第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

① 会社の経営の基本方針

当社グループは、「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」というビジョンを掲げ、デジタル化によって生じる新たなリスクの解決だけでなく、社会へのデジタル化の実装支援に取り組んでおります。

 

② 中長期的な会社の経営戦略

第1期(2022年2月期~2024年2月期)中期経営計画では、非連続なトップラインの成長を掲げて、事業成長に取り組んでおりました。2025年2月期以降は、収益基盤の強化を最優先テーマとして、営業利益を最重要指標として、以下の重点施策を実施してまいります。

(ア)デジタルリスク事業

エルテスの祖業であるソーシャルリスク領域に加えて、営業秘密の持ち出しなどで注目の集まる内部脅威検知サービスを中心としたインターナルリスク領域の売上高伸長に注力します。また、事業全体でのAI活用やビジネスプロセスの見直しによる生産性向上に着手し、確固たる収益基盤の構築を目指します。

(イ)AIセキュリティ事業

警備DXで新時代の安全保障をつくることをミッションに掲げています。警備保障サービス領域は、一定の収益性を確保しており、警備DX領域の黒字化が最優先課題です。その実現に向けて、AIK orderで構築した警備会社ネットワークへのDXプロダクト・採用ソリューションの展開を図り、トップラインの伸長を目指します。

(ウ)DX推進事業

DX、デジタル化、生成AIなどの社会トレンドを追い風に、行政サービスのデジタル化支援を中心に自治体DXサービスの展開拡大や、SESとラボ型開発のハイブリットで企業向けのDX支援に取り組みます。一方で、下期偏重型のビジネスモデルという課題解決に向けて、リアルタイム動画生成を可能とするAIチャットボットサービスのプロトタイプ開発など生成AI領域の取り組みも推進しています。

(エ)スマートシティ事業

プロパティ・マネジメント業務のデジタル化から着手し、そのデジタル化の領域をビル・施設、そして地域に広げることで、最新テクノロジー・データを活用した居住空間のデジタル化を目指します。まずは、不動産売買の立ち上げを推進し、プロパティ・マネジメント領域の収益性の改善に取り組みます。その先に、デジタル化による業務効率化を図りつつ、収益性の向上に取り組みます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、事業の継続的な拡大を通じて、企業価値を向上させていくことを経営の目標としております。

2025年5月29日公表の3ヵ年経営計画(2026年2月期~2028年2月期)において、中長期では時価総額200億円をターゲットとした経営計画の策定・推進を行い、営業利益を最重要指標として、経営管理に取り組むことを発表しております。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

① 経営環境

当社グループの事業に関連する市場においては、コロナ禍での新しい経済活動の拡大や新しい生活様式の定着、生成AIの普及などのテクノロジーの加速度的な発展を背景に、あらゆる場面でデジタル化施策が注目されており、デジタル化が進むことで新たなリスクが生じるため、デジタルリスク事業が立脚する市場は拡大すると考えております。また、デジタル化の余地が大きく残る領域でのデジタル化、DX化の推進を行う事業においても、今後デジタル化の活用が広がっていくことを見込んでおり、AIセキュリティ事業、DX推進事業、スマートシティ事業が立脚する市場も拡大すると考えております。

 

② 対処すべき課題

中長期的な企業価値向上には、当社グループが一丸となり、各社の強みを発揮して価値の最大化を実現することが不可欠と考えており、以下の事項を対処すべき課題として取り組みを進めております。

(ア)グループ管理体制の強化

中長期的な企業価値向上には、当社グループが一丸となり、各社の強みを発揮して価値の最大化を実現することが不可欠と考えております。経営戦略本部、財務戦略本部、組織マネジメント本部、グループ管理室を中心にグループ各社の経営資源を一元的に管理し、業績管理のモニタリング体制の強化、グループ各社のシナジーを最大化するよう努めてまいります。

 

(イ)AIセキュリティ事業のトップライン伸長

当社グループでは、警備DXで新時代の安全保障をつくることを目指して、警備業界のデジタル化を促進するプロダクトの開発・展開に取り組んでおります。警備DX領域を推進するAIKは、警備会社と警備依頼者のマッチングサービス「AIK order」などの展開が進まないことで、売上高が積み上がらず、継続的な赤字が発生しております。人手不足を解決する採用ソリューションなどにも注力し、AIセキュリティ事業の収益基盤構築に努めてまいります。

 

(ウ)スマートシティ事業の収益性改善

スマートシティ事業は、スマートな街づくりで地方創生に貢献することを目的に、プロパティ・マネジメント領域のデジタル化から着手し、そのデジタル化をビル・施設、そして地域に広げることを目指しています。まずは、不動産売買ビジネスを推進し、不動産売買取引からの収益拡大と売買を通じた管理物件数の獲得に取り組み、プロパティ・マネジメント領域の収益確保に取り組んでまいります。

 

(エ)管理部門の体制強化

迅速な経営状況の可視化、優秀な人材獲得に向けた採用活動、企業価値の適切な評価にむけたIR活動の実現に向けて、プロフェッショナル人材の配置や教育体制の整備、仕組みづくりや設計に努め、企業価値向上のための基盤を創ってまいります。

 

(オ)生産性・付加価値向上を目的とした人材育成

中長期的な企業価値向上には、競争優位性を高めるための多様な人材が必要不可欠と考えております。E-learningなどの教育環境の整備、評価制度の整備、グループ内における人材の適材適所への柔軟な配置転換など、人的資本投資の強化により、能力向上の機会を創出し、人材の育成を強化いたします。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、デジタル化によって生じる新たなリスク対策、自治体へのデジタル化支援などを提供し、社会から広く信頼を得る企業として高品質かつ発展的なサービスの提供を行うとともに、株主などのステークホルダーの期待に応えるため企業価値の向上を図ること、及び法令遵守と経営の透明性を確保するために、サステナビリティをめぐる課題への取り組みを推進することが重要であると認識しており、サステナビリティに関する課題にエルテスを中心としてグループで取り組んでまいります。また、グループ規模の拡大に伴い、企業モラルの維持・コンプライアンスや社会的責任への貢献など一層の高度かつ、健全で透明性のあるガバナンス体制が必要であると考えており、それらの構築に取り組んでおります。

 

(2) 戦略

当社グループは、2024年5月にアップデートした「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」というミッションを掲げ、デジタル化によって生じたリスク対策サービスや、デジタル活用・DX化を支援しています。

サービスの持続的な発展・拡大と、それがもたらす企業の中長期的な価値向上においては、人材を最も重要な経営資源と位置付けております。多様性に富んだ優秀な人材を採用し、事業・サービスの前進に取り組める人材の育成及び社内環境整備に努めてまいります。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、サステナビリティに関するリスク及び機会を経営上のリスク及び機会と一体的に管理しております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、サステナビリティに関する基本方針を定めておりません。そのため、定量的な指標や目標は設定しておりませんが、指標や目標の設定要否及びその内容も引き続き検討してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しておりますが、潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意ください。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① SNS情報取得について

当社グループは、ソーシャルメディアから生成されるビッグデータをソフトウエアにより自動的に収集しております。しかしながら、ソーシャルメディアの運営側の方針により収集に制限が加えられた場合や禁止された場合には、サービスの品質が低下、情報収集のための追加コストが発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② システム障害及び不具合について

当社グループは、24時間365日体制でサービス提供しておりますが、通信ネットワークに依存しており、サーバー等の自社設備や第三者の通信設備等のインターネット接続環境が良好に稼動することが前提であります。そのため、災害や事故による通信ネットワークの切断、サーバーの停止、コンピュータウィルスによる被害、外部からの不正侵入やソフトウエアの不具合などが生じた場合には、サービスの提供に支障をきたし、障害や不具合の原因が当社にあった場合には、顧客企業からの信頼度が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競合について

テクノロジーを活用したデジタル化・DX化に関する市場は、将来の成長が期待される市場であるため、国内外の事業者がこの分野に参入してくる可能性があります。新規参入する他社との競合状況が激化した場合には、価格の下落、または価格競争以外の要因でも受注を失うおそれがあり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ ソーシャルメディアについて

現在は、多くの企業や消費者がソーシャルメディアの積極的利用を行っており、それに伴いソーシャルリスクマネジメントに対する意識も高まっております。しかしながら、ソーシャルメディア自体が衰退し、利用者数が減少した場合には、関連する投稿数や記事数が減少し、ソーシャルメディアに起因するリスクが低下することが予想されるため、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 新技術の出現について

生成AI等のIT関連技術は技術革新の進歩が速く、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが変化しております。これらの新技術等への対応が遅れた場合、当社グループの提供するサービスが陳腐化・不適応化し、業界内での競争力低下を招く恐れがあります。その場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 法規制について

当社グループの事業は、警備業法をはじめとした厳格かつ詳細な法令や規制に従うことを要求されております。そのため、業務管理及び従業員教育を徹底し、コンプライアンス意識の維持、向上に努めておりますが、これらの関係法令に違反した場合、処罰の対象となり、営業停止等の行政処分を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑦ 人材の確保や育成について

事業拡大に伴う優秀な人材の確保と育成が重要な課題であり、とりわけ実務を担うデータアナリストやエンジニアなどのDX人材は、内部での人材育成及び外部からの人材登用に努めております。しかしながら、採用や育成、雇用に支障をきたす事態が発生した場合には、円滑な業務の遂行及び積極的な営業活動が阻害され、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、警備事業において、人材確保が困難となり必要な要員配置が出来なかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、年間を通じて採用に注力する他、女性警備員の増員、グループ全体での人材配置の最適化、デジタル化による業務の効率化や生産性の向上に努めております。

 

⑧ 情報漏洩について

当社は、顧客の営業機密や社内情報等の機密情報を扱う場合があり、DX推進事業においては今後マイナンバー情報の取得等の可能性もございます。それらを考慮し、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISMS「ISO/IEC 27001:2013」、「ISO/IEC 27017:2015」の認証を取得するなど、規程やマニュアル等に従った体制や教育の下で、機密情報を厳しく管理しております。しかしながら、何らかの理由により機密情報の漏洩が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ レピュテーションについて

 当社グループは、高い公共性を有するインターネットにおいて、リスクマネジメントを支援する事業会社グループとして、重責を負託されていることを十分に認識し社会的責任を果たすために、取引にあたり当社独自の基準を設け、社会から信頼される健全性と倫理観を常に保持するための取り組みが有効かつ継続的に機能する体制を運用しております。しかしながら、何らかの理由によりレピュテーション上のリスクが生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 知的財産権について

当社グループが保有する知的財産権に関しては、商標登録等を行っており、今後も知的財産権の保全に積極的に取り組む予定であります。しかしながら、当社グループの知的財産権が第三者に侵害された場合には、解決までに多くの時間及び費用がかかる等、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループによる第三者の知的財産権の侵害については、従業員に対して知的財産権についての研修、理解度の確認を行い、啓発を図っており、また業務上で不適切な取扱いがないよう可能な範囲で調査を行い対応しております。しかしながら、当社グループの事業領域における第三者の知的財産権を完全に把握することは困難であり、認識せずに侵害してしまう可能性が否定できず、この場合には、当社グループに対する損害賠償請求や、ロイヤリティの支払要求等が行われる等、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 投資について

当社グループは、事業拡大等のため、会社を買収することがあります。買収した会社の業績が買収決定時の事業計画と大きく乖離した場合、のれんなどの無形固定資産、その他有形固定資産の減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、買収した会社の業績は、管理体制を構築しており、買収決定時の事業計画と実績の乖離が認められた場合には、速やかに対応策を実行することとしております。

また、当社グループは投資事業も行っております。投資先の業績業況によっては、投資が回収できなくなる可能性や減損会計の適用による評価損が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、投資効率が低く保有意義の乏しい投資にならないよう厳格に審査の上、総合的な経営判断のもと、対応方針を決定しております。

 

 

⑫ 内部管理体制について

当社グループは、関係者の不正行為等が発生しないよう、国内外の法令及びルールの遵守を行動基準として定め、内部監査等で遵守状況の確認を行っております。しかしながら、法令等に抵触する事態や関係者による不正行為が発生する可能性は否定できず、これらの事態が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は子会社の事業運営に関して管理責任を有しており、グループ全体のリスク管理体制やコンプライアンス体制を運用する必要があります。グループガバナンスの強化の観点から、業務執行の報告を適時受け、連携してリスク対応を行うとともに、当社から取締役等を派遣して経営全般にわたる管理及び業務改善に指導助言を実施するなど、コンプライアンス遵守に取り組んでおります。しかしながら、何らかの理由により統制機能が不十分となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬ 代表取締役への依存について

当社創業者である菅原貴弘は、当社の大株主かつ代表取締役であり、当社グループの経営方針や事業戦略の立案・決定における中核として、重要な役割を果たし、新たな事業モデルの創出においても中心的な役割を担っております。当社グループは権限委譲、幹部社員の採用・育成等により、同氏に過度に依存しない経営体制の整備に努めていますが、何らかの理由により、同氏が当社の業務を継続することが困難になった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑭ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社グループは、優秀な人材確保のため、従業員等に新株予約権を付与するインセンティブプランを採用しております。当連結会計年度末現在、新株予約権による潜在株式数は1,220,800株であり、同日現在の発行済株式総数(自己株式を除く)6,033,257株の20.2%に相当し、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

 ⑮ 市場金利の上昇について

当社グループは、事業の運営・発展のため、金融機関等から短期及び長期の有利子負債を調達しています。新規の資金調達が必要となる場合、市場金利の上昇局面においては資金調達コストが増加する可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場金利の上昇は、不動産売買に関する期待利回りの上昇をもたらすことで、スマートシティ事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)における当社グループを取り巻く経済環境は、世界的な金融引き締めに伴う影響により不透明感はありましたが、経済活動は緩やかに正常化に向かっております。通信インフラの高度化やデジタルサービス、SNSの普及や多様化とともに、データ流通量は爆発的な増加傾向(総務省「情報通信白書令和5年版」)にあります。新型コロナウイルス感染拡大後は非接触・非対面での生活を可能とするデジタル化が日常となり、オンラインショッピングや動画視聴サービスなどの利用が拡張、またあらゆる主体や個人が情報の発信者となり得るSNSの活用も進んでいます。一方で、SNSをはじめとした動画配信・投稿サイトにおける偽・誤情報拡散や炎上事象、ネット上の誹謗中傷の投稿、組織内部からの機密情報持ち出しなど課題も多発し、日本経済活動に与える影響は甚大かつ深刻化しており、国内外の情報セキュリティの市場規模は年々伸張の一途をたどり、当社グループのニーズは益々高まっております。

 

(a) 財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ485,869千円増加し、7,383,893千円となりました。

当連結会計年度末における流動資産は、4,067,543千円となり、前連結会計年度末に比べ1,140,924千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が961,275千円、及び販売用不動産が260,494千円増加したこと等によるものであります。

固定資産は、3,316,350千円となり、前連結会計年度末に比べ655,054千円減少いたしました。これは主にソフトウエアが68,649千円増加、のれんが726,130千円減少、投資有価証券が110,827千円減少したこと等によるものであります。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,226,924千円増加し、5,515,062千円となりました。

このうち、流動負債は、前連結会計年度末に比べ1,039,837千円増加し、3,079,285千円となりました。これは主に短期借入金が158,797千円増加、1年内返済予定の長期借入金が552,818千円増加、及び未払金が231,000千円増加したこと等によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ187,087千円増加し、2,435,776千円となりました。これは主に社債が100,000千円増加、及び長期借入金が74,649千円増加したこと等によるものであります。

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ741,055千円減少し、1,868,831千円となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純損失860,379千円等によるものであります。

 

(b) 経営成績

当連結会計年度の連結業績において、事業領域拡張に合わせた新ミッション「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」のアップデートや、これまでの知見を活用し社会インフラの老朽化や環境問題への対応、安全・快適・有効に最大限機能させるべく、「スマートシティ事業」を新たなセグメントに設置し、ミッションの実現に向けて、事業を推進してまいりました。

しかしながら、AIセキュリティ事業の2023年10月にサービス提供を開始したAIK assignの受注リードタイム長期化などによって、警備DX領域のトップライン伸長が計画どおりに進捗しておらず、AIセキュリティ事業に係る営業利益は当初計画を130百万円下回りました。また、スマートシティ事業のプロパティ・マネジメント領域において、一部オーナーの物件売却等が発生したうえに、営業人員の不足により新規管理物件の獲得が大きくは進まなかったことも重なり、スマートシティ事業に係る営業利益は、当初計画を210百万円下回っております。これを受けて、当社連結子会社の株式会社メタウンにおける、2025年2月期の実績と当初想定していた事業計画の乖離状況を踏まえ、慎重に検討した結果、特別損失(のれんの一部減損損失)を計上することとしました。さらに、株式会社JAPANDXが自治体に展開している「DX-Pand(デクスパンド)」について、新地創交付金への制度変更に伴い、大幅な機能拡張と仕様の変更が生じ、事業計画の見直しを行った結果、特別損失(固定資産の減損損失)を計上することとなりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は7,317,064千円(前年同期比12.0%増)となり、EBITDAは608,806千円(前年同期比9.3%増)、営業利益は93,326千円(前年同期比48.7%減)、経常利益は68,849千円(前年同期比52.0%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は860,379千円(前年同期は257,302千円の利益)となりました。

 

(注) 当社グループの業績の有用な比較情報として、EBITDAを開示しております。EBITDAは、税引前当期純損益から利息及び非現金支出項目(減価償却費及び償却費等)の影響を除外しております。EBITDAの計算式は以下のとおりです。

・EBITDA=税引前当期純損益+支払利息+減価償却費及び償却費等の非現金支出項目

 

(c) セグメントごとの経営成績

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。なお、当連結会計年度より、地域の総合マネジメントソリューションの実現を目指して、新たに「スマートシティ事業」をセグメントに設置しました。それらを受けて、事業セグメントの区分方法を見直し、株式会社エフエーアイを「AIセキュリティ事業」に、株式会社メタウン、アクター株式会社を新設の「スマートシティ事業」に区分しております。なお、以下の前年同期比については、同様の区分方法により組み替えた数値で比較しております。

 

(デジタルリスク事業)

デジタルリスク事業は、営業秘密情報の持ち出しなどの社内に潜むリスクを検知するインターナルリスク対策と主にSNSやブログ、インターネット掲示板などWeb上のソーシャルメディアに起因するリスク対策を支援するソーシャルリスク対策から構成されております。

インターナルリスク対策は、昨今話題となっている営業秘密等の機密情報持ち出し対策や、経済安全保障の観点による情報管理強化支援を目的に製造業・金融業を中心に新規導入が進み、KPIとしていたユーザーID数は31万IDまで増加しました。1案件あたりの平均ID数は4,500程度となっており、エンタープライズ企業とそのグループ会社への展開が進んでいます。

ソーシャルリスク対策は、リスク検知時の初動対応コンサルティングを含むWebリスクモニタリングを主力サービスとして提供しております。また、SNSリスク低減のための社内規程作成支援や従業員向け研修の提供など、幅広い形で企業のSNSリスク対策を支援いたしました。

以上の結果、売上高は2,514,348千円(前年同期比9.7%増)、セグメント利益は1,150,530千円(前年同期比7.3%増)となりました。

 

(AIセキュリティ事業)

AIセキュリティ事業は、警備DXで新時代の安全保障をつくることを目指して、フィジカルな警備保障サービスを運営しつつ、運営の中で生じる課題解決のためのDXソリューションの開発・提供で警備業界のDX化に取り組んでいます。

警備保障サービス領域は、2025年開催の大阪万博を見越した大阪拠点も順調に立ち上がっております。一方で、北海道地域における積雪量が少なかった影響や首都圏における下期採用状況の鈍化によって、KPIであるポスト数の達成率が98.7%にとどまりました。

警備DX領域は、警備会社と依頼者の警備受発注マッチングプラットフォームであるAIK orderなどの警備業務DXサービスを展開しています。AIK assignの受注リードタイム長期化などによって、トップライン伸長が計画どおりに進捗していない状況が継続しておりました。この状況を打開すべく、警備現場における人手不足を解決する採用ソリューションの展開、警備ネットワークを活用したコンシェルジュ型サービスの展開で業績の底上げに取り組んでまいりました。

以上の結果、売上高は1,621,867千円(前年同期比0.9%増)、セグメント損失は40,959千円(前年同期は37,562千円のセグメント利益)となりました。

 

 

(DX推進事業)

DX推進事業は、デジタルを活用した人に優しい社会への変革を目指して、主に地方自治体を対象とした行政の住民サービスのデジタル化支援を行う自治体DX領域、並びにSESとラボ型開発のハイブリッドで事業会社のDX支援を行う事業会社DX領域の二つを事業の柱として取り組んでいます。

自治体DX領域は、自治体ビジネス特有の下期偏重の事業構造を有しています。年度末に掛けて、スマート公共ラボ for GovTechプログラムや、DX-Pandのサービス提供開始が増加し、両サービスを提供する自治体数は146まで増加しました。

事業会社DX領域では、事業セグメント内の営業連携強化や、提供能力拡大を目指したDX人材の獲得にも取り組みました。また、下期偏重の事業構造からの脱却を目指して、生成AI事業に着手するとともに、放送局等メディア向けDX支援に強みを持つJDXソリューションズ株式会社のグループ参画を実現するなど、積極的な投資を継続し、事業領域の拡大を推進いたしました。

以上の結果、売上高は1,804,645千円(前年同期比52.6%増)、セグメント利益は9,453千円(前年同期比85.0%減)となりました。

 

(スマートシティ事業)

スマートシティ事業は、スマートな街づくりで地方創生に貢献することを目的に、プロパティ・マネジメント領域のデジタル化から着手し、そのデジタル化の領域をビル・施設、そして地域に広げることを目指しています。また、スマートな街づくりを念頭においた、自治体のインバウンドマーケティング支援や、マップ検索特化型集客ツールであるミセシルベの提供を開始し、地方創生につながる動きも加速しています。

一方で、プロパティ・マネジメント領域は、一部オーナーの物件売却等が発生したことに加えて、営業人員の不足により新規管理物件の獲得が大きくは進まなかったことも重なり、大幅な管理物件数の減少が生じました。その他、収益不動産の売買を通じた管理物件の獲得を進めるべく専門の不動産売買チームを組成し、不動産売買取引からの収益拡大を計画しておりましたが、不動産売買を専門とする人員の採用に遅れが生じるなど、不動産売買事業が想定通りの立ち上げとならなかったことが大きく業績に影響を与えました。

以上の結果、売上高は1,483,846千円(前年同期比7.1%減)、セグメント損失は110,361千円(前年同期は23,098千円のセグメント損失)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ955,675千円増加し、2,511,838千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は、587,694千円(前年同期は、76千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失692,574千円、減価償却費150,804千円、減損損失749,193千円、のれん償却額369,021千円、投資有価証券評価損14,588千円、売上債権の減少127,528千円、未払金の増加212,954千円、及び販売用不動産の増加260,494千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、570,563千円(前年同期は、690,382千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出127,377千円、無形固定資産の取得による支出375,385千円、投資有価証券の取得による支出111,433千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出240,489千円により減少する一方、投資有価証券の売却による収入228,735千円等により増加したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は、938,547千円(前年同期は、589,847千円の獲得)となりました。これは、短期借入金の純増加額158,797千円、長期借入れによる収入1,505,000千円、非支配株主からの払込みによる収入129,500千円等により増加する一方、長期借入金の返済による支出939,645千円等により減少したことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

(a) 生産実績

当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(b) 受注実績

当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

(c) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメント名の名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

デジタルリスク事業

2,506,856

9.4

AIセキュリティ事業

1,617,242

1.8

DX推進事業

1,712,378

58.9

スマートシティ事業

1,480,586

△6.2

合計

7,317,064

12.0

 

(注)1 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

   販売実績の総販売実績に対する割合が10%を上回っている相手先がないため、記載を省略しております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析、検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、次の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の分析

経営成績の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資金需要は、運転資金に加え、新規事業への事業投資や投資有価証券の取得であります。

現状、これらの資金需要につきましては、自己資金、金融機関からの借入れによって調達しておりますが、必要に応じて、増資や社債発行等により柔軟に対応することとしております。

 

 

(3) 経営戦略の現状と見通し

当社グループは、テクノロジーの発展によって生じる新たなリスク対策を講じるデジタルリスク事業や、デジタル化の余地が大きく残る警備業界のデジタル化を支援するAIセキュリティ事業、行政サービスのデジタル化を中心に企業・自治体のDX支援を行うDX推進事業、不動産ビジネスのデジタル化からスマートな街づくりを目指すスマートシティ事業の4つの事業で、コーポレートミッションである「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」の実現を目指します。

 

2025年5月29日に開示の通り、2026年2月期を初年度とする3ヵ年経営計画では、時価総額200億円超を中長期のターゲットとした経営計画の策定・推進を掲げております。なお、2026年2月期の連結業績予想は、保守的に策定し、売上高82億円、営業利益3.8億円、当期純利益は、1.7億円を見込んでおります。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(5) 経営者の問題認識と今後の方針

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「安全なデジタル社会をつくり、日本を前進させ続ける。」というビジョンのもと、デジタル化によって生じる新たなリスク対策や、リスクを恐れたデジタル化の停滞を防ぐDX支援に取り組んでいます。日々変化するテクノロジーの変化に対応するために研究開発を行っております。また、技術開発効率を高めるべく、先端技術の導入を目的とした大学との共同研究や専門性を持ったパートナー企業とのアライアンスを推進しております。

当連結会計年度における研究開発費は、3,991千円であります。

セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりであります。

 

 DX推進事業

DX推進事業においては、事業会社DX領域でのサービス開発への投資を行い、当連結会計年度における研究開発費の金額は3,436千円でありました。

 

 スマートシティ事業

スマートシティ事業においては、インバウンドマーケティング領域でのサービス開発への投資を行い、当連結会計年度における開発費の金額は555千円でありました。