第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測にはリスクや不確定要素などが包含されており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。

(1) 経営方針

 当社グループは、「美しさと健康とを創りだすことで生活・文化の向上に貢献」することを企業理念とし、化粧品・医薬品・医薬部外品の開発や製造を通して社会の信頼に応えていくとともに、株主の皆様への利益還元を図るため、収益力の向上、企業価値の増大と持続的な成長の実現に努めてまいります。

 また、当社グループは、自社ブランドを持たない化粧品、医薬品等の製造受託(OEM)/研究開発受託(ODM)メーカーとして、高度な専門技術と豊富な情報力に裏打ちされた高品質で信頼性の高い製品の供給を目指しており、お客様の良きパートナーとして、企画提案をはじめ研究開発から完成品製造まで一貫して受託できる体制を構築しております。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは資本政策として、資本効率(自己資本利益率:ROE)の維持・改善(当面の目標:8%以上を維持、10%以上を目指す)と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しております。

 それに加え、足元は新型コロナウイルス禍による業績悪化やインフレの影響等で収益性と財務安定性が低下している状況の中で、収益力の向上と財務安定性の回復を当面の重要課題としております。競争力のある研究開発力と技術力をベースとした収益性の高い効率経営を目指し、売上高営業利益率および自己資本比率を重点指標として高めてまいりたいと考えております。

 

(3) 経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき事業上ならびに財務上の課題

 次期の経営環境におきましては、地域間の跛行性はあっても、景気は緩やかな回復・改善傾向が続くものと思われます。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊張は長期化して地政学的リスクは高止まり、足元顕在化している米国を始めとする各国の各種政策リスクも当面継続することが予想されます。資源・エネルギー価格、諸物価や人件費の上昇や、金利や為替、株式相場の変動と共に、経済活動に影響を及ぼし、先行き不透明な状況が続くものと思われます。

 化粧品市場におきましては、マスク着用規制撤廃後の受注の波は沈静化しましたが、消費マインドは大きく改善しており、化粧品需要は緩やかに回復・改善していくものと思われます。海外においても、化粧品需要は緩やかに改善していくものと思われます。化粧品ODMメーカーとして事業の成長を実現していくためには、国内外の消費者や化粧品メーカーのニーズに対応した新処方の提供や、新たな高付加価値処方の開発といった取組みを、着実に実施していくことが極めて重要と考えております。

 当社グループは、新型コロナウイルスまん延の影響を受けて悪化した業績からの復活を目指して「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」を策定しましたが、その後半の成長ステージとして「コロナからの復活・回復のモメンタムを持続し、更なる成長へ」を掲げ、「競争優位にある「強み」製品の強化と拡大」、「クリーン・ビューティーへの積極取組」、ならびに「高収益体質への転換」を重点戦略として、積極的に取組んでまいります。

 

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「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の「重点戦略」の取組み状況

 新型コロナウイルス感染症まん延の影響が収まり、正常化が進む中で、「コロナからの復活・回復のモメンタムを持続し、更なる成長へ」を掲げ、以下のとおり「重点戦略」に取組んでまいります。

 

① 競争優位にある「強み」製品の強化と拡大

(回復する需要への対応)

・前連結会計年度のマスク着用規制の解消を受けてお客様も新製品発売への取組みを強化、当社もお客様のニーズにお応えすることで当連結会計年度の中間連結会計期間に大きく売上高を増やしました。特に、マスク着用機会の減少で口紅・リップクリーム等の受注が増加、当社強み分野の一つとして設備増強も含めて対応いたしました。

(「強み」分野での積極対応)

・化粧品市場が正常化、会社全体の稼働が向上する中、「強み」分野に経営資源を重点的に投下、効率性を改善しつつ競合先との受注競争に勝ち残り、受注嵩上げを狙います。

・日本の人口が長期減少傾向にある中、当社グループの中長期的な成長を実現すべく、海外大手化粧品メーカー等との取引を拡大すべく、営業力の強化やフランス子会社との連携強化を推進いたします。

(容器対応力の強化)

・容器対応能力を強化することで、処方と容器セットでのご提案に取組み、トラブルの原因究明などにも対応し、提案力の強化とお客様へのサービス向上を推進しております。

 

② クリーン・ビューティーへの積極取組

(顧客ニーズに合った幅広い処方を提案)

・お客様のブラックリスト/グレーリスト(使用できない/使用を抑える原料等のリスト)に対応しつつ高い機能を備えた処方をお客様にご提案することで受注を獲得し、お客様のクリーン・ビューティー/SDGsへの取組みをサポートすると共に、最終消費者のお客様の健康・安全への要求にお応えしております。

(サステナビリティ分野の取組みを推進)

・取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を組成、環境/パートナーシップ/高品質な製品提供/働き方・人財の各分科会を立ち上げて重要課題(マテリアリティ)や指標(KPI)を設定、進展をフォローするなど、組織横断でSDGs関連の取組みを推進しております。

 

③ 高収益体質への転換

(座間・つくば2工場の稼働向上)

・新型コロナウイルス感染症の拡大前に投資したつくば工場第3期等で拡張した生産能力は、活用しきれない状況が続いておりましたが、中間連結会計期間はマスク着用規制の解消を受けた受注の急回復で一時的に稼働が大きく改善、収益に貢献いたしました。足元は受注の波も沈静化しましたが、今後も受注水準を嵩上げ、安定的に生産設備の稼働を上げ、投資時に見込んだ収益性を確保すべく注力してまいります。

・経済の回復・正常化に伴う採用難で、外注加工費が増加しておりますが、請負業者の活用等も含めた対応で工場の稼働は向上しつつあり、収益性の改善に貢献しております。

(インフレへの対応継続)

・原材料費・人件費・光熱費・各種経費の上昇が続く中で、新規受注の際に物価上昇を反映した見積りをお示しすると共に、リピート受注時も人件費や諸物価の上昇を反映させていただき、適正な価格転嫁を実現することで収益性の維持に努め、一方で価格に見合った製品価値をご提供することで、お客様にご満足をいただくよう努めてまいります。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは「私たちは、美しさと健康とを創りだすことで生活・文化の向上に貢献します。」という企業理念のもと、企業活動を通して「豊かな心、知識、生活」を社会に生み出し、その結果「生活・文化の向上=ここちよい、快適な社会づくり」に貢献することを使命としております。

 化粧品ODMメーカーとしてグローバルに展開し、高度な技術と品質を背景に、世界の化粧品メーカーからパートナーとして信頼を得てまいりました。2015年に採択されたSDGsを皮切りに、サステナブルな社会への意識が高まるなか、化粧品メーカー各社においても環境、人権などの様々なサステナビリティ課題への取組みがスタートしております。当社もサプライヤーとして顧客の取組みに足並みをそろえるのみならず、サステナビリティを当社が掲げる「快適な社会」に欠かせない重要な経営課題と位置づけ、長期的な視点で持続的に社会価値と経済価値とを創出できるよう、独自の様々なサステナビリティ戦略に取組んでおります。

 

(1)サステナビリティに関する事項

① マテリアリティ(重要課題)

 当社は、特に欧米の化粧品メーカーのサプライヤーたる立場から、顧客より各社のサステナビリティに対する考え方を共有するよう依頼を受けております。このような状況を踏まえて、当社では各社のサステナビリティの考え方に沿った様々な取組みをしております。

 まず、サステナビリティを経営課題として捉え事業活動を通じて深化していくことがステークホルダーの期待に応えることであるとの認識のもと、これまで実施してきた事項や顧客要請のキャッチアップにとどまっていた事項について体系的に整理し、事業を通じて長期的に価値を創造していくため、製品のライフサイクルを俯瞰し、環境、人権、倫理、持続可能な調達等について分析をいたしました。

 その後、サステナビリティ委員会において、これらの分析・検討をさらに進め、マテリアリティ及び指標を設定いたしました。「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」に重点戦略として掲げている「クリーン・ビューティーへの積極取組」等の推進のため、当該マテリアリティ及び指標にもとづき、組織横断でサステナビリティ分野の取組みを実施しております。

 

マテリアリティ領域

項目

KPI(指標)

環境

環境に配慮した製品作り

環境に配慮した処方設計の推進

自社購入パーム由来原料中の認証原料比率

エネルギー消費量・温室効果ガスの削減

エネルギー使用量・CO2排出量の見える化

資源の循環・ロスの削減

ペーパーレス化の推進

生産・物流資材等のリサイクルによる廃棄物削減

パートナーシップ

持続可能なサプライチェーンの構築

サプライヤーに対するサステナビリティ調査

責任ある原料調達

責任ある調達に関する研修

新規原料採用時の重金属測定

容器・パッケージ

サンプル提案容器のサステナブル化

持続可能なものづくり

安心・安全な製品の提供

当社製造・生産製品のリコール件数

原料の消費抑制

バルク廃棄量率の低減

継続的な従業員の教育

教育訓練時間

働き方・人財

女性活躍

主任以上の従業員に占める女性の割合

男性育休取得率

人財の確保と育成・定着

ウェルビーイング調査

従業員定着率(3年後定着率)

人権の尊重

多様性・差別・ハラスメント教育の実施

 

 

② 推進体制

 サステナビリティの取組みを推進する社内体制として、代表取締役社長を委員長とし、業務執行取締役と執行役員で構成するサステナビリティ委員会を、取締役会の諮問機関として設置しております。当該委員会は、サステナビリティ分野の活動方針等の枠組みを取締役会に答申し、取締役会にて決定しております。決定した各種方針等は具体的な活動に落とし込み、各担当部門にて活動を行います。

 また、当社は企業の社会的責任(CSR)、環境・社会・ガバナンス(ESG)、気候関連の開示等についての外部評価を行う機関である、EcoVadis、Sedex、およびCDPの会員となり、客観的に取組みの現在地を確認し、活動方針等の策定の参考としております。これらの外部評価機関のサステナビリティ情報を、顧客の要請に基づき共有することで、顧客との関係強化やエンゲージメントに活用しております。

 さらに、2024年9月には国連グローバルコンパクトに賛同を表明する署名を行いました。国連グローバルコンパクトとは、企業が責任ある持続可能な活動を推進するために、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野に関する10原則を順守するよう要請しているイニシアチブであります。これらの原則を事業活動に反映させ、企業の社会的責任を果たすことで、今後も持続可能な社会の実現に寄与してまいります。

 

③ リスク管理

 サステナビリティ関連のリスクおよび機会については、サステナビリティに関する取組みを行う各部門において識別・評価・監視しております。

サステナビリティの取組み遅滞や上記の外部評価のスコア悪化により、顧客から監査や改善指導を受ける可能性があります。一方で、取組みの推進や外部評価のスコア上昇により、新たな取引の機会や既存取引の拡大につながる可能性もあります。

その他のリスクにつきましても、各部門において分析・検討を行っており、サステナビリティ分野での社会変化に合わせたリスク管理を行なうことで、企業価値の向上に努めております。現段階では、個別具体的な数値の達成如何よりも、顧客とのエンゲージメントにより、当社のサステナビリティに対する推進体制や考え方を顧客に共有することで様々なリスクを極小化できるものと認識しております。

 

④ 重要な取組みと目標

 前述のマテリアリティ及び指標に基づき、2025年4月に開催されたサステナビリティ委員会において、各事項についての具体的な目標(長期)を設定いたしました。今後は設定した目標(長期)に基づき、サステナビリティ分野の取組みを一層推進してまいります。

 また、その中でも優先的に定量化に取組んでいる事項を以下のとおり抜粋いたしました。特に気候変動問題と関連して重要であるエネルギー消費量・温室効果ガスの削減については、2026年度までに2023年度比10%削減を目標に掲げ、これらの削減取組み活動を通じ、前述の外部評価のスコアの向上も目指しております。

マテリアリティ領域

項目

KPI(指標)

目標

環境

環境に配慮した製品作り

自社購入パーム由来原料中の認証原料比率

2030年度までに100%

エネルギー消費量・温室効果ガスの削減

エネルギー使用量・CO2排出量の見える化

2026年度までに2023年度比10%削減

パートナーシップ

持続可能なサプライチェーンの構築

サプライヤーに対するサステナビリティ調査

2026年度までに回収率80%

2030年度までに回収率90%

持続可能なものづくり

安心・安全な製品の提供

当社製造・生産製品のリコール件数

リコール ゼロ

働き方・人財

女性活躍

後述(2)②に記載

人財の確保と育成・定着

 その他の事項につきましては当社ホームページ「第68期(2025年2月期)決算補足説明資料」をご参照ください。

https://shikizai.com/ir/library/?tab=tab04

 

 

(2)人的資本に関する事項

 当社の成長戦略の推進には、豊かな発想と旺盛なチャレンジ精神で夢のある商品を生み出す「人財」の活躍が不可欠であります。また、長年培ってきた高度な専門技術力と豊富な情報力を活かし、付加価値の高い製品とサービスを生み出し続ける「体制」の整備が急務となっております。

 従業員一人ひとりが好奇心と探求心を最大限に発揮して働きがいを得られるような「人財育成」と「環境整備」を推進してまいります。

 

① 方針

a.人財育成方針

・従業員一人ひとりが能力を発揮するための教育研修や育成機会の再構築

 従業員一人ひとりが能力を発揮するに値する場の創出、従業員の働きがいを実現していくための機会の提供に課題があることが顕在化しております。

 階層別研修をはじめとした従来の教育研修・育成機会を見直して再構築するとともに、教育研修・育成に対する取組み時間や費用などの投資を拡充することで、従業員一人ひとりのキャリア自律を促し、成長戦略に資する人財育成の推進へとつなげてまいります。

・マネジメント人財、中堅人財、専門人財に対する取組みの強化

 成長戦略の担い手であるマネジメント人財向けの管理職研修、事業成長の原動力となる中堅人財向け研修等の階層別研修に加え、全社員に向けてメンタルヘルス研修やコンプライアンス・ハラスメント研修、インサイダー取引研修を実施し、育成と現場への定着を図っております。

 また、事業拡大の起点となる専門人財の確保にも注力しております。

 新卒採用・キャリア採用と連動した育成体制を構築することで、専門性の向上と多様な交流の中から意識改革と育成効果の最大化を図ってまいります。

 

b.社内環境整備方針

・当社事業推進の基盤である女性活躍の推進と機会拡大

 労働者に占める女性労働者の割合は53.7%と女性の基盤が広範な一方で、管理職に占める女性労働者の割合が24.5%、男女間の賃金の差異が77.8%と、女性の活躍推進に課題があります。持続可 能な勤務を維持するための職務体系や勤務地の限定、時短勤務などにより当該差異が生じる結果となっていると分析しております。管理職を含めた時短勤務の拡大や時差勤務などの働き方の充実を図り、働きやすい職場づくりに取組んでおります。

 女性活躍推進に関しては、女性リーダーミーティングを定期的に開催するとともに、その場で聴取した意見やアイデアを女性管理職候補者向け研修テーマに反映することで、充実した研修を目指しました。また、女性リーダーミーティング発案の新任管理職配付用手引きの作成や勉強会の開催等、昇格時の不安を低減する施策を実施しました。今後も、階層別研修等による人財の育成と、適切な評価に基づく人財の抜擢を推し進めるとともに、女性リーダーミーティングの継続や管理職向けにダイバーシティの意識付けを図る機会を設けることで、統一した認識のもと全社一丸となって女性の「活躍」と「働きがい」を推進してまいります。

・風土改革を通じた従業員のWell-being(ウェルビーイング)の推進

 従業員一人ひとりが好奇心と探求心を最大限に発揮し働きがいを得るためには、個人と組織が相互の成長に貢献し合うエンゲージメントの向上が不可欠と考え、従業員のワークライフの充実と連動させたウェルビーイングの実現を目指しております。

 そのための風土改革として、従業員幸福度調査を導入し、従業員のウェルビーイングを可視化するとともに、その改善に向けたコミュニケーションの機会として、経営陣と従業員の対話の場であるタウンホールミーティングや意見交換会、有志による職場・自己変革のためのプロジェクトの開催などの施策を展開しております。

 

② 指標および目標

 当社では、上記人財の育成および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は次のとおりであります。

指 標

目標

2027年)

実績

(2024年)

管理職・主任以上に占める女性労働者の割合(正社員)

50.0

39.5

従業員の幸せ指数 (注)2

60.0

52.9

3年後の従業員定着率(正社員)

70.0

81.8

女性労働者の平均勤続年数比率(正社員) (注)3

80.0

59.1

従業員の年次有給休暇取得率(正社員)

60.0

49.0

(注)1.「従業員の年次有給休暇取得率」は各年9月末時点、その他の指標は各年2月末日時点

2.「従業員の幸せ指数」は従業員幸福度調査により算出されたエンゲージメントスコア

3.「女性労働者の平均勤続年数比率」は、男性労働者の平均勤続年数に対する女性労働者の平均勤続年数の割合

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他の状況、経理の状況等に関する事項のうち当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の投資判断上重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年5月30日)現在において当社グループが判断したものですが、ここに掲げている項目に限定されるものではありません。

① 化粧品市場環境

 国内化粧品市場は既に成熟期に入っており、M&Aによる企業グループの再編、異業種からの新規参入等、競争環境は厳しさを増しております。また、企業グループの再編や同業者同士による合従連衡、海外の化粧品受託製造事業者の国内市場への新規参入等、当社グループの位置する化粧品受託製造市場も、同様に競争環境は厳しさを増しております。

 従って、当社グループが予期せぬ競争環境の変化に的確に対処できない場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② OEM(Original Equipment Manufacturing)/ODM(Original Design Manufacturing)企業としてのリスク

 当社グループの事業は、顧客化粧品メーカーのブランドで製造し販売するOEM/ODM生産の形態のため、当社グループの業績は顧客化粧品メーカーの営業施策、販売戦略ならびに外注施策による影響を受け易く、結果、当社グループの業績が著しく変化する可能性があります。

 また、特定顧客化粧品メーカーからの受注依存度が高くなると、その顧客化粧品メーカーの販売施策の影響を強く受ける可能性があります。

③ 製造および品質保証について

 当社グループでは、大規模な地震の発生等災害・事故発生時の生産・研究開発の中断による損失を最小化するため、生産拠点、情報システムおよび本社を事業継続の重要拠点と位置づけ、事業継続計画(BCP)の構築を行っております。しかしながら、想定を超える災害・事故の発生により、製造・研究開発の中断が生じた場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが提供する製品には、想定外の欠陥等が生じるリスクがあり、またリコールが発生する可能性もあります。当社グループは、最適な品質を確保できるよう、全力を挙げて取り組んでおりますが、大規模な製造物責任賠償やリコールにつながるようなケースで、このコストが保険によってカバーできない場合、多額の支払いが生じるとともに、当社グループの製品の信頼性や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。その結果、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 海外での事業活動

 当社グループの主たる生産・販売・研究開発拠点は国内3拠点とフランスに所在する2つの子会社でありますが、欧州や北米、ならびにマーケットの急速な拡大が期待されるアジアにおける事業展開を強化しており、今後一層の拡大を目指しております。これらの海外での事業活動におきましては、予期し得ない経済的・政治的な政策変更や政情不安、労働問題、テロ・戦争の勃発、感染症の流行による社会的混乱等のリスクが潜在するため、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 有能な人材の確保

 当社グループは製造受託(OEM)でありかつ研究開発受託(ODM)メーカーでありますが、将来に向けた持続的成長のためには、(ⅰ)研究開発部門の有能な人材の確保と育成(ⅱ)生産部門における労働力の確保と熟練に向けた育成が欠かせないものと考えております。そのため、貢献度を反映した評価制度や有能な人材の積極的な採用と育成を心がけております。しかしながら、人材の確保と育成の状況や重要な人材の流出が当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 戦略的投資活動

 当社グループは、国内においてはつくば工場の拡張による生産能力の増強、海外においてはフランスのテプニエ社ならびに日本色材フランス社を中心とした海外展開に対し、戦略的投資を行っております。

 戦略的投資活動の意思決定に際しては、必要な情報収集および検討を実施しておりますが、予期し得ない環境変化等により、当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 研究開発活動

 研究開発は、当社グループの競争力の源泉のひとつであり継続的に研究開発投資を行っております。年度計画に則り効率的・効果的な研究開発活動を行っておりますが、特定の製品の開発が長期にわたる場合等、成果が翌期以降に及ぶことがあります。また、予定通りの成果が得られない場合、期間の延長や中断、投資額の増加を余儀なくされる場合や、結果として製品化できない場合もあります。さらに、製品化できた場合でも、様々な不確定要因が重なり、必ずしもお客様にご採用頂けるとは限りません。

 このように当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 金利水準および為替相場の変動について

 当連結会計年度末における当社グループの借入金等有利子負債残高は9,732百万円であり、金利情勢、その他金融市場の変動が財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループの外貨建の売上、費用、資産、負債等の項目は、連結財務諸表および財務諸表作成のために邦貨換算しており、換算時の為替相場により現地通貨ベースの価値に変動がなくても邦貨換算後の価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑨ 物価等の上昇について

 世界的な物価上昇や円安等の経済要因や、需給逼迫、自然災害、地政学上の問題、何らかの理由によるサプライヤーの供給減少、等に起因する、原材料や光熱費、各種経費等の価格高騰・物価上昇が、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。足元では、ロシアのウクライナ侵攻の長期化、緊迫する中東情勢の影響に端を発した、エネルギー価格や世界的な物価上昇が、当社の業績に影響を及ぼしております。

⑩ 繰延税金資産について

 当社グループは会計基準に従い、回収可能性の認められる繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する様々な予測・仮定に基づいており、実際の結果はかかる予測・仮定とは異なる可能性があります。

 当社グループが、繰延税金資産の全部または一部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 法的規制について

 当社グループの属する医薬品および化粧品業界は、医薬品医療機器等法等ならびに最終販売先が海外である場合には現地の規制等により法的規制を受けています。そのため、それらの改正や適用基準の変更によっては、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑫ 知的財産権保護の限界

 当社グループでは蓄積した技術を特許等の知的財産権として権利化を進めておりますが、特許出願は出願から少なくとも1年半は公開されないため、既に他社が出願を行った技術に対して開発投資をしている可能性があります。また、第三者による予測を超えた手段等により当社の知的財産権が侵害され、結果として技術の不正流用や模倣品の開発により、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性や、当社グループの認識の範囲外で、第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。

⑬ 大規模災害および感染症の流行等

 当社グループの主たる国内生産拠点は、神奈川座間市に所在する座間工場ならびに茨城県つくば市所在のつくば工場であります。そのため、特に関東地方および関東以北において大規模な震災、水害等が生じた場合、長期にわたり製品供給が困難になる可能性があります。また、社会的に影響の大きな感染症の拡大が発生し、顧客化粧品メーカーの施策に変化が生じた場合や、外出制限、工場操業を含む事業活動の制限/自粛等、事業活動に何等かの制限が生じた場合、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。近年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような新たな感染症の流行が発生した場合には、感染拡大防止ガイドライン等に則った衛生管理や感染予防対策の実施等により、当社グループの事業活動が制約を受けたり受注水準に大きな影響を及ぼしたりする恐れがあります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)におけるわが国の経済は、前連結会計年度に新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が軽減して正常化が大きく進みましたが、インフレによって実質賃金の伸びが抑えられるなど力強さを欠き、緩やかな回復に留まっております。海外各国では、欧米ではインフレ減速と金融緩和に向けた動きの中で緩やかな成長基調にあるのに対し、中国経済は引き続き不動産不況を背景に内需が低迷して成長に減速が見られるなど、地域間の跛行性が見られます。また、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の緊張の長期化もあって地政学的リスクは高止まり、米国の政権交代をきっかけに各国の各種政策リスクも上昇しております。資源・エネルギー価格の上昇・変動や物流の遅延等が日本を含めたインフレに影響、各国の金融政策への影響を通じて金利・為替・株式相場の変動も引き起こし、経済活動に影響を及ぼすと共に先行き不透明感を高めております。

化粧品業界におきましては、国内では、メイクアップ製品を中心に、インバウンド需要も大きかった新型コロナウイルスの感染拡大前を依然下回っておりますが、消費マインドも大きく改善し、緩やかな回復・改善傾向が続いております。昨年には新型コロナウイルス禍で低調だった新製品発売も大きく回復し、需要喚起に貢献したものと思われます。海外においても、化粧品需要は緩やかながら改善の傾向にあるものと思われます。

当社グループにおきましては、国内・海外化粧品メーカーからの受注は、特に国内で新型コロナウイルス禍明けの新製品発売に向けた受注の波や大口受注の獲得もあって中間連結会計期間まで大きく伸びましたが、第3・第4四半期には一旦沈静化しております。つくば工場第3期拡張等の設備投資によって増強した生産設備の稼働も、中間連結会計期間は大きく向上しましたが、その後足元は一旦低下しております。また、原材料費や人件費、各種経費等もインフレで上昇していることから、各種コスト圧縮努力や適正な価格転嫁努力を継続し、収益性の維持・改善に取組んでおります。

今後も、化粧品需要の緩やかな回復・成長基調は継続していくと思われますが、全般的なインフレ、採用難や人件費上昇、金利上昇や為替変動等も継続しており、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢、米国の政策リスクのような地政学的リスクも高止まりしていることから、引き続き経済全般の先行き不透明感は残ります。そのような経営環境下、黒字の継続と成長の実現に向けて「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の諸施策を着実に実行してまいります。お客様の新製品ニーズに対応した処方のご提供や生産対応などの要請に応え、中長期的には化粧品へのクリーン・ビューティー、SDGs等への対応といった当社の強みを更に強化するなど、変化し続ける環境で強みを活かして業績の改善を図るべく更なる努力を重ねてまいります。

 

 以上の結果、当連結会計年度における財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

 

a.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高17,632百万円(前連結会計年度比17.2%増)、営業利益489百万円(前連結会計年度比10.8%増)、経常利益367百万円(前連結会計年度比9.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益216百万円(前連結会計年度比45.7%減)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(日本)

 日本は、売上高12,442百万円(前連結会計年度比21.3%増)、営業利益554百万円(前連結会計年度比151.4%増)となりました。

(仏国)

 仏国は、売上高5,263百万円(前連結会計年度比6.2%増)、営業損失73百万円(前連結会計年度は営業利益222百万円)となりました。

 

 

b.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ197百万円減少し、16,889百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ474百万円減少し、13,085百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ277百万円増加し、3,804百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は948百万円となり、前連結会計年度末に比べ426百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、567百万円(前連結会計年度は1,251百万円の増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は、1,111百万円(前連結会計年度は438百万円の減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果増加した資金は、95百万円(前連結会計年度は697百万円の減少)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

前年同期比(%)

日本(千円)

12,239,248

119.4

仏国(千円)

5,163,795

103.0

合計(千円)

17,403,044

114.1

 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

日本

10,918,328

89.2

4,773,967

76.7

仏国

4,727,321

96.4

1,817,478

83.3

合計

15,645,649

91.3

6,591,445

78.4

 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

前年同期比(%)

日本(千円)

12,370,662

122.5

仏国(千円)

5,261,549

106.2

合計(千円)

17,632,212

117.2

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年3月1日

至  2024年2月29日)

当連結会計年度

(自  2024年3月1日

至  2025年2月28日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Parfums Christian Dior SA

1,902,746

10.8

㈱セザンヌ化粧品

1,730,918

11.5

㈱井田ラボラトリーズ

1,690,365

11.2

1,842,704

10.5

3.前連結会計年度においてParfums Christian Dior SAは、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

当連結会計年度において㈱セザンヌ化粧品は、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等の分析等

1)経営成績

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、国内・海外向け受注の回復、特に国内での新型コロナウイルス禍明けの受注の波と海外からの大口受注を受けて、第3・第4四半期には沈静化したものの、前連結会計年度より2,582百万円(17.2%)増加して17,632百万円となりました。

(売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は、国内では引き続きつくば工場第3期拡張等により諸費用が高止まり、加えて原材料費や人件費、各種経費等がインフレで上昇している中で、中間連結会計期間の受注増による生産設備の稼働向上と各種コスト圧縮努力により増益となりましたが、フランス連結子会社における化粧品受注の減速による業績低迷もあって、前連結会計年度より176百万円(8.8%)増加して2,192百万円となりました。売上高に対する比率は、前連結会計年度より1.0ポイント下回って12.4%となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度より129百万円(8.2%)増加して1,703百万円となりました。売上高に対する比率は、前連結会計年度より0.8ポイント下回って9.7%となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度より47百万円(10.8%)改善して489百万円となりました。

(営業外損益、経常利益)

 当連結会計年度の営業外収益は、受取家賃24百万円等の計上はあったものの前連結会計年度より27百万円(28.8%)減少して67百万円、営業外費用は支払利息160百万円や為替差損28百万円の計上により前連結会計年度より60百万円(47.6%)増加して188百万円となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度より40百万円(9.9%)減少して367百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等調整額138百万円の計上もあって(前連結会計年度は、繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額△210百万円(△は益)の計上)、前連結会計年度より181百万円(45.7%)減少して216百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度より86円75銭減少して103円21銭となりました。

2)財政状態

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は、6,734百万円(前連結会計年度末は7,134百万円)となり、前連結会計年度末に比べ399百万円減少いたしました。これは主に、新型コロナウイルス感染症の影響軽減で前連結会計年度から好調だった受注の波の沈静化に伴う棚卸資産の減少や流動性資金の圧縮等によるものですが、科目別では現金及び預金が444百万円、原材料及び貯蔵品が273百万円、商品及び製品が210百万円減少し、受取手形及び売掛金が467百万円増加したことによるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は、10,154百万円(前連結会計年度末は9,952百万円)となり、前連結会計年度末に比べ201百万円増加いたしました。これは主に、設備投資により機械装置及び運搬具が328百万円、建物及び構築物が154百万円、工具、器具及び備品が110百万円増加し、建設仮勘定が244百万円、繰延税金資産の取り崩し等で投資その他の資産が113百万円減少したことによるものであります。

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は、6,245百万円(前連結会計年度末は6,810百万円)となり、前連結会計年度末に比べ565百万円減少いたしました。これは主に、仕入の減少に伴う買入債務の減少等によるものですが、科目別では電子記録債務が396百万円、支払手形及び買掛金が149百万円、流動負債のその他が180百万円減少し、短期借入金が107百万円増加したことによるものであります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は、6,840百万円(前連結会計年度末は6,749百万円)となり、前連結会計年度末に比べ90百万円増加いたしました。これは主に、長期借入金による資金調達によるもので、長期借入金が188百万円増加したこと等によるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は、3,804百万円(前連結会計年度末は3,526百万円)となり、前連結会計年度末に比べ277百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により利益剰余金が174百万円、その他の包括利益累計額が、為替換算調整勘定の増加もあって102百万円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は22.5%(前連結会計年度末は20.6%)となりました。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のある要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。これらのリスクの回避に努めるとともに発生した場合の対応に万全を期してまいります。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは資本政策として、資本効率(自己資本利益率:ROE)の維持・改善(当面の目標:8%以上を維持、10%以上を目指す)と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しております。

 それに加え、新型コロナウイルスまん延による業績悪化の影響で収益性と財務安定性が低下している状況におきまして、売上高営業利益率及び自己資本比率の向上を当面の重要な経営課題・指標としております。

 当連結会計年度の自己資本利益率は、前記のとおり親会社株主に帰属する当期純利益が減益となっていることから、前連結会計年度より6.3ポイント低下して5.9%となりました。

 また、当連結会計年度の売上高営業利益率は、国内では新型コロナウイルス禍明けで受注が増加して工場の稼働が向上しましたが、フランス連結子会社における化粧品受注の減速による業績低迷もあり、前連結会計年度より0.2ポイント低下して2.8%となりました。自己資本比率は、受注の回復で利益を計上したこともあり、前連結会計年度より1.9ポイント改善して22.5%となりました。

 連結売上高は、「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の最終年度である2026年度の目標連結売上高として200億円レベルを掲げております。

 

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における所在地別セグメントの業績の概況は、次のとおりです。

(日本)

新型コロナウイルス感染症の社会・経済への影響はほぼ解消、化粧品では一部影響は依然として残るものの需要は回復しつつあり、特にマスク着用規制撤廃を受けた国内化粧品メーカー各社からの受注や海外からの大口受注が中間連結会計期間に大きく伸び、第3・第4四半期には沈静化したものの、売上高は前期比21.3%増の12,442百万円となりました。利益面では、引き続きつくば工場第3期拡張等による諸費用が高止まり、加えて原材料費や人件費、各種経費等もインフレで上昇している中ではありますが、中間連結会計期間の受注の回復で生産設備の稼働は着実に向上、各種コスト圧縮努力もあって、営業利益は前期比151.4%増の554百万円となりました。セグメント資産は、第3・第4四半期には受注の波が沈静化したことで棚卸資産が減少したことや、減価償却等で有形固定資産が減少したこと等もあり、前期比4.2%減の12,978百万円となりました。

(仏国)

 子会社テプニエ社と日本色材フランス社の所在する欧州は、当連結会計年度(1~12月)において、景気は依然として低迷、化粧品受注の回復ペースが鈍化してユーロ建ての売上高は減収となりましたが、円安の為に円建ての売上高は前期比6.2%増の5,263百万円となりました。利益面では、ユーロ建て売上高の減収と人件費や諸物価の高騰に加えて、テプニエ社の一部設備稼働の遅れや日本色材フランス社の稼働低迷もあり、73百万円の営業損失(前連結会計年度は222百万円の営業利益)となりました。セグメント資産は、設備投資による有形固定資産の増加等もあって、前期比8.6%増の5,136百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、567百万円(前連結会計年度は1,251百万円の増加)となりました。これは主に、減価償却費908百万円、棚卸資産の減少額590百万円、税金等調整前当期純利益372百万円等による増加と、仕入債務の減少額596百万円、売上債権の増加額479百万円等による減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は、1,111百万円(前連結会計年度は438百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,139百万円等による減少等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果増加した資金は、95百万円(前連結会計年度は697百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入2,138百万円と長期借入金の返済による支出1,807百万円、短期借入金の純減少額93百万円、リース債務の返済による支出100百万円等によるものであります。

(現金及び現金同等物の期末残高)

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、上記の要因により、948百万円となり、前連結会計年度末に比べ426百万円減少いたしました。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

1)資金需要

 当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要の2つがあります。

 運転資金需要の主なものは、当社グループ製品の製造のための原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであります。また、設備資金需要としては経常的な機械設備等の買い換え取得や、増産に向けた機械設備の購入等によるものであります。

 

2)資金調達

 当社グループは、メイン銀行をはじめ取引金融機関と円滑な取引関係を維持しつつ、健全な財務体質の維持に注力しております。経常的な設備等の買い換え取得や運転資金については、内部資金を活用すると共に金融機関からの短期借入金及び長期借入金により資金調達を実施しております。特に、大口の設備資金需要に関しては長期の安定資金を金融機関から調達しております。

 

3)財務政策

 当社グループは資本政策として、資本効率(自己資本利益率:ROE)の維持・改善(当面の目標:8%以上を維持、10%以上を目指す)と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しておりますが、自己資本利益率(ROE)の構成要素である財務レバレッジ(総資産/自己資本:自己資本比率の逆数)を財務政策の中で重視しております。

 財務レバレッジの上昇はROE向上に貢献しますが、一方で過度に高いレバレッジ(低い自己資本比率)は財務安定性を下げ、安定的な資金調達と事業の継続に悪影響を及ぼすため、ROEの維持・向上と財務安定性の維持の双方を勘案して、財務レバレッジ/自己資本比率の水準を調整していくことを目指しております。

 足元では、新型コロナウイルス禍による業績悪化によって自己資本比率が低位に留まるため、業績の回復による内部留保の蓄積等によって、自己資本を回復させることを重点課題としており、自己資本比率を当面の重要な経営指標の一つとしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には、決算日における資産・負債の報告金額および偶発的資産・負債の開示、ならびに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積りおよび仮定が必要となりますが、この判断および見積りには決算日までに入手可能なすべての情報と過去の実績を勘案して、合理的な根拠に基づいて継続的に評価しております。

 従って、連結財務諸表作成時点で実施した見積りおよび将来の予測が、予測不可能な事象の発生によって実際の結果が著しく異なることも考えられます。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループにおける研究開発につきましては、化粧品や医薬部外品・米国OTCの分野における多様化、高度化した広範な市場ニーズに応える製品をいち早く提供すると共に、基礎・応用研究に基づいた新規開発製剤の積極的な提案を基本方針としております。

 当社の研究開発活動は、研究開発部を中心として、技術開発部及び営業部、国際営業部で連携して行っており、次のとおり大別されます。

・ 新規企画、新規剤型の製品開発研究

・ 量産化及び充填技術開発研究

・ 原料素材開発、皮膚生理活性物質などの基礎・応用研究

・ 大学、原料・容器・資材メーカーとの共同研究

・ 製剤の有効成分等の分析、保存効力試験、有用性試験及び顧客ユーザーへの情報提供

・ 原料、製品の安全性情報の調査及び管理

・ 開発技術の知的財産権の確保及び技術情報管理

・ 海外各国規制情報の調査及び管理

・ 基礎・応用研究及び共同研究成果の発表

・ 国内外の市場ニーズ分析及び企画提案戦略の立案

 当連結会計年度の研究開発活動としましては、当社の強みである分散技術、加熱成型技術を柱とするファンデーション類、アイシャドウ・チーク類、口紅類などのメイクアップ製品ならびにUV関連製品、当社独自技術によるデザインフィラー製品を含むスキンケア製品などの一層の付加価値開発・競争力の強化を進め、国内のみならず広く海外のお客様からも受注を獲得いたしました。当連結会計年度は特に、「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の中核であるサステナビリティを意識した「クリーン・ビューティーへの積極取組」を継続推進してまいりました。例として、口紅類などのクリーン・ビューティー対応については、主要成分である植物由来のワックスの品質の向上や、生産時の品質のばらつきを最小限にする技術を新たに開発し、新製品に順次活用しています。

 さらに、海外各国当局の成分規制動向が一層厳しくなる状況を踏まえ、前連結会計年度に引き続き、各国規制及び取り扱い原料に関する情報収集・管理を組織的に進めてまいりました。

 当連結会計年度においても、世界の規制は厳しくなる一方です。その一例として、欧州化学物質庁(ECHA)のリスクアセスメント委員会(RAC)は、タルクをCMR 1B物質(発がん性に関する懸念)に分類し、タルクに関する懸念が一層高まりつつあります(2024年9月)。タルクを使用しない処方開発において、当社はかなりの先行技術を有しており、さらなる進化を継続しています。

 また、日本、フランス両国での研究開発・技術開発の連携を推進し、フランス子会社での新製品生産にも力を入れてまいりました。

 以上の継続的な取り組みが、当連結会計年度においても、グローバルに展開する化粧品メーカーからの受注の獲得につながりました。今後も“メイド・イン・ジャパン”、“メイド・イン・フランス”が提供可能な当社独自のグループシナジーを活かして市場優位性を発揮してまいります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は824百万円となっております。