第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

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 当社グループは、「地域のお客様の日々の暮らしを“より”豊かにする。なくてはならない存在として地域を支える。」という社会的使命を果たし、その為に力を合わせる流通事業連合体を目指します。私たちは、共通の理念、同じ志をもった企業同士、お取引先様と地域を越えて手をたずさえ、地域に暮らす皆様に心地よい一日をお届けし、「普段の消費生活」をサポートしてまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、スーパーマーケットを主業とする会社の連合を形成し、それぞれがより強いローカルスーパーマーケットとしての成長と、企業価値の向上を目指します。また、長期経営ビジョンとして、「地域の多様なニーズに応え幸せを創出する」ローカル流通グループを目指しております。

 

[長期経営ビジョン]

長期経営ビジョンの考え方

 私たちは、地域のお客様の日々の生活を“より”豊かにすることを使命として、地域の皆様の「普段」の生活をサポートしています。

 そのためにはお客様のニーズの多様化や社会課題の複雑化に対応し続けることが重要であると考えています。

 これまでの事業基盤を活かすとともに、社会の変化(新たなニーズ)に応え、持続的な成長を遂げることで、地域のお客様、お取引先様、社員の幸せを創出します。

 

目指す姿

1 地域のお客様、お取引先様に信頼され、愛されるスーパーマーケット

2 事業活動を通じ、地域社会の課題解決に貢献する企業

3 社員が生き生きと働ける企業

4 グループシナジーの発揮により収益性・経営効率を高め、持続的な企業価値向上を図る企業

 

 長期ビジョンの実現に向け、当社は、2025年2月期を初年度とし2027年2月期を最終年度とする第3次中期経営計画を策定いたしました。

 第3次中期経営計画の骨子は以下のとおりです。

 

[第3次中期経営計画の骨子]

 

 

基本方針Ⅰ

 

長期ビジョン

 

の実現と

 

持続可能な

 

企業成長

既存事業の強化・新ニーズへの対応

 

地域のお客様に信頼され、愛されるスーパーマーケットブランドと

リテールCIの確立

 

 

 

戦略① 成長戦略

 短期的には既存エリア・サービスの強化に向けて積極的な成長投資を行い、中長期的にはエリア拡大・新たな価値創造のための新規サービスやM&A等による非連続的な成長に取り組んでまいります。

 

 

 

戦略② 競争力の強化

 リテールパートナーズならではの商品・サービスをお客様に提供し、魅力的な店舗開発を行うことで競争力の強化を図ります。

 

 

 

戦略③ 収益性の強化

 共同調達やPB開発及びオペレーションの効率化等により、営業費用を削減し、売上総利益の改善とローコスト運営による生産性の向上を図ります。

 

 

 

 

 

 

 

基本方針Ⅱ

 

経営インフラの整備・高度化

 

社員が楽しく生き生きと働ける環境の構築と

グループ経営・DX促進による収益性・効率性の向上

 

 

 

戦略④ グループ連携の強化

 さらなるグループ連携の強化により、グループ各社の経営資源を活用し、グループ全体の企業価値向上を目指します。

 

 

 

戦略⑤ 人的資本経営への取り組み

 長期ビジョンの実現に向け、重要な経営資源である人材への投資を積極的に行ってまいります。

 

 

 

戦略⑥ デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進

 DX化を進め、お客様との関係性・利便性を強化するとともに、オペレーションの改善を進めてまいります。

 

 

 

 

 

 

 

基本方針Ⅲ

 

ステークホルダーとの関係強化

 

経営ビジョンの浸透と企業価値向上

 

 

 

戦略⑦ ESG経営の推進

 当社グループは「地域のお客様の日々の生活を“より”豊かに」するためESG経営の実践により、地域社会に貢献しともに発展することによって、継続的な成長と企業価値向上に努めてまいります。

 

 

 

戦略⑧ 財務戦略

 株主資本コストや株価を意識し、成長投資、生産性向上施策の推進により、ROE7%以上を目指すとともに、安定的な営業キャッシュ・フローを創出し、適切な資金配分による企業成長に努め、株主還元の強化を図ってまいります。

 

 

 

 

 

(3) 経営環境

① 企業構造

 当社グループは、当社を持株会社として、スーパーマーケット事業、その他の事業を営む連結子会社9社、関連会社3社により構成されております。当社グループの事業内容及び当社と関係会社の当該事業に係る主な位置付けは、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載しております。

 当社は、当社グループの経営方針の策定や各事業会社への経営指導等を行っており、各事業会社の財政状態及び経営成績について逐次報告を受けるものとしておりますが、各事業会社の自主性を一定程度尊重することで、対処すべき課題の把握とその対応への機動性を高めております。

 

② 主要な商品・サービスの内容及び競合他社との競争優位性

 当社グループでは、食品スーパーマーケットの運営を主業として、中国地方西部から九州地方全域にかけて、食料品・日用品等の販売を行っております。

 食料品・日用品の需要は、地域の特性(主に年齢構成や所得分布、その他地域固有の文化、嗜好)に基づくため地域ごとに大きく異なり、その地域のニーズに合わせた商品及びサービスを展開することが重要であると考えております。

 当社グループは地域に根ざしたローカルスーパーマーケットとして、創業以来長きにわたり、地域のお客様から親しまれ、主力販売エリアにおいて高いシェアと認知度を得ております。このような市場環境のなか、大手ナショナルチェーンには得がたいローカル企業ならではの地域密着性と、ドラッグストア、コンビニエンスストアにない品揃えの豊富さにより、企業としての競争優位性を保っているものと認識しております。

 

③ 顧客基盤及び販売網

 当社グループの主要な顧客は、主に当社グループの営む店舗に来店されるお客様であります。店舗の商圏は店舗規模に応じて設定しており、店舗を中心として半径およそ500mから2km程度の範囲であります。

 また、連結会計年度末現在における当社グループの地域別店舗数とその推移は以下のとおりであります。

都道府県名

2023年2月期

2024年2月期

2025年2月期

広島県

5

5

5

島根県

1

1

3

山口県

78

78

80

福岡県

63

63

61

大分県

53

53

53

熊本県

16

16

16

佐賀県

6

6

6

長崎県

15

14

14

宮崎県

29

35

35

鹿児島県

1

1

1

合 計

267

272

274

 

④ 事業を行う市場の状況

 当社グループは、中国地方西部から九州地方全域にわたる地域を中心とした国内市場において事業を営んでおります。国内経済の状況といたしまして、社会活動の正常化に伴う人流の回復や雇用・所得環境の改善を背景として、緩やかな回復基調が見られる一方、物価の高騰による国内経済への影響は当面継続するものと予測され、依然として先行き不透明な状況が続くものと想定されます。

 当社グループが主に事業を展開する食品小売業界は、人口動態の変化、お客様のライフスタイルの変化・多様化、業態を超えた企業間の競合の激化、経営・組織改革を目指したデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の動きなど、目まぐるしい変化に直面しております。とりわけ、スーパーマーケットの経営においては、物流費や水道光熱費、設備や資材の高騰、慢性化しつつある人手不足と物価上昇を背景とした賃上げによる人件費の増加など、各種コストの増加が重大な経営課題となっているほか、物流業界における人手不足の問題などとも密接に関連しており、今後も厳しい経営環境が続くものと推測されます。

 当社グループでは、このような市場環境における当社グループの強みと弱み、機会と脅威を以下のとおり認識しております。

 

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 持続的な企業価値向上を実現するため、第3次中期経営計画において当社グループは、収益体質とグループ経営のさらなる強化を促進し、市場環境の変化に迅速に対応すべく組織と経営の改革を図ってまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループでは、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題を次のとおり認識しております。

① 競争力の強化

 人口減少に伴い市場の縮小が懸念されるなか、企業間の競合が激化しており、当社グループがドミナントを形成している地域においても、シェアの維持・拡大は重要な課題となります。当社グループでは、盤石な店舗体制を維持し、お客様に選ばれる店舗開発・商品開発を通じて、競争力を強化してまいります。

② 人材確保及び人材育成

 少子高齢化、人口減少など人口動態の変化により、人材の確保が困難な状況となるなか、当社グループの持続的な成長のためには、人材の安定的な確保と優秀な人材の育成が重要な経営課題となります。当社グループでは、多様な働き方に対応し、様々な雇用制度を設けることで、人材の確保を図っております。また、人材育成においては、階層別研修、OJTをはじめとした教育体系の充実に取り組み、現場力の強化と次世代リーダーの育成を図っております。加えて、レジのセルフ化や自動発注システム、業務支援ツールの導入など、業務の自動化・省人化も進め、限られた人材で効率的に業務を遂行できる体制の構築を目指してまいります。

③ 物流問題への対応及び物流体制の合理化

 当社グループを取り巻く物流環境は、燃料費・人件費の上昇、ドライバー不足および物流に関する労働規制強化(いわゆる「2024年問題」)の影響を受け、物流コストが年々増加傾向にあります。当社グループでは、物流に関する諸課題に対応し、持続可能かつ効率的な物流体制を確立するため、配送ルートやロットサイズの最適化によるコスト構造の見直し、外部物流業者との関係強化と価格競争力の確保、倉庫業務・仕分け工程における自動化・省力化の推進、物流拠点の共有・統合など、様々な取り組みを行ってまいります。

④ 財務戦略の強化

 当社グループの掲げる事業戦略の実現のためには、安定的な資金調達及び財務基盤の強化が重要な課題となります。また、当社グループはPBR、PERともに業界平均を下回っており、現状では、投資家から当社の成長性や配当政策に対する評価が十分に得られていないと推察されます。当社グループは、安定的に営業キャッシュ・フローを創出するとともに、適切な資金配分を実施し、さらなる企業成長に努めてまいります。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、PBR改善に向けたプロセスを細分化し企業価値向上に努めてまいります。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、成長性、収益性などの経営指標を重視しており、売上高経常利益率、自己資本当期純利益率(ROE)などの経営指標を目標設定することで、持続的な企業価値の向上を目指しております。また、2025年2月期を初年度とし、2027年2月期を最終年度とする第3次中期経営計画におきましては、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の一環として、新たに株価純資産倍率(PBR)の数値目標を定め、PBR改善に向けた取り組みを推進しております。

 当社グループの第3次中期経営計画における数値目標は次のとおりです。

 

第3次中期経営計画の数値目標(連結)

指標

2027年2月期(最終年度)

営業収益

2,960

億円

経常利益

98

億円

経常利益率

3.5

ROE

7.0

PBR

1.1

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「地域のお客様の日々の暮らしを“より”豊かにする。なくてはならない存在として地域を支える。」という社会的使命を果たすため、お客様と地域を越えて手をたずさえ、地域に暮らすみなさまに心地よい一日をお届けし、「普段の消費生活」をサポートさせていただくことを基本的な考え方としております。また、サステナビリティ推進の重点活動を「地球環境」「地域社会」「人権と多様な人材」の領域に定め、その実践を通じて持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努めてまいります。

 

 当社グループでは、サステナビリティ基本方針の実現のため、当社グループの行動規範を次のとおり策定いたしました。

 

[リテールパートナーズグループ 行動規範]

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企業としての姿勢

私たちは、普段の生活(くらし)をサポートし、地域をより豊かにするために力を合わせお互いを尊重し、地域とともに発展し西日本一の流通事業連合体を目指します。

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お客様に対して

私たちは、誠実でより良い商品を、お買い求めやすい価格で提供し、心のこもったサービス、ミールソリューションにより暮らしに役立ち快適なお店づくりをいたします。

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お取引先様に対して

私たちは、お取引先が豊かになって初めて企業も従業員も豊かになります。常に誠実で良好な関係により、ともに成長・発展いたします。

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株主様に対して

私たちは、企業としての価値を継続的に高め、株主様との対話を通じて透明性のある経営を目指します。

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従業員に対して

私たちは、働く人すべての人権を尊重し、健全で働きやすい職場環境を維持し、平等な雇用機会を確保し、働く楽しさと自己の成長をお手伝いします。

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地域社会に対して

私たちは、社会規範、法令遵守の徹底を図り、常に地域社会と連携を深めて行きます。また、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力及び団体とは一切の関係を遮断いたします。

 

 また、当社グループでは、事業を通じ社会的課題解決のためSDGsに示された目標を達成し、地域社会の持続可能な成長に貢献するため、下記のマテリアリティを特定しました。

マテリアリティ

具体的な取り組み

地球環境

・CO削減への取り組み(太陽光発電、冷媒問題への対応など)

・食品ロス削減

・リサイクル活動の拡大

地域・社会

・フードバンク・子ども食堂などへの食材提供

・安全・安心と健康な高付加価値食品の開発・提供

・地域社会への貢献活動(買物支援、地域募金活動)

・地域生産者の支援(地産地消)

・ガバナンス

・法令遵守

人権と多様な人材

・人材、働き方の多様性(女性の活躍の支援など)

・働きやすく、働きがいのある環境の提供

・すべての人の人権や個性、価値観を尊重する

 

ガバナンス

 サステナビリティの推進体制として、当社グループでは、「サステナビリティ推進委員会」を設置し、中長期的な課題の検討や方針の策定、気候変動による事業リスク・機会の共有や対策を決定し、進捗管理を行うこととしております。また、それらの結果は、経営会議への報告後、取締役会に報告されます。

 

[サステナビリティ推進委員会の位置づけ(組織図)]

 <コーポレート・ガバナンス模式図>

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 当社グループは、サステナビリティ基本方針に掲げた「地域のお客様の日々の暮らしを“より”豊かにする。なくてはならない存在として地域を支える。」という社会的使命実現のため、担当取締役を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、当社グループ全体の企業価値向上と社会の持続的発展に向け、様々な施策・活動をより効果的かつ積極的に推進します。必要に応じてグループ全社及び関係部署間の連携を図りながらSDGs達成に向けた取り組みを推進し、「誰一人取り残さない」持続可能な社会を2030年までに実現することを目指した国際目標の達成に貢献します。

 

気候変動対策

(1) TCFDへの賛同

 リテールパートナーズ及び当社グループ各社は、気候変動問題をサステナビリティ経営上の最重要課題と捉え、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しています。

 リテールパートナーズ及び当社グループ各社は、2022年5月26日開催の取締役会において、2015年12月、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が、2017年6月に発表した最終報告(TCFD提言)に賛同することを決議いたしました。

 TCFD提言は、世界共通の比較可能な気候関連情報開示の枠組みであり、当社グループは、「低炭素社会への貢献」に向けて気候変動問題を経営課題と捉え取り組んでまいります。

(2) 戦略(リスクと機会の特定)

[リスク]

移行リスク

政策・法規制リスク

・炭素税の導入、プラスチック循環促進法等、温室効果ガス排出を抑制する政策導入

・温室効果ガス排出に関する情報開示義務の拡大

技術リスク

・規制強化に伴う新規設備、機材の入れ替え、事業運営コストの増加

市場リスク

・環境課題に対する消費行動、顧客意識の変化に伴う、低炭素製品、サービスの需要増等への対応遅れによる成長機会の損失

・再生可能エネルギーの転換に伴う調達コストの増加

・気候変動に起因する感染症リスク増加への対応遅れによる成長機会の損失

評判リスク

・環境課題への対応遅れによる信用失墜、企業価値の棄損、罰金リスク

物理リスク

急性リスク

・気候変動から生じる自然災害による調達・物流ルート断絶、店舗・事業所の損害、営業停止に伴う製品・サービスの販売機会の損失

・気候変動から生じる感染症リスクの伴う、店舗での販売機会の喪失

慢性リスク1

・気温上昇から生じるエネルギー調達コストの増加

慢性リスク2

・海面上昇から生じるエネルギー調達コストの増加

 

[機会]

機 会

資源の効率性

・低炭素エネルギー源の利用による事業運営・物流コストの減少

エネルギー源

・新規技術利用に伴う、エネルギー調達コストの減少

・エネルギー高効率機器導入によるオペレーションコストの減少

製品・サービス

・環境課題に対する消費行動の多様化や顧客意識の向上に対応した商品、サービスの提供による事業ポートフォリオの再構築

市場

・伸長が見込まれる新しいマーケットの獲得

・ESG経営推進によるステークホルダーの評価、企業価値の向上

・気候変動に起因する感染症リスク増加への対応による新たな成長機会の拡大

強靭性

・災害に備えたエネルギー分散化等によるエネルギーレジリエンス(適応力)の確保

・再エネ、省エネ推進に伴う、エネルギー調達リスクの回避

 

(3)リスク管理

 気候変動関連におけるグループ全体のリスクの識別・評価・管理はサステナビリティ推進委員会にて、事業への影響を収集分析するとともに、気候変動の影響で大規模化する自然災害リスクに対する脆弱性を評価し、サプライチェーン・プロセスで想定される「商品調達」「商品の配送」「店舗営業」「顧客の来店手段」「廃棄物など非商品の移動」などの項目ごとに事業継続の観点から取るべき対応に関する協議を進めております。

 

[リスク管理のプロセス]

リスク・機会の特定

・リスクと機会の情報を収集

・政策や市場などの観点から、自社で生じる移行・物理リスクと機会を特定

 

重要度評価

・特定したリスクと機会を定性評価し、自社への影響度を大・中・小に分類するなどの重要度評価を実施

 

影響試算

・信頼度の高い外部予測値と自社数値を用い、重要度の高いリスクと機会によってもたらされる事業、財務への影響をシナリオごとに定量評価

 

対応策の検討

・事業影響の特に大きい気候変動リスク、機会への対応方法を検討

・必要に応じ推進体制を整備

 

(4) 指標と目標

① Scope1、Scope2及びScope3の温室効果ガス排出量算定の実施

 2022年度のScope1及びScope2の温室効果ガス(GHG)算定を実施いたしました。

Scope

排出量

割合

(t-CO

(%)

Scope1

18,594.4

2.0

Scope2

105,485.7

11.1

Scope3

829,423.6

87.0

合計

953,503.6

100.0

 

② 財務的リスク削減と機会増進策(シナリオ分析)

 グループ各社及び全体のScope1及びScope2の排出量算定を行うとともに、移行リスク、物理リスクそして機会について、1.5℃シナリオと4℃シナリオを実施いたしました。

 さらにインターナルカーボンプライシング(ICP)及び炭素強度分析を行うことにより、具体的な削減効果やリスクを制限するための方針を定めました。

シナリオ

仮定の世界

具体的な方針

1.5℃

シナリオ

2100年までの平均気温上昇が産業革命以前と比べて1.5℃未満に抑えられている世界

GHG排出規制の強化、技術革新の進展、新たなエネルギーへの転換が起こると想定されています。これらが調達や販売のプロセスで持つ財務的リスクを削減し、機会を増進するためには具体的対応策を定め、実施していく必要がありますが、その際にはICPをシャドープライスとして活用し、低炭素上限額の中で資本を投入することが望ましいとされています。なお、大きな物理的リスクは想定されていません。

4℃

シナリオ

2100年までの平均気温上昇が産業革命以前と比べて4℃上昇する世界

物理的リスクが生じると想定されています。これらが調達や販売のプロセスで持つ財務的リスクを削減し、機会を増進するためには、具体的対応策の考案と実施が必要と考えられます。その際、ICPをシャドープライスとして活用し、低炭素上限額の中で資本を投入することが望ましいとされています。なお、大きなGHG排出規制の強化、技術革新の進展、新たなエネルギーへの転換は想定されておらず、移行リスクも機会も小さいと考えられます。

 

③ 財務的影響への具体的対応策

 自然災害、気温上昇などにより、インフラに悪影響が及んだ場合、電力価格が上昇するなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす様々なリスクが想定されます。こうしたリスクに対しては、電力価格変動の影響を緩和するため、長期契約による割引プランを利用するなど、様々な対応策を講じてまいります。

 

[インターナルカーボンプライシング及び炭素強度について]

項目

短期

長期

備考

カーボンプライス

¥694,848,468

¥1,326,624,970

Scope1及びScope2の価格

 

¥5,600

¥10,692

(65.1€)

トン当たり取引価格

短期指標は再エネJ-クレジット落札価格

長期指標はEU-ETS価格を参照

(2024年10月15日現在)

 

 

 

項目

指数

炭素強度指数

(t-CO/億円)

52.85

 

 カーボンプライスについては、Scope1及びScope2の排出量の合計に、国内で最も流通されているJクレジットの平均価格を乗じた数値としております(短期)。ただし、国際的に見て炭素価格は上昇傾向にあるため長期的にはEU-ETSの価格に近づくことが想定されます。そのため、長期価格としてEU-ETSの価格を記しております。

 また、炭素強度指数については、Scope1及びScope2の合計値を対象年度の営業収益(単位:億円)で除したもので、算定の基礎に用いた営業収益は、2022年度における当社グループの連結営業収益2,347億円であります。この指数は、数値が低いほど優秀であるとされており、毎年低減させることが必要であると考えております。このため、具体的なGHG排出削減目標を中期と長期で設定し、削減目標を達成させるための様々な具体的な対策を実施する予定です。

 

④ 削減目標

・GHG排出削減目標 WB2℃水準

 WB2℃水準とは、産業革命前から気温上昇を2.0度未満に抑制する目標(Well-Below 2℃)を示します。基準年から2030年までに30%削減が目安とされ、2022年度を基準年とすると2030年に温室効果ガス(GHG)の排出量を37,224.02t-CO削減する必要があります。

 

・GHG排出削減目標 1.5℃水準

 1.5℃水準とは、産業革命前から気温上昇を1.5℃に抑える目標を示します。基準年から2030年までに50%削減が目安とされ、2022年を基準年とすると2030年に温室効果ガス(GHG)の排出量を62,040.04t-CO削減する必要があります。

 

(単位:t-CO

 

現在の排出量

(Scope1及びScope2)

(基準年:2022年)

目標排出量

(目標年:2030年)

目標削減量

(現在の排出量

-目標排出量)

備考

WB2℃

124,080.08

86,856.06

37,224.02

2030年までに

30%削減

1.5℃

62,040.04

62,040.04

2030年までに

50%削減

 

 上記の各水準における削減量の経過をグラフに示すと下記のとおりとなります。

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 1.5℃水準で削減を進めると、2038年にカーボンニュートラルを達成されます。

 

 SBTiでは、Scope1及びScope2の削減目標設定は必須であり、Scope1及びScope2の95%を網羅する範囲で目標設定することが望ましいとされております。当社グループが目指す中長期目標は以下のとおりであります。

 

2030年中期目標

・Scope1及びScope2のCO排出量を50%以上削減する。(2022年度を基準)

・主要サプライヤーの60%に削減目標を設定することを促す。

・Scope3のCO排出量を30%削減する。(2022年度を基準)

2050年長期目標

・カーボンニュートラルの実現を目指す。

 

⑤ 削減目標を達成させるための今後の具体的な取り組み

 自社の努力だけではCOを削減することには限界があります。そのため、サプライヤーの協力を得てさらなる削減を目指します。具体的には削減目標を設定したサプライヤーからの調達量を増やすなどのインセンティブ制度の導入を行っております。

 現在、電力会社が供給する環境にやさしいCOフリープランの電力を2店舗に導入しております。また、廃棄物焼却施設で発電された電力やバイオマス発電所の電力などの再生可能エネルギーを7店舗が導入しております。

 このほか、取組事項の例は以下のとおりです。

・高効率冷蔵冷凍設備及びLED照明の導入

・再エネ電源の調達(太陽光発電パネルの設置)

・非化石証書およびJ-クレジットの活用

・電気自動車の導入

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 当社グループは「『普段』の生活(くらし)をより豊かに」という理念のもと、継続的な企業価値向上をめざし、2015年より持株会社体制に移行し、事業会社3社のそれぞれの地域に根差した経営を行ってまいりました。このような基本戦略に基づき、引き続き、地域に必要とされる企業として成長するために、人的資本経営の取り組みを進めてまいります。

 

(1) 人材育成方針

 地域に根差した、経営を推進するために、事業会社を中心に、それぞれの地元の高校や、大学との連携をさらに強化し、新卒者の採用を今後とも進めてまいります。また、採用に際しては、学生に寄り添い、事業特性を十分理解した上で入社してもらい、入社後も、しっかりしたフォロー体制を構築し、長く活躍できる人材の育成を目指します。また、より豊かな食生活を提供するための、食のスペシャリストや、DX推進のためのIT人材など、専門知識を有した人材の中途採用も強化いたします。

 入社後の育成方針はグループ教育体系に基づき、リテールパートナーズおよび各事業会社で、下記のような教育カリキュラムを実施しております。

 

① 各種研修

研修種別

研修名

対象者

経営幹部研修

コーネル大学経営幹部講座受講

各事業会社の経営幹部候補者

リテールパートナーズ店長塾

各事業会社の店長

現場リーダー

研修

チーフのためのマネジメント初級講座

新任、若手チーフ

チーフキャリアアップ講座

中堅チーフ

店長・副店長のためのマネジメント講座

新任店長、店長候補者

店長のための計数管理講座

若手、中堅店長

 

② 新入社員教育

 新入社員研修(入社時導入研修)、新入社員フォローアップ研修(入社後1年)

 

③ 多様な人材の活躍推進

 多様な人材の活躍推進のため、女性が長く活躍できる職場環境の整備や、働き方改革の推進に取り組み、女性活躍推進を図ってまいります。また、ポジティブアクションの取り組みとして、意欲的な女性社員のキャリアアップを促進するため「リテールパートナーズ女性活躍推進研修」を毎年実施し、女性目線での課題の抽出や意識醸成を行っております。障害者雇用では地域の支援学校との連携を強化し、在校生の実習を積極的に受入れて仕事の内容を理解した上で入社し、長く勤務できるようサポート体制を構築いたします。高齢化が進む中で、熟練した技能を持つ高齢者の継続雇用にも取り組み、早期に70歳までの雇用継続制度を確立いたします。

 

④ リスキリング・自己啓発の推進

 豊富なメニューをラインナップした通信教育メニューをグループで作成し、社員のリスキリングや自己啓発を推進してまいります。また修了者については受講費用補助や一部の資格取得の受験料を補助するなど費用面でもサポートしております。

 

(2) 働きやすい環境づくり

 年間休日の増加に取り組み、早期に年間所定労働時間2,000時間以内を目指します。また、ワークライフバランスを重視して、働き方の選択ができる制度構築も進めてまいります。あわせて、男性の育児休業取得推進のために、休業時のフォロー体制の確立や特別有給休暇制度の導入など、家庭と仕事を両立しながら働いていける環境づくりを進めております。

 また、人権の尊重とダイバーシティの観点から、身だしなみの自由化や制服のジェンダーレス化に関する検討を行い、多様な人材が安心して能力を発揮でいる職場環境の整備をすすめております。

 

 なお、当社グループでは、上記において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標は次のとおりであります。

 

[管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率]

 第3次中期経営計画最終年度(2027年2月期)の目標数値

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

13.2

8.4

男性労働者の育児休業取得率

83.3

53.1

(注)「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の格差」に記載しております主要な連結子会社を対象に算出したものであります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 また、当社グループのコンプライアンス推進体制及びリスクマネジメント推進体制につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項」に記載のとおりであります。

 

(1) 法的規制について(当該リスクの重要性:中)

背景

当社グループでは会社法をはじめ、食品安全基本法、食品衛生法、農林物資の規格化等に関する法律(JAS法)、食品表示法及び食品表示基準、景品表示法、独占禁止法、不正競争防止法、大規模小売店舗立地法、容器包装リサイクル法、製造物責任法(PL法)のほか、様々な法的規制の適用を受けております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

法的規制により、当社グループの事業活動にも一定の制限が生じております。また、将来にわたって営業を継続するためには、関連法令の改正等へ柔軟かつ迅速に対応する必要があり、相応の対応コストが発生する可能性があります。万が一、監督官庁等から、当社グループの事業活動に違法性の指摘があった場合には、当該事業会社、店舗及び事業所の営業停止や罰則などの行政処分を受けることが考えられます。この場合には、お客様並びにお取引先様からの社会的信用の低下、損害賠償等の費用の発生などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

現状においては、営業活動に重大な影響をもたらす法令改正等は公表されていません。また、法令を遵守した事業活動を行うため、ガバナンスの維持・向上に最大限努めておりますが、役員又は従業員による法令違反や不適正行為、管理監督体制の不徹底による人為的ミスの発生など、当該リスクは絶えず一定程度存在するものと認識しております。

当該リスクへの対応策

当社グループにおいては、「グループ企業行動憲章」及び「コンプライアンス規程」を定め、コンプライアンスに関する基本的な考え方を共有する体制を構築しております。また、顧問弁護士とも連携を深め、法務リスクへの対応に努めるほか、事業活動に関わる法令等に対する理解向上のため、関係諸法令に関する講習の受講や、業界団体を通じた情報収集に努めております。各事業会社においては、マニュアルの整備及び従業員に対する教育・研修を行うとともに、内部通報制度の実行的な整備・運用を行うことにより、当該リスクの早期発見及び未然防止に努めております。事業リスクへの対応や法令遵守の徹底など、コーポレート・ガバナンスの強化については、引き続き当社の第3次中期経営計画(2025年2月期から2027年2月期まで)の中で取り組んでまいります。

 

(2) 競争激化について(当該リスクの重要性:高)

背景

当社グループが事業を行っている地域では、食品スーパーマーケットを展開する大手チェーン、リージョナルチェーン、地元有力企業に加え、ディスカウントストア、ドラッグストア、コンビニエンスストア、EC事業者など業態を超えた競合が激化しております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

当社グループの商圏内に競合する店舗が出店した場合には、既存店の収益減少など、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

今後も商圏内に競合店の出店が多数計画されており、当該リスクは将来にかけて断続的に発現するものと考えられます。一部では、現在も影響が表れているものと見られ、今後も顕在化する可能性は極めて高いものと考えられます。

当該リスクへの対応策

当社グループでは、競合激化に伴うリスクを優先的に対処すべき課題として認識しており、当社の第3次中期経営計画(2025年2月期から2027年2月期まで)においても、その基本戦略のなかに「成長戦略」「競争力の強化」を掲げております。既存エリア・サービス強化に向けた積極的な成長投資を行うとともに、中長期的にはエリアの拡大や新規サービスの展開に取り組んでいくほか、当社グループならではの商品・サービスをお客様に提供し、魅力的な店舗開発を行うことにより、当社グループの競争力の強化を推進してまいります。

 

(3) 地震、台風などの災害について(当該リスクの重要性:中)

背景

近年、日本全国において自然災害が頻発し、その被害はますます激甚化しております。とりわけ、当社グループの主な出店エリアである九州地方は、全国的にも台風や集中豪雨の多い地域であるといわれ、河川の氾濫、高潮被害、土砂災害等の自然災害の多発する地域でもあります。当社グループは過去に何度も台風・集中豪雨の被害に遭い、商品の滅失、店舗・施設の破損が生じました。また、地震により被害を受けた際には、広域にわたり複数の店舗が営業できない状態がありました。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

地震や台風などの大きな災害が発生した場合には、店舗設備の破損、停電等のシステムダウンにより、営業を継続できなくなる可能性があります。また、物流網の遮断等により仕入計画に支障をきたす恐れがあります。この場合、被災店舗の収益の減少、復旧費用の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

台風や豪雨は初夏から晩秋にかけて発生しやすいことから、例年この時期には一層の警戒を強めております。しかしながら、これらを含む自然災害の発生の時期や発生地域、被害の程度を予測することは極めて困難であります。ただし、当社グループの出店エリアにおいて過去に被災の前例もあることから、当該リスクは相当程度起こりうるものと認識し、有事の際に備えた対策は常時必要であると考えております。

当該リスクへの対応策

当社グループでは、災害発生時には各事業会社の総務部、店舗運営部を中心に、被害状況の把握や店舗への対応指示を行っております。今後とも、より一層具体的な事業継続計画の策定を図り、想定される様々なシナリオを基に、対応策を精緻に構築してまいります。

 

(4) 金利変動及び金融市場の変化について(当該リスクの重要性:中)

背景

当社グループの資金の一部は、銀行借入れ等の有利子負債によるものであり、当社グループの有利子負債残高は2025年2月28日現在で136億18百万円、連結総資産に占める有利子負債依存度は10.7%であります。これらは金利等の変動リスクに晒されております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

今後、景気後退や市況並びに当社グループの事業見通しの悪化、信用力の低下等が生じた場合、資金調達において困難が生じる可能性があります。また、今後金利が上昇する場合には、借入コストが当社グループの経営を圧迫し、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

不安定な社会情勢のなか、景気後退や金融市場への影響が懸念され、長期的な見通しは不透明であります。当該リスクがただちに当社グループの財政状態へ重大な影響をもたらすことは現状想定しておりませんが、当該リスクは絶えず一定程度存在するものと認識しております。

当該リスクへの対応策

当社グループは、銀行借入金等の削減に向け様々な取り組みを行ってまいりました。また、第3次中期経営計画(2025年2月期から2027年2月期まで)において、財務基盤の強化を図るとともに、今後の業容拡大を見据え、資金調達の多様化についても検討を進めてまいります。

 

(5) 食品の安全性について(当該リスクの重要性:低)

背景

当社グループでは、店舗及びプロセスセンターにおいて、食品の製造・加工・販売を行っており、食品衛生法の規制を受けております。また、改正食品衛生法に基づき、HACCPに沿った衛生管理の実施が義務付けられるなど、食品の安全性確保については、これまでに加えますますの食品事業者の努力が求められております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

万が一、食中毒の発生や異物混入など、当社グループの提供する食品の安全性や品質に対する消費者の信頼が何らかの理由で低下した場合、生鮮食品をはじめ食品部門の売上が低下する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

食品の安全管理体制の維持・向上に最大限努めておりますが、当該リスクは絶えず一定程度存在するものと認識しております。

当該リスクへの対応策

当社グループでは、商品部において、衛生管理マニュアルを作成し、従業員への教育を行っております。また、改正食品衛生法への対応においては、HACCP導入プロジェクトチームを組成し、店舗衛生管理計画及び作業マニュアルの作成を行ったほか、従業員への周知を図りました。

 

(6) サイバーリスクについて(当該リスクの重要性:中)

背景

社会のIT化が進展し、企業の事業活動におけるコンピュータやインターネットへの依存度が高まるなか、サイバー攻撃等によるセキュリティ被害の発生件数は増加しており、その損害額も高額化する傾向にあります。当社グループにおいても、サイバーリスクは経営に深刻な影響を及ぼす重要な課題の一つと認識しております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

当社グループにおいてサイバー攻撃等によるインシデントが発生した場合、システムダウンによる事業の停止、商品の受注・製造の遅延による機会喪失などによる収益の減少が懸念されます。また、お客様並びにお取引先様からの信用低下、損害賠償の発生、再発防止のためのセキュリティ強化やシステム改修にかかる費用の発生など、様々な損害が発生する恐れがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

近年、企業などでサイバー攻撃による被害が多数報告されており、企業規模の大小や業種に関わらず攻撃の対象となっていることから、当社グループにおいても、当該リスクは相当程度存在するものと認識し、警戒意識を高め、対策に努めております。

当該リスクへの対応策

当社グループでは、各事業会社において、サイバーセキュリティに関する規程や基準を定めるとともに、ウイルス対策ソフト等を利用したセキュリティ対策を実施しております。今後はさらに、サイバー攻撃の手口が巧妙化・高度化していくことを想定し、グループ全体での統一的な情報セキュリティ方針の整備、従業員に対する情報セキュリティ教育プログラムの定期的な実施のほか、実際にサイバーインシデントが発生した場合における対応について、システムの復旧、経理・法務・IR等の対応を含め、各部門における具体的手順の整備を進めてまいります。

 

(7) 個人情報の取り扱いについて(当該リスクの重要性:中)

背景

当社グループには、カード会員の個人情報を有している事業会社があります。このほか、当社グループには、不動産業や保険代理業、商品の受注業務等を行う事業会社があり、多くの顧客の個人情報を取り扱っておりますが、これらの個人情報の取り扱いについては、個人情報保護法をはじめとした関連法令の規制を受けております。2022年4月より全面施行となった改正個人情報保護法により、漏洩が発生した際の個人情報保護委員会への報告及び本人への通知や、安全管理のために講じた措置の公表等が義務化されるなど、個人情報を取り扱う事業者に対する法的規制は昨今ますます強化されております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

改正個人情報保護法のもと、個人情報を取り扱う事業者に求められる責務が強化・拡大するとともに、措置命令違反等があった法人に対する罰則が重罰化されました。当社グループ内部の管理上の問題や、外部からのサイバー攻撃や不正アクセス等により情報漏洩が発生した場合には、対応コストが発生するほか、当社グループの社会的信用や企業イメージを著しく損なう恐れがあります。また、これを起因とする収益の減少や、損害賠償の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

国内外において情報セキュリティに関する事件・事故が多数発生していることから当社グループにおいても、当該リスクは相当程度存在するものと認識し、警戒意識を高め、対策に努めております。

当該リスクへの対応策

当社及び当該事業会社では、個人情報を保護するため、個人情報保護委員会を設置しております。また、個人情報保護規程や個人情報漏洩時対応マニュアルなどの情報管理規程を体系的に整備しており、改正個人情報保護法への対応としては、社内の個人情報保護規程やカード会員の個人情報の取り扱いに関するプライバシーポリシーの見直しを図りました。当社グループではこれらに基づいて慎重かつ適切な個人情報の管理に努めてまいります。

 

 

(8) 人権問題及びハラスメントについて(当該リスクの重要性:低)

背景

社会の多様化に伴い、多様性尊重の重要性が一層高まっております。当社グループの事業活動は、株主様、お客様、お取引先様、従業員、地域社会それぞれと良好な繋がりを持つことで成り立っておりますが、様々な世代、国籍、個性や価値観を持つ方々との関わりの中で、差別やハラスメント等の様々な人権リスクが存在しております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

当社グループの役員又は従業員により、差別的な言動やハラスメント等の不適切な行為が行われた場合、企業としての社会的信用低下はもとより、職場環境の悪化による従業員の就業意欲低減、心身の不調による休職・離職により、営業活動における生産性低下などを招く恐れがあります。また、企業として配慮義務の履行が不十分とされる場合には、訴訟リスクが生じる恐れがあり、これらの事象の発生が当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

現状において、訴訟等に発展する程度の重大な事案は発生しておりませんが、事業活動を通じて結ばれるステークホルダーとの人的繋がりは、社内外を問わず広範にわたっており、当該リスクは一定程度存在するものと考えられます。

当該リスクへの対応策

当社グループでは、「グループ企業行動憲章」を定め、人権及びコンプライアンスに関する基本事項の周知・徹底を行うとともに、サステナビリティ推進重点項目の一つとして「人権と多様な人材」を掲げ、すべての人の人権や個性、価値観を尊重し、誰もが働きやすく、働きがいのある職場環境の提供に取り組んでおります。また、各事業会社において、ハラスメントの防止に関する規程の整備、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント等の防止に向けた研修の実施、相談窓口の設置を行うなど、当該リスク発生の未然防止及び早期対応体制の構築に努めております。

 

(9) 保有資産の減損等について(当該リスクの重要性:中)

背景

当社グループは、店舗・土地等の有形固定資産やのれん・有価証券等多くの資産を保有しており、減損会計を適用しております。

リスクの内容及び顕在化した場合の影響

店舗の収益性が悪化した場合や保有資産の市場価格等が著しく下落した場合は減損損失を計上する可能性があり、この場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

当該リスクが顕在化する時期及び可能性の程度

当連結会計年度において、当社グループでは有形固定資産に係る減損損失2億74百万円を計上しております。今後も当社グループにおける収益性の悪化や、保有する有価証券の発行会社等の財政状態の悪化、不動産・金融市場の変化等により、これら減損損失の計上の可能性は相当程度あるものと考えられます。

当該リスクへの対応策

当社グループでは、保有する有形固定資産や有価証券等の資産価値を定期的に確認し、減損の兆候を把握することとしております。また、営業店舗の損益を細かく確認し、収益性の低下が見られる店舗には、収益改善のため個別の対策を計画・実施しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度におけるわが国経済は、社会活動の正常化に伴う人流の回復や雇用・所得環境の改善などを背景に、景気は緩やかに回復いたしました。しかしながら、原材料価格の高騰、物価上昇による消費マインドの悪化懸念など、依然として先行きは不透明な状況が続いております。また、当社グループを取り巻く事業環境においては、業種業態を超えた企業間の競合が激化するなか、少子高齢化、人口減少など人口動態の変化に伴う市場の縮小や人材確保の困難化、物価上昇に伴う店舗運営コストの増加など、様々な問題が懸念されます。

 このような状況に対応し、当社グループが持続的な企業価値向上を実現するため、当社は2025年2月期を初年度とする第3次中期経営計画を策定し、収益体質とグループ経営のさらなる強化に向け、組織と経営の改革を推進してまいりました。

 また、当社、株式会社アークス及び株式会社バローホールディングスで結成いたしました「新日本スーパーマーケット同盟」では、商品分科会・業務改革分科会・サステナビリティ分科会・次世代領域開発分科会・マネジメント分科会の5つの分科会にて、商品の共同仕入れ企画の実施、資材の共同調達によるコスト削減のほか、小売業共通の課題に関する検討やノウハウの共有など、様々な取り組みを進めております。

 これらの結果、当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりとなりました。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減額

 

百万円

百万円

百万円

総資産

126,233

127,036

+ 803

負債

45,254

42,354

△ 2,900

純資産

80,978

84,682

+ 3,703

 

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ8億3百万円増加し、1,270億36百万円となりました。負債は、前連結会計年度末に比べ29億円減少し、423億54百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末に比べ37億3百万円増加し、846億82百万円となりました。

 

b.経営成績

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

 

百万円

百万円

営業収益

252,161

266,741

+ 5.8

営業利益

6,740

6,823

+ 1.2

経常利益

7,725

7,999

+ 3.5

親会社株主に帰属する当期純利益

4,717

5,225

+ 10.8

 

 当連結会計年度の経営成績は、営業収益が2,667億41百万円(前年同期比5.8%増)、営業利益が68億23百万円(前年同期比1.2%増)、経常利益が79億99百万円(前年同期比3.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が52億25百万円(前年同期比10.8%増)となりました。

 

c.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるセグメントごとの財政状態及び経営成績の状況は次のとおりです。

 なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較においては、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

 

(a) スーパーマーケット事業

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

 

百万円

百万円

営業収益

251,390

265,936

+ 5.8

営業利益

7,041

7,162

+ 1.7

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

前年同期比

 

百万円

百万円

セグメント資産

117,394

118,305

+ 0.8

 

 スーパーマーケット事業におきましては、2023年5月31日をみなし取得日として株式会社ハツトリーを取得し、当社グループの連結子会社となったことに加え、当連結会計年度において4店舗の新設を行ったことなどにより、営業収益は前年同期比で5.8%伸長し、過去最高を更新いたしました。

 営業費用の面においては、商品及び原材料価格の高騰に伴う仕入高の増加や、物流費の増加などもありましたが、電力料については使用量削減などにより上昇を抑えました。また、人材への投資として賃金の積極的な引上げを行ったほか、お客様の要望に応え、決済手段の多様化及びキャッシュレス決済利用率上昇への対応を行うとともに、店舗等への積極的な投資を行いました。このほか、店舗運営コストの増加に対しては、生産性の向上を図るとともに経費削減対策を講じ、営業費用の抑制に努めてまいりました。

 当連結会計年度における取り組みとして、Amazonとの協業により、「マルキョウネットスーパー」を立ち上げ、生鮮食品のオンライン販売・配送サービスの提供を開始いたしました。AmazonのWebサイト及びショッピングアプリ上のネットスーパーにて、地産地消にこだわった新鮮な野菜や精肉、魚屋さん自慢のお寿司や手作りお惣菜、スイーツなど約7,000点の商品からご注文いただけます。現在は福岡県福岡市及びその周辺の一部地域を対象エリアとしておりますが、今後、配送エリアの拡大を検討しております。

 また、南九州エリアの物流の安定維持及び最適化のため、宮崎県宮崎市において物流センターを取得し、株式会社マルミヤストア、株式会社ハツトリー、株式会社戸村精肉本店の3社が利用する、事業会社の枠を超えた共有の物流拠点として「RPG宮崎物流センター」の稼働を開始いたしました。当社グループの第3次中期経営計画における「戦略④ グループ連携の強化」の取り組みの一つとして、当社グループの収益性及び効率性の向上に寄与することを見込んでおります。

 

 当連結会計年度の店舗展開の状況は以下のとおりであります。

都道府県

当連結会計年度末

の店舗数

当連結会計年度における

店舗数の増減

広島県

5

島根県

3

+ 2

山口県

80

+ 2

福岡県

61

△ 2

大分県

53

熊本県

16

佐賀県

6

長崎県

14

宮崎県

35

鹿児島県

1

合 計

274

+ 2

 

 

 

都道府県

当連結会計年度における店舗の新設・改装・閉鎖等

島根県

〔新設〕

2024年3月

Yショップ シルクウェイにちはら

(津和野町)

〔新設〕

2024年3月

まごころ市場にちはら店

(津和野町)

山口県

〔新設〕

2024年3月

アルク長門店

(長門市)

〔新設〕

2025年1月

Aruk EX

(防府市)

〔改装〕

2024年4月

サンマート秋穂店

(山口市)

〔改装〕

2024年6月

アルク下松店

(下松市)

〔改装〕

2024年7月

アルク南浜店

(宇部市)

福岡県

〔改装〕

2024年12月

マルキョウ東油山店

(福岡市城南区)

〔閉鎖〕

2024年11月

マルキョウ駛馬店

(大牟田市)

〔閉鎖〕

2024年11月

マルミヤストア大牟田西店

(大牟田市)

宮崎県

〔改装〕

2024年6月

フーデリー高岡店

(宮崎市)

〔改装〕

2024年9月

マルミヤストア大塚店

(宮崎市)

〔改装〕

2025年2月

マルミヤストア住吉店

(宮崎市)

(注)「当連結会計年度における店舗の新設・改装・閉鎖等」に示す改装店舗は、投資額1億円以上の主要な改装店舗のみを記載しており、その他少額の改装店舗については記載を省略しております。

 

事業会社

当連結会計年度末

の店舗数

当連結会計年度

における店舗数の増減

㈱丸久

92

+ 4

㈱ハツトリー

6

㈱マルミヤストア

90

△ 1

㈱戸村精肉本店

4

㈱マルキョウ

82

△ 1

合 計

274

+ 2

 

 以上の結果、スーパーマーケット事業におきましては、営業収益2,659億36百万円(前年同期比5.8%増)、営業利益71億62百万円(前年同期比1.7%増)となりました。

 また、当連結会計年度末におけるセグメント資産は、1,183億5百万円(前年同期比0.8%増)となりました。

 

(b) その他事業

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

 

百万円

百万円

営業収益

910

967

+ 6.3

営業利益

123

114

△ 7.0

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

前年同期比

 

百万円

百万円

セグメント資産

1,093

1,200

+ 9.8

 

 当社グループでは、その他事業として、保険代理業、スポーツクラブ事業、食品製造業等を展開しております。

 食品製造業を営んでおります株式会社戸村フーズにおきましては、前連結会計年度より、製造工場の機械設備の増設を進め、生産能力の向上と作業の効率化を図りました。同社では、主力商品である「戸村本店焼肉のたれ」の販売も順調に伸長しております。一方、原材料価格の上昇や労務費の増加、設備投資に伴う減価償却費の増加などにより、製造原価が増加傾向で推移いたしました。

 以上の結果、その他事業におきましては、営業収益9億67百万円(前年同期比6.3%増)、営業利益1億14百万円(前年同期比7.0%減)となりました。

 また、当連結会計年度末におけるセグメント資産は12億円(前年同期比9.8%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

 

百万円

百万円

百万円

営業活動によるキャッシュ・フロー

11,505

8,839

△ 2,665

投資活動によるキャッシュ・フロー

△ 5,121

△ 5,921

△ 800

財務活動によるキャッシュ・フロー

△ 2,683

△ 3,690

△ 1,006

現金及び現金同等物の期首残高

15,818

19,518

+ 3,700

現金及び現金同等物の期末残高

19,518

18,746

△ 772

 

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、期首残高よりも7億72百万円減少し、187億46百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、88億39百万円(前年同期比23.2%減)となりました。

 これは、主に税金等調整前当期純利益76億23百万円、減価償却費40億90百万円、法人税等の支払額24億2百万円などによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、59億21百万円(前年同期比15.6%増)となりました。

 これは、主に店舗や物流センター等の固定資産の取得による支出44億43百万円、定期預金の増加額12億1百万円などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、36億90百万円(前年同期比37.5%増)となりました。

 これは、主に借入れと借入金の返済による純減額15億98百万円、配当金の支払額12億86百万円などによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

営業収益

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

 

百万円

百万円

スーパーマーケット事業

251,377

265,926

+ 5.8

その他事業

784

815

+ 3.9

合  計

252,161

266,741

+ 5.8

(注)上記の金額は外部顧客に対するもので、セグメント間の内部営業収益又は振替額は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態に関する分析・検討内容

(資産)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ、8億3百万円増加し、1,270億36百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ、10億92百万円増加し、383億98百万円となりました。これは、主として現金及び預金が4億28百万円、売掛金が3億27百万円、商品が5億15百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ、2億88百万円減少し、886億37百万円となりました。これは、主として土地が4億8百万円増加した一方、建物及び構築物が5億17百万円減少したことなどによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ、29億円減少し、423億54百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ、10億95百万円減少し、324億73百万円となりました。これは、主として買掛金が3億88百万円増加した一方、1年内償還予定の社債が5億円、未払法人税等が3億86百万円それぞれ減少したことなどによるものであります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ、18億4百万円減少し、98億80百万円となりました。これは、主として長期借入金が17億9百万円減少したことなどによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ、37億3百万円増加し、846億82百万円となりました。これは、主としてその他有価証券評価差額金が2億28百万円減少した一方、利益剰余金が39億38百万円増加したことなどによるものであります。なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、2.5ポイント上昇し、66.7%となりました。

 

② 経営成績に関する分析・検討内容

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、2,571億7百万円(前年同期比5.6%増)となりました。売上高が伸長したことの主な要因は、営業店舗4店舗の新設及び既存店の改装による客数の増加、食料品の相次ぐ値上がりによる一品単価、客単価の上昇があったことなどによるものです。

 

 

(営業費用)

 当連結会計年度の売上原価は、1,957億78百万円(前年同期比6.3%増)となり、売上高に対する売上原価の百分比は、76.1%となりました。

 売上原価の増減は主に売上高の増減等に伴うものですが、食料品、包装資材の値上がりなど、物価上昇に伴う仕入コストの増加がありました。

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、641億39百万円(前年同期比4.8%増)となりました。売上高に対する販売費及び一般管理費の百分比は、24.9%となりました。

 販売費及び一般管理費の増減は主に営業店舗数の増減等に伴うものですが、当連結会計年度においては、賃上げに伴う従業員給料及び賞与の増加、キャッシュレス決済利用率の上昇に伴う決済手数料の増加のほか、物流費や水道光熱費などの店舗の運営コストの増加がありました。

 

(営業利益)

 営業総利益の増加が30億15百万円に対して、販売費及び一般管理費の増加が29億31百万円であったことから、当連結会計年度の営業利益は前年同期に比べ1.2%増加の68億23百万円となりました。売上高に対する営業利益の百分比は、前年同期に比べ0.1ポイント低下し2.7%となりました。

 

(経常利益)

 営業外収益が前年同期に比べ18.4%増加の12億92百万円となった一方、営業外費用が前年同期に比べ10.0%増加の1億16百万円となり、当連結会計年度の経常利益は前年同期に比べ3.5%増加の79億99百万円となりました。売上高に対する経常利益の百分比は、前年同期に比べ0.1ポイント低下し3.1%となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度においては、投資有価証券売却益や受取保険金など28百万円を特別利益に計上いたしました。一方、減損損失や固定資産除却損など4億3百万円を特別損失に計上しております。

 これらにより、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期に比べ10.8%増加の52億25百万円となりました。売上高に対する親会社株主に帰属する当期純利益の百分比は、前年同期に比べ0.1ポイント上昇し2.0%となりました。

 なお、セグメントごとの経営成績の状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、成長性、収益性などの経営指標を重視し、第3次中期経営計画(2025年2月期から2027年2月期)のもと、売上高経常利益率、自己資本当期純利益率(ROE)などの経営指標について目標設定を行っております。また、資本コストや株価を意識した経営を行うため、株価純資産倍率(PBR)についても注視しております。

 第3次中期経営計画の策定にあたり、最終年度である2027年2月期の連結経営成績の目標を、営業収益2,960億円、経常利益98億円、経常利益率3.5%、ROE7.0%、PBR1.1倍として設定しております。

 これらの経営上の目標について、当連結会計年度における達成状況は以下のとおりとなりました。

指標

2027年2月期

(最終年度)

目標値

2025年2月期

(当連結会計年度)

実績値

最終年度の目標値

に対する達成度

営業収益

2,960億円

2,667億円

90.1%

経常利益

98億円

79億円

81.6%

経常利益率

3.5%

3.1%

88.9%

ROE

7.0%

6.3%

90.1%

PBR

1.1倍

0.7倍

58.8%

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

 食品小売業界におきましては、EC事業者やドラッグストアをはじめとして様々な業種・業態による食料品の取扱いが拡大し、企業間の競合は年々激化しております。当社グループが店舗展開する地域においても、少子高齢化や人口減少によりシェアの維持及び拡大は一層大きな課題となっており、競合する店舗の出店及び退店の状況が当社グループの収益に大きく影響を与えております。

 今後の見通しにつきまして、国内経済は雇用・所得環境の改善などを背景に回復基調が見込まれる一方、不安定な国際情勢のなか、物価や為替の変動など、依然として先行き不透明な状況が続くものと見られます。当社グループを取り巻く経営環境におきましても、店舗運営コストの高騰、物価上昇による消費者の節約志向の高まりなど、様々な問題が懸念されます。

 これらの事業環境の変化、社会的状況の推移は、当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼしているものと判断しております。なお、このほか経営成績に影響を与える要因となる事項については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性

 キャッシュ・フローの状況及びキャッシュ・フロー指標の推移は次のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

自己資本比率

(%)

64.2

66.7

時価ベースの自己資本比率

(%)

59.4

43.2

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

(年)

1.4

1.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

188.2

132.3

(注)1 各指標の算出方法は以下のとおりです。

自己資本比率

:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率

:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ

:営業キャッシュ・フロー/利払い

2 各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

3 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

4 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

5 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象にしております。

6 利払いは連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものであります。また、今後の資金需要の動向についても、概ねこれまでと同様の状況が続くと考えております。

 当社グループは、事業活動に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入により、設備資金等は自己資金、金融機関からの長期借入及びリースにより調達しております。今後は、資金調達方法の多様化についても、随時検討を進めてまいります。

 資金調達の状況について、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は136億18百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は187億46百万円となっております。

 このほか、キャッシュ・フローの状況に関する分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

⑥ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

 連結財務諸表の作成においては、過去の実績や現在の状況を勘案して、合理的な基準に基づいて会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

資本業務提携契約

契約会社名

相手方の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

株式会社リテールパートナーズ

(当社)

株式会社アークス、株式会社バローホールディングス

2018年

12月25日

資本提携

 株式の相互保有

業務提携

(1) 既存領域の強化

 ①地場商品や産地情報、取引先情報の相互共有

 ②資材・備品・什器などの共同購入

 ③店舗開発、店舗運営などのノウハウの共有

 ④物流やセンター運営のノウハウの共有

 ⑤スポーツクラブ事業などの小売周辺事業の共同展開

 ⑥人材採用や人材教育に関するノウハウの共有 他

(2) 次世代に向けた取り組み

 ①カード事業の共同研究、及び統合に向けた検討

 ②バックオフィス業務の統合も含めた共同研究

 ③金融、決済事業に係る共同運営の検討

 ④スマートストア(次世代型店舗)など新たなテクノロジー対応への共同研究 他

期間の定め

なし

 

フランチャイズ加盟契約

契約会社名

相手方の名称

加盟店の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

株式会社丸久

(連結子会社)

株式会社

アクトス

スポーツクラブ

アクトスWill_G

マルキュウ錦見

2019年

7月31日

フランチャイズ権の付与、商標の使用許諾、経営指導等

店舗開業日から5年間、契約満了の6か月前までに両当事者のいずれかから解約の申し出がない場合、5年間自動更新

株式会社丸久

(連結子会社)

株式会社

アクトス

スポーツクラブ

アクトスWill_G

黒崎

2020年

11月30日

フランチャイズ権の付与、商標の使用許諾、経営指導等

店舗開業日から5年間、契約満了の6か月前までに両当事者のいずれかから解約の申し出がない場合、5年間自動更新

(注)上記のフランチャイズ加盟契約においては、加盟金、ロイヤリティー、共同販売促進費を支払うことになっております。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。