第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「安心で快適な生活環境の創造」の経営理念に基づき、安全で高い品質の社会インフラ、サービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。また、誠実・公正で透明性のある企業活動と社員一人ひとりの高い倫理観に基づいた行動を通じて、あらゆるステークホルダーから信頼され続ける企業となるべく努力してまいります。さらに、安定的な受注と利益を確保し、市場競争力の維持・強化に努め、新しい成長領域の構築に向けた投資を推進しながら、企業価値の向上を目指してまいります。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

セグメント

経 営 環 境

対処すべき課題

鉄 構

(橋梁事業)

・新設鋼製橋梁の発注量は長期的に減少トレンドにあり、建築資材費の上昇や残業規制強化などを背景に足下で特に重量ベースでの減少が著しく、受注競争が激しい。同時に、発注予定時期や工程も不安定化傾向がみられる

・「新設から更新・保全」への需要シフトが更に進行し現場エンジニアリング能力の重要性が一層増しているなか、関西方面で大型新設プロジェクトが始動した

(橋梁事業)

・技術提案力、設計変更獲得力をさらに磨き受注力を強化。併せて、発注時期や工程進捗管理を通じた製作・施工リソースの適時把握により受注機会逸失を排除

・市場構造のシフトに柔軟に対応した体制の整備、特に柔軟な育成・採用による施工人材の確保と技術開発などを通じた生産性の一層の効率化

・工場製作能力と現場エンジニアリング能力の適切なアロケーションの構築

・鋼製橋梁以外の製作物への取り組みを継続

(鉄骨事業)

・大都市部の大型再開発を中心に案件は中~長期的に多数存在し、当社の強みを発揮できる複雑な構造を持つものも多く計画されているが、建築資材費の高騰や残業規制強化を背景に足下で発注は減少。今後も出件の遅れが一定程度想定され、既受注案件においても計画変更や工程遅れが散見されるなか、一部においては価格競争が懸念される

(鉄骨事業)

・高難度物件の製作が可能な強みを生かしつつ、工程の遵守や不適合の排除を通じ確実に利益を創出する体制をさらに強化

・適時の情報収集と適切な工程管理により受注機会の逸失を避けつつも、採算性を確保する受注に努める

土 木

・新設鋼製橋梁同様、新設PC橋梁の発注量も長期的に減少傾向にある

・「新設から更新・保全」への需要シフトはこちらでも顕著

・更新・保全事業は潜在的に依然大きな需要が見込まれるが、短期的には建築資材高騰や残業規制強化などを背景に発注量が減少しており、不透明な環境が続く

・技術提案力や積算力の向上による特に大型工事の受注力の強化を通じ、安定的な受注を可能にする体制を構築

・資格取得支援や採用強化など質と量の両面で人材強化を継続

 

 

 

セグメント

経 営 環 境

対処すべき課題

建 築

・首都圏中心の大規模多層階倉庫には底堅い需要があるも、周辺部の大規模低層倉庫への需要シフトが見られる。需要自体は底堅く推移する見通し

・建築資材高騰や残業規制強化などを背景に、発注控えや工程の長期化が散見されつつある

・建設人材の担い手不足を背景に特に施工人員が不足気味

・収益性の高い案件を優先する選別受注と安定した受注確保の両立を目指しつつ、受注時の見積り精度の一層の向上やVE・CDなどの積極提案により利益率向上を図る

・人材確保、協力業者の積極活用で受注力・施工力の拡大と収益力強化を図る。同時にDX活用などにより生産性向上を目指す

ソリューション

(ソフトウエア関連事業)

・橋梁の発注量減少の影響をうけるも、建設DX(BIM/CIM)推進が引き続き着実に浸透しており、官公庁、民間まで含めた公共インフラ分野まで市場の拡大が進む

・老朽化インフラの更新への関心の高まり

(ソフトウエア関連事業)

・ソフトウエア企業から「情報サービスコンサルタント」への進化を加速。人材を育成・獲得、市場での認知度を高め、付加価値、事業効率性の更なる向上を目指す

(ロボット関連事業)

・製造業向けロボットへの需要は潜在的に依然大きく、各国で開発競争が過熱

・人件費高騰や残業規制強化などを契機に、ロボットを活用した自動化・省人化に改めて注目が集まる

(ロボット関連事業)

・人型、双腕型ならではの特色を打ち出しつつ、潜在需要に適時に応える商品力・商品開発力を一層強化

 

 当社グループは、『KAWADA VISIONの実現を目指し、レジリエント企業に変貌する』をテーマに、2023年5月に第3次中期経営計画(2023年度~2025年度)を次のとおり策定・公表いたしています。

 

(第3次中期経営計画の概要)

① 経営課題

資本コストを意識し、ROE向上を目指した経営を推進するとともに、それを支える経営基盤の強化を図る。

 

② 基本方針

<4つの方針>

基幹事業の持続的成長

100年かけて培ってきた技術を軸に、ビッグプロジェクトに参画するとともに、拡大している橋梁の保全・補修市場への対応強化

成長事業の拡大・創出

成長が見込まれる事業分野に経営資源を投入するとともに、「川田ならでは」の価値創造により新規事業を創出

サステナビリティ経営の推進

グループ理念である「安心で快適な生活環境の創造」のもと、社会課題の解決を起点とした責任ある企業経営を貫き、中長期的な企業価値の向上

資本効率経営への転換

ROE経営を推し進めるとともに、「八方よし」の精神で企業経営を継続

 

 

③ 数値目標

 数値目標につきましては、計画2年目までの実績と計画3年目の見込みに基づき、次のとおり一部修正しています。修正内容の詳細につきましては、2025年5月13日公表の「「第3次中期経営計画」の数値目標の修正に関するお知らせ」をご参照ください。

 

当 初 目 標

前 回 修 正

今 回 修 正

 売上高(3か年累計)

3,910億円以上

3,910億円以上

3,910億円以上

 営業利益(3か年累計)

186億円以上

223億円以上

261億円以上

 当期純利益①(3か年累計)

156億円以上

183億円以上

261億円以上

 当期純利益②

(3か年累計、持分法投資損益を除く)

121億円以上

146億円以上

196億円以上

 ROE(最終年度)

8.0%以上

8.0%以上

8.0%以上

 ROE(最終年度、関係会社株式を除く)

11.0%以上

11.0%以上

11.0%以上

 

 当社グループは、今後ともさまざまな環境変化に適切に対応し、安定的な利益を確保することで企業価値を向上させ、全てのステークホルダーに満足していただけるよう「八方よし」の精神のもと努力してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。

 なお、本文書は、提出日時点での情報に基づいて作成されています。ただし、文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在での当社グループの判断に基づいています。

 

 当社グループは、グループ理念である「安心で快適な生活環境の創造」を基に、「八方よし」(※)の精神に則り、全てのステークホルダーとの対話や共創を通じて、「持続可能な社会の実現」と「グループの持続的な成長」を目指し、2022年3月に以下のサステナビリティ基本方針を制定しました。

 

 ※「八方よし」とは、近江商人の心得と言われる「三方良し」を独自に、さらに拡張し、ステークホルダー全てに利をもたらす企業グループを目指すという考え方です。

 

〇サステナビリティ基本方針

 

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 当社グループは、企業経営と社会課題の長期的なトレンドを重視し、事業環境や社会・地球的な課題の長期的な展望やビジョンを検討することにより、様々なリスク・機会を抽出しています。また、業界として期待される役割や社会的使命にも目を向け、企業が果たすべき役割を考えています。さらに、組織全体で共有する企業理念や価値観を明確化し、それに基づいた行動を求めています。これらの要素を考慮し、組織としての持続可能性に関する重要課題(マテリアリティ)を2023年3月に特定しました。また、組織や個人がリソースの最適化や効果的な時間管理を行い、重要課題の解決に向けた取り組みが行えるよう重点課題を設定しました。

 そして、2024年6月に重点課題についての考え方を明確化し、重点課題の統合や重要課題(マテリアリティ)及び重点課題の名称変更を行いました。さらに、各重点課題に対する対策、具体的な内容、指標、一部目標値及び実績値を追加しました。

 

〇重要課題(マテリアリティ)における検討要素

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○重要課題(マテリアリティ)

 

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 詳細な内容につきましては、弊社ウェブサイト(https://www.kawada.jp/csr/materiality/)をご参照ください。

 

(1)ガバナンス

 取締役会の諮問機関として、サステナビリティ推進委員会を設置しています。委員長は取締役であるサステナビリティ推進室長が務め、取締役会が選任する委員で構成されます。委員会は原則として毎月開催され、同委員会の下部組織として当社グループ各社の総務部長等をメンバーとしたサステナビリティ推進会議が存在し、同会議への指示・諮問に対する報告・答申に基づき、幅広いサステナビリティ課題について、その相互連関性などを含めたリスクや機会を議論し、対応策を検討し、定期的又は必要に応じて取締役会に報告・答申を行います。

 取締役会は重要な方針や課題についての審議・決定を行い、その後、サステナビリティに関するさまざまな活動の内容や進捗状況等についてモニタリングを行います。また、指揮・監督の責任も担い、サステナビリティへの取り組みがサプライチェーンを含めて適切に進められているかを確認します。

 このように、取締役会並びにサステナビリティ推進委員会がそれぞれの役割分担を通じて、そしてそれらが有機的に連携することで、サステナビリティ経営を着実に推進しています。

 

 なお、人権に関する事項については、グループコンプライアンス委員会が主管しており、同委員会で審議・決定された内容は取締役会への報告・答申を通じて適切に対応しています。また、人権対応に関する施策の有効性や進捗状況については、サステナビリティ推進委員会とも適宜情報共有を行い、グループ全体で一貫した対応を推進しています。

 

〇サステナビリティ推進体制

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(2)リスク管理

 サステナビリティ推進委員会は、当社グループ各社の取締役や経営幹部に対して意識調査を実施し、サステナビリティ課題に対して高い関心を持っていることを確認するとともに、重要なリスクや機会を網羅的に抽出します。さらに、外部専門家の助言を活用し、専門知識に基づいた重要なリスクや機会の特定を行っています。

 特定されたリスクや機会は、取締役会に報告され、審議・決定の対象となります。取締役会の関与により、組織全体のリスク管理の透明性と責任を確保しています。さらに、取締役会はリスクや機会への対応状況等のモニタリングを行い、適切な指揮・監督を行っています。以上のようなサイクルを回すことで、変化する状況の中での新たなリスク要因や事業機会に対応するための努力を継続的に行っています。

 

(3)重点的に取り組んでいく課題

 上記のガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重点的に取り組んでいく課題の中で、本報告書に「戦略」並びに「指標及び目標」を開示する項目は以下のとおりです。

・気候変動問題への積極的な貢献

・人的資本経営の徹底

・人権尊重経営の徹底

① 気候変動問題への積極的な貢献

 国際連合「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑えられない場合、異常気象や生物多様性の損失などのリスクが大きく高まると警鐘を鳴らし、その実現のためには温室効果ガス排出量を2035年に2019年比で60%減らす必要があると提言しています。当社グループは、重要課題(マテリアリティ)として「地球環境への貢献」を掲げ、その重点課題として「気候変動問題への積極的な貢献」を設定しています。地球温暖化を含む気候変動問題は、当社グループのステークホルダーを含め、この地球に暮らす全ての人々にとって喫緊の課題となっています。

 2023年6月、当社グループはTCFD(※)の提言への賛同を表明し、気候変動問題への取り組みとTCFDの提言に沿った情報開示を進めるとともに、気候変動に関するリスク・機会に適切に対応し、「カーボンニュートラル社会の実現」と「中長期的な企業価値の向上」を目指しています。

※TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)

G20の要請を受け、2015年に金融安定理事会(各国の金融関連省庁及び中央銀行からなり、国際金融に関する監督業務を行う機関)により設置された組織。金融市場の安定化を図ることを目的に、企業等に対して気候変動リスク及び機会の財務的影響の把握と情報開示を促している。

 

<戦略>

 当社グループは、気候変動問題をリスク・機会の両面で捉えており、非常に重要な社会課題と認識しています。そして、移行リスクについては1.5℃以下シナリオ(※)、物理的リスクについては4.0℃シナリオ(※)を活用し、主に2030年代までを中心に、事業への影響度を勘案し、当社グループの全ての事業を対象にリスク・機会を検討・分析しました。以下に特定したリスク・機会を示します。

※1.5℃以下シナリオ

2050年までに地球規模で温室効果ガス排出量ゼロを実現する規範的シナリオ。

政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook2024」の「NZE2050シナリオ」、平均気温等気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP1-1.9シナリオ」に原則として準拠。

※4.0℃シナリオ

現時点で公表されている温室効果ガス削減に関する政策や目標の撤回を含めて、気候変動問題に対する有効な政策が実施されないシナリオ。

政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook2024」の「STEPSシナリオ」、平均気温等気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP5-8.5シナリオ」に原則として準拠。

 

〇気候変動に関するリスク・機会

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 また、移行リスクと物理的リスクの財務的なインパクトの算出を行いました。以下にその内容を示します。

 

(移行リスク)

 国際的な気候変動対策の進展に伴い、カーボンプライシング(※)の導入・強化が各国で進められており、当社グループにおいても今後の政策動向が財務に影響を及ぼす可能性があると認識しています。

 IEA「World Energy Outlook2024」のNZEシナリオでは、2030年の炭素価格が140ドル/t-CO2と予想されています。当社グループではこの価格をもとに、Scope1(直接排出)及びScope2(間接排出)の排出に伴うカーボンプライシングの財務影響額を、2030年度の以下の3つの売上高シナリオに基づき試算しています。

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 なお、この試算に用いた炭素価格やシナリオは今後のカーボンプライシング制度の動向によって見直しを行い、さらなる温室効果ガス排出量の削減に取り組むことで、移行リスクの低減を目指します。

※カーボンプライシングとは、企業などの排出するCO2に価格をつけ、それによって排出者の行動を変化させるために導入する政策手法です。

 

(物理的リスク)

 近年、日本国内では洪水や水害などによる浸水被害が甚大な経済損失を引き起こしており、これらは主要な物理的リスクとして認識されています。気候変動の影響により、浸水被害のリスクがさらに増大すると予測されており、企業の事業継続性を確保する観点からも浸水被害のリスクを検討することが重要です。

 浸水被害のリスク検討の取り組みとして、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」を参考に、建設現場を除く全事業所を対象として、洪水や高潮による浸水を「浸水ナビ」や「重ねるハザードマップ」を用いて、建物・在庫資産・償却資産への影響及び操業停止による売上高の減少を算出しました。この算出においては、将来の不確実な発生確率の仮定に依存せず、規模ごとの財務影響を可視化することを目的に、1/100、1/200、1/1000の複数の年超過確率(※)を用いて被害額を算定しています。

 浸水被害のリスクが高い事業拠点においては、対策の優先順位付けとともに、防災・減災策の検討やBCPの見直しなどを通じて、気候変動に伴う物理的リスクへの対応を強化していきます。

 ※年超過確率とは、特定の規模を超える洪水等が1年間に少なくとも1回発生する確率。

 

<指標及び目標>

 当社グループは、気候変動に関するリスク・機会を管理するための指標として、環境負荷に関する重要な要素である温室効果ガス排出量を考えています。また、気候変動に対する取り組みを推進し、環境への影響を最小限に抑えるため、当社グループによる温室効果ガス排出量の削減に加えて、サプライチェーン全体での削減に向けた取り組みも重要であると考えています。

 

(Scope1、2排出量)

 GHGプロトコルの基準に基づき、2022年度を基準年度として、当社及び連結子会社8社の直接排出(Scope1)と間接排出(Scope2)の排出量を算定しています。これを踏まえ、当社グループは温室効果ガス排出量削減目標として、2050年度までに実質ゼロ、2030年度までに2022年度比47%の削減(内訳:航空2社合計で4%削減、その他会社合計で70%削減)を設定しました。

 排出量の算定及び削減目標に基づき、使用電力のCО2排出量削減プランへの切り替えや太陽光発電システムの設置など、環境負荷の低減に向けた施策を実施しています。現在は、これらの取り組みをさらに加速させるための財務的影響について精査を進めています。

 

(Scope3排出量)

 GHGプロトコルの基準に基づき、2023年度を基準年度として、サプライチェーンを含む間接排出(Scope3)の排出量も算定しています。この算定結果をもとに、環境負荷を低減するため、電炉材の購入重量比率を重要な指標と掲げ、排出量削減の進捗を管理しています。

 なお、Scope3の削減目標は未設定ですが、今後、SBT(※)認証取得を目指す中で、温室効果ガス排出量削減目標を設定する予定です。

※SBT(Science Based Targets)とは、世界の産業革命前からの気温上昇を2℃を十分に下回る1.5℃に抑えることを目指すパリ協定が求める水準と整合した、企業が設定する温室効果ガス排出量削減目標です。

 

 このように、当社グループでは、GHGプロトコルの基準に基づいた温室効果ガス排出量の算定と中長期的な温室効果ガス排出量削減目標の設定及びその達成のための取り組みを推進し、気候変動への対応を引き続き行っていきます。

 

 

〇温室効果ガス排出量の削減目標と実績

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(注)当社グループはScope1・2・3の排出量算出の精緻化に向けた取り組みを継続しています。2023年度には、算定方法を理論値から実績値への見直しや現場で使用する重機の範囲を広げたこと、2024年度には工場で使用するシールドガスなどこれまで算定対象外だった排出源を新たに追加しました。これらの取り組みにより、Scope1の「その他会社」を中心に排出量が増加していますが、これは実態に即したより正確な排出量を開示するためのものであり、排出管理の透明性向上を目的としています。なお、Scope3についても同様に、2023年度分をより適正な数値に修正しています。

 

② 人的資本経営の徹底

 当社グループは、技術で社会に貢献してきた創業100年を超える企業集団であり、培ってきた技術の確実な伝承とさらなる発展により、全てのステークホルダーへ安心で快適な製品やサービスを提供することが使命であると考えています。その使命の遂行には「人材」が最も重要であり、社員一人ひとりが誇りを持ち、活き活きと働くことができる環境づくりが大切であると考えています。このことから、当社グループでは重要課題(マテリアリティ)として「安心で公正な労働環境の整備」を掲げ、その重点課題の一つとして「人的資本経営の徹底」を設定しています。

 

<戦略>

 この課題解決に向け、2024年3月に以下のとおり「人材育成方針」及び「社内環境整備方針」を制定しました。

 

(人材育成方針)

 KTI川田グループは、グループ理念である「安心で快適な生活環境の創造」の実現において社員が企業の最も重要な財産であり、社員の成長と幸福感を尊重し共有することが組織の持続的発展に繋がると考えています。いつの時代にも技術を持って社会に貢献するために、経営理念に共感する多様な人材を採用し、培った技術の確実な伝承と専門性の向上に努めるとともに、時代の先を読み変革を推進できる人材の育成に努めてまいります。

 また、グループの価値創造力の向上を図るため、人材のグループ内外の交流を促進してまいります。

 

 

(社内環境整備方針)

 KTI川田グループは、社員の誠実さと主体性を引き出し、グループの一員としての誇りとやりがいを育む多様性と包摂性を兼ね備えた職場を重要と考えています。そのため、人権尊重経営の徹底をはじめとする適切な施策を実施し、社員が心身ともに健康で安心して働くことができる職場環境を整備してまいります。

 また、安全と効率性・快適性を確保するため多彩なグループの専門性をもって技術的に職場の課題解決に当たるとともに、豊かな人生の実現とグループの持続的な発展に向けて、社員のキャリア形成を支援する教育体系の整備、多様な働き方を選択できる社内制度の拡充、働き方の変化に応じた公正な人事制度づくりを進めてまいります。

 

<指標及び目標>

 当社グループは、重点課題である「人的資本経営の徹底」を目指す上で、「多様な人材の採用」、「人材の育成及びキャリア構築支援」及び「ワークライフバランス・健康経営の継続的推進」は特に重要度の高い課題と認識しており、それぞれに目標を設定しています。

 

(多様な人材の採用)

 企業価値のさらなる向上のためには、人材の確保だけでなく、その多様化と育成が重要と考えています。今後、多様性のある専門技術者やマネジメント人材の育成にはその母集団に多様性を確保することが不可欠であることから、当社グループの中で割合の少ない女性や外国人材の採用を強化すべく、目標を設定しています。

 また、中途採用者についても中核人材への登用が進んでいる状況を踏まえ、この流れを着実なものとするため、その採用割合について目標を設定しています。

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(人材の育成及びキャリア構築支援)

 当社グループでは、各社独自のOJTや選抜型などの研修により社員の育成を図るとともに、グループ合同での研修などを通して交流を促進し、シナジー効果の最大化を目指しています。

 また、資格の取得支援についてはグループ各社がそれぞれの事業特性に合わせ、独自の制度を運用しています。2020年度より役割等級制度を導入したグループ会社については各等級への昇級要件として職務遂行上不可欠と思われる公的資格を設定しており、キャリア構築の支援にも繋がっています。人材の育成及びキャリア構築支援の両面で有効な施策として、資格取得の支援について目標を設定しています。

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(ワークライフバランス・健康経営の継続的推進)

 ワークライフバランスの推進においては、当社グループ各社がそれぞれの事業特性に合ったさまざまな働き方改革の施策や各種教育を確実に実行することが不可欠と考えています。男性労働者の育児休業取得率は、いわゆる「仕事と家庭の両立支援」の風土醸成及び柔軟な勤務体制の整備状況を端的に示すものと考え、指標としています。また、複数のグループ企業においては、マネジメント人材におけるメンタルヘルスの理解促進を図るため、管理職者に「メンタルヘルス・マネジメント検定(Ⅱ種)」の取得を義務付けています。管理職登用前の取得や若手社員による早期取得を促進する観点より、当該資格の取得率を目標として設定しています。

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 今後さらに人的資本経営の充実に向けた課題を掘り下げ、企業価値の向上に資する施策の実施及び目標の設定を継続していきます。

 

③ 人権尊重経営の徹底

 国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」や一般財団法人日本経済団体連合会の「企業行動憲章」が示すように、従業員の人権はもちろん、サプライチェーンや地域社会における人権尊重にも配慮することが、企業に強く求められるようになってきています。当社グループは、重要課題(マテリアリティ)として「安心で公正な労働環境の整備」を掲げ、その重点課題として「人権尊重経営の徹底」を設定しています。当社グループは、この課題に真摯に取り組み、社会的責任の実現を目指していきます。

 

<戦略>

 2024年3月に以下のとおり「人権方針」を制定しました。

 

(人権方針)

1.人権に関連した国際規範の尊重・法令遵守

 当社グループでは、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」等に定義される国際的な人権規範を尊重します。

2.適用範囲

 本方針は、当社グループすべての役員・従業員に適用されます。また、当社グループの事業活動に関連する協力会社等のビジネスパートナーにも、本方針への支持を期待します。

3.人権デュー・デリジェンスの実施

 当社グループは、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実行していきます。また当社グループの事業活動における人権に対する負の影響を特定し、その防止または軽減を図ります。

4.救済・是正

 当社グループが、人権に対する負の影響を直接的・間接的に引き起こした場合、または助長した場合は、適切な手段を通じて、その是正・救済に取り組みます。

5.教育・研修

 当社グループでは、本方針を事業活動全体に定着させるため、すべての役員・従業員を対象にした教育・研修を実施します。

6.ステークホルダーとの対話・協議

 当社グループでは、本方針を実行するにあたり、実際のまたは潜在的な人権への負の影響に関する対応について、関連するステークホルダーとの対話・協議を行っていきます。

7.情報開示

 当社グループでは、本方針に基づく取り組みに関して、ウェブサイト等を通じて情報開示を行います。

8.責任者

 当社グループは、本方針の実行等人権尊重への取り組みに責任を持つ担当役員を置き、実効性を担保します。

 

 また、国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、人権尊重経営の徹底に取り組んでいます。人権デュー・デリジェンスの構築にあたり、当社グループにおける重要な人権リスクの特定を以下のとおり行いました。

 

・ハラスメント対策

・労働安全衛生

・過剰不当な労働時間

・環境・気候変動に関する人権問題

・腐敗防止・企業倫理

 

 今後は人権デュー・デリジェンスにおいて特定された重要な人権リスクに対し、適切な措置の実施・追跡調査・情報公開に取り組みます。

 なお、当社グループ各社では内部通報制度が確立され、通報窓口が設置されていますが、現在の制度が人権尊重の観点から求められる水準に達しているかどうかを検証する必要があります。通報者の保護や公正な対応を強化するために、是正・苦情処理メカニズムの構築の改善に取り組みます。

 

〇人権尊重経営における全体の取り組み

 

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<指標及び目標>

 当社グループの役員・従業員の人権意識を高め、人権尊重の企業文化を醸成することが企業の持続的な成長に不可欠であると考えています。そのため人権啓発研修会を開催し、その受講率を指標として設定しています。

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 今後さらに人権に関する課題を掘り下げ、より企業価値の向上に資する施策及び目標の設定を継続していきます。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。

 

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

市場リスク

 鉄構セグメントにおける鋼橋事業並びに土木セグメントにおけるPC橋事業(以下「橋梁事業」)は、その相当部分が国、地方自治体、高速道路会社からの発注であり、政策や財政状況の悪化などにより発注量が想定を大きく下回る可能性があります。

 また、鋼橋事業では発注者側の予算が金額ベースで設定されるため、同額の予算でも資材や人件費等の上昇の影響による発注単価の増加により、重量ベースでは減少する可能性があります。すなわち、同額の受注であっても工場の生産量(稼働率・操業度)が低下する可能性があります。

 さらにまた、橋梁事業においては、市場が新設から補修・保全にシフトしてきており、工場製作を中心とした事業から現場施工を中心とした事業へと変わりつつあり、この変化に適切に対応できない場合、業績に影響が出る可能性があります。

 鉄構セグメントにおける鉄骨事業と建築セグメントにおける建築事業は、その相当部分が民間からの発注であるため、景気後退等により設備投資が減少する可能性があります。建設市場の著しい縮小により、受注が低迷した場合には業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、「第3次中期経営計画」に掲げる各種施策を推進し、橋梁事業においては、新設事業の受注活動強化を図るとともに、新たな市場として拡大が見込まれる更新、保全事業への対応力強化を推し進めてまいります。

 鉄骨事業と建築事業においては、競争力強化に向けた新たな技術開発や設備投資による効率化を図り、生産性向上に取り組んでまいります。また海洋構造物に代表される橋梁以外の鋼構造物への取り組みを加速させるなど、事業領域の拡大を通じた収益源の多様化にも取り組んでまいります。

収益変動リスク

 当社グループの基幹事業である橋梁事業や鉄骨事業、建築事業は請負事業のため、請負契約後の工事期間中に鋼材等の原材料や輸送費、労務費の上昇リスクが内在しており、請負金額に反映することが困難となった場合には、採算性が悪化するリスクがあります。

 またロボット等の製造において、半導体不足やサプライチェーンの混乱による部品調達の長期化及び価格高騰等調達面に制約が発生し、生産計画を見直す状況になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、早期の調達や多様な調達先の確保を図ることで採算性の悪化リスクを回避・軽減してまいります。また発注者との契約に物価スライド条項を含めるなど、コスト増加分を請負金額に転嫁できる契約内容にするとともに、発注者と情報共有を図り、交渉を早期に進めるなどの対策を実施しています。

事故によるリスク

 当社グループの基幹事業である橋梁事業や鉄骨事業、建築事業においては、工場製作及び現場施工が大半を占めています。万が一事故が発生した場合には、事故による直接的な損害と補償費用が発生するだけでなく、指名停止等の処分や工事成績評点への影響などで、その後の受注活動に影響が生じ、業績にも影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、安全管理の専門部門を設置し、労働災害の撲滅に向けた全社的な安全管理体制を構築するとともに、労働災害事例の水平展開や役職員のパトロールにより重大労働災害に繋がるリスクについて、複数の視点で管理することにより未然防止に努めています。

 

 

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

品質不具合による瑕疵等のリスク

 当社グループで製作している製品及び現場施工の品質につきまして、万が一重大な瑕疵が発生した場合には、その是正・回復費用や損害賠償費用だけでなく、顧客からの信頼失墜や風評リスクで、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、国際マネジメントシステムの国際認証であるISO9001を取得し、厳格な品質マネジメント体制を構築するとともに、品質管理の専門部門を設置し、品質不具合事例の水平展開や役職員のパトロールにより品質不具合に繋がるリスクについて、複数の視点で管理することにより未然防止に努めています。

工事遅延リスク

 橋梁事業に関して、鋼材等の原材料や資機材、購入品が当初予定した時期に納品されない場合に工程が遅れる可能性があります。また実際の架設現場の状況が想定と異なった場合や下部工工事に遅れなどが生じた場合、発注者と協議のうえ架設工法を見直すケースがあります。その場合、原価の発生時期と架設工法変更に係る設計変更契約の締結時期にずれが生じ、原価が先行することで一時的に収益が悪化するなど、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、工事の遂行にあたってはフロントローディングを確実に実施し、工事リスクの早期把握によりリスクの低減を図るとともに、架設工法変更等に伴うコスト増加分は、その設計変更内容を発注者と情報の共有を図り、早めに協議を行うことで原価先行の影響を低減してまいります。

法令等に関わるリスク

 当社グループの事業は、建設業法や労働安全衛生法等の各種法的規制を受けます。万が一法令違反が発生した場合には、指名停止、営業停止等の処分により業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、事業推進に密接な関わりを持つ法令や規則等を遵守するため、法務部門による講習会を実施し啓蒙活動を行うとともに、監査部門による内部監査や役員による現場パトロールの実施により法令遵守の徹底に努めています。

取引先の信用リスク

 当社グループでは、発注者・協力業者などの取引先に信用不安が発生した場合には、貸し倒れの発生や引当金の計上、工程の遅延などにより業績が悪化する可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、新規の発注者の際は、発注者の与信並びに支払条件などを検証し、工事代金回収不能リスクの回避を図り、協力業者と新たな取引を開始する際には、原則として財務状況等を審査したうえで発注することでリスクの軽減に努めています。

為替の変動リスク

 当社グループの持分法適用会社は海外での事業を行っているため、外貨建の債権債務が発生します。このため大幅な為替変動が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、請負工事代金の受領通貨と工事原価の支払い通貨を現地通貨で一致させ、入出金の時期も概ね一致させるなどの対応によりリスクの軽減に努めています。また事業を行うことで累積する収益部分の預金については、為替の変動リスクの影響を軽減するために、現地の資金状況に応じて適宜円転し、リスクの軽減に努めています。

担い手不足によるリスク

 当社グループの主要セグメントが属しています建設業界におきましては、建設業従事者の数が減少すると予測されています。加えて建設業では2024年4月から適用された時間外労働の上限規制が始まり、これに対応した「働き方改革」が、業界各社の緊喫の課題となっています。今後、担い手不足が解消できなかった場合に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、人材の確保・育成をより一層強化していくとともに、業務効率を高めるためのDXを推進し、生産性向上による残業時間の削減等、労働条件・環境の改善を図ってまいります。また担い手不足を補うため、ロボット技術等を活用した業務効率の改善や店社による現場支援体制の強化も進めています。

自然災害等大規模災害によるリスク

 当社グループは鉄構セグメント及び土木セグメントにおいて全国5か所に工場を保有しています。それらが所在する地域におきまして大規模災害等で操業に支障が出た場合は事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、橋梁事業や建築事業の現場は屋外での作業が中心となりますので、季節や天候などの自然条件の影響を受ける可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、影響を最小限に抑えるべく、災害時の事業継続計画(BCP)を策定し、大地震を想定した実践的なBCP訓練を実施しています。その中で従業員等の安否や施工中の現場の被害状況を確認するなど、企業としての防災力、事業継続力の向上に取り組んでいます。

 

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

固定資産の減損に関わるリスク

 当社グループは鉄構セグメント及び土木セグメントの事業に係る固定資産として全国5か所に工場を保有しています。今後、工場における採算性が悪化した場合には減損損失を計上する必要性が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、各工場において製造できる製品の多様化や製造工程の効率化・コスト削減等で採算性の維持・向上を目指すとともに、設備投資については将来的な市場環境並びに投資対効果の検証を綿密に行い、減損リスクの回避に努めています。

保有資産の時価変動リスク

 当社グループが保有する不動産・有価証券の資産は時価が下落した場合、業績に影響を与える可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、保有する資産は時価評価等を通じてモニタリングしており、遊休不動産で将来的に活用の見込みがない場合は売却に向けた検討を進めています。また政策保有株式は、年に一度、保有目的及び経済的合理性等を検証し、保有効果が薄れたと判断した場合は適宜、売却に向けた手続きを進めています。

有利子負債への依存と金利変動によるリスク

 当社グループには相当額の有利子負債(借入金、私募債)が存在します。橋梁事業や鉄骨事業につきましては、その事業形態から運転資金の立て替えが恒常的に発生し、特に近年の橋梁事業では案件の大型化や長期化が進んでいることからその傾向が強まっています。将来において資金調達に支障が出た場合や調達金利が上昇した場合には事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、運転資金は金融機関からの借入金(銀行引き受けの私募債含む)により調達しており、2025年3月末時点での借入金は合計233億円となっています。当社グループでは取引銀行14行との当座貸越契約の弾力的な運用と年度計画に沿った長期借入金の調達で対応しており、平素より当社グループの事業計画や業績見込等を適時適切に説明し、円滑な調達に努めています。

情報セキュリティに関わるリスク

 当社グループにおきましては、業務の効率化のためICT化、ネットワーク化を進めていますが、その社内システムに対し外部からのサイバー攻撃や従業員の不正等により保管しているデータが消失・損壊した場合や個人情報、機密情報が漏洩した場合、その復旧費用や損害賠償だけではなく、事業遂行に大きな影響や社会的な信用が失墜し、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、「情報セキュリティポリシー」を制定し、情報管理体制を確立するとともに、リスクの変化に応じた技術的な対策及び教育・啓発等の人的マネジメント対策を継続的に実施することで、個人情報、機密情報の漏洩防止に努めています。

不適切な財務報告リスク

 従業員の不正や誤謬等により財務報告が適正に行われなかった場合には、ステークホルダーからの信用が失墜し、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備し、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリングを行うとともに、正確な財務報告に関する啓発教育を継続的に行い、内部統制の実効性確保に努めています。

気候変動問題に係るリスク

 当社グループは、製造過程で多くの温室効果ガスを発生させる鋼材を主たる材料とする鋼橋事業や鉄骨事業、並びに航空燃料を使用する航空機使用事業を営んでいます。今後将来に向け温室効果ガスの発生量を実質ゼロに向けて圧縮することが求められている中、適切に対応できない場合には事業遂行に制約が出る可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、サステナビリティ課題への体系的な取組みを進めています。2021年にサステナビリティ推進室を設置し、2022年には「サステナビリティ基本方針」を制定、2023年に重要課題(マテリアリティ)を特定しました。さらに、2024年には温室効果ガス排出量の削減目標を設定しています。今後はこの枠組みに基づき、具体的な削減策の立案・実行を進め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

 

 

 

主なリスク

主な対応策・取り組み

人権に関するリスク

 配慮すべき人権が広範囲に及び、当社グループのみならずサプライチェーン全体における人権尊重に取り組む必要がある中で、人権問題への対応や未然防止を怠ることは、社会的信用の失墜、職場の生産性低下や離職者の増加を引き起こし、結果として業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、当社グループは2024年3月に国際連合の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた国際的な人権規範に則った人権尊重に取り組むための「人権方針」を制定し、担当役員を配置しました。今後は人権デュー・デリジェンスの仕組みを整備し、サプライチェーン全体での人権問題に対して適切に取り組むことで、リスクの軽減に努めてまいります。

人的資本に関するリスク

 当社グループの持続的成長において、人材の確保・育成は極めて重要です。今後、少子高齢化や労働市場の変化、技術革新の進展などにより、必要なスキルや知見を持つ人材の採用・定着が困難となる可能性があります。こうした人的資本への投資や働きがい向上に適切に取り組めない場合、競争力の低下や業績への影響が生じる可能性があります。

 

 当該リスクの対応策として、従業員一人ひとりの成長支援と、働きがいのある職場づくりに取り組んでいます。人材育成方針に基づき、階層別研修などを通じた人材の育成を進めるとともに、職場環境方針に則り、安全・安心で多様性を尊重した職場環境の整備に努めています。また、人権方針のもと、従業員の人権リスクの把握と未然防止に取り組み、エンゲージメントの向上を通じてリスクの低減を図っています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

 当連結会計年度末における「資産の部」は165,511百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,273百万円(+3.3%)増加しました。これは主に、受取手形・完成工事未収入金等が2,611百万円、関係会社株式が3,057百万円増加したことによるものであります。

 また、「負債の部」は73,942百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,932百万円(△5.0%)減少しました。これは主に、短期借入金が3,405百万円減少したことによるものであります。

 一方、「純資産の部」は91,569百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,205百万円(+11.2%)増加しました。これは主に、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の51.1%から55.0%となりました。

 

② 経営成績の状況

 当社グループを取り巻く事業環境は、政府による防災・減災、国土強靭化対策等に牽引された公共投資と企業の堅調な設備投資意欲に伴う民間投資により、建設投資全体は底堅く推移するものと見込まれています。しかしながら、公共投資である鉄構セグメントの鋼製橋梁事業は発注予算が金額ベースで縛られる中、資材や人件費等の上昇の影響による発注単価の増加により、重量ベースでは低調な推移が見込まれており、今後の工場操業度確保が大きな課題となっています。また民間投資である鉄構セグメントの鉄骨事業や建築セグメントは建設コスト上昇等による計画の延期や見直しの動きが散見されています。加えて深刻な担い手不足は業界全体における喫緊の課題である中、建設業界に対しても2024年4月から適用された時間外労働の上限規制により労働力需給の逼迫に拍車が掛かっているなど、厳しい経営環境が続いています。

 このような事業環境の中、当社グループは、2023年5月に策定した「第3次中期経営計画(2023年度~2025年度)」に沿って、「基幹事業における収益力強化」と「成長事業における事業規模拡大」を着実に取り組むことで利益水準の向上を図るとともに、資本コストを意識したROE向上を目指した経営を推進しています。

 計画2年目である2024年度におきましては、鉄構セグメントの鋼製橋梁事業と土木セグメントの新設事業と更新事業を中心に順調に推移したことで売上高は目標を達成することができました。営業利益につきましても、基幹事業である鉄構・土木セグメントでの大型工事における設計変更獲得に加え、建築セグメントにおける採算性が良い工事の進捗が堅調に推移し、また成長事業であるソリューションセグメントでの事業規模拡大と採算性の改善による利益の上積みで、計画2年目に設定した目標を大幅に上回ることができました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益も当初見込んでいた水準を大幅に上回り、ROEにつきましても12.8%と改善いたしました。

 当社グループの当連結会計年度における業績は、売上高132,905百万円(前連結会計年度比2.9%増)、営業利益9,684百万円(同10.9%増)、経常利益12,616百万円(同19.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11,107百万円(同47.3%増)となりました。受注高につきましては148,202百万円(同12.9%増)となりました。

 

 なお、セグメントの業績は、次のとおりであります。(セグメントの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)

 

(鉄構セグメント)

 当セグメントの中の鋼製橋梁事業につきましては、受注高は当連結会計年度における新設橋梁の発注量が低調に推移する中、先行して設計業務を受注していた大規模工事において、その製作・施工業務についても契約できたことや高速道路会社発注の新規大型工事に加え、地方公共団体の新規工事を複数受注できたことにより前連結会計年度を大きく上回ることができました。売上高は国土交通省と高速道路会社の工事の進捗が進んだことや竣工を迎えた大型工事を中心に設計変更の獲得による上積みもあり前連結会計年度を上回りました。また損益面におきましても、売上高の増加に加え、当第4四半期においても国土交通省の複数の工事において設計変更を計上できたことで前連結会計年度を上回りました。

 鉄骨事業につきましては、受注高は当第4四半期に新規工事や大型工事の追加受注を積み上げることができましたが、前連結会計年度に首都圏での大型再開発工事の受注があった反動で前連結会計年度を下回りました。売上高は一部工事で建設価格の上昇による計画の先送りや2024年問題による現場工程の遅れによる出来高の減少があり、前連結会計年度を下回りました。その一方、損益面におきましては、首都圏案件を中心に複数の工事において設計変更が獲得できたことで前連結会計年度を上回りました。

 セグメント全体では売上高63,172百万円(前連結会計年度比2.7%増)、営業利益6,274百万円(同35.0%増)となりました。また、受注高は70,983百万円(同10.8%増)となりました。

(土木セグメント)

 土木セグメントにつきましては、受注高は当第4四半期におきましても高速道路会社発注の新設事業、保全事業で大型工事の受注を獲得でき、44,137百万円(前連結会計年度比40.0%増)と前連結会計年度を大幅に上回ることができました。売上高は、新設事業と更新事業において、工事の進捗が順調に推移したことに加え、竣工を迎えた大型工事での設計変更の獲得もあり38,622百万円(同9.0%増)と前年同期を上回りました。損益面につきましては、新規に受注した大型工事及び既受注工事での見込原価悪化に伴う工事損失引当金の計上を行ったことにより、営業利益2,106百万円(同27.2%減)となりました。

(建築セグメント)

 建築セグメントにつきましては、受注高は当第4四半期においても一部新規の工事を受注することができましたが、前連結会計年度に多層階倉庫の大型案件の受注があった反動もあり15,398百万円(前連結会計年度比18.7%減)となりました。売上高につきましては、前連結会計年度から繰り越した大型工事が当連結会計年度の上半期までは設計業務が中心となり、進捗が伸びなかったことが響き15,473百万円(同12.1%減)となりました。損益面につきましては、当第4四半期に竣工を迎えた大型工事での採算性の改善が図れたものの、売上高の減少に伴い、営業利益1,444百万円(同8.3%減)と前連結会計年度を下回りました。

(ソリューションセグメント)

 ソリューションセグメントにつきましては、前連結会計年度に引き続き、当連結会計年度においても橋梁設計業務の発注量減少を受け、建設コンサルタントからの受託設計業務の受注が減少したものの、ソフトウエア販売事業を中心に受注が積み上がったことで、受注高は8,053百万円(前連結会計年度比4.7%増)となりました。売上高につきましては、サブスク方式で販売しているソフトウエア販売事業が前連結会計年度からの繰越高増加に加え、当連結会計年度における受注増加を受け、売上を伸ばすことができたことで7,949百万円(同5.3%増)となり、営業利益につきましても2,982百万円(同2.1%増)と増加いたしました。

(その他)

 その他につきましては、橋梁付属物の販売や航空機使用事業で売上高を伸ばすことができたことで、売上高は9,798百万円(前連結会計年度比11.7%増)となりましたが、定期路線事業での損失が響き、営業損失172百万円(前連結会計年度は営業損失436百万円)となりました。なお、定期路線事業に係る営業損失につきましては、営業外収益に計上する補助金収入により相当部分が解消しています。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,823百万円減少し14,279百万円(前連結会計年度比△11.3%)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、9,839百万円の資金増加(前連結会計年度は13,320百万円の資金増加)となりました。これは主に、未払消費税等の増加による資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、2,981百万円の資金減少(前連結会計年度は2,553百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、8,659百万円の資金減少(前連結会計年度は10,337百万円の資金減少)となりました。これは主に、借入金の返済による資金の減少があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

鉄構

70,983

10.8

95,372

8.9

土木

44,137

40.0

50,700

12.2

建築

15,398

△18.7

17,788

△0.4

ソリューション

8,053

4.7

3,603

3.0

その他

9,628

6.9

452

△27.3

合計

148,202

12.9

167,917

8.5

(注) セグメント間の取引については、相殺消去していません。

 

b.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

鉄構

63,172

2.7

土木

38,622

9.0

建築

15,473

△12.1

ソリューション

7,949

5.3

その他

9,798

11.7

合計

135,015

3.2

(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去していません。

2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。なお、最近2連結会計年度の主要な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しています。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路㈱

17,146

13.3

 

 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。

 

 なお、参考のため連結子会社である川田工業㈱個別の事業の状況は次のとおりであります。

 

a.生産実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

61,267

62,552( 2.1%増)

建築

17,544

15,398(12.2%減)

その他

188

290(53.8%増)

合計

79,000

78,241( 1.0%減)

(注)1 生産高は、当事業年度工事総費用を契約高に換算したものであります。

2 生産高には、外注生産高が含まれています。

 

b.受注実績

期別

セグメントの名称

前期繰越工事高(百万円)

当期受注工事高(百万円)

(百万円)

当期完成工事高(百万円)

次期繰越工事高(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

鉄構

85,012

64,025

149,037

61,475

87,561

建築

16,526

18,936

35,463

17,601

17,862

その他

315

315

228

87

合計

101,538

83,278

184,817

79,305

105,511

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

鉄構

87,561

70,671

158,233

62,854

95,378

建築

17,862

15,398

33,261

15,473

17,788

その他

87

235

323

306

17

合計

105,511

86,306

191,818

78,633

113,184

(注)1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含みます。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれています。

2 当事業年度の次期繰越工事高のうち請負金額70億円以上の主なものは、次のとおりであります。

名古屋高速道路公社

市道高速1号他新洲崎工区改築事業

2028年1月完成予定

首都高速道路㈱

高速1号羽田線(東品川桟橋・鮫洲埋立部)更新工事

2025年7月  〃

清水建設㈱

大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業Torch Tower(B棟)新築工事

2027年5月  〃

西日本高速道路㈱

新名神高速道路 高槻高架橋西(鋼上部工)工事

2027年6月  〃

国土交通省関東地方整備局

川崎臨港道路東扇島水江町線主橋梁部上部工事(その2)

2027年7月  〃

 

c.販売実績

セグメントの名称

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

金額(百万円)

鉄構

61,475

62,854( 2.2%増)

建築

17,601

15,473(12.1%減)

その他

228

306(34.0%増)

合計

79,305

78,633( 0.8%減)

(注)1 前事業年度の完成工事高のうち請負金額30億円以上の主なものは、次のとおりであります。

清水建設㈱

虎ノ門・麻布台地区第一種市街地再開発事業施設建築物等新築工事(A街区)

日本梱包運輸倉庫㈱

日本梱包運輸倉庫株式会社 三芳営業所 新倉庫増築

鹿島建設㈱

JASM新築工事 FAB棟

㈱竹中工務店

梅田3丁目計画(仮称)

㈱竹中工務店

(仮称)うめきた2期地区開発事業新築工事のうち北街区賃貸棟

当事業年度の完成工事高のうち請負金額30億円以上の主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路㈱

中国自動車道(特定更新等)吹田JCT~中国池田IC間橋梁更新工事

㈱大林組

品川開発プロジェクト(第1期)4街区 本体鉄骨 北棟A工区

清水建設㈱

(仮称)芝浦一丁目計画 第Ⅰ期(S棟)新築工事

東日本高速道路㈱

東関東自動車道 塔ヶ崎高架橋(鋼上部工)工事

大成建設㈱

(仮称)赤坂二丁目プロジェクト

2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上となる相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

前事業年度

 西日本高速道路㈱ 9,412百万円 11.9%

当事業年度

 清水建設㈱    8,941百万円 11.4%

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態

 財政状態の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでありますが、当連結会計年度におきましては、資産の部の流動資産では現金預金が減少し、売掛債権(受取手形・完成工事未収入金等)が増加しました。これは主に土木セグメントにおいて売上高の増加による売掛債権が増加したことによるものです。負債の部の流動負債では支払手形や短期借入金が減少し、未成工事受入金が増加しました。これは協力会社への支払を手形払いから現金払いに変更したことと、鉄構セグメントにおいて売上代金の回収が進んだことに加え、期末に大型工事の前渡金を受け取り、短期借入金の返済に充てたことにより運転資金が減少したことによるものと分析しています。

 次に、総資産は5,273百万円増加し165,511百万円となり、純資産比率は前連結会計年度末比3.9%上昇の55.3%となりました。これは上記運転資金の減少及び純資産において利益剰余金が8,088百万円増加したことによるものであります。関係会社株式が3,057百万円増加していますが、これは持分法適用会社に係る持分法による投資利益を計上したことによるものであり、繰延税金資産が1,259百万円増加しているのは、税効果会計により繰延税金資産の回収可能性における企業分類を変更したことによるものであります。

(ロ)経営成績

 当連結会計年度は第3次中期経営計画の2年目でしたが、受注高は鉄構、土木セグメントにおいて順調に大型案件を積み上げることができ目標をクリアすることができました。売上高は建築セグメントが伸び悩んだものの、鉄構、土木セグメントでカバーすることができ目標を達成し、営業利益につきましても全てのセグメントで目標をクリアすることができ、その結果、当期純利益も当初見込んでいた水準を大幅に上回り、ROEにつきましても前連結会計年度に比べ3.2%改善し12.8%となりました。

 当連結会計年度の経営成績の具体的な内容としましては、売上高は、鉄構セグメントの中の鋼製橋梁事業が豊富な繰越高を抱えた中で、高速道路会社発注の大型新設工事が概ね順調に進捗したことや土木セグメントにおいて新設事業と更新事業が概ね順調に進捗したことで前連結会計年度に比べ2.9%増の132,905百万円となりました。営業利益は鉄構セグメントの中の鋼製橋梁事業において、売上高の増加に加え、複数の大型工事で設計変更を計上できたことで、前連結会計年度に比べ10.9%増の9,684百万円となりました。経常利益は持分法による投資利益が増加したことで前連結会計年度に比べ19.7%増の12,616百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益が前連結会計年度に比べ増加したことや繰延税金資産の回収可能性における企業分類を変更したことによる法人税等調整額の増加により47.3%増の11,107百万円となりました。

 当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境や経営成績、セグメントごとの状況につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 なお、2023年5月に発表した「第3次中期経営計画」においては、当社グループの基幹事業が複数年にわたる事業を行っていることから、設計変更交渉の状況により各年度の売上高及び損益が大きく変動する可能性があるため数値目標は3か年累計としていますが、1年目、2年目の収益が想定を上回るペースで積み上がったことを受け、営業利益及び当期純利益の数値目標を修正いたしています。

第3次中期経営計画(目標値)(3か年累計)

 

当初

前回

今回

 

2023年5月12日発表

2024年5月14日発表

2025年5月13日発表

営業利益

186億円

223億円

261億円

当期純利益①

156億円

183億円

261億円

当期純利益②(持分法利益除く)

121億円

146億円

196億円

 

(ハ)当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの事業は基本的に個別受注方式でありますので、それぞれの事業の市場環境や発注状況が事業ボリュームや採算性に大きな影響を与えますが、その具体的な内容は次のとおりであります。

 鉄構セグメントにおける鋼製橋梁事業及び土木セグメントにおけるPC橋梁事業の市場は、その相当部分が公共事業となる国や地方自治体からの発注と、同様の色彩が強い高速道路会社からの発注であるため、政策や財政状況の悪化などにより発注状況が変化します。次に鉄構セグメントにおける鉄骨事業及び建築セグメントの建築事業が対象とする市場は、民間設備投資に係るものであるため、景気動向に左右される傾向にあります。

 また基幹事業である鉄構、土木、建築セグメントは、建設産業の就労人口の減少を受け、協力会社を含めた慢性的な人手不足や2024年4月から適用された時間外労働の上限規制、いわゆる「2024年問題」により労働力需給の逼迫に拍車が掛かっています。

 さらにまた、当社グループの損益においては持分法適用関連会社である佐藤工業株式会社を筆頭とする佐藤工業グループの持分法投資損益が大きく影響する傾向にあります。すなわち当社グループは佐藤工業株式会社の49.9%の株式を保有しており、佐藤工業グループの資本及び対応する期間損益が持分割合に応じて当社グループの損益に反映されることになりますが、佐藤工業グループの事業規模が当社グループより大きいこともあり、その資本及び対応する期間損益の状況によって当社グループの経常損益以下に大きく影響を与える可能性があります。また、同社グループはシンガポールを中心に東南アジアで事業展開をしていることに伴い外貨建ての資産・負債を有することから、為替相場の変動による差損益が持分法投資損益に影響を与えることがあります。

 その他の影響を与える要因やリスクにつきましては「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(ニ)セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容について

 当社の基本戦略は、当社グループの企業が各々持つ専門的な技術を活かしてシナジー効果を高め売上と利益の拡大を継続的に図るとともに、関連する新市場への進出を図ることでありますが、セグメント別の認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 鉄構セグメントの鋼製橋梁事業では、新設の発注量は金額ベースでは前年度と同規模程度が見込まれていますが、資材や人件費等の上昇の影響による発注単価の増加により重量ベースでは減少が予想されています。このことは、金額的には一定の水準であっても、工場の操業度(生産量)的には低下する可能性があると認識しています。また発注ロットの小型化が進んでいる中、事業ボリュームを確保するために国土交通省のWTO案件や高速道路会社の大型案件の受注競争が激化しています。当社グループでは受注確保に向け、入札における技術提案力や積算精度を向上させ、適正な事業量と収益の維持・拡大を目指します。また新設は中期的には大型プロジェクトの発注が控えているものの、長期的には緩やかな減少が予想されていることから、今後は更新工事を含む保全工事への対応を強化していくとともに合成床版の拡販や土木・海洋構造物市場等への展開にも取り組んでまいります。

 次に同セグメントの鉄骨事業では、首都圏における大型再開発案件、関西地区におけるIR関連案件、九州地区における半導体関連案件の発注が見込まれており市場環境は当面は底堅く推移していくと予想されています。その一方で建設コスト上昇等により大型プロジェクトの計画や工程の見直し等が散見され、発注時期について不透明な状況が続いています。当社といたしましては、工場操業の平準化が図れる案件を選別し、事業ボリュームの確保と収益の拡大を目指してまいります。

 土木セグメントでは、PC橋梁市場において「新設」・「更新」・「保全」の3本柱を主体とする事業体制を確立し、プロジェクトマネジメントを取り入れ、受注確保、原価低減、固定費圧縮の徹底を図っています。そのような中、高速道路会社の床版取替えを中心とした更新工事市場は近年急速に拡大したことに伴いゼネコンの進出が顕著となってきたことや、近年の発注量がピーク時に比べ減少傾向にあることで、受注競争が益々激化しています。潜在市場としてはまだまだ大きなものがあると想定されることから、引き続き受注力の強化に向けて情報収集力を高め、技術提案力や積算精度を向上させることで安定的な事業ボリュームの確保と採算性の向上を目指してまいります。

 建築セグメントでは、倉庫、工場の市場において1棟あたりの延床面積は減少傾向にあるものの、着工棟数は増加しており、当社がターゲットとして位置付けている平屋、2階建て倉庫や冷凍冷蔵・危険物を用途とする倉庫の市場環境は底堅く推移していくと予想されています。当社といたしましては、受注力強化に向けて、協力会社からの情報を含め、様々な営業案件の情報を収集するための体制を強化することで、施工要員の平準化が図れる案件を選別し、事業ボリュームと収益の拡大を目指してまいります。

 ソリューションセグメントにつきましては、国土交通省が推進するDX化の流れに乗って、設計から工事までのBIM/CIMが本格化する中、3次元CADや情報共有ソフトを基軸とした当社グループの製品群が好調に推移しました。老朽化した社会インフラに対する更新ニーズの高まりもあり、この事業環境は当面続くと想定されることから、当社グループといたしましては引き続き成長事業と位置付け、積極的に取り組んでまいります。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

・キャッシュ・フロー

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 その中で、当連結会計年度のキャッシュ・フローの特徴的な点として税金等調整前当期純利益12,683百万円、減価償却費3,075百万円、未払消費税等増加4,169百万円により売上債権の増加2,611百万円、仕入債務の減少3,109百万円、法人税等の支払4,887百万円等をカバーし営業活動によるキャッシュ・フローは9,839百万円のプラスとなっています。これは、鉄構・土木・建築の各セグメントの案件の大型化で運転資金は増加しましたが、税金等調整前当期純利益、減価償却費等の範囲内に収まったことが主な要因です。これに伴い短期借入金を3,405百万円減少させ、配当金の支払3,021百万円を行いましたので、財務活動によるキャッシュ・フローは8,659百万円のマイナスとなっています。投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産及び無形固定資産の取得3,217百万円に伴い2,981百万円のマイナスとなっています。

・資金需要

 当社グループの事業活動における資金需要には大きく分けて運転資金と設備資金があります。

 運転資金需要の主なものは橋梁やビル用鉄骨製作に係る原材料費、外注費、労務費、一般管理費等があります。当連結会計年度におきましては上述のとおり運転資金は増加しましたが、税金等調整前当期純利益や減価償却費の範囲内に収まりました。

 設備資金需要としては橋梁及び同関連製品やビル用鉄骨を製作・加工する工場用の土地や建物、機械設備のほか、航空機使用事業を営むのに必要なヘリコプターの機体や整備工場や格納庫等があります。当連結会計年度におきましては全体で2,648百万円の設備投資を行っていますが、その内訳は「第3 設備の状況 1 設備投資等の概要」に記載のとおりであります。

・財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するために、内部留保の活用とともに金融機関からの借入(金融機関引き受けによる私募債含む)を中心とした資金調達を行っています。

 運転資金需要については当社グループのコア事業が個別受注型の事業形態であるため、受注した案件の金額や工期、回収条件によって必要となる運転資金の額や時期が異なります。その点を踏まえ、その時々の受注内容を全体として管理しながら必要な運転資金を調達しています。また基本的には複数年に亘る案件がほとんどであるため、調達に際しては必要金額の全体を俯瞰した上で、短期借入と長期借入を組み合わせ、資金調達の弾力性を確保しています。短期資金については、それぞれの事業会社が金融機関と個別に当座貸越契約を締結していますが、グループ全体で金融機関14行との間で総額418億円の当座貸越契約を締結し、十分な借入枠を確保するとともに、長期資金については年間の調達計画を作成の上、その計画に沿って随時調達を行っています。

 金融機関に対しては平素より業績や資金の状況について説明を行うことで信頼関係を維持し、財務の安定性と弾力性を確保しています。

 また、金利面につきましては過度の金利変動リスクを回避すべく、一部の借入については金利スワップなどの手段で金利の固定化を図り、変動金利部分と固定金利部分のバランスを取っています。

・経営資源の配分

 当社グループでは事業活動から得られる営業キャッシュ・フロー(注)については、基幹事業の更なる強化を図るための「設備投資」及び成長事業への投資と「株主還元」に適切なバランスをもって配分する方針としています。2023年度を初年度とする第3次中期経営計画の本年度実績は以下のとおりとなりました。

(注)当社グループでは複数年に亘る事業を行っているため、事業に係る資金の動きは除外しています。

(カッコ内は計画値(3か年累計))

営業キャッシュ・フロー(3年間計)                       (200億円)

初年度  133億円

本年度  157億円

2か年計 291億円

 

設備投資 (100億円)

初年度  38億円

本年度  26億円

2か年計  65億円

株主還元(※)(配当46億円)

初年度  22億円

本年度  25億円

2か年計 47億円

(※)株主還元について

・株主還元に関しましては、損益状況やキャッシュ・フロー、また昨今の上場企業を取り巻く状況等を鑑み、2023年2月より、配当方針を「連結配当性向30%を目途に安定的な配当を継続する」としています。

・2024年5月には「第3次中期経営計画(2023年度~2025年度)」の残り期間(2024年度~2025年度)に係る1株当たり配当金の下限を90円としています。

・2024年度より中間配当制度を導入しています。

・2024年11月には、配当方針を「親会社株主に帰属する当期純利益から非経常的な特殊要因による損益を除外し、連結配当性向30%を目途に安定的な配当を継続する」としています。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたっては、当連結会計年度末日における資産・負債の報告金額並びに当連結会計年度における収益・費用の報告金額に関する見積り、判断及び仮定を使用する必要があります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる結果となる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

契約会社名

相手方の名称

契約品目

契約内容

契約期間

川田建設㈱

(連結子会社)

極東鋼弦コンクリート振興㈱

フレシネー工法

1.フレシネージャッキの有償借入

2.PC鋼材及び定着装置・ケーブル付属品の有償購入

1977年10月11日より

1982年10月11日まで

以後2年毎更新

㈱橋梁メンテナンス

(連結子会社)

S.A.S FPC

(フランス国)

シーペックジョイント

同製品の国内製作・販売ライセンス契約

2015年7月11日より

2018年7月9日まで

以後3年毎更新

(注) 上記の技術受入契約においては、それぞれロイヤルティとして、資・機材の利用あるいは売上に対して一定額を支払っています。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、社会のニーズに対して高い技術で応えるため、研究開発活動を積極的に推進し、新しい技術の開発や知見の獲得に努めています。研究開発体制としては、川田テクノロジーズ㈱がグループを跨いだ生産性向上技術や新しい市場を目指した技術開発を担当し、グループ各社が事業活動に直結する研究開発を担当しています。

 当連結会計年度における研究開発費は1,555百万円であり、セグメント別の主な内容は次のとおりであります。

 

(鉄構セグメント)

 主に川田工業㈱の橋梁事業部が、鋼構造・複合構造に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は574百万円であり、材料・構造・施工・保全などに関する新技術の開発・改善を行っています。主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 複合構造に関する研究開発

 当社グループが得意とする鋼材とコンクリートを用いた複合構造物において、合成床版やプレビーム合成桁等の製品で多くの実績を収めています。合成床版に関しては、施工性や耐久性を大幅に向上させた「SCデッキ・スタッドレス」において、現場での施工性を向上させるワンサイド施工用の樹脂ナットを開発し、防錆仕様の策定と施工方法の確立を図っています。また、多機能突起リブを用いた新型合成梁の開発では、同構造の優れた耐震性能を確認しており、土木、建築分野での製品化を進めています。

② 橋梁保全技術に関する研究開発

 高速道路の高架橋から地方自治体の一般橋梁まで、「最小限の労力と費用で適切な維持管理が可能な保全アイテムの創造」をコンセプトに継続的な開発を進めています。鋼床版桁や鉄道軌道桁の支点上補剛材への疲労き裂抑制対策については検証試験及び施工検討が概ね終了し、実構造物への適用を順次進めています。また、腐食が著しいボルト継手部における防錆能力向上を目的に開発したフィルム・キャップについては、特許を取得し、NETIS登録を完了しました。更に高周波加熱装置を用いたリベット取替え工法については、施工法の確立と効率化に向けた施工機器の開発を進めています。今後ますますニーズが高まる保全事業に備え、多種多様なラインナップを整えています。

③ 生産技術に関する研究開発

 溶接施工においては、新たなMAG溶接法の開発、溶接部の疲労強度を高める施工法の開発、溶接の可視化による溶接現象の解明などを進めています。また、川田テクノロジーズ㈱と共同で、溶接士のハイダイナミックレンジ視野画像を用いた溶接中管理システムの開発も進めています。さらに工場製作においては、精度の高い最新の点群データ取得機器(レーザートラッカー、3Dスキャナー)を使用し、出来形の高精度な計測と管理を行うことで仮組立作業の省力化を進めています。

④ 生産性向上に関する研究開発

 橋梁の製作・架設現場において、これまでの労働集約的な作業の機械化、自動化に資する様々な技術の開発に取り組んでいます。川田テクノロジーズ㈱と共同で開発した「自動塗装ロボット」と「自動搬送装置」を組み合わせて、川田工業㈱の主力製品である合成床版(SCデッキ)を対象に工場塗装のさらなる品質向上と生産性向上に取り組んでまいります。

 

(土木セグメント)

 川田建設㈱が、コンクリート構造物に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は223百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 新設橋梁の品質・耐久性向上技術に関する研究開発

 各種施工管理システムの高精度化・全自動化を目的として研究開発を推進しています。ジャッキの油圧ポンプ操作を含めてタブレットで集中管理できる全自動緊張管理システムを高速道路会社発注の工事で適用し、実績が7橋に積み上がったことで、使用頻度が多い定着具・PC鋼材径で実績を作ることができました。また、高炉スラグ微粉末やフライアッシュを配合した高品質・高耐久性コンクリートの研究開発を継続実施しており、蒸気養生を工夫することでセメントを70~80%置換したコンクリートをプレテンション桁に適用できることが確認できました。

② 更新技術に関する研究開発

 今後需要が増大する橋梁の改修・更新技術に着目して、更新用プレキャストPC床版とPC中間定着システムの研究開発を継続して推進しています。前者については、ウォータージェット搭載台車・水分離装置等で構成される鋼桁ケレン装置システムを川田テクノロジーズ㈱と共同で開発し、人力に頼っていた鋼桁ケレンの作業効率化と品質均等化を図りました。後者については各種のPC鋼線やPC鋼棒の実績が積み上がっている中、取得した特許技術により減肉したPC鋼棒の長期定着効率が低下しないことを確認しています。

③ 保全技術に関する研究開発

 既設PC橋梁の維持管理をターゲットにした非破壊検査技術、延命化・長寿命化技術については、大学や専門会社と共同して基礎的な研究開発を継続しています。非破壊検査技術は、超音波法によってPC橋の応力度を簡易的に把握できることを確認できました。また、長寿命化技術は、KKグラウト注入工法が完成し、少量のグラウト再注入に適したポンプや容易に脱着が可能な注入・排出孔治具の有効性をデモ実験で確認できました。さらに、支承交換の補修技術は、アンカー削孔を伴わずに橋脚にブラケットを設置する工法の実証実験で、上部工重量を安全に支持できることが確認でき、今後は実橋での工事に適用する予定です。

 

(建築セグメント)

 川田工業㈱の建築事業部と事業企画部が建築分野に関する研究開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は52百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 建築設計業務におけるDX推進に関する研究開発

 DX推進に向け、BIM及び構造最適化ソフトの導入に向けた環境整備を進めています。BIMについては、設計業務だけでなく積算業務への利用拡大や確認申請におけるBIM図面審査に向けた調査を行いました。構造最適化ソフトについては、設計条件をパラメータとする部材検証を自動で数千パターン行い、従来の設計方法から鋼重削減効果を確認しました。設計条件の最適化を進めることで、経験の差による技術のバラツキが低減でき、高水準で経済設計が実現できると考えています。これらの活用を進め、業務の効率化、成果物の品質向上を目指します。

② 土間工事の工数削減に向けた研究開発

 土間床のコンクリート工事は、打設から仕上げまでを同日中に完了する必要があり、作業員10名で1日あたり1,000㎡程度の施工が限界です。また、作業員や監督員の拘束時間が長く、冬場には早朝から深夜まで作業が続くことがあります。これらの背景から、施工性の高い自己充填コンクリートに着目し、大学と共同で高効率化を図る配合を検討しています。本研究開発は、人手不足や長時間労働の対策として省力化を目指すとともに、高効率化による1日あたりの施工面積の拡大も目指しています。

③ 環境事業に関する研究開発

 水やりが基本的に不要な屋上緑化システム「みどりちゃん」は、引き続きインド、サウジアラビア、タイ、シンガポールなどの海外地域で実証実験を実施し、各国における植生の育成状況を確認するとともに、再生炭等の材料の現地調達に関する調査を行いました。特に乾燥地域であるサウジアラビアでは、半年間のモニタリングを経て想定を上回る成果が得られ、乾燥地向けの市場展開に向けた足掛かりとなる結果が得られています。

 また「みどりちゃん」の雨水流出抑制効果についても、屋外での検証試験を実施し、再生炭を含む土壌が降雨後の体積含水率をより高く維持する傾向が確認されました。これは異常気象による都市型洪水の抑制対策や、植物の安定育成に資する成果として、今後の製品アピールに活用していく予定です。

 また、壁面緑化システム「Stand by みどりちゃん」の室内利用についても研究を行い、潅水量を最小限に抑えた実験を通じて、観葉植物においては一定の育成効果が確認されました。一方、排水循環に関する構造的課題や土壌代替素材の選定など、屋内利用における課題も明確となりました。実験結果をもとに他製品との差別化に向けた検討を進めてまいります。

 

(ソリューションセグメント)

 川田テクノシステム㈱が建設向けソフトウエアソリューションに関する研究開発を、カワダロボティクス㈱が産業用双腕ロボットに関する研究開発を実施しています。当連結会計年度における研究開発費は516百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

① 自然言語系AIの研究

 人手不足が深刻なヘルプデスク業務に関して自然言語系AIを用いて応答する研究を行っています。川田テクノシステム㈱では、システムに関する様々な情報をセキュリティで保護された領域に学習をさせ、学習した様々な質問に対して正しく応答ができるか実証実験を行っています。学習においては、文字だけでなく、表やグラフ、図、写真なども併せて行う独自のアルゴリズムを使用して行っています。将来、一定レベルの成果が発揮できれば、同業他社や当社の顧客へ販売できる事業になると考えています。

② 画像解析AIの研究

 撮影動画から物体検知及び顔認証を行うAIを構築しています。事前に撮影した動画やライブカメラ映像から車、人、自転車など様々な物体を検知し、また顔認証も行うことが可能であることから、この2つの要素を合わせることで特定のエリア内の行動パターンや物体の数量の時間的推移を検知します。交通量調査や倉庫、建物内の移動検知、分析に貢献するシステムを目指しています。

③ ヒト型協働ロボットに関する研究開発

 川田テクノロジーズ㈱と共同でヒト型協働ロボット(双腕ロボット)「NEXTAGE」のハードウエア及びソフトウエアの性能・機能、拡張性向上を目的とした要素技術開発を継続して実施しています。当連結会計年度の成果としては、新機能となる衝突検知オプションのリリースを行いました。また、アプリケーションパッケージの製品化に向けて20種類のデモ開発を行いました。

 さらに外部機関との連携に関しては、日本国内の大学・研究機関との共同研究を実施しつつ、テクナリア(スペイン)を含む欧州の15の研究機関と共同でEU HORIZON PROJECTに継続参加するとともに、東京理科大と共にカナダとのJST共同研究へ参画し、「人と働くヒューマノイドロボット」の市場価値を高めるための技術開発を継続して実施しています。

 

 この他、特定のセグメントに関連付けされない研究開発も実施しています。当連結会計年度における研究開発費は189百万円であり、主な研究開発の状況は次のとおりであります。

 川田工業㈱は、2022年度より国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け、岐阜大学と共同で「大気圧プラズマを利用する新規CO₂分解・還元プロセスの研究開発」を実施し、当連結会計年度をもってプロジェクトは終了いたしました。2025年度からは、3年間をかけて、実用化に向けた新しい研究プロジェクトの受託が決定しています。

 川田テクノロジーズ㈱では、㈱オリィ研究所(本社:東京都中央区、代表取締役:吉藤健太朗)と共同で、外出困難者の社会参加を目指した遠隔操作ロボットの開発を行っています。当連結会計年度には、カワダロボティクス㈱製「NEXTAGE」と㈱オリィ研究所製「OriHime」を使った、遠隔地からの作業が可能な分身ロボットシステム「Tele-Barista」に「Tele-Bartender」としての機能を追加し、実証実験を行いました。今後は分身ロボットカフェでの運用に向けた準備を行い、一般公開を開始する予定です。

 当社グループは、引き続きサステナブル社会の実現に向け、関係機関と協力しながら研究開発を続けてまいります。