第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針及び目標とする指標

 当社グループは、「持続的成長と企業価値向上」という目標のための長期的な経営課題を「自己資本比率の向上と安定配当の維持・継続」と認識しております。

 

(2) 会社の対処すべき課題

当社グループといたしましては、歌舞伎の殿堂「歌舞伎座」が多くの方に楽しんでいただける場であるよう、今後も、快適で安心・安全な劇場環境と、「歌舞伎座」ならではの食やサービスを提供してまいります。

不動産賃貸事業においては、保有物件の価値向上に努め、広告媒体の活用等による収益向上を目指す取り組みと、劇場および附帯施設を安全にご利用いただける環境整備のため、保全業務を計画的に実施できるよう進めてまいります。

食堂・飲食事業においては、お客様の趣向やニーズをさらに正確に捉え、歌舞伎座らしい食事とサービスを提供していくことと、食材や包材などの原価管理や経費管理を徹底し、収益性の向上に努めてまいります。

売店事業においては、増加傾向にある外国人観光客に魅力的な商品を揃えていく他、マーケティングや在庫管理に注力して効率の良い販売に取り組んでまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1)ガバナンス

当社グループは、「歌舞伎の維持・発展に貢献し、豊かで文化的な社会の実現に寄与する」ことを企業理念としており、サステナビリティ経営に力を入れております。

サステナビリティ経営に関する課題解決に向けた取り組み及び具体的戦略や重要施策等については経営協議会で検討・審議したうえで、取締役会に諮ることとしております。

 

(2)戦略

当社グループは、持続的成長と企業価値の向上にあたっては人材の成長と事業の成長が継続的に連動すると考え、サステナビリティ関連の項目の中で人的資本を重視しております。

人的資本については、等級・評価・賃金・退職金について定める人事制度を用いた実績・能力評価を実施することにより、性別を問わず、本人の能力や適性に基づいた処遇とすることを基本方針としており、育児休業制度及び介護休業制度を整備する等により、多様な人材が働きやすい職場環境を確保しております。

環境問題については、歌舞伎座及び附帯する建物設備において、太陽光発電システムや屋上等の緑化、適正なメンテナンスによる設備の長寿命化に取り組んでおります。また、プラスチックゴミ削減や在庫管理の徹底による食品ロス削減等、環境に与える影響を考慮する体制の構築を行っております。

 

(3)リスク管理

当社グループは、当社グループ経営に係わるリスクを適切に認識・評価するために、「リスク管理規程」を定めており、特に、災害・事故・衛生・情報の各リスクを一元的に俯瞰し、リスクを洗い出し、リスクを予防し、またリスクが発生した場合は迅速かつ的確に対応することにより被害を最小限にくい止め、再発を防止するための管理体制を整えております。

リスク管理担当者はサステナビリティ経営の推進において想定されるリスクを含むリスク関連情報を取集し、適宜担当取締役に報告することにより、情報の共有化を図り、リスクが発生した場合もしくはリスクの発生が予測される場合は速やかにリスクに対処し、再発防止の対策を立てることとしております。

 

(4)指標及び目標

当社グループは、上記(2)に記載した人的資本及び職場環境整備について、介護休業や育児休業取得の促進、有給休暇取得の義務化等を行っていますが、これらに関する測定可能な目標は定めておりません。今後、人材の多様性の確保を含む人的資本に関する測定可能な目標の設定に関して検討してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、その発生の回避及び発生時の適切な対応に向けて努力してまいります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

また、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自然災害・事故等の発生について

当社グループは、不動産を保有し賃貸しております。そのため、万一大規模な自然災害・事故等の予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 衛生管理について

当社グループは、飲食サービスを提供しております。当社グループでは、衛生管理の重要性を十分認識した上で、従業員に対して衛生管理の指導を徹底しておりますが、万一食中毒等の重大な衛生問題が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 不動産賃貸契約の解約について

当社グループは、不動産を保有し各テナントと賃貸借契約を交わしております。テナントの財政状態の悪化、移転等による契約の解約等が行われた場合、新規テナントの決定までの賃貸料収入の減少または賃料相場の下落等で、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 松竹株式会社への依存について

当社グループは、劇場を松竹株式会社に賃貸し、同社が演劇興行を行っておりますが、不慮の事故等により興行が中止になった場合等は、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 新型コロナウイルス等の感染症の影響について

当社グループは、新型コロナウイルス等の感染症の影響について引続き事業遂行上のリスクと認識しております。今後、新型コロナウイルスの再度の悪化や新たな感染症の発生等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費の持ち直しに足踏みが見られましたが、企業収益が改善し、生産活動も持ち直しの動きが見られる等、経済活動の正常化が進みました。インバウンド需要の増加や賃上げ率の上昇、資源価格や人件費の増加分を価格転嫁する動きがみられるなど、景気は緩やかな回復基調となった一方で、資源価格の高騰や不安定な国際情勢といった不安要素に十分な注意を払う必要がある等、景気の先行きは依然として不透明な状況で推移いたしました。

このような状況のなか、劇場及び附帯施設を賃貸する不動産賃貸事業と食堂・飲食及び売店事業を展開する当社グループは、経営効率の改善を進め、安定的な利益の確保と従業員の意識改革に努めました。

その結果、当連結会計年度における売上高は3,106,550千円(前期比1.8%増)、営業利益は218,320千円(前期比7.4%増)、経常利益は246,769千円(前期比11.0%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は274,570千円(前期比7.3%増)となりました。

これをセグメント別にみると、不動産賃貸事業については、土産物と蕎麦・甘味を提供する新たな飲食店舗「歌舞伎茶屋 房の駅」を誘致したこと等から売上高は1,900,418千円(前期比0.2%増)となりました。一方でコロナ禍により先送りとなっていた劇場設備に係る保全作業を実施したこと等から、セグメント利益は575,752千円(前期比17.1%減)となりました。

 食堂・飲食事業については、演目や土地に因んだお食事・お弁当を月替わりで提供した他、近隣で働く方向けに歌舞伎座厨房特製おにぎりの販売を開始しました。2024年11月には「歌舞伎座×かぶきにゃんたろう アフタヌーンティー」を開催し、多くのお客様にご来店いただきました。2025年1月には浅草公会堂「新春浅草歌舞伎」で「新春浅草歌舞伎特製お好み弁当」を販売し売上を伸ばしました。その結果、売上高は584,024千円(前期比1.4%増)、セグメント利益は17,028千円(前期はセグメント損失20,028千円)となりました。

 売店事業については、歌舞伎座を訪れる国内外観光客が増えており、「和」を感じさせる商品に工夫を凝らした他、地下「木挽町広場」にて外国人観光客向けコーナーを設ける等、様々なお客様をターゲットとした商品の企画販売を展開いたしました。また、「ねこ展」等の定期的な開催により幅広い世代のお客様にご来場をいただきました。その結果、売上高は622,106千円(前期比7.1%増)、セグメント利益は111,350千円(前期比97.8%増)となりました。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ556,581千円増加し24,348,548千円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ123,727千円増加し2,188,298千円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加116,067千円、売掛金の減少3,473千円であります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ432,854千円増加し22,160,249千円となりました。主な要因は、投資有価証券の時価評価による増加771,602千円の他、有形固定資産及び無形固定資産の取得による増加36,038千円、除却・売却による減少4,586千円、減価償却による減少434,305千円であります。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ192,707千円減少し13,055,443千円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ70,183千円減少し745,073千円となりました。主な要因は、未払法人税等の減少57,164千円、未払消費税等の減少21,242千円であります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ122,523千円減少し12,310,369千円となりました。主な要因は、流動負債に振替えたことによる長期前受金の減少292,809千円、長期未払金の支払による減少98,490千円、投資有価証券を時価評価したこと等による繰延税金負債の増加258,590千円であります。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ749,288千円増加し11,293,105千円となりました。主な要因は、投資有価証券を時価評価したことによるその他有価証券評価差額金の増加535,316千円、利益剰余金からの配当による減少60,598千円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加274,570千円であります。

なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.1%増加し46.4%となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ116,067千円増加し、2,034,520千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果増加した資金は215,963千円(前期は308,321千円の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益246,769千円、減価償却費434,305千円、主な資金の減少要因は、長期前受金の減少額292,809千円、長期未払金の減少額98,490千円、法人税等の支払額87,732千円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果減少した資金は40,196千円(前期は163,394千円の増加)となりました。これは有形固定資産の取得による支出28,310千円及び無形固定資産の取得による支出7,949千円などがあったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果減少した資金は59,699千円(前期は60,286千円の減少)となりました。これは配当金の支払額59,699千円があったことによるものであります。

 

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2023年2月

2024年2月

2025年2月

自己資本比率(%)

43.8

44.3

46.4

時価ベースの自己資本比率(%)

236.8

238.6

227.7

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

-

-

-

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

-

-

-

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

   時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

   キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

    インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

 

 

※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式を除く)より算出しております。

※ 2023年2月期連結会計年度より2025年2月期連結会計年度は、有利子負債及び利払いがないため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載しておりません。

 

④ 営業実績

当連結会計年度における売上高実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

割合(%)

前年同期比(%)

不動産賃貸事業

1,900,418

61.2

0.2

食堂・飲食事業

584,024

18.8

1.4

売店事業

622,106

20.0

7.1

3,106,550

100.0

1.8

 

 

(注) 主な相手先別売上高実績及び総売上高に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

売上高(千円)

割合(%)

売上高(千円)

割合(%)

松竹株式会社

1,646,314

53.9

1,629,026

52.4

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績の分析

不動産賃貸事業においては、劇場設備に係る保全作業の実施が利益を圧迫しましたが、食堂・飲食事業及び売店事業においては、コロナ禍前の利益水準に近づくことができました。

 

(不動産賃貸事業)

売上高は1,900,418千円(前期比0.2%増)、コロナ禍により先送りとなっていた劇場設備に係る保全作業を実施したこと等から、営業利益は575,752千円(前期比17.1%減)となりました。

 

(食堂・飲食事業)

売上高は584,024千円(前期比1.4%増)、食事・折詰弁当製作における徹底した原価管理、及びサービス・販売のスタッフ人員の効率的配置を推進した結果、営業利益は17,028千円(前期は営業損失20,028千円)となりました。

 

(売店事業)

売上高は622,106千円(前期比7.1%増)、人気の高い「ねこ展」等を定期的に開催した他、利益率の高い売れ筋商品に注力した結果、営業利益は111,350千円(前期比97.8%増)となりました。

 

なお、提出会社の当期純利益は前事業年度に比べ52,366千円(前期比27.9%)減少し135,025千円となりましたが、「安定配当の維持・継続」の基本方針により年間配当金を1株につき5円といたします。

 

③ 財政状態の分析

財政状態の分析につきましては、(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況に記載のとおりであります。

なお、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ2.1%増加し46.4%となりました。総資産が556,581千円(前期比2.3%)増加、自己資本が749,288千円(前期比7.1%)増加したことによるものであります。

 

④ キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金と設備投資資金であります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を営業キャッシュ・フローにより安定的に確保することを基本方針とし、自己資金のほか必要に応じて金融機関からの借入により資金調達を行います。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

当社は、松竹株式会社と次のとおり劇場歌舞伎座賃貸借契約を締結しております。

 

契約会社名

相手先名

契約年月

契約の内容

契約期間

提出会社

松竹株式会社

2013年2月

劇場賃貸借契約

1年間(注)

 

(注)契約期間満了の3か月前までに双方のいずれからも相手に対して書面による別段の意思表示がない場合は、本契約は同一条件にて更に1年間延長されるものとし、それ以後も同様とすることになっております。

 

6 【研究開発活動】

 

該当事項はありません。