チェック)、Disclosure(開示)、Action(対策)の「PDCDA」サイクルを回していくことにより、脱炭素社会実現に貢献する取り組みを進めてまいります。
具体的なTCFD提言への対応内容は以下のとおりです。
(※1)有料レジ袋販売金額の環境保全・環境教育、環境研究機関等への寄付の受け皿として、北海道CGCグループ加盟企業10社が会員となり2008年12月19日に設立されたものです。2012年3月1日に、任意団体から『一般社団法人』へ移行しております。
(※2)(一社)全国スーパーマーケット協会 2024年スーパーマーケット年次統計調査報告書
におけるレジ袋辞退率調査結果
https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/01/2023nenji-tokei-FIX202401.pdf
<TCFD提言への対応>
a.ガバナンス
当社グループはサステナビリティの推進体制として、2021年11月にサステナビリティ推進委員会を設置し、委員長を当社代表取締役社長・COO、事務局長を当社サステナビリティ推進室長とする組織体制のもと、サステナビリティに関する取り組みの管理を行っております。
サステナビリティ推進委員会は、当社及びグループ各社のメンバーで構成されており、原則四半期に1回以上の頻度で開催しております。同委員会は、気候変動問題に関わる方針や目標の設定の他、実績・進捗の管理、各種取り組みの推進を実施し、その状況については年1回以上、当社取締役会に報告を行っております。
b.リスク管理
当社グループ全体のコンプライアンス及びリスク管理を統括する組織として設置された「コンプライアンス・リスク管理委員会」は、当社代表取締役会長・CEOが委員長となり、全役職員に関連法令やグループ理念・行動規範についての教育を行い、コーポレート・ガバナンスやコンプライアンスに関する基本事項を周知徹底しています。同委員会は、当社及びグループ各社のメンバーで構成されており、原則四半期に1回以上の頻度で開催しております。
気候変動に係るリスクにつきましても、グループ全体のリスク管理体制の下で管理すべく、サステナビリティ推進委員会とコンプライアンス・リスク管理委員会とが密接に情報連携を図り、リスクの評価及び対応策の協議を行っております。
c.戦略
Ⅰ.シナリオ分析の設定
シナリオ分析においては、国際エネルギー機関(IEA)及び気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書などを参照し、今世紀末までに産業革命以前と比較し世界の平均気温上昇が「1.5℃」と「4℃」の2つのシナリオにおける2050年の社会を想定しました。また、当社の事業への影響を見通せる範囲として、各々のシナリオにおける2030年時点での当社における機会とリスクの分析を行いました。
なお、当社グループの連結売上高の99%を占める食品スーパーマーケット事業に絞った上で分析を実施しました。残りのグループ各社におけるリスク・機会とその影響については今後分析を進めてまいります。
<1.5℃シナリオ>
2100年時点において、産業革命時期比の気温上昇が1.5℃程度に抑制されるシナリオです。気候変動に対し厳しい対策が取られ、脱炭素社会への移行による影響(移行リスク)を受けます。具体的には、炭素税の導入、脱炭素化へ向けた政策・法規制の強化、ステークホルダーや消費者のサステナビリティ意識向上による市場変化や評判への影響などの移行リスクを分析の対象としています。
※IEAのSustainable Development Scenario(SDS)、Net Zero Emissions By 2050
Scenario(NZE2050)、IPCC第6次評価報告書RCP2.6などを参照
<4℃シナリオ>
2100年時点において、産業革命時期比4℃程度気温が上昇するシナリオです。気候変動への厳格な対策が取られず、自然災害の激甚化など気候変動による物理的な影響(物理的リスク)を受けます。具体的には、異常気象の激甚化や気温の上昇、海面上昇など店舗の営業に影響を及ぼし得る物理的リスクを分析の対象としています。
※IEAのStated Policies Scenario(STEPS)、IPCC第6次評価報告書RCP8.5などを参照
Ⅱ.シナリオ分析の結果、リスク・機会の特定
まず、当社の主要事業である食品スーパーマーケット事業におけるリスク・機会を洗い出し、網羅的に把握しました。その上で、それぞれの発生度・影響度を評価し、当社にとって重要度の高いリスク・機会を選定しました。
リスク・機会の重要度については、「各事業への影響度」と「事象の発生可能性」から評価しました。「各事業への影響度」は、リスク・機会が現実のものとなった場合の影響規模を定性的に分析しています。「事象の発生可能性」においては、物理的リスクはIPCCの報告書における発生確率を参考に評価し、移行リスクは将来的な政策目標・導入計画の動向や現在の政策導入などをもとに分析しています。
重要度評価の見直しや対応策については、引き続きサステナビリティ推進委員会で議論・検討を行ってまいります。
|
気候関連の事象 |
リスク項目 |
影響度 |
|
炭素税/排出権取引の導入 |
CO2排出量に対して炭素税の負担が発生 |
大 |
|
規制強化・導入 |
フロン規制の強化に伴う、設備投資のコスト・罰金発生のリスク増加 |
大 |
|
ZEH・ZEB化の推進による、店舗設備投資のコスト増加 |
中 |
|
|
プラスチック使用制限に伴う、代替素材製品調達のコスト増加 |
小 |
|
|
再エネ比率拡大 |
買電契約の見直しによるコスト増加・再エネ設備投資のコスト増加 |
大 |
|
顧客・投資家における環境意識の高まり |
環境関連の取り組み及び非財務情報開示への対応遅れによる、資金調達環境・株価水準の悪化 |
中 |
|
顧客の嗜好変化への対応遅れによる売上減少・企業イメージ低下 |
小 |
|
気候関連の事象 |
機会項目 |
影響度 |
|
資源循環の促進 |
食品廃棄物の重量抑制による廃棄コストの減少と、バイオガス生成などによる経済価値の創出 |
大 |
|
輸送の高効率化 |
物流拠点の統廃合、モーダルシフトの促進などによる物流コストの減少 |
中 |
|
再エネ比率拡大 |
再生可能エネルギーを自ら創出することによる、電気使用コストの減少 |
小 |
|
EV化の進展 |
EV用充電器の店舗設置による集客力の向上、売り上げの増加 |
小 |
|
顧客・投資家における環境意識の高まり |
顧客の嗜好変化に見合う環境配慮型商品の販売や、環境への取組の発信による、企業イメージ向上・売上の増加 |
小 |
Ⅲ,財務影響試算
財務に与える影響が大きいと考えられる項目については、以下のとおり評価いたしました。
<移行リスク>
|
規制強化による費用増加 |
影響額 |
備考 |
|
炭素税/排出権取引の導入 |
29.1億円 |
2030年度において、売上高1億円当たりスコープ1・2のCO2排出量を、基準年度(2013年度)より50%削減する場合 |
|
再生可能エネルギーの 調達費用 |
6.8億円 |
2030年度において、再生可能エネルギーの調達割合を50%とする場合 |
<物理的リスク>
|
自然災害による損害 |
影響額 |
備考 |
|
店舗・商品損害 |
93.3億円 (※) |
洪水による最大想定浸水深度(3.0m以上)に基づく試算 |
|
休業による機会損失 (1店舗1日当たり) |
500~ 1,500千円 |
1店舗1日当たりの売上総利益に基づく試算 |
(※)店舗・商品損害の内訳は、家屋資産48.9億円、償却資産37.1億円、在庫資産7.3億円であります。
Ⅳ.主なリスク・機会に対する取り組み
「各事業への影響度」が大きく「事象の発生可能性」も高いと評価した「重要なリスク・機会」については、環境問題に係るリスクの低減及び機会の実現に向けまして、以下のような取り組みを、より一層推進してまいります。
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重要度の高い リスク・機会項目 |
取り組み内容 |
|
リスク |
炭素税負担の発生 |
・CO2排出量削減の取り組み推進
・省エネ性能の高い空調や冷蔵・冷凍設備等の導入/更 ・全店舗へのLED照明の導入/更新
・物流拠点の統廃合やモーダルシフトによる物流業務の |
|
再エネ投資コストの増加 |
・太陽光発電設備の導入拡大 |
|
|
フロン規制の強化 |
・次世代冷媒の利用促進 |
|
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災害時被害の発生 |
・災害等有事に備えたBCP計画策定、災害対策訓練実施 |
|
|
機会 |
食品廃棄コストの低減 |
・商品の仕入発注、加工・製造計画、在庫管理等の精度 ・賞味期限/消費期限が近い商品の寄付活動 ・食品残渣のリサイクル活動 |
d.指標と目標
当社グループでは、サステナビリティ推進方針に掲げる「持続可能な社会の実現とグループの成長」を目指し、「社会・環境価値」、「経済価値」の両面における持続的な価値向上を図るよう、当社グループが事業展開する食品スーパーマーケットチェーンの事業活動に密接に関連する気候変動に係るKPIを設定し、モニタリングを行ってまいります。
Ⅰ.スコープ1・2の温室効果ガス排出量算定
スコープ1・2の温室効果ガス(GHG)を、以下のとおり算定いたしました。
<CO2排出量 総量>
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スコープ |
2013年度 実績 (※) |
2023年度 実績 |
||
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|
排出量 |
構成比 |
排出量 |
構成比 |
|
|
(t-CO2e) |
|
(t-CO2e) |
|
|
スコープ1 |
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23.4% |
|
29.6% |
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スコープ2 |
|
76.6% |
|
70.4% |
|
合計 |
|
100.0% |
|
100.0% |
<CO2排出量 単位当たり>
|
単位区分 |
2013年度 実績 (※) |
2023年度 実績 |
|
|
|
排出量 |
排出量 |
2013年度 |
|
|
(t-CO2e) |
(t-CO2e) |
対比 |
|
1店舗当たり |
1,210.5 |
824.8 |
▲31.9% |
|
売上高(1億円)当たり |
78.78 |
52.83 |
▲32.9% |
(※) 2013年度実績には、一部推定値が含まれております。
Ⅱ.削減目標
当社グループは、「地域のライフラインとして価値ある商品・サービスを低価格で提供し、豊かな暮らしに貢献します」というグループ理念のもと、事業活動を通じた持続可能な社会の実現とグループの成長を目指し、以下の目標を設定いたしました。
2050年カーボンニュートラルの実現へ向け、省エネの推進や廃棄物の削減といった従前の取り組みを継続・加速させることはもちろん、再生エネルギーを積極的に導入することで、スコープ1・2のCO2排出量削減を目指します。また、サプライヤー・運送業者との協業による物流の効率化などにも取り組み、サプライチェーン全体での排出量削減にも取り組んでまいります。
|
中長期目標 |
|
・2030年度に、売上高1億円当たりスコープ1・2のCO2排出量を、基準年度(2013年 ・2050年度に、カーボンニュートラルの実現を目指します。 |
(4) 人的資本に関する取り組み
①人材育成方針(アークス人材育成理念)
当社グループは、2013年にグループ共通で定めた「人材育成理念」を人材育成方針と位置づけております。
<アークス人材育成理念>
1.人間力の向上
人の心の理解力と倫理的思考力を兼ね備えた「豊かな人間性」と互いに学び合う「共育の精神」を持つ人材の育成を行う。
2.常識力の向上
ビジネス常識、一般常識、業界常識の理解と習得を行う。
3.基礎的技能の向上
業務を遂行する為に必要な技術・技能の育成を行う。
4.変化対応力の向上
既存の枠組みにとらわれず、「多面的・俯瞰的な見方」「柔軟な発想」により、変化に対応できる人材の育成を行う。
5.自律(立)力の向上
自ら考え、判断・行動し、結果に責任を持つ人材の育成を行う。
②統一人事制度と人材教育
2005年より職能資格制度を採用したグループ統一人事制度を導入し、八ヶ岳連峰経営のプラットフォームとして展開エリア拡大に伴い刷新を重ね、2019年4月より役職ごとの役割と処遇を明確にしたグループ統一の役割等級制度としました。教育制度と併せてキャリア形成をグループで一元化し、新人社員から指導職、管理職、役員を含む経営職まで、役割等級ごとに体系的な教育研修を実施しております。
③ダイバーシティ&インクルージョンの推進と社内環境整備方針
当社グループは、「サステナビリティに関する重点課題」の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」を定め、社内環境整備方針として、「全ての人がイキイキと自分らしく活躍できる魅力ある職場をつくる」を掲げております。
従業員の健康を確保・増進し、安全安心に働ける職場環境の維持・改善を実施するとともに、時間外労働の削減、積極的な有給休暇取得、柔軟な働き方の導入などによりワークライフバランスの推進と従業員のWell-being(ウェルビーイング)の実現を目指しております。また、多様な価値観を尊重するべく、性別、国籍、年齢、学歴等を問わず、多様な人材が能力を発揮できる環境整備に取り組み、従業員エンゲージメントの向上を目指します。
<ダイバーシティ&インクルージョンの主な取り組み>
・ダイバーシティ推進プロジェクトを中心とした教育啓発活動・グループの好事例共有
・アークスグループ カスタマーハラスメント対応基本方針の策定・公表
・健康経営優良法人認定を取得
・半日有休の導入
・子育て中の従業員の時短勤務制度
・定年後再雇用制度
・パートナー社員のリーダー登用制度/正社員登用制度
・外国人技能実習生の積極的な受入と住居や通訳の確保等の支援体制の整備
・産休/育休取得ガイドブック、介護ガイドブックの内製
・厚労省の女性活躍企業認定マーク「えるぼし」の全社取得をグループ目標として設定
・男性育休の取得推進
・ダイバーシティニュースの発行
・北海道大学との共働により従業員の相互理解を促進する冊子「WORK×LIVE」を発行
・各事業会社トップへのコミュニケーション活動
・従業員アンケートの実施
2025年2月期の具体的な活動としては、グループ横断の「ダイバーシティ推進プロジェクト」を中心に、外部講師を招聘した役員経営層向けのダイバーシティセミナーの実施、ダイバーシティニュース「rashiku(らしく)」の発行や北海道大学様との協働による冊子「WORK×LIVE」の発行等の啓発活動等を実施いたしました。
当社は2022年11月に厚生労働省が認定する女性活躍推進企業の認定マーク「えるぼし」の3つ星を取得しており、グループの各事業会社においても「えるぼし」2つ星以上の取得と女性管理職比率10%を共通目標としております。
2024年11月には、当社グループ内の全従業員一人ひとりを守り、誰もが安全で働きやすい環境を整えるために「アークスグループ カスタマーハラスメント対応基本方針」を策定・公表いたしました。また、当社は2025年3月に「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。
これらの活動の結果、2025年2月期のグループ全体の期末女性管理職比率は7.3%(前年同期比+0.3pt)、男性育休取得率は26.1%(前年同期比-10.4pt)となりました。
また、正社員一人あたりの研修時間は年間で13.0時間(前年同期比+1.4時間)、障がい者雇用比率は3.2%(前年同期比+0.2pt)となり、女性活躍だけに留まらず多種多様な人材が能力を最大限発揮できる機会を提供しております。
多様化するお客様のニーズや、雇用環境の変化にも対応することで、当社グループの持続的な成長を目指してまいります。
(1)リスク管理の体制及び運用状況
当社グループは、企業活動に影響を与える様々なリスクへの対応力の向上や、リスク管理の体制及びその仕組みの整備・改善に鋭意取り組んでおり、その効果的な実現のために、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、定期的に開催しております。本委員会では、企業活動に関して抽出したリスク事象とその対応策を、その発生頻度や影響度等に基づき策定するとともに、それらが有効に機能しているかどうかの評価を行っております。なお、本委員会でのリスク管理の運用状況等については、定期的に当社取締役会に報告しております。
今後は、対応策とその有効性についての検証を更に重視し、定期的な評価・見直しによるリスク管理体制の強化を推進してまいります。
(2)事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
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主なリスク |
具体的リスク |
対応策 |
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自然災害、 事故・事件 |
・地震、津波、台風、集中豪雨、洪水等の大災害 ・火災や店内外の事故や事件 ・上記に伴う店舗運営や商品調達等の事業活動の阻害 |
・事業継続計画(BCP)及び防災マニュアルの策定 ・緊急連絡体制及びグループ各社との情報共有体制の構築 ・緊急物資や災害用備品の保管 ・グループ各社における避難訓練及び防犯対策の実施チェック |
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・建物・設備の損失 |
・計画的な改装工事による店舗年齢の更新 ・店外販売等代替手段の方法を予め確立 |
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感染症・伝染病 |
・お客様及び従業員の健康リスク ・パンデミックの発生 |
・公的指針に則った対応ルールの整備と感染症対策の徹底 ・行政機関からの情報を確認し、対処策を講じる。 ・本部及び部門間、店舗間の人員応援体制整備 |
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人材確保 |
・少子高齢化の進行による労働人口の減少 ・企業間における人材獲得競争激化 ・離職による優秀な人材の確保・育成難 |
・社内環境整備方針の確立と徹底 ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進 ・採用方法の多様化 ・教育研修制度の充実 |
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労務管理、 職場の安全衛生 |
・職場の安全衛生問題 (過重労働、ハラスメント等) |
・社内環境整備方針の確立と徹底 ・過重労働やハラスメント有無の定期チェックとグループ間共有 ・各階層向けハラスメント研修・啓発の実施 ・「ハラスメントガイドライン」「カスタマーハラスメント対応基本方針」の制定 ・産業医との緊密な連携とグループ各社への随時情報共有 |
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主なリスク |
具体的リスク |
対応策 |
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地政学 |
・テロや戦争、紛争等の政治的な不安による世界経済不況 ・エネルギー価格の高騰やサプライチェーンの混乱等 ・上記に伴うコスト上昇や消費マインドの冷え込み |
・グループ各社における独自の商品調達枠の確保 ・省エネ整備の導入促進、エネルギー調達の多様化検討 ・グループ各社間の情報共有とスケールメリットの活用 |
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商品・食品の安全性 |
・食品表示や販促広告の誤り ・食中毒等商品の問題 ・風評被害 ・損害賠償の発生 |
・品質保証推進ニュースによる啓発を継続 ・HACCP基準による指導とグループ各社の衛生管理を徹底 ・表示ルール及び運用状況の定期チェック |
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情報セキュリティ・情報管理 |
・災害、停電等によるソフトウェア及び機器の欠陥 |
・ハードウェアの予防保守管理 ・ソフトウェア稼働状況の監視 |
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・サイバー攻撃 (コンピュータウイルスの感染や不正アクセス、内部情報の流出、改ざんなど) |
・ネットワーク冗長化/疎通監視 ・個人情報に関する各種規程・ガイドラインの策定と従業員研修の実施 |
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事業環境の変化 |
・小売業界における競争激化 |
・エリアドミナント戦略による地域シェアの確保 |
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・お客様の消費動向の変化 |
・顧客情報を活用したマーケティング推進 |
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・金利、為替、株価等の変動 |
・強固な財務基盤構築、金融機関とのリレーションによるリスク軽減 |
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気候変動 |
・環境関連取り組みや対応遅れ等による、資金調達環境・株価水準の悪化 |
・環境への配慮や社会的責任を果たすために、持続可能性を重視した経営戦略を策定 ・統合報告書・ホームページ等の媒体を通じてESG関連の取り組みに関する情報開示を積極的に実施 ・投資家とのコミュニケーションを強化し、持続可能性へのコミットメントを再確認 ・企業の強みや将来展望を明確に伝え、投資家の信頼を取り戻すための具体的な行動計画を策定 |
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コンプライアンス・不祥事 |
・法令改正、規制強化 ・ハラスメント、SNSリスク、反社会的勢力 ・重大な不祥事、コンプライアンス上の問題 |
・アークスグループ・フィロソフィーやコンプライアンス・ニュース等を活用した従業員への法令遵守の重要性についての教育、啓蒙を継続 ・コンプライアンス・リスク管理委員会によるリスク事案の共有 ・顧問弁護士や警察等の外部専門家や外部専門機関との連携 |
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
経営成績
当連結会計年度(2024年3月1日から2025年2月28日)におけるわが国経済は、エネルギーコストや原材料価格の高騰に加え円安の進行が重なり、食品を中心とした物価上昇が高水準で続く中、実質賃金は依然として伸び悩みの傾向が続いております。主食である米をはじめとする生活必需品の大幅な価格上昇は家計への負担増をもたらし、消費者の生活防衛意識は一段と高まってまいりました。
当社グループの主力事業である食品スーパーマーケット業界におきましても、お客様の節約志向や買い控えの傾向が続く中、業種・業態を越えた企業間競争も激しさを増し、商品価格やエネルギーコスト、人件費などの上昇もあり、経営環境は依然として厳しい状況が続いております。
このような事業環境の下、当社グループは、業界再編や新たな競合の発生は企業体質向上の好機と捉え、「良い品」を「納得価格」で提供し続けるための様々な施策に取組んでまいりました。2024年5月28日に移行した新経営体制である「3C体制」(※1)の下、アークスの純粋持株会社としての機能及び役割をさらに明確化し、データ分析とその活用事例の共有や商流統一の実施など、グループ各社の営業支援強化も継続的に行なってまいりました。
営業面につきましては、お客様の節約志向への対応として、当社グループのプライベートブランドと位置づけているCGC商品の中でも特に価格訴求力の高い、定番商品を中心とした「ショッパーズプライス」や、大容量商品の「断然お得」の拡販をさらに強化いたしました。加えて、野菜や米の価格上昇に対応した冷凍野菜や冷凍米飯を拡販するとともに、「簡便・時短・おいしさ」を訴求した冷凍めん類、ワンプレートミールなどの冷凍食品の品揃えも拡充してまいりました。
また、ノンフーズ・日用雑貨の強化のため、㈱ラルズにおいて提携先である㈱カインズ(※2)のオリジナル商品(キッチン用品や掃除用品など)の販売を2024年4月から開始し、取扱い店舗数は当連結会計年度末で25店舗となり、それぞれの地域のお客様から好評価をいただいております。
新日本スーパーマーケット同盟(※3)の取り組みでは、規模を生かしたオリジナル商品開発と産地開拓の強化として、生鮮食品の「千の蜜バナナ」や「絹の蜜ネーブルオレンジ」、加工食品ではご好評いただいた「塩こうじレモンぽん酢」の第2弾として2024年10月より「塩こうじにんにくぽん酢」の取扱いを開始し、商品ラインアップの拡充とシリーズ化による差別化に取組んでまいりました。
ポイント会員制度・デジタル販促の強化として、2024年4月1日からお客様の利便性向上のため、RARAポイントをお買い物ギフト券との交換制から1ポイント単位で即時決済可能としたほか、同年10月1日に「アークスアプリ」を全面リニューアルいたしました。ポイントカード機能のほか、お得な情報をお知らせするプッシュ通知、ポイントクーポンの配信、アプリ限定キャンペーンへの応募機能などを新設した結果、当連結会計年度末におけるアプリ会員数は241千名と当初計画の約2倍で推移し、顧客基盤の強化につながりました。
ネットスーパー事業につきましては、㈱ラルズ、㈱ベルジョイスで展開する「アークスオンラインショップ」において、保育園・介護施設等の法人需要の拡大、「重たく、かさばる」商品の米や酒類、布団等の販売が好調に推移した結果、売上高は対前期比45%増となりました。Amazon社との協業による「Amazonネットスーパー アークス」においても、2024年6月から取扱い対象をアマゾンプライム会員以外のお客様にも拡大したことや、配送拠点を2店舗体制にし、札幌市のほぼ全域をカバーしたことなどにより売上規模は順調に拡大しております。
店舗展開につきましては、㈱ユニバースが「(旧)Uマート桔梗野店」を「ユニバース樹木店」として移転開店したほか、既存店の活性化として、㈱ラルズ4店舗、㈱ユニバース4店舗、㈱ベルジョイス6店舗、㈱福原2店舗、㈱道北アークス2店舗、㈱東光ストア2店舗、㈱道南ラルズ2店舗、㈱道東アークス1店舗、㈱オータニ1店舗の計24店舗の改装を実施いたしました。改装店舗のうち、㈱ラルズの「(旧)ビッグハウス明野店」「(旧)ビッグハウス明徳店」、㈱ベルジョイスの「(旧)スーパーロッキー江釣子店」「(旧)ジョイス二戸店」「(旧)ビッグハウス築館店」、㈱道北アークスの「(旧)スーパーチェーンふじアシル砂川店」、㈱道東アークスの「(旧)ビッグハウス小泉店」の7店舗はスーパーアークスへの業態変更を伴う改装となっております。そのほか、2店舗を閉店したことにより、当連結会計年度末における当社グループの総店舗数は375店舗となりました。
サステナビリティ推進活動につきましては、「アークスグループ カスタマーハラスメント対応基本方針」を2024年12月16日に策定・公表いたしました。グループ内の全従業員一人ひとりを守り、誰もが安全で働きやすい環境を整えることで、従来以上に持続的な顧客サービスの提供に努めてまいります。
2024年11月には㈱ラルズを中心とした5社共同で実施した「共同輸入およびモーダルシフト(※4)によるサステナブルな農産品輸送の実現」の取り組みが、「令和6年度 グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰(※5)」において、「特別賞」を受賞いたしました。2025年2月には、国際的な評価機関であるCDP(※6)の「気候変動」分野において、当社として初めて「B」スコアを取得し、気候変動対応への姿勢が「マネジメントレベル」と認定されました。新たな取り組みとして、使用済食品トレーやペットボトルを循環利用する水平リサイクル「ストアtoストア」の取組みをグループ全体へ拡大いたしました。今後も、持続可能な社会の実現に向けた対応をさらに進めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度(2024年3月1日から2025年2月28日)の業績は、売上高6,082億84百万円(対前期比2.8%増)と、初めて6,000億円を突破いたしました。既存店ベースでは、節約志向の環境下、客数は対前期比0.1%減とほぼ前年並みに留めた一方、1点単価は対前期比3.7%増、1人当たり買上点数は同1.2%減で推移した結果、既存店客単価は対前期比2.5%増、既存店売上高も同2.5%増となりました。
売上総利益率は25.1%と第4四半期における競合出店の影響もあり通期では対前期比0.2%減少いたしました。販管費は予算内執行で推移し、特に第4四半期に一段の経費節減に努めたものの、人件費や減価償却費の増加等もあり、売上高販管費率は22.5%、対前期比+0.1%となりました。
各段階利益につきましては、売上総利益1,529億39百万円(対前期比2.4%増)、営業利益159億36百万円(対前期比5.3%減)、経常利益175億40百万円(対前期比4.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益110億63百万円(対前期比6.0%減)となりました。
(※1)「3C」とは、3名の役職の頭文字であり、正式名称は下記の通りです。
・CEO…Chief Executive Officer :最高経営責任者
・CFO…Chief Financial Officer :最高財務責任者
・COO…Chief Operating Officer :最高執行責任者
なお、「3C体制」への移行に伴い、当社社長室を「3Cオフィス」に変更しCEO直轄の組織としております。
(※2)当社子会社の㈱エルディは、㈱カインズとのフランチャイズ契約により、2008年6月からホームセンターのカインズを運営しており、当連結会計年度末現在、カインズFC大曲店(北海道北広島市)、カインズFC花川店(北海道石狩市)、カインズFC星置店(札幌市)の3店舗を展開しております。㈱ラルズにおいて今期初めて当該オリジナル商品の取扱いを開始いたしました。
(※3)㈱バローホールディングス(本社:岐阜県)、㈱リテールパートナーズ(本社:山口県)、当社の3社により、2018年12月に資本業務提携契約を締結した地域密着型の独立系食品流通企業の連合体です。
(※4)モーダルシフトとは、トラック輸送を主軸とする従来の物流から、鉄道や船舶といった環境負荷が低く、大量輸送に適した手段へ切替える取組みのことです。主な目的は、CO₂排出量の削減や輸送コストの低減、トラックドライバー不足への対応、交通渋滞の緩和や事故リスクの低減等があります。
(※5)グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰は、グリーン物流パートナーシップ会議(以下、同会議と表記。)が平成18年に創設した、複数事業者間の連携により、物流分野における環境負荷の低減等に顕著な功績があった取組みを表彰する制度です。同会議は、先進性のある産業横断的取組みを育てるべく、物流連、経済産業省、国土交通省等の協力により発足しました。
(※6)CDPは、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(Carbon Disclosure Project)の略です。国際的な環境非営利団体で、企業や自治体を対象とした環境情報開示システムを運営し、気候変動、水資源、森林といった環境分野における企業の情報開示や対策を評価する機関です。
当連結会計年度に実施した新規出店等は以下のとおりであります。
|
概要 |
店舗名称 |
所在地 |
実施時期 |
運営会社 |
|
|
移転開店(1店舗) |
ユニバース樹木店(旧Uマート桔梗野店) |
青森県弘前市 |
2024年10月 |
㈱ユニバース |
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|
改装(24店舗) |
ユニバース鉈屋町店 |
岩手県盛岡市 |
2024年3月 |
㈱ユニバース |
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|
ユニバース沖館店 |
青森県青森市 |
2024年4月 |
㈱ユニバース |
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|
|
東光ストア自衛隊駅前店 |
札幌市 |
2024年5月 |
㈱東光ストア |
|
|
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|
ジョイス盛岡東安庭店 |
岩手県盛岡市 |
2024年5月 |
㈱ベルジョイス |
|
|
スーパーアークスノース |
札幌市 |
2024年5月 |
㈱ラルズ |
|
|
|
ラルズマート森店 |
北海道茅部郡 |
2024年6月 |
㈱道南ラルズ |
|
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ユニバース久慈・川崎町店 |
岩手県久慈市 |
2024年7月 |
㈱ユニバース |
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ジョイス北上鬼柳店 |
岩手県北上市 |
2024年7月 |
㈱ベルジョイス |
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|
フクハラ標茶店 |
北海道川上郡 |
2024年8月 |
㈱福原 |
|
|
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ディナーベルススキノ南7条店 |
札幌市 |
2024年8月 |
㈱東光ストア |
|
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スーパーアークス伊達店 |
北海道伊達市 |
2024年9月 |
㈱ラルズ |
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ウェスタン川端 |
北海道旭川市 |
2024年10月 |
㈱道北アークス |
|
|
|
スーパーアークス戸倉店 |
北海道函館市 |
2024年10月 |
㈱道南ラルズ |
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ユニバース城東店 |
青森県弘前市 |
2024年11月 |
㈱ユニバース |
|
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スーパーアークス矢巾店 |
岩手県紫波郡 |
2024年11月 |
㈱ベルジョイス |
|
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フードオアシスオータニ大沢店 |
栃木県日光市 |
2024年11月 |
㈱オータニ |
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|
フクハラ自由が丘店 |
北海道帯広市 |
2025年2月 |
㈱福原 |
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|
うち業態変更 |
スーパーアークス江釣子店 |
岩手県北上市 |
2024年4月 |
㈱ベルジョイス |
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(7店舗) |
スーパーアークス砂川 |
北海道砂川市 |
2024年6月 |
㈱道北アークス |
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スーパーアークス二戸店 |
岩手県二戸市 |
2024年6月 |
㈱ベルジョイス |
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スーパーアークス小泉店 |
北海道北見市 |
2024年7月 |
㈱道東アークス |
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スーパーアークス明野店 |
北海道苫小牧市 |
2024年7月 |
㈱ラルズ |
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|
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スーパーアークス築館店 |
宮城県栗原市 |
2024年8月 |
㈱ベルジョイス |
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スーパーアークス明徳店 |
北海道苫小牧市 |
2024年11月 |
㈱ラルズ |
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閉店(2店舗) |
ジョイス北上中央店 |
岩手県北上市 |
2024年4月 |
㈱ベルジョイス |
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ラルズマート豊岡店 |
北海道旭川市 |
2024年5月 |
㈱道北アークス |
|
財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して、76億89百万円増加し、2,826億62百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して、14億61百万円増加し、986億24百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して、62億28百万円増加し、1,840億37百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」といいます。)の残高は、前連結会計年度末と比較して53億3百万円増加し、800億35百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、193億84百万円(対前期比19.4%減)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益164億2百万円、減価償却費104億4百万円、棚卸資産の増加額17億82百万円、退職給付に係る負債の減少額12億35百万円、減損損失11億23百万円、及び法人税等の支払額54億38百万円などによるものです。また、得られた資金が減少した要因は、仕入債務が減少したこと及び未払消費税等が減少したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、114億90百万円(対前期比7.9%増)となりました。これは主に、店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出110億57百万円、システム関連投資に伴う無形固定資産の取得による支出9億32百万円などによるものです。また、使用した資金が増加した要因は、店舗改装等に伴う有形固定資産の取得による支出が増加したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、25億90百万円(対前期比77.0%減)となりました。これは主に、長期借入れによる収入90億円、長期借入金の返済による支出63億15百万円、及び配当金の支払額39億34百万円などによるものです。また、使用した資金が減少した要因は、長期借入れによる収入が増加したこと及び自己株式の取得による支出が減少したことなどによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは小売関連事業を主たる事業としているため、生産実績及び受注状況は記載しておりません。
a. 仕入実績
|
事業の名称 |
前連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
当連結会計年度 (自 2024年3月1日 至 2025年2月28日) |
前期比 (%) |
|||
|
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|||
|
小売関連 事業 |
食品 |
384,938 |
86.9 |
398,881 |
87.3 |
103.6 |
|
衣料品 |
1,427 |
0.3 |
1,434 |
0.3 |
100.5 |
|
|
住居関連 |
16,934 |
3.8 |
17,251 |
3.8 |
101.9 |
|
|
酒類等 |
37,674 |
8.5 |
37,673 |
8.2 |
100.0 |
|
|
テナント |
1,205 |
0.3 |
1,205 |
0.3 |
100.0 |
|
|
その他 |
538 |
0.1 |
571 |
0.1 |
106.2 |
|
|
合 計 |
442,717 |
100.0 |
457,018 |
100.0 |
103.2 |
|
b. 販売実績
|
事業の名称 |
前連結会計年度 (自 2023年3月1日 至 2024年2月29日) |
当連結会計年度 (自 2024年3月1日 至 2025年2月28日) |
前期比 (%) |
|||
|
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|||
|
小売関連 事業 |
食品 |
513,387 |
86.8 |
529,751 |
87.1 |
103.2 |
|
衣料品 |
1,909 |
0.3 |
1,911 |
0.3 |
100.1 |
|
|
住居関連 |
22,073 |
3.7 |
22,484 |
3.7 |
101.9 |
|
|
酒類等 |
43,570 |
7.4 |
43,429 |
7.1 |
99.7 |
|
|
テナント |
3,258 |
0.6 |
3,217 |
0.5 |
98.8 |
|
|
不動産賃貸収入等 |
6,334 |
1.1 |
6,456 |
1.1 |
101.9 |
|
|
その他 |
1,022 |
0.2 |
1,033 |
0.2 |
101.0 |
|
|
合 計 |
591,557 |
100.0 |
608,284 |
100.0 |
102.8 |
|
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して、76億89百万円増加し、2,826億62百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金が53億3百万円、棚卸資産が17億82百万円、土地が21億1百万円、及びリース資産が14億18百万円増加した一方で、ソフトウエアが13億99百万円、及び投資有価証券が14億95百万円減少したことなどによるものです。
(負債)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比較して、14億61百万円増加し、986億24百万円となりました。この主な要因は、短期借入金が29億91百万円、及びリース債務(固定負債)が13億56百万円増加した一方で、未払金が6億26百万円、未払法人税等が5億62百万円、未払消費税等が6億22百万円、長期借入金が5億96百万円、及び繰延税金負債が5億25百万円減少したことなどによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比較して、62億28百万円増加し、1,840億37百万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が71億22百万円増加した一方で、その他有価証券評価差額金が10億67百万円減少したことなどによるものです。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末より0.4ポイント上昇し65.1%となりました。
b.経営成績
(売上高)
売上高は、6,082億84百万円(対前期比2.8%増)となりました。増加の主な要因は、当連結会計年度において移転開店1店舗に加え、改装24店舗など既存店の営業基盤の拡充をはかったことなどによるものです。
(営業利益)
売上総利益率が25.1%(対前期比0.2%減)となったことにより、売上総利益は1,529億39百万円(対前期比2.4%増)となりました。人件費や減価償却費が増加したことなどにより、販売費及び一般管理費が前連結会計年度と比較して44億16百万円増となったことから、営業利益は、前連結会計年度と比較して8億94百万円減の159億36百万円(前期比5.3%減)となりました。
(経常利益)
経常利益は、営業外損益が前連結会計年度とほぼ同水準の16億4百万円となったことにより、前連結会計年度と比較して8億98百万円減の175億40百万円(対前期比4.9%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の減少に加え、減損損失が前連結会計年度と比較して2億56百万円増の11億23百万円となった一方で、賃上げ促進税制に係る法人税額の特別控除が前連結会計年度と比較して増加したことにより、前連結会計年度と比較して7億2百万円減の110億63百万円(対前期比6.0%減)となりました。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営戦略及び対処すべき課題等」に記載しております。
なお、指標の推移は次のとおりであります。
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指 標 |
中長期目標 |
2023年2月期 (実績) |
2024年2月期 (実績) |
2025年2月期 (実績) |
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ROE(自己資本利益率) |
8.0%以上 |
5.9% |
6.7% |
6.1% |
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ROA(総資産経常利益率) |
10.0%以上 |
6.3% |
6.8% |
6.3% |
2025年2月期のROEは6.1%、ROAは6.3%と、2023年2月期対比ではやや改善しているものの、目標を下回る水準となっております。今後の継続的な企業価値向上、ROE及びROA改善策として、スーパーアークス化を主軸とした店舗改装の推進や競合対策の徹底、ネットスーパー事業の拡大など販売チャネルの多様化を図ってまいります。加えて、積極的なM&Aによる事業規模の拡大により、さらなる成長を目指してまいります。
あわせて、生産性向上とコスト削減の観点からは、商流統一や仕入原価の低減、グループ内の好事例の横展開強化、DX推進、人的資本への投資などを進めております。これらの取組みにより、利益率の改善および販管費のコントロールを通じて中長期的な利益成長を実現し、目標達成を目指してまいります。
さらに、資本市場との建設的な対話にも積極的に取り組んでおります。証券アナリストや機関投資家等に対しては、第2四半期および通期決算後にIR説明会を実施したほか、個別訪問や国内外の投資家とのWEB会議によるIR・SR面談など、継続的な情報発信と対話を重ねております。今後も中長期的な企業価値向上に向けて、IR活動に加え、機関投資家との対話を一層強化し、SRの充実も図ってまいります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
なお、キャッシュ・フロー指標の推移は次のとおりであります。
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2021年2月期 |
2022年2月期 |
2023年2月期 |
2024年2月期 |
2025年2月期 |
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自己資本比率(%) |
62.7 |
63.5 |
64.5 |
64.7 |
65.1 |
|
時価ベースの |
49.4 |
47.5 |
45.6 |
60.8 |
53.3 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
0.8 |
1.8 |
1.6 |
1.1 |
1.6 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
203.5 |
92.1 |
121.4 |
176.2 |
144.0 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
2.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
4.有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、運転資金及び設備投資は営業キャッシュ・フローの範囲で行う方針であり、営業キャッシュ・フローでまかないきれない時は、金融機関からの借入により資金調達を行います。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
この連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や現状等を勘案して、合理的と考えられる方法により会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(1) 業務・資本提携契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
契約 締結日 |
契約期間 |
契約内容 |
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㈱アークス (当社) |
㈱バローホールディングス、㈱リテールパートナーズ |
2018年 12月25日 |
期間の定めなし |
業務提携 ⑴ 既存領域の強化 ① 地場商品や産地情報、取引先情報の相互共有 ② 資材・備品・什器などの共同購入 ③ 店舗開発、店舗運営などのノウハウの共有 ④ 物流やセンター運営のノウハウの共有 ⑤ スポーツクラブ事業などの小売周辺事業の共同展開 ⑥ 人材採用や人材教育に関するノウハウの共有 他 ⑵ 次世代に向けた取り組み ① カード事業の共同研究、及び統合に向けた検討 ② バックオフィス業務の統合も含めた共同研究 ③ 金融、決済事業に係る共同運営の検討 ④ スマートストア(次世代型店舗)など新たなテクノロジー対応への共同研究 他 資本提携 株式の相互保有 |
該当事項はありません。