記載された事項で、将来に関するものは、有価証券報告書提出日現在(2025年5月30日)、入手可能な情報に基づく当社の経営判断や予測によるものです。
(1) 経営方針
当社グループは持株会社体制の下、大丸、松坂屋、パルコの店舗ネットワークや顧客基盤などの経営資源を最適かつ有効活用するとともに、時代の変化に的確に対応し、顧客満足の最大化と効率経営の徹底を通じ、リテール事業(百貨店・SC事業)をはじめ既存事業各社の競争力と収益力の向上を図ります。
加えて、より成長性のある分野に資源配分を行っていくなど、リテール事業を中核に競争力と収益力に優れた事業群でバランス良く構成されるポートフォリオへの見直しを進め、“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”というグループビジョンの実現に挑戦します。
(2) 経営目標
2024年4月15日に、当社グループは「2024-2026年度 中期経営計画」を公表しました。
その後、2024年度業績において本中期経営計画最終年度の利益目標を達成したことから、本中期経営計画の最終年度(2026年度)の経営数値目標を上方修正しました。
1.経営数値目標
財務目標として連結事業利益は560億円(当初目標520億円)、連結ROIC6.0%以上(当初目標5.0%以上)、非財務目標として温室効果ガス排出量70%削減(当初目標58%削減)を目指します。
<主要な経営数値目標>
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2026年度 新目標 |
(2026年度当初目標) |
2024年度実績 |
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連結事業利益(IFRS) |
560億円 |
520億円 |
534億円 |
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連結ROE |
8.0%以上 |
8.0%以上 |
10.5% |
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連結ROIC |
6.0%以上 |
5.0%以上 |
6.2% |
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温室効果ガス排出量※1 |
▲70.0% |
▲58.0% |
▲64.5% |
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女性管理職比率※2 |
31.0% |
31.0% |
26.2% |
※1 Scope1・2(2017年度比)、2024年度実績は概算値
※2女性管理職比率 2025年3月1日現在 27.3%
2.財務政策
中長期的な資本収益性の向上を図るため、収益性を伴う成長の実現、自己資本額の適正化及び株主還元の強化に取り組みます。
本中期経営計画では、3年間で2,200億円以上の営業キャッシュ・フロー(使用権資産に係る減価償却費を含む)を創出し、うち1,950億円を設備投資及び成長戦略投資に充当します。
投資は2030年を見据え、中核のリテール事業に加え、グループシナジーの具現化に向けたデベロッパー事業への先行投資、また成長戦略投資に重点配分します。株主還元については、連結配当性向40%以上の配当と柔軟かつ機動的な自己株式の取得により、自己資本の適正化に取り組んでまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
サステナビリティ経営を基軸に、新たな体制のもと始動した中期経営計画(2024-2026年度)の初年度の業績は、2030年を見据えた成長戦略の推進に加え、訪日外国人観光客数の伸長など外部環境の追い風を捉えた施策なども奏功し、当初掲げた中期経営計画最終年度(2026年度)の事業利益目標を上回る結果となりました。
一方、今後の事業環境の見通しについて、世界情勢の変化、金利や為替変動等による内外経済の先行きや物価上昇の長期化等による国内やインバウンド消費の下押しリスクについて注視していく必要があると認識しています。
中長期の成長を確かなものとし、「2030年に目指す姿」である“価値共創リテーラー”への変革を実現するためには、成長戦略の加速を通じて事業基盤を拡大するとともに、これら戦略を着実に進める強固な経営基盤の構築が欠かせません。
中期経営計画の2年目となる2025年度は、中期経営計画の経営数値目標を上方修正し、国内・海外顧客層の拡大など「リテール事業の深化」や、重点7エリアのエリア価値最大化をはじめとする「グループシナジーの進化」など成長戦略をさらに強化推進することで、事業基盤の拡大を図ります。
また、本中期経営計画は「2030年に目指す姿」の実現に向けた変革期と位置づけています。不確実性の高い事業環境の下、持続的な成長を確かなものとする強固な経営基盤の構築に向け、事業や人財への積極投資、事業の再編強化など企業変革への取り組みを、グループ一丸となり着実に推進します。
<中期経営計画に基づく重点戦略の強化ポイント>
1)リテール事業の深化
主力の百貨店事業、SC事業において、「国内・海外顧客層の拡大」「顧客接点の魅力化」「高質・高揚消費層へのコンテンツ拡充」への取り組みを強化します。特に海外顧客を対象とするコミュニケーション基盤(インバウンドCRM)の活用など海外富裕層への対応や、外商活動の広域化など国内富裕層マーケットへの対応など、顧客基盤の拡大に重点的に取り組みます。
①海外顧客層の拡大
・百貨店事業では2024年度末から始動したインバウンドCRMの本格活用を通じて、インバウンド顧客の情報を一元管理するとともに、顧客ニーズに応じた情報発信の強化、再来店を促進します。
・海外富裕層を顧客に持つ国内外企業との業務提携を通じて、当社グループ店舗への送客を強化します。また、同一エリア内における百貨店やパルコの枠を超えたアテンド体制の構築など、海外富裕層への対応をグループ一体で強化し、顧客基盤の拡大を目指します。
②富裕層マーケットへの対応強化
・顧客基盤の拡大に向け、外商活動の広域化やデジタルを通じた顧客コミュニケーションの強化、外部企業との連携による新たな商品、サービスの開発などコンテンツの拡充に取り組みます。また、外商ビジネスの持続的成長を見据え、人財や組織体制の強化に取り組みます。
③高質・高揚消費層向けコンテンツ拡充
・渋谷PARCO、名古屋PARCO、仙台PARCOなど基幹店を中心とした大型リニューアルを着実に推進し、国内・海外顧客からも評価の高いジャパンモードやキャラクターゾーン、アニメなどIPコンテンツの展開を継続します。
2)グループシナジーの進化>
「エリアの価値最大化」「グループ顧客基盤の拡大」「自社コンテンツの保有・開発」「内装事業の再編強化」に取り組みます。特に「エリアの価値最大化」に向け、名古屋栄エリアでは、街の賑わい創出に向けた施策の立案・推進など、グループ内および地域との連携強化を図ります。大阪心斎橋エリアでは、新規開発プロジェクトへの参画など、将来を見据えたエリア開発計画を推進します。また福岡天神エリアでは、九州随一の立地ポテンシャルを活用した再開発計画に取り組みます。
①エリアの価値最大化
A.名古屋栄エリア
・松坂屋名古屋店および名古屋PARCOにおける大規模リニューアルに加え、2026年(予定)に「ザ・ランドマーク名古屋栄」の開業を控えており、同エリアにおけるグループの商業施設の魅力化は着実に進行しています。
・今後、周辺施設や企業、クリエイター等との連携による地域活動等、街の賑わい創出に向けた活動を強化推進します。このため、グループ横断の専任組織を2025年3月に新設しました。
B.大阪心斎橋エリア
・大阪市が進める御堂筋将来ビジョン(世界に誇れる人中心のストリートへ空間再編)に基づき、街のさらなる賑わい創出が期待される大阪心斎橋エリアにおいて、当社は大丸心斎橋店、心斎橋PARCOに加え、2026年(予定)に開業する新たな複合商業施設へ参画します。
・2024年度に子会社化した株式会社心斎橋共同センタービルディングが保有する大丸心斎店南館の将来像の検討に着手するほか、心斎橋ビルの再開発プロジェクトに参画し、エリアにおけるリテールのさらなる拡張など、エリアの価値を最大化する戦略を強化推進します。
②グループ顧客基盤の拡大
・自社カード発行業務のグループ内集約を着実に推進します。2024年度のGINZA SIX、パルコの新カードに続き、2025年3月より博多大丸の新カードの発行を開始しました。これらを契機に、カード会員の獲得をはじめ顧客基盤の拡大をグループ一体となり推進します。
・また、グループ内におけるポイントの一元化、エリア特性に応じた顧客サービスの拡充など、事業や店舗を超えた顧客連携、サービスの具現化に向け検討を重ねていきます。
③自社コンテンツの保有・開発、事業開発
・リテール事業の新たな成長に向けて、百貨店やパルコなどが有する目利き力や調達力、ネットワークなど組織能力を融合し、自社店舗での展開に加え、海外・デジタル領域での将来の展開を見据えた自社コンテンツの保有・開発、また新規事業の開発を推進します。
・これらの取り組みを加速推進するため、M&Aや他社提携、当社の事業承継・CVCファンドによる成長戦略投資を強化します。
④内装事業の再編強化
・2024年度のビルマネジメント事業の統合に続き、内装事業の再編強化に向け、2026年3月に現在の株式会社J.フロント建装および株式会社パルコスペースシステムズの合併を予定しています。
・これらを契機に、重点7エリアをはじめグループ内店舗、またグループ外施設における上質な空間価値の創造、専門人財の確保・育成など事業基盤の拡大を図ります。
3)グループ経営基盤の強化
「2030年に目指す姿」の実現、戦略の実効性を高める経営基盤の強化に、グループ一体となり取り組みます。特に、価値共創のパートナーである人財への積極投資、人財戦略の立案・実行にスピードを上げて取り組みます。
①人財戦略
・新たに制定した「人財マネジメントポリシー」に基づき、経営戦略と一体となった人的リソースの強化と再配分を通じて、人と組織の持続的成長を図ります。特に、価値共創力や部下育成力の向上、専門人財の採用強化、女性活躍推進などに積極的に取り組みます。
・グループ内の人財交流を活発化し、多様な人財の活躍機会の拡大、人的ネットワークやノウハウの融合を図ります。これらシナジー発揮に向けた施策を推進するため、グループ共通の人財プラットフォームを構築します。
②システム戦略
・新たに制定した「グループシステムフィロソフィー」に基づき、グループ内の共通システム化やデータ基盤の活用を推進します。
・グループ共通会計システムの本格稼働による経営管理の高度化、業務の効率化を図ります。
・システム投資や資産管理の高度化、情報セキュリティへの対応を含むリスクマネジメントの強化など、ITガバナンスを推進します。
③財務戦略
・中長期的な資本収益性の向上を図るため、成長性と収益性に基づく投資管理を徹底するほか、事業会社との連携による社内浸透などROIC経営を強化推進します。
・フリーキャッシュ・フローの創出を図るとともに、将来を見据えた積極投資を進めます。一方、金融・資本市場等の動向を踏まえ、長期安定資金の確保、有利子負債の適切なコントロールなど財務健全性の確保に努めます。
④コーポレートガバナンス
・新たな経営体制のもと、経営の意思決定、執行の迅速化を図ると共に、取締役会による監督機能のさらなる強化などガバナンスの高度化により、中長期の成長実現、持続的な企業価値向上を図ります。
(1)JFRグループが目指すサステナビリティ経営
当社グループの主要事業会社である大丸松坂屋百貨店は300年、400年という歴史の中で数々の危機に遭遇してきました。そうした状況に直面するたびに、「先義後利」「諸悪莫作、衆善奉行」という社是に立ち返り、お客様や社会の変化を機敏に捉えながら事業活動を愚直に実践してきたことが、今日の当社グループの経営につながっています。社会との共存なくして企業の発展はありません。いま経営には、一層の長期視点により、社会に存在意義を放つ将来のあるべき企業像を描くことが不可欠となっています。地球温暖化、海洋汚染、生物多様性の喪失など地球環境問題の深刻化、サプライチェーン上の人権問題などの課題から目を背けて企業活動を行うことができないのは明らかです。そのような課題の解決に向けたサステナビリティの概念を企業戦略や事業戦略に組み込み、融合して推進することにより、将来の成長に向けた持続可能な経営の枠組みを獲得できるものと考えています。
このような考えのもと、当社グループは、持続可能な社会とくらしのあたらしい幸せの実現に向けて、環境や社会課題の解決と企業の成長を両立させるCSV(共通価値の創造)を実践することで、サステナビリティ経営を推進し、ステークホルダーの皆様の「Well-Being Life(心身ともに豊かなくらし)」に貢献していきます。
<サステナビリティ経営の全体像>
①ガバナンス
当社グループは、環境や社会課題への対応などサステナビリティに対する具体的な取り組み方針を、業務執行の最高意思決定機関であるグループ経営会議で審議・承認しています。グループ経営会議で承認された事項は、代表執行役社長の諮問機関であるサステナビリティ委員会(年2回以上開催)で全事業会社に共有されます。あわせて、サステナビリティ委員会では、各事業会社の実行計画及び進捗モニタリングを行っており、グループ全体の取り組みの実効性を高めています。
これに対し、取締役会(毎月開催)は、グループ経営会議で審議・承認された内容及びサステナビリティ委員会で協議された内容報告を受け、目標設定、対応方針、実行計画等について、監督を行います。
・取締役のスキルマトリックス
当社は、取締役候補者の選任にあたり、取締役に期待する専門性および経験等についてスキルマトリックスで明確にしています。サステナビリティ経営の推進を踏まえ、当社ではスキル項目として「環境」「社会」「ガバナンス」「人財・組織開発」を特定し、サステナビリティへの取り組みを適切に監督できる取締役を選任しています。
※スキルマトリックスについては、以下をご参照ください。
第18期招集通知
https://www.j-front-retailing.com/ir/stock/pdf/250428_Notice_of_Convocation.pdf
・非財務指標を取り入れた役員報酬制度
当社は、役員報酬制度における業績連動株式報酬を決定する非財務指標として、2021年度から「Scope1・2温室効果ガス排出量削減率」及び「女性管理職比率」を設定しています。これらは、中期経営計画のKPIとも連動しており、目標達成に向けた執行役の責任を明確化するとともに、サステナビリティ経営を実現・推進するためのインセンティブとして機能するようにしています。
※役員報酬制度については、「
<JFRグループ サステナビリティマネジメント体制>
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<サステナビリティ委員会の主な議題>
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2023年 |
4月 |
・外部講師講演 「ビジネスと人権」 ・各事業会社のダイバーシティ&インクルージョン推進の取り組み状況 ・従業員意識調査結果報告 ・グループ全体の2022年度KPI進捗報告および2023年度サステナビリティ実行計画 |
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9月 |
・外部講師講演「生物多様性対応の概要と必要性」 ・第2回お取引先様アセスメント実施概要 ・グループ全体の2023年度上期KPI進捗報告 |
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2024年 |
4月 |
・外部講師講演「中長期的な企業価値向上と非財務活動の関係」 ・グループ全体の2023年度KPI進捗報告 ・2024年-2026年度サステナビリティ中期計画 |
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9月 |
・マテリアリティに関する従業員の自分ごと化 ・グループ全体の2024年度上期KPI進捗報告 |
②リスク管理
当社グループは、リスクを「企業経営の目標達成に影響を与える不確実性であり、プラスとマイナスの両面がある」と定義しています。そして、リスクマネジメントを「リスクを全社的な視点で合理的かつ最適な方法で管理することにより企業価値を高める活動」と位置づけ、リスクのプラス面・マイナス面の双方に適切に対応することにより、企業の持続的な成長につなげています。
当社は、リスク管理が経営上極めて重要であるとの認識から、サステナビリティ関連を含むリスク全般を全社統合的に管理するため、リスクマネジメント委員会(年3回開催)を設置しています。同委員会での審議内容は、グループ経営会議に報告されるとともに、サステナビリティ委員会に共有されます。
なお、リスクマネジメント委員会、サステナビリティ委員会での協議内容、グループ経営会議での承認事項については、それぞれ取締役会(毎月開催)に適時報告されており、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応しています。
※当社のリスクマネジメント体制、プロセス、及びグループ経営において極めて重要度の高いリスクの詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
また、環境関連については、「(2)気候関連課題への対応(TCFD情報開示)②リスク管理」をあわせてご参照ください。
③戦略
(a)マテリアリティの特定
当社は、環境・社会課題と当社グループの事業活動の関連性を明確にするなかで、「企業と社会の持続的成長」および「持続可能な社会」の実現に資するテーマをマテリアリティ(重要課題)として特定し、2018年以降、中期経営計画策定のタイミングで見直すこととしています。
2024年度からスタートした今中期経営計画の策定においては、マテリアリティへの取り組みを課題解決にとどまらず企業成長に結びつけていくため、事業戦略と融合させ推進することを前提に、JFRグループ重要リスクや経営環境を取り巻く社会の変化などを踏まえて見直しを行い、5つのテーマを特定しました。
当社は、マテリアリティへの取り組みを通じて、リテール事業を中心に3つの共創価値「感動共創」「地域共栄」「環境共生」を提供し続ける“価値共創リテーラーグループ”への変革を目指します。
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〔5つのマテリアリティ〕 ・くらしにワクワクをプラスする ・地域の活力を高める ・環境と共に生きる社会をつくる ・価値共創するパートナーを増やす ・多様な人財を輝かせる
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(b)マテリアリティのコミットメント
当社は、社会課題の解決は、多くの人と企業の共通テーマであり、競う「競争」ではなく、共に創る「共創」であってこそ、社会に対するインパクトを持つと考えています。これまでのマテリアリティへの取り組みは、自社の事業活動の中で出来ることが中心でしたが、今後は、事業戦略と融合させ、従業員と共にこれまで以上に多くのお客様やお取引先様などのステークホルダーを巻き込み、取り組みの輪を広げていきます。そうすることで、社会の持続性だけではなく、当社の事業機会の創出、企業としての持続的成長もあわせて獲得していけるものと考えています。
5つのマテリアリティにおけるコミットメントは以下のとおりです。
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マテリアリティ |
コミットメント |
アウトプット |
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くらしに ワクワクを プラスする |
価値観が多様化するなか、人びとの心を動かすモノやコト、これらとの新たな出会いの場や空間を提供し、生活者一人ひとりのWell-Beingと心豊かでワクワクする未来のくらしを提案する。 |
・質の高い商品やサービス ・心躍るコンテンツ |
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地域の活力を 高める |
当社の重点7エリアをはじめ各地域との結びつきを強化し、地域コミュニティ、行政、NPO等と共に、地域の活力を高め、持続可能な街づくりを行う。また、地域の魅力を発掘・発信することで、街に集う人びとにワクワクするあたらしい体験を提供する。 |
・街のにぎわい ・地域コミュニティの活性化 |
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環境と共に 生きる社会を つくる |
2050年ネットゼロ目標達成に向けて、サプライチェーン全体の脱炭素化とサーキュラー・エコノミーの推進の両輪で取り組む。また、自社単独の取り組みにとどまらず、価値共創パートナーと共に、持続可能な社会づくりに誰もが貢献できる機会を提供し、働きかけを行う。 |
・温室効果ガス排出量削減 ・循環型ビジネス |
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価値共創する パートナーを 増やす |
持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティに対する思いや考えを共有し、人権デューデリジェンスなどの社会的責任とともに、「感動共創」「地域共栄」「環境共生」の価値創出に向けたパートナー基盤をつくる。 |
・業種業界を超えた幅広いパートナーシップ ・持続可能なサプライチェーン |
|
多様な人財を 輝かせる |
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンやワーク・ライフ・インテグレーションをはじめ従業員一人ひとりが活躍できる環境や仕組みを整え、意志・意欲や能力を最大限に引き出し、人財と企業の持続的な成長を実現する。 |
・働きやすさと働きがい |
④指標と目標
サステナビリティに関する指標と目標、および2024年度実績は以下のとおりです。
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マテリアリティ |
指標 |
実績 |
目標 |
|||
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2024年度 |
2026年 |
2030年 |
||||
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くらしに ワクワクを プラスする |
グループ顧客会員数 |
増加率15.7% (2023年度比) |
増加率25% (2023年度比) |
※1 |
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顧客調査(ワクワク・感動度) |
基礎調査実施 2030年目標設定 |
- |
75%※2 |
|||
|
地域の活力を 高める |
施設への入店客数 |
5.4%増 (2023年度比) |
10%増 (2023年度比) |
※1 |
||
|
顧客調査(地域への貢献度) |
基礎調査実施 2030年目標設定 |
- |
80%※2 |
|||
|
環境と 共に生きる 社会をつくる |
温室効果ガス排出量削減 Scope1・2 |
▲65.4% (2017年度比) |
▲70% (2017年度比) |
▲73% (2017年度比) |
||
|
Scope3 |
▲23.2% (2017年度比) |
- |
▲40% (2017年度比) |
|||
|
事業活動で使用する電力に占める再エネ比率 |
67.2% |
72% |
75% |
|||
|
食品リサイクル率 |
88.1% |
80% |
85% |
|||
|
新規開発物件の環境認証取得率 |
対象物件なし |
- |
100% |
|||
|
顧客調査 (顧客の環境への取り組み度) |
基礎調査実施 2030年目標設定 |
- |
55%※2 |
|||
|
価値共創する パートナーを 増やす |
ステークホルダー共創件数 |
351件 |
400件以上 |
500件以上 |
||
|
人権アセスメント結果 |
2023年度結果に伴う対話(112社) Webセミナー実施 |
35% (B評価以上) |
45% (B評価以上) |
|||
|
多様な人財を 輝かせる |
従業員エンゲージメント |
従業員満足度 |
68.9% |
70% |
2026年度達成状況を踏まえ設定 |
|
|
勤務推奨度 |
59.9% |
60% |
||||
|
女性管理職比率 |
26.2% |
31% |
40% |
|||
|
男女賃金格差 |
全労働者 |
66.5% |
差異縮小※3 |
2026年度達成状況を踏まえ設定 |
||
|
正規雇用労働者 |
75.0% |
|||||
|
非正規雇用労働者 |
75.5% |
|||||
|
男性育児休業取得率 |
132.5% |
95% |
||||
※1 マテリアリティの実現に向けて事業戦略とより関連を高められる指標・目標を本中期経営計画の中で検討します。
※2 2024年6月の基礎調査を基に2030年中期目標を設定しました。2025年に本調査を実施し、目標の妥当性を検証します。
※3 2023年度男女賃金差異は次のとおりです。
全労働者65.3%、正規雇用労働者74.4%、非正規雇用労働者:72.7%
(2)気候関連課題への対応(TCFD情報開示)
・2050年ネットゼロに向けたJFRの考え方
昨今、気候変動は極めて深刻なレベルまで進行し、将来世代はもちろんのこと、現世代の私たちを含め人類がその危機にさらされています。
当社は、気候変動への対応をサステナビリティ経営上の重要課題と位置づけています。気候変動に伴うリスクや機会は、当社グループの事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、2050年までのバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量ネットゼロ※1を目指し、「温室効果ガス排出量削減」と「サーキュラー・エコノミーの推進」の両輪でその対策に取り組んでいます。
・目標設定
当社はグループ全体で気候変動対策を推進するためには、中長期の野心的な温室効果ガス排出量の削減目標設定とその達成に向けたロードマップの策定が必要だと考えています。この考えに基づき、2019年に、Scope1・2・3排出量削減目標において、SBT(Science Based Targets)イニシアチブ※2による認定を取得しました。2021年には、2030年のScope1・2排出量削減目標を従来の40%から60%削減(基準年2017年度比)に引き上げ、「1.5℃目標」としてSBT認定を再取得しました。そして、さらに2023年2月には、Scope1・2・3排出量について、2050年までの「ネットゼロ目標」のSBT認定を取得しました。

なお、Scope1・2排出量の2030年目標「60%削減」については、2025年2月末時点において前倒しで達成しました(65.4%削減)。そのため、目標を引き上げ、新たな2030年目標として「73%削減」を設定しました。今後、さらに取り組みを進めていきます。
※1 温室効果ガス排出量を徹底して削減し、残りの排出量について、森林吸収やCCS(CO2の回収・貯留)等による除去量を差し引いて実質ゼロにすること
※2 企業が最新の気候科学に沿った野心的な排出削減目標の設定を可能にすることを目的として、2014年、CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4団体が共同で設立
①ガバナンス
「
②リスク管理
当社グループは、気候関連リスク・機会について、サステナビリティ委員会の中でより詳細に検討を行い、各事業会社と共有化を図っています。各事業会社では、気候変動の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業会社社長を長とする会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行っています。その内容について、グループ経営会議やリスクマネジメント委員会およびサステナビリティ委員会において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っています。
<JFRグループ リスク・機会の管理プロセス>
|
※気候関連リスク・機会の特定・評価プロセスの詳細及び全社リスク管理の仕組みへの統合状況は、「第2 事業 の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。 |
|
③戦略
・JFRグループ 2050年ネットゼロ移行計画
当社は、2050年ネットゼロの実現に向け、中長期視点で取り組む必要があるとの認識に基づき、2050年までの移行計画を策定しています。気候関連リスク・機会の分析結果、およびそれらによる財務影響を踏まえ、リスクに対しては適切な対応策を講じ、また機会に対しては、顧客ニーズの変化に積極的に対応することで新たな成長機会の獲得を目指す等、短期・中期・長期視点で、具体的な取り組みを推進していきます。本移行計画に、投資や資金計画、また当年度の取り組み実績を合わせて明示することで、それぞれの関係性を明確にし、本計画の実効性をより高めていきます。
(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細
当社は、気候関連リスク・機会は、長期間にわたり自社の事業活動に影響を与える可能性があるため、適切なマイルストーンにおいて検討することが重要であると考えています。それを踏まえ、中期経営計画の実行期間である2026年度までを短期、SBTにおける短期目標年度である2030年度までを中期、SBTネットゼロ目標年度である2050年度までを長期と位置づけました。
当社グループは、気候関連リスク・機会に対し、ネットゼロを実現する2050年までを見据えたバックキャスティングにより、戦略を策定し、対応しています。
<JFRグループにおける気候関連リスク・機会の検討期間の定義>
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気候関連リスク・機会の検討期間 |
JFRグループの定義 |
|
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短期 |
2026年度まで |
中期経営計画の実行期間 |
|
中期 |
2030年度まで |
SBTにおける短期目標年度までの期間 |
|
長期 |
2050年度まで |
SBTネットゼロ目標年度までの期間 |
(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、下表のとおり2つの世界を想定しています。
これらのシナリオを踏まえ、当社は、主要事業である小売業及びデベロッパー事業を対象にバリューチェーンプロセスの活動項目ごとに、TCFD提言に沿って、気候関連リスク・機会を抽出しました。その上で、気候変動がもたらす移行リスク(政策規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、気候変動への適切な対応による機会(資源効率、エネルギー源、製品およびサービス、市場、レジリエンス)を特定しました。
<2025年度シナリオ分析に活用するシナリオの説明>
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気温上昇 推定値 |
参照した既存シナリオ |
想定される世界 |
対象事業 |
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|
1.5℃/2℃未満 |
移行 |
「Net Zero Emissions by 2050 Scenario(NZE)」(IEA、2024年) |
気候関連政策・規制が強化され、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した世界 ・炭素税導入 ・再エネの普及・拡大 ・環境配慮型商品への関心の高まり |
小売業・デベロッパー事業 |
|
物理 |
「Representative Concentration Pathways (RCP2.6)」(IPCC、2014年) |
|||
|
4℃ |
移行 |
「Stated Policy Scenario(STEPS)」(IEA、2024年) |
新たな気候関連政策・規制は導入されず、現状のペースのまま温室効果ガスが排出され、気候変動が進行(平均気温2.6℃~4.8℃の上昇)することを想定した世界 ・甚大な自然災害の増加 ・海面上昇 ・生物多様性の喪失 |
|
|
物理 |
「Representative Concentration Pathways (RCP8.5)」(IPCC、2014年) |
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(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス
当社は、特定した気候関連リスク・機会の中から、「自社にとっての重要性(影響度×緊急度)」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、その重要性を評価しました。特に重要性が高いと評価した項目について、2030年度を想定した1.5℃/2℃未満シナリオ、および4℃シナリオの2つのシナリオにおける財務影響を定量、定性の両側面から評価し、それぞれの対応策を策定しました。
なお、財務影響を定量的に評価するための情報が入手困難なリスク・機会については、定性的に評価し、その結果を矢印の傾きによって3段階で表示しています。
<JFRグループにとって特に重要な気候関連リスク・機会、および2030年度の財務影響>
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JFRグループの事業及び財務への影響が非常に大きくなることが想定される |
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JFRグループの事業及び財務への影響が大きくなることが想定される |
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JFRグループの事業及び財務への影響が軽微であることが想定される |
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気候関連 リスク・機会の種類 |
発現時期 |
JFRグループにとって 特に重要な 気候関連リスク・機会 |
2030年財務影響 |
対応策 (※2024年度の取り組みはネットゼロ移行計画を参照) |
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短期 |
中期 |
長期 |
1.5℃/2℃ 未満 シナリオ |
4℃ シナリオ |
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リスク |
移行 リスク |
● |
● |
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・炭素税等の導入に伴うコストの増加 |
約11億円※1 |
約10億円※1 |
・2050年ネットゼロ目標達成に向けた店舗における積極的な省エネ施策や再エネ切り替え拡大による温室効果ガス排出量削減 |
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● |
● |
● |
・環境性能の高い物件の開発と設備導入に係るコストの増加 |
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・グリーンボンド等を活用した資金調達 ・コスト効率的な設備導入 |
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● |
● |
● |
・高効率(省エネ)機器導入に係る投資の増加 |
|
|
・インターナルカーボンプライシングの活用 ・コスト効率的かつ計画的な投資の検討 |
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● |
● |
|
・再エネ由来電力需要増による再エネ調達コストの増加 |
約8億円※2 |
約4億円※2 |
・インターナルカーボンプライシングの活用 ・再エネ調達手法の適切な組み合わせによる再エネ調達リスクの低減と中長期的なコストの低減 ・自社施設への再エネ設備導入等、再エネ自給率の向上 |
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物理 リスク |
● |
● |
|
・自然災害による店舗休業に伴う収益の減少 |
約52億円※3 |
約103億円※3 |
・BCP整備による店舗・事業所のレジリエンス強化 ・店舗の防災性能の向上 |
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機会 |
エネルギー源 |
● |
● |
● |
・高効率(省エネ)機器導入によるエネルギー調達コストの減少 |
約5億円※4 |
・高効率(省エネ)機器への適切なタイミングでの更新 |
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製品 及び サービス |
● |
● |
|
・新たな価値共創パートナーを含む取引先と連携した環境配慮型商品 ・サービスの提供による、バリューチェーン全体での脱炭素化とビジネス機会獲得に伴う収益の拡大 |
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|
・環境配慮型商品・サービスの取扱い拡大 ・廃食油を国産SAFとして再資源化 ・AI需要予測システムの活用による食品廃棄物削減等、お取引先様との協働による取り組み ・温室効果ガス排出量の算定や削減目標の設定、排出量に係る一次データの提供依頼等、脱炭素化に向けたお取引先様との対話や説明会の開催 |
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市場 |
● |
● |
● |
・サーキュラー型ビジネスへの新規参入による新たな成長機会の拡大 ・サステナブルなライフスタイルを提案することによる新規顧客の獲得に伴う収益の拡大 |
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|
・ファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス」をはじめとしたシェアリング・アップサイクル・リユース等サーキュラー型ビジネスの拡大 |
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● |
● |
● |
・環境価値の高い店舗への転換による新たなテナントの獲得機会増に伴う収益の拡大 |
約11億円※5 |
― |
・新規開発物件の環境認証の取得(ZEB、CASBEE等) ・RE100実現に向けた店舗の再エネ化の促進 |
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(2030年度時点を想定した定量的財務影響の算出根拠)
※1 2030年度時点のJFRグループScope1・2排出量に1t-CO2あたりの炭素価格を乗じて試算
※2 2030年度時点のJFRグループ電気使用量に通常の電気料金と比較した1kWhあたりの再エネ由来電気料金価格高を乗じて試算
※3 過去の自然災害による店舗休業に伴う売上損失額に将来の洪水発生頻度を乗じて試算
※4 2030年度時点のJFRグループ省エネルギー量にエネルギー調達コストを乗じて試算
※5 2030年度時点のJFRグループ不動産収益に環境認証取得ビルの新規成約賃料への影響度合いを乗じて試算
<主なパラメータ>
レジリエンスに対する総括
上記シナリオを前提に気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討した結果、いずれのシナリオ下においても、当社グループが既に実施している施策および計画している施策が、リスクを低減し、機会の実現に貢献できる実効性、柔軟性を有していることを確認しました。
炭素税等導入によるコスト増や自然災害に伴う収益への影響については、財務影響リスクを低減する対策を計画的かつ着実に実行していきます。また、シェアリング・アップサイクルやリユース事業等当社の特性をいかしたサーキュラー・エコノミーに資する事業を当社グループの成長につなげ、脱炭素社会の実現にも貢献していきます。
当社は、気候関連課題のリスクと機会の両面を捉えた取り組みを推進することで、経営のレジリエンスを高めていきます。
④指標と目標
(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標
当社は、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3排出量、および事業活動で使用する電力に占める再エネ比率の2つの指標を定めています。
また、役員報酬制度における業績連動株式報酬を決定する非財務指標の一つとして、Scope1・2排出量削減率目標を設定し、気候関連課題に対する執行役の責任を明確化しています。
※役員報酬制度については、以下をご参照ください。
https://www.j-front-retailing.com/company/governance/governance05.html
(b)温室効果ガス排出量(Scope1・2・3)
当社は、2017年度から、グループ全体の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでいます。当社グループの2024年度Scope1・2排出量は、約6.7万t-CO2(2017年度比65.4%削減)、Scope3排出量は、約225万t-CO2(2017年度比23.2%削減)を見込んでいます。また、再エネ比率は67.2%となる見通しです。なお、2024年度のScope1・2・3排出量および再エネ電力使用量は、第三者保証を取得する見込みです。
<JFRグループ Scope1・2・3排出量実績及び見通し> (単位:t-CO2)
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2017年度 |
2023年度 |
2024年度 |
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実績※1 |
実績※1 |
見通し |
2017年度比 (基準年度比) |
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Scope1 排出量 |
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▲10.1 % |
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Scope2 排出量(マーケット基準) |
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▲70.4 % |
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(ロケーション基準) |
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|
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▲25.7 % |
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|
Scope1・2 排出量 合計※2 |
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▲65.4 % |
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|
Scope3 排出量※3 |
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▲23.2 % |
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|
Scope1・2・3 排出量 合計※2 |
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▲25.9 % |
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再エネ比率(%) |
- |
52.9 |
67.2 |
- |
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※1 LRQAリミテッドによる第三者保証を取得
※2 合計に使用するScope2排出量はマーケット基準にて算定
※3 「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドラインVer.2.7(2025年3月 環境省 経済産業省)」・「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.5(2025年3月)」・IDEAv3.3に基づき算出
(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績
当社は、世界全体の1.5℃目標達成のため、2018年に長期的な温室効果ガス排出量削減目標を設定し、2019年にScope1・2・3排出量削減目標についてSBTイニシアチブによる認定を取得しました。2021年には、2030年のScope1・2排出量削減目標を従来の40%から60%削減(基準年2017年度比)に引き上げ、「1.5℃目標」としてSBT認定を再取得しました。そして、2023年2月には、Scope1・2・3排出量について、2050年までの「ネットゼロ目標」の認定を取得しました。
これらの長期目標達成のため、当社グループは、2019年度から、自社施設における再エネ由来電力の調達を開始し、2020年10月に「RE100※」に加盟し、2050年までに、事業活動で使用する電力に占める再エネ比率100%を目指します。
※事業活動で使用する電力を2050年までに100%再エネにすることを目標とする国際的イニシアチブ
・2030年目標の早期達成と新たな目標の設定
Scope1・2排出量削減率および再エネ比率に関して、2025年2月末時点で、2026年および2030年目標(Scope1・2排出量60%削減、再エネ比率60%)を達成したため、より野心的に2030年目標の再設定を行いました。
また、2050年ネットゼロを着実に進めていくため、新たな中期目標として2040年目標を設定しました。
<JFRグループの気候関連リスク・機会の管理に用いる目標>
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指標 |
目標年度 |
目標内容 |
|
温室効果ガス排出量 |
2050年 |
Scope1・2・3排出量ネットゼロ※1 |
|
2030年 |
Scope1・2排出量73%削減(2017年度比)※2 Scope3排出量40%削減(2017年度比)※3 |
|
|
事業活動で使用する 電力に占める再エネ比率 |
2050年 |
再エネ比率100%※4 |
|
2040年 |
再エネ比率90% |
|
|
2030年 |
再エネ比率75% |
※1 2022年度「ネットゼロ目標」のSBT認定取得
※2 目標見直し前の2017年度比60%削減に対して、2021年度「1.5℃目標」のSBT認定取得
※3 2021年度「1.5℃目標」のSBT認定取得
※4 2020年 RE100に加盟
・インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用
当社は、社内におけるCO2排出量を金額換算することにより、CO2排出量をコストとして可視化し、脱炭素への意識醸成や脱炭素投資と連動した意思決定を促進することを目的として、2024年2月、インターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しました。(社内炭素価格:10,000円/t-CO2)
2024年度には、2026年および2030年の再エネ目標を見直す際にICPを再エネ調達コストとの比較で活用し、検証を行いました。
将来的には不動産投資の投資基準へのICP組み入れ等も視野に入れ、グループ全体での脱炭素経営につなげていきます。
・Scope3排出量削減に向けたサプライヤーエンゲージメント
当社のScope3排出量は、その87%以上をカテゴリ1(調達した製品・サービス)が占めているため、自社努力による削減が難しく、バリューチェーン全体で協働した削減が必要です。
これまで、主要事業会社である大丸松坂屋百貨店では、お取引先様の状況に応じて「排出量の算定」や「削減目標の設定」「排出量に係る一次データ(Scope1・2およびScope3上流)の提供依頼」など対話を進めてきました。(2024年度までの対話は累計121社、一次データ取得合意は72社)
今後、この取り組みを効率よく、かつ加速させていくために、2025年3月、新たな環境データ算定システムに切り替えました。本システムの活用と、お取引先様との連携を強化することにより、Scope3排出量削減に一層取り組んでいきます。
(3)自然関連課題への対応(TNFD情報開示)
近年の課題として、企業には、事業活動における自然への影響を把握し、生物多様性の損失を止め、その回復に貢献することが求められています。百貨店やショッピングセンターなどリテール事業を主軸とする当社グループは、お取引先様やお客様、また地域社会など様々なステークホルダーとの接点を持っています。このつながりをいかして、私たちは、事業を通じて環境配慮型商品の調達や自然との共生を意識したライフスタイルの提案、また環境性能の高い店舗開発等、ネイチャーポジティブ※1に向けた取り組みを推進していきます。そうすることで、当社は、ステークホルダーの皆様と共に生物多様性の保全に貢献し、かけがえのない地球環境を次世代に引き継いでいきます。
※1 ネイチャーポジティブ(自然再興)は、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」という考え方。2022年に採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」にも反映され、2030年、2050年に向けた目標が掲げられた。
①ガバナンス
「
②リスク管理
「
③戦略
(a)自然への依存と影響
当社グループの事業は、農産物、畜産物、水産物、木材や水などの資源に加え、土壌や森林、四季のある気候等、多くの自然の恵み(生態系サービス)を享受することで成り立っています。その一方で、私たちの事業活動は、温室効果ガスの排出や、廃棄物の排出、排水など、自然環境に様々な影響を与えています。当社は、自社の事業活動と自然環境との関係、具体的には両者の「依存」と「影響」について把握し、対応することが重要だと認識しています。
<事業活動と生態系サービスとの関わり>
(b)LEAP※2アプローチを考慮した自然関連課題等の評価
LEAPアプローチとは、TNFDが推奨する、自然との接点、自然との依存関係、インパクト、リスク・機会など、自然関連課題の評価のための統合的なプロセスです。
当社は、2023年度に主要事業会社である大丸松坂屋百貨店が全国各地に有する百貨店15店舗を対象として、LEAPアプローチを考慮した自然関連課題等(依存・影響、リスク・機会)の特定・評価を実施しました。
※2 LEAP : Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのフェーズ
(i)依存と影響の外観(Locate)
TNFDが推奨する「ENCORE」(自然への依存・影響を特定するツール)をベースに、百貨店事業におけるバリューチェーン全体の依存・影響およびその程度を把握するため、ヒートマップを作成し、直接操業(店舗運営や店舗開発)およびバリューチェーン上流(調達)における自然資本への依存・影響の度合いを確認しました。
(ⅱ)リスク・機会を評価する店舗の特定(Locate)
WWF※3の「Risk Filter Suite」(生態系と水のリスク分析ツール)、WRI※4の「Aqueduct」(水リスク分析ツール)等を用いて、各店舗所在地における生態系の状況を確認し、さらに、当社独自の基準(土地建物の所有状況、売上規模等)と合わせ重要性評価を行いました。その結果、大丸心斎橋店を生物多様性保全における特に重要性の高い店舗と特定しました。
(ⅲ)自然に対する依存・影響の要因整理(Evaluate)
大丸心斎橋店での事業活動のうち、バリューチェーンにおける生態系サービスへの依存と影響が大きい「店舗開発」「衣料品・食料品」「包装資材」について関連する要因を整理しました。
(ⅳ)リスク・機会の評価と対応策(Assess・Prepare)
(ⅰ)~(ⅲ)までの大丸心斎橋店における生態系サービスへの依存・影響の整理を踏まえ、事業活動に影響を及ぼす自然関連リスク・機会を特定・評価するとともに、それらに対応する活動について検討しました。また、「自社にとっての重要性」と、「ステークホルダーにとっての重要性」の2つの基準に基づき、事業活動への影響を大・中・小の3段階で定性的に評価しました。
※3 WWF( World Wide Fund for Nature):失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行う100カ国以上で活動している環境保全団体
※4 WRI (World Resources Institute):地球の環境と開発の問題に関する政策研究と技術的支援を行う独立機関
<リスク・機会の評価と対応策>
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項目 |
リスク・機会の内容 |
影響度 |
活動内容 |
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|
リスク |
物理 |
急性 |
・異常気象、自然災害増加による店舗休業に伴う収益の減少 |
大 |
・BCP整備による店舗・事業所のレジリエンス強化 ・店舗の防災性能の向上 |
|
慢性 |
・気温上昇に伴うエネルギーコストの増加 |
中 |
・高効率機器への適切なタイミングでの更新 |
||
|
・不作、品質低下、収穫量の減少に伴う農水産物の取り扱い商品数の減少による収益の不安定化 ・気温上昇や降雨パターン変化による来店客数の減少、売れ筋の変化 |
中 |
・重要な食品原材料の調達リスクについての論議と戦略策定 |
|||
|
移行 |
政策・規制 |
・温室効果ガス排出量に関する規制強化によるコストの増加 |
中 |
・店舗における積極的な省エネ施策や再エネ切り替え拡大による温室効果ガス排出量削減 |
|
|
市場 |
・建材不足による店舗開発(外装・内装、増改築含む)の困難化、建築関連コストの増加 |
小 |
・国産間伐材の使用拡大 |
||
|
・サステナブルな商品に対する消費者の需要の高まりに応えられないことによる収益の減少 |
大 |
・認証商品等、環境配慮型商品の取り扱い拡大 ・FSC認証等、環境配慮型包装資材への切り替え ・スマートラッピング、簡易包装の選択推進 |
|||
|
評判 |
・持続可能な方法で生産された商品の調達が十分ではないことによるレピュテーションの低下 |
中 |
・認証商品の取り扱い拡大 ・スマート納品(納品回数の削減) |
||
|
・廃棄物の増加や適切な処理がなされないことによるレピュテーションの低下 |
中 |
・食品廃棄物削減のためのAI需要予測サービスの導入 ・食品廃棄物削減に向けた従業員によるコンポストコミュニティ活動 ・プラスチック資源循環法への適切な対応 |
|||
|
機会 |
資源効率 |
・効率的な水利用に伴うコストの低減 |
小 |
・雨水、中水の利用 ・節水機器の活用 |
|
|
製品・ サービス |
・持続可能な資材調達による不動産開発や、エネルギー使用量削減に伴う建物の資産価値の向上 |
大 |
・調達ルールの整備と各種認証の獲得(CASBEE、ZEB等)を促進し、対外的に訴求 |
||
|
・認証品/持続可能な方法で生産された商品の取り扱い増加に伴う収益の増加 |
大 |
・認証商品の取り扱い拡大 ・お客様への認証商品の周知と啓発 |
|||
|
市場 |
・暴風雨や台風等の緩和による店舗運営の継続・維持 |
大 |
・生態系サービスを享受するための環境整備(立地、植生、気候特性を把握したうえでのルール作り等) |
||
|
・生物多様性や景観に配慮した不動産開発、店舗運営(土地利用)に対する集客の増加 |
中 |
・屋上緑化、屋上都市養蜂の実施 |
|||
|
・資源を循環するサステナブルなライフスタイルを提案することによる新規顧客の獲得に伴う収益の拡大 |
中 |
・ファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス」をはじめとしたシェアリング・アップサイクル・リユース等サーキュラー型ビジネスの拡大 |
|||
|
資本フローと 資金調達 |
・建物の環境価値向上による資金調達力の向上 |
大 |
・新規開発物件の環境認証取得 ・グリーンボンド等を活用した資金調達 |
||
|
評判 |
・屋上庭園等、憩いの場の提供によるレピュテーションの向上 |
中 |
・屋上緑化、屋上都市養蜂の実施 |
||
|
・循環型のビジネス推進によるレピュテーションの向上 |
中 |
・廃プラや食品廃棄物の資源循環に向けた他企業とのパートナーシップの構築(例:POOLプロジェクト、国産SAFプロジェクト等) |
|||
|
生態系保護・ 復元・再生 |
・商品(特にリスクコモディティ)のトレーサビリティを向上させることによるコンプライアンスコストの低減 |
小 |
・アセスメントの実施等、お取引先様とのエンゲージメント強化 |
||
|
自然資源の 持続可能な 利用 |
・紙製品の使用削減、代替資材利用増加に伴う店舗ブランド価値の向上 |
小 |
・FSC認証等、環境配慮型包装資材への切り替え ・ペーパーレス化の実施 |
||
④指標と目標
当社グループは、生物多様性損失と気候変動は切り離せない課題であると認識しており、両者の包括的な解決を目指し、資源を効率的に循環させるための指標および目標を設定し、取り組みを進めていきます。
<JFRグループの自然関連リスク・機会の管理に用いる指標と目標>
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指標 |
目標年度 |
目標内容 |
|
温室効果ガス排出量 |
「(2)気候関連課題への対応(TCFD情報開示)④指標と目標」をご参照ください。 |
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|
再エネ比率 |
||
|
食品リサイクル率 |
2030年 |
85% |
|
新規開発物件の環境認証取得率 |
2030年 |
100% |
2024年度の主な取り組み
・TNFDアダプターへの登録
当社は、2024年10月、TNFDアダプターに登録しました。TNFDの情報開示フレームワークに基づき、当社グループの事業と自然資本の関係性 (依存と影響) やリスク・機会の整理を行い、TNFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」の4つの視点から積極的な情報開示を進めていきます。
・リユース事業の立ち上げ(買い取り)
当社は、2025年3月、株式会社コメ兵と合弁会社「株式会社 JFR & KOMEHYO PARTNERS」を設立し、リユース事業を立ち上げました。2025年夏以降、大丸、松坂屋、パルコに買取専門店「MEGRÜS」(めぐらす)を順次展開する予定です。価値あるものが人から人へ受け継がれ、長く大切に使われることを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
・カーボンフットプリントを活用した環境貢献度の可視化
大丸松坂屋百貨店のファッションサブスクリプション事業「AnotherADdress(アナザーアドレス)」は、株式会社BiSUSと連携し、衣服1枚を1回レンタルする際の温室効果ガス排出量の定量化に取り組みました。アナザーアドレスを利用してファッションを楽しむ中で自然とアクションポイントが貯まり、ステージごとにお客様の温室効果ガス削減貢献度がわかる”AAD SUSTAINABILITY ACTION”をスタートしました。
※詳細は、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.anotheraddress.jp/sustainability
(4)人的資本に対する考え方
当社は、2030年に目指す姿として、リテール事業を中心に3つの共創価値「感動共創」「地域共栄」「環境共生」を提供し続ける“価値共創リテーラーグループ”への変革を掲げています。未来を切り拓き、目指す姿を実現していくのは、当社グループの従業員一人ひとりの力に他なりません。当社は、従業員を最も重要な価値共創パートナーと位置づけ、一人ひとりのWill(意志・意欲、内発的動機)に寄り添いながら、会社と従業員が相互に支援・貢献することによって、共に成長していくことを目指しています。
<会社と従業員の価値共創の概念>
(a)人財戦略の全体像
当社は、変革期と位置付けた今中期経営計画において、新たな成長パターンに転換するべく、積極的な人財投資を行い、将来の飛躍に向けた土台作りを進めていきます。
具体的には、当社が過去、全社的な合理化施策によって成し遂げた利益成長という成功体験から脱却し、多様な事業を持つJFRグループとしての総合力を発揮すべく、「人財管理」から「人財開発」へ、「オペレーション指向」から「マーケット指向」へ、「個社最適」から「グループ最適」へ、人財戦略の転換を図っていきます。
「価値共創リテーラー」の実現に向けては、グループ共通の人事領域における基本となる考え方である「人財マネジメントポリシー」を策定するとともに、経営戦略に対応した人財ポートフォリオへの転換を図ります。さらに人事各領域にて実効性のある施策を実施し、人財戦略のアウトカムとして従業員エンゲージメントおよび一人当たり生産性の向上を目指します。
(b)人財マネジメントポリシー
当社は、価値共創に必要な従業員の行動・マインド変革を進めるため、グループ共通の人財マネジメントポリシー「巻き込むチカラを、面白がるココロを。」を策定しました。本ポリシーを軸に、「自らのWillを原動力とする人財」「組織を越え、つながる人財」「仕事を楽しむ人財」の採用、育成、配置、評価などを実施していきます。
(c)「人財力主義」に基づく人事マネジメント
当社は、2019年度から、従業員が内包する目に見えない人財力(人財価値、性格、価値観、気質、志向・趣味)を可視化する、当社独自の「人財力主義」に基づく人事制度運用を行っています。この人財力主義に基づく人事マネジメントを継続しながら、業務遂行を通じて観察可能な知識・スキルに基づく成果発揮状況や行動・マインドを評価・サーベイ等によって把握することで当社全体における価値共創を推進していきます。
|
「人財価値」は、どのような状況であっても着実な成果・貢献に繋がる再現性・汎用性の視点で構成し(意志・意欲、学習力、革新・創造力、影響力、折衝力、育成力)、ステージごとに求めるレベルを設定しています。 |
<人財力の定義>
|
①ガバナンス
当社は、人財戦略に関する方針や具体的な施策を、業務執行の最高意思決定機関であるグループ経営会議で審議・承認しています。
これに対し、取締役会は、グループ経営会議で承認された内容の報告を受け、目標設定、対応方針、実行計画等について論議・監督を行います。
②リスク管理
今後、労働人口の減少による働き手の不足、および人財の流動性の高まりにより、人財獲得競争が益々激化し、人財流出の増加や優秀な人財の獲得が困難となる場合、業績への影響のみならず、当社が2030年に目指す姿「価値共創リテーラーグループ」への進化に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、人財戦略として、変革リーダーの育成、従業員による自発的な学びの支援、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進などに取り組むことにより、従業員が成長と働きがいを実感できる環境を整えていきます。またすべての従業員が心身ともに健康でいきいきと働くことができるよう、従業員一人ひとりに寄り添いながら、働きやすい職場環境づくりを進めていきます。
③戦略
当社は、人財マネジメントポリシーを軸に、従業員一人ひとりの力を最大化する取り組みによってこれをグループ全体の力につなげるとともに、経営戦略に対応した人的リソースの強化と再配分を通じて人財ポートフォリオの転換を図ることで、価値共創リテーラーの実現を目指します。
(a)価値共創力の強化
現状の不透明な経営環境の中、当社が飛躍・成長を実現していくためには、全社で「価値共創力」を高めていくことが必要であると考えています。
「価値共創力」とは、これまで当社が主たる評価軸としてきた、スキル・知識に基づく成果発揮だけではなく、多様なステークホルダーと協働し、新たな価値を共創するために必要な行動・マインドも併せ持つ力であると定義しています。さらに具体的な能力要件、コンピテンシー、評価方法などは人財マネジメントポリシーである「巻き込むチカラを、面白がるココロを。」に沿ったものを整備していきます。
その一例として、CVC・ファンドを通じた外部研修型出向、デジタルコア人財育成、企業風土醸成企画「RED」といった取り組みの規模を拡大し、転換期における価値共創事例の創発を促進することにより、将来の飛躍を確かなものとするための基盤を創りあげます。
(b)マネジメント変革
従来型の階層別研修を継続しながら、評価スキル・フィードバックスキル向上および意識変革に取り組みます。また、効果的なマネジメントを実施するための適正なマネジメント範囲を検証し、必要な是正を行います。
(c)グループ人財交流
百貨店、SC、デベロッパー、決済・金融事業など多様なグループ企業を持つ当社の特色を生かし、グループ公募も含めた人財交流を積極的に行っています。今後、ビジネスモデルや社風の異なるグループ会社の人財交流をさらに活性化し、人的ネットワーク・ノウハウの融合やグループ最適・シナジー発揮につなげるための仕組みやルールを整備していきます。
(d)社内環境整備
・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
多様な個性を取り入れ、組織の力に変換していくことが持続的な成長の実現につながると考えています。そのために、若手の抜てき登用からミドル・シニア層の活性化まで、全ての従業員がその特性を活かして活躍できる環境を整えていきます。特に、従業員の半数以上が女性である当社グループにおいては、「女性活躍推進」をさらに進めることが不可欠です。これまで取り組んできた職場環境整備・働き方改革を背景とした積極的な登用を実施した結果、2023年度22.5%であった女性管理職比率は、2024年度には26.2%に上昇しました。2025年度はさらに全社的な意識改革につなげていくため、全従業員を対象に就業観やキャリア展望をヒアリングする「従業員アンケート」を実施し、この結果をもとに、社内外ネットワーキング活動、メンタリング制度、アンコンシャス・バイアス研修などを検討・実施していきます。
・人財確保および強化領域への重点配置
当社が「価値共創リテーラーグループ」へ進化を遂げるためには、3つの共創価値を創り出せる人財の確保・拡充が欠かせません。これに向けて当社は、人事体制の強化と採用チャネルの拡大を行い、採用力の向上を図るとともに、生産性の高い事業や新規事業を含め今後強化していく領域への人的リソース配分を強化していきます。
具体的には、新卒・若手人財に加え、高い専門性を持つ不動産・金融・財務等の人財、また、リテール事業においては、顧客ニーズをくみ取り新たなコンテンツやサービスを創造できる人財、デジタルトランスフォーメーションを牽引するデジタル人財等を中心に採用および配置を進めていきます。
また、これと並行して職場環境整備やオンボーディングの強化等にも取り組み、人財の定着支援を行います。
・心と身体の健康増進
従業員がエネルギー高く挑戦し続けるには、心と身体が健康であることが前提です。定期的にサーベイを行い、その結果を経営層・部門・従業員それぞれと共有し、改善につながるアクションを立案・実行するPDCAサイクルを丁寧に回していくことを通じて、従業員の創造性・生産性の高いアウトプットを支えていきます。
・人事体制の強化
従業員一人ひとりが持てる力を最大限に発揮するためには、人事部門の役割がこれまで以上に重要となります。採用・配置・育成・評価などの現場課題にスピーディーかつ適切に対応するべく、人事部門の専門性を高めるとともに、業務の効率化を進めます。また、経営層や事業部門責任者のビジネス・パートナーとして貢献できる体制づくりに取り組みます。
④指標と目標
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指標 |
2024年度実績 |
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全労働者 |
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キャリア開発や女性およびマネジメント向け研修など、キャリアロスを防ぐための取り組みを強化し、差異を縮小させていく |
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正規雇用労働者 |
75.0% |
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非正規雇用労働者 |
75.5% |
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※1 管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金差異は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規程に基づき算出したものです。
※2 特に記載がない限り、当社グループの集計です。
※3 労働者の男女賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金割合を示しています。
※4 2025年5月時点の指標と目標であり、今後の人財戦略に応じて、追加、見直しをする可能性があります。
(5)人権尊重
昨今、サプライチェーン上で発生する強制労働や差別など人権課題への関心が高まっており、企業には人権を尊重した事業活動が求められています。 当社は、国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、あらゆる事業活動の土台に人権の尊重を据え、人権デューデリジェンスに継続的に取り組むことで、従業員やお取引先様と共に人権を尊重した事業活動の実現を目指しています。
①ガバナンス
(a)人権方針
当社は、従業員やお取引先様と共に社会的責任を果たしていくための遵守事項として、2019年に「JFR行動原則」「JFRお取引先様行動原則」を策定し、その中に「人権方針」を定めています。人権方針は、責任あるサプライチェーンの構築を目指して当社が事業活動の中で人権を尊重した適切な対応を行うための考え方を示したものであり、すべての役員と従業員に適用され、また、お取引先様にも理解・遵守を働きかけています。
※ 人権方針については、以下をご参照ください。
https://www.j-front-retailing.com/sustainability/pdf/diversity04/Human_rights_policy.pdf
(b)推進体制
「(1)JFRグループが目指すサステナビリティ経営 ①ガバナンス」をご参照ください。
(c)人権デューデリジェンス
当社は、人権方針に基づき、人権デューデリジェンスを継続的に実施しています。2020年からサプライチェーン上の人権への悪影響を特定・評価し、人権への悪影響の防止・低減に対処しています。また、2021年からはお取引先様アセスメントを実施し、必要に応じて取引先との対話を実施しています。
<人権デューデリジェンスの全体像>
②リスク管理
(a)リスクの特定・評価
当社の事業活動に関連して負の影響を受け得るステークホルダーの人権リスク(人権への潜在的な悪影響)については、事業全体のバリューチェーンの整理と事業内容ごとに想定される人権課題を網羅的に洗い出し、それぞれの深刻度(規模、範囲、救済困難度)および発生可能性の視点で評価したうえで、重要リスクを特定しました。事業会社の担当部門や弁護士を含む外部専門家も加わって検討を重ねることで、より実質的な人権リスクの特定・評価につなげるよう努めています。
<JFRグループにおける重要な人権リスク>
③戦略
(a)考え方
当社はグループビジョン“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”の実現に向け、事業を通じて環境・社会課題の解決を図るサステナビリティ経営を基軸に、2030年に目指す姿として、リテール事業を中心に「感動共創」「地域共栄」「環境共生」の3つの共創価値を提供し続ける“価値共創リテーラー”であることを掲げています。
これを実現していくためには、様々なステークホルダー(お取引先様やビジネスパートナー、従業員や地域社会など)の皆様と共に、人権尊重を含むサプライチェーン上の社会的責任を果たしていくことが、持続可能な社会の実現と企業の持続的成長の基盤として欠かせないと考えていることから、マテリアリティに「価値共創するパートナーを増やす」を特定しています。人権尊重については、人権デューデリジェンスに継続的に取り組み、その実効性を高めていくことを目指しています。
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マテリアリティ |
コミットメント |
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価値共創するパートナーを増やす |
持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティに対する思いや考えを共有し、人権デューデリジェンスなどの社会的責任とともに、「感動共創」「地域共栄」「環境共生」の価値創出に向けたパートナー基盤をつくる。 |
(b)具体的な活動
(i)人権リスク防止・軽減の取り組み
・JFRお取引先様行動原則の浸透
当社は、人権方針を含む「JFRお取引先様行動原則」を2019年に策定し、お取引先様に対しては、自社の調達先も含めて、本原則をご理解、遵守いただけるよう働きかけを行っています。
※JFRお取引先様行動原則については、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.j-front-retailing.com/sustainability/supply-chain/supply-chain02.html
・従業員教育
当社は、2020年に「ハラスメント撲滅宣言」を策定し、人権リスクのひとつと捉えているハラスメントの撲滅と未然防止に努めています。アルバイトや派遣社員等を含む従業員を対象に、毎年ハラスメントアンケートを実施し、その結果を踏まえた管理職向けの人権研修を実施しています。また、従業員一人ひとりが人権の尊重に対する見識を深め、自分ごととして取り組むことができるよう、グループ全従業員を対象としたeラーニングを2023年から実施しています。
・ハラスメント相談窓口
当社は、ハラスメントの撲滅と未然防止に向け、「ハラスメント防止対策委員会」「ハラスメント相談窓口」をグループ各社に設置し、問題発生時の迅速な対応や再発防止に取り組んでいます。
・内部通報制度(JFRグループコンプライアンス・ホットライン)
当社の内部通報制度は、全役員・従業員および当社で勤務する全ての人(アルバイト・お取引先派遣者を含む)が、当社内における人権侵害や腐敗行為を含むコンプライアンス上の問題についてコンプライアンス委員会に直接通知し是正を求めることが可能です。
通報窓口は、社内のほか社外(顧問弁護士)にも設置し、公益通報者保護法に則り、通報者の秘密保護のほか、通報者に対する不利益取り扱いの禁止について、社内規程で厳格に規定しています。
(ⅱ)人権に関するアセスメントの実施
当社は、サプライチェーン全体での取り組みが求められる事項について、お取引先様の取り組み状況を確認するアセスメントを2021年から実施しています(原則として隔年実施)。2回目となる2023年は、人権尊重に重点を置いて実施しました。
※アセスメント詳細については、以下をご参照ください。サステナビリティレポート2024 p40
https://www.j-front-retailing.com/ir/library/pdf/sustainability/2024/J_FRONT_2024_J.pdf
④指標と目標
(a)人権への取り組みに対する指標と目標は以下のとおりです。
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指標 |
目標 |
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2026年 |
2030年 |
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人権アセスメント結果 (B評価以上の割合) |
35% |
45% |
※2023年度実績31.7%
(b) 2024年度の主な取り組み
・取引先との対話の実施
2023年度のアセスメント結果を踏まえ、グループ全体で計112 社と対話(直接対話だけではなく、メールでのやり取り含む)を実施し、事業活動におけるビジネスと人権の取り組みの重要性について認識を共有しました。
・お取引先様向けWEBセミナーの実施
2023年度のアセスメントでは「ビジネスと人権に関する基本的な枠組みがわからない」「具体的に何をすればよいか、情報・知識面でのサポートが欲しい」というご意見が多くあったことから、当社は、2025年1月、外部有識者によるWEBセミナーを初めて実施し、人権尊重の重要性や基礎知識の理解促進を図りました(63社参加)。
・従業員向けeラーニング
グループ全従業員を対象としたビジネスと人権に関するeラーニングを実施しました(2024年12月実施、受講率:83.6%)。
・第三者レビューの実施
当社は、人権デューデリジェンスへの取り組み、2023年アセスメントの対象範囲や質問内容、また実施後の対応等について、外部有識者による客観的な視点でのレビューを受けました。
※詳細については、以下をご参照ください。サステナビリティレポート2024 p42
https://www.j-front-retailing.com/ir/library/pdf/sustainability/2024/J_FRONT_2024_J.pdf
・カスタマーハラスメントに対する基本方針
大丸松坂屋百貨店は、2024年12月、カスタマーハラスメント対応方針を策定しました。それまでは、社内のカスタマーハラスメント対応ガイド(2022年策定)に基づいて各店舗で研修を実施し、アルバイトや取引先派遣者を含む従業員をカスタマ―ハラスメントから守るための体制構築や具体的な対応内容の周知を行ってきましたが、これを方針として明文化しました。
※カスタマーハラスメント対応方針については、以下のウェブサイトをご参照ください。
https://www.daimaru-matsuzakaya.com/customer-harassment.html
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年5月30日)において当社グループが判断したものです。
(1)リスクマネジメントの考え方と体制
・リスクマネジメント
当社グループは、リスクを「企業経営の目標達成に影響を与える不確実性であり、プラスとマイナスの両面がある」と定義しています。そして、リスクマネジメントを「リスクを全社的な視点で合理的かつ最適な方法で管理することにより企業価値を高める活動」と位置づけ、リスクのプラス面・マイナス面に適切に対応することにより、企業の持続的な成長につなげています。
そして、当社にとって重要度の高いリスクに対し、「リスクテイクし事業機会と捉えて推進していく戦略・施策」、「リスクを脅威と捉えてコントロールしていく戦略・施策」を検討し、リスクを戦略の起点と位置づけて対応を進めています。
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・リスクマネジメント体制
当社は、代表執行役社長の諮問機関として、代表執行役社長を委員長、メンバーを当社執行役及び、主な事業会社の社長とするリスクマネジメント委員会を設置しており、リスクの抽出及び評価、戦略に反映させるリスクの決定など重要事項を審議し、リスクマネジメントを経営の意思決定に活用しています。なお、同委員会での審議内容については、適時に取締役会に報告します。
同委員会には、リスク管理担当役員を長とする事務局を置き、委員会で決定した重要な決定事項を事業子会社に共有し、ERM(全社的リスクマネジメント)を推進しています。また、リスクを戦略の起点と位置づけ、リスクと戦略を連動させることにより、リスクマネジメントを企業価値向上につなげるよう努めています。
なお、効果的なリスクマネジメントを行うため、次のとおり3ラインを構築しています。
・第1ライン(事業子会社などの業務執行部門):自らリスクの特定及び必要な対策を行う。
・第2ライン(持株会社の各部門):業務執行部門から独立した立場でリスクマネジメントの支援・指導・モニタリングを行う。
・第3ライン(内部監査部門):業務執行部門及び持株会社の各部門などから独立した立場でリスク管理機能及び内部統制システムの有効性について監査を行う。
第2ラインによる支援とモニタリング、第3ラインによる独立した監査によって、第1ライン(業務執行部門)は、遅滞なく、また適正な手続きで、リスク対応を主体的に遂行していきます。
(2)プロセスとリスク抽出方法
当社グループでは、下記のプロセスにより、リスクマネジメントを推進しています。具体的には、外部・内部環境分析や、取締役、経営層や外部有識者および実務部門の認識をもとに当社グループにとって重要度の高いリスクの抜け漏れが生じないように努めています。
中期的に当社のグループ経営において極めて重要度が高いものは、「JFRグループ重要リスク(以下 グループ重要リスクと呼ぶ)」と位置づけ「グループ中期経営計画」の起点としています。
また、「グループ重要リスク」を年度視点に分解・詳細化したもの、および当該年度で個別対応が必要なリスク(主にオペレーションリスクや制度対応など)を合わせて「JFRグループ年度リスク(以下 グループ年度リスクと呼ぶ)」とし、優先度をつけて対応策を実行しています。
「グループ重要リスク」「グループ年度リスク」は、リスクを取り巻く環境変化と対応策の進捗についてモニタリングを行い、リスクマネジメント委員会で論議後、その内容を取締役会に報告しています。
「リスクの抽出方法とPDCA」
当社では、「グループ重要リスク」、「グループ年度リスク」を策定した後、事業会社に共有しています。各事業会社ではグループのリスクを参考としつつ、個社特有のリスクを抽出し、事業会社ごとに「重要リスク」、「年度リスク」を策定しています。
なお、JFR、各事業会社は、ともにリスク対応策を年度で策定し、半期ごとに進捗状況をモニタリングしています。併せて、リスク自体も再評価し、重要リスクの見直し、次年度リスク策定に繋げています。
下表は当社グループが、中長期にわたりJFRグループの成長・存続を左右する最重要のリスクと位置づけている「グループ重要リスク」です。
その中でも、「既存事業における業界構造の変容」「人財獲得競争の激化」「テクノロジー革新の加速」「環境課題の重要性の高まり」は、当社のグループ経営に及ぼす影響が極めて大きいため、中期経営計画において最優先で対応すべきリスクと位置づけています。
また、本中期経営計画期間(2024~2026年度)においては、当初12のグループ重要リスクを設定していましたが、中期経営計画がスタートして半年経過後、モニタリングや環境変化を捉えリスク評価を実施した結果、影響度を鑑みて、「グループ年度リスク」としていた「人権尊重の重要性の高まり」のリスクを「グループ重要リスク」として追加し、13のリスクに対応していきます。
「グループ重要リスクの全体像」 *は、影響が極めて大きく最優先で対応しているリスク
(3)リスクについて
①戦略上のリスク
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既存事業における業界構造の変容 |
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影響度:非常に大 |
将来の見通し: |
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(非常に拡大) |
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リスク認識 |
業界内での競争激化、ECをはじめとした他社・他業態の参入、取引先との関係の変化、消費マーケット自体の縮小や消費者の行動変容の進展、さらに固定費の増加・変動など、事業運営を行う上でベースとなる業界構造や収益構造は変容しています。当社グループの主要事業である百貨店事業の業界動向は長期的な縮小傾向にあり、従来のビジネスモデルの継続のみでは収益の維持や拡大は困難な状況です。 構造変化に応じた新たな事業モデルの再構築や、事業ポートフォリオの組み換えが収益拡大のチャンスとなります。一方、適切に対応できない場合には、業績が悪化し、固定資産の減損が必要となるなど、会計・税務上のリスクが生じる恐れがあります。 |
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対応策 |
当社グループは、本中期経営計画期間を長期的成長に向けた変革期と位置づけ、主力のリテール事業の進化により利益成長を図るとともに、2030年を見据え、主力事業に加えてデベロッパー事業への先行投資、成長戦略投資を強化します。 成長戦略投資では、既存事業の変革(海外・デジタルなどビジネス領域の拡大、コンテンツ・サービスの保有、開発を推進)する他、ポートフォリオの組み換えを図るべく、将来像を踏まえたM&Aや事業継承ファンドやCVCによる出資先と協同でのオープンイノベーションの推進を実施していきます。 <ご参考>これまでの具体的な取り組み事例 次世代マーケットニーズを捉えた名古屋店改装 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/79077e86e38e6b07e80154733ad41499ffda626c.pdf 事業継承ファンド「Pride Fund」を設立 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/08fd225bc61344364d26a814fadef8008d1f00f4.pdf |
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人財獲得競争の激化 |
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影響度:非常に大 |
将来の見通し: |
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(非常に拡大) |
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リスク認識 |
労働力人口の減少による働き手の不足、および人財の流動性の高まりにより、人財獲得競争は熾烈を極めています。持続可能な経営の必須条件は人財の継続的な確保であり、また、事業ポートフォリオ変革には、これと連動した動的な人財ポートフォリオの実現が不可欠です。 人財の質と量の継続的な確保に向けて、適切な投資・教育を行い、新たな人財獲得(採用)と既存人財のリカレント、リスキリングによる社内流動性の向上が求められています。 |
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対応策 |
当社グループは、経営戦略と一体となった新たなグループ人財戦略の推進に向け、新たにグループ共通の「人財マネジメントポリシー」を制定しました。これに基づき、特に価値創造力や部下育成力の向上、専門人財の採用強化、女性活躍の推進などに積極的に取り組みます。グループ内の人財交流を活発化し、多様な人財の活躍機会の拡大、人的ネットワークやノウハウの融合を図っていきます。 <これまでの具体的な取り組み事例> 専門人財採用 2024年 207人、2023年 218人、2022年161人 女性管理職比率 2024年 26.2%、2023年 22.5%、2022年22.2% ※人的資本に対する当社の考え方の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方および取組 (4)人的資本に対する考え方」をご参照ください。 |
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テクノロジー革新の加速 |
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影響度:非常に大 |
将来の見通し: |
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(非常に拡大) |
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リスク認識 |
ビジネスに大きなインパクトを持つテクノロジー革新の中でも、生成AIは特に活用範囲が広く、業務のあり方を変えつつあります。また、新たなデジタル技術やサービスは、生活者のライフスタイルや価値観・コミュニケーションを変化させ、新たに主要な市場へ成長する可能性があるとともに、既存ビジネスモデルにも影響します。 技術を活用して新たなビジネスモデルを構築することにより、変化する消費者行動に適応し、収益向上に寄与できる一方、適切な対応ができない場合には、事業の変革対応の遅れや、ビジネス機会の喪失・業務効率の低下などの可能性があります。 |
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対応策 |
当社グループでは、2024年春、オリジナル生成AIチャットを導入し、業務の効率化や効果性向上を図っています。また、百貨店・パルコ各店舗でのXR・VRを活用したイベント実施やアバター販売の開始など、リアルとデジタルを融合した新たな体験価値創出のビジネスモデルにトライしています。また、当社グループは、「グループシステムフィロソフィー」を新たに制定し、フィロソフィーに沿ったシステムアーキテクチャに転換することで新たなテクノロジーを効率的に取り込めるシステム環境作りに取り組んでいます。 <これまでの具体的な取り組み事例> 大丸東京店で無人店舗の試験運営 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/20250129poc.pdf NFTチケット売買プラットフォーム「チケミー」に出資 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/fe1f42803e9d5b116d9b753e7d6f3d3813013423.pdf |
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環境課題の重要性の高まり |
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影響度:非常に大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク |
地球温暖化や海洋汚染、また、生物多様性の喪失など地球環境を取り巻く環境問題は深刻化しており、長期間にわたり企業の事業活動に影響を与えると認識しています。 企業には、これらの問題への対処だけではなく、課題解決を起点としたビジネスの創出など、持続可能な環境・社会づくりに向けた積極的な役割・貢献が求められています。 |
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対応策 |
当社は、2050年ネットゼロ実現に向けて、「温室効果ガス排出量削減」と「サーキュラー・エコノミーの推進」に取り組んでいます。省エネの徹底や再生可能エネルギー(再エネ)切り替え拡大による温室効果ガス排出量削減、3R(リデュース、リユース、リサイクル)強化やサーキュラー型ビジネスの拡大等を通じた資源循環を推進しています。また、当社は2019年より店舗の再エネ切り替えを順次拡大しています。計画を上回る形で推移しており、2030年目標を75%(現60%)に見直すとともに、新たに2040年目標90%を掲げました。 <これまでの具体的な取り組み事例> 株式会社コメ兵と合弁会社「株式会社 JFR & KOMEHYO PARTNERS」を設立し、リユース事業を立ち上げ https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/8caa4fcdaf9c80745a8e7c99d636eb8e38f4dbcc.pdf 食廃油から国産SAF製造を目指す「Fry to Fly Project」参加 https://www.daimaru-matsuzakaya.com/assets/news/fry_to_fly_project_2.pdf 不要な衣料品等を回収し、再資源化・再利用する取り組み「エコフ」 https://dmdepart.jp/ecoff/about/ ファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス」 https://www.anotheraddress.jp/ ※環境問題への対応の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動課題への対応(TCFD情報開示)及び(3)自然関連課題への対応(TNFD情報開示)」をご参照ください。 |
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人権尊重の重要性の高まり |
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影響度:非常に大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
欧州を中心に人権デューデリジェンスに関する法整備が進む中、日本企業においても、自社従業員や取引先、消費者、地域住民など、事業に関わるすべてのステークホルダーが人権侵害を受けるリスクを認識し、人権尊重に取り組むことが求められています。 強制労働や児童労働、ハラスメント、長時間労働や、賃金の未払い、劣悪な労働環境などの人権リスクを予防・軽減し対処することは経営のリスク低減につながる一方で、対応を怠るとレピュテーションの低下や不買運動などを引き起こし、企業価値を喪失する恐れがあります。企業は、人権尊重に積極的に取り組むことで、ビジネス機会の創出やステークホルダーの支持を獲得し、企業価値向上に繋げていくことができます。 |
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対応策 |
当社は、国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、あらゆる事業活動の土台に人権尊重を据え、「人権方針」のもと、人権デューデリジェンス*を継続的に実施しています。 *バリューチェーン上における人権への負の影響を特定・防止・軽減し、取り組みの実効性を評価し、その対処について情報開示していく一連の取り組み <これまで具体的な取り組み> ・人権リスクについて定期的な見直し ・人権方針を含む「JFR行動原則」「JFRお取引先様行動原則」の策定および従業員やお取引先様への理解浸透 ・お取引先様の人権尊重の取り組み状況を確認するアセスメントの実施と対話 ・従業員へのビジネスと人権に関する知識と理解を深める取り組みを継続実施 ※人権尊重への対応の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 人権尊重への対応をご参照ください。 |
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少子高齢化と所得格差の拡大 |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
人口減少により日本の消費人口は縮小しており、また中長期的には、消費の中心は団塊ジュニアを核とする世代からミレニアム世代、Z世代(以下、MZ世代)へと交代が進展していきますが、MZ世代の価値観、行動様式は他の世代とは大きく異なる面を持っています。また、長寿命化の中、アクティブシニア市場が拡大すると見られ、従前の高齢者とは異なるライフスタイルを嗜好するシニア層にも適した事業運営が求められています。そして、世界的に所得格差は拡大、日本においても二極化が進展しており、ターゲットとする顧客に適切に対応するスピードと戦略性が求められます。 |
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対応策 |
消費の多様化が進み、求める商品やサービスが画一的ではなくなった今、当社グループは、属性に関わらず自身のこだわりや価値観に合う付加価値には高額でも対価を払う高質高揚消費層(特にMZ世代、富裕層、インバウンド等が顕著)に、新たな価値を提供していきます。そのため、当社の強みである優良な顧客基盤の深耕に加え、海外顧客、消費を牽引していくMZ世代など新たな顧客との繋がりを拡大していきます。当社が事業基盤を持つ7つの重点エリア*において、グループシナジーの発揮による顧客基盤の拡大、地域価値の最大化のため、百貨店、SC事業を中心に、デベロッパー事業の推進、決済・金融事業の基盤拡大を図っていきます。 *札幌、東京、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡 <これまでの具体的な取り組み> 顧客基盤拡大に向けたグループ内カード(大丸松坂屋、GINZA SIX、パルコなど)の集約 eスポーツチーム“SCARZ”運営の㈱XENOZ買収、店舗で共同イベントの実施 https://www.scarz.net/news/24041901/ |
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生活者の価値観や行動の多様化 |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
生活者の価値観の変化は、消費の主役の世代交代の進展とともに一層顕著となっていきます。消費トレンドは、所有から利用へ、便利で役立つものから情緒的で物語性のあるもの、今この瞬間しか味わえない体験(トキ消費)、競争から共創など多様化しています。また、「持続可能な経済活動」も求められています。消費行動プロセスも多様化しており、消費やサービスをオンライン上で完結したい消費者も現れています。合わせて足許の物価高やエネルギー価格の変動は、お客様の消費意欲にも影響しています。 このような消費行動・ニーズの変容に適切に対応することができれば、当社ブランド力の向上や収益拡大のチャンスともなります。 |
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対応策 |
上記のようなマーケット変化や次世代顧客に対応するため、国内外顧客から支持の高いラグジュアリーブランドの継続強化に加え、ライフスタイル提案、美や健康などの改装投資を実施し、各地域での店舗競争力を図ります。松坂屋名古屋店ではラグジュアリーをはじめ新たなファッションやライフスタイルを提案する大型改装を実施し、PARCOにおいては、渋谷・心斎橋での大型改装や、名古屋店でのエンタテイメント、POPカルチャーゾーンの導入などを予定しています。また、PARCOでは、韓国の現代(ヒュンダイ)百貨店と戦略協業に関する基本合意を締結しました。韓国ファッション、コンテンツやカルチャー展開の他、将来的に東京カルチャーや日本発コンテンツの韓国展開を検討していきます。加えて、サーキュラー・エコノミーに貢献できる事業として、コメ兵社と「(株)JFR &KOMEHYO PARTNERS」を設立して、リユース事業に参入しました。 <これまでの具体的な取り組み事例> PARCO 韓国「現代(ヒュンダイ)百貨店」と戦略的協業 https://www.parco.co.jp/pdf/jp/store/storage/cname_20240412143244.pdf PARCO ゲーム開発が本格始動 https://www.parco.co.jp/pdf/jp/store/storage/cname_20240925163912.pdf |
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海外消費者の存在感の上昇 |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
低成長が続く日本とは対照的に、アジアを中心とする新興国は高成長を続けています。アジアの成熟都市には大型商業施設が多くあり、成長都市には国の成長に伴い都市開発、複合開発プロジェクトなどが増加しています。また、アジアにおいても富裕層は増加しており、中間層も人数や所得が急増しているなど、消費の牽引役としてアジアの重要性が高まっています。日本政府も2030年を見据えて大きなインバウンド対策目標を掲げており、海外消費者マーケットは今後も拡大していくと見られます。 このような中、海外消費者は当社グループにとって大きなターゲットと考えられるため、この市場に目を向けて適切に対応することが大きなチャンスとなります。一方、政治情勢等の理由からインバウンドが大きく落ち込むことも想定し、国内顧客への対応も継続して注力していく必要があります。 |
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対応策 |
海外の消費マーケットの獲得は、将来の成長に欠かせない重要課題であり、海外プレミアム層へのリーチと顧客定着推進を推進するため、インバウンドCRM(CustomerRelationshipManagement)の本格活用を通じて、インバウンド顧客の情報を一元管理するとともに、顧客ニーズに応じた情報発信の強化、再来店の促進に取り組んでいきます。また、海外富裕層を顧客に持つ国内外企業との提携を通じた店舗への送客、同一エリア内での百貨店・パルコの枠を超えたアテンド体制など、グループ一体となって対応を強化してきます。 <これまでの具体的な取り組み事例> 海外富裕層へのアプローチ強化 WealthParkとの業務提携 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/7bf3b433bca8fb939f2f086f494d305128d9d56a.pdf |
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都市間の格差拡大 |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
日本の人口減少、少子高齢化が進む中、三大都市圏や主要都市には人口流入が続き、雇用の機会やマーケットも拡大し、他都市との労働人口や経済格差が拡大しています。 都市においては、自然災害やインフラの老朽化に対して防災・減災、BCPなど都市の安全性強化に向けたインフラ整備が求められている一方、環境に配慮した快適な住居環境や文化との共存も求められています。 当社グループが都市の自治体やNPOなどとも連携し、街づくりや地域課題の解決に参画していくことが出来れば、地域の発展とJFRグループの収益拡大という両面を実現することができます。 |
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対応策 |
当社グループでは、2023年春に会社分割し、J.フロント都市開発株式会社としてデベロッパー事業推進体制を推進していますが、さらに、内装事業とビルマネジメント事業の再編強化に向け、2026年3月を目途にJ.フロント建装とパルコスペースシステムズの合併を予定しています。また、博多天神、名古屋栄地区での地域共創を目指し、専門の組織を設置しました。 これら事業再編や専門組織設置を通じた、これまでの取り組み、および今後の取り組み予定は以下の通りです。 ・内装事業、ビルマネジメント事業の強化に向け、新会社「㈱J.フロントプライムスペース」設立 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/20250212JFRONTPRIMESPACE.pdf ・2026年夏オープン予定「ザ・ランドマーク名古屋栄」 https://www.parco.co.jp/news/detail/?id=2573 ・2026年竣工予定「(仮称)心斎橋プロジェクト」 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/20220510shinsaibashi_p.pdf ・御堂筋を中心としたまちづくりの新たなプロジェクトに参画 https://www.j-front-retailing.com/_data_json/news/_upload/20250131shinsaibashibiru_FF.pdf |
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②ファイナンス上のリスク
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経済動向の不安定さ |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
国内景気は米国をはじめとするグローバルな経済状況や政策に左右され、国内外ともに景気や、為替、金利、株価などの不確実性は高くなっています。特に、金利は、J.フロント都市開発が担うデベロッパー事業に大きく影響、また為替はインバウンド消費にも影響する可能性があります。不確実性の高い経営環境の中、JFRグループとして、各種施策を検討・実施する過程において、複数のシナリオを策定し、機動的に対応することが重要です。 適切な対応により収益機会の拡大やリスク低減に繋がる一方、その対応を誤ると、収益機会損失や資金調達コストの上昇などマイナスの影響を及ぼす可能性があります。 また、新規投資資金、既存有利子負債の借換え資金、運転資金などを想定通りに調達できない場合、事業ポートフォリオ改革の遅れや企業活動の縮小に繋がる可能性があります。 |
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対応策 |
当社では、従来から事業特性を勘案して、固定金利でも長期調達比率を高くしており、金利の上昇によって急激に支払い利息が増加するなど、短期的に大きな影響を受けることのない仕組みを導入しています。 一方で、成長戦略の推進に伴う大型投資においては、資金需要の面からも支払い利息が増加していく可能性があると見ています。新規での資金調達局面においては、調達手段を適切に選択することにより、金融費用を極力抑制する施策に取り組んでいきます。 また、戦略視点でも、常に変動とその影響を確認し、必要に応じて、中期経営計画の見直し、次年度方針に反映をしていきます。 |
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③ハザードリスク
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自然災害や疫病の発生や流行 |
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影響度:非常に大 |
将来の見通し: |
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(継続して重要) |
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リスク認識 |
南海トラフ地震や首都圏直下地震など巨大地震の発生リスクは高まっています。また巨大台風や集中豪雨など異常気象による自然災害についても、発生頻度、被害規模ともに増大しています。 また、コロナ感染症は収束したものの、今後、新たな疫病の発生など類似のパンデミック(世界的な大流行)の可能性もあります。 このようなリスクが顕在化し、人的被害、事業活動の停止、サプライチェーンの分断、施設改修に係る費用の発生など事業運営に重大な支障が生じた場合、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクが顕在化する場合を想定し、事前に適切な対策や訓練を実施することが必要です。 |
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対応策 |
事業継続を脅かす自然災害等のリスクに対し、事業継続計画に基づき重要業務(資金、支払業務等)、重要インフラ(システム等)確保の観点から業務継続体制を整備、定期的な訓練の実施等により体制を強化していきます。 新型コロナウイルス感染症の対応分析をふまえ、今後新たな感染症が発生した際にも、人命の安全確保や、平時における体制整備に関する事項などを定めた「新型感染症対応マニュアル」に基づき対応し、事業への影響を極小化していきます。 |
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地政学・地経学危機の顕在化 |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
ウクライナでの紛争の他、地政学リスクが顕在化しています。これらは、資源や食料、先端技術などの自国への囲い込みが進み、物価やサプライチェーン、消費者動向にも影響を与えます。 世界の不確実性が高まっていく中で、その動向を注視し、各種状況を想定したプランの策定や事前の訓練は、海外従業員の安全・安心を確保し、被害を最小限に抑える上でも不可避な取り組みです。リスクが顕在化した場合でも適時・適切な対応が可能となるよう、事前に有事を想定して準備をしておくことが重要です。 |
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対応策 |
従業員の海外赴任先や出張者の出張先のリスク環境・実態を踏まえた海外危機管理体制を構築していきます。具体的には、海外での危機事象発生時における行動指針を定めた「海外安全対策マニュアル」に基づき対応能力を継続して強化していくほか、海外拠点、駐在員のおかれている事業会社(大丸松坂屋、大丸興業、パルコ等)での事業継続計画の見直しを実施していきます。 また、戦略視点でも、常に不安定要素とその当社事業への影響を確認し、必要に応じて、海外政策における次年度方針への反映や、施策の柔軟な変更を実施していきます。 |
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情報セキュリティ脅威の増大 |
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影響度:大 |
将来の見通し: |
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(拡大) |
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リスク認識 |
リモートワークの定着、クラウドやモバイル利用などの業務が拡大していく一方、サイバー攻撃や不正アクセスなどの手法の多様化、高度化が急速に進展しており、当社グループを取り巻くサイバーリスクは一層深刻化しています。また、当社グループは顧客情報や個人情報を多く保有しており、情報の保管、取り扱いについてより堅牢な仕組みの導入やシステムセキュリティ対策が必須となっています。 外部からの攻撃や人為的なミス、委託先の管理不備等により重要情報の外部流出やサービスの大規模停止などのリスクが顕在化した場合、社会的信用の失墜のほか被害の規模によっては当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。情報セキュリティ管理の整備・高度化を推進していくと同時に従業員が正しい知識を持ち、適切に行動することが必要です。 |
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対応策 |
当社グループでは、システムをはじめとした技術的対策、物理的対策、および運用ルールや社員教育などの人的対策を組み合わせて情報セキュリティの対策に以下のように取り組んでいます。 ・当社グループ共通のシステムインフラの整備・高度化、情報システムの安全稼動及び堅牢性の高いセキュリティの構築を継続して推進 ・セキュリティ型ネットワークの構築や新認証基盤(多要素認証)の拡大などグループ共通のシステムインフラの整備を推進 ・新ソリューションや外部監視サービスを活用した監視体制の強化、脆弱性に関する管理対象範囲の拡大、対応品質の向上による情報漏洩等の未然防止などセキュリティ運用の高度化を推進 ・グループセキュリティガイドラインの改訂、セキュリティインシデント対応体制の強化などリスクの最小化に向けた取り組みを推進 ・従業員が正しい知識を持ち、適切に行動できるよう、IT担当者を対象としたインシデント対応訓練の実施、全従業員を対象とした情報セキュリティe-ラーニングや標的型攻撃メール訓練の継続的実施などにより、従業員のセキュリティ意識とリテラシーの向上 ・JFRにセキュリティに関する専門組織(JFR-CSIRT)を設置するとともに、事業会社に情報セキュリティ責任者を任命し、情報セキュリティに対する組織体制を強化 |
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JFRグループ「グループ重要リスク」一覧
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分類 |
項目 |
影響度 |
将来の 見通し |
マイナス面 |
プラス面 |
対応策 |
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戦 略
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既存事業における 業界構造の変容 |
非常に大 |
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・大型店舗型小売業の業績低迷によるグループ全体の活力の低下 |
・大型店舗型小売業の事業モデルの抜本的な変革による再成長 |
・事業ポートフォリオの転換に向けた既存事業強化、事業開発 ・将来像を踏まえたM&AやCVCによる出資 |
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人財獲得競争の 激化 |
非常に大 |
|
・人財獲得競争での劣後、優秀人財の流出 ・従業員のモチベーション低下 |
・事業戦略の推進、イノベーションの創出 ・従業員のエンゲージメント、組織力の向上 |
・専門人財の採用、グループ人財交流、育成 ・従業員のWell Being Life実現につながる人財投資 |
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|
テクノロジー革新 の加速 |
非常に大 |
|
・グループ全体の成長の停滞 ・テクノロジー活用遅延による競争力の低下 |
・テクノロジー活用によるビジネスモデルの変革 ・業務の効率化 |
・グループデータベース活用 ・AIの活用による業務効率化 ・XR・VR、NFTなど新たな市場でのビジネスモデルの構築 ・デジタル人財/IT人財の育成 |
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環境課題の重要性 の高まり |
非常に大 |
|
・ステークホルダーの離反、格付・ブランド力の低下 |
・持続的な成長、当社グループのプレゼンス向上 |
・温室効果ガス排出量削減 ・環境配慮型商品・サービスの取り扱い拡大 ・リサイクル事業の推進 ・シェアリング・アップサイクル等サーキュラー型ビジネスの拡大 |
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人権尊重の重要性の高まり |
非常に大 |
|
・レピュテーションの低下や不買運動 ・従業員の働きやすい環境の阻害 |
・従業員を含めたステークホルダーの支持向上と企業価値の向上 |
・人権に関するサプライチェーン全体のマネジメントの取り組み ・カスタマーハラスメントへの対応方針の策定と社内外への周知 |
|
|
少子高齢化と所得格差の拡大 |
大 |
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・国内市場規模の縮小 ・従来ターゲットのボリューム層の減少 |
・ターゲットへの対応による新規マーケット拡大 |
・自身のこだわりや価値観を満たす、高質で心が高揚する消費や体験を嗜好する生活者へのアプローチ ・上記ターゲットへリーチするための顧客基盤・事業基盤の拡大 |
|
|
生活者の価値観や行動の多様化 |
大 |
|
・売上、収益の減少 |
・新規マーケットの拡大 |
・自身のこだわりや価値観を満たす、高質で心が高揚する消費や体験を嗜好する生活者の価値観に沿った施策の推進(サブスクリプション事業、エンタテイメント、POPカルチャーなど) |
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|
海外消費者の 存在感の上昇 |
大 |
|
・インバウンドの取り込みの遅れ ・インバウンドの急減 |
・インバウンド売上の拡大 ・ECなどの展開による外需獲得 |
・国内外顧客から支持の高い商品カテゴリーの継続強化 ・海外でのデジタル領域での展開を可能とするコンテンツ開発・保有の推進 ・継続した国内顧客基盤拡大の取り組み |
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都市間の格差拡大 |
大 |
|
・都心立地の商業施設の集客力低下 |
・都市のニーズ、街づくりへの貢献を通じた事業展開 |
・グループ重要拠点において自治体などと連携した街づくり参画(商業施設、オフィス、ホテル、レジデンスなど) |
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分類 |
項目 |
影響度 |
将来の 見通し |
マイナス面 |
プラス面 |
対応策 |
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ファイナンス |
経済動向の 不安定さ |
大 |
|
・収益機会損失 ・資金調達コスト上昇 |
・成長戦略推進、事業ポートフォリオ変革の推進 ・資金調達コストの引き下げ |
・固定金利での長期調達 ・新規資金調達局面での適切な調達手段の選択 |
|
ハザ | ド |
自然災害や疫病の 発生や流行 |
非常に大 |
|
・お客様、従業員の人命損傷 ・事業継続の危機 |
・事業の安定運営 |
・実践的なBCP訓練の継続実施 ・事業継続計画の定期的な見直し ・新たなパンデミックへの備えの強化 |
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地政学・地経学 危機の顕在化 |
大 |
|
・海外赴任(出張者)従業員の危険や生活困難 |
・海外事業の安定運営 |
・従業員の海外赴任先や出張先のリスク環境、実態を踏まえた海外危機管理体制の構築と推進 ・当社事業(特に海外事業)における影響注視 |
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|
情報セキュリティ 脅威の増大 |
大 |
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・個人情報の漏洩、訴訟・損害賠償の発生、社会的信用失墜 ・業務の遅延・停滞 |
・業務やシステムの安定稼動 ・業務の効率化、リモートワークの推進 |
・グループ共通のシステムインフラの整備、高度化の推進 ・セキュリティ運用の高度化推進と対応体制の強化 ・グループセキュリティガイドラインの見直しと訓練等を通じた従業員のセキュリティ意識、リテラシーの向上 |
影響度:中期経営計画期間中の、当社グループへの経済的なインパクト、ブランド価値へのインパクトを考慮したもの
見通し:中期経営計画期間中のリスクの増減を、当社グループへの影響度を考慮して見通したもの
|
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:影響が極めて大きく、最優先で対応しているリスク |
リスクの分類については、複数の分野にまたがる場合は、当社グループの戦略に影響や関連性が最も高い分野で記載した
(1)財政状態及び経営成績の状況
① 当期の経営成績
|
(単位:百万円、%) |
2025年2月期 |
対前年 |
対10月予想 |
|
|
増減高 |
増減率 |
増減高 |
||
|
総額売上高 |
1,268,322 |
116,350 |
10.1 |
18,322 |
|
売上収益 |
441,877 |
34,871 |
8.6 |
4,877 |
|
売上総利益 |
212,596 |
17,080 |
8.7 |
1,096 |
|
販売費及び一般管理費 |
159,106 |
7,921 |
5.2 |
△394 |
|
事業利益 |
53,490 |
9,160 |
20.7 |
1,490 |
|
その他の営業収益 |
11,831 |
8,158 |
222.1 |
2,331 |
|
その他の営業費用 |
7,122 |
2,167 |
43.7 |
△2,378 |
|
営業利益 |
58,199 |
15,151 |
35.2 |
6,199 |
|
親会社の所有者に 帰属する当期利益 |
41,424 |
11,511 |
38.5 |
4,924 |
当連結会計年度の日本経済は、住宅投資など一部に弱めの動きが見られたものの、企業収益の改善傾向を背景に設備投資が堅調に推移し、また訪日外国人消費が拡大するなど、総じて緩やかな回復を見せました。
個人消費について、雇用・所得環境は改善基調が続いたものの、消費者物価の上昇などにより消費マインドの改善に足踏みが見られるなど不安定な状況が続きました。
こうしたなか、当社は新たな経営体制の下、2030年を見据えた中期経営計画(2024‐2026年度)をスタートさせました。
当社はグループビジョン“くらしの「あたらしい幸せ」を発明する。”の実現に向け、事業を通じて環境・社会課題の解決を図る「サステナビリティ経営」を基軸に、企業活動を推進しています。昨年春には、当社が重要視する経営環境の変化や当社の強みを踏まえ、当社が2030年に目指す姿として「リテール事業を中心に、3つの共創価値を提供し続ける“価値共創リテーラー”への変革」を掲げました。
本中期経営計画は、2030年に目指す姿の実現、中長期の成長を確かなものとする「変革期」と位置づけ、重点戦略として百貨店事業・SC事業など「リテール事業の深化」、飛躍的成長に向けた「グループシナジーの進化」、これらの戦略の実効性を高める「グループ経営基盤の強化」に集中して取り組んでいます。
「リテール事業の深化」では、顧客接点の魅力化、競争優位性のさらなる向上に向け、主に、百貨店事業では既存顧客の深耕や次世代顧客の獲得に向け、松坂屋名古屋店の改装に着手し、2024年11月よりフロアごとに順次、リニューアルオープンしました。また大丸梅田店は、開業以来初となる大規模リニューアルを他社連携で推進することを決定しました。
SC事業では、東海エリア随一のファッションとエンタテインメント集積をテーマに名古屋PARCOをリニューアルし、有力ファッションブランドを導入するとともに、ポップカルチャーショップを拡大しました。また、パルコの強みであるアニメやサブカルチャーの分野において、高質・高揚消費層へのコンテンツ拡充を推進するため、人気漫画のライセンスを活用した事業開発に取り組みました。
顧客層拡大への取り組みでは、アプリ会員の拡大に取り組んだほか、アプリの改修によりメディア機能の強化を図りました。また海外顧客層への対応強化に向け、百貨店事業において訪日外国人客を対象としたコミュニケーション基盤を新たに構築したほか、国内外企業との提携による相互送客に取り組みました。
「グループシナジーの進化」では、重点7エリアを中心とするエリアシナジーの最大化に向け、主に、名古屋栄エリアでは店舗リニューアルとともに、デベロッパー事業において2026年開業予定の「ザ・ランドマーク名古屋栄」の開発計画を推進しました。心斎橋エリアでは2026年開業予定の「(仮称)心斎橋プロジェクト」の開発を進めたほか、新たに、大丸心斎橋店南館を保有する株式会社心斎橋共同センタービルディングの子会社化、心斎橋ビル(旧関西アーバン銀行本社)を取得する特定目的会社への出資を決定しました。また、福岡天神エリアにおいて他社連携による再開発計画を推進しました。
内装事業及びビルマネジメント事業の再編強化に向けた方針に基づき、2024年9月にグループ内のビルマネジメント事業を、株式会社パルコスペースシステムズに統合しました。
決済・金融事業では、グループ顧客基盤の拡大に向け、自社カード発行業務のグループ内集約を進めており、2024年4月より新GINZA SIXカード、2025年2月より新PARCOカードの発行を開始しました。
この他、今後拡大が予測されるリユース市場への参入による顧客接点の拡大と新たな価値提供に向け、2024年11月に株式会社コメ兵と合弁会社設立に関する契約を締結しました。また、各地域が抱える事業承継課題の解決や地域社会への貢献、魅力ある地域コンテンツの発掘を目的に、外部パートナーと共同で事業承継ファンドを設立し、第1号案件への投資を実行しました。
「グループ経営基盤の強化」として、人財戦略では、価値共創リテーラーへの変革実現、経営戦略と一体となった新たなグループ人財戦略の推進に向け、グループ共通の「人財マネジメントポリシー」を制定し、人財戦略の実行を加速するための体制強化を図りました。
システム戦略では、経営管理の高度化と業務の効率化を図るグループ共通の会計システムの各社への導入を進めたほか、社内外コミュニケーションの活性化を促すグループウェアの統合などに取り組みました。また、「グループシステムフィロソフィー」を新たに制定しました。
コーポレートガバナンスに関しては、従来の法定3委員会の委員長に加え、取締役会議長を独立社外取締役が担う体制に変更し、監督機能を更に強化しました。
財務戦略では、ROIC経営の社内浸透に向け事業会社と連携して取り組みを進めたほか、中長期的な資本収益性の向上や自己資本の適正化、株主還元の強化を目的に、連結配当性向40%以上の配当(段階取得に係る差益を除く)と総額100億円の自社株取得を実施しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、当期の連結業績について各利益段階で経営統合以降、過去最高益となり、中期経営計画最終年度(2026年度)の利益目標を達成しました。
具体的には、売上収益は441,877百万円(対前年8.6%増)となりました。事業利益は売上収益の増加に加え、戦略的支出の一方で経費の節減に努めた結果、53,490百万円(対前年20.7%増)となりました。営業利益は一部店舗で減損損失を計上する一方、主に段階取得に係る差益の計上などにより58,199百万円(対前年35.2%増)、税引前利益は55,785百万円(対前年34.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は41,424百万円(対前年38.5%増)と大幅増益となりました。
セグメントの業績は、以下のとおりです。
事業管理区分の見直しにより、株式会社パルコデジタルマーケティングを2024年3月1日付で
「デベロッパー事業」から「SC事業」に移管しています。また、2024年9月1日付のグループ
内組織再編に伴い、株式会社J.フロントONEパートナー(旧:株式会社JFRサービス)の運営事業の一部を株式会社パルコスペースシステムズ他へ移管しました。これらに伴い、前連結会計年度の期首(2023年3月1日)より移管されたものとみなし、遡及修正しています。
セグメント業績
<百貨店事業>
|
(単位:百万円、%) |
2025年2月期 |
対前年 |
対10月予想 |
|
|
増減高 |
増減率 |
増減高 |
||
|
売上収益 |
263,643 |
24,543 |
10.3 |
△2,357 |
|
事業利益 |
33,982 |
7,874 |
30.2 |
△1,618 |
|
営業利益 |
29,677 |
6,247 |
26.7 |
△3,623 |
主に、高質・高揚消費層へのコンテンツの拡充に向けた改装効果や、訪日外国人観光客による売上の伸長などにより、売上高は大幅な増収となりました。
店舗別では、インバウンド売上が好調な大丸心斎橋店・京都店に加え、戦略改装を実施してきた大丸神戸店・札幌店、またターミナル店舗の大丸東京店など、主要店舗の好調が業績を牽引しました。
重点戦略に基づき、松坂屋名古屋店では大規模改装を推進しており、昨年11月より順次オープンを迎えています。今回のリニューアルはリアル店舗ならではの「体験価値の向上」、「次世代顧客の獲得」に向け、ラグジュアリーブランドの拡充に加え、ファッション・アート・お酒・美や健康など、次世代のマーケットニーズを捉えたコンテンツを拡充しました。大丸梅田店では同店が入居する「サウスゲートビルディング」の大規模リニューアル計画を他社と共同で発表しました。
このほか、お客様との強固な関係性を構築すべく、大丸・松坂屋アプリを改修するなど、メディア機能の強化を図りました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は263,643百万円(対前年10.3%増)の増収となりました。事業利益は33,982百万円(対前年30.2%増)の大幅な増益となりました。
<SC事業>
|
(単位:百万円、%) |
2025年2月期 |
対前年 |
対10月予想 |
|
|
増減高 |
増減率 |
増減高 |
||
|
売上収益 |
64,418 |
5,687 |
9.7 |
418 |
|
事業利益 |
12,745 |
4,323 |
51.3 |
1,445 |
|
営業利益 |
12,850 |
3,387 |
35.8 |
3,050 |
リテール事業の深化に向けてパルコ独自のブランド価値、来店価値の向上を図るため、MZ世代や海外顧客からの支持拡大に向けた戦略改装を実施しました。
名古屋PARCOでは、東海エリア随一の洗練されたファッションと多彩なエンタテインメントをテーマとしたリニューアル、仙台PARCOでは、ファッションやエンタテインメントの強化、広島PARCOではエリア唯一のショップ誘致を目的とした戦略改装を行いました。
また訪日外国人観光客への情報発信強化やアジアを中心とする海外企業との提携など関係強化に取り組み、渋谷PARCO・心斎橋PARCOではインバウンド取扱高が大幅に伸長し業績を牽引しました。
文化事業では、演劇が復調し、音楽は渋谷クアトロが好調、コラボレーションカフェは人気漫画のライセンスを活用した事業開発が奏功しました。
また韓国の大手百貨店「現代(ヒュンダイ)百貨店」と戦略的協業に関する基本合意を4月に締結し、渋谷PARCOでポップアップイベントを開催しMZ世代を中心に新たな顧客層を集客しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は64,418百万円(対前年9.7%増)の増収となりました。事業利益は12,745百万円(対前年51.3%増)の大幅な増益となりました。
<デベロッパー事業>
|
(単位:百万円、%) |
2025年2月期 |
対前年 |
対10月予想 |
|
|
増減高 |
増減率 |
増減高 |
||
|
売上収益 |
90,658 |
9,340 |
11.5 |
13,158 |
|
事業利益 |
8,360 |
575 |
7.4 |
2,260 |
|
営業利益 |
8,189 |
515 |
6.7 |
2,389 |
主に、J.フロント都市開発株式会社において保有物件の売却益を計上したほか、株式会社J.フロント建装におけるホテル内装工事の受注増加などが牽引し、増収増益となりました。
重点戦略では、7つの重点エリア開発において、2026年度竣工・開業予定である「ザ・ランドマーク名古屋栄」ならびに「(仮称)心斎橋プロジェクト」を着実に推進しました。また、新たに心斎橋ビルを取得する特定目的会社への出資を決定しました。「(仮称)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」では、地区計画及び市街地再開発事業の都市計画決定を踏まえ、グループ横断的に計画を推進してまいります。
このほか、グループのビルマネジメント事業の再編強化に向け、9月に株式会社J.フロントONEパートナー(旧:株式会社JFRサービス)のビルマネジメント事業を株式会社パルコスペースシステムズへ移管しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は90,658百万円(対前年11.5%増)の増収となりました。事業利益は8,360百万円(対前年7.4%増)の増益となりました。
<決済・金融事業>
|
(単位:百万円、%) |
2025年2月期 |
対前年 |
対10月予想 |
|
|
増減高 |
増減率 |
増減高 |
||
|
売上収益 |
13,135 |
20 |
0.1 |
△299 |
|
事業利益 |
1,637 |
△1,140 |
△41.0 |
△258 |
|
営業利益 |
1,460 |
△1,123 |
△43.5 |
△229 |
重点戦略の推進では、百貨店事業との協業によるカード会員の拡大及び利用促進を図りました。また、新たな顧客基盤の拡大に向け、グループ内カード集約の取り組みとして、新GINZA SIXカード、新PARCOカードの発行を開始しました。加盟店事業では、重点エリアを中心に外部加盟店を開拓したほか、グループ商業施設のアクワイアリングの拡大に取り組みました。
また、業界課題である不正利用対策の強化に向け、オンラインサービスへの多要素認証導入、ワンタイムパスワード導入等を実施しました。
以上のような諸施策に取り組みました結果、売上収益は取扱高増などにより加盟店手数料が増加した一方、ポイント費の増加などもあり13,135百万円(対前年0.1%増)となりました。販管費は、グループ内カード集約に向けた投資費用や人件費などが増加し、事業利益は1,637百万円(対前年41.0%減)の減益となりました。
② 財政状態
|
(単位:百万円、%) |
2024年2月期 |
2025年2月期 |
増減高 |
|
流動資産 |
246,501 |
241,045 |
△5,456 |
|
非流動資産 |
868,225 |
923,101 |
54,876 |
|
資産合計 |
1,114,726 |
1,164,147 |
49,421 |
|
流動負債 |
331,261 |
341,341 |
10,080 |
|
非流動負債 |
389,232 |
399,570 |
10,338 |
|
負債合計 |
720,494 |
740,911 |
20,417 |
|
親会社の所有者に帰属する持分 |
381,898 |
409,646 |
27,748 |
|
親会社所有者帰属持分比率 |
34.3 |
35.2 |
0.9 |
|
資本合計 |
394,232 |
423,235 |
29,003 |
当連結会計年度末の資産合計は1,164,147百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,421百万円増加しました。一方、負債合計は740,911百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,417百万円増加しました。なお、有利子負債残高(含むリース負債)は、363,578百万円となり、前連結会計年度末に比べ820百万円減少しました。
資本合計は、423,235百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,003百万円増加しました。
③ キャッシュ・フロー
|
(単位:百万円) |
2024年2月期 |
2025年2月期 |
増減高 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
90,692 |
85,812 |
△4,880 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
13,429 |
△28,308 |
△41,737 |
|
フリーキャッシュ・フロー |
104,122 |
57,503 |
△46,619 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△72,746 |
△74,001 |
△1,255 |
|
現金及び現金同等物の増減額 |
31,375 |
△16,498 |
△47,873 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
71,342 |
54,975 |
△16,367 |
当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末(71,342百万円)に比べ16,367百万円減の54,975百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は85,812百万円の収入となりました。前連結会計年度との比較では、税引前利益が増益となった一方、運転資金等の増加により4,880百万円の収入減となりました。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は28,308百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、松坂屋名古屋店の改装や心斎橋共同センタービルディング株式を取得したことなどにより41,737百万円の支出増となりました。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は74,001百万円の支出となりました。前連結会計年度との比較では、自己株式を取得したことなどにより1,255百万円の支出増となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
デベロッパー事業 |
527 |
86.4 |
(注)1 請負工事につきましては生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。
2 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
デベロッパー事業 |
49,307 |
78.4 |
(注)1 上記以外のセグメントについては該当事項はありません。
3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
内訳 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
百貨店事業 |
大丸松坂屋百貨店 |
243,068 |
110.5 |
|
博多大丸 |
17,088 |
108.8 |
|
|
その他 |
3,487 |
103.6 |
|
|
計 |
263,643 |
110.3 |
|
|
SC事業 |
パルコ |
63,482 |
109.7 |
|
その他 |
936 |
108.6 |
|
|
計 |
64,418 |
109.7 |
|
|
デベロッパー事業 |
J.フロント都市開発 |
13,341 |
68.8 |
|
J.フロント建装 |
50,645 |
141.1 |
|
|
パルコスペースシステムズ |
26,670 |
102.4 |
|
|
計 |
90,658 |
111.5 |
|
|
決済・金融事業 |
JFRカード |
13,135 |
100.1 |
|
その他 |
卸売業 |
39,858 |
110.8 |
|
その他 |
10,858 |
95.6 |
|
|
計 |
50,716 |
107.1 |
|
|
調整額 |
△40,694 |
124.8 |
|
|
合計 |
441,877 |
108.6 |
|
(注)1 セグメント間の取引については、「調整額」欄で調整しております。
2 販売高は、売上収益を記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要性のある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績や現状を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要性のある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」に記載しております。
また、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績等
セグメントごとの情報については、(1)財政状態及び経営成績の状況 ① 当期の経営成績に記載しております。
a)売上収益
売上収益は、前連結会計年度に比べ34,871百万円増の441,877百万円となりました。
b)営業利益
営業利益は、前連結会計年度に比べ15,151百万円増の58,199百万円となりました。
c)税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度に比べ14,442百万円増の55,785百万円となりました。
d)親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ11,511百万円増の41,424百万円となりました。
e)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は1,164,147百万円となり、前連結会計年度末に比べ49,421百万円増加いたしました。一方、負債合計は740,911百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,417百万円増加いたしました。なお、有利子負債残高(含むリース負債)は、363,578百万円となり、前連結会計年度末に比べ820百万円減少いたしました。資本合計は、423,235百万円となり、前連結会計年度末に比べ29,003百万円増加いたしました。これらの結果、資産合計営業利益率(ROA)は、5.1%、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は、10.5%、親会社所有者帰属持分比率は、35.2%となりました。
f)キャッシュ・フロー
「営業活動によるキャッシュ・フロー」は85,812百万円の収入となりました。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は28,308百万円の支出、「財務活動によるキャッシュ・フロー」は74,001百万円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末における「現金及び現金同等物」の残高は、前連結会計年度末に比べ16,367百万円減の54,975百万円となりました。
今後も、利益水準やキャッシュ・フローの動向等を考慮し、適切な利益配分や設備投資を行っていく予定であります。
g)資本の財源及び資金の流動性
(資本政策の基本方針)
当社は、フリーキャッシュ・フローの増大とROEの向上が持続的な成長と中長期的な企業価値を高めることに繋がるものと考えています。その実現に向けて、経営環境及びリスクへの備えを勘案した上で「戦略投資の実施」「株主還元の充実」及び「自己資本の拡充」のバランスを取った資本政策を推進します。
また、有利子負債による資金調達はフリーキャッシュ・フロー創出力と有利子負債残高を勘案して行うことを基本とし、資金効率と資本コストを意識した最適な資本・負債構成を目指します。
フリーキャッシュ・フロー、ROEの向上には、収益を伴った売上拡大を実現する「事業戦略」及び投下資本収益性を向上させる「財務戦略(資本政策を含みます。)」が重要です。併せて、基幹事業の強化、事業領域の拡大・新規事業の積極展開等に経営資源を重点配分することにより、事業利益の最大化と事業利益率を持続的に向上させていくことが重要であると考えております。
なお、中期経営計画の達成における重要財務指標として、資本効率性はROE、事業収益性は連結事業利益及びROIC、収益性・安全性はフリーキャッシュ・フロー、財務健全性は親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率)の各指標を重視しております。
(資金調達の状況)
当社グループでは、事業活動に必要となる資金は、グループで創出した資金でまかなうことを基本方針としております。その上で、事業投資等で必要資金が生じる場合には、財務の健全性維持を勘案し、主として社債の発行及び金融機関からの借入などにより持株会社が一元的に資金調達を行っております。
グループ子会社は金融機関からの資金調達を行わず、キャッシュ・マネジメントシステムを利用したグループ内ファイナンスにより必要資金の調達を行うことで、グループ資金の効率化を推進しております。
当連結会計年度については、上記方針に基づき、金融機関からの長期借入金により85億円を調達いたしました。一方、長期借入金124億円を返済したことに加え、無担保普通社債200億円の償還を進めた結果、有利子負債残高(除くリース負債)は、前連結会計年度末に比べ238億円減少し、1,900億円となりました。
なお、資金調達に係るリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
(財務政策)
「2024-2026年度 中期経営計画」における財務政策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(配当政策)
当社の剰余金の配当に関する基本方針並びに当期の配当実績については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載しております。
2)経営目標の達成状況
「2024-2026年度 中期経営計画」初年度である2024年度において、百貨店事業・SC事業など「リテール事業の深化」、飛躍的成長に向けた「グループシナジーの進化」、これらの戦略の実効性を高める「グループ経営基盤の強化」に取り組みました結果、連結業績について各利益段階で2007年の経営統合以降、過去最高益となり、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますとおり、中期経営計画の最終年度(2026年度)の利益目標を達成しました。
<連結子会社>
賃貸借に関する契約
|
会社名 |
事業所名 |
賃借先 |
賃借物件 |
面積 |
賃料 |
|
㈱大丸松坂屋百貨店 |
大丸 大阪・梅田店 |
JR西日本ステーションシティ㈱ |
建物 |
95,101㎡ |
(1)定額賃借料 年額 6,186百万円 (2)歩合賃借料 売上高85,000百万円を超過した額の1.5% |
|
大丸 東京店 |
㈱JR東日本クロスステーション |
建物 |
64,657㎡ |
(1)定額賃借料 年額 5,330百万円 (2)歩合賃借料 直前3事業年度の年間最高売上高を超過した額の1% |
|
|
㈱博多大丸 |
本館 |
㈱西日本新聞ビルディング 紙与不動産㈱ |
建物 |
31,258㎡ |
年額 1,266百万円 |
|
東館 (エルガーラ) |
㈱西日本新聞ビルディング |
建物 |
15,155㎡ |
年額 1,041百万円 |
特記すべき事項はありません。