第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループの経営方針は、「顧客第一主義」「共存共栄」「人間尊重」「堅実経営」「創意工夫」であります。中でも「顧客第一主義」を方針の中心に据え、顧客満足度の向上を図ることにより、今後もお客様に支持されるグループを目指し、永続的な拡大、発展に努めてまいります。当社グループはこうした事業活動を通じて、顧客、株主をはじめ広く関係者にとって魅力ある企業グループであり続けることにより、社会に貢献してまいります。

(2)目標とする経営指標

 当社グループは「経営計画『Global Destination』となることを目指して」におきまして、2027年度の連結営業利益の計画を5,500百万円と定めております。また、2030年度の連結営業利益の目標を8,000~8,500百万円と定めております。なお、業績の動向と今後の見通し等を踏まえ、2025年4月14日に開示した2025年度の連結業績予想における営業利益は、4,000百万円としております。

(3)経営環境及び対処すべき課題

 今後の当社グループを取り巻く経済環境につきましては、現政権下の総合経済対策による景気加速への対応が進み、昨年に引き続き、国内では大幅な賃上げ等の要因も加勢し、緩やかな経済回復への期待感があるものの、海外における地政学リスクに起因する供給不足や価格上昇等で消費マインドが懸念される等、世界的な景気変動局面が当分続くものとみられることから、予断を許さない環境で推移するものと思われます。

 こうした状況の中、当社グループでは、新たな「経営計画『Global Destination』となることを目指して」(以下、本計画)をスタートいたしました。本計画においては、従来の3年ごとの中期経営計画を廃止し、2050年度までの長期的な視野で変化の激しい時代に対応しながら、単年度での目標を着実に達成し、成長を目指してまいります。

 2050年度までのメルクマールとして、2030年度までに二段階のフェーズを設定しております。2025年度から2027年度の第1フェーズでは、「matsuyaginza.com」との連携を強化しオムニチャネル戦略を推進いたします。これにより、国内外の顧客に対しより高い利便性と感動体験を提供することを目指してまいります。同時に、店舗・システム・不動産・人材への投資を実行し事業基盤の強化を図ってまいります。2028年度から2030年度の第2フェーズでは、第1フェーズで構築した基盤をもとに、それまでの投資効果を最大化し、持続的な成長を目指してまいります。

 当社は、銀座・浅草に密着した都市型百貨店、東京の地方百貨店として、唯一無二の社会的な価値を創造しながら、経済的価値を同時に追求していく企業となることを目指し、目標の達成に取り組んでまいります。

 飲食業の㈱アターブル松屋におきましては、各事業所ごとの採算管理を精査し、経営資源の選択と集中を進め、安定的な利益の創出に努めてまいります。

 ビル総合サービス及び広告業の㈱シービーケーにおきましては、常にクライアントの先にいる顧客や利用者の満足度の向上を見据え、デザイン力・クリエイティブ力の強化、および、松屋グループのシナジーを活かした営業力を強化して、外部売上の拡大に努めてまいります。

(4)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、「経営計画『Global Destination』となることを目指して」(以下、本計画)を策定しております(なお、本計画の詳細につきましては2025年4月14日付の本計画に関するプレスリリースをご覧ください(https://www.matsuya.com/corp/ir/)。)。

 本計画においては、従来の3年ごとの中期経営計画を廃止し、2050年度までの長期的な視野で変化の激しい時代に対応しながら、単年度での目標を着実に達成し、成長を目指してまいります。

 2050年度までのメルクマールとして、2030年度までに二段階のフェーズを設定しております。2025年度から2027年度の第1フェーズでは、「matsuyaginza.com」との連携を強化しオムニチャネル戦略を推進いたします。2028年度から2030年度の第2フェーズでは、第1フェーズで構築した基盤をもとに、それまでの投資効果を最大化し、持続的な成長を目指してまいります。

 経営戦略の基本的な考え方として、経済価値と社会価値を同期化させた共通価値を創造することを目指してまいります。戦略の方向性としては大きく、ホームタウンである銀座への「銀座集中投資」、日本各地における「地域共創事業を通じた輪の拡大」、世界に向けた「プレゼンス強化」という3つを掲げております。

 また、当社グループの重要な取組み課題(マテリアリティ)を特定し、サステナビリティ経営の推進や人的資本経営にも取り組んでまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりであります。

(1) サステナビリティ経営に関する考え方

当社グループは、「顧客第一主義」「共存共栄」「人間尊重」「堅実経営」「創意工夫」という経営方針のもと、グループの強みを活かしながら、地域の一員として社会課題に取り組むことで、企業価値の向上と持続的な社会への貢献を目指すことを当社グループのサステナビリティ方針とし、その基に環境方針・調達方針・人権方針を定め、企業活動を通じた持続可能な社会の実現を目指し取り組んでおります。

①ガバナンス

当社グループは、気候変動問題を含むサステナビリティに関する事項は、重要な経営課題と位置付けており、それらを審議するためサステナビリティ委員会を設置しております。

サステナビリティ委員会は、委員長である代表取締役社長執行役員をはじめ、取締役(社外取締役を除く)、執行役員から構成されており、サステナビリティに関する計画の立案、目標の設定や進捗管理等について審議を行っております。2024年度のサステナビリティ委員会の主な審議事項は、以下の通りです。

・スコープ1、2、3の実績および目標に対する進捗の報告

・人権方針、調達方針の制定

・マテリアリティの特定

サステナビリティ委員会で審議・検討された内容は、その重要性に鑑み、必要に応じて、過半数の社外取締役で構成されている取締役会に報告することを基本としており、取締役会は、気候問題をはじめとした経営に関する重要事項とともに、業務執行の監督を行っております。

〔ガバナンス体制〕


 

②戦略

持続可能な社会への貢献と当社グループの持続的な成長の両立に向け、「未来に希望の火を灯す 幸せになれる場を創造する」というMISSIONのもと、マテリアリティ(重要課題)を特定し、事業活動を通じて社会課題解決につながる取組みを推進しております。

〔マテリアリティ(重要課題)〕


 

③リスク管理

サステナビリティ課題を含む事業リスクについて代表取締役社長執行役員を委員長とする「危機管理委員会」にて検討・モニタリングしております。リスク管理の詳細は、「3 事業等のリスク」に記載しております。

気候変動・人的資本に関するリスクについては「(2)サステナビリティ経営に関する個別課題」に記載しております。

④指標及び目標

気候変動・人的資本に関する指標と目標については「(2)サステナビリティ経営に関する個別課題」にそれぞれ記載しております。

(2) サステナビリティ経営に関する個別課題

(ア) 気候変動への対応

当社グループは、気候変動によるリスクと機会が、当社グループの事業活動に長期間にわたり影響を及ぼす可能性があることから、経営に関する重要な事項のひとつであると考えております。

また、当社は2023年1月、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同いたしました。TCFD提言の開示推奨項目に沿って、継続的に開示内容の充実を図ってまいります。

①ガバナンス

気候変動に関するガバナンスについては「(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス」に記載しております。

②戦略

当社グループは、気候変動が当社にもたらす影響を考察するため、長期的に気温が上昇した2つの世界を想定し、想定した世界における2030年時点の主なリスクと機会を特定しました。分析にあたっては、複数の既存シナリオ(※)を参照し、分析の対象は提出会社単体といたしました。

特定したリスクと機会が当社に与える影響は、以下のとおりであると考えております。なお、影響の大きさは矢印で定性的に示しております。

 

特定したリスクの低減に努め、機会を活かすことによって事業活動を通じた持続的な成長を目指してまいります。

想定する世界

想定する主な影響

 

2℃未満

 

世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃未満に抑えることを達成する世界(2015年に国際社会が「パリ協定」で合意した世界共通の長期目標)

□気候変動対応に向けた厳しい法規制

□温暖化抑止に向けて進む技術革新

□高まる消費者の環境意識

□環境への取組みが企業価値へ影響

 

4℃

 

主に現行の政策・制度が継続することによって温室効果ガスの排出量が増加し、世界の平均気温が産業革命前に比べ、4℃前後上昇する世界

□進展する温暖化

□甚大な被害をもたらす自然災害の多発

□自然災害等による顧客の来店機会、購買マインドの変化

 

(※)当社は、以下のシナリオを参照しております。

<2℃未満の世界>

・IEA(国際エネルギー機関)発行のWEO(世界エネルギー展望)

SDS(Sustainable Development Scenario)とNZE(Net Zero Emission by2050 Scenario)

・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の RCP(代表濃度経路シナリオ)8.5

<4℃の世界>

・IEA発行のWEO STEPS(The Stated Policies Scenario)

・IPCCのRCP2.6


:影響が大きくなることが想定される


:影響がやや大きくなることが想定される


:影響が軽微であることが想定される

 

 

分類

特定した事項

影響度

2℃未満の世界

4℃

の世界

リスク

移行

リスク

(注)1

政策・

法規制

   炭素税の導入、温室効果ガス排出削減に向けたエネルギー調達等に伴うコストの増加

   法規制導入等による設備投資コストの増加、オペレーションコストの増加



市場

   環境課題への対応等の遅れによる企業価値の毀損、信用失墜、顧客の離反に伴う売上の減少



   平均気温の上昇に伴う消費者の外出減、来店客の減少



   異常気象による商品価格の上昇に伴う顧客層の縮小、売上の減少



物理リスク

(注)2

   大規模自然災害の発生に伴う店舗閉鎖、サプライチェーンへの影響等による売上の減少

   自然災害の強度の増大による設備保全コストや、店舗被害・商品損害等の復元にかかるコストの増加



 

 

分類

特定した事項

影響度

2℃未満の世界

4℃

の世界

機会

エネルギー源

   省エネルギー技術の普及に伴う電力使用量の減少によるコストの削減



商品・サービス

   環境配慮型消費への関心の高まりに対応した商品の販売・サービスの提案等による売上の拡大



市場

   環境課題の解決に向けた事業活動を通じた、ステークホルダーからの評判向上による来店客の増加



 

(注) 1 移行リスク:気候変動を緩和することを目的とした低炭素社会への移行に伴うリスク

     2 物理リスク:気候変動に伴う災害等により顕在化するリスク

③リスク管理

当社グループは、気候変動によって事業活動が受ける影響の把握と評価を、以下のプロセスに基づいて行っております。また、評価したリスクと機会についてサステナビリティ委員会において検討し、各部門・各グループ会社等に共有するとともにリスクの低減と機会の活用を推進しております。

【プロセス】

1. 気候変動に関する規制や事業への影響等の情報収集

2. 気候変動に関するリスクと機会の抽出

3. 抽出したリスクと機会の影響度を検討し、重要なリスクと機会を特定

4. 特定した重要なリスクと機会の影響度を評価

④指標及び目標

気候関連のリスクと機会を管理するため、当社のスコープ1、2の温室効果ガス排出量を指標として定めており、「2030年に2013年度比50%の温室効果ガス削減」を目標に具体的な取組みを進めております。また、日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル宣言」の実現に貢献できるよう、2030年以降も温室効果ガス排出量の削減に努めてまいります。

【スコープ1、2温室効果ガス排出量の実績と目標(単体)】                 

(単位:t-CO2)

 

2013年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

2030年度

スコープ1

464

395

421

447

508

温室効果ガス削減目標

スコープ1、2▲50%

(2013年度比)

スコープ2

10,093

7,674

7,515

6,795

7,714

スコープ1、2

合計

10,557

8,069

7,936

7,242

8,222

 

 


なお、当社グループの温室効果ガス排出量の詳細については、当社ウェブサイトをご参照ください。(https://www.matsuya.com/corp/sustainability/disclosure/#a01)

(イ) 人的資本

①ガバナンス

人的資本に関するガバナンスは、「(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス」に記載しております。

<人事戦略>

人事担当役員が全体的な企画立案・管理・推進の責任を担っており、経営幹部層の後継プランや育成、人員・人件費計画、ダイバーシティ等に関する重要事項については、内容に応じて取締役会または執行役員による会議に付議または報告することで適正性を確保しております。また、従業員の人材育成等に関する諸施策は、当社グループ各社の特性に合わせて設計されており、その新設・改廃等にあたっては、各社で組織される労働組合と協議を行い、従業員の意見を広く取り入れながら検討を進めております。

②戦略

当社グループにとって人材は何よりも大切な経営資源です。グループのMISSIONの実現に向けては、従業員一人ひとりが“働くことの喜び”を感じていることが不可欠であり、顧客満足や企業価値向上の好循環を生み出す起点には、“働く人の幸せ”が存在すると考えております。

当社グループでは、従業員の幸せを、“やりがいを実感しながら、安心して仕事に向き合えていること”と捉え、諸施策を通してエンゲージメントの向上に取り組んでおります。

<人材育成に関する方針>

社会環境の変化が激しい時代にあって、当社グループが持続的に成長していくために、組織を支える人材には、“変化への的確な対応力”が求められます。そこで、従業員が主体的に自身のキャリアを描き、意思を持って自らを高め続けられるよう、会社として、多面的にバックアップを行っております。各種研修や教育プログラムの提供に加えて、“日々の業務の中で培われる経験・意識が一人ひとりの成長を促す”という考えのもと、マネジメントによる働きかけにも力を入れております。併せて、人事賃金制度の根幹に実力主義の考えを据えることで、やりがいやモチベーションの創出とエイジレスな活躍を後押ししております。

 

【主な取組み】

65歳現役制

・本人の能力や活躍によって定年までキャリアアップを続けられる「実力主義」の考えに基づいた人事賃金制度の展開

能力開発

・キャリアプランと人生設計を両面からサポートする年代別研修の実施

・通信教育やe-ラーニング、資格受験等の自己啓発支援

・新規事業、新設部署およびグループ会社等への応募による異動制度の導入

マネジメント

・性別や年齢の隔てない業務アサインの推進

・業務の振り返りやキャリア相談など人材育成を目的とした個別面談の実施

 

<社内環境整備に関する方針>

当社グループの中長期的な経営戦略の実現にあたっては、“多様な人材が持てる力を最大限に発揮することが重要である”と考えております。そのために、経験者を含めた多彩な人材採用を行い、幅広い知見や視点を獲得するとともに、従業員同士が互いを尊重し合い、高め合う組織文化を醸成することで、個々の強みの最大化に努めております。また、労働市場の変化や仕事に対する価値観の多様化の進展が見込まれる中、長く働きたい会社として選ばれ続ける企業であるために、各種制度の拡充や業務の効率化に取り組み、さまざまなバックグラウンドを有する人材一人ひとりが安心して仕事に打ち込める、働きやすい社内環境の整備を進めております。

【主な取組み】

ワークライフ

バランス

・育児、介護、治療に対する両立支援制度の拡充

心身の健康

・診療所の開設と産業医の常駐による診療および健康管理体制の構築

・当社グループ単一の健康保険組合の設置による充実した保健事業の展開

デジタル活用

・ITの導入による業務効率化と社内コミュニケーションの円滑化

従業員

エンゲージメント

・「従業員エンゲージメント調査」の実施による従業員の働きがい向上への取組みの推進

 

③リスク管理

当社グループでは、グループ全体にわたる人材交流などを通じて、人員配置の最適化を図り、人的資本の最大活用と人材流出の抑止に努めております。さらに、従業員がそれぞれの能力や個性を活かし、自分らしく働くことができるよう、ハラスメント防止やダイバーシティ推進に関する教育・啓蒙を強化するなど、人権・多様性の尊重に取り組んでおります。

④指標及び目標

当社グループでは、人材の多様性確保を含む人材育成および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。また、当該指標を用いた目標および実績は次のとおりです。

 

指標

実績

目標

多様性

女性管理職比率
(係長級以上に占める女性の割合)

20.4

2030年度まで30%以上

キャリア採用人材比率

8

2030年度まで20%以上

働きやすさ

年間総実労働時間の短縮

 

2026年度まで

①一人当たり月間平均時間外労働時間

11.1時間

8.5時間

②一人当たり年間平均年次有給休暇取得日数

12.7

13

働きがい

従業員エンゲージメント調査スコア

73.8ポイント

2027年度までに+5ポイント

78.8ポイント)

 

(注) 各指標の目標および実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の概況、経営の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク事項には、以下のようなものがあります。ただし、将来の業績や財政状態に与えうるリスクや不確実性は、これらに限定されるものではありません。

なお、文中における将来に関するリスク事項は、当連結会計年度末現在において、判断したものであります。

(1)経営戦略・環境リスク

①国際情勢

(リスクの概要)

  当社グループは、インバウンド売上の比重が高いため、戦争や政治的な対立等による国際秩序の変調によるサプライチェーンの分断やそれらの影響によるインバウンドの減少・喪失により、業績に影響を受ける可能性があります。

(主なリスク対応策)

  当社グループは、これらのリスクへの対策として、不動産関連事業の育成、国内における地域共創事業の拡大、海外顧客ポートフォリオの再構築等により、特定の地域リスクを軽減できるよう取り組んでまいります。

 

②経済情勢・需要動向・社会構造等

(リスクの概要)

 当社グループの主要なセグメントである百貨店業や飲食業の需要は、国内外の景気動向・消費動向・株式相場等の経済情勢や人件費・物価の上昇によるコスト構造の変化等の影響を受けます。これらにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

 (主なリスク対応策)

 当社グループは、MISSIONに「未来に希望の火を灯す 幸せになれる場を創造する」を掲げています。変化の激しい経営環境において、長期的な視点に立ち、企業の経済的な成長と、事業活動を通じた社会への貢献を両立させる『経済価値』と『社会価値』の同期化を経営の重要課題と捉えています。この目標達成のため、環境変化に柔軟に対応する経営計画を策定し、着実に実行することで、持続的な成長と業績の向上に取り組んでおります。

 

③事業戦略

A:ビジネスモデル・収益構造改革への対応

(リスクの概要)

人口減少・少子高齢化社会の進展、消費者の志向・行動様式の変化や新たなビジネスの誕生等による市場の変化が、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

主力事業の百貨店業においては、市場の先々の変化を見据えて、従来の考え方にとらわれることのない売場づくり、国内顧客だけでなく訪日客もターゲットとしたCRM(顧客関係管理)の強化やオムニチャネル実現に向けたプラットフォームの構築とその推進など、百貨店業のビジネスモデルを進化させています。

B:社会のデジタル化の進展

(リスクの概要)

テクノロジーの革新は加速しており、デジタル技術を活用した新たな販売チャネルや情報発信ツールの利用が広まったことにより、消費者の購買行動が多様化しています。店舗での商品販売が主力の百貨店業は、eコマース市場のさらなる拡大やその他デジタル技術を活用した販売手法等の広がりにより、売上に影響を及ぼす可能性があります。また、急速に発展するデジタル化への対応の遅延により、売上に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

オムニチャネル実現に向けたプラットフォームを構築することにより、店舗での顧客とのリアルな接点だけでなく、いつでもどこでも繋がることができるデジタルの接点が加わることにより、新たな顧客の獲得と顧客LTV(生涯価値)の拡大に取り組んでまいります。これらの実現により顧客利便性の向上と、デジタル化社会の消費者行動への対応を推進しています。

C:サステナビリティ対応

(リスクの概要)

企業には、自社の発展のみならず、社会(気候変動・人権尊重等)課題の解決に取り組みながら事業活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していくことが求められております。これに関する取組みが十分でないことで、気候変動が引き起こす災害等によりサプライチェーンが機能せず、店頭営業が継続できないなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループは、サステナビリティを経営の根幹と捉え、事業活動を通じて、長期的な企業価値の向上を図るとともに、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

これに向け、事業を通じた体験価値の提供、提供のための創造基盤、それらの土台となるガバナンスにおける重要な取組み課題(マテリアリティ)を定め、事業活動に取り組んでいます。

例えば、地球温暖化に影響をもたらすとされている温室効果ガスの排出量を削減するために、省エネルギー対策(照明機器のLED化等)に加え、段階的に事業所の一部で再生可能エネルギーを利用し始めるなど、さらなる温室効果ガス排出量の削減を進めています。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同表明し、TCFD提言に沿った情報開示を行っています。

百貨店業の営業活動におきましても、環境・社会に配慮したライフスタイルを提案するプロモーションイベントの開催、銀座・浅草を始めとした様々な地域コミュニティと共に現地の課題解決にあたるなど、持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進しています。

 

④人事戦略

(リスクの概要)

当社グループにおいては、高いスキルや専門的な知識、ホスピタリティマインドを有する従業員一人ひとりが企業価値創造の源泉となっております。労働力人口の減少や、雇用流動化の進展を背景に、人材の獲得が困難となることに加え、既存の人材が流出することで、経営を支える人材が不足する状況に陥った場合、お客様にご満足いただく商品・サービスの提供ができなくなることや、当社グループへの信頼の低下、ブランド価値の毀損を引き起こすなど、経営目標の達成や事業の存続が困難になるおそれがあります。また、採用・育成コストの増加が当社グループの収益に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、こうしたリスクへの対応として人材の質・量の最適化を図っております。経営戦略に連動した採用計画の立案によって必要とする人材の量的確保に注力するとともに、デジタル化等による生産性の向上を通じて持続可能な人員体制への移行も進めています。また、人材への積極的な投資によって、新たな知識・スキルの習得など既存人員の成長を支援し、キャリアアップや活躍の場の拡大を図っています。同時に、労働市場において当社グループが魅力的な企業であり続けられるよう、処遇や制度、組織風土の改善を継続的に進め、多様な人材が働きがいを感じながら仕事に打ち込める環境の整備に取り組んでおります。

 

(2)財務リスク

①保有資産

(リスクの概要)

当社グループが保有する店舗、不動産及びのれん等の固定資産は、店舗等の営業損益が悪化、または市場価格が著しく下落したこと等に伴い、減損損失を計上する必要が生じた場合、あるいは大規模な自然災害により店舗が著しい損害を受け事業継続に深刻な影響を及ぼすこと等となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、事業活動・財務活動の円滑化のために株式を保有しております。株式相場の大幅な下落または株式保有先の経営状況の悪化により株式の評価額が著しく下落した場合には、株式の評価損が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(主なリスク対応策)

固定資産のリスクに関しては、店舗や不動産等の収益性を高め、安定的なキャッシュ・フローの創出に努めるとともに、自然災害等による損害については様々なケースを想定した事業継続計画を整備することにより、リスクの低減を図っております。

株式の保有リスクに関しては、上場株式については四半期毎に時価を把握し、取引先企業との関係を勘案して保有状況を継続的に見直しております。

 

②資金調達

(リスクの概要)

当社グループは、銀行等金融機関から運転資金や投資資金を調達しております。このため、金融市場の不安定化・金利上昇、また当社グループの業績悪化等により、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加する可能性や適時に資金調達ができない可能性があります。

(主なリスク対応策)

このようなリスクを踏まえ、当社グループは財務体質の強化に努めるとともに、金融環境の変化等に応じて最適な資金調達の見直しを適時行っております。また、アセットファイナンスなど多様な資金調達方法についても研究することで、資金調達コストの低減や、安定的な資金調達を図っております。

 

(3)オペレーショナルリスク

①自然災害・事故・感染症等

(リスクの概要)

当社グループの主要なセグメントである百貨店業や飲食業においては、大規模な地震・風水害等の自然災害、大規模な感染症またはテロ行為、その他事故及びそれに伴う火災が発生した場合、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

特に首都直下型の地震等の大規模な災害が発生した場合においては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、店舗における火災においては、人身への被害が想定され、これに伴い被害者に対する損害賠償責任等により費用が発生する可能性があります。

大規模な感染症の拡大時においては、主に百貨店事業・飲食業において、店舗の営業自粛や国内・インバウンド双方の需要の減少等により財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、こうした自然災害・事故・感染症等のリスクへの対応として「危機管理委員会」を設置することにより危機管理体制を構築しております。また、事業継続の観点から、マニュアルの整備、災害を想定した訓練の実施等、適切かつ合理的な対応等を行っております。特に百貨店事業での感染症リスクへの対応としては、EC等を活用した実店舗に留まらない営業施策にも注力しております。また、当社グループとして、各種損害保険等に加入しております。

 

②商品取引

(リスクの概要)

当社グループの主要なセグメントである百貨店業や飲食業において、一般消費者向け取引を行っております。これらの事業において、瑕疵のある商品の販売及びサービスの提供を行った場合、製造物責任や債務不履行責任に基づく損害賠償責任などにより費用が発生する可能性があります。特に、食料品販売から飲食のサービス提供まで多岐にわたる食品衛生に関わる事業においては、アレルギー表記の不備等が原因となる食物アレルギー事故や、管理不良等に起因した食中毒、異物混入が発生した場合、お客様への重篤な健康被害を与える可能性があります。さらに、この結果、当社グループの社会的信用の失墜や、行政処分による営業制限等により、売上高の減少等が発生し、これにより、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

また、百貨店業のバイヤーや法人営業部においては、法人向け取引を行っております。取引先の倒産により、売掛金など債権の回収不能に伴う費用の発生等が生じる場合、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、こうしたリスクへの対応として社内マニュアルを整備し、社員教育を実施しております。リスク事象が発生した場合は、レポートラインに則った関連部署間での連携による解決を図り、経営や行政への報告を行います。その後事例を社内共有して、再発防止に取り組んでいます。また、商品取引の事故は、商品の製造過程等に原因があることが多いため、商品やサービスの提供元である取引先と協働して原因を分析し、再発防止策を実行するとともに、取引先の選定や見直しを定期的かつ慎重に行っています。

 

③情報セキュリティ

(リスクの概要)

当社グループにおける百貨店業を中心とした各種コンピュータシステムは、店舗とは別の建物内で管理しております。耐震建築、通信回線の二重化、不正侵入防止等の安全対策を講じておりますが、想定を大きく超える自然災害や事故、または機密情報を狙ったサイバー攻撃や不正侵入によって、設備の損壊やシステム停止、機密情報の流出・漏洩等が起きた場合、当社グループの事業活動に支障をきたし、これにより当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

(主なリスク対応策)

情報セキュリティ対策として、技術的対策、物理的対策、人的対策を組み合わせることで網羅的かつ効果的な対策を講じております。各対策として、技術的対策は、サイバー攻撃や不正侵入を防止・検出・駆逐するツールの導入と多層的バックアップの実施、物理的対策は、システム部門を別館に設置した上での館及び個別の部屋への認証カードキーによる二重の入退出の管理、人的対策は、従業員への定期的な教育及び訓練等を行っております。

 

(4)コンプライアンスリスク

① 法令遵守

(リスクの概要)

当社グループは、顧客や取引先との商品販売や仕入を行う上で、消費者契約法、製造物責任法、景品表示法、独占禁止法及びその関連諸法令等より法規制を受けております。また、事業を展開・継続する上で、大規模小売店舗立地法、消防法、環境・リサイクル関連諸法令、労働関連諸法令、会社法及び金融商品取引法等の法規制を受けております。従って、これらの法規制を遵守できなかった場合、当社グループの活動が制限される可能性があるとともに費用の発生が想定され、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

 (主なリスク対応策)

当社グループでは、こうしたリスクへの対応として法改正動向の的確な把握に努めるとともに内部統制システムを構築・運用を図る中で社内マニュアルを整備し、社員教育を実施すること等により各種法規制への適切な対応を推進しております。特に百貨店事業の営業に関わる各種の法令(古物営業法、酒税法、家電リサイクル法、食品衛生法等)について、定期的に遵守状況の確認を行っております。

 

②個人情報の流出・漏洩等

(リスクの概要)

当社グループでは、個人情報を含む顧客の情報を保有しており、個人情報保護法その他の関連法令を遵守することにより、その保護・管理を徹底しております。しかしながら、不測の事故や不正行為等により個人情報を含む顧客の情報が流出・漏洩等した場合、当社グループにおいて信用毀損が生じ、売上高の減少等が発生する可能性があります。また、情報主体に支払う損害賠償その他の費用発生が想定され、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。

(主なリスク対応策)

当社グループでは、個人情報を含む顧客の情報の管理にあたっては、個人情報保護方針及び管理マニュアルに基づくルールの厳格な運用と従業員教育の徹底等により、個人情報保護体制の確立を図っております。特に百貨店事業においては、ルールの遵守状況に関するモニタリングを定期的に実施するとともに、時代に合わせたルールの見直しを常に行い、管理マニュアルの改訂等を適宜に行っております。また、情報システムのセキュリティ面においても十分な管理体制を整え、個人情報の流出・漏洩等を防止しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1) 経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、現政権下での経済対策および日銀による金融政策を背景に、2024年7月には日経平均株価が4万円を超える等、景気は一部に改善の遅れがみられるも、緩やかな回復基調のうちに推移いたしました。

しかしながら、地政学リスクの高まりによる供給不足・価格上昇や、東京外国為替市場において、一時160円超となる円相場の大幅な下落を皮切りとした金融資本市場の変動等の影響による不確実性の高まりもあり、先行きの不透明感が払拭できない状況が続きました。百貨店業界におきましては、富裕層を中心とした堅調な消費動向に加え、訪日外国人観光客による免税売上高が引き続き好調に推移したことにより、東京地区百貨店売上高は前年実績を大幅に上回りました。

このような状況の中、当社グループでは、「中期経営計画『サステナブルな成長に向けて』(2022 ~ 2024年度)」において、将来のありたい姿を実現するために「未来に希望の火を灯す、全てのステークホルダーが幸せになれる場を創造する」ことを「MISSION」として位置づけ、その実現に向けた新たな成長基盤づくりと成長軌道への回復を推進してまいりました。

この結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。

 1) 財政状態

当連結会計年度末の財政状態は、前連結会計年度末に比べ総資産は7,233百万円増加し、76,107百万円となりました。資産の増加要因としては、主に土地2,533百万円の増加、その他流動資産2,529百万円の増加等によるものであります。負債は4,849百万円増加し、46,907百万円となりました。負債の増加要因としては、主に借入金3,741百万円の増加等によるものであります。純資産は2,383百万円増加し、29,200百万円となりました。純資産の増加要因としては、主に利益剰余金1,825百万円の増加等によるものであります。

 2) 経営成績

当連結会計年度の売上高は48,120百万円と前連結会計年度に比べ6,868百万円(+16.7%)の増収、「収益認識に関する会計基準」等適用前の売上高に相当する総額売上高は137,184百万円と前連結会計年度に比べ22,200百万円(+19.3%)の増収となり、営業利益は4,485百万円と前連結会計年度に比べ1,510百万円(+50.8%)の増益、経常利益は4,464百万円と前連結会計年度に比べ1,525百万円(+51.9%)の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2,383百万円と前連結会計年度に比べ247百万円(△9.4%)の減益となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、従来「その他」に計上していた一部業績を「百貨店業」に計上しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

<百貨店業>

主力となる百貨店業の銀座店におきましては、中期経営計画の諸施策の下、化粧品、ラグジュアリーブランド・宝飾時計等の展開強化で、銀座の百貨店に相応しい品揃えの充実と収益力の向上を目指しました。また、外商事業、特に、個人外商部においては継続的な組織の強化と増員・即戦力となる人材を投入、さらには、各種営業活動においてもCRM(顧客関係管理)の強化によりお客様に一層寄り添ったこと等、松屋ファンとなる顧客基盤の拡大と深耕に注力してまいりました。このような取組みは、為替の変動や地政学リスク等の様々な外部要因にとらわれず、当社が掲げたありたい姿「新しい商品戦略とビジネスモデルで、幸せになれる場を創造する」を実現する一例となりました。

また、記録的な円安等を背景に7月の銀座店の免税売上高が過去最高を更新、2024年度における訪日外国人観光客は史上最多を更新する等、幅広い国々からの訪日外国人観光客の買上が館全体を強く牽引し、その売上高は前年を大幅に上回りました。訪日外国人観光客は、2025年度には4,000万人を上回り、その消費額も8.5兆円に達すると予想されています。このような中、銀座店は、11月より連結子会社である㈱MATSUYA GINZA.comを通じて、リアル店舗とデジタルを融合した新たな取組みをスタートさせました。商品の事前予約から店舗でのスピーディーな受け取りに加え、国内百貨店初となる免税購入機能を備えたオムニチャネルプラットフォーム「matsuyaginza.com」との連携により、訪日外国人観光客の利便性向上はもちろん、国内のお客様の新規獲得・ID化を推進してまいりました。世界でも有数の商業エリア「銀座」が国内外のお客様で活況を呈する中、店頭の混雑緩和と接客機会の増加を実現しつつ、リアル店舗と同品質の高感度な商品と買い物体験を得られるこのプラットフォームと連携したこと等で、さらなる顧客満足度と売上高の向上を目指しました。

浅草店におきましては、入居する商業施設「EKIMISE」との相乗効果の発揮に取り組み、施設内を買い廻るお客様の需要を取り込むプロモーションの強化や、地元浅草の老舗と連携し、お客様への積極的な商品提案やおもてなしを強化する等、業績の向上に尽力してまいりました。

以上の結果、百貨店業の売上高は39,997百万円と前連結会計年度に比べ5,653百万円(+16.5%)の増収となり、営業利益は4,189百万円と前連結会計年度に比べ1,304百万円(+45.2%)の増益となりました。

<飲食業>

飲食業の㈱アターブル松屋におきましては、婚礼宴会部門において婚礼組数の獲得および婚礼単価の向上に取り組んだ結果、主力の「東京大神宮マツヤサロン」を中心に売上が拡大したことに加え、宴会においても大幅な伸びを示したことから、売上高、営業利益ともに前年を上回りました。

以上の結果、飲食業の売上高は3,415百万円と前連結会計年度に比べ173百万円(+5.4%)の増収となり、営業利益は27百万円と前連結会計年度に比べ84百万円の増益となりました。

<ビル総合サービス及び広告業>

ビル総合サービス及び広告業の㈱シービーケーにおきましては、主に建装部門において外部の大型受注を計上したことにより、売上高、営業利益ともに前年を上回りました。

以上の結果、ビル総合サービス及び広告業の売上高は5,501百万円と前連結会計年度に比べ1,021百万円(+22.8%)の増収となり、営業利益は102百万円と前連結会計年度に比べ113百万円の増益となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、税金等調整前当期純利益3,779百万円、減価償却費1,473百万円、未収消費税等の増減額△2,333百万円等により3,066百万円の収入となりました。

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、有形固定資産の取得による支出△4,252百万円、事業譲受による支出△900百万円等により5,531百万円の支出となりました。

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、長期借入れによる収入4,300百万円、短期借入金の純増減額1,999百万円、長期借入金の返済△2,557百万円、配当金の支払額△556百万円等により3,129百万円の収入となりました。

この結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は665百万円増加し、3,861百万円となりました。

 

③生産、受注及び販売の状況

 1)生産実績

 当社及び当社の関係会社において、該当事項はありません。

 

 2)受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

 

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

受注残高(百万円)

金額(百万円)

受注残高(百万円)

ビル総合サービス及び広告業

741

10

1,028

17

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

(単位:百万円)

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

百貨店業

34,331

39,984

飲食業

3,235

3,404

ビル総合サービス及び広告業

2,118

2,714

その他

1,565

2,016

合計

41,251

48,120

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の売上高は48,120百万円と前連結会計年度に比べ6,868百万円(+16.7%)の増収、「収益認識に関する会計基準」等適用前の売上高に相当する総額売上高は137,184百万円と前連結会計年度に比べ22,200百万円(+19.3%)の増収となり、営業利益は4,485百万円と前連結会計年度に比べ1,510百万円(+50.8%)の増益、経常利益は4,464百万円と前連結会計年度に比べ1,525百万円(+51.9%)の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2,383百万円と前連結会計年度に比べ247百万円(△9.4%)の減益となりました。

(売上高の状況)

連結売上高は、48,120百万円となりました。富裕層を中心とした堅調な消費動向に加え、訪日外国人観光客による免税売上高が引き続き好調に推移したことにより、「収益認識に関する会計基準」等適用前の売上高に相当する総額売上高は137,184百万円と前連結会計年度に比べ22,200百万円(+19.3%)の増収となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益の状況)

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ、2,743百万円(+14.6%)増加し、21,485百万円となりました。これは主に人件費等が増加したこと等によるものです。営業利益は、売上高が増加したこと等により4,485百万円と前連結会計年度に比べ1,510百万円(+50.8%)の増益となりました。

(営業外損益、経常利益の状況)

営業外収益は前連結会計年度に比べ、85百万円(+25.4%)増加の423百万円、営業外費用は前連結会計年度に比べ、70百万円(+19.0%)の増加の443百万円となりました。この結果、経常利益は4,464百万円と前連結会計年度に比べ、1,525百万円(+51.9%)の増益となりました。

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益の状況)

特別利益は㈱松屋における投資有価証券売却益による18百万円となりました。特別損失は前連結会計年度に比べ、647百万円増加の703百万円となりました。特別損失は店舗閉鎖損失引当金繰入額、固定資産除却損等であります。税金費用は前連結会計年度に比べ、1,144百万円(+674.0%)増加し、この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,383百万円と前連結会計年度に比べ247百万円(△9.4%)の減益となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 1)キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの状況の分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 2)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また投資資金需要の主なものは、収益不動産の取得、店舗に関わる設備投資等によるものであります。

 運転資金や投資資金に必要となる資金は、営業活動によるキャッシュ・フローと、金融機関からの借入れ等により調達しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、当連結会計年度末における資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用の報告数値並びに開示に影響を与える見積りを行っております。当該見積りに際しましては、過去の実績や状況に応じて、合理的と考えられる要因等に基づき行っております。しかしながら、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社の連結財務諸表作成のための会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

(固定資産の減損)

当社グループは、店舗資産等を有しており、営業活動から生ずる損益が継続してマイナスである資産グループについて、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しております。回収可能価額の算定にあたっては、連結会計年度末時点で入手可能な情報や資料に基づき判断しております。

(繰延税金資産の回収可能性)

当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得を合理的に見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ課税所得の見積りが変動した場合、繰延税金資産が計上又は取崩される可能性があります。

(のれんの回収可能性)

当社グループは、投資意思決定時の単位を基礎としてのれんが発生している子会社を一つのグルーピング単位とし、事業計画の達成状況や経営環境の変化をモニタリングすることによって、減損の兆候の有無を検討しております。減損の兆候を識別した場合には、のれんを含む資産グループの帳簿価額と割引前将来キャッシュ・フローの総額を比較し、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を計上しております。
 割引前将来キャッシュ・フローは、事業計画に基づいて見積られており、当該事業計画には主に会員数、購入率、購入単価、品揃えの充足の状況等の仮定を含めております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

主な賃貸借契約は次のとおりであります。

(提出会社)

事業所別

賃借先

賃借物件

面積(㎡)

賃借料(百万円)

浅草店

東武鉄道㈱

店舗用建物

10,230

月額31

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。