第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

(経営方針)

多くの従業員が働きがいを持てば、その企業は安定的に高い顧客満足度と業績成果を生み出せます。その結果、従業員の更なる成長に向けた教育や福利厚生の充実等に投資が回り、より一層の働きがい(従業員満足)に繋がる好循環サイクル、SPCが形成されます。

当社グループは、顧客企業において、このSPC経営を実現することで、従業員と消費者、消費者と企業、企業と従業員を最適に結び付けるサービス提供を通じ、「精神的に豊かな社会の創造」に貢献することをミッションとしております。

その実践のために「社員第一主義」、「顧客中心主義」、「社会的に価値ある事業を行う」という3つの経営指針を設けており、これらの指針に基づき顧客企業に対して調査からコンサルまでの各種サービスを提供してまいります。

 

(経営環境)

当社グループの顧客であるサービス業を取り巻く経営環境は、新型コロナウィルス感染症によって大きく経営基盤が揺らぎました。その後の5類感染症への移行によって回復基調となったものの、原材料価格の高騰と高止まり、長引く実質賃金の下落による家計消費の低迷、人手不足と人件費の上昇などの新たな要因によって依然として厳しい環境が続きましたが、価格転嫁がある程度許容され始めたことで、ようやく持ち直しの方向に進みつつあります。当社グループにおいても、主力サービスであるMSRの調査数はコロナ禍前最後の12か月決算であった2019年3月期と比較し85.8%の水準にあり、コロナ禍の影響を拭いきれていない上、労務費・モニター謝礼といった原価の上昇が利益を圧迫しております。業績回復に向けては、相応の努力を要する状態が続いておりますが、所与の環境を踏まえ対応を続けてまいります。

一方、日本の人口構造上人手不足は長期にわたると考えられるため、「お店のファンを増やし、従業員の働き甲斐にもつながるCS」と人材の確保・定着に資する従業員エンゲージメント(ES)の両面から、当社グループに期待される使命や役割は、より一層大きなものとなるとの認識に立って、当社グループが掲げる経営理念「精神的に豊かな社会の創造」の実現に向けて、顧客企業の経営課題解決に繋がる効果的な支援を行ってまいる所存であります。

 

(経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

当社グループは、企業価値と株主価値の向上を目指し、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を、「営業利益率」、「親会社の所有者に帰属する当期利益」及び「親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)」としております。

当連結会計年度を含む直近5年間の各指標は以下のとおりとなり、当連結会計年度においては、前連結会計年度と比較し、売上収益は6.7%増となったものの、当初想定よりも収益計画に遅れが生じております。直近2期間において業績予想の未達が続いた状況を鑑み、当社ののれんについて、国際会計基準IAS第36号「資産の減損」に基づいて、将来の不確実性を考慮し保守的に回収可能価額を検討いたしました。その結果、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、のれんの減損損失398,309千円をその他の費用に計上した結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は276,099千円の損失となりました。

 

 

 

 

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

営業利益率

(%)

16.4

14.7

7.5

親会社の所有者に帰属
する当期利益(△損失)

(千円)

△244,554

206,510

219,691

114,366

△276,099

ROE

(%)

7.3

7.5

3.9

 

(注) 2021年2月期及び2025年2月期の営業利益率及びROEについては、親会社の所有者に帰属する当期損失であるため記載しておりません。

 

 

(対処すべき課題)

当社グループは、様々な業種への拡大と浸透、従来よりも難度の高い調査への対応力強化によって、基幹サービスである一般消費者(モニター)による顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ(以下「MSR」という。)」の新型コロナウィルス感染症拡大以前の状態への回復と着実な成長を目指しております。

また、コロナ禍に伴って生じた在宅勤務等の大きな労働環境の変化や、人手不足問題によって、従業員エンゲージメントやモチベーション管理、さらには業務の効率化という課題を抱えている顧客企業が数多く存在します。そのような顧客企業の問題解決に資するべく、今後も引き続き従業員満足度調査「tenpoket チームアンケート」を中心としたSaaSサービス群(以下「tenpoket」という。(注))の提供とともに、採用支援サービスも開始しております。加えて、コロナ禍及びその後の物価上昇・実質賃金の長期低迷などによって新たに生まれたニーズへの対応も加速させてまいります。

それらの取り組みにより、顧客企業におけるサービスプロフィットチェーン(以下「SPC」という。)経営の実現を支援するとともに、当社グループが掲げる経営理念「精神的に豊かな社会の創造」の実現に向け、更なる経営の安定化を進めるべく、以下の6項目について重点的に取り組んでまいります。

(注)tenpoketに含まれる主なSaaSサービスは、tenpoket チームアンケート、tenpoket トーク、MSナビ、SVナビです。

 

(1) サービスの顧客ニーズへの適合度向上

顧客ニーズの多様化や海外企業からの調査依頼の増加を背景として、覆面調査に対する要望もさらに複雑化しております。高いレポート品質や高難度調査への対応が可能であることが、覆面調査市場における当社グループの優位性になっております。今後もミステリーショッピングリサーチ及びその他、当社グループが提供する各種サービスを、各顧客企業にとって不可欠な存在にしていくことが課題と認識しております。

そのため、MSRやチームアンケートなどの主力サービスが顧客企業の経営や業務により密接に連携するよう、それらを活用したコンサルティングのノウハウ高度化およびソフトウエアへの開発投資を継続してまいります。

また、コロナ禍によって財務体質が悪化している顧客企業に対して、政府等の補助金・助成金の活用を促すコンサルティングサービスを提供しております。2025年2月期は採択率の低下や審査遅延等により大きく売上収益を低下させる結果となり、今後も政策や採択方針に左右される分野ではありますが、顧客ニーズに対応するべく、支援可能な制度の幅の拡大と各企業に適した補助金の情報提供機能を強化してまいります。

2024年2月期から2025年2月期において、有料職業紹介事業の許可を取得して人材紹介業へのトライアル、LINEを活用した店舗の販促支援代行分野への進出も開始しております。これらの新サービスに関するノウハウの構築に努め、新たな収益源泉を拡大してまいります。

 

(2) 成長に伴う人材の確保・教育

当社グループは、今後もミステリーショッピングリサーチ事業を中心事業として拡大していくことを志向しており、その支えとなっているものが、主にSPC経営の実現に向けて、MSRやtenpoketを仕組みの中心に据えた経営システムのインフラ構築と定着化に関するコンサルティング・研修(以下「コンサル」という。)であると捉えております。また上記のとおり、並行して積極的にサービスラインアップの拡充を進めております。

しかしながら、経営システムのインフラ構築と定着化をトータルコーディネートできる人材の育成には相応の時間がかかる上、新たなビジネスチャンスを生み出し、成長させていくことは簡単ではありません。そうした業務遂行が可能な人材を確保・育成することが重要課題と認識しております。

また、MSRの成長に合わせてレポート生産管理を行う人材、サービス提供の礎である自社開発システムを支える人材、調査データの高度な統計解析を担う人材の確保・育成も課題となるであろうことが想定されます。

そのため、以上のような人材の確保・育成が成長のボトルネックとならないよう、採用の強化に着手しておりますが、今後も顧客ニーズの動向を注視しながら、それに見合った人材確保と適正配置、並びに早期の成長を促す教育及びOJT機会の充実に努めてまいります。

 

 

(3) モニターの囲い込みと拡充

当社グループは、日本全国に59万人のモニターを保有し、幅広いエリアや属性をカバーしておりますが、一方で顧客ニーズも徐々に多様化しており、それらを満たす将来的なモニターの量の十分性には課題があると考えております。例えば、モニターの少ないエリアに出店しているナショナルチェーン等の調査や、同一モニターが複数回来店できない業種の調査など、以前にはない難度の調査が求められるケースもあります。

加えて、国内外の企業から、当社海外子会社拠点以外のエリアでの調査の引き合いが増加しており、その要望に応えるために、海外モニターおよび協力会社ネットワークの拡大も必要と考えております。

そのため、今後は効果的な広告宣伝の実施や多言語対応の強化等により当社グループの認知度・信用力向上を図り、登録モニター数の拡大を進める一方、モニターサイトのリニューアル等も含め、調査に応募していただけるモニターの拡充・活性化を進めることで、より多様化が進むであろう顧客ニーズを満たすモニター基盤の形成に努めてまいります。

 

(4) レポートの品質向上

当社グループでは、標準的に1レポート当たり7問程度のフリーアンサー設問を設けており、1問当たり200~300字程度のコメントが記載されるため、全体で1,400~2,100字程度の「お客様の生の声」が届けられますが、自店のサービス向上を念頭に、顧客企業の店舗スタッフが自発的な改善アクションを検討・実行するには、何より正しい評価とその評価理由が明確に伝わるレポートが求められています。今後もより一層有効にレポートを活用いただく上で、レポート品質の向上並びにその担保が引き続いての課題と認識しております。

そのため、今後もレポート評価結果に関するモニターへのフィードバック内容の充実、モニター向けレポート作成方法やレポートチェッカー向けレポートメンテナンス方法の周知・教育など、レポート品質の向上並びにその担保に資する仕組みの充実に努めてまいります。

 

(5) モニター謝礼及びレポート生産コストの適正化

物価の上昇に伴って調査に必要な利用金額が増加したことにより、モニターに支払う謝礼が上昇傾向にあります。加えて、物価上昇と人手不足に伴う労務費の上昇はレポート生産にかかるコストの増加につながります。

それらの課題に対応し、利益率をコロナ禍以前の状態に回復させていくために、顧客企業との価格転嫁交渉を継続して実施してまいります。適正化を図るために各企業の店舗での利用金額やレポート生産コストの上昇データを示しつつ価格改定を進めるとともに、モニター活性化及び生産性向上のために調査設問数や調査条件の緩和に向けた協議も進めております。

加えて、社内でも生産コストの抑制に向けて、AI活用によるレポートチェックコストの低下、LINEとのID連携によるメッセージ配信機能の活用やモニターサイトリニューアルによるモニターアサインコストの低減、生産コストKPIに基づいたマネジメントや教育の充実等、各種生産性向上策を実施してまいります。

 

(6) 海外事業における顧客基盤の拡大と収益のストック化

アジアを中心に海外展開を図る顧客企業からMSRを現地にて実施したいとのニーズに応えるために、2016年に日系企業の進出が著しいタイと台湾にて、各国に進出している日系企業や現地企業からのオーダーに基づき、MSRやコンサルを提供しておりますが、両国での事業展開においては、継続的にMSRを実施できる顧客基盤の拡大と収益のストック化を図っていくことが当面の課題と認識しております。

そのため、MSR実施企業に対するコンサルの導入、発掘ルートの多様化による新規案件の増加や人的資源の投下などに取り組んでおります。2021年2月期において設立以来初の通期黒字を達成することができた台湾では、2023年2月期から3期連続黒字。タイも2025年2月期に黒字化を実現しております。

また、MSR業界のグローバルネットワークであるMSPAへの参画や引き合いの増加などによって、海外子会社の成長と合わせ、海外企業からの日本国内外における調査依頼案件も拡大しております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(サステナビリティに関する考え方)

当社グループは、経営指針として「社会的に価値ある事業を行う」ことを定めた上で、自社の成長を両立させるべく持続可能性を経営の中心に据えております。

当社グループは事業活動を通し顧客企業の従業員教育並びに労働環境DXを支援することで、

SDGs目標4.4『2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。』

並びに目標8.2『高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。』

の実現に貢献してまいります。

 

(サステナビリティに係るマネジメント体制)

(1) ガバナンス

ガバナンスの詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(2) リスク管理

当社は、人的資本経営に関する様々なリスクを把握するため、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング、評価・分析を行い、必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を整えております。

 

(サステナビリティに係る個別テーマと取組状況)

(1) 気候変動に関する取組

当社グループの事業特性上、気候変動におけるリスクや機会の影響は相対的に受けにくいため、非財務情報の開示に対して、ガバナンスや人的資本を優先しております。但し、取締役会や経営会議においては、中長期の経営戦略の議論において気候変動に関するリスクや機会を含めて議論しております。

また、気候変動が自社の事業活動や収益等に与える影響程度に関わらず、社会の一員として、環境負荷軽減に取り組んでおります。具体的には、紙資源の削減やオフィス空調管理の徹底、服装のカジュアル化等を継続的に行っております。

なお、TCFDで参照される指標の内温室効果ガス排出量Scope1はゼロと考えております。

 

(2) 人的資本に関する取組

① 人的資本経営方針と基本戦略

当社グループにとって、人的資本すなわち社員が持つ能力は、当社の発展を支える重要な資産であり、価値創造の源泉であると捉えており、経営指針の一つである「社員第一主義」の中でその考え方を述べております。

 

[1]社員第一主義

 従業員感動満足なくして顧客感動満足なし。社員の気づき・成長意欲に基づく実行力が顧客満足を生むと信じ、社員第一主義を掲げる。創造性と情熱を掻き立てるべく、サーバントリーダーシップを実践する。オープンブック経営を実践し、全員の企業家精神・オーナーシップを高めると共に、全員で利益や痛みを分かち合う。

 

基本戦略については、『顧客価値を最大化する事業戦略』と『人的資本を最大化する組織戦略』の一貫性が重要であると考えております。既存事業の付加価値強化に加え、単一事業であることのリスクを踏まえた継続的なサービスのラインナップ拡大や、これによる付加価値向上ならびに顧客企業の多様化に取り組んでおります。組織戦略においては、環境変化に適応するための自己革新力や、変化を生み出す創造力を育み、発揮したいと思える組織を目指し、採用・育成・人事制度・カルチャーへの取り組みを推進しております。

 

 

② モニタリング

2015年以降、自社商材でもある従業員満足度(ES)調査(現在の「tenpoketチームアンケート」)を定期的に行い、組織課題を定点観測するとともに、その他の指標(該当者ヒアリングや労務情報等)も合わせて、課題抽出・改善のプロセスを繰り返してきました。

2024年6月に実施をしたチームアンケート結果(正社員データ、個票より一部抜粋)はこちらです。


(注1)tenpoket チームアンケートとは、従業員エンゲージメントに影響を及ぼす要素を36項目の設問に組み込み、「上司(リーダーシップ)」「所属組織の環境」「スタッフ自身」の3区分にてチーム力を総合的に診断し、改善テーマを明確化する当社サービスです。国内最大級の研究機関である、国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究にて開発いたしました。

 

この中でも特に「上司(リーダーシップ)」区分は、組織や所属スタッフに与える影響力が大きい事が研究成果で分かっており、当社では、リーダーやマネージャーが自身のリーダーシップやマネジメントを振り返るツールとして活用をしています。

 


 

 

※全社(正社員スタッフ)のtenpoket チームアンケート推移


 

全社の結果とあわせて、職種別や職務領域別の結果を確認することで、その時々の組織の課題を明らかにし、改善を進めてまいりました。

 

③ 人的資本の増加に向けた取組

定期的なモニタリング結果をもとに組織のコンディションを明らかにすることで、課題抽出・改善のプロセスを繰り返してきました。

時期

事業環境

人的資本・組織課題

対処

2015年頃

・MSR調査の急増

・調査種別の多様化

・MSR運用チームのES低下

・処遇改善

・マネジメント強化

┗ 部門方針の共有増

┗ 1on1による成長支援

2018-2019年頃

・ES調査導入数の増加

・DXサービスの拡充

・コンサルタント業務負荷増

・間接部門の増強

┗ 専門職

┗ サポートスタッフ

2020-2022年頃

・コロナ禍の業績低迷

・単一事業リスクの露呈

・中堅層の離職

(一時的に離職率7.6%)

・採用強化

・ミドルマネージャーの抜擢・育成支援

・全社コミュニケーションの見直し(事業方針や戦略共有)

 

 

④ 組織の特徴と課題

当社は分社化により創業しており、創業メンバーを中心としたハイコンテクスト文化による高生産性を背景として事業成長を実現してまいりました。また、創業以来の離職率の低さが裏付ける通り、この文化は安定した組織運営にも寄与しておりました。

しかし、2025年2月末現在、社員に占める創業メンバーの比率は2割を下回っており、先述の2020-2022年頃に重なった中堅層の離職やその後の採用強化・増員により、経験年次の二極化が顕著です。これは、世代間ギャップを生み出す温床になりかねないと認識しており、ハイコンテクスト文化からの脱却を重要課題として認識しております。

当連結会計年度においては、「MSR事業の再構築」ならびに「単一事業リスクの解消に向けたサービスラインナップの拡充」を重要な事業方針として掲げ、売上収益は6.7%増となったものの、当初想定よりも収益計画に遅れが生じており、ともすれば、社員が捉える社会的ミッションや組織アイデンティティにも重大な悪影響を及ぼしかねない状況であると認識しております。

 

 

⑤ 強化すべき取組と現状

イ.全社

a.人事制度の改定

人的資本、すなわち社員が持つ能力の向上や発揮が、当社の発展を支える重要な資産であり価値創造の源泉であると捉える中、社員への期待を言語し、キャリア形成を支援する仕組みの一つとして、2024年3月より、等級制度を刷新致しました。

業務負荷の偏りの慢性化の是正や、時間対成果への意識を強めることを目的として、労務管理制度の見直しを進めており、2025年5月より新制度による運用をスタートしています。また、昨今の物価上昇や採用獲得競争の激化を踏まえた取組として、報酬制度の改定にも着手をしております。

 

b.カルチャー形成

サービス拡充を目指す当社において、新しい価値提供に向けて既存事業に囚われない挑戦機会が重要となる一方、事業を通じて実現したい社会的ミッションを確認し、組織アイデンティティを育む活動も重要であると認識しています。

この、遠心力と求心力を兼ね備えたカルチャーを実現すべく、以下の取組を進めています。

・カルチャーに向き合う専門組織として、「ミライ創造室」を新設(2025年3月)

・オフサイトグループ(部門横断の非公式組織による継続的な対話機会)による社内ネットワーク増強支援

 

これらの取組は、心理的安全性の高い組織開発へとつながり、当社の定着率向上や成長促進・活躍促進につながるものと考えております。

 

ロ.コンサルティング事業

当社の事業成長に欠かせないコンサルタントの確保については、特に育成に時間を要する背景もあり、人材の獲得と合わせて、定着支援・成長支援が必須条件となっております。

コンサルタントとしての在り方や保有すべきスキルの可視化および細かなフィードバック体制、ミドルマネージャーによる成長支援環境の整備により、成長スピードの加速に努めてまいりました。

これらの育成環境により、コロナ後(2021年3月以降)に新規採用したコンサルタントスタッフは、定着率100%であり、新人層とベテラン層の二極化が顕著であったコンサルタントの人員構成にも変化が生まれております。着実な成長を遂げた中堅層が増えつつある現状を、事業成長の好機であると考えています。

これまでの新人定着の成果に加え、活躍支援の重要度が高まっている事を認識し、コンサルタントのトレーニング機会やキャリア開発支援機会の増強を進めてまいります。

 

ハ.リサーチ事業

中途採用を中心に採用の受入が最も多いMSR運営チームにおいては、2022年3月以降、採用活動を強化しておりました。教育体制の強化が功を奏し、高い定着率を保持しているとともに、入社2年目にはチームの中核となる役割を担える成長スピードを実現しております。

MSRの運営管理を習得していく中で培われる「職業倫理」や「業務管理能力」は、新規事業の運営体制構築の基盤となっており、従業員にとっては、多様な活躍の機会やキャリアアップ支援として機能していると同時に、事業成長に応じた柔軟な配置転換の基盤が構築されつつあります。

実際に、ベテランスタッフの新たな事業領域への配置転換による事業推進や、AI活用分野への業務領域拡大などの事例が生まれております。MSR運営チームでは、工程の一部をAI化する取組みが加速しており、AI導入率を部門KPIに掲げるまでに至っております。

また、創業以来、MSRやチームアンケートといったリサーチ商材は、コンサルティングの付帯価値として期待される要素が大きく、リサーチ事業とコンサルティング事業を一気通貫で実施できることが、当社グループの優位性の一つでした。コロナ禍以降、特に調査に対する要望が複雑で、高いレポート品質が要求される海外関連調査が伸長してきた中で、高難度調査への対応力が向上し、調査会社としてのケイパビリティそのものが、覆面調査市場における当社グループの優位性となっております。この優位性をさらに磨いていくべく、海外関連調査の営業機能の成長と、MSR運営チームのマネジメント向上に努めていく事が重要だと考えております。

 

 

(3) 当該方針に関する指標の内容や当該指標による目標・実績

① 女性管理職比率

2021年2月期

2022年2月期

2023年2月期

2024年2月期

2025年2月期

2026年2月期

(2025年4月末)

8.3%

8.3%

11.8%

16.7%

21.7%

24.0%

 

 

2025年2月期の女性管理職比率は21.7%でした。長く、10%未満であった女性管理職比率は2023年以降改善傾向にありますが、現状でも高い水準とは言えません。これは、総合職社員の男女比率が女性管理職比率にも直結している結果であると考えております。

先述したミドルマネージャーの抜擢や成長支援の効果もあり、2025年4月末時点における女性管理職比率は24.0%です。また、一般職として入社した社員が総合職へと職種変更する事例も増えており、今後より改善していくものと考えております。

ただし今後も、性別に関わらず管理職登用をしていく考えであり、公平な登用を実現していきたいと考えています。

 

② 男女の賃金格差

 

全従業員

正社員

総合職

一般職

アルバイト

賃金格差

(%)

45.7%

70.9%

83.7%

104.3%

67.0%

女性構成比

(%)

61.6%

52.0%

30.1%

77.6%

82.8%

男性:年次

8.4

9.6

10.9

6.1

2.5

女性:年次

5.7

9.9

9.6

8.7

2.4

 

※創業メンバーについては当社の前身となった(株)日本エル・シー・エー入社からの年次にてカウント

 

当社の男女の賃金格差は、アルバイトを含む全従業員の数値にて、大変低い数字となっております。これは、全従業員の35%を超えるアルバイトの80%が女性従業員であることが大きな要因です。また、アルバイトの賃金格差につきましては、時給平均における賃金格差は100.1%であり、所定労働日数・時間による賃金格差です。

正社員の賃金格差については、特に年次の高い従業員における男女比が顕著であることが主な要因と考えており、先述の女性管理職比率と同様に、今後解消をしていけるものと考えています。

 


 

③ 男性の育休取得

 

2023年2月期

2024年2月期

2025年2月期

3年平均

取得率

(%)

0.0%

25.0%

50.0%

28.6%

 

 

直近3年度の男性の育休取得率は28.6%です。当社の正社員数は、直近3年では130~150名程度であり、配偶者の出産という機会そのものが多くはない状況のため、取得率によって状況把握をすることは難しい状況です。とはいえ、2024年2月期、2025年2月期とそれぞれの期において、長期(半年)の育児休業を取得する事例が発生しており、制度に関しての社内認知度は確実に上がっております。引き続き、適切に制度説明を行い選択しやすい環境の整備に努めて参ります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの業績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業等のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努力する方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) モニターの確保について

当社グループのミステリーショッピングリサーチ事業を成長させていくに当たり、求められる調査地域に求められる属性のモニターを擁するためには、日本国内の各都道府県及びサービスを展開している東アジア・東南アジア地域におけるモニターを需要とマッチした適正人数まで増加させていく必要性が生じます。そのため、効果的な広告宣伝や東アジア・東南アジアにおける協業企業ネットワークの拡大等の実施により、適切にモニター数の拡充を図りつつ多様化する顧客ニーズへの対応に努めてまいりますが、需要の急激な増加、求められる調査地域やモニター属性の偏り等により、顧客ニーズに適合したモニターが十分に確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) モニター謝礼単価及びレポート生産コストの上昇リスクについて

物価及び人手不足による労務費の上昇により、モニター謝礼単価及びレポート生産コストが増加傾向にあります。顧客企業との価格交渉による転嫁や調査条件の緩和、調査参加率及び生産性を高めるためAI活用によるレポートチェックコストの低下、LINEとのID連携によるメッセージ配信機能の活用やモニターサイトリニューアルによるモニターアサインコストの低減、マネジメント強化を推進することで、悪化した利益率の改善に努めてまいりますが、顧客企業における価格転嫁の許容状況や物価及び労務費上昇が当社の想定と大きく異なった場合、利益率の低下から当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) システム開発及び改善・保守について

当社グループでは、MSRならびにSaaSとして提供される商品群「tenpoket」において、自社開発による各種システムを活用しております。

今後もサービスの拡充、品質の向上及び業務の効率化等を図るため、システム開発及び改善、保守に関わる投資を積極的に行ってまいります。しかしながら、これらに想定外の遅れやトラブル等が発生した場合、関連コストが増大するなど、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(4) 情報セキュリティについて

当社グループでは、MSRを運用するにあたりモニターに係る大量の個人情報を保有しております。また、コンサルやtenpoketを提供する過程で必要となる顧客企業の機密情報等も多く保有しております。

そのため、情報管理に関する定期的な社員教育、全社的な情報管理体制の強化、システム開発及び運用におけるセキュリティ要件の厳格化、システムに対するアクセスの監視強化、ならびに第三者による定期的なシステムセキュリティ診断の実施などに取り組んでおりますが、これらの情報に対するコンピュータウィルスやハッカー攻撃、外部からの不正アクセスや、社内管理体制の瑕疵、当社グループ従業員の故意又は過失等による情報漏えいが発生した場合、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社に対する損害賠償請求、当社グループのサービスに対する報酬の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、個人情報や機密情報の保護に関する国内外の法令等が改正される場合には、これに対応するためのシステムの改修や業務方法の変更に係る費用等の発生により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性もあります。

 

(5) システム障害について

当社グループは、MSRならびにSaaSとして提供される商品群「tenpoket」において、調査の実施、レポートの生産、調査結果の納品や分析、改善活動を促すeラーニングコンテンツやビジネスチャットの提供等のために情報システムやインターネット等を利用しております。

そのため、自然災害、火災や停電等の事故、プログラムやハードの不具合、コンピュータウィルスやハッカー攻撃、外部からの不正アクセス等により、システム障害が発生した場合、当社グループの業務やサービス提供の停止、重要なデータの喪失、当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下、対応費用の発生、当社グループのサービスに対する報酬の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 人材の確保及び育成について

当社グループにおいては、コンサルティング、サービスラインナップの拡充と深耕、レポート生産、システム開発並びに統計解析業務に携わる人材の確保・育成が不可欠となっておりますが、そのような人材の確保・育成ができない場合又はそのような人材が社外に流出した場合には、当社グループの業務運営や経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 提供する情報等の正確性について

当社グループのサービスにおいて、顧客企業に対して提供する情報又は分析の真実性、合理性及び正確性は非常に重要であります。

従って、当社グループが分析のために収集した情報に誤りが含まれていたこと等に起因して顧客企業に対して不正確な情報を提供する場合や、不正確な情報を提供していると誤認される場合には、当社グループの受注案件数の減少、ブランドイメージや社会的信用の低下、当社グループに対する損害賠償請求、当社グループのサービスに対する報酬の減額等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制について

当社グループの基幹事業であるミステリーショッピングリサーチ事業においては、モニターとの間で契約書面は存在せず、全てウェブ上でのモニター会員登録を通じて業務委託契約に準ずる契約が締結されており、弁護士等の法律の専門家と相談の上、社内管理体制を構築することで法令遵守に努めております。しかしながら、今後の法改正又は新たな法令制定が行われた場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 個人情報の管理について

当社グループは、モニターの個人情報を有し、日常業務にて個人情報に接するため、その取扱いについては個人情報保護法並びに日本工業規格「JIS Q 15001 個人情報保護マネジメントシステム―要求事項」を踏まえ、十分な管理体制を構築し、一般財団法人日本情報経済社会推進協会よりプライバシーマークを取得しております。

個人情報の保護に関する基本方針を作成し、当社グループが運営するモニター専用サイトに掲載しているほか、情報に触れる従業員に対して、個人情報保護規程及び関連マニュアルに基づき、その取扱いについて教育・研修を実施しておりますが、仮にモニター情報が外部に流失した場合には、漏えいに対する損害賠償請求がなされる、当社グループの信用が毀損しモニター確保が難しくなる等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10) 経済・市場環境による顧客企業の投資意欲等の影響について

当社グループの事業は、その業容上、顧客企業の教育研修に対する投資動向に一定の影響を受けます。

そのため、当社グループは市場動向を把握し、サービスのラインナップ拡大や付加価値向上ならびに顧客企業の多様化を図り、可能な限りその影響の抑制に努めてまいりますが、経済情勢の変化及び景気低迷により、顧客企業の投資意欲が減退した場合には、新規顧客開拓の低迷や既存顧客からの受注減少、中途解約の増加等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 契約が短期間となる又は利用期間が後ろ倒しされるリスクについて

MSRのサービス提供を行う際に、顧客企業との間で利用期間を設定し契約を締結しておりますが、MSRの利用規約上、3カ月前の申し入れにより、顧客企業の意思に従って中途解約がなされる又は利用期間が後ろ倒しされる場合があります。当社グループとしては、できる限り顧客企業にMSRの利用契約を継続又は契約時の利用期間どおりに実施いただけるよう、充実したカスタマーサポートの提供、顧客ニーズを反映したサービスやシステムの改善、並びに営業活動を通じた顧客ニーズの継続的な把握に取り組んでおります。しかしながら、万が一中途解約又は利用期間の後ろ倒しが急激に増加した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 知的財産権について

当社グループの事業分野における他社の知的財産権の保有や登録等の状況を把握することは困難であり、当社グループが意図せず第三者の特許権等を侵害する可能性や、今後当社グループの事業分野において第三者の特許権等が新たに成立し、当社グループを当事者とする知的財産権の帰属等に関する紛争が生じたり、当社グループが知的財産権の侵害等に関する損害賠償や使用差止等の請求を受ける等の可能性があります。

また、当社グループが第三者と提携や合併等を行うことにより、当該第三者が締結している契約に基づく知的財産権に係る制約を受けたり、第三者に対する新たな対価支払いを強いられたりする可能性もあります。

これらの結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 海外事業展開について

当社グループは、海外市場の動向に細心の注意を払い、適切な対応を図るよう努めておりますが、紛争、政情不安、通関業法・税制等の法制度の変更、金融・輸出入に関する諸規制の変更、ストライキ、テロ、暴動、人材確保の難航及び社会環境における予測し得ない事態等の発生によって、事業計画に遅延が起きた場合、為替の大幅な変動が起こった場合、また、適切な対応ができず当社グループの信用及び企業イメージの悪化等により顧客企業が減少した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 総資産に占めるのれんの割合が高いことについて

当社グループは、非流動資産にのれんを計上しており、総資産に占める割合が高くなっております。当社グループはIFRSに基づき連結財務諸表を作成しているため、毎期の定期的な償却は発生しませんが、のれんの対象となる事業の収益力が低下し、減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当連結会計年度における減損テストの結果、のれんの減損損失398,309千円を連結包括利益計算書のその他の費用に計上しております。

当社の業績についてコロナ禍前の水準に戻すための各種取り組みを実施し、取引拡大及び利益率の回復に努めておりますが、当初想定よりも収益計画に遅れが生じております。直近2期間において業績予想の未達が続いた状況を鑑み、当社ののれんについて、IAS第36号「資産の減損」に基づいて、将来の不確実性を考慮し保守的に回収可能価額を検討いたしました。その結果、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、減損損失を計上しております。

当連結会計年度末において、減損損失の認識後、回収可能価額は帳簿価額と同額となりました。したがって、減損テストで使用した主要な仮定である将来キャッシュ・フローの減少、又は割引率が上昇した場合には、追加の減損損失が発生する可能性があります。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 13.のれん及びその他の無形資産」をご参照ください。

 

(15) 単一事業であることのリスクについて

当社グループは、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一事業であるため、継続的にサービスのラインナップ拡大や付加価値向上ならびに顧客企業の多様化などに取り組むことで可能な限り強固な事業構造作りに努めております。しかしながら、顧客企業の業況悪化によるCSや教育研修にかかる投資の抑制など、当該市場環境が極端に冷え込んだ場合、その影響を大きく受け、他の事業分野で挽回するといった対応が取れず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(16) 災害等による影響について

当社グループでは、地震等の自然災害や火災等の人為災害に対するBCP(事業継続計画)を策定し、その体制を整備、活動を継続しておりますが、大規模な地震・風水害・津波・大雪・新型インフルエンザ等の感染症の大流行等の自然災害や、火災・暴動・テロ・国際紛争・戦争等の人災が発生した場合、当社グループの本社の建物や設備等が被災し、従業員の出勤や業務遂行に支障が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

特に、これらの災害等により、当社グループの業務に必要なシステムやインターネット等のネットワーク環境の使用ができなくなる場合や、調査のためのモニターの確保ができなくなる場合は、当社グループの業務遂行等が極めて困難となる結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、災害等によって当社グループの顧客企業に被害等が生じる場合や、経済状況等の低迷が発生する場合にも、当社グループの受注案件数の減少等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 内部管理体制について

当社グループは、従業員151名(2025年2月28日現在)と組織が小さく、内部管理体制も当該規模に応じたものになっております。事業の拡大に合わせ、今後も引き続き積極的に人員の増強、内部管理体制のより一層の充実を図る方針でありますが、人材の獲得及び管理体制の強化が順調に進まなかった場合には、事業等のリスクに対して適切かつ十分な組織的対応ができず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 訴訟その他の対応について

当社グループは、その事業の過程で、各種契約違反や労働問題、情報漏洩等に関する問題等に関し、顧客企業、取引先、従業員、競合他社等により提起される訴訟その他法的手続の当事者となり得るリスクを有しております。当社グループが訴訟その他の法的手続の当事者となり、当社グループに対する敗訴判決が言い渡される、又は当社グループにとって不利な内容の和解がなされる場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態、評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 財務報告に係る内部統制について

当社グループでは、財務報告の信頼性に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでおりますが、当社グループの財務報告に重要な不備が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制を整備及び運用できる保証はありません。

さらに、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しない場合や、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生する場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) 新株予約権の行使による株式価値希薄化について

当社は、役員及び従業員等に対する長期的なインセンティブとしてストック・オプション制度を導入しております。

今後もストック・オプション制度の活用を予定しており、現在付与している新株予約権に加えて、今後付与される新株予約権の行使が行われた場合、保有株式の株式価値が希薄化する可能性があります。

なお、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は30,700株であり、発行済株式総数4,597,400株の0.7%に相当します。新株予約権の詳細は、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

(21) 配当政策について

当社は、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施していく方針でありますが、業績が予想に届かず利益剰余金が不足する場合や重要な事業投資を優先するなどの影響でキャッシュ・フローが悪化する場合等は、配当を実施しない、あるいは予定していた配当を減ずる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、物価上昇に伴う実質賃金の低迷や節約志向の高まりによって、内需の牽引役である家計消費が伸び悩んでいることに加え、人手不足に伴う人件費の上昇、国内企業物価の上昇などが企業経営を圧迫しており、当社の主要顧客である外食・小売などの内需型サービス産業においては、先行き不透明な環境が続いております。

このような環境下、基幹サービスである顧客満足度覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」(以下「MSR」という。)の売上収益は、前連結会計年度と比較し16.2%増となりました。今期の活動方針に「MSRの再構築」を掲げ取引拡大及び利益率の回復に傾注してきたことが功を奏し、年間調査数が7.3%増、国内における通常調査売上が11.6%増、海外関連調査売上は37.5%増と伸長したことが主な要因です。一方、SaaSは前連結会計年度と比較し7.5%減となりました。人手不足を背景に従業員エンゲージメント調査である「チームアンケート」は21.5%増となったものの、「tenpoket クラウド」契約からMSRやチームアンケートの個別契約への切替、「カスタマーリサーチ」の一部大手顧客の離脱による影響です。また、コンサルその他(以下「コンサル」という。)は、通常コンサルこそ増強してきた人員の戦力化により前期比3.2%増となったものの、補助金・助成金支援分野において採択率低下や審査の遅延が響き、全体で16.1%減となりました。以上の結果、売上収益で6.7%増、売上総利益で0.1%増となりました。

また、2024年4月8日に開示しました通期連結業績予想(注)に対して、売上収益は93.5%で着地しております。MSRは堅調に増加したものの、補助金・助成金コンサルが大幅減、チームアンケートや通常コンサルについても、期ズレの影響もあり予想に対して未達となりました。

受注高においては、前連結会計年度と比較し11.3%増となりました。MSRが19.7%増、SaaSも15.4%増と順調に推移した一方、補助金・助成金コンサルが56.1%減と大幅に減少、通常コンサルこそ21.0%増であったものの、人材紹介等の新規サービスの伸び悩みもあり、コンサルは17.1%減となりました。トータルの受注増によって、期首時点における受注残売上は前年同期比16.0%増の703百万円となっております。

生産面では、物価上昇に伴うモニター謝礼や労務費の増加に対応するため、顧客との価格交渉を進めることに加え、調査条件の緩和やサイトリニューアル、LINE活用等によるモニターの活性化、レポートチェックへのAI活用といった取り組みにより1レポートあたりの生産性向上に努めており、MSRの売上単価は前連結会計年度と比較し8.6%増、利益率も40.9%から43.9%へと回復基調にあります。また、成長分野である海外関連調査の増加を見据えたオペレーションの強化なども進めております。

管理面では、前連結会計年度と比較し、原価が10.1%増、販売費及び一般管理費が0.5%減となりました。原価は、納品レポート数の増加に伴うモニター謝礼の増加、人員増及び昇給に伴う労務費の増加、IT関連投資の拡大に加え、東南アジア地域の海外調査の増加によって調査外注費が1.3%の上昇といった要因により増加致しました。販売費及び一般管理費の増加は、人件費・賃借料・報酬などの上昇を広告宣伝費の抑制等で吸収した結果です。

以上のように、当社の業績についてコロナ禍前の水準に戻すための各種取り組みを実施し、取引拡大及び利益率の回復に努めておりますが、当初想定よりも収益計画に遅れが生じております。直近2期間において業績予想の未達が続いた状況を鑑み、当社ののれんについて、国際会計基準IAS第36号「資産の減損」に基づいて、将来の不確実性を考慮し保守的に回収可能価額を検討いたしました。その結果、回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、のれんの減損損失398,309千円をその他の費用に計上いたしました。

(注) 2024年4月8日「2024年2月期決算短信(IFRS)」をご参照ください。

 

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ171,711千円減少し、3,378,277千円となりました。

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ102,406千円増加し、826,397千円となりました。

当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ274,118千円減少し、2,551,880千円となりました。

 

 

b.経営成績

以上の結果、のれんの減損損失の計上を含めた当連結会計年度の業績は、売上収益2,552,146千円(前年同期比6.7%増)、営業損失237,844千円(前年は179,661千円の営業利益)、税引前損失239,502千円(前年は178,644千円の税引前利益)、親会社の所有者に帰属する当期損失276,099千円(前年は114,366千円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。

なお、当社グループはミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて249,232千円増加し、578,930千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による収入は、406,812千円(前期比393,704千円増)となりました。これは、税引前損失の計上239,502千円があったものの、減価償却費及び償却費の計上106,433千円、減損損失の計上398,309千円、営業債権及びその他の債権の減少額85,791千円、営業債務及びその他の債務の増加額17,543千円があったこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による支出は、130,134千円(前期比46,401千円減)となりました。これは、無形資産の取得による支出124,964千円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による支出は、30,382千円(前期比142,706千円減)となりました。これは、リース負債の返済による支出33,372千円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループでは、販売実績のほとんどが生産実績であることから、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントで示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ミステリーショッピングリサーチ事業

2,563,296

111.3

703,367

116.0

合計

2,563,296

111.3

703,367

116.0

 

(注) 1.当社グループの事業は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

2.IFRSに基づく金額を記載しており、千円未満は四捨五入して記載しております。

3.受注残高には、翌連結会計年度に売上収益となる見込みの金額を記載しております。

4.子会社においては、受注から納品までの期間が短いため、上記金額に含めておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントで示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

ミステリーショッピングリサーチ事業

2,552,146

106.7

合計

2,552,146

106.7

 

(注) 1.当社グループの事業は、ミステリーショッピングリサーチ事業の単一セグメントであります。

2.IFRSに基づく金額を記載しており、千円未満は四捨五入して記載しております。

3.主要な販売先については、いずれも100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第312条の規則によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針及び 注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析

(資産合計)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ171,711千円減少し、3,378,277千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ135,639千円増加し、1,088,503千円となりました。これは営業債権及びその他の債権が86,148千円減少したものの、現金及び現金同等物が249,232千円増加したこと等によるものであります。

非流動資産は、前連結会計年度末に比べ307,350千円減少し、2,289,774千円となりました。これは主に使用権資産が26,876千円、その他の無形資産が58,944千円増加したものの、減損損失の計上によりのれんが398,309千円減少したこと等によるものであります。

(負債合計)

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ102,406千円増加し、826,397千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ72,455千円増加し、778,233千円となりました。これは営業債務及びその他の債務が17,522千円、未払法人所得税等が35,089千円増加したこと等によるものであります。

非流動負債は、前連結会計年度末に比べ29,952千円増加し、48,163千円となりました。これは非流動負債のリース負債が25,274千円増加したこと等によるものであります。

(資本合計)

当連結会計年度末における資本は、前連結会計年度末に比べ274,118千円減少し、2,551,880千円となりました。

これは当期損失の計上275,891千円等によるものであります。

 

b.経営成績の分析

(売上収益)

前連結会計年度と比較し、MSRは年間調査数が7.3%増、国内における通常調査売上が11.6%増、海外関連調査売上は37.5%増と伸長したことにより全体で16.2%増となりました。SaaSは「チームアンケート」が21.5%増となったものの、「tenpoket クラウド」契約からMSRやチームアンケートの個別契約への切替、「カスタマーリサーチ」の一部大手顧客の離脱等が影響し全体で7.5%減となりました。コンサルは通常コンサルこそ増強してきた人員の戦力化により前期比3.2%増となったものの、補助金・助成金支援分野において採択率低下や審査の遅延が響き、全体で16.1%減となりました。

この結果、当連結会計年度の売上収益は2,552,146千円(前期比6.7%増)となりました。

(売上原価、売上総利益)

売上原価については、1,751,413千円(前期比10.1%増)となりました。納品レポート数の増加に伴うモニター謝礼の増加、人員増及び昇給に伴う労務費の増加、IT関連投資の拡大に加え、東南アジア地域の海外調査の増加によって調査外注費が1.3%の上昇といった要因により増加致しました。

この結果、売上総利益は800,733千円(前期比0.1%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業損失)

販売費及び一般管理費については、651,610千円(前期比0.5%減)となりました。人件費・賃借料・報酬などの上昇を広告宣伝費の抑制等で吸収した結果です。

その他の収益は12,243千円、のれんの減損損失を含むその他の費用は399,210千円発生しており、この結果、営業損失は237,844千円(前期は179,661千円の営業利益)となりました。

 

(親会社の所有者に帰属する当期損失)

金融収益は409千円、金融費用は2,068千円発生しており、法人所得税費用36,388千円等を差し引いた結果、親会社の所有者に帰属する当期損失は276,099千円(前期は114,366千円の親会社の所有者に帰属する当期利益)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社グループはキャッシュ・フローを重視した財務戦略を進めており、設備投資資金についても投資効率性などを分析した上で、原則として営業活動から得た収入を充当していく方針であります。

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

親会社所有者帰属持分比率(%)

80.6

76.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

11.4

0.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ

21.8

305.1

 

(注) 親会社所有者帰属持分比率:(親会社の所有者に帰属する持分)÷(総資産)

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:(有利子負債)÷(キャッシュ・フロー)

インタレスト・カバレッジ・レシオ:(キャッシュ・フロー)÷(利払い)

1.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

3.キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4.利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、モニターに対する謝礼原価やレポートチェックの外注委託費、労務費といった売上原価、人件費や旅費交通費、当社が提供する各種システムのデータサーバ費用等の販売費及び一般管理費であります。投資を目的とした資金需要は、什器備品や社内利用ソフトウェアの購入費用の他、当社がSaaSとして提供する商品群「tenpoket」のシステム開発費用であります。株主還元については、財務の健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施してまいります。

上記運転資金及び投資資金につきましては、内部資金及び金融機関からの借入により資金調達を行っております。

当社グループは効率的で安定した運転資金の調達を行うため、主要取引金融機関と総額500,000千円のコミットメントライン契約を締結しており、当該契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高は100,000千円であります。また、金融機関から短期借入金による調達を実施しており、短期借入金の当期末残高は45,840千円となりました。

加えて、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保するとともに、財務基盤の一段の強化を図ることを目的として、金融機関との間で50,000千円の当座貸越契約を締結しております。この契約に基づく当連結会計年度末の借入実行残高はなく、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高578,930千円と合わせて、資金について十分な手元流動性を確保しているものと認識しております。

 

(3) 経営成績等に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、事業体制、同業他社等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは常に市場動向及び業界動向に注視しつつ、コンサル、生産管理、システム開発、統計解析業務に携わる人材並びに経営管理業務に携わる人材を確保・育成し、事業体制の強化はもとより管理体制の整備を進め、社会及び顧客のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。