(1) 会社の経営の基本方針
企業ミッションである「人類を場所・時間・言語・物理的な制約からの解放」の実現が経営の目的です。より、具体的にはAI、AR(Augmented Reality:拡張現実)、VR(Virtual Reality:仮想現実)、5G/6G/7G(高速大容量・多数同時接続通信)、4K/8K/12K(超解像映像)、映像配信ソリューション、ウェアラブルデバイス、ロボット、HA(Human Augmentation:人間拡張)等の最新テクノロジーを統合して、世界中の人々が「いつでもどこでも誰とでも言語フリーで」交流し、生活し、仕事し、人生を楽しめる世界を実現します。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
HT事業をキャッシュカウ、AI事業を短中期の成長戦略、メタバース事業を5~10年後を見据えた長期成長戦略と位置付けています。
AI事業の事業戦略は「業種分野特化×垂直統合型AI×日本企業のグローバル対応」のポジショニングです。
(3) 経営環境
生成AIが爆発的な進化を遂げ、今後急速にパラダイムシフトが起こると予想されることより、当社には大きなチャンスが到来したと考えております。メタバースについては、主にハードウエアと通信インフラの問題から、スマートフォン並みに普及するのはまだ先(早くて5年、遅くて10年後)であると判断しています。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①経営陣の刷新とメタリアル=ロゼッタの経営統合
今期の業績低迷の根本的な原因を「ロゼッタ経営における権限移譲ステージの失敗」であると認識し、緊急策として創業者の五石の復帰をはじめとしたメタリアル=ロゼッタの経営統合を行います。また、本社機能の弱さも課題とし、本社側の経営陣の刷新も行います。CFO(財務)、CSO(戦略)等の執行役員の増強をはじめ、マーケティング、M&A、IR、営業、事業執行、後方支援等、外部から優秀な経営陣とスタッフを迎え、本社に精鋭チームを構築いたします。グループ経営陣がロゼッタの経営に直接関与するとともに、優秀な複数の事業責任者(COO)による分割体制を構築し、あらためて権限移譲ステージへの再挑戦を行います。
また高成長時代のロゼッタの強みである組織能力が消滅していたことから、改めて、事業戦略、行動、コミュニケーション、人事制度における価値基準を明文化して全社員で徹底します。
②業種特化の専門文書をターゲットにしたAI翻訳の事業基盤を生成AI事業に拡大
「業種特化型の専門文書」を対象にしたAI翻訳として顧客に高く評価を受けた『T-4OO』等の専門文書データと6,000社を越える顧客基盤を活用することによって、「業界特化の専門文書」に領域を絞ったまま、これまでの翻訳という狭い領域から文書作成における全工程に領域を拡大し、「垂直統合型AIエージェント」にシフトします。
受託開発、共同開発、SaaSプロダクトの形態で、顧客が抱える専門文書作成に関わるスピード・人的工数等の課題を解決します。
分野の優先順位としては、製薬業界特化型向けAIプロダクト/ソリューションの「ラクヤク」を現在最も有望な分野として注力いたします。
③メタバース事業におけるデジタルツインを自動生成するAI技術を活用した受託開発ソリューション提供の開始
メタバース事業は、10年±5年後以降での開花を想定する長期成長戦略として、「Metaverser」構想及びその手段としての「Metaverse×AI」を課題として取り組んでおりますが、特に今期からはデジタルツインを自動生成するAI技術を活用した受託開発ソリューション提供の開始に注力しております。デジタルツイン構築の従来手法としては「3Dレーザースキャン」「平面キャプチャ画像の組み合わせ」が存在しましたが、前者は手間とコスト、後者は視点・視野に制限があるなどの課題がありました。そこで、次世代の3D空間構成技術「Gaussian Splatting」によって、特別な機材や作業無しに、スマホで撮影した動画から簡単にフォトリアルなデジタルツインを自動生成するAIの受託開発ソリューションを提供します。ユースケースは建設・不動産・製造業を中心とした産業向けを想定します。
また、VR/デジタルツイン事業の成長基盤としては、今後は新たにグループ会社として迎えた株式会社STUDIO55が中心となります。これまではGaussian Splattingや生成AIに関する最先端の技術力が当社の強みである反面、建築業界の知見が薄く顧客基盤がないことが弱みでしたが、株式会社STUDIO55は建築デザインのVR・CG・BIM分野において高度な専門技能と広範な顧客基盤を有し、業界内での堅固な実績と信頼を確立しています。このたびの子会社化により、当社の最先端のAI技術と株式会社STUDIO55の専門技能と顧客基盤を組み合わせたシナジー効果で当分野において飛躍的な成長を目指します。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
メタリアル・グループが掲げる「人類を場所・時間・言語・物理的な制約から解放する」という企業ミッションは、持続可能な開発目標(SDGs)に密接に関係しています。
特に「第3章 人類を身体機能の限界から解放する(xR事業)」「第4章 人類を物質世界から解放する(HA事業)」は、物質(エネルギー)への依存性を低めることによって「環境保護と持続可能な消費と生産」と同時に、性別、人種、身体能力に基づく差別や障壁を取り除くことによって「人や国の不平等をなくす」という方向に合致します。
例えば、当社グループが提供しているリアリティ・メタバース「どこでもドア」のカテゴリの一つ「旅行」では、VR(仮想空間)のなかでリアルな旅行体験を再現しつつ、世界各地の文化や自然を体験することができます。
飛行機や自動車といった交通手段に依存することなく、持続可能な方法で遠隔地を「訪れる」ことができます。これにより、大気汚染や温室効果ガスの排出を削減し、気候変動対策に貢献します。加えて、過剰な観光による地域社会や生態系への負荷を減らすこともできます。環境への影響を最小限に抑えながら、世界中の美しい風景や異文化を体験することができるのです。さらに、VR旅行は時間とコストの節約にも繋がり、多くの人々にとってよりアクセスしやすい旅行の形態を提供します。この技術は、特に現在の環境危機を鑑み、地球に優しい代替手段として期待されます。
また、旅行の例に限らず、あらゆる分野において、VR環境内では、性別、人種、年齢、身体能力の違いが影響を及ぼすことなく、すべてのユーザーが平等にアクセスしやすい状態を実現することが可能です。VRのプラットフォームでは、ユーザーは任意のアバターを選択し、表現と行動の自由を享受できます。これにより、身体的な制約や社会的スティグマが存在しない環境が生まれ、個人の能力を最大限に発揮することが可能になります。他にも、教育やトレーニング、治療プログラムにおいても、VRは多様なニーズに応じたカスタマイズが可能であり、すべての人が平等にアクセスできる学習機会を提供します。現代社会において、多くの人々が性別、人種、身体能力に基づく差別や障壁に直面していますが、VR技術はこれらの物理的及び社会的限界を超え、誰もが平等に参加できる仮想環境を提供することで、より公正で包摂的な社会の実現に寄与します。リアリティ・メタバース「どこでもドア」の実績例としては、障がい者自立推進団体の所属アーティストや終末期も見据えた療養病院の患者、アフリカ地域から発信するイベントホスト等があります。このような活動では、国、性別、人種、年齢、身体能力に関わらず、全ての人が公平に扱われる新たな社会の形成の一助となることを期待しています。xR事業の発展は、SDGsの達成に向けた強力なステップであり、社会的障壁を取り除き、より公平で包摂的な世界の構築に貢献することで持続可能な未来への重要な鍵となると考えています。
以上、当社グループの事業活動は持続可能な開発目標(SDGs)に密接に結びついています。
また、会社方針と密接な関係性がある代表者理念についても併せて定義・発信し、人的経営方針の一部として「成果に見合った報酬」「通り一遍ではないチャレンジング採用」を掲げております。
(1) ガバナンス
会社方針に反した企業活動を場当たり的に行うのではなく、「世界中の人々を場所・時間・言語の制約から解放する」というミッションに基づいた会社経営、事業上の意思決定であることについて、ホールディングスカンパニーとしての当社取締役会、監査役会において協議・確認の上、各種業務施策を行っております。また、同親会社取締役会協議においては、特に将来戦略と密接にかかわっている株式会社ロゼッタ取締役についても参加を促し、より実践的な業務レベルまで協議を行っております。
なお、人的経営資源の獲得・保護を目的に従業員が不当な差別、ハラスメントを受けることを防止するために各種対応を行っております。
(本対応は、「多様性尊重」のみを目的にピボットされた対応ではなく、すべての当社従事人員を不当な差別やハラスメントから保護をすることを目的としております。)
・人事委員会の整備
当社においては、ハラスメント報告等については親会社諮問機関としての人事委員会において役員に共有され、事実認識、双方主張内容、顛末等の共有を図り、その中で担当部門対応・事実認識確認方法等について疑念があれば直接人事委員会メンバから確認が行われます。なお、ハラスメント報告の関連当事者に人事委員会メンバの名前が挙げられるようなケースにおいては同委員会での報告とは別に報告が図られ、報告者の匿名性は担保されたまま初期対応が行われます。
・通報窓口(外部窓口の整備)
上記、社内における報告とは別に、外部への通報窓口も整備されており、初期対応について会社への連絡とは別に行うという選択肢も整備しております。
・「コミュニケーション向上に関する基本方針」の制定及び周知
2022年に会社公式文書として「コミュニケーション向上に関する基本方針」を制定し、その周知を行っております。
同文書は特に、「問題意識があるにもかかわらず沈黙すること(意思表示しないこと)」「事実に基づいておらず、かつ業務と無関係の他者否定による沈黙風土醸成の防止」について主眼を当てて、それら双方について会社方針として是としない旨を定めております。
・真の平等を目的とした、事実に基づいた判断の徹底
上記のハラスメント報告や通報があった後には、報告者への聞き取りによる事実確認を行うと同時に被報告者への聞き取りも行い、事実確認を徹底しております。
なお、被報告者側への聞き取りに先んじて、同聞き取りを行う旨については報告者に対しても事前に了承を求めており、被害者の意図していないタイミングで加害者側への聞き取りが行われるという事象の無いよう徹底しております。
(2) 人材育成方針 社内環境整備方針
当社グループではビジョンに即した人材採用並びに育成に向けて親会社並びにAI事業関連子会社には下記の会社環境を整備しております。
・年4回の給与更改
適時適切な能力・給与反映のため給与更改の機会は標準では年4回設けられております。また、別途ジョブディスクリプション等による評価反映による臨時調整も含め、適切な給与等を支給すべきだが「会社制度上適時の反映ができない」ということが発生しないようになっております。
・子会社への権限移譲
上記の年4回の給与更改も含め、各種法令に照らして妥当であれば、子会社における待遇について親会社から制約がもたらされることはなく、子会社役員合意によって現場に即して適時適切に行われます。
・採用活動及び門戸の広範性
当社の採用活動において、学歴や性差による取り扱いの差はなく、また所謂新卒と中途採用における区分もなく、あくまで「ある業務が期待されるあるポジション」が存在しているのみであり、選考においては同ポジションにふさわしいかという1点のみに照らして判断されております。その中で、現時点でポジションにふさわしいという形での中途採用、将来的なポテンシャルを期待してのチャレンジング新卒採用が発生することはそれぞれあるものの採用形態(新卒・中途)や学歴を入口とした区分はございません。
また、望まぬ正社員雇用や性急な採用によるミスマッチ発生などは求職者・当社ともに不幸な帰結を招くことが多く、希望者については必ずしも正社員雇用に限定されない副業・業務委託としての雇用を行い、そのうえで本人希望の際に正社員採用へ切り替えるといった手法も採択しております。
(3) リスク管理
当社グループは、サステナビリティに関する課題(特に当社においては人的経営資本に関する課題)を把握し評価するため、(1)ガバナンスに記載した各種の窓口を通してリスク・機会を特定しています。代表取締役を長とする人事委員会における協議や監査役会からの指摘等に基づき、案件に応じて、取締役会への報告・提言を行っています。企業戦略に影響する世の中の動向や法制度・規制変更等の外部要因の共有や、グループ各社の施策の進捗状況や今後のリスク・機会等の内部要因を踏まえて、戦略・施策等の検討を実施していきます。
(4) 人的経営に伴う指標並びにその属性について
当社グループにおける中核会社である株式会社ロゼッタにおいて、直近2年間の有給休暇消化率(付与日から1年以内の消化率)並びに「45時間を超過する時間外労働の発生件数(管理監督者除く)」は下記のとおり推移しております。
また、人件費単価(損益計算書・製造原価報告書に計上されている人件費(給与・賞与)を従業員数で除した数)推移は下記のとおりです。
|
|
2024年2月期 |
2025年2月期 |
|
|
(※1)75.9% |
(※2) |
|
|
0 |
|
|
|
6,490千円 |
|
※1.2024年2月末在職者を対象として計算しております。
※2.2025年2月末在職者を対象として計算しております。
ただし、当社グループにおいては上記指標も含めて、今後の達成目標指標を設けてはおりません。具体的な数値目標を定めることはかえって、同数値目標のためだけに会社全体としては合理性を有していない施策が実行されることや、数値目標水準程度の達成で十分とする負のアナウンス効果が社内に対して誘発することが想定されます。
そのため、当社グループとしては、あくまで「成果に対する確かな報酬提供」と「個人の人格・人種・性差・学歴」等の恣意的要素ではなく「適切・誠実に適切な業務を行ったか否か(上長においては有給休暇取得を阻害しないような業務分担・風土情勢も含め)」に鑑みて人的資本経営が行われるべきものと考えており、今後も同方針を継続していきます。
投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.事業環境に関するリスク
(1) 法的規制・制度の新設・改定等による影響について
現在、当社が営むインターネットを利用して提供するサービスに関連した規制法令等はありませんが、今後、インターネットの利用者や関連するサービス及び事業者を規制対象とする法令等の制定や、既存の法令等の適用、あるいは何らかの自主的なルールの制定等が行われた場合、当社グループの事業が制約され、AI事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが提供しているHT事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」の規制の対象外でありますが、今後、同法律の改定等により、当社の事業も適用対象とされた場合には、事業運営に厚生労働大臣の許可が必要となり、許可の取得に時間を要する場合、許可の取得ができない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 技術革新について
AIの分野は、技術革新のスピードの変化が激しく、新しいサービスが逐次産み出されている分野です。当社においても、こうした技術革新への変化に対応するべく、積極的に最新情報の蓄積、分析及び当社のサービスへの導入に取組んでおります。しかしながら、技術革新において当社が予期しない急激な変化があり、対応が遅れた場合には、当社のサービスの陳腐化や競争力の低下を引き起こし、AI事業、HT事業及びメタバース事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 需要の変動について
当社グループのAI事業、HT事業の顧客は、製薬、化学、製造、IT業界などの事業会社が中心です。これらの顧客が属する業界において、何らかの法制度等の変更、景気変動、業界再編による企業数の増減等があった場合、あるいは顧客の方針変更(例:内製化、外注先の絞り込み等)があった場合には、当社グループが提供するサービスへの需要が大きく変動する場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、HT事業においては、米国・欧州・中国等の世界各国の政治・経済情勢等の変化、法律の改正、外交問題等の要因により顧客企業のグローバル展開に影響を与え、企業研修サービスへの需要が大きく変動する場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 競合と参入障壁について
民間企業ではありませんが、総務省所管の国立研究開発法人情報通信研究機構が開発している専門分野別産業向け文書機械翻訳エンジンが当社のAI事業サービスに対して競合関係となっており、ユーザーの争奪等で激しい圧迫を受ける場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。官庁による後ろ盾の影響力や国庫からの資金力を利用した追随は脅威になり得ます。
2.事業内容に関するリスク
新規事業(メタバース事業及びAI等のAI事業における新規事業)に関する会計上の数値が費用先行型になるリスク
メタバース事業及びAI等のAI事業における新規事業について、開発・アジャイルブラッシュアップに伴い発生する開発コスト分により連結決算上の損失計上額が多額になるリスクがあります。
3.事業運営体制に関するリスク
(1) 人材の確保について
当社グループは、開発部門、営業部門、制作部門、管理部門等における優秀な人材の確保を重要な経営課題の一つと認識しており、積極的に採用活動を行い、全役職員が最大限の能力を発揮できる組織体制づくりなどに取組んでおります。しかしながら、これらの施策により優秀な人材を確保・維持できなかった場合等には、当社グループにおいて自動翻訳の開発の遅れ、販売戦略の見直し、提供しているサービスの質の低下、業務執行体制や内部管理体制の不備等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 内部統制について
内部統制の一部又は全部が適切に整備・運用されない場合、当社グループの経営成績及び財政状態、レピュテーション並びに金融機関との関係等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、その他内部統制の整備上の欠陥や運用上の認識不足等の不備により財務報告等に重大な誤りが生じた場合にも、当社の信用が失墜するとともに、当社グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。
4.システムに関するリスク
当社が行っているAI事業は、インターネット環境で「SaaS」で提供するサービスであり、サービスの安定供給のために適切なセキュリティ対策を施しておりますが、ハードウエア・ソフトウエアの不具合、人為的なミス、コンピューターウイルス、第三者によるサイバー攻撃、自然災害等の予期せぬ事象が発生し、想定していないシステム障害等が発生した場合には、当社の事業活動に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
5.コンプライアンスに関するリスク
(1) 顧客の機密情報の保護について
当社グループでは、顧客の翻訳原稿に基づき翻訳成果物を納品するサービスを提供しており、その内容には顧客の機密情報も含まれます。これらの機密情報の流出や外部からの不正アクセスによる被害防止は、当社グループの事業にとって極めて重要であります。当社グループではこれら機密情報等の第三者への漏洩を防止するために、社員及び業務委託先に対し、雇用契約又は業務委託契約による相当の機密保持義務を課しており、また、各社ごとに執務室内への入室にセキュリティロックを施し、AI事業においては外部データセンターの選定はISMS認証取得を条件とし、通信にはSSL(暗号回線)を使用しております。
しかし、これらの対策にも関わらず、機密情報の流出等を完全に排除できるとまでは言えず、何らかの原因により流出等が発生した場合、当社グループの信用低下や法的責任を問われる可能性もあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 個人情報の保護について
当社グループでは、自動翻訳の登録ユーザー、翻訳通訳の発注者、教育研修の受講者、翻訳通訳の業務委託先である登録翻訳者・通訳者等の個人情報を保有しております。当社グループでは、個人情報を各社別にシステムで管理しており、これらの情報へのアクセスは職位及び業務内容により制約されております。
また、当社グループではプライバシーマーク(プライバシーマークとは、日本工業規格「JIS Q 15001個人情報保護マネジメントシステム―要求事項」に適合して、個人情報について適切な保護措置を講ずる体制を整備している事業者等を認定する制度)を取得しており、情報管理規程の策定・運用、全役職員を対象に定期的な研修等による教育を実施するなど、個人情報の保護に努めております。
しかし、不測の事態の発生により、当社グループの保有する個人情報が外部に漏洩した場合には、損害賠償等の補償や信用低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) コンプライアンスについて
当社グループでは、コンプライアンス体制が有効に機能していることが極めて重要であると認識しております。そのため「コンプライアンス規程」を策定し、全役職員を対象に「行動規範」の周知徹底に努めております。また、代表取締役CEOを委員長とする「メタリアルグループ・コンプライアンス委員会」を設置し、コンプライアンス体制の強化に取組んでおります。
しかし、これらの取組みにも関わらず、コンプライアンス上のリスクを完全に排除することは困難であり、今後の当社グループの事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの企業価値が毀損し、事業継続及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 第三者との係争について
当社グループは、法令遵守を基本としたコンプライアンス活動の推進により、法令違反、情報漏洩、知的財産侵害等を防止し、法改正等への適切な対応、契約行為が及ぼす法的効果の充分な検討を行うことで、訴訟に発展するリスクを排除するよう努めております。
しかしながら、何らかの予期せぬ事象により、法令違反等の有無に関わらず、顧客や取引先、第三者との予期せぬトラブルが訴訟等に発展する可能性があります。AI事業の自動翻訳の開発においては、第三者が保有する知的財産権を侵害する可能性が、HT事業の翻訳においては、顧客から預かった翻訳原文が第三者の著作権等を侵害していることに伴い、依頼主である顧客だけでなく当社グループにも損害賠償等を求められる可能性があり、かかる訴訟の内容及び結果によっては、多大な訴訟対応費用の発生や信用低下等により、当社グループの事業継続及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
6.その他のリスク
(1) 配当政策について
当社グループでは、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先しつつ、株主への配当を実施しております。株主への利益配分につきましては、今後も経営の最重要課題の一つと位置付け、企業体質の強化と将来の事業展開に備える内部留保とのバランスを図りながら、利益成長に応じた配当政策を実施する予定であります。
しかしながら、想定どおりの利益成長が達成できないなどの理由により、配当を実施できなくなる可能性があります。
(2) 自然災害について
地震や津波、台風等の自然災害、感染症の蔓延、事故、火災、テロ、戦争等により人的・物的な被害が生じた場合、あるいはそれらの自然災害及び事故等に起因する電力・ガス・水道・交通網の遮断等により、正常な事業活動が阻害された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 企業買収等
当社グループは、AI事業、HT事業、メタバース事業の強化補強を目的に、企業買収及び資本参加を含む投資を行うことがあります。実施に当たっては、事前に収益性や投資回収可能性に関する十分な調査及び検討を行いますが、買収及び投資後における事業環境の急変や想定外の事態の発生等により、期待した利益やシナジー効果を確保できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ461,617千円増加して4,919,659千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べ117,522千円増加して3,645,664千円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が219,655千円増加、現金及び預金が173,351千円減少したことによるものであります。
固定資産は、前連結会計年度末に比べ344,094千円増加して1,273,994千円となりました。これは、無形固定資産が326,963千円増加、有形固定資産が151,707千円増加、投資その他の資産が134,576千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ186,792千円増加して2,963,364千円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べ114,928千円増加して2,120,879千円となりました。これは主に、短期借入金が132,610千円増加、未払金が72,731千円増加、未払法人税等が64,602千円減少したことによるものであります。
固定負債は、前連結会計年度末に比べ71,864千円増加して842,484千円となりました。これは主に、長期借入金が143,914千円増加、社債が59,000千円減少、固定負債のリース債務が13,020千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ274,824千円増加して1,956,295千円となりました。
これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が299,068千円増加したことによるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度につきましては、AI事業は受注高及び営業利益は減少したものの、売上高は過去最高を更新し、HT事業においては対前年同期比における利益の減少が発生したものの、メタバース事業においては損失発生額が縮小いたしました。
(1) 売上高及び営業利益
当連結会計年度の経営成績は、売上高は4,084,762千円(前連結会計年度比2.2%減)、営業利益は117,319千円(前連結会計年度比84.3%減)となりました。
(2) 営業外損益及び経常利益
当連結会計年度の営業外収益は22,678千円(前連結会計年度比75.6%減)、営業外費用は27,154千円(前連結会計年度比23.1%減)となりました。
この結果、経常利益は112,844千円(前連結会計年度比86.0%減)となりました。
(3) 特別損益及び税金等調整前当期純利益
特別利益は347,888千円となりました。これは主に、投資有価証券売却益304,275千円、新株予約権戻入益41,146千円によるものであります。
特別損失は33,200千円となりました。これは主に、関係会社整理損21,972千円、減損損失10,297千円によるものであります。
この結果、税金等調整前当期純利益は427,532千円(前連結会計年度比46.8%減)となりました。
セグメント別の業績は、以下のとおりであります。
AI事業
AI事業におきましては、受注高は3,031,201千円(前連結会計年度比5.1%減)となりました。売上高は受託案件等の影響により3,086,624千円(前連結会計年度比1.0%増)となり、セグメント利益は新規事業である「Metareal AI」への先行投資の影響により493,905千円(前連結会計年度比47.2%減)となりました。短中期の成長施策として2024年2月期より開発・提供を開始した「Metareal AI」プロジェクトに関しましては、早期での業績寄与を目指し、大手のお客様を中心に生成系AIを活用した様々な提案、営業を開始し大型受注にも繋がっております。
HT事業
HT事業におきましては、売上高は884,081千円(前連結会計年度比20.9%減)となり、セグメント利益は88,733千円(前連結会計年度比39.0%減)となりました。
メタバース事業
メタバース事業におきましては、株式会社STUDIO55を連結範囲に含めたことと、短中期の成長施策を「Metareal AI」プロジェクトにシフトし、10±5年の長期視座として投資額を減らしたことにより、売上高は114,057千円(前連結会計年度は2,894千円の売上高)となり、セグメント損失は216,791千円(前連結会計年度は229,184千円のセグメント損失)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは61,468千円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは132,981千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは102,934千円の支出となったため、当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ174,631千円減少して、2,903,833千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は61,468千円となりました。これは主に、資金の増加要因として税金等調整前当期純利益の計上427,532千円、減価償却費の計上264,292千円、資金の減少要因として、投資有価証券売却益の計上304,275千円、法人税等の支払額186,598千円などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は132,981千円となりました。これは主に、資金の増加要因として投資有価証券の売却による収入390,346千円、資金の減少要因として、有形固定資産の取得による支出210,510千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出180,798千円、無形固定資産の取得による支出134,100千円などによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は102,934千円となりました。これは主に、資金の増加要因として長期借入れによる収入450,000千円、社債の発行による収入146,536千円、資金の減少要因として、長期借入金の返済による支出445,247千円、社債の償還による支出179,000千円、短期借入金の純増減額による支出67,389千円などによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
AI事業 |
3,031,201 |
94.9 |
1,320,686 |
101.6 |
|
HT事業(研修事業部分) |
96,134 |
89.3 |
39,811 |
100.4 |
|
メタバース事業 |
115,538 |
- |
176,782 |
- |
|
合計 |
3,242,874 |
98.3 |
1,537,280 |
114.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.HT事業における翻訳・通訳及びクラウドソーシング事業について、受注時に翻訳内容(言語、納品日、納品形態)は決定されますが、受注金額の算定基礎となるページ数、ワード数、文字数等が確定しないため、受注金額を集計から除外しております。
3.メタバース事業については、当期に株式会社STUDIO55を連結の範囲に含めたことにより受注実績が発生したため、追加しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年3月1日 至 2025年2月28日) |
前年同期比(%) |
|
AI事業 (千円) |
3,086,624 |
101.0 |
|
HT事業 (千円) |
884,081 |
79.1 |
|
メタバース事業 (千円) |
114,057 |
3940.3 |
|
合計 (千円) |
4,084,762 |
97.8 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは主に、メタバース事業において株式会社STUDIO55を連結子会社化したことによるものであります。
3.最近2連結会計年度における主な相手先に対する販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先も当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等
1)財政状態
2022年2月期において、投資有価証券及び固定資産の減損、特別調査委員会関連費用並びに課徴金引当金繰入計上等の発生を主要因とし、「自己資本比率」は2021年2月期末の「40.6%」から「21.5%」へと変動いたしました。2022年2月期における悪化要因としては投資有価証券や固定資産の減損等のキャッシュアウトを伴わない損失計上並びに特別調査委員会費用等一時的なものが占めておりました。
その後、2023年2月期、2024年2月期及び2025年2月期にかけては上記のようなイレギュラー事象影響は限定的であり、自己資本比率はそれぞれ「25.9%」、「36.8%」、「39.8%」と改善しております。2023年2月期より最終損益が黒字化したこと並びに現金及び現金同等物期末残高の増加も相まって、今後の機動的な投資意思決定に悪影響を与えるような状況ではないと判断しております。
資産負債の増減実績詳細については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」をご参照ください。
2)経営成績
当連結会計年度につきましては、「Metareal AI」を含む受託開発の増加により、旧MT(機械翻訳)を含むAI事業としての売上高は前年比で増加したものの、生成AI新規サービスへの研究開発及び組織構造改革に係る人的投資等に伴う販売費及び一般管理費の増加により、AI事業としての営業利益は前年比で減少しました。また、HT事業においては、売上高・営業利益ともに減少したものの、メタバース事業においては、2024年12月に株式会社STUDIO55を連結子会社化したことにより売上高は前年比で増加しました。
AI事業のうち旧MT(機械翻訳)においては、ドキュメントAI翻訳の『T-4OO』『T-3MT』、音声AI翻訳の『オンヤク』等の機械翻訳サービスについては、前年並みの売上高への回復を目指すとともに、引き続きキャッシュカウとして堅調な利益構造とすることを見込んでおります。
また、「Metareal AI」プロジェクトにおいては、受託開発及び「ラクヤクAI」等業界特化型Vertical SaaS/AIエージェントによる短中期の売上増を見込んでおり、2025年2月期においても受注・売上への貢献を見込んでおります。
セグメントごとの損益数値詳細については「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」をご参照ください。
AI事業としては受注額を経営分析において重視しており、同指標の推移等詳細については2025年4月14日開示の「2025年2月期(第21期)決算説明資料」に記載のとおりであり、従前どおり今後も四半期ごとの決算説明資料における開示を想定しております。
メタバース事業については、Gaussian Splatteingを中心とした建築分野へのAI活用を行うとともに、短期的な業績指標を設定することを止め、5年後~10年後に市場環境が整った際の準備として、メタバースとAIとの統合を主たるテーマとして引き続き開発を進めていきます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、販売活動を中心とした営業キャッシュ・フロー及び借入によるキャッシュ・フローをもって、新規開発や新規投資などのキャッシュ・フローを賄っている構造です。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、設備投資、成長分野への投資並びに株主還元等について、原則として自己資本での対応を行う方針ですが、中長期的な成長に向けた投資継続のため、必要に応じて借入等資金調達を行う予定です。
また、当社グループは正確な資金繰りの把握及び資金繰りの安定に努めるとともに、適切なリスク管理体制の構築を図っております。各種投資のために必要な資金は主に営業活動による取得資金及び借入による調達であり、資金需要としては主に中長期的な成長のための人的、設備的投資によるものです。
今後も資金需要と流動性について注視したうえで、適切に意思決定を実施いたします。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、連結会計年度末における資産・負債及び連結会計年度の収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、2024年12月26日付で株式会社STUDIO55の発行済株式の55.0%を取得し、同社を連結子会社といたしました。
なお、詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)(取得による企業結合)」をご参照ください。
当連結会計年度においては、業種分野特化の垂直統合型AIエージェントとして、製薬業界向けの「ラクヤク」、金融分野での「四季報AI」「Metareal DD」、広報分野での「広報AI」、生成AI技術を活用した「T-4OO」のプロトタイプ開発等に取り組みました。翌連結会計年度においては、リリース済AIプロダクトのPMF(Product Market Fit)達成に向けたさらなる追加開発とともに、新たな業種分野での垂直統合型エージェントの開発を行います。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、