文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業理念(社是)「顧客第一」と社名「大気社」が示す「エネルギー・空気・水」の環境対応技術を核として、グローバルに事業領域を拡大し、安定的かつ持続的な成長を目指します。そして全てのステークホルダーにとって魅力ある会社づくりをすすめ、社会に貢献してまいります。
当社グループは、「エネルギー・空気・水の創造的なエンジニアリングにより、持続可能な社会へ貢献する」、「多様な人材・知見を融合し、一人一人がお互いを尊重し合うグローバル企業となる」ことを長期ビジョンとして掲げております。これらの長期ビジョンの実現により、当社グループの経済的価値と社会的価値の長期的・持続的な増大を目指してまいります。
① エネルギー・空気・水の創造的なエンジニアリングにより、持続可能な社会へ貢献する
Innovative Engineering for a Sustainable Society - with energy, air and water -
社会的課題の解決へのチャレンジを通じて、エネルギー・空気・水に関わる、ハード面の技術革新、ソフト面の経験知の蓄積、新たな領域への知的探索により、総合エンジニアリング力の強化を図ります。それが新規事業・新規顧客の開拓や既存顧客への「専門性の高い顧客ニーズへの処方箋」の提供に繋がり、当社の差別化戦略となると考えております。そして差別化によって、企業成長を実現すると同時に、社会的課題の解決、すなわち持続的な社会への貢献を目指します。その1つとして、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでまいります。
② 多様な人材・知見を融合し、一人一人がお互いを尊重し合うグローバル企業となる
Diversity, Equity & Inclusion as a Global Company
当社にもともとあった多様性を受容する企業風土をベースに、社員一人一人の価値観を大切にし、より各人が能力を発揮でき、相乗効果を生む仕組みづくりを進め、世界で働く多様な視点や知見を持った人材が交わる真のグローバル企業として、国を問わず活躍できる企業となることを目指します。さらに当社においては、技術開発を含む事業活動において社内外の多様な人材・技術を結合・融合させて新たな価値を生み出すこともインクルージョンの1つと捉え、2つの意味でインクルーシブな企業を目指します。
当社グループは、2025年5月15日に開示しました10年プランにおいて、2035年のありたい姿として、「Be Engineering for a Sustainable Society」(「持続可能な社会の構築」に貢献するグローバルエンジニアリング企業)を掲げております。広範な産業領域での生産革新の進展と脱炭素などのサステナビリティが問われる中で、さまざまな工学分野の要素技術の組み合わせで、最適なシステムを構築することで、社会課題を解決することが当社グループの使命と考えております。2035年のありたい姿の実現に向けて、「Innovative Engineering」、「Global Inclusion」の2つの指針を掲げました。また、それら2つの指針の下に当社にとっての「8つの戦略的焦点」を定めました。
「さまざまな工学分野の要素技術」を複合化することで求められる機能を発揮するシステム・仕組みを構築し、スマートでカーボンニュートラルな産業発展に貢献する企業を目指します。
エレクトロニクス、自動車、医薬品、データセンターなどの先端産業領域に対するエンジニアリングを強化し、大気社の「原点」である独自性を発揮します。
デザインの提案から施工、アフターケアまで一貫したサービスを提供することで、高付加価値を創造するエンジニアリングを目指します。
カーボンニュートラルとデジタル化に挑む企業の生産環境の脱炭素化やスマート化を推進し、最先端技術を駆使したソリューションを提供します。
地球規模(グローバル)の環境・社会課題の解決をめざして世界各地(ローカル)に根差したビジネスを展開し、世界各地の産業・社会・人々と共に繁栄できる企業を目指します。
50年をかけて構築した20カ国・30拠点に及ぶグローバルネットワークを活用し、国内外の産業界との信頼関係を強化します。
世界各地域の産業界のニーズに応え、課題を解決するエンジニアリングとバリエーションのある高度技術を提供するため、5つのグローバル研究開発拠点を設置し技術革新に挑みます。
世界各地の市場ニーズを熟知した人材による事業展開を通じ、地球規模の環境・社会課題の解決に貢献します。
半導体・電子部品、モビリティ、バッテリー、バイオ、医薬品、データセンターなどの成長産業市場に注力し、技術革新と市場ニーズに応えることで事業拡大を図ります。これにより、持続可能な社会を支えるエンジニアリングサービスを提供します。
北米、インド、欧州、ASEANなどの海外市場において、求められる技術と製品を提供し、地域特性に合わせた戦略を展開することでグローバルな競争力を強化します。
当社グループの「技術ケイパビリティ」の「見える化」、独自の技術・ノウハウの「標準化」を通してグローバルに成長を遂げる非日系企業の開拓を進めます。それにより日系企業中心の顧客ポートフォリオの変革を目指します。
産業・社会のCO2削減に貢献する新技術を駆使した新しい事業の開発による「GXエンジニアリング技術」の高度化と、自動車向け塗装システム事業で培った先進的なファクトリーオートメーション技術による「DX・オートメーション技術」の高度化を通して、広範な産業領域における「グリーン化」と「スマート化」に貢献します。
「急増するビジネス機会」への対応力を強化するため、「人的資本の拡充(数的・質的)」と「ビジネスプロセスの合理・効率化」を図ります。
成長戦略会議やデジタルイノベーション委員会の新設、デジタル戦略委員会の機能強化、ROIC経営のグループ全体への浸透等により、事業推進とモニタリング体制を強化します。
「グローバル共通システム基盤」の導入や、「ITガバナンス体制」の強化、「アセアン地域管理部」の新設などの取り組みにより、グローバルにガバナンスの強化を図ります。
データ分析とシミュレーションを活用した新しい価値の提供、海外拠点間の連携・共創による活性化、業務プロセス改善による業務効率化と高収益化を推進します。
10年プラン2035及び中期経営計画の財務・非財務目標は、以下のとおりであります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、長期ビジョン・2035年のありたい姿の実現に向け、2026年3月期から始まる中期経営計画を「変革に向けた再構築」の3年間と位置づけ、財務戦略の実行、成長戦略の実行、成長戦略を支える制度・体制の整備を経営課題と定めております。
最適な資本バランスを考慮しつつ、政策保有株式の売却、投資前営業キャッシュフロー、分配可能資金、借入金による資金を活用し、将来のキャッシュ創出力を強化するための成長投資、基盤インフラ投資、また、株主還元として配当、自己株式取得を着実に実施してまいります。
※キャピタルアロケーションの地域別内訳
市場戦略としては、半導体・電子部品市場におけるプレゼンスの維持と向上を目指しています。半導体分野では、九州や東アジアでのプロジェクト体制強化、精密温調機器ソリューションの提供を進めます。電子部品分野では、水再利用事業への参入、エネルギーマネジメント事業の強化、海外電気事業の強化を図ります。それらを支える取り組みとしては、日本では人的リソースの増強と最適化、生産性向上、協力会社との関係強化を推進し、ASEANでは組織体制の強化としてシンガポールに統括部を設置し、情報共有や人的リソースの強化、技術イノベーション拠点の設立を進めます。さらに、カーボンニュートラルに向けたGXエンジニアリング技術開発を推進し、エネルギーソリューションの高度化、資源循環対応の強化、環境規制対応の強化を図ります。
四輪および非四輪市場におけるプレゼンス維持・向上を目指しています。四輪市場では、グリーンファクトリー化によるドライ加飾技術の実用化、四輪車OEMへの積極展開、スマートファクトリー化によるオートメーション技術の高度化、欧州顧客ポートフォリオの拡大を推進します。非四輪市場では、四輪市場で磨いてきた塗装技術、カーボンニュートラル技術の他産業への展開として、環境システム事業との営業シナジーで産業空調領域のスマート化に貢献していきます。多品種少量生産のスマートファクトリー化、ドライ加飾適応市場の探索、デジタルツイン技術によるコンサルティングからアフターメンテナンスまでの一貫したサービス提供、GHG排出量の削減提案による工場運営コンサルティングの実現を図ります。中でもバッテリー産業においては、環境システム事業と塗装システム事業の技術シナジーを活用し、増加するバッテリー工場建設需要に応える新しい製造ライン構築方法を提案し、新たな価値を創造します。
事業開発本部のもと、調査~研究開発~営業~事業開発まで一貫して担う切れ目のない体制を確立し、中長期的な事業化実現に向け、各プロセスの連動を強化してまいります。事業開発基盤の強化を図るとともに、社内外ネットワークによる多様な技術の融合を通して、技術、産業分野、地域の3つの側面から「未知・未開拓領域」の探索を進めます。具体的には、熱エネルギー・排気処理、サーキュラーエコノミー(循環経済)への貢献、CO2回収などの環境・社会課題を解決する「新しい事業」を推進します。
成長戦略会議やデジタルイノベーション委員会の新設により経営資源配分戦略とデジタル戦略の監督・執行を強化するとともに、デジタル戦略委員会に①全社BIM戦略、②グローバルコミュニケーション、③ITガバナンス・情報セキュリティ、④AI積極的活用、⑤電子購買の「5つの専門部会」を設け、デジタル戦略を推進してまいります。
海外関係会社のナショナルスタッフのトップ(CEO)をグループ経営に参画させる「グループ執行役員制度」、成長投資などの投資インセンティブを高め長期的な投資を継続推進するための「新管理会計制度」、「グローバル共通システム基盤」の導入などによりグローバルガバナンスの強化を図ります。
グローバル人材ポートフォリオマネジメントの構築に向け、まずASEAN地域から海外拠点の人材データベースを構築・運用します。技術カルテによる可視化とマネジメントを実現し、効率的な運用を目指します。新卒およびキャリア採用では、奨学金制度や大学連携、スカウティングを活用し、専門人材を獲得します。さらに、海外向け人材育成体制の強化、魅力ある評価・報酬制度の整備、ロイヤリティ・エンゲージメント向上のための施策を推進し、グローバルな人材基盤を強化します。
(1) サステナビリティへの対応
大気社グループのサステナビリティへの考え方は「創業理念」「企業理念」に示され、従来から引き継がれてきたものですが、昨今、国際社会においてサステナビリティをめぐる課題解決への機運が高まる中、本業を通じて豊かな環境の創造と産業社会の発展に貢献していくことこそが当社グループの存在意義(パーパス)であるとの認識を深め、持続可能な社会の実現と企業の永続的成長に向けて、グローバルな社会的課題への積極的な取組を進めています。
サステナビリティをめぐる課題への対応は、中長期的な企業価値向上の観点から、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題です。こうした趣旨のもと、2050年を念頭においた経営環境の見通しやビジネスモデルの変化等をテーマに、役員のオフサイト・ディスカッションを継続的に実施しています。2024年度においては、2025年の新中期経営計画・長期経営計画の開示に向け、未来の社会環境の変化及び将来像を見据えた「大気社のグローバル成長戦略」というテーマで、中長期的な視点から当社の方向性について議論しました。また業務執行取締役に対しては、ESG等の非財務目標を評価要素とし、企業の中長期的な成長を促すべく業績連動報酬を導入いたしました。この制度に関しては、報酬諮問委員会において客観性・透明性ある評価を実施しております。
(サステナビリティ経営の推進体制)
サステナビリティ全般に関するガバナンスにつきましては、経営会議の諮問機関として、執行側の会議体という位置づけで、2023年2月にサステナビリティ推進委員会を発足し、モニタリングを実施しております。さらに2024年2月には、社外役員の客観性のある意見を取り入れ、一層の活動推進を図るべく、新たに取締役会の第四の諮問機関として、独立社外取締役を委員長としたサステナビリティ委員会を設置いたしました。サステナビリティ委員会では取締役会からの諮問事項を討議・検討し、その結果を少なくとも年1回以上の頻度で取締役会へ答申しております。
<サステナビリティ推進体制図>

サステナビリティ全般に関するリスク管理につきましては、リスクマネジメント委員会において、当社グループの総合的な観点から、各リスクのリスク度評価、対応すべきリスクの選定、リスク低減に向けた方針等の策定・実行に取り組んでいます。同委員会は代表取締役社長を委員長として、年2回及び必要時に開催することとし、全社的なリスクマネジメントの基本方針及び責任体制、運営などを定め、周知・徹底を図っています。
当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
・気候変動に関する取組
・人的資本・多様性に関する取組
それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、当社の企業統治の体制については「
(2) 気候変動に関する取組
当社グループは、優先的に取り組むべき経営上の重要課題(マテリアリティ)の一つに「気候変動の緩和と適応」を位置づけ、本業である省エネルギー性能の高い空調・衛生設備や塗装プラントの提供を通じて、環境負荷低減に取り組んでおります。
なお、2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明しております。
① ガバナンス
気候変動への対応に関してはリスクや機会を認識しビジネスチャンスとして捉え、経営戦略に織り込む活動を行っています。経営会議では、環境保全活動に係る全社的な行動計画を策定しており、当該計画について取締役会に付議し決定しています。
また、全社方針検討会では、計画に基づいた環境保全活動の取組状況を確認・評価するとともに目標の見直しを実施し、その結果を年2回以上の頻度で取締役会へ報告しています。
これらの報告を受けた取締役会では、気候関連のリスク・機会について監督を行い、目標及び進捗のモニタリングを実施しています。
気候関連リスク・機会の評価及び管理については、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長に責任を付与しています。
② 戦略
気候関連のリスク及び機会を特定・評価し、事業に与える影響を把握するため、環境システム事業及び塗装システム事業を対象に、2035年度において、当社グループへの影響度が高いリスクと機会の要因を洗い出し、世界の平均気温上昇が2℃未満に抑制されることを想定した2℃未満シナリオと、4℃程度上昇する4℃シナリオについて、それぞれ政策や市場動向の移行に関する分析と、災害などによる物理的変化に関する分析を実施しました。当社グループは「炭素税」「顧客行動の変化」「省エネ・再エネ技術の普及」を移行の要素、「平均気温の上昇」を物理的な要素と認識し、重要なリスク・機会として特定しました。
ア 4℃シナリオ
政府による低炭素政策も限定的で、低炭素社会への移行は限定的な範囲に留まり、平均気温の上昇によりヒートストレスや自然災害リスクが高まります。これらは当社グループの事業に対し、以下のような影響をもたらすと想定されます。日本国内では炭素税が導入されない想定のため、炭素税導入による資材原価の上昇の影響は限定的です。事業ごとにみると、環境システム事業ではネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)、塗装システム事業では省エネ設計プラントの需要が広がるものの、顧客からの低炭素対応要請による売上への影響も限定的と想定されます。その一方で、平均気温の上昇に伴い、植物工場・空調システムの需要の取り込みや施工現場における熱中症・感染症対策の強化が必要になります。
イ 2℃未満シナリオ
物理リスクの影響は限定的な範囲に留まりますが、各種規制や顧客からの要請など移行リスクへの対応が必要になります。これらは当社グループの事業に対し、以下のような影響をもたらすことが想定されます。政府による低炭素政策の強化により、炭素税負担及び資材原価の上昇の影響がもたらされ、コストの上昇が見込まれます。事業別にみると、環境システム事業では、顧客からの低炭素対応要請が強まり、省エネ規制、新築のZEB義務化等により、既存の空調施工売上は減少する一方で、当該要請等に対応した製品・技術の開発により売上が拡大することが見込まれます。塗装システム事業では、塗装工程の低炭素化への需要が拡大し、低炭素化・省エネ化非対応の既存の製品売上が減少する一方で、これらの対応をした製品・技術の開発により売上が拡大することが見込まれます。
シナリオ分析の結果、当社グループの事業に影響を与える重要な気候関連のリスク及び機会、2035年度時点における財務影響は以下のとおりです。
ⅰ)移行リスク・機会
ⅱ)物理リスク・機会
詳細は当社ウェブサイトにて開示しております。
③ リスク管理
当社グループでは、気候変動を含む重大なリスクの低減と顕在化するリスクの最小化に努めています。
リスクマネジメント委員会においては、当社グループの総合的な観点から、各リスクのリスク度評価、対応すべきリスクの選定、リスク低減に向けた方針等の策定・実行を行っています。同委員会は、代表取締役社長を委員長として、年に2回及び必要時に開催することとし、全社的なリスクマネジメントの基本方針及び責任体制、運営などを定め、周知・徹底を図っています。
気候変動を含む重大なリスクに関しては、各所管部門において項目を抽出し、「経営への影響」や「発生の頻度」を考慮に入れ、大・中・小の3段階で「リスク度(重要度)」を判定しています。その中で戦略や財務上、重要な影響を与える大の項目に関しては、優先的に対応すべきリスクとして選定し、重点管理方針・目標の立案を行った上でリスクマネジメント委員会へ報告します。これを受け、リスクマネジメント委員会では、全社的・統合的な観点から各リスクのリスク度評価及び重点管理方針・目標について討議し、基本方針の策定を行います。その後、各所管部門では活動計画の遂行状況のモニタリングを実施し、結果をリスクマネジメント委員会へ報告します。リスクマネジメント委員長(代表取締役社長)は、全社のリスクマネジメントの状況を取りまとめ、内部統制委員会での討議を経て、年に2回、取締役会への報告を行います。
また、経営全般の重要事項を決定する経営会議では、気候変動のリスクや機会に対する討議をはじめ、気候変動シナリオの見直しや長期戦略への反映を行っています。気候変動リスクを含めた関連の課題に関しては、リスクマネジメント委員会の報告と並行して、取締役会への報告の検討も行います。
④ 指標と目標
ア 気候関連のリスク及び機会の管理・評価に用いる指標
気候関連のリスク及び機会の管理のため、温室効果ガス(GHG)排出量だけでなく、エネルギー消費量や水使用量、廃棄物排出量等の指標を設定して種々の対策を実行しています。
(注) 1 上記GHG排出量につきましては、以下のとおり、自主的に任意の保証を受けております。
保証提供者:株式会社サステナビリティ会計事務所
代表者:福島隆史(公認会計士)
保証対象:2023年度 温室効果ガス排出量Scope1、Scope2(マーケットベース)、Scope3(カテゴリー1,2,3,4,5,6,7,11,12計)
保証基準:ISAE3000、ISAE3410 保証水準:限定的保証
受領した2024年10月1日付「独立第三者の保証報告書」は、当社ウェブサイトに掲載しております。
https://www.taikisha.co.jp/sustainability/taikisha/tcfd/pdf/pdf-index-01.pdf
2 2024年度のGHG排出量につきましては、2025年10月発行の統合報告書で開示予定です。
イ 削減目標
当社グループは、気候変動問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、事業活動に伴うCO2排出量を指標とし、SBT認定を視野に、2030年度までに2022年度比でScope1・2を42%削減、Scope3を25%削減する目標を設定しました。今後も当社グループの設計施工による設備の運用段階におけるCO2排出削減に関して積極的に提案活動に取り組むとともに、国内・海外拠点の使用電力の再エネメニューへの切り替えや、オフサイトPPA導入などを通じて脱炭素社会の実現に貢献していきます。なお、これらの情報については、当社ウェブサイトや統合報告書でも開示しております。
https://www.taikisha.co.jp/sustainability/taikisha/tcfd/#anc-04
https://www.taikisha.co.jp/sustainability/report/
(3) 人的資本・多様性に関する取組
当社グループの人的資本・多様性に関する基本的な考え方や取組は、「Diversity, Equity & Inclusion 多様な人材・知見を融合し、一人一人がお互いを尊重し合うグローバル企業となる」という長期ビジョンを目指したもので以下のとおりです。
① ガバナンス
当社は、取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、指名諮問委員会を設置しております。この委員会は取締役会からの諮問に基づき審議し、答申を行い、取締役会が決議を行います。指名諮問委員会は経営幹部の育成を担う人材育成委員会との連携強化についても審議し、重要事項は取締役会に付議されます。
経営会議では当社グループの業務執行に係る事項について審議・迅速な意思決定を行い、その中で重要な案件は取締役会に付議されます。また、全社方針検討会を設置し、年度経営方針の達成状況の検討・検証を行い、その報告を受けた取締役会では人的資本関連のリスク・機会について監督し、目標及び進捗のモニタリングを実施しています。指名諮問委員会では、CEOサクセッションプラン状況のモニタリング、業務執行取締役の再任アセスメント、新任社外取締役候補者、監査役候補者等について審議し、執行役員については人材育成委員会でプール人材の育成や指名諮問委員会で選定する等、執行側と監督側の連携を構築しています。海外人材の登用を見据えたグループ執行役員制度の導入等についても検討するなど、今後ステークホルダーへの説明責任を果たすためCEOサクセッションプランのモニタリングを強化し、執行側の人材育成委員会との連携により一貫した人材育成を実現することを目指しております。
② リスク管理
リスクマネジメント委員会において、当社グループの総合的な観点から、各リスクのリスク度評価、対応すべきリスクの選定、リスク低減に向けた方針等の策定・実行を行っています。同委員会は、代表取締役社長を委員長として、年に2回及び必要時に開催することとし、全社的なリスクマネジメントの基本方針及び責任体制、運営などを定め、周知・徹底を図っています。
人的資本に関するリスクについては、各所管部門において項目を抽出し、「経営への影響」や「発生の頻度」を考慮に入れてリスク度を判定しています。その中で戦略や財務上重大な影響を与えるリスク度が高い項目に関しては、優先的に対応すべきリスクとして選定し、重点管理方針・目標の立案を行った上でリスクマネジメント委員会へ報告します。これを受けて、リスクマネジメント委員会では、全社的・総合的な観点から各リスクのリスク度評価及び重点管理方針・目標について討議し、基本方針の策定を行います。その後、各所管部門では活動計画の遂行状況のモニタリングを実施し、結果をリスクマネジメント委員会へ報告します。リスクマネジメント委員長(代表取締役社長)は、全社のリスクマネジメントの状況を取りまとめ、内部統制委員会での討議を経て、年に2回、取締役会へ報告します。
また、経営全般の重要事項を決定する経営会議では、人的資本に関するリスクや機会に対する討議をはじめ、人材戦略の見直しや長期の経営戦略への反映を行っています。人的資本に関するリスクを含めた関連の課題については、リスクマネジメント委員会の報告と並行して、取締役会への報告を行います。
人的資本に関し人材戦略のベースとなる重要課題(マテリアリティ)、並びに当社グループが認識・考慮しているリスクと機会は以下のとおりです。
なお、人権に関するリスク及び人権リスク低減や防止の取組は「
「
(https://www.taikisha.co.jp/sustainability/society/human-rights-policy/)
をご参照ください。
③ 戦略
(1) 中期経営計画(2022年度~2024年度)の振り返り
「変革・成長を支える経営基盤の強化」を基本方針の一つに掲げ、断続的に付加価値を創造できる事業構造への転換に向け、KPI設定、進捗管理を行い、「イノベーションを生み出す組織風土づくり」「社員エンゲージメントの向上」「計画的な人材価値の開発」の実現に向け取り組みを行いました。中期経営計画における指標及び目標・実績は次のとおりとなります。
※1 当社実施のエンゲージメントサーベイの「キャリアへの配慮」に対する肯定的な回答の割合を基に算出しております。
※2 当社実施のエンゲージメントサーベイの「仕事に対するフィードバック」に対する肯定的な回答の割合を基に算出しております。
※3 当社実施のエンゲージメントサーベイの「仕事に対するポジティブな感情」に対する肯定的な回答割合を基に算出しております。
※4 当社実施のエンゲージメントサーベイの「自発的な行動」に対する肯定的な回答割合を基に算出しております。
※5 当社実施のエンゲージメントサーベイの「ダイバーシティへの対応」に対する肯定的な回答割合を基に算出しております。
※6 当社海外連結子会社及び関連会社の集計値となります。
※7 病気やケガがないときのパフォーマンスを100%としたとき過去4週間におけるパフォーマンスの自己評価となります。
※8 記載する指針及び目標については、当社において、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、「海外現地法人社長の現地雇用者数」を除き連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(2) 経営理念を実現するための「価値創造基盤」「人的資本に関する基本理念」の制定
当社グループは「顧客第一」の創業理念を実現するため、事業を通じて社会・環境・経済の3つの価値を創造しています。そして、これらを支える基盤である人的資本を重視し、企業理念や経営ビジョン・事業ビジョンを具現化するとともに、人・組織のあるべき姿及び人材マネジメントの方向性を明確にすることを目的として、「価値創造基盤」と「人的資本に関する基本理念」を制定しました。
この「価値創造基盤」は、(ⅰ)基本思想、(ⅱ)コミットメント(人的資本に関する基本理念)、(ⅲ)実現に向けた指針の3つで構成されています。また、「人的資本に関する基本理念」は、経営ビジョン・事業ビジョンを支える人・組織の在り方として理念体系図においてビジョンと行動理念の間に位置づけられ、行動理念はこの基本理念に基づく指針及び規範として機能しています。

(3) 「長期ビジョン」と「10年プラン2035」における「人的資本の増強」
2025年5月15日に公表した、2035年の目指す姿「10年プラン2035」における当社グループの成長戦略を成功させる「人的資本の増強」の実現に向けた3つの人材戦略と2つの重点施策を掲げております。

人材戦略①:グローバルな人材ポートフォリオ・マネジメントの構築
1.成長戦略を実現するために必要な人材像を特定し、人材ポートフォリオを可視化する
当社グループの成長戦略を支える4つのキャリアプロフェッショナル人材を定義し、各人材が果たすべき役割と、各人材が持つべき能力・専門性を明確にしました。これにより、人材のAs-Is(現状レベル)とTo-Be(求める人材像)を可視化し、人材の充足を目指します。

2.人材ポートフォリオ・マネジメントシステムを基軸に人材戦略を実現する

人材戦略②:必要な人材の採用と育成
人材採用/人事制度改革・早期人材育成プログラムを通して人的資本(質的・量的)の拡充を目指します。
奨学金制度による優秀な外国籍人材の獲得や技術に特化した大学との連携により新卒採用を強化します。また、キャリア採用(スカウト、リファラル、アルムナイ等)による即戦力の拡大と、人事制度改革(社内ローテーション、定年延長、ジョブ型雇用)等、多様なアプローチにより効果的な人材採用・活用戦略を推進します。
人材育成については、4つの人材ポートフォリオで定めた人材定義を基に自律的なキャリア開発が可能となる人材育成体系を整備し、教育するとともに業務や経験を通した育成を行います。さらに若手社員の育成プログラムを充実させると共に社員の潜在能力を見極め、習熟段階に応じた早期の人材育成を目指します。また、グローバル化対応として、新設したアセアン地域管理部により、アジア地域を中心に現地経営職候補者の早期育成や各国特有事項に基づいた人材育成を実施します。
人材戦略③:「イノベーション」と「ワクワク」を生み出す職場風土
多様な人材が能力を発揮できる職場環境を整備するDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進を通じて、社員一人一人の能動的な挑戦を支援し、挑戦から得た経験を適正に評価することで社員が働きがい・働きやすさを感じながら新たな挑戦に取り組んでいける、「革新(イノベーション)を生み出し、ワクワクする職場風土」を醸成していきます。

グローバル化対応として、制定した人的資本に関する基本理念の浸透を通して、ロイヤリティ・エンゲージメントの向上を図るとともに社員の満足度やエンゲージメントのレベルを測定し、課題点を可視化したうえで有効な施策の立案と実行を行っていきます。
重点施策①:エンジニアリング力の強化
技術戦略に特化した人材を輩出する高度専門人材認定制度の運用を強化すると共に、Design(設計)、Build(施工)、Care(アフターケア)のすべてを担える「Design・Build&Care人材」を育成・増強することで、エンジニアリング力の強化を図ります。また、半導体・製薬など特定の分野に特化した人材を育成するための専門教育機関を新たに設立します。
重点施策②:グローバル化対応力の強化
日本人社員については、早期に海外勤務を経験する機会を提供する海外トレーニー制度、海外拠点長の経験、上級管理職への登用やCEO候補としての育成といった、年齢に応じた育成ステップを通じてボーダレスな活躍を推進します。ナショナルスタッフについては、優秀な人材を早期にナショナルスタッフ経営幹部に選抜して海外拠点の経営に参画させると共に、日本及び海外拠点でのグローバルな経験を通じて育成します。
当社グループの人的資本に関する指標及び目標は以下のとおりとなります。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの事業においては、受注環境の変化が、売上、利益に大きく影響を与える可能性があります。環境システム事業では、海外における日系企業の投資の減少、塗装システム事業では、国内自動車メーカーの国内生産縮小の継続や世界的な自動車販売の低迷による設備投資の減少により、受注工事高が減少し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、自動車メーカー各社のカーボンニュートラル実現に向けた生産設備の変化への対応が遅れると、顧客離れを招き、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し環境システム事業では、海外において、現地系企業への営業体制の強化、国内営業と連携した日系メーカーへの受注活動の推進を行ってまいります。また、塗装システム事業では、カーボンニュートラル実現に向けた顧客の生産設備に変化をもたらす当社の技術開発を加速するとともに、自動化技術を軸に、従来からの四輪・二輪車市場に加え、他の産業への参入を推し進め、オートメーション事業の拡大を目指してまいります。
当社グループが事業を展開する地域において、地震、津波、風水害等の自然災害や、感染症等の世界的流行が発生したことで損失が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。なお、大規模・広域な自然災害の発生にあっては、当社グループの直接的な物的・人的被害のみならず、顧客の事業活動、ひいては経済情勢にまで影響が及び、その影響が長期化することによって、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し国内外の不測の災害や事故、事件などの発生に備え、危機管理の基本方針を定め、危機管理体制を構築しています。危機が発生した場合、人命や事業継続に対する影響度に応じて対応レベルを3段階に区分し、それぞれのレベルに対応した危機対策を実施することを定めています。
海外各地において展開している事業については、予期しない法規制の改正、政情不安等が業績に影響を及ぼす可能性があります。外貨建工事契約に係る請負代金の入金及び発注代金の支払いについて為替変動による損失発生の可能性があります。さらに、連結財務諸表作成にあたっては海外関係会社の財務諸表を換算するため、為替相場の変動により当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、客先の倒産による債権の貸し倒れ、事前に想定できなかった問題の発生やこれらのリスクに対処できないことなどにより、海外関係会社の事業計画が達成できず業績が悪化し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し海外進出先の政治・経済や法令の動向について情報収集を行い、カントリーリスク・海外の法規制リスクの抑制に努めます。外貨建工事契約に係る請負代金の入金及び発注代金の支払いから発生する為替リスクについては、先物為替予約等のヘッジを実施し、債権の未回収リスクについては、受注前審査による与信管理を強化するなど、可能な限りリスクの回避をしております。また、引き続き海外関係会社のガバナンス体制の高度化を進めてまいります。
カーボンニュートラル、省エネルギー、環境対策の改善・向上、オートメーション化等、顧客からの高まるニーズに対応したシステムの開発が遅れた場合、他社との技術的な差別化が図れず、受注機会損失や顧客からの信頼度や企業評価の低下などにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、カーボンニュートラルの実現に向けた脱炭素ビジネスへの取組としての環境負荷低減技術、当社の強みとなる技術である自動化技術の開発・実証を進め、社会的課題の解決を目指してまいります。そのために、技術開発センターや新宿本社のR&Dサテライト施設「TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku」を活用し、コミュニケーションの幅を広げ、社内外のソリューションの融合やイノベーションの発掘につなげていくとともに、デジタル技術を活用し、当社グループの横断的な活動の強化や学術機関・スタートアップ企業との融合による革新的技術開発の推進により、社会のニーズを先取りしたテーマに取り組んでまいります。
当社グループの事業分野である、建設業・設備工事業は、人材に大きく依存しております。国内においては、高齢化の進展や技術者育成の遅れにより、スキル・経験を有する技術者・技能者の数や質の低下が懸念されることに加えて、2024年4月から建設業においても時間外労働の上限規制が適用されたことに伴い、技術社員の総労働時間が減少し、中長期計画を達成するための設計・施工体制が構築できない場合、業績への影響が発生する可能性があります。また、海外においても、現地従業員の育成の遅れや離職により、現地化推進を担う中核人材が確保できず、長期的な海外事業展開に影響が発生する可能性があります。
これに対し協力会社との連携を強化するとともに、従前より行っているモジュール化の更なる推進や現場業務のフロントローディングの推進による現場作業の省力化と業務負荷平準化を進めてまいります。社内においては、研修を通じた基礎技術力の向上と現場における実践教育により、社員の技術力アップを図り、人材の育成を進めてまいります。また、デジタル技術を活用し、生産性を高めることにより、働き方改革を進め、魅力ある職場づくりを行い、人材確保に努めます。
また、海外においても、グローバル人事制度の導入により、中核人材の確保と育成に努め、現地化を進めてまいります。
なお、社員の健全な心と体の維持・増進のため、2020年に「健康経営宣言」を発表し、代表取締役社長を健康管理責任者とした健康経営推進体制を明示し、様々な社員の健康施策の立案・実施とともに、その施策効果の検証と継続的な改善を行ってまいります。
当社グループの事業分野は、建設業法、独占禁止法、労働基準法をはじめ、多くの法的規制を受けており、当社グループ役員または従業員が法令に違反する行為を行った場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し法令順守の維持・意識の向上を図るため、eラーニングなどによるコンプライアンス教育プログラムの継続的な実施とフォローを行い、また、コンプライアンス意識調査を実施し、コンプライアンス活動の有効性の検証と改善プロセスへの反映により、ルール違反を起こさない風土・仕組みづくりを行っていきます。
施工プロセスにおける事故、品質不具合等の契約不適合が発生した場合、社会的信用の失墜、及び顧客からの訴訟も含めた損害賠償請求等により業績面の影響が発生する可能性があります。請負工事については、顧客との間の工事請負契約に基づき、竣工後一定期間、契約不適合責任を負っており、この契約不適合責任に伴って発生する費用について、過去の実績に基づき完成工事補償引当金を計上しておりますが、当該費用が引当金残高を上回って発生することで、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し当社グループは、安全関係のICT・デジタル技術の活用や工場加工品比率の向上を通じて現場作業を削減し、安全と品質に関わる施工リスクの低減を図るとともに、協力会社への作業手順の共有と指導を徹底し、社員・サプライヤーの教育水準を高めることで、安全意識と品質のさらなる向上、安全管理体制の強化に努め、建設現場における安全衛生管理に万全の対策を講じています。また、施工管理システムの見直しや施工管理のデジタル化、品質に関する情報共有、不具合の未然防止策の検討などを行う技術本部の新設によりグループ全体で安全、技術品質の確保をするための体制と活動を強化してまいります。なお、万一、訴訟等が提起された場合に備え、弁護士と連携し、訴訟等に適切に対応する体制を整備しております。
燃料高騰などの影響による建設資材の調達価格の高騰や少子高齢化・担い手不足により労務単価が高騰し、これを請負金額に反映させることが困難な場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し受注時の地域別適正原価の把握や、契約における物価変動リスクのヘッジなどを通じ、資材価格及び労務単価の変動リスクの抑制に努めております。
年々、高度化、多様化、巧妙化するサイバー攻撃や、従業員の不正による故意のデータ持出し等により、個人情報や顧客情報等の機密情報が漏洩した場合、信用の失墜や損害賠償などにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループのITセキュリティ診断結果を基にリスク軽減施策のロードマップを策定し、対策を実施しております。また、今後デジタル技術の活動を展開していく上で、データプラットフォームの連携などにより機密情報の漏洩リスクがさらに高まっていくことから、デジタル戦略委員会にITガバナンス・情報セキュリティ分科会を発足し施策を推進してまいります。また当社ではITインシデント発生時の対応体制(大気社版CSIRT)を構築し、全社員を対象としたITセキュリティのeラーニングや標的型攻撃メール訓練など社員教育を進め、機密情報の外部への流出防止に努めております。
今後、脱炭素社会へ移行していく中で、政策、法律、技術、市場が変化し、企業の財務やレピュテーションに様々な影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいても、顧客の気候変動対応の動きにうまく適応できないことによる顧客離れ、カーボンニュートラル対応技術開発の遅れによる競争力の低下、炭素税導入によるコスト増加、また、平均気温上昇による労働生産性の低下や猛暑日の増加による施工中止など、これらの移行・物理リスクが当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、設備の小型化、省エネ化など低炭素な施工技術・システムの開発、工場のZEB化など省エネ設備の施工拡大、施工における機械化・自動化の推進などに取り組んでまいります。
当社グループの事業活動により人権への負の影響を引き起こした場合、もしくはそれを助長するような事態が生じた場合には、是正や救済の対応に関する追加的な費用の発生、社会的信用の低下を起因とした事業活動の停滞などにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、グローバルに事業を展開する企業として人権尊重を最も重要な事項の一つとして認識しており、当社グループの事業活動における人権に関する規範として「大気社グループ人権方針」を定めています。同方針のもと、ガバナンスの順守、サプライチェーン全体を対象とした人権デュー・ディリジェンスの実施、役員・社員に対する教育・啓発活動など、人権尊重に向けた取組を推進し、人権リスクの低減や防止に努めております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、これらの会計基準に基づき、決算日における資産・負債及び収益・費用の数値に影響を与える見積りが行なわれているものがあります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」をご参照ください。
なお、これらの見積りにつきましては、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
当期における世界経済は、東欧や中東などの地政学的なリスクの長期化や、資源エネルギー価格の高止まり、トランプ新政権の関税政策への警戒感など不安定な状態が続きました。米国では、政策金利の引き下げがあったものの、依然として高い水準であり、インフレ率も高止まって推移しました。一方で、底堅い雇用や所得環境を背景とした個人消費の増加により景気は堅調に推移しました。中国では、不動産市場を始めとした内外需要の低迷により景気は減速して推移しました。東南アジアでは、中国からの設備投資シフトや、労働市場の改善などを背景に内外需要は回復に向かっており、景気は堅調に推移しました。日本経済は、海外における金融政策や地政学リスクなどにより景気下押しの懸念が続いたものの、堅調な個人消費やインバウンド需要等を背景に緩やかに回復しました。
当社グループにおける市場環境につきましては、海外市場では世界経済の減速懸念はあるものの、各メーカーによる設備投資は堅調に推移しました。
一方、国内市場では半導体関連や自動車メーカー、またデータセンター関連の投資が継続しており、都市圏における再開発の需要も堅調に推移しました。
このような状況のもと、当社グループは中長期的な成長を目指し、以下の取り組みを推進しています。
1つ目は、中期経営計画で環境システム事業の掲げる『業務の仕組みの改善と生産性向上』における取り組みとして、2024年度にプロダクトマネジメント部を設立し、フロントローディングによる現場業務プロセスの変革、BIM推進、人材育成、業務支援拡大を推進しています。
大型プロジェクトの設計や施工の初期段階から作図や施工計画に積極的に関与し、高精度なBIMモデルを活用することで、施工手順やコスト、人員計画の事前検討、実際の施工プロセスへの反映、設備や仕様などの「もの決め」を前倒しで行っています。それらの取り組みは、現場での作業負担の軽減や積算の精度向上につながるだけでなく、機器の配置や経路の検討、さらにはユニット化、歩廊や架台の設計提案も可能となる利点があります。当社では、こうした上流工程での検討・調整に力点を置くことで全体の品質・効率を高めるフロントローディングの考え方に立って、プロジェクトの運営を行っています。
プロダクトマネジメント部はスクラム型組織として、BIM・フロントローディング、業務支援などの多様なタスクに対し、関係部門が協力して迅速な対応と改善を行い、新しい業務フローを主導するとともに、新しいデジタル業務マインドを持った人材を育成していきます。
2つ目は、塗装システム事業の掲げる『国内外での確固たる地位の確立』における取り組みとして、当社は欧州市場における事業拡大を目的に、2024年6月、ドイツに「Taikisha Deutschland GmbH」を設立しました。世界の四輪市場はコロナ前の水準に回復し、今後も安定した需要が見込まれる中で、とりわけ欧州市場は、自動車産業の技術革新をけん引する重要な存在であることから、当社では戦略的に重要な市場と位置づけています。
欧州は、自動車塗装の分野で世界トップシェアを持つ競合企業が本拠を構える市場です。こうしたフィールドにあって、当社は、主要自動車メーカーとのパートナーシップを強化するとともに、自動化技術を駆使し、塗装工場を一括で請け負えるサプライヤーとしての地位の確立を目指します。あわせて、省エネルギー技術や欧州規制に合致した環境負荷低減技術を活用し、カーボンニュートラルの実現に貢献するソリューションを提供してまいります。
現在、欧州の自動車メーカーからの大型案件の受注に取り組んでおり、この工事への参画を通じて欧州メーカーの仕様やニーズへの理解を深め、他の自動車メーカーからの受注にもつなげていきたいと考えています。加えて、オートメーション事業の強化を図り、航空機業界など多様な業界へも展開していくことも視野に入れています。今後も現地の事情に精通したナショナルスタッフの活躍により、欧州市場でのプレゼンスを高め、顧客や社会の課題解決に貢献し続けるとともに、欧州市場での成長をさらに加速させてまいります。
このような状況のもと、当期における受注工事高は、国内は顧客の投資時期の見直しの影響を受け減少したものの、海外で増加し、2,774億3百万円(前期比5.3%増加)となり、うち海外の受注工事高は、1,401億43百万円(前期比21.7%増加)となりました。
完成工事高は、前期の大型案件の剥落などにより、国内・海外ともに減少し、2,762億12百万円(前期比5.9%減少)となり、うち海外の完成工事高は、1,316億35百万円(前期比4.5%減少)となりました。
利益面につきましては、完成工事総利益は450億5百万円(前期比16億93百万円増加)、営業利益は179億71百万円(前期比2億98百万円減少)、経常利益は199億38百万円(前期比85百万円増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は110億26百万円(前期比45億75百万円減少)となりました。
セグメントごとの業績(セグメント間の内部取引高を含む)は次のとおりであります。
環境システム事業
受注工事高は、国内の産業空調分野で減少したものの、ビル空調分野および、中国やタイなどで増加し、前年を上回りました。完成工事高は、前期に国内の産業空調分野および台湾において、大型案件が大きく寄与したことの反動減等により、前期を下回りました。
この結果、受注工事高は、1,791億97百万円(前期比4.2%増加)となりました。このうちビル空調分野は、537億95百万円(前期比48.6%増加)、産業空調分野は、1,254億2百万円(前期比7.6%減少)となりました。完成工事高は、1,694億43百万円(前期比21.7%減少)となりました。このうちビル空調分野は、368億39百万円(前期比9.6%減少)、産業空調分野は、1,326億3百万円(前期比24.6%減少)となりました。セグメント利益(経常利益)につきましては、152億99百万円(前期比17億28百万円減少)となりました。
塗装システム事業
受注工事高は、インドや韓国などで増加し、前期を上回りました。完成工事高は、国内や北米などで増加し、前期を上回りました。
この結果、受注工事高は、982億5百万円(前期比7.2%増加)となりました。完成工事高は、1,069億56百万円(前期比38.8%増加)となりました。セグメント利益(経常利益)につきましては、42億56百万円(前期比14億51百万円増加)となりました。
セグメントごとの受注工事高・完成工事高(セグメント間の内部取引高を含む)
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める設備工事業では生産実績を定義することが困難であり、設備工事業においては請負形態をとっているため販売実績という定義は実態にそぐいません。
よって、受注及び売上の状況については「セグメントごとの業績」において報告セグメントの種類に関連付けて記載しております。
なお、参考のため提出会社個別の事業の状況は次のとおりであります。
設備工事業における受注工事高及び完成工事高の状況
① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高
(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
3 当期受注工事高のうち海外工事の割合は、前事業年度は3.9%、当事業年度は7.7%であります。
4 前事業年度及び当事業年度における海外受注工事高はそれぞれ当期受注工事高の10%を超えていないため、主要な海外受注工事についての記載を省略しております。
② 受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
③ 完成工事高
(注) 1 海外工事の地域別割合は、次のとおりであります。
2 完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
前事業年度 請負金額50億円以上の主なもの
当事業年度 請負金額20億円以上の主なもの
3 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
前事業年度
当事業年度
④ 手持工事高 (2025年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち請負金額55億円以上の主なものは、次のとおりであります。
当連結会計年度末の流動資産は前連結会計年度末に比べ3.7%増加し、2,109億35百万円となりました。これは、受取手形・完成工事未収入金等が265億42百万円増加し、有価証券が90億円、現金預金が79億6百万円それぞれ減少したことなどによります。
当連結会計年度末の固定資産は前連結会計年度末に比べ8.9%減少し、575億13百万円となりました。これは、建物・構築物が41億93百万円増加し、投資有価証券が45億55百万円、のれんが28億13百万円それぞれ減少したことなどによります。
この結果、当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ0.7%増加し、2,684億48百万円となりました。
セグメントごとの資産は次のとおりであります。
(環境システム事業)
当連結会計年度末の流動資産は前連結会計年度末に比べ1.3%減少し、1,044億6百万円となりました。これは未成工事支出金が9億30百万円減少したことなどによります。
当連結会計年度末の固定資産は前連結会計年度末に比べ18.1%減少し、305億37百万円となりました。これはのれんが28億19百万円、投資有価証券が48億12百万円それぞれ減少したことなどによります。
その結果、当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ5.7%減少し、1,349億43百万円となりました。
(塗装システム事業)
当連結会計年度末の流動資産は前連結会計年度末に比べ47.5%増加し、867億72百万円となりました。これは受取手形・完成工事未収入金等が262億37百万円、現金預金が18億17百万円それぞれ増加したことなどによります。
当連結会計年度末の固定資産は前連結会計年度末に比べ6.3%増加し、113億14百万円となりました。これは機械、運搬具及び工具器具備品が4億34百万円増加したことなどによります。
その結果、当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ41.2%増加し、980億86百万円となりました。
当連結会計年度末の流動負債は前連結会計年度末に比べ2.4%減少し、1,010億30百万円となりました。これは、短期借入金が94億52百万円、未成工事受入金が57億69百万円それぞれ増加し、支払手形・工事未払金等が152億77百万円、未払法人税等が25億80百万円それぞれ減少したことなどによります。
当連結会計年度末の固定負債は前連結会計年度末に比べ4.3%減少し、109億31百万円となりました。これは、繰延税金負債が7億46百万円減少したことなどによります。
この結果、当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べ2.6%減少し、1,119億62百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べ3.2%増加し、1,564億86百万円となりました。これは、利益剰余金が64億1百万円、為替換算調整勘定が26億26百万円それぞれ増加し、その他有価証券評価差額金が26億84百万円、自己株式の取得及び処分により20億円それぞれ減少したことなどによります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ212億52百万円減少し、420億13百万円(前期末は632億65百万円)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上などにより増加したものの、売上債権の増加や仕入債務の減少などにより、212億19百万円の資金減少(前期は207億38百万円の資金増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入や定期預金の払戻による収入などにより増加したものの、定期預金の預入による支出や有形及び無形固定資産の取得による支出などにより、49億82百万円の資金減少(前期は21億48百万円の資金増加)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額や自己株式の純増減額などにより減少したものの、短期借入金の純増額などにより、19億7百万円の資金増加(前期は55億45百万円の資金減少)となりました。
設備工事等のための材料費、労務費、外注費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに業務改革、技術開発、情報化投資、海外拠点の拡充など当社グループの市場競争力強化のための投資等に資金を充当しております。
主として営業活動により稼得した資金のほか、金融機関等からの借り入れにより、必要資金を調達しております。また、運転資金の効率的な調達を行うため、主要取引銀行と貸出コミットメント契約を締結しております。
連結財務諸表を作成するにあたり、在外連結子会社の財務諸表を換算しているため、為替相場の変動により、総資産、キャッシュ・フロー、完成工事高及び経常利益に影響を受けております。主に米ドル、タイバーツ、中国元、インドルピー及びフィリピンペソの為替の変動が大きく影響しております。
主な在外連結子会社における完成工事高及び経常利益に与える為替変動による影響
(注) *1 子会社3社を含んだ連結数値
*2 子会社5社を含んだ連結数値
*3 換算レートは第79期及び第80期における期中平均レート
特記事項はありません。
当連結会計年度における研究開発費は
当社は、技術開発センター「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」(神奈川県)、テクニカルセンター(神奈川県)の2研究開発組織において、空調設備及び塗装設備の各分野における技術開発を前期に引き続き精力的に実施し、多くの成果を得ました。
セグメントごとの研究開発は以下のとおりであります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
① 技術開発センター「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」開設
当社では「技術の大気社の強化」のため、さらなる顧客との接点の増加、ニーズや課題などの把握、開発促進などを目指し、技術開発センター「TAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa」を開設いたしました。旧技術開発センター内の、研究棟をADVANCED PLAZA(以下AP棟)として建て替えを行い、旧音響棟、生産技術棟をTECHICAL LAB(以下TL棟)、SOLUTION LAB(以下SL棟)としてリニューアルいたしました。エリア全体をTAIKISHA INNOVATION SITE AIkawa(以下TISA)と命名し、AP棟、TL棟、SL棟を活用しながら、顧客との協創、共同により、社会のニーズを先取りした付加価値創造の実現を目指し、今まで以上に技術開発に取り組んでまいります。
TISAには昨年度開設した「TAIKISHA INNOVATION GATE Shinjuku(以下TIGS)」や今後設置を検討している「(国内外)拠点INNOVATION GATE」につながる会議室や、検証設備、顧客との議論をするスペースなどを設け、技術開発を促進するとともに、エリア全体を研究検証の場として活用していきます。
AP棟は大きなガラスファサードを採用し、眺望と外光を有効活用するとともに、コミュニケーションが活発となるようなレイアウトを採用いたしました。省エネ性能においてもZEBの認証をうけており、CASBEEスマートウェルネスオフィスのSランク認定も合わせて受けました。AP棟自体を実験の場として活用し、運用ZEB検証、開発品である直膨式輻射空調設備の快適性検証や設備チューニングを行い、その検証結果を社会に発信し、当社の技術PRを行うとともに、社会に対して脱炭素社会へ向けた技術の発信を行っていきます。
当連結会計年度は、TISAとTIGS、顧客事業所訪問での開発技術の紹介など、顧客との協創関係構築へ向けての活動を強化し、延べ117件の技術提案を実施し、24件の顧客との協創(技術導入、評価、フィールドテストなど)に向けて協議を始めております。今後もこの活動をさらに活発化させ、カーボンニュートラルや快適で安全な環境構築など社会が求める課題への対応を実施いたします。
② CO2分離回収
当社では、カーボンニュートラル(以下C/N)への取り組みとして、自然エネルギー活用や省エネルギーでは対応しきれない部分の対策としてCO2吸脱着技術の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度は、かねてより開発を進めてきたCO2吸脱着システムの検証用装置を作成し、お客様の協力を得て、実際の会議室で性能検証を行いました。検証結果については取りまとめ中ですが、実環境での計測は同装置の性能や課題を明確にすることができ、実用化へ向けて大きく進むことができると考えております。CO2吸脱着装置と空調換気設備を組み合わせることで、換気を補助するシステムとして顧客C/Nへ貢献できると考えております。現在は室内空気や外気のような常温、低濃度の空気を対象にしていますが、この技術は吸着剤を変えることで様々な条件のCO2吸脱着に活用できる技術と考えております。また、近年の外気CO2濃度の高まりに対しても、有効に活用できる技術と考えております。今後は今回の計測結果をもとに、エネルギー効率の改善、濃縮CO2の濃度向上、運転方法最適化などの改良を実施していき、早期実用化を目指して取り組んでまいります。合わせて、回収CO2の活用先についても検討してまいります。
③ DXの活用(現場巡回ロボット、試運転支援)
当社では、DXを活用した働き方改革へ向けた取り組みとして、ロボットによる試運転計測、現場巡回記録技術の開発を行っております。
当連結会計年度は、現場巡回記録技術の実用化に向け、昨年度実施した内容(4足ロボットに360度カメラを搭載し位置情報と合わせて画像を記録)を基に、取得した情報の処理及び活用について開発・検証を実施いたしました。360度カメラに加え、3Dスキャン情報から取得した情報を、BIM(Building Information Modeling)と比較、連携することで工事進捗の把握などの開発・検証を行いました。また、画像情報より機器や弁類などの位置を把握し、それが何の設備であるか、正しい位置にあるかの判断手法についても開発・検証も合わせて行いました。認識率はまだ低く実用化には多くの開発が必要ですが、これらの技術は施工品質/工程管理などへ展開が可能であり、将来的には発注や請求システムなどとも連携が可能であることがわかりました。早期実用化を目指して今後も開発に取り組んでまいります。
また、試運転計測においても一昨年度実施した自動性能検証ロボット(電子デバイス工場などのクリーンルームの温湿度やクリーン度を自動で計測、記録する装置)の性能向上を実施し、BIMとの連携による準備作業の簡略化や計測位置精度の向上をすることができ、実用化の段階まで到達いたしました。今後は実際のプロジェクトにて数件の検証(従来方式との比較)を実施したのち、自動性能検証ロボットによる検証作業の標準化に向けて取り組んでまいります。同時に、すでに開発が完了している、フィルターリーク試験ソフト(VA-M及びVA-M改)の活用と合わせて、性能検証作業の効率化・DX化をはかり、働き方改革を実現してまいります。
当連結会計年度における研究開発費の金額は
① フィルム加飾(ドライ加飾)システムの開発
世界規模でのカーボンニュートラル社会の実現が加速し、かつEVの登場に伴う生産プロセスの変化を背景に、自動車業界は100年に1度といわれる大変革期を迎えています。当社では、カーボンニュートラルの実現に向け、自動車メーカー各社と連携し、CO2排出量をゼロとするような塗装プロセスの開発・提供に取り組んでいます。
その一例が、ウェット塗装からドライ加飾への生産技術革新です。ドライ加飾とは、従来のスプレー塗装(ウェット塗装)に代わり、フィルムを真空吸引・加熱・圧空によって貼付けることで、自動車の外装をフィルム加飾(ドライ加飾)する技術です。
重ね塗りの過程で塗装と乾燥を繰り返すウェット塗装に対して、フィルム加飾(ドライ加飾)では、従来の塗料を使用した塗装に比べて省エネを実現し、50%以上の大幅なCO2削減を達成しています。またフィルムの多機能化によりウェット塗装では出し得ない色彩や質感を表現することも可能です。当社のドライ加飾システムは、従来システムでは高さ200mm以下の被塗物にしかフィルムを加飾(貼付け)することができませんでしたが、3次元真空圧空成形(TOM)工法を採用することで、高さ700mm以上の曲率が大きい被塗物に対しても、フィルムを加飾することができ、幅広いお客さまへのご提案が可能なシステムとなっております。
当連結会計年度は、当社の研究開発施設であるテクニカルセンター(神奈川県座間市)へのドライ加飾デモライン設置が完了し、クリーンでコンパクトなドライ加飾システムの革新性をお客様に体感頂くことが可能となりました。除塵・検査、フィルム加飾、UV照射硬化、トリミング、端材回収工程から成るデモラインは、実生産ラインへの導入に向けた実証の場として既にお客様とのテストを開始しており、実ライン導入に向けた運用・品質面の検証を進めております。今後顧客との活動を活発化し、生産技術革新への対応技術の提供を推進してまいります。
② 汎用性段ボールフィルタの開発
自動車塗装の分野において、塗装ブース内で自動車ボディに塗着しなかった塗料ミストを系外に排出しないように集塵する技術は極めて重要になります。当社では、1980年代から湿式スクラバー方式を主力商品として拡販して参りましたが、省エネルギー効果およびCO2排出削減効果が得られる乾式方式へと市場のニーズが変わってきております。当社では、この乾式方式に応えるべく、2012年にプレコート剤と高性能フィルタを併用したプレコート式システムを商品化しており、数多くの採用をいただいております。近年では、乾式方式の中でも導入費用が削減できメンテナンスも容易なフィルタで集塵する段ボールフィルタ式システムへの変革が進んでおり、当社でも段ボールフィルタ式システムの開発に注力しております。特にシステム集塵部の段ボールフィルタについては消耗品であることからランニングコストを削減するためにも、捕集能力向上とコスト低減が求められています。
そのために当社では自社製段ボールフィルタ「i-TCF v01」を開発しました。「i-TCF v01」は、従来推奨していたフィルタと比較して約15%の長寿命化を実現しており、特に処理風量が増加するとその性能差はより顕著になります。フィルタの長寿命化により、ランニングコスト削減およびCO2低減にも寄与する商品となっております。段ボールフィルタには、塗料種類と段ボールフィルタの相性の良し悪しがあり、一つの課題となりますが、「i-TCF v01」の開発により、顧客が採用できるフィルタの選択肢を広げました。また、当社は従来、設備導入後の継続的な物納にはあまり注力してきませんでしたが、今後はこの分野にも力を入れ、当社のポートフォリオを拡充してまいります。今後の継続利用や販路拡大のため、さらなる自社設計フィルタのラインナップ拡充活動を行い、顧客の利益に繋がる開発活動を進めてまいります。以上の取り組みにより、当社は自動車塗装分野における集塵技術の向上と市場ニーズへの対応を図り、持続可能な成長を目指してまいります。