第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 中長期的な会社の経営戦略並びに会社の対処すべき課題

 当社グループは、2022年度に6ヵ年の中期経営計画Vista2027を始動しました。

前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにおいて、最終年度の2024年度営業利益は568億円と最高益を更新しましたが、数値目標に対して未達となりました。その要因を分析し、主要課題は新製品・新事業の創出、適切な経営資源配分、化学品セグメントの収益性改善であると捉えました。

これらの解決に向け、M&A(合併・買収)を含め戦略投資を積極的に行うことで、事業ポートフォリオの拡充、現有事業の拡大および製品開発期間の短縮を図ります。

また、化学品セグメントでは、2024年度にサブセグメントであるファインケミカルの固定資産を減損処理しました。2025年度以降、不採算製品の見極めや種々のコストダウンをさらに進め、2027年度には営業利益率5%以上を確保します。

 

2025年4月、当社グループは、後半3ヵ年(2025年度~2027年度)にあたるStageⅡをスタートさせました。最終年度(2027年度)の数値目標を売上高2,930億円、営業利益650億円と定め、最重要課題を新製品の創出としたうえで、基本戦略として次の3つを掲げました。

(1)「現有事業の利益拡大」

(2)「2030年を見据えた新製品の開発」

(3)「事業基盤の強化」

 

第1の戦略「現有事業の利益拡大」では、成長が見込まれる機能性材料および農業化学品セグメントへM&Aを含めて経営資源を集中的に投下し、既存製品や新製品の販売・開発を進め、利益の最大化を図ります。

戦略の具体的施策として、機能性材料セグメントでは、半導体材料の次世代製品創出に呼応した組織改定を2025年4月に行いました。今後、研究部門を中心に段階的に人員や評価設備を増大、かつ半導体向け研究・開発の機能を拡充し、顧客満足度の高い製品・サービスを提供します。

農業化学品セグメントでは、2027年までに当社開発原体を含む農薬新製品(除草剤2種、殺ダニ剤1種、殺虫剤1種)を相次ぎ上市し、国内販売シェア1位を堅持することに加え、海外向け販売をさらに伸ばします。

化学品セグメントでは前述の施策に加え、高収益性製品の普及拡大、ヘルスケアセグメントではファインテック事業での原薬増販および新規原薬の受託製造販売に取り組みます。

 

第2の戦略「2030年を見据えた新製品の開発」では、2028年度以降を視野に入れ、新たな成長の柱となる製品創出を目指します。

環境エネルギー領域では、二次電池材料、水素エネルギー材料やペロブスカイト太陽電池用材料などの創出に注力します。

情報通信領域では、ターゲット材料を明確化し、半導体向けの実装材料、光導波路材料、電子機器放熱材およびCIS(CMOSイメージセンサー)や位相差フィルム用配向材の開発を加速します。

ライフサイエンス領域の創薬研究では、新規動物薬の創出加速に向け有機合成研究員を増員するとともに良好関係にある協業先とパートナーシップを高めた共同研究開発に合意しました。また、新農薬原体や核酸医薬品創出の開発ステージアップに注力するとともに、将来有望なバイオ分野については、新たなコア技術の獲得、外資企業との協業を推進します。

 

第3の戦略「事業基盤の強化」では、当社グループの企業理念およびあるべき姿の実現のため、人材育成を推進し、研究開発の基盤や機能を拡充します。

人材育成では、挑戦・共創を実践する人材、目利き力を備えた人材輩出の基盤となる組織風土づくりのため、人材開発の本質は「社員一人ひとりが自発的に自己研鑽を積み、自己の成長を図ること」と認識し、研修制度を充実することで社員をバックアップします。また、データサイエンティストの育成、マテリアルズ・インフォマティクス(データ駆動型研究)による素材・材料の探索、最先端技術を活用した解析技術などを通して、事業を支える研究開発の基盤や機能の増強および早期化・効率化を図ります。加えて、IPランドスケープによる市場分析などにより、知的財産の面から事業拡大を支援し、事業の競争優位性を向上するための特許戦略を実行します。

 

StageⅡでは、前述の戦略遂行に加え、持続可能な社会に貢献するため、当社のマテリアリティ(重要課題)要素の重要業績評価指標(KPI)である、「日産化学サステナブルアジェンダ(社会課題解決に貢献する製品・サービス)の連結売上高に占める割合」の2027年度目標を60%以上へ、「食料問題への貢献」の2027年度目標を2021年度比+25%以上へ、それぞれ引き上げました。「気候変動の緩和」に資する温室効果ガス排出量削減においては、StageⅡ期間内に、硝酸プラントから排出する亜酸化窒素の削減設備を完工し、2027年度までに2018年度比で30%の削減を実現します。

 

当社グループは、これまで安定した業績と積極的な株主還元などにより、市場から一定の評価を得てきたと認識しています。より一層期待される企業へと成長戦略を描き、強固な事業ポートフォリオの確立を目指すことに加え、経営の健全性と透明性の向上、経営意思決定の迅速化、リスク管理や内部統制システムの強化、コンプライアンスの徹底、社会・環境を配慮した事業活動の推進を通し、すべてのステークホルダーから信頼される企業グループの実現に総力を挙げて取り組んでまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、株主からの受託資本の運用効率を示す指標である「自己資本当期純利益率(ROE)」、高付加価値企業としての指標となる「売上高営業利益率」を最重要指標と認識し、今後も収益力の一層の強化に向けた事業展開を推進してまいります。

なお、2025年4月に始動した中期経営計画「Vista2027 StageⅡ」では、数値目標を以下のように定めております。

 

非財務指標

気候変動の緩和

温室効果ガス(GHG)排出量2018年度比30%以上削減

ダイバーシティの推進

研究員に占める女性総合職比率18%以上

人々の豊かな暮らしに役立つ新たな価値の提供

連結売上高に占める社会課題解決に貢献する製品・サービスの合計売上高60%以上

人材の確保・育成

社員意識調査の設問、人材育成に対する肯定回答者65%以上

 

 

経営指標

売上高営業利益率

ROE

配当性向

総還元性向

20%以上

18%以上

55%以上

75%以上

 

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ推進体制

当社グループは、「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」を企業理念としています。この企業理念に基づき、2050年のあるべき姿「人と自然の豊かさを希求し成長する未来創造企業」「強い情熱で変革に挑む共創者集団」を定めた長期経営計画『Atelier2050』を策定し、「事業領域の深耕と拡大」「サステナブル経営の深化」「経営・業務基盤の変革」を基本戦略として進めています。また、『Atelier2050』に定めたあるべき姿へ至る通過点として、2027年の姿を示し、持続的成長の道標とする中期経営計画『Vista2027』を策定し、その達成に向けた基本戦略の1つとして、サステナブル経営を推進しています。

 

①ガバナンス

著しい環境変化のなか、当社グループは、企業理念の実践であるサステナビリティ活動をより一層充実させるために、「社会動向に合致したサステナビリティ戦略の立案と社内啓蒙ならびに情報の発信」をミッションとするサステナビリティ・IR部サステナビリティグループを設置しています。また、グローバルな社会課題により戦略的に取り組むため、サステナビリティグループを事務局とし、部門担当役付執行役員をメンバーとするサステナビリティ委員会を年2回定期的に開催し、サステナビリティに関する方針、マテリアリティの選定、長中期計画および年次計画、活動結果の評価および評価に基づく改善および検討すべき課題について審議しています。審議の結果は経営会議の承認を経て、取締役会に付議されます。

サステナビリティ推進体制として、サステナビリティ委員会のほか、気候変動対策委員会、リスク・コンプライアンス委員会、環境安全委員会、品質保証委員会を設置し、各委員会で審議した内容について取締役会で議論し、決議することで、取り組みを監督しています。

 

 

 


 

②リスク管理

リスク管理活動全般について継続的改善を推進する専門組織として、経営企画部リスク・コンプライアンス室を設置しています。また、リスクマネジメントの実効性をより高めるとともに、コンプライアンスを維持向上、推進するための機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、年2回定期的に開催しています。リスク・コンプライアンス委員会は取締役会が指名するCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)を委員長とし、CROが指名する各部門、箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者から構成されています。

各部門の事業特性やグローバルな政治・経済・社会情勢など、ビジネスを取り巻く環境を考慮して、リスク・コンプライアンス委員会の枠組みのなかで気候変動関連リスクを含むリスクの洗い出しを実施しています。洗い出したリスクについて、発生可能性と事業への影響度の観点からリスク評価を実施したうえで、リスク評価結果に基づくリスクマップを作成し、「グループ重要リスク」を選定しています。

「グループ重要リスク」やその対策等、リスク管理に関する重要事項については、リスク・コンプライアンス委員会で審議し、取締役会で決議されます。

 

 

③戦略

長期経営計画『Atelier2050』にて定めた、2050年のあるべき姿「人と自然の豊かさを希求し成長する未来創造企業」「強い情熱で変革に挑む共創者集団」を実現するため、取り組むべきマテリアリティを2022年度に見直しました。社会と当社グループの持続的発展を目指し、中期経営計画『Vista2027』で設定した2027年度までのKPIをサステナブル経営の指標として、その進捗を毎年管理しています。

 

<マテリアリティ特定プロセス>



 

④指標と目標

<マテリアリティへの取り組みとKPI>(StageI)


* GHG排出量については、2023年度の実績を記載しております。2024年度の実績については2025年夏頃に当社webサイトにて掲載予定です。

 

 

StageⅡにおいて、下記マテリアリティ要素については2027年度目標を変更する。

マテリアリティ要素

2027年度目標

2024年度実績

スマート社会への貢献

●売上高:21年度比 +60%

●+33%

食料問題への貢献

●売上高:21年度比 +25%

●+27%

日産化学サステナブルアジェンダ

●60%以上維持

●60%以上維持

研究開発力の強化

●インフォマティクス活用テーマ率≧10%

●特許発明数:1200件(22~27年度累計)

サステナブル調達の推進

●サステナブル調達アンケート回答率:90%以上

●42%

労働安全衛生の推進

●休業災害:0件

●休業災害:1件

生物多様性への取り組み

●自然共生サイト登録数≧2

●国有地サポート≧5,000m2

産業廃棄物・汚染物質の排出削減

●外部埋め立て量:21年度比50%削減

●40.4%削減

 

 

 

(2)気候変動

①ガバナンス

当社グループの気候変動対応に関する取り組みは、サステナビリティ委員会、気候変動対策委員会、リスク・コンプライアンス委員会、環境安全委員会にて、検討・審議しており、審議内容を取締役会で議論・決議することで、取り組みを監督しています。なお、生物多様性を含む自然資本は気候変動に大きく関係することから、気候変動対策委員会の検討・審議事項としています。

自然関連のステークホルダーエンゲージメントの取り組みとしては、ステークホルダーの人権について人権方針に定めており、リスク評価(デューデリジェンス)も行っています。リスク評価においては、健康と安全、天然資源の利用(水資源含む)といった自然関連の指標を含んでおり、「地域社会の健康と安全」を対策優先リスクに挙げて対策を強化しています。対策としては、安心安全な工場であることをご理解いただくため、地域住民・近隣学校を対象とした工場見学会や説明会を継続的に実施するといった地域住民との交流を行っています。

 

②リスク管理

「(1)サステナビリティ推進体制 ②リスク管理」をご参照ください。

 

③-1気候変動に関する戦略

TCFD提言では、気候変動に起因するリスク・機会が企業の財務にどのような影響を及ぼすかを把握するため、シナリオ分析*を行うことを求めています。

当社は2020年に、脱炭素社会への移行が実現する2℃シナリオ(移行リスクが顕著)と気候変動が進展する4℃シナリオ(物理的リスクが顕著)における事業リスク・機会の選定、重要性の検討を行い、当社への影響と戦略などについて整理しましたが、2021年に行われた国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)において、平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求することが合意されたことをうけ、2023年7月にシナリオ分析の見直しを実施しました。

1.5℃シナリオを用いたシナリオ分析・財務影響の定量化を行った結果、カーボンプライシング導入による操業費の増加、低炭素製品を提供できないことによる売上減少などを重要なリスクとして特定しました。カーボンプライシング導入やライフサイクルCO2排出量の多い製品の需要減少に対しては、これまで取り組んできた工場の原燃料転換や再生可能エネルギーの導入を一層推進するとともに、インターナルカーボンプライシングの活用によりGHG排出削減を考慮した脱炭素投資をさらに推進し、リスクの低減を図ります。

また、環境配慮要請の高まりに伴うマーケットの変化については、環境への影響が小さい農薬や生物農薬、および二次電池材料などの低炭素製品の需要が拡大すると考えています。生物農薬については、2022年4月に生物科学研究所農薬研究部にバイオロジカルグループを立ち上げ、事業化に向けて研究開発を進めています。また、環境エネルギー分野において、二次電池材料や環境発電材料、CCS・CCUS材料の開発を加速し、実需化を目指します。

一方、4℃シナリオにおけるリスクとして認識している水害リスクについては、主要な生産・物流拠点の浸水の可能性を重要リスクとして特定しました。本リスクに対しては、工場および主要製品のBCPの策定および随時見直し、工場設備の高基礎化/高フロア化や、製品在庫の確保、重要原料の複数購買などを引き続き行っていきます。

また、気温上昇・異常気象に伴うマーケット変化において、害虫・雑草などの増加、水不足や感染症の拡大に向け、農業化学品や、飲料水などの殺菌消毒剤などの需要が増大すると考えています。市場成長の見通しを踏まえ、当社の機会の拡大を目指します。さらに、気候変動の影響を受けにくい事業ポートフォリオを構築することで事業活動のレジリエンスを高め、リスクの最小化・機会の最大化に努めます。

 

* シナリオ分析:地球温暖化や気候変動そのものの影響や、気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境の変化などにはどのようなものがあるかを予想し、その変化が自社の事業や経営にどのような影響を及ぼし得るかを検討するための手法。

●参照したシナリオ

1.5℃シナリオ*1

4℃シナリオ*2

・IEA-WEO*3 ETP*4 ネットゼロシナリオ(NZE)

・IEA-WEO 公表政策シナリオ(STEPS)

・IPCC SSP 5-8.5

・IPCC SSP*5 1-1.9, 1-2.6

 

*1 産業革命以前と比較して、気温上昇を1.5℃以下に抑えるために必要な対策が講じられた場合のシナリオ

*2 産業革命以前と比較して、21世紀末に世界の平均気温が4℃上昇するシナリオ

*3 国際エネルギー機関「World Energy Outlook」(2022)

*4 国際エネルギー機関「Energy Technology Perspectives」(2023)

*5 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「Shared Socio-economic Pathway」

 

 

分析対象範囲および分析対象期間

●分析対象範囲:化学品・機能性材料・農業化学品・ヘルスケア・企画本部

●分析対象期間:2030年および2050年

 

●リスク・機会の特定プロセス

Step1

バリューチェーンやステークホルダーを明確化し、当社事業に影響を及ぼす要因を整理

Step2

上記シナリオやその他外部情報に基づくリスク・機会の洗い出しを実施

Step3

洗い出したリスク・機会から、発生の可能性、事業へのインパクト(人的損失、財務的インパクトなど)を踏まえ、特に重要なリスク・機会を特定

 

 

③-2気候変動に関する指標と目標

当社グループは、「気候変動の緩和」をマテリアリティ要素のひとつと位置づけており、GHG(Scope1+2)排出量の90%以上を占める日産化学本体の排出量削減が気候変動関連リスク低減に重要であると考えています。このため、日産化学本体のGHG(Scope1+2)排出量削減の長期目標として「2050年カーボンニュートラル」、中期目標として「2027年度までに2018年度比30%以上削減」を掲げています。これらは、長期経営計画『Atelier2050』、および中期経営計画『Vista2027』の非財務目標として位置づけ、進捗を管理しています。また、本削減目標に対する達成度は、役員の業績報酬のESG連動部分に反映する仕組みとしています。

2018年度以降、メラミン製造停止や小野田工場ボイラー燃料転換、老朽化設備更新による省エネルギー化などにより、GHG排出量を着実に減らしています。2023年度は、2022年に発生した硝酸プラントトラブルの正常化、能登半島地震による富山工場稼働停止などにより、2022年度より排出量が減少しました。

当社はGHG排出量およびエネルギー消費量について、2018年度分から第三者検証を受審しており、今後も引き続きGHG排出量削減の取り組みを進め、環境負荷低減を推進していくとともに、信頼性の高い情報の開示に努めていきます。

 

●中期目標および長期目標

カテゴリ

指標

対象範囲

2027年度目標

2050年度目標

GHG排出量

Scope1+2排出量

総量

単体

2018年度比30%以上削減

カーボンニュートラル

 

 

 

●気候変動関連データ

 

範囲

単位

基準年

2018

2021

2022

2023

目標

(目標年)

Scope1

単体

t-CO2e

245,469

231,713

223,388

174,133

Scope2

単体

t-CO2e

117,926

113,623

104,275

111,187

Scope1+2

単体

t-CO2e

363,395

345,336

327,663

285,320

254,377

(2027)

GHG排出量原単位*1

単体

t-CO2e/

2.33

2.03

1.79

1.58

(Scope1+2)

100万円

Scope3*2

単体

t-CO2e

703,562

803,461

885,046

927,262

エネルギー原単位*3

単体

*4

82.8

81.5

63.3

62.0

Scope1

連結*5

t-CO2e

253,785

238,958

230,424

180,409

Scope2

連結*5

t-CO2e

128,647

124,663

115,893

124,730

Scope1+2*6

連結*5

t-CO2e

382,432

363,621

346,316

305,138

Scope1+2 の連結に

 

%

95.0

95.0

94.6

93.5

占める単体の割合

*1 排出量/売上高

 

 

 

 

 

 

*2 カテゴリ別データ:https://www.nissanchem.co.jp/csr_info/index/esg_data.html

 

*3 エネルギー使用量/売上高

 

 

 

 

 

*4 2013年度を100とする

 

 

 

 

 

*5 日産化学本体および、製造施設を有する連結子会社(日本肥糧、Nissan Chemical America Corporation、NCK Corporation)

*6 四捨五入の関係で、上段のScope 1, Scope2 の和と一致しないところがあります。

 

なお、2024年度の実績については2025年夏頃に当社webサイトにて掲載予定です。

 

④-1自然資本に関する戦略

TNFDでは、自然資本関連の評価のための統合的な分析手法としてLEAPアプローチが提言されており、当社では本アプローチを採用しています。LEAPアプローチは、Locate(自然との接点の発見)、Evaluate(自然への依存と影響の評価)、Assess(自然に関するリスクと機会の評価)、Prepare(対応と報告の準備)の4つのプロセスから構成されます。

 

分析対象範囲および分析対象期間

●分析対象範囲:農業化学品事業における農薬(リスク・機会の一部では他の事業も対象)

●分析対象期間:2030年および2050年

 

●LEAPアプローチに基づく分析プロセス

Locate:優先地域の特定

当社と自然との接点を発見し、当社として優先すべき地域を特定するため、WWF Biodiversity Risk Filter等を使用して、自社と関連する拠点での分析、評価を行いました。

農薬は、石油、天然ガス、各種鉱物を原材料としており、これらの採取・加工、中間製品の製造を経て、当社にて最終製品の製造を行っています。バリューチェーン上流(石油、天然ガス、各種鉱物の採取・加工)は、日本の貿易状況や世界での埋蔵量から、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オーストラリア、中国、カナダ、ペルー等の海外でほぼ行われていると推定しました。油田・ガス田・鉱山や加工場の場所の特定は困難ですが、場所によっては優先地域に該当すると考えています。

当社での製造においては、小野田工場、埼玉工場、NCアグロ函館、Nissan Bharat Rasayan PVT. LTD.(インド)で農業化学品の製造を行っており、これらの拠点は、事業活動による依存・影響を考慮したうえで、TNFDが示す「影響を受けやすい場所」の要件について重要度が高いことから、優先地域に特定しています。

 

Evaluate:自然関連への依存・影響の特定・評価

農業化学品のバリューチェーンとして、原材料の採取・加工、中間製品の製造、自社での最終製品の製造、農業における製品の使用の各工程について、ENCORE*1を用いて自然関連への依存・影響の特定・評価を行い、ヒートマップを作成しました。

 

*1 ENCORE:金融機関のネットワーク「自然資本金融同盟」と国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)が共同で開発したツール。セクター、サブインダストリー、プロセス(GICS:世界産業分類基準)ごとに、自然にどのように依存し、自然に影響を与えるかを調べることができる。

 

自然関連への依存・影響の特定・評価の結果

<影響>

- バリューチェーン全体で、水利用、GHG排出、大気・水・土壌汚染等の影響が大きい。

- バリューチェーン上流の水利用、陸上・淡水・海洋生態系の利用(改変、環境変化)の影響が極めて大きい。

<依存>

- バリューチェーン上流(特に原材料採取)の地下水、地表水、水循環、水質、気候調節*2、洪水や暴風雨からの保護への依存が比較的大きい。

- 自社での製造における生態系サービスへの依存は小さい。

 

 

*2 気候調節:土壌や海洋などにおける二酸化炭素の長期貯蔵や、植生による気温・湿度・風速などの調整

 

Assess:自然関連のリスク・機会の特定・評価

Locateで特定した優先地域、Evaluateで特定・評価した依存・影響を踏まえ、自社への影響が想定される自然関連リスク・機会の特定・評価を行いました。

分析に際しては、TNFDのガイダンスを参照し、下図のとおり、「生態系サービス(環境)の劣化(気候変動の1.5℃シナリオと4℃シナリオ(物理リスク・機会))」と「環境保全に向けた規制強化や市場ニーズの高まり(移行リスク・機会)」の2軸を設定し、①~④のシナリオを自然関連のシナリオとして設定しました。

 

●参照したシナリオ

1.5℃シナリオ*1

4℃シナリオ*2

・IEA-WEO*3  ETP*4  ネットゼロシナリオ(NZE)

・IPCC SSP*5 1-1.9, 1-2.6

・IEA-WEO 公表政策シナリオ(STEPS)

・IPCC SSP 5-8.5

 

*1 産業革命以前と比較して、気温上昇を1.5℃以下に抑えるために必要な対策が講じられた場合のシナリオ

*2 産業革命以前と比較して、21世紀末に世界の平均気温が4℃上昇するシナリオ

*3 国際エネルギー機関「World Energy Outlook」(2022)

*4 国際エネルギー機関「Energy Technology Perspectives」(2023)

*5 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「Shared Socio-economic Pathway」

 

 


④-2自然関連の指標と目標

農業化学品に関しては、グローバルの目標として2022年12月に昆明・モントリオール生物多様性枠組において「農薬及び有害性の高い化学物質による全体的なリスクの半減」が掲げられたほか、みどりの食料システム戦略において「使用量低減(リスク換算)」に向けた技術革新が掲げられています。

農業化学品は環境へのリスクがある一方で、適切に農業化学品を用いることで収穫効率を高めて過剰な農地拡大に伴う森林破壊を防止することに寄与できます。さらに、耕作放棄地を適切に管理し活性化することで、生物多様性保全に貢献していきます。そのため、当社グループでは、農業化学品による自然への環境リスクの低減を図りつつ、高効率な食料生産に貢献していくことが重要と考えており、長期経営計画『Atelier2050』、および中期経営計画『Vista2027』において、農業化学品事業の方向性として「食料の安定供給」と「持続可能な農業」を掲げています。

これらを実現するためには、「環境リスクの低減」「収穫量の向上」「農地・緑地管理」といったテーマに対応していく必要があると認識しています。

 

●指標、中期および長期目標

カテゴリ

指標

対象範囲

2027年度目標

2050年目標

GHG排出量

Scope1+2(総量)

単体

2018年度比30%以上削減

カーボンニュートラル

廃棄物

最終処分量

単体

2021年度比50%削減

 

 

 

●指標

依存・影響の指標

範囲

単位

2022年度

2023年度

GHG排出量(Scope1+2)

単体

t-CO2e

327,663

285,320

空間フットプリントの合計

組織が管理/運営している総表面積

*2

m2

1,171,692

1,171,692

攪乱された総面積

*2

m2

1,171,692

1,171,692

修復/復元された総面積

*2

m2

137,264

137,264

利用変化の程度

陸域/淡水域/海洋の生態系利用の変化の範囲

*2

m2

0

0

保全または復元された陸域/淡水域/海洋生態系の範囲*1

*2

m2

472

800

土壌汚染物質(PRTR対象物質)

単体

トン

0

0

水質汚染

排水量*3

単体

千m3

14,082

13,834

COD

単体

トン

259

139

全リン

単体

トン

13

7

全窒素

単体

トン

2,413

1,686

PRTR対象物質

単体

トン

0.4

0.4

排水の温度

単体

貯水槽にて数日間留置し、

外気温と同程度にして排水

廃棄物

産業廃棄物総排出量

単体

トン

39,624

30,098

特別管理産業廃棄物総排出量

単体

トン

6,717

5,971

焼却処分

単体

トン

13,743

11,650

埋立処分

単体

トン

5,743

4,852

その他の処分方法*4

単体

トン

18,794

12,795

処分方法不明

単体

トン

0

0

リサイクル量

単体

トン

8,062

6,772

大気汚染

揮発性有機化合物 (VOC)

単体

トン

0.5

0.3

Nox

単体

トン

96

63

SOx

単体

トン

19

23

ばいじん

単体

トン

7

8

PRTR対象物質

単体

トン

0.5

2.7

コンプライアンス違反*5

単体

0

0

製造過程における有害廃棄物のリサイクル

単体

%

0

0

使用済み有害廃棄物のリサイクル

単体

%

0

0

*1 前年度からの変化率を記載

*2 日産化学本体および、農薬の製造に関する連結子会社(NCアグロ函館、Nissan Bharat Rasayan PVT. LTD.)

*3 放流水量(表流水または地下水のうち、もとと同等かそれを上回る品質で取水源に戻される水)

*4 産業廃棄物は中和、破砕、脱水、機械乾燥等、特別管理産業廃棄物は中和、油水分離、脱水等

*5 重大な環境法令違反件数

 

 

リスク・機会の指標

範囲

単位

2022年度

2023年度

環境法令違反に関連する罰金やペナルティ

連結

0

0

 

 

なお、2024年度の実績については2025年夏頃に当社webサイトにて掲載予定です。

 

 

(3)人的資本に関する考え方

「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」という企業理念のもと、当社が「未来創造企業」として成長し、社会とともに発展するためには、事業基盤である人的資本の拡充が最重要課題の一つです。長期経営計画「Atelier2050」においては、2050年のあるべき組織の姿を「強い情熱で変革に挑む共創者集団」と定め、社員の基本姿勢を「誠実を力に」「志で踏み出す」「協働を超えた共創へ」の3つとしました。「誠実」という当社の強み・アイデンティティを維持しながら、多様な人材が目標に向かって挑戦し、自己の成長を図る組織を実現するため、当社は人材育成や環境整備に向けて様々な取り組みを行っています。各取り組みに対しては、中期経営計画「Vista2027」StageⅡ最終年度である2027年度に向けて、定量的目標を定めて人的資本経営を推進していきます。

 

<各取り組みの位置付け>


 

「人材育成に関する取り組み」

1) 価値向上に「挑戦」し続ける牽引人材の輩出

当社が今後も継続的な成長を続けるためには、価値向上に繋がる改善や提案を、「志(内発的動機)」に基づき、主体的に考え、自ら挑戦することで事業を牽引する人材を輩出することが課題であると捉えています。そのために、課長・係長相当職への昇格前研修では、新たな事業・製品・サービスを発想し、周囲を巻き込むリーダーシップを発揮しながら、数か月かけて検証・軌道修正する仮説検証型研修を実施しています。

また、2023年度より、各人が志に基づく判断で、通常業務の領域外や、部門方針では明示されていない領域等のテーマへの挑戦に対し、年間労働時間の10%を充てて取り組むことができる仕組みとして「10%Challenge」を新たに導入しました。成果の有無にとらわれず挑戦を楽しむ文化の醸成や、新しいことに挑戦する経験を通じて自身の可能性を広げることを期待しています。

加えて、各工場においては、ほぼ全ての操業員等が参加し、毎年改善活動を実施するAi運動(1978年にスタートした、当社独自の小集団活動をベースとする改善提案活動)を推進しています。現場起点で価値向上に繋がる改善を継続するスタンス、前例にとらわれない提案力の向上を目指します。

指標

実績(2024年度)

目標(2027年度)

挑戦に関する従業員意識調査肯定回答者割合

72.0%

75.0%

 

 

 

2) 領域を超えた「共創」人材の輩出

社会課題解決に貢献するための新たな製品・サービス、技術の種を継続的に生み出していくには、自らの領域(技術、部門)に閉じることなく、境界を越えた連携をすることによって、新たな価値を「共創」できる人材を輩出することが課題と捉えています。仮説検証型研修、10%ChallengeおよびAi運動などにおける共創テーマ提案数の増加を図ります。

また、自社技術の新たな獲得、価値向上、および展開に向けて、社外関係者を巻き込み共創できる状態を目指し、他社との共同研究・共同特許出願や、社外への人材の出向・転出・輩出など、一つの領域に固執しない、境界を越えた連携を促進していきます。

指標

実績(2024年度)

目標(2027年度)

共創テーマ提案数

160

200

 

 

3) ビジネスのポテンシャルを見極め実需化する「目利き」人材の輩出

次世代の成長の源泉となる新製品・サービスを育成するには、市場ニーズを踏まえながら、代替が利かない「Must-Have」な製品ニーズを見出し、そのバリューチェーンの成長性も見据えた「目利き」のできる人材を輩出することが課題であると捉えています。「目利き」人材を輩出するため、起業家の持つ能力の開発と社内起業家の育成を目的としたイントラプレナーシッププログラムを実施しています。社内起業家としての行動スキルの実践、情報収集・仮説検証を短サイクルで繰り返すことで、有望テーマを磨き上げ、イノベーターとしての行動の体得を目指します。

また、研究・製造・営業といった職域を横断する人事ローテーションを積極的に実施することにより、研究職・技術者が顧客と直接対話する機会をできる限り設け、技術起点だけでなく顧客・市場・社会課題起点でビジネスを見定める力を育てます。

 

 

「社内環境整備に関する取り組み」

4) 個人の意志が尊重される『多様性』ある風土づくり

価値向上に「挑戦」し続ける人材を育成するためには、ともに働くすべての人の多様性が尊重され受け入れられると同時に、その多様な個人が有する意志(異見)を交わすことができる風土づくりが課題であると捉えています。従業員と人事担当役員が直接対話できる機会の設置や、個々の個性を生かし仕事に対するやりがいを育むよう、キャリアプラン構築のためのキャリア対話を全従業員が年1回以上実施しています。さらに従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた働き方を推進するため、フレックスタイムや時間単位年休など、様々な制度を導入しています。

指標

実績(2024年度)

目標(2027年度)

多様性・キャリアプランに関する従業員意識調査肯定回答者割合

64.8%

70.0%

 

 

5) 企業理念への理解・共感を生む風土づくり

社会課題解決に貢献し、当社が社会と共に成長するためには、一人ひとりの従業員が企業理念と「生きがい」とを重ね合わせ、事業活動の根幹である企業理念への共感度を高めていくことが課題であると捉えています。個々の従業員が、企業理念・ビジョンの実践に貢献しているという実感を伴って働くことができる風土を醸成するため、サステナビリティ・IR社内説明会の開催や、社長自らが毎年各拠点を訪問し、従業員への講話や直接対話の機会を設けるといった取り組みを進めています。

指標

実績(2024年度)

目標(2027年度)

企業理念への共感度に関する従業員意識調査肯定回答者割合

65.8%

70.0%

 

 

6) 従業員の心身の健康推進

当社は、従業員の心身の健康を「健全な企業の成長を支える基盤」と考えており、その健康の維持・増進を目的に様々な施策を実施しています。具体的には、高ストレス者割合の低下、適正体重者(BMI(肥満度)指数が18.5以上25.0未満)70%以上、年次有給休暇取得率80%以上を目指し、定期健康診断の受診の推進、ストレスチェックの実施、全従業員対象の健康管理能力向上セミナーの実施などの取り組みを進めています。

また、レスポンシブル・ケアマネジメントシステムを通じて、労働災害の防止、労働者の健康増進、快適な職場環境の形成につとめ、各事業所の安全衛生レベルの向上を図っています。

これらを含む取り組みの結果、プレゼンティーイズムによる生産性損失低減や、「ホワイト500」等、健康経営に関する総合的、客観的認証取得を継続することを目指します。

指標

実績(2024年度)

目標(2027年度)

高ストレス者割合

8.3%

8.0%以下

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 体制
 リスクマネジメント活動全般について継続的改善を推進する専門組織として、経営企画部リスク・コンプライアンス室を設置しています。

 また、リスクマネジメントの実効性を高めるとともに、コンプライアンスを維持向上、推進するための機関として、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、年2回定期的に開催しています。
 本委員会は取締役会が指名するCRO(チーフ・リスクマネジメント・オフィサー)を委員長とし、CROが指名する各部門、箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者から構成されています。リスク・コンプライアンス責任者は、定期的に、リスクの洗い出し・評価・対策計画立案、リスク対策実施状況、課題の自己評価、改善案の策定を行う他、計画的に各部門、箇所および国内連結子会社にて教育、訓練等を行います。

 リスクマネジメントに関する重要事項、対策計画等は本委員会の審議を経て、取締役会で決議します。

 

(2) リスクアセスメント
 各部門の事業特性やグローバルな政治・経済・社会情勢等、ビジネスを取り巻く環境を考慮してリスクを洗い出し、各部門、各箇所および国内連結子会社のリスク・コンプライアンス責任者からの意見集約などを通じて、発生可能性と事業への影響度を評価、その後当社取締役へのヒアリングを実施した上で、リスクマップを作成し、「グループ重要リスク」を選定しました。その内容はリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、取締役会で決議しています。


(3) グループ重要リスク
 当社グループの経営成績、財政状態等につき、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項は以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、以下に記載したリスクは主要なものであり、これに限られるものではありません。

1) 事業ポートフォリオ戦略の失敗
①化学品事業部
 工業薬品類などの基礎化学品をさまざまな産業に提供する一方で、先端分野に対応する製品の生産・供給にも努めており、限界まで不純物を除去した高純度薬品、さらには電子材料用途で需要が伸びていますシアヌル酸由来の高機能化学品などを市場に投入しています。
 これら製品は、天然ガスを出発原料とするアンモニアの誘導品であることから、原燃料価格の影響を受けるほか、中国市況等の変化により、世界の需給バランスが崩れ、当社販売にも影響が波及する可能性があります。
 また、IoT、AIなどのデジタル技術導入による工場保全技術の高度化に努めてまいりますが、近年、設備老朽化に伴うプラントトラブルが発生し、一定期間の操業停止および損失が生じています。

②機能性材料事業部

 「ディスプレイ材料」「半導体材料」「無機コロイド」事業を通じて、スマート社会の実現に貢献しています。

 ディスプレイ材料は、液晶分子を一定方向に揃えるための配向材を主幹材料とし、現在は主にスマートフォン、タブレット向けに供給していますが、今後はTVなどの大型ディスプレイ向けにも展開してまいります。一方で、液晶より薄型軽量で高速応答などの特長を有し、フレキシブル化などの意匠性にも優れた有機ELが、スマートフォン、高画質・大型のテレビなどに採用されるケースが増えてきました。当社は、有機EL関連材料、有機ELに続く次世代自発光ディスプレイ向け材料の開発も進めておりますが、開発状況、企業間競争の激化などによっては、採用未達となるおそれがあります。

 半導体材料は、光照射によりフォトレジストを微細加工する際に、光の乱反射や干渉、塗布不良などのトラブルを防止するコーティング材料からスタートし、半導体回路幅のさらなる微細化に対応する材料を開発、現在はEUV(極端紫外線)露光技術の実需化、微細化の限界に備え、それぞれEUV用材料、三次元実装用材料にも注力しています。しかし、開発状況、企業間競争の激化などによっては、採用未達、シェア喪失のおそれがあります。

 無機コロイドは、ナノシリカの水分散液を販売して以来、現在では有機溶媒分散液、無溶剤で使用できる製品を提供し、光学フィルムのコーティング材、電子記録媒体の研磨剤などに使用されています。最近では、シェールオイル・ガスの採掘効率向上剤などへの用途展開を図っておりますが、原油価格の変動によりシェールオイル需要に変化が生じ、当社剤の販売にも影響が及ぶ可能性があります。

③農業化学品事業部

 新規薬剤の探索から開発・製造・販売までの一貫した事業活動と、他社剤の買収や共同開発による幅広い製品ラインアップの拡充を通じて、安定した食料の供給に貢献しています。2018年には殺虫剤を上市・発売、2019年、2020年には殺菌剤を他社より買収し、製品ポートフォリオを充実させました。また、農業用殺虫剤の開発を進めるなかで、農作物の害虫だけでなく、イヌ・ネコに寄生するノミ・マダニの駆除にも効果がある化合物を発見し、動物用医薬品分野にも進出しました。現在は殺虫剤・水稲用除草剤の開発、次製品の研究を続けています。増加する原体ラインナップ・需要増に対応すべく、生産・供給にまつわる各種対策を実施しておりますが、完了までに時間を要した場合、一時的に販売機会を逸する可能性があります。

④ヘルスケア事業部

 当社化合物を原薬とする高コレステロール血症治療剤は、現在世界30ヵ国で承認を受け販売されていますが、国内の物質特許が2013年8月に満了となり、ジェネリック医薬品によるシェア低下、薬価改定の影響を受け、国内では厳しい状況が続いています。新薬創出が急務となっているなか、低分子医薬ではAIの活用に取り組むとともに、核酸医薬に注力、さらにはヘルスケアという総合的な視点で、生体界面制御材料や化粧品材料などの医療材料の実需化や拡販を進めます。また、顧客のニーズに合わせて医薬品原薬開発をトータルにサポートする課題解決型受託事業および共同開発型事業では、海外でのビジネスおよびペプチド事業への展開を図ります。しかし、自社創薬の成果獲得には研究開発費と時間を要することから、その結果次第では、中長期的に経営成績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

2) 新製品の開発、外部の技術革新
 当社グループは、これまで培ってきた「精密有機合成」「機能性高分子設計」「微粒子制御」「生物評価」「光制御」の5つのコア技術に、「微生物制御」、「情報科学」という新技術を育成することで、「情報通信」「ライフサイエンス」「環境エネルギー」「素材・サービス」の事業領域で、社会課題の解決に貢献すべく、新製品の開発を積極的に進めています。新製品の開発には、高度な技術と多くの資金、人的資源が必要であり、長い時間を要します。当社では、近年、年間売上高の7~9%を研究開発費に投じるとともに、総合職人員の約40%を研究に従事させるなど、研究開発に経営資源を傾斜配分、さらには最新技術情報を踏まえた研究テーマの設定、定期的評価に基づく継続または改廃などを行っておりますが、当社がターゲットとする市場環境や技術動向の急激な変化が生じ、開発の成否、ひいては経営成績および財務状況に影響を受ける可能性があります。

 

3) 原料調達、製品供給
 当社は、原料および資材の調達に関する方針(購買方針)を定め、重要な原料、中間体、製品の製造などを委託する際は事前に、またその他新規および既存のサプライヤーに対しても必要に応じ、サステナビリティ調査票への回答を求め、当社の基準を満たす企業との取引を優先的に進めるとともに、取引先に対する啓蒙・改善活動を行っています。

 さらに、国内外のサプライヤーおよび業務委託先を訪問監査し、サステナブル活動、とくに、環境・健康・安全(EHS)への取り組みを詳細に確認し、サステナブル調達の推進を図るなど、コスト・品質等を考慮の上、安定的な調達先の確保に努めております。しかし、高度な技術により合成された化合物など、供給元が限定されている原料があることに加え、中国をはじめ、海外からの輸入に頼る原料もあり、何らかのトラブル、調達先所在国における突如とした法規制の強化等により、調達先からの供給が滞った場合、製品の安定的な製造・販売体制に支障をきたし、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4) 法的規制、法令違反
 当社グループは、事業の特性上、化学物質の取り扱いに関する国内外の法令等により規制を受けています。近年の環境問題、生体への影響に対する世界的な意識の高まりなどから、各種規制はますます強まる傾向にあり、現行規制の改正や強化等がなされた場合、事業活動が制限される、その対応のための費用を要する、あるいは当該製品が対象国にて販売できなくなるなど、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループでは、コンプライアンスを法令および広く社会規範に従うことと認識し、コンプライアンス規則を策定し、コンプライアンス基本方針を定めています。さらに、内部通報制度を設置し、コンプライアンス違反の未然防止、早期解決のための体制を整えるとともに、役員・社員等に対し、各種研修、コンプライアンスマニュアルの周知などを通じて、知識向上、啓蒙に努めておりますが、法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等を取った場合、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受ける可能性があります。
 

5) 労働災害、事故災害、自然災害
 当社グループは、化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費を経て廃棄・リサイクルに至る全ての過程において、自主的に「環境・健康・安全(EHS)」を確保し、活動の成果を公表し社会との対話・コミュニケーションを行うレスポンシブル・ケア(RC)活動に、取り組んでいます。

 RCマネジメントシステムを通じて、化学製品の研究開発、製造、販売、変更などに至る各段階で、リスク評価(事前評価)を実施し、その結果に基づき、法規制順守対応、製造現場での作業者ばく露低減のための設備改良、作業方法の改善、手順の明確化・文書化や教育訓練などの適切な対策を講じるなど、労働災害の防止、労働者の健康増進、快適な職場環境の形成に努め、各事業所の安全衛生レベルの向上を図っています。また、安全確保と安定操業、保安力向上を目指し、製造事前評価によるリスクの洗い出し、プロセスKY(危険予知)、設備KYを実施し、必要な設備投資を行うとともに、毎年の各種訓練等を通じ、緊急時あるいは事故発生時に確実な対応が取れるように備えております。

 地震をはじめとする自然災害に対しては、工場および主要な事業拠点を対象に災害対策、事業継続計画(BCP)を策定しており、今後も強化と充実を図ってまいります。

 しかしながら、不測の大規模地震や台風等の自然災害による生産設備への被害、工場における事故、輸送・外部保管中の事故等により、工場の操業や顧客への供給に支障が生じることで、当社グループの信用、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

6) 製品品質
 当社グループは、各工場で品質マネジメントシステムの認証取得および維持・更新を行うとともに、製造部門とは独立した品質保証部門の設置、顧客の商品に関する声(苦情情報)を迅速に収集、評価し、必要な是正を実施するための社内ネットワークを構築するなど、品質保証体制の確立に努めています。また、昨今大きな社会問題となりました品質管理に関わる不正・改ざんに対しても、防止ガイドラインを策定・運用を開始、監査を実施し、潜在リスクが発見された場合は改善を行ってきました。しかし、製造・輸送・保管等の過程において予期せぬトラブルが発生、品質への影響が生じ、顧客または当社材料が使用された製品ユーザーにて人的・物的損害が起こった場合、損害賠償請求を提起され、経営成績および財務状態のみならず、当社グループへの社会的信用が失墜し、事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
 
7) 知的財産
 当社は、研究成果と知的財産が事業の根幹であるとの考えのもと、知的財産権保護は極めて重要な経営課題と認識し、知的財産の取得にとどまらず、訴訟による権利行使も実施しています。当社は国内外で事業を展開し、世界各国で特許を出願・申請、取得していることから、グローバルに知的財産の権利確保を図り、侵害を監視する体制を強化しております。

 しかし、他社との間で知的財産を巡って係争が生じた場合や、他社が当社の知的財産権を侵害した場合において、当事者間での和解交渉、法定での係争結果次第では、賠償金の支払いや売上計画の見直しを余儀なくされ、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

8) 情報セキュリティ
 当社グループは、研究開発、生産などに関する機密情報、販売促進等に用いるお客様の個人情報を保有しています。また、将来的に予想される労働力不足に備え、IoT、AIなどのデジタル技術を工場に導入することで、生産性の引き上げ、保全体制の確立を進めています。

 当社グループでは、情報管理規則、各種ガイドラインを定めるとともに、定期的な研修を実施して社員のセキュリティ意識を高めるなど、ハード、ソフト双方のセキュリティ対策を実施しておりますが、外部攻撃、不正アクセス、コンピューターウィルスの感染等により、制御系・基幹システムの障害、保有する機密情報・個人情報の漏洩が発生した場合、当社グループへの信用、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 
9) 人材確保
 当社グループでは、多様化・高度化する市場の要求への対応力を高めるために、研究開発力の強化や製品品質の向上に取り組むとともに、多様で優秀な人材の確保・育成や働きやすい職場づくりなどの取り組みを通じて、事業基盤の強化を目指しています。
 人材開発の本質は「社員一人ひとりが自発的に自己研鑽を積み、自己の成長を図ること」にあるとの考えのもと、望む社員のために、さまざまな人材育成制度を整備しています。
 また、多様な人材が、生産性の高い働き方を実現し、仕事と生活の調整(ワーク・ライフ・バランス)を図るとともに、職場で多様な意見を発信し、才能を最大限に発揮できるよう、各種取り組みを推進しています。
 しかしながら、雇用情勢の悪化等により、必要な人材を確保できない場合、経営成績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

10) 海外展開
 当社グループは、各事業分野において、アジア、欧州、北米などを中心に世界各地に生産・販売拠点を設け、より市場に密着した形での事業展開を進めていることから、進出先の政治、経済、社会情勢の変化などにより、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 また、各拠点において有効な内部統制システムの構築に努めているものの、従業員等の悪意あるいは重大な過失による行為、もしくはシステムが十分に機能しなかったことに伴い、将来的に法令違反等の問題が発生し、行政処分による課徴金、刑事・民事訴訟による罰金、損害賠償金等の支払いに加え、当社グループへの社会的信用が失墜し、事業に悪影響が生ずる可能性があります。

 

11)環境保全
 温室効果ガスの排出量削減や自然資本・生物多様性保全対策への取り組みについて、投資家等ステークホルダーからの関心が高まっています。

 当社は、パリ協定を支持し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同、インターナルカーボンプライシングを導入し、温室効果ガス(GHG)排出量削減および省エネルギー化を考慮した脱炭素投資を推進するほか、環境・健康・ 安全に配慮するレスポンシブル・ケア活動を通じて、環境負荷低減に努めるとともに、事業を通して環境課題の解決に貢献します。また、当社の事業活動が生物多様性の恩恵に依存していることや、生物多様性に影響を与えていることを認識しています。「社会が求める価値を提供し、地球環境の保護、人類の生存と発展に貢献する」という企業理念のもと、生物多様性保全を重要な経営課題と位置付け、地球環境の保全に寄与するため、生物多様性に配慮した事業活動を展開します。

 しかし、温室効果ガスの排出量削減や自然資本・生物多様性保全対策への取り組みが十分ではない場合、当社ステークホルダーからの評判が低下するリスクがあります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の国内景気は、インバウンド需要の拡大や所得環境の改善が進む一方で、食品や原材料の価格の高止まりなどを背景に緩やかな回復に留まりました。このような状況のもと、当社グループの事業につきましては、化学品セグメントは、基礎化学品、ファインケミカルともに増収となりました。機能性材料セグメントは、半導体材料が好調に推移したことに加え、無機コロイドおよびディスプレイ材料が増収となりました。農業化学品セグメントは、増収となりました。ヘルスケアセグメントは、減収となりました。
 この結果、当期間における業績は以下の結果となり、売上高、各利益ともに前年同期および2月に発表した業績予想を上回りました。

 

(単位:百万円、百万円未満切捨て)

 

2024年3月期

(実績)

2025年3月期

(実績)

前年比増減

 

2025年3月期

(業績予想)

業績予想比

増減

売上高

226,705

251,365

+24,659

 

247,600

+3,765

営業利益

48,201

56,833

+8,631

 

55,000

+1,833

経常利益

51,629

58,018

+6,389

 

55,900

+2,118

親会社株主に帰属する

当期純利益

38,033

43,043

+5,009

 

40,900

+2,143

 

 

セグメント別概況は以下のとおりであります。

 

化学品セグメント

 基礎化学品では、高純度硫酸(半導体用洗浄剤)が増収となりました。ファインケミカルでは、環境化学品(プール・浄化槽用殺菌・消毒剤等)やファインオキソコール(化粧品原料等)が増収となりました。
 この結果、当セグメントの売上高は378億35百万円(前年同期比22億72百万円増)、営業利益は1億79百万円(同1億31百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は7億円の下ぶれ、営業利益は1億円の上ぶれとなりました。なお、基礎素材であるアンモニアの生産量は前連結会計年度を下回りました。

 

機能性材料セグメント

 ディスプレイ材料では、「サンエバー」(液晶配向材用ポリイミド)が増収となりました。半導体材料では、半導体用反射防止コーティング材(ARC®*)および多層材料(OptiStack®*)が顧客の稼働回復を受けて大幅な増収となりました。無機コロイドでは、「スノーテックス」(電子材料用研磨剤、各種表面処理剤等)やオルガノシリカゾル・モノマーゾル(各種コート剤、樹脂添加剤)が増収となりました。
 この結果、当セグメントの売上高は1,000億98百万円(前年同期比155億30百万円増)、営業利益は289億80百万円(同64億49百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は27億円の上ぶれ、営業利益は7億円の上ぶれとなりました。
* ARC®、OptiStack®はBrewer Science, Inc.の登録商標です。

 

農業化学品セグメント

フルララネル(動物用医薬品原薬)は増収となりました。国内向け農薬は、2月より販売が開始された「ベルダー」(水稲用除草剤)に加え、「アルテア」(水稲用除草剤)や「グレーシア」(殺虫剤)が堅調に推移しました。一方、「ラウンドアップ」(非選択性茎葉処理除草剤)は減収となりました。海外向け農薬は、「タルガ」(除草剤)は減収となりましたが、「ライメイ」(殺菌剤)および「グレーシア」が伸長しました。
 この結果、当セグメントの売上高は862億26百万円(前年同期比41億12百万円増)、営業利益は255億71百万円(同21億73百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は1億円の下ぶれ、営業利益は1億円の下ぶれとなりました。

 

ヘルスケアセグメント

 「リバロ」(高コレステロール血症治療薬)原薬は国内、海外ともに減収となりました。「ファインテック」(課題解決型受託事業および共同開発型事業)は増収となりました。
 この結果、当セグメントの売上高は59億93百万円(前年同期比3億6百万円減)、営業利益は18億93百万円(同9億21百万円減)となりました。業績予想比では、売上高は2億円の下ぶれ、営業利益は4億円の下ぶれとなりました。


卸売セグメント

当セグメントの売上高は1,171億55百万円(前年同期比133億60百万円増)、営業利益は40億89百万円(同3億88百万円増)となりました。業績予想比では、売上高は48億円の上ぶれ、営業利益は4億円の上ぶれとなりました。

 

その他のセグメント

当セグメントの売上高は291億75百万円(前年同期比9億92百万円減)、営業利益は5億94百万円(同22百万円増)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当社グループの生産品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため、生産実績については、「(1) 経営成績」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

 

② 受注実績

当社グループは原則として、受注生産方式を採用しておりません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前連結会計年度比
(%)

金額(百万円)

化学品セグメント

37,835

6.4

機能性材料セグメント

100,098

18.4

農業化学品セグメント

86,226

5.0

ヘルスケアセグメント

5,993

△4.9

卸売セグメント

117,155

12.9

その他のセグメント

29,175

△3.3

セグメント間の内部売上高(消去)

△125,118

8.0

合計

251,365

10.9

 

(注) 上記の金額は外部顧客に対する売上高とセグメント間の内部売上高の合計であります。

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、現金及び預金、無形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末比73億5百万円増3,307億63百万円となりました。

負債は、社債、コマーシャルペーパーが増加したことなどにより、前連結会計年度末比20億77百万円増945億82百万円となりました。

また、純資産は前連結会計年度末比52億27百万円増2,361億80百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末比0.2ポイント増加し、70.5%になりました。
 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費、運転資金の増減などから法人税等の支払額を控除した結果、591億78百万円の収入(前連結会計年度は337億1百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、工場などの設備投資を中心に176億12百万円の支出(前連結会計年度は187億41百万円の支出)となりました。

また、財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当金の支払、自己株式の取得による支出などにより356億50百万円の支出(前連結会計年度は221億1百万円の支出)となりました。

現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、換算差額の減少額12億15百万円を調整した結果、前連結会計年度末に比較し46億99百万円増加しており、これに新規連結に伴う現金及び現金同等物の増減額17百万円を加味した結果、274億54百万円(前連結会計年度末は227億38百万円)となりました。

 

以上の営業活動・施策により、中期経営計画「Vista2027」の前半3ヵ年(2022年度~2024年度)のStageⅠにて掲げた以下の経営目標に対し、各指標は順調に推移しました。

 

 

経営目標

2024年度実績

売上高営業利益率

20%以上

22.6%

ROE

18%以上

18.7%

配当性向

21年度:45%、22年度以降:55%維持

55.5%

株主総還元性向

19年度:72.5%、20年度以降:75%維持

82.0%

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社は、研究開発を成長の源泉と捉え、化学メーカーの中でも高水準の売上高研究開発比率を維持し、新製品・新技術の開発および新事業の創出に取り組んでおります。研究活動拠点として、国内には物質科学研究所、材料科学研究所および生物科学研究所の3つがあり、これら研究所と韓国、台湾、中国のR&Dセンター、そして関連部門とが緊密な連携を図り、「未来のための、はじめてをつくる。」というコーポレートスローガンのもと、研究開発を推進しております。

2022年度に始動した長期経営計画Atelier2050では、長い歴史の中で培った5つのコア技術である精密有機合成、機能性高分子設計、微粒子制御、生物評価、光制御に更に磨きをかけるとともに、事業領域の拡充に向け新たなコア技術の修得を目指しております。

現在、新たなコア技術として情報科学と微生物制御の技術向上に注力しております。情報科学については、研究員のデジタルリテラシー向上とコア人材の発掘・育成に取り組み、医農薬や機能性材料、エネルギーなどの各研究分野で機械学習や人工知能を用いるデータ駆動型研究を根づかせるべく、日々の研究活動への適用を検討しております。また、生物科学研究所を中心に微生物の活用を始めとする微生物制御技術の育成を進め、微生物由来の農業資材への適用やゲノム・代謝物のオミクス解析技術の拡充に取り組んでおります。

2024年度の研究開発活動の概要につきまして、化学品セグメントでは、自社製品や技術をベースに開発した独自エポキシ製品を半導体実装用途や高周波基板用途に展開しております。また、微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」は、優れた油脂分解力で食品工場の産業廃棄物削減に寄与する製品として開発普及を進めております。機能性材料セグメントでは、ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドで既存製品の高品質・高性能グレードに向けた検討を、また、多様化する顧客ニーズに応え将来の主要事業になる新規材料の研究開発を進めております。ディスプレイ材料では光配向材の更なる高性能化に加え、OLEDやAR/VRデバイス、フレキシブルデバイス用材料の開発を、半導体材料では既存製品の高品質化とともに今後の世代で必要になる微細加工技術や実装技術の積極的な開発を、無機コロイドではシリカゾルの持つ強みを活かした材料開発を行っております。

農業化学品セグメントでは、当社オリジナルの水稲用除草剤原体「ジメスルファゼット」を含む各種製品の発売を開始し、新規除草剤有効成分「イプトリアゾピリド」のグローバル開発も進めております。スマート農業関連では、ドローン散布への農薬登録の拡大やAI病害虫雑草診断でスマートフォン用アプリケーションへの参加などに取り組んでおります。

ヘルスケアセグメントでは、封じ込め設備を拡充し、高生理活性医薬品原薬の新規開発に注力しております。また、独自のペプチド製造技術 SYNCSOL®を活用してジェネリック医薬品原薬の開発や顧客ニーズに合致したソリューションを提供しております。創薬においては、当社が創製した新規疼痛治療薬候補化合物について2024年にマルホ株式会社とライセンス契約を締結、今後、共同開発を推進してまいります。

 

なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は17,578百万円であります。

 

セグメント別の主な内訳は以下の通りであります。

 

(1) 化学品セグメント

成長分野の市場ニーズを見据え、自社製品・技術をベースとした新しいファインケミカルの創出、高機能化、用途拡大に取り組んでおります。例えば、シアヌール酸を原料とする「スターファイン®」は金属と樹脂との密着力を向上できる添加剤であり、塗料、接着剤、樹脂成型品など採用シーンが拡がっております。また、液状TEPICである「TEPIC®-VL」「TEPIC®-FL」は機械物性と耐熱信頼性の両立が達成できることを訴求し、半導体実装用途に展開しております。

更に、SDGsへ貢献可能な製品の市場開発も進めております。油脂分解微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」は、食品工場を中心にその採用件数が伸びており、産業廃棄物削減に貢献する製品として開発普及を進めております。

当セグメントに係る研究開発費は273百万円であります。

 

(2) 機能性材料セグメント

船橋、袖ケ浦、富山の3拠点を有する材料科学研究所において、ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドの研究開発、および将来の事業の柱となる新規材料の研究開発を進めております。

ディスプレイ材料では、市場・顧客動向を的確に把握し、これまで培ってきた独自技術をもとに、高性能化、多様化に対応した材料開発に取り組んでおります。特に、IPS/FFS用光配向材では、各種用途での要求に応じ、更なる高性能化を進めております。また、韓国、中国、台湾にR&Dセンターを設置し、材料開発、評価技術、解析能力の充実度を高め、顧客ニーズにタイムリーに対応できるよう研究開発体制の強化を図っております。

半導体材料では、半導体デバイスの高集積化の進展に伴い、既存製品の高品質化を進めるとともに、先端リソグラフィー技術のEUVに対応した下層膜材料開発、および実装技術に対応する製品・材料の研究開発に注力しております。また、このような新製品・新材料の創出に向け、各種コンソーシアムへの参加や、産官学およびベンチャー企業との連携に取り組んでおります。

無機コロイドでは、シリカゾルの持つ機能を活かし、研磨、金属表面処理、ハードコート等向けの製品開発や市場開拓を展開しております。シリカゾル以外では、ジルコニアやチタニアのゾルをスマートフォンやタブレット用の光学フィルムの屈折率調整用途や眼鏡用ハードコート用途向けに開発しております。また、近年はオイル&ガス分野での製品開発に取り組み、米国のみならずアジアや中東地域等への展開を図っております。

新規材料については、当社のコア技術を深化・発展させると同時に、社外との共同研究を活用して、本格的な市場拡大が進んでいるOLED向けの材料やディスプレイの表示性能を向上させる材料、フレキシブルデバイス向けの材料など、次世代につながる材料の研究開発を進めております。

当セグメントに係る研究開発費は8,303百万円であります。

 

(3) 農業化学品セグメント

独自に創薬開発した殺虫剤原体「フルキサメタミド」を含有する製品として、日本では、野菜および茶用の「グレーシア®乳剤」、芝用の「イザナミ®フロアブル」、果樹用の「グレーシア®フロアブル」を販売しております。海外では、アジア・中東・西アフリカ地域を中心に製品の登録作業を進め、2024年12月には南米アルゼンチンで登録を取得しました。また、更なる販売拡大を目的に混合剤の開発を進めております。

抵抗性、難防除雑草に卓効を示す水稲用除草剤「ベルダー®(原体名:ジメスルファゼット)」を含有する製品として、日本では「ゼアス®」「銀河α®」を2025年2月に発売開始し、また、韓国での開発も進めております。グローバル展開を目指す新規水稲用除草剤「NC-656(原体名:イプトリアゾピリド)」については、アジア・米州を中心に開発を進め、更に評価・開発する対象国を拡大しております。

水稲用除草剤「アルテア®(原体名:メタゾスルフロン)」含有する製品として、日本では、一発処理剤第4世代製品でベルダー®も配合した「銀河α®」を発売し、中後期剤第2世代製品の「レブラスギア®」「ゲパードギア®」を2025年3月から販売しております。海外においては、2021年度に本格上市した台湾で、水田の抵抗性カヤツリグサを防除対象とした販売が順調に推移しております。更にインドでも登録申請し、中東地域では評価試験を継続しております。

非選択性茎葉処理除草剤「ラウンドアップ®マックスロード」は、散布水量を低減させるULV5(Ultra Low Volume 5 Litter)散布技術の開発を進め、使用場面に応じた各種ノズルを普及し作物生産や緑地管理の省力化に貢献しております。

その他海外開発では、殺ダニ剤「スターマイト®」がサウジアラビア、殺菌剤「ライメイ®」がペルーで認可されております。

また、スマート農業関連では、ドローン用散布への農薬登録拡大を進めるとともに、AI病害虫雑草診断「レイミ―*」にも参加しております。

当社発明化合物フルララネルを含む、MSD Animal Health社(またはMerck Animal Health社)の製品はイヌ・ネコに寄生するノミ・マダニ防除用経口投与錠剤(ブランド名:Bravecto®**)を中心に日本を含め世界100か国以上で販売されております。近年では、内部寄生虫薬を含むネコ用混剤「Bravecto® PLUS」、8週齢以上のイヌ向けの「Bravecto® 1-Month Chews」、イヌ用注射剤「Bravecto® Quantum」等、ペット向け製品のラインアップを充実させております。家畜向け製品(ブランド名:Exzolt®**)としては、ニワトリに寄生するワクモ(吸血ダニの一種)防除用飲水添加剤が、日本を含むアジアのほか、欧州、南米、アフリカ、中東で承認され、登録国数は70か国を超えております(2025年4月現在)。また、ブラジル、メキシコを中心としたウシ向けノミ・マダニ防除剤、オーストラリア、ニュージーランドでのヒツジ向けシラミ防除剤としても販売されております。

当セグメントに係る研究開発費は4,472百万円であります。

*レイミ―:日本農薬株式会社発表のスマートフォン用アプリケーション。現在農薬メーカー6社が参加。

**ブラベクト®、Bravecto®、Exzolt®ならびにエクゾルト®は、Intervet International B.V.ならびにIntervet Inc.の登録商標です。

 

(4) ヘルスケアセグメント

当社独自技術をもとに将来の事業の柱となる新薬およびジェネリック医薬品原薬の研究開発を推進しております。

100gから数kgまで製造可能な封じ込め設備を拡充し、高生理活性医薬品原薬の新規開発を行い、研究・開発受託と新規ジェネリック医薬品原薬の自社開発に注力しております。

独自の効率的なペプチド製造技術 SYNCSOL®*を活用し、新規ジェネリック医薬品原薬の開発を行い本技術の実需化を図っております。本技術を当社出資先のペプチスター株式会社との協業に活かしていくとともに、顧客の抱える課題を解決することで製造受託の事業を拡大してまいります。

また、創薬については、マルホ株式会社と共同開発している新規疼痛治療薬候補化合物NIP-322の原薬を供給しており、今後、開発を推進してまいります。

当セグメントに係る研究開発費は589百万円であります。

* SYNCSOL®は、シリル保護技術(SIPS®)と無保護アミノ酸縮合(R-Coupling®)からなる独創的なペプチド液相合成技術のプラットフォームです。

 

(5) 全社共通及びその他の研究分野

情報通信分野においては、次世代半導体分野における新規電子材料、および高速通信分野を目指した光機能材料の企画と市場開発を行っております。半導体デバイスの熱マネジメントにおいて重要な役割を果たす放熱材料として、アリエカ社の開発した液体金属を用いた放熱材料に注目し、同社との共同開発に取り組んでおります。また、大容量信号処理かつ低消費電力を可能にする光電融合技術に向け、低伝搬損失と高信頼性を特長とする光配線材「SUNCONNECT®」の研究開発を進めてまいります。

環境エネルギー分野においては、リチウムイオン電池の特性及び生産性向上を目的としたスラリー添加剤、燃料電池用のPFASフリーイオン伝導ポリマー、次世代太陽電池材料としてペロブスカイト太陽電池の耐久性を向上可能なコーティング材料の開発を行っており、カーボンニュートラルに資するエネルギーデバイスへの材料提供に向けて鋭意進めてまいります。

ライフサイエンス分野においては、当社独自の核酸構造を用いた創薬基盤技術を活用した製薬企業数社との共同研究が順調に進捗し、複数のプロジェクトでテーマが進展するなど、提携を拡大させております。2019年より実施してきました株式会社三和化学研究所との歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症の治療を目的としたアンチセンス核酸創薬共同研究においては開発化合物(SK-2407/SN-001)の選定に成功し、共同で国内開発を進めてまいります。また、同社とは新たに包括的提携契約を締結、戦略的に複数の新規核酸医薬品の創製、開発に取り組んでまいります。更に生体物質付着防止材料 prevelex®や細胞培養材料 FCeM®などの再生医療材料の開発に注力しております。

全社共通及びその他の研究分野に係る研究開発費は3,941百万円であります。