第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

 当社グループは、「動物医療の「できない」をなくし、動物とともに生きる人の希望になる。」を企業ミッションとして掲げ、「動物にも人間と同じような高度な医療を受けさせたい。」という社会のニーズに応えるべく、動物医療においても人と変わらぬ最先端の医療設備や技術を追及してまいりました。創業以来365日、かかりつけ医のすぐそばに控える高度医療サービスを中心に、あらゆる場面で動物の健康を支えることで、企業グループとしての成長と企業価値の増大を目指しております。

 当社グループは、上記ミッションを実現するために、かかりつけ病院(一次診療施設)からの紹介に応じて提供する二次診療及び画像診断サービスの着実な成長を図りながら、動物の在宅ヘルスケア等の新たなサービスを拡大していく方針です。

① 二次診療及び画像診断サービス

 高度動物医療サービスのニーズに十分に応えるため、引き続き新施設の展開を行ってまいります。豊富な症例数と高度な専門性及び知見、顧客に寄り添うホスピタリティや柔軟な受入体制を強みとして、既存病院においては着実な成長を実現すべく、優秀人材の確保・育成、業務効率化及び生産性の向上、動物医療レベルのさらなる向上を図り、サービス供給体制をさらに強化してまいります。

② 在宅ヘルスケア(健康管理機器レンタル・販売等)サービス

 酸素濃縮器のレンタル・販売事業の全国展開及び営業強化により、成長を促進する一方で、第二種動物医療機器の製造・販売許可取得(2024年1月)により、新たに動物用医療機器の開発・製造事業に参入し新たなサービスを拡大してまいります。これによりペットの在宅ケアサービスの拡大と動物医療の多角化を目指します。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高成長を伴った業績予想値を経営上の目標としております。その達成状況の検証のため、二次診療(画像診断)サービスにおいては初診数、総診療件数、手術数、連携病院数、獣医師数などを、在宅ヘルスケアサービスにおいては、契約数、代理店数などを定期的にモニタリングしております。

 

(3) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等

 当社グループが属する動物医療業界におきましては、全国動物病院数は増加を続けており、また、犬猫の高齢化に伴い疾病が多様化する中で飼い主の動物医療に対する多様化・高度化要請は高まってきております。

このような環境の中で、当社では以下の項目を優先的な課題として取り組んでおります。

① 人材の確保と育成

 当社グループは、獣医師、動物看護師をはじめとする専門的で優秀な人材を確保するための積極的な採用活動を行っております。同時に、給与・賞与水準の向上等の待遇改善や社員にとって働きがいのある、働きやすい環境整備を通じた人材定着施策と、「専門性」・「人間味」・「一体感」の3つのバリューを体現する人材の早期育成に、最優先に取り組んでおります。

② 二次診療施設の生産性向上と新規展開

 当社グループは、2023年6月に開院した大阪病院を含む施設への人材最適配置と、業務の効率化による生産性向上に取り組んでまいります。これにより、診療受入能力を増強し、より一層の診療数増加を図ります。また、より広いエリアの顧客にサービスを提供するために、引き続き二次診療施設を全国主要都市に展開する方針です。大阪病院に続く施設の開院に向けた準備を行ってまいります。

③ 質の高い動物医療サービスの提供

 当社グループは、「高度医療」を実践する企業体として、診療技術の向上、設備の充実を図ることにより、より高品質な動物医療を提供できるように努め、顧客からの信頼を確実なものにしてまいります。各種学会や学術活動への参加や各種専門有資格者の確保はもとより、動物医療レベルの向上のために施設及びグループ一体となり、顧客に必要とされる領域へサービス範囲を拡大する方針です。これに沿って、2024年5月に診療を開始した大阪病院の放射線治療施設に続き、新型の医療機器を積極的に投入してまいります。また、当社は引き続きかかりつけ医との連携強化を図るとともに、診療受入の迅速化や、ホスピタリティの向上など、顧客への「サービス」の品質を向上させることで顧客満足度を高めてまいります。

 

④ 動物医療への貢献

 当社は学会活動において当社が蓄積した知見を共有し、地域の獣医師会等と協力したセミナーの開催を積極的に行うことで当社の認知度を拡大するとともに、診療・非診療分野における大学や研究施設等との共同研究に参画し、動物医療の発展に貢献しております。

⑤ 事業領域の拡大

 当社は、事業領域拡大のためM&Aを積極的に活用し、動物医療業界における総合的企業として成長を図る方針であります。子会社テルコムが取得した「第二種動物医療機器製造販売業許可」を活用し、同社の主力製品である酸素濃縮器の医療機器認定取得を含む動物用医療機器の開発製造に着手し、動物医療の現場と在宅ケアへの一層の貢献を目指します。

⑥ コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化

 当社事業の継続的な発展を実現させるためには、コーポレート・ガバナンス機能を強化し、社会的信用を維持・向上させていくことが重要であると認識しております。

 コーポレート・ガバナンスに関しては、内部監査室による定期的モニタリングの実施と監査等委員会や監査法人との良好な意思疎通を図ることにより適切に運用しておりますが、経営の適切性や健全性を確保しつつ、全社的に効率化された組織体制の構築に向けて、さらなる内部管理体制の強化に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

<サステナビリティ基本方針>

 当社グループは、動物医療において人と変わらぬ最先端の医療設備や技術を追及し、高度医療サービスを中心に、あらゆる場面で動物の健康を支えることで人と動物が安心して暮らせるサステナブルな共生社会の実現を目指します。当社は、サステナビリティに関する取組を推進するために、ステークホルダーの方々とのコミュニケーションや協働を通して、社会の持続性と事業の持続性の両面から重要課題(マテリアリティ)を特定し、課題解決に向け適切に対応する方針です。

 

<マテリアリティ>

① 高品質の動物医療サービス提供による社会・地域への貢献

 高品質の動物医療サービスをより早く、より多くの顧客にお届けすることで国内動物医療に貢献

② 生物多様性の保全活動への貢献

 環境省、大学、研究施設、団体等と連携し、希少種(絶滅危惧ⅠA類であるツシマヤマネコ、希少な日本在来馬である木曽馬等)に当社開発製品を利用した調査・保全施策への貢献

③ 地球環境配慮・脱炭素社会への取り組み

 医療廃棄物の削減や、事業で使用している紙の使用量の削減、24時間365日稼働している医療機器・事業所等の省電力製品への切り替えによる電力削減

④ 人的資本に関する取組

 高品質な動物医療サービスの持続的な提供を可能にするための、高度な専門性を備える多様な人材の確保・育成、及び社員一人ひとりが生き生きと働ける組織・環境整備

 

(1) ガバナンス

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、代表取締役を中心としたサステナビリティ会議において、サステナビリティに関する議論を行い、基本方針を策定するとともに、当社が取組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定を行っております。サステナビリティに関する事項は取締役会へ報告され、取締役会はこれを審議・承認し、対応状況を監督しております。

なお、当社のコーポレート・ガバナンスの概要は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであり、サステナビリティへの取り組みについても、この体制のもとで運営されています。

 

(2) 戦略

<人的資本に関する取組>

・優秀な専門人材の最適配置を中長期的に見通し、採用・育成・配置戦略を実行しております。

・当社のミッションを体現するために必要な、専門領域を早期習熟するための育成プログラムを整備し、運用しております。具体的には豊富な指導陣の元で多くの専門症例実績を経験できる研修制度を構築し、社員の成長とやりがいを醸成しながら、品質と専門性を確保してまいります。また、獣医師資格のほか、2023年から開始された愛玩動物看護師資格の取得促進により、当社グループの成長を支える有資格者数を確保しております。

・日々技術が進歩している動物医療業界におきましては、継続的な知識のアップデートが必要であり、当社では動物医療に関する学会やセミナー等への年間参加計画に沿った専門性維持向上施策により、高品質な専門性を確保するとともに、学会等との知見の共有により動物医療の発展に注力しております。

・当社では高品質な動物医療サービスを提供し、ミッションを実現するために多様で優秀な人材が活躍できる環境が必要です。当社では基本的人権を保護し、人種、国籍、性別、宗教、信条、出生、年齢、心身の障がい、性的思考、その他の差別やハラスメントを行わず、従業員の自主性と創造性を最大限に発揮できる環境整備に取り組んでおります。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、一般的なリスク及び当社グループ特有のリスクのほか、サステナビリティに関連するリスクについても、中長期経営計画の策定に合わせ、中期経営計画主要施策等に影響を与えうる事業環境を確認、整理するとともに、事業戦略等の見直しの必要性について、取締役会にて議論しております。

当社グループのリスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(4) 指標及び目標

上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、指標の目標及び実績は以下のとおりであります。

                               (当社単体、各年度3月31日時点)

指標

目標値(2026年度

実績(当連結会計年度)

全獣医師数

120

82

女性管理職割合

35

31

女性労働者の育児休業取得率

100

100

男性労働者の育児休業取得率

100

100

有給取得率

95

87

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の概況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、当社グループとして必ずしも重要なリスクとは考えていない事項及び具現化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する情報開示の観点から、積極的に記載しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、別段の表示がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境に由来するリスク

① 事業環境の変化について

 当社グループは、動物医療関連事業を主たる事業領域としていることから、飼育動物の頭数の影響を大きく受けると考えられます。飼育動物の頭数は、人口動態、景気動向等の影響を受けると考えられ、一部の調査におきましては近年は減少傾向にあります。一方で動物の平均寿命は伸びてきており、高齢化による疾病が多様化していること、ペット保険の加入率が増加傾向にあること、動物1頭あたりにかける飼育費(診療費を含む)が増加傾向にあること等から、当社グループが手掛ける「動物の高度医療」に対するニーズはむしろ高まっていると認識しております。しかし上記の事業環境が悪化した場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合について

 当社グループが主たる事業領域としている動物医療業界におきましては、動物病院の数は増加傾向にあります。その大部分は地域に密着した病院(一次診療施設)であり、当社グループのような一次診療施設から紹介を受ける診療施設(二次診療施設)は、人的資源及び多額の資金を必要とすることから比較的参入障壁が高いと思われ、これまでのところ急速に増加しているとは認識しておりません。また、当社グループは多くの専門診療科を有するいわゆる総合診療施設を志向しており、複数の専門診療科の連携によって患者動物に最適な診療サービスを提供することで、他の二次診療施設との差別化を図っております。

 現行の画像診断施設におきましても、当社の豊富な診療ノウハウの導入及び積極的な設備投資により、顧客のニーズに沿ったサービスの向上を図ってまいります。

 しかしながら、今後当社グループが十分な差別化やサービス向上を図れなかった場合や、新規参入等により競争が激化し、診療数の減少が進んだ場合等には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容に由来するリスク

① 診療サービスの過誤について

 当社グループは、提供する動物医療サービスの品質管理に細心の注意を払っておりますが、提供するサービスに過誤が生じるリスクがあります。その場合、当社グループは、サービスの過誤が原因で生じた損失に対する責任を追及される可能性があります。さらに、サービスに過誤が生じたことにより社会的評価が低下した場合は、当社グループのサービスに対するニーズが低下する可能性があります。これらの場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 診療動物間での感染症の流行について

 当社グループでは、患者動物の感染症についても、診察時に患者動物の感染の有無の確認を行うことや感染症にかかった患者動物用の入院室を有していること等、厳重に対応しておりますが、患者動物の間で犬ジステンパー感染症、ケンネルコフ、猫のウイルス性上部気道感染症などの感染症が流行したことにより当社グループの社会的評価が低下した場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 施設の展開及び設備投資について

 当社グループは日本の各地に積極的に施設(病院等)の展開を推進していく予定です。当社グループがサービスを提供していなかった地域に新たに施設を開設した場合、通常、顧客は徐々に増加してまいりますが、開設する地域によっては損益分岐点を上回るまでには相応の時間を要するため、開設からある程度の期間は赤字を計上する可能性があります。

 また、既存施設においても、今後の顧客増加に備えるため、あるいは医療サービスの品質の向上を図るため、継続的な医療機器等の設備投資が必要であると認識しています。施設の新設や設備投資を行ったものの、顧客数、症例数が想定を下回った場合には、稼働率が低下することになり、減価償却費等の費用の増加を吸収できず、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 法的規制及び知的財産等に関するリスクについて

① 法的リスク

 当社グループの動物医療関連事業につきましては、「獣医師法」、「獣医療法」、その他法令により規制を受けておりますが、今後、それらの法令の改廃または新たな規制が設けられる場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、現時点においては、行政処分に該当する事象は発生していないものと認識しております。

イ.獣医師法

 獣医師法では、獣医師の任務、免許の取得、免許の取消・業務の停止、義務等について定められており、同法の規制の動向によっては当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ロ.獣医療法

 獣医療法は、飼育動物の診療施設の開設及び管理に関し必要な事項並びに獣医療を提供する体制の整備のために必要な事項を定めること等により、適切な獣医療の確保を図ることを目的とした法律であり、診療施設の構造設備の基準、診療施設の管理、獣医療を提供する体制の整備のための基本方針等について定められており、同法の規制の動向によっては当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

ハ.その他法令、及び法令改正対応

 前記獣医師法・獣医療法を始め当社グループが運営する事業に関係する法令改正については、管理部企画課を中心に情報収集を行っており、各部署において必要に応じた対応を行っています。

 特に農林水産省より「獣医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」(第四次の基本方針/2020年5月27日付)が公表され、当社グループの主な事業分野である小動物分野における獣医療に関して、「獣医師の養成と獣医療技術に関する研修体制の体系的な整備」、「小動物診療におけるチーム獣医療提供体制の充実」、「小動物分野の獣医療に対する監視指導体制の整備及び獣医療に関する相談窓口の明確化」等を図ることとされております。この基本方針に基づく法改正等の動向により、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当基本方針に沿うものとして2022年5月に施行された「愛玩動物看護師法」は、今後ますます重要性が増していくことが想定される愛玩動物を対象とした動物看護師の資質向上・業務の適正を図ることを目的に、愛玩動物看護師の国家資格化を定める法律で、2023年2月に最初の国家試験が行われました。当社グループが実践している獣医師と動物看護師の役割分担と連携を通じた「チーム獣医療」の提供の体制を充実させるため、取組を推進してまいります。

 

② 情報管理に関するリスク

 顧客や取引先の個人情報や機密情報を保護することは、企業としての信頼の根幹をなすものと認識しております。当社グループでは、社内管理体制を整備し、従業員に対する情報管理やセキュリティ教育等、情報の保護について様々な対策を推進しておりますが、万一、情報の漏洩が起きた場合、当社グループの信用は低下し、顧客等に対する賠償責任が発生するなど、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産等に関するリスク

 当社グループは、当社グループが運営する事業に関する知的財産権の獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権を侵害しないように取組んでおります。当社グループは、本書提出日現在において、第三者より知的財産権に関する侵害訴訟等を提起されたり、またそのような通知を受けておりません。しかしながら、今後当該事業分野において第三者の権利が成立した場合または認識していない権利が既に成立している場合は、第三者より損害賠償及び使用差止め等の訴えを起こされる可能性並びに使用料等の対価の支払が発生する可能性があります。また、当社グループが使用する商標権が、第三者より侵害された場合には当社グループのブランドイメージが低下する可能性があるほか、解決までに多くの時間と費用を要する可能性があります。それらの場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他のリスク

① 人材の確保及び育成について

 当社グループにおいて専門性の高い獣医師をはじめとする優秀な人材の確保、育成及び定着は今後の業容拡大のための重要課題であります。これまで、給与・賞与支給水準の向上、退職金制度の創設などの待遇改善に努めてまいりました。また、新入社員及び中途入社社員に対する研修や、リーダー層となる中堅社員への幹部教育を通じ、将来を担う優秀な人材の育成に努め、社内研修・カンファレンス、症例報告会、学会発表の指導等を通じて役職員間のコミュニケーションを図ることで、定着率の向上を図っております。

 しかしながら必要とする人材を採用できない場合、また採用、育成した役職員が当社の事業に寄与しなかった場合、あるいは育成した役職員が社外に流出した場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 特定人物への依存について

 当社の代表取締役社長である平尾秀博は、経営方針及び事業戦略等を決定するとともに、診療現場の運営にも携わっており、当社グループのビジネス全般について重要な役割を果たしております。

 当社グループは、経営ノウハウの共有、権限委譲や組織の整備などにより、同氏に過度に依存しない事業体制の構築に努めてまいりますが、今後何らかの理由で同氏が業務を執行することが困難となった場合は、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 自然災害・火災・事故への対応について

 地震、風水害等の自然災害により、事務所・設備・社員とその家族等に被害が発生した場合には、当社グループの財政状態及び業績等が悪影響を受ける可能性があります。また、当社グループは安全を第一とし、労使間において安全衛生委員会を設けて、安全対策の推進、安全教育の実施等を行っておりますが、万一、重大な労働災害、事故等が発生した場合には、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 有利子負債依存度について

 当社グループは、設備投資費用や運転資金に必要な資金を主に金融機関からの借入で調達しており、有利子負債が3,873,864千円(2024年3月末現在)、有利子負債依存度が44.2%と高い状況にあります。現状は借り換えも含め順調に調達ができておりますが、今後、金利水準が上昇した場合や計画どおりに資金調達ができなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 配当政策について

 当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして位置付けております。経営基盤の強化及び積極的な事業展開のために内部留保の充実を図りつつ、株主への利益の還元を検討する方針でありますが、

通期業績、財政状態及びその他の状況の変化によっては、利益還元に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 財務制限条項について

 当社が複数の金融機関との間で締結している借入にかかわる契約の一部には、財務制限条項が定められております。今後、当社の経営成績が著しく悪化するなどして財務制限条項に抵触した場合、借入先金融機関の請求により当該借入についての期限の利益を喪失し、一括返済を求められるなどして、財政状況及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済は、一部に弱い動きが見られましたが、緩やかに回復しました。鉱工業生産は、電子部品・デバイスが在庫調整の進展を背景に持ち直しましたが、供給制約の緩和を受けて回復が続いていた自動車が不正問題発覚に伴う生産停止から年度末にかけて大きく落ち込むなど、一進一退の動きとなりました。個人消費は、外食・宿泊・娯楽などの対面型サービスが回復しましたが、物価高の影響などから全体として弱い動きとなりました。設備投資は、高水準の企業収益を背景に底堅く推移しました。消費者物価(生鮮食品を除く総合)は、2023年1月に前年比4.2%と約40年ぶりの高い伸びとなった後、政府の電気・都市ガス代に対する負担緩和策を受けて伸びが鈍化し、9月以降は同2%台で推移しました。

 当社グループが属する動物医療業界におきましては、全国動物病院数は増加を続けており、また、犬猫の高齢化に伴い疾病が多様化する中で飼い主の動物医療に対する多様化・高度化要請は高まってきております。

 このような環境の中、当社グループは、飼い主のかかりつけ病院(一次診療施設)と連携して高度医療への取り組みを続けるとともに、当社グループ内の診療実績を発表するための学会報告を積極的に行うことにより、動物医療業界における信頼の獲得、認知度の向上と、それに伴う紹介症例数の増加に努めてまいりました。

 2023年7月以降、既存病院における診療スタッフ増強により診療能力が向上したこと、6月に開院した大阪病院が順調に推移していること、7月に再開した川崎本院の放射線治療が堅調に推移していること等から症例数は増加を続けており、当連結会計年度におきましては初診数、総診療数、手術数は過去最高となりました。

 一方で、大阪病院開院に伴い院内備品を購入するなどの一時的な費用発生や、人件費及び減価償却費の増加によりコストは上昇しました。

 大阪病院は引き続き人材の充実により症例受入れ能力の増強を図りつつ、2024年5月に開始した放射線治療を中心に、今後の成長の促進を図ります。

 また、全国展開の一環として、第5の二次診療施設となる新病院の物件選定を行っております。

 以上の結果、二次診療サービスにおきましては、初診数(新規に受け入れた症例数)は8,265件(前連結会計年度比8.5%増)、総診療数(初診数と再診数の合計)は28,974件(前連結会計年度比2.9%増)、手術数は2,531件(前連結会計年度比11.7%増)となりました。

 画像診断サービスにおきましては、一次診療施設への営業活動強化と新サービスの導入により検査件数は増加しました。

 健康管理機器レンタル・販売サービスにおきましては、代理店との関係強化施策を推進しました。電気用品安全法上の不備に関する対応の影響もあり、レンタル数・販売数は横ばいとなりました。

 以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,270,195千円(前連結会計年度比10.3%増)、営業利益496,919千円(前連結会計年度比14.4%減)、経常利益489,781千円(前連結会計年度比8.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益337,217千円(前連結会計年度比11.4%減)と増収減益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、営業活動による資金の増加899,782千円、投資活動による資金の減少985,860千円、財務活動による資金の減少392,322千円の結果、前連結会計年度末に比べ478,400千円減少し、1,337,639千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により獲得した資金は、899,782千円(前連結会計年度比11.0%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益491,305千円、減価償却費444,101千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、985,860千円(前連結会計年度比25.7%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,041,040千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は、392,322千円(前連結会計年度は820,586千円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入489,900千円、長期借入金の返済による支出609,037千円及び自己株式の取得による支出328,616千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)は生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b.受注実績

 動物医療関連事業の性格上、受注の記載になじまないため、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c.販売実績

 当社グループは、動物医療関連事業の単一セグメントであります。当連結会計年度の販売実績を売上種類別に示すと、次のとおりであります。

 

売上種類の名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

    至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

二次診療サービス(千円)

2,917,800

112.5%

画像診断サービス(千円)

539,575

114.1%

健康管理機器レンタル・販売サービス(千円)

806,103

104.0%

その他(千円)

6,716

22.0%

合計(千円)

4,270,195

110.3%

 (注)グループ間の取引については相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 当社グループは、この連結財務諸表の作成に当たって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を合理的に勘案し判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は8,770,036千円となり、前連結会計年度末と比べて191,139千円増加いたしました。

 流動資産は前連結会計年度末に比べ、619,358千円減少し、1,777,363千円となりました。これは主に売掛金が33,826千円増加した一方で現金及び預金が578,400千円、商品が20,817千円、未収還付消費税等が61,294千円減少したことによるものであります。固定資産は前連結会計年度末に比べ、810,498千円増加し、6,992,673千円となりました。これは主に大阪病院放射線治療棟建設工事による建設仮勘定144,312千円、大阪病院開院による工具、器具及び備品の取得529,582千円、川崎病院の放射線治療器の入れ替え等による工具、器具及び備品の取得241,396千円によるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は4,958,612千円となり、前連結会計年度末と比べて85,754千円増加いたしました。

 流動負債は1,538,611千円となり、前連結会計年度末に比べ268,765千円増加いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が43,975千円、未払金が210,870千円、未払費用が24,032千円、未払消費税等が35,176千円、預り金が15,011千円、賞与引当金が31,061千円増加した一方で未払法人税等が67,923千円減少したことによるものであります。また、固定負債は3,420,001千円となり、前連結会計年度末に比べ183,011千円減少いたしました。これは主に長期借入金が163,112千円、繰延税金負債が18,175千円減少したことによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は3,811,423千円となり、前連結会計年度末と比べて105,385千円増加いたしました。これは主に自己株式の取得により335,439千円減少、及び自己株式の処分により92,358千円増加、並びに、親会社株主に帰属する当期純利益337,217千円によるものであります。

 

b.経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、4,270,195千円(前連結会計年度比10.3%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度における売上原価は、2,805,844千円(前連結会計年度比15.5%増)となりました。

 この結果、売上総利益は1,464,350千円(前連結会計年度比1.5%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、967,431千円(前連結会計年度比12.2%増)となりました。

 この結果、営業利益496,919千円(前連結会計年度比14.4%減)となりました。

 

(営業外損益、経常利益)

 当連結会計年度においては、家賃収入等の営業外収益36,714千円、支払利息等の営業外費用43,852千円を計上しております。

 この結果、経常利益は489,781千円(前連結会計年度比8.3%減)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度においては、税金等調整前当期純利益は491,305千円(前連結会計年度比8.0%減)となりました。法人税、住民税及び事業税175,845千円、法人税等調整額を△21,757千円計上した結果、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は337,217千円(前連結会計年度比11.4%減)となりました。

 

c.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

 

d.経営戦略の現状と見通し

 次連結会計年度におけるわが国の経済の見通しにつきましては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、所得・住民税減税の効果もあり民間消費が回復すること、高水準の企業収益を背景に設備投資が堅調に推移することから、国内需要を中心に景気の回復基調は維持されると思われますが、世界経済全体の減速懸念などから、景気の先行きは不透明な状況が続くものと予想されます。

 このような経営環境の中、当社グループは、飼い主や一次診療施設の満足度向上と、経営基盤強化のための取組みを継続してまいります。

 新型コロナウイルス感染症の落ち着きに伴い活発になってきた学会における発表や、各種セミナーの開催を積極的に行い、動物医療業界における認知度の向上に努めるとともに、一次診療施設とのコミュニケーション強化を継続することによって、初診数の増加(当連結会計年度比17%程度)を図ります。

 特に、大阪病院においては2024年5月に開始した放射線治療を行い、広く近畿地区全域からの症例紹介受入れに努めてまいります。

 既存施設の診療能力の増強と、大阪病院に続く新病院の開院の準備として、診療を行う獣医師や愛玩動物看護師及び事務職員などの確保と育成を図る計画であります。優秀な人材確保につながる大学・専門学校・各種団体との関係性強化や人脈形成に努めるとともに、積極的な採用活動を継続いたします。

 子会社の株式会社キャミックにつきましては、飼い主や一次診療施設のニーズに沿った新サービスの導入及び性能の高い検査機器への更新により、検査能力の向上を図ります。

 子会社のテルコム株式会社につきましては、2024年1月に取得した第二種動物用医療機器製造販売業許可を活用し、医療機器を開発・上市することにより顧客からの信頼性を向上させ、事業基盤を強化してまいります。

 引き続き、中長期的に動物医療業界における総合的な企業となるべく、飼い主や一次診療施設の利便性を高めるシステムやサービスの開発・販売を進めつつ、M&Aも活用して事業領域の拡大を積極的に行う方針であります。

 以上の施策により、次連結会計年度の業績予想につきましては、売上高4,820百万円、営業利益625百万円、経常利益625百万円、親会社株主に帰属する当期純利益440百万円を見込んでおります。

(注)本資料に記載の将来に関する全ての記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、不確実性を多分に含んでおります。当社としてその実現をお約束するものではありません。実際の業績は、様々な要因から業績予測と異なる結果となる可能性がありますことをご留意ください。

 

e.経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループの経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善な経営戦略の立案、施策の実施に努めておりますが、流動的な市場環境においても継続的に利益を確保するため、顧客満足度及び社会貢献度の高い医療サービスを提供し続けることが重要と認識しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの必要資金は、主に営業活動によるキャッシュ・フローである自己資金により充当し、必要に応じて外部からの資金調達を実施することを基本方針としております。

 今後の資金需要のうち、主なものは、新病院の開業や既存病院における新医療機器導入等の設備投資や、M&A等の戦略的投資等であります。

 これらの資金については、基本方針に基づき、主に自己資金により充当する予定でありますが、負債と資本のバランスに配慮しつつ、必要に応じて金融機関から借入や増資等の資金調達を実行してまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、動物医療関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しておりますが、下記項目において研究開発を行っております。

(1)医薬品、飼料、医療機器

 当社の豊富な臨床症例を背景に、各種企業で開発された医薬品、医療機器の認可に必要な治験業務を受託することにより、広く社会に貢献しております。また、豊富ながん症例を対象に遺伝子解析を行っており、新規薬剤開発に必要なデータの集積に努めております。なお、受託開発については当連結会計年度における研究開発費はありません。

(2)活動量計「プラスサイクル」

 動物医療分野における新技術進展に活用するため、大学や研究機関との共同研究を推進しております。当連結会計年度における研究開発費はありません。

(3)動物用健康管理機器

 当期において、動物用健康管理機器「酸素ハウス」にかかる研究開発費は7,547千円であります。