当社は、2025年4月に、新しい経営戦略として「経営戦略2027-総合力をエンジンに未来を創る-」を策定・公表しました。
当社を取り巻く事業環境は、かつてないほど地政学リスク、経済情勢リスクが複雑に絡み合う中、地域特性に応じた脱炭素の現実解を探る動き、AIの急速な発展に伴う様々な変化もあり、政治・経済・環境・技術等あらゆる面で不確実性が一段と高まっています。このような不確実性の高い事業環境において、変化によるリスクと機会を踏まえて柔軟に事業戦略を見直しつつ、既存事業の収益基盤の更なる強化と案件創出に取り組むべく、当社の中長期的な経営方針を、今回の「経営戦略2027」としてまとめました。
(1)経営戦略
■目指す姿
多様性に裏打ちされた「総合力」を事業環境に応じて発揮することで、最適な事業ポートフォリオを構築し、持続的な成長と企業価値向上を実現する企業。
総合力:多様な事業をグローバルに展開、多彩・多才な人材がオペレーションに深く関与することで、信用・信頼を築き上げ、幅広い産業知見・深いインサイトを蓄積し、時代の変化を先取りして柔軟に事業戦略を進化させる力。
■定量目標
成長性を測る新たな中核指標として「営業収益CF:平均成長率10%以上」、資本効率を意識した経営の継続・強化指標として「ROE:2027年度に12%以上」を目標に掲げ、成長性と効率性の同時実現を目指します。

■財務健全性
「Net Debt Equity Ratio:0.6倍」を上限目処に設定し、財務健全性を維持しながら、戦略的にレバレッジを活用する方針とします。
■株主還元
累進配当を維持すると共に、機動的に自己株式取得を行うとする基本方針を維持します。
(2)経営戦略2027実現のための価値創造メカニズム
従来の循環型成長モデルを「Enhance(磨く)」「Reshape(変革する)」「Create(創る)」に再定義し、当社の競争優位性である総合力と、それぞれを強化する施策の掛け合わせにより、中長期的な成長を実現します。

(3)資金配分戦略
2027年度までの3年間で、約1兆円の更新投資及び約3兆円以上の拡張・新規投資を計画します。また、キャッシュフローの状況により追加配分枠が生じた場合は、投資パイプライン等を踏まえ、投資又は追加還元への配分を検討します。
2. 当連結会計年度のセグメント別の事業環境
主要商材であるLNGの世界需要は微増し、2024年の需要は約4.1億トンとなりました。なお、アジアのLNGスポット価格は、ウクライナや中東等での地政学リスクの高まりや、各地域における冬場の気温要因(欧州は厳冬・アジアは暖冬等)により、百万Btu(英国熱量単位)当たり9米ドル台から17米ドル台の間でボラティリティ高く推移しました。原油価格(Brent)は、年度初めには1バレル80米ドル台後半で推移しましたが、世界経済の減速懸念等を背景に当連結会計年度末時点では1バレル70米ドル台中盤まで下落しました。
世界経済の不透明感や各種素材の主要市場である中国経済の減速、需給ギャップを埋める輸出増加の影響を受け、厳しい事業環境が続きました。特に鉄鋼業界では、国内需要が弱含みで推移する一方、中国からの鋼材輸出が高水準で推移したことにより、アジアを中心として鋼材市況は低調に推移しました。一方、北米地域では高金利政策の影響が懸念されましたが、建設・インフラ分野向け等を中心に需要は引き続き底堅く推移しました。
主力事業の一つである原料炭については、中国の不動産セクターを中心に鋼材需要が減少した中で、鋼材の生産規模が維持されたことで、安価な鋼材がインド・東南アジアに輸出され、鋼材市況の値崩れ及び原料炭市況の低迷に繋がりました。もう一つの主力事業である銅については、中国製錬会社による減産計画の発表や銅大手資源メジャー再編の兆候を受けた投機資金の流入等を主因に5月に史上最高値を付けましたが、実需の低迷や投機筋の利益確定等に伴って価格は反転し、2025年1月以降は米国関税政策に左右される形で乱高下しました。
米国不動産事業では、米国利下げの実施があったものの、市場全体の取引量の十分な回復には至っておらず厳しい事業環境が続いています。一方、データセンターにおいてはクラウドの普及や生成AI需要に伴い、市場拡大が見込まれており、世界最大市場である米国市場への参入を実現しました。産業機械分野では、底堅い設備投資需要や円安の影響等を受けて、事業環境は堅調に推移しました。
世界的な金利の高止まり、特にアセアンにおける実体経済の軟化や厳格なファイナンス(自動車ローン)審査の継続等により自動車市場は低迷し、競合各社が購買力のある顧客を巡り値引き競争が激化する等、厳しい事業環境にありました。その中で、アセアンを始めとする既存の自動車バリューチェーン事業ではデジタル活用による顧客体験の質向上・ブランドロイヤリティ強化等を推進し、インド・日本ではモビリティサービス事業の構築を推進しました。
穀物価格の高騰は落ち着いてきている一方、円安等の影響で国内の飼料価格の高値は継続しており、国内畜産関連事業の収益を圧迫しました。鮭鱒養殖事業ではチリでのコスト改善が進んだ一方、ノルウェーにて病害が発生するなど、厳しい状況にありました。食料・バイオ燃料事業においては、需要がグローバルベースで中長期的に増加する見通しであり、食料安定供給体制の強化やバイオ燃料の供給網構築等を目指し、世界最大級の農産物事業会社であるADM(Archer-Daniels-Midland Company)と戦略的業務提携に関わる覚書を締結しました。
国内小売・流通事業に関しては、原材料価格の高騰、インフレ、賃金上昇等のコスト圧力に対する影響等はあったものの、消費者ニーズを踏まえたマーケティング施策による売上拡大や、DXの推進によるコスト合理化、オペレーション最適化により事業は堅調に推移しました。また、金融事業に関しては、金利・為替のボラティリティの影響は限定的に止まり、事業は堅調に推移しました。
世界各国ともに脱炭素とエネルギー安定供給の両立に向けた政策に舵を切った中でも、エネルギー安全保障にも寄与する再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)への新規投資は着実に実行され、再エネの主力電源化の流れは不可逆的なものとなっています。一方、再エネの導入増加に伴い、その間欠性を補い安定した電力供給に貢献する蓄電池等のフレックス電源、それらを活用する機能の必要性が高まっています。
3. 翌連結会計年度以降のセグメント別の事業環境の見通し
① 地球環境エネルギーグループ
脱炭素社会への移行には進展が見られるものの、地域や商材によってペースが異なります。次世代エネルギーは、商材によっては一部需要の後ろ倒しが見られる一方、SAF(Sustainable Aviation Fuel)やクリーンアンモニア等、社会実装に向けて進展している商材も見られます。また、天然ガス/LNGは相対的に環境負荷が低い点等を背景に、アジアを中心に中長期的な需要増加が見込まれます。
低・脱炭素化の進展や技術革新の加速化により、素材産業を取り巻く事業環境は今後も変化を続けていくことが想定されます。また、人口増加を支える住宅・インフラ素材、軽量化・電化を支える素材、デジタル社会の発展を支える素材等のニーズは今後も着実に伸張することが見込まれます。
原料炭においては、米国関税政策に起因する物流への影響、インド等の新興国による需要の牽引、中国鋼材需要並びに同国鋼材輸出量の推移、天候等に起因する原料炭生産者の供給制約等、海上貿易市場へ影響を与え得る事象を注視しています。銅においては、引き続き堅調な需要と供給側の制約によりタイトな需給環境となる見込みです。中長期的には、新興国を中心とする世界経済の成長や、脱炭素・電化を背景とした再エネ・EVの普及、生成AI等の進展によるデータセンター増加等により、金属資源の需要は底堅く推移することが見込まれます。
米国不動産事業については、インフレ・金利動向に影響を受ける状況に変化はなく、不動産取引量の回復状況を注視しています。データセンターについては、クラウドの普及や生成AI需要拡大に伴い日米共に市場拡大が見込まれています。また、社会インフラの維持・発展を支える産業機械分野は、底堅い需要増加が見込まれます。
主力地域であるアセアンの自動車市場は、厳格なファイナンス審査や競合各社との激しい競争が暫く継続する見通しであり、また米国の関税政策が実体経済に影響を及ぼす可能性もあり、不透明な事業環境が続くと予想されます。一方、同地域での自動車市場は、潜在的な需要や自動車普及率に鑑みると、中長期的には回復・更なる拡大に転じると想定されます。また、グローバル全体での電動化・自動運転化は、普及速度に変化はあっても不可逆的に進展する見込みであり、周辺市場の成長と新たな事業機会が見込まれます。
米国の関税政策の影響で貿易フローが変わる可能性など、不確実性の高い事業環境が続くものと予想されます。一方、世界の人口増加に加え、バイオ燃料の台頭等で基礎食料の需要拡大は続く見通しです。また、消費者のWellbeing志向の高まりや嗜好の多様化など、食の質的向上へのニーズもグローバルに拡大していくと予想されます。
中長期的には国内の人口減少・高齢化に伴う消費市場縮小の流れ、短期的には原材料価格の高止まりや金利上昇の影響が想定されますが、当面は安定した消費動向やインバウンド需要の増加等により、対面市場は底堅く推移していく見通しです。また、海外でも、米国や東南アジア等を中心に、人口増加や経済成長に伴う対面市場の伸長や新たな事業機会が見込まれます。
先進国を中心として電化進展・AI普及に伴うデータセンター新設等に牽引され、電力需要急増加の機運が高まり、局地的な電力需給の逼迫が社会課題になりつつあります。カーボンニュートラルに向けたエネルギー移行期間の長期化が現実的になりつつある中でも、脱炭素推進に向けて再エネを始めとするクリーン電力の安定的な供給に対するニーズは更なる高まりが見込まれます。
当連結会計年度における重要な個別案件については、「3 事業等のリスク 2.主要なリスクの概要 ⑤事業投資リスク」内の(重要な投資案件)をご参照ください。
当社の企業理念である「三綱領」には、事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力し、かけがえのない地球環境の維持にも貢献することがうたわれています。近年、様々な社会課題解決に対する企業への期待・要請が一層高まっている中、当社は、事業活動を通じて解決していく重要な社会課題である「マテリアリティ」を指針とし、共創価値を創出し続けることで、社会と共に成長を続けることを目指しています。マテリアリティの詳細については当社ウェブサイト
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/sustainability/materiality/
(1)サステナビリティ推進体制
サステナビリティ関連のリスク及び機会に係る戦略の策定及びリスク管理は、コーポレート担当役員(CSEO)が管掌し、サステナビリティ部が方針施策を企画・立案のうえ、サステナビリティ委員会で討議後、社長室会、取締役会に付議・報告される体制となっています。社長室会を経営意思決定機関とする業務執行体制は、全社のコーポレート・ガバナンス体制のもと、取締役会、監査等委員会により監督・監査されています。業務執行体制におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会の評価並びに管理については、「2. リスク管理」に記載しています。当社のコーポレート・ガバナンスの基本方針及び全社のコーポレート・ガバナンス体制の概要については、第4 提出会社の状況4 コーポレート・ガバナンスの状況等「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載していますが、サステナビリティ推進に係る部分のみを抜粋すると下図のとおりとなります。

(2)ガバナンスの状況
取締役会は経営上のサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む重要事項の決定と、業務執行の監督について責任を負う機関です。取締役会の構成、構成する各個人のスキル、及び監督責任を果たすために適切な取締役を選任するプロセスについては
なお、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関しては、サステナビリティ関連施策の基本方針(サステナビリティ関連施策活動方針、サステナビリティ開示方針等)が報告事項となっているほか、取締役会又は社長が必要と認める事項が付議・報告されます。また、取締役会に付議される投融資案件が重要なサステナビリティ関連のリスク及び機会を含む場合は、経済的側面だけでなく、環境・社会面も含めて審議がなされています。
監査等委員会は、会社法等諸法令や定款・諸規程等に基づき、サステナビリティに関する取組も含めて、取締役の意思決定の過程や職務執行状況の監査を実施しています。なお、当連結会計年度においては監査等委員会の監査計画の重点監査項目の1つとして中期経営戦略の実行状況を設定しており、サステナビリティ施策も含めた主要項目の実行状況を確認しました。監査等委員会の構成、当連結会計年度における監査等委員会の活動状況は
社長室会はサステナビリティを含む経営方針、経営目標、全社経営計画等に関する執行側の最高経営意思決定機関です。社長、並びに社長が指名する執行役員及び職員等が委員を構成しています。サステナビリティ委員会で討議されたサステナビリティ関連のリスク及び機会に係る全社方針が付議・報告されるほか、投融資案件のうち重要性が高い案件についても付議・報告がなされており、経済的側面だけでなく、環境・社会面からも審議がなされています。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティの基本方針や取り組みについて討議する社長室会の下部委員会です。コーポレート担当役員(CSEO)を委員長とし、副社長、他のコーポレート担当役員、全営業グループCEO及び経営企画部長が委員を構成しています。討議においては、地球環境(気候変動・生物多様性等)、地域・社会(先住民・文化遺産等)、人権・労働(児童労働・強制労働・労働安全衛生等)といった観点を踏まえ、具体的には以下のテーマを中心に取り扱っています。
・気候変動対応
・マテリアリティ
・生物多様性
・人権/サプライチェーン・マネジメント
・環境保全
以上の各機関・会議体の開催頻度、及びサステナビリティを取り上げる頻度は以下のとおりです。
2.リスク管理
(1)サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別、評価及び管理するプロセス
当社では営業グループと各リスクに対応したコーポレート専門部局が連携し、適切なリスク対応が可能な管理体制を整備しており、サステナビリティ関連のリスク及び機会についてはコーポレート担当役員(CSEO)のもとサステナビリティ部が管掌しています。当社のリスクマネジメント体制については、
全社のリスク管理方針や取組方針・戦略については、サステナビリティ推進体制のもと、サステナビリティ委員会にて討議され、社長室会及び必要に応じて取締役会への付議・報告を経て、全社施策として実行・運営されます。
また、当社では、取締役会や社長室会に付議される全ての投融資案件は、社長室会の諮問に基づき投融資委員会で審議され、社長室会へ意見具申されます。この投融資委員会には各リスクの管掌部局が参加しており、サステナビリティに関連するリスクについても、サステナビリティ部長がメンバーとして参加することで、環境や社会に与える影響も踏まえた総合的な意思決定を行う審議体制を整備しています。新規案件においては事業戦略との整合性やリスクの所在と対応策等を審議し、既存案件についても年に1度、経営計画書に基づき事業投資先の経営状況をモニタリングすることで、事業のライフサイクルなどをモニタリングし、継続的な改善・バリューアップを図っています。さらに、気候変動関連のリスク・機会が大きい一部の新規投資案件に対しては、脱炭素シナリオ下の主要前提を用いた採算指標(社内炭素価格等)に基づく採算評価を参考値として併記し、案件審議に活用しています。
(2)気候変動関連のリスク、機会の管理及びモニタリング
当社は上記のプロセスに基づき、気候変動関連のリスク及び機会を重大なサステナビリティ関連のリスク及び機会として識別しています。これは、異常気象の頻発による水資源への影響や、人口動態・自然界の生物多様性に与える影響、これに伴う食糧資源や自然資源への影響等、気候変動がもたらす影響は、地球環境や人類、企業活動にとり重大であるとともに、当社事業の継続性、並びに当社の経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があるためです。
気候変動に関連して生じるリスクは、カーボンプライシング(炭素税等)や各種規制強化による操業・設備コストの増加、既存技術に依拠する製品・サービスの陳腐化等の移行リスク(政策・法規制リスク、技術リスク、市場リスク等)と、渇水・洪水等による事業の操業への影響等の物理的リスクに大別されます。
当社は、気候変動は重大なリスクであると同時に、イノベーションや新規事業の実現を通じ新たな事業機会をもたらすものと考えており、「脱炭素社会への貢献」をマテリアリティの一つに掲げ、持続可能な成長を目指す上で対処・挑戦すべき重要な経営課題の一つとしています。
これらのリスク及び機会を管理、モニタリングし、ポートフォリオの脱炭素化・強靭化を進めるためのメカニズムの基礎として、“MC Climate Taxonomy”を導入しています。“MC Climate Taxonomy”では、当社の全ビジネスユニットを対象に、気候変動の移行機会が大きいものをグリーン事業、移行リスクが大きいものをトランスフォーム事業、どちらにも該当しないものをホワイト事業と3つに分類しています。この事業分類を踏まえて、グリーン事業・トランスフォーム事業に対して、投融資案件審査時の脱炭素採算評価の実施、投融資計画策定時のGHG削減計画確認を行い、当社事業が個別案件及び全社事業戦略の両面において2050年ネットゼロに向けたシナリオと整合することを確認する適切なリスク管理制度としました。トランスフォーム事業の選定にあたってはGHG排出量の多寡とGHG排出量の削減ハードルの両方を考慮しています。なお、分類については最低でも年度に一度見直しを行っています。
その他のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関しては、当社ウェブサイト
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/sustainability/
(1)ポートフォリオの脱炭素化と強靭化への取組
「2.リスク管理」で記載したとおり、当社は、気候変動関連のリスク及び機会を当社の事業戦略に重要な影響を与えるサステナビリティ関連のリスク及び機会として特定しています。その上で、“MC Climate Taxonomy”による分類に基づきモニタリング対象として特定した一部のグリーン及びトランスフォーム事業に対して、1.5℃シナリオ分析を実施し、これらのリスク及び機会がビジネスモデルとバリューチェーンに与える影響を評価しています。この評価結果を事業戦略へ落とし込むべく、シナリオ分析を実施したトランスフォーム事業については、トランスフォーム・ディスカッション(※)にて事業の方向性を左右する要素につき議論しています。同議論内容も踏まえて、事業戦略会議にて社長及び各営業グループCEOがGHG削減目標を踏まえた投資計画を討議します。
以上のような、気候変動に係るリスク管理及び戦略への織り込みに加え、対外開示までを一つのサイクルとしてとらえて、効果的な運用を行っています。
※トランスフォームに分類された事業を対象に、移行リスクとして注視すべき需給の動向や技術革新の動向を特定し、事業への影響
を経営レベルでモニタリングするもの。
(2)気候変動関連のリスク及び機会に係るシナリオ分析
気候シナリオとは、脱炭素化の速度や程度に影響を及ぼす社会経済・政策・市場・技術等に関する一連の仮定を置き、その結果として将来どの様な社会が実現されうるかを描くものです。1.5℃シナリオを用いてシナリオ分析を行う場合は、産業革命以前に比べた気温上昇が1.5℃に抑えられた世の中が実現しているという仮定のもと、地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化等を予想し、事業戦略への影響を検討することとなります。したがって、財務諸表における会計上の見積りの基礎となる、最新の入手可能な信頼のおける情報に基づく合理的な見積りと、シナリオ分析における一連の仮定は異なるものです。また、シナリオ分析は需給等に関する市場全体の傾向を仮定しますが、当社の保有資産の優位性あるいは劣後性や、売買契約等の特殊性により、市場全体の傾向と当社の事業への影響が一致しない場合もあります。加えて、シナリオ分析が数十年単位の超長期的な影響を分析するのに対し、財務諸表における資産及び負債の測定においては、数年から十年といった中長期的な時間軸の影響が大きく、足元の事業環境がより強く反映されることとなります。以上より、仮にシナリオ分析において、当社の事業に関連する資産の価値毀損等あるいは負債の増加等の影響が示された場合にも、それらが直ちに財務諸表における資産及び負債の測定に影響を及ぼすとは限らないと考えられます。会計上の見積りにおける気候変動の影響の考え方については、
気候シナリオについては、国際エネルギー機関(International Energy Agency (IEA))、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC))、気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(Network for Greening Financial Services (NGFS))等を始めとする機関・団体のほか、気候変動の移行リスク・機会が大きい事業を保有し、同事業の検証・評価に特に関心が高い一部の民間企業も独自に策定、公表しています。
当社は、ポートフォリオの脱炭素化と強靭化の両立に向けては、これら気候シナリオを参照した「シナリオ分析」を行い、各事業について気候変動の移行リスク・機会を適切に把握し、それらも踏まえた事業戦略を策定することが重要と考えています。その観点から、当社は、2019年度より気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に沿う形で、主にIEAの気候シナリオを用いたシナリオ分析を実施しており、2021年度からは2050年ネットゼロ実現を前提とした1.5℃シナリオを使用した分析を開始しました。当社が2021年度に実施した1.5℃シナリオ分析では、IEAの“Net Zero Emission by 2050 Scenario(IEA NZE)”を参照しましたが、IEA NZEでは分析に必要となる十分な粒度のデータが提供されておらず、当社事業の特性や、地域戦略等を踏まえた定量面も含む詳細な分析を行うことは困難でした。これを踏まえ、2022年度に外部の第三者機関と協働し、可能な限り主要な前提をIEA NZEと整合させた上で、地域別・商材別の需要といった、より細かい粒度のデータを含む独自の1.5℃シナリオ(2022年度1.5℃シナリオ)を策定し、これを参照して分析を行いました。
気候変動がもたらしうるリスク・機会の影響が特に大きいと想定される事業をシナリオ分析対象とするべく、下記の方針に沿って選定を行いました。
リスクサイドの事業選定に当たっては、GHG排出量と資産規模の二つの指標を勘案しました。具体的には、“MC Climate Taxonomy”に基づき、GHG排出量が多く、かつ排出量削減の難易度が相対的に高いことから気候変動リスクが大きいトランスフォーム事業に分類された事業のうち、資産規模が特に大きい「天然ガス・LNG」、「原料炭」、「発電(化石燃料)」事業(これら3事業はトランスフォーム事業における当社の投融資残高の約7割を占める)を分析対象候補とした上で、既に「新規の石炭火力発電事業には取り組まずに段階的に撤退、2050年までに非化石比率100%」という明確な事業方針を掲げている「発電(化石燃料)」事業は例外的に対象外とし、最終的に「天然ガス・LNG」、「原料炭」事業を2022年度1.5℃シナリオ分析の対象として選定しました。
機会サイドについては、“MC Climate Taxonomy”に基づいて気候変動機会が大きいグリーン事業に分類されたもののうち、当社の主力事業であり既に具体的な案件が複数存在する「再生可能エネルギー」事業を2022年度1.5℃シナリオ分析の対象として選定しました。
(天然ガス・LNG事業)
天然ガス・LNGは移行期において重要な役割を担うエネルギー源であり、分析に用いた2022年度1.5℃シナリオ下においては、長期的には天然ガス・LNGの需要減が見込まれるものの、当社LNG事業の戦略地域であるアジア地域では長期に亘り一定程度の需要が想定されています。掛かる事業環境認識に基づき、当社はエネルギー・資源の安定供給と社会・経済活動の低・脱炭素化の両立を目指し、以下のとおり「LNG事業の強靭化」と同時に「LNGバリューチェーンの低・脱炭素化」にも注力いたします。より中長期的には、技術イノベーションや各国政府による政策動向等を含めた事業環境を見極めた上で、LNG事業の更なる低・脱炭素化の取り組みを進めるとともに、LNGポートフォリオの最適化及び次世代エネルギー分野への投資を実施していきます。
「LNG事業の強靭化」と「LNGバリューチェーンの低・脱炭素化」に関するより詳細な取組みは以下のとおりです。
<LNG事業の強靭化>
既存のLNG事業については、生産量の大部分が長期契約に基づいて販売されていますが、生産効率の向上やコスト削減等による競争力強化を図ると同時に、継続的にポートフォリオの最適化を検討していきます。
新規のLNG案件については、脱炭素化が急速に進展した場合の座礁資産化のリスクも念頭に置き、1.5℃シナリオを含む複数の脱炭素シナリオ下における投資採算も考慮して新規投資判断を行います。
<LNGバリューチェーンの低・脱炭素化>
「LNG事業の強靭化」と並行して、本邦最大級のLNG事業者の立場・強みを活かし、LNGバリューチェーン自体の低・脱炭素化に資するCCUS(Carbon Capture, Utilization and Storage)等の推進、ブルー水素やe-methane(合成メタン)等の次世代エネルギーの製造・供給等に関する取り組みを進めることで事業機会を取り込みつつ、脱炭素社会への移行の一翼を担っていきます。
これらは、過去50年超に亘る当社の天然ガス・LNG事業への取り組みから得られた経験・知見・ネットワークが活用可能な領域であり、既に具体的な検討を進めています。
(原料炭)
鉄鋼業は今後長期にわたる移行期間に入ると想定されますが、BHP Mitsubishi Alliance(BMA)事業の主要商品である高品位原料炭は高炉製鉄プロセスの低炭素化に貢献することから、低品位の原料炭との比較において必要性が相対的に高まる見通しです。一方、許認可の取得難化等、開発難易度が高まることから、新規炭鉱投資が一段と減速し供給の減少が想定されます。BMA事業は、高品位の原料炭の安定供給を継続します。
また、当社はGHG排出量削減を積極的に推進しており、BMA事業においても、再生可能エネルギー調達、メタンガス処理やディーゼル代替等に関する取り組みを検討・推進しています。一例として、BMAは2027年までに炭鉱で使用する電力の100%を再生可能エネルギー由来に切り替える計画です。
また、パートナーであるBHP社、製鉄大手及び大手エンジニアリング会社と共同で、製鉄所でのCO2回収技術の実証試験等を共同で実施する旨の協業契約を締結する等、製鉄バリューチェーン全体でのGHG排出削減に取り組んでいます。
当社は金属資源事業においても、「脱炭素」・「電化」・「循環型社会」の三つの切り口でEX戦略を推進していきます。製鉄バリューチェーンでの脱炭素化に加え、電化に不可欠な銅・電池原料等や、リサイクル事業への取り組みを強化していきます。
(再生可能エネルギー)
再生可能エネルギーの導入や蓄電池の普及、及びこれに伴う電力供給システムの分散化傾向は、政策・規制、技術革新等の状況により国・地域による差異があり、発現するタイミングが大きく異なる可能性があります。当社は、再生可能エネルギーを「つくる(発電)」、天候により変動する電気を「整える(需給調整)」、整えた電気と付加価値の高いサービスを「届ける」、といったこれら電力バリューチェーン上の各機能の強化を通じて、洋上風力の成長が見込まれる日本や、N.V. Enecoをプラットフォームに持つ欧州を中心に、米州・アジア等でも再生可能エネルギーを起点とする事業拡大を目指します。
2022年度1.5℃シナリオにおける主要な前提、及びIEA NZEとの比較、事業環境分析、並びに事業環境を踏まえた方針・取組等の詳細は当社ウェブサイト サステナビリティページの「環境」内の「気候変動:体制・システム」、「1.5℃シナリオ分析の結果、及び分析から得られる示唆」に掲載しています。また、同セクションの「物理的リスク」に物理的リスク分析についても掲載しています。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/sustainability/environmental/climate-change/003.html#anc-83052-11
(1)目標
当社は、パリ協定と整合する2050年ネットゼロ/1.5℃目標に基づき、ポートフォリオの脱炭素化と強靭化の両立を図り、共創価値の創出を推進していきます。そのために、脱炭素社会の実現に向けた以下3つの目標を掲げています。
① GHG排出量(Scope1・2、Scope3カテゴリー15)の削減目標
2050年GHG排出量ネットゼロを前提とし、2030年度時点での中間目標として2020年度比GHG排出量半減を掲げています。この目標達成に向けて、火力発電資産のダイベストメントを中心としたポートフォリオ入替を含む具体的な削減計画を策定しています。また、削減努力を進めた上で、なお残存する排出量については、炭素除去を含めた国際的に認められる方法でオフセットを行う前提です。
なお、当社はこれまでGHG排出量の算定に出資比率基準を用いていましたが、当社の排出の責任範囲を明確にすることを目的に、2025年度より財務支配力基準に変更しました。これにより子会社・共同支配事業分のGHG排出量を当社のScope1・2、関連会社・共同支配企業分の排出量をScope3カテゴリー15と判断して開示し、その全てを削減目標対象としています。
② 発電事業における非化石比率
既存火力発電容量の削減、及びゼロエミッション火力への切り替えで、2050年までに当社発電事業における非化石比率100%化を目指します。なお、石炭火力発電事業については、受注済みのベトナム/ブンアン2案件を最後として今後新規事業は手掛けず、段階的に撤退することで、2030年度までに2020年度比で持分容量を3分の1程度まで削減し、2050年までに完全撤退する方針です。
2030年度までに再生可能エネルギー発電容量を2019年度比倍増を目指します。
(2)目標に対する進捗
2030年度までに基準年度(2020年度、2,790万トン-CO2e)比でGHG排出量(Scope1・2、Scope3カテゴリー15)を半減させるという目標に対して、当連結会計年度の実績値は以下のとおり進捗しています。なお、「(1)目標 ① GHG排出量(Scope1・2、Scope3カテゴリー15)の削減目標」に記載のとおり、GHG排出量の算定基準を出資比率基準から財務支配力基準に変更したことに伴い、前連結会計年度及び基準年度の数値を再算定しています。
当連結会計年度におけるセグメント別の排出量(Scope1・2、Scope3カテゴリー15の合計)の実績は以下のとおりです。
上記の数値は、当社及び第5 経理の状況の連結財務諸表における連結子会社、共同支配事業をScope1・2の対象とし、関連会社、共同支配企業をScope3カテゴリー15の対象と判断して集計しており、報告日についても第5 経理の状況 連結財務諸表注記3「(1)連結の基礎⑥報告日」と同様の方針としています。なお、実務上の負荷等を勘案し、一部の会社について収集を省略するなど、連結財務諸表の報告範囲との差異が生じていますが、当該差異が上記の数値に与える影響には重要性がないと判断しています。財務支配力基準でのScope3カテゴリー15のGHG排出量算出にあたっては、連結財務諸表で用いる持分比率を適用しています。
Scope1・2とScope3カテゴリー15の区分にあたって、GHG Protocol等の基準を参照していますが、一部当社としての判断を行使している場合もあります。例えばリース契約においては契約形態に応じた会計上の取扱いを参照し区分することが可能ですが、業界慣習や排出量の情報取得の難易度等も勘案し、事業ごとに異なる整理をしている場合があります。将来的に集計に係る基準の明確化等により当該整理に変更が必要な場合、かつ当該変更に関連する排出量に重要性がある場合は、当年度以前の数値についても遡及的に修正する可能性があります。
なお、削減目標の対象としているカテゴリー15以外のScope3排出実績については、当社ウェブサイト
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/sustainability/esg-data/files/ja_esg_index_001.xlsx
(1)人的資本に関するガバナンス
人的資本に関連する戦略・リスクについては、コーポレート担当役員(人事)のもと人事部が管掌しています。人事制度、人事施策、人材開発、人員政策に関する重要事項及び経営幹部人材の育成活用に関する事項については、HRD委員会(委員長:コーポレート担当役員(人事))にて討議され、所定の基準に基づき社長室会及び取締役会への付議・報告を経て、全社施策として実行・運営されます。
(2)人的資本に関する戦略 -10年後を見据えたMC HR Vision「DEAR」-
当社はこれまでも時代のニーズに合わせて自らのビジネスモデルを変革させ、新たな価値を追求して参りました。人材はその価値創出の源泉であり、当社にとって最大の資産と認識しています。
変化の激しい事業環境下においても、そうした新たな価値を創出し続ける会社・組織であるため、最も重要な経営資源である「人材」に関する10年後を見据えたMC HR Vision DEAR(多彩・多才な人材を活かし、育て、報いる)を定めました。「多彩・多才な人材がつながりながらやりがいと誇りをもって、社会や産業の課題解決に挑む会社」を目指すことを指針とし、「人」こそ最も大切にしたいという想いを込めて、“親愛なる”を意味する英単語である「DEAR」と表現し、4つのアルファベットそれぞれにて以下のようなコンセプトを示しています。
2024年度はこのMC HR Vision「DEAR」に基づき、各種人事施策を推進して参りました。

上記、MC HR Visionにて掲げた方針に基づき、DEARの4つの区分夫々において、各種施策を推進して参りました。
具体的な施策例の一部については、以下のとおりです。
a.「D:“Diversity /多彩・多才な人材”」
♢ 採用手法の多様化・高度化
社内外環境の変化に伴い、人材流動化の進展も見据えながら、継続的な事業価値創出に向け様々な採用手法を通じて、多様なバックグラウンドを持つ人材の獲得を目指しています。学生が各々の事情に応じて就職活動のタイミングを選択できるよう「新卒採用の選考時期複線化」、継続的に共創価値を創出し続ける会社であるために、多様なバックグラウンドを有する人材獲得の一環として「キャリア採用選考の拡充」及び「第二新卒採用」を実施、また実務の高度化等の背景を踏まえ当社の様々な事業・業務におけるオペレーションを担当する「バックオフィス職のキャリア採用」にも継続して取り組みました。
♢ 当社グループ従業員への価値観共有:
当社グループ約6.2万人の総合力強化を図ることを目的とし、価値観の共有、強固なネットワークの構築に向け、具体的には以下の様な取り組みを行っています。
・「海外拠点在勤者との対話」:
当社経営層と、現地社員を含む当社海外拠点在勤者との対話を通じて、経営戦略やMC HR Vision等の
浸透を促進しています。
・「グローバルHR会議」:
海外拠点の人事担当者が一堂に会し、本店/拠点双方向のコミュニケーションを深めながら、人事戦
略・人事関連テーマについての意見交換・共有やネットワーキング強化を推進しています。
・「MC Group Gateway Program」:
当社の理念・価値観の共有や当社グループへの理解を深めることを目的として、当社海外拠点・国内
外のグループ企業の社員を対象に導入研修を開催しています。
b.「E:“Energize /活かす”」
♢ ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)推進:
「多彩・多才」な人材の多様な価値観を受容し、一人ひとりが最大限に能力を発揮できる環境整備に向け、2023年に社長直掌に全社横断で構成された「DE&Iワーキンググループ」による提言を踏まえ、「一人ひとりの能力発揮」・「多彩・多才な知による価値創出」・「理解・実践の基盤」の観点から、DE&I推進施策を展開し、DE&Iの理解浸透・実践促進に取り組みました。
・「一人ひとりの能力発揮」:
相互理解に向けたマイノリティ体験として、VR研修、生理痛体験、障がいの疑似体験を実行しまし
た。
・「多彩・多才な知による価値創出」:
多様性の確保として、女性活躍の取組を強化(詳細は以下、「女性活躍推進」をご参照ください)。
・「理解・実践の基盤」:
経営層のコミットメントを示し続けるとともに、全社横断でDE&Iの実践をミッションに取り組む
「DE&Iアンバサダー組織」を各部門・グループに設置し、集中的な理解促進・実践、さらにはその横
展開を通じたDE&I推進の牽引。
♢ 女性活躍推進:
DE&I推進の各種取り組みの中でも、女性活躍推進には特に注力しています。
具体的には、「女性経営幹部を継続的に輩出するためのパイプライン強化」を重要テーマとして掲げ、ライフイベント等を経た後も、海外駐在や出向含め多様な業務経験を通じて能力・スキルを開発できる環境整備、責任ある職務への積極的な登用、また、採用における女性比率の向上を優先課題と認識し、様々な取り組みを推進しています。
こうした取り組みにドライブをかける目的で、2024年度より採用・パイプラインにおけるマイルストーンを設定しました。この実現に向けて、「女性の母集団拡大を目指した採用活動の強化」、「ジェンダーギャップの解消を目指した成長機会の提供」、「女性エンパワメントを目的とした視野拡大・意欲向上を目指したネットワーキングの提供」、「女性が抱える課題に基づく就業サポート」などを、スピード感をもって実行し各種施策を設定していくことで、あらゆる階層でクリティカルマスとされる女性比率30%以上の早期実現を目指します。

※女性活躍推進に係る指標については
ご参照ください。
c.「A:“Accelerate /育てる”」
♢ DX・AIスキル領域での研修を新設・拡充:
AIを前提とした世の中への対応力強化に向け、改めて当社社員に求められる人材像を再定義。社員のAI活用含めたスキル強化・底上げに向け、「AI人材育成プログラム(トロント大学・スタンフォード大学のエンジニアリングスクールへ派遣)」の新設や、デジタル関連研修の体系の総見直しを実施しました。
♢ 公募型異動配置施策の推進/タレントマネジメント機能の強化:
自律的キャリア形成促進に向け、公募型配置施策を継続実施し、応募者138名、内41名が異動/兼務となりました。またタレントマネジメントの高度化・業務効率化を見据え、人材情報管理機能を新システムに移行、部門・グループのタレントマネジメント担当を人事部兼務として人事部との連携を強化しました。
d.「R:“Reward /報いる”」
♢ 重要職務就任者面談:
当社ならではの様々な経験を経て、連結ベースで重要な役割を担う人材「重要職務就任者」約700名を対象に、面談を通じた可視化を21年度より継続実施しており、面談実施件数は累計約650名となりました。面談データは全社ベースでの最適配置に向けた参考材料として活用するとともに、可視化したデータをマクロ的に捉え、次世代を担う人材の育成に向けた各種施策の検討に繋げています。

■人材マネジメントの更なる高度化
経営戦略2027にて掲げる「Enhance(磨く)×Reshape(変革する)×Create(創る)による価値創造メカニズム」の推進に向け、人事領域においては、当社がこれまで築き上げてきた、強み・基盤たる三綱領に根差した、人材マネジメントの更なる高度化を掲げています。
具体的に下図記載のとおりの「高い志を有する人材が集い、一人ひとりが挑戦と成果を積み重ねることで成長を実感し、社員の成長が会社の発展につながる」という当社の人材マネジメントの基本コンセプトをMC HR Vision 「DEAR」にて掲げた方針に則り高度化を図ることで、経営戦略2027の推進に繋げていきます。

■人材マネジメントの更なる高度化に向けた重点人事施策
MC HR Vision 「DEAR」に基づき取り組んできた各種施策は引き続き推進しつつも、以下領域においては、当社の「総合力」の要である「多彩・多才な人材」の挑戦を促す施策を投下し特に重点的に取り組みを加速していきます。

各領域における取り組み施策概要は以下のとおりです。
a.「D:“Diversity /多彩・多才な人材”」
♢ 多彩・多才な人材の志を一つに、挑戦と共創を促す共通の「マインドセット」の明確化と発信:
当社の総合力の源泉である「多彩・多才な人材」の多様な専門性や志向性を組織としての強みに変えていくべく、全員の挑戦と共創を導き出すための軸となるような「マインドセット」の検討・策定を実施していきます。
♢ 連結・グローバルベースのタレントマネジメントの取り組み強化:
更なるグローバルな成長の取り込みに向け、海外拠点社員の採用・登用・育成の為の人材の可視化等、グローバルベースのタレントマネジメントに向けた取り組みを推進していきます。
b.「E:“Energize /活かす”」
♢ 新たな事業創出に向けた社内公募等による成長・挑戦機会の提供:
既存の枠を超え、新たな事業創出にチャレンジする意思を持った人材を後押しすべく、最前線でミッションに取り組むポストを対象とした社内公募制度を実施し、一人ひとりが挑戦する機会を経て成長し、その社員の成長が会社の発展につながることを企図し、引き続き拡充を検討していきます。
♢ 挑戦機会の提供・挑戦と共創を後押しする風土醸成施策の拡充:
挑戦と共創に必要な「マインド」の醸成と「時間」の創出に向け、「マインド」については各界のトップランナーを招いたイベントや、日常とは異なる場で内省を促す様な新しいタイプの研修の実施、「時間」については、IT/AI技術も駆使して更なる業務プロセス改革に取り組みます。
c.「A:“Accelerate /育てる”」
♢ 変化対応力を備えた次世代リーダーシップ開発:
将来予測が困難な事業環境において、多様な価値観を持つ社員で構成される組織と共に価値創造に取り組むためには、従来以上に高度なスキルや能力の発揮が必要です。そのような課題意識から、研修体系の刷新及びプログラムの見直しを実施いたします。新しい研修体系では、資格に関わらず職務内容に応じて適時適切な研修受講機会を提供し、「マネジメントスキル」や「リーダーシップ」に関するスキル・能力を段階的に開発していきます。
♢ AI/デジタル領域知見と事業経験の双方を有する独自のAI人材育成:
デジタルトランスフォーメーションが進み、AI技術の急速な進展によって世の中が急速に移り変わりゆく中で、当社社員もAI・デジタル関連技術を正しく理解・活用しながら、既存事業の在り方の再定義や新たな事業創出を行っていく必要があると考え、役員を含めたAI・DX関連研修の拡充や、既に開始している海外大学との提携による「AI人材育成プログラム」の拡充等、幅広い施策を展開していきます。
d.「R:“Reward /報いる”」
♢ 株主との価値共有、経営戦略とのアラインメントを意識した役員報酬・従業員報酬のアップデート:
経営戦略2027の推進、及び目指す姿の実現に向け、経営戦略2027にて掲げる経営指標と連動した形での、役員・従業員報酬のアップデート、並びに株主の皆様と価値を共有しながら、今まで以上に会社と社員の成長の一体感を持たせることを企図した株式交付制度を実現していきます。
♢「Enhance(磨く)×Reshape(変革する)×Create(創る)」 の推進を加速させる挑戦重視の登用とメリハ
リある評価の更なる強化:
更なる成長・挑戦を支える制度・仕組みとして、「評価制度」については、組織・個人目標間の連動を徹底し、自身の目標達成に対するコミットメントを促すとともに、挑戦意欲をもって、組織の更なる成長につながるアクションや成果・貢献に対し、よりメリハリをつけて評価・処遇していきます。「経営職務グレード(経営上の重要性・難易度をベースに判定される、各職務の等級)」については、事業規模・管掌組織規模などの定量情報と、定性的な難易度・重要度を総合的に勘案して判定することを基本としつつも、今後は、事業開発・変革を中心とする職務については、取り組む課題の新規性や構想する領域の重要性などの要素を重視し評価することで、より柔軟な判定に繋げていきます。
(3)指標及び目標
「人的資本の価値最大化」に向けた施策の進捗状況に関する主な指標及び目標は以下のとおりです。
当社では、営業グループと各リスクに対応したコーポレート専門部局が連携し、適切なリスク対応が可能な管理体制を整備しています。なお、以下については当連結会計年度末以降提出日までの管理体制に係る変更等を反映しています。

① 世界マクロ経済環境の変化によるリスク
世界的な、又は地域的なマクロ経済環境の変化は、個人消費や設備投資と深く関係し、商品市況にも影響を及ぼします。その結果、当社がグローバルかつ多様な産業領域に展開している事業の商品・製品価格、取扱量やコストなどに変動をもたらし、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度においては、インフレの緩やかな低下を受けて、欧米の中央銀行が利下げを実施する中、世界経済は底堅い成長を維持しました。世界経済の先行きは、緩やかな成長を維持すると見られますが、米中対立、ロシア・ウクライナ情勢、中東情勢等地政学リスクに加え、米国の関税政策が各国経済に及ぼす影響、特に中国経済の先行き等不確実性が非常に高く、動向を注視しています。
以下「当期純利益」は、「当社の所有者に帰属する当期純利益」を指しています。当期純利益への影響額は、他に記載のない限り当社の当連結会計年度の連結業績を踏まえて試算した、翌連結会計年度に対する影響額を記載しています。
当社は、商品の売買取引や保有する資源エネルギーの権益における生産物の販売、そして関係会社の製造する工業製品の販売などの活動を通じて、様々な商品価格の変動リスクを負っています。特にエネルギー資源及び金属資源の取引においては、売買価格の変動を通じて当社の業績に大きな影響を及ぼします。
また、投資の評価においても商品価格が重要なインプットとなる場合があります。特に事業期間が長期に及ぶ場合、短期的な価格の動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資の評価により重要な影響を与えるため、将来の需給環境等のファンダメンタルズや、社外の金融機関等の提供するデータ等を考慮して、商品ごとに当社としての見通しを策定しています。商品市況の長期的な低迷又は上昇が想定される場合には、保有する有形固定資産や持分法で会計処理される投資などの減損及び減損戻入を通じて、業績に影響を与える可能性があります。当社の重要な投資案件については、「⑤ 事業投資リスク(重要な投資案件)」をご参照ください。
(エネルギー資源)
当社は北米、東南アジア、豪州などにおいて、天然ガス・石油の開発・生産事業、液化天然ガス(LNG)事業を行っており、天然ガス・原油価格は当社の業績に大きな影響を与えます。
原油(Brent)価格は、中東情勢の緊迫化やロシア制裁強化等の上昇要因により、1バレル80米ドル超まで上昇する局面が見られたものの、中国経済の成長鈍化やトランプ政権の相互関税発表による世界経済の減速懸念等を背景に、3月末には1バレル70米ドル中盤まで下落しました。今後も地政学リスクの高まり、各国経済情勢、OPEC/非OPECの生産動向等によって価格が上下するボラティリティの高い展開が続くと認識しています。
なお、当社のLNG販売の大半は長期契約であり、LNG価格は原油価格にリンクしているものが大宗となります。1バレル当たりの原油価格が1米ドル変動すると、当社の当期純利益は主に持分法による投資損益を通じて年間約20億円増減すると試算されます。ただし、LNG・原油の価格変動が当社の業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
また、当社のLNG販売の一部はスポット契約にて販売しています。アジアのLNGスポット価格は欧州ガス価格と一定程度連動しており、欧州情勢の影響も受けます。10月上旬のアジアのスポットLNG価格は百万Btu(英国熱量単位)当たり13米ドル半ばで開始し、ロシア・ウクライナ情勢に起因する地政学リスクの高まりや、欧州での気温低下・風力発電出力の低下等の価格上昇要因が続き、2月には17米ドル前半まで上昇しました。一方、その後暖冬による中国・北東アジアの需要低迷等により、3月末時点では13米ドル弱まで下落しました。
(金属資源)
当社は、100%出資子会社の三菱デベロップメント社(MITSUBISHI DEVELOPMENT PTY LTD、本社:豪州ブリスベン、以下MDP社)を通じて、製鉄用の原料炭を販売しており、石炭価格の変動はMDP社の収益を通じて当社の業績に影響を与えます。また、MDP社の収益は、石炭価格の変動の他にも、豪ドル・米ドル・円の為替レートの変動や悪天候、労働争議等の要因にも影響を受けます。
銅についても、生産者としての価格変動リスクを負っています。1トン当たりの価格が100米ドル変動すると当期純利益で年間25億円の変動をもたらす(1ポンド当たりの価格が0.1米ドル変動すると当期純利益で年間54億円の変動をもたらす)と試算されますが、粗鉱品位、生産・操業状況、再投資計画(設備投資)等、価格変動以外の要素からも影響を受けるため、銅の価格のみで単純に業績への影響額が算出されない場合があります。
当社は、輸出入、及び外国間などの貿易取引において外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動リスクを負っています。これらの取引では必要に応じて、先物為替予約などによるヘッジ策を講じていますが、それによって完全に為替リスクが回避される保証はありません。
また、当社の海外事業に対する投資については、為替変動により、外貨建の受取配当金や海外連結子会社・持分法適用会社の持分損益の円貨換算額が増減するリスクが存在し、外国通貨に対して円高が進むと当期純利益にマイナスのインパクトを与えます。米ドル・円のレートが1円変動すると、当社の当期純利益は年間約40億円増減すると試算されます。
加えて、在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が増減するリスクが存在するため、一部の大口の投資については主に先物為替予約を用いたヘッジ策を講じています。
当社は、当連結会計年度末時点で、取引先や関連会社を中心に1兆1,913億円(時価)の市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っています。上記の価格は1,268億円の評価益を含んでいますが、株式の動向次第で評価益は減少するリスクがあります。また、当社の企業年金では、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しています。よって、株価の下落は年金資産を目減りさせるリスクがあります。
当社の当連結会計年度末時点の有利子負債総額(リース負債除く)は4兆6,170億円であり、一部を除いて変動金利となっているため、金利が上昇する局面では利息負担が増加するというリスクがあります。
しかし、この有利子負債の相当部分は金利の変動により影響を受ける営業債権・貸付金等と見合っており、金利が上昇した場合には、これらの資産から得られる収益も増加するため、金利の変動リスクは、タイムラグはあるものの、相殺されることになります。また、純粋に金利の変動リスクにさらされている部分についても、見合いの資産となっている投資有価証券や固定資産からもたらされる取引利益、配当金などの収益は景気変動と相関性が高いため、景気回復の局面において金利が上昇し支払利息が増加した場合には、見合いの資産から得られる収益も増加し、結果として影響が相殺される可能性が高いと考えられます。ただし、金利の上昇が急である場合には、利息負担が先行して増加し、その影響を見合いの資産からの収益増加で相殺しきれず、当社の業績は一時的にマイナスの影響を受ける可能性があります。
このような金利などの市場動向を注視し、機動的に市場リスク対応を行う体制を固めるため、当社ではALM(Asset Liability Management)委員会で金利変動リスクの管理を行っています。
当社は、様々な営業取引を行うことによって、売掛金、前渡金などの取引与信、融資、保証及び出資などの形で取引先に対して信用供与を行っており、取引先の信用悪化や経営破綻等による損失が発生する信用リスクを負っています。また、当社は主としてヘッジ目的のためにスワップ、オプション、先物などのデリバティブ取引を行っており、デリバティブ取引の契約先に対する信用リスクを負っています。
当社では当該リスクを管理するために、取引先ごとに成約限度額・信用限度額を定めると同時に、社内格付制度を導入し、社内格付と与信額により定めた社内規程に基づき、与信先の信用状態に応じて必要な担保・保証などの取付けを行っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態悪化に対しては取引縮小や債権保全策を講じ、取引先の破綻に対しては処理方針を立てて債権回収に努めていますが、債権等が回収不能になった場合には当社の業績は影響を受ける可能性があります。
当社は、海外の会社との取引や出資において、国の政治・経済・社会情勢に起因した、代金回収や事業遂行の遅延・不能等が発生するカントリーリスクを負っています。
当社においては、国ごとのリスク状況の把握、カントリーリスク対策制度の立案・管理を、コーポレート担当役員(CFO)を委員長とするALM委員会で行っています。
カントリーリスク対策制度では、各種リスク要因を踏まえ各国を区分の上、区分ごとに枠を設定する等の手法でカントリーリスクを一定範囲内にコントロールしています。また、個別案件のカントリーリスクについては、保険を付保するなど、案件の状況に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。ロシア、ウクライナ両国宛てリスクについても、同制度を通じて管理しています。
しかしながら、上記のようなリスクヘッジ策を講じていても、当社の取引先や出資先若しくは進行中のプロジェクト所在国の政治・経済・社会情勢の悪化によるリスクを完全に回避することは困難です。そのような事態が発生した場合、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
なお、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記2 「(5)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。
当社は、株式・持分を取得して当該企業の経営に参画し、商権の拡大やキャピタル・ゲイン獲得などを目指す事業投資活動を行っていますが、この事業投資に関連して投下資金の回収不能、撤退の場合に追加損失が発生するリスク、及び計画した利益が上がらないなどのリスクを負っています。事業投資リスクの管理については、新規の事業投資を行う場合には、投資の意義・目的を明確にした上で、リスクを定量的に把握し、事業毎の期待収益率などを踏まえて意思決定を行っています。投資実行後は、事業投資先ごとに、毎年定期的に「経営計画書」を策定しており、投資目的の確実な達成のための管理を行う一方、計画した収益を上げていない先については、持分売却・清算による撤退を含め、保有方針を明確にすることで、効率的な資産の入替を行っています。
このような投資評価の段階での案件の選別、投資実行後の管理を厳格に行っていますが、期待する利益が上がらないというリスクを完全に回避することは困難であり、事業環境の変化や案件からの撤退等に伴い、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
なお、事業投資に含まれる商品市況リスクについては、「② a. 商品市況リスク」をご参照ください。
(重要な投資案件)
a. 豪州原料炭及びその他の金属資源権益への投資
当社は、1968年11月にMDP社を設立し、炭鉱開発(製鉄用の原料炭)に取り組んできました。2001年には、MDP社を通じ、約1,000億円で豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業(以下、BMA)の50%権益を取得し、パートナーのBHP社(BHP Group Limited、本社:豪州メルボルン)と共に世界最大規模の原料炭事業を運営しています。また、当連結会計年度末時点のMDP社の有形固定資産帳簿価額は9,946億円となっています。
前連結会計年度末において、MDP社が権益の50%を保有するブラックウォーター炭鉱、及びドーニア炭鉱に関する資産及び負債を売却目的で保有する処分グループに分類し、連結財政状態計算書の「売却目的保有資産」及び「売却目的保有資産に直接関連する負債」にそれぞれ1,976億円、656億円を計上していましたが、2024年4月2日に、当該資産及び負債について、Whitehaven Coal Ltd宛てに売却が完了しました。詳細については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記11をご参照ください。
b. チリ銅資産権益への投資
当社は、アングロ・アメリカン社(Anglo American Plc、本社:英国ロンドン、以下アングロ社)、チリ国営の銅生産会社であるCorporación Nacional del Cobre de Chile社(本社:チリ国サンチャゴ)と三井物産株式会社の合弁会社(以下、合弁会社)と共に、チリ国銅資源権益保有会社アングロ・アメリカン・スール社(Anglo American Sur S.A.、本社:チリ国サンチャゴ、以下アングロスール社)の株式を保有しています。アングロスール社への出資比率は、アングロ社グループが50.1%、合弁会社が29.5%、当社グループが20.4%となっており、当社の取得額は45.1億米ドルです。
同社は、チリ国内にロスブロンセス銅鉱山、エルソルダド銅鉱山、チャグレス銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区等の資産を保有しています(同社合計の2024年銅生産量実績は約22万トン)。
当社はアングロスール社への投資に対して持分法を適用しています。同社宛ての投資に関しては、持分法で会計処理される投資として減損の兆候判定を行っています。同社の生産・開発計画は長期間に及び、短期的な価格動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資評価により重要な影響を与えるため、最新の銅価見通しや開発計画を含め、中長期的な観点から評価し判断しています。当連結会計年度末の帳簿価額は1,532億円となっています。
c. ペルー銅資産権益への投資
当社は、アングロ社と共同で、ペルー共和国ケジャベコ銅鉱山プロジェクト(以下、ケジャベコ)の権益保有会社であるアングロ・アメリカン・ケジャベコ社(Anglo American Quellaveco S.A.、本社:ペルー共和国リマ、以下AAQ社)の権益40%を保有しています。
ケジャベコは約7.9百万トン(銅分換算)の埋蔵量を見込む大規模鉱山で、高いコスト競争力を有しており、2022年に銅精鉱の生産を開始しました(2024年銅生産量実績は約31万トン)。
当社はAAQ社への投資に対して持分法を適用しています。AAQ社宛ての投資に関しては、持分法で会計処理される投資として減損の兆候判定を行っています。ケジャベコの生産計画は長期間に及び、短期的な価格動向よりも中長期的な価格見通しの方が、投資評価により重要な影響を与えるため、最新の銅価見通しや開発計画を含め、中長期的な観点から評価し判断しています。
当連結会計年度末の投資及びAAQ社に対する融資額の帳簿価額は5,168億円となっています。
d. モントニー・シェールガス開発プロジェクト/LNGカナダプロジェクト
当社は、カナダにおいて上流資源開発からLNGの生産・輸出販売に至る天然ガスバリューチェーンを構築しています。上流事業として、パートナーのOvintiv社と共に、当社100%出資子会社のCUTBANK DAWSON GAS RESOURCES LTD.社を通じてシェールガスの開発事業を行っています。当社グループの権益保有比率は40%で、当連結会計年度末の「持分法で会計処理される投資」の帳簿価額は2,683億円となっています。
また、生産された天然ガスの一部をLNGとして輸出販売するため、事業パートナーと共に2018年にLNGカナダプロジェクトの最終投資決定をしました。同プロジェクトは、年間1,400万トンの生産能力を持つ天然ガス液化設備を建設し、日本など東アジアの需要国向けにLNGを輸出販売する事業で、2025年中ごろの生産開始を予定しています。当社は子会社のDiamond LNG Canada Partnershipを通じて参画しており、パートナーであるShell社、Petronas社、PetroChina社、韓国ガス公社と共に同プロジェクトを推進しています。当連結会計年度末のDiamond LNG Canada Partnershipの有形固定資産帳簿価額は4,098億円、使用権資産帳簿価額は2,455億円となっています。
e. ローソン社への出資
当社は、2017年に株式会社ローソン(以下、ローソン社)の発行済株式数の16.6%を株式公開買付けにより取得し、それまで保有していた33.4%と併せて、発行済株式の過半数を保有することとなり、同社を連結子会社としました。その後、KDDI株式会社(以下、KDDI)による同社株式の公開買付け(2024年4月25日付完了)及び同社株式の株式併合を用いたスクイーズアウト手続きを経て、2024年8月15日付で当社及びKDDIの出資比率を50%へ調整しました。これに伴い、株主間契約の効力が発生したことにより、当社は同社に対する単独支配を喪失し、同社を共同支配企業に分類しています。当連結会計年度末のローソン社宛て投資の帳簿価額は5,287億円となっています。詳細については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記11及び37をご参照ください。
ローソン社は、コンビニエンスストア「ローソン」のフランチャイズシステム及び直営店舗の運営を行うとともに、海外コンビニエンス事業及びそれ以外の周辺事業を運営しています。ローソン社の店舗網は、2025年2月末時点で、日本全国に約14,700店、海外に約7,400店の合計約22,100店の規模になっています。
f. Enecoへの投資
当社は、2020年3月に、中部電力株式会社と共同で設立したDiamond Chubu Europe B.V.を通じて、欧州で総合エネルギー事業を展開するN.V. Eneco(以下、Eneco)の100%の株式を約5,000億円で取得しました。
Enecoは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)開発・供給事業、トレーディング事業、小売・新サービス事業それぞれの事業分野で高い競争力・適応力を有する総合エネルギー事業会社です。
当社は、Enecoの再エネに関する技術力・ノウハウを活用し、欧州及び欧州外で再エネ開発を加速させ、経済価値、社会価値、環境価値の三価値同時実現に資する取り組みを強化する方針です。
電力需要や欧州マクロ経済が低迷する場合には、Enecoの業績や、取得時に認識したのれんの減損などを通じて当社の業績に影響を与える可能性があります。当連結会計年度末の「のれん」の帳簿価額は1,449億円(持分比率勘案前)となっています。詳細については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記14をご参照ください。
当社は、国内外で多くの拠点を持ち、あらゆる産業を事業領域としてビジネスを展開していることから、関連する法令・規制は多岐にわたっています。具体的には日本の会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、贈収賄関連諸法、安全保障貿易管理等貿易関連及び制裁関連諸法、環境関連諸法や各種業法を遵守する必要があり、また海外で事業を展開する上では、それぞれの国・地域での法令・規制に従う必要があります。特に、足元ではロシア・ウクライナ情勢に起因する各国経済制裁が導入・強化されていますが、当社はその動向を適時にフォローし、チーフ・コンプライアンス・オフィサーを当社最高責任者として、適切な対応を行っています。
当社はコンプライアンス委員会を設け、その委員会を統括するチーフ・コンプライアンス・オフィサーが連結ベースでの法令・規制遵守を指揮・監督しています。その指揮・監督の下、各営業グループ・部門のコンプライアンス・オフィサーが、固有のコンプライアンス施策の立案・実施をするなど、コンプライアンス意識を高めることに努めています。また、当社は、子会社及び関連会社(上場会社は除く)に対して、当社と同等の水準で各社に適したコンプライアンス管理体制を構築させ、又はさせるように努めています。
しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、関連する法令・規制上の義務を実行できない場合には、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象や、新型インフルエンザ・新型コロナウイルス等の新興感染症、重大事故、テロ・暴動、東アジア・欧州・中東等における地政学的要因による有事発生、その他国内外における危機的な事象が発生した場合、当社の社員・事業所・設備やシステムなどに対する被害が発生し、営業・生産活動に支障が生じる可能性があります。
当社では、緊急危機対策本部を設置し、危機発生時における当社関係者の安全確保・安否確認等の初動対応、重要業務の事業継続計画(BCP)の整備、建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)、定期訓練、必要物資の備蓄等の各種対策を講じています。また、あらゆる事象を想定したリスク・影響度分析に基づく初動対応・事業継続計画(BCP)の策定、継続的なPDCAサイクルの実施等の包括的なマネジメント活動である事業継続マネジメント(BCM)を推進し、各種危機に備えています。しかし、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、かかる事象の発生時には当社の業績は影響を受ける可能性があります。
「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」の「2. リスク管理」に記載しています。
財務諸表の作成にあたり、経営者は、決算日における資産及び負債の報告金額、偶発資産及び負債の開示、報告期間における収益及び費用の報告金額に影響を与える様な見積りを行う必要があります。見積りは、過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っており、他の情報源からは得られない資産及び負債の帳簿価額について当社及び連結子会社の判断の基礎となっています。経営者は見積りが必要となる項目に関する評価は合理的であると判断しています。ただし、これらの評価には経営者としても管理不能な不確実性が含まれているため、前提条件や事業環境などに変化が見られた場合には、見積りと将来の実績が異なることもあります。
当社及び連結子会社の財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目の詳細は、第5 経理の状況 連結財務諸表注記2「(5)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。
当連結会計年度においては、インフレの緩やかな低下を受けて、欧米の中央銀行が利下げを実施する中、世界経済は底堅い成長を維持しました。日本経済に関しては、実質賃金の改善等、雇用・所得環境が改善する中で個人消費が底堅く推移するとともに、堅調な企業収益を背景に設備投資には持ち直しの動きが見られ、景気は緩やかな回復基調を維持しました。
このような環境下、当連結会計年度の業績の概況は、以下のとおりとなりました。経営戦略の進捗状況、当連結会計年度以降における主な取り組み、及び経営環境に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
※四捨五入差異により縦計・横計が合わないことがあります(以下同様)。
事業セグメント別の「当社の所有者に帰属する当期純利益(純損失)」は下表のとおりです。セグメント別の事業内容及び業績の詳細は、第5 経理の状況 連結財務諸表注記6をご参照ください。
「(2) 当連結会計年度の業績の概況」及び第5 経理の状況 連結財務諸表注記24をご参照ください。
仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しています。
販売までの期間が1年以内の受注は販売と概ね連動しているため、記載は省略しています。販売までの期間が1年超の受注については、第5 経理の状況 連結財務諸表注記24をご参照ください。
当社では事業活動を支える資金調達に際して、低コストでかつ安定的に資金が確保できることを目標として取り組んでいます。資金調達にあたっては、コマーシャル・ペーパーや社債等の直接金融と銀行借入等の間接金融とを機動的に選択・活用しており、その時々でのマーケット状況に応じた有利手段を追求しています。当社は資本市場でのレピュテーションも高く、加えて間接金融についても、メガバンク以外に外銀・生保・地銀等の金融機関とも幅広く好関係を維持しており、調達コストは競争力のあるものとなっています。今後とも長期資金を中心とした資金調達を継続するとともに、経営戦略2027の下、投資の順調な実行等で追加資金が必要となった際は財務健全性を維持できる範囲でレバレッジの活用も検討しながら、十分な流動性の確保を行っていく方針です。当連結会計年度の資金調達活動としては、前連結会計年度に引き続き、財務健全性の向上に努めつつ調達を行いました。
これらの資金調達活動の結果は以下のとおりです。
翌連結会計年度は、引き続き資金調達ソースの多様化等を通じて、中長期的に安定した調達基盤を維持する方針です。また、連結ベースでの資金効率の向上に向けた取組みも継続します。
金融市場の環境は、地政学リスクや主要国の金融政策の変化など、引き続き予断を許さない状況のため、細心の注意を払って対処すべく、現預金等及び銀行融資枠(コミットメントライン)を十分に確保し、流動性を維持してまいります。
連結ベースでの資金管理体制については、当社に加え、国内外の金融子会社及び特定の海外現地法人(以下、財務拠点)において集中して資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンス方針を原則とし、資金調達の一元化による資金効率の向上、流動性の確保を図っています。結果として、当連結会計年度末では、連結有利子負債のうち85%が当社及び財務拠点による調達となっています。
当連結会計年度末時点の当社及び財務拠点でコマーシャル・ペーパー及び1年以内に償還を予定している社債を合わせた短期の市場性資金が5,998億円あるのに対して、現預金、コミットメントライン、一年以内に満期の到来する公社債が合計で2兆7,884億円あり、カバー超過額は2兆1,886億円と十分な水準にあると考えています。なお、当社のコミットメントラインについては、協調融資枠として円貨で5,100億円を国内主要銀行より、外貨で主要通貨10億米ドル、ソフトカレンシー1.5億米ドル相当を欧米を中心とした国内外の主要銀行より取得しています。
当社ではグローバルな資金調達とビジネスを円滑に行うため、格付投資情報センター(R&I)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody's)、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の3社から格付けを取得しています。
当連結会計年度末の当社に対する格付けは以下のとおりです。
当連結会計年度末の資産及び負債・資本の概況は下表のとおりです。
また、セグメントごとの前連結会計年度及び当連結会計年度における情報は以下のとおりです。
(前連結会計年度)
(単位:億円)
(単位:億円)
(当連結会計年度)
(単位:億円)
(単位:億円)
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,850億円増加し、1兆5,366億円となりました。キャッシュ・フローの内訳は下表のとおりです。
財務会計上の営業キャッシュ・フローとは別に、将来の新規投資や株主還元などの原資を適切に表すべく、運転資金の増減影響を控除した営業キャッシュ・フローに、事業活動における必要資金であるリース負債支払額を反映した「営業収益キャッシュ・フロー(リース負債支払後)」と、更に投資活動によるキャッシュ・フローを加えた「調整後フリーキャッシュ・フロー」を定義しています。
投資キャッシュ・フローの主な内容は下表のとおりです。
配当は持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を行う方針としています。自己株式の取得は、総還元性向の水準及び資本構成の適正化のために実施したものです。負債による資金調達は、流動性と財務健全性の観点で適切な水準を維持する方針としています。
特に記載すべき事項はありません。
特に記載すべき事項はありません。
(注意事項)
本資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が当連結会計年度末時点で入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。