第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当第3四半期連結累計期間において、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更があった事項は次のとおりです。
また、以下の見出しに付された項目番号は、前連結会計年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク 2. 主要なリスクの概要」の項目番号に対応したものであり、文中の下線部分が変更箇所です。

 

① 世界マクロ経済環境の変化によるリスク

世界的な、又は地域的なマクロ経済環境の変化は、個人消費や設備投資と深く関係し、商品市況にも影響を及ぼします。その結果、当社がグローバルかつ多様な産業領域に展開している事業の商品・製品価格、取扱量やコストなどに変動をもたらし、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

当第3四半期連結累計期間においては、インフレが継続する中でも、世界経済は底堅い成長を維持しました。世界経済は引き続き緩やかな成長を維持していくと見られますが、欧米の金融引き締めに伴う影響、中国経済の先行き懸念等とともに、米中対立、ロシア・ウクライナ情勢、中東地域等地政学リスクにも留意が必要であり、経済への影響を含めて動向を注視しています。

 

② 市場リスク

以下「当期純利益」は、「当社の所有者に帰属する当期純利益」を指しています。

 

a. 商品市況リスク

(エネルギー資源)

当社は北米、東南アジア、豪州などにおいて、天然ガス・石油の開発・生産事業、液化天然ガス(LNG)事業を行っており、天然ガス・原油価格は当社の業績に重要な影響を与えます。

原油(Brent)価格は、OPECプラスが協調減産方針を継続したものの追加減産には合意できなかったことや、非OPEC諸国の生産好調により、9月末の1バレル90米ドル半ばから12月中旬には1バレル70米ドル半ばまで下落しました。今後も各国経済情勢やOPEC・非OPECの生産動向などによって価格が上下するボラティリティの高い展開が続くと認識しています。

なお、当社のLNG販売の大半は長期契約であり、LNG価格は原油価格にリンクしているものが大宗となります。1バレル当たりの原油価格が1米ドル変動すると、当社の当期純利益は主に持分法による投資損益を通じて年間約15億円増減すると試算されます。ただし、LNG・原油の価格変動が当社の業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。

また、当社のLNG販売の一部はスポット契約にて販売しています。10月初めのアジアのLNGスポット価格は、夏場の堅調なLNG在庫積み上がりの影響を受け、百万Btu(英国熱量単位)当たり14米ドル付近で開始しました。その後、イスラエルとハマスの対立や豪州でのストライキ再燃等による供給懸念を受け、10月下旬には18米ドル後半まで上昇しましたが、イスラエルとハマスの対立による影響が限定的との見方や、暖冬の影響により高在庫状態が続くとの見通しを受け、11月後半には16米ドル台、12月末時点では11米ドル台後半となりました。

 

(金属資源)

当社は、100%出資子会社の三菱デベロップメント社(MITSUBISHI DEVELOPMENT PTY LTD、本社:豪州ブリスベン、以下「MDP社」)を通じて、製鉄用の原料炭を販売しており、石炭価格の変動はMDP社の収益を通じて当社の業績に影響を与えます。また、MDP社の収益は、石炭価格の変動の他にも、豪ドル・米ドル・円の為替レートの変動や悪天候、労働争議等の要因にも影響を受けます。

銅についても、生産者としての価格変動リスクを負っています。1トン当たりの価格が100米ドル変動すると当期純利益で年間27億円の変動をもたらす(1ポンド当たりの価格が0.1米ドル変動すると当期純利益で年間58億円の変動をもたらす)と試算されますが、粗鉱品位、生産・操業状況、再投資計画(設備投資)等、価格変動以外の要素からも影響を受けるため、銅の価格のみで単純に業績への影響額が算出されない場合があります。

 

④ カントリーリスク

当社は、海外の会社との取引や出資において、国の政治・経済・社会情勢に起因した、代金回収や事業遂行の遅延・不能等が発生するカントリーリスクを負っています。

当社においては、国ごとのリスク状況の把握、カントリーリスク対策制度の立案・管理をコーポレート担当役員(CRO)を委員長とする地域戦略委員会で行っています。カントリーリスク対策制度では、各種リスク要因を踏まえ各国を区分の上、区分ごとに枠を設定する等の手法でカントリーリスクを一定範囲内にコントロールしています。また、個別案件のカントリーリスクについては、保険を付保するなど、案件の状況に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。ロシア、ウクライナ両国宛てリスクについても、同制度を通じて管理しています。しかしながら、上記のようなリスクヘッジ策を講じていても、当社の取引先や出資先若しくは進行中のプロジェクト所在国の政治・経済・社会情勢の悪化によるリスクを完全に回避することは困難です。そのような事態が発生した場合、当社の業績は影響を受ける可能性があります。

なお、ロシア・ウクライナ情勢の影響については、第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記4をご参照ください。

 

⑤ 事業投資リスク

(重要な投資案件)

a. 豪州原料炭及びその他の金属資源権益への投資

当社は、1968年11月にMDP社を設立し、炭鉱開発(製鉄用の原料炭)に取り組んできました。2001年には、MDP社を通じ、約1,000億円で豪州クイーンズランド州BMA原料炭事業(以下「BMA」)の50%権益を取得し、パートナーのBHP社(BHP Group Limited、本社:豪州メルボルン)と共に事業を運営しています。現在では、BMAは年間6,500万トンの生産量を誇る世界最大規模の原料炭事業に成長しています。また、連結会計年度末のMDP社の固定資産帳簿価額は9,946億円となっています。
なお、当第3四半期連結会計期間末において、MDP社が権益の50%を保有するブラックウォーター炭鉱、及びドーニア炭鉱に関する資産(主に鉱物資源関連資産などの有形固定資産)を売却目的保有に分類し、帳簿価額で測定しています。詳細については、第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記6をご参照ください。 

 

e. ローソンへの出資

当社は、2017年に株式会社ローソン(以下「ローソン社」)の発行済株式数の16.6%を株式公開買付により取得し、それまで保有していた33.4%と併せて、発行済株式の過半数を保有することとなり、同社を連結子会社としました。ローソン社は、コンビニエンスストア「ローソン」のフランチャイズシステム及び直営店舗の運営を行うとともに、海外コンビニエンス事業及びそれ以外の周辺事業を運営しています。ローソン社の店舗網は、2023年11月末時点で、日本全国に約14,600店、海外に約7,200店の合計約21,800店の規模になっています。

事業環境が悪化した場合には、ローソン社の業績や、のれんの減損などを通じて当社の業績に影響を与える可能性があります。当第3四半期連結会計期間末の「のれん」の帳簿価額は1,654億円(持分比率勘案前)となっています。

なお、当社は、2024年2月6日付けで、KDDI株式会社(以下、KDDI)との間で、ローソン社の株式に対する、KDDIによる公開買付け(1株当たり10,360円)実施に関する取引基本契約及び取引完了後の会社運営などに関する株主間契約を締結することにつき、決議しました。詳細については、第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記16をご参照ください。

 

⑦ 危機事象発生による人命への被害・事業中断等のリスク

地震、大雨、洪水などの自然災害・異常気象や、新型インフルエンザ・新型コロナウイルス等の新興感染症、大規模事故、テロ・暴動、東アジア・欧州等における地政学的要因による有事発生、その他国内外における危機的な事象が発生した場合、当社の社員・事業所・設備やシステムなどに対する被害が発生し、営業・生産活動に支障が生じる可能性があります。

当社では、緊急危機対策本部を設置し、危機発生時における当社関係者の安全確保・安否確認等の初動対応、重要業務の事業継続計画(BCP)の整備、建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)、定期訓練、必要物資の備蓄等の各種対策を講じています。また、あらゆる事象を想定したリスク・影響度分析に基づく初動対応・事業継続計画(BCP)の策定、継続的なPDCAサイクルの実施等の包括的なマネジメント活動である事業継続マネジメント(BCM)を推進し、各種危機に備えています。しかし、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、かかる事象の発生時には当社の業績は影響を受ける可能性があります。

なお、新型コロナウイルス感染症への対応に関しては、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言終了を発表したこと、日本政府による新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが変更されたことを踏まえ、当社内における有事対応を終了していますが、今後も状況に応じて必要な措置を実行し、適切な事業継続を図っていきます。

 

 

2 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計上の見積り

当社及び連結子会社の財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目の詳細は、第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記4をご参照ください。

 

(2) 業績

当第3四半期連結累計期間においては、インフレが継続する中でも、世界経済は底堅い成長を維持しました。日本経済に関しては、雇用・所得環境が改善する下で個人消費が底堅く推移するとともに、情報技術関連、人手不足対応等を中心に設備投資も持ち直しの動きが続き、景気は緩やかな回復基調を維持しました。

業績の分析は下表のとおりです。

(単位:億円)

前第3四半期

連結累計期間

当第3四半期

連結累計期間

増減

主な増減要因

収益

162,845

147,056

△15,790

市況下落

売上総利益

19,162

17,796

△1,365

豪州原料炭事業の市況下落

販売費及び一般管理費

△11,711

△12,236

△525

人件費増加及び円安に伴う為替換算の影響

有価証券損益

1,536

682

△853

前年同期に計上した不動産運用会社宛て投資の売却益の反動

固定資産除・売却損益

36

220

+184

投資不動産の売却益

固定資産減損損失

△54

△450

△396

海外食品事業における固定資産の減損

その他の損益-純額

9

152

+143

デリバティブ関連評価損益の影響

金融収益

1,297

1,849

+552

米ドル金利上昇

金融費用

△765

△1,413

△648

米ドル金利上昇

持分法による投資損益

3,934

3,452

△482

天然ガス及び原油価格の下落

税引前利益

13,443

10,052

△3,391

法人所得税

△3,191

△2,236

+955

四半期純利益

10,252

7,816

△2,436

四半期純利益
(当社の所有者に帰属)

9,558

6,966

△2,591

 

※四捨五入差異により縦計・横計が合わないことがあります(以下同様)。

 

 

事業セグメント別の業績を示すと下表のとおりです。(連結累計期間における「当社の所有者に帰属する四半期純利益」を示しています。セグメント別の事業内容及び業績の詳細は、第4 経理の状況 要約四半期連結財務諸表注記5をご参照ください。)

(単位:億円)

前第3四半期

連結累計期間

当第3四半期

連結累計期間

増減

主な増減要因

天然ガス

1,156

1,291

+135

LNG関連事業における持分利益の減少の一方、LNG販売事業における前年同期に計上した取引損失の反動や取引利益の増加

総合素材

518

457

△61

鉄鋼製品事業における持分利益の減少

化学ソリューション

238

58

△180

化学品製造事業における減損損失や前年同期に計上した繰延税金負債の取崩しの反動

金属資源

3,851

2,169

△1,682

豪州原料炭事業における市況下落による影響

産業インフラ

255

311

+56

産業機械事業における持分利益の増加や一般商船事業における持分利益の増加

自動車・モビリティ

1,227

1,239

+12

アセアン自動車事業における持分利益の減少の一方、海外事業売却関連損益の計上

食品産業

685

427

△258

関連会社株式の売却益の一方、海外食品事業における減損損失や鮭鱒養殖事業における持分利益の減少

コンシューマー産業

212

380

+168

CVS事業における持分利益の増加や前年同期に計上した海外事業投資先宛て投資の減損の反動

電力ソリューション

△16

153

+169

海外発電事業における資産売却益の減少の一方、前年同期に計上した英国小売事業における電力・ガス調達契約評価損の反動や欧州総合エネルギー事業における持分利益の増加

複合都市開発

1,163

269

△894

前年同期に計上した不動産運用会社の売却益の反動や北米不動産事業における持分利益の減少

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当第3四半期連結会計期間末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ2,760億円増加し、1兆8,330億円となりました。キャッシュ・フローの内訳は下表のとおりです。

(単位:億円)

前第3四半期
連結累計期間

当第3四半期
連結累計期間

増減

当第3四半期連結累計期間の内訳
及び主な増減要因

営業活動による

キャッシュ・フロー

14,250

10,051

△4,199

(当第3四半期連結累計期間の内訳)
法人所得税の支払いの一方、営業収入や配当収入により増加


(主な増減要因)
営業収入の減少や運転資金等の負担増加

投資活動による

キャッシュ・フロー

△1,403

△624

+779

(当第3四半期連結累計期間の内訳)
関連会社宛て投資の売却や融資の回収による収入の一方、設備投資や関連会社宛て投資による支出により減少


(主な増減要因)
前年度の不動産運用会社宛て投資の売却による収入の反動減の一方、当年度の融資の回収や投資不動産の売却による収入

フリーキャッシュ・フロー

12,847

9,427

△3,420

財務活動による

キャッシュ・フロー

△13,243

△7,061

+6,182

(当第3四半期連結累計期間の内訳)
自己株式の取得や配当金の支払いにより減少

 
(主な増減要因)
自己株式の取得増加の一方、運転資金等の需要増加に伴う短期借入債務の調達増加

現金及び現金同等物に係る
為替相場変動の影響額

181

395

+214

現金及び現金同等物の増減

△215

2,760

+2,975

 

 

営業収益
キャッシュ・フロー
(リース負債支払後)

10,123

9,049

△1,074

(当第3四半期連結累計期間の内訳)
リース負債の支払いの一方、四半期純利益や配当収入により増加


(主な増減要因)
主に四半期純利益の減少

調整後

フリーキャッシュ・フロー

8,720

8,425

△295

 

 

財務会計上の営業キャッシュ・フローとは別に、将来の新規投資や株主還元などの原資を適切に表すべく、運転資金の増減影響を控除した営業キャッシュ・フローに、事業活動における必要資金であるリース負債支払額を反映した「営業収益キャッシュ・フロー(リース負債支払後)」と、更に投資活動によるキャッシュ・フローを加えた「調整後フリーキャッシュ・フロー」を定義しています。
 

投資キャッシュ・フローの主な内容は下表のとおりです。

新規・更新投資

売却及び回収

・欧州総合エネルギー事業(電力ソリューション)
・豪州原料炭事業(金属資源)
・海外電力事業(電力ソリューション)
・ベトナム不動産事業(複合都市開発)

・CVS事業(コンシューマー産業)

・北米不動産事業(複合都市開発) 
・LNG関連事業(天然ガス)

・鮭鱒養殖事業(食品産業)

・北米シェールガス事業(天然ガス)

・欧州自動車販売金融事業(自動車・モビリティ)
・国内投資不動産事業(複合都市開発)
・関連会社宛て投資(食品産業)
・銅事業(金属資源)
・北米シェールガス事業(天然ガス)

 

 

 

配当は持続的な利益成長に合わせて増配していく「累進配当」を行う方針としています。自己株式の取得は、総還元性向の水準及び資本構成の適正化のために実施したものです。負債による資金調達は、流動性と財務健全性の観点で適切な水準を維持する方針としています。

 

(4) 事業上及び財務上の優先的に対処すべき課題

前連結会計年度の有価証券報告書に記載した「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」について重要な変更があった事項は次のとおりです。

 

a.2023年度の業績見通し及び株主還元の修正

2023年度の業績見通しについては、5月9日に9,200億円と公表していましたが、天然ガス、自動車・モビリティ、総合素材及びコンシューマー産業セグメント等が順調に推移し、増益を見込むことなどを踏まえ、11月2日に9,500億円に上方修正し、これに合わせて、1株当たり配当見通しについては、5月9日公表の期初見通し200円から10円増配の210円(株式分割前換算)に修正しました。
また、自己株式取得については、5月9日に公表した1,000億円に加え、2月6日に新たに5,000億円の取得を決定しました。

 

(5) 研究開発活動

特に記載すべき事項はありません。

 

(注意事項)

当報告書の将来の予測などに関する記述は、当四半期連結会計期間の末日現在において入手された情報に基づき合理的に判断した予想です。したがって、潜在的なリスクや不確実性その他の要因が内包されており、実際の結果と大きく異なる場合があります。

 

3 【経営上の重要な契約等】

  特に記載すべき事項はありません。