第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、「行動者」のポジティブな情報がニュースの中心となり、個人を勇気づけ前向きにする社会の実現に挑んでおります。私たちは人の行動や頑張りの結晶、その想いを紡いで発表することがプレスリリースだと考え、地域や企業規模を問わず「行動者」が自ら発信し、その一人ひとりの行動から社会が動く実感を持てる社会を目指して事業を展開しております。

 

(2) 注視している経営指標

当社グループは、積極的かつ規律ある投資により、中長期的な視点で、事業成長と利益向上の両方を目指しており、売上高、営業利益、及び売上高成長率と営業利益率のバランスを注視しております。

 

(3) 当社グループを取り巻く経営環境

 当社グループが運営するプレスリリース配信サービスにおける市場規模の発表資料はございませんが、公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会発表の「2023年 PR業実態調査」によると、PR業全体の売上規模は、1,479億円(2022年度)となり、前回調査の1,111億円(2020年度)を大きく上回りました。コロナ禍によるダメージから回復し、PR市場が拡大傾向にあることを示しております。

 

(4) 当社グループの競争優位性

 当社グループの競争優位性はミッションにあり、ミッションに立脚したサービス設計・組織になっていることが参入障壁を生み出していると考えております。当社グループは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」をミッションに掲げ、「PR TIMES」を通じて触れたニュースで生活者の心が揺さぶられるよう、サービスの向上に努めてまいりました。社員も当社グループのミッションに共感して参画しているため、同じ目的意識を持って一丸となって仕事に取り組めております。幸いなことに、当社グループのミッションに賛同して、利用する顧客も多数おります。プレスリリースの配信事業は、企画力・開発力を持つ企業であれば、比較的参入しやすい事業領域であります。しかしながら、ミッションはフィロソフィーが色濃く反映されるもので、時間とともに培われるため、簡単に模倣できるものではなく、それが競争優位になると考えております。

 

(5) 中長期的な方向性

当社グループは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションを実現するために、以下の3つの長期的な経営目標を掲げております。

① 「PR TIMES」を社会的な情報インフラと呼ぶに相応しい存在にする

② 「PR TIMES」を世界で有数のインターネットサービスにする

③ 「PR TIMES」を超える事業を生み出す人材が台頭する組織になる

 

長期経営目標の達成、ひいてはミッションの実現に向けて、2025年度までにおける中期経営目標として、「Milestone2025 中期経営目標説明資料」を公開しております。具体的な目標や施策は以下のとおりであります。

当社グループは、「PR TIMES」を社会的な情報インフラにすることを目指しております。働く一人ひとりの仕事が社会へ伝えられ、大切な人たちへと届く機会を、誰もが平等に得られるようになってこそ、社会的な情報インフラと呼ぶに相応しいと考えております。そのためにも、地方金融機関や地方自治体等とも提携しながら日本全国地域における「PR TIMES」の利用の拡大を推進してまいります。

また、「PR TIMES」を世界で有数のインターネットサービスにするためにも、米国を中心とした英語圏への進出が必要不可欠であります。当連結会計年度も現地企業のM&Aに向けて交渉を続けてまいりましたが、最終的に合意には至りませんでした。「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションに国境を定めず、次の時代をつくれるように、引き続き機会を追求してまいります。

「PR TIMES」を超える事業の創出にも挑戦します。投資フェーズである「Jooto」や「Tayori」を着実に伸ばして、日本の業務効率化や生産性向上に大きく貢献できるようにしてまいりたいと考えております。「BRIDGE」や「isuta」も社会に大きな影響を与える日本有数のメディアを目指し、まだ存在しない新たな事業の創出にも挑戦してまいります。

 

中期経営目標「Milestone2025」の指標は下記のとおりであります。

 

<全社>

・営業利益目標 35億円(営業利益計画 31億49百万円)

 積極的かつ規律ある投資を継続しながら、堅実に企業価値を高めて2025年度の営業利益31億49百万円を見通す計画を実行するとともに、大きな飛躍を狙ってまいります。

 

<PR TIMES>

・日本国内利用企業数   150,000社

・国内上場企業の利用率  70%(IPO時80%、うちグロース市場95%)

・地方自治体の利用    年度内利用700市町村47都道府県・災害支援プログラム認知度100%

・地方地域の業務提携   47都道府県

・サイト閲覧数      1億1,000万PV/月

・メディア活用率     70%

・ビジネスパーソン認知度 サービス理解10%・会社認知50%

 

<Jooto>

・有料利用企業社数 100,000社

・営業利益     3.5億円

 

<Tayori>

・有料アカウント数 6,000アカウント

・営業利益     2億円

 

<BRIDGE>

・有料アカウント数 10,000アカウント

・登録社数     500社

 

(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションの実現を目指しております。対処すべき主要な課題は、次のように認識しております。

 

① 「PR TIMES」の利用促進によるミッションの実現

「PR TIMES」は2024年6月に累計のプレスリリース件数が200万件を超え、7月には累計の利用企業数が10万社を突破いたしました。プレスリリースは報道向け素材資料であり、事実に基づいた公式な情報ですが、大きな変化を起こしつつあります。近年プレスリリースから、人の息遣いや、物語を感じられるようになってきました。時に人の心を揺さぶる、社会に響くプレスリリースを活用することで、事業と組織に好影響を与えられる事業者はまだまだ全国に多くいらっしゃいますが、「PR TIMES」の活用はまだ一部に留まっていると考えております。地域や企業規模の垣根を越えて「PR TIMES」を活用いただき、一人ひとりの行動から社会が動く実感を持てる社会を目指し、事業を展開してまいります。

 

② 「PR TIMES」を超える事業の台頭

2021年以降、収益の柱を担っている「PR TIMES」から投資先行型のSaaS事業へ経営資源を配分し、ポートフォリオを広げつつあります。その過程で、事業セグメントをまたぐ部署異動や配置転換など人的交流が増え、組織全体の活力向上に寄与しています。新たな挑戦や試行錯誤という言葉を逃げ道にせず、常に意味のある取り組みであるかを検証し、無駄をそぎ落としながら利益体質を堅持してまいります。また、AIの台頭により、当社SaaS事業の「Jooto」と「Tayori」にとってタスクを自律的に遂行しうるAI Agentは大きな事業機会となっており、好機を活かした事業成長を図ってまいります。

 

③ 中期経営目標と株主還元

当社グループは2021年4月13日に公表いたしました中期経営目標「Milestone 2025」の最終年度を迎えます。売上高の19期連続増収と営業利益の2期連続での過去最高更新を目指すとともに、収益力をさらに一段階高める重要な1年と位置づけております。財務目標として掲げる営業利益35億円は現時点では乖離がある野心的な設定であるものの、あくまで通過点にすぎないと位置づけ、引き続き当社グループ一丸となって達成に向けて取り組んでまいります。そして、2030年度に向けて新たな野心的な目標を掲げられるようにいたします。当社グループはこれまで、自らの収益力を武器に、単年度では採算が合わない投資にも踏み込みながら、中長期的な競争優位を築き、収益力を向上させ、さらに再投資へとつなげるサイクルを確立してまいりました。次期においては、こうした投資サイクルのスピードと質をさらに高め、経営力を強化する絶好の機会と捉えております。

 

当社は創業以来続けてきた無配方針を改め、初めての配当を実施する見通しとなりました。とはいえ、今回の初配当はゴールではなく、新たなスタートラインにすぎません。配当を始めたからといって当社が成熟企業になったわけではなく、今後も積極的かつ規律ある投資を重ね、持続的な成長と利益の拡大を両立してまいります。そして株主の皆様には、その成果を累進配当によって毎期実感していただきたいと考えております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社は、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションを実現するために存在し、そのミッションの実現に向けて全力最善で相互に協力し合える組織となるよう、行動指針である3つのバリュー「Act now, Think big」「Open and Flat for breakthrough」「One's commitment, Public first」を定めております。また、理想を追求すると同時に、統制を強めるため組織ルールを整備・共有しており、組織を構成する全員の遵守徹底を図っております。

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、当事業年度はグループを代表して当社の考え方及び取組について記載しております。当社は、前事業年度において、株式会社グルコース及び株式会社NAVICUSの株式を取得し、子会社化しておりますが、当社グループとしてのサステナビリティに関する考え方及び取組の整備、検討を進めている最中であります。

 また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

※ミッションとバリューについて(PR TIMESコーポレートサイトより) https://prtimes.co.jp/mission/

 

(1)ガバナンス

 当社は、サステナビリティ推進及びサステナビリティに関する諸課題への対策を目的に、管理部門管掌取締役を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。これまでプロジェクトベースで稼働させていた活動を正式な機関として設置しました。当委員会は、各部門と連携し、サステナビリティ関連のリスク、機会、施策及び業務執行への影響について協議し、経営会議へ付議又は報告しております。そして、経営会議でサステナビリティ経営に係る施策について審議した後、取締役会への報告を担っております。

 取締役会は、サステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任を有しております。経営会議で審議・決定された内容の報告を受け、その対応方針や実行計画等について、必要に応じて承認、対応の指示及び助言を行っております。

 

(2)戦略

 当社は、事業を成長させ、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションを実現させるためには、「人」が最も重要だと考えております。ミッションを個人として大切に感じる人材を丁寧に集め、育み、また社会に必要とされる認知が広まって当社ミッションが求心力を増すような、ポジティブな循環を回すことが、組織戦略上とても大事であると考えております。

 重要な局面と役割において、当社の価値観を体現する意思決定と実行を実践できる人材が増えるほど、成長スピードと挑戦の成功確率が押し上がると信じております。また、同じ志を育む「行動者」が集まり、それぞれが持つ独自の感性と能力を同じ方向へ結集させ、たとえ失敗しても再挑戦を歓迎する仕組みを持つことで、個々の可能性を尊重し、大きな変革を成し遂げられるエネルギーが組織に充填されると考えております。

 さらに当社は、固定化させず変化し続ける組織であることと、社外関係者とも一体となってコミュニティ化するオープンネットワークとなることを志向しております。各部門の目的と責任範囲を明確にして、事業成長及び業績目標の達成に取り組む中で、組織と人材配置はその時々のベストを追求し、抜擢と交代を厭わず、柔軟に変更を続けております。当社は、誰もがプロフェッショナルとして対等に起案し意見でき、責任者がトップダウンで意思決定する組織であることを大切にしております。合議ではなく、何でも社長決裁でもなく、事業もプロジェクトも個別案件も全てにおいて、責任者を決定したのであれば権限を渡して仕事を任せるという、「決める人が決める」方針を徹底しております。決断経験が責任者をリーダーとして成長させ、成功からは自信を得て、失敗からは学びを糧に変え、重要な意思決定を担う人材が増えれば増えるほど、組織は強くなると考えております。また、フラットに反対意見を出した社員も、決定後は全力で協力する方針も大切にしております。

 真剣勝負でしか味わえない緊張感と全力感、そして背中を預け合える同志の存在を、仕事の醍醐味と捉え、働きがいを感じられる人材が集う組織を目指しております。過去最高を更新する社員にはより大きな機会を提供し、失敗や停滞した社員には別の機会を提供し、再挑戦の時に備えるようにしております。全力最善で相互に協力し合い、コミットメントを重視しながらも抜擢と交代、役割変更を柔軟に行っております。

 当社は、多様なバックグラウンドの社員の誰もが、働きがいを感じて熱意を持って仕事に取り組み、同志の存在と再挑戦の支えを励みに、各々の活躍の場を広げられるような平等な機会を提供することを追求しております。

以上の方針のもと、重視する3つの組織テーマとして、「過去最高を更新する働きがい」「背中を預け合える同志との結束」「持続も停滞も支える安心の土台」を掲げ、それらに資する組織施策を、以下のとおり実施しております。

 

 

① 過去最高を更新する働きがい

・高い目標を掲げ続ける(ミッション/バリューの存在)

・意思決定できる人材を増やす(プロジェクトリレー/組織変更/幹部研修/社員研修)

・行動を讃える(社員総会表彰/行動者広報)

・企業価値をともに創る(株式報酬/持株会/特別賞与)

・夢を語る(新卒入社式/中途入社式/April Dream)

 

② 背中を預け合える同志との結束

・結束を深める(経営合宿/部門合宿/結束食事会U.S.P.)

・自信と成長を促す(人事評価制度/ピボット制度/1on1今日なに)

・つながりを深める(誕生日祝いIt's You/体験をともにするリトリート)

・行動様式を揃える(ルールの存在)

 

③ 持続も停滞も支える安心の土台

・調子を整える(時間単位休暇/システム障害代休/エフ休暇/フィジサポ/看護休暇)

・在り方を認め合う(リモートワーク制度/多様な正社員/カムバック制度)

・互いを尊重する(無意識バイアス研修/コンプライアンス研修/パートナーシップ証明書)

・本業に専念できる(奨学金支援/近隣居住手当/転居支援金/書籍購入・学習支援)

 

(3)リスク管理

 当社は、管理部門管掌取締役を委員長とするコンプライアンス・リスク委員会を設置しており、ヒヤリハットの細かな単位からリスク把握に努め、再発防止策の質の維持や監督継続等のリスク管理を行っております。当委員会で認識したリスクのうち、サステナビリティ関連のリスク及びそれらから転じる機会は、サステナビリティ委員会へ報告しております。サステナビリティ委員会で個別にリスクを検討のうえ、影響度を評価し、対応が必要と判断されたリスクは、サステナビリティ委員会が監督しながら、事案別に責任者を置いて対策を実行しております。また、重要なリスクと機会への対応状況は、経営会議で協議・承認された後、取締役会へ報告し、取締役会では、その対応状況を監督しております。

 人的資本に関する取組においては、3つの組織テーマにおけるリスク及び機会を以下のとおり特定し、「(2)戦略」に記載した組織施策を推進しております。

組織テーマ

リスク

機会

過去最高を更新する

働きがい

・ミッションを個人として大切に感じる人材が増えず、また認知も広まらずに関心を失う

・価値観が揃わず、重要な意思決定と実行を担える人材が枯渇する

・企業価値に対する意識と乖離のある個人主義で働く人材が増える

・ミッションを個人として大切に感じる人材が集まり、また社会に必要とされる認知が広まって当社ミッションが求心力を増す

・重要な局面と役割において、当社の価値観を体現する意思決定と実行を実践できる人材が増える

・企業価値を自ら高めようという意識を持って働く人材が増える

背中を預け合える

同志との結束

・精神的に孤立した人材の集合体となり、人数分以上の力が発揮できない

・能力が似通った人材しかいないため、挑戦領域を安心して任せられず、重要な仕事が一極集中する

・精神的なつながりが弱く表層に留まり、指摘し合えない又は揉める

・背中を預け合える同志の存在に励まされ、一人で挑む時より大きな力が発揮できる

・能力を補い合う同志に任せられる領域が増えて、各自が専門性を磨き、総力戦で挑める

・精神的なつながりが強く、本質的な敬意が互いにあり、率直なフィードバックを受け止められる

持続も停滞も支える

安心の土台

・成果至上主義で個々の努力が認められず疲弊し、やがてはチームの活力を削ぐ

・考え方が固定化し、差異に不寛容な姿勢で、個性のない一様な働き方しか認められない

・個々が周辺環境を整えるのに費用と労力を要し、本業に向き合うリソースが不十分になる

・挑戦の失敗を許容し、個々の働きに応じた適切な休息と支えが整えられ、精力的に働ける環境がある

・多様なバックグラウンドに対する理解と寛容な姿勢があり、各自の特性を活かした働きを実現できる

・生活や勉強に対して大きな不安なく、本業に専念することができる

 

(4)指標及び目標

① 人的資本

 当社は、「(2)戦略」に記載した3つの組織テーマを実現するべく、以下の指標を用いて現状把握を行っております。

 これらの指標を定点観測し、定量的・定性的に現状把握と改善を続ける中、比率等の結果はモニタリングしながらも、「機会提供というプロセスに平等と公平が適切に備わっているか」という点を最も重視しております。具体的には、「(2)戦略」に記載した3つの組織テーマに資する組織施策の実行と振り返りを通じて、機会提供が各指標に好影響を与えているかどうかを観測し、改善につなげております。

 

項目

当事業年度

(2024年3月~2025年2月)

平均勤続年数

女性

3.9年

男性

3.0年

合計

3.3

年次有給休暇取得率(注)

72.1

女性社員の割合

正社員

38.0%

契約社員・アルバイト

79.8%

合計

54.5

(注)「2024年度の年次有給休暇取得日数合計÷2024年度の年次有給休暇付与日数合計」として算出しております。

 

② 気候変動・環境

 当社では、Scope2として、本社オフィスの電気使用量に係るCO2排出量の算出を前事業年度から実施しております。現状把握を行い、重要性に応じて今後算出範囲を拡大していく予定であります。なお、前事業年度と比較して排出量が増加しているのはオフィス出社率の上昇等によるものであります。

 

 当事業年度における当社本社オフィスのCO2排出量(概算)

算定対象期間

区分

温室効果ガス排出量(t-CO2)

2024年3月~2025年2月

Scope2(ロケーション基準)

83.43

Scope2(マーケット基準)

0.07

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 景気の変動について

企業の広告宣伝・広報関連予算は、企業の景況に応じて調整されやすく、景気動向に影響を受けやすい傾向にあり、景況感が著しく悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 災害・事故等の発生について

企業の広告宣伝・広報関連予算は、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が発生した場合、その影響を受けやすい傾向にあります。したがって、これらの災害・事故等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 同業他社との競合について

プレスリリース配信サイトの開発は、企画力・開発力を持つ企業であれば比較的参入しやすいこと、当該企業の台頭等により顧客の獲得競争が激化し、当社グループがプレスリリース配信事業の競争力や優位性を保つことが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) メディアとの関係について

当社グループは、メディアとの広範かつ親密なネットワークを経営資源としておりますが、テレビ・新聞・雑誌・ラジオ・インターネットメディアといったメディアは、プレスリリースを起点とする情報流通を図るための重要なインフラであります。当社グループは、メディア各社に対し有用な情報を長期的かつ継続的に提供することにより、メディア各社との信頼関係を構築してまいりましたが、当社グループが誤った情報の提供等により、メディアとの信頼関係を失った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、近年は紙媒体を中心にメディアが減少傾向にあり、企業の情報発信の届け先が減少した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 技術革新への対応等について

当社グループはインターネット関連技術に基づいた事業を展開しており、今後も適時適切にプレスリリース配信を行っていく方針であります。

しかしながら、当社グループを取り巻く業界は、新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われており、非常に変化が激しいものとなっております。そのため、技術革新に対する対応が遅れた場合には、当社グループの競争力が低下する可能性があることに加え、急速な技術革新に対応するためにシステム又は人的投資への金額が増大する可能性があります。

 

(6) 知的財産権について

当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しない体制として、社内のチェック・教育の実施や弁護士への確認・相談を実施しておりますが、万一、当社が事業推進において第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴訟を提起される可能性があり、当社グループの業績及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 法的規制について

プレスリリース配信事業は、プロバイダ責任制限法や不当景品類及び不当表示防止法、下請法等関連法規による規制があります。当社グループでは社内のチェック・社内教育の実施や弁護士によるチェック等、法令に抵触しないよう法令に準じた運用の徹底を図っておりますが、これらの法規の変更が行われる場合、又は運用の不備等により当社事業が法令に抵触するような事態が起こった場合、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) システムトラブルについて

当社グループは、アクセス過多によるサーバー停止やネットワーク機器の故障及び自然災害や事故、火災等によるシステムトラブルの発生を回避するために、サーバーの負荷分散、稼働状況の常時監視、定期的バックアップの実施等の手段を講じることで、システムトラブルの防止及び回避に努めております。

しかしながら、顧客情報やコンテンツを管理しているサーバーや閲覧・予約システムにおいて何らかのトラブルが発生することで、顧客への情報提供等に障害が生じる可能性もあり、当該障害が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 新規事業について

当社グループは、培ったノウハウを活かし、さらなる成長を目指してプレスリリース配信事業の積極展開を進めていく所存であります。新規事業開発は慎重な検討を重ねたうえで取り組んでまいりますが、当該事業を取り巻く環境の変化等により、当初の計画どおりの成果が得られない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 親会社との関係について

① 親会社グループにおける位置づけ

当社グループは、親会社である株式会社ベクトルを中心とした企業集団(以下、「ベクトルグループ」という。)に属しております。同社は当社の議決権の55.4%(当連結会計年度末時点)を保有する筆頭株主であり、ベクトルグループは企業の戦略的広報活動を支援するPR事業を主力事業としております。ベクトルグループにおいては、従来からの広報業務に加え、広告宣伝分野でPRを活用する「戦略PR」を通じ、企業の広報活動の支援やコンサルティング業務を実施しております。「戦略PR」とは、クライアントの情報をメディアの制作・編集担当が記事やニュースとして取り上げたくなる形に加工することで、広告に比べて低コストで、注目度の高い情報を幅広いメディアに拡散させていく手法を指します。

当社グループは、戦略PR事業を主な事業とするベクトルグループにおいて、「テクノロジーカンパニー」という位置付けでプレスリリース配信事業を営んでおります。ベクトルグループは、プランニングから実行までの比較的大規模なPRビジネスが主流であり、事業構成上、当社グループのプレスリリース配信事業の重要性は低いと考えております。また、ベクトルグループ内に当社グループと競合となるサービスはありませんが、ベクトルグループの方針や環境が変わり、ベクトルグループ内から競合となるサービスが創出された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② ベクトルグループとの人的関係

当連結会計年度末現在における当社の取締役4名のうち、ベクトルグループとの間で兼務関係にある取締役はおりません。

 

③ その他、ベクトルグループとの間の関係について

当連結会計年度における当社グループの連結売上高に占めるベクトルグループ向け売上高の割合は1.5%となっております。

また、ベクトルグループでは、「関係会社管理規程」に基づき、業務執行における報告事項及び事前承認事項が定められておりますが、当社は株式会社ベクトルとの間で、当社株主としての権利を除き、当社が東京証券取引所マザーズ市場に株式上場いたしました2016年3月31日をもって「関係会社管理規程」の適用除外とする旨の覚書を締結しております。

 

(11) 情報管理について

当社グループは事業を推進していく中で、顧客の公開前情報や個人情報を扱う機会があります。情報管理についてはシステム投資や人材教育等必要な措置を講じており、その一環として2009年11月にプライバシーマーク及び2023年3月に情報セキュリティマネジメントシステムISMSの国際規格「ISO27001」認証を取得いたしました。しかしながら、システムの脆弱性、コンピューターウイルス、外部からの不正な手段によるコンピューター内への侵入、役職員の過誤等によりこれらの情報が流出した場合には、当社グループの業績及び社会的信用力に影響を及ぼす可能性があります。

上記のようなリスクを認識したうえで対策を講じてまいりましたが、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」において、2025年4月24日より第三者によるサーバー内部への不正アクセスとサイバー攻撃が行われ、検知した4月25日より防御と対応を行いました。外部セキュリティ専門機関とともにその影響について調査を進める中で、個人情報と発表前プレスリリース情報を中心とする保有情報が漏えいした可能性があることが判明いたしました。すでに不正アクセス経路は遮断し、攻撃者による不審な操作やプロセスは停止できておりますが、5月7日に所轄警察署へサイバー攻撃の被害を申告し、事件相談として受理されており、同日に本件に関するお詫びとご報告を適時開示しております。また、再発防止のためセキュリティ体制の一層の強化を図るとともに、現在導入しているWAF(Web Application Firewall)の設定の見直しと、2022年より進めているセキュリティをより担保しやすい新管理者画面への移行を、2025年度中に予定しております。

 

(12) 特定経営者への依存について

代表取締役社長である山口拓己は、2009年5月以来代表を務めており、2007年4月にプレスリリース配信サービス「PR TIMES」の運営を開始する等、当社グループの経営方針や事業戦略の決定・遂行、多様なサービスラインの開発・導入に重要な役割を果たしております。

当社グループは、取締役会等における情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が業務を継続することが困難となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 新株予約権行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、取締役のみならず、従業員が株主と目線を合わせ、事業に対するオーナーシップを持って行動することを期待し、ストック・オプション制度を採用しております。現在付与している新株予約権が行使された場合は、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。現時点では、権利行使された場合に割り当てる株式は、新株を発行する方針としております。

 なお、当連結会計年度末現在における新株予約権による潜在株式数は449,800株であり、同日現在の発行済株式総数13,502,238株の3.3%に相当しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)の当社グループにおきましては、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションを実現するため、引き続き主力事業であるプレスリリース配信サービス「PR TIMES」の基盤強化、SaaS型ビジネス向けツールの「Jooto」及び「Tayori」の事業成長に向けた活動を中心に認知度向上並びに新たな顧客層の獲得を目指してまいりました。

「PR TIMES」の利用企業数は108,605社(前連結会計年度比15.2%増)に達し、国内上場企業のうち61.5%の企業にご利用いただいており、プレスリリース件数は2024年10月に過去最高となる月間39,816件を記録しております。また、配信先媒体数は10,892媒体、メディアユーザー数は27,521名、パートナーメディア数は261媒体となり、プレスリリースの月間サイト閲覧数は2023年8月に過去最高となる8,984万PVを記録しております。

タスク・プロジェクト管理ツール「Jooto」とカスタマーサポートツール「Tayori」は、有料利用数及び平均利用単価を重要指標として利用拡大及びサービス向上に取り組んでまいりました。その結果、「Jooto」の有料利用数は2,562社(前連結会計年度比40.2%増)、1社あたりの平均利用単価は9,945円(前連結会計年度比26.9%増)となり、「Tayori」の有料利用数は1,399アカウント(前連結会計年度比24.1%増)、1アカウントあたりの平均利用単価は7,490円(前連結会計年度比7.1%増)となりました。なお、「Jooto」は中間連結会計期間において一部料金プランを変更したことにより、有料利用数が増加しております。

これらの結果、当連結会計年度の売上高は8,003,435千円(前連結会計年度比17.1%増)、EBITDAは2,174,339千円(前連結会計年度比12.9%増)、営業利益は1,877,328千円(前連結会計年度比7.5%増)、経常利益は1,873,309千円(前連結会計年度比9.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,118,896千円(前連結会計年度比3.7%減)となりました。なお、当連結会計年度より、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額+株式報酬費用)を開示しております。

当社グループの報告セグメントにおける「プレスリリース配信事業」の比率が極めて高く、上記の事業全体に係る記載内容と概ね同一と考えられるため、セグメントごとの記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産の部)

当連結会計年度末における総資産は8,241,684千円となり、前連結会計年度末に比べ1,170,191千円の増加となりました。

流動資産におきましては、当連結会計年度末残高は6,595,773千円となり、前連結会計年度末に比べ1,195,407千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金の増加1,068,468千円によるものであります。

固定資産におきましては、当連結会計年度末残高は1,645,911千円となり、前連結会計年度末に比べ25,215千円の減少となりました。これは、有形固定資産の増加42,931千円、無形固定資産の減少75,939千円、投資その他の資産の増加7,792千円によるものであります。

 

(負債の部)

当連結会計年度末における負債合計は1,337,185千円となり、前連結会計年度末に比べ71,404千円の減少となりました。

流動負債におきましては、当連結会計年度末残高は1,335,681千円となり、前連結会計年度末に比べ70,283千円の減少となりました。これは主に、未払法人税等の減少130,473千円、契約負債の増加54,293千円によるものであります。

固定負債におきましては、当連結会計年度末残高は1,504千円となり、前連結会計年度末に比べ1,120千円の減少となりました。

 

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産合計は6,904,499千円となり、前連結会計年度末に比べ1,241,595千円の増加となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加1,118,896千円によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は5,605,260千円となり、前連結会計年度末に比べ1,068,468千円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は1,370,530千円(前連結会計年度は1,537,072千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,664,123千円、減価償却費134,834千円、投資有価証券評価損110,066千円、売上債権及び契約資産の増加額100,236千円、法人税等の支払額731,589千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は312,361千円(前連結会計年度は556,068千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出90,944千円、無形固定資産の取得による支出183,795千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は10,299千円(前連結会計年度は139,750千円の支出)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入11,328千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループでは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

当社グループのサービスは、受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

 前連結会計年度

(自 2023年3月1日

  至 2024年2月29日)

 当連結会計年度

(自 2024年3月1日

  至 2025年2月28日)

金額(千円)

前年同期比(%)

金額(千円)

前年同期比(%)

プレスリリース配信事業

6,568,057

115.1

7,320,312

111.5

 報告セグメント計

6,568,057

115.1

7,320,312

111.5

その他

268,909

683,123

254.0

合計

6,836,966

119.8

8,003,435

117.1

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、売上高成長率及び営業利益率を重視した経営を行っております。当連結会計年度は、主力事業であるプレスリリース配信サービス「PR TIMES」の利用企業数が108,605社に到達しました。売上高は過去最高を更新し、創業来18期連続で増収を達成しました。一方、費用については、システム関連費用及び一般管理費は適正な水準を維持しつつ、販売費は中長期的なサービスの認知拡大を目的とする広告宣伝や「PR TIMES」のリニューアルプロジェクトに係るシステム投資等で発生しました。加えて、権利行使条件の充足による株式報酬費用の計上もあったものの、営業利益率は23.5%となりました。

引き続き積極的かつ規律ある投資により、持続的成長と利益拡大の両立を目指してまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、内部資金又は短期借入により調達をしております。なお、資金の短期流動性を確保するため、複数の金融機関等と当座貸越契約を締結しており、当連結会計年度末における当座貸越契約の極度額の総額は600,000千円であり、借入実行残高はありません。

当社グループの運転資金需要の主なものは、人件費及び広告宣伝費等の販売費及び一般管理費であります。投資を目的とした資金需要は、継続的なソフトウエアの開発、事業拡大のための株式や事業の取得に関する投資等によるものであります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。