文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) 2022-2024年度中期経営計画:総括
ラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(以下「ペトロ・ラービグ社」という。)を中心とした石油化学関連事業での著しいマージンの悪化に加え、住友ファーマ株式会社(以下「住友ファーマ社」という。)での非定型抗精神病薬ラツーダのパテントクリフが重なったこと等により、2023年度の業績は1,490億円のコア営業損失を計上することになりました。これに対し、短期集中業績改善策及び抜本的構造改革を全社一丸となって進めた結果、2024年度のコア営業利益は1,405億円となり、V字回復を達成することができました。
短期集中業績改善策については、ベストオーナー視点での事業売却等を進めたほか、在庫削減、投資厳選、資産の売却等により、約7,000億円のキャッシュを創出しました。抜本的構造改革(再興戦略)については、住友ファーマ社とペトロ・ラービグ社という2つの課題解決に向けた施策を打ち出しました。住友ファーマ社では、徹底的なコスト削減や基幹3製品の拡販で2024年度での黒字化を達成するとともに、ペトロ・ラービグ社では、債権放棄を含む財務リストラを実施しました。残る課題については、本中期経営計画期間中に解決の目途をつけるべく、取り組んでまいります。

(2) 長期的に目指す姿
当社は、創業以来、住友の事業精神「自利利他 公私一如」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)のもと、自らの成長と社会への貢献を実現してまいりました。そして、この考え方を基軸に、長期的に目指す企業像を「Innovative Solution Provider」と定めました。
この目指す企業像に向け、当社が強みを持つ技術や事業のアセットから、取り組むべき社会課題を「食糧」「ICT」「ヘルスケア」「環境」に定めるとともに、2024年10月、これらの4つの課題に対応して事業部門を再編しました。
それぞれの事業部門では、これまで培ってきた当社固有の6つのコア技術、そしてそこから生まれる3つのX(GX・DX・BX)を切り口とした重要アセットを活用することで、革新的なソリューションを次々と生み出し、広く社会へ提供してまいります。そして、この先もグローバルに存在感のある会社であり続けるとともに、持続的な企業価値向上を目指してまいります。

(3) 2025-2027年度中期経営計画:全社方針
新たな中期経営計画のスローガンについては、「現状を超え、更なる高みに飛躍する」という意味をあらわす「Leap Beyond」といたしました。
今後、先行きが一段と不透明な事業環境が見込まれる中で、新しい発想をもって変革を続けることで、成長軌道へと回帰するとともに、その先の持続的成長を遂げていくという想いを込めております。
このスローガンのもとで、本年4月から新たな経営体制をスタートさせております。当面の成長ドライバーとなる「アグロ&ライフ」「ICT&モビリティ」領域への経営資源の集中により、事業ポートフォリオの高度化を加速させます。また、ROIC志向経営を再徹底することで、収益力・資本効率の改善に注力いたします。
2027年度の財務目標に関しては、コア営業利益2,000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,000億円、ROE8%、ROIC6%といたしました。本中期経営計画で掲げた5つの基本方針に沿って取り組みを進めることで、この目標を確実に達成し、更なる高みを目指してまいります。

基本方針01 新成長戦略による事業ポートフォリオ高度化
各事業領域の位置付けを明確化し、メリハリのあるリソース配分を行います。アグロ&ライフ、ICT&モビリティを当面の成長ドライバーとし、設備投資等の戦略投資を集中配分するとともに、両領域に戦略投資を上回る研究開発投資を行います。また、アドバンストメディカルは将来の3つ目の柱に育成し、エッセンシャル&グリーンマテリアルズは環境負荷低減事業等による価値創造に大きく舵を切ってまいります。

基本方針02 構造改革の継続的な遂行による強靭化
ペトロ・ラービグ社の収益力改善、止血から再成長へと着実な歩を進めた住友ファーマ社の持続的成長に貢献できるベストパートナーの検討、さらに、国内及びシンガポールにおける石油化学事業の構造改革などを遂行し、事業構造の一層の強靭化を目指してまいります。

基本方針03 財務・資本効率の改善
ROIC志向経営を再徹底し、収益力強化及び投下資本適正化により、2027年度のROICは6%を目指します。また、短期集中業績改善策として進めてきたキャッシュ創出は、本中期経営計画期間で新たに2,000億円を目標に取り組むこととし、財務体質の改善に努めます。

上記3つに加え、「3つのXを基軸としたR&D戦略」や「新成長戦略を支える経営基盤の強化」についても取り組みます。
(4) 2025-2027年度中期経営計画:各部門の取り組み
各事業部門における、本中期経営計画のアクションプランは以下のとおりであります。
アグロ&ライフソリューション部門
リジェネラティブ農業とサステナブル社会の実現に貢献すべく、当社が強みを持つケミカル・バイオラショナル・ボタニカル製品の拡販を加速させます。とりわけ低環境負荷に資する主力殺菌剤インディフリンと不耕起栽培にも適応する除草剤ラピディシルの主要市場における上市・地域拡大・販売増加を進めるとともに、次のブロックバスター製品の創出に向けた開発を強化します。国内外の製造・供給体制の強靭化、最適化を実現し、さらには運転資金の圧縮や在庫適正化とあわせて、資本効率の向上を目指してまいります。
ICT&モビリティソリューション部門
半導体材料関連事業では、拡大する需要を確実に取り込みつつ、半導体の技術革新に対応した先端材料の開発・拡販を推進します。化合物半導体分野においては、省エネ化や高効率化等の社会課題解決に貢献するため、次世代パワーデバイス材料の事業化を目指します。ディスプレイ材料事業においては、高機能分野へシフトし、超薄膜化、高画質化により事業規模再拡大と利益率の向上を併せて実現してまいります。また、新規事業開拓のため、社外とも積極的に連携しながら、次世代高速通信用材料をはじめとする先端分野の開発に注力します。
アドバンストメディカルソリューション部門
「“化学とバイオの力”で人々の健康と未来を支えるソリューションを提供する」というビジョンのもと、当社の強みである総合対応力(開発、生産技術、薬事、品質管理、分析)を活かした高度化低分子医薬CDMOでの拡販や、長鎖核酸に焦点を当てた医療用オリゴ核酸CDMOでの事業機会拡大により、オーガニックな事業成長を推進します。また、再生・細胞医薬事業においては、製造設備の拡充を通じてCDMO事業を拡大するとともに、創薬事業の早期育成・事業化に努めることで、先端医薬領域における成長戦略を具体化してまいります。
エッセンシャル&グリーンマテリアルズ部門
国内・シンガポール石油化学事業では企業連携も含めた事業構成の最適化に取り組むとともに、不採算・ノンコア事業のさらなる整理を進め、本中期経営計画期間中での事業再構築の完遂を目指します。また、高収益製品の開発・拡販により収益力を強化するほか、ライセンス・触媒事業において、他社との協業による事業基盤強化に取り組み、主力事業として育成します。環境負荷低減ソリューションの提供に向けては、研究開発に注力するほか、市場拡大に向けた活動の推進、非化石由来原料確保への取り組みを強化するなど、事業基盤の構築を進めてまいります。
持続的な成長に向けて
長期的なポートフォリオとしては、2030年まではアグロ&ライフ、ICT&モビリティが成長をけん引しますが、2030年以降は、ヘルスケア・環境分野でのソリューションが加わり、新生スペシャリティケミカル企業としてグローバルで存在感のある会社を目指します。そして、持続的な企業価値の向上を実現することで、ステークホルダーの皆様の期待に応えてまいります。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、約400年の歴史を持つ「住友家」の事業を起源とし、現在もその事業経営の根本精神を継承しております。そして、その住友の事業精神を踏まえ、住友化学としての基本精神や使命、価値観を整理し、「経営理念」として明文化しております。
住友の事業精神を表す「自利利他 公私一如」は、「住友の事業は自社の発展のみではなく、社会にも貢献するものでなければならない」という意味で、当社グループが創業から大切にしてきた考え方であり、Creating Shared Valueにも通じるものであります。当社グループの持続的な成長(自利)と、社会への価値創出(利他)を実現します。これにより、経済価値と社会価値を一体的に創出(公私一如)し、企業価値の向上を目指します。

サステナビリティ推進基本原則では、住友化学グループにとってのサステナビリティの推進を「事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自らの持続的な成長を実現する」と定義し、その達成を通じて企業価値の向上に取り組むこととしております。
また

(2) サステナビリティ全般
① ガバナンス
当社は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」に記載の企業統治の体制を採用しております。この体制において、当社グループの経営に関わる重要事項について、広範囲かつ多様な見地から審議する会議・委員会を設置することで、業務執行や監督機能等の充実を図っており、サステナビリティに関しては、「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。
サステナビリティ推進委員会は、グループの取り組みを総合的に把握し、サステナビリティへの貢献を俯瞰的に検証し、社会課題解決への統合的な取り組みを加速させることを目的として、とりまく状況を踏まえ、課題や取り組みの方向性について審議するとともに、取り組みの具体化に向けて各執行機関に必要な提言を行っております。同委員会では、委員長である社長の下、各事業部門統括役員・コーポレート部門統括役員・海外地域統括会社社長を委員として任命しつつ、さらに、社外取締役・社外監査役もオブザーバーとして毎回参加しております。2024年度は1回開催され、活発な議論が行われました。取締役会の取り組みや実効性評価につきましては、「
サステナビリティ推進委員会 体制図(2025年3月31日現在)

(関連する他の主要会議・委員会)
・経営会議
サステナビリティに関連した事項を含む、経営戦略や設備投資等経営に関わる重要事項の審議
・レスポンシブル・ケア委員会
気候変動など環境関連課題への対応を含む、レスポンシブル・ケアに関する年度方針や中期計画、具体的施策の策定、実績に関する分析及び評価
・カーボンニュートラル戦略審議会
2050年カーボンニュートラル実現に向けたグランドデザインの立案・審議及び推進
・リスク・クライシスマネジメント委員会
地震災害や異常気象による風水害、パンデミック、治安悪化等、個別のリスク・クライシスの対処方針等を審議
・人権尊重推進委員会
グループ全体に向けた人権尊重に関する啓発の実施、バリューチェーン全体における人権尊重のための施策の立案と実行
② リスク管理
当社では、内部統制委員会を中心とした複数の会議体連携によるリスクマネジメント推進体制のもと、当社グループの各組織がグループ方針に従い、業務遂行上のリスクを適切に管理しております。事業継続のための基盤に関わるリスクについては、内部統制委員会で、リスクの状況を把握したうえでグループ全体に係わる重要なリスクを識別し、リスク主管組織と連携してリスクへの対策を推進するとともに対応状況の把握をしております。また経営戦略に関わるリスクと機会について、経営上の重要事項に関しては、経営会議で審議しております。中長期的な環境・社会問題に関する事項については、サステナビリティ推進委員会で審議し、当社グループの経営諸活動が社会や自社のサステナビリティの実現に繋がる提言を行っております。
リスクと機会の詳細は、「
リスクマネジメント推進体制図

③ 戦略
当社グループでは、企業理念に基づき、前述のガバナンス体制において、リスク・機会を把握・評価した上で、経済価値と社会価値をともに継続的に創出するための「経営として取り組む重要課題」を特定しました。これらの重要課題について、様々な施策を遂行するとともに、社会状況の変化等を踏まえ、定期的に確認し、必要に応じて見直しを行っております。特定・見直しのプロセスは以下をご覧ください。
(重要課題の特定・見直しプロセス)

(経営として取り組む重要課題)
「経営として取り組む重要課題」は、「持続的な価値創出のための重要課題」と「事業継続のための基盤」に分類され、「持続的な価値創出のための重要課題」のうち、環境・食糧・ヘルスケア・ICT関連を「社会価値創出に関する重要課題」、イノベーションの推進、DXによる競争力強化、及び人材(DE&I、育成・成長、健康)を「将来の価値創造に向けた重要課題」と位置づけ、各取り組みについて主要取り組み指標「KPI」を設定して、進捗状況の可視化と管理を行っております。また「事業継続のための基盤」は、当社がかねてよりグループを挙げて進めてきた、労働安全衛生・保安防災、製品安全・品質保証、人権尊重、サイバーセキュリティ、コンプライアンス、及び腐敗防止であり、引き続き取り組んでまいります。

④指標及び目標
当社グループは、「経営として取り組む重要課題」の「持続的な価値創出のための重要課題」の各取り組みについて設定した主要取り組み指標「KPI」を活用して、取り組みの進捗状況の可視化と管理を進めるとともに、社内外のステークホルダーとの対話を推進し、取り組みの充実と加速につなげてまいります。各KPIと実績は以下のとおりであります。詳細については、
経営として取り組む重要課題とKPI
(注) 1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:工場外からの電力・熱の購入等による間接的な排出
2 当社の
よる第三者保証手続きの実施中の暫定値であります。
3 気候変動の緩和と適応、資源循環への貢献、自然資本の持続可能な利用の分野で貢献する
グループの製品・技術
4 2021年度を100としております。
5
6 詳細は以下ホームページをご覧ください。
7 詳細は以下ホームページをご覧ください。
8 特許分析ツール LexisNexis PatentSight® により、Patent Asset IndexTMを算出して評価しております。
数値は暦年で集計しております。
9 Patent Asset IndexTM。法的状態が有効な特許について、量的指標(件数)と質的指標(出願国
及び被引用回数より算出)を総合した指標であります。
10 現行のKPIは見直し、新たな指標を検討中であります。
11 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
12 2023年度~2024年度の管理社員登用者累計における女性比率であります。
13 2025年度から「手挙げ式研修」に呼称を変更しております。
14 経済産業省が2016年に創設し、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議が進める健康増進
の取り組みを基に、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度
(健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標)
気候変動対応に関連し、当社は、2017年6月にTCFD提言が公表されると同時にその支持を表明しました。同提言の4つの開示推奨項目「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」に沿った当社グループの気候変動問題への取り組みは以下のとおりであります。
① ガバナンス
「(1) サステナビリティ全般 ① ガバナンス」に記載の枠組みにおきまして、気候変動については特に以下の体制で対応を行っております。
気候変動対応体制図(2025年3月31日現在)

② リスク管理
当社では、持続的な成長を実現するため、事業目的の達成を阻害する恐れのある様々なリスクを早期発見し、適切に対応していくとともに、リスクが顕在化した際に迅速かつ適切に対処すべく、リスクマネジメントに関わる体制の整備・充実に努めております。気候変動問題は、その発生の可能性と影響度の観点からの評価等を通じて、当社グループの中長期的な主要リスクの一つとして位置付けられており、グループ全体のリスク管理プロセスに統合されております。
具体的な手順
国内外のグループ会社を含めた各組織で、顕在化する可能性(頻度)と顕在化した際の財務影響度の観点から個別リスクの評価を行い、社長を委員長とする内部統制委員会にてグループ全体での取り組みが必要な全社重要リスクを審議・特定の上、承認しております。個別リスクの重要度は、「個別リスクの発生可能性×当社グループ事業への財務または戦略面での影響度」により判断されます。このプロセスを踏まえ、気候変動問題に関するリスクと機会を下表のとおり特定しております。

③ 戦略
当社は、「経営として取り組む重要課題」の一つとして掲げている環境分野への貢献の中に「気候変動の緩和と適応」を明記しており、2021年12月、2050年のカーボンニュートラル実現に向けたグランドデザインを策定しました。前述のリスク管理のプロセスで特定した気候変動問題に関するリスクと機会に対して、「責務」(当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量をゼロに近づける)と「貢献」(当社グループの製品・技術を通じて、世界のGHGを削減する)の両面から気候変動への取り組みを推進しております。
(シナリオ分析)
気候変動に関するシナリオ分析とは、複数のシナリオを考慮した上で、気候変動の影響や気候変動に対応する長期的な政策動向による事業環境の変化を予想し、その変化が自社の事業や経営に与える影響を検討する手法であります。現在、当社では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑制するために様々な施策がとられるシナリオ、このまま対策を講じず4℃上昇するシナリオについて、「リスク」・「機会」の側面から分析し、当社事業へのインパクトや今後とっていくアクションを検討しております。シナリオ分析の全文については、

(カーボンニュートラル実現に向けた投資)
2019年度から、社会全体のカーボンニュートラルの実現に貢献すべく、個別の投資案件についてGHG排出量の増減が見込まれる場合、インターナルカーボンプライス(1トン当たり 10,000円)を反映した経済性指標を算出し、投資判断を実施しております。
(投資規模)
カーボンニュートラル関連投資について、2013年度から2030年度にかけて、合計約2,000億円規模の投資を想定しております。
(「責務」に関する具体的な取り組み)
エネルギー由来(自家発電燃料)のGHG削減:燃料転換
・愛媛地区において、既存の化石燃料に代わってLNGを用いた火力発電所の運転を開始
・千葉地区において、既存の石油コークス発電設備を廃止し、高効率なガスタービン発電設備の運転を開始
プロセス由来のGHG削減
・バイオテクノロジーを駆使した排水処理により、排水処理能力の向上とともに、発生する汚泥量、排水処理に伴うGHG排出量、燃料使用量の削減を実現
エネルギー由来(購入電力)のGHG削減:再生可能エネルギーの利用
・大分工場において、購入電力を100%再エネ電力化することで約20%、重油から都市ガスに燃料転換することで約10%のGHG削減を達成し、トータルで2013年度比で約30%のGHG削減を実現
(「貢献」に関する具体的な取り組み)
・炭素資源循環システムの構築
ごみや廃プラスチックを化学品の基礎原料であるメタノール、エタノール、オレフィン等に変換し、新しいプラスチックの原料として利用するケミカルリサイクル技術の開発
・カーボンネガティブへの挑戦
土壌中に存在する有用微生物の菌を植物の根に付着・共存させることで、植物の光合成によるCO2吸収を促進、地中にも炭素化合物の形でCO2が固定化される技術の開発
(外部連携の取り組み)
・製品のカーボンフットプリント計算ツールの普及(無償提供)
・地域連携による取り組み(京葉臨海コンビナート カーボンニュートラル推進協議会、港湾脱炭素化推進計画)
各取り組みの詳細や、その他の気候関連情報については、
④ 指標及び目標
(気候関連のリスクに対する指標)
前述のリスク管理のプロセスにおいて特定した気候関連のリスクについて、指標と取り組みは以下のとおりであります。
(ⅰ) GHG排出量の削減(Scope1+2)
当社グループの気候関連のリスクに対する指標であるGHG排出削減目標は、総合化学企業として世界で初めてScience Based Target(SBT)に認定されました。2030年のGHG排出量(Scope1+2)の削減目標は50%(※1)で、2021年12月にSBTのWell Below2.0℃基準の認定を取得しております。当社グループは、当GHG排出削減目標を「(1) サステナビリティ全般」に記載の「経営として取り組む重要課題」の目標として設定し、「環境負荷低減への貢献」の取り組みを進めております。2030年までは、既存プラントの製造プロセスにおける徹底した省エネや燃料転換と、現時点で利用可能な最善の技術(BAT)の活用による目標達成を目指します。一方、2050年のネットゼロに向けては、既存技術のみでの対応は難しく、カーボンネガティブやCCUS(※2)等、革新的な技術が必要になります。この開発と早期の実装を目指し、検討を進めてまいります。
※1:2013年度比
※2:工場等から排出されたCO2の回収・有効利用・貯留
(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)

(GHG排出量(Scope1+2))
算出にあたっては、連結売上高99.8%以内の主要な連結グループ会社を対象範囲とし、GHG排出量をGHGプロトコルに基づいて算定しております。2023年度までの数値については、当社のサステナビリティレポート2024の数値を記載しており、同数値は、KPMGあずさサステナビリティ株式会社による第三者保証を取得しております。サステナビリティレポート2025で開示予定の2024年度分については、当該第三者により保証手続き実施中であり、暫定値は555万トンであります。詳細については、

(ⅱ) GHG排出量の削減(Scope3)
GHG排出量(Scope3)については、「2030年度までにグループ主要会社のGHG排出量(Scope3(カテゴリ1及び3))を2020年度比で14%削減」を目標として設定しており、Scope1+2と合わせてSBTの認定を取得しております。GHG排出量(Scope3)削減にあたっては、サプライヤーエンゲージメント(お取引先様情報交換会の開催等)に取り組んでおり、国際NGOであるCDPが実施した「サプライヤー・エンゲージメント評価」において、最高評価である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」に5年連続で選定されております。
Scope3温室効果ガス排出量

当連結会計年度の実績につきましては、
(気候関連の機会に対する指標)
前述のリスク管理のプロセスにおいて特定した気候関連の機会について、指標と取り組みは以下のとおりであります。
当社グループは、気候関連の機会に対する指標として、Sumika Sustainable Solutions(SSS)を活用しております。SSSとは、気候変動の緩和と適応、資源循環への貢献、自然資本の持続可能な利用の分野で貢献するグループの製品・技術を自社で認定し、その開発や普及を促進する取り組みで、これまで認定された製品・技術数は、累計で81であります。認定製品の売上収益は、2024年度は5,543億円であり、2030年度には1兆2,000億円を目指しております。

また、当社製品・技術のカーボンニュートラル(CN)に対する貢献度合いをより明確に示す指標として、「Science Based Contributions (SBC)」を策定しました。SBCは、当社が販売・提供したSSS認定製品・技術の活用を通じて、社会でどの程度の量のGHGが削減されたかを定量的かつ科学的に算定するものであります。対象製品の製品カーボンフットプリント(CFP)や販売量、ライセンスプラントの生産能力等を基に算出した数値であり、算出方法は外部有識者により確認いただいております。社会での当社製品・技術の貢献に関して、SBCを用いたステークホルダーの皆様への積極的な情報開示を通じて理解促進に努めるとともに、世界のCN実現に向けた取り組みを推進してまいります。

企業の競争力の大きな源泉は「人」であり、人材の確保・育成は当社の将来の価値創造に向けた重要課題であります。当社は、最重要の経営資源と考えている人材の確保と育成を長期的な視点で推進するとともに、エンゲージメントの強化を通じて、当社グループの構造改革と持続的成長を実現します。
(基本理念)
100年余の歴史を有する当社は、これまで一貫して「人こそ最重要の経営資源」という考えを堅持し、「人材確保」「公平な処遇」「育成・成長」の3要素を変わらぬ人事理念として継続しております。
(人事制度体系)
当社の人事制度では、各人の役割や責任の大きさと達成した実績に、その過程で発揮した能力や行動を合わせて評価することとしております。本制度によって、意欲と能力がある社員は早期に上位の役割にチャレンジすることが可能となり、社員の「成長したい」という自発的な意欲の醸成を図っております。
人事制度の理念・狙い

また、グループ各社のグローバルな事業展開を支える人材の充実を図るため、海外グループ会社のマネージャー以上の層を対象に住友化学本体管理社員と共通の人事制度を導入し、当社グループのコア人材として、グローバルポジションホルダー(GPH)に任命し、企業理念に基づいた価値観の共有をはじめ、育成・成長並びに活躍機会の提供を推進しております。

① 戦略
人材の確保・育成を推進していくため、グループ全体で「多様な人材の活用」、「人材の育成・成長」、「従業員の健康増進」の面から、将来の価値創造に向けた戦略を展開しております。
(多様な人材の活用)
当社グループは、「DE&I推進に関するグループ基本原則」を定め、その方針のもと、多様な従業員の個性や属性の違いを尊重し、総合化学会社ならではの多様性に富んだ「知と経験」を互いに受け入れ活かし合い、社員一人ひとりがその適性・能力を発揮し、グループ全体で成長していくことを目指しています。
また、当社は、ノーマライゼーションの社会の実現に向けて、障がい者雇用に取り組んでおります。2017年には、障がい者の社会参画を支援し、勤労意欲のある障がい者の雇用機会を提供するために、株式会社住化パートナーズを設立しました。今後も引き続き、障がいのある人が活躍できる環境を、当社・住化パートナーズ一体となって提供してまいります。
(人材の育成・成長)
当社は、多様な人材が、その能力・資質を伸長することを目指し、全社員対象の基礎的プログラム、階層別の職責教育・キャリア教育、マネジメント強化プログラムや、グローバルビジネス展開に対応した語学力向上等、目的及び社員区分別に教育体系「スミカ・ラーニングスクエア(SUMIKA Learning Square:SLS)」を整えております。
従業員が自発的に学び、成長していくことを支援するため、また必要なタイミングで知識・スキル開発ができるよう「手挙げ式(自発的に申込む)研修」と称して自ら選択し、受講できるプログラムを提供しております。
(従業員の健康増進)
社員が心身ともに健康な生活を送り豊かな人生を実現できるよう、社員の健康課題の解決・改善に向けた様々な支援施策を推進しております。取締役会や経営会議において、その取り組みの方向性について議論するとともに、毎年開催する産業医連絡会において、施策や目標の設定に対し医学的見地から意見をいただくなど各施策の有効性を高める体制・仕組みとしております。
このような体制の下、会社・健康保険組合共同で策定した「すみか健康社員宣言」において、運動習慣の定着を目的とした提携スポーツジムの拡充、禁煙を目指す社員へのサポート等、「食事」「運動」「睡眠」「禁煙」「こころ」の5分野で、具体的なアクションアイテムに取り組んでおります。
② 指標及び目標
(ⅰ) 多様な人材の活用
女性活躍推進について、採用、育成、昇進、環境整備等の各施策の進捗をトータルに反映しうるものとして「管理社員(注1)への登用率」に焦点をあてたKPIを設定しています。また、全員活躍の実現に向け、男女共同参画の観点から男性社員の育児休業取得を促進するKPIも設定し、DE&I推進の取り組みをさらに加速させております。
(注) 1 管理社員:課長職相当以上
2 2023年度~2024年度の管理社員登用者累計における女性比率
(参考)
・住友化学本体の部長職と海外グループ会社幹部人材の合計に占める、外国人幹部人材の割合:20.5%
(2025年4月時点)
・管理社員に占める経験者採用者(中途採用者)の比率:24.6%(2025年4月時点)
・障がい者雇用率:2.66%(2024年6月時点)
(ⅱ) 人材の育成・成長
自己応募型研修プログラム(2025年度からは「手挙げ式研修」と呼称)の受講率をKPIとして設定し、意欲・能力のあるすべての従業員の能力向上・人材育成を進めております。
(ⅲ) 従業員の健康増進
「健康経営優良法人(ホワイト500)」(※)をKPIとして設定し、従業員のからだとこころの健康保持のため、様々な健康保持増進施策に取り組んでおります。

※「健康経営優良法人(ホワイト500)」は、経済産業省が2016年に創設した健康経営優良法人制度(特に優良な健康経営を実施している企業等を顕彰する制度)において、上位500法人が認定され、健康管理に関する様々な施策や取り組みを評価するものであります。
(グループ会社におけるKPI)
国内外の主要グループ会社約100社が、各国・各社の状況に応じて具体的なKPIを設定し、グループ全体で取り組みを進めております。また当社グループでは、各社がKPIを設定するために実施すべき最重要プロセスを、以下のとおり定めております。
人的資本・多様性についての詳細は、
事業等のリスクのうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると当社グループが認識している主要なリスクを以下に記載しております。ただし、投資家の判断に影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限定されるものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループではこのようなリスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすためのリスク管理体制の整備・充実に努めております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 (ハ)リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。
当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様であります。事業に係る市場リスクについては、主に以下のようなものがあります。
(価格競争)
当社グループの事業は価格競争に晒されております。海外企業の国内市場参入、関税引き下げ等による輸入品の流入、ジェネリック品の台頭等、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想されます。当社グループはコストの低減に努めておりますが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、当社グループの保有する有形固定資産等について減損損失が発生し、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営環境の著しい悪化等による将来の課税所得に関する予測・仮定の変更や税制改正による税率変更等により繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(海外マーケット)
当社グループの海外売上収益は売上収益の7割近くを占め、特にアジア市場での販売が多く、近年では南米等でも事業を拡大しております。そのため、特定の地域での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化等による値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(アグロ&ライフソリューション)
アグロ&ライフソリューションセグメントの農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の生育状況や病害虫の発生状況に左右されます。また、飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがあります。作物の生育状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、あるいは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ICT&モビリティソリューション)
ICT&モビリティソリューションセグメントの製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要があります。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(アドバンストメディカルソリューション)
アドバンストメディカルソリューションセグメントでは高度化低分子医薬原薬・中間体、医療用オリゴ核酸、並びに再生・細胞医薬に関する生産プロセスの開発や製造を受託するCDMO事業を行っています。顧客となる製薬企業のニーズに対応できず失注した場合、また顧客の経営環境の変化により新薬開発が延期ないし中止された場合、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(エッセンシャル&グリーンマテリアルズ)
エッセンシャル&グリーンマテリアルズセグメントの主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがあります。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存しております。購入先を複数にする等、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めておりますが、時に主要原料の不足が生じないという保証はありません。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(住友ファーマ)
住友ファーマセグメントでは、新薬開発の難度が高まる中、開発が今後計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、また、有効性や安全性の観点から開発が遅延または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。そのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により国家財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進等の医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の議論が続けられております。また、米国においても薬価抑制を企図した制度改革が決定・導入される可能性があり、中国においても国民医療費抑制を企図する医療制度変更が推進される可能性があります。これら医療制度改革は、その方向性によっては、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(為替レート変動)
当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しておりますが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っております。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになります。さらに、近年では南米やインド等海外での事業活動の拡大とともに、それぞれの地域の通貨で米ドルやその他通貨に対する為替レートの変動影響も大きくなっています。このようなリスクに対し、為替予約等の通貨ヘッジ取引や、円建輸出取引を行うこと等により、為替レートの短期的な変動によるリスクを最小限にするように努めておりますが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外の関係会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されております。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
為替レート変動がコア営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円の円高となった場合、年間20億円程度の減益と試算しております。
(金利変動)
当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状態及び金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断しております。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っておりますが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(株式相場変動)
当社グループが保有する有価証券の多くは、市場性のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、世界各国に生産・販売の拠点を持ち、海外売上比率は7割近くを占めております。そのため、貿易摩擦等による関税の引き上げ、地域紛争によるサプライチェーン分断等、地政学的問題が発生した場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社とサウジアラビアン オイル カンパニー社(以下「サウジ・アラムコ社」という。)が共同で設立したペトロ・ラービグ社は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」及び「ラービグ第2期計画」)を運営しております。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険(現:株式会社日本貿易保険)の規約に従い、海外投資保険等に加入しております。また、当社はペトロ・ラービグ社の行っている銀行借入の一部に対して債務保証を行っております。ペトロ・ラービグ社は当連結会計年度において、石油精製については東南アジア・欧州・中東での製油所トラブルにより市況が改善し、精製マージンはプラスであった一方で、石油化学製品は樹脂製品を中心に低マージンが継続した結果業績が低迷しております。一方で、当社及びサウジ・アラムコ社による債権放棄を実施した結果、累積損失が改善され、同社の資本金に対する累積損失比率は2025年3月末時点で35.72%となっております。将来の不確実な経済条件の変動の結果によって、ペトロ・ラービグ社に対する投資の回収可能価額が大きく減少した場合、及び債務保証が履行された場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しておりますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー等の買収効果を得られない可能性があります。事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合、あるいは適用される割引率が高くなった場合にはのれん等の減損損失が発生し、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っております。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、研究開発現場へのAI/MIの実装とその徹底活用、アカデミアやスタートアップとの連携(オープンイノベーション)強化により研究開発を推進してまいります。
当社グループでは、DXによる「事業の競争力強化」及び「新たな価値創造」を加速させております。しかしながら、デジタル技術の適用が著しく遅延した場合や、他社がデジタル技術を活用して生産性や競争力を向上させる、あるいは新たなビジネスモデルを創造するなど事業環境の急変により、当社グループの競争力が相対的に低下することで経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、気候変動問題を社会が直面する重要課題の一つと捉えており、その解決に向け、総合化学企業として培ってきた技術力を活かし、当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量をゼロに近づけるという「責務」と当社グループの製品・技術を通じて、世界のGHGを削減するという「貢献」の両面から積極的に取り組んでおります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、地球規模で私たちの生活に大きな影響を及ぼしている気候変動問題の解決に向け、引き続き「責務」と「貢献」の両面から取り組んでまいります。
プラスチックは、自動車や航空機から電子機器、生活用品、各種包装材に至るまで、様々な用途に用いられる素材として人々の生活を支えていますが、使用後の適切な処理・再利用が十分に行われていないために環境汚染を引き起こしているという問題があります。この問題に適切な対応ができない場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、技術開発等を通じて、プラスチックを含む炭素資源循環の実現に取り組むことで、循環社会実現後のプラスチック市場において有利な地位に立つ可能性があります。
当社グループは、製造設備等に起因する事故・災害の潜在的なリスクを最小化するため、関係法令への対応は勿論のこと、リスクに基づいて、設備の定期的な点検や安全諸施策を実施しております。しかしながら、リスクは常に一定ではなく、台風や地震等の自然災害による影響を含め、製造設備等で発生する事故・災害を完全に防止・軽減できる保証はありません。
事故・災害により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、事業活動に支障をきたすほか、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事故・災害に至る可能性のあるリスクについて、適宜情報共有を図り、対応事項の改善見直しを実施しております。
当社グループでは、世界的に認められた厳格な品質管理基準に基づき、各種製品を製造しておりますが、すべての製品について欠陥が完全に排除され、将来にわたって製品事故やリコールが発生しないことを保証するものではありません。特に大規模な製品事故が発生した場合、多額のコストが発生するほか、当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、農薬や医薬品などの製品は、各国の厳格な審査を経て承認されておりますが、科学技術の進歩や市販後の知見の蓄積によって、新たな問題や副作用が見つかることもあります。このように上市後予期せぬ問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製品安全を管理するための仕組みや体制を整備し、新製品開発時のリスク評価やリスク低減対策の実施、日々の品質管理の徹底、さらに製品の取扱指導などに積極的に取り組んでおり、これらの活動を通じて、製品事故や品質問題を未然に防ぐための努力を今後も継続してまいります。
ITの活用を通して、業務の生産性向上や事業の競争力確保、新たなビジネスモデルの創出を追求するデジタル革新が加速している一方で、サイバー攻撃の巧妙化等、情報システムに関するリスクはますます高まっており、事業運営に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、情報、情報システム及び情報通信ネットワークを正しく管理し、漏えいや紛失を未然防止する対策、及びセキュリティインシデント発生時の影響を最小限に抑える対策を講じ、サイバーセキュリティを経営課題と捉え、適切に対応してまいります。
当社グループでは、コンプライアンスを企業経営の根幹と位置づけ、当社コンプライアンス委員会の指導・監督の下、グループ全体でのコンプライアンス推進体制を構築・運用しております。また、当社コンプライアンス委員会傘下の地域法務・コンプライアンス統括(RLCO)からのグループ会社に対する指導・支援を強化する等、グループ全体でのコンプライアンスの徹底に注力しております。しかしながら、このような施策を講じても、コンプライアンス上のリスクを完全には排除することはできない可能性があり、国内外の法令等に抵触する等のコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの社会的な信用が低下し、また損害賠償責任や罰金が課される等、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行しております。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈及びその他の政策変更並びにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、将来的に環境及び化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性があります。
当社グループは、人権尊重を事業継続のための基盤の一つと位置付けており、「住友化学グループ 人権の尊重に関する基本方針」を制定するとともに、推進体制として「人権尊重推進委員会」を設置し、人権デュー・デリジェンス等の人権尊重の取り組みをグループ一体となって行っております。しかしながら、このような施策を講じても、人権問題に関するリスクを完全には排除することができない可能性があり、当社グループのバリューチェーン上で人権問題が発生した場合、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、ハラスメントの発生に対し、社員教育の徹底、スピークアップ通報窓口の設置等により、リスクの低減に取り組んでおります。しかしながら、このような施策を講じても、ハラスメントリスクを完全には排除することができない可能性があり、ハラスメントに起因した、マスコミや労働局への告発による企業イメージの毀損、賠償責任等が発生した場合、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきましたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性に加え、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、将来的に知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性があります。そのような事態が生じた場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
世界的な感染症の流行が発生した場合、当社グループの事業運営や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこのようなグループ全体に影響を及ぼすリスクに対し、リスク・クライシスマネジメント委員会を設置し、対処方針を審議しております。また、事業継続計画を策定し毎年見直しを行うとともに、感染状況の段階に応じた事業運営を行うこととしております。2024年に政府における感染症対策が見直しされたことを受け、当社でも感染状況の段階に応じた事業運営のあり方の見直しを行いました。
当社グループは、国内及び海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績並びに財政状態に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り、判断及び仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積り及び仮定に関する不確実性があるために、翌連結会計年度に係る連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態または経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積り、判断及び仮定は、以下のとおりであります。
・非金融資産の減損
有形固定資産、のれん及び無形資産の減損テストにおいて、資金生成単位を判別したうえで、当該資金生成単位における使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか高い方を回収可能価額として測定しております。当該処分コスト控除後の公正価値算定上の仮定、あるいは使用価値算定の基礎となる資金生成単位の使用期間中及び使用後の処分により見込まれる将来キャッシュ・フロー、割引率等の仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、有形固定資産、のれん及び無形資産に係る減損損失額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・共同支配企業に対する投資の評価
当社は、当社の持分法適用会社であるペトロ・ラービグ社に対する投資について、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合には減損テストを実施しております。回収可能価額は公正価値で算定しており、公正価値は市場価格を用いております。回収可能価額は将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、持分法で会計処理されている投資の金額に重要な影響を生じさせる可能性を有しております。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産については、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しております。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来の各事業年度の課税所得の見積りを前提としております。当該将来の課税所得の見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、繰延税金資産の計上額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・引当金の測定
引当金は、将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローの期末日における最善の見積りに基づいて測定しております。将来において債務の決済に要すると見込まれるキャッシュ・フローは、将来の起こりうる結果を総合的に勘案して算定しております。これら引当金の測定において使用される仮定は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、将来にわたり、引当金の測定額に重要な修正を生じさせるリスクを有しております。
・金融商品の公正価値
特定の金融商品の公正価値を評価する際に、市場で観察可能ではないインプットを利用する評価技法を用いております。当該観察不能インプットは、将来の不確実な経済条件の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となった場合、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、生成AI需要の拡大による米国を中心とした生産、貿易の回復や、サービス業の好調な経済活動により、底堅い成長を維持しました。また、国内経済についても、家計の節約志向の高まりを主因として年度後半に個人消費の伸びが鈍化したものの、インバウンド需要の拡大や堅調な設備投資の継続などにより、景気は緩やかに回復しました。
このような中、当社グループは、短期集中業績改善策と抜本的構造改革を強力に進めてまいりました。この結果、当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ1,594億円増加し、2兆6,063億円となりました。損益面では、コア営業利益は1,405億円、営業利益はペトロ・ラービグ社に対する貸付金の債務免除に伴い持分法による投資利益等を計上したことにより1,930億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は、ペトロ・ラービグ社に対する貸付金の債権放棄に伴う損失等を計上し386億円となりました。いずれの損益段階においても前連結会計年度を大幅に上回りました。
売上収益は、住友ファーマセグメントにおいて、基幹3製品であるオルゴビクス(進行性前立腺がん治療剤)、マイフェンブリー(子宮筋腫・子宮内膜症治療剤)、ジェムテサ(過活動膀胱治療剤)の売上が拡大しました。アグロ&ライフソリューションセグメントにおいて、農薬の出荷が増加しました。ICT&モビリティソリューションセグメントにおいては、需要の拡大に伴い出荷が増加しました。
この結果、売上収益は、前連結会計年度の2兆4,469億円に比べ1,594億円増加し、2兆6,063億円となりました。

コア営業損益は、住友ファーマセグメントにおいて、基幹3製品の売上が拡大したことに加え、研究開発費を含む販売費及び一般管理費が大幅に減少しました。エッセンシャル&グリーンマテリアルズセグメントにおいては、製品市況の上昇に伴い交易条件が改善しました。アグロ&ライフソリューションセグメントにおいては、メチオニン(飼料添加物)の市況が上昇した他、農薬の出荷が増加しました。ICT&モビリティソリューションセグメントにおいては、出荷が増加しました。また、その他セグメントにおいて、事業の売却を行いました。
この結果、コア営業損益は、前連結会計年度の1,490億円の損失に比べ2,896億円改善し、1,405億円の利益となりました。

金融収益及び金融費用は、ペトロ・ラービグ社に対する貸付金の債権放棄に伴う損失を計上したことにより、1,349億円の損失となり、前連結会計年度の260億円の利益に比べ1,610億円悪化しました。この結果、税引前損益は、前連結会計年度の4,628億円の損失に比べ5,209億円改善し、581億円の利益となりました。
(法人所得税費用/親会社の所有者に帰属する当期損益及び非支配持分に帰属する当期損益)
法人所得税費用は154億円となり、税引前損益から法人所得税費用を控除した当期損益は、427億円の利益となりました。
非支配持分に帰属する当期損益は、主として住友ファーマ社等の連結子会社の非支配持分に帰属する損益からなり、前連結会計年度の1,536億円の損失に比べ1,577億円改善し、41億円の利益となりました。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、前連結会計年度の3,118億円の損失に比べ3,504億円改善し、386億円の利益となりました。
当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、セグメント損益は、持分法による投資損益を含む営業損益から非経常的な要因により発生した損益を控除した経常的な収益力を表す損益概念であるコア営業損益で表示しております。
(その他)
上記5セグメント以外に、放射性診断薬、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務等を行っております。これらの売上収益は前連結会計年度に比べ、141億円増加し999億円となり、コア営業利益は、連結子会社であった日本メジフィジックス株式会社の株式譲渡、連結子会社であった住友ケミカルエンジニアリング株式会社及び持分法適用会社であった住友ベークライト株式会社の一部株式譲渡により、前連結会計年度に比べ553億円増加し669億円となりました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
当社グループ(当社及び連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の状況については、セグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記販売実績は、外部顧客への売上収益を示しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(3) 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ4,950億円減少し3兆4,398億円となりました。株式譲渡等によりその他の金融資産が減少しました。
負債合計は、前連結会計年度末に比べ4,051億円減少し、2兆3,654億円となりました。有利子負債は、前連結会計年度末に比べ2,774億円減少し、1兆2,861億円となりました。
資本合計(非支配持分を含む)は、有価証券評価差額などのその他の資本の構成要素が減少したことにより、前連結会計年度末に比べ900億円減少し、1兆744億円となりました。親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて1.6ポイント増加し、26.2%となりました。
(4) キャッシュ・フロー
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益が大きく改善したことにより、前連結会計年度に比べ2,843億円増加し、2,330億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資の売却及び償還による収入の増加により、前連結会計年度に比べ1,975億円増加し、852億円の収入となりました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,636億円の支出に対して、当連結会計年度は3,183億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少等により3,008億円の支出となりました。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、売却目的で保有する資産への振替額も加味すると、前連結会計年度末に比べ76億円減少し、2,098億円となりました。
当社グループの資金需要及び資本の財源並びに資金の流動性は、次のとおりであります。
当社グループの資金需要には、通常の営業活動に必要となる運転資金や既存設備の定期修理のための資金に加え、中期経営計画(2022-2024年度)の基本方針の一つである「事業ポートフォリオの高度化(事業の強化と変革)」を推進するための投資に必要となる資金があります。成長への目配りもしながら案件を徹底的に厳選するとともに、資産売却やCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)短縮等により財務体質の改善に努めてまいります。
また、当社グループは株主還元についても、経営上の最重要課題の一つと考えております。各期の業績、配当性向並びに将来の事業展開に必要な内部留保の水準等を総合的に勘案の上、安定的な配当を継続することを基本とし、中長期的に配当性向30%程度を安定して達成することを目指しております。
当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期にわたり安定的な資金調達を行うこと、及び十分な流動性を確保することです。D/Eレシオ(有利子負債/純資産)については、フレキシブルな資金調達が可能な現在の当社格付を維持することを考慮し、中長期的に0.7倍程度を目安としております。当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債及びコマーシャル・ペーパー(当連結会計年度末の当社発行枠2,500億円)の発行等により、必要資金を調達しております。
当社グループは、前連結会計年度より導入したキャッシュマネジメントシステム及びグループファイナンス等により手元資金の最大活用を図っており、現金及び現金同等物の保有額は事業遂行上必要な水準に維持することを目指しております。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は2,098億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は152.4%であります。
また、大手邦銀のシンジケート団による1,300億円のコミットメント・ライン及び大手外銀のシンジケート団による180億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有しており、事業等のリスクの顕在化等による突発的な資金需要に備え、手元流動性を確保しております。
(5) 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(注) 「第2 事業の状況 5 重要な契約等」はIFRSの開示要請に基づくものが含まれます。また、IFRSにより要求されている、関連するその他開示項目は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 39.コミットメント」に記載のとおりであります。
(2) 販売契約等
当社は、2024年5月、当社が保有するニュージーランド アルミニウム スメルター社及びボイン スメルター社の全株式を、リオ ティント社に売却する契約を締結し、2024年11月に株式譲渡を完了しました。
(4) ペトロ・ラービグ社の株式売却に関する契約
当社は、2024年8月、ペトロ・ラービグ社株式の当社持分約22.5%を、サウジ・アラムコ社に売却する契約を締結しました。本再編は、規制当局及び第三者の承認を含む条件を前提としております。なお、本契約において、当社及びサウジ・アラムコ社は、当社の株式売却対価(総額約702百万米ドル)と、それに加えてサウジ・アラムコ社からその同額のペトロ・ラービグ社への拠出、及びペトロ・ラービグ社に対してそれぞれ750百万米ドルの貸付金の債権放棄について合意しました。
(5) ペトロ・ラービグ社向け貸付金の債権放棄に関する契約
当社は、2024年8月、(4)に記載した債権放棄についてのサウジ・アラムコ社との合意に基づき、ペトロ・ラービグ社に対する貸付金500百万米ドルの債権放棄実施に関する契約を締結し、当該債権の放棄を実施しました。また、2025年1月に残り250百万米ドルの貸付金の債権放棄実施に関する契約を締結し、当該債権の放棄を実施しました。
(6) 住友ベークライト株式会社の株式譲渡に関する契約
当社は、2024年9月、当社が保有する住友ベークライト株式会社の株式の一部を、シンガポール政府投資公社に譲渡する契約を締結し、本譲渡を完了しました。なお、本譲渡に伴い住友ベークライト株式会社は当社の持分法適用会社から除外されております。
(7) 珠海住化複合塑料有限公司及び大連住化複合塑料有限公司の持分譲渡に関する契約
当社は、2024年9月、当社グループが保有する珠海住化複合塑料有限公司及び大連住化複合塑料有限公司の全持分を仕天材料科技有限公司に譲渡する契約を締結し、2024年12月に株式譲渡を完了しました。
(8) 旭友電子材料科技(無錫)有限公司及び住化華北電子材料科技(北京)有限公司の持分譲渡に関する契約
当社は、2024年12月、当社グループが保有する旭友電子材料科技(無錫)有限公司及び住化華北電子材料科技(北京)有限公司の全持分を湖北利友光電科技有限公司に譲渡する契約を締結しました。
(9) 日本メジフィジックス株式会社の株式譲渡に関する契約
当社は、2024年12月、当社が保有する日本メジフィジックス株式会社の全株式をGE ヘルスケア テクノロジーズ インクに譲渡する契約を締結し、2025年3月に株式譲渡を完了しました。
(10) 大連住化金港化工有限公司及び大連住化凱飛化学有限公司の持分譲渡に関する契約
当社は、2024年12月、当社が保有する大連住化金港化工有限公司及び大連住化凱飛化学有限公司の全持分を大連金港集団有限公司に譲渡する契約を締結し、2025年1月に株式譲渡を完了しました。
(11) 神東塗料株式会社の普通株式に対する公開買付けに関する契約
当社は、2025年2月、大日本塗料株式会社が実施する神東塗料株式会社の普通株式に対する公開買付けに当社が応募する旨の契約を締結し、2025年3月に本公開買付は成立いたしました。なお、当社が保有する神東塗料株式会社の全株式を譲渡したことに伴い、同社は当社の持分法適用会社から除外されております。
(12) 住友ケミカルエンジニアリング株式会社の株式譲渡に関する契約
当社は、2025年2月、当社が保有する住友ケミカルエンジニアリング株式会社の株式の一部をJFEエンジニアリング株式会社に譲渡する契約を締結し、2025年3月に株式譲渡を完了しました。なお、本譲渡に伴い住友ケミカルエンジニアリング株式会社(現:JFEプラントテクノロジー株式会社)は当社の持分法適用会社になっております。
(13) 住友化学園芸株式会社の株式譲渡に関する契約
当社は、2025年2月、当社が保有する住友化学園芸株式会社の全株式を大日本除虫菊株式会社に譲渡する契約を締結しました。
(14) 当社子会社におけるアジア事業の会社分割(簡易吸収分割)並びに株式譲渡に関する契約
住友ファーマ社は、2025年4月、丸紅株式会社の完全子会社である丸紅グローバルファーマ株式会社との間で、住友ファーマの完全子会社である住友制葯投資(中国)有限公司及びスミトモ ファーマ アジア パシフィック プライベート リミテッド並びにそれらの子会社によるアジア事業を、住友ファーマ社が新設する完全子会社(以下「新会社」という。)に吸収分割の方法により承継させた上で、新会社の発行済株式のうち60%を丸紅グローバルファーマ株式会社に譲渡することを定めた株式譲渡契約を締結しました。
(15) 財務上の特約が付された金銭消費貸借契約
(注) 1 シンジケートローン契約を締結しております。
2 いずれの契約においても担保は付されておりません。
3 住友ファーマ社はマイオバント サイエンシズ リミテッドの完全子会社化の対価及びロイバント社との戦略的提携に伴う借入契約について、新たにシンジケートローン契約を締結しました。また、これらの借入契約に対し、当社が債務保証を行っております。
(16) 当連結会計年度において終了した重要な契約等
当連結会計年度において契約終了の合意もしくは契約期間満了に伴い終了した、重要な契約等は以下のとおりであります。
技術導入関係
販売契約等
(17) 当連結会計年度において内容を変更した重要な契約等
当連結会計年度において契約の更改により契約の相手先を変更した、重要な契約等は以下のとおりであります。
技術導入関係
当社グループ(当社及び連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進しております。
当連結会計年度においては、2022年度から2024年度までの中期経営計画に従い、引き続き、食糧、ICT、ヘルスケア、環境の4分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んでまいりました。
これに基づき、当連結会計年度に計上された研究開発費は、前連結会計年度に比べ388億円減少し、
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
アグロ&ライフソリューション分野では、世界の食糧増産、健康・衛生や環境の改善といった課題解決を通じてサステナブルな社会の実現に貢献するため、環境負荷低減効果を重視した技術による新製品やアプリケーション、競争力のある製造プロセスの開発を加速化し、コア事業のさらなる強化と周辺事業の拡大に取り組んでおります。
当連結会計年度において、国内農業関連事業については、新規有効成分「ピリダクロメチル」を含有する殺菌剤「フセキフロアブル」を上市いたしました。「ピリダクロメチル」は、当社が独自に発明した、農業用殺菌剤として全く新しい化学グループに分類される化合物です。「フセキフロアブル」は、既存薬剤の耐性菌が問題となっているダイズ紫斑病やテンサイ褐斑病の防除に寄与することが期待されております。また、近年上市しました殺虫剤「アレス」、殺菌剤「カナメ/モンガレス」についても、新製品の開発を進めております。さらに、省力化・環境負荷低減技術の開発やDXの活用を通じて農業生産者への革新的なソリューションの提供を拡大すべく、農薬、肥料、コメ事業の製品ポートフォリオ拡充及び付随するサービスに関する研究開発を進めております。海外農業関連事業においては、新規有効成分「ラピディシル」を含む除草剤「エンペラ」をアルゼンチンで上市いたしました。当製品の上市は、今回が世界で初めてとなります。「ラピディシル」は、当社が独自に開発した除草剤有効成分で、殺菌剤「インディフリン」とともにブロックバスターになる有効成分と位置付けております。速効性があり、幅広い広葉雑草やイネ科雑草に対して高い効果を発揮することから、リジェネラティブ(再生可能)農業の一つとして注目される不耕起栽培に適した性能を有しており、土壌保全と二酸化炭素排出量の削減によるカーボンニュートラルへの貢献が期待できます。「ピリダクロメチル」及び「ラピディシル」の上市により、2020年から2024年までの5年間に上市した当社有効成分は世界の農薬業界で最多の5剤となりました。また、有効成分「インディフリン」含有製品をブラジル・アルゼンチン・オーストラリアで上市し、当社新規殺菌剤「パベクト」は欧州及び南米市場向けに鋭意開発を進めております。コルテバ・アグリサイエンス社との種子処理技術の開発、商業化プロジェクトにも引き続き取り組んでおります。さらに、当社が戦略的分野と位置付けているバイオラショナル事業では、米国のFBサイエンス社の買収を通じ、成長著しいバイオスティミュラント分野への本格参入を果たしました。バイオスティミュラントは天然物由来の農業資材で、非生物的ストレスに対する防御機能を誘導し作物の健全な成長を促すとともに、栄養素の吸収を促進することによって作物の品質改善や増収効果をもたらします。当社は、化学農薬、バイオラショナルの強固な基盤をもとにリジェネラティブ農業への貢献を追求いたします。
生活環境事業については、重点強化領域の市場セグメントにおける新製品の開発と製品群の拡充を推進しております。引き続き強い市場ニーズのある天然物由来製品を強化すべく、新規ボタニカル有効成分「ベラトリン」の米国での登録を取得いたしました。「ベラトリン」はユリ科の植物サバジラの種子からの抽出物で、幅広い害虫への作用が期待されます。また、ハチ用エアゾールの新製品「オンスロート パワーショット」を米国で上市する等、さらなる新製品の開発に取り組んでおります。熱帯感染症対策資材分野では、抵抗性を持つ蚊へ卓効を示す室内残留散布剤の販売に取り組むと同時に、蚊の発生源対策として幼虫防除用新製品の普及を引き続き進めていくことで、長期残効性蚊帳と併せて熱帯感染症を媒介する蚊に対して総合的な防除を可能とする製品普及に取り組んでおります。また、抗菌・抗ウイルス・アレル物質低減分野において製品の拡充を進め、抗バイオフィルム製品の開発・販売も展開しております。
アニマルニュートリション事業については、競争力強化のためメチオニンのプロセス改善等の合理化に加え、機能性飼料添加物分野における製品ラインナップ拡充のため、飼料効率の改善と安心・安全な畜産物生産に貢献できる新規製品の開発に取り組んでおります。また、近年問題となっている家畜排泄物由来の温室効果ガス(GHG)の低減を目的として、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構や国内大学等との共同研究プロジェクトに参画し、引き続きメチオニンを含むアミノ酸バランス改善飼料の技術普及を推進しております。
なお、アグロ&ライフソリューションセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
ICT&モビリティソリューション分野では、グローバルな技術・研究開発能力を結集し、AI時代の先端技術進化を支える新製品の開発に積極的に取り組み、高成長・高収益を目指してまいります。
当連結会計年度において、半導体分野においては、生成AIの普及と進化に伴う技術革新によって生じる新たな市場に対応すべく、研究開発リソースを重点的に投入しております。前工程用材料では、半導体集積度向上という命題に対し、微細加工分野において、当社独自の有機分子レジストにより、最先端技術である次世代超短波長EUV(極端紫外線)光源向けフォトレジストの性能の向上を図るとともに、最新の液浸ArFレジストのラインナップ拡充により、先端レジスト分野でのトップシェアをターゲットとしております。また、洗浄工程で使用される高純度ケミカルでは、pptオーダーの不純物管理を含む高品質化を実現するため、プロセス・分析技術の開発を推進しております。一方、技術転換期にある後工程用材料については、多層配線用厚膜レジストや特殊プロセス向け洗浄剤などの分野で実績を積み重ねると同時に、さらなるラインナップの拡充を目指しております。韓国をはじめとした海外拠点とのグローバルな連携により研究開発体制を一層強化することで、次世代材料の開発・事業化を加速してまいります。
さらに、化合物半導体製造技術を基盤に、今後大きな成長が期待されている次世代パワー半導体用材料として、大口径のGaN(窒化ガリウム)基板の開発に注力しております。また、世界に先駆けて量産を開始した超微粒αアルミナについて、これら次世代半導体用の研磨材用途としての展開に加え、高強度・耐薬品性・透光性が求められる半導体製造装置用部材への応用開発も進めております。生成AI関連需要を捉えて半導体用電子部品へのスーパーエンジニアリングプラスチックの需要も増大しており、高精細化に対応する液晶ポリマー(LCP)グレード開発にも精力的に取り組んでおります。
ディスプレイ分野においては、主に中小型モバイル用途のOLEDディスプレイに対し、当社独自のキーコンポーネントである液晶塗布型位相差フィルムや液晶塗布型偏光子を用いた、薄型で耐久性や折り曲げ特性に優れた偏光フィルムを積極的に拡販しております。また、自動車の技術革新に伴って拡大する車載用ディスプレイ市場に向けて、次世代の高耐久・広視野角偏光フィルムの開発も強化しております。加えて、超高精細OLEDディスプレイをはじめとする次世代ディスプレイへの応用が期待される低温硬化カラーレジストの開発にも注力しております。引き続き、多様化が進むディスプレイ市場に対応する新規機能性フィルムや各種高機能材料の開発・事業化を加速してまいります。
成長著しいモビリティ及び高速通信分野においては、信頼性が要求される電動車向けに液晶ポリマー(LCP)のグレード開発を強化するとともに、リチウムイオン二次電池用各種部材についても、性能向上の要請や需要拡大に応えるべく、開発を推進しております。耐熱セパレータでは、性能向上とコスト削減を両立させる技術開発が進捗し、新規顧客での採用が広がっております。また、京都大学産学共同研究講座「固体型電池システムデザイン」では、圧力を加えなくても電極との界面接合が可能になる柔軟な固体電解質の実用化に向けた材料開発が進捗しております。併せて、高速・大容量通信、省エネ、自動運転等の技術を支える高周波デバイス用各種エピウェハの設計開発にも力を入れるとともに、IoTや大容量・高速通信のニーズの拡大に応える高速通信向けフィルムアンテナの開発と市場開拓も戦略的に進めております。
これらに加えて、培った材料や技術のライフ&ヘルスケア分野への展開も行っております。機能樹脂材料においては、ポリエーテルスルホン(PES)の、高機能膜向けの材料開発を積極的に進めるとともに、食器などの生活関連資材や医療関連資材に用途開拓に力を入れております。また、世界初の固体ポリマー型温度調節材料を用いた繊維開発に成功し、接触・持続冷感性や持続温感性を活かした、温度調節が求められる衣服への実用化に取り組んでおります。無機材料においては、今後の市場拡大が見込まれる人工関節や歯科材料を対象に、超微粒αアルミナを活用したユーザーとの共創を積極的に進めております。
さらに、蓄積した事業ノウハウ・ネットワークを活かして、今後の成長が期待されるサーマルマネジメント分野などの新事業領域へ挑戦し、革新的で高機能な製品の開発を推進することで、ポートフォリオの高度化と価値創出の実現に取り組んでおります。
なお、ICT&モビリティソリューションセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
アドバンストメディカルソリューション分野では、「高度な製造・管理・分析技術を駆使したソリューションの提供を通じ“化学とバイオの力”で世界中の人々の健康と未来を支える」ことをビジョンに据えて活動に取り組んでおります。このビジョンのもと、オーガニックな事業成長を推進するとともに先端医薬領域における飛躍的成長戦略を具体化し新たな当社事業の柱の一つとすべく、長期的な育成に取り組んでおります。
当連結会計年度において、高度化低分子CDMO事業については、当社の有機合成プロセスの技術力を駆使した新薬の受託製造品目の拡充、ジェネリック原薬の製法開発、及び新規製造技術の開発に取り組んでおります。有望な複数の開発品・新製品に対して商業生産へ向けた準備を進めており、引き続き製販研一体で一層の事業拡大を追求いたします。
医療用オリゴ核酸CDMO事業については、2024年2月に米国FDAが医療用オリゴ核酸(ガイドRNA(gRNA))について80%以上の純度を推奨したこともあり、当社が強みとする長鎖かつ高純度なgRNAのニーズの急拡大が想定されます。引き続き、合成技術及び分析技術の両面で、競争力のある要素技術の獲得、独自技術の拡張を目的とした研究開発を推進すると共に、顧客が集中する米国への対応強化も積極的に進めてまいります。
再生・細胞医薬CDMO事業については、S-RACMO株式会社が、オリヅルセラピューティクス株式会社と共同で国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の公募課題である2024年度「再生・細胞医療・遺伝子治療産業化促進事業」に採択されるなど、製造受託に留まらず顧客と一体での製造プロセス開発も推し進めております。
なお、アドバンストメディカルソリューションセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
エッセンシャル&グリーンマテリアルズ分野では、炭素循環技術の社会実装、ライセンス技術の競争力強化、新規技術の創出、サステナブルな製品の市場投入を重点課題としています。これらを通じて、早期のエッセンシャル&グリーンマテリアルズコンプレックスの構築と新規事業の創出を目指し、社内外との連携を強化しながら革新的な技術と製品の開発を推進しております。
炭素循環技術の社会実装においては、総合リサイクル企業リバー株式会社との業務提携契約に基づき、使用済み自動車から得られる廃プラスチックのマテリアルリサイクルに関する共同技術開発を進めております。2023年に完成した精度の高い選別及び異物除去プロセスを活用し、2024年度には実証実験を進行するとともに、サンプル提供を開始いたしました。また、環境負荷低減技術として独自のアクリル樹脂(PMMA)の高効率ケミカルリサイクル技術について、米国のルーマス・テクノロジー社(以下「ルーマス社」という。)との協業契約を締結いたしました。ルーマス社は独占的ライセンスパートナーとして技術の商業化を加速し、世界各地での社会実装を推進してまいります。
包装用ポリオレフィン材料の開発では、素材メーカーとしての強みを活かし、剛性と耐熱性を単一の樹脂で両立するポリエチレン及びポリプロピレンのモノマテリアル包材の開発を継続して推進しております。
さらに、事業のグローバル競争力を強化するため、モノマー製品の触媒・プロセス改良、合成樹脂の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化、新規高付加価値製品の開発にも注力しております。当連結会計年度には、環境負荷低減に優れたクメン法プロピレンオキサイド技術について、米国のKELLOGG BROWN & ROOT LLC(以下「KBR社」という。)との独占的ライセンス協業契約を締結いたしました。この革新的なプロセスは省エネや高収率を実現し、KBR社との協業を通じて、住友化学の技術を世界中の顧客に提供いたします。
なお、エッセンシャル&グリーンマテリアルズセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
住友ファーマでは、精神神経領域及びがん領域並びにその他領域において、人々の健康で豊かな生活に貢献するため、自社研究に加え、技術導入、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究等、あらゆる方法で最先端の科学と技術を駆使して研究開発活動に取り組んでおります。
精神神経領域では、特長ある低分子の初期臨床開発品目群について、2030年代のグループ収益を支える優先品目を選抜し、次のフェーズへの移行に向けた取り組みを推進してまいります。
当連結会計年度において、がん領域では、①enzomenib(開発コード:DSP-5336)について、日本及び米国において、急性白血病を対象としたフェーズ1/2試験を推進いたしました。②nuvisertib(開発コード:TP-3654)について、日本及び米国において、骨髄線維症を対象としたフェーズ1/2試験を推進いたしました。③SMP-3124について、日本及び米国において、固形がんを対象としたフェーズ1/2試験を開始いたしました。enzomenib及びnuvisertibに資源を集中させるとともに、他社との提携機会を追求することにより、両剤の開発を最優先で推進し早期の承認取得と価値最大化を目指します。なお、2025年度から2027年度までの活動方針として策定した「Reboot 2027-力強い住友ファーマへの再始動-」の期間において、enzomenibは日本及び米国での承認取得・上市を目指し、nuvisertibは両国での承認申請を目指してまいります。
その他領域では、①「オブジェムサ」(一般名:ビベグロン)について、2024年6月、欧州において、提携先が過活動膀胱を適応症とした承認を取得いたしました。②「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)について、2024年12月、米国において、前立腺肥大症を伴う過活動膀胱に対する適応追加承認を取得いたしました。また、中国において、過活動膀胱を対象としたフェーズ3試験を実施しておりましたが、期待した結果が得られなかったため、住友ファーマ社における開発を中止いたしました。③ユニバーサルインフルエンザワクチン(開発コード: fH1/DSP-0546LP)について、ベルギーにおいて、住友ファーマ社が開発したTLR7アジュバント(免疫強化剤)を添加して作製した新規のユニバーサルインフルエンザワクチンのフェーズ1試験を開始いたしました。ユニバーサルインフルエンザワクチンについて、ベルギーでのフェーズ1試験の中間解析を実施し、KSP-1007については、アジア地域への展開を見据えた日本及び中国でのフェーズ1試験を継続し、開発を着実に推進してまいります。なお、ユニバーサルインフルエンザワクチン及びKSP-1007の研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)からの委託研究開発費を活用しております。
なお、住友ファーマセグメントにおける当連結会計年度の研究開発費は
全社共通及びその他の研究分野においては、3つのX(BX・DX・GX)及び6つのコア技術(生体メカニズム解析/精密加工/有機・高分子材料機能設計/無機材料機能設計/デバイス設計/触媒設計)を組み合わせ、「食糧」「ICT」「ヘルスケア」「環境」の4つの重点分野に対し、事業部門とコーポレートの連携加速による「基盤技術の強化」と「次世代事業開発」を進め、社会課題解決の実現に向け推進しております。
また、2021年12月に公表した住友化学グループのカーボンニュートラル・グランドデザインに基づき、カーボンニュートラル実現へ向けた「貢献」として、GHG削減につながる各種の製品・技術の開発を行い、社会実装及びライセンスを通じたグローバル展開に取り組んでおります。
当連結会計年度において、食糧分野では、バイオトランスフォーメーション(BX)として合成生物学を活用した次世代事業の創出に取り組んでおります。また、乳酸菌を加熱処理したパラプロバイオティクスによるアニマルニュートリション用途開発を推進しております。加えて、2024年7月、成分分析を介して天然素材の売り手と買い手をつなぐ日本初のデジタル・プラットフォーム「Biondo(ビオンド)」をリリースし、専用webサイトをオープンしました。「Biondo」は、当社が培ってきた高度分析やデータベースを基盤とし、DX(デジタル技術)を駆使することで新たな価値をお客様へ提供するものです。持続可能な未来に向けて、限りある資源を有効活用することで、循環型社会の構築へ貢献いたします。
ICT分野では、東京科学大学(旧:東京工業大学)、東京大学、理化学研究所と共同で、次世代量子デバイスの重要材料の一つとして有望視される強相関材料の開発を進めております。強相関材料とは強誘電、強磁性等、複数の強物性を同時に有する材料の総称であり、熱電変換、低エネルギー消費メモリー材料等、幅広い分野で期待されております。本取り組みでは、強相関材料のメカニズムを解析するとともにアプリケーションにも力を入れており、今年開催されている大阪万博の住友館において、その成果の一部を展示しております。
ヘルスケア分野では、先端医療への取り組みとして、バイオテクノロジーによる価値創造の一環として、疾患リスク検査キットを開発中です。高感度で多様な昆虫の嗅覚受容体を組み込んだ独自の細胞を用い、疾患リスクの判定を実現し、2027年を目途に各医療施設や衛生検査所等で臨床ニーズに応じた消費者向け検査ビジネスへの参入を目指しております。
また、当社グループの新会社である株式会社RACTHERAでは、再生・細胞医薬事業のフロントランナーたる技術・知見を駆使して研究開発に取り組んでおります。他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞は、京都大学医学部附属病院によるパーキンソン病治療に関するフェーズ1/2試験のデータを基に、2025年度中の国内承認申請に向けて準備を進めております。他家iPS細胞由来網膜シート(立体網膜)は、米国のマサチューセッツ眼科耳鼻科病院と連携し、網膜色素変性治療に関するフェーズ1/2試験を開始いたしました。これら先行剤に注力し、早期事業化・育成を進めてまいります。
環境分野では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるグリーンイノベーション(GI)基金事業として以下の環境負荷低減技術開発に取り組んでおります。まず、ケミカルリサイクルとして、①廃プラの直接分解によるオレフィン製造技術開発では、ベンチ設備での試験において、目標収率60%を達成し、パイロット設備の設計を開始しております。②CO2からの高効率アルコール類製造技術開発では、パイロット設備での試験において、メタノール収率80%を達成し、実証設備の設計に進んでおります。③アルコール類からのオレフィン製造技術開発では、ベンチ設備での試験において目標収率80%を達成し、パイロット設備建設が進行中です。その他、CO2削減のためのCO2分離膜の開発では、複数種のCO2排出源から純度90%以上のCO2を回収することに成功し、パイロット設備での実証実験を目指しております。また、リチウムイオン電池回収後の正極材ダイレクトリサイクル開発では、ベンチ設備でのダイレクトリサイクル処理品にて電池容量回復率98%を達成し、連続化に向けたスケールアップ検討に進んでおります。引き続きGI基金の活用により、環境負荷低減技術開発を推進してまいります。
千葉地区にて環境負荷低減技術や新素材の開発拠点として2024年6月に新研究棟「Innovation Center MEGURU」が竣工し、稼働を開始いたしました。環境負荷低減テーマの加速と早期実現化を目指し、研究体制の強化を図ってまいります。また、本施設では研究者間の交流を促進する空間設計を導入するとともに、建築物省エネルギー表示制度(BELS)の最高ランクを獲得し、再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減に適合した建築である「ZEB Ready」の認証も取得する等、環境に配慮した設計が施されております。
なお、全社共通及びその他における当連結会計年度の研究開発費は
このように、新製品・新技術の研究開発及び既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組みつつ、食糧、ICT、ヘルスケア、環境の4つの重点分野の社会課題をイノベーティブな技術で解決する企業(Innovative Solution Provider)を目指してまいります。