第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」という企業理念(PURPOSE)の下、お客様に最適なソリューションを提供し、新たなビジネス価値を創造するとともに、多様化への取り組みも推進してまいりました。これからも持続的で健全な成長の実現を目指すために、以下の施策を重点的に取り組んでいく所存であります。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 対処すべき課題

当社グループは、パーパスである「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」の下、コーポレートボイス「その声に、どうこたえるか。」を策定し、これを体現する取り組みを推進しております。

 


 

② 財務上の課題

当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結し多額の借入れを行っており、2025年2月期の有利子負債依存度は44.7%となっております。市場金利が上昇した場合及び財務制限条項に抵触した場合には、当社グループの存続に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、2025年2月末現在、連結財政状態計算書にのれんを947億円計上しており、総資産の54.3%を占めております。事業収益性が低下した場合等にはのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(3)経営上の目標とする経営指標

中期経営計画2025で掲げた3つの重点施策「①人材(総力4万人の最大活躍)」「②型化(データ活用の高度化)」「③共創(NEW BPOの領域開拓)」の実現に向け、多様な人材が長期に渡り活躍できる環境の整備と、生成AI等の活用による新たな価値の創造、並びに当社グループの強みとパートナー企業の知見・技術を融合した新たなBPO領域の開拓を推進してまいりました。

 


 

 

当社グループのビジネスを取り巻く環境が変化するなか、これからもお客様、従業員、そして社会の幅広い声(課題)に向き合い、持続的で健全な成功の実現を目指すために、以下の施策を重点的に取り組んでいく所存であります。

① 外注化ニーズへの対応

国内における生産年齢人口の減少が加速するなか、企業の人材不足は様々な業界に広がり、限られた人員をコア業務にシフトせざるを得ない状況が予測されます。その結果、バックヤード業務やコンタクトセンター業務といった部分のアウトソース化が加速しており、当社グループにおいても基礎業務のクライアント数が増加する等、外注化ニーズが顕在化してきております。当社グループは今後さらに拡大する外注化のニーズをしっかりと取り込み、クライアント企業数を拡大するとともに、クライアント企業に対して生成AIによるハイブリッド化、自動化や、コンサルティング、ナレッジを活用したサービス等の提供によって、一社当たりの取引規模の拡大も目指してまいります。

 

② 生成AIの活用

CRM事業において生成AIの登場は、新たな付加価値をもたらす「次世代コンタクトセンター」を実現する非常に大きなチャンスであると認識しております。「次世代コンタクトセンター」とは、お客様からのお問合せに生成AIが自動で応答し、生成AIでは対応できないケースのみオペレーターが回答するセンターであり、当社グループが有する年間約5億コールの良質なデータを通じて蓄積したナレッジが基盤となります。当社グループでは2024年からAI技術の導入・運営に特化した専門部署を設置して「次世代コンタクトセンター」の開発を進めており、2025年度中には一部業務においての実現を目指しております。「次世代コンタクトセンター」の実現により、ヒトが対応する従来型コンタクトセンターに比べて生産性の向上、さらにコンタクトセンターの運営コストも低減することで、一社当たりの取引額の増加と同時に、利益率の向上も目指してまいります。

 

③ マーケティング支援

次世代コンタクトセンターを通じて蓄積するナレッジは、お客様からの質問や意見等に含まれる消費者のニーズを把握するためのマーケティングデータとしても活用し、新たな付加価値の創出を目指します。生成AIによるVOC(Voice Of Customer)の目的に沿った自動収集・分析により、消費者のニーズを把握することでコンタクトセンターをプロフィットセンター化し、クライアント企業のマーケティングや広告宣伝等、売上増加に繋がるような新たなサービスを提供していきます。この取り組みによって、企業のマーケティング部門との取引を新たに獲得し、売上収益の拡大に繋げてまいります。

 

これらの施策の実現に向け、引き続き多様な人材が長期に渡り活躍できる環境の整備にも注力してまいります。当社グループでは、パーパスである「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」のもと、人的資本戦略として、「"プロフェッショナル"が集う、"働きがい"のある職場の実現」を掲げ、企業の持続的な成長・発展のために、働く「人」と「環境」に積極投資を行い、社員のワークエンゲージメントの最大化に取り組んでおります。現場と人事部門が連携し、人材育成や働き方に関する方針や施策の立案、社員教育やウェルビーイング推進、働き方改革など、様々な取り組みを推進してまいります。

 

 

(定量目標数値)

具体的な成長戦略については以下の通りであります。

 


 

(※) 1.スマートコンタクトセンター(SC)業務:クライアント企業とエンドユーザー間のコミュニケーション関連領域に係る業務。

2.その他売上収益は従来型コンタクトセンター業務に含む。

3.スマートビジネスサポート(SB)業務:クライアント企業の社内業務の支援に係る業務。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

(1)サステナビリティに関する方針・基本的な考え方

サステナビリティ推進基本方針

我々は「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」というパーパスを存在理由として定義しています。このパーパスのもと、人権・地球環境・社会課題への貢献を経営の重要な目的の1つとして、我々は持続可能な社会の実現を支えてまいります。本方針は当社のパーパス及び行動規範に基づいて制定しております。

① マテリアリティの特定と社会課題の解決

 社会の一員として、単なる企業価値の向上だけではなく、同時に社会の持続可能な成長を実現するためのマテリアリティを定義し、つくり出した価値を社会に還元することにより社会課題の解決に貢献していきます。

② 取締役会の役割

 取締役会は、サステナビリティに関する取り組みを監督し、中長期的な企業価値の向上及び持続可能な社会の実現をめざします。サステナビリティに関する重要事項はサステナビリティ推進委員会を経て、取締役会に付議又は報告の上決定します。

③ 社会とのコミュニケーションと信頼関係の構築

 様々なステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通じて社会における重要課題を認識し、関連情報の開示及び拡充を徹底しながら、解決策の検討と責任ある実践を行っていくことで、社会との信頼関係を継続的に構築・改善していきます。

④ 事業ネットワークの持続可能性の強化

 地球環境の保全や気候変動の緩和と適応、資源循環、生物多様性及び生態系の保護、人権と労働における基本的権利に対し、問題の未然防止及び継続的な配慮に努め、持続可能な事業活動を推進します。

 グループ全体の事業ネットワークにおける環境への配慮、人権の尊重、及び労働安全衛生への配慮に努めます。すべての事業および取引に関わる取引先に対して、当社グループのサステナビリティに対する考え方への理解と実践を求め、持続可能なネットワークの構築を目指します。

 各国の法令を遵守し、国際規範を尊重し、世界各国・地域の文化、伝統、慣習の理解に努め、公正かつ誠実な企業活動を展開します。

⑤ 社員への教育と啓発

 社員が安心して、健康で、自分らしく働ける多様性のある職場をつくると同時に、社会や地域コミュニティの一員としての意識を醸成するための教育・啓発活動を行います。社員一人ひとりが、パーパス及び本方針に基づいて定義された役割や目標を、職務として実行します。

 

 

(2)ガバナンス

当社グループは、2022年6月に取締役会の諮問組織として「サステナビリティ推進委員会」を立ち上げ、最高サステナビリティ責任者(CSO)を配置し、同時にCSOの配下にサステナビリティ推進のための常設の専任組織となる「サステナビリティ推進部」を発足いたしました。また、2023年4月には「サステナビリティ推進基本方針」を制定いたしました。

サステナビリティにかかわるリスクマネジメントと、当社グループのリスクマネジメントを密接に連携させ、当社が2019年に制定したパーパスである「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」ことを実現できる推進体制を構築し、我々が生み出す様々な価値を社会へ還元してまいります。

当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制の状況を模式図で示すと以下の通りとなります。


(3)リスク管理

サステナビリティに関するリスクは年に1回以上、サステナビリティ推進委員会で議論され、全体リスクとともに代表取締役が議長である取締役会に報告が行われます。取締役会では総合的な当社グループのリスクを把握し、重要度を判断し、中長期のロードマップに反映させるとともに施策の実行状況の監督を行っております。

当連結会計年度の開催実績と討議内容

メンバー

委員長:社長執行役員CEO

委員 :経営企画・事業戦略担当常務執行役員

サステナビリティ担当常務執行役員CIO・CTO・CSO・CRO・CCO

CISO・CPO・CRO

    財務・総務担当執行役員CFO

    社長執行役員付理事

    常勤監査役

主な議案

・人権デュー・デリジェンスの結果に関する対応方針

 

 

 

(4)人的資本経営に関する取り組み

① ガバナンス

 人的資本を最も重要な経営資本と位置づけ、「企業成長の原動力は従業員」としてその価値を最大化するためのガバナンス体制を構築しています。人的資本経営に関する戦略は、人事部門が主導で、取締役会の諮問組織である「サステナビリティ推進委員会」と、連携して策定されます。「人と働き方の多様性拡大」と「人材のパフォーマンス向上」を最重要課題として掲げています。具体的には、女性の活躍推進や多様な働き方の確保を通じて、全社員が最大限に能力を発揮できる環境を整備しています。

 

② 戦略

 企業の持続的な成長のために、働く「人」と「環境」に積極的に投資を行っております。社員のワークエンゲージメントを最大化させ、「“プロフェッショナル”が集う、“働きがい”のある職場の実現」に取り組んでおります。人的資本の数的・質的向上を図ることによって、サービスの質を向上させ、顧客に提供し、収益の向上につなげ、社会に還元するというサイクルを確立し、企業理念(PURPOSE)の実現を目指しております。


 

③ リスク管理

 人的資本に関するリスクは、リスクマネジメント委員会で定めた「人材確保」「人材育成」の他に、定期的な社員アンケートを通じて把握し、経営判断に反映させております。従業員の意見や要望を基に、職場環境や制度の改善を図ることで、社員の働きがいを向上させることを目指しております。また、健康経営を推進するために、健康経営戦略マップを策定し、健康投資で解決したい経営上の課題と、その取り組みや効果のつながりを開示しております。これにより、社員の健康意識を高め、働きやすい環境を整備しております。

 

 

④ 指標及び目標

 当社及び主要な連結子会社ベルシステム24は、戦略実現に向けて事業部門と人事部門が連携し、女性活躍推進や人材の多様性確保に関する方針や施策の立案、社員教育や健康経営推進等、6つのテーマにおいて様々な取り組みを実施しております。

 なお、以下に示す通り、人的資本戦略の実現に向けた取り組みと人事施策の充実度が総合的に評価され、一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム、HR総研及びMS&ADインターリスク総研株式会社が主催する「人的資本調査2024」において、回答企業206社のうち上位30位に入り、「人的資本経営品質2024シルバー」に2年連続で認定されました。

(ご参考)

  ■ベルシステム24、「人的資本調査2024」にて「人的資本経営品質(シルバー)」に2年連続認定

      (2025年2月)https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20250220/ 

 

a 多様な人材の活躍推進

≪指標≫

2031年までに女性役員比率25.0%及び女性管理職比率30.0%の目標を設定しております。これにより、経営層における女性のリーダーシップを強化し、多様な視点を経営に取り入れることを目指しております。また、障がい者雇用率は法定目標値2.50%の維持を目指しております。

≪主な取り組み≫

・ダイバーシティ・マネジメントの専任組織の設置:

人事部門にダイバーシティ・マネジメントの専任組織と全社横断のD&Iプロジェクトを設置し、人事部門と事業部門が一体となって、ダイバーシティに関する経営方針の策定、女性社員のタレント・パイプライン拡大に向けた施策の立案と実行を推進しております。

・女性社員を対象とした支援制度

女性社員向けに役員メンター制度、キャリアカウンセリング、ビジネススキル強化研修等を実施しております。これにより、女性のキャリアアップを支援いたします。また、全管理職の目標管理(MBO)項目に、配下の女性社員の育成プランを作成することを必須化としております。これにより、女性のリーダーを育成し、組織内での多様性を高めてまいります。

・障がい者雇用に関する全社的な取り組み

全社横断のプロジェクトを設置し、障がい者雇用に係る情報や各職場の好事例を横展開する専用イントラサイトの開設や、障がい者雇用について専門家から学ぶカンファレンスの実施等、組織間で連携して障がい者の方々にとっても働きがいを高められるような職場づくりに注力しております。

≪成果≫

これらのD&I推進体制と幅広い取り組みが評価され、D&Iに関する研修・コンサルティング、ダイバーシティ採用支援等を手がける株式会社JobRainbowが実施する「D&Iアワード」において、最高評価である「BEST WORKPLACE」に4年連続で認定されました。また、障がい者雇用率は法定目標を超え3.42%に達しました。障がい者の能力開発や処遇改善を積極的に行う等、優良な取り組みを行う企業として、東京都が主催する「令和6年度障害者雇用エクセレントカンパニー賞(産業労働局長賞)」を受賞いたしました。これらの成果は、多様性推進に対するコミットメントを示しております。

(ご参考)

  ■ベルシステム24、D&I認定制度「D&Iアワード2024」にて「BEST WORKPLACE」に認定

      (2024年12月)https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20241218/ 

  ■ベルシステム24、東京都主催の「令和6年度障がい者雇用エクセレントカンパニー賞 (産業労働局長賞)」

      を受賞

   (2024年11月)https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20241121/

項目

補足

女性管理職比率

22.5

2025年3月1日時点の提出会社及び主要な連結子会社ベルシステム24の合算値

女性役員比率

18.2

障がい者雇用率

3.42

2025年3月1日時点の提出会社及び主要な連結子会社ベルシステム24、ベル・ソレイユの合算値

 

(注)女性役員比率は、取締役、監査役、執行役員のうち女性が占める割合としております。

 

b 豊富なキャリアパス

≪指標≫

社員の主体性を重視し、自らの意思でスキル・経験蓄積ができるよう複数の施策を整備し、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。特に「キャリアマップ制度」を全正社員に必須化し、効果的・効率的な育成を実現します。また、組織と人材のアジリティを高め、VUCAの時代においても企業として成長し続けることを目的に、組織を跨ぐローテーションや異なる経験を積むための機会提供にも積極的に取り組んでおります

≪主な取り組み≫

・キャリアマップ制度

「キャリアマップ制度」では、事業運営における必要な職種を設定し、職種ごとの役割と必要となる知識やスキルを定めております。また、それらを体系的に身に着ける研修も整備し、30職種を越える幅広いキャリアへチャレンジできる環境を整えております。

・自己申告制度

年1回の「自己申告制度」を導入し、従業員が自らのキャリア目標や希望を明確にする機会を提供しております。これにより、従業員のキャリア意識を高めてまいります。

・Skip Level Meetingの実施

二階層上の役職者もしくはライン上長以外の役職者がメンタリングする「Skip Level Meeting」を年2回実施し、従業員が直属上長以外と直接コミュニケーションを取る機会を設けております。これにより、キャリアの方向性についての視野を広げることが可能であります。

・社内公募制度

自らが思い描くキャリアや、異なる職務に挑戦できる機会として、「社内公募制度」を導入しております。

・各種ローテーション施策

異なる環境下において自身のスキル・経験を再現できる汎用力を強化するための「本部間異動」、グループ会社出向や海外駐在及びコーポレート部門への配置等、多様な専門知識とスキルを身に付けるための「人事主導配置施策」を実施しております。自分の核となる深い専門性を備えた領域を持ちながらも、担当領域に直接・間接的に関係する周辺領域について幅広い知識・知見を持つ人材の育成を推進しております。

≪成果≫

2025年2月時点で、「キャリアマップ制度」や「自己申告制度」は、全正社員への導入が完了し、Skip Level Meetingは希望者全員への実施が完了いたしました。また、2025年3月時点で、61人が組織(管掌)や職種を越えたローテーションを経験しております。

項目

補足

ローテーション数
(「社内公募制度」「人事主導配置施策」を含む)

61

(3.0%)

2025年3月1日時点の管掌を超えた異動者数

 

 

c 職種・役職別専門力強化

≪指標≫

人材育成方針として「個人と組織のプロフェッショナル化」を掲げ、中期経営計画2025の重点施策を実現するため、これからのビジネスで求められるプロフェッショナルとリーダーの継続的な成長を支援しております。

≪主な取り組み≫

・「キャリアマップ制度」に基づく研修プログラム

職種別×役割別に、求められる知識やスキルを可視化し、それらを体系的に習得するための研修プログラムを整え、従業員の自律的なキャリア形成を促しております。30種を超える職種と90種の専門研修コンテンツにより、すべての職種と階層でRE-SkillingとUP-Skillingを推進しております。

 

 

・専門研修

オンラインを通じて教育機関が提供する「MOOC(Massive Open Online Courses)」プログラムや、デジタル・データ活用を推進する専門人材育成プログラムを実施し、従業員が必要なスキルを身につけられるよう支援しております。

次世代経営幹部候補人材には将来を見据えた戦略思考や行動変容を促すため、他流試合形式のエグゼクティブプログラム等の機会を設けております。従来の階層別研修やフォローアップ研修に加え、人材や志向性の多様化にあわせ、教育制度を進化させ、人材の高度化に取り組んでおります。

・デジタル人材公募

中期経営計画2025重点施策の1つである「データ活用の高度化」を推進する目的で、人事部門に「デジタル人材戦略部」を新設し、デジタル・データに関するスキル・ノウハウ・資格を有する人材を公募の上配置し、従業員が自らのキャリア目標を明確にし、スキル研鑽を行っております。

≪成果≫

具体的に以下のような研修で専門性を研磨しております。

・デジタル・データリテラシー基礎研修:約800名が参加し、デジタルスキルを習得いたしました。

・統計研修・Power BI研修:約200名が参加し、データ分析能力を強化いたしました。

・プロジェクトマネジメント研修:約100名が参加し、プロジェクト管理スキルを向上させました。

また、「デジタル人材戦略部」では、クライアント企業から受けるデジタル・データに係る案件相談・営業提案のほか、サービス高度化に向けたデータ分析支援等を行うことで、事業成長の実現と社内人材の育成機関としても機能を拡充させております。

 

d 安心な職場・健康増進

≪指標≫

従業員の健康づくりを基礎とし、健康経営を推進することで、働きやすい環境を整備することを目指しております。健康経営戦略マップを体現し、「健康経営優良法人」の継続的認定を目指してまいります

■健康経営戦略マップ


 

≪主な取り組み≫

・健康経営戦略マップの策定

経営トップによる健康経営宣言や健康経営戦略マップの策定等、健康経営について明文化するとともに、健康投資に関する情報開示を積極的に行っております。

・eラーニング・セミナーの実施

管理職向けに、健康経営に関連するeラーニングや、「女性の健康とウェルビーイング」をテーマとした社内セミナーの開催等、健康に関する学びの機会を提供し、健康意識の向上を図っております。

・健康イベント実施と発信

社内ネットワーキングコミュニティでのチーム対抗ウォーキングイベント等のスポーツ関連の取り組みや、社内での健康増進に関する発信、管理栄養士の資格を持つ従業員による食生活に関する発信等を定期的に行うことで、従業員の健康づくりを啓発しております。

≪成果≫

従業員の健康状態と職場環境の安全性を向上させる施策に取り組んだ結果として、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2025」に2年連続で認定され、また、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に3年連続で認定されました。

(ご参考)

  ■ベルシステム24、「スポーツエールカンパニー2025」に2年連続で認定

   (2025年2月)https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20250204/

  ■ベルシステム24、経済産業省と日本健康会議より「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に3年連

  続で認定

   (2025年3月)https://www.bell24.co.jp/ja/news/holdings/20250312/

 

e 働き方の多様性拡大

≪指標≫

働き方の多様性を促進するため、仕事と育児や介護を両立している従業員だけではなく、全従業員が自ら望むライフスタイルに合わせた働き方を選択できる環境・制度を整え、ワークライフバランスを保ちながらもパフォーマンスを最大限発揮できるような組織づくりを目指しております。

≪主な取り組み≫

・フレックスタイム制度

コアタイムのないフル・フレックスの制度を導入し、社員のワークライフバランスの実現を支援しております。

・モバイルワーク制度

仕事の都合や個人のライフスタイルに合わせて、最適な環境を選んで働くことで、生産性の向上と、社員の健康や生活の満足度を向上するためのモバイルワーク制度を導入しております。

・勤務地限定型制度

社員のワークライフバランスを支援し、安心して働ける職場づくりのために、転居を伴う異動の対象とならない働き方を選択できる制度を導入しております。

・副業制度

スキルアップや収入アップ等を目的として、社内副業制度としての「ダブルジョブ制度」と社外副業制度としての「ダブルワーク制度」を全正社員に導入しております。

≪成果≫

従業員の働き方の多様性を推進した結果として、2025年3月1日時点で、勤務地限定型を選択する社員が348名、社内外副業制度の利用者数も87名となっております。

項目

補足

勤務地限定型社員数

348

(17.1%)

2025年3月1日時点の勤務地限定型社員数

社内外副業人数

87

(4.3%)

2024年3月1日から2025年2月28日の間で社内外副業を

実施した延べ人数

 

(注)1. 提出会社及び主要な連結子会社ベルシステム24の合算値であります。

2. 割合は、提出会社及び主要な連結子会社ベルシステム24の2025年2月28日時点の正社員を母数としております。

 

 

f 市場競争力のある諸制度

≪指標≫

従業員の働きがいを高めることは重要なテーマと捉え、ジョブ型人事制度を基軸として、多様性を重視する制度整備に努めております。メリハリのあるパフォーマンス評価やフィードバック、市場動向を踏まえた報酬改定等、従業員の働きがいやモチベーションを向上させる制度整備とともに、適正な労働分配を進めてまいります。

≪主な取り組み≫

・正社員向け報酬制度の改定

市場の賃上げ動向を踏まえ、新卒新入社員の初任給見直しと既存社員のベースアップを行いました。また、基本給の下限額・上限額を見直し、昇給の柔軟性を向上させるとともに、パフォーマンス評価に応じた昇給率を加算し、さらに、特定地域の勤務地係数を上方修正し、公正さを確保いたします。また、連結営業利益に連動する賞与制度を、事業成長に対応して賞与水準も増加する仕組みに改定いたします。これにより、報酬制度の市場競争力を改善し、優秀な人材の獲得と保持を目指してまいります。

・正社員向けタレントマネジメント施策

人的資本の強化を重視し、従業員一人ひとりに向き合う取り組みを通じて市場競争力を向上させております。「People Review(PR)」と「Organization Review(OR)」は、その中心にある施策であります。PRではマネジメント層が集い、配下社員の育成プラン及び配置案を議論しております。ORでは、事業計画に基づく組織設計及びPRでの議論結果を元に、翌事業期の配置を決定しております。複数の管理職が集まって議論、策定していくことで、本人の成長につながる最適な配置を実現し、エンゲージメント向上に繋げております。

・契約社員向け諸制度

本人の希望に基づき、入社6ヶ月経過等の条件を満たせば、無期契約社員として採用する「無期雇用制度」や、得意なことを活かしながらキャリアアップを目指す「スペシャリストコース」の設置、また向上心の高い契約社員向けに「昇進ステップを多段化」し、働き方に合わせた緩やかなスロープをつくる等、様々な領域で能力・スキルを持つ人材を発掘するとともに、働きがいを高め、定着率を向上させております。また、「正社員登用制度」により、全社として年1~2回選考・審査を行い、多様な職種で活躍する人材の雇用創出にも取り組んでおります。

≪成果≫

年2回実施しているエンゲージメントサーベイで、当事業年度は総合スコアが0.1ポイント向上し、少しずつ改善の方向に向かっております。また、2025年3月時点で、非正規社員のうち無期契約社員が占める割合は前事業年度に比べて0.81%増加し、雇用の安定性が向上しております。

 

 

(5)気候変動/TCFD提言への取り組み

① ガバナンス

当社グループは、2019年にマテリアリティを取締役会で議決いたしました。我々のパーパスである「イノベーションとコミュニケーションで社会の豊かさを支える」を実現するため、自社の活動を社会へのインパクトと結び付けて、マテリアリティを定義いたしました。定義の過程では自社の戦略的方向性と共に外部の様々な基準等を参照して、特に関連のある86項目の母集団をまず作成し、さらにステークホルダーの皆様や識者との議論を通じて最終的に「人材と働き方の多様性」、「人材のパフォーマンス向上(質と生産性)」、「リスクマネジメントの高度化」、「ビジネスモデルの革新(収益モデルの進化)」、「地域社会への参画(社会課題の解決)」の5つといたしました。

マテリアリティの中では解決すべき社会課題の1つとして環境保護を定義しております。環境保護を推進するにあたり、2019年に「環境方針」、また、2022年には「気候変動に対する方針」を制定いたしました。気候変動への対応がグローバルで進む中、当社グループは気候変動が経営や社会に及ぼすインパクトを評価し、カーボン・ニュートラルを柱とした積極的な対応を推進しております。また、これらのマネジメントを適切かつ効果的に行うガバナンス体制を構築しております。気候変動関連課題の審議・議論を行うために取締役会が設置したサステナビリティ推進委員会の委員長は代表取締役 社長執行役員が務めており、取締役会は気候変動に関するリスクや課題のモニタリング及び監督を行っております。当委員会は主にサステナビリティ推進部及びCSO(最高サステナビリティ責任者)から報告を受け、気候変動関連の課題をモニタリングし、対応の方向性を議論しております。

また、当社グループにおける経営リスクマネジメントに関する全体・個別方針の策定、経営リスクアセスメントの実施とその結果を踏まえたトップリスクへの対応方針の策定等を行うリスクマネジメント委員会と連携し、当社グループ全体のリスクマネジメントと整合したガバナンスを行っております。

 

当社グループの気候変動に関するガバナンス体制の状況を模式図で示すと以下の通りとなります。


 

② 戦略

当社グループのビジネスモデルは、いわゆるコール・センターのモデルが売上のほぼすべてを占めております。約40拠点のうち自社資産は2拠点であり、それ以外は賃貸契約のテナントとして、すべて屋内での操業を行っております。オペレーターは各拠点へ通勤して業務を行っており、一部は在宅型の業務となっております。売上と利益は基本的に従業員数及び拠点数に比例している度合いが大きいモデルとなります。将来の気温上昇が4℃のシナリオと2℃未満のシナリオを選び、リスク・機会の分析を行い、今後の戦略への影響を評価いたしました。戦略への示唆としては「移行コスト増加により生じる可能性のある、価格上昇を原因とする需要減少は軽微である」「拠点被災等の物理的被害の増加による稼働率低下はコントロール可能な余裕範囲に留まる」「気温上昇による当社グループのサービスへの需要及び収益への直接の影響は小さいが、気候変動への対応不足によるブランドや人材採用への影響はコントロールを強化すべき要素である」「総合的にみて当社グループが気候変動に対して積極的な経営姿勢を持つことにより機会がリスクを上回るととらえる」とし、いずれのシナリオにおいても、当社グループの財務に対する大きなマイナスのリスクは短期的(~2025年)にも中長期的(~2040年)にも小さいと判断いたしました。当社グループの事業モデルは、環境への或いは環境からの影響が極めて小さいと考えております。一方で、社会的責任や営利事業の本来あるべき姿を真摯に考え、当社グループは気候変動について積極的な対応を今後も続けてまいります。

 

③ リスク管理

気候変動担当取締役は取締役会のメンバーとしてサステナビリティ推進委員会からの報告を受けることで課題のモニタリングを行います。また、当社グループのリスク管理を統括するCRO(最高リスク責任者)も配置され、CSO(最高サステナビリティ責任者)から気候変動を含めたすべてのサステナビリティのリスクからの報告を受けることによって、気候変動のリスクを管理しています。CSOは配下に常設の専任部門としてサステナビリティ推進部を持ち、CSOは当部を通じて日常的に気候変動に関する課題やリスクをモニタリング・監督しております。サステナビリティ推進委員会は代表取締役 社長執行役員を委員長として、メンバーは取締役 常務執行役員(経営企画、気候変動担当)、常務執行役員CIO・CTO・CSO・CRO、執行役員CFO、社長執行役員付理事及び常勤監査役で構成されております。当委員会の運営担当役員はCSOであり、運営事務局はCSO配下の常設専任部署であるサステナビリティ推進部が行っております。当委員会は主にサステナビリティ推進部及びCSOから報告を受け、気候変動関連の課題をモニタリングし、対応の方向性を議論しております。

 

④ 指標及び目標

当社グループは2022年に「気候変動に対する方針」を制定し、2040年までのカーボン・ニュートラル化(ネット・ゼロ)を目指しております。中期目標としては、2025年までに当社グループの温室効果ガス排出量を2019年対比で30%削減、2030年までに2019年対比で50%削減することを定めております。その実現に向けた具体的な各年度の目標値や実績値は定期的に開示を行ってまいります。

気候変動/TCFD提言への取り組みの詳細については、当社グループの公式ホームページに掲載しております。

(URL)https://www.bell24.co.jp/ja/csr/environment/climatechange-index/climatechange/

 

 

3 【事業等のリスク】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)経営リスクマネジメント体制

① 当社グループにおける経営リスクマネジメントは、「『経営戦略と経営リスクは表裏一体』という考えの下、マテリアリティを起点として、当社グループの健全で持続的な成長を妨げる重要な経営リスクを適切にコントロールし、マテリアリティの実現可能性を高めることにより、企業価値の向上を実現すること」を目的と掲げ、全社的リスクマネジメント(Enterprise Risk Management : ERM)体制を整備しております。推進体制として、取締役会の諮問機関である「リスクマネジメント委員会」がグループ全体のリスクの管理と対応方針の決定を行います。委員会は決定内容を取締役会に付議し、取締役会が最終的な方針を決議します。また、取締役会は「リスク管理規程」を制定し、それに従ってCRO(最高リスク責任者)を配置し、CROが統括するリスクマネジメント部が規程の主管部署となり、具体的なリスクマネジメントをグループ全体で横断的に行っております。

 

② 当社グループの経営リスクマネジメント体制を模式図で示すと以下の通りとなります。

 


 

 

(2)経営リスクマネジメントプロセス

① 当社グループは、グループ横断的に様々なリスクを把握し、発生頻度と想定影響度等のリスク特性を評価し、統合的に管理することを基本的な方針としております。その中で、特に当社の財務状況や社会的信用等へ大きな影響を与える重要なリスクを特定し、連結ベースで管理・対策を行っております。

平時における対応といたしましては、各リスクオーナー・リスク管理部門がリスク低減等の施策を実施し、そのリスク管理状況や各部門・会議体・委員会において把握している経営リスクに関する情報をCROに連携することで、CROが経営リスクの変動状況を把握することを可能にしております。

また、有事の際には、リスクマネジメント委員会を速やかに開催し、発生したリスクの関連部門で構成される対応組織(危機対応組織)を組成し、CROによる指揮の下、初動対応等を実施し、早期復旧・被害最小化に取り組むことにしております。

 

② 当社グループのリスクマネジメントプロセスを模式図で示すと以下の通りとなります。

 


 

 

(3)当連結会計年度におけるリスクアセスメント

① リスクマネジメント委員会は、経営リスクアセスメントの結果を分析し、抽出された各リスクを適切に管理するため、次の通り分類することにしております。

ⅰ トップリスク:経営リスク及び主要リスクのうち、取締役会が特に注力を必要とするリスク

ⅱ 経営リスク :当社グループにおける当社グループの健全で持続的な成長やマテリアリティの実現を妨げるおそれのあるリスク

ⅲ 主要リスク :当社グループの各事業の運営において発生するリスクであって、定常的な管理を必要とするリスク

 

② 当連結会計年度においては、当社グループの健全で持続的な成長やマテリアリティの実現の妨げとなる経営リスクを考慮した経営リスクアセスメントを実施し、リスクマネジメント委員会(2回開催)での議論・承認を経て、当社グループにおける重点リスクの更新を行った後、重点リスクのうち、取締役会が特に注力を必要とするリスクをトップリスクとして選定しております。トップリスクについては、リスクごとの責任者として執行役員等をリスク・オーナーとして指名するほか、重点リスクについては、各リスクに応じた主管部門を定めております。リスク・オーナー及び主管部門は、リスクマネジメント部と連携のうえ、それぞれのリスクの低減を図るとともに、当社グループを取り巻く社会環境、経営戦略の進捗状況、その他リスクに与える影響を考慮し、それぞれのリスクが当社グループの経営に与える影響度の変化を把握し、実際に経営リスクに直面した際には、実行すべき対応を講じることとしております。

また、抽出された各リスクの「当社グループの事業に与える影響度」及び「発生可能性」の観点を踏まえたリスクマップを策定いたしました。有価証券報告書提出日現在におけるリスクマップは、下図の通りであります。

 


 

 

(4)トップリスク

 有価証券報告書提出日現在における当社グループにおけるトップリスクと判断したリスクは、次の通りであります。

 トップリスクは、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクと考えております。なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

人材

・人材確保

・人材育成

 当社グループの持続的な成長のためには、経営者、優秀な人材、コンタクトセンターで直接サービスを提供するオペレーター等、必要とする人材を採用し、それら社員のエンゲージメントを最大化すること、そして人材の質的向上が経営の重要課題であると考えております。具体的には、採用計画に基づく年間の採用活動、体系化された各種教育・研修の実施等を通じた人材育成に取り組むほか、多様な人材が活躍するための人事制度、ダイバーシティー経営、健康経営の推進を図る等の施策を行うことで、優秀な人材が集まり、継続して就業し、活躍しやすい環境を整備しております。

 しかしながら、必要となる人材を計画的に採用または育成することができない場合や、人材の流出を防止できない場合、当社グループの事業成長、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

情報

・情報漏洩・改ざん

・個人情報保護

・サイバー攻撃

 当社グループは、事業運営に必要な役職員に関する情報、営業上の情報はもとより、クライアント企業から預託を受けた個人情報を含めた各種情報に接しております。そのため、当社グループの事業を継続して運営するにあたり、各種情報の滅失、毀損、外部漏洩、改ざん等を防止することは、当社グループの経営の重要課題と位置づけ、情報保護管理体制の維持・運用を図るため、「個人情報保護方針」、「情報セキュリティ方針」をはじめとした情報保護に関する規程類を整備するとともに、当社グループ全役職員に対する周知、教育を継続して実施しております。

 さらに、昨今の高度に発達した情報化社会においては、マルウェア感染・サイバー攻撃が日々高度化、巧妙化していることから、サイバー攻撃等による各種情報の滅失等のほか、当社グループにおいて利用しているシステムの停止、当該システム停止による事業の中断等が生じる可能性があり、サイバー攻撃等への対処についても当社グループの経営の重要課題となっております。当社グループにおいては、サイバー攻撃等への防止、発生時の迅速な対応を実現するため、CIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー:最高情報責任者)の配下に、情報リスクマネジメントの組織を設けるとともに、専門組織としてComputer Security Incident Response Team(CSIRT)を設置しております。

 当連結会計年度においては、更なる情報リスクの低減を図るため、外部の専門家を交えて情報リスクに関しての重大事象を想定した際の不備についての検証を行うとともに、情報リスクのコントロールを専任する情報危機管理部を設置しております。

 しかしながら、完全なる各種情報の滅失等の防止、サイバー攻撃の完全なる排除は困難であることから、万が一、各種情報について滅失等にかかる事故やサイバー攻撃による事業の中断等が発生した場合、各種情報の主体主等からの損害賠償請求、契約解約や社会的信用の失墜等により、当社グループの事業、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

・システム・業務停止

 当社グループでは、継続した在宅ワークの実施やDXを活用した業務の効率化のため、営業及びオペレーションの運用管理から人事労務管理及び経理全般に至る業務遂行において、インターネット通信網やシステムを活用しております。そのため、インターネット通信網の利用やシステムの提供を受けるにあたっては、事前にインターネット通信網やシステムの信頼性を調査するとともに、必要となるシステム保守を定期的に実施しております。

また、当社グループが保有しているシステムについては、計画的な保守のほか、システム設備の老朽化への対処として、定期的な交換等の措置を行うことで、当社グループの事業が可能な限りの停止、遅延することのないように努めております。

 しかしながら、自然災害、予測を超えた不正アクセス、マルウェア感染によるシステムへの攻撃等によりインターネット通信網やシステムに障害等が生じたことにより、当社グループの事業が停止、遅延した場合には、これにより発生した損害の賠償を求められる可能性があるほか、当社グループの事業への信頼喪失を招き、結果として、当社グループの事業活動、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

 

戦略

・事業戦略

・投資・提携

・新ビジネスモデル

 当社グループは、クライアント企業にとって付加価値の高いコンタクトセンターサービスの提供(「スマートコンタクトセンター業務」)と、クライアント企業の社内業務の支援を行うサービス(「スマートビジネスサポート業務」)を行っております。近年の生成AI等の技術革新により、クライアント企業のデジタル化の進展、エンドユーザーのITリテラシー向上に伴う電話による問い合わせニーズの伸びが限定的であるなど、コンタクトセンター事業を取り巻く環境は激しさを増しております。そのため、当社グループでは、生成AIとVOCを積極的に活用することにより更なる付加価値を創出し、当社グループのビジネス及び収益の拡大を目指しております。また、スマートコンタクトセンター業務とスマートビジネスサポート業務の提供のみならず、新たなBPO領域の創出、その実現に向けて必要となるパートナー企業への投資、業務提携を実施しております。

 特に、パートナー企業への投資、業務提携の実施にあたっては、事前にパートナー企業の財務内容や契約内容等の審査を行い、リスクを検討したうえで決定しております。また、投資、業務提携後は、当初想定した事業計画等の達成状況を定期的にモニタリングしております。

 しかしながら、デジタル化・生成AI等のテクノロジーの急速な進化、それら技術の活用による従来の電話対応業務の急激な減少、同業他社による新事業の創出等に対する、当社グループの技術対応の遅れ、コンタクトセンター事業の優位性確保や新たな事業の創出の停滞により、当社グループの事業成長に影響を及ぼす可能性があります。また、パートナー企業への投資、業務提携に関し、当初想定していた成果が得られないと判断された場合には、減損等が発生するほか、業務提携の解消による事業終了により、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

・海外事業

 当社グループは、ベトナム、台湾、タイに進出し、事業活動を行っているほか、海外で事業を行っている企業との取引を実施しております。そのため、該当する国・地域の政治、経済、社会情勢等に起因して予測を超えた事態や法令・規制の変更等による送金停止等のカントリーリスクを有しております。

 そのため、必要に応じて、伊藤忠商事株式会社の現地法人と情報連携を図り、該当する国・地域の状況を可能な限り把握するとともに、当社グループの駐在員からの密な情報提供を受けることで、リスクの軽減に努めております。

 しかしながら、地政学リスクが顕在化した場合、完全に回避できることが不可能であることから、これらの国・地域における当社グループの事業遂行の遅延・不能のほか、取引先企業による支払や納期の遅延、サプライチェーンリスクによる価格の高騰等により、当社グループの財政状況や業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、ベトナム、台湾、タイに進出するにあたって投資した費用の回収が容易ではなくなることから、当社グループの財政状況や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

リスク

カテゴリー

トップリスク該当項目

リスクと影響

影響度・

発生可能性

サステナ

ビリティ

・気候変動

 気候変動問題は世界共通の課題であり、当社グループも経営の重要課題の一つとして捉え、事業活動を通じた環境負荷の低減に向けた活動を展開しております。当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言へ賛同するほか、2022年4月開催の取締役会において、2025年、2030年、2040年までの温室効果ガス(GHG)排出量削減率の具体的な目標値を策定し、決議いたしました。

 なお、気候変動にかかるリスクの詳細については、当社グループの公式ホームページに掲載しております。

(URL)

https://www.bell24.co.jp/ja/csr/environment/climatechange-index/climatechange/

・人権

 当社グループは、日本国内のほか、ベトナム、台湾、タイにおいて事業活動を行っており、当社グループの役職員のみならず、取引する顧客の役職員の方々も多国にわたっています。近年、先進国を中心として人権への関心が高まっており、またステークホルダーによる人権への高度な対応要求は、サステナビリティの観点により、当社グループの事業活動に影響するものと考えております。当社グループにおいては、人権方針を制定し、公式ホームページにて公表し、役職員への周知活動を継続して実施するほか、適宜、人権デュー・デリジェンスを実施しております。

 しかしながら、当社グループにおいて人権侵害に該当する事象が発生した場合は、株価の下落、顧客との取引の停止、当社グループの社会的信用の失墜等により、当社グループの事業成長及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境の改善や各種施策の効果もあり、個人消費や設備投資の持ち直しが続いていることから緩やかな景気回復の動きが見られました。一方で、欧米における高い金利水準の継続や中国における不動産市場の停滞の継続による海外景気の下振れ、米国の今後の政策動向や中東地域をめぐる情勢等が我が国の物価・経済に影響を及ぼし得るため注意が必要な状況が続いております。また、各企業の業況が回復しているのに伴い業種や規模に関わらず人手不足への対応が課題となっております。

そのような環境の下、当社グループの主力事業であるCRM(Customer Relationship Management)事業においては、生成AI等の新技術を活用し、高い利益率が見込めるソリューションモデルへの変革が重要となっております。こうした市場環境の中、顧客接点多様化に伴う対応領域の拡大とデータ活用により、業務品質や付加価値の向上に努めるとともに、新たな事業領域の開拓を推進しております。

当連結会計年度においては、中期経営計画で掲げた「人材(総力4万人の最大活躍)」「型化(データ活用の高度化)」「共創(NEW BPOの領域開拓)」の3つの重点施策を加速させることで、持続的な成長の実現を目指してまいりました。

型化(データ活用の高度化)においては、当社が1,300社以上の顧客のコンタクトセンターや営業代行、事務処理等のBPOサービスを手掛ける中で蓄積したナレッジやフレームワークを応用した、業務プロセスの変革を企画・実行するサービス「BPRコンサルティング」の本格的な提供を開始いたしました。100名以上のBPRコンサルタントによる複合的なアプローチにより、実現性が高い業務改革を行い、既に業務工数の削減によるコア業務時間の増加、業務のデジタル化といった成果を上げています。さらに、当社は生成AI活用の基となるナレッジのデータ化に悩むクライアント企業向けに、生成AI導入の基盤構築に向けた「ナレッジCXデザインサービス」の提供を開始いたしました。コンタクトセンターに蓄積する応対履歴、マニュアル、FAQのほか、オペレーターの個人メモや暗黙知等、点在する生成AI活用に必要不可欠な非構造化データを集約し、生成AIが理解しやすい検索可能なテキストデータとしてナレッジ化する仕組みをデザインします。コンタクトセンターにおけるリアルタイムでのナレッジ運用やその定着化を実現する実践プロセスである「KCS(ナレッジ・センター・サービス)」に準拠した運用設計と、当社の専任コンサルタントによる独自メソッドを組み合わせ、コンサルティングからナレッジマネジメントシステム導入、運用設計、運用体制構築まで一気通貫で支援することで、CX向上への貢献を目指します。

また、厚生労働省が企業に対策を義務化する方針を公表したカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)対策への対応に備え、クライアント企業に最適かつ具体的なカスハラ対策をトータルで支援する「カスタマーハラスメント対策サービス」の提供を開始いたしました。カスハラ対策のベースとなる方針・マニュアルの策定から、従業員向けのカスハラ研修の実施、カスハラ対策を強化する音声認識・感情解析やSNS監視等のソリューションの提供まで、対策の段階ごとに7つのサービスメニューを設定することで、コンタクトセンターでのカスハラ対策に特化した支援サービスを一気通貫で提供しており、既に多くのクライアント企業に導入いただいております。

共創(NEW BPOの領域開拓)においては、今後の労働人口減少による人材不足や、個社における生成AI等の投資が難しい内製のコンタクトセンターにおいて、コスト削減と効率化を目的としたアウトソースや提携等といったニーズの拡大が予想されるなか、生成AI等新たな技術の活用を強力に推進し、生成AIとヒトのハイブリッド型コンタクトセンター事業を早期に実現することを目指し、スカパーJSAT株式会社(以下、「スカパーJSAT㈱」)の100%子会社で高品質なカスタマーセンター運営等を提供する株式会社スカパー・カスタマーリレーションズ(以下、「㈱スカパー・カスタマーリレーションズ」)の株式51%を取得し子会社化いたしました。

また、コンタクトセンターでの生成AI活用に向けて、参画企業間での事例共有等を行うユーザー企業参画型プログラムとなる、生成AI Co-Creation Lab.(コ・クリエーションラボ)を開始いたしました。本プログラムでは、コンタクトセンターの幅広い運用知見を持つ当社と、AIのシステムインテグレーションの実績を持つ伊藤忠テクノソリューションズ株式会社に加え、生成AI開発の最前線を担う日本マイクロソフト株式会社、Google Cloud及びアマゾンウェブサービスジャパン合同会社や、データマーケティング領域の支援を行う当社子会社の株式会社シンカー、自然言語処理領域の支援を行うベクスト株式会社等の各社が持つAI技術や専門知見を活用し、生成AI Co-Creation Lab.がハブとなって解決すべき課題とテクノロジーを結び、生成AIを活用した先進事例を創出しております。

 

 

さらに、2024年11月には本プログラムにおいて生成AIを活用してコンタクトセンターの自動化を実現する「Hybrid Operation Loop」の提供に向けた開発を開始いたしました。これは、日本マイクロソフト株式会社をはじめとするテクノロジー企業が有する最新技術と、当社が有する多様なコンタクトセンターのノウハウを組み合わせ、AIとヒトが共同でタスクを遂行する"Human-in-the-Loop"(人間参加型の機械学習)の概念を通じた、当社独自のAIとヒトのハイブリッドによる業務ループプロセスを設計することで、様々な業界の個別の環境に対応が可能なコンタクトセンターの自動化を実現するための取り組みであります。

人材(総力4万人の最大活躍)においては、全社目標である「男性育児休暇取得率100%」達成に向けて男性育児休暇経験者からの体験談やアドバイスを伝える社内向け座談会の開催、働く女性の健康課題に関する学びの機会の提供と理解促進を目的に婦人科医師によるオンラインウェビナーや障がい者雇用推進のヒントを学ぶセミナーを実施いたしました。さらに、LGBTQ+(LGBTQ等の性的少数者)に対する差別や偏見に反対し、セクシュアリティやジェンダーの多様性を祝う「レインボーパレード」への経営層と社員の参加や、障がいのある社員による神谷町本社でのLED菜園の運営等、社員一人ひとりが自分らしく働ける職場の実現のため、様々な取り組みを行っており、結果としてD&Iに関する研修・コンサルティング、ダイバーシティ採用支援等を手がける株式会社JobRainbowが実施する「D&Iアワード」において、最高評価である「BEST WORKPLACE」に4年連続で認定されました。

また、一般財団法人日本次世代企業普及機構が展開する2024年度のホワイト企業認定制度(以下、「本制度」)において、「GOLD」ランクを獲得しました。本制度は、企業のホワイト化で取り組むべき70の設問に対し、総合的かつ客観的に評価する国内唯一の認定制度であり、70の設問を7つの指標(ビジネスモデル/生産性、ダイバーシティ&インクルージョン、柔軟な働き方、健康経営、人材育成/働きがい、リスクマネジメント、労働法遵守)に区分し、総合的に判断・評価します。当社グループは、企業の持続的な成長・発展のためには、「多様な社員一人ひとりが能力を最大限発揮することが企業価値の継続的な向上につながる」という考えに基づき、全ての社員が安心して職務に集中できる環境の整備を進めており、本制度では、「人材育成/働きがい」をはじめ、「柔軟な働き方」「ダイバーシティ&インクルージョン」の領域を特に高く評価され、GOLDランク認定となりました。さらに、現場と人事部門が連携し、人材育成や働き方に関する方針や施策の立案、社員教育やウェルビーイング推進、働き方改革等、様々な取り組みを推進していることから、経営戦略と人的資本戦略を連動させ、多様な人材の活躍に向け人事施策のPDCAサイクルを確実に実行している点が評価され、人的資本経営と開示に関する日本最大規模の「人的資本調査2024」において、「人的資本経営品質(シルバー)」に2年連続で認定されました。

その他、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みとしては、米国の議決権行使助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)の責任投資部門で、代表的なESG評価機関の一つであるISS ESGによる「ESG コーポレートレーティング(以下、「本指標」)において「プライム」評価に初めて認定されました。本指標は、環境、社会、ガバナンスの観点から企業の取り組みを評価し、各業界内で高い評価を受けた企業を、「プライム」評価に認定するものであり、このたびの認定では、以前より評価を受けていたガバナンスに加え、ESGにおける環境(Environment)や社会(Social)の領域に対する取り組みや情報開示が進んだ点が評価されたと考えております。

 

各セグメントの業績は以下の通りであります。

(CRM事業)

コロナ等国策関連業務が大幅に縮小したことにより、売上収益は前年同期比で減収となりました。また利益面では販管費の抑制等、収益改善活動を行ったことや、子会社株式の一部売却に伴う利益により税引前利益は前年同期比で増益となりました。

この結果、CRM事業の売上収益は1,431億96百万円(前年同期比3.3%減)、税引前利益は120億88百万円(同10.0%増)となりました。

 

(その他)

コンテンツ販売収入の減少に伴い、コンテンツ事業に帰属するのれんについて減損テストを実施した結果、10億12百万円の減損損失を計上しております。

この結果、その他のセグメントの売上収益は4億11百万円(前年同期比32.6%減)、税引前損失は8億56百万円(前連結会計年度は、2億40百万円の利益)となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上収益は1,436億7百万円(前年同期比3.4%減)、税引前利益は112億32百万円(同0.1%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は80億3百万円(同6.1%増)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末現在における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ2億21百万円減少し、69億92百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下の通りであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、173億91百万円となりました(前年同期は135億87百万円の収入)。これは主に、税引前利益が112億32百万円、減価償却費及び償却費が95億56百万円、子会社の支配喪失に伴う利益が35億39百万円、法人所得税の支払額が24億円、減損損失が15億67百万円及び未払消費税等の増加額が9億72百万円、それぞれ生じたこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、36億93百万円となりました(前年同期は30億97百万円の支出)。これは主に、有形固定資産の取得による支出が11億47百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出が7億80百万円、有価証券の取得による支出が7億円及び無形資産の取得による支出が5億31百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、138億97百万円となりました(前年同期は102億86百万円の支出)。これは主に、長期借入れによる収入が50億円、短期借入金の増加が16億25百万円、長期借入金の返済による支出が90億円、リース負債の返済による支出が69億11百万円及び配当金の支払額が46億44百万円それぞれ生じたこと等によるものであります。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産の実績

当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

(2) 受注の実績

当社グループが顧客企業と締結している契約は、料金算定の基礎となる単価等であり、受注金額の算定に必要な座席数、時間等についてはコール予想等に応じて頻繁に変動いたします。従って、受注金額の特定が極めて困難な状況であるため、同数値の記載を省略しております。

 

(3) 販売の実績

当連結会計年度における販売の実績をセグメント毎に示すと以下の通りであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

CRM事業

143,196

△3.3

その他

411

△32.6

合計

143,607

△3.4

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には消費税等は含まれておりません。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合には、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計方針、重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記  3 重要性がある会計方針及び4 重要な会計上の見積り及び仮定」に記載しております。

 

(2)経営成績の分析

① 売上収益

当連結会計年度の売上収益は、主力事業であるCRM事業において、コロナ等国策関連業務が大幅に縮小したことにより、前連結会計年度に比べて51億10百万円減少(前年同期比3.4%減)し、1,436億7百万円となりました。

② 売上総利益

当連結会計年度の売上総利益は、収益改善活動による効果等もありましたが、高収益のコロナ等国策関連業務が大幅に縮小し、前連結会計年度に比べて17億27百万円減少(前連結会計年度比6.4%減)し、254億12百万円となりました。

③ 販売費及び一般管理費

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、主に人件費等が減少したことにより、前連結会計年度に比べて4億16百万円減少(前連結会計年度比2.5%減)し、161億82百万円となりました。

④ その他の収益及び費用

当連結会計年度のその他の収益及び費用の純額は、減損損失1,567百万円を計上したものの、子会社株式の一部売却に伴う利益37億60百万円の計上により23億57百万円の収益(前連結会計年度は9億38百万円の収益)となりました。

⑤ 営業利益

当連結会計年度の営業利益は、主に子会社株式の一部売却に伴う利益37億60百万円をその他の収益にて計上したことにより、前連結会計年度に比べて1億8百万円増加(前連結会計年度比0.9%増)し、115億87百万円となりました。

⑥ 金融収益及び費用、持分法による投資損益

当連結会計年度の金融収益及び費用、持分法による投資損益の純額は、3億55百万円の費用(前連結会計年度は2億54百万円の費用)となりました。

⑦ 税引前利益

当連結会計年度の税引前利益は、営業利益の増加等により、前連結会計年度に比べて7百万円増加(前連結会計年度比0.1%増)し、112億32百万円となりました。

⑧ 親会社の所有者に帰属する当期利益

当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益の増加及び法人所得税費用の減少により、前連結会計年度に比べて4億58百万円増加(前連結会計年度比6.1%増)し、80億3百万円となりました。

 

 

(3)財政状態の分析

① 資産の分析

流動資産は、主に現金及び現金同等物が2億21百万円減少したため、前連結会計年度末より2億55百万円減少し、280億42百万円となりました。

非流動資産は、主に持分法で会計処理されている投資が48億70百万円増加しましたが、有形固定資産が42億65百万円及びのれんが21億21百万円減少したため、前連結会計年度末より7億98百万円減少し、1,463億71百万円となりました。

これらにより、資産合計は前連結会計年度末より10億52百万円減少し、1,744億13百万円となりました。

② 負債の分析

流動負債は、主に借入金が77億99百万円、未払法人所得税が8億67百万円及びその他の流動負債が6億62百万円がそれぞれ増加したため、前連結会計年度末より88億14百万円増加し、574億13百万円となりました。

非流動負債は、長期借入金が99億87百万円及びその他の長期金融負債が34億17百万円減少したため、前連結会計年度末より129億64百万円減少し、461億63百万円となりました。

これらにより、負債合計は前連結会計年度末より41億51百万円減少し、1,035億76百万円となりました。

③ 資本の分析

資本は、主に資本剰余金が42億32百万円減少しましたが、利益剰余金が80億3百万円増加したため、前連結会計年度末より30億98百万円増加し、708億37百万円となりました。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

資金需要及び資金調達については、当社グループは事業運営に伴う新規拠点の構築及び設備の更新を継続的に実施しております。これらの資金需要は手許資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。

キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの主力事業であるCRM事業においては、サービス提供価格の変動と、オペレーター人材の確保及び人件費の変動が、経営成績に重要な影響を与える主要因と認識しております。当社グループを取り巻く事業環境は非常に競争が激しく、昨今の経済状況により、クライアント企業の費用削減傾向が強まる場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当事業における原価の大部分は、主にオペレーターの人件費であるため、人材不足による採用難や賃金上昇によるオペレーションコストの増加は、当社グループの経営成績に影響を与えます。

対応策といたしましては、当社グループが約40年にわたって築き上げてきた実績と経験を活かして他社との差別化を図り、品質向上及び新しいソリューション提供に努めることで業務の効率化及び売上規模の拡大を実現し、併せて、当社グループのブランド価値向上によりオペレーターの確保及び人件費増に対応する適切な価格設定に努めてまいります。また、生成AI等新たな技術の活用を強力に推進し、生成AIとヒトのハイブリッド型CRM事業を早期に実現することで、顧客企業とともに成長できるパートナーへの進化を目指してまいります。

 

 

(6)経営戦略の現状と見通し

当社グループが属する派遣売上を加えたコンタクトセンターアウトソーシング市場の総市場規模は1兆円を超え、2023年度以降年平均成長率4%程度で推移すると予測されており、2027年度には1兆2,770億円になると推定されております。(出典:デロイトトーマツミック経済研究所株式会社「BPO総市場の現状と展望2024年度コンタクトセンター&フルフィルメントサービス版(第18版)」)。

そうした中にあり、競合企業は、当該コンタクトセンターアウトソーシング市場に一定のシェアを確保しつつも、SIベンダーとの協業によるシステム販売や成果型レベニューシェア、生成AIの導入・活用による運用コストの改善や会話内容の分析により、企業のマーケティング部門へアプローチすることが予測されます。当社グループは生成AIの活用度合いを高めることにより差別化を図り、生産年齢人口の減少により拡大するアウトソースニーズを取り込み、継続的な成長路線を描いていく方針であります。

当社グループの強みは、国内随一の広範な自社コンタクトセンター拠点をベースにした「規模」、約40年にわたり培った「対話力」、生成AIとヒトのハイブリッドによる「業務設計力」、困難な課題にも一丸となって取り組む「チームワーク」にあります。これまでに培ってきたこうした強みに加え、伊藤忠商事グループ及びTOPPANグループ等、パートナーとの営業、事業開発、及びテクノロジー分野におけるシナジーを創出していくことにより、クライアント企業と同じ目線で経営課題に取り組み、改善提案を実践するパートナーとして、今後さらなる成長を果たしてまいりたいと考えております。

 

(7)経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するように努めております。当社グループは、主要ビジネスであるCRM事業を中心に、既存クライアントとの取引拡大及び伊藤忠商事グループやTOPPANグループの多様な企業ネットワークを活用した新規クライアント獲得強化による売上規模拡大、及び人件費増に対応する適切な価格設定の実施、業務の効率化及びコストコントロールの徹底による収益性向上との相乗効果により、収益基盤の拡充策を強力に展開してまいります。

株主に対しては、利益還元を最重要課題の一つとして認識しており、剰余金の配当を安定かつ継続的に実施し、業績の進捗状況に応じて配当性向及び必要な内部留保の充実等を総合的に勘案した上で、中期的には親会社所有者に帰属する当期利益をベースに、連結配当性向50%を目標として、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本的な方針としております。

また、従業員に対しては、“プロフェッショナル”が集う、“働きがい”のある企業の実現に向けて、新たな人事制度、人材育成施策の導入を段階的に進める他、女性活躍推進を目的とした育成プログラムの実施、企業内保育所の設置、及び教育研修施設の開設等、より多様な働き方を実現する環境整備の取り組みを続けてまいります。これらに加え、D&Iと健康経営の更なる推進を図り、多様な人材の活躍を促進してまいります。

さらに、生成AI等の新技術を活用した自動化対応への取り組みと人特有のホスピタリティー溢れる価値提供を通じたハイブリッド運用により、クライアントが感動するCXを実現する他、クライアントへの最適なソリューション提供により、クライアント企業の新しいビジネス価値を創造してまいります。

「中期経営計画2025」に掲げた生成AI等の活用による新たな価値の創造、並びに当社グループの強みとパートナー企業の知見・技術を融合した新たな総合BPO領域の開拓を推進し引き続き事業基盤を強化してまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

CTCファーストコンタクト株式会社の株式譲渡に関する契約

当社は、2025年1月29日付で連結子会社であったCTCファーストコンタクト株式会社(以下、「CTCファーストコンタクト㈱」)の普通株式30株を、株式会社シグマクシス・ホールディングスに譲渡する契約を締結いたしました。これにより、CTCファーストコンタクト㈱は当社の持分法適用会社となりました。

譲渡した株式数

普通株式 30株

譲渡した議決権比率

3%

株式を譲渡した日

2025年1月31日

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。