文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 会社の経営方針
当社グループは、企業理念として「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げております。「私たちは、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」このような思いを企業活動の基本方針とし、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。
(2) 中長期的な経営戦略及び対処すべき課題
当社では、グループビジョンの実現に向けた中期経営計画として2023年3月期から2026年3月期までの4ヶ年を対象期間とした「NS Vision 2026 - Enabling the Future」(以下、「NS Vision 2026」という。)を策定し、現在この中期経営計画に基づいた事業運営を行っております。
当社グループを取り巻く事業環境においては、世界的な物価上昇圧力や地政学リスクの長期化、さらには主要国における選挙に伴う政策変動の不確実性といった、多様で複雑なマクロ経済環境の変化に直面いたしました。こうした外部要因によるコストの増加に対して、当社はグループ全体での製品の価格マネジメントの推進と生産性向上活動などの施策を積極的に行い対応してまいりました。
今後は、長期化する地政学リスクやサプライチェーンの混乱、エネルギー価格の変動に加えて、主要国における政策転換による通商政策の再構築や関税措置の強化といった構造的な変化に加え、それを起因とした全世界的な景気後退懸念による当社事業への影響について注視しながら、適切に対処してまいります。また、生成AIの活用促進などによるデジタル化のさらなる進展や、カーボンニュートラルへの取組みが地域によってその推進速度に変動がでる可能性なども想定され、中長期的視点に立った新たな事業機会の獲得や食品・飲料、医療、環境関連などのレジリエンス市場への取組みの強化、ガバナンス体制整備にも対処していく必要があります。
NS Vision 2026では、以下5点を重点戦略として設定しておりますが、以上のような環境認識を踏まえ、個別の施策については、各々適宜見直しを行いながら中期経営計画の達成に向けて計画を遂行してまいります。
① サステナビリティ経営の推進:2024年8月にTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フォーラムへ参画及び、TNFD提言の採用者として登録しました。環境分野では、引き続き当社グループの事業活動で排出される温室効果ガス削減に努めるほか、顧客への環境貢献製商品、サービス拡充に注力してまいります。また、保安・安全の確保、製品・サービスの品質向上、さらに社会から信頼される企業であり続けるための人権尊重の取組みや人財の多様性確保、コンプライアンス推進活動の充実と浸透に努め、持続可能な事業運営を推進しております。
② カーボンニュートラル社会に向けた新事業の探求:当社グループは、環境貢献製商品やソリューションの提供により、顧客の温室効果ガス排出削減に貢献いたします。当期も引き続き、工業炉プロセスへの酸素燃焼技術適用に向けた技術開発を継続することに加え、新たに“CO2分離回収/貯蔵・貯留”(CCS)のバリューチェーン構築に欠かせないCCS用出荷タンク設備を新たに開発するなど、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する技術開発の促進を行っております。さらに、当社グループの取組みをまとめた専用のウェブサイトの拡充を継続しており、カーボンニュートラル社会に向けた当社グループの取組みのさらなる対外発信の強化に努めてまいります。
③ エレクトロニクス事業の拡大:需要の回復とさらなる需要の拡大が期待される中、半導体材料ガス及び関連機器などの生産能力の拡充を図っております。また、日本での最先端半導体製造の量産化を目指す顧客のパイロットラインへのガス関連工事施工及びバルクガス供給を進めており、これらの旺盛な大規模半導体工場の新設に必要となる超高純度空気分離装置の製品化に向けた取組みも進めております。
④ オペレーショナル・エクセレンスの追求:各事業会社では業務の生産性向上活動を強く推進し、利益の最大化を図ることに取り組んでおります。また当社のグローバル化を前進させ、グループ全体で生産性向上プログラムやベストプラクティスを共有させるため、推進プロジェクトのプロジェクトリーダーを指名し活動を推進しています。具体的には、各事業会社のベストプラクティスをオペレーショナル・エクセレンス・デイというイベントで紹介し、各社の生産性向上の意識を高めており、併せてプロジェクトの水平展開をより活性化するために個別のワーキンググループを設けてグループ一丸で活動を推進しております。ワーキンググループは今後拡張を図ってまいります。
⑤ 新しい価値創出へとつながるDX戦略:各事業会社では、各生産性向上活動や、製品価格マネジメントを推進するためにデジタルデータを活用した事業モデルの高度化に取り組んでおります。今後さらにグループ全体としても各事業会社の取組みを統括して強化してまいります。
4極の産業ガス事業では上記5つの重点戦略に共通して取り組む一方、地域固有の経営課題にも取り組んでおります。
・日本:収益性向上を重要施策として推進すべく、事業ポートフォリオの見直しや各種収益率向上プログラムを実施するとともに、国内エレクトロニクス産業の拡大を受けた各種需要の獲得と安定供給に向けた設備拡張を進め、トータルソリューションの提供で力強い成長の実現を図ってまいります。また、顧客のGHG排出量削減や生産性向上に資するガスアプリケーションを基点としたイノベーションを実現し、新たな事業領域の探索・拡大を目指してまいります。
・米国:新政権による相互関税発動などの政策が米国内産業に及ぼす影響など不確実性が増す中ではありますが、引き続き新規オンサイト事業の探索、物価の上昇に伴うプライシング活動の継続、コールドチェーンにおけるドライアイス需要獲得に向けた生産拠点の拡充などによる事業密度向上を目指します。また既に立ち上げている大型プロジェクトについては円滑な遂行を図ってまいります。
・欧州:食品・飲料、医療、環境関連などのレジリエンス市場に注力するとともに、欧州エレクトロニクス市場の拡大を受け、関連製品の需要獲得に向けた対応を進めます。当期においては、エンジニアリング会社への戦略的投資を実行し、スペインにおける在宅医療事業の拡充を発表しました。今後もグループのエンジニアリング能力の強化を図るとともに、引き続き環境関連でのビジネス機会の獲得や酸素燃焼技術領域の拡大とバイオメタン市場の拡大に向けた案件獲得活動を促進してまいります。
・アジア・オセアニア:当期は豪州において産業ガス、LPガスの販売を拡大するため、2件の買収について合意いたしました。豪州における当社のプレセンスの向上に加えて、アジア各国における大型オンサイト案件の獲得や空気分離装置の能力増強、成長拡大余地の大きいエレクトロニクス市場に対する製品の拡充に取り組んでおります。同地域の今後の経済成長を前提に、引き続き新商材や事業エリアの拡大に注力するとともに、各事業会社の収益力強化に向けた生産性向上活動の浸透を図ってまいります。
また、当社グループ唯一のB to Cビジネスであるサーモス事業では、新商品を積極的に投入するとともに、機動的な広告宣伝並びに店頭プロモーションを実施することにより需要の拡大を目指します。また、販売チャネルの多角化を図るため、直営店拡大と電子商取引を拡大しており、メンバーズサイトの拡充やお客様サポートにおけるAI活用など、顧客満足度、従業員満足度を向上する取組みにおいてDXを推進しております。
財務目標
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実績 (2025年3月期) |
NS Vision 2026最終年度目標 (2026年3月期) |
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売上収益 |
1兆3,080億円 |
9,750億~1兆円 |
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コア営業利益 |
1,891億円 |
1,250~1,350億円 |
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EBITDAマージン(注1) |
グループ:23.3% 各セグメント:15.1~31.3% |
グループ:≧24% 各セグメント:≧17~33% |
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調整後ネットD/Eレシオ(注2) |
0.71倍 |
≦0.7倍 |
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ROCE after Tax(注3) |
7.2% |
≧6% |
(注)1.EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)
コア営業利益に減価償却費及び償却費を加えて算出される利益です。国・地域により、金利水準、税率、減価償却費などに差異がありますが、この指標ではその差異を最小限に抑え、利益額を表示します。
2.調整後ネットD/Eレシオ
財務の安全性を示す指標であり、(純有利子負債-資本性負債)÷(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)で算出する比率です。
なお、格付機関により、ハイブリッドファイナンスで調達した金額(調達時2,500億円)のうち各連結会計年度末における残高の50%を「資本」として認められており、当社内ではこれを資本性負債と呼称しております。
3.ROCE after Tax(Return on Capital Employed after Tax:使用資本税引き後利益率)
[NOPAT:税引き後コア営業利益(+受取配当金)]((コア営業利益-コア営業利益に含まれる持分法による投資損益)×(1-実効税率)+コア営業利益に含まれる持分法による投資損益+受取配当金)÷[使用資本](有利子負債+親会社の所有者に帰属する持分)で算出する資本効率性指標です。
非財務目標
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実績 (2024年3月期) |
NS Vision 2026 最終年度目標 (2026年3月期) |
ご参考:長期目標 (2031年3月期) |
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GHG総排出量削減(注4) |
15.3% |
18% |
32% |
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GHG排出量に関する考え方 |
7,454>5,667千t-CO2e |
当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量 |
- |
|
休業度数率(連結)(注5) |
2.09 |
≦1.6 |
- |
|
女性従業員比率 |
20.2% |
≧22% |
25% |
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女性管理職比率 |
15.4% |
≧18% |
22% |
|
コンプライアンス研修受講率 |
99.4% |
100% |
- |
(注)4.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として、該当年度の削減目標を設定しま
す。
5.休業度数率
労働災害の発生頻度を表す指標であり、休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。
6.詳細については、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ全般 ④ 指標及び目標」をご参照ください。2025年3月期実績は、2025年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する「統合報告書2025」をご参照ください。
当社はグループ理念に「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を掲げており、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現に貢献することを目標にしています。その実現の第一歩として、上記に掲げた課題に取り組んでまいります。
当社グループは、「革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献すると共に、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざします。」というビジョンのもと、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションを大切にし、サステナブルな成長及び企業価値のさらなる向上をめざしていきます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
① ガバナンス
当社グループは、取締役会の決議により、当社グループが社会から信頼され、持続的に発展していけるよう、サステナビリティに関わる各種方針を制定し、開示しています。取締役会の決議にもとづきグローバル戦略検討会議、グローバルリスクマネジメント会議、グローバル・コンプライアンス・コミッティを設置し、これらの会議を通じて、各種方針に基づいたサステナビリティに関わる当社グループの具体的な対応を検討しています。
≪グローバル戦略検討会議≫
グローバル戦略検討会議は原則年1回開催され、代表取締役社長 CEO(Chief Executive Officer)を議長とし、執行役員、室長、監査役及び議長が指名する者で構成されています。当社グループの次年度予算の決議を行う前に、各事業会社の戦略について詳細を確認するとともに、当社グループ全体での最適な資源配分についての審議を行っています。会議内ではGHG排出量目標などの非財務を含めた財務・非財務の定量的・定性的目標進捗状況についても共有・議論を行っております。グローバル戦略検討会議で決定された事項のうち技術リスクに関する事項については、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。
≪グローバルリスクマネジメント会議≫
グローバルリスクマネジメント会議は原則年1回開催され、代表取締役社長 CEOを議長とし、執行役員、室長、監査役、グループCCO(Chief Compliance Officer)、地域リスクマネジメント統括責任者及び議長が指名する者で構成されています。事業環境の変化の認識と企業価値の向上と毀損の両面からリスクの特定・評価を実施し、当社グループの重要リスクの選定、対応に関する事項、全社的なリスクマネジメントの基本方針、規程及び計画に関する事項などについて審議を行います。グローバルリスクマネジメント会議の詳細については、
≪グローバル・コンプライアンス・コミッティ≫
グローバル・コンプライアンス・コミッティは原則年1回開催され、グループCCOである議長と日本及び海外全7地域で任命された地域CCOで構成されています。当社グループのコンプライアンス推進と実効性の確保を目的に開催され、コンプライアンス推進方針及び各地域でのコンプライアンス違反事案、訴訟事案、コンプライアンス教育の実施状況報告を行うとともに、必要に応じて個別の課題などに関する審議を行います。審議事項には、当社グループ行動規範、方針の改廃、コンプライアンス推進年度計画、内部通報制度の運用上の課題に関する事項などが含まれます。
≪サステナビリティ統括室≫
当社グループでは、CSO(Chief Sustainability Officer)の統括の下、「サステナビリティ統括室」が戦略の策定やリスクの審議をはじめ、サステナビリティに関わる活動全般について推進しています。
サステナビリティに関する取組みなどの活動については、取締役会で適宜、報告しております。
当社グループのサステナビリティに関するガバナンス体制図は、以下のとおりです。当社グループのサステナビリティの推進活動の充実・浸透を目的に、グローバル戦略検討会議を補完する会議体として、サステナビリティ推進委員会を2023年7月より新設いたしました。また、2024年4月より日本及び海外各地域に地域CSOを置き、各事業会社とのサステナビリティに関する議論・取組みを推進しています。
(図表1)サステナビリティに関する「ガバナンス体制図」
表:取締役会での主な非財務関連事項 報告・検討議題
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2025年3月期 |
・非財務関連実績報告 ・非財務KPI(NS Vision 2026)進捗報告 ・各事業会社の非財務プログラム進捗報告 |
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・CDP回答方針の報告 |
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・MOS(Management of Sustainability)指標の次年度目標及び前年度実績報告 |
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・取締役報酬に連動する非財務KPIの達成度報告 |
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・TCFD開示拡充及びTNFD提言への賛同等に関する報告 |
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・グローバル戦略検討会議及びグローバルリスクマネジメント会議報告 |
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・グローバル・コンプライアンス・コミッティ報告 |
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・方針改定の承認 “人権の尊重、社会への貢献および雇用・労働・健康に関するグローバル方針” “調達方針” |
② 戦略
地球規模での環境問題やさまざまな社会課題の解決が求められる中で、企業活動においてもSDGsに代表されるようなサステナビリティへの取組みの重要性が増しています。このような状況の下、当社は2022年4月にスタートした中期経営計画「NS Vision 2026 - Enabling the Future」(以下、「NS Vision 2026」という。)の策定にあたり、企業存立の前提となる人権の尊重、保安安全、企業倫理という3項目を含め、24項目の新たなマテリアリティ(重要課題)を特定しました。当社グループは、行動規範に掲げる「革新的なガスソリューションを通じて、あらゆる産業のお客様の価値創造に貢献するとともに、人と地球の心地よい関係を創り、豊かで持続可能な社会の実現への貢献」に向け、新しいマテリアリティを踏まえた取組みを推進していくことで、サステナブルな成長及び企業価値のさらなる向上をめざしていきます。
当社グループのマテリアリティの特定プロセス及びマテリアリティは、以下のとおりです。
《マテリアリティ特定プロセス》
Step1:課題の抽出
GRIガイドライン、国連グローバル・コンパクト、ISO26000などの国際的ガイドライン、SDGsやESG評価機関の評価項目を参照し、当社の事業活動に関係する環境、社会課題を抽出
Step2:社内アンケートとマテリアリティ候補の特定
グローバルでの従業員アンケートを実施し、各リージョン事業との整合、妥当性の確認及び「ステークホルダー」及び「自社」2軸での重要度を定量評価
Step3:社内議論と確定
絞り込んだ重要課題及びその優先順位付けについて経営会議、グローバル戦略検討会議及び取締役会においてその妥当性の議論、総合的評価を実施し、マテリアリティ・マトリックスを作成
Step4:承認
取締役会での承認を得て、特定
(図表2)マテリアリティ
③ リスク管理
当社グループでは、当社グループ全体でリスクの管理体制を構築し、サステナビリティ関連の機会・リスクをマネジメントしています。具体的には、年1回開催するグローバル戦略検討会議及びグローバルリスクマネジメント会議において、サステナビリティ関連リスクの特定・評価を行っています。また、グローバル戦略検討会議では、各事業会社の機会についても議論・共有しています。これらの機会・リスクについては、サステナビリティ統括室が事務局を担当する、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。
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会議体 |
リスクの特定・評価、マネジメントのプロセス |
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• グローバル戦略検討会議 • グローバルリスクマネジメント会議 • グローバル・コンプライアンス・コミッティ • 技術リスク連絡会議 |
• 長期リスクの早期発見とその顕在化の防止、また顕在化したときに迅速な対応ができるよう、当社グループ各社でリスク管理体制を構築 • リスクの重要度は、発生頻度×財務又は戦略面への影響度により決定 • 年1回開催のグローバル戦略検討会議(議長:CEO)により、事業に関する財務又は戦略面での影響を評価 • 年1回開催のグローバルリスクマネジメント会議(議長:CEO)により、事業環境の変化の認識と企業価値の向上と毀損の両面からリスクの特定・評価を実施し、重要リスクを選定 • グローバル・コンプライアンス・コミッティ(議長:グループCCO)において、コンプライアンスに関する重大なリスクを特定・評価し、各地域の施策に反映 • グローバル戦略検討会議で決定された事項は、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議で具体的な対応策が決定され、グローバルに展開 |
④ 指標及び目標
当社グループは、特定したマテリアリティに対して、当社グループ全体で取り組む8つの非財務プログラムを策定しました。「NS Vision 2026」において、これら8つのプログラムの推進による取組みの強化、充実を図っていくことで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。この取組みを進めるにあたり、非財務目標を設定し、各指標について毎年の進捗をモニタリングすることで、マテリアリティへの取組みを着実に推進してまいります。
2025年3月期実績は、2025年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する
8つの非財務プログラムと非財務目標
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プログラム名 |
取組み内容 |
非財務目標 |
NS Vision 2026 最終年度目標 (2026年3月期) |
2024年3月期実績 |
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Carbon Neutral Program Ⅰ |
当社グループのGHG排出量の削減 |
GHG総排出量削減(注1) |
18% |
15.3% |
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Carbon Neutral Program II |
環境貢献製商品による顧客のGHG削減 |
GHG削減貢献量 |
当社グループが販売する環境貢献製商品によるGHG削減量>当社グループGHG総排出量 |
7,454>5,667千t-CO2e |
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Safety First Program |
休業災害度数率の低減 |
休業度数率(連結)(注2) |
≦1.6 |
2.09 |
|
Talent Diversity Program |
多様な人財活用の推進 |
女性従業員比率 |
≧22% |
20.2% |
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女性管理職比率 |
≧18% |
15.4% |
||
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Compliance Penetration Program |
コンプライアンス教育の実施と徹底 |
コンプライアンス 研修受講率 |
100% |
99.4% |
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Zero Waste Program |
廃棄物の排出削減 |
- |
- |
- |
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Sustainable Water Program |
水資源の有効活用 |
- |
- |
- |
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Quality Reliability Program |
品質・信頼性の向上をめざした取組み |
- |
- |
- |
(注)1.欧州事業買収が完了した2019年3月期の実績を補正し基準年度として、該当年度の削減目標を設定します。
2.休業度数率
労働災害の発生頻度を表す指標であり、休業災害被災者数÷延べ労働時間×100万時間で算出します。
(2)気候変動への対応
当社グループは、人と社会と地球の心地よい未来の実現に向け、環境負荷低減や省エネルギー活動の推進、GHG排出量削減に貢献する製商品の拡大に取り組んできました。そして、2019年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、情報開示を進めてまいりました。今後も、新しいマテリアリティの一つである「気候変動の緩和と適応」を推進し、TCFDの提言及びSSBJ基準に沿った情報開示を実施していきます。
〔TCFDに沿った情報開示〕
① ガバナンス
気候変動への対応にかかわるガバナンスに関しては、
② 戦略
当社グループでは、気候変動の事業への影響を把握し、気候変動の機会・リスクに対する当社グループ戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。
「移行シナリオ(2℃未満シナリオ)」、「物理的気候シナリオ(4℃シナリオ)」による短期(~2025年)・中期(2025~2030年)・長期(2030~2050年)の時間軸を考慮し、機会・リスクの洗い出しを行い、各リージョンでの主にガスビジネスにおけるこれらの機会・リスクに対して〔影響を受ける可能性〕×〔影響の大きさ〕の指標を基に評価を行いました。当社グループにとって財務的に大きなインパクトを与えるマイナスの影響をリスクととらえ、プラスの影響を機会ととらえています。
「移行シナリオ」では、国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenario(SDS)、「物理的気候シナリオ」では、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)による地球温暖化シナリオ(RCP8.5)を参考にし、インパクト分析を行いました。
なお、シナリオ分析により特定した事業機会を獲得していくために、代表取締役社長 CEOを議長としたカーボンニュートラルステアリングコミッティを組織し、グローバルメンバーで構成されたカーボンニュートラルエグゼクティブチームのもと、各事業会社がカーボンニュートラル社会の実現に向けた取組みを推進しています。
当社グループの機会・リスクを整理し、調達、操業、製品・サービスにおいて考えられるインパクトを分析、統合化した結果は「図表3 TCFDシナリオ分析」のとおりです。
(図表3)TCFDシナリオ分析
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タイプ |
気候変動 |
評価 |
事業リスク |
事業機会 |
当社の対応 |
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移行 |
政策規制 |
カーボンプライシング制導入 |
大 |
〈中長期〉 ・税負担の増加による収益減少 |
〈中長期〉 ・早期対応の差別化による事業機会獲得 |
・PPAやグリーン電力証書による再生可能エネルギーの導入拡大 |
|
技術 |
低炭素な代替製品への置換・省エネの進展 |
中 |
〈中長期〉 ・低炭素製品選別による既存商材の売上減少 |
〈短中期〉 ・省エネによる収益幅増大 ・低炭素化に資する既存製品の需要拡大 〈中長期〉 ・低炭素化に寄与する環境貢献商材の事業機会拡大 |
・環境貢献商材の開発促進 ・DX技術の導入などの生産性改善による省エネルギー化促進(SAITEKI導入(注)、配送最適化) |
|
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市場 |
市場ニーズの変化 顧客の事業活動の変化 |
大 |
〈長期〉 ・既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少 ・水電解プロセスの需要拡大に伴う副生O2ガスを活用した新規参入による売上減少 |
〈中長期〉 ・ブルー/グリーン水素需要の拡大 ・グリーン燃料の需要拡大 ・CCUSに向けたCO2回収需要の拡大 |
・カーボンフリー(H2、 NH3)燃焼技術の導入推進/拡大 ・酸素燃焼の利用拡大 ・CCUSに対応した中規模CO2回収需要の獲得 ・HyCO事業によるH2供給事業の拡大 ・環境貢献商材の拡販 |
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評判 |
業界批判 |
大 |
〈中長期〉 ・GHG排出企業への投資家評価低下 |
〈中長期〉 ・GHG削減貢献を示すことで安定した資金調達の継続 |
・ ・非財務情報の開示促進 |
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物理 |
急性 |
災害の激甚化 台風頻発 豪雨・干ばつ |
中 |
〈中長期〉 ・異常気象に伴う災害による工場の操業停止 ・支払保険料の増加 |
- |
・災害対策の推進 ・保険の活用 |
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慢性 |
海面上昇 平均気温の上昇 |
小 |
〈長期〉 ・気温上昇に伴う空気分離装置のランニングコスト増による収益幅縮小 |
〈中長期〉 ・疾病治療に対する医療製品の需要拡大 |
・老朽化の進んだ空気分離装置のリプレースによるランニングコスト低減 ・医療用酸素などの提供 |
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(注)数値解析を用いた空気分離装置の最適操業手法
シナリオ分析評価の結果「大」/「中」と判定された機会・リスクである下記の4項目に関して、自社事業への財務的な影響について新たに定量的試算を実施しました。試算結果は下記のとおりです。
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カテゴリ |
項目名 |
シナリオ |
試算内容 |
試算結果 |
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事業リスク |
税負担の増加による収益減少 |
1.5℃ |
当社グループの2030年時点の炭素価格による財務影響額 |
594億~925億円 |
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事業リスク |
既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少 ―鉄鋼分野におけるプロセス変更の見通し― |
2℃未満 |
当社グループ及び関連会社の2050年時点の高炉向け酸素売上高 |
300億円 (現状の600億円から半減) |
|
事業リスク |
異常気象に伴う災害による工場の操業停止 |
4℃ |
2050年に100年に一度の洪水が発生した際の当社グループの生産拠点の被害額 |
360億円 (災害保険の適用を考慮時は180億円) |
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事業機会 |
ブルー/グリーン水素需要の拡大 |
1.5℃ |
2030年、2050年時点のブルー/グリーン水素の市場規模 |
13兆~41兆円(2030年) 60兆~218兆円(2050年) |
上記試算結果の詳細
<リスク>カーボンプライシング導入:税負担の増加による収益減少
当社グループは、2050年カーボンニュートラルをめざすとともに、GHG排出量を、2019年3月期を基準年度として、2026年3月期18%、2031年3月期32%削減に取り組んでいます。当社グループの2031年3月期のGHG排出量(Scope1+2)は、約455万トンの見通しであり、IEA WEO2023のNZEシナリオを踏まえ、2030年度の炭素価格単価を約1.3万~2万円/t-CO2e(90~140 米ドル/t-CO2e)と想定し、顧客に価格転嫁できない場合、その炭素価格による当社グループの財務影響額は、年間594億~925億円という試算となります。さらなるGHG削減に向けて、空気分離装置のリプレースやグリーン電力証書の購入、再生可能エネルギーの導入などを進めていきます。
<リスク>顧客の事業活動の変化:既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少
当社グループ及び関連会社の高炉+転炉向け酸素の売上高は、当社グループ連結売上の5%程度(約600億円)と推計されます。IEA ETP2020のSDSシナリオにおける「製造方法別の製鉄量の見通し」を踏まえ、鉄鋼分野における酸素需要量の変動を考慮すると、当社グループ及び関連会社の2050年の高炉+転炉向け酸素の売上高は300億円という試算となります。鉄鋼分野において、今後、需要増が見込まれる電炉及び直接還元製鉄などにおいても酸素は利用されており、これらの需要獲得に取り組んでいきます。
<リスク>災害の激甚化:異常気象に伴う災害による工場の操業停止
WRI(世界資源研究所)によるAqueduct Floodsのシミュレーションによる、当社グループの主要生産拠点130カ所について「4℃シナリオ・2050年」「100年に一度の洪水影響」の被害見通しを確認し、国内外17カ所について、0.1m以上の浸水被害が予想されました。国土交通省による「治水経済調査マニュアル(案)令和2年4月版」を踏まえ、浸水深に基づく「販売機会ロス(営業停止損失額)」及び「在庫・設備(償却資産)への損害影響」の算定式から拠点別の被害額を算定した結果、全拠点合計で、100年に一度の洪水1回当たり約360億円の被害が想定されました。一方で、すでに加入している災害保険の適用を考慮すると被害は約180億円まで低減できる試算となります。4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。災害対策の推進や災害保険の活用などの取組みを引き続き進めていきます。
<機会>市場ニーズの変化:ブルー/グリーン水素需要の拡大
IEA「Net Zero Emissions by 2050(2023update)」によると、ブルー/グリーン水素など低排出水素の需要は、主に2030年以降に拡大する見通しであり、2030年には70Mt-H2、2050年には420Mt-H2の需要が見込まれています。またIEAのNZEシナリオでは、ブルー/グリーン水素の水素製造コストがレンジで示されており、ブルー/グリーン水素合算で、2030年には13兆~41兆円、2050年には60兆~218兆円の市場が想定されます。脱炭素社会への移行に伴う機会として、HyCO事業によるブルー/グリーン水素供給事業などの拡大を進めていきます。
③ リスク管理
気候変動への対応にかかわるリスク管理に関しては、
④ 指標及び目標
当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現を目指し、2050年までに当社グループのGHG総排出量の実質ゼロに取り組んでいます。「NS Vision 2026」では、2019年3月期を基準値とした当社グループのGHG総排出量削減目標を設定し、カーボンニュートラル社会への移行を推進しています。
2025年3月期実績は、2025年9月以降に当社ウェブサイト上で公表する
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Scope1+2 |
単位 |
2019年3月期 (基準年) |
2024年3月期 (実績) |
2026年3月期 (目標) |
2031年3月期 (目標) |
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GHG総排出量実績 |
千t-CO2e |
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- |
- |
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GHG量削減率 (基準年対比) |
% |
- |
△15.3 |
△18 |
△32 |
Scope1:事業者が所有又は管理する排出源から発生する温室効果ガスの直接排出
Scope2:電気、蒸気、熱の使用に伴う温室効果ガスの間接排出
(注)基準値である2019年3月期のGHG排出量は、
GHG排出量(千t-CO2e)
また、当社グループでは、2026年3月期までに当社グループが排出するGHG排出量を上回るGHG削減貢献量を計上する目標に取り組んでいます。2024年3月期の時点で、目標水準はすでに上回っており、2026年3月期まで維持継続を目指していきます。
〔目標〕(環境貢献製商品(※)によるGHG削減貢献量)>(当社グループのGHG総排出量実績)
(※)SF6回収サービス、燃焼式排ガス処理装置、SCOPE-JETⓇ、エムジーシールド、レーザー加工用窒素ガス供給システム(PSA)、サーモスシャトルシェフ、水素ステーション、新冷媒、高炉/電炉の酸素富化燃焼、Ar溶接
集計範囲:日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの連結子会社。なお、GHG削減貢献量実績には大陽日酸㈱の一部の関連会社を含んでいます。
「温室効果ガス削減貢献定量化ガイドライン(経済産業省2018年3月)」等に基づいて算定。
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単位 |
2024年3月期 (実績) |
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GHG総排出量実績 |
千t-CO2e |
5,667 |
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GHG削減貢献量実績 |
千t-CO2e |
7,454 |
当社グループでは、7つの産業横断的な指標の一つである内部炭素価格について、2024年4月より導入し、投資判断の際の指標の一つとして活用しています。価格については、IEA WEO2023のNZEシナリオを踏まえ、設定しました。
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指標 |
内部炭素価格の種類 |
対象GHG排出量 |
価格 |
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内部炭素価格 |
シャドウプライス |
Scope1+2 |
85 米ドル/t-CO2e |
(3)人的資本に関する開示
当社グループの事業は、世界各地で活躍する約2万人の社員一人ひとりの能力発揮により営まれています。世界4極で展開する産業ガス事業グループ各社とサーモスグループに企業理念とグループビジョンのさらなる浸透を図り、グローバルで共通の価値観を持った人財を育成していくことで、当社グループのさらなる発展と「NS Vision 2026」の実現を目指しています。
① 基本的な価値観
当社グループは、2021年2月に「人権の尊重と地域社会への貢献並びに雇用・労働・健康に関するグローバル方針」を制定し、すべてのグループ役員・従業員が本方針並びにグループ行動規範の下で、人権の尊重や適切な労働環境の整備などを通じて、企業としての社会的責任を果たすよう、社内研修等の機会を通して意識付けを行っています。
また、当社グループはグループ理念タグラインとして「The Gas Professionals」を掲げています。グローバルに事業を展開する産業ガスメーカーとして社会的貢献を果たしたいという使命感を持つ人財の育成に取り組んでいます。その育成の際に大切にしている価値観が「体・徳・知」です。これは当社の前身、旧大陽日酸㈱の時代から脈々と受け継がれてきたものでサーモス事業にも共通する価値観です。海外のグループ会社においても、「体・徳・知」のエッセンスを踏まえて各社独自の価値観を加味するなど理解しやすい形で共有されています。
② 持続的成長のための人財育成戦略
「NS Vision 2026」では、5つの重点戦略の一つであるサステナビリティ経営の推進における施策の一つとして、持続的成長のための以下3点の人財育成戦略を当社グループ全体で取り組む人財戦略として掲げて推進しています。
1. 多様な人財の受入れ及び働きやすさの確保
変化の激しい事業環境や労働市場等に対応し、「NS Vision 2026」で掲げた5つの重点戦略やセグメント別戦略等を実現するため、性別や国籍を問わず、多様な人財の確保とその能力を十分に発揮できるよう働きやすい環境の整備を進めております。
多様な人財とは、人種、国籍、民族、性別、年齢、専門性や異なる経験など様々なバックグラウンドを持つ個人を広く含む概念と捉えており、これらの人財の多様性を尊重し、受け入れることで、イノベーションの創出や経営の持続可能性向上につながると考えています。
非財務KPIとして定めている女性活躍については、主に勤務形態を含む職場・就業環境に起因する要因から日本を含む一部の地域で取組みが遅れていることを踏まえ、「NS Vision 2026」の最終年度(2026年3月期)の当社グループ全体の定量的な目標値を定めて取組み(※)を進めています。
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2023年3月期 (実績) |
2024年3月期 (実績) |
(目標) |
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19.9% |
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14.5% |
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(※)取組み具体例
相対的に女性活躍が進んでいる欧州では、将来的に経営幹部の役割を担う意欲のある女性管理職の社内認知度向上や能力開発を支援するメンターシッププログラムや、女性間の社内ネットワーク活動を推奨・支援する取組み等を推進しており、2021年から開始したメンターシッププログラムは総勢31名が参加し、本年夏より第3期が開始予定です。
一方、日本では、大陽日酸㈱において、「大陽日酸 ダイバーシティ&インクルージョン宣言」の発信と2030年までの「D&I 中期アクションプラン」を策定しました。D&Iが当たり前となる企業風土の醸成をゴールに設定し、2024年度、2025年度は、「D&I推進の理解促進」、「風土醸成・意識改革」、「環境整備」の3つを取組みの柱とし、さまざまな施策を展開しています。D&I推進の理解促進においては、社長からのメッセージ発信の機会を増やすとともに、各地で全社員対象のタウンホールミーティングを開催し、社員同士の座談会の機会を設けるなど、社長や人事部門と社員との対話の機会を作りました。さらに、上級管理職における多様性の実現を目指し、女性リーダー育成強化策として、女性管理職を対象としたスポンサーシッププログラムや管理職候補層女性対象のキャリア・デザイン研修を開始しています。これらの取組みにより、情報発信、イベントの開催、研修を通じ女性活躍推進及び多様性推進を一層加速させています。
また、あらゆる人財が能力を十分に発揮できる働きやすい環境であるか、企業理念やグループビジョンは浸透しているかなど、当社グループ従業員と会社との間のエンゲージメントの強さを測定する手段として、2022年度よりグループエンゲージメント調査を継続して実施しております。グループ各社が調査結果を分析し、エンゲージメント向上の改善アクションに取り組んだ結果として、エンゲージメントレベルは調査開始から順調に推移し、特に、2024年の調査結果では、グループ全体の改善領域として認識している多様性のカテゴリーが顕著な向上を示しました。今後も、調査から聞こえてくる「社員の声」やその変化に定期的に耳を傾け、社員が働きやすい環境を整備し、能力発揮の支援に繋げてまいります。
2. 地域を超えた人財交流の促進
イノベーションを生み、仕事の生産性を向上させるためには、人財交流は非常に有効な手段といえます。消費地立地のビジネスモデルである産業ガス事業では、長い間それぞれの国・地域で続けてきた仕事のやり方をより良い方向に転換していくためには、異なる価値観や経験を持った人が互いに意見を出し合い、新たな気付きを持つことが必要です。当社グループでは、すでに各事業会社の優れた取組みを他の国・地域の事業会社へ共有して生産性向上によるグループ総合力強化に大きな成果を出しています。
また、当社グループ全体で取り組むべき共通の課題への対応には、事業会社の枠を超えて、それぞれの分野で専門的な知見や経験を持つ世界中の優秀な人財が集まって施策に繋げることができるように、ネットワークや組織を構築することが有効です。当社グループでは、すでにITセキュリティ分野やカーボンニュートラル等のプロジェクトにおいてこのような体制を組んでいます。
さらに、地域を超えた人財交流はこのような事業面の効果のみならず、当社グループを将来牽引していくべきグローバル人財に必要なコミュニケーション力・主体性・積極性・異文化理解等のスキルやマインドを会得・醸成する機会としても非常に有効であると認識しております。また、多様な人財を受け入れて職場内ダイバーシティを促進するという側面もあり、あらゆる形態で人財交流を積極的に推進してまいります。
3. 後継者育成計画の強化
当社グループのガバナンス体制において、次世代経営者の育成は重要な課題であると認識しています。指名・報酬諮問委員会では次世代経営者の育成計画について議論を重ねており、当社グループに必要となる次世代経営者の資質や育成計画及び人財プールの在り方について検討を続けています。
当社グループは世界各国で事業を展開している一方で主要事業である産業ガス事業は地産地消のビジネス特性を有しています。グローバルな経験と事業特性・知識に精通した人財を育成すべく、グループ各社の育成計画とも連携させて次世代経営者の育成に取り組んでいきます。
③ 人財育成戦略を実現するための体制
上記グループ全体で取り組む人財戦略を推進するため、グローバル戦略検討会議等においてグループ会社に施策を共有して理解を得ながら一体となって取組みを進めております。
また、世界各地に展開するグループ会社は、展開する国・地域ごとの労働関係法規や文化・慣習に沿ってそれぞれが直面しているさまざまな人事課題に対応しながら、定期的に開催しているグループ人事責任者会議において各社の人事施策に関する先進事例や取組みを相互に共有しグループ総合力の強化に貢献をしております。
(1)当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは、2020年10月の純粋持株会社体制への移行を機に、よりグローバルな視点に基づく、全社的なリスクマネジメント体制を構築いたしました。「グローバルリスクマネジメント会議」を中心に、グループにおける役割と責任を明確化し、経営上のリスクを中長期視点から評価し、リスクマネジメント活動の最適化を図っています。
代表取締役社長 CEOは、「グローバルリスクマネジメント統括責任者」として、全社的なリスクマネジメント体制の整備・運用に関する最終的な責任を担います。また、各事業会社社長等は「地域リスクマネジメント統括責任者」として、所管する地域のリスクマネジメント体制の整備・運用に関する責任を担います。地域リスクマネジメント統括責任者のもとには、「地域リスクマネジメント推進担当者」をおき、各地域のリスクマネジメントを推進しています。
「グローバルリスクマネジメント会議」は同時期に開催される「グローバル戦略検討会議」と連携し、グループ全体の事業戦略をリスクと機会の両面から捉えることに努めています。また、「グローバルITセキュリティ評議会」、「グローバルコンプライアンスコミッティ」ともリスク情報を共有しながら、全社的なリスクマネジメント活動を推進しています。当社グループのリスクマネジメントの体制図は、図表1をご参照ください。
(図表1)当社グループのリスクマネジメント体制図
(2)リスクマネジメントのプロセス
当社グループでは、事業を取り巻く外部環境・内部環境の変化をリスクと機会の両面から特定・評価します。リスク評価にあたっては、様々な国・地域・領域で事業を展開する事業会社のリスクと、持株会社としての当社のリスクをグループ共通の枠組み(リスクカテゴリ、リスク定義、リスク評価基準)で評価します。
グループ全体のリスク評価結果に基づき、「グローバルリスクマネジメント会議」にて、リスク認識、リスク対応を共有し、当社グループの重要リスクを選定します。経営トップの判断のもと、リスクの優先順位、対応方針を定め、重要リスク低減に向けた活動をグループ全体で推進してまいります。
リスクマネジメントプロセスは、「当社及び事業会社におけるリスクマネジメントプロセス」と、当社グループとして特に優先して組織的な対応が必要である「重要リスクに関するリスクマネジメントプロセス」があり、いずれもリスクの特定、リスクの評価、リスク対応方針の決定、リスク対応策の決定、リスクへの対応、モニタリング・見直しで構成されます。
また、事業環境の変化が著しい昨今は、変化に応じたリスク対応の強化・見直しが必要となります。当社グループでは、各事業会社とグローバルリスクマネジメント推進事務局が「リスクマネジメント連絡会」を定期的に開催し、事業環境の変化や、それに応じたリスク対応の強化・見直し等のモニタリングを実施し、リスク情報とベストプラクティスの共有を図っています。
(3)グローバルリスクマネジメント会議
当社グループは「グローバルリスクマネジメント会議」を原則年1回開催します。グローバルリスクマネジメント会議は、当社代表取締役社長 CEOを議長とし、執行役員、室長、監査役、グループCCO、地域リスクマネジメント統括責任者及び議長が指名する者で構成し、当社グループの重要リスクの選定、対応に関する事項、全社的なリスクマネジメントの基本方針、規程、及び計画に関する事項等について審議を行います。
当社グループの重要リスクの選定にあたっては、グループ共通のリスク評価基準である「発生頻度」(5段階)「影響度」(5段階)とともに、以下図表2の考え方を踏まえて検討します。
(図表2)当社グループの重要リスク選定の考え方
2024年度のグローバルリスクマネジメント会議では、昨年度の重要リスクテーマ、そしてこの1年間の環境変化を踏まえ、以下を当社グループの重要リスクテーマとして選定しました。
1.外部環境・内部環境の変化
地政学リスク、サプライチェーン、経済情勢の変化、カーボンニュートラル
2.基盤事業の維持・強化
設備老朽化、技術開発の連携強化、コンプライアンス・腐敗防止、ITセキュリティ
3.上記を支える人材の確保・育成
人材不足、後継者計画、DEI
上記の重要リスクテーマごとに各事業会社、NSHD各室におけるリスク認識、リスク対応策を比較し共有しました。地政学リスクのみならず経済情勢が大きく変化する中、2024年度は「米国による関税政策と当社グループの主要拠点への影響」等についてディスカッションを行いました。それぞれの事業環境により、リスク認識、リスク対応策は異なりますが、その背景と違いを理解し、リスクを多面的に捉えることにより、当社グループにおけるリスクマネジメント活動の更なる向上を図ります。
今後も当社と各事業会社が連携しながら、重要リスクテーマの対応状況の確認や、リスク低減に向けた取組みを進めてまいります。上記を踏まえた当社グループの「事業等のリスク」は以下のとおりです。
(4)事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) 経営戦略・事業に関するもの
① グローバル事業展開について
当社グループは、現在、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極で、グローバルに事業を展開しております。各国における事業運営は、これらの国・地域における市場動向、政治、経済、慣習、宗教、テロ、紛争、大規模災害その他の要因によって、当社グループの事業活動、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社は各地域を統括する事業会社との意思疎通と情報共有を進め、迅速な意思決定に努めております。
② 設備投資について
当社グループは、各国に工業ガスの製造拠点を有しており、大口顧客向けには、顧客の敷地・隣接地に空気分離装置等を設置し、パイピングによるガス供給(オンサイトプラント方式)を行っております。また、新たな分野を含め、今後ともビジネスチャンスの獲得に向けた投資を進めてまいりますが、産業構造、及び需要動向の変化による鉄鋼、化学、石油精製、半導体、自動車等、主力顧客の操業率の低下や、生産拠点の統廃合や移転などにより、当社グループの製造設備の稼働率が低下し、或いは設備の全部又は一部が不要になり、また建設中のプロジェクトにおいて、顧客の事業環境、経営状況の変化によりプロジェクトの継続が困難となり、かつ、契約による補償でカバーできない場合には、設備の除却損、減損損失等の発生により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 製造コストについて
主力製品である酸素、窒素、アルゴンの製造コストは、電力コストが大きな割合を占めており、近年の原油価格やLNG価格の大幅な変動の影響を受けております。また、人件費や輸送費等も上昇しており、製造コストは高止まりが継続しております。それに対し、販売価格への転嫁を実施しておりますが、製造コストの上昇が継続し、転嫁が充分に行えない場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ サプライチェーンについて
当社グループが取り扱う産業ガス製品には、各種成分を混合させて製造する半導体特殊材料ガスや、産出される天然ガス田の大半を北米や中東が占めるヘリウムガスなど、グローバルなサプライチェーンが不可欠な製品があります。これらの製品は、生産状況の変動や生産国における地政学リスクの高まりにより、輸出入の規制対象品となることや、海上輸送状況の変動により、お客様への安定供給に支障が生じるリスクがあり、支障が生じた場合、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 情報セキュリティについて
近年、AIの著しい進展もあり情報セキュリティリスクは増大しております。特にサイバー攻撃はますます高度化しており、当社及び当社グループ会社において業務の中断やデータの不正流出など、予期せぬ状況や損害が発生する恐れがあります。当社はこうした情報セキュリティリスクに対処するため、「グローバルITセキュリティ評議会」が中心となり、アプリケーションの脆弱性を特定するためのリスク評価や、セキュリティ基盤の強化に向けた取組みを実施しています。また当社グループ全体で情報セキュリティポリシーを展開し、情報セキュリティ要件の標準化を図るとともに、従業員向けの情報セキュリティ教育、研修を実施し、情報セキュリティリスク低減に向けた取組みを進めています。
⑥ 気候変動について
地球温暖化等環境課題に関する取組みや気候変動等のリスクを開示する要請が高まる中、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づいた情報開示を進めています。これにより、ステークホルダーとの対話を強化し、グループ全体で企業価値の向上を目指しています。温暖化シナリオ分析を通じて特定した主要なリスクは、当社グループの事業活動及び経営成績に影響を与える可能性があります。当社グループでは特定したリスクを〔影響を受ける可能性〕と〔影響の大きさ〕に基づき評価し、主要なリスクについては、財務的な影響を定量的に試算しています。
気候変動に関する当社の取組みについては、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」にて、詳細に記載しております。
⑦ 法規制等について
当社グループは、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極で、グローバルに事業を展開しておりますが、各国において予想外の法規制の変更、法律・規則の制定や行政指導があった場合、対応コストの発生により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、国内外において環境に配慮した事業活動を行っておりますが、環境関連法規の改定によって規制強化が図られた場合には、対応コストの増大により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは各国において輸出を規制する法律・規則の対象となる製品・サービスの輸出を行っております。国際情勢の変化により各国の輸出規制が強化された場合には、特定の国もしくは企業への製品・サービスの輸出が減少する可能性があります。この場合には輸出の減少により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、国際情勢の変化により、当社グループが製品を輸入している特定の国もしくは企業が各国の法律により制裁対象となることがあります。その場合には当該製品の輸入を行うことができず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが製品を輸出している国において、当該製品に対する関税の引き上げが行われた場合には、当該製品の競争力が失われることによりその国への輸出が減少し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、国内外において事業を遂行する上で、産業ガス事業を規制する法律・規則だけでなく、腐敗防止法、競争法や環境保護又は輸出規制等に関する法規を担当する規制当局による調査を受けるリスクを有しており、調査の結果、罰金の支払命令、事業の停止命令、許認可の取消等の当社グループに不利益な決定がなされた場合、当社グループの事業展開、経営成績、財政状態及び信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 人財について
当社グループは現在、日本、米国、欧州、アジア・オセアニアの4極で、グローバルに事業を展開しております。各地域の事業運営には安定的に労働力を確保することが不可欠であり、目標達成には、生産、エンジニアリング、マーケティング、販売、物流、管理等の各機能や経営全般を担う人財や関連法規で要求される資格やIT等の高度専門知識と技能を有した人財、さらにグループ総合力の強化の取組みを促進するため、グローバルな視点をもった人財が必要です。そのため、多様な人財を受け入れる職場環境を醸成する施策や従業員のエンゲージメントを向上させる施策をグループ全体で促進し、人財の定着、人財の多様化、グローバル人財の育成、及び採用の競争力向上に努めています。
⑨ 技術開発について
当社グループは、積極的な技術開発活動を行い、今後の事業拡大を目指しておりますが、新製品・新技術の開発にはリスクが伴います。例えば、商品化や事業化までに長い期間を要するような場合、関連市場の状況の大きな変化により、市場投入のタイミングを逸してしまう可能性や、他社の新技術・新製品、代替製品により当社グループ製品の競争力が低下する可能性があります。当社グループでは、各開発プロジェクトの進捗と市場環境の変化に合わせて、適時プロジェクトの見直しを図っています。また、グループ内で情報共有を行い、技術開発活動に反映することで、当社技術の競争力向上に努めています。
(2) 技術・保安に関するもの
当社グループは、保安、環境、品質・製品安全、知的財産に係るリスクを技術リスクとして定義し、原則年1回開催する「グローバル戦略検討会議」の中で、各事業会社の取組み状況を確認し、持株会社としての取組み方針を決定しています。また、当社と各事業会社の保安、環境、品質保証、知的財産の責任者を委員とする「技術リスク連絡会議」を年2回開催し、会議の決定事項に取り組み、技術リスクの低減に努めています。
① 保安について
当社グループは、高圧ガスの製造・販売等を行っており、これらの製品については、高圧力や極低温による危険性のほか、液晶や半導体関連向け製品等の毒性・可燃性を有するガスも含まれております。万が一、漏洩・発火・爆発等で人身や設備に多大な損害が生じた場合には、操業停止などにより当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、これら製品の製造・供給については、取り扱う従業員に対して階層別や応募型の教育を行っています。特に、体験型技能研修施設であるテクニカルアカデミーにおいて、ガスの物性や危険性及びその取扱いについて講習することで、設備事故はもとより労働災害事故の撲滅を目指します。また、アジア・オセアニア地域の海外現地法人向けにも講習を拡充し、安全文化の醸成による保安の確保に万全を期しています。
② 環境について
当社グループの事業は、大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理など、事業展開する各国の環境規制に従って、業務を遂行しております。当社グループが現在及び将来の環境規制を遵守できなかった場合や当社グループが責任を負う汚染が発見された場合、罰金、汚染物質の除去費用又は損害賠償を含む費用や、施設及び設備を改良する投資が必要となる可能性があります。また、将来的に環境に対する法規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。当社グループでは、環境マネジメントシステム、保安・環境監査などにより、環境法令遵守に努めています。
③ 品質・製品安全について
当社グループは、高圧ガス及び関連する機器類の製造・販売等の事業を行っており、これらの製品に万が一欠陥や品質不良、故障が生じた場合には、お客様からの信頼の低下や損害賠償の負担などにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、法令やお客様の要求事項を確実に満たすために品質管理を実施し、また、販売開始前に安全審査を行い、製品に起因するリスクを適切に管理しております。
④ 知的財産について
当社グループは、知的財産を企業の競争力を高めるための経営資源と位置づけており、必要な知的財産権の取得及び保護を推進しております。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産権を侵害して不正に使用する可能性があります。そのため、必要に応じて弁護士、弁理士、政府機関等の協力を得ながら、当社グループの保有する特許、ブランド、デザイン及びその他の知的財産に関する侵害品、模倣品の監視及び排除に努めています。
一方、第三者の有効な知的財産権に対しては、代替技術の開発又は技術的な回避策を事業部門及び開発部門と連携して講じるなど、第三者の知的財産の侵害を回避する体制を構築しております。これまで当社グループが第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を提起された例は非常に少ない状況にありますが、訴訟を提起された場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、第三者の知的財産権を尊重することをポリシーとして掲げ、定期的な知的財産教育を行うことで、当該リスクの低減と最小化に努めております。
(3) 財務に関するもの
① 為替レートの変動について
当社グループは、特殊ガス、ヘリウム、機器・装置関連で原材料等の海外からの調達や製品の輸出を行っております。当該取引に関連しては、外貨建てで行っている取引があることから、為替予約などにより為替レートの変動リスク回避に努めておりますが、急激な為替の変動に対処できない場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、在外連結子会社の外貨建財務諸表金額は、連結財務諸表作成過程において円換算されるため、為替レートが予想を超えて大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 金利の変動について
当社グループは、事業戦略に基づき設備投資、M&Aを実施し、その資金を主に金融機関からの借入や社債によって調達しております。当社グループは主に固定金利による借入を行っておりますが、2019年3月期に実施した米国Praxair, Inc.の欧州事業の買収のための調達は、大部分を変動金利による借入もしくは一定年数後に固定金利から変動金利に変更されるハイブリッドファイナンスで行っており、今後の金利変動によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 三菱ケミカルグループ㈱との資本関係について
三菱ケミカルグループ㈱は当社発行済株式数の50.59%の株式を所有しております。また、同社は、2014年5月13日付けで締結いたしました資本業務提携関係のさらなる強化及び企業価値の向上を目的とした基本合意書の中で、当社に対する持株比率の維持について合意しております。
しかしながら、今後、同社グループとの資本関係に変更が生じた場合、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
④ のれん及び無形資産について
当社グループは、企業買収等に伴い、のれん及び無形資産(以下、「のれん等」という。)を連結財政状態計算書に計上しております。当社グループが将来新たに企業買収等を行うことにより、新たなのれん等を計上する可能性があります。当社グループは、のれん及び耐用年数の確定できない無形資産について毎期減損テストを実施し評価しております。経済の著しい悪化等により対象事業の成長率が大幅に低下した場合や、市場利率等の上昇により使用価値の計算に用いられている割引率が大きく上昇した場合などには、回収可能価額が著しく減少して減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) その他
大規模自然災害、感染症等について
大規模自然災害が発生した場合、当社グループの事業拠点が甚大な被害を受ける可能性があります。大規模な各種自然災害によって大型の製造拠点が被災した場合、労働力や生産機能の大幅な低下、巨額の復旧費用等の発生は避けられず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、予期せぬ事態や複合的災害、感染症などが発生した場合は、当社グループの事業活動、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これらの緊急事態発生に備え、当社グループでは、平時において事業継続計画(BCP)に必要となる発災直後の迅速な情報収集体制を整え、役職員の人命と安全を守る活動と、中核となる事業の継続や早期復旧に必要な取組みを進めております。
当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1) 経営成績
① 業績全般
当連結会計年度(2024年4月1日から2025年3月31日まで)における当社グループの事業環境は、引き続き、先行きを見通すことが困難な状況でした。
このような状況の下、グループ全体における製商品の出荷数量は微減でしたが、主力製品であるセパレートガス(酸素、窒素、アルゴン)の出荷数量は前期並みでした。グループ全体としては、コスト上昇による販売価格への転嫁等の価格マネジメント、そして地域ごとに生産性向上プログラムに取り組みました。一方、米国で建設を進めていた水素生産設備の建設計画中止に伴い、258億42百万円の減損損失が発生しました。これらの結果、当連結会計年度における業績は、売上収益1兆3,080億24百万円(前連結会計年度比 4.2%増加)、コア営業利益1,891億49百万円(同 13.9%増加)、営業利益1,659億6百万円(同 3.6%減少)、親会社の所有者に帰属する当期利益987億79百万円(同 6.7%減少)となりました。
為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べ、米ドルで145円31銭から152円57銭へと7円26銭(同 5.0%増加)の円安、ユーロで157円72銭から163円66銭へと5円94銭(同 3.8%増加)の円安となるなど、売上収益は全体で約353億円、コア営業利益は全体で約55億円多く表示されています。
なお、コア営業利益は営業利益から非経常的な要因により発生した損益(事業撤退や縮小から生じる損失等)を除いて算出しております。
(単位:百万円)
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|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率(%) |
|
売上収益 |
1,255,081 |
1,308,024 |
52,943 |
4.2 |
|
コア営業利益 |
165,996 |
189,149 |
23,153 |
13.9 |
|
非経常項目 |
6,044 |
△23,243 |
△29,287 |
- |
|
営業利益 |
172,041 |
165,906 |
△6,134 |
△3.6 |
|
金融収益 |
4,391 |
3,886 |
△504 |
- |
|
金融費用 |
△25,711 |
△24,520 |
1,191 |
- |
|
税引前利益 |
150,720 |
145,272 |
△5,448 |
△3.6 |
|
法人所得税 |
△41,356 |
△43,326 |
△1,970 |
- |
|
当期利益 |
109,364 |
101,945 |
△7,419 |
△6.8 |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
105,901 |
98,779 |
△7,121 |
△6.7 |
|
非支配持分に帰属する当期利益 |
3,463 |
3,166 |
△297 |
- |
② セグメント業績
セグメント業績は、次のとおりです。
なお、セグメント利益はコア営業利益で表示しております。
〔日本〕
産業ガス関連では、セパレートガス及び炭酸ガスの出荷数量は減少しました。また、電子材料ガスは減収でした。一方、機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に、中大型案件の工事の進捗に伴う売上等により、増収となりました。なお、前期の特定顧客向けにオンサイト供給を担う子会社のジョイント・オペレーション化及び民生用LPガス事業を担う子会社の非連結化による減収影響がありました。セグメント利益は、電力代の落ち着きや、機器・工事における売上収益の増加が寄与し、増益となりました。
以上の結果、日本セグメントの売上収益は、4,100億9百万円(前連結会計年度比 1.1%減少)、セグメント利益は、470億90百万円(同 9.5%増加)となりました。
〔米国〕
産業ガス関連では、セパレートガスの出荷数量は微増であったことや価格マネジメントの効果により、増収となりました。機器・工事では、産業ガス関連、エレクトロニクス関連共に販売が軟調でした。セグメント利益は価格マネジメントの効果に加え、生産性向上に取り組んだ結果、増益となりました。
以上の結果、米国セグメントの売上収益は、3,602億0百万円(前連結会計年度比 3.8%増加)、セグメント利益は、597億61百万円(同 19.5%増加)となりました。
〔欧州〕
産業ガス関連では、セパレートガスの出荷数量は前期並み、炭酸ガスは軟調でしたが、価格マネジメントの効果もあり、増収となりました。機器・工事では、ガス関連機器及び医療関連機器の販売が好調で増収となりました。セグメント利益は、売上収益の増加に加え、生産性向上活動が寄与し、増益となりました。
以上の結果、欧州セグメントの売上収益は、3,286億1百万円(前連結会計年度比 8.6%増加)、セグメント利益は、624億19百万円(同 17.2%増加)となりました。
〔アジア・オセアニア〕
産業ガス関連では、セパレートガスの出荷数量は堅調に推移しました。主に豪州地域での販売が多くを占めるLPガスでは、販売数量が堅調に推移し、増収となりました。エレクトロニクス関連では、ガス・機器共に増収となりました。一方、セグメント利益は、豪州における人件費及び物流費の上昇、ヘリウムの供給過多による一部地域での販売価格の軟化もあり、減益となりました。また、公表した豪州における買収事業の取得関連費用を第4四半期に計上したことも減益の要因となりました。
以上の結果、アジア・オセアニアセグメントの売上収益は、1,765億38百万円(前連結会計年度比 10.1%増加)、セグメント利益は、150億47百万円(同 5.6%減少)となりました。
〔サーモス〕
日本では、機能的でスタイリッシュなデザインの新製品の上市もあり、ケータイマグの販売は堅調で、また、韓国の販売は前期並みで増収となりました。セグメント利益は、引き続き円安に伴う製造コストの増加の影響を受けましたが、コスト低減に努め、増益となりました。
以上の結果、サーモスセグメントの売上収益は、325億93百万円(前連結会計年度比 5.9%増加)、セグメント利益は、62億86百万円(同 12.9%増加)となりました。
各セグメントの売上収益及びセグメント利益の状況は以下のとおりです。
(単位:百万円)
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
|||||
|
売上収益 |
セグメント利益 |
売上収益 |
セグメント利益 |
売上収益 |
増減率(%) |
セグメント利益 |
増減率(%) |
|
|
日本 |
414,365 |
42,998 |
410,009 |
47,090 |
△4,355 |
△1.1 |
4,091 |
9.5 |
|
米国 |
347,054 |
50,004 |
360,200 |
59,761 |
13,146 |
3.8 |
9,756 |
19.5 |
|
欧州 |
302,477 |
53,259 |
328,601 |
62,419 |
26,123 |
8.6 |
9,160 |
17.2 |
|
アジア・ オセアニア |
160,327 |
15,948 |
176,538 |
15,047 |
16,211 |
10.1 |
△900 |
△5.6 |
|
サーモス |
30,765 |
5,566 |
32,593 |
6,286 |
1,828 |
5.9 |
720 |
12.9 |
|
調整額 |
90 |
△1,780 |
80 |
△1,455 |
△10 |
- |
325 |
- |
|
合計 |
1,255,081 |
165,996 |
1,308,024 |
189,149 |
52,943 |
4.2 |
23,153 |
13.9 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
③ 経営成績
当連結会計年度における売上収益は1兆3,080億24百万円となり、前連結会計年度に比べ529億43百万円の増収となっております。為替の影響については、期中平均レートが前連結会計年度に比べ米ドルで7円26銭の円安、ユーロで5円94銭の円安、豪ドルで3円95銭の円安となるなど、売上収益は全体で約353億円多く表示されております。
売上原価は7,625億81百万円(前連結会計年度比 184億78百万円増加)、販売費及び一般管理費は3,593億18百万円(同 129億13百万円増加)、その他の営業収益は114億39百万円(同 24億24百万円減少)、その他の営業費用は366億71百万円(同 262億69百万円増加)、持分法による投資利益は50億14百万円(同 10億7百万円増加)となっております。以上の結果、営業利益は1,659億6百万円となり、前連結会計年度比で61億34百万円の減益となりました。また、営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いたコア営業利益は1,891億49百万円となっており、前連結会計年度比で231億53百万円の増益となりました。非経常的な要因により発生した損益の主な内容は、減損損失271億40百万円、固定資産売却益53億40百万円などとなっております。
金融収益は38億86百万円(同 5億4百万円減少)、金融費用は245億20百万円(同 11億91百万円減少)、これにより税引前利益は1,452億72百万円となり、前連結会計年度に比べて54億48百万円の減益となりました。主な内容は、受取利息が27億32百万円(同 54百万円増加)、受取配当金が10億15百万円(同 1億37百万円増加)、支払利息が243億89百万円(同 12億41百万円減少)などとなっております。
これらの結果、法人所得税と非支配持分を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は987億79百万円となり、前連結会計年度比で71億21百万円の減益となりました。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は2兆4,181億97百万円で、前連結会計年度末比で91億14百万円の増加となりました。為替の影響については、前連結会計年度末に比べて米ドルで1円89銭の円高、ユーロで1円16銭の円高となるなど、約207億円少なく表示されております。
当連結会計年度では、設備投資の進行により、有形固定資産が増加したほか、財務健全性を意識した有利子負債の計画的な返済を進めました。不透明な事業環境下においても、債券市場や金融機関との適切なコミュニケーションを続け、資金流動性と調達力を向上してまいります。
また、2019年1月及び同年3月に調達したハイブリッドファイナンスは合計2,500億円であり、格付機関(㈱日本格付研究所及び㈱格付投資情報センター)から、この調達額の50%を「資本」として認められており、当社では資本性負債と呼称しています。2019年1月に調達した公募ハイブリッド社債のうち1,000億円を2024年1月に期限前償還し、2019年3月に調達したハイブリッドローンについても750億円を2024年12月に期限前弁済しましたため、当連結会計年度末時点でハイブリッドファイナンスは合計750億円となっております。このハイブリッドファイナンスを考慮した財務安全性指標として、当社では調整後ネットD/Eレシオ(※)を重要業績指標の1つとして定めており、負債及び資本の最適な構成を意識しています。なお、調整後ネットD/Eレシオは0.71倍で前連結会計年度末に比べ0.03ポイント改善しております。
(※)調整後ネットD/Eレシオ=(純有利子負債-資本性負債)÷(親会社の所有者に帰属する持分+資本性負債)
〔資産〕
流動資産は、前連結会計年度末比で24億25百万円減少し、5,657億76百万円となりました。これは主に為替の影響によるものです。為替影響除外後の実質的な金額で比較すると、主に現金及び現金同等物が増加、また営業債権が減少しております。
非流動資産は、前連結会計年度末比で115億39百万円増加し、1兆8,524億21百万円となりました。これは主に有形固定資産の増加や、無形資産の減少によるものです。
〔負債〕
流動負債は、前連結会計年度末比で1,027億34百万円減少し、3,952億85百万円となりました。これは主に社債及び借入金やその他の金融負債の減少によるものです。
非流動負債は、前連結会計年度末比で370億30百万円増加し、1兆19億82百万円となりました。これは主に社債及び借入金やその他の金融負債の増加によるものです。
〔資本〕
資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上による増加や、利益剰余金の配当による減少、在外営業活動体の換算差額の減少等により、前連結会計年度末比で748億17百万円増加し、1兆209億30百万円となりました。
なお、親会社所有者帰属持分比率は40.5%で前連結会計年度末に比べ2.5ポイント高くなっております。
(3) キャッシュ・フロー
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
税引前利益、減価償却費及び償却費、法人所得税の支払額又は還付額等により、営業活動によるキャッシュ・フローは2,351億47百万円の収入(前連結会計年度比 8.9%増加)となりました。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
有形固定資産の取得による支出等により、投資活動によるキャッシュ・フローは1,429億26百万円の支出(前連結会計年度比 14.7%増加)となりました。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
長期借入金の返済による支出、長期借入れによる収入、配当金の支払額等により、財務活動によるキャッシュ・フローは732億87百万円の支出(前連結会計年度比 33.4%減少)となりました。
これらの結果に、為替換算差額等を加えた当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、1,445億28百万円(前連結会計年度比 14.6%増加)となりました。
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
|
親会社所有者帰属持分比率(%) |
27.9 |
31.8 |
33.5 |
38.0 |
40.5 |
|
時価ベースの親会社所有者 帰属持分比率(%) |
49.6 |
51.1 |
47.8 |
85.4 |
80.8 |
|
債務償還年数(年) |
6.4 |
6.2 |
5.0 |
4.3 |
3.8 |
|
インタレスト・カバレッジ・ レシオ(倍) |
12.9 |
13.7 |
14.7 |
9.3 |
9.4 |
(注)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により、以下の定義で算出しております。
親会社所有者帰属持分比率 = 親会社の所有者に帰属する持分 ÷ 資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率 = [株式時価総額] ÷ 資産合計
債務償還年数 = [有利子負債] ÷ [キャッシュ・フロー]
インタレスト・カバレッジ・レシオ = [キャッシュ・フロー] ÷ [利払い]
・[株式時価総額]は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出しております。
・[キャッシュ・フロー]は、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
・[有利子負債]は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
・[利払い]は、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(4) 生産、受注及び販売の実績
セグメントごとの販売実績については、「(1) 経営成績 ② セグメント業績」に記載のとおりであります。
なお、当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、また、受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
また、主な販売先別の販売実績及び総販売額実績に対する割合については、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定により国際会計基準(IFRS)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 及び 3.重要性がある会計方針」に記載しております。
(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、運転資金及び設備資金については、内部資金又は金融機関からの借入金、社債等により調達しております。また、当社グループとしての資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。
資金の流動性については、安定的な営業活動によるキャッシュ・フローに加え、金融機関とのコミットメント・ライン契約の締結やコマーシャル・ペーパー発行枠の設定等により十分な手元流動性を確保しております。
当社は、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(令和5年内閣府令第81号。以下、「改正府令」という。)の第3条第4号に従い、改正府令にて新たに開示が求められている「企業・株主間のガバナンスに関する合意」、「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」及び「ローン契約に付される財務上の特約」について、改正府令の施行日(2024年4月1日)前に締結された契約については、記載を省略しております。
(シンジケーション形式の金銭消費貸借契約)
当社は複数のシンジケーション形式の金銭消費貸借契約において財務制限条項が含まれており、それらの概要は以下のとおりであります。
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アレンジャーの属性 |
契約締結日 |
最終弁済期日 |
借入残高(百万円) |
担保 |
財務制限条項の概要 |
|
金融機関 |
2024年4月3日 |
2033年4月28日 |
8,500 |
なし |
各年度の決算期及び中間期の末日における借入人の連結財政状態計算書上の資本金、資本剰余金、自己株式及び利益剰余金の合計金額を2023年3月決算期における連結財政状態計算書上の資本金、資本剰余金、自己株式及び利益剰余金の合計金額の75%以上の金額に維持すること。 |
|
金融機関 |
2024年12月18日 |
2029年12月20日 |
75,000 |
なし |
2025年3月期決算以降、各年度の決算期及び中間期の末日における借入人の連結財政状態計算書上の資本金、資本剰余金、自己株式及び利益剰余金の合計金額を2024年3月決算期における連結財政状態計算書上の資本金、資本剰余金、自己株式及び利益剰余金の合計金額の75%以上に維持すること。 |
|
金融機関 |
2025年3月12日 |
2030年3月14日 |
20,000 |
なし |
2025年3月期決算以降、各年度の決算期及び中間期の末日における借入人の連結財政状態計算書上の資本金、資本剰余金、自己株式及び利益剰余金の合計金額を2024年3月決算期における連結財政状態計算書上の資本金、資本剰余金、自己株式及び利益剰余金の合計金額の75%以上に維持すること。 |
(豪州Wesfarmers Limitedの産業ガス事業の取得(子会社化))
当社は、豪州子会社であるNSC (Australia) Pty Ltdを通じて、豪州のWesfarmers Limitedの傘下であり、豪州及びニュージーランドにて産業ガス事業を展開する、Coregas Pty Ltd、Blacksmith Jacks Pty Ltd及びCoregas NZ Limitedの株式を取得する旨の株式売買契約を、2024年12月に同社と締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 36.コミットメント」に記載のとおりであります。
(欧州の在宅医療サービス事業の取得(子会社化))
当社は、欧州子会社であるOximesa S.L.U.を通じて、スペインのCorporación Químico-Farmacéutica Esteve(以下、「CQFE」という。)及びTeijin Holdings Europe BV(以下、「Teijin」という。)の合弁会社であり、同国で在宅医療サービス事業を展開する、Esteve Teijin Healthcare, S.L.の株式を取得する旨の株式売買契約を、2024年12月にCQFE及びTeijinと締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 36.コミットメント」に記載のとおりであります。
当社グループ(当社及び連結子会社)では、「進取と共創。ガスで未来を拓く。The Gas Professionals」を企業理念として、産業ガス事業の拡大を進め持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。
技術開発において、独自のガステクノロジーを基盤とした、ガスアプリケーション、エレクトロニクス、ガス分離精製、医療・ライフサイエンス、ファインマテリアル、環境、先端技術分野に向けた新商品・新技術の開発に取り組むことで収益拡大に貢献しています。またオープンイノベーションによる海外を含めたベンチャー企業との事業提携を通じ、成長分野における先端技術の取込みと、コア技術を最大限に利用した商材開発を促進しています。
当連結会計年度に支出した研究開発費の総額は
〔日本〕
日本セグメントにおいては、大陽日酸株式会社(以下、「大陽日酸」という。)つくば事業所、山梨事業所、SIイノベーションセンター、メディカル・テクニカル・サービスセンター及び京浜事業所の5拠点が連携して技術開発を実施しています。事業部門と開発部門の連携を強化し、工業ガスビジネス、エレクトロニクスガスビジネス、プラントビジネス、メディカルビジネス、新規事業開発に向けた基盤事業を支える技術開発を推進しています。カーボンニュートラルについてはグループ共通の重点課題として取り組んでいます。
カーボンニュートラルに向けた取組み
当社グループが所有する酸素燃焼技術をベースに、カーボンフリー燃料を利用する新たな酸素燃焼技術を開発しカーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
・カーボンフリー燃料である水素ガスに注目し、工業炉分野でのCO2排出削減への貢献に取り組んでいます。大陽日酸の酸素バーナのラインナップである高速酸素バーナランス「SCOPE-JETⓇ」、超低NOx酸素バーナ「Innova-JetⓇ」、自励振動型酸素バーナ「Innova-JetⓇSwing」について、水素を燃料として利用することを可能にしました。
・新型ガラスカレット熔解炉に使用する水素混焼酸素富化バーナを光学ガラスメーカーと共同で開発しました。今回の開発により、GHG排出量は従来の空気バーナに比べて、最大62%削減が可能になります。
・また欧州事業会社のNippon Gases Euro-Holding S.L.U.と、欧州の顧客の生産設備に導入したガラス製造プロセス向け酸素燃焼バーナ「Innova-JetⓇ Forehearth」で実証試験を実施し、CO2排出量が65%削減されることを実証しました。
・半導体封止材料の充填剤(フィラー)の製造工程に用いられる、純酸素燃焼を用いた粉体溶融・球状化システム「CERAMELTⓇ」に水素燃焼技術を組み合わせる技術を開発しました。燃焼工程におけるCO2排出量の削減とともに、カーボン不純物を低減させた高品質な球状粒子の製造に貢献することができます。
・国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「燃料アンモニア利用・生産技術開発/工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」に参画し、アンモニア-酸素燃焼技術の開発を進めています。当連結会計年度も引き続きAGC株式会社横浜テクニカルセンターのガラス溶融炉で、アンモニア-酸素燃焼技術の実証試験を継続し、技術実装の可能性検証を実施しております。
・石灰製造炉などの高濃度CO2排出源をターゲットとして、10t/日規模のCO2回収装置(回収CO2濃度98%)を開発・商品化しました。中小規模排出源(排ガス量1,000Nm3/hクラス)向けの装置であり、ユニット化して導入・設置が容易に行えます。また当連結会計年度において、適用可能な原料CO2濃度範囲を20~60%まで拡大し、幅広いCO2排出源からのCO2回収を可能にいたしました。原料CO2濃度が20%未満である排出源からの回収についても、現在、本回収装置の適用を可能にすべく技術開発に取り組んでいます。
・アンモニアから燃料電池自動車(FCV)の水素燃料に求められる品質仕様(ISO14687:2019 Grade D)を満たす水素の製造実証に成功しました。また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業/大規模外部加熱式アンモニア分解水素製造技術の研究開発」に参画し、大型の水素精製装置の開発を進めています。
工業ガス分野
産業ガスの使用に関する様々な工業製品を開発しています。
<溶接技術>
・配管の自動溶接に関する市場ニーズに対応し、グループ会社の日酸TANAKA株式会社と溶接状態を可視化するカメラ「サンアークアイ」シリーズを共同で開発し、2019年4月より販売しています。更に溶接状態を可視化するカメラ「サンアークアイ」シリーズの新モデルとして、現行タイプに比べて性能を維持しながら約40%の小型化・軽量化を実現した「サンアークアイSMART」を開発し、商品化しました。
<低温利用技術>
・液体冷媒を液化窒素で冷却・循環・供給するクールマイスターⓇシリーズ(低温反応制御システム)に、新たに「クールマイスターⓇAC」を商品化しました。窒素やヘリウムなどの不活性ガスを液化窒素で冷却し、-180~
-60℃の任意温度の極低温不活性ガスを供給することで、材料試験や機器の環境試験における極低温環境形成に貢献します。
・産業用、自動車部品ゴムのバリ取りの自動化に対応し、大陽日酸独自の振動篩機構を搭載するとともに、コンパクト化と低価格化を両立した高精度な液化窒素式バリ取り装置「ソフトブラスターⓇSCS-CB-BS20」を開発しました。2025年4月より同装置をラインナップに加えて販売を開始します。
エレクトロニクス分野
社会のデジタル化の加速的な普及、カーボンニュートラルな社会を支えるエレクトロニクス産業の発展に貢献するために、電子材料ガスや関連機器の販売やサービスのグローバルな提供とともに、技術開発を強化しています。
・大陽日酸とRasirc, Inc.は共同でALD成膜技術の開発に取り組んでいます。窒化膜ALDには無水ヒドラジンが、酸化膜ALDには過酸化水素ガスがそれぞれ既存の窒化材、酸化材よりも良好なプロセスを実現できることを実証しています。当連結会計年度は前年に開発した、有機溶媒と混合させることで安全性を高めた無水ヒドラジン供給ソース(Rasirc, Inc.製BRUTEⓇ-Hydrazine)を供給源とする高純度ヒドラジンガス供給システムの顧客での評価を継続しております。
・当社グループが製造しているジボランガスは、ロジック(演算素子)、メモリ(記憶素子)など幅広い半導体デバイスの製造において不可欠な材料です。日本、韓国、中国での製造能力を順次増強するため、製造システムを進化(深化)させています。
・大陽日酸が開発したインテリジェント・ガス・サプライングシステム(IGSS)は、IoTやRPAを活用したデジタル革新技術と、長年蓄積した大陽日酸のガスハンドリング・ノウハウを融合した次世代ガス供給システムです。人とロボットが共に働く協働社会の実現、新たなサービスの付加提供によって、お客様の業務効率化、省力化に貢献するべく、改良改善を進めています。
・導電性ペースト・インク用途向け表面改質銅ナノ粒子を開発しました。銅ナノ粒子が有機溶媒中に均一に分散するため、小型電子部品の電極薄膜やセラミック基板の微細配線を実現するための銅ペーストの製造に有効です。
・半導体産業における、高反応性を有する種々のガスの不純物濃度をインラインで高精度かつ高感度で連続監視する、真空深紫外光によるガス濃度モニタの開発に取り組んでいます。
プラント分野
深冷空気分離プラントについては当社グループのコア技術の深化(高性能・高品質・低コスト)に取り組むとともに、プラント製作、工場操業、ロジスティックスに革新を起こすため、DXを推進しています。
・DX推進によって保安や品質管理、生産性の向上に努め、遠隔監視システムやプラント運転条件制御システムを深化させました。
・半導体工場向けに超高純度酸素とアルゴンを効率的に安定して併産可能な窒素製造装置(NGU)を開発しています。
メディカル分野
高品質の医療用ガスの安定供給を行うとともに、在宅酸素療法のためのさまざまな機器の開発・製造、機器の定期点検や遠隔監視システム、医療用ガスの24時間体制の緊急配送など、トータルサポートに貢献しています。さらに、当社グループの持つガステクノロジーを応用し、生体試料の凍結保存をはじめとするバイオ分野、SI(Stable Isotope 安定同位体)や混合ガス等を利用した高度診断・治療分野にも取り組んでいます。
・医療ガス供給設備の容器(O2、N2、Air)内ガス残量などを遠隔地で監視するシステムの最新版となる次世代医療ガス監視システムTerm-3を開発し、展開しております。通信規格をLTE(4G)とし、サーバ機能をクラウド化することで、手持ちの端末による監視データの閲覧を可能にしました。信頼性の向上、ガス安定供給の強化、異常発生時の重大事故回避に貢献しています。
新規事業分野
当社グループでは、自社開発技術やオープンイノベーションにより獲得した製品・技術の事業化を加速しています。アディティブ・マニュファクチャリング(AM)事業、化合物半導体製造装置やSI(Stable Isotope 安定同位体)をはじめ、今後市場の発展が見込まれる分野の事業拡大を推進しています。
・アディティブ・マニュファクチャリング(AM)事業では、技術の開発と造形物品質安定化に寄与するソリューションの拡充に注力しています。当連結会計年度においては、高い品質が求められる日本市場に向けて、米国のPhase3D社が開発した金属AM用造形品質モニタリングシステム「Fringe Inspection」の国内販売に向けた契約を締結しました。また、大陽日酸の独自技術である回転TIG溶接技術による金属AM向けの専用トーチ(3DProⓇ RotoTIG)を開発いたしました。これにより無欠陥・酸化レスの高品位な溶接技術を金属AMで実現できます。
・半導体関連事業では、大陽日酸ATI株式会社とともに、半導体関連装置の研究開発を推進するため、北九州学術研究都市内に、「TNSCイノベーションセンターひびきの」を開設しました。大陽日酸の取り扱う先端製品を設置し、半導体関連装置の使用最適化をはじめ、各研究機関との共同開発による装置の研究開発に取り組みます。また、ロジックやDRAM等の先端半導体分野向け特殊材料として、Rasirc, Inc.の過酸化水素供給ソース「BRUTEⓇ Peroxide」の販売を日本で開始しました。低温での成膜や膜質改善の効果が見込める過酸化水素(H2O2)ガスを研究開発用途又は少量生産工程に供給してまいります。
・化合物半導体製造装置事業では、MOCVD装置及びHVPE装置の製造・販売するとともに、用途拡大、改良改善のための開発に取り組んでいます。当連結会計年度においては、深紫外線ライトを使った除菌装置の開発・販売を手掛けているLit Thinking社より、大陽日酸製MOCVD(SR2000HT-RR)を受注しました。本装置はUVオプトエレクトロニクスのデバイス及びパワーエレクトロニクスの開発促進に必須となる高品質なアルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)の安定的な製造に用いられます。また、大陽日酸当社製MOCVD装置(型式:SR4000HT)がサウスカロライナ大学に採用されました。本装置はパワーエレクトロニクスやその他のワイドバンドギャップ半導体製造に用いられ、窒化物半導体の開発に貢献することが期待されます。大陽日酸は同大学と協力し、先進的な窒化物半導体デバイスの研究開発を支援することで、大陽日酸製MOCVD装置のグローバル市場に対する優位性が促進されると期待しています。さらに、ワイドバンドギャップ半導体において世界的に著名なオハイオ州立大学に対し、高性能な化合物半導体デバイスの製造に不可欠な窒化物用MOCVD装置(SR4000HT-RR-LV)と酸化物用HVPE装置を納入いたします。
・SI事業では、世界初の酸素蒸留による酸素安定同位体(17O、18O)濃縮技術を開発し、水や酸素ガス、それらを使用した同位体標識化合物を製造・販売しています。
・新規事業として無細胞タンパク質合成技術を活かし、クロマトグラフィー技術に強みを有する株式会社ワイエムシィと共同で、バイオ医薬分野で需要が見込まれる難発現タンパク質の合成から精製までの一貫した開発に取り組んでいます。当連結会計年度においては、無細胞タンパク質合成技術のスケールアップ並びに応用研究開発を推進するため、公益財団法人 木原記念横浜生命科学振興財団の管理する木原横浜バイオ産業センター内に、開発拠点を開設しました。新しい開発拠点では、無細胞タンパク質合成技術を活用し、細胞成長因子や酵素などの機能性タンパク質の生産を目指した技術開発に取り組みます。
・大陽日酸は無細胞タンパク質合成技術を活かし、クロマトグラフィー技術に強みを有する株式会社ワイエムシィと共同で、バイオ医薬分野で需要が見込まれる難発現タンパク質の合成から精製までの一貫した開発に取り組んでいます。
〔米国〕
米国セグメントにおける研究開発活動は、コロラド州ロングモントに所在するMatheson Advanced Technology Centerにて行われています。ここでは、技術力の向上、顧客サービスの強化、及び既存市場やエレクトロニクス分野の拡大に向けてリソースを投入しています。
R&Dセンターでは、既存製品の支援や、それに関連する技術課題の診断・トラブルシューティング、分析機能の強化などを通じて、事業支援に積極的に取り組んできました。また、新製品の開発にも注力しており、各種分子や混合ガスの高純度化、及び半導体チップ製造における微量汚染・不純物の制御と最小化に関する取組みを進めています。
Matheson Tri-Gas, Inc.(以下、「Matheson Tri-Gas」という。)は、大陽日酸の研究開発部門との連携も積極的に進めており、当社グループ内でより効果的なR&Dを推進しています。Matheson Tri-Gasと大陽日酸は、ガスの分析・合成・精製に関してそれぞれの強みを持っており、相互の能力と経験を活かすことで技術や製品の開発を加速させています。この活動は開発活動における重複の削減にもつながり、研究開発リソースの有効活用にも貢献しています。
新製品の開発においては、Matheson Tri-Gasは新しい精製器や材料の開発を進めています。最近では、半導体デバイス製造において、集積回路が製造された後に行われる各種試験や特性評価の段階で発生し得る汚染を防止・除去するための新型精製器を開発しました。これらの試験中に、不純物がウエハーへ拡散・移動し、汚染の原因となることが知られています。Matheson Tri-Gasの新精製器は、このような汚染源を除去又は最小化することを目的に開発され、現在は実際の生産環境における性能評価試験が開始されています。
また、半導体業界においてより高純度なガスを求めるニーズが高まっていることから、従来型の精製器の改良も積極的に行っています。たとえば、Extreme Clean Dry Air(XCDA)の分野では、従来は1ppb以下の除去性能が標準とされていましたが、近年ではさらに低濃度までの除去が求められています。こうした要請を受けて、大陽日酸との協業を開始しました。
Matheson Tri-Gasはまた、分子量の高低を問わず、有機物や炭化水素系不純物の除去に向けた精製材料の開発と特性評価も進めています。これらの除去性能を正確に評価するため、超微量レベルでの分析手法を開発し、精製性能の測定精度を確保しました。その結果、ppq(parts per quadrillion:1京分の1)レベルでの炭化水素除去が可能な精製材料の開発に成功しました。
さらに、Matheson Tri-Gasは半導体ガスの除害装置分野においても、新しい材料、容器、装置の開発を進めており、特に水素化物系及びフッ素系ガスに対する動作効率、寿命、容器設計の改善に注力しています。新製品では、顧客の厳しい要求仕様を満たすために、物理的及び化学的条件が考慮されており、従来品と比べて5~10倍の寿命向上が実現されています。また、容器や装置設計の改良も施されており、これらのガスを使用する半導体顧客に対して、製品性能全体の向上に貢献しています。
金属のサンプリングや分析の分野でも、Matheson Tri-Gasは活発な活動を展開しています。装置の検出限界を低下させ、分析データのばらつきを抑制して再現性・信頼性の高い結果を安定的に提供するため、環境由来の汚染を最小限に抑えることに取り組んでいます。さらに、装置の基本的な検出限界を向上させる改良も進行中です。最後に、サンプル間のばらつきと汚染を低減するため、オートメーション化も積極的に行っています。
〔欧州〕
欧州セグメントにおける研究開発活動は、カーボンニュートラル及びガスアプリケーションに重点を置き、地域産業に対して高品質なガスソリューションを提供することを目的としています。
研究開発の中核拠点は、スペイン・エルナニにあるHernani Centerに設置されており、同拠点では廃水処理技術、バイオガス(バイオメタン、バイオCO2)、及びデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する技術開発を進めています。また、北欧の研究開発センターでは、水産養殖に関連する技術開発が行われています。さらに、イタリアの持分法適用関連会社であるHysytech S.r.l.との連携のもと、カーボンニュートラルを中心とした技術開発プロジェクトを推進しています。
その他の欧州各国においても、燃焼技術、食品冷凍、金属加工、水産養殖、金属の積層造形(3Dプリンティング)など、ガスアプリケーションに関わる顧客ニーズに対応した技術・製品開発に取り組んでいます。
当連結会計年度においては、イタリアのプラントエンジニアリング企業Polaris S.r.l.への戦略的投資を実施しました。本パートナーシップにより、ガス分離及びカーボンニュートラル関連プロジェクトにおける技術開発力の強化が図られています。
また、在宅呼吸療法サービスの強化を目的として、Esteve Teijin Healthcare, S.L.(ETH)の買収について合意しました。ETHが有する呼吸療法に関する豊富な知見と、当社グループのガス技術に関する専門性を融合させることで、当該分野での存在感を一層高めてまいります。
さらに、都市廃棄物の再利用と価値化を専門とするIET Ecology, S.L.への戦略的投資を行いました。本パートナーシップを通じて、脱炭素化ソリューションを強化するとともに、e-フューエル(合成燃料)製造技術へのアクセスも得ることになります。
なお、Hysytech S.r.l.では当連結会計年度に新本社を開設しており、エンジニアリング機能及び製造能力の拡充に加え、先進的な研究開発ラボも整備されました。これにより、バイオガス生成を含むグリーンケミストリー分野での技術開発がさらに加速しています。
こうした活動を通じて、環境・社会・ガバナンス(ESG)への取組みが高く評価され、EcoVadis SASより2年連続でプラチナメダルを受賞しました。
加えて、欧州地域におけるニーズに対応するため、ベルギーの一貫製鉄所を対象としたCO2からCOへの触媒転換リアクターに関する研究開発プロジェクトを、他の主要な化学メーカー及び鉄鋼メーカーと共同で進めています。Hysytech S.r.l.はこのプロジェクトにおけるEPC(設計・調達・建設)業務を担っており、日本及びベルギーでの地域助成金取得を目指しています。
これらの取組みを通じて、欧州地域の産業ニーズに対応した技術開発を推進するとともに、前述の技術分野における当社グループの技術力強化を図っています。
〔サーモス〕
サーモスセグメントにおいては「人と社会に快適で環境にもやさしいライフスタイルを提案します」という理念に従い、「利便性」と「環境保護」を両立させることを使命と考え、保有する断熱技術をはじめとした様々な技術と創造力で省エネルギーに貢献するとともに、快適なライフスタイルを実現する新しい価値を提供できるような商品開発を推進しております。
当連結会計年度においては、サーモスブランド120周年に合わせてプロモーション活動を行うとともに、主力商品である携帯用まほうびんに新商品を投入しました。また、キッチンアイテムの商品拡充、アパレル分野への新商品投入を実現しました。
携帯用まほうびんシリーズとして、累計出荷本数3,000万本を突破した真空断熱ケータイマグをリニューアルした、『JNL-Sシリーズ』を開発しました。『JNL-Sシリーズ』は中栓の構造と材料に加えて、本体の塗装を改良して耐熱性を向上させ、全パーツ食洗機対応の洗浄性を高めたモデルとなっております。飲み口は新分解構造で利便性も向上し、形状についてもより唇にフィットするように改良しました。『JOYシリーズ』において、飲み口に新構造となる「フルイドテック構造」を採用しました。大容量サイズの水筒でも、一度に多くの飲料が流れ出てこないようスムーズに飲める新しい飲み口の開発に着手し、「フルイドテック構造」を開発しました。水筒を傾けた際の流出量を抑えることで、温冷問わず滑らかな飲み心地を実現しました。
フライパンシリーズや調理器具からなるキッチンプラスシリーズにおいて、『取っ手のとれるフライパンセット』をリニューアルしました。取っ手の取り外しは可動ボタンをスライド式にしたことで、取り外し時の誤操作を防ぐことができます。また、サーモス株式会社で初めてセラミックコーティングを採用したマルチポット『KNCシリーズ』を開発しました。高い硬度で傷がつきにくく耐久性が高い「セラプロテクトコート」を採用しております。
同じくキッチンプラスシリーズにおいて、サーモス株式会社初となる包丁シリーズ『KKA/KKBシリーズ』を開発しました。これにより切るという調理の工程を提供することができるようになりました。使い勝手については、刃と柄の部分のつなぎ目も一体構造として洗浄性を向上させたうえで、最適な重心位置・重量を設計し、スリムな刃幅で小回りが利き、料理に苦手意識がある方にも使いやすい包丁としています。
アパレル小物を展開する新サブブランド「&ONDO(アンドオンド)」から12アイテムを開発して発売しました。サーモス株式会社が提供してきた温度による心地よさの観点から、温度にまつわるストレスのひとつである「冷え」に着目し、「サーモス=保温、温かい」とイメージからくる期待に応えられるような商品開発により、温かさや心地よさをしっかり体感していただける仕様としています。『起毛であったかルームソックス』では独自の極起毛を採用、長い極起毛が空気層を作ることで、足先の体温をキャッチして保温します。『手首あったかビーズウォーマー』『あったかビーズクッション』にはチタンコートあったかビーズを採用し、ビーズ内側の空洞とビーズ同士の空洞が作る空気層が魔法びんのような保温効果をもたらします。
このように引き続き積極的に新商品を投入し、お客様に快適なライフスタイルを提案しております。