第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

 当社グループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。

 当社グループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

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 また、2023年4月以降、「患者さんの安全と持続可能性」、「成長のためのイノベーション」、「生産性の向上」の3つを基本的な指針として掲げています。誠実で透明性のある企業であり続けるために、規制当局やステークホルダーと協力して、強固で持続的な組織の構築に努め、ヘルスケア業界ならびにESGを主導する企業となるべく、あらゆる取り組みにおいて顧客体験価値を中心に据えていきます。また、患者さんの安全を第一に掲げ、QA/RA(品質保証および法規制対応)に注力し、「グローバル全地域での品質システムと業務プロセスの統一を目指した改革の実施」「グローバルな品質・コンプライアンス機能の強化による、一貫した施策の展開」「コンプライアンス上の問題を解決したうえで、是正活動の完遂」等の取り組みを推進します。そして、長期的な戦略に沿った高品質な製品・サービスをさまざまな分野で提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。

 

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(2) 経営戦略

 当社は、2023年に公表した経営戦略に則って事業運営を行っています。

 

(長期的かつ持続的な成長のための戦略的な価値の源泉)

 「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、主要セグメントにおける当社の市場ポジションの拡大や、最終的に患者さんの体験価値と治療成果の改善を目指しています。これに資する長期的かつ持続可能な成長を支える価値の源泉として、「ⅰ)事業拡大とグローバル展開」「ⅱ)戦略的M&A」「ⅲ)ケア・パスウェイの強化」「ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム」の4つを掲げています。

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ⅰ)事業拡大とグローバル展開

 世界的な人口動態の変化と疾病発生の増加を受けて、当社の製品・サービスが対象とする疾患に対するソリューションへのニーズが高まる中、引き続き当社がリーディングポジションを持つ消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域に注力し、「先進イメージング」「精緻な治療」「高付加価値ソリューション」を通じて、患者様のケア・パスウェイに最適なソリューションを提供します。

・主力の消化器内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」:2021年3月期に欧州、アジア、日本で、2024年3月期には米国、中国でも発売しました。スコープのラインアップ拡充も含め、今後さらなる拡販を目指します。

・シングルユース内視鏡:2022年3月期に気管支鏡を、2024年3月期に咽喉鏡を発売しました。2026年3月期には尿管鏡を発売予定であり、今後は十二指腸鏡、胆道鏡の領域においてもシングルユース内視鏡の発売を目指しています。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)

・中国市場:当社にとって戦略的に重要な市場の一つであり、「臨床医の教育プログラムやトレーニングへの投資」「中国の医療従事者のアンメットニーズの探索」を継続します。また、中国国内に現地生産拠点を設立し、中国市場向けに中国国産製品を提供するための施策を加速しています。

 

ⅱ)戦略的M&A

 消化器科、泌尿器科、呼吸器科における既存の疾患領域や高い成長が期待できる関連分野において、タックイン M&A*の機会を通じて製品ポートフォリオを継続的に強化し、「臨床・治療ワークフローの変革」「ケアの向上」「事業の地理的拡大」を図ります。包括的なソリューションの提供によって患者さんの治療成果の向上に貢献していきます。

*当社のポートフォリオに合致し、既存のビジネスを補完・増強するためのM&A

 

ⅲ)ケア・パスウェイの強化

 当社は、医療水準の向上によって患者さんのアウトカムを改善することを目指しています。消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域を中心に、早期発見や診断、ステージ分類、治療、予後のケアに至るまでのケア・パスウェイの中で、当社のソリューションを通して患者さんと医療従事者のエクスペリエンスを向上させ、より多くの患者さんに医療アクセスを提供し、診療の質と成果を改善します。

 

ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム

 慢性疾患の増加と高齢化を受けて、より良い治療成果をより多くの人に届け、医療提供者と患者さんのエクスペリエンスを向上させながら、医療コストを抑えることの必要性が一層高まっています。当社はこのような課題に対して、コネクティビティ、AI、データインサイトを活用したインテリジェント内視鏡医療によるソリューションの提供を検討しており、「ワークフロー管理」「CAD*1およびリアルタイムな手技の支援」「AIによる臨床・業務インサイト」等を通じて、ユーザーエクスペリエンスを標準化していきます。AIを活用したインテリジェント内視鏡医療エコシステムは、新たなソフトウェアプラットフォームによって、お客様、当社、そして、パートナー企業との間で価値の共創を可能にし、プラットフォームのソフトウェアやアプリケーションのアップグレードによって、常にイノベーションを提供し続けるビジネスモデルに移行することを目指し、より精度の高い早期発見、診断、治療を実現していきます。

 2026年3月期には、クラウド型の統合された内視鏡アプリケーションおよびソリューションを提供する新しいサブブランドである「OLYSENSE*2」を立ち上げ、欧州および米国で上部および下部消化管の病変の検出、鑑別、分析を支援するCAD/AI製品である「CADIIE」を展開する予定です*3。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)

*1Computer Aided Detection/Diagnosis:AIによる検出/診断支援

*2OLYSENSEはオリンパス株式会社および/またはそのグループ会社の商標です。すべての商標、ロゴ、ブランド名は、それぞれの所有者に帰属します

*3米国では、CADDIEは大腸ポリープが疑われる病変の検出を支援する目的でのみ認可されています。CADDIEには、CADDIEのポリープ検出機能がオンであり、使用中であることをユーザーが確認するための便利な機能として、「盲腸到達通知」AI機能が搭載されています。欧州では、CADDIEは「盲腸到達通知」AI機能および「粘膜洗浄度」AI機能を含む、大腸ポリープが疑われる病変の検出および診断を支援する機能が承認されています

 

(投資とイノベーションを可能にする取り組み)

 当社は、投資やイノベーションといった価値創造の取り組みを実現する基盤の強化のため、特に以下の4点に注力して取り組んでいます。

・QA/RA:一貫性のある強固な品質システム導入や体制強化によるQA/RAの改革および是正活動の完遂

・R&D:イノベーションの加速に向けたR&D投資のスピードアップと投資額の増加。より強固なイノベーション・パイプラインの構築、より積極的な戦略パートナーシップ推進、市場投入までの期間の短縮

・製造、サプライチェーンマネジメント:売上原価の改善、組織規模と拠点構造の最適化、プロセスの合理化とデジタル化、更なる効率化の追求

・GTOM(Global Target Operating Model):グローバルのガバナンスとオペレーションの継続的な改善。意思決定プロセスの明確化、イノベーション推進に向けたより効率的なリソース配分を可能にするハイパフォーマンスな組織の実現

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(3) 品質保証・法規制対応の変革プロジェクト「Elevate」

 「Elevate」は、前期に開始した、複数年にわたる品質保証・法規制対応の変革プロジェクトです。規制当局に対するコミットメントを果たし、未来に向けて品質文化の基盤を強化するため、「設計および開発」「製造およびサプライヤーマネジメント」「サプライチェーン、市場導入・市販後の取り組み」「End-to-End(E2E)品質プロセス」の軸で、20の主要施策から構成されています。グローバルかつ機能横断型の強力なチームによって推進しており、全社的な変革の取り組みとして、4つの目標を掲げています。

 Elevateの実行により、製品のライフサイクルマネジメントの改善や、業務プロセスのデジタル化によるコスト削減と効率性の向上、製品の開発、認可取得、発売までのリードタイムの短縮といった効果も期待でき、この取り組みを当社グループの将来的なイノベーションや成長、収益性向上を実現するための重要な施策の一つとして位置付けています。

 当期も全社を挙げてElevateの取り組みを推進しており、引き続き順調に進捗しています。2026年3月期末までに規制当局に対する全てのコミットメントを果たすことを目指しています。

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(4) 組織再編

 2025年4月に、事業部門である内視鏡事業と治療機器事業を消化器内視鏡ソリューション事業(GIS)とサージカルインターベンション事業(SIS)に再編成しました。この改編を通じて、より迅速な事業運営や地域間における一貫性の確保、縦割り組織の解消に加え、患者さんとお客様を中心とした事業成長の実現を目指します。

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(5) 米国関税政策対応

 米国関税政策の影響は不確実性が高い状況ではありますが、医療現場に対する当社製品やサービスの提供継続を最優先とした上で、影響の低減に向けた対応を進めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ共通

 当社グループはその存在意義である、「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」を目指す活動を通じて社会に貢献することで、当社グループ自身がサステナブルな企業であり続けることができると認識しており、当社のESG戦略はそれを実現する上で重要なものです。

 

<ガバナンス>

 ESGの推進においては、2021年4月にESG担当役員を新設し、中長期事業計画の中でKPIを設定する仕組みを構築する等、その強化を図っています。ESG担当役員はESGを包括的に推進するとともに進捗状況をモニタリングし、グループ経営執行会議および取締役会に報告しています。また、2021年3月期より執行役の報酬について、長期インセンティブ報酬の業績連動型株式報酬の一部がESGの取組成果と連動するようになりました。現在では取組成果を測る指標として外部ESG評価機関の評価結果や当社が定めたKPIの達成率などを採用しています。ESGへの取り組みは企業活動そのものと一体である恒久的な取り組みであるため、インセンティブの中でも長期インセンティブを連動の対象とすると共に、成果に対する評価は単年度の成果ではなく3年間の取組成果と連動する設計となっています。また、2024年3月期より新しいグループレベルでのガバナンス体制を新設しました。この新しいガバナンス体制のもと、各事業・各機能部門の責任者を中心に構成され、ESG戦略の遂行及びモニタリングを推進する「ESG委員会(ESG Committee)」を設置し、その下に機能横断的に取り組む必要のあるテーマごとにテーマ別ワーキンググループを置いて戦略を遂行しています。またESG委員会を通じてグループ経営執行会議及び取締役会に対して戦略の実施状況や活動成果、課題等が定期的に報告されています。2025年3月期では1年間で2回の定期報告が実施されました。グループ経営執行会議並びに取締役会からの指示・助言を受けることで、適切なガバナンス体制の下、ESG戦略を適切に実行しています。

 

<ガバナンス体制>

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<戦略>

 2023年3月期に従来のESG戦略をベースに、戦略の見直しと調整を実施しました。2024年3月期を初年度とする新しい経営戦略において、ESGを重要項目の一つと位置付け、従来以上にESG戦略と経営戦略・事業戦略・機能戦略との親和性・一貫性を強化しました。

 

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 従来のESG戦略の骨子・枠組みを残しながら、新たにステークホルダーの皆様のご意見をお聞きし、社会から企業が求められるサステナビリティへの期待値・要求事項を踏まえ、メドテック業界における動向も参考にしながら、グループ経営執行会議および取締役会に諮る等のプロセスを経て、「6つの重要領域(Focus Area)」の下に「25項目の重要課題(Materiality Topics)」を特定しました。また、この「25項目の重要課題(Materiality Topics)」を特定するプロセスの中では、「ステークホルダーにとっての重要性」と「当社の事業へのインパクト」の2つの軸から、これら「25項目の重要課題(Materiality Topics)」をTop Priority/High Priority/Othersの3段階に優先順位付けをしています。更に2025年4月には、全ての従業員が等しく機会を享受できる「多様性(Diversity, Equity & Inclusion)」の取組みを深化させ新たに「インクルージョン (Inclusion)」として再定義をすることに合わせ、関連する一部の重要課題 (Materiality Topics)に見直しを行いました。これにより「25項目の重要課題(Materiality Topics)」は「24項目の重要課題(Materiality Topics)」に再編されています。この「6つの重要領域 (Focus Area)」及び「24項目の重要課題(Materiality Topics)」は、当社グループの経営活動・事業活動と一体化し、これらの活動を通じて広く社会課題の解決に貢献することを表明するものです。当社グループが競争力あるグローバル・メドテックカンパニーへと成長し、サステナブルな社会の実現に貢献するために、ESGを重要な課題と捉えています。マテリアリティは社会・事業変化によって可変のものであり、今後も必要に応じて見直しを行います。

 

    6つの重要領域(Focus Area)

・医療機会の幅広い提供およびアウトカムの向上

・コンプライアンスおよび製品の品質安全性への注力

・責任あるサプライチェーンの推進

・健やかな組織文化の醸成

・社会と協調した脱炭素・循環型社会実現への貢献

・コーポレートガバナンスの強化

 

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<リスク管理>

    全社的なリスクアセスメントを実施する中で、サステナビリティ・ESGに関するリスク項目を抽出し、全社のリスクモニタリング管理体制を通じてリスク管理を実施しています。合わせて、その結果は適宜グループ経営執行会議や取締役会にも報告しています。

 

<指標と目標>

    2025年3月期においても前年度に引き続き世界の代表的なコーポレート・サステナビリティ評価指標である「Dow Jones Sustainability Index(DJSI)」をESG活動の指標とし、各種Indexに選定されることを目標としています。当社はこれまでの間、2018年に初めて「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に初めて選定された後、執行役の長期インセンティブと外部ESG評価機関の評価結果との連動を開始した2022年3月期の翌年、2022年12月に初めて「DJSI World」の構成銘柄に選定されました。それ以降、2025年3月期までDJSI Worldは4年連続、DJSI Asia Pacificは6年連続の選定となりました。

    また、2023年3月期においては、ESG戦略の見直しの中で、特に重要度の高いTop Priorityに位置付けられる「重要課題(Materiality Topics)」を中心に、これを実施するための具体的な「代表的実施項目(flagship initiatives)」を定め、それぞれに定量的・定性的なKPI及びターゲットを定めてきました。

  2025年3月期からは従来のDJSIという外部指標だけに基づく役員報酬の成果評価の構造を見直し、当社が定めたESG戦略のKPI及びターゲットに基づく成果評価も併せて総合的な評価ができる評価システムを採用しています。客観性の高い外部評価指標であるDJSIを引き続きESG活動の指標の一つとしながら、当社のESG戦略における「代表的実施項目(flagship initiatives)」のKPI・ターゲットに基づいた成果評価を加えることで、総合的な成果指標をもとにESG活動を進めています。

 

 

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2025年3月期 実績

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(2)気候変動

<ガバナンス>

 当社グループは、製品開発、調達、製造、物流、販売、修理といったバリューチェーン全体を通した環境負荷の低減に取り組んでいます。気候変動対応を含む環境活動の最高責任者であるCEOの下、EHS(環境・健康・安全衛生)機能を管轄するCHRO(Chief Human Resources Officer)が、当社グループ全体の環境活動を統括しています。

 EHS統括部門はCHROの指示のもと、当社グループ全体の「環境安全衛生ポリシー」を策定するとともに、温室効果ガス使用量削減目標を含む環境行動計画を策定し、当社グループ全体の環境行動計画の推進と進捗状況をモニタリングし、継続的な改善を進めています。最高責任者(CEO)は、必要に応じて環境活動の進捗状況の報告を受け、必要な改善指示を行います。取締役会は気候変動の対応状況について適宜報告を受け、取り組み状況をモニタリングしています。

 

環境推進体制

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<戦略>

 当社グループは、シナリオ分析の手法を用いて、短期、中期および長期の時間軸ごとに気候変動関連のリスクと機会を特定しています。シナリオ分析では、IEA(国際エネルギー機関)が提示している「1.5℃:RCP1.9(NZE)(産業革命前からの世界の平均気温上昇を1.5℃未満とするシナリオ)」および「4℃:RCP8.5(産業革命前からの世界の平均気温上昇を4℃と想定するシナリオ)」に沿って気候変動の事業活動への影響を分析しています。短期的(1~5年)には、自然災害発生による操業停止・サプライチェーン断絶、気候変動への対応不足や不十分な開示によるステークホルダーからの評価・評判の低下を、中長期的(10~20年)には、炭素税の導入や温室効果ガス削減規制の強化による事業コスト増加を主な課題としています。

 気候変動のリスクは、当社グループの戦略・財務計画に影響を与えますが、影響度合いは比較的小さいと推定しております。移行リスクとしては、炭素税導入等による操業コスト増加が将来的に見込まれますが、事業コスト全体でみると工場でのエネルギーコストは小さいため、影響は限定的であると考えます。物理的リスクとしては、自然災害の自社工場操業への影響についても台風や物理的なリスクが低い場所にあることを確認しており、有事の際にも事業活動が継続できるよう各拠点で事業継続計画を作成しています。サプライチェーンの面でも、昨今世界規模で台風や洪水が発生し、資材調達や製品供給の面での影響が想定されるため、代替サプライヤーによる生産確保等の体制構築を進めています。

 また、気候変動の機会については、温室効果ガス削減に寄与する製品へのニーズの高まりを機会ととらえて、省エネルギー等に配慮した環境配慮型製品の開発を継続していきます。ただし、当社グループの製品は製品自体が小型で使用によるエネルギー消費量が少ないこと、気候変動による製品・サービス需要への影響が小さいことから、事業活動に大きな影響を及ぼすほどの機会ではないと認識しています。

 

 

シナリオ

環境変化

リスク

機会

対策

1.5℃

シナリオ

低炭素社会への移行に伴う規制強化と市場の変化

<移行リスク>

炭素税・排出権取引や各国の温室効果ガス削減規制の強化による調達・操業コストの増加

 

製品に対する温室効果ガス削減規制の強化への対応不足による市場競争力の低下

 

気候変動への対応不足、不十分な開示によるステークホルダーからの評価・評判の低下

省エネルギーによる事業コスト削減

 

環境配慮型製品の開発による市場競争力の向上

 

製品や包装材の見直しにより、原材料コストや廃棄物量が低下

 

ステークホルダーとの関係強化によるサプライチェーン全体での温室効果ガスの削減

 

 

 

 

エネルギー効率改善

 

再生可能エネルギー導入拡大

 

サプライヤーの多様化

 

サプライヤーとのエンゲージメント強化

 

気候変動対応への考え方・取り組みの開示情報の充実

 

製品・サービスの設計開発段階での環境配慮設計

4℃

シナリオ

気温上昇・異常気象の発生増加

<物理的リスク>

台風や洪水等の自然災害規模の拡大による操業停止およびサプライチェーンの断絶(サプライヤ―からの納品停止、物流拠点及び販売・修理サービス拠点の休業による顧客への納入停止等

 

平均気温上昇による空調コストの増加、従業員の体調変化による労働生産性の低下

 

<リスク管理>

 当社グループは、経営戦略や事業計画の策定段階において、当社の事業に影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出し、事業運営への影響度が高いリスクを特定・評価しています。その中には気候変動などをはじめとする環境に関連する規制や技術などの移行リスク、自然災害による物理的リスクの内容も含みます。

 リスクとして特定されたものは、各組織においてリスクが顕在化した場合の影響度および発生可能性をもとにリスク評価と優先順位付けを行い、その結果を踏まえて単年および複数年の事業計画を策定してリスクを管理します。環境法規制に関するリスクについては、品質管理機能が製品関連の環境法規制の動向を、各法人の環境統括部門が事業所関連の環境法規制の動向をモニタリングし、順守状況を定期的に評価して必要な対策を講じています。

 また、特に事業運営への影響度の大きなリスクについては、組織のリスクマネジメント状況を定期的にモニタリングし、その結果をグループ経営執行会議および取締役会へ報告されます。CEOは、リスクマネジメント状況のモニタリング結果の報告を受けて、活動の有効性が不足している場合は活動計画の見直しを指示します。

 

<指標と目標>

 当社グループは2031年3月期までに自社事業所からの温室効果ガス排出量(Scope1,2)を実質ゼロとすること、2031年3月期までに自社の事業所で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来とすることの目標を設定しています。また、脱炭素社会の実現に広く貢献するためには、自社からの温室効果ガス排出量に加えて、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量までを含めた取り組みが必要であると考え、2023年5月にサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を2040年3月期までにネットゼロとする目標を策定し発表しました。そして2023年10月には、SBTi(The Science Based Targets initiative)より当社グループの短期目標及びネットゼロ目標がパリ協定で定められている1.5℃目標の水準と整合したものであるとの認定を取得しました。

 SBTi認定に関する情報は当社ホームページに掲載していますので、ご参照ください。

 URL:https://www.olympus.co.jp/news/2023/nr02588.html

 

 2024年3月期における実績は、温室効果ガス排出量(Scope1,2)を対2020年3月期比で51%削減、再生可能エネルギーの電力導入率78%を達成しました。今後は2031年3月期までの目標達成に向け、世界各国の拠点での継続的な製造改善活動や省エネの推進と、再生可能エネルギーの導入を進めます。また、サプライチェーン全体での温室効果ガスを削減するために、環境配慮型製品の開発、グリーン調達の推進、物流効率の改善等に継続的に取り組みます。

 

2024年3月期の実績と目標

 

実績

目標

2024年3月期

2031年3月期

温室効果ガス排出量

(Scope1,2)

51%削減

(2020年3月期比)

カーボンニュートラル達成※

再生可能エネルギー電力導入率

78%

100%

※カーボンニュートラル:自社事業所からの温室効果ガス排出量(Scope1,2)を削減し、残存する温室効果

ガス排出量に相当する量をカーボンオフセットで相殺し全体としてゼロとすること。

 

サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量(単位:t-CO2e)

カテゴリー

2024年3月期

Scope1

27,255

Scope2

15,125

合計(scope1+2)

42,380

Scope3

787,822

合計(scope1+2+3)

830,202

※実績データは本有価証券報告書提出時に第三者保証が得られている2024年3月期のもの

 

 

詳細な情報は当社ホームページ並び「サステナビリティレポート2024」に掲載していますので、ご参照ください。

URL:https://www.olympus.co.jp/csr/download/pdf/Olympus_Sustainability_Report_2024_jp.pdf

なお、「サステナビリティレポート2025」は2025年10月頃に当社ホームページにて掲載予定です。

 

(3)オリンパスグループの人的資本に対する考え方

<戦略>

当社の考える人的資本経営

 当社グループにおいて、最も重要な経営資源は「人」であり、世界中の従業員がその無限の可能性を結集させることでイノベーションを創出し、Our Purposeである「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」を目指しています。

 多様な人材が共通の価値観で結びつき、個々人の成長に会社と従業員が誠実に向き合い、互いに成長を続けるという組織としての盤石な基盤のもと、変化の激しい世界情勢や患者さんのニーズに速やかに対応できる人材・組織を必要としており、その実現に向け方針を掲げています。

 

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健やかな組織文化

 当社グループでは、企業変革の一環として、健やかな組織文化の実現に向けて取り組んでいます。健やかな組織文化は、私たちの存在意義の実現のために、従業員の力を最大限に引き出す企業文化を創造するというオリンパスのビジョンそのものです。「学びと成長」、「オーセンティック・リーダーシップ」、「インクルージョン」、「賞賛・奨励」、「活気ある職場」の5つの要素を通して、あるべき企業文化を目指します。

 

「学びと成長」・・・すべての従業員が成長し、適切な能力を身につけ、「私たちのコアバリュー」を体現できるような文化を創造するため、グローバル共通オンライン学習プラットフォーム、異文化理解ワークショップ等、幅広い能力開発の機会を提供することで、自発的学習を促しています。

「オーセンティック・リーダーシップ」・・・一人一人が能力を発揮できるチームづくりを実践するために、「グローバル・リーダーシップ・コンピテンシー・モデル」で定めたコンピテンシーの教育、またGlobal 360フィードバックを通じて、リーダー自身が研鑽できる機会を提供しています。

「インクルージョン」・・・平等な機会の提供、トレーニングやワークショップなどの啓発活動とコミュニケーション、家庭や生活との両立支援を通じ、すべての従業員にとってインクルーシブな文化を醸成していきます。

「賞賛・奨励」・・・成果を上げた従業員を表彰するグローバルで一貫性がある表彰制度(グローバル、地域)、競争力のある処遇を実現するために社外サーベイ調査結果をもとに設定した報酬制度等により、従業員の成果と貢献を奨励しています。

「活気ある職場」・・・対面のコミュニケーションとリモートワークを組み合わせたハイブリッドな働き方の推進、最適なオフィス環境の構築、新しい働き方に基づいた規則やルールの整備を進めています。

 

 企業文化を醸成し、私たちの存在意義を実現するためには、“People-centric”(お客さまや患者さんのことと同様に、従業員一人ひとりのことを第一に考える)の視点に立ち、世界中のお客さまや患者さんに、より良いサービスや価値を提供できる組織運営を実践していくことが、何よりも重要と考えています。

 

 

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Our Core Values  私たちのコアバリュー

 私たちのコアバリューを体現することが、健やかな組織文化を醸成する土台となります。オリンパスはグローバル・メドテックカンパニーとしての優先事項を実現するにあたり、従業員それぞれが必要となる行動に集中し、同僚、お客様、患者さんに対し、コアバリューに沿った行動をすることが求められています。

 患者さんに対して安全な製品を確実に提供し、私たちの存在意義を実現するため、私たちはコアバリューに沿って行動し、日々の業務に取り組んでいきます。

 

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<指標及び目標>

 本項「オリンパスグループの人的資本に対する考え方」における具体的な指標及び目標については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」掲載の、①管理職に占める女性従業員の割合、②男性の育児休業等取得率、③男女の賃金差異をご参照ください。

3【事業等のリスク】

 当社グループの業績は、今後起こりうる様々なリスク(不確実性)によって大きな影響を受ける可能性があります。当社グループは、経営理念や基本的な指針を含む事業目標を達成するために、グローバルなエンタープライズ・リスクマネジメントの枠組みを構築しています。この体制は、「リスクマネジメント及び危機対応方針」に基づいて運用されています。また、当社グループは、「機会」と「脅威」の両面からエンタープライズ・リスクマネジメントに取り組んでいます。機会は、当社グループの持続的な成長と価値創造につながる積極的かつ適切なリスクテイクを通じて捉えられる一方、脅威は、事業目標の確実な達成とコンプライアンス違反の防止のために特定され、優先順位をつけて対処されます。

 グローバル組織体制では、リスク&コントロール、コンプライアンス、プライバシー、情報セキュリティーの4つの機能が統合されています。この体制は、4つの機能に加えて、製品セキュリティー、サイバーセキュリティーを含む関連管理システムおよび当社グループにおけるリスク全体像を把握しビジネスプロセスに組み込む、いわゆるアラインド・アシュアランスを推進することを目的としています。2025年3月期において、これらの領域はグローバル法務機能と統合され、グローバルジェネラルカウンセルの管轄下にあるリーガル・リスク・コンプライアンス機能(以下、LRC)として再編されました。グローバル・チーフ・コンプライアンス・オフィサー(GCCO)は、引き続きグループ経営執行会議に出席するとともに、CEO、取締役会、監査委員会へ定期的な報告を行います。

 エンタープライズ・リスクマネジメントにおいて特に注力する活動は以下の通りです。

- LRC機能におけるグローバルなリスクコントロール機能の構築

- グローバルなエンタープライズ・リスクマネジメント手法とアプローチの強化

- グローバルに一貫性のあるエンタープライズ・リスクマネジメントの構築

 これらの活動に注力することで、合理的なエンタープライズ・リスクマネジメントが実行され、事業計画及び財務計画にリスクを反映することを企図しています。また、十分な情報に基づいた経営の意思決定をサポートすることで、当社の事業目標と経営戦略の達成の確度を高めることを目指しています。当社は2024年3月期に構築した統合的なグローバルリスクマネジメントポートフォリオを更に発展させ、2025年3月期には、全ての関連部門のリスク評価を実施し、地域別およびグローバルなリスクポートフォリオを検証、更新しました。

 

エンタープライズ・リスクマネジメントの組織体制

 当社グループは、グローバルおよび地域レベルの委員会組織として、グローバル及び地域リスクアシュアランス・コンプライアンス委員会(以下、G-RACC、R-RACC、総称してRACCs)を設立しました。RACCsは、リスクに対処し、適用される方針、法律、規制を遵守するための枠組みを確立、実施、管理することを目的としています。また、勧告、指導、重要リスクについては、グループ経営執行会議(以下、GEC)、取締役会、 監査委員会に定期的に報告され、継続的なモニタリングが行われます。

 また、リスクオーナーとして、グローバル事業・機能責任者、地域事業・機能責任者を任命し、更に各事業・機能でリスク管理を担うリスクコーディネーターを任命しています。リスクオーナーは、自身が管轄する領域において対策(例:組織体制、プロセス準備、重点対策など)を講じる責任を負います。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント体制>

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エンタープライズ・リスクマネジメントの手法とアプローチ

 当社グループでは、5つのリスクカテゴリー(1.戦略(外部環境変化を含む)、2.オペレーション&製品、3.ファイナンス、4.ガバナンス、5.IT&デジタル)、及びそれらを具体化したサブカテゴリーによるエンタープライズ・リスクマネジメント手法とアプローチを用いています。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント リスクカテゴリー>

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 また、当社グループでは、事業目標の達成や経営戦略に影響を及ぼす可能性があると合理的に判断されるリスクを評価し、明示するために、3つのリスク評価基準(1.エクスポージャー、2. 脆弱性、3.速度)を用いています。

- エクスポージャーは、発生可能性と発生時の影響によって決定します。可能性とは、リスクが顕在化する確率を示し、影響度とは、リスクが顕在化した場合の結果の重大性を示します。可能性と影響度のレベルは、定量的(財務的数値に基づく)または定性的基準として評価します。

- 脆弱性(Vulnerability)とは、リスクが発生した場合に、組織がそのリスクを管理する準備がどの程度できているかを示します。

- 速度 (Velocity)とは、リスク発生後、当社がどの程度の速さでリスクの影響を受けるかを示します。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント評価手法>

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 これらの基準に基づき、当社グループはリスクを積極的に特定、軽減し、監視しており、対応策を定期的に見直し、その有効性を検証しています。また、リスクを可視化して管理するため、エクスポージャー、脆弱性、速度を組み合わせてリスク評価結果を4つの象限に分け、当該リスクにどのように対処するべきかについて示す「3Dリスクマトリックス」と呼ばれる手法を用いています。さらに、最新のITツールを用いたデータベース及びダッシュボードを導入しています。2025年3月期においては、リスクポートフォリオを最適化し、同時にリスク記述を構造化、分類、標準化してより明瞭で分かりやすい記載を実現するため、社内で設計された人工知能ツールを用いてITツールをアップグレードしています。

 

エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス

 当社グループのエンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスの主な構成要素は以下の通りです。

- リスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価)

- 対応策(リスクの低減、リスクマネジメント活動の実行及び調整)

- リスクモニタリング(リスクモニタリングプロセスの設計、実施、リスクトリートメント活動の有効性の評価)

- リスク報告(リスク及びその対応策を集約・評価し、関連するステークホルダーに定期的に報告する。リスク報告は、リスクマネジメントの年次計画の一部として立案・社内へ展開される)

 エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセスでは、いわゆる3つのラインモデルの考え方に沿って、リスクコントロール機能と各事業・機能が緊密に連携を行っています。また、リスクコントロール機能は、エンタープライズ・リスクマネジメント手法及び運用ガイダンスを提供、維持、開発する責任を負っています。

 

<エンタープライズ・リスクマネジメント・プロセス>

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マクロ経済ビジネス環境

 2024年4月以降の世界経済においては、サプライチェーンの混乱、エネルギー価格の上昇等により、多くの国で予想を上回ってインフレが進展しました。

 地政学的緊張は引き続き世界のマクロ経済環境にリスクをもたらしています。ウクライナにおける戦争や中東情勢、米国と中国を含む主要経済国間の貿易摩擦等による不確実性に加え、足元では米国における追加関税に関する動向にも不透明感がみられ、グローバルな貿易とサプライチェーンにも大きな影響を与えています。

 技術面では、デジタル技術、人工知能、自動化の急速な浸透が、生産性の向上を促進し、新たな経済機会を生み出している一方、データプライバシーとサイバーセキュリティーに関する懸念など、課題ももたらしています。

 気候変動と持続可能性は、世界的に重要視されており、持続可能性の重視、二酸化炭素排出量の削減が求められていますが、一方で、大規模な設備投資の必要性や従来の産業への混乱が生じる可能性など、課題も抱えています。

 

業界特有のビジネス環境

 メドテック企業各社は、上記のマクロ経済ビジネス環境に加えて、業界に特有の要因にも大きく影響を受けています。

 この業界では、医療費の抑制や医療サービスの安全性・有効性の向上による患者さんのQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指し、国内外で医療制度改革が継続的に実施されています。また、米国食品医薬品局(以下、FDA)や欧州医療機器規制(以下、EU-MDR)をはじめ、各国の医療機器申請・登録・市販後調査に対する法規制要件は年々厳格になっており、感染予防や再処理(洗浄・消毒・滅菌)に関する要件も複雑化しています。

 各国の医療政策の変化、医療費の削減、医療関連法規の強化、感染予防や再処理に対する要求のさらなる高まりなどにより、技術開発のハードルや複雑さは増しています。それに伴い、新技術や代替技術だけでなく、IT技術大手をはじめとする異業種からの医療業界への参入もあり、事業環境は大きく変化しています。

 さらに、先進国を中心に社会の高齢化が進むにつれ、医療に対するニーズは確実に高まっています。当社グループが関わる事業領域には多くの競合他社が存在しており、技術革新も進む中で、競争は一層激化しています。新興国市場においては、経済成長とともに医療ニーズが高まっており、さらなる成長が期待出来ると考えています。

 また、当社グループが事業を展開する業界では、 グローバルで人材獲得競争が激化しており、労働市場の変化で退職率の高まりもみられ、人材の採用・育成・確保がますます重要になっています。

 

 

当社グループのリスク状況(2025年3月期)

 2025年3月期に実施したグローバルリスクアセスメントに基づき、リスクを特定・評価しました。

 3Dリスクマトリックスにおいて"Improve"の領域に特定されたリスクについては、対応策の優先順位を高く設定しています。"Test"の領域に特定されたリスクについては、既にコントロールが実施されていますが、同時に、定期的なモニタリングにより、既存のコントロールが適切にかつ効果的に機能しているか、確認しています。"Monitor"の領域に特定されたリスクは、エクスポージャーが許容可能なレベルであることを継続的に確認し、必要に応じて追加の対応策を設定します。

 当社グループでは、リスクカテゴリーごとに、以下のトップリスクを報告しています。

 

 

リスクカテゴリー:戦略(外部環境変化を含む)

リスクタイプ:機会と脅威

リスク傾向:上昇

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーには、「計画・資源配分」、「事業開発・投資」、「コミュニケーション・ステークホルダーマネジメント」、「マーケットダイナミクス」、及び「不可抗力」が含まれます。最も高いリスクとして評価された中には、地政学上の脅威、不安定な市場における事業展開、サプライチェーンの混乱、が含まれています。

 

・地政学的緊張は、軍事紛争や貿易戦争によるサプライチェーンへの脅威、コスト増、急速に変化する制裁措置によるコンプライアンスリスクの発生などにより、トップリスクとして認識されています。

・主要な市場において、国内産業の保護措置の実施等により、市場環境が大きく変化しています。関税の引き上げや国内サプライヤーへの優遇措置等により収益性が低下する可能性があります。

・また、競争環境が激化する中で、価格・技術・品質等様々な面において競争力を有する製品を適時に投入する必要があります。

・M&A活動には機会と脅威の両方が存在し、厳格なデューデリジェンスと体系的な統合プロセスが必要です。リスク軽減策が不十分な場合、のれんの減損や関連費用により、事業遂行、業績、財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。

対応策

 当社グループでは、上記のリスクに対応するために以下の対応策を実施しています。

 

・サプライチェーンの混乱に対する脆弱性を軽減するために、サプライチェーンの可視性を高め、サプライヤーを多様化させています。

・競争環境をモニタリングし、代替技術や市場動向を特定することで、新技術の迅速な開発を可能とする体制の構築を推進しています。また、各主要市場の動向に応じて対応策を実施しています。中国においては現地製造に向けた準備を進展させているほか、米国においては追加関税の動向を注視しつつ、患者さんの安全と健康を最優先に、業界団体と緊密に連携しています。

・潜在的な混乱を回避して顧客と患者さんへの継続的な供給を確保するための、グローバルな事業継続管理体制を強化しています。

・自社開発とM&Aや戦略的提携を通じた外部技術獲得の両方を通じたイノベーションへのバランスの取れたアプローチ、およびインテリジェント内視鏡医療エコシステムをはじめとした高付加価値製品の開発を推進しています。

・ターゲット選定、デューデリジェンス、買収後の統合効果を向上させるため、M&Aプロセスと体制を継続的に改善しています。

経営戦略・方針との関連:患者さんの安全と持続可能性、成長のためのイノベーション、生産性の向上

 

 

 

リスクカテゴリー:オペレーション&製品

リスクタイプ:機会と脅威

リスク傾向:変化なし

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーには、「研究開発」、「製造・修理」、「エンド・ツー・エンド・サプライチェーン」、「販売・マーケティング・サービス」、「品質」、「資産」、及び「人的資源」が含まれます。最も重大なリスクは、主に製品品質、エンド・ツー・エンドのサプライチェーン、マーケティング&セールスに関連しており、製品の安定的な供給とライフサイクル管理に影響を与えます。

主な課題は以下の通りです。

 

・製造、品質、サプライチェーンマネジメント、研究開発機能にまたがり、大規模な資源配分を行いつつ、FDAから受領した警告書に係る是正活動を継続しています。

・地政学的緊張の高まりと気候変動にともなう自然災害が増加する中、サプライチェーンの回復力は依然として持続的な課題と認識しています。

対応策

 当社グループは、患者さんの安全を重視した高品質のサービスを提供するために、エンド・ツー・エンド・サプライチェーンの安定と品質プロセスの改善に優先的に取り組んでいます。主な活動は以下の通りです。

 

・グローバルな事業継続管理体制に継続的に取り組んでいます。

・サプライチェーンの可視化向上プロジェクト推進とサプライヤーの多様化により、特定サプライヤーへの依存度を軽減させています。

・品質マネジメントシステムとプロセスを強化し一貫性を持たせるために、グローバルな複数年にわたる品質プログラムを実施しています。

経営戦略・方針との関連:患者さんの安全と持続可能性、生産性の向上

 

リスクカテゴリー:ファイナンス

リスクタイプ:機会と脅威

リスク傾向:変化なし

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーには、「資本構造」、「会計・報告」、「流動性・信用」、「収益サイクル」、及び「税務」が含まれています。

 

・外国為替レートの変動は、大きなリスクをもたらします。外貨建て取引に対するヘッジを行っていますが、円高は業績に悪影響を及ぼし、円安は業績に好影響をもたらす可能性があります。

• 資金調達リスクは、資本及び借入等へのアクセスに影響を与える金融市場の変動や、借入コストに影響を与える企業業績から生じます。業績の悪化や金融市場の環境変化は、資金調達オプションを制限する可能性があります。

• グローバルな管轄当局における適用税法や解釈の変更により、税負担が増大する可能性があります。また、事業環境の変化や組織再編により、繰延税金資産の評価の見直しが必要になる可能性もあります。

・顧客やサプライヤーの信用リスクが当社の財務の安定性に影響を与える可能性があります。

対応策

 当社グループでは、次のような方法でファイナンスリスクの軽減を図っています。

 

・為替変動を管理するために、為替予約や通貨スワップなどのデリバティブ取引を導入しています。この対応は外貨エクスポージャー低減のためのグローバルなキャッシュプーリングによって補完されています。

・調達コストを最適化するための公募社債発行等による資金調達方法の多様化と、金利変動を最小化するための長期債務に対する固定金利採用を組み合わせて対応しています。

・繰延税金資産を最適化するために管轄当局間の税法改正を積極的に監視し、グループ内取引ルールの適切な調整と徹底した収益性管理を行っています。

・与信先の財務状況を体系的にモニタリングし、適切な対応を実施しています。

経営戦略・方針との関連性:生産性の向上

 

 

リスクカテゴリー:ガバナンス

リスクタイプ:機会と脅威

リスク傾向:変化なし

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーには、「カルチャー」、「規制」、「法務」、「コンプライアンス」、「データプライバシー」、及び「コーポレートガバナンス」が含まれます。

 

・断片化された契約管理プロセスとデータベースは透明性の欠如を生み出し、契約違反、クレームあるいは法的責任を招く可能性があります。

・複雑な医療機器および貿易規制への対応には包括的な文書化が要求されますが、その不備により製品供給に直結するコンプライアンス違反を引き起こす可能性があります。

・2023年3月期にFDAから受領した警告書で指摘された事項に対して実施中の是正活動は、規制を遵守するために完全に実行する必要がありますが、今後の経過によっては、FDAによりさらなる規制措置が取られる可能性があります。

・不十分な事業継続管理体制は、自然災害やその他の緊急事態の際のオペレーションに混乱をきたす可能性があります。

対応策

 当社グループでは、以下の対応でガバナンス改善を図っています。

 

・プロセス改善とデータベースの更新を伴う契約管理強化プロジェクトに取り組んでいます。

・グローバルな品質保証・法規制対応の変革プロジェクト「Elevate」を推進しています。

・2023年3月期にFDAから受領した警告書に関する是正措置に関して、引き続き全社で対応を推進しています。

・既存の事業継続対策を標準化するために、一貫性があり、かつ的をしぼった事業継続管理体制を策定、実行します。

・また、2025年3月期にCEOが辞任した件を踏まえて、当社はグローバル行動規範および関連する研修を改定し、私たちは当社の行動規範、ポリシー、および適用されるすべての法律・規制を遵守しなければならないことを明確化します。2026年3月期には、改定されたグローバル行動規範に関する年次研修を、全従業員を対象に実施するとともに、役員のメンタルケアの強化のサポート等に取り組んでいます。

経営戦略や方針との関連:患者さんの安全と持続可能性

 

リスクカテゴリー:IT&デジタル

リスクタイプ:機会と脅威

リスク傾向:変化なし

リスクシナリオ

 このリスクカテゴリーには、「ITセキュリティー・サイバー」、「ITアプリケーション」、「ITガバナンス」、「ITインフラ・サービス」及び「デジタル」が含まれます。

 

・デジタルシステムへの高い依存により、IT障害によるオペレーション混乱に関する脆弱性が生じる可能性があります。

・サイバーセキュリティー侵害は、継続的なモニタリングと対応が必要な優先度の高いリスクと認識しています。

・老朽化したITアプリケーションが耐用年数を迎えることにより、システム障害やオペレーション混乱を引き起こす重大なリスクとなる可能性があります。

・当社製品におけるデジタル技術の統合が進むにつれ、バリューチェーン全体で包括的なサイバーセキュリティー対策が必要となります。

対応策

 当社では、IT&デジタルリスクに対して以下の対応を図っています。

 

・複数年にわたる包括的なITセキュリティー・プログラムを計画通りに推進しています。

・ITインフラの大規模な刷新、アップグレード、移管を計画通りに進めています。

・サードパーティのプロバイダーに対するセキュリティーおよび協業要件を強化しています。

・セキュリティー・インシデント発生時の顧客への影響を最小化するため、グローバルな事業継続管理体制構築プロジェクトにおいて、事業継続計画および災害復旧計画をアップグレードします。

・最新のサイバーセキュリティー要件に沿った技術とプロセスにより、当社製品とデジタルサービスを保護します。

・サイバーセキュリティーの脅威および日常業務における予防策に関する定期的な社員教育を実施します。

経営戦略・方針との関連:患者さんの安全と持続可能性、生産性の向上

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績等の概要

① 業績

 当連結会計年度において、当社は、PTCJ-6Oホールディングス株式会社及びPTCJ-6Fホールディングス株式会社(ポラリス・キャピタル・グループ株式会社が設立した特別目的会社。以下「ポラリス・キャピタル・グループ」と総称します)に対して、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社およびFH Ortho SAS社から構成される整形外科事業を譲渡することについて、ポラリス・キャピタル・グループとの間でプット・オプション契約を締結し、当該契約に基づき、2024年7月12日に譲渡を完了しました。これに伴い、整形外科事業に関わる損益を非継続事業に分類しており、前連結会計年度についても同様の形で表示しています。なお、売上高、営業利益、調整後営業利益、税引前利益、継続事業からの当期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については、継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています。

 また、当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」及び「その他事業」の3区分を報告セグメントとしていましたが、整形外科事業が非継続事業に分類されたことにより、継続事業に含まれる、整形外科事業以外の「その他事業」について当期見込まれる財務情報の金額的な重要性が低下するため、「報告セグメント」より除外しています。そのため、中間連結会計期間より報告セグメントを「内視鏡事業」及び「治療機器事業」の2区分に変更しており、前連結会計年度についても同様の形で表示しています。

 なお、当社は、2025年4月1日付で、より効率的で、患者さんとお客様中心の展開とするため、事業部門の再編成を含む組織改編を実施いたしました。当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」の2区分を報告セグメントとしていましたが、2026年3月期より「消化器内視鏡ソリューション事業」「サージカルインターベンション事業」の2区分を報告セグメントとすることに変更いたします。

 

業績全般に関する動向

 当連結会計年度における世界経済は、持ち直しの動きが継続しましたが、アメリカの通商政策による下振れリスクに加え、金融資本市場の変動の高まりの影響にも注視する必要があります。わが国経済においても、景気は緩やかに持ち直している一方で、世界経済の先行きを注視する必要があります。

 こうした環境下にあるものの、当社グループは、2023年5月に公表した経営戦略に沿って、「患者さんの安全と持続可能性」「成長のためのイノベーション」「生産性の向上」という3つの優先事項のもと、グローバル・メドテックカンパニーへの変革に向けて引き続き取り組んでいます。

 

業績の状況

 以下(1)から(10)は継続事業の業績を、(11)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。

(単位:百万円)

 

2024年3月期

2025年3月期

増減額

増減率(%)

(1)売上高

925,752

997,332

71,580

7.7%

(2)売上原価

307,320

313,635

6,315

2.1%

(3)販売費及び一般管理費

466,758

495,654

28,896

6.2%

(4)持分法による投資損益/
その他の収益/その他の費用

△100,287

△25,581

74,706

(5)営業利益

51,387

162,462

111,075

216.2%

(6)調整後営業利益

151,316

188,509

37,193

24.6%

(7)金融損益

△7,776

△3,392

4,384

(8)税引前利益

43,611

159,070

115,459

264.7%

(9)法人所得税費用

8,546

41,270

32,724

382.9%

(10)継続事業からの当期利益

35,065

117,800

82,735

235.9%

(11)親会社の所有者に帰属する当期利益

242,566

117,855

△124,711

△51.4%

為替レート(円/米ドル)

144.62

152.58

7.96

為替レート(円/ユーロ)

156.80

163.75

6.95

為替レート(円/人民元)

20.14

21.10

0.96

 

(1)売上高

 内視鏡事業、治療機器事業ともに増収となり、前期比715億80百万円増収の9,973億32百万円となりました。詳細は以下のセグメント別の動向に関する分析に記載しています。

(2)売上原価

 前期比63億15百万円増加の3,136億35百万円となりました。売上原価率は、前期に内視鏡事業で引当計上していた高速気腹装置の市場是正処置に係る費用約52億円や、小腸内視鏡システムなどの自主回収に伴う費用約50億円がなくなったことにより、31.4%と前期比1.7ポイント良化しました。

(3)販売費及び一般管理費

 前期比288億96百万円増加の4,956億54百万円となりました。販売費及び一般管理費の対売上高比率は、研究開発費が増加したものの、増収により、49.7%と前期比0.7ポイント良化しました。

(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用

 持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で255億81百万円の費用となり、前期比で損益は、747億6百万円改善しました。その他の収益に関して、当期は当社の連結子会社であるOlympus (Shenzhen) Industrial Ltd.が中国・深圳市に保有する土地使用権及び建物を深圳市政府へ返還したことに伴う補償金約12億円や、Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.と深圳市安平泰投资发展有限公司との間で和解が成立したことに伴い、訴訟等に係る損失に備えるため過去に見積もり計上した引当金の戻入額約9億円を計上しており、前期比で18億14百万円増加しました。その他の費用に関しては、前期に計上していたVeran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円や、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約の締結及び解除に関連する費用約20億円がなくなったことに加え、内視鏡事業および治療機器事業における開発資産の減損損失がそれぞれ約39億円、約19億円、内視鏡事業における仕掛中の研究開発の減損損失約45億円、品質保証・法規制対応の変革プロジェクトElevateに係る一時的な費用が約37億円、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用が約30億円減少したことにより、前期比で720億68百万円減少しました。

(5)営業利益

 上記の要因により、前期比1,110億75百万円増益の1,624億62百万円となりました。

(6)調整後営業利益

 営業利益からその他の収益およびその他の費用を除外した調整後営業利益は、上記の要因により、前期比371億93百万円増益の1,885億9百万円となりました。

(7)金融損益

 金融収益と金融費用を合わせた金融損益は33億92百万円の損失となり、前期比で損益は43億84百万円改善しました。損益の改善は、主として為替差損が減少したことによるものです。

(8)税引前利益

 上記の要因により、前期比で1,154億59百万円増加となる1,590億70百万円となりました。

(9)法人所得税費用

 税引前利益が増加したことにより、前期比で327億24百万円増加し、412億70百万円となりました。

(10)継続事業からの当期利益

 上記の要因により、前期比で827億35百万円増加となる1,178億円となりました。

(11)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算)

 前連結会計年度に非継続事業において科学事業の譲渡益約3,490億円を計上したことにより、前期比で1,247億11百万円減益となる1,178億55百万円となりました。

 

(研究開発支出および設備投資)

 当期においては、非継続事業を除いた継続事業で1,038億90百万円の研究開発費を投じるとともに、849億59百万円の設備投資を実施しました。

 

(為替影響)

 為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=152.58円(前期は144.62円)、1ユーロ=163.75円(前期は156.80円)、1人民元=21.10円(前期は20.14円)となり、売上高では前期比で399億7百万円の増収要因、営業利益では前期比で207億75百万円の増益要因、調整後営業利益では前期比で213億90百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比3.4%の増収、連結営業利益は前期比175.7%の減益となります。

 

セグメント別の動向に関する分析

 

 

売上高

営業利益又は営業損失(△)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減率

(%)

内視鏡

586,617

636,144

8.4

104,684

141,398

35.1

治療機器

337,331

360,658

6.9

△8,466

61,453

小計

923,948

996,802

7.9

96,218

202,851

110.8

その他

1,804

530

△70.6

△287

△473

消去又は全社

△44,544

△39,916

連結計

925,752

997,332

7.7

51,387

162,462

216.2

(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。

 

[内視鏡事業]
 内視鏡事業の連結売上高は、6,361億44百万円(前期比8.4%増)、営業利益は1,413億98百万円(前期比35.1%増)となりました。

 消化器内視鏡分野では、国産優遇策などの影響もあり競争環境が激化する中国で売上が減少した一方、消化器内視鏡システム「EVIS X1」の販売が好調な北米で売上が増加し、前期比プラス成長となりました。

 外科内視鏡分野では、中国で減収となった一方、北米やアジア・オセアニアで増収となりました。主に北米で、手術システムインテグレーションに係る新製品が好調に推移した結果、前期比プラス成長となりました。

 医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、欧州や北米を中心に、全ての地域で前期比プラス成長となりました。

 内視鏡事業の営業損益は、次世代内視鏡システムなどに関わる研究開発費が増加したものの、増収による売上利益の増加に加え、前期に引当計上していた高速気腹装置の市場是正処置に係る費用約52億円や、小腸内視鏡システムなどの自主回収に伴う費用約50億円がなくなったことや、その他の費用として計上している、開発資産及び仕掛中の研究開発の減損損失がそれぞれ約39億円と約45億円、品質保証・法規制対応の変革プロジェクトElevateに係る一時的な費用が約23億円減少したことにより、増益となりました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比4.1%の増収、営業利益は前期比19.8%の増益となっています。

 

[治療機器事業]

 治療機器事業の連結売上高は、3,606億58百万円(前期比6.9%増)、営業利益は614億53百万円(前期は84億66百 万円の営業損失)となりました。

 治療機器事業では、注力三領域である、消化器科(処置具)分野、泌尿器科分野、呼吸器科分野のすべての分野で、北米や欧州を中心にプラス成長となりました。

 消化器科処置具分野では、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群などで売上が増加しました。

 泌尿器科分野では、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極や、尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System」の売上が増加しました。

 呼吸器科分野では、EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具や超音波気管支鏡が好調に推移しました。

 その他の治療領域では、主に他社製品の取り扱い終了の影響を受けた日本で、減収となりました。

 治療機器事業の営業損益は、研究開発費が増加したものの、増収による売上利益の増加に加え、その他の費用として、前期に計上していたVeran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約の締結及び解除に関連する費用約20億円がなくなったことや、開発資産の減損損失が約19億円、品質保証・法規制対応の変革プロジェクトElevateに係る一時的な費用が約13億円減少したことにより、増益となりました。

 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比2.6%の増収、営業損益は前期比644億34百万円の増益となっています。

 

② 財政状態の状況

 

 

前連結会計年度末

(百万円)

当連結会計年度末

(百万円)

増  減

(百万円)

増減率

(%)

資産合計

1,534,216

1,432,826

△101,390

△6.6

資本合計

757,186

751,733

△5,453

△0.7

親会社所有者帰属

持分比率

49.4%

52.5%

3.1%

 

 

[資産]

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から1,013億90百万円減少し、1兆4,328億26百万円となりました。自己株式の取得により1,000億2百万円を支出したことを主因に現金及び現金同等物が884億1百万円減少し、さらに、法人所得税の還付を主因に未収法人所得税が323億4百万円減少しました。

[負債]
 負債合計は、前連結会計年度末から959億37百万円減少し、6,810億93百万円となりました。社債の償還および借入金の返済により社債および借入金が705億14百万円減少し、また、製品保証引当金や十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金の減少により、引当金が155億84百万円減少となりました。さらに、未払費用の減少等により、その他流動負債が135億23百万円減少しました。

 

[資本]

 資本合計は、前連結会計年度末から54億53百万円減少し、7,517億33百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益1,178億55百万円を計上した一方で、自己株式の取得1,000億2百万円、剰余金の配当209億81百万円を行ったことが主な要因です。

 また、当社は2023年11月9日開催の取締役会決議に基づき、2024年4月30日に自己株式771億61百万円の消却を行っています。さらに、2024年5月10日開催の取締役会決議に基づき、自己株式の取得1,000億2百万円と2025年1月31日に自己株式の消却953億38百万円を行いました。結果として自己株式は740億94百万円減少(資本におけるマイナス表示額の縮小)しています。


 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の49.4%から52.5%となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

42,365

190,463

148,098

投資活動によるキャッシュ・フロー

359,992

△65,469

△425,461

財務活動によるキャッシュ・フロー

△276,010

△211,542

64,468

現金及び現金同等物期末残高

340,933

252,532

△88,401

 

[営業活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,904億63百万円の増加(前連結会計年度は423億65百万円の増加)となりました。税引前当期利益1,590億70百万円や減価償却費及び償却費の調整664億56百万円により増加した一方、営業債権及びその他の債権の増加により277億25百万円減少しました。

[投資活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、654億69百万円の減少(前連結会計年度は3,599億92百万円の増加)となりました。有形固定資産の取得による支出460億1百万円、無形資産の取得による支出192億8百万円が主な要因です。

 

[財務活動によるキャッシュ・フロー]

 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2,115億42百万円の減少(前連結会計年度は2,760億10百万円の減少)となりました。自己株式の取得による支出1,000億2百万円、社債の償還及び長期借入金の返済による支出700億35百万円、配当金の支払209億81百万円、リース負債の返済による支出193億2百万円が主な要因です。

 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して884億1百万円減少し、2,525億32百万円となりました。

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

423,731

△0.7

治療機器

251,285

△1.1

その他

789

△41.7

675,805

△0.9

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

 

② 受注実績

 当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。

③ 販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

内視鏡

636,144

8.4

治療機器

360,658

6.9

その他

530

△70.6

997,332

7.7

(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

(3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものです。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析

 2025年3月期は、能登半島地震に端を発したサプライチェーンの混乱や、中国における厳しい事業環境など相次ぐ、さまざまな課題に直面した1年でした。このような状況にありながらも、年間を通じて消化器内視鏡システム「EVIS X1」の販売が好調な北米が牽引し、実績は堅調に推移しました。売上高は、為替の影響を除くと、前期比3.4%の増収となりました。調整後営業利益率は、増収による売上利益の増加に加え、前期に売上原価で引当計上していた費用がなくなったことなどにより、18.9%となりました。今後も、持続的な売上成長を図るとともに、収益性のさらなる改善に取り組みます。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況

(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・インフローが堅調であった一方で、自己株式の取得による支出、社債の償還および長期借入金の返済による支出により、当連結会計年度末時点で保有する手元資金は2,525億32百万円(前連結会計年度末より884億1百万円減少)となりました。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。

 

(ⅱ) 財務政策

 当社グループは、適切な財務レバレッジのコントロールによる、財務健全性の維持と資本効率性の向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、有利子負債/EBITDA倍率や自己資本比率等の指標を意識し、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達手法の多様化により資金調達基盤を強化し、資金調達コストの低減にも努めています。

 当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2025年3月31日現在における状況は、次のとおりです。

 

格付投資情報センター:A+(長期、見通し安定的)、a-1(短期)

S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通し安定的)

ムーディーズ・ジャパン:Baa1(長期、見通し安定的)

 

(ⅲ) 資金需要

 当社グループの運転資金需要は主に、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入費、製造費のほか、人件費や広告・販売促進費等の営業費用です。また、当社グループの投資資金需要は主に、研究開発支出や設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、積極的に対応していきます。

 

(ⅳ) 資金調達

 当社グループの運転資金および投資資金は、手元資金を充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行による資金調達を実施しています。これらの借入金および社債については、営業活動によるキャッシュ・フローで十分に完済できると考えています。また、主要な取引先金融機関と良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA+、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+およびムーディーズ・ジャパンはBaa1となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金調達が可能と考えています。さらに、主要通貨(円・米ドル・ユーロ・ポンド)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、今後も資金需要に応じて適切な資金調達を実施していきます。

 

(ⅴ) 資金配分

 当社グループの持続的な成長を実現させるため、資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ段階的に増配し、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。安定した事業運営に十分な手元資金を確保しながら、成長投資や株主還元にも適切に資金配分をしていきます。

 

③ 重要性がある会計方針および見積り

 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

 

5【重要な契約等】

(1)提携契約

契約会社名

相手先

国名

契約内容

契約期間

オリンパス㈱

ソニー㈱

日本

医療事業における合弁会社の設立

2012年9月28日以降、期間の定めなし

 

(2)協業契約

契約会社名

相手先

国名

契約内容

オリンパス㈱

1. ソニー㈱

 

2. ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ㈱

日本

次世代内視鏡システムの製品開発における協業の実施

 

(3)整形外科事業の譲渡

 当社は、2024年5月25日付で、PTCJ-6Oホールディングス株式会社及びPTCJ-6Fホールディングス株式会社(ポラリス・キャピタル・グループ株式会社が設立した特別目的会社で以下、「ポラリス・キャピタル・グループ」と総称します)に対して、当社の連結子会社であるオリンパステルモバイオマテリアル株式会社およびFH Ortho SAS社(以下、「FHOグループ」)から構成される整形外科事業を譲渡することについて、ポラリス・キャピタル・グループとの間でプット・オプション契約を締結しました。また、当該契約に基づき、2024年7月12日付で本事業譲渡を完了しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 34. キャッシュ・フロー情報(整形外科事業の譲渡)」に記載の通りです。

 

(4)Sur Medical SpA社のオリンパス製品の販売事業の買収

 当社は、2025年1月14日付で、Sur Medical SpA社のオリンパス製品の販売事業を、当社の連結子会社であるOlympus Latin America, Inc.を通じて取得しました。詳細は、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 40. 企業結合(Sur Medical SpA社の取得)」に記載の通りです。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、経営理念である「私たちの存在意義」を「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」とし、持続的発展の実現を目指して、研究開発活動を行っています。

 当社グループが強みを持つ消化器科、泌尿器科および呼吸器科の領域に投資・リソースを集中させ、収益性の高い持続的な成長の実現や、患者さんのアウトカムの改善を目指しています。

 経営戦略において、当社の発展に不可欠なイノベーションのための最も重要な価値創造の柱として研究開発を位置づけており、アンメットニーズに対応したイノベーション手法の導入、将来のイノベーションを実現するための適切な投資、戦略パートナーシップの積極的な推進、製品の市場投入の迅速化を目指しています。

・患者さん・顧客視点に立ったイノベーション:アンメットニーズに対応しつつ、医療費の削減を図るために、医療従事者との共同開発体制を深化させ、臨床主導でのイノベーションに注力します。

・戦略パートナーシップ:ジョイントベンチャーやアーリーステージ投資、M&A、共創による戦略パートナーシップを積極的に推進します。

・効率的で優れた研究開発組織:グローバルな経営資源を最大限に活用し、能力と適応力を強化することで、プロジェクトのより効率的かつ確実な実行を目指します。

・適切な投資:長期的成長の実現に向け、次世代製品の開発と長期的なイノベーションへの投資バランスを戦略的に図っていきます。

 

 当連結会計年度の非継続事業を除いた継続事業の研究開発支出は、前期比21.7%増の1,039億円であり、売上高に対する比率は前期から1.2ポイント増加し10.4%となりました。

 当社グループが世界をリードするメドテックカンパニーとして飛躍していくためには、競争力のある革新的な製品を迅速に市場に提供していくことが重要であり、事業維持のための研究開発活動から、中期的なイノベーション・技術開発へ、そして、次世代製品のための臨床的アンメットニーズに主眼を置いた戦略遂行を支援します。また、さらなる革新的技術や画期的技術の探索への投資も推進します。

 

○ 内視鏡事業

 内視鏡ビデオスコープシステムや外科手術用内視鏡システムなど、病気の早期発見と患者さんの負担の少ない低侵襲治療に貢献する医療機器の研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、超音波内視鏡システムEU-ME3の米国FDA認可取得や、外科手術用内視鏡システム「VISERA ELITE III」の米国発売、中国発売に向けた開発を行いました。加えて、内視鏡システム、ビデオスコープ、消化器科処置具、リプロセス、サービスといった幅広いポートフォリオと、クラウド型アプリケーションのシームレスな統合を目指し、初のクラウド型AI内視鏡画像診断支援システムが米国FDA認可および欧州MDR認証を取得しました。引き続き、「インテリジェント内視鏡医療エコシステム」の実現に向けた取り組みを進めてまいります。また、NTTと協力し、リアルタイムでの遠隔診断や治療の実現などのクラウド内視鏡の開発を進めています。

 

○ 治療機器事業

 消化器科内視鏡処置具、呼吸器科および泌尿器科治療機器など、患者さんの負担の少ない低侵襲治療に貢献する医療機器の研究開発を主に行っています。

 当期の主な成果としては、外来用イメージングプラットフォーム「VISERA S」の日本、欧州、アジア・オセアニア一部地域の発売や、泌尿器内視鏡用4Kカメラヘッドの欧州発売、前立腺肥大症低侵襲治療デバイス「iTind」の販売地域拡大、高周波シーリングデバイス「POWERSEAL」シリーズの新デザイン発売を行いました。また、シングルユース内視鏡の開発も継続的に進めています。

 

 なお、各事業における研究開発支出は、以下の通りです。

内視鏡事業:前期比28.4%増の668億円

治療機器事業:前期比27.6%増の330億円

その他・全社共通:前期比45.4%減の41億円