第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、人間尊重の基本理念のもと、変革を恐れず、挑戦し続ける企業文化を大切にいたします。

そして、

「私達は、お客様に信頼される企業を目指します。」

「私達は、社員に夢を与える企業を目指します。」

「私達は、社会に貢献できる企業を目指します。」

「私達は、株主に期待される企業を目指します。」

を経営理念として掲げ、商品やサービスの提供を通して、人々の快適な生活づくりに貢献することを最大の使命と考えております。

また、顧客、社員、取引先、株主など私たちを取り巻く人々に対する責任を果たすため、一層の高収益企業を目指し、グループの結束力を一段と強化してまいります。

 

(2)経営戦略

当社グループは、経営環境の変化に対し、当社グループの強みを最大限発揮することで、お客様の期待を越える商品・サービスを提供し、更なる成長を目指してまいります。中核であるブランド事業において、ブランド価値の更なる向上と収益力強化を図るとともに、アパレル事業にて出店拡大、既存店の成長を推し進めることで、強固な事業ポートフォリオの構築に取り組んでまいります。

また、信頼性の高い企業グループの構築に向け、サステナブル経営を実践し、内部統制機能の強化、株主への利益還元、利益成長に繋がる中長期的投資等を実行することにより、企業価値の更なる向上に取り組んでまいります。

 

(3)目標とする経営指標

当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つと認識し、利益配分に関する基本方針として安定的・継続的な配当と、機動的な自己株式の取得を実施すること等による総還元性向の水準向上に取り組むとともに、自己資本の圧縮を図り、将来的にのれん償却前ROE10%以上を達成することを目標に掲げております。

また、株主還元を測る重要な指標としてDOE4%以上を目標に設定し、将来における1株当たり年間配当100円の達成を目指しております。

 

※ 当社グループは、経営上目標の達成状況および株主還元の水準を適切に判断するため、目標とする経営指標の算出については「のれん償却前当期純利益」を用いております。

(のれん償却前当期純利益 = 親会社株主に帰属する当期純利益 + のれん償却額 + 企業結合に係る無形資産償却額)

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上・財務上の課題

流通業界におきましては、賃金と物価の好循環による経済成長実現への期待や、インバウンド需要の伸長などにより、消費の拡大が続くことが期待されます。一方で、海外における地政学リスクの高まりや金利の動向、物価の上昇に伴う消費者マインドの冷え込みも懸念されます。このような状況のもと、当社グループは、第7次中期経営計画2年目となる2026年2月期、「Challenge for Future 未来への挑戦」~2030年に向けて~をスローガンに、2030年に向け将来の飛躍的成長を支える基盤構築に引き続き取り組んでまいります。

 

① ブランド事業

「4℃」ジュエリーを展開するエフ・ディ・シィ・プロダクツグループでは、引き続きマーケティングカレンダ ーに基づく「4℃」MD改革の推進に取り組んでまいります。さらに、デジタルマーケティング部門を新設し、O MO戦略を推進することで、お客様の体験価値を一層向上させていきます。また、㈱羅針では、当社グループの盤 石な財務基盤を活かし品揃えを拡充することで、売上高のさらなる拡大を図ります。確かな鑑定力による高い信頼 性と豊富なラインナップにより、高級ブランド時計を専門としたリユース販売店としての魅力を高め、お客様から の支持を獲得してまいります。

 

② アパレル事業

アパレルメーカーとしてOEM・ODM生産を行うアスティグループでは、コスト優位性の高い素材や機能性素材、サステナブル素材など、特色のある素材を開発し、テキスタイル展を通じて提案することで、取引先からの更なる支持の拡大を図ります。デイリーファッション「パレット」を展開する㈱アージュでは、第7次中期経営計画の3ヶ年は、既存店の伸長と、毎期10店舗の出店を継続することで、売上高の拡大を図ります。

③ 組織ビジョン

「企業価値の向上」、「グループガバナンス体制の強化」、「グループ人財育成の推進」、「DXの推進」により、企業の永続性に向けた強固な事業基盤を構築してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 

(1)サステナビリティ経営に関する考え方

サステナビリティに関する課題について、当社グループは経営基盤を支える重要課題と捉え、2021年度にサステナビリティ基本方針を制定し、これに基づいて取り組みを進めています。

 

サステナビリティ基本方針

 当社は、人間尊重の基本理念のもと、企業活動を通じた経営理念の実践により、全てのステークホルダーの皆様との理想的な関係を実現し、当社グループの企業価値を高めるとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

① ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、環境課題に関する具体的な取り組み施策について、半期に一度開催される「サステナビリティ委員会」において、グループ各社からのサステナビリティに関する取り組み状況の報告を受け、有用な情報を共有するとともに、環境問題の新たなリスクの抽出やその対策の協議・決定、継続的なモニタリングを行っております。委員会は、代表取締役社長を委員長とし、取締役(社外を含む)、執行役員で構成し、取締役会がサステナビリティ委員会からの報告を受けて、グループ各社のサステナビリティに関する取り組みを監督する体制を構築しており、2024年度は2回開催いたしました。

 当社の各会議体におけるサステナビリティ委員会の位置づけは下記に記載の通りです。

 

■㈱ヨンドシーホールディングス サステナビリティ経営体制図

0102010_001.png

 

■サステナビリティ経営体制における会議体および役割

会議体および体制

開催頻度

役割

(1)サステナビリティ委員会

年2回(6・12月)

・サステナビリティに関する方針の発信と浸透

・サステナビリティに関する戦略及び取組の検討

・サステナビリティに関する取組状況の報告

・サステナビリティのトレンド・他社事例等の情報共有

(2)コンプライアンス委員会

年2回(3・9月)

・コンプライアンス体制の維持・高度化

・内部管理システムの有効性の維持・向上

・リスク管理体制の整備・強化

・個人情報管理体制の維持・強化

(3)執行役員会

月1回

・営業状況の報告

・事業戦略の進捗・協議

・ガバナンス上の重要事項の協議

 

② 戦略

 当社では以下の項目をマテリアリティとし、これに基づき具体的な取り組みを定めています。

カテゴリー

マテリアリティ

主な施策

関連するSDGsゴール

社会的価値の創造

生活文化の向上

・ブランド価値向上

・パレットマーケット拡大

・生産管理力と企画提案力の強化

 

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0102010_003.png

 

 

 

環境負荷の削減

気候変動への対応

・脱炭素社会への移行促進

・生物多様性の保全

・資源循環の拡大

 

0102010_004.png

 

0102010_005.png

 

0102010_006.png

 

 

人的資本経営の実践

人財育成

・多様性の確保

・働きがいのある職場作り

 

0102010_007.png

 

 

 

 

 

経営理念の実践

ウェルビーイング

・従業員の健康

・ワークライフバランスの向上

 

0102010_008.png

 

 

 

 

 

人権尊重

・人権デューデリジェンス

 

0102010_009.png

 

0102010_010.png

 

 

 

ガバナンス体制

・コンプライアンスの徹底

・適切な株主還元

・企業価値の向上

 

0102010_011.png

 

 

 

 

 

 

③ リスク管理

 当社グループでは、リスク管理を企業価値向上の重要な取り組みと位置付け、リスク管理基本方針及びリスク管理規程に従って運用されています。事業全般に係るリスクは、下記プロセスのもとコンプライアンス委員会にて管理を行っておりますが、特に気候関連課題に関連するリスクについては、サステナビリティ委員会において管理を行っております。

 

当社が定めるリスク管理サイクル

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(2) 人的資本

 

 ガバナンス

 当社ではサステナビリティ基本方針において、人間尊重を基本理念に掲げ、「人財」こそが当社グループ最大の財産であるとの認識のもと、多様な人財の育成に積極的に取り組むことで、当社グループの企業価値を高めるとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、教育プログラムや研修、OJTを通じて従業員の能力開発とキャリア形成を促す機会や環境を提供します。また、性別、障がいの有無、採用形態、働き方等、様々な違いに関わらず、個人が能力を最大限発揮し活躍できるよう環境整備に努め、ダイバーシティを推進します。

 グループ各社の取締役会において、採用計画、人財育成に係る方針を決定し、担当役員の指揮のもと、業務部門が施策を実行いたします。また、春闘や定期的な労使協議会を通じて組合とのコミュニケーションを充実させ、革新的労使関係を構築し、労使ともに企業価値の向上に取り組んでおります。

 

 戦略

 当社では、持続的に人を育てるための継続した教育を、世代を超えて実施していくために、『人財育成・教育』を下記のように体系化しております。

 <ヨンドシーホールディングスグループ教育体系図>

0102010_013.png

 リスク管理

・安心安全な職場環境の整備

 従業員の安全と心身の健康を重視し、当社グループでは「ハラスメント」を重要なリスク項目と捉え、「ハラスメントを許しません!」を制定し、全社で安心安全な職場環境の整備に取り組んでおります。

・エンゲージメントの向上

 当社グループの今後の成長にあたって、必要なスキルを持った人財を育成し、適切な時期に確保する必要があります。そのような人財の育成ができないこと、また離職等によって人財の確保ができずに組織の総合力が低下することは、大きなリスクと考えております。

 

 

 指標と目標

項目

現状(2025年2月期)

目標

女性管理職比率

32.6

2031年2月期 40.0

離職率

27.9

2031年2月期 15.0

男性育休取得率

50.0

2031年2月期 100.0

 

(3) 気候変動

 ガバナンス

 気候変動に関するガバナンスについては、(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ①ガバナンス に記載の通りであります。

 

 戦略

 当社グループでは、異なるシナリオ(2℃未満 、4℃) における財務影響及び事業インパクトを評価するとともに、気候関連リスク ・ 機会に対する当社戦略のレジリエンスを評価することを目的として、2030年を見据えたシナリオ分析を実施しています。今後は2050年を見据えた長期的なシナリオ分析につきましても実施してまいります。

 

 <戦略(リスクと機会) 2030年を想定した財務影響及び当社の対応>

区分

当社に可能性のある事項

当社への影響度

当社の対応方針

4℃

シナリオ

2℃未満シナリオ

(低炭素経済への)

移行リスク

政策・法規制リスク

炭素税の導入によるコストの増大

脱炭素・低炭素エネルギーの利用促進

情報開示義務拡大への対応による業務負荷、コストの増大

開示業務の効率化

商品のLCA(ライフサイクルアセスメント)評価義務化によるトレーサビリティの確保等必要な措置による業務負荷とコストの増大

-

新たな業務範囲の精査及び業務の効率化・RJCの継続

省エネ化の推進が進まないことによるコストの高止まり

-

省エネ型の職場環境、店舗開発の推進

市場リスク

素材調達、物流等経費の上昇による経費の増大と利益率の低下

調達先の安定的な確保と付加価値の追求による利益率の確保

評判リスク

消費者のサステナビリティ志向の変化による対応への遅れと競争力の低下・競争機会の逸失

長期目標としてCO2排出削減目標を掲げ、事業戦略として取り組むことを明確化

環境への対応の遅れによるステークホルダーの評価・企業イメージの低下

サステナビリティに関する情報の積極的な開示

(気候変動による)

物理的リスク

急性リスク

台風や大雨により店舗が営業できないことによる売上減少リスク

事業継続計画の策定

物流プロセスの寸断による売上減少リスク

事業継続計画の策定

慢性リスク

冬物衣料の需要低下による売上減少のリスク

気温にあわせたマーチャンダイジングの変更

温暖化による金属アレルギー発症者の増加とジュエリー離れ

ノンアレルギー商材の開発・拡大

機会

エネルギー源

将来コストの上昇が予想される化石燃料から低炭素エネルギーへの転換と省エネ化によるコスト及びGHG排出量の削減

-

省エネ型の職場環境、店舗開発の推進

製品サービス

低・脱炭素社会対応型のサステナビリティ商品に対する顧客の支持拡大

リサイクル素材の活用や機能性商品の開発推進

気温上昇に対応し夏物商品の売上拡大

気温にあわせたマーチャンダイジングの変更

レジリエンス

低炭素経済に対応するサプライチェーンの構築による企業イメージの向上

サプライチェーン排出量の把握・算定と排出量削減に向けてお取引先との協働

※影響度の判定 売上・利益・資産が1%以上変動する可能性があるものを「大」、0.5%以上変動する可能性があるものを「中」、それ以外を「小」と判定しています。

 

③ リスク管理

気候変動に関するリスク管理については、(1)サステナビリティ経営に関する考え方 ③リスク管理に記載の通りであります。

 

 指標と目標

(a) 気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

 当社では、世界で広く利用されている温室効果ガス(GHG)排出量の算定ガイドライン「GHGプロトコル」に準じて、温室効果ガス排出量を算定しています。

 

(b) 気候関連リスク・機会の管理に用いる目標

項目

2023年2月期

2024年2月期

目標

温室効果ガス排出量

Scope1,2,3

82,715.5tCO2

86,481.1tCO2

-

Scope1,2

2,181.5tCO2

2022年2月期比 ▲4.3%

1,880.1tCO2

2022年2月期比 ▲17.5%

2031年2月期

2022年2月期比 ▲50%(注)

再生エネルギー導入比率

9.4%

9.4%

2031年2月期 50.0%

(注)2022年2月期の温室効果ガス排出量Scope1,2は2,279.4tCO2です。

 

◎2024年2月期のCO2排出量実績

scope

カテゴリ

内容

CO2排出量
(単位:t-CO2)

構成比
(単位:%)

現在の取組

今後の取組

Scope1

ガソリン

 

22.7

6.9

 

 

都市ガス

 

303.5

93.1

 

 

合計

 

326.1

0.4

 

 

Scope2

電気
使用量

 

1,554.0

100.0

・照明のLED化の推進
・再生エネルギーへの切替推進

・店舗の省エネ化の更なる推進
・再生エネルギーへの切替推進拡大
・残業時間の削減

合計

 

1,554.0

1.8

 

 

Scope3

カテゴリ1

購入した製品・サービス

68,512.1

81.0

・サステナビリティ素材を使用した商品開発
・貴金属地金のリサイクル
・保証書の電子化によるペーパーレスの推進
・FSC認証紙を使用したショッピングバッグやサステナビリティ素材を使用したレジ袋の導入
・経理業務のシステム導入等によるペーパーレス化の推進

・サステナビリティ素材を使用した商品や備品開発の更なる推進
・商品基幹システムの刷新による在庫の削減
・販促活動の電子化による資材の削減
・梱包資材等の循環リサイクル化
・商品基幹システムの刷新による伝票類の削減

・排出量削減に向けたお取引先との協働

カテゴリ2

資本財

3,287.0

3.9

-

-

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない
燃料及びエネルギー関連活動

1,787.1

2.1

-

-

カテゴリ4

輸送、配送

(上流)

408.9

0.5

・カタログの電子化による店舗への配送量の削減

・店舗への物流頻度や手段の見直し

カテゴリ5

事業から出る

廃棄物

50.5

0.1

・ペーパーレスの推進

-

カテゴリ6

出張

113.2

0.1

・WEB会議による出張の削減

-

カテゴリ7

雇用者の通勤

2,335.3

2.8

・在宅勤務の導入

・エコ路線での通勤の推奨

カテゴリ8

リース資産(上流)

4,164.2

4.9

-

-

カテゴリ9

輸送、配送

(下流)

51.1

0.1

-

-

カテゴリ10

販売した製品の加工

2,157.8

2.6

-

-

カテゴリ11

販売した製品の使用

0.0

0.0

-

-

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

1,474.9

1.7

-

・サーキュラーエコノミーを意識したパッケージの使用

カテゴリ13

リース資産(下流)

0.0

0.0

-

-

カテゴリ14

フランチャイズ

258.9

0.3

-

-

カテゴリ15

投資

0.0

0.0

-

-

合計

 

84,601.0

97.8

 

 

総合計

 

 

86,481.1

100.0

 

 

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)原材料価格高騰リスクについて

 当社グループの主力商品であるジュエリーの主原材料は金・プラチナ等であり、国際市場商品であるため、流通価格及び為替市場の変動による高騰を販売価格に完全に転嫁できない可能性があります。

 

(2)衣料消費の動向や気象条件によるリスクについて

 当社グループは、衣料品売上を国内の専門店や量販店の売上に依存しており、個人消費、衣料消費の動向に左右されることが考えられます。また、冷夏、暖冬等の気象条件が市場動向を大きく左右し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)中古品の仕入・販売に関するリスクについて

 ㈱羅針にて取り扱う中古品は新品と異なり仕入量の調整が難しく、景気動向の変化、競合の買取業者の動向、相場の変動等により質量ともに安定的な調達が困難となる可能性があります。また、意図せずにコピー品や盗品を取り扱うリスクが存在しており、お客様からの信頼性が低下することで、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)為替リスクについて

 当社グループにおける海外生産商品については、現地工場との直取引のウエイトが上がってきております。これの決済通貨はUSドルが主体となっており、円貨の対USドルレートの変動によっては経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)ブランドの競合によるリスクについて

 エフ・ディ・シィ・プロダクツグループの主力商品であるジュエリー等のファッション商品は、海外ブランドも含め多くの競合ブランドが存在しています。オリジナリティのある、高品質な商品とサービスの提供に全力を傾注してまいりますが、予測しえない競合状況が発生し、ブランド競争力が低下した場合、またブランドイメージが毀損された場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)カントリーリスクについて

 当社グループでは、バングラデシュを中心に、海外生産拠点の充実・強化に取り組んでおります。しかしながら、これらの海外拠点において、政治・経済情勢の悪化、政変、治安の悪化、テロ・戦争等の発生により生産活動に問題が生じた場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)自然災害・事故によるリスクについて

 当社グループの小売店舗及び不動産施設は日本国内に所在し、事業展開を行っております。大地震等予測し得ない自然災害が発生した場合、当社グループの店舗及びその他の不動産施設に物理的に損害が生じ、当社グループの仕入活動や流通・販売活動が阻害され、その結果、当社グループの事業に支障が生じる可能性があります。また、当社グループの供給業者若しくは仕入・流通ネットワークに影響する何らかの事故が発生した場合も同様に、当社グループの事業に支障が生じ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)感染症拡大によるリスクについて

 当社グループは、海外から商品調達を行っており、また、日本国内のほぼ全域において小売店舗を設け、事業活動を展開しております。感染症の拡大(パンデミック)が国内及び海外において発生した場合、生産活動や物流が停滞することや、国内の小売店舗が閉鎖される等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)個人情報流出等のリスクについて

 当社グループは、プライバシーポリシー、特定個人情報取扱規程、個人情報管理規程、個人情報取扱細則等を策定し、コンプライアンスの重要性を含めて全社員に教育を実施するとともに、システムセキュリティについても常に高度化を図っております。しかしながら、以上のような対策を講じたにもかかわらず、個人情報の流出等の重大なトラブルが発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や信用の低下等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況は次のとおりであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境が改善するなど、緩やかな回復基調となりましたが、原材料価格の高騰や円安の進行に伴う物価の上昇、地政学リスクの高まりなど、依然として先行き不透明な状況が続きました。

流通業界におきましては、引き続き高額品の消費が好調に推移し、インバウンド需要も増加する一方、物価高騰に賃金の上昇が追いつかず、実質賃金の改善に遅れがみられるなか、消費者の節約・低価格志向も続いており、消費の二極化が拡大いたしました。

このような状況のなか、当社グループは、第7次中期経営計画初年度となる2025年2月期におきまして、経営環境への対応を前提に、顧客提供価値を追求し、将来の飛躍に向けた成長基盤を構築すべく、各種施策を推進してまいりました。

そして、信頼性の高い企業グループの構築に向けサステナブル経営を実践し、内部統制機能の強化、株主への利益還元、利益成長に繋がる中長期的投資等を実行することによって企業価値の向上に取り組んでまいりました。

また、グループの事業領域の拡大による新たな価値の創出と、事業ポートフォリオの最適化、持続的な利益成長の実現を目的とした未来志向の成長投資として、2024年12月に高級ブランド時計のリユース販売を運営する㈱羅針を、株式取得により子会社化いたしました。なお、㈱羅針の業績は2025年2月期第4四半期より連結業績に反映しております。

その結果、当期の連結業績は、売上高459億2百万円(前期比16.3%増)、営業利益19億60百万円(前期比6.5%減)、経常利益23億51百万円(前期比6.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は13億77百万円(前期比5.9%増)となりました。また、重要な経営指標として定めている「のれん償却前営業利益」は26億45百万円(前期比2.0%増)となりました。

 

セグメント別の業績は、次のとおりであります。

ブランド事業は、売上高216億76百万円(前期比27.5%増)、営業利益15億9百万円(前期比5.8%増)となりました。

アパレル事業は、売上高242億26百万円(前期比7.9%増)、営業利益10億20百万円(前期比2.4%減)となりました。

 

財政状態については、次のとおりであります。

当連結会計年度の資産の合計は、前連結会計年度と比べて158億51百万円増加し、664億94百万円となりました。

当連結会計年度の負債の合計は、前連結会計年度と比べて155億12百万円増加し、275億59百万円となりました。

当連結会計年度の純資産の合計は、前連結会計年度と比べて3億39百万円増加し、389億35百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1億35百万円増加し、当連結会計年度末には17億5百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果、資金の増加は30億23百万円(前連結会計年度比3億57百万円増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益24億18百万円及び減価償却費7億39百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果、資金の減少は105億36百万円(前連結会計年度比94億33百万円減)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出102億2百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動の結果、資金の増加は76億48百万円(前連結会計年度比94億39百万円増)となりました。これは主に、長期借入れによる収入100億円があったことによるものであります。

③ 仕入及び販売の状況

(仕入実績)

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ブランド事業

10,051

98.3

アパレル事業

16,804

5.0

合計

26,855

27.5

(注) 上記金額は、仕入価格によっております。

 

(販売実績)

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

ブランド事業

21,676

27.5

アパレル事業

24,226

7.9

合計

45,902

16.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態の分析

 当連結会計年度末における流動資産は199億39百万円となり、前連結会計年度末に比べ59億97百万円増加いたしました。主な要因は、羅針の棚卸資産が計上されたことにより商品及び製品が60億47百万円増加したこと等によるものであります。

 固定資産は465億55百万円となり、前連結会計年度末に比べ98億53百万円増加いたしました。主な要因は、

㈱羅針の株式取得によりのれんが73億12百万円増加したこと及び投資有価証券が9億45百万円増加したこと等によるものであります。

 流動負債は123億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ67億円増加いたしました。主な要因は、㈱羅針の株式取得の為、短期借入金(一年以内返済予定の長期借入金含む)69億円が増加したこと等によるものであります。

 固定負債は152億53百万円となり、前連結会計年度末に比べ88億11百万円増加いたしました。主な要因は、

㈱羅針の株式取得の為、長期借入金が80億円増加したこと等によるものであります。

 純資産は389億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億39百万円増加いたしました。主な要因は、その他有価証券評価差額金が7億44百万円増加したこと等によるものであります。

 当連結会計年度は、㈱羅針の株式取得及び、株式取得に係る借入金の増加等により自己資本比率が、前連結会計年度の76.2%から58.5%と減少しております。

 

② キャッシュ・フローの分析

 当社グループは、営業活動により多くのキャッシュ・フローを得ており、事業活動にかかる運転資金については営業キャッシュ・フローにて獲得した資金を主な財源としております。

 なお、国内グループ会社の資金については、当社にてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)による一元管理を行っており、必要に応じて資金を融通しております。

 当社グループの当連結会計年度の資金は、前連結会計年度末に比べ1億34百万円増加し、当連結会計年度末には17億5百万円となりました。当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローにて前連結会計年度末に比べ3億56百万円の資金の増加、投資活動によるキャッシュ・フローにて前連結会計年度末に比べ、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出等により94億33百万円の資金の減少、財務活動によるキャッシュ・フローにて前連結会計年度末に比べ子会社株式取得に伴う長期借入れによる収入等により94億39百万円の資金の増加となりました。

③ 経営成績の分析

a.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を客観的に判断するため、「のれん償却前営業利益」、「のれん償却前当期純利益を用いて算出するROE」を重要な経営指標と位置付けております。

第75期は、のれん償却前営業利益は26億45百万円となりました。のれん償却前当期純利益を用いて算出するROEは5.3%、のれん償却前当期純利益を用いて算出する1株当たり当期純利益は96.06円となりました。

 

(のれん償却前営業利益 = 営業利益 + のれん償却額 + 企業結合に係る無形資産償却額)

 

b.セグメントごとの経営成績等の状況に関する分析

(ブランド事業)

「4℃」ブランドを中心にジュエリーSPAを展開するエフ・ディ・シィ・プロダクツグループは、女性客の支持拡大に向けた商品・販売促進戦略の見直しによる基盤づくりに取り組みました。既存顧客に対するアプローチ不足により男性客の売上高が落ち込みましたが、女性客の売上高は増加いたしました。なお、(株)羅針の業績は2025年2月期第4四半期より反映しております。 その結果、売上高は216億76百万円(前期比27.5%増)、営業利益は15億9百万円(前期比5.8%増)と増収、3期連続の増益となりました。

 

(アパレル事業)

アスティグループは、強みである海外生産基盤を背景に、主力取引先との取り組みが拡大し、売上高・利益ともに伸長いたしました。

 デイリーファッション「パレット」を展開する㈱アージュは、既存店売上高が前期比101.3%と5期連続で伸長いたしました。また、関東5店舗、関西5店舗の計10店舗の新規出店を継続的に実行したことで、マーケットシェアを拡大いたしました。 その結果、売上高は242億26百万円(前期比7.9%増)、営業利益は10億20百万円(前期比2.4%減)と増収、減益となりました。

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りや判断を行う必要があります。過去の実績や現在の状況に応じ、合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 連結財務諸表を作成するにあたって、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年10月11日開催の取締役会において、㈱羅針の株式を取得し、子会社化することについて決議するとともに、同日付けで株式譲渡契約を締結いたしました。

 なお、詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。