第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念を2006年より定款に定めています。グループとしての姿勢を国内外約60万人に上るすべての従業員が正しく理解して将来に伝承していくために、またステークホルダーの皆さまにも積極的に発信し、ご理解いただきたいという想いから、基本理念について背景や意味合いを綴った内容に改め、2023年5月の株主総会を経て定款にも記し直しました。「すべてはお客さまのために」という視点から、市場やお客さまの変化を見据え、長期的な視点で持続可能な成長と地域社会に貢献するグループを目指し、企業価値向上に取り組んでいます。

また、「21世紀の企業に生まれ、変わる」ことを宣言して社名を“イオン”とした2001年当時にビジョンとして掲げた「夢のある未来」の意味を改めて問い直し、2023年4月、“一人ひとりの笑顔が咲く未来のくらしを創造する”というステートメントとともに「イオングループ未来ビジョン」を策定しました。

この「イオングループ未来ビジョン」に則り、お客さまをはじめ、株主や取引先の皆さま、地域社会、従業員と良好な関係を築き、お客さまにご満足いただける商品やサービスを提供し続けることで、長期的な繁栄と成長を遂げてまいります。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題等

「中期経営計画(2021~2025年度)」の始動から約4年が経過し、最終年度となりました。中期経営計画立案時の想定を超える物価上昇やエネルギーコストの高騰、気候変動等の環境変化が生じ、常態化しつつあるなか、中期経営計画で掲げる「デジタルシフトの加速と進化」「サプライチェーン発想での独自価値の創造」「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」「イオン生活圏の創造」「アジアシフトの更なる加速」の5つの変革と「グリーン戦略」の重要性はさらに高まっています。当社は商品やサービスを通じて、地域のお客さまの暮らしを支える社会的な役割を果たすべく、これまでの中期経営計画の実績を振り返り、解決すべき課題を明確にし、持続的な成長のための事業基盤の確立に取り組んでいます。

 

① デジタルシフトの加速と進化

デジタル事業の拡大と店舗デジタル化による生産性向上を柱にデジタルシフトを推進しています。新たなデジタル事業として2023年に開業したネットスーパーGreen Beansは、当社にとって新たなエリアである首都圏でサービス提供エリアを拡大し、着実に顧客基盤を広げています。店舗デジタル化では、セルフレジや電子棚札の導入を加速するほか、グループトータルアプリiAEONには2024年6月に電子レシート機能を搭載する等、生産性に加えて買物体験価値の向上にも取り組んでいます。

② サプライチェーン発想での独自価値の創造

プライベートブランドを中心に「価格」と「価値」の両面で商品改革に取り組んでいます。価格の面では、お客さまの生活防衛意識の高まりを受け、「トップバリュベストプライス」を拡大するとともに、様々な企業努力を通じて合理的コスト削減が実現できたタイミングで、値下げ等を実施しています。価値の面では、シェフ・クオリティをコンセプトとした次世代型総菜プロセスセンター「Craft Delica Funabashi」を2024年6月より稼働し、独自価値の創造をはかっています。

③ 新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化

健康サービスの提供に地域や所得、情報の格差が生じるなか、当社は誰にでもヘルス&ウエルネスのサービスが行き届く社会の実現を目指しています。ウエルシアホールディングス㈱と㈱ツルハホールディングスとの経営統合を通じ、日本全国をカバーするドラッグストア連合を構築し、将来的にはアジアNo.1を目指してまいります。

④ イオン生活圏の創造

地域に根ざした事業活動の積み重ねが地域の課題を解消し、当社の成長や地域の豊かさに結び付く姿を「イオン生活圏」として、その構築を推進しています。その実現のため、エリア再編により固まりつつある各地域基盤を起点に、商品・サービスのみならず、「場」や「情報」「交流」の提供に取り組んでいます。

⑤ アジアシフトの更なる加速

グローバル企業や日本の小売企業が有望なアジア市場に積極的に進出するなか、当社は他社に先駆けてビジネスを展開し、経験を積み重ねてきた強みを活かし、積極的な出店やプライベートブランドをはじめとする独自商品でシェア拡大に努めています。また、金融事業ではマレーシアやベトナムで新規ビジネスを開始する等、グループトータルで成長戦略を推進してまいります。

⑥ グリーン戦略

気候変動や生物多様性の損失等、環境課題が深刻化するなか、当社は環境負荷低減と収益拡大を同時に実現するグリーン戦略を推進しています。全国の店舗網を活用して回収する、使用済みペットボトルの再生事業等、お客さまが当社をご利用いただくことが自然と環境に配慮した行動につながる取り組みを加速してまいります。

 

(3) 人材の活躍・ダイバーシティの推進

①ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進

社は、グループのさらなる成長と拡大を目指して、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下、DE&I)の推進を社会的課題への対応だけではなく経営戦略のひとつと捉え、一層の多様な人材の人材活躍の実現に向け、2024年3月DE&I推進室へと組織改編しました。ダイバーシティが生み出す従業員とその家族、お客さま、会社の3者の満足の実現を目指す活動を“ダイ満足”と名づけ、グループ全体で様々な活動に取り組んでいます。経営戦略としてのDE&Iについて学ぶ機会として、経営層、管理職層、一般従業員の3層に研修を実施し、合計5,257名が参加しました。女性活躍推進の強化として新たに開始した、グループ労使で取り組む女性のパイプライン拡大を目指したキャリアプログラム(管理職候補、部長候補育成)を合計198名が受講し、視野/視座の向上、意識変化、行動変容の機会となっています。LGBTQ+の取り組みでは、東京レインボープライドにグループで初出展し、LGBTQ+フレンドリーな買物環境作り等を紹介しました。年1回開催のグループ各社の好事例を共有する“ダイ満足”アワードは、新たに海外事業会社部門を審査対象とし、29社より33の取り組みが報告されました。若手社員をチームで育成する仕組み作りや時間給社員店長活躍、女性管理職登用を目指した施策等、各社ごと自社に適した取り組みで、多様性が生み出す価値創造の実現に貢献しています。なかでも障がい者雇用、活躍推進の取り組みがさらに進み、障がい者雇用率は、3.05%となりました。

②人的資本への投資

当社は、従業員の一人ひとりの成長を信じ、それぞれが自律的に成長する集団を目指しています。成長戦略の実現に向けた人材の育成、登用、採用の強化をはかっており、DXが進展するなか、デジタル人材の育成に関しては、2025年までの目標を2千名と定め、社内育成と外部採用により人材確保に努めています。また、小売業では限定的な時間のなかで働く方が活躍するチャンスが大きく、こうした人材が柔軟に働くための環境整備にも力を注いでおり、従業員の8割を占める約44万人のパートタイマーの賃金を3年連続で7%引き上げました。革新し続ける企業集団として、人的資本への投資と生産性向上への取り組みの両輪で持続可能な成長を目指してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という基本理念のもと、事業を通じてサステナビリティ活動を推進しています。当社グループの地域での成長が地域の豊かさに結びつく、循環型かつ持続可能な経営を実践する企業集団として、それぞれの地域に根ざした活動をステークホルダーの皆さまとともに実践しています。

実践にあたっては、「イオンサステナビリティ基本方針(2011年策定、2018年改訂)」のもと、気候変動や自然資源の枯渇、生物多様性の損失といった環境課題、少子高齢化による労働力人口の減少、人権尊重、地域コミュニティの衰退といった喫緊の社会課題にも着目し、当社グループの事業への影響を優先したサステナビリティ活動に取り組んできました。

当社グループのサステナビリティの進むべき方向性は、お客さまの今とこれから(未来)の幸せに貢献すること。地域の未来につながる「より良い暮らし」を提案し続けていくこと。安全・安心であり人権がきちんと守られた環境で事業を行うこと。そして、従業員一人ひとりの可能性を信じ、自立的な成長を推進するための教育投資や環境整備を継続すること。創業以来大切に受け継いできた「イオンの基本理念」と、未来の暮らしを創造するグループであることを目指す「イオングループ未来ビジョン」のもと、「持続可能な社会への貢献」と「グループの成長」を両立させていきます。

 

「暮らし」をキーワードにイオンが事業活動を通じて取り組むサステナビリティの活動領域


 

 

(1) サステナビリティ共通

① ガバナンス

当社は、企業統治体制として指名委員会等設置会社を選択しており、取締役会が執行役に業務執行の執行権限を大幅に委譲し、迅速な意思決定を行う体制をとっています。事業を通じてサステナビリティ活動を推進していくために、事業との関連性と社会への影響度の高いサステナビリティのリスクや機会、課題対応に関する重要事項は、代表執行役をはじめとする経営幹部で構成する経営会議「イオン・マネジメントコミッティ」にて多様な観点から議論、決議・承認を経たのち実行され、取締役会では、当社の経営の意思決定機関として法定事項を決議するとともに、経営の基本方針並びに業務執行上の重要な事項を決定・承認し、取締役及び執行役の職務の遂行を監督しております。

なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制の詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

② 戦略

当社グループでは、経営戦略の一環として、サステナビリティ活動のなかで7つの重点分野(マテリアリティ)を定めています。特定にあたっては、事業との関連性と社会への影響度の観点から当社グループとステークホルダーにとっての重要性を軸に抽出しています。イオンで買物をする、イオンで働く、イオンと協業する、事業活動そのものがサステナブルな対応となることを目指し、その実現に向けた7つの重点分野と主な取り組みは以下のとおりです。

 

重点分野(マテリアリティ)

主な取り組み及びマイルストーン

脱炭素社会の実現

・「イオン脱炭素ビジョン」に基づき、店舗、商品・物流、お客さまとともに、の3つの視点で省エネ、創エネの両面から、温室効果ガス排出の削減に取り組み、脱炭素社会の実現を目指しております。

・2040年までに店舗で排出するCO2等を総量でゼロ化。

資源循環の促進

・「イオンプラスチック利用方針・削減目標」に基づき、2030年までに使い捨てプラスチック使用量を50%削減(2018年比)、PB商品で環境・社会に配慮した素材を使用。

・「食品廃棄物削減方針・削減目標」をベースに2025年までに食品廃棄物を50%削減(2015年比:発生原単位)。

生物多様性の保全

・持続可能な調達原則に則り、グローバル基準に基づいた、「農産物」「畜産物」「水産物」「紙・パルプ・木材」「パーム油」「カカオ」「コーヒー」で持続可能性に配慮して生産された商品の調達を推進しています。

・「イオンの森づくり」に代表される植樹活動や、ふるさとの森の生物多様性価値の測定、生態系の保全・創出に配慮した店舗開発等、生物多様性保全の取り組みを推進しています。

コミュニティとの協働

・お客さまや地域社会への貢献は小売業の使命と捉え、国内外の多様な業種・業態の店舗を起点に社会活動を推進しています。

・「イオン幸せの黄色いレシートキャンペーン」「こども食堂応援団」「イオンハートフル・ボランティア」等を通じ、お客さまや地域の人々とともに、コミュニティの発展と生活文化の向上に貢献する街づくり、絆づくりに取り組んでいます。

人権に配慮した公正な事業活動

・人間尊重の経営を実現するため「イオンの人権基本方針」に基づき従業員のみならずサプライチェーン上で関わるお取引先さまや地域の方々の人権を尊重することを目的とし人権デュー・ディリジェンスを実施しています。人権デュー・ディリジェンスでは、グループ全体の人権課題を抽出し対応状況や取り組み状況のモニタリングを行っています。

・グループ各社の役員をはじめ全従業員を対象とした人権研修を毎年実施し、「人権」に関する正しい理解と認識を深め意識向上をはかるよう啓発活動を続けています。

・当社グループのサプライチェーン上のお取引先さまの従業員の方々を対象とした「お取引先さまホットライン」、当社グループの従業員を対象とした「イオンコンプライアンスホットライン」を設置しているほか、イオンサプライヤー取引行動規範(CoC)管理規程を制定し、当社グループに関わる全ての方々がイオンの基本理念である「お客さま第一」の実現に向けた行動を実践ができることを目指しています。

 

 

重点分野(マテリアリティ)

主な取り組み及びマイルストーン

従業員の幸せの実現

・「イオンの基本理念」「イオングループ未来ビジョン」の浸透により、当社グループの価値創造を創出する人材を育成しています。

・「教育は最大の福祉」という考えに基づき、育成(教育の進化、自律型人材の育成、経営・事業の成長をけん引する人材の育成)と採用(経営・事業の成長をけん引する人材の獲得、個別型採用への転換)に取り組み、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる教育環境を整えています。

・多様な人材が活躍できる環境の整備が必要であると考え、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(女性活躍、障がい者活躍、LGBTQ+への取り組み)、健康経営、エンゲージメントに対する取り組みを推進しています。

攻めと守りのガバナンス

・当社は会社法に規定する指名委員会等設置会社です。

・取締役会は、多様な分野で高い見識と豊富な経験・知見を有する役員で構成され、過半数を社外取締役にすることで経営の監督機能を強化しています。

・「イオンの基本理念」を当社の定款に記し、ガバナンスにおいても基本的な考え方としています。

 

 

③ リスク管理

リスク管理体制については、リスクマネジメント管掌を配置し、リスクマネジメント委員会を開催しています。同委員会では、リスクアセスメント等により優先順位の高いリスクを抽出したうえで、対応及びその効果について進捗管理を実施し、当社の執行役にリスク管理状況及び対応を報告・提案しています。特に影響度の高いリスクについては、部門横断のタスクフォースを編成し、リスクの予見・予知・予防に努めてまいります。

なお、個別のリスクの詳細は、「3 事業等のリスク」に、リスク管理体制の整備状況は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、上記「② 戦略」において記載した重点分野(マテリアリティ)及び取り組み事項について、次の指標を用いております。当該指標に関する現在の状況及び目標は、次のとおりであります。

 

取り組み項目

指標

現在

目標

目標年度

脱炭素社会の実現

店舗で排出するCO2等

店舗における再エネ普及率

国内店舗の

再エネ転換率

55% ※1

店舗で排出するCO2等を総量でゼロ

2040年度

店舗電力の50%を再エネ化

2030年度

食品廃棄物の削減

発生原単位での食品廃棄物削減(2015年比)

37.9%削減 ※1

50%削減

2025年度

プラスチック使用量の削減

使い捨てプラスチック使用量削減(2018年比)

12.7%削減 ※1

50%削減

2030年度

基本理念の浸透

基本理念への共感度 ※2

3.43

4.0

2025年度

未来ビジョンへの共感度 ※2

3.37

4.0

2025年度

従業員の働きがい

エンゲージメントレーティング B以上出現率 ※2

73.5%

100%

2025年度

職場の多様性

女性管理職比率

28.4%

50.0%

2025年度

障がい者雇用率

3.05%

3.5%

2025年度

 

※1 2023年度実績を記載しております。2024年度確定値はイオンレポート2025(統合報告書)に開示予定です。

それ以外の項目については2024年度実績を記載しております。

※2 各スコア、レーティングの詳細については、「(3) 人的資本 ②指標及び目標」に記載しております。

 

 

(2) 気候変動

① ガバナンス

気候変動を含む環境課題は、企業の持続可能性に関わる問題と捉えております。これらの課題に対する具体的な施策や方針は、イオン・マネジメントコミッティとその監査・監督を行う取締役会によって決定されます。その直下には環境保全・社会貢献活動全般を統括する責任者としてGX担当責任者 兼 環境・社会貢献部長を配置し、個々の気候関連・自然関連に関わる取り組みの管理・監督をしています。事業会社各社の責任者は、このレポートラインに従い、取締役会やイオン・マネジメントコミッティで決議された気候変動を含むビジョンや中長期計画等に対し、各社の推進責任部署・責任者を定め、具体的な各社の事業計画を作成・推進する役割を負っています。

 

② 戦略

● 1.5℃目標を達成するためのシナリオ分析

当社グループの事業活動は、商品調達と店舗運営の活動によって支えられています。気候関連課題は主に調達、店舗の段階で発生するGHGインパクトをいかに見える化し削減するかが課題です。従って、脱炭素施策をいかに社会システムに組み込んでいくかが重要であり、移行リスクと物理リスクをバランスさせた戦略を考えることが必要になります。

このアプローチを実行するため、IPCCによる報告を中心に専門セクターから得られる様々な情報を加味して、1.5℃と4℃の世界に至るシナリオ分析を行い、そのシナリオ内で変数を様々に変化させながら、気候変動関連の移行リスクと物理リスク、機会を把握します。

 

シナリオ分析の流れ

重要な気候関連リスク・機会の特定

気候関連リスク・機会に係るパラメータの特定・将来推移調査、将来社会シナリオ検討

各将来シナリオ下における気候関連リスク・機会に伴う事業影響評価(定性/定量)

気候関連リスク・機会に対するレジリエンスの評価、今後の対応策の検討

 

 

● 気候関連リスク・機会を特定し、対応するためのプロセス

流通小売業にとって重要なリスク・機会となりうる「店舗操業」「商品調達」に関する事項を抽出・整理し、各々のさらなる詳細の特定・評価は以下に示すプロセスにおいて実施します。

 

小売業としての最重要2分野

店舗操業

国内の店舗・物流拠点

商品調達

食品(原材料調達及び製造・加工工程)

[理由]

業態・店舗数が多く、物理リスク・移行リスクが比較的明確になってくる。

[理由]

最も事業構成が大きく、かつお客さまの暮らしに対するインパクトが大きい。サプライチェーンの広がりを考慮して、国内外のサプライヤーをその範囲に含めている。

 

 

● 気候シナリオによる影響、組織戦略の強靭性(気候シナリオ分析)

当社グループの戦略には、1.5℃の世界に整合する移行計画を含んでいます。1.5℃シナリオとして、主にNZE(IEA)、SSP1-1.9(IPCC AR6)、4℃シナリオとしてSSP5-8.5(IPCC AR6)を参照しました。

 

● 気候変動に関わる重大な財務上、戦略上の影響

「直接的な損失」

店舗設備や商品在庫が気候変動による災害等の影響で毀損される被害のうち、予想最大被害額が営業利益の1%を超えた場合を「重大な財務上・戦略上の影響」と定義します。

「間接的な損失」

店舗の休業や物流網の断絶に起因する営業や事業活動の中断のうち、事業中断日数が概ね1週間程度続くと予想される場合を「重大な財務上・戦略上の影響」と定義します。

 

 

 

● 気候関連リスク・機会の特定・評価

当社グループとしてありたい姿の実現に向け、「ステークホルダーにとっての重要性」と「自社にとっての重要性」の観点から、マッピングを実施し事業に関連する課題を抽出しています。抽出される重要項目については、ステークホルダーと自社双方の両軸で「高」となる右上の象限に含まれている項目を、グループが重点的に取り組むべき課題として特定しています。それぞれの重点分野ごとに目標・KPIを策定し、サステナビリティ推進体制のもとPDCAサイクルを回し、より実効性のあるサステナビリティ活動の継続と強化に取り組んでいます。

 


 

 

③ リスク管理(リスクと影響の管理)

日常的なリスクと影響の管理は各社・各部単位で対応しています。

個社で対応できないリスク、例えば商品調達エリアでの紛争や異常気象による店舗被災確率の増大等の外部要因リスクやグループ事業に共通する商品・施設・サービス等に起因するリスクや影響については、「リスクマネジメント委員会」において、対応方針の意思決定を行うとともにリスクと影響の予見・予知・予防に努めています。

 

特定されたリスク・機会項目とインパクト評価

区分

タイプ

重要なリスク・機会項目

該当

 

財務インパクト

(2030年:億円)

使用したシナリオ

考慮したシナリオ

店舗

物流

1.5℃

2℃

未満

~4℃

リスク

 

移行

リスク

政策

規制

炭素の価格付けによるコスト増※1

353

341

227

IEA,WEO2022

NZE,APS,STEPS

電力政策・エネルギーミックス変化

技術

省エネ・再エネ技術の進展

 

EV車両(物流)・

EVインフラ(店舗)の普及

IEA Global EV Outlook 2022,APS,STEPS

市場

顧客ニーズ・行動の変化

(ZEBに関するデータは「IEA Net Zero by- 2050」)

 

原材料の生産減少、

商品化コスト増加

IPCC

AR5,RCP2.6,RCP8.5及びAR6,SSP1-2.6,SSP5-8.5

エネルギー価格高騰による収益減※2

1,099

1,099

1,099

IEA,WEO2022

NZE,APS,STEPS

評判

顧客の社会的意識の高まり

 

社会ニーズに適した商品評価

(購買行動変化)

 

物理

リスク

急性

異常気象の激甚化

IPCC

AR5,RCP2.6,RCP8.5及びAR6,SSP1-2.6,SSP5-8.5

自然災害に伴う、休業による収益減※3

79

396

1,584

調達コスト、物流コストの増加

機会

製品及び

サービス

顧客ニーズ・行動の変化

IEA Net Zero by 2050

社会ニーズに対応した商品開発

 

エネルギー源

脱炭素エネルギー導入による

コスト削減※4

218

218

63

IEA,WEO2022

NZE,APS,STEPS

市場

防災機能の高い店舗を保有することによる市場評価増→投資家からの評価

IPCC

AR5,RCP2.6,RCP8.5及びAR6,SSP1-2.6,SSP5-8.5

災害時に強い商業施設※5

(電力確保、建物構造)

16

82

326

レジリエンス

地域の防災拠点としての店舗活用

 

※1 目標達成時排出量×炭素税価格(1,168万t-CO2×140・135・90$t-CO2 1$=150円換算)

※2 2030年必要電力量(87億7,500万kWh)の50%を通常買電する場合の電力料

※3 1ケ月売上(9兆5,042億円)×被災店舗割合(1.5℃…1%、2℃…5%、4℃…20%)

※4 2030年必要電力量(87億7,500万kWh)の50%をコーポレートPPAで賄う場合(877億円)の通常買電との差益

※5 改修費(SC630店舗:1億円、SM2,000店舗:0.5億円)×対策店舗割合(同上:被災店舗割合)

 

 

 

④ 指標及び目標

● 気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

当社グループは2018年に「イオン 脱炭素ビジョン」を策定し、「店舗」「商品・物流」「お客さまとともに」の3つを柱に、省エネ・創エネの両面から店舗で排出する温室効果ガス(以下、「CO2等」という。)を総量でゼロにする取り組みを、グループを挙げて進めています。当社グループの店舗におけるCO2発生源の約9割は電気使用であることから、店舗で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えることは、国内全体のCO2削減への貢献にもつながります。2040年までに店舗で排出するCO2等を総量でゼロにするという長期目標、及び2030年には店舗使用電力の50%を再エネ化するという中間目標を掲げての取り組みを進め、当社グループの国内事業所における再エネ調達量が使用電力の55%に達し、中間目標を7年前倒しで達成いたしました。今後もすべての事業活動で持続可能性を追求し、グループが持つあらゆるリソースを活用して地域全体での脱炭素化の実現に向け、取り組みを加速させていきます。

 

第三者検証について

温室効果ガス排出量についての第三者検証を受審①

2024年5月から7月にかけて、当社及び主要な連結子会社56社を対象に、第三者検証を行いました。

今後もデータの信頼性の向上とGHG排出量の継続的な削減に努めていきます。

 

1. 検証範囲

2022年4月1日から2023年3月31日の期間における、当社及び主要な連結子会社56社におけるエネルギー起源CO2排出量(スコープ1及びスコープ2)

 

2. 検証方法

ISO14064-3 Greenhouse gases-Part3:Specification with guidance for the validation and verification of greenhouse gas assertsの要求事項に基づき、第三者による認証を受けた。

 

温室効果ガス排出量についての第三者検証を受審②

2022年度に続き2023年度も当社グループの物流の中核を担うイオングローバルSCM㈱の輸送に伴う温室効果ガス排出量の第三者検証を実施しました。

 

1. 検証範囲

2022年4月1日から2023年3月31日のイオングローバルSCM㈱が取り扱った商品の国内輸送に伴う温室効果ガス排出量(スコープ3のカテゴリー4に相当)。

 

2. 検証方法

ISO14064-3 Greenhouse gases-Part3:Specification with guidance for the validation and verification of greenhouse gas assertsの要求事項に基づき、第三者による認証を受けた。

 

検証の信頼性向上のため、開示数値とそれに至る算定方法まで遡って検証の対象としております。2023年度の第三者検証については、取得に向けた手続き中であり、第三者検証の結果は当社webサイト(https://www.aeon.info/)にて公表予定であります。

 

 

(3) 人的資本

当社グループは「お客さまを原点に平和を追求し、人間を尊重し、地域社会に貢献する。」という企業理念のもと、企業の発展力は人であると考えています。

従業員一人ひとりの可能性を信じ、自立的な成長を推進するための教育投資や採用・配置・評価・処遇・定着といった人材マネジメントサイクルの観点から多様な人材が最大限のパフォーマンスを発揮できる施策や環境整備を継続して強化してまいります。

「革新し続ける企業集団」として、イオンらしい人的資本への投資と、生産性向上への取り組みの両輪で持続可能な成長を目指しています。

 

 

① 戦略

● 人材育成方針

(全体方針)

当社の基本理念に明示されている「人間尊重」とは、個性、尊厳、自律性の尊重に加えて、人間が持つ可能性を信じ、仕事や学びを通じて成長し、よりよく人間的になることを後押しすることでもあります。従業員一人ひとりを信じ、尊重することで、その人の能力や思いが花開き、さらに人とつながることによって、より幸福な状態が生じるという考えのもと人材育成に取り組んでおります。

当社グループの人材育成は、人間として成長することが従業員にとって最大の福祉であるという「教育は最大の福祉」という考えに基づいたものであり、これまでも、これからも「小売業は人間産業」の理念のもと、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる教育環境を整えていきます。

 

(取り組み内容)

人材育成

(A)戦略的採用の強化

・当社グループは、「人事は採用に始まり採用に終わる」という考えのもと、人事戦略の根幹である採用活動を強化してまいります。主には質の選別の実現やグループ共通採用基準を用いた採用、経営陣の採用への積極的な関与を推進していくとともに、革新の原動力である「創造力」をもった人材の採用を通じて、グループの持続的な成長を支える人材基盤の構築を推進してまいります。

・多様性と挑戦を推奨し、地域密着とグローバルな視点を併せ持つ人材を積極的に採用します。また、採用後も教育や成長の機会を通じて社員一人ひとりの可能性を引き出すことで、企業の未来を共に創造していくことを採用方針としています。

 

(B)ホールディングスとしての当社とグループ各社の人材育成の進化

 ■「人材開発ポリシー」「期待人材像」をもとにした新たな人材育成体系の構築

・「人材開発ポリシー」を設定し、当社グループが目指す人材育成の方向性を具体化します。

・コンピテンシーから「期待人材像」を明らかにしたうえで人材育成体系を再構築すると共に、各社の教育体系構築の支援を行います。

■グループ共通教育プログラムの構築

・自律型人材の育成を目的に、行動変容を促す教育プログラムをグループ共通で構築し各社のニーズに合わせて導入します。

・若年層の教育プログラムを刷新(3年間から5年間)し、個々の成長に合わせてタイムリーな学習・教育支援が行える環境を構築します。

 ■人材育成への積極投資

・従業員が自律的にキャリアを考え、成長のために自ら学び続けられる環境を整備・拡充するために、さらなる教育の充実とグループ全体の年間教育投資額(2024年度実績:60億円)を拡充してまいります。

 

(C)キャリア自律の支援

 ■イオンキャリアアドバイザーの養成

・イオンキャリアアドバイザーを養成・認定し、各社において従業員の自律的キャリア形成を支援する体制を構築します。

・各年代、階層においてキャリアを考える機会を増やし、充実させます。

 ■全従業員へのリスキリングの促進

・グループ共通学習プラットフォームのユーザビリティの向上とコンテンツの拡充によって各社での利用を推進し、従業員のスキルの見える化と自己管理を強化することで、一人ひとりの学びを支援する環境をさらに充実させます。

 

(D)グループ経営、事業の成長を牽引する人材の育成

 ■次世代経営人材候補の育成

・グループの経営を担う人材の早期発掘と持続的な育成を目指すための人材マネジメントの仕組みと人材育成プログラムを構築し実施します。

・コーポレートガバナンスを強化するための教育プログラムを充実させます。

 ■デジタル人材の育成

・デジタル領域において6職種×3レベルの人材定義を行い、当社グループとして必要なデジタル人材採用・育成を強化・推進します。

・専門人材領域(選抜研修)と、全員領域(ITパスポート習得レベル)にて教育を実施します。

・デジタル人材を2025年度2,000人を目標に採用と育成を進めてまいります。

 

● 社内環境整備方針

(全体方針)

基本理念に基づく、お客さまを原点に絶えず「革新し続ける企業集団」であるためには、多様な人材が活躍できる環境の整備が必須であると考えています。私たちは何のために革新し続けるのか。その目的はお客さまの負を解消し、地域の人々の豊かな暮らしを実現する支援をし、お客さまを笑顔にすることです。そういった強い想いを実現するために、多様な事業を展開する当社グループのすべての人材が、共通の基本理念や未来ビジョンを範として、自主的・自律的にいきいきと活動・活躍しながら、お客さま第一を追求している状態を目指しています。

基本理念と未来ビジョンの浸透をはじめ、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン、健康経営、エンゲージメント、人権等、幅広い取り組みを進めることで従業員一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境を整備し、持続可能な成長を実現してまいります。

また、当社グループはパートタイマーの従業員を国内約44万人雇用しており、パートタイマーの賃金を3年連続で7%引き上げました。パートタイマーは、「地域の生活者」でもあり、賃上げによって「地域の暮らしを支える」という側面も持っていると捉えています。今後も積極的な教育投資とDX等の活用による生産性向上と賃金改善の好循環を生み出し、国内の労働市場の活性化に寄与する取り組みを続けていきます。

 

(取り組み内容)

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

当社グループは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進を社会的課題への対応だけではなく、経営戦略のひとつとして捉えています。グループの更なる成長と拡大、イオンピープルの誰もが活躍し、革新し続けることを目指し、すべての従業員が働きやすく、活躍できる企業環境づくりを実現するために、ダイバーシティが生み出す従業員とその家族、お客さま、会社の3者の満足の実現を目指す活動を“ダイ満足”と名づけ、グループ全体で様々な活動に取り組んでいます。グループ各社のベストプラクティスを共有する、“ダイ満足”アワードは11回目を迎え、海外各社の事例共有を新たに加え、29社より33の取組施策が報告されました。また、2024年度は「共働き・共育てを可能にする性別を問わない両立支援」が特に優れた企業として「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選定されました。

 

(A)女性活躍

現在、女性管理職比率は連結ベースで28.4%に達しており、50%を目指してセミナー等を実施しています。

2024年度は意思決定機関におけるジェンダーギャップを解消し、多様な視点や考え方(これまでの視点・思考ではない)を経営に取り込むことを目的に、労使専門委員会と協業し「部長候補コース」「管理職候補コース」を新設しました。これまでの女性経営者育成プログラムに加え、女性の入社から経営者層までのパイプライン拡充の後押しをしております。多様性に富んだ人材が、様々な機会を得て、活躍する企業集団となることで、当社グループの恒久的な成長と発展を実現してまいります。

 

(B)障がい者活躍

障がい者雇用率は厚生労働省が定める2.5%以上に対し、当社グループは既に3.05%に達しており、早期に3.5%以上を目指す計画です。障がい者の方々が働く職場環境を整備し、雇用を促進していくことは、多くの従業員を雇用している私たちの責任でもあります。障がい者雇用特例子会社として1980年に設立したアビリティーズジャスコ㈱は、「障がい者が働く姿をあたりまえの社会にする」という経営理念のもと、障がい者の就労移行、就労定着を支援する合計8センターの運営や福祉用品販売を行っています。

2020年度からは、当社とアビリティーズジャスコ㈱の連携事業として、年間を通じて月1回のオンライン研修を開催し、障がい者雇用の課題である定着・採用について実践的かつ専門的に学べる機会を提供しています。全国の人事担当をはじめ誰もが参加、学ぶことができ、最新の情報を盛り込み、情報交換が可能なつながりの場に進化しています。

 

(C)LGBTQ+への取り組み

当社グループは、人種・国籍・民族・性別・年齢・出身地・宗教・学歴・心身の障がい・性的指向と性自認等を理由とした差別を一切行いません。能力と成果に貫かれた人事を基本的な考え方とし、多様な人材の能力を十分に活かす組織の実現を目指しています。LGBTQ+に関する基礎知識や最新情報を学び、従業員一人ひとりが自分らしく働ける職場づくりを目指し、LGBTQ+に関する研修やアライ(支援者)育成に取り組んでいます。2024年度は、東京レインボープライドにグループで初出展をし、LGBTQ+フレンドリーな買い物環境作り等を紹介しました。

 

健康経営

当社グループは、グループとして従業員の健康づくりが企業活動の要であり、従業員が健康であってこそ地域のお客さまの健康と幸せの実現に貢献できるという考えのもと、従業員とその家族の健康増進に取り組んでいます。当社グループが考える「健康経営」とは、従業員が健康であることが、豊かな地域生活につながる好循環です。従業員が心身ともに健康になることで、生産性や創造性が向上し、その結果、お客さま満足の向上につながります。以上の考えのもと、2016年に「イオン健康経営宣言」を発表。グループ一丸での健康経営の推進により、生産性の向上、離職率の低減、従業員満足度・働きがいの向上を目指しています。


受動喫煙対策・卒煙の取り組みとして従業員の就業時間内禁煙・敷地内の禁煙を実施、生活習慣改善に向けた特定保健指導実施率向上や健康チャレンジキャンペーン、各専門家による特別講演の開催、女性の健康に対する学習等、心と身体の健康づくりと安全安心で活力ある職場づくりに取り組んでいます。こうした取り組みが評価され「健康経営優良法人2025」にグループ60社が認定されました。(内、2社はホワイト500を取得しています。)

 

② 指標及び目標

 当社グループは「イオンの基本理念」、「イオングループ未来ビジョン」に基づく、イオンが大切にしてきている人に対する考え方と実現したい姿を踏まえ、当社グループにおける重要指標を以下の4項目にまとめております。

 

当社グループにおける重要指標 

● 基本理念の浸透度

 多様な人材や異なる事業の集合体である当社グループにおいて、共通の目標を達成していくための判断のよりどころが「イオンの基本理念」です。基本理念や未来ビジョンへの共感こそが当社グループによる価値提供の基盤であり、当社グループが掲げる地域社会への貢献を実現すべく、全従業員が基本理念に共感している状態を目指します。基本理念の浸透をはかるため、国内外の各社において定期的に理念研修を実施しています。また、理念の実践と定着を加速させる取り組みとして、職場での対話とコミュニケーションの場である「ビジョンMT」を推進しており、2024年度はグループ全体で約3,000回開催しました。

 基本理念に則った活動と人間尊重によって積極的な平和への貢献を実現するとともに、地域になくてはならない存在であり続けたいと考えています。

 

重点管理項目

2024年度実績

2025年度目標

基本理念への共感度

3.43

4.0

未来ビジョンへの共感度

3.37

4.0

理念研修の参加率

82.2

100

 

・基本理念への共感度、未来ビジョンへの共感度はエンゲージメントサーベイの自社アンケート結果から算出したグループ連結のスコアになります。※5段階にてスコア化(1.0~5.0)しております。

 

● 従業員の働きがい

 お客さまに対する価値創造を担う従業員が最大の経営資本であるという考えのもと、従業員の働きがい(エンゲージメント)の向上を重要項目に設定しています。

 労働市場の環境変化が加速する現代において、人材や組織の状態を表す「従業員エンゲージメント」が会社と従業員の信頼関係を表す指標になると認識しております。

 「従業員エンゲージメント」の向上は従業員が自社の理念に共感し、貢献意欲が高まる状態を実現していくためにも必要不可欠なものであると考えています。2024年度は国内外183社・43万人以上の回答データを分析し、各社の組織状態及びグループの組織課題の可視化と改善を進めています。今後も国内最大規模のエンゲージメントを活用するとともに、真の人的資本経営に取り組んでまいります。

また、地域での安定的な雇用と従業員自身の健康が人間の幸福と規範の下支えにつながるという考えのもと、健康経営の促進に引き続き取り組んでまいります。

 

重点管理項目

2024年度実績

2025年度目標

エンゲージメントレーティング
B以上出現率 ※1

73.5

100

 

全体(エンゲージメントスコア※2)

BB(52.3)

 

管理職(エンゲージメントスコア※2)

BBB(56.3)

 

日給月給(エンゲージメントスコア※2)

B(51.7)

 

時間給(エンゲージメントスコア※2)

BB(52.0)

離職率(日給月給)

6.0

5.0

入社5年目定着率

57.5

70%以上

健康経営優良法人認定社数

60

70

 

※1 エンゲージメントレーティングは、2025年度までに組織の信頼関係が健全な状態であることを示すBランク以上に全社が達することを目標に掲げ、エンゲージメントの改善に取り組んでまいります。

※2 エンゲージメントスコアの算出は㈱リンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」によって算出。他社平均50.0に対し、当社はグループ全体で52.3、エンゲージメントレーティング「BB」(全11段階中上から5番目)を獲得しています。

 


 

 

● 職場の多様性

 多様な価値観・人材を活かした革新ある経営の実践を成し遂げるべく、従業員の人権を尊重し、属性・区分に関係なく公正な評価と、学びを促進し、能力発揮できる機会の提供に努めています。多様な価値観を持つ従業員が活躍しやすい制度が整備され、常にお客さまのニーズに柔軟に応じる革新的な組織の実現を目指しています。

 

重点管理項目

2024年度実績

2025年度目標

女性管理職比率

28.4

50.0

障がい者雇用率

3.05

3.5

 

・女性管理職比率は、提出会社及び主要な連結子会社(従業員が100人を超える連結子会社を主要な連結子会社として算出の対象としております。)の合算の数値であります。

・女性管理職比率の算出にあたり、GMS事業については「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の基準と照合した際に職責や部下の管理範囲が管理職として妥当と考えられる店舗マネージャーや主任を算出に含めております。

・女性管理職比率の会社別の詳細は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び 男女の賃金の差異」に記載のとおりであります。

 

● 経営幹部育成状況

 ビジョンの実現に向けて事業横断的に、当社グループのリソースを最大限活用できる経営者の育成を進めています。当社はホールディングスとして、主要会社の社長や取締役等、グループ経営幹部のサクセッションプランをサポートするとともにグループ企業の次期経営者候補の審議、個別育成方針を定めています。

 

重点管理項目

2024年度実績

2025年度目標

グループ経営者準備人数
(審議対象者人数)

36

45

 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、リスクマネジメントを、グループ各社・各部署において責任を持って取り組むべき重要な経営課題として位置付けています。一方、個社で対応できないリスクについては、「イオン・マネジメントコミッティ」のもとに「リスクマネジメント委員会」において、審議・意思決定を行っています。

 

当社グループの事業に関してリスク要因となると考えられる事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在における当社による判断、目標、一定の前提又は仮定に基づく予測等であり、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下に記載する事項は、当社グループの事業に関する全てのリスクを網羅的に記述するものではありませんのでご留意ください。

 

①  地震や台風等の災害、新型感染症、テロ活動等に関するリスク

当社グループの店舗・施設の周辺地域においては、大地震や台風、津波等の自然災害、火災あるいは予期せぬ事故等による店舗・施設への物理的な損害のほか、社会的影響力が大きい新型感染症等の流行、戦争、暴動、テロ活動、コンピュータウイルス等によるシステム障害の発生、その他当社グループの供給業者もしくは仕入・流通ネットワークに影響する事象が発生する可能性があります。当該事象に備え、当社グループにおいては、事業継続計画に基づき情報インフラの整備、防疫対策基準の策定、防災拠点の設置や店舗の耐震強化、地方自治体との防災協力協定の締結、不測の事態が生じた際の資金調達手段の確保等の対策を講じておりますが、想定を上回る事象の発生により当社グループの販売活動や流通・仕入活動が阻害された場合、さらに人的被害や物理的被害があった場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

② 環境課題に関するリスク

当社グループは、「イオン サステナビリティ基本方針」のもと、店舗や商品開発をはじめ、物流や取引先も含めたサプライチェーン全体で、脱炭素・気候変動、生物多様性の保全、資源循環の促進といった様々な環境課題の解決に取り組んでいます。

しかしながら、環境に関する法的規制の強化や社会的要請の高まりにより想定以上のエネルギー費用や対策コストが発生した場合、また、気候変動や生態系の変化・破壊に伴い農・水産物の品質・収量に著しい変化が生じた場合、その他当社グループの取り組みや開示内容が不十分とみなされ、当社グループの社会的信用が低下した場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

なお、環境課題に関する戦略、ガバナンス、リスク管理並びに指標と目標については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」に記載のとおりであります。

 

③ 情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、総合金融事業の顧客のほか、当社グループが営むその他の事業の顧客から得た個人情報、取引先の情報、従業員の個人情報、経営に関する機密情報等を保管・管理しております。IT・ICTの普及やテレワークの拡大により情報セキュリティの重要性が高まる中、当社グループでは、取り扱う情報を事業活動の展開並びに付加価値を創出するための重要な資産と位置づけ、かかる情報の漏洩が生じないよう、情報セキュリティに関する体制や規程を整備し、情報の取り扱いや情報システムの運用に具体的な基準を設け、定期的なチェックを行う等、最大限の対策を講じております。また、近年急増するサイバー攻撃にも対応するため、情報セキュリティを専門に扱うグループ情報セキュリティ事務局を設置し、サイバー攻撃によるシステム停止等の事業継続リスクに対応しております。

しかしながら、機密情報が何らかの事情により漏洩、改ざん、不正使用等された場合、また、サイバー攻撃によるインシデントが発生した場合、被害者に対する損害賠償義務やサービスの大規模な停止による損害及び対応費用の発生のほか、当社グループの社会的信用の低下により、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

④ 他企業の買収(M&A)等に関するリスク

当社グループは、グループ各社がそれぞれの分野・地域でナンバーワンへと成長するため、既存の事業モデルの革新をはかるとともに、新しい成長モデルを確立してまいります。当社グループは成長戦略の一環として他企業の買収または他企業への投資を行うことがあります。買収を行う際には、対象企業の財務内容や契約関係等について詳細な事前調査を行い、極力リスクを回避するように努めておりますが、買収を実施した後において、偶発債務や未認識債務の発生、被買収企業に対し当社グループの内部統制を適切かつ有効に適用できないことにより、不正行為やコンプライアンス上の問題等が発生する可能性も考えられます。また、買収によって新たにのれんが発生し、その償却費用が増加する可能性があります。これらの要因により、期待する成果を達成できない場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります

 

⑤ 商品の開発及び調達に関するリスク

当社グループは、商品の品質や安全性に加え、お客さまが必要とされる商品やサービスをお値打ち価格で提供することが小売業の使命であり、経営の重要課題であると考えております。この考えのもと、多様化するお客さまの声に応えるため、グループ共通プライベートブランド(PB)商品であるトップバリュをはじめ、グループの専門業態が開発を担う専門性の高いPB商品、地域事業会社による生鮮・デリカを中心としたローカルPB商品のほか、国内外の様々なナショナルブランド商品を取り扱っております。商品開発にあたっては、厳しい基準を設けて入念な品質検査を実施する等「安全」と「安心」を守るための様々な取り組みを進め、原材料や商品の調達にあたっては、経済環境や地政学的状況を慎重に見極めながら国内外のベストソースからの調達、スケールメリットを活用した需要集約、物流の効率化等の様々な施策を通じてコストの削減と安定供給を実現しています。また、資源循環型社会の実現に向けた、環境配慮型商品の開発や、商品のライフサイクル全体での持続可能性の高い活動の推進に加え、人権尊重への取り組みとして、取引先と協力して、各国の生産・製造拠点に対し、働く人々の雇用が適切であるか、安全に働ける環境であるか、法令を遵守しているかを確認する等、サプライチェーン全体に責任を持つというポリシーのもと、様々な社会的課題を改善につなげる取り組みを進めております。

しかしながら、当社グループのPB商品に起因する事故等が発生した場合や異物混入等が発生し商品の販売自粛の措置をとる場合、想定を上回る原材料価格や物流コストの上昇、急激な為替の変動、天候不順等の影響により、メーカー各社の価格引き上げの発生や商品調達に支障が生じた場合、低環境負荷や人権配慮等への取り組みが不十分と見なされた場合、売上の低下や売上原価の上昇に加え、お客さまからの信頼の失墜を招いたことによるブランドの毀損により、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

⑥ 商業施設の開発及びデジタル・物流関連投資に関するリスク

当社グループは、地域行政と連携し、地域に根ざした商業施設の開発を進めるとともに、中期経営計画において「デジタルシフトの加速と進化」を掲げ、システム投資やIT企業との提携・連携、物流等のデジタル・物流関連投資を加速しています。

商業施設の開発においては、日本国内における都市計画法、建築基準法及び大規模小売店舗立地法や、海外におけるそれぞれの国や地域の法令諸規制の適用により、都市計画の内容等によって郊外地域における店舗開設に制限が課されたり、不動産価格の上昇、大規模災害の復旧需要等による建設業界の慢性的な人材不足や建築資材価格の上昇により、不動産取得コストや建築コストの上昇、工期の長期化が発生したりする場合があります。また、デジタル・物流関連投資では、特にIT分野は技術革新のスピードが速く、事業環境の変化により、新たな技術をサービスに採用するための人材の不足や想定を上回る速度での投資案件の陳腐化や競合他社比での劣後等が発生する場合があります。

これらの要因により、当初の計画通りに店舗やサービスの新規開発等ができなくなり、新店舗の開設や新サービスの提供の遅れ、これに起因する競争力の低下、想定を上回るコストの発生、投資回収までの期間の長期化等、期待する成果の達成や維持ができないことにより、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

⑦ 競合激化及び消費動向等の影響に関するリスク

当社グループは、売上高ベースの国内シェアが高く、その収益は日本の小売市場に大きく依存しております。そのため、今後の日本経済の悪化及び個人消費の落ち込み、人口減少による市場の縮小、業種・業態を超えた競争の激化等の影響により、当社グループの売上が低迷する場合があります。加えて、為替変動やインフレ等の急激な経済環境の悪化や異常気象による天候不順等により、商品の調達コストを始め、光熱費や設備維持のための費用、人件費、販促費等の店舗運営に関する様々なコストが上昇する一方で、厳しい市場環境により当該コスト相当額を販売価格に反映することが困難となる場合があります。これらの要因により、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

海外においては、中国、アセアンを中心に事業を展開しており、また国内で販売する商品の一定程度を海外から輸入しております。海外において、経済成長の鈍化、不安定な政治・経済情勢、法律や政策の変更、戦争等により、当社グループの海外における販売活動や流通・仕入活動、課税等に問題が発生した場合、またこれらに起因して為替・金利が異常な変動をした場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

⑧ 人的資本に関するリスク

当社グループの事業活動は人材に大きく依存しており、店舗運営をはじめとした各分野において優秀な人材を確保・育成することに加え、急速な社会の変化に対応するために、多様な価値観を持つ多様な人材の能力を活かすことが成長には不可欠です。そのため、当社グループでは国内外で将来を担う人材を積極的に採用・育成するとともに、人権尊重とダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの観点から、人種や年齢、国籍、性別に捉われずに多様な人材が互いに認め合い、いきいきと平等に活躍できる環境の整備や組織風土づくりを推進しております。また、健康経営として、従業員の生産性や創造性の向上、離職率の低減、従業員の働きがい(エンゲージメント)の向上を目指して、受動喫煙対策・卒煙支援、従業員の健康意識を高める活動等をグループ一体の取り組みとして行っております。

しかしながら、少子高齢化の進行による人口構成の変化等により、その計画が予定通りに進まない場合や、労働需給の逼迫や急激な賃金の引き上げ等により従業員にかかる費用が増加する場合、また、人的資本に関する当社グループの取り組みや情報開示が不十分とみなされる場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

なお、人的資本に関する戦略、指標と目標については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」に記載のとおりであります。

 

⑨ 資産の保有に関するリスク

当社グループは、店舗に係る棚卸資産や営業債権、有形固定資産及びグループの拡大に伴って発生したのれん並びにデジタル関連投資に伴うソフトウエア等多額の固定資産のほか、金融サービスに係る金融資産、その他金融市場で取引される様々な資産等、事業ポートフォリオに基づく多種多様な資産を保有しています。これらの資産への投資については、高い収益力と財務の健全性の確保のため、事業セグメントごとにフロー・ストックの両面で現状分析したうえで、資源の最適配分の考えのもと、成長分野への重点投資とキャッシュ・フローの創出を重視して行っております。しかしながら、店舗の収益性の低下により各店舗の簿価が回収できない場合、市場の混乱等により保有資産の価値が下落した場合、顧客の契約不履行等により想定以上に貸倒懸念債権等が増加した場合等、当該有形固定資産、のれん及びその他の資産について減損または評価損処理を行ったり、追加的な貸倒引当金を計上したりすることがあり、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

また、当社グループは、店舗に係る土地や建物等の一部を賃借しており、契約内容等により一定程度をオペレーティング・リースとして連結財務諸表上オフバランス処理しておりますが、今後改正予定のリースに関する会計基準等の適用後は、原則として借手のすべてのリース取引について使用権資産及びリース負債として連結貸借対照表に計上することとなります。これにより、当該会計基準等の適用時における有利子負債の増加及び自己資本比率の低下等による経営指標への影響に加え、将来において店舗業績の悪化が見込まれる場合、計上された使用権資産について減損損失等が発生する可能性があります。

なお、固定資産の減損損失の計上にあたっての重要な会計上の見積りの前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り) 1.固定資産の減損」に記載のとおりであります。また、当社グループが保有する金融商品の内容及びリスクについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (金融商品関係)」に、貸倒引当金の計上にあたっての重要な会計上の見積りの前提条件については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り) 3 貸倒引当金」に記載のとおりであります。また、リースに関する会計基準等の概要、適用予定日、影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (未適用の会計基準等)」に記載のとおりであります。

 

⑩ 資金調達及び金利変動に関するリスク

当社グループは、当連結会計年度末時点において3兆8,444億円(総資産の27.8%)の社債及び借入金等の有利子負債があります。当社グループは常に多様な資金調達手段を検討しており、金融環境の変化に迅速に対応できる体制を整えておりますが、景気の後退、金融収縮等の全般的な市況の悪化や、信用格付けの格下げ等による信用力の低下、事業見通しの悪化等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達できない可能性があります

また、今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります

 

⑪ 総合金融事業における法的規制に関するリスク

当社グループにおいて総合金融事業を営む連結子会社が提供するサービスには、法令に基づく許認可によるものが多くあります。これら法令及び規制の変更や新設に適切な対応ができず、あるいは違反による行政処分等を受けた場合、事業活動への制限を受ける等当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

総合金融事業を営む連結子会社は、その展開する国や地域における関係法令及び諸規制の改正動向をモニタリングし、事業活動や業績等への影響を評価・分析し、コンプライアンスリスクの把握を行っています。また、法令等に基づく各種報告や届出事項に遺漏がないよう、厳格な期日管理を実施しています。さらに、役職員に対して定期的に研修を実施し、法令遵守に努めています。

これらの法令諸規則等は将来において新設・変更・廃止される可能性があり、その内容によっては、商品・サービスの提供が制限される等、当社グループの事業、財務状況及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)の連結業績は、営業収益が10兆1,348億77百万円(対前期比6.1%増)、営業利益は2,377億47百万円(前期より130億75百万円の減益)、経常利益は2,242億23百万円(前期より132億56百万円の減益)となり、営業収益が過去最高を更新しました。親会社株主に帰属する当期純利益が287億83百万円(前期より159億8百万円の減益)となりました。

 

当連結会計年度を通じて、世界的な政情不安や戦乱、中国経済の成長鈍化等を背景に、先行きへの不透明感が継続しました。国内の実質賃金は、6月に夏季賞与の影響から2年3カ月ぶりにプラスに転じましたが、8~9月に再びマイナス、その後10月にはプラスと、足踏みする状況が続いています。年末にかけては、季節的な需要や冬季賞与により個人消費が一時的に持ち直したものの、物価上昇の影響により実質的な購買力は限定的であり、12~1月の消費者マインドには慎重さも見られました。日本政府はエネルギー価格の高騰に対応して電気・ガス料金に対する補助金政策を2025年1~3月の間で実施しましたが、依然として家計負担の軽減効果には限界があります。こうした状況下において、日常生活における節約志向と、高付加価値商品・サービスへの積極的な支出という個人消費の二極化傾向は、この先も継続が見込まれます。

そのような環境下で、営業収益についてはすべての報告セグメントが増収となりました。営業利益については、高利回りな営業債権残高の増加で資本収益性が向上した総合金融事業、増床やリニューアル効果で賃料収入が増加したディベロッパー事業、すべての上場子会社の損益が改善したサービス・専門店事業が増益となりましたが、小売事業を構成するGMS(総合スーパー)事業、SM(スーパーマーケット)事業、DS(ディスカウントストア)事業、ヘルス&ウエルネス事業、国際事業が減益となりました。

 

(グループ共通戦略)

・  当社はイオングループ中期経営計画(2021~2025年度)で掲げた5つの変革「デジタルシフトの加速と進化」「サプライチェーン発想での独自価値の創造」「新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化」「イオン生活圏の創造」「アジアシフトの更なる加速」を着実に推進し、「環境・グリーン」の取り組みを進めています。2月28日にはイオンモール㈱(以下、イオンモール)とイオンディライト㈱(以下、イオンディライト)の完全子会社化を公表しました。プラットフォームとしての役割を持つイオンモールと、インフラを担うイオンディライトの完全子会社化により、イオングループの規模を活かして両社の事業規模拡大・成長の加速をはかることで、グループ全体のさらなる成長を実現します。

・ デジタルシフトの加速と進化:

   GMS事業のイオンリテール㈱(以下、イオンリテール)では、食品売場へのセルフレジの導入がほぼ全店で完了しました。お客さまが各売場で商品をスキャンしながら合計額を確認し、無人精算機でまとめて支払う「レジゴー」を導入した店舗は6月に300店舗を超え、当連結会計年度末で337店舗となりました。9月には、イオンのトータルアプリ「iAEON」に「レジゴー」を組み込み、各種クーポンに加え、株主さま向けの優待特典の適用も可能となり、より快適なお買物体験を提供できるようになりました。サービス開始から3年強でダウンロード数が1,400万を超えた「iAEON」は、電子レシート(レシートレス機能)を活用し、お客さまからの強い要望を受けて家計簿機能の実装を検討しています。各社で個別に認識している顧客IDの共通化を進め、イオンカードや「iAEON」「WAON POINT」「AEON Pay」等を通じて蓄積された販売データや購買履歴情報を活用し、従来のマスマーケティングから顧客体験価値を最大化させる1to1マーケティングへの転換は着実に進展しています。

   実店舗では、レジの無人化に加え、“その日その時”の最適な値引き率を提示して食品ロスを削減する「AIカカク」や、需要予測に基づき商品発注を最適化する「AIオーダー」等を導入しています。AIの活用で創出された人時を、接客や売場での創意工夫等、お客さま満足に直結する業務に充てることで、サービスの質を向上しています。

   オンラインチャネルでは、買物時間の短縮を求めるお客さまや、実店舗への来店機会が限られるお客さまへの対応を強化しています。顧客フルフィルメントセンター(以下、CFC)から商品を出荷するネット専用スーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」では、多様な品揃え、生鮮食品の鮮度や食べごろの保証、さらに7時から23時までの1時間単位で商品受取を指定できる利便性が評価されており、店舗数が限られる首都圏エリアでの事業基盤強化が順調に進んでいます。2月末時点の会員数は約50万人まで増加し、ハブとなるCFC以外に配置した7カ所のスポーク(中継地点)で、東京23区全域を含むサービスエリアにおいて、730万世帯以上のお客さまへの配送が可能となりました。さらに、建設中の第2号八王子CFC(東京都八王子市)と第3号久喜宮代CFC(埼玉県南埼玉郡宮代町)の稼働により、2027年度以降には1都3県の主要エリアで最大約1,500万世帯をカバーする体制が整う見込みです。

・ サプライチェーン発想での独自価値の創造:

   当社のプライベートブランド(以下、PB)であるトップバリュでは、グループの規模を最大限に活かし、戦略・計画から店舗オペレーションまで、川上から川下までを包括するサプライチェーンを構築し、常にお買い得な価格で高品質の商品を提供しながら、荒利益率の改善も目指しています。依然として商品の値上げが相次ぐなか、トップバリュは「コツコツコスパ」をテーマに、「トップバリュベストプライス」(価格訴求型)の厳選品目の値下げや増量で価格意識の高いお客さまのニーズに応えています。「トップバリュ」(付加価値型)や「トップバリュ グリーンアイ」(環境配慮型)を合わせたトップバリュ3ブランドのグループ内展開と売上構成比の拡大に注力するほか、グループ各社が地域生産者と連携して開発するローカルPBや、薬、ペット、スポーツといった専門性の高い商品群のPBも展開しています。これらを通じ、2025年度までにPB全体で売上高2兆円の達成を目指します。さらに、2025年を目標にトップバリュのすべての商品をReduce(リデュース=削減化)、Reuse(リユース=再使用化)、Recycle(リサイクル=再資源化)の3Rに対応した形で開発し、お客さまの日々のお買物が環境負荷低減につながる仕組みを構築していきます。

   さらに、商品の企画、製造、販売の内部化や機能会社の活用による収益力の向上もはかっています。ナショナルブランド商品では、イオン商品調達㈱にグループ内の需要を集約し、大量購入によるコスト削減分を商品価格に反映します。食品分野では、レストラン品質の商品を提供しつつ、効率的な製造・販売を実現する次世代型総菜プロセスセンター(以下、PC)「Craft Delica Funabashi」(千葉県船橋市)が6月に稼働しました。商品の質の向上はもとより、各地域にPCを配置することで、店舗における加工・調理の人時削減を推進します。さらに、7月に本格稼働した物流センター「イオン福岡XD」(福岡市東区)では、構内作業の改善や物流作業の自動化を推進して、作業負荷の軽減や生産性の向上を目指しています。トヨタ自動車㈱が主導する商用車連合Commercial Japan Partnership Technologies(CJPT)との提携による、モビリティ、データ、エネルギーの各ソリューションを通じたCO2排出量削減にも取り組んでいます。

・  新たな時代に対応したヘルス&ウエルネスの進化:

   2024年2月に資本業務提携契約を締結した当社、㈱ツルハホールディングス(以下、ツルハ)、ウエルシアホールディングス㈱(以下、ウエルシア)の3社は、尊敬と信頼に基づく強いパートナーシップのもと、住む場所や世代を問わず、地域で暮らすすべてのお客さまに、より良い商品・サービスを提供し、健やかで安心できる暮らしを支え続けることを目指しています。少子高齢化や生活習慣病の増加、医療・福祉サービスの地域格差といった社会課題に対応するため、3社はドラッグストアを基盤に、ツルハ・ウエルシアのヘルスケア領域での強みとイオンのウエルネス分野の取り組みを融合し、地域の健康を日常的に支える、ライフラインとしての役割を果たしてまいります。同時に、3社が一体となって生産性・効率性の向上をはかり、利便性の高いサービスを提供することで、安心して暮らせる地域社会の実現に貢献する考えです。ツルハ・ウエルシアのアセアン地域での経験と、当社の事業基盤を活かし、アジア地域でも信頼されるドラッグストアチェーンとして成長し、アジアナンバーワンのグローバル企業を目指します。

   また、イオンリテールは、シニアケアや介護に必要となる情報に着目して立ち上げたプラットフォーム「MySCUE」を基盤として、より安心してそれらと向き合える環境を整え、少子高齢化のなか、皆さまのより良い暮らし(ウエルネスライフ)を実現できるよう取り組んでいます。

・  イオン生活圏の創造:

   当社は、現中期経営計画で掲げる「5つの変革」を通じて、各地域のニーズに応じた豊かな生活圏の創造を目指しています。首都圏では、㈱いなげや(以下、いなげや)を加えて「関東における1兆円のSM構想」を掲げるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱(以下、U.S.M.H)を中心に、まいばすけっとやGreen Beansを合わせ、実店舗網とECの両面から顧客接点を強化しています。また、地域の中核施設を運営してきたイオンモールでは、今後は従来の大型店に加え、小規模な近隣型ショッピングセンター(NSC)の運営にも注力し、人口減少や単身世帯増加の課題に対して地方公共団体とも連携しながら、コミュニティの構築を推進します。当社グループの既存資産を活用し、各地域の顧客層に適したショッピングセンターへと進化し、商品やサービスを展開することで、来店客数の増加につなげる好循環を生み出し、収益基盤の強化を進めます。

   一方、所得格差や信用力の違いによる金融サービスの格差を解消する金融包摂のニーズが大きくなっているアセアン地域では、デジタルチャネルを通じた生活密着型の次世代サービスを展開しています。5月には、マレーシアでイスラム金融方式を採用したデジタルバンクAEON BANK (M) BERHAD(以下、AEON BANK (M))が営業を開始、2月にはベトナムで、個人向けローン事業を中心に展開するPost and Telecommunication Finance Company Limitedをイオンフィナンシャルサービス㈱(以下、イオンフィナンシャルサービス)が完全子会社化しました。アジアで30年以上培ったノンバンクのノウハウを活かし、金融包摂の実現に貢献します。

・ アジアシフトの更なる加速:

   当社は、1984年にマレーシアに初出店して以来、アジアにおいて事業基盤を構築してきました。現中期経営計画では、人口ボーナス期にあり、消費性向が高いベトナムを最も重要な市場と位置づけ、出店を加速しています。当連結会計年度は、イオンモール以外の施設には初入店となるGMS「AEON Ta Quang Buu」(ホーチミン市8区)を開業、9月には「AEON MALL Hue」(フエ市)をグランドオープンしました。さらに、2026年下期の開業に向けて、北中部の「AEON MALL Thanh Hoa」(タインホア市)や、世界遺産ハロン湾付近に「AEON MALL Ha Long」(ハロン市)を着工しました。ホーチミンに近い南部ドンナイ省では、現地の開発会社Viet Phatグループと、ショッピングモール開発に向けた基本合意書を締結しました。これらにより、南部エリア(主要都市:ホーチミン、ビンズオン)、北部エリア(同:ハノイ、ハイフォン)に加え、ベトナム第3の経済圏である中部エリア(同:フエ、ダナン)を中心とした周辺都市へのドミナント出店を加速しています。ベトナム以外の地域でも、人口動態や交通網の整備状況を考慮して市場拡大が期待できる地域として、3月にはインドネシアのデルタマス、6月には中国浙江省杭州市、9月には同湖南省長沙市で新店を開業しました。

・ 環境・グリーン:

   当社は、国際的な環境調査と情報開示を行う非営利団体CDPにより、排出削減、気候変動リスク緩和、低炭素経済構築等の取り組みが認められ、気候変動対策において最高評価のAリストに6年連続で選出されました。イオンモール豊川(愛知県豊川市)では「脱炭素都市づくり大賞」において最優秀賞「環境大臣賞」を受賞する等、2040年までにグループ全体のCO2排出ゼロを目指し、持続可能な成長に向け、グループ一体となって取り組んでいます。

   また、ESGのうちのSocial(社会)について、基本理念「平和を追求し、人間を尊重し、地域に貢献する」のもと、物価高騰が継続するなかで、従業員である以前に地域の生活者である時間給社員の時給を、2025年度も平均7%増加することが決定しました。毎年実施しているエンゲージメントサーベイでは調査項目を拡充し、理念、ビジョンへの共感度合いを可視化すべく、経年で変化を追える仕組みを整えています。グループ全体で国内最大規模の約60万人を雇用している当社がエンゲージメントの向上に取り組むことには、大きな意義があると考えています。

 

セグメントごとの業績は次のとおりであります。
 なお、当連結会計年度より、報告セグメントとして記載する事業セグメントの区分を変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (セグメント情報等)」をご覧ください。

 

①  GMS事業

GMS事業は、営業収益3兆5,594億81百万円(対前期比102.6%)、営業利益163億60百万円(前期より115億65百万円の減益)となりました。

イオンリテールは、「荒利益額の最大化」「ショッピングセンター収益改善」「デジタル売上拡大」を実行しながら、耐性のある経営基盤を構築すべく「収益構造改革」を加速した結果、当連結会計年度は、営業収益が増収となりました。また、インフレによる様々なコスト上昇により、営業利益は昨年より僅かに減益になったものの、当連結会計年度に注力してきた、既存店の活性化をはじめとした店舗価値向上の取り組みが着実に成果につながっています。荒利益額の最大化においては、お客さまの日々の暮らしを支えるため、食品PBを中心にシェア拡大と客数増加を意識し、購入頻度に基づく厳選品目の値下げを定期的に実施した結果、確実にお客さまの支持を拡大しています。商品の仕様変更の際、原料の高騰に加えてお客さまの少量商品ニーズに応えて量目区分を追加したことも、売上増加につながりました。SPA(製造小売業)企業の荒利益率を目標とした改革を進める衣料では、デイリーカジュアル、ネクストエイジ(若年層)、スポーツライフ、セカンドライフ(シニア層)、オケージョン、雑貨・トラベルの6つの領域にて、売場環境、品揃え、接客を含めた働き方を改革する「専門店モデル」の導入を進め、当連結会計年度末では、対象店舗数が累計14店舗にまで拡大しました。住居余暇では、「楽しさ」「エキサイティング」を重視した「余暇強化型モデル」の有効性の実証を受けて、来期に向けて同モデルの展開を進めます。ショッピングセンター収益改善においては、来館客数を最重要KPIとして、店舗の魅力を全館で最大化する活性化・環境投資を進めています。また、子育て世代・若年層向けの新たな都市型ショッピングセンター「そよら」の展開も加速しており、特に外部テナント比率を高めた店舗で、収益が大きく改善しています。デジタル売上拡大においては、ネットスーパーで品揃えや予約企画を強化するほか、店舗におけるピックアップ比率の向上や競争環境に応じた拠点の整備・拡大により、お客さまの利便性向上と物流費低減につなげています。収益構造改革においては、デジタルを活用した生産性改善と、店舗・本社の経費削減の両輪で推進しており、特に当連結会計年度では、バックオフィスのコスト削減や人件費の適正化を進めたことで、人時生産性が大きく改善しました。

イオン北海道㈱では、経営ビジョンである「北海道のヘルス&ウエルネスを支える企業」の実現に向けて、「独自商品の強化」「新オペレーションへの移行と定着」を最重点施策として取り組みを進めています。10月1日に承継した㈱西友の北海道地域の総合スーパー9店舗では、営業再開を優先しつつ、限られた期間のなかで設備や品揃えの転換を着実かつ効果的に進めました。また、道内の商業施設減少により購買環境の不便さが増す行事関連商品の展開を強化したほか、メディアを通じた情報発信にも注力しています。節約志向を背景に、DS業態に転換した3店舗の売上高対前年同期間比は150%超と好調に推移しました。独自商品の強化については、地元の逸品や地域の名店との共同開発商品のほか、トップバリュを積極的に販売し、なかでもベストプライスが売上高対前期比112.8%と好調に推移しました。新オペレーションへの移行と定着については、セルフレジや電子棚札のほか、店舗のリアルタイム売上や単品実績を容易かつ迅速に把握する「モバイルアシスタント」システムを全店舗に導入した結果、1店舗当たりの総労働時間は対前期比98.8%となりました。また、お客さまに「イオンのあるまちに住みたい」と思っていただけるようサステナブル経営の一例として、店舗からの食品廃棄物を飼料に用いて生産した豚の肉を販売しました。

イオン九州㈱では、新たに策定した中期経営計画(2024~2026年度)において掲げた「成長領域へのシフト」「商品改革」「既存資産の魅力度向上」「生産性・経営効率の向上」「サステナブル経営の推進」の重点取り組みを通じて経営環境の変化に対応し、企業価値の向上に努めています。当連結会計年度は、食料品を中心とした物価上昇や人件費・電気代の高騰に対応するなか、セルフレジや電子棚札、AIを活用した値引き・シフト管理の導入等、店舗DX投資を積極的に進めることで、生産性の向上に努めました。店舗展開では、都市部におけるマーケットシェア拡大を目指した「マックスバリュエクスプレス」4店舗、同社子会社のイオンウエルシア九州㈱が運営する、調剤薬局併設型ドラッグストアと生鮮食品を取り扱うスーパーマーケットを融合した「ウエルシアプラス」6店舗を含む16店舗を新規に出店し、期末時点の店舗数は340店舗となりました。売上面では、食料品の堅調な推移に加え、新規出店効果や販促強化により、売上高は前期比104.3%、既存店売上高は四半期ごとに右肩上がりに伸長し、特に第4四半期連結会計期間には前年同期間比104.6%まで上昇しました。「マックスバリュエクスプレス」では、即食・簡便商品や小型店舗ならではの商品展開を強化し、既存店売上高は前期比105.2%と堅調に推移しました。「ウエルシアプラス」では食品と調剤の融合に加え、専門人材の育成にも注力し、店舗の収益力向上につなげています。ECでは、限定セールやネットスーパーの受取体制強化等が奏功し、売上は大きく伸長しました。加えて、オフィス向けキャッシュレス無人店舗「スマートNICO」や、即配サービス、移動販売サービスの拡大、iAEONを活用した販促施策により、利便性の高い購買環境の整備を進めました。サステナブル経営の推進では、食品寄附活動「フードドライブ」を279店舗にて実施しており、2019年の開始以降の回収重量は累計155トンを超える規模となりました。GMS42店舗での衣料品や雑貨の常設回収や、電子レシートの導入による紙使用削減にも取り組みました。また、環境配慮型商品の販売実績に応じた地域への寄附、熱中症対策のクーリングシェルター設置支援等、環境と地域の持続可能性に配慮した活動を継続しています。これら多面的な取り組みにより、売上・利益の成長に加えて、持続可能な社会の実現と地域との共生に向けた価値提供を推進しました。

 

②  SM事業・DS事業

SM事業は、営業収益3兆600億65百万円(前期比110.0%)、営業利益329億59百万円(前期より89億52百万円の減益)となりました。

U.S.M.Hは11月末にいなげやと経営統合しました。これを契機に事業会社間との関係を抜本的に見直し、共通する価値観と思想の基に全体の連携を強化するとともに、首都圏最大規模のスーパーマーケットとして強固な経営基盤を構築する体制への移行を進めます。具体的には「加工食品、日配食品を始めとした一括仕入調達体制の構築」「人事・総務・IT等のバックオフィス部門を集約」「IT・ロジスティクス・店舗開発等の業務統合による情報共有の迅速化とマーケティング機能の充実」を主要な目標として取り組みを進めています。同社グループとして「マルエツ草加デリカセンター」(埼玉県草加市)を本格稼働させ、伸長する調理食品の品揃えの充実をはかるとともに、店舗作業の軽減化を目指し、同社グループ内660店舗のうち約500店舗への商品供給を開始しました。㈱マルエツでは、デリカ商品の強化に注力し、草加デリカセンターで製造したオリジナルブランド「まいごころ」(米飯商品)「うまごころ」(惣菜商品)の展開を推進しました。また、新規出店や既存店活性化、省力化ツールの導入を進めたほか、宅配サービスや移動スーパーの拡充をはかり、利便性向上に取り組みました。㈱カスミでは、消費頻度の高い商品の価格引き下げや、青果の特売企画等で来店頻度の向上に努めました。生産性向上では売場の最適化と人時管理に取り組み、ベーカリーの直営化も実施し、移動スーパーや無人販売拠点の拡充も進めました。マックスバリュ関東㈱では、「商品変革」「デジタル変革」「店舗変革」を柱として変革を推進し、独自価値の提供をはかりました。地域密着型の商品展開や「MeetsValu(ミーツバリュ)」「生鮮惣菜」の強化を進めたほか、千葉市と協業して移動スーパーを新たに運行開始しました。いなげやでは、「新鮮さを お安く 心をこめて」を掲げ、来店頻度の向上に向けた店舗改装や、惣菜・鮮魚の差別化商品を強化しました。特に「鮮魚鮨」の展開拡大等、魅力ある商品づくりに注力しました。

㈱フジは、同社を存続会社、㈱フジ・リテイリング及びマックスバリュ西日本㈱を消滅会社とする期初の吸収合併以降、中国・四国・兵庫エリアを事業基盤として、2030年度の営業収益目標を1兆円と定めた中期経営計画(2024~2026年度)を策定しました。この計画に基づき、「企業文化の確立」「既存事業の改革」「事業インフラの統合とシナジー創出」、そして「ESG経営の推進」に全社一丸となり取り組んでいます。企業文化の確立に向けては、経営理念やビジョンを浸透させるための研修や教育を実施し、従業員が自律的に行動できる風土や組織づくりを進めています。既存事業の改革では、当連結会計年度において4店舗のスクラップ&ビルドと37店舗の活性化を実施しました。加えて、電子棚札を69店舗(累計90店舗)、セルフレジ等を40店舗(累計377店舗)に導入し、お客さまの利便性向上と業務効率化をはかりました。事業インフラの統合とシナジーの創出においては、上期の東四国に続き、下期には西四国にて10月に低温物流、11月に常温物流の再編を実施しました。さらに、2月には広島・山口エリアにおける常温物流の再編を行いました。また、自社プロセスセンターでは、製造・加工する商品の仕様統一に取り組むとともに、エリア単位での商品供給体制の再構築を進めています。商品調達及び商品開発では、取引先の集約や品揃えの統一を進めるとともに、トップバリュの取り扱いを拡充しています。ノンストアの取り組みでは、お客さまの利便性向上に加え、地域に密着したサービスの展開を目的に、移動スーパーの販路を、87店舗を拠点として、137台・752ルート(当連結会計年度末現在)まで拡大しました。その結果、売上高は前期比114.8%となりました。ESG経営の推進においては、社会面では地元団体への寄附、食育活動、フードドライブやフードバンク等を通じて、地域との連携を深めています。環境面では、省エネ型冷蔵ケースやLED照明への切り替えを進めるとともに、自家消費型太陽光発電の導入も進め、当連結会計年度末までに新たに18店舗(累計81店舗)へ設置しました。

マックスバリュ東海㈱では、ブランドメッセージである「想いを形に、『おいしい』でつながる。」を具現化すべく、中期経営計画(2024~2026年度)で掲げた3つの基本戦略「事業構造の変革」「テクノロジーの活用を通じた付加価値の創造」「サステナビリティ経営の推進」に取り組んでいます。営業面では、成長カテゴリーであるデリカや冷凍食品の販売強化をはかるため、品揃えの充実に向けて冷凍ケースの入替を進めました。節約志向に対しては、火水曜市やお客さま感謝デー等の販促に加え、トップバリュの新商品や増量・値下げ品、小容量商品の展開を強化し、日常の食卓を支える提案を進めています。商品面では、「じもの商品大商談会」をオンラインでも開催してネット販売の拡大もはかることで、地域商品の魅力発信に努めました。また、健康的な食生活を提案する「ちゃんとごはん」の取り組みでは、健康や食に関する情報発信や体験の場づくり、行政・大学との共同開発商品の販売を通じて、地域とのつながりを深めました。店舗展開では、16店舗を改装し既存店の競争力強化をはかるとともに、5店舗を新たに出店した結果、当連結会計年度末の店舗数は244店舗となりました。あわせて、移動スーパーの台数拡充、ネットスーパー拠点の拡大、ネットショップの拡充、「Maxマート」の出店推進、「Uber Eats」の活用により、買物機会の多様化を推進しています。また、iAEONアプリによるクーポン配信や、株式上場20周年を記念したセールやキャンペーンも実施しました。システム面では、電子棚札やキャッシュレスセルフレジの導入、気象データを活用した農産品の自動発注支援により、業務効率と在庫精度の向上をはかりました。こうした取り組みを通じて、「事業構造の変革」と「テクノロジーによる付加価値の創造」を進めています。人材の確保・育成に向けては、二期連続で大幅な賃上げを実施するとともに、自らキャリアの方向性や働き方を選択できる新たな人事制度を導入し、研修体制の充実やDX教育、多様性を尊重した職場環境の整備、健康経営の推進を通じて、従業員が主体的に成長でき、働きがいを感じられる環境づくりに取り組んでいます。

DS事業は、営業収益4,114億47百万円(対前期比102.8%)、営業利益79億91百万円(前年同期より4億97百万円の減益)となりました。生鮮食品を中心とした価格競争力の強化による節約ニーズへの対応に注力し、単位当たりの安さを追求したケース販売や、大容量商品を訴求しながら、iAEONやAEON Payの活用で、お客さまの利便性も向上させています。

 

③  ヘルス&ウエルネス事業

ヘルス&ウエルネス事業は、営業収益1兆3,228億76百万円(対前期比107.1%)、営業利益360億7百万円(前期より65億92百万円の減益)となりました。

ウエルシアホールディングス㈱及び同社連結子会社では、2030年のありたい姿として「地域No.1の健康ステーション」の実現を目指しています。2024年3月には、情報システム会社である㈱エクスチェンジを完全子会社化しました。6月には長野県を地盤に21店舗を展開する㈱とをしや薬局を完全子会社化し、9月にウエルシア薬局㈱が吸収合併しました。また、同月には当社及びいなげやから㈱ウェルパークの全株式を取得し、10月には首都圏にて介護事業を展開するウエルシアパートナーズ㈱(旧東電パートナーズ㈱)を完全子会社化しました。また、2024年グッドデザイン賞をともに受賞した地域協働コミュニティスペース「ウエルカフェ」、移動販売車「うえたん号」等の活動により、地域インフラとしての役割を果たします。当連結会計年度において、物販部門では、たばこ取り扱い中止による減収影響はあるものの、機能、品質、エコ性能を強化したオリジナルPB「からだWelcia」「くらしWelcia」の開発及び拡販を進め、WAON POINTサービスとの連動により、同社のポイント会員であるウエルシアメンバーが1,380万人まで増加しました。調剤部門において調剤併設店舗数の増加(当連結会計年度末現在2,282店舗)により処方箋受付枚数が増加した結果、物販及び調剤合計の既存店売上高対前期比は堅調に推移しました。なお、当連結会計年度は78店舗の出店、55店舗の閉店を実施した結果、同社グループの店舗数は3,013店舗となりました。

 

④  総合金融事業

総合金融事業は、営業収益5,304億52百万円(対前期比109.7%)、営業利益611億65百万円(前期より99億34百万円の増益)となりました。

イオンフィナンシャルサービスはOur Purpose「金融をもっと近くに。一人ひとりに向き合い、まいにちのくらしを安心とよろこびで彩る。」のもと、小売業発の金融グループの強みである「生活者視点」に立ち、展開するアジア各国において、すべてのお客さまのライフステージや生活環境の変化に対応した金融サービスの提供を目指しています。

国内では、イオン生活圏におけるお客さまへの提供価値の最大化と、グループ全体の最適化を目指し、決済関連事業の集約を進めています。イオンフィナンシャルサービスは2月に、イオンリテール、㈱イオン銀行(以下、イオン銀行)が運営していたWAONバリュイシュア事業の譲受を完了しました。さらに、2025年3月、コア領域・成長領域への経営資源の集中をはかるため、イオン・アリアンツ生命保険㈱の発行済株式の85.1%を明治安田生命保険相互会社へ譲渡することを決議し、株式譲渡契約を締結しています。また、イオン銀行では、日本銀行の金融政策や金利環境の変化を踏まえ、2024年5月、10月、さらに2025年3月に円預金及びローン金利の改定を行いました。「イオン銀行Myステージ」では上位ステージ向けに優遇金利を設定し、あわせて退職金定期預金や特別金利施策等の展開を進めた結果、預金残高は5兆2,016億33百万円(期首差6,622億60百万円増)となりました。住宅ローンでは、金利改定とともに「イオンセレクトクラブ」の特典訴求を強化したことで、取扱高は5,579億13百万円(前期比99.9%)となりました。マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に関する管理態勢については、1月に金融庁へ業務改善計画書を提出し、現在は態勢強化と信頼回復に向け、全社一丸となって取り組みを進めています。リテール事業では、Web・スマホアプリ「イオンウォレット」のUI・UX改善や、AIによる個別アプローチ強化を進めた結果、ショッピングリボ・分割債権残高は3,615億66百万円(期首差507億96百万円増)、キャッシング債権残高は4,279億3百万円(期首差155億81百万円増)と、営業債権残高が着実に拡大しています。ソリューション事業では、国内カード有効会員数は2,616万人(期首差32万人増)、「AEON Pay」の会員基盤拡大や加盟店ネットワークの拡充により、国内の有効ID数は3,615万人(期首差209万人増)となりました。加えて、イオンモール専門店でのゴールド会員向け「お客さま感謝デー」特典の実施や、AEON Payの利用拡大施策を通じ、カードショッピング取扱高は7兆4,925億11百万円(前期比105.8%)まで伸長しました。AEON Payの加盟店数も、カフェやドラッグストア、カラオケ店等日常に密着した業種を中心に拡大し、303万箇所(期首差108万箇所増)に達しています。

海外では、中華圏の主要エリアである香港では景気回復の遅れや物価高の影響が続くなか、現地法人AEON CREDIT SERVICE (ASIA)CO.,LTD.では、中国本土のイオングループ店舗との協業やモバイルペイメントの強化、訪日観光客向け施策等によりカードショッピング取扱高が順調に拡大しました。あわせて、データ分析を活用した営業強化や即時ローンの導入により、カードキャッシング・ローン取扱高も伸長しました。メコン圏の主要エリアであるタイでは、経済環境の制約が続くなかでも、現地法人AEON THANA SINSAP (THAILAND) PCL.はデジタルクレジットやプロモーション施策の強化によりカード・ローン取扱高を着実に伸ばす等、成長に向けた取り組みを順調に進めています。マレーシアにて5月に開業したデジタルバンク「AEON BANK (M) BERHAD」が、2025年3月より個人向けローン「Personal Financing-i」の提供を開始する等、サービスの拡充に取り組んでいます。イオングループとして海外戦略の最重要国と位置付けるベトナムでは10月に共通ポイント「WAON POINT」の展開を開始し、イオン生活圏の拡大を目指しています。

 

⑤ ディベロッパー事業

ディベロッパー事業は、営業収益4,961億70百万円(対前期比105.9%)、営業利益530億35百万円(前期より56億86百万円の増益)となりました。

イオンモールでは、当連結会計年度の営業収益、営業利益、経常利益が増収増益となりました。2023年5月に策定した2030年ビジョン「イオンモールは、地域共創業へ。」に基づき「つながる」を創造し、広げ、深め、持続可能な地域の未来につながる営みを共創する企業を目指しています。人口動態の変化等により、国・地域ごとに抱える課題が多様化・複雑化している社会において、一律ではなく、地域の生活圏に着目し徹底したマーケット分析・調査を行うことで、各地域が抱える課題やニーズを汲んだ事業展開を進めていきます。

国内では、既存モールの競争力強化を目的としたリニューアルを推進し、イオンレイクタウンの「Lake Town OUTLET」(埼玉県越谷市)及びイオンモール太田(群馬県太田市)の増床リニューアルを実施しました。集客施策としては、ゴールデンウィーク期間中に全国のモールで1,500件を超えるイベントを開催したほか、夏季には猛暑対策として館内での夏祭りやミニ花火ショー等の企画を通じ、地域におけるクールシェアスポットとしての役割を果たしました。下期には物価高を背景に高まる節約志向に対応し、「イオン ブラックフライデー」や「イオン 超!初売り」を展開しました。これらの施策により、既存モールの来店客数は前年を上回りました(対象92モール)。また、円安進行を受けて拡大傾向にあるインバウンド消費については、観光地や空港周辺のモールを中心に需要の取り込みを進めた結果、免税売上は前年の約2倍に伸長しました。今後のさらなる需要拡大に向け、海外モールにおいて日本国内のイオンモールや周辺観光情報の発信を強化する等、海外拠点を活用した取り組みを進めています。

海外では、中国において既存モールの歩合賃料収入の増加や新規モール展開により増収となった一方で、前期に閉店したモールの利益減少や新規モールの開業費用により営業利益は減益となりました。飲食やアミューズメント等の時間消費型の業種が堅調で、全モールで開催した「イオンモール超級大旺日(スーパーラッキーデー)」が売上、来店客数双方の伸長につながったことから、お客さまの消費意欲を喚起する集客イベントや営業施策を強化して売上拡大をはかります。ベトナムでは、地域行政や団体と連携したイベント実施や専門店で利用可能なクーポン発行等の取り組みに加えて、記念日や季節行事に合わせたセールス企画や集客イベントを計画的に実施した結果、増収増益となりました。中部エリア初のイオンモール フエ(フエ市)をオープンし、新たな市場開拓を進めています。カンボジアでは、イオンモール ミエンチェイ(プノンペン都)における周辺道路工事の進展や館内リノベーション、SNSを活用した広告展開等の集客策や、イオンモール プノンペン(プノンペン都)の増床リニューアル効果から増収となりましたが、集客回復のための販促活動強化に伴う費用増加により、減益となりました。インドネシアでは独立記念日に合わせたプロモーションや既存モールの空床改善により来店客数が増加し、黒字に転換しました。

 

⑥ サービス・専門店事業

サービス・専門店事業は、営業収益7,291億52百万円(対前期比101.6%)、営業利益231億4百万円(前期より53億96百万円の増益)となりました。

イオンディライトの当連結会計年度はイオングループ内外における顧客内シェア拡大や新規受託物件の増加に加え、人件費や外注費、原材料費等の原価上昇に伴う単価見直しの推進により増収増益、営業利益、経常利益は過去最高となりました。人件費や外注費の上昇が課題となる設備管理・警備・清掃の各事業では、継続契約の新規受託をはじめとした売上高の拡大により原価上昇分の影響を吸収し増収増益となりました。また、建設施工事業では、お客さまのエネルギーコスト上昇に対応した省エネ関連工事の受託拡大に加え、工事体制の強化を通じて複数の大型工事を受託したことにより増収増益となりました。資材関連事業では、各種資材の受注を拡大するとともに、原価上昇分の適正な売価への反映や配送効率の向上を通じた物流コストの抑制に取り組み、増収増益となりました。

㈱イオンファンタジーは、「こどもたちの夢中を育み、“えがお”あふれる世界をつくる」というパーパスの実現に向け、『こどもたちの“たのしい”を創造し、「こころ・あたま・からだの成長」を育み続けるファミリー支援企業になる』ビジョンのもと、新中期経営計画(2024~2026年度)を推進しています。

当連結会計年度は、戦略的小型店や新業態の出店を進めている国内事業において、プライズ部門が既存店売上高前期比110.4%と好調、メダル部門も同103.4%と堅調であったことや、飲食併設の大型店舗「Feedy Diner&Arcade」やプレイグラウンド「ちきゅうのにわ」を含む出店が計画を上回って進捗したことで売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。「ちきゅうのにわ」等の新業態を含む出店が計画を上回って進捗したことで売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。戦略的小型店はプライズ専門店19店舗、カプセルトイ専門店54店舗の出店をして拡大しました。

アセアン事業では、売上高が過去最高を更新した一方で、出店や本社機能の強化に伴うコスト増等により、営業利益は減少しました。主力の「kidzooona」に加え、「Kidzooona Safari」や「KID’S BOX JUMBO」等の新業態を導入し、各国で未出店のエリアや中小規模商業施設等への展開を広げました。国別の出店状況としては、成長率を重視するインドネシアで16店舗、ベトナムで10店舗を新たに出店し、拡大しました。シェア拡大を重視するマレーシアでは24店舗、フィリピンでは11店舗の出店を進めました。生産性の向上に取り組むタイでは、11店舗を新たに出店しました。一方、中国事業では、経済環境の不透明感や競争激化により売上が減少し、営業損失が拡大しました。不採算店舗等、当初計画を上回る82店舗の整理を進める一方で、アミューズメント区画を縮小してプレイグラウンド区画を拡大する等の店舗活性化を20店舗で実施しました。また、低コストかつ初月から収益化可能な小型店「莫莉活力空間」を34店舗出店し、効率的な店舗網の再構築をはかりました。なお、新業態を中心に195店舗を出店する一方、不採算店舗等134店舗(うち中国82店舗)を閉店した結果、当連結会計期間末時点の店舗数は国内753店舗、海外475店舗、合計1,228店舗となりました。

㈱コックスは、「ブランド力強化・MD改革による荒利率の改善」「EC運営改善・DtoC(Direct to Consumer)強化によるEC売上の拡大」「売り方改革・売場改革による店舗売上の回復」を重点施策に掲げています。当連結会計年度は、ブランド力の強化とMD改革では、著名タレントとの雑誌タイアップを春・秋の両シーズンでメンズ商品にも展開し、定価販売の拡大につなげました。LBCやDtoCブランドもWEB雑誌媒体と連携し、ikkaブランドは87店舗のリニューアルを完了しています。販売面では、値引き抑制やキャリー商品の活用を継続し、夏物在庫の積み増しが8月の売上に貢献しました。下期は残暑の影響で秋冬商品の動きが鈍かったものの、気温が下がった11月以降は前年を上回る水準で推移しています。仕入面では、中国やアセアンでの調達強化や為替予約の活用により、荒利益率の悪化は0.2ポイントにとどまりました。EC分野では、4月に自社アプリを刷新し、会員向け施策を強化したことで、自社ECサイトでの売上高が前期比114.9%と伸長しています。DtoCでは、インフルエンサーとのコラボやWEB雑誌との連動施策が奏功し、EC限定ブランドの売上が好調に推移しました。その結果、EC全体の売上高は前期比109.0%となりました。店舗施策では、定価販売の推進に加え、再来店クーポンの配布や売場構成の見直し、接客の質の向上等、多面的な取り組みを進め、販売効率の改善をはかりました。また、2018年10月にSDGs委員会を発足させて以来、「ちいきづくり」「ものづくり」「ひとづくり」の3つを柱として、地域への貢献や環境配慮型商品の開発、多様な人材の活躍推進等を通じて、社会課題の解決に向けた取り組みを継続しています。アパレル商品の総仕入に対する再生素材使用比率が当連結会計年度末は10.5%となり、前期比で2.7ポイント上昇しました。

 

 

⑦ 国際事業 (連結対象期間は主として1月から12月)

国際事業は、営業収益5,488億75百万円(対前期比107.9%)、営業利益94億93百万円(前期より8億78百万円の減益)となりました。

マレーシアでは、インフレによる生活費上昇の影響で必需品への支出が優先されるなか、PBの拡販や必需品への販促活動を強化し、モール来店客数の増加に伴うテナント入居率の改善も相まって、営業収益は前年同期比104%となりました。オンライン事業では、ネットスーパー「myAEON2go」において品揃えの見直しや時間指定配送の精度向上に取り組み、売上高は前年同期比111%と伸長しました。さらに、2024年5月には全国配送サービスを開始し、ギフトや大型家電・家具等の幅広い商品をマレーシア全土へ届ける体制を構築することで、顧客基盤のさらなる拡大に努めています。

ベトナムでは、経済成長の加速を背景に、売上高は第4四半期連結会計期間に前年同期間比130.1%、年度累計では前期比120.1%となりました。新規出店店舗の好調に加え、既存店も前期比112.9%と堅調に推移し、なかでも、衣料が前期比126.9%となりました。オンライン販売は、第4四半期連結会計期間に前年同期間比192%と大幅に伸長し、売上構成比は5.1%へと拡大しました。11月からは全国配送サービス「Nationwide Delivery」を開始し、当社グループが未出店のエリアも含め、ベトナム全国63省中58省からの注文を獲得する等、新たな顧客層を開拓しています。

中国では、当連結会計年度の対前期比実質GDP成長率は+5.0%と、政府目標の+5.0%前後に到達したものの、社会消費財小売総額は+3.5%、消費者信頼感指数は86.4と依然として低水準でした。政府の消費支援策の対象である自動車、家電製品、携帯関連の売上増は期待される一方、若年層を中心に雇用不安が根強く、所得環境の回復が緩やかであることから、個人消費の伸びは引き続き緩慢にとどまる見通しです。香港から陸路で大陸に移動する住民数は、橋の開通が相次ぎ、大湾区内各都市間の往来がさらに便利となったことから、前期比151%と極端な増加を示し、北上消費傾向は来期も継続が見込まれています。そのようななかでも、成長性の高い内陸部については、9月にエンターテインメント機能を充実させて内陸部の湖南省に初出店した長沙星沙店(長沙市)の業況の好調は変わらず、AEON (HUBEI) CO.,LTD.は通期で経常利益、当期純利益とも黒字転換しました。トップバリュでは、来期には量販型商品の新規開発や東南アジア向け商品の導入、既存商品のリニューアル、さらに健康商品の強化等に重点的に取り組み、増収を目指します。

 

(販売の状況)

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

GMS事業

3,559,481

102.6

SM事業

3,060,065

110.0

DS事業

411,447

102.8

ヘルス&ウエルネス事業

1,322,876

107.1

総合金融事業

530,452

109.7

ディベロッパー事業

496,170

105.9

サービス・専門店事業

729,152

101.6

国際事業

548,875

107.9

その他事業

68,193

116.3

調整額

△591,838

合計

10,134,877

106.1

 

(注) SM事業の営業収益には、コンビニエンスストアの加盟店の売上高(当連結会計年度255,032百万円)は含んでおりません。

 

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前期末より8,924億49百万円増加し、13兆8,333億19百万円(前期比106.9%)となりました。前期末からの増加の主な要因は、銀行業における貸出金が3,593億73百万円、有価証券が2,061億26百万円、有形固定資産が1,846億16百万円、現金及び預金が928億46百万円、営業貸付金が361億48百万円、投資有価証券が233億5百万円増加した一方で、受取手形及び売掛金が1,010億42百万円、差入保証金が486億68百万円減少したこと等によるものです。

 

 セグメントごとの資産は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

GMS事業

1,494,776

100.9

SM事業

1,244,965

99.7

DS事業

79,171

109.9

ヘルス&ウエルネス事業

609,201

100.8

総合金融事業

7,753,855

111.7

ディベロッパー事業

1,871,672

100.5

サービス・専門店事業

400,215

96.8

国際事業

527,030

113.9

その他事業

177,292

109.9

調整額

△324,863

合計

13,833,319

106.9

 

 

負債は、前期末より8,584億25百万円増加し、11兆7,120億92百万円(前期比107.9%)となりました。前期末からの増加の主な要因は、銀行業における預金が6,637億16百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が2,824億30百万円増加した一方で、コマーシャル・ペーパーが1,156億55百万円、短期借入金が524億44百万円減少したこと等によるものです。

純資産は、前期末より340億24百万円増加し、2兆1,212億26百万円(前期比101.6%)となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末より1,080億8百万円増加し、1兆1,721億2百万円(前期比110.2%)となりました。

 

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は5,662億18百万円(前期比153.7%)となりました。前期に比べ1,977億31百万円収入が増加した主な要因は、銀行業における預金の増減額が5,226億88百万円増加した一方で、その他の資産・負債の増減額が1,663億57百万円減少、銀行業における貸出金の増減額が1,585億97百万円増加したこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は4,788億10百万円(前期比94.1%)となりました。前期に比べ300億66百万円支出が減少した主な要因は、前連結会計年度にはなかった支配喪失会社からの貸付金の回収による収入が2,191億円発生し、銀行業における有価証券の取得による支出が1,078億58百万円減少した一方で、銀行業における有価証券の売却及び償還による収入が2,187億35百万円減少し、投資有価証券の取得による支出が1,015億76百万円増加したこと等によるものです。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、増加した資金は8億81百万円となりました。前期に比べ167億48百万円支出が減少した主な要因は、長期借入れによる収入が2,081億2百万円増加し、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出が245億13百万円減少した一方で、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増減額が2,222億38百万円減少したこと等によるものです。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

(資金需要)

当社グループの資金需要の主なものは、商品の仕入のほか、人件費、地代家賃等の販売費及び一般管理費の営業費用であります。また、設備投資に係る資金需要の主なものは、新規出店に伴う有形固定資産の取得等であります。

 

(財務政策)

当社グループの事業活動に必要な資金については、営業キャッシュ・フローによることを基本とし、金融機関からの借入れ、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等、資金調達の多様化をはかっております。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。その作成にあたり重要となる会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断のもと、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす一定の前提条件に基づく見積り及び仮定を用いております。これらの見積り及び仮定に基づく数値は、過去の実績、現在の状況、今後の見通し等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果と異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、見積り特有の不確実性により、翌連結会計年度の財政状態及び経営成績に重要な影響が及ぶ可能性があるものとして、以下の項目を「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(固定資産の減損)

(繰延税金資産の回収可能性)

(貸倒引当金)

 

その他の会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(退職給付)

退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用の計上にあたっては、確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用について、簡便法を適用している一部子会社を除き、数理計算上で設定される仮定に基づき退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率、予想昇給率、一時金選択率等の計算基礎が含まれます。特に重要な仮定のひとつである割引率については、主として優良社債の利回りをもとに、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用して算出しております。

これらの主要な見積り及び仮定について、実際の結果と異なる場合、前提条件に大きな変更が生じた場合、あるいは退職給付制度に変更があった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る資産及び退職給付に係る負債、退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、当社グループの退職給付制度の概要や主要な数理計算上の計算基礎については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (退職給付関係)」に記載のとおりであります。

 

 

(資産除去債務)

資産除去債務の計上にあたっては、不動産賃借契約に付されている土地の更地返還義務及び建物原状回復義務に基づき、借地物件における自社建物の解体費用、建物賃借物件における原状回復費用等を一定の仮定をおいて見積り、割り引くことにより算定しております。将来の除去費用の見積りについては、主として過去の実績、施工業者による見積りを基礎とし、個別の契約内容等を考慮して算定しております。

これらの主要な見積り及び仮定について、実際の除去費用が見積り金額と異なる場合、新たな事実の発生により使用見込期間や原状回復費用の見積り額等に影響を与えることとなった場合、資産除去債務の金額に影響を与える可能性があります。

なお、資産除去債務の概要や金額の算定方法については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (資産除去債務関係)」に記載のとおりであります。

 

なお、当社の個別財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 なお、連結決算日後において、以下の契約等の決定又は締結等を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

 (1) 連結子会社による株式譲渡契約の締結(イオン・アリアンツ生命保険㈱)

当社の連結子会社であるイオン・アリアンツ生命保険㈱の株式の譲渡に関する株式譲渡契約を締結しております。

(2) 資本業務提携に係る最終契約の締結等(㈱ツルハホールディングス)

当社、㈱ツルハホールディングス(以下、「ツルハHD」という。)及び当社の連結子会社であるウエルシアホールディングス㈱(以下、「ウエルシアHD」という。)は、資本業務提携に係る最終契約を締結しております。加えて、ツルハHD及びウエルシアHDは、ツルハHDを株式交換完全親会社とし、ウエルシアHDを株式交換完全子会社とする株式交換契約を締結しております。

(3) 株式交換契約の締結(イオンモール㈱)

当社及び当社の連結子会社であるイオンモール㈱(以下、「イオンモール」という。)は、当社を株式交換完全親会社とし、イオンモールを株式交換完全子会社とする株式交換契約を締結しております。

(4) 公開買付けによる子会社株式の追加取得(イオンディライト㈱)

当社は、当社の連結子会社であるイオンディライト㈱の株式を金融商品取引法による公開買付けにより追加取得しております。

 

 

6 【研究開発活動】

特記事項はありません。