第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月24日)において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

 当社グループは経営理念として「医薬品開発のあらゆる場面で常にプロフェッショナルとしての質を提供し、ステークホルダーである製薬会社、医療機関、患者ならびに株主、従業員の幸せを追求する。」を掲げています。これを実現するため、アンメット・メディカル・ニーズが高く、開発難易度の高いがん、中枢神経系、免疫疾患などの特定疾患領域に注力し、大手製薬会社と対等の立場で医薬品開発を実行・支援できる知識・技術・経験を有する、日本発のグローバルCROを目指しています。

 

(2)経営環境及び中期経営ビジョン

 世界の医薬品市場は欧米を中心に拡大が続いており、これに伴いグローバルのCRO市場も拡大が見込まれています。当社グループの主要顧客である国内外の製薬会社は、新薬開発における投資効率を最大化するために、実質的な特許期間、すなわち後発品出現までの期間を最大化するため、国際共同治験を活用し、主要市場国における早期・同時発売を図っています。また、その生命線である新薬の創出のため、自社の研究所以外に大学等との共同研究による創薬研究や、グローバルでの企業統合または買収等により、開発候補品の充実を目指しています。この背景として、これまで主流であった低分子医薬品から抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療、細胞治療へと治療手段であるモダリティが多様化しており、新興バイオ医薬品企業が創薬主体として台頭しています。さらに、新薬のみならずデバイスやアプリなどによる新たな治療方法の開発を行うベンチャー企業も増加しています。

 このような環境を踏まえ、当社グループでは、日本を含むアジア、米国及び欧州で国際共同治験を実施できる体制を整え、海外拠点を拡充することで国内同業他社との差別化を図り、CRO事業の拡大に努めています。また、医薬品が承認された後、製造販売後の臨床研究・調査の受託やマーケティング活動を支援する育薬事業と、創薬段階から薬事・開発戦略策定などのコンサルティング支援を行う創薬支援事業を立ち上げ、創薬段階から臨床開発、製造販売後まで一気通貫で医薬品のライフサイクルマネジメントを支援できる体制を整えています。医師・アカデミアが主導する臨床研究や、これから日本や海外に進出しようとする新興バイオテック企業に対しきめ細かいサービスを提供することで、すでに大口顧客を抱えリソースに制限のある大手グローバルCROとの差別化を図っています。今後さらなる成長を目指し、2022年に設定した中期経営ビジョンにおいて「日本発のグローバルCROとして、クライアントの戦略的パートナーに」なることを掲げ、以下の重点戦略領域に取り組んでいます。

 

① Business Focus

・臨床試験に関わる様々なサービスをグローバル・ワンストップで提供

・臨床試験計画段階と臨床試験のすべてのフェーズを対象とする

・がん・中枢神経系など開発難易度の高い疾患領域や新たな創薬モダリティを活用した新薬・治療法にも対応し高品質・スピーディーなサービスを提供

 

② Client Focus

・大手製薬企業から欧米の有望なバイオテックカンパニーまで幅広いクライアントと長期的かつ戦略的なパートナー関係を構築

・医療機関との良好な関係をベースに、臨床データの品質にコミットするとともに、スピード感・柔軟性をもって提案型のサービスを提供し、クライアント満足を追求する

 

③ Global Coverage

・医薬品の主要マーケット(日本、米国、欧州)を中心に、迅速な臨床データ収集のために幅広い国と地域をカバー

・あらゆる疾患の臨床データを、季節や地域性を問わず迅速に収集するために、南半球を含め戦略的にサービス提供エリアを拡大し、グローバルでのプレゼンスを高めていく

 

(3)経営指標

 当社グループは、中長期的な事業成長と安定的な利益還元のバランスを図り、持続的に企業価値を向上させることを目指し、1株当たり当期純利益(注)を経営指標にしております。

(注)1株当たり当期純利益は、親会社株主に帰属する当期純利益を発行済株式数(期中平均)で除した数値であり、株主価値を形成する重要な指標です。株式の評価指標の一つであるPER(株価収益率)の計算根拠の一つでもあり、PERが一定水準に収束すると、1株当たり当期純利益の向上は株価水準の向上に結び付き、結果として株主価値の向上に寄与するものとなります。

 

(4)事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社グループは、2025年3月期までをグローバル市場におけるさらなる成長に向けた基盤構築のフェーズと位置づけ、海外拠点網の拡充とグループ間の連携強化を推進するとともに、グローバル化を支えるコーポレートガバナンスの強化に取り組んできました。現在、製薬業界は、新興バイオ医薬品企業の台頭による創薬主体の変化、開発候補品をめぐる国際的な獲得競争の激化、ならびに日本国内における薬価等医療費抑制政策の進展など、様々な変化に直面しており、CROをめぐる事業環境もまた、急速に変化しています。こうした変化の激しい環境の中、当社グループは、来期を将来にわたる安定的な収益基盤確立のための転換期ととらえ、米国を中心とした更なる海外事業の拡大、必要な人材の確保・育成とテクノロジーへの投資を行い、以下の重点施策に取り組みます。

 

① グローバル営業戦略の強化

 当社グループは従来、日系大手製薬会社からリピート受注を獲得することで事業を拡大してまいりましたが、積極的な海外進出に伴い、各地域の拠点が連携してグローバルでの情報収集・営業活動を強化することで欧米・アジアの海外企業からの受託が増加しています。特に、有望な開発パイプラインを有する欧米の新興バイオ医薬品企業にフォーカスし、そのニーズにマッチしたきめ細やかな提案を行うことにより、大手グローバルCROとの差別化を図り、顧客基盤を拡大してきました。今後、こうした多様な顧客層から安定的なリピート受注を獲得するため、グローバル営業人材の採用/育成を強化するとともに、グループ間の連携体制をより一層強化していきます。

 

② グループ経営の効率化

 新薬開発のグローバル化と顧客層の多様化に伴い、臨床開発における各種業務をワンストップで委託するニーズが高まっています。新興バイオ医薬品企業や中小規模の製薬企業は、グローバルでの医薬品開発・販売に必要な機能を自社で保有していないことも多く、CROに対し高度な専門性とコンサルティング能力が求められる状況にあります。

 当社グループでは、強みとする治験モニタリング業務に加え、データマネジメント・解析業務を拡充しています。さらに日本への進出を検討している国内外の新興バイオ医薬品企業に対し、創薬支援業務として医薬品市場分析と開発戦略立案、規制当局に対する届出・相談、治験実施計画書や申請関連書類の作成、規制当局への承認申請、共同開発や導出などのパートナリング支援等を行っております。また、医薬品発売後において、競合品との差別化や医薬品の適正使用に資する臨床医療データを収集する臨床研究等の企画から論文作成に至るまで、新薬臨床開発の上流・下流工程においてもサービス提供範囲を拡大しております。

 こうしたサービス拡大を進めながらも収益性を向上させるため、グループ全体での適正な組織体制への変革及び連携強化を進めています。加えて、協業関係の強化による外部リソースの有効活用を図り、多様化する顧客ニーズに柔軟に対応してまいります。

 

③ 海外事業のさらなる成長

 世界最大の医薬品市場である米国とそれに次ぐ欧州において、当社グループは、大手製薬会社に加え新興バイオ医薬品企業との信頼関係を構築し順調に事業を拡大しています。継続して欧米子会社の営業機能を強化し、日本・アジア事業と連携した営業活動を展開することで、グループ全体で受注獲得能力の拡充を図ってまいります。また、当社が拠点を有する中国、韓国、台湾などの製薬・新興バイオ医薬品企業も、自国内での開発に加え、欧米、日本への進出を検討しており、当社のグループネットワークを活用することでこうしたニーズにも対応してまいります。

 加えて、2024年にはオーストラリアに子会社を設立し、南半球においても開発業務を遂行できる体制の構築を推進しています。オーストラリアは、バイオスタートアップ企業への優遇税制を整備しており、特に初期フェーズの治験誘致に積極的であるため、顧客企業からの引き合いが増加しています。オーストラリアでの第Ⅰ相臨床試験の実施後、欧米で大規模な第Ⅱ、Ⅲ相試験を実施して販売承認を取得するケースも多く、大型案件の受注獲得につながる可能性が見込まれます。オーストラリアでの事業を拡大させることにより、顧客企業にとって最適な開発戦略を提案・実行できるグローバルCROとしてのケイパビリティを一層強化します。

 

④ テクノロジーの進化に起因する新薬開発の変化への対応

 近年、AI(人工知能)や分散型臨床試験(DCT)など、デジタル技術の活用が加速し、臨床試験の効率化に対するニーズが高まっています。こうした状況下において、当社グループでは、このニーズに適切に対応するため、必要なシステムの導入検討・推進を積極的に図るとともに、テクノロジーと臨床開発の双方に精通し、その知見を統合的に活用できる人材の採用/育成を強化してまいります。また、自社に不足する機能についてはグローバルな視点での戦略的パートナリングを推進し、必要に応じて内製化を視野に入れることで、多様化する治験効率化ニーズに対応してまいります。

 

 財務基盤の強化

 海外拠点拡充などの中期的成長戦略を迅速・柔軟に実現するためには、当座比率、自己資本比率を高め、調達コストを意識した機動的な資金調達を可能にする必要があります。

 当社グループは、前出の戦略による増収と、高稼働率の維持、コスト管理の徹底により、1株当たり当期純利益の持続的な成長を目指すとともに、株主還元と成長資金の確保の両立に努めてまいります。

 

(5)次期の見通し

① 概要

 当社グループの展開地域における下記の状況に基づき、次期の連結業績見通しにつきましては、売上高11,200百万円(当期比7.3%増)、営業利益300百万円(当期は583百万円の営業損失)、経常利益320百万円(当期は498百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益150百万円(当期は539百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)を見込んでおります。

 

 地域別の状況は下記のとおりです。

 日本・アジア地域におきましては、その主要地域である日本において、ドラッグ・ロス問題に代表されるように厳しい事業環境が続いておりますが、グローバルな営業活動により国内外の製薬企業等からの新規案件の引き合いが増加しており、日本を含む複数の国際共同試験の受注獲得により業績の回復を見込んでおります。韓国は、医療ストライキ等により既存案件の遅延等の影響が継続する一方、日本・台湾等からデータマネジメント・統計解析業務を含む新規案件の受注が増加し収益に貢献し始めており、韓国国内企業から打診を受けている多数の新規案件の獲得により業績改善を目指します。台湾は、台湾国内外の製薬企業への営業活動により複数の新規案件を獲得しており、業績回復を見込んでいます。

 米国におきましては、既存の大型案件が予定どおり終了する見通しですが、米国市場における新薬開発の需要は旺盛で、大型案件を含む多数の新規案件の引き合いがあり、さらに営業活動を強化しこれらを確実に獲得することで受注残高の回復を目指します。米国市場は当社ビジネスの最重要地域であり、他拠点との連携を一層強化するとともに、人材・システム面への投資により受注能力を強化し、持続的な成長を図ります。

 欧州におきましては、米国事業との連携を推し進めたことにより新規案件の受注獲得が進みつつあります。営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、米国企業からの欧州を含む新規案件の受注獲得を拡大してまいります。

 

② 受注残高の推移

 当社グループのCRO事業において受託する治験業務では、1年から3年程度の治験実施期間において、症例数や対象疾患に起因する治験の難易度などにより受託総額が決定します。この実施期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生します。育薬事業においても、同程度の期間についてクライアントと委受託契約を締結し、契約に従い毎月売上が発生します。

 受注残高は、既に契約を締結済みの受託業務の受注金額の残高であります。これは、今後1年から5年程度の期間で発生する売上高を示しており、当社グループの今後の業績予想の根拠となる指標であります。

 

 各地域の受注状況につきましては、以下のとおりです。

 日本においては、ドラッグ・ロス等による厳しい事業環境が続いておりますが、複数の新規案件の獲得や契約変更により、2024年3月期末から受注残高は増加いたしました。なお、上記に含まれない、契約締結作業中の国内製薬会社からの複数の受注内定案件があります。また、大型の国際共同試験を含む新規案件の引き合いが増加するなど営業活動の成果が発現し始めています。アジア地域においても、韓国では医療ストライキの影響等により韓国国内での既存案件の売上計上や新規受注獲得が想定通りに進まなかったものの、台湾や中国からデータマネジメント・統計解析業務を含む複数の新規案件の契約を締結した結果、2024年3月期末から受注残高が増加いたしました。日本・アジア事業と欧米事業が連携し、海外バイオテックに対して日本・アジア市場への進出を提案するなどの営業活動を粘り強く継続してまいります。

 米国においては、既存案件の売上計上が順調に進む一方、受注内諾を得ていた試験の実施が見送りとなるなどの要因により新規案件の積み上げが進まなかった結果、2024年3月期末から受注残高が減少いたしました。既存の大型案件が順調に進捗し完了する見通しである一方、上記受注残高には含まれない複数の契約締結作業中の新規案件があります。また、バイオテックを中心に複数のグローバル案件を含む多数の打診を受けており、受注残高を積み上げるべく、営業活動を強化しております。

 欧州においては、既存案件の期間延長や工数追加の契約変更等による受注の増加がありましたが、既存案件が順調に進捗し売上を計上した結果、2024年3月期末から受注残高が減少いたしました。一方で、米国事業との連携を推し進めたことにより新規案件の受注獲得が進みつつあり、また、上記の受注残高には含まれない契約締結前の案件があります。営業面でグローバル・シナジーをさらに強化することで、欧州を含む新規案件の受注獲得を拡大してまいります。

 

 以上の受注環境のもと、2025年3月期末時点の受注残高は2024年3月期末と比較して3.7%減の117億円となりました。

 

表.受注残高の推移

(単位:百万円)

 

2024年

3月期末

(A)

2025年

3月期末

(B)

増減率

(%)

(B-A)/A

受注残高

12,188

11,737

△3.7

地域別

日本

3,877

4,350

12.2

米国

3,221

2,756

△14.4

欧州

3,655

3,192

△12.6

アジア

1,434

1,437

0.2

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月24日)において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、経営理念のもと「サステナビリティ方針」を策定し、この方針に沿ってサステナビリティ経営を推進してまいります。サステナビリティに関する重要課題に継続的に取り組み、進捗のモニタリングを行い、PDCAサイクルを回していくことで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

 

<サステナビリティ方針>

私たちは創業以来、革新的な医療が求められる疾患領域に注力し、難易度の高い医薬品開発に取り組んできました。経営理念のもと、役員・従業員一人ひとりがプロフェッショナルとして、誠実さをもって企業活動を遂行し、患者様ならびに社会全体の幸せを追求しています。

私たちの存在意義は、医薬品開発の高い専門性とノウハウをもって、世界のヘルスケアカンパニー・医療機関のパートナーとして、新薬を含む新しい疾患予防・治療技術の誕生と成長を支援し、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献することです。

この実現のため、グローバル企業としてコーポレート・ガバナンスをより一層充実させ、ステークホルダーとともに重要課題に取り組み、社会とともに持続可能な発展を目指します。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関する基本方針と取組みに関する討議を行うサステナビリティ委員会を設置しています。委員長は執行役員CAO(Chief Administrative Officer)とし、委員会には執行役員CXO(※1)及び関連部門の責任者が参画して、重要課題(マテリアリティ)に関する重点施策の策定と社内展開、及び進捗状況のモニタリングを行い、サステナビリティの取組みを全社で推進します。

 また、サステナビリティに関する取組状況等は、定期的に取締役会に報告しています。取締役会はサステナビリティ委員会からの報告を受け、当社グループのサステナビリティに対する取組状況について審議・監督を行っています。

(※1)CXO(執行責任者)体制の概要については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に記載しております。

 

(2)戦略

 サステナビリティ委員会においてサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)の検討を進め、国際社会の要請や当社にとって影響の大きい社会的課題を「社会にとっての重要性」と「自社ビジネスにとっての重要性」の2つの視点で評価し、重要度の高い課題を抽出しました。それらについて取締役会を含む社内で討議を行い、経営理念の実現において特に重要度の高い課題として以下の3つのマテリアリティを特定しています。当社グループは、マテリアリティへの取組みを通じて、サステナビリティ方針で目指す持続可能な社会の実現と企業価値の向上を図ります。

<マテリアリティ>

① 革新的な医薬品の開発:Clinical Development Partnerとして、最先端のテクノロジーを活用し、高い専門性とノウハウを世界中のヘルスケアカンパニーに提供することで、新薬を含む新しい治療技術の開発支援とその安全性の確保に努めます。これを実現するため、多様なプロフェッショナル人材を採用・育成し、活躍し続けられる環境整備を進めます。

② 倫理とコンプライアンス:医薬品開発を担うにふさわしい最高水準の倫理感を持ち、世界各国の法規制を遵守し公正で透明性の高い事業活動を遂行します。医薬品開発のあらゆる場面において患者中心の考え方を基に誠実に職務を遂行し、患者の安全・人権の確保と、臨床試験データの信頼性の確保に努めることで医療に貢献します。

③ 将来世代への責任:世代を超えて持続可能な社会の実現に貢献するため、事業活動において、エネルギーをはじめとする資源の有効活用に努めます。また気候変動に対し、適切な対応を推進します。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、企業活動に影響を及ぼす恐れのあるリスクを想定し、問題発生の未然防止に努めると同時にこれに適切に対処するため、リスクマネジメント委員会を設置しています。委員会を構成する執行役員CXOが、担当職務ごとに海外グループ会社横断でのリスク抽出・評価、回避策・対応策の評価を行い、リスクマネジメント委員会においてその確認と、重要リスクの評価及びモニタリングを行います。

 上記リスクの検討内容については、取締役会及びサステナビリティ委員会においても情報共有が行われ、サステナビリティ委員会において全社に係るサステナビリティ関連の重点施策の策定と社内展開及び進捗状況のモニタリングを行うことで、全社におけるリスク管理の強化を図ります。

 なお、当社グループにおけるリスクマネジメントの取組みについては「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(4)指標と目標

 マテリアリティごとに指標と目標を設定すべく、取組みを進めています。現在の状況は以下のとおりです。

① 革新的な医薬品の開発

 CROとして医薬品の臨床開発業務受託を主要事業とする当社グループにおいて、革新的な医薬品の開発は事業そのものを通じて取り組む重要な社会課題と位置付けています。当社グループは、アンメットメディカルニーズが高く治験の難易度が高い特定疾患領域に注力するという経営方針のもと策定した、中期経営ビジョン及び2025年3月期を最終年度とする中期経営計画の遂行を通じてこの課題に戦略的に取り組んできました。策定中の中期経営計画においても地域ごとに注力領域を特定し、その実現のために必要な経営資源の拡充を進めます。この重要課題に対処するために最も重要な人的資本については、人材の多様性の確保を含む人材育成・社内環境整備の方針及び指標と目標を以下のとおり定め、拡充を進めています。

 

<人材育成・職場環境整備方針>

 医薬品開発のプロフェッショナルとしてグローバルにサービスを提供する当社グループにとって、社員こそが価値創造の源泉です。変化の激しいヘルスケア業界において、グローバルに事業を拡大し、持続的に企業価値を向上させるためには、多様な経験をもつ人材がそれぞれの能力・特性を最大限に発揮し、活躍し続けられることが重要です。

 そのために、プロフェッショナルとして変革の時代に飛躍できる人材を育成し、社員一人ひとりがその能力・特性を最大限に発揮し、自身の幸せを追求できる場を提供します。

 さらに、グローバル企業として持続的な成長を実現できる次世代の経営者の育成を進めます。

 

<指標と目標>

 革新的な医薬品開発を実現するために必要な人材が長く働き続けられるかどうか、また、効率的に実行できているか生産性を測る指標として以下を設定しております。

指標

目標

2025年3月期実績

離職率

連結:15以下

単体:10%以下

連結:15.9

単体:14.1%

人員稼働率

原価人員一人ずつの、規定労働時間に対する有償稼働時間の割合と、顧客との契約における計画時間と実労働時間の割合の2つの指標を月次でモニタリングし、短時間で効率的に成果を創出する社員の比率を継続的に改善

 この目標に向けた取組みとして、当事業年度においては、日本において従業員エンゲージメントサーベイの導入と工数管理システムの刷新を行い、データに基づいた人材マネジメントへの変革を進めています。引き続き目標の達成に向けた取組みを進めてまいります。

 

② 倫理とコンプライアンス

 当社グループは執行役員CCO(Chief Compliance Officer)と倫理・コンプライアンスのグローバル責任者を共同議長とするコンプライアンス委員会を設置しており、委員会においてコンプライアンスに関するガバナンスとリスク管理、及び重要課題への対応を行います。

 コンプライアンスに関する基本方針として企業行動規範及び倫理・コンプライアンスプログラムを共有し、継続的に教育・啓蒙活動を行うことにより、役員及び従業員の倫理・コンプライアンスの意識の向上を図っております。さらに、ホットライン窓口を設け、コンプライアンス問題の未然防止・早期発見に努めております。

 コンプライアンス委員会は5つの倫理・コンプライアンスに係る指標(※2)に基づき、必要なデータの収集と分析を行い、コンプライアンスプログラムの遵守・浸透状況を確認し、必要な対策を講じております。その内容については取締役会に報告しております。

(※2)5つの倫理・コンプライアンスに係る指標:コンプライアンス研修の修了率、コンプライアンス文化と知識の浸透率、倫理報告の件数、行動規範違反による違法または不適切な行為の件数、コンプライアンスリスク評価の実施状況

 

③ 将来世代への責任

 当社グループは「リニカルグループ環境基本方針」を定め、資源の有効活用と気候変動に向けた取り組みを進めています。気候変動に起因する社会・環境問題は喫緊の課題と認識し、温室効果ガスの排出削減目標を定めその達成に向けた活動を進めるとともに、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の考え方に準拠しながら、必要なデータの収集と分析を行っています。

 

・ ガバナンス

 当社ではサステナビリティ委員会において、気候変動に関する戦略策定とモニタリングを行い、その内容を取締役会に報告しています。取締役会はサステナビリティ委員会からの報告を受け、当社グループの気候変動に対する取組状況について審議・監督を行っています。

 

・ 戦略

 当社グループは、医薬品のサプライチェーンの一部を担う企業としてGHG排出量の把握と削減を重要な課題ととらえており、パリ協定が目指す脱炭素社会の実現に向けた取組みを進めています。自社のサプライチェーンにおけるGHG排出量の全体像を把握するため、GHGプロトコルに基づき、スコープ1、2、3の排出量の測定とモニタリングを行っています。また、温室効果ガスの排出削減目標を策定し、これがパリ協定が求める「世界の気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑えることを目指す」ための科学的な根拠に基づくものであるとして、2025年5月にSBTi(Sience Based Target initiative)(※3)より認定を受けました。今後、目標達成に向けた取組を進めてまいります。

 気候変動の機会とリスクについては、サステナビリティ委員会において、当社グループの顧客である製薬企業のシナリオ分析を参照し、モニタリング業務の受託など臨床試験関連サービスの提供を主体とする自社ビジネスモデルにおける影響を確認しています。製造設備を持たず原材料調達を必要としない当社グループにおいて、カーボンプライシングや規制強化などによるコスト増加などの移行リスクの事業への影響度は大きくないと評価しております。一方で、物理リスクと機会としては、下記を認識しそれぞれ対応を進めています。

物理リスク

機会

大規模自然災害の発生によるエネルギー・通信網の遮断等による事業拠点の一時的な操業停止

熱帯病、新興感染症の流行に対する顧客(製薬関連企業)の新薬開発の増加

新興感染症の流行による操業度の低下

 上記の物理リスクに対応するための事業継続計画(BCP)を策定済みであり、継続的に見直しと訓練を実行しています。また、上記の疾患に対する治療薬の開発に貢献するため、東南アジアや南半球を含む拠点の拡充を進めてまいります。

(※3)SBTi(Science Based Targets initiative)は、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の4つの機関が共同で運営し、パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標を設定することを推進しています。

 

・ リスク管理

 気候変動リスクに関してはサステナビリティ委員会において当社グループのGHG排出リスクの分析を行い、適宜リスクマネジメント委員会に対し提言とモニタリングを行います。

 

・ 指標と目標

 SBTiより認定された温室効果ガス(GHG)排出量削減目標は以下のとおりです。

スコープ1&2

スコープ2の温室効果ガス排出量を2034年3月期までに2023年3月期を基準年として58.8%削減する。

スコープ3 カテゴリー1&6

2029年3月期までに、購入した製品・サービス及び出張に関係するサプライヤーの75%が科学的根拠に基づく削減目標を設定するようエンゲージメント活動を行う。

 

 

 2024年3月期のサプライチェーン排出量(スコープ1,2及び3)の実績は下記のとおりです。

分類

内容

実績(t-CO2e)

スコープ1

事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

0.0

スコープ2

他社から供給された電気の使用に伴う間接排出

324.0

スコープ3

スコープ1,2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

5,310.8

(内訳)

 

 

カテゴリー1

購入した製品・サービス(オフィスの賃貸、インターネット付随サービス等)

3,528.7

カテゴリー2

資本財

360.6

カテゴリー3

スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動

61.9

カテゴリー4

輸送、配送(上流)

11.5

カテゴリー5

事業から出る廃棄物

1.1

カテゴリー6

出張

1,269.7

カテゴリー7

従業員の通勤

66.5

カテゴリー8

リース資産(上流)

10.9

スコープ1,2,3合計

5,634.9

注1:Scope2はマーケット基準にて報告

注2:当事業年度の実績はWEBサイト(https://www.linical.com/ja/about/sustainability/esg-data)で開示予定です。

 

 

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

 当社グループは、企業活動に影響を及ぼす恐れのあるリスクを想定し、問題発生の未然防止に努めると同時にこれに適切に対処するため、リスクマネジメント委員会を設置しています。これにより、災害、不正、情報漏洩などの事業遂行リスク及び持続的な事業成長を阻害するような環境変化や機会損失などの事業機会リスクの抽出・評価の妥当性と回避策・対応策の実効性に対する評価・モニタリングを行っています。また、これらのリスク管理状況は取締役会に定期的に報告しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月24日)において当社グループが判断したものです。

 

(2)重要リスク

 上記体制に基づき、各リスクを発生の頻度とダメージ(損害金額)の大きさによりそれぞれ5段階で評価し、重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるリスクを重要リスクとしてその対応策の強化に注力しています。中でも特に重大な影響があると判断したリスクは以下のとおりです。

 

① 特定の顧客への売上割合の高さに関するリスク

 当社グループは、医薬品開発を行う企業から業務を受託しサービスを提供しています。特定の顧客への売上が全体に占める割合が高くなりすぎた場合には、その顧客が当社グループに委託中のプロジェクトを中止・キャンセルした場合に、CRAの稼働率が低下すること等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 引き続きこうしたリスクへの対応として、グローバルビジネスの拡大及び創薬支援事業など顧客のニーズの変化に応じた対応業務の拡大により、新興バイオ医薬品企業のみならず医療機器ソフトウエア(SaMD)開発企業の需要の取り込みを図るなど新規顧客を開拓し、顧客基盤の拡大に努めます。

 

② CRO業界内の競争激化に関するリスク

 欧米グローバルCROの日本事業拡大や他社CROが行う低価格戦略に伴う価格競争の激化等により、受託件数の減少や受託契約価格の下落が起こった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 こうしたリスクへの対応として、当社グループでは、国内外の製薬会社や新興バイオ医薬品企業の新規性の高い開発品や難易度の高い疾患領域へ注力し、優秀な人材の確保・育成を通じて、迅速かつ高品質にグローバルワンストップで受託業務を遂行することにより、同業他社との差別化を図ってまいります。

 

③ 国内における治験の海外シフトに関するリスク

 医薬品開発の国際競争は益々過熱しており、主要市場国で迅速に承認を取得し収益を最大化するために、グローバル開発は製薬会社の基本的な戦略となっております。当社グループの想定を大きく超えるスピードで治験環境のグローバル化と海外シフトが起こり、日本国内で行われる治験の規模・数が急速に減少するような場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 こうしたリスクへの対応として、当社グループでは日本以外にも米国、欧州、豪州、アジアに自社拠点を展開しています。また、自社拠点を有しない国においては、短期的には他社CROと協業体制を構築するとともに、自社拠点設立による内製化を検討し、グローバル受託体制の拡充による国際共同治験への対応力の向上や、海外子会社の受注獲得力向上を通じた海外売上比率の拡大を進めています。

 

④ 治験の委託件数減少・規模縮小のリスク

 当社グループの主要顧客である製薬会社の医薬品開発戦略の変更(重点領域・開発品目の大幅な見直し、他社との共同開発・ライセンス契約締結促進、及びこれらに伴う内製化や外注方針の見直しなど)により、当社グループへの委託件数が減少する可能性があります。また、新薬開発の難易度上昇や競争激化に伴い、開発プロセスの効率化による迅速化やコスト抑制ニーズが高まっており、リアルワールドデータの利活用やDXの進展等による開発効率化が想定以上の速さで進展する場合には、当社グループへ委託する治験の規模が縮小し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 こうしたリスクへの対応として、当社グループでは、国内外の製薬会社・新興バイオ医薬品企業などの新規顧客開拓による顧客基盤の拡大に加え、分散型臨床試験(DCT)などに必要な自社で保有しない機能については、グローバルでパートナリングを拡大しております。今後、ニーズ・市場動向に応じて内製化を検討することにより、多様化する治験効率化ニーズにも対応してまいります。

 

⑤ 人材獲得に関するリスク

 当社グループは、顧客から臨床試験にかかる業務を受託し、主に人的サービスを提供しています。このため、受託した試験規模に応じた人員数が確保できない、または疾患領域や業務内容に対応できる専門性を持つ人材をタイムリーに獲得できない場合、試験を受託できないリスクがあります。特に大規模試験が多く行われる米国においては人的資本への投資が遅れることによるリスクの影響度は他の地域に比べ高いと判断しています。

 こうしたリスクへの対応として、人員の定着率を高めるエンゲージメント活動を継続しているほか、日米欧での工数管理システムの刷新などにより人材配置の精度を高め、採用の遅れ等を防ぐ対応を進めています。

 

⑥ 関連法規制の不遵守によるリスク

 当社グループが受託する業務の実施等において、関連する諸法令に対して重大な違反の事実があった場合に、その委託者である製薬会社に損害を与え、当社グループが損害賠償の責めを負うとき、または、委託者以外の製薬会社からも信用を失ったときは、訴訟の提起や受託件数の減少により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 こうしたリスクへの対応として、リスクに基づく品質管理プロセスを確立し、定期的に業務手順を見直すことで、業務品質の確保に努めています。また、従業員に対しても業務品質に対する意識向上を目的に継続的な事例研修を行っています。

 

⑦ 情報セキュリティに関わるリスク

 医薬品の開発業務において情報のデジタル化が進展する中、当社グループにおいてもこれまでITセキュリティの強化を随時実施しておりますが、その想定を超えたサイバー攻撃などにより、当社グループのITを利用したサービスの障害や情報漏洩が起こった場合に、当社の事業運営並びに、顧客や治験実施施設の業務に重大な影響を与えるリスクがあります。

 こうしたリスクへの対応として、以下のとおり、外部専門家から指導・助言を得て、情報セキュリティをより一層強化しております。

<基本的な考え方とガバナンス体制>

 当社グループは、医薬品開発を担う企業として情報セキュリティの重要性を深く認識しており、「情報セキュリティ基本方針」を定め、海外子会社を含む全グループで情報セキュリティの維持に取り組んでいます。

 当社グループは、執行役員CIO(Chief Information Officer)がITに関するグループ全体のリスク管理と戦略の策定・実行を担い、代表取締役社長執行役員CEOへ直接報告を行っています。情報セキュリティに関しては、執行役員CIOの配下にあるCISO(Chief Information Security Officer)を最高責任者とし、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)推進体制をグループ全社で構築し運用しています。監督機能としては、経営全般に関するガバナンスの一環として取締役会が最終的な監督責任を担っており、特に情報セキュリティについては重要リスクとしてその対応状況がリスクマネジメント委員会を通じて定期的に報告されています。

<対策>

 上記の基本的な考え方とガバナンス体制の下、ISMSにおいて定期的に情報セキュリティリスクの特定と分析を行うとともに、顧客等ステークホルダーからの要求や法令等の規制を考慮して情報セキュリティに関する手順と組織的、人的、物理的、技術的セキュリティ対策を整備し運用することでリスク低減を行っています。また災害やインシデント発生時に迅速に復旧や報告・対応できる手順を整備しています。こうした手順の周知とサイバー攻撃を含む情報セキュリティリスクに関する従業員一人一人の対応レベルを高めるため、定期的に全社員を対象とした様々な研修を実施しています。なお、グループ全社を適用範囲としたISMSについて、独立した第三者機関であるNSF-ISRを通じて国際的な認証制度であるISO/IEC27001認証を2024年3月期に取得し維持しています。

 今後も継続的にISMSの運用とその有効性評価により情報セキュリティの維持・強化に取り組んでまいります。

 

⑧ 個人情報の不適切な取扱いに関するリスク

 当社グループが受託・実施した臨床試験等において、個人情報の流出や漏洩、不正利用などが発生した場合において、当社グループが委託者である製薬会社から損害賠償の責めを負うとき、または、その情報の流出により委託者以外の製薬会社からも信用を失ったときには、訴訟の提起、もしくは受託件数の減少により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 こうしたリスクへの対応策として、ISO/IEC27001に適合した情報マネジメントシステム(ISMS)の運用に加えて個人情報保護法ほか各国関連法令に基づき個人情報保護に関する手順を整備し、個人情報保護に関する全社員への研修及びマネジメントクラスやグループ会社を対象とした階層別の研修等を定期的に実施し、発生リスクの低減に努めています。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

(1) 財政状態

 当連結会計年度末における財政状態は、資産合計については、前連結会計年度末と比べ1,764百万円減少し、16,775百万円(9.5%減)となりました。負債合計については、前連結会計年度末と比べ783百万円減少し、9,521百万円(7.6%減)となりました。純資産合計については、前連結会計年度末と比べ981百万円減少し、7,253百万円(11.9%減)となりました。

 

(2) 経営成績

 当連結会計年度の経営成績につきましては、米国が前期比で増収となる一方で、日本・アジア地域が前期比で大幅な減収となったことにより、連結の売上高は10,437百万円(前期比15.2%減)となりました。利益面では、日本・アジア地域が大幅な減収により営業赤字となったことから営業損失は583百万円(前期は725百万円の営業利益)、受取利息や為替差益の計上により経常損失は498百万円(前期は790百万円の経常利益)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は539百万円(前期は338百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

 地域別の状況は下記のとおりであります。

 日本においては、下期に国内外の顧客から日本での大型試験を複数受託したものの、前期に複数の大型既存案件の中止や期間短縮の契約変更が発生したことによる当期売上への影響を挽回できず、前期比で大幅な減収、営業赤字となりました。日本の製薬・治験業界ではドラッグ・ロスが深刻な社会課題となっており厳しい市場環境が続いていますが、当社では欧米及びアジア事業と連携して海外企業への営業活動を継続することで受注を獲得し、受注残高が積み上がりつつあり、翌期以降の売上高への寄与を見込んでいます。引き続き人員稼働率向上のための施策の遂行と販管経費の徹底した見直しを行い業績改善に努めます。

 米国においては、受注した業務が想定通り進捗し順調に売上を計上したことに加え、追加作業発生による契約変更等もあり、前期比で増収となりましたが、人件費や外注費の増加等もあり減益となりました。引き続き有望な米国CRO市場の深耕に注力し、持続的な成長を図ってまいります。

 欧州においては、米国事業との連携を進め、営業体制を強化したことによる営業面での成果を発揮しつつありますが、当期の売上増加に寄与するまでには至らず前期比で減収、営業赤字となりました。受注拡大に向けグループで連携した営業活動に注力してまいります。また、バックオフィス業務の効率化を進め収益改善に努めます。

 韓国においては、医療ストライキの影響が大きく、既存案件の契約変更による売上の減少に加え複数案件の進捗遅れにより、前期比で大幅な減収、営業赤字となりました。しかしながら、日本・アジア地域事業と連携することでグループ企業経由の国外企業からの多数の受託に成功しており、これらのデータマネジメントなどの関連サービスを含む新規案件の進捗などにより、第4四半期において黒字化を達成しています。引き続き厳しい環境が続く可能性はあるものの、国内外企業からの受注獲得に向け営業活動を進めてまいります。

 中国においては、既存案件の終了に伴う売上減少等により前期比で減収となりましたが、原価低減により営業赤字は縮小しております。日系中堅製薬企業の中国市場への関心が高まっており営業活動を継続した結果、新規案件を受託しており、翌期以降の売上への貢献を見込んでいます。

 台湾においては、新規案件の獲得に苦戦し、前期に発生した既存案件の中止や終了の影響等を穴埋めすることができず前期比で減収となり、営業赤字が拡大しました。しかしながら、台湾国内案件の受注内諾を得るなど、営業面で改善の兆しがみられます。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

① CRO事業

 当社グループのCRO事業につきましては、売上高は9,921百万円(前期比14.1%減)、営業利益は1,499百万円(前期比44.8%減)と減収減益となりました。

② 育薬事業

 当社グループの育薬事業につきましては、売上高は515百万円(前期比32.2%減)、営業損失は66百万円(前期は148百万円の営業利益)と減収減益となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より425百万円減少し、7,039百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において営業活動の結果獲得した資金は、595百万円(前連結会計年度は1,065百万円の獲得)となりました。これは、主に税金等調整前当期純損失512百万円の計上及び法人税等の支払額446百万円があったものの、売上債権及び契約資産の減少額658百万円、立替金の減少額418百万円、預り金の増加額506百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は、45百万円(前連結会計年度は28百万円の使用)となりました。これは、主に長期前払費用の取得による支出25百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度において財務活動の結果使用した資金は、939百万円(前連結会計年度は960百万円の使用)となりました。これは、主に長期借入金の返済による支出493百万円及び配当金の支払額338百万円があったことによるものであります。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当社グループの業務には生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

② 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

CRO事業

9,874,248

23.7

11,398,879

△4.1

育薬事業

546,463

△6.7

338,498

9.9

合計

10,420,711

21.6

11,737,377

△3.7

 

③ 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

CRO事業  (千円)

9,921,145

△14.1

育薬事業   (千円)

515,887

△32.2

合計   (千円)

10,437,032

△15.2

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

PFIZER, INC.

1,907,313

15.5

2,154,466

20.6

エーザイ株式会社(注)

1,419,469

11.5

(注)当連結会計年度は販売実績が10%未満のため、記載を省略しております。

 

2.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(2025年6月24日)において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、引当金の計上等見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っております。ただし、将来に関する事項には不確実性があるため、実際の結果はこれら見積りと異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 当連結会計年度の財政状態の分析

① 資産の部

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末と比べ1,764百万円減少し、16,775百万円(9.5%減)となりました。これは、主に現金及び預金、売掛金及び契約資産、立替金、のれんの減少によるものであります。

② 負債の部

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末と比べ783百万円減少し、9,521百万円(7.6%減)となりました。これは、主に預り金が増加する一方、未払金、未払法人税等、長期借入金が減少したことによるものであります。

③ 純資産の部

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末と比べ981百万円減少し、7,253百万円(11.9%減)となりました。これは、主に利益剰余金の減少によるものであります。

 

(3) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

 当社グループの当連結会計年度の売上高は、「1.経営成績等の状況の概要 (2)経営成績」に記載の要因により、前連結会計年度に比べ1,870百万円減少し、10,437百万円(前期比15.2%減)となりました。

② 売上原価

 当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べ468百万円減少し、8,061百万円(前期比5.5%減)となりました。

③ 販売費及び一般管理費

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ93百万円減少し、2,959百万円(前期比3.1%減)となりました。

④ 営業損益

 当連結会計年度の営業損失は、「1.経営成績等の状況の概要 (2)経営成績」に記載の要因により、583百万円(前期は725百万円の営業利益)となりました。

⑤ 経常損益

 当連結会計年度の経常損失は、「1.経営成績等の状況の概要 (2)経営成績」に記載の要因により、498百万円(前期は790百万円の経常利益)となりました。

⑥ 税金等調整前当期純損益

 当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は、512百万円(前期は660百万円の税金等調整前当期純利益)となりました。

⑦ 親会社株主に帰属する当期純損益

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は、539百万円(前期は338百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については「1.経営成績等の状況の概要 (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

② 財務政策及び資金の流動性についての分析

 当社は、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元のバランスの最適化を図ることを重要施策と位置づけ、株主の皆様からお預かりした資本に対して如何に報いるかという視点に立ち、業績を勘案した配当施策を行い、安定的に利益還元に努めてまいります。

 内部留保金につきましては、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資として活用し、中長期的な成長による企業価値向上を通じて株主の皆様の期待にお応えしてまいります。

 当社グループの資金需要のうち主なものは、従業員給付費用のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、将来の事業発展に必要不可欠な成長投資としてのM&Aによる企業買収等のための資金であります。

 当社は、事業活動のために適正な流動性の維持及び効率的な資金の確保を基本方針としており、主に営業活動から得た資金を財源とし、必要に応じて短期または長期の借入による資金調達を実施することとしております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は2,415百万円、現金及び現金同等物の残高は7,039百万円となっております。また、当社の資金の流動性については、十分な余剰資金に加え、国内金融機関との間で合計2,500百万円の当座借越枠を設定し、当社グループの資金の流動性を補完しております。

 

(5) 経営成績等に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、中長期的な成長による企業価値向上と利益還元バランスの最適化を図ることを重要施策と位置付け、安定的な利益還元の源泉となる1株当たり当期純利益を目標とする経営指標にしております。

 当連結会計年度の1株当たり当期純損失は23.87円となりました。これは、「1.経営成績等の状況の概要 (2)経営成績」に記載の要因により、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことによるものであります。

 1株当たり当期純利益の2025年3月期までの実績値及び2026年3月期の計画値は、次のとおりであります。

経営指標

2022年

3月期実績

2023年

3月期実績

2024年

3月期実績

2025年

3月期実績

2026年

3月期計画

1株当たり当期純利益又は

1株当たり当期純損失(△)(円)

35.00

44.47

14.98

△23.87

6.64

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。