文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2026年3月23日)現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。
① 企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY
当社は、1872年の創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指してきました。そして、2019年には、100年先も輝きつづけ、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義し、国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとした活動を行っています。
THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。
1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION
2. これまでの150年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA
3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES
〔THE SHISEIDO PHILOSOPHY〕

〔OUR MISSION〕
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD
私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びやしあわせをもたらす力が
あると信じています。
創業以来、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の
発見と創造を行ってきました。
これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。
美の力でよりよい世界を。
それが、私たちの企業使命です。
当社は、上記企業使命のもと、2030 Vision「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」を定めました。このVisionの具現化に向け、資生堂人の心構えと所作を示す「The Shiseido Way」を制定し、2026年1月にThe Shiseido Philosophyを一部改定しました。最新情報については、当社企業情報サイトの「企業情報/The Shiseido Philosophy」
(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
② 2030 中期経営戦略
当社は、「2030 中期経営戦略」を策定しました。戦略策定にあたっては、事業環境の変化や、マルチステークホルダーへの調査・対話を踏まえてマテリアリティ(重要課題)を更新し、「多様な『美の力』を通じた生涯にわたるQOL向上」、「レジリエントな経営基盤の構築」、「美の価値創造人財・組織」、「地球環境との共生(循環型モノづくり)」の4つに分類しました。これらの課題解決に向けて、①ブランド力の向上を通じた成長加速、②グローバルオペレーションの進化、③サステナブルな価値創造を本戦略の3つの柱とし、自社の強みを活かした取り組みを進めていきます。
前中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」および「アクションプラン 2025-2026」においては、注力ブランドへの選択と集中、グローバルでの抜本的な構造改革を通じて、より強固な収益基盤の構築に取り組んできました。「2030 中期経営戦略」ではその基盤をもとにブランド価値をより高め、持続的な成長に不可欠な新たな価値創造へ再投資できる好循環を生み出し、新たな成長を通じて企業価値と社会価値の最大化をねらいます。
また、Vision「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」を定めました。このVisionを体現するスローガンとして2005年に発表した「一瞬も 一生も 美しく」を改めて掲げ、その意義を深く追求していきます。

「2030 中期経営戦略」の詳細については、当社企業情報サイトの「投資家情報/中長期経営戦略」
(https://corp.shiseido.com/jp/ir/strategy/)をご確認ください。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) サステナビリティ全般
当社は、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」のもと、創業以来培ってきた「美」の価値を通じて、2030年に向けて「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」ことを目指しています。サステナブルな価値創造を経営戦略の重要な柱の一つとし、事業を通じた社会価値創造と社会・環境課題の解決に向け、全社をあげて取り組みを進めています。
当社では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。迅速な意思決定と確実な全社的実行のため、専門的に審議する「Sustainability Committee」を設置し、定期的に開催しています。
「Sustainability Committee」では、資生堂グループ全体のサステナビリティに関する戦略アクションや方針、気候変動と自然環境に関するリスクおよび機会や、人権対応アクションなど具体的な活動計画に関する意思決定を行っています。また、サステナビリティ戦略における中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表執行役を含む経営戦略・財務・研究開発・サプライネットワーク・人事・広報、およびブランドホルダーなど各領域のチーフオフィサー・ディビジョンオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会に提案もしくは報告しています。また、戦略アクションに係る確実な業務執行・推進を行うため、「Sustainability Committee」の下部に、主要関連部門の責任者から構成される「Sustainability TASKFORCE」を設置し、長期的な目標達成に向けての推進方法やサステナビリティに関連した課題解決について議論し、地域本社や海外を含むその他の関連部門も巻き込んだ活動を行っています。
また、毎年
(2026年1月1日現在)

(注) 1 最新のサステナビリティレポートはこちら:
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/report.html
2 通常、温室効果ガスはCO2、CH₄、N₂O、HFCs、PFCs、SF₆、NF₃を指すが、本事業報告ではこれらの温室効果ガスをCO2と
表記
② 戦略
当社は、「サステナブルな価値創造」を2030中期経営戦略の重要な柱の1つとして位置づけています。マテリアリティ(重要課題)に基づく社会・環境領域にそれぞれに3つの戦略アクションと中期目標を掲げ、事業を通じた社会価値創造と社会・環境課題の解決を促進しています。
「社会」の領域では、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を中心に社会課題の解決に取り組んでいます。ジェンダーにかかわらず、公正な機会が得られ、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現を目指した「ジェンダー平等」、美しさに関する無意識な思い込みや偏見を払しょくし、個々の美しさに共鳴しあえる社会を目指した「美の力によるエンパワーメント」、そして、すべての活動の根底となる「人権尊重の推進」を戦略アクションとして実行しています。
「環境」の領域の戦略アクションは、バリューチェーン全体を通してさまざまなステークホルダーとともに取り組みを推進する「地球環境の負荷軽減」「サステナブルな製品の開発」、環境や人権に対応した「サステナブルで責任ある調達の推進」です。社名の由来でもある「万物資生」(注)の考えに基づき、環境負荷を軽減し、使い捨てではなくサーキュラーエコノミーの実現を目指してイノベーションやビジネスモデルの構築に取り組んでいます。
(注) 中国の古典「易経」の一節、「至哉坤元 万物資生(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、すべてのものはここから生まれる)」の一部
当社は、中長期の事業戦略の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを総合的・多面的な手法を用いて抽出し、特定しています。その中には、「環境対応(気候変動・生物多様性など)」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」「自然災害・感染症・テロ」といったサステナビリティ領域のリスクも含まれています。これらのリスクも、事業継続や戦略に影響を及ぼす要因の1つとして科学的または社会経済的なデータに基づいて分析され、全社のリスクマネジメントに統合されます。特定されたリスクは、重要度に応じて、「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」にて対応策などが審議されています。また、必要に応じて取締役会に提案もしくは報告される体制となっています。
当社は、戦略アクションに基づいた中長期目標を設定し、進捗を定期的にトラッキングしています。毎年グローバルのステークホルダーに向けた
〔中長期目標〕
・環境
(注) 1 2025年実績は2026年発行予定のサステナビリティレポートにて開示予定
2 2026年にカーボンニュートラル達成(資生堂全事業所、オフセット含む)の目標を含む
3 資生堂全事業所(対2019年)
4 資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体、経済原単位(対2019年)
5 資生堂全事業所、経済原単位(対2014年)
6 プラスチック製容器について
7 RSPOの物理的なサプライチェーンモデルによる認証(アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマス
バランスのいずれかに基づくもの)、パーム油換算重量ベース
8 製品における、認証紙または再生紙など、紙重量ベース
・社会
(2) 気候変動関連等の取り組み
当社は、気候変動問題が事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性に鑑み、TCFD、TNFDおよびISSB/SSBJのフレームワークを参照して情報開示を行っています。脱炭素社会への移行や、気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされるリスクおよび機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオにおける短期・中期・長期の定性的・定量的な分析を試みました。自然に関しては、生物多様性の喪失や水資源の動態を考慮した定量的な長期リスクを特定し、
① ガバナンス
当社の気候変動関連等のガバナンスに関しては、サステナビリティ全般における推進体制と同様の体制で取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「① ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
気候関連リスクおよび機会については1.5/2℃から4℃の範囲で起こりうる社会や自然環境の変化を想定し、RCP-SSPシナリオに沿って分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化要因を考慮して、各シナリオ条件における影響を分析しました。
2030年時点における移行リスクとして、炭素税によって約0.5~8.7億円規模の財務影響が発生する可能性を予測しています。物理的リスクについては、洪水により約8.7億円、水不足により約32億円の潜在的なリスクを見込んでいます。機会に関しては、1.5/2℃シナリオにおいて、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が強まると予想されます。4℃シナリオにおいては、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大すると予想されます。イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していくことで、リスクの緩和と新たな機会の創出を目指しています。
自然関連リスク/機会に関しては、ライフサイクルアセスメントによってバリューチェーンを通じた生物多様性への影響側面の定量分析を行い、特に原材料調達における影響が大きいことを明らかにしました。そこで、TNFDが推奨するLEAPアプローチに沿って、生物多様性への依存度の高い化粧品原材料について原産地を推定し、サプライチェーンにおける土地転換による潜在的な影響の評価を実施するとともに、依存側面における物理リスク分析としてミツバチなどの花粉媒介者による生態系サービスの金額化を行いました。同時に、移行リスクとして、サステナビリティ関連規制に関わるリスク分析を、気候変動問題と併せて実施しています。資生堂 気候/自然関連財務情報開示レポートは、企業情報サイトで公開しています。
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/env/pdf/risks_report.pdf
当社は、気候や生物多様性を含む地球システムと事業との関係性についての俯瞰的な視野を持ち、リスクと機会の評価を通じて重要な領域を特定し、優先順位をつけ、問題解決に貢献していくことが重要と考えています。再生可能エネルギーの活用や生物多様性を考慮した責任ある調達に加えて、環境配慮型の処方/成分の開発や、循環型の容器包装とリサイクルモデルの開発など、ライフサイクル思考に基づいた新しい価値創出に向けた取り組みを進めています。これら取り組みの詳細については、2026年発行予定の「サステナビリティレポート」をご参照ください。
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/report.html
③ リスク管理
当社の気候変動関連等の取り組みのリスク管理に関しては、サステナビリティ全般のリスク管理と合わせて取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「③ リスク管理」をご参照ください。
④ 指標及び目標
当社の気候変動関連等の取り組みの指標及び目標の詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「④指標及び目標」をご参照ください。
具体的には、気候変動に関してCO2排出量削減目標を設定し、定期的に気候変動に伴う状況をモニタリングし、対応策を講じることで、リスクの緩和に努めています。Scope 1およびScope 2のCO2排出量について、2030年までに46.2%削減(2019年対比)することを、国際的に合意された気温上昇1.5℃抑制シナリオに科学的に整合した目標として設定しました。Scope1・2に加えて、バリューチェーン全体におけるCO2排出量の削減目標に関しても、SBTイニシアティブ(SBTi)(注1)の認証を取得し、CO2排出量削減の目標達成に向けて取り組んでいます。
2022年にはRE100(注2)に加盟しています。Scope 1・2のCO2排出量削減のため、インターナルカーボンプライシング制度の導入を決定し、2024年から省エネ設備や再生可能エネルギー設備などの脱炭素投資判断への活用を始めました。
生物多様性に関しては、森林破壊との関わりが深いことで知られる紙やパーム由来原料について、認証原材料など森林破壊に関与しない原材料への切り替えを中長期目標として開示し、より自然・生物多様性への影響の少ない持続可能で責任ある調達を進めています。
また、当社では気候変動や海洋プラスチックごみ問題はグローバルで喫緊に解決すべき環境課題と認識し、サステナブルな製品開発を強化しています。当社独自の容器包装開発ポリシー「資生堂5Rs(注3)」を前提としたイノベーションを通じて、プラスチック製容器においては、2025年までに100%サステナブルな容器を実現する、という目標達成に向け、「つめかえ・つけかえ」容器によるリユースの促進、モノマテリアル化によるリサイクル可能な設計、素材の見直し、容器の軽量化などに取り組みました(注4)。さらに、2030年に向けて、これまでのプラスチック製容器を対象とした目標から、ガラスなどの容器も含め、容器素材についてもリサイクル素材やバイオマス由来素材を積極的に活用し、これらの使用割合を15%まで高めるという目標を新たに設定しました。また、PET(ポリエチレンテレフタレート)を主な素材とするプラスチック製容器については、PCR(ポストコンシューマーリサイクル)素材の使用を30%とする目標を掲げ、更なる循環型ものづくりを推進していきます。
(注) 1 パリ協定目標達成に向け、企業に対して科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標を設定することを推進
している国際的なイニシアティブ
2 事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットする企業で構成される国際的なイニシアティブ
3 容器包装開発ポリシー「Respect(リスペクト)・Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)・
Replace(リプレース)」
4 2025年実績は2026年発行予定のサステナビリティレポートにて開示予定
表:GHG排出量(単位 t-CO2e)
下記において、●の付されたデータは第三者検証を取得済みです。
(参照資料)
1 地球温暖化対策推進法 算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧
https://policies.env.go.jp/earth/ghg-santeikohyo/files/calc/itiran_2023_rev4.pdf
2 サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース v3.5
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate_05.html
3 Germer, J. et al. (2008) Environment, Development and Sustainability, 10, 697–716
4 経団連カーボンニュートラル行動計画 2024年度フォローアップ結果 個別業種編
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/085_kobetsu35.pdf
(3) DE&Iの取り組み
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)は、当社の企業使命を実現するための重要な取り組みです。私たちは、ジェンダー、年齢、国籍、性的指向、性自認、障がいの有無などに関係なく、個々の違いを認め、尊重し合うことで、多様な視点を活かし、イノベーションを生み出す組織文化を育んでいます。
① ガバナンス
当社のDE&Iのガバナンスに関しては、サステナビリティ全般における推進体制と同様に取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「① ガバナンス」をご参照ください。
人権に関しては、「Sustainability Committee」の下に人権プロジェクト体制を構築し、人権デューデリジェンスを実施しています。2年に1度の人権リスクアセスメントによって特定した人権の重要課題については、半年に1度、課題ごとに責任を持つ部門が是正措置と改善状況を報告しています。人権プロジェクトはこれらを定期的に「Sustainability Committee」に報告し、全社のリスク軽減状況をモニタリングしています。重要な実績や課題は、取締役会へ毎年報告もしくは提案しています。
② 戦略
当社で長く培ってきたDE&Iの知見を、社員や事業・ブランドを通じて社会に広げ、サステナブルな価値創造につなげます。社会領域では、「ジェンダー平等」と「美の力によるエンパワーメント」を戦略アクションとし、2030年までにそれぞれ100万人の人々を支援することを目指しグローバルで取り組んでいます。さらに「ジェンダー平等」の取り組みにおいては、2030年までに国内資生堂グループのあらゆる階層における女性リーダー比率を50%にすることを目標に掲げています。また、社員、生活者、サプライヤーといった様々なステークホルダーと共に、すべてのステークホルダーの「人権の尊重」にも注力しています。
ジェンダー平等
当社は日本発の企業として、ジェンダー平等を最優先事項に位置づけています。日本企業の役員における女性比率向上を目指す「30% Club Japan」に参画し、企業横断でのベストプラクティス共有や機関投資家・大学とのパートナーシップを通じて、同質性からの脱却とイノベーションの創出に向けたインパクトを強化してきました。
・資生堂DE&Iラボ
大学との共同研究である「資生堂DE&Iラボ」では、日本が世界に大きく後れをとっている女性活躍について、企業がジェンダー平等を実現する際の課題を可視化しています。その解決策や知見を社内外へ広く発信することで、日本社会のDE&I推進を牽引しています。2025年には、国際女性デーにあわせ「資生堂DE&Iラボ シンポジウム」を初開催し、1,287名が参加しました。10月には、インクルーシブな職場づくりの効果に関する研究成果を公開し、実践的なマネジメントの手法の普及に貢献しました。こうした取り組みの成果として、2026年1月1日時点の国内グループ女性管理職比率は43.3%、グローバルでは60.3%に達しています。
・女子教育支援の取り組み
グローバルでは、2019年より、クレ・ド・ポー ボーテはユニセフとのグローバルパートナーシップを通じて、STEAM教育の推進や職業訓練の提供など、ジェンダー平等の実現に貢献しています。同ブランドのグローバルチャリティープログラム「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」では、少女たちの社会的地位向上とエンパワーメントを推進するために女子教育に貢献した女性を毎年表彰しています。2025年には大阪・関西万博において、同アワード受賞者がモデレーターを務めた「STEAM×Gender」をテーマにしたトークセッションや「未来の美」をテーマにしたSTEAMを目指す女子学生向けトークイベントを開催し、若い世代への啓発活動に取り組みました。女性研究者支援の資生堂サイエンスグラント第18回授賞式を開催し、長年にわたる日本の大学などで研究する女性研究者のキャリア支援を継続しました。
これらの当社の取り組みは社内外から高い評価を得ており、2025年3月にはなでしこ銘柄に5年連続で選出されました。資生堂アジアパシフィックPte. Ltd.CEOのニコル・タンがFortune誌による「2025年アジアで最も影響力のある女性(Most Powerful Women Asia 2025)」に選出されるなど、リーダーシップの面でも評価されています。
美の力によるエンパワーメント
年齢、疾病、障がい、外見の変化などさまざまな悩みや困難な状況から人との関わりを避けるなど、日常にあふれている無意識の思い込みや偏見によって「自分らしい美しさ」の表現が抑えられ、社会とのつながりを保つことに難しさを感じる方々がいます。当社は、美の力が心身の満足だけでなく、社会的な満足(注1)を実現する活動を推進しています。
・「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」
深い肌悩みを持つ方へ向けた「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」や、がんサバイバーの社会参画を支援する「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」などのプログラムを通じて、QOL(生活の質)向上のための社会的支援を行ってきました。2025年2月にはブランド設立30周年を迎えた「パーフェクトカバー」は全面リニューアルによりグローバルの多様なスキントーンに対応した色調を配置し、フランス白斑協会など支援団体と協力のもとフランスでの活動を開始しました。6月の世界白斑デーには白斑への理解促進活動を展開するなど、多様な美の実現に向けた取り組みを強化しています。
・地域社会や自治体と連携した社会活動
日本においては地域の社会課題への対応に専任する資生堂ジャパン㈱のソーシャルエリアリーダーらが各地の社会活動の企画運営をリードし、日本各地の自治体と連携しています。具体的な活動例としては、高齢者向けの化粧療法講座やがん治療中の方への外見ケアセミナー、視覚障がい者向けのガイドメイク講座、さらには学生や社会人を対象とした身だしなみ講座などがあり、多様な人々の前向きな社会参加を支援しています。2025年7月には、「資生堂 化粧療法 認定資格」を新設しました。3月には日本で医療従事者向けがん外見セミナー、台湾で化粧療法の講演を実施するなど、国内外で専門性の高い美容ケアの普及に努めました。
・障がいのある方への取り組み
アクセシビリティ向上の取り組みとしては、手話や口話、チャットを用いた聴覚障がい者向けオンライン美容相談サービスを提供し、視覚障がい者向けのセミナーも行っています。手話の国際言語デーにおける手話キャリア交流会を開催など、障がい者の職域拡大プロジェクトを推進しました。「DIVERSITY CAREER FORUM 2025」にゴールドスポンサーとして協賛し、障がい者の就労機会拡大を支援しました。国際的な障がい者活躍支援イニシアティブ「Valuable 500」では、当社執行役員が国際会議に出席し、グローバル企業との連携を深めています。Valuable 500は、障がい者インクルージョンを経営アジェンダに組み込むことを目指す世界的な取り組みであり、当社は参画企業として、製品開発・マーケティング・雇用など多面的な施策を推進しています。
・LGBTQ+コミュニティへの支援
当社の組織においては、社員有志の参加によって、よりインクルーシブな職場づくりにつなげています。2025年には、世界各地で実施されたLGBTQ+の権利を称えるプライドパレードに社員が参加しました。トランスジェンダー女性・ノンバイナリーの方の美容ニーズに応えたメイク技術情報「自分らしさを彩るメイクアップガイド」を公開しました。資生堂ジャパン㈱の専門職が講師となり本メイク講座を開催し、LGBTQ+コミュニティへの支援を推進しています。資生堂グループ社員向けに「Diversity Week」を3回開催し、従業員リソースグループによりLGBTQ+や障がいのある当事者との対話機会を増やしました。
・子どもの心と身体の成長を支援する「ANESSA Sunshine Project」活動
日焼け止めブランド「アネッサ」は、太陽のもとでの活動を通じて、アジア12の国と地域で子どもたちの心と身体の健全な成長を支援する「ANESSA Sunshine Project(アネッサ サンシャイン プロジェクト)」(注2)を2024年より展開しています。屋外で遊ぶことは、子どもの発育・発達における5つの側面(身体・情緒・社会・知的・精神)をバランスよく育み、特に自律神経機能向上により、意欲や自発性といった生きる力を形成する(注3)という知見に基づき、当社は、子どもたちが自発的に外で遊ぶ習慣を促すイベントの開催や、教育関係者や親子に向けた紫外線対策知識の提供を行っています。これまでに累計17.1万人の子どもたちを支援しています。
こうした多様な活動は外部からも評価され、資生堂ライフクオリティーメイクアップが「消費者志向活動章」を、LGBTQ+への取り組みが「PRIDE指標2025」にてレインボー認定を2年連続で獲得しています。
(注) 1 社会や人とのつながりが維持できている状態
2 中国本土、香港、インドネシア、日本、韓国、マカオ、マレーシア、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、ベト
ナムの国と地域で実施
3 子どもの健康福祉学の専門家である早稲田大学 人間科学学術院 前橋 明教授(医学博士)による
人権尊重の推進
当社の事業活動は、常に人権の尊重を基盤とし、社員、取引先、人権団体といったさまざまなステークホルダーとのエンゲージメントに努めています。当社の社員がとるべき行動を「資生堂倫理行動基準」に定め、人権尊重の責務を果たしていく指針として「資生堂人権方針」を策定しています。サプライヤーに対しては「資生堂グループ サプライヤー行動基準」において、人権・法令遵守・労働慣行・知的財産の保護・機密の保持・環境保全・公正な取引に関する規範を明文化し、遵守を求めています。
2020年からは人権デューデリジェンスの仕組みを構築・運用しています。当社が社会に与える人権に対する負の影響をリスクアセスメントを通じて特定し、その防止および軽減のための改善アクションを推進しています。進捗は定期的に報告・開示することで、さらなる人権リスクの軽減に向けた活動を継続して行っています。人権リスクアセスメントにおいては、人権に関する国際規範や非財務情報開示に関する基準、CHRB(Corporate Human Rights Benchmark)の評価項目などを参照し、人権専門家の知見を得ながら、考慮すべき人権課題を抽出しています。抽出した人権課題を当社のステークホルダー(社員、お客さま、取引先、株主、社会)ごとに関連性を整理し、社内関係者へのヒアリングや社内外の資料をもとに顕在的・潜在的な人権影響の深刻度および発生可能性、また、それらに対して資生堂が実施している予防・是正措置の状況から、それぞれの人権課題のリスクを評価しています。
2025年には資生堂グループ全体を評価する第3回人権リスクアセスメントを実施し、人権リスク軽減の進捗をモニタリングしました。2024年12月には「カスタマーハラスメント防止方針」を策定し、2025年4月には「責任あるマーケティング・広告方針」、6月には「資生堂グループアクセシビリティ方針」を公表しました。これらの方針に基づき、ステークホルダーの人権を守る体制を強化しています。
これらの取り組みの詳細は下記企業サイトよりご覧ください。
https://corp.shiseido.com/jp/sustainability/society/
③ リスク管理
当社のDE&Iの取り組みのリスク管理に関しては、サステナビリティ全般のリスク管理と合わせて取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「③ リスク管理」をご参照ください。
人権に関しては、2年に1度の人権リスクアセスメントを実施し、バリューチェーンにおける人権課題を抽出しています。これに基づき、チーフオフィサー、ディビジョンオフィサーおよび関連部門が人権に対する負の影響の停止、防止、軽減に向けた活動を行っています。
④ 指標及び目標
当社DE&Iの取り組みの指標及び目標の詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「④ 指標及び目標」をご参照ください。
(4) 人的資本の取り組み
当社は「PEOPLE FIRST」の考えのもと、「人」を価値創造の源泉とするとともに、人財・組織の強化を経営の重要課題の一つとして位置づけ、積極的に取り組んでいます。
① ガバナンス
当社では、人的資本の強化を経営戦略の中核として位置づけ、人財戦略を策定・推進しています。ピープル&カルチャー本部にて中期経営計画に基づき人財戦略を策定して、「Global Strategy Committee」(注)での議論を経て、取締役会に提案もしくは報告しています。さらに、設定した事項の推進にあたっては、透明性・客観性を高く実現する体制を整えています。例えば、キーポジションに対する後継者の指名・育成計画、適材適所な配置・登用、個人業績評価の妥当性確認、地域本社の経営メンバーの評価・報酬の決定(地域本社報酬委員会)等、特に経営上の重要事項については複眼で公平公正に審議され、執行役や代表執行役の承認・支援の下で実行しています。
(注) 詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」の「① コーポレート・ガバナンス体制」をご参照ください。
② 戦略
2025年度は「アクションプラン 2025-2026」に基づき、変化の激しい市場でも安定的な利益拡大を実現するレジリエントな事業構造の構築に注力してきました。人的資本に関する取り組みにおいては、社内の構造改革を重点的に実行することで、組織としての基盤を着実に固めていました。
2025年11月、「2030中期経営戦略」の開示とともに、新たな人財戦略が始動しました。本人財戦略では、困難な時にあっても世界と本物の価値を分かち合おうとする「資生堂人」として社員が成長することを組織全体で支援し、「社員の成長をかなえる組織」の確立を目指します。その実現に向け、「挑戦の機会の拡大」「資生堂の大切にする価値観の体現」「グローバルで一体感のある組織」の3つの方針を掲げ、人的資本の強化に向けた各種取り組みを推進していきます。
<挑戦の機会の拡大>
変化の激しい事業環境の中で企業価値を継続的に高めるためには、社員が新たな挑戦を通じて成長することと、リーダーが現場で社員の挑戦を支えることが重要と考えています。リーダーの支援のもと社員が挑戦を重ねることで、環境変化に適応するポータブルスキルも身に付きます。より多くの社員に挑戦機会を提供できるよう、これまでのジョブ型人事制度と社内公募制度に加え、所属組織にとらわれない部門横断プロジェクトに参画する機会の拡大を推進していきます。また、今後はグローバルモビリティを戦略的育成施策として位置づけ、グローバルなタレント育成・キャリア形成のための投資を強化します。さらに、社員一人ひとりの強みを把握し、多様な挑戦機会のアクセスを高めるため、スキルの可視化にも取り組みます。加えて、2024年に作成したリーダーシップモデルを基に、現場の管理職を含めたリーダーが、ビジネスだけでなく人・組織の成長もリードするためのマインドセット・スキルを高める研修機会を積極的に取り入れることで、すべてのリーダーが社員の成長を強力にサポートする組織を作り上げていきます。
<資生堂の大切にする価値観(注)の体現>
変革が求められる局面だからこそ、創業以来大切にしてきた価値観を全社員で共有し、組織の意思決定や社員の行動の基準とすることが持続的な企業価値創造の原動力となるという考えから、私たちは価値観の再定義と人・組織への「実体化」に注力していきます。
価値観の再定義にあたっては、社長CEOをはじめ各地域CEOを含むグローバルリーダーシップチームで議論を重ね、資生堂グループならではの独自性にこだわりながら策定しました。今後は、社員一人ひとりが自分の仕事や役割に結び付けて考えながら仲間と対話を重ねることで、自身の判断や行動の拠り所として価値観を体現できるよう、丁寧に「実体化」のプロセスを図ります。
また、資生堂グループの強みである価値創造力と価値伝達力を次世代に継承するため、社員に多様なキャリアパス・成長ステップを提示するとともに、専門人財の計画的・体系的な育成についても検討を進めていきます。
(注) 資生堂が大切にする価値観については、当社企業情報サイトの「企業情報/The Shiseido Philosophy」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。
<グローバルで一体感のある組織>
資生堂グループ全体で継続的な構造改革が行われるなか、グローバルが一体となって協働し、相乗効果を発揮することの重要性が増しています。今後はグローバル本社・地域間の繋がりを一層強化してグローバル組織としてのアジリティを高めるとともに、多様な社員がそれぞれの強みを発揮して活躍できるインクルーシブな文化の形成を進めていきます。具体的には、コーポレート部門を対象に、グローバル本社・地域間の役割・レポートラインの明確化とガバナンス整備を通じて、グローバルで一体化した効率的なオペレーションと創出価値最大化を実現する組織体制の構築を目指します。併せて、人事部門ではこれまで統一されていなかった人事プロセスや人事データを整理・統合し、人事データに基づく迅速な意思決定と施策実行を可能とする基盤を整えます。インクルーシブな文化の形成に向けては、多様な社員が繋がり、お互いの関心や理解を深めるための「Brand Day」や「Diversity Week」などのイベントを多数開催し、人財制度と運用の面からも女性社員の活躍推進、障がい者の活躍支援、育児と仕事の両立支援を継続してきました。特に女性社員の活躍推進については、2030年までに女性管理職比率50%を目標とし、女性リーダー育成施策や女性役員とのメンタリングなどを通じて、さらなる成長を支援していきます。
そのほかにも人財・組織の強化を図る施策として、資生堂グループ全体での適材適所な人財配置と戦略的にタレントを育成する「戦略的タレントマネジメント」、中長期的な業績の向上とストレッチした業務アサインメントにより社員の成長を図る「パフォーマンスマネジメント」、主体的なキャリア開発と専門性強化のためのワークショップやeラーニング、社員自身が作成した中長期的なキャリアゴールを描く「キャリア・ディベロップメントプラン(CDP)」などの「自律的キャリア開発支援」があります。日本国内の社員に対しては、既に導入されている「ジョブ型人事制度」のもと、社員の専門性を強化し、社員一人ひとりのキャリア自律を高める支援をしています。社内の構造改革を進める中、社員が多様な挑戦機会にアクセスできるよう、これからの未来を創る人財の自己成長の場である「Shiseido Future University」や、オンライン学習プラットフォームである「LinkedIn Learning」などの学習機会を継続的に提供し、スキル強化を推進してきました。トレーニングプログラムとしては、目的と対象者に応じて、選抜型プログラム、選択型プログラム、必須プログラムの3種類を提供しています。必須プログラムには、新入社員研修や3年目研修、新任職制マネジャー研修、マネジャーワークショップ等があります。また、幹部候補の女性社員が自身や周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)から自由になり、マネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つける「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」は当社の特徴的な選抜型プログラムの1つです。
社員が自分のライフスタイルやワークスタイルに合せて働き方を選択できるように、コアタイムのない「フレックスタイム制度(スーパーフレックス)」、業務の目的に合わせてリモートワークとオフィスワークを柔軟に組み合わせる「資生堂ハイブリッドワークスタイル」を推奨しています。また、働き方の変革による生産性向上や社員体験の充実を図るため、生成AIをベースにした「Shiseido AI コンシェルジュ」を設置し業務効率化に努めています。さらに、社員の健康と労働安全衛生を重要な課題として認識し、「資生堂健康宣言」「資生堂ビジョン・ゼロ宣言(安全宣言)」を中心に、継続的に安心・安全な職場環境づくりに取り組んでいました。これらの取り組みが評価され、2025年度においても、「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」の認定を受けたほか、公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会が主催する「女性の健康経営®アワード」の推進賞を受賞しました。
これらの取り組みによる人財・組織の変化については、エンゲージメントスコアを活用して継続的にモニタリングし、効果や課題を分析することを通じて人的資本経営高度化のPDCAサイクルを構築していきます。2025年度は資生堂グループと関係会社において直接雇用されている社員全員を対象に調査を実施し、回答率は91%、エンゲージメントスコアを測定する3つの設問の肯定的回答はグローバル全体で71%となりました。設問別に見ると、「会社への満足感(74%)」や「会社への貢献意欲(74%)」が相対的に高い一方で、「働きがい/やりがい(65%)」が低い傾向にあります。今後はより多くの社員が積極的に挑戦・成長できるよう支援し、働きがいを実感してもらえる環境づくりに注力します。
③ リスク管理
当社の人的資本の取り組みのリスク管理に関しては、サステナビリティ全般のリスク管理と合わせて取り組んでいます。詳細は、前述「(1) サステナビリティ全般」の「③ リスク管理」をご参照ください。
④ 指標及び目標
指標については下表のとおりであり、中長期目標については現在策定中です。
<外部評価・受賞>
2025年度を通じて第三者機関から評価・受賞いただいた実績は以下のとおりです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼすリスクは以下のとおりであり、これらは投資家の判断にも影響を与える可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2026年3月23日)現在において当社グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。
当社では、あらゆるステークホルダーとの信頼関係を築き、経営戦略の実現を一層確実なものとすることを主眼に置いてリスクマネジメントを推進しています。そのため、リスクを戦略実現に影響を与える不確実性と捉え、脅威だけでなく、機会も含めた概念として定義し、必要な体制を構築するとともに、積極的かつ迅速に対応策を推進しています。
当社グループ全体に関わるリスクや個別案件に関わるリスクを特定し対応策等を審議する体制として、当社CEOを委員長とし各地域CEOおよびオフィサー等をメンバーとするGlobal Risk Management & Compliance CommitteeやGlobal Strategy Committeeを設置し、定期的に開催しています。また、リスクに関連する情報は、CLO(チーフリーガルオフィサー)傘下のリスクマネジメント部門に集約されます。
毎年特定・評価された重要リスクは、当社グループの経営戦略を策定するうえで考慮される要素となります。加えて、リスクごとに設定されたリスクオーナーを中心に対応策を推進し、その進捗状況をモニタリングするとともに定期的に上記のコミッティーのメンバーや取締役と共に議論する仕組みを構築・運用しています。
2025年度は、総合的・多面的な手法(ホリスティックアプローチ)を用いて全社的に重要なリスクを抽出しました。具体的には、当社オフィサー、各地域CEOおよび取締役のリスク認識を把握するインタビューやディスカッション、ならびに各地域で実施した地域ごとのリスク評価、当社関連機能部門によるリスク評価等を元に、リスクマネジメント部門による分析や外部有識者の知見を加えて、当社の「2030 中期経営戦略」(注)の達成に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定しました。
(注) 「2030 中期経営戦略」 戦略の3つの柱
そして、以下表1のとおり、「ビジネスへの影響度」、「顕在化の可能性」、「脆弱性」の3つの評価軸を設定し、上記コミッティーや個別会議などを通じて、リスクの優先付けおよび対応策の検討・確認を行いました。
表1 <リスクの評価軸>
アセスメントの結果抽出された計21の重要リスクは、以下表2のように「生活者・社会関連」「事業基盤関連」そして「その他」の3つのリスクカテゴリーに分類し対応しています。
表2 <資生堂グループ重要リスクの抽出結果> ★:特に対応を強化しているリスク
当連結会計年度のリスクアセスメント結果で特筆すべき点として、各リスクの結びつきがますます強固となり、それに伴い各リスクの対応策の相互関係も強まりつつあることが挙げられます。加えて、当社では「生活者の価値観変化への対応」「地政学的問題」「組織能力と組織風土」「規制対応」のリスクについて、前連結会計年度と比較しリスクレベルが上昇しているリスクとして特定し、対応を強化しています。
次項より重要リスクごとに、戦略実現に向けた主要な取り組み、想定される不確実性(脅威・機会)、対応策、リスクレベルの変化および「2030 中期経営戦略」との関連性を記述します。なお、記述内容は、2026年3月23日時点におけるものです。
<生活者・社会関連>
<事業基盤関連>
<その他>
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(単位:百万円)
(注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失・買収関連費用等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2 EBITDAは、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)および償却費を加算しています。
3 売上高における実質増減率は、為替影響、当連結会計年度・前連結会計年度におけるすべての事業譲渡影響および譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響および「Dr. Dennis Gross Skincare」の買収前に係る期間の当連結会計年度の売上による影響(以下「事業譲渡影響および買収影響」という。)を除いて計算しています。
当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクの高まり等を受け先行きへの不透明感が継続しました。
国内化粧品市場は、緩やかな成長となりました。訪日外国人旅行者数は年間を通じ過去最多となり堅調に推移した一方、12月の中国人旅行者数の急減も影響しインバウンド消費は想定を下回りました。
海外化粧品市場は全体として厳しい状況が継続する中でも、回復基調が見られました。中国海南島などの免税市場では、景況感の悪化に伴う低調な消費により厳しい市場環境が続いたものの、中国海南島での免税政策の改正を背景に復調が見られたほか、中国市場においても回復基調となりました。欧米化粧品市場では想定は下回るものの、緩やかな成長を維持しました。
当社グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD (美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを中心とした社会課題の解決に向けてイノベーションに積極的に取り組んでいます。当社グループは2024年11月に、早期の収益性改善と、その後の持続的な成長をより確実なものとするために、2025年と2026年で実行する「アクションプラン 2025-2026」を策定しました。変化の激しい市場でも安定的な利益拡大を実現するレジリエントな事業構造を目指し、「ブランド力の基盤強化」、「高収益構造の確立」および「事業マネジメントの高度化」に取り組んでいます。当連結会計年度は、2026年のコア営業利益率7%の達成に向けて、優先課題への対応を確実に進め、主要な構造改革アクションを完遂しました。
そして、当社グループの強みである価値創造力と価値伝達力を基盤に、新たな成長軌道へと転換し、企業価値の最大化を目指す「2030 中期経営戦略」を策定し、2030 VISION「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」を掲げました。創業から大切にしてきたものへと立ち返り、社会へ貢献したいという考えのもと、「ブランド力の向上を通じた成長加速」、「グローバルオペレーションの進化」および「サステナブルな価値創造」を戦略の柱に据え、市場を上回る売上成長を目指すとともに、2030年までにコア営業利益率10%以上の達成を実現します。
① 売上高
売上高は、中国・トラベルリテール事業の上期を中心とした消費低下の影響や、米州事業の「Drunk Elephant」の苦戦継続により、減収となりましたが、注力ブランドの成長により下期はプラス成長となりました。その結果、前年比2.1%減の9,700億円、現地通貨ベースでは前年比2.1%減、為替影響、事業譲渡影響および買収影響を除く実質ベースでは前年比1.8%減となりました。
② 売上原価
売上原価は、前年比4.4%減の2,270億円となりました。売上高に対する比率は、ブランド・プロダクトミックスの改善、偏在在庫償却引当の減少などにより前年比0.6ポイント減の23.4%となりました。なお、事業譲渡影響および減損損失影響などを除いた実質の原価率は在庫償却関連費による原価減少などにより、前年比0.4ポイント減の23.0%となりました。
販売費及び一般管理費は、前年比3.4%減の7,256億円となりました。コア営業利益ベースの内訳は次のとおりです。
(イ) マーケティングコスト(注) 1
マーケティングコストの売上高に対する比率は、機動的なコストマネジメントにより減少したものの、ブランド価値向上のための投資継続強化により、前年比0.7ポイント増の29.3%となりました。
(ロ) ブランド開発費・研究開発費
ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前年比0.1ポイント減の3.8%となりました。
(ハ) 人件費(注) 2
人件費の売上高に対する比率は、賞与引当金が増加したものの、日本、中国・トラベルリテールおよび米州の構造改革効果等により、前年比0.6ポイント減の22.3%となりました。
(ニ) 経費
経費(その他費用)の売上高に対する比率は、構造改革や全社を挙げたコストマネジメントにより前年比0.5ポイント減の17.0%となりました。
販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は271億円となり、売上高に対する比率は2.8%となりました。なお、研究開発活動についての詳細は、「6 研究開発活動」に記載しています。
(注) 1 マーケティングコストは、PBP(パーソナルビューティーパートナー)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は38.3%となりました。
2 人件費は、PBP(パーソナルビューティーパートナー)関連諸費用を除いた場合は、売上高に対する比率は13.3%となりました。
④ コア営業利益
コア営業利益は、前連結会計年度に対し82億円増益の445億円となりました。中国・トラベルリテールや米州事業などの減益の一方、注力ブランドの成長に伴うプロダクトミックス改善、および構造改革や全社を挙げたコストマネジメントによる効果で相殺し、増益となりました。
⑤ 営業利益又は損失
営業利益又は損失は、前連結会計年度に対し364億円減益の288億円の損失となりました。コア営業利益の増益の一方、米州事業の収益性低下を受けて実施した減損テストの結果、当連結会計年度において、のれんの減損損失468億円を計上したことが影響しました。
税引前損失は、前連結会計年度に対し264億円減少し、277億円の損失となりました。営業利益が前連結会計年度に対し364億円減益の288億円の損失となった一方、前連結会計年度にセラーノートに関連する費用として長期貸付金の損失評価引当金繰入額を計上したことが影響しました。
親会社の所有者に帰属する当期損失は、前連結会計年度に対し299億円悪化し、407億円の損失となりました。コア営業利益の増益や金融費用の減少の一方、米州事業ののれんの減損損失を計上したことが影響しました。
EBITDAは、前連結会計年度に対し57億円増益の952億円となり、マージンは9.8%となりました。
当連結会計年度における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=149.7円、1ユーロ=169.0円、1中国元=20.8円です。
(報告セグメントの業績)
各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。
コア営業利益又は損失 (参考)
(注)1 当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「中国事業」「トラベルリテール事業」から「中国・トラベルリテール事業」に変更し、従来「その他」に計上していた㈱イプサの国内販売機能、およびヘルスケア事業の美容食品等の販売機能に係る業績を「日本事業」に計上しています。また報告セグメントの利益又は損失の算定方法を変更しています。変更内容の詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記」の「6. 事業セグメント」をご参照ください。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 売上高における実質増減率は、為替影響、事業譲渡影響および買収影響を除いて計算しています。
3 「その他」は、飲食業等を含んでいます。
4 コア営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
5 コア営業利益又は損失の「調整額」は、主に各事業セグメントに配分していない本社費用、各報告セグメントへの配賦額と実際発生額との差額および原価差額等です。本社費用は、従来「その他」に含めていましたが、当連結会計年度より「調整額」に含めており、主に本社機能部門および基礎研究開発部門等に係る費用です。
① 日本事業
日本事業では、経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」の実行を通じ、成長性・収益性の高いブランド・商品・お客さま接点へ活動を集中させることで成長の加速に取り組むとともに、固定費低減により、収益性改善を着実に進めました。「SHISEIDO」や「エリクシール」を中心としたコアブランドで、最新技術を搭載した新商品の貢献などにより、成長を実現しました。一方、インバウンド消費は、訪日外国人旅行者数が過去最多となったものの、旅行者の消費行動変化や内外価格差の縮小を受けた購買意欲の低下により、成長は鈍化しました。
以上のことから、売上高は2,953億円となりました。前年比は0.4%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比0.7%増となりました。コア営業利益は390億円、売上増に伴う差益増および構造改革効果などにより、前年に対し131億円の増益となりました。
② 中国・トラベルリテール事業
中国・トラベルリテール事業では、景況感の悪化に伴う消費低下が影響したものの、下期にかけては回復が見られました。中国では、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」がけん引し、特に中国最大のEコマースイベントである「ダブルイレブン」によりEコマースが大きく伸長しました。トラベルリテール(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、旅行者中心のビジネスへの移行が順調に進んだものの、中国・韓国において、中国人旅行者の消費低調による厳しい状況が継続し、減収となりました。
以上のことから、売上高は3,422億円となりました。前年比は4.3%減、現地通貨ベースでは前年比3.5%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比3.5%減となりました。コア営業利益は645億円、売上減に伴う差益減を、固定費低減などの構造改革効果により一部相殺し、前年に対し75億円の減益となりました。
③ アジアパシフィック事業
アジアパシフィック事業の国・地域では、台湾等での市場縮小の影響を受けた一方、タイを中心とする東南アジアや韓国が成長をけん引し、増収となりました。「クレ・ド・ポー ボーテ」、「SHISEIDO」、「エリクシール」を中心とした注力ブランドが成長しました。
以上のことから、売上高は733億円となりました。前年比は2.3%増、現地通貨ベースでは前年比1.4%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比1.8%増となりました。コア営業利益は51億円、売上増に伴う差益増により、前年に対し2億円の増益となりました。
④ 米州事業
米州事業では、「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」が増収となりました。一方、「Drunk Elephant」は苦戦が継続したことに加え、「NARS」は一部出荷の期ずれ等の影響により、減収となりました。
以上のことから、売上高は1,066億円となりました。前年比は10.1%減、現地通貨ベースでは前年比8.7%減、為替影響、事業譲渡影響および買収影響を除く実質ベースでは前年比9.5%減となりました。コア営業損失は116億円、売上減に伴う差益減、原価率悪化および関税影響による減益を、固定費低減などの構造改革効果により一部相殺し、前年に対し23億円の減益となりました。
⑤ 欧州事業
欧州事業では、「Drunk Elephant」の苦戦は継続した一方、新商品を発売した「Zadig&Voltaire」や「narciso rodriguez」等フレグランスが力強い成長となりました。
以上のことから、売上高は1,411億円となりました。前年比は6.4%増、現地通貨ベースでは前年比3.1%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比3.2%増となりました。コア営業利益は39億円、売上増に伴う差益増を、マーケティング投資の強化などにより一部相殺されたものの、前年に対し13億円の増益となりました。
(生産、受注および販売の実績)
生産、受注および販売の実績は次のとおりです。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 金額は製造原価によっています。
当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。
当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) セグメント間取引については相殺消去しています。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、ならびに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、ネットデット・EBITDA・レシオ0.5倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力およびキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。
手元流動性については、連結売上高の1.5ヶ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,182億円となり、手元流動性は連結売上高(2025年1月1日から2025年12月31日までの期間)の1.5ヶ月分となりました。
一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は3,252億円となっています。金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円、国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,850億円を有し、資金調達手段は分散化されています。
当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。
当社グループは、流動性および資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、株式会社格付投資情報センターより格付けを取得しています。
2026年2月28日現在の発行体格付けはA(方向性:安定的)となっています。
総資産は、のれんの減少、円安による資産の換算額の増加、棚卸資産の減少、使用権資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ646億円減の12,673億円となりました。
(負債)
負債は、社債償還やリース負債の減少などにより312億円減の6,460億円となりました。
資本は、当期損失や配当金支払いによる利益剰余金の減少、円安により在外営業活動体の換算差額が増加したことなどにより、334億円減の6,213億円となりました。
1株当たり親会社所有者帰属持分は、前連結会計年度末に対し79.83円減の1,503.64円となり、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末比0.1ポイント減の47.4%となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分に対する現金及び預金の総額を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.16倍となりました。
(単位:百万円)
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、当連結会計年度期首残高985億円に比べ66億円減少し、918億円となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費及び償却費(717億円)、減損損失及び減損損失戻入(513億円)、棚卸資産の増減額(190億円)などの増加項目があった一方、税引前損失(277億円)、営業債務の増減額(139億円)、などの減少項目があったことにより、前連結会計年度末に比べ615億円増加の1,099億円の収入となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、工場設備への投資等である有形固定資産の取得による支出(253億円)、ITシステムへの投資等の無形資産の取得による支出(191億円)などにより、434億円の支出となり、前連結会計年度末に比べ403億円支出は減少しました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入(570億円)があった一方、社債の償還による支出(400億円)、短期借入金の減少(320億円)、リース負債の返済による支出(237億円)、配当金の支払額(120億円)、長期借入金の返済による支出(120億円)、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出(117億円)などにより、前連結会計年度末に比べ1,006億円支出は増加し、772億円の支出となりました。

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要性がある会計方針」および「4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しています。
(非支配持分の追加取得)
当社は、成長市場での事業運営を包括的に管理することを主な目的として、当社の連結子会社である資生堂アジアパシフィックPte. Ltd.を通じて、連結子会社である資生堂(タイランド)Co. Ltd.の非支配株主が所有する51%の株式を追加取得する株式売買契約について、2025年11月28日に法的拘束力を有する正式契約を締結しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「36.主要な子会社」に記載しています。
当社グループは、強みである皮膚科学技術や処方開発技術、感性科学、情報科学に加えて、デジタル技術や機器開発技術などの新しい科学技術を国や業界を超えて融合し、資生堂の企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に取り組みます。
資生堂グローバルイノベーションセンターをはじめ、米国、フランス、中国に代表される海外研究開発拠点においては、現地のマーケティング部門と連携しながら、各地域のお客さまの肌や化粧習慣の研究、その特性にあった製品開発に取り組んでおり、世界中のお客さまに対して安全・安心、高品質な商品・サービスの創出に向け、資生堂グループ全体の成長に貢献するとともに世界の化粧品業界をリードします。
当社グループが生み出した研究開発成果は外部より高い評価を受けています。化粧品技術を競う世界最大の研究発表会である第35回国際化粧品技術者会連盟カンヌ大会2025において、全798件の研究報告(口頭発表68件、ポスター発表730件)のうち、ポスター発表部門で「最優秀賞」を受賞しました。そして、2025年6月にフィリピンで開催された第17回アジア化粧品技術者会(ASCS)マニラ大会2025にて口頭発表部門で「1等賞」を受賞しました。
また、戦略実現を加速するアプローチとして、皮膚科医をはじめとする医師や研究機関等との連携および生活者との共創においてイノベーション創出を積極的に進めることを示しました。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
(1) スキンケア
肌自らが持つ力で未来の肌悩みを未然に防ぐという考えのもと、30年以上前から肌の免疫機能に関する研究にマサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(以下「CBRC」という。)と共に取り組み、常に進化を続けています。今回、当社とCBRCは新たな皮膚の免疫細胞の機能として、老化した繊維芽細胞(老化細胞)を除去することと、そのメカニズムを発見しました。これまで老化細胞は年齢とともに蓄積すると考えられていましたが、老齢の皮膚においても必ずしも老化細胞が多いわけではなく、免疫細胞の一種であるCytotoxic CD4+ T細胞(以下「CD4 CTL」という。)が老化細胞の蓄積抑制に強く関わっていることを明らかにしました。またCD4 CTLが老化細胞の蓄積を抑えるメカニズムとして、老化細胞内で活性化したヒトサイトメガロウイルスの一部分(抗原)が老化細胞の表面に出現することで、それをCD4 CTLが認識し、老化細胞を選択的に除去していることを世界で初めて発見しました。なお、本研究成果は生命科学分野において世界最高峰の学術雑誌であるCell誌に掲載されました。さらに、ツバキ種子発酵抽出液が、CD4 CTLの誘引するCXCL9(注1)の発現を高めることを世界で初めて発見しました。これにより、ツバキ種子発酵抽出液によって皮膚の免疫細胞による老化細胞除去効果が高まることが期待され、本研究成果を「SHISEIDO」の商品開発に応用しました。
近年、美容医療市場が拡大するなど生活者が望む明るい肌を叶える手段が多様化する中、安全でさらに効果の高い美白化粧品、医薬部外品の開発のためには新規開発が難しい美白有効成分の「浸透性」を高める技術の強化が求められていました。そこで、融点(個体が融解し液体になるときの温度)の高いイオン性の物質を組み合わせることで元の物質の融点より低い温度で液体になるイオン液体に着目しました。その結果、当社独自開発の美白有効成分4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)を、イオン液体である保湿成分トリメチルグリシンと組み合わせることで、皮膚浸透性を高める4MSK/フリュイド浸透促進技術を開発することに成功しました。この技術は、常温で固体の4MSKを液体化し、肌に塗布した後も液体(フリュイド)状態を持続させる画期的な技術です。最適な配合比率で2つの成分を基剤に配合すると、4MSK単独で基剤に配合する場合と比べて、4MSKが皮膚へ約2倍浸透することを確認しました。さらに、3次元培養皮膚モデルで検証した結果、4MSKのメラニン生成抑制効果を高める効果があることが分かりました。また、本技術を搭載した新プロトタイプ基剤では、シミの数が12週間で1.8倍減少し、肌の明るさも12週間で1.9倍の改善を確認しました。本研究成果は「SHISEIDO」の商品開発に応用されました。
当社は100年を超える肌研究と先進のシミ研究から、これまでメラニンやシミが発生する肌内部環境への多角的なアプローチで様々なシミ形成要因を解明してきました。一方でシミ特有の要因に結びつく肌内部のダイナミックな変化を実際の皮膚と同様の環境において細胞レベルでとらえる必要があることがわかってきました。しかしながら、生きたシミ内部を細胞レベルで、かつリアルタイムで解析することは困難でした。そこで、生きたヒトの皮膚をリアルタイムで観察することができる顕微鏡の一種であるFLIM(注2)を用いて、シミ部位の細胞代謝を評価する新手法を世界で初めて確立し、これまで観察が難しかった、シミがどのように悪化していくかという「シミの一生」を時間軸で捉えることに成功しました。FLIMを用いた解析によって、シミ部位ではメラニンの蓄積によってミトコンドリア代謝が低下し、細胞老化が生じることでシミが悪化すると考えられ、いわばシミがシミを呼ぶ悪化根源があることを明らかにしました。なおこの画期的な研究成果は、第34回国際化粧品技術者会連盟イグアス大会2024の口頭発表基礎部門で最優秀賞を受賞し、第32回日本色素細胞学会学術大会にて発表を行っています。さらに、資生堂独自のトリプル薬剤を配合した基剤において、シミにおけるミトコンドリア代謝が高まることを見出しました。細胞老化の主要な要因のひとつであるミトコンドリア活性低下を抑えるとともに、老化した細胞から分泌され、細胞老化を悪化させるSASP因子(注3)のひとつであるGROα(注4)を抑制することが分かりました。本研究成果は「HAKU」の商品開発に応用されました。
(2) サンケア
ミネラル類に代表される紫外線散乱剤は配合量を高めることで紫外線防御力は高くなりますが、肌が不自然に白浮きしやすくなります。一方で、濃度を低くすると白浮きは防げますが紫外線防御力は低くなるというジレンマが存在しました。そこで、国立大学法人東京農工大学大学院工学研究院応用化学部門教授 稲澤晋先生との共同研究により、世界で初めてミネラルサンスクリーン(ノンケミカルサンスクリーン)処方において、紫外線散乱剤が肌の上で最適な分散状態に変化する技術を開発しました。この技術により、高い紫外線防御力を発揮しながら、透明で均一な防御膜を形成する新しい日焼け止め製剤を提供することが可能になりました。これまでミネラルサンスクリーン処方の課題だった塗布後の白浮きを軽減させ、紫外線散乱剤が肌のキメまでムラなくフィットするため、紫外線防御力は本技術未搭載の場合と比較して最大2.2倍を実現しました。なお、本技術は日焼け止め製剤の開発において従来不適切とされてきた「凝集」状態(紫外線散乱剤の粒子が集まって繋がった状態)をあえて活用し、肌の上で均一な分散状態へと徐々に変化させることで実現されます。一般的に「凝集」状態は、機能が低下するため敬遠されていましたが、逆転の発想により日焼け止め技術の新たな価値へと転換することができました。本研究成果は「SHISEIDO」の商品開発に応用されました。
従来、ウォーターベース日焼け止めは軽い使用性のため、日常使いとして人気がある一方で、汗や水に弱く、紫外線防御膜が崩れやすいとされてきました。そのため、日焼け止め製剤開発においては、耐水性を高めるために紫外線散乱剤や被膜剤を多く配合することが一般的な手法となっており、白浮きやべたつき、衣類への色移りを引き起こす要因となっていました。そこで、ウォーターベースでありながら高い耐水性と紫外線防御力が持続し、かつ過酷な蒸し暑さや冷房による乾燥など外部環境の湿度変化に応じて肌表面の水分量を調整する新しい日焼け止め技術を開発しました。本技術は、汗や海水に含まれる金属イオンと反応する石鹸由来の成分を利用し、肌表面の塗布膜に特殊な構造を形成させることで撥水性と密着性を向上させます。水より軽く、柔軟でヨレにくい膜を形成することが可能になり、高い耐水性と紫外線防御力を持続しつつ、白浮きや黒い服への白移りが少ない透明な仕上がりを実現しました。さらに、外部環境の湿度変化に応じて自発的に水分透過をコントロールする技術を応用し、乾燥下では肌表面の水分を逃さずに留め、湿潤化では過剰な水分を放出することで常に肌表面の水分バランスを一定に保ち、シミの原因となる炎症因子IL-1αの活性化を抑制させることが期待されます。なお本研究の成果の一部は、第3回日本化粧品技術者会(SCCJ)学術大会にて発表を行っており、肌表面を覆って紫外線を防ぐだけでなく、日常のストレスや不快感、さらには環境にも配慮した製品の開発へつなげていきます。
肌の光老化についてまだ広く知られていなかった100年以上前から、いち早く紫外線防御研究に着手し、あらゆる環境下でも紫外線の悪影響から肌を守りたいという生活者ニーズに応えるべく技術開発を行ってきました。昨今、紫外線防御機能と高いスキンケア機能を兼ね備えた日中用化粧品の需要が高まる中で、当社はどのようにしてその期待に応えるべきかを考えてきました。そこで、東京科学大学の清水重臣特別教授との共同研究により、細胞内の不要な物質を分解し再構築するメカニズムとして知られるオートファジーの中でも、特に細胞が過度のダメージを負ったときに機能するオルタナティブオートファジーが、紫外線による肌の光老化を抑制する働きを持つことを明らかにしました。紫外線により損傷した表皮細胞内のミトコンドリア(注5)の周辺では、炎症性因子を発していることを確認し、オルタナティブオートファジーを活性化させると炎症性因子が抑えられることが分かりました。さらに、オルタナティブオートファジーが働かずに炎症性因子が表皮細胞の外に放出され、その影響が真皮細胞に及ぶようになるとコラーゲン分解酵素(NMP)の発現が高まることが分かりました。そして、オルタナティブオートファジーを活性化するエキスとして毛葉香茶菜エキスを見出しました。今回の共同研究の知見から開発したソリューションによって、従来の紫外線防御や抗炎症剤といった外側からのアプローチに加え、肌の内部からもシミによる肌悩みを防ぐ画期的なアプローチが可能になりました。
(3) メディカル・ダーマ
理想の肌を実現する手段として近年では美容医療が一般的になり、化粧品にも高い効果を期待する声が高まっています。美容医療技術で人気を博しているマイクロニードル(注6)は、肌に微細傷をつけ、薬剤の浸透を高めるとともに創傷治癒の反応を惹起し、皮膚深部の構造を再構築して高い効果をもたらすとされています。一方で、治療による出血等を伴う侵襲的な側面もあることから、施術を受ける際の負担、不安感が課題でした。そこで、美容医療に迫る高い効果と安全性を両立し、日常的に使用できる独自構造の次世代マイクロニードルを開発しました。「注入」と「押圧」の2つの機能を備えた新しいアプローチで、皮膚を傷つけずに皮膚浅層(角層を含む表皮)に有効成分を注入すると同時に、皮膚深部(真皮以下)に押圧刺激を与えることができ、免疫・血管・コラーゲンなどの細胞外マトリクス(注7)に関連する遺伝子群の発現状態を変化させます。まず、皮膚浅層のみを精密に刺し、同時に皮膚深部に押圧による圧刺激を効率的に与えることのできる形状パラメータを見出し、ナイアシンアミドなどの水溶性薬剤の浸透量を有意に向上させるとともに、素早くより深くまで送達させることを明らかにしました。次に、マイクロニードルを2日に1回の頻度で7日間使用し、皮膚深部に刺激を与えることにより免疫・血管・コラーゲンなどの細胞外マトリクスに関連する遺伝子群の発現を変化させ、皮膚を傷つけずに肌改善を促すことが示唆されました。さらに、ナイアシンアミドを配合したマイクロニードルの連用試験の結果、短期間でしわ・透明感を改善し、8週間後にほうれい線がより浅く、短くなっており、バリア機能を破壊せずむしろバリア機能を改善するなど複合的な肌悩みを改善することが明らかになりました。なお、本研究成果の一部は、第34回国際化粧品技術者会連盟イグアス大会2024にて発表を行っており、本研究成果を「SHISEIDO」の商品開発に応用しました。
また、日本におけるダーマ市場の成長に向け、皮膚科医等の専門医と協力した研究開発の強化を加速しています。東北大学病院 皮膚科・周産母子センター(以下「東北大学病院 皮膚科」という。)との共同研究により、生後2カ月時点で角層に含まれる特定のタンパク質が多い乳幼児は、3歳時点でアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症する確率が高いことを発見しました。両親のうち少なくともひとりにアトピー性皮膚炎の既往がある乳児について、アトピー性皮膚炎・食物アレルギーの発症と角層中に含まれるタンパク室であるSCCA1量の関係性を統計的解析により調べたところ、生後2カ月時の頬の角層中のSCCA1の量は、アトピー性皮膚炎を発症していない乳幼児と比較をして、発症した乳幼児においては著しく高い結果となりました。また、生後2カ月時の口周りの皮膚の角層中のSCCA1の量が、食物アレルギーを発症していない乳幼児と比較をして、発症した乳幼児においては著しく高い結果となりました。これらの結果は、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーで悩む方が増えている中、早期予測に基づいた適切なケアにより発症リスクが低減できることで乳幼児と家族の生活の質向上に寄与できると考えられます。本発見は着想から10年以上の歳月をかけて、東北大学病院 皮膚科との協働を通じて見出されました。なお、本研究の共同研究者である東北大学病院 皮膚科 小澤麻紀先生の論文は、2025年度サノフィ優秀論文賞「一般部門」を受賞し、本成果は2025年10月24日~26日に開催された日本アレルギー学会にて発表されました。今後も国内の皮膚科医等の専門医と協力した研究開発を通じ、敏感肌サイエンスを強化していきます。
肌の内部や身体と心の状態、さらにはそれらの関係性を解明する独自の技術を活用し、50年以上にわたって敏感肌の研究に取り組んできました。当社は、肌の敏感さには皮膚常在菌叢(注8)の中でも大きな割合を占めるアクネ菌と表皮ブドウ球菌の影響が大きいのではないかという考えの下、そのバランスに着目して研究を進めてきました。東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター井元清哉教授、植松智特任教授らとの共同研究において、敏感肌には、健康な肌に必要な表皮ブドウ球菌の生育を阻害する特殊なアクネ菌(以下「阻害菌」という。)が多いことを発見しました。この発見は従来よりも解析範囲と解像度を大幅に向上できる全ゲノムショットガン解析を活用した成果です。そして、この阻害菌を選択的に抑制し、表皮ブドウ球菌が育ちやすい環境を作る成分として、過酷な環境に生息する微生物由来の発酵エキスを独自のスクリーニングで見出しました。本研究で得られた皮膚常在菌叢に関する知見と成分は今後の敏感肌向けのスキンケア製品へと応用していきます。
(4) サステナビリティ
ボトル製造と中味液充填をワンステップで実現することで環境負荷を軽減する製造技術「LiquiForm(リキフォーム)」をディスペンサーポンプ型容器にも採用し、環境負荷軽減だけでなく、化粧品ならではの容器の魅力や心地よい使用感に繋がるデザイン性、持ちやすさや使い勝手といった機能性を同時に実現する化粧品容器を開発しました。今回、ボトルを「LiquiForm(リキフォーム)」による成形で作ることで、現行品から容器単体のプラスチック使用量を約56%、CO2排出量(温室効果ガス排出量)を約48%削減(注9)可能です。ポンプの付いた硬い素材の容器上部をこの柔らかなレフィルに差し込む形状にするために、落下強度や中味の耐光性、ディスペンサーポンプ型ならではの中味の吐出のしやすさ、プラスチック量削減など複数の課題を解決しています。人間の手の大きさと本体容器のサイズのバランスなど、人間工学の観点からも検討を重ね、実際にお客さまにも試していただくことで、手になじむ最適な形状の開発に成功しました。本研究成果を「イプサ」の商品開発に応用しました。
パッケージに関してはサステナビリティへの対応のみならず、意匠性の向上にも取り組んでいます。その進捗の評価を受けるために公益社団法人 日本包装技術協会が開催する2025日本パッケージコンテスト(第47回)に出品し、当社製品が4作品で受賞しました。上述の「LiquiForm(リキフォーム)」をディスペンサーポンプ容器に採用した「イプサ ME n 1~8(医薬部外品)」が本コンテストの最高賞であるジャパンスター賞の経済産業大臣賞を受賞しました。また、「アネッサ パーフェクト UV ブラッシュオンパウダー」、「イプサ ザ・タイム R アクア(医薬部外品)」が包装技術賞を、「SHISEIDO アルティミューン パワライジング セラム」が包装部門賞を受賞しました。日本パッケージコンテスト包装におけるデザインからロジスティクスに至るまでの各年の包装の最高峰と優秀群を決定するものです。最高賞のジャパンスター賞は、保護性や機能性等、多くの包装に求められる要件を満たし、かつ経済性や環境にも配慮された総合的に最もすぐれているパッケージに授与されます。今後も、環境への負荷が最小限になる原材料調達や処方開発など、独自の技術開発や社外とのコラボレーションを通じて、循環型の社会に貢献していきます。
(5) 生活者との共創による研究力の価値への転換
まずは、当社の強みの一つである感性研究の価値を生活者に実際に体験いただいた試みについてです。2025年7月11日~14日(現地時間)までの4日間、2025年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」という。)の河瀨直美テーマ事業プロデューサーが担当するシグネチャーパビリオン「Dialogue Theater – いのちのあかし - 」の対話シアター棟にて当社の感性研究である香りを用いた共感体験の実証実験を来場者参加型で実施しました。これは、人とのつながりの希薄化や孤独・孤立問題が懸念される現在において、香りに人々の関係性をより良い方向性に変えられる力があるかを実証するものです。森の集会所内感性研究体験機器で体験者の二人は向かい合い、お互いの顔を見ながら自由に対話を楽しみます。対話中、当社の感性研究技術により体験者双方の表情から関わる情報を読み取り、共感の度合いを計算、共感したタイミングで香りが空間に放出されます。体験後には、香りの提示された回数と最大共感度の結果を見ることができます。一人ひとりが生涯を通じて自分らしい健康美を実現できる社会を目指し、新しい感性研究・技術と、心と心のつながりの強化を実現し、五感研究・技術によってお客さま同士のつながりをサポートしていきます。
次に、処方技術や肌だけでなくひとをひと全体として捉えてきた肌・身体・心に関する基礎研究知見に触れていただく新たな場のローンチについてです。研究員が生活者とつながり、未来の美を共創するために、横浜・みなとみらい21地区に位置する研究開発拠点「資生堂グローバルイノベーションセンター」の1・2階を刷新し、「肌・身体・心がつながるサイエンスで、あなただけの美が、目を醒ます。」をコンセプトとした「Shiseido Beauty Park」を2025年1月22日にオープンしました。「Shiseido Beauty Park」には肌・身体・心のつながりを解き明かす先進サイエンス「Beauty Artscape」を体験できるラボとして「Shiseido Beauty Diagnosis Lab」、「Shiseido Kitchen Lab」、そして「Shiseido Art & Science Lab」があります。さらに、オープンイノベーションを推進する「fibona Lab」や、すべてのイノベーションを支える研究員の進化を目指す「Shiseido People Lab」があり、5つのラボで構成されています。総来場者数は目標を大きく上回り、「Shiseido Beauty Diagnosis Lab」の予約は多くのキャンセル待ちが出るなど大変好評をいただいており、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に向け、革新的な価値創出をさらに加速させていきます。
(注) 1 免疫細胞などの細胞の遊走を促進するタンパク質
2 Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy。蛍光寿命イメージング顕微鏡法。蛍光分子の固有の性質である蛍光寿命を利用して画像化する観察手法
3 細胞老化随伴分泌現象(Senescence-Associated Secretory Phenotype:SASP)と呼ばれる細胞老化した細胞が分泌する炎症因子等を含む様々な因子の総称
4 表皮角化細胞(ケラチノサイト)から分泌されるSASPのひとつ。メラノサイトがメラノーマへ転換する過程にもかかわることが知られている
5 1つの細胞の中に100個以上存在する細胞内小器官で、エネルギー産生など生きるために重要な役割を果たしている
6 マイクロスケールの超微細な針。角層に極小の穴をあけることで、皮内送達や細胞の賦活化を促す手法として、化粧品・医療分野での活用が進んでいる
7 生体組織において細胞間隙に存在し、網目構造、ゲル状を呈したタンパク質と糖質からなる不溶性の高分子会合体のこと
8 ある一定の環境に存在する細菌などの微生物群。マイクロバイオームとも呼ばれる
9 リニューアル前後でのレフィル容器単体のプラスチック量と温室効果ガス排出量を当社にて比較。容器単体での温室効果ガス排出量について、SuMPO EPDで第三者検証を実施済(ISO 14025に準拠)