第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針について

当社は、企業理念として次の「Mission」「Vision」「Value」を掲げております。

Mission「ひとを幸せにする」

Vision「私たちは在宅療養に新しい価値の創造を行い、すべての人が安心して暮らせる社会を実現します」

Value「(Be a challenger:努力と挑戦を続け、成長し続けます。)

 (Be innovative:新しいことを追求し、新たな価値を創造し続けます。)

 (Be sincere:真心をもって誠実にひとに向き合い、信頼に溢れる豊かな人生を築きます。)

 (Be positive:物事を自分事として捉え、何事もチャンスと解釈し、前進させます。)

 (Be professional:法と秩序を守り、ひとに安心と感動を与えるプロ集団を目指します。)」

 

(2)経営戦略について

今後の方向性は、「クラウドサービス」の市場シェアの拡大、および「BPaaS」「けあログっと」の拡大により訪問看護市場におけるプラットフォーマーとしての地位の確立を目指します。

また、主力サービスで得られる情報を匿名加工情報(特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報)として活用することでPHR(注)を活用したデータビジネス(地域包括ケア事業)につなげ、当社の事業領域の拡大と企業価値の向上を図ってまいります。

当社の事業領域は、療養治療・観察の慢性期医療と終末期医療分野という、長期的で継続的な医療・介護分野です。現在はiBowを中心に在宅療養の核となる訪問看護ステーションに向けた業務支援システムとBPaaSを提供しております。日本では、医療・介護・健康分野の情報化として、PHRを中心とした医療データの利活用が推進されております。当社においてもこのPHR情報を地域包括ケアシステムの中に取り込み、患者を中心とした関係者が、安全で安心して情報共有ができる仕組みの構築と提供を考えております。

また、2021年より開始している在宅治験支援をはじめ、在宅医療データの活用による第3のサービスの確立が当社のさらなる成長に大きく貢献すると考えております。

(注)パーソナルヘルスレコードの略語であり、個人の健康・医療・介護に関する情報のことを指します。

 

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(3)経営戦略上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、事業規模と収益性を測る指標として、売上高および営業利益を重視しております。

また、主力サービス「iBow」においては、サブスクリプション型のサービスを提供しているため、当社がサービスを提供する稼働ステーション数の増大、市場シェアの拡大、月次平均解約率の低減および顧客平均単価の向上を重要な経営指標としております。複合サービスを展開し、市場シェアの拡大、満足度の向上(解約率の低位安定)、顧客単価向上の循環が当社のサステナブルな成長の基礎と考えております。

 

(4)経営環境について

当社の顧客である訪問看護ステーションは、1992年に老人保健法等の一部改正により新設された老人訪問看護ステーションから指定老人訪問看護が始まり、1994年の健康保険法等の一部改正で創設された訪問看護ステーションから高齢者以外の在宅療養者にも指定訪問看護が提供されることとなり、以降、指定訪問看護事業所は「老人」をとり「訪問看護ステーション」となっております。

2000年の介護保険制度施行後は、訪問看護が介護保険制度の居宅介護サービスのひとつとして位置付けられ、要介護認定者等にも訪問看護を提供することになり、2006年には要支援者に対する訪問看護は予防給付の「介護予防訪問看護」と区分され、介護給付の「訪問看護」とは区別され今日に至っております。

また、2011年には「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が制定され、地域包括ケアシステムの実現に向けて、医療ニーズを伴う要介護者への介護・看護一体的提供の推進が開始されました。

その後2014年に、団塊の世代が75歳以上となり医療・介護需要の急増が予測される「2025年問題」への対応として、訪問看護が目指す姿と、訪問看護事業者・事業所・職員等が取り組むべき事項等をまとめた「訪問看護アクションプラン 2025」を、訪問看護推進連携会議が策定・公表し、地域医療構想や地域包括ケアシステムの構築等、医療・介護提供体制に関する政策が進められ、訪問看護ステーションは、その役割の拡大とともに、着実に増加してまいりました。

さらに2040年には、団塊の世代が90歳以上に、団塊ジュニア世代が65歳以上となり少子高齢・多死時代のピークを迎えます。高齢者、特に85歳以上の人口が急増し、要介護者や医療と介護の両方を必要とする人が大幅に増加すると見込まれており、その結果、在宅で医療的ケアを受ける人が増加し、訪問看護の需要は継続的に拡大すると予想されます。

また、医療機器を使用しながら生活する人や重度障がい児、認知症高齢者等、在宅療養者のニーズは多様化・複雑化しており、訪問看護の役割は一層重要になることが見込まれます。

一方で、地域によっては支援者不足が深刻化しており、訪問看護体制の整備と強化が急務となっています。

こうした状況を踏まえ、訪問看護推進連携会議は、訪問看護サービスの質の向上、地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進を目指す「2040年に向けた訪問看護のビジョン」を2025年に策定・公表し、全世代型の社会保障の構築が進められております。

このような社会情勢の変化において、訪問看護制度は、乳幼児から高齢者まで家族も含めて、医師と連携しながらの疾病や障がいの悪化防止、病院等からの在宅移行支援、在宅療養生活支援(24時間体制で緊急対応も含む。)、エンドオブライフケアの役割を担います。予防・医療・介護機能を合わせもち生活支援を行う看護は地域包括ケアシステムの要となっており、その役割は今後においても一層重要性を増し、需要が拡大するものと考えられます。

 

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日本国内においては、少子高齢化が進み、就業人員の減少が見込まれるなか、試算通りの看護師等の確保が可能であると楽観視できないものと当社は考えております。一方、需要は伸びていく状況にあるため、当社は当社のシステムやサービスを提供することで、一人一人の訪問看護師等が効率的に業務を進めることができる状況を作り出し、訪問看護師が増えない状況を、一人当たりの訪問件数を増加させることでカバーすることにより、この需給問題の解決になるのではと考えております。

また、経済連携協定(EPA)に基づく外国人看護師等の受入れが一般的になり、訪問看護ステーションにおいても就業されるようなことが生じたときには、当社の「iBow」も多言語化への対応等が必要になってくると考えております。

 

(5)社会ニーズの高まる訪問看護市場の拡大

訪問看護ステーションは、介護保険と医療保険の利用者に訪問看護を提供し、両保険に対する請求に基づき報酬が支払われております。介護給付費と医療費の割合でみると、10,255億円のうち介護給付費が4,528億円(44.2%)、医療費が5,727億円(55.8%)になっており、年々医療費割合が増加し、訪問看護への支払額は、14年間で約4.6倍に拡大しております。

 

・訪問看護業界における医療費と介護給付費

(単位:億円)

年度

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

2023

合 計

2,214

2,376

2,682

2,940

3,282

3,689

4,155

4,666

5,215

5,824

6,682

7,652

8,570

10,255

医療費

740

808

956

1,086

1,256

1,485

1,742

2,023

2,355

2,727

3,254

3,929

4,633

5,727

介護

給付費

1,474

1,568

1,726

1,854

2,026

2,204

2,413

2,643

2,860

3,097

3,428

3,723

3,937

4,528

(出所:医療費は厚生労働省「国民医療費の概況」(2010年~2023年)、介護給付費は同省「介護給付費等実態統計」(2010~2023年)、合計は当社集計)

 

(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

①市場環境および顧客ニーズにタイムリーに対応できる開発体制の強化

当社は創業以来、「世にある物は活用し、世にない物を作りだす」を合言葉に、訪問看護ステーション向け業務支援システム「iBow」を提供してまいりました。今後さらなる市場スケールの拡大に対応するため、開発体制の強化が必要と考えております。そのため開発人材の確保が必須と考えており、継続的な開発人員の採用活動および人材教育を実施し、開発体制の強化に取り組む方針であります。

 

②内部管理体制の強化による事業基盤強化

当社は、業務運営の効率化やコーポレート・ガバナンス、リスクマネジメントのための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。引き続き経営の公平性や透明性を確保するために内部統制の実効性を高め、内部管理体制の強化に取り組み、事業基盤の整備を強化してまいります。

 

③システム信頼性の継続的な維持や品質の向上、設備環境の強化

当社は、顧客に安心して当社サービスを利用していただくためには、システム稼働の安定化が重要な課題であると認識しております。セキュリティ・開発・保守管理体制の整備は不可欠であり、今後も引き続き投資を行い、システムの継続的な安定化、品質の向上に取り組む方針であります。

 

④サステナビリティへの推進

当社の事業そのものがサステナビリティの3つの柱である「環境保護」、「社会開発」、「経済発展」に該当すると考えております。当社が提供するサービスは、紙カルテから電子カルテへ、レセプトの電子化による請求処理事務の効率化によりペーパーレスを促進し、環境保護に貢献しております。また、当社サービスを使用することで訪問看護ステーションの業務効率向上が図れることや、「iBow」に蓄積された膨大な在宅医療データを活用した事業への参入をすることで、社会サービスを改善し社会開発に貢献いたします。そして、訪問看護にかかる複合サービスを展開し、市場シェアの拡大、満足度の向上、顧客単価向上の循環によって、当社の経済発展につなげてまいります。

 

⑤人的資本戦略

当社は現在、成長段階にあると認識しており、今後の事業拡大には継続的に優秀な人材の確保と既存人材の育成を行う必要があると考えております。訪問看護知識の習得のため、日本訪問看護財団の「訪問看護eラーニング」の受講やDX推進に向けた情報処理推進機構の「ITパスポート試験」の資格取得、その他必要な研修制度を充実させ、人材開発の強化を進めてまいりました。今後も引き続き人的資本の持続的高度化を図るため、働きやすい職場環境の整備および人材開発の強化に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

当社が目指すサステナブルな社会とは、誰もが住み慣れた地域で自分らしく生活を続けられること、そして日本の医療体制が将来にわたって持続可能である、すなわち「安心して自分らしく暮らせる社会の実現と持続可能な医療体制の両立」であると考えています。

その実現には、患者一人ひとりの状態やニーズに応じて、良質かつ適切な医療・ケアを効果的かつ効率的に提供できる仕組みの構築が不可欠です。特に、病院だけでなく在宅医療サービスの充実や、地域の実情に応じた医療・介護体制の整備が求められています。なかでも訪問看護は、医療と療養の両面から患者様を支える存在として、その重要性が一層高まっています。

当社は、「在宅療養に新しい価値の創造を行い、すべての人が安心して暮らせる社会を実現するVisionを持って取り組むことにより、一層の発展と持続可能でより良い社会の実現に貢献します。」をサステナビリティ基本方針とし、最適な在宅療養を安心して受けられるプラットフォームの実現を目指し、新たなサービス開発にも積極的に取り組んでいます。医療・介護資源の最適化を通じて、地域包括ケアシステムの発展を推進してまいります。そして、「ひとを幸せにする」社会を、ステークホルダーの皆様と共に築いてまいります。

 

(1)ガバナンス

当社は事業活動を通じて社会課題の解決に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指しており、当社全体に効果的なサステナビリティ活動を推進するために、経営企画室が中心となってマテリアリティの策定、進捗確認および当社の中長期的な企業価値向上に向けて、事業機会とリスクの両面を検討し、リスク管理委員会における審議を経て、取締役会に報告し、必要に応じて審議を行う体制としております。

なお、当社の取締役会における具体的な検討内容を含むコーポレート・ガバナンスに関する詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

 

(2)戦略

当社の事業活動やバリューチェーン全体を俯瞰し、社会課題を抽出した上で、「ステークホルダーにとっての重要性」と「当社にとっての重要性」の2軸で評価し、特に重要度の高い課題をマテリアリティとして特定しました。マテリアリティ・マトリクスは次のとおりです。

日本が直面している「超少子高齢化の進行により医療需要が急増する一方で、医療を担う人材の減少が避けられない社会課題」に対して、当社は「在宅医療のプラットフォーマー」として、医療資源の最適化を図り、業界全体の発展を推進してまいります。

人的資本については、当社は現在、重要な成長段階にあると認識しており、今後の事業拡大には性別や国籍を問わず、継続的に優秀な人材の確保と既存人材の育成を行う必要があると考えております。訪問看護知識の習得のため、日本訪問看護財団の「訪問看護eラーニング」の受講やDX推進に向けた情報処理推進機構の「ITパスポート試験」の資格取得、その他必要な研修制度を充実させ、人材開発の強化を進めてまいりました。今後も引き続き人的資本の持続的高度化を図るため、男性従業員の育児休業取得の推進や女性管理職の輩出を含め、働きやすい職場環境の整備および人材開発の強化に取り組んでまいります。

 

 

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また、環境、社会、ガバナンスに係るそれぞれの主な取組は、以下のとおりです。

 

①環境

環境負荷軽減への取組み

ペーパーレスの実現

当社は創業以来、訪問看護業界の紙カルテを電子化し、累計7,200万件分の記録をペーパーレス化してきました。さらに、2024年開始のオンライン資格確認にも迅速に対応し、請求業務のペーパーレス化と書類送付に伴う環境負荷の低減を実現しています。

カーボンニュートラルや循環経済の実現

当社は、カーボンニュートラルや循環経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けて、リユース端末を提供する「iBow モバイル powered by OPTAGE」を開始しております。この取り組みにより、年間1,000台のリユース端末が提供されると、iPadの製造にかかる二酸化炭素の排出量(*)が5.6t削減されると試算しております。

これにより、資源の再利用による循環型社会の実現にも寄与していきます。

(*)iPad 10th 製造に係るコスト 72kg CO2 ×78%(製造に係る部分)=56.2kg CO2

 

②社会

少子高齢化の加速による医療の需要増加と担い手不足への対策

訪問看護専用電子カルテ「iBow」

「iBow」は、少子高齢化による訪問看護サービス需要の増加と担い手不足に対応するためのクラウド型電子カルテです。簡単で直感的な操作性により記録業務の負担を軽減し、看護師が本来の業務に集中できる環境を提供します。また、リアルタイムでの情報共有機能によりチーム間の連携を強化し、効率的なサービス提供を可能にします。

 

データ活用によるイノベーションの創出

生成AIの活用

当社は生成AIを活用したサービスを複数提供しています。「AI訪問看護計画」は、「iBow」内の利用者データと公開情報を基に生成AIがワンクリックで計画書を作成します。また、「AI訪問看護報告」は訪問記録を基に報告書を自動作成し、文書品質の安定化と時間削減に貢献しています。

地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」

全国の訪問看護ステーションから収集したインフラデータを活用し、退院支援や地域医療連携を効率化します。このプラットフォームは地域医療リソースの最適化と医療の質向上に寄与しています。

在宅医療に従事する人材育成

「外部への取組み」

訪問看護ステーションの経営ノウハウの提供

「訪問看護無料セミナー」や「個別相談会」の開催、お役立ちサイトを通じて、診療報酬改定や法令情報、経営支援情報を提供しています。

在宅医療に従事するICT人材育成

2020年10月から大学や専門学校に訪問看護専用電子カルテ「iBow」を無償提供し、26校・延べ2,000名以上の学生の講義に活用されています。また、大学や専門学校で訪問看護に関する医療DX講座を実施し、技術進展が在宅医療に与える影響や可能性をお伝えすることで、将来のICT活用ができる医療人材の育成を支援しています。

「内部への取組み」

e-ラーニングとIT教育

OFF-JTの一環として、訪問看護のe-ラーニングサービスを受講できる環境やITおよび経営リテラシー向上のためのITパスポート取得支援も行い、医療DXやお客様の経営支援に対応できる人材育成をサポートしています。

働きやすい職場環境

女性も活躍できる企業として「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」および「えるぼし認定」を取得。また、多様な働き方やワークライフバランスの支援により、安心してキャリアを築ける環境を実現しています。

経営トップと従業員の交流

毎月1回、代表取締役社長と従業員のランチ会を開催し、会社の考え方や事業への思いを伝え、従業員の困りごとや考えを情報交換することで風通しのよい職場づくりを行っています。

 

③ガバナンス

コンプライアンス委員会の設置

当社は、コンプライアンス遵守に向けた活動として、管理本部長を委員長とし、取締役・監査役を構成員としたコンプライアンス委員会を設置しております。原則として年4回の定期的な開催に加え、重大な事象が発生した場合にも開催することとしております。また、必要に応じ弁護士等の外部専門家への相談等により、コンプライアンス体制の強化·推進に取り組んでおります。

反社会的勢力の排除

「反社会的勢力による被害防止のための基本方針」を遵守し、社内規程の整備、対応マニュアルの整備を行っております。新規の契約時や継続的な取引がある先に対しての定点チェックを行い、遵守状況をコンプライアンス委員会に諮っております。

内部通報制度

従業員などを対象に規程や法令違反を含む企業倫理についての相談または申告を受け付ける「内部通報制度窓口」を設置し、社内窓口および外部専門家と連携した社外窓口で、常時、メールや電話、書面などで相談や申告を受け付けています。匿名での相談や申告も受け付けています。定期的な従業員向けの周知を行い、有効性を高めるとともに、通報したことを理由とした不利益な取扱を禁止する旨を規程に明記しております。

リスクマネジメント

リスク管理委員会の設置

リスクマネジメントに向けた活動として、管理本部長を委員長とし、取締役・監査役を構成員としたリスク管理委員会を設置しております。原則として年4回の定期的な開催に加え、重大な事象が発生した場合にも開催することとしております。

財務報告の信頼性の確保

内部統制報告制度(J-SOX)への対応

金融商品取引法に基づく内部統制報告制度への対応として、財務報告の信頼性を確保すべく、内部統制評価を実施しています。評価結果については内部統制報告書として取りまとめ、投資家の皆様に開示しています。

 

株主との対話

建設的な対話の推進

当社にとって、持続可能な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、株主との建設的な対話を積極的に推進しています。この対話を通じて、株主の意見や懸念を経営に反映させることで、透明性と信頼性の高い企業運営を目指しています。具体的には、株主総会以外の場でも経営陣が株主の声に耳を傾ける機会を設け、事業戦略や経営方針について分かりやすく説明することに努めています。また、株主から得られた意見やフィードバックは取締役会並びに幹部社員にも共有され、経営改善につなげています。これにより、株主資本コストを意識した経営や資本効率向上が促進されるとともに、企業価値の最大化が図られます。

 

 

(3)リスク管理

リスクに対する当社の基本的な考え方は、事業目標の達成を阻害する可能性のある不確実性を管理し、企業価値の向上と持続可能な成長を目指すことにあります。適切にリスクを特定することにより、単なる損失回避だけでなく、新たな機会創出にもつながるものと考えております。

当社ではサステナビリティ関連のリスクを、その他経営上のリスクと一体的に監視および管理しております。

なお、当社のリスク管理体制の整備状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりです。

 

(4)指標および目標

訪問看護市場において、当社サービスの普及が「サステナビリティ」につながるものと認識しておりますので、指標としては訪問看護市場におけるシェアを重要視しております。当指標の目標は、中長期的には市場シェア50%超の達成を目指しております。

なお、市場シェアについては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりです。

人材の育成および社内環境整備に関する方針に係る指標については、具体的な目標は設定しておりませんが、今後、人的資本に関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標および開示項目を検討してまいります。

なお、女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女間賃金格差については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりです。

項目

当事業年度末の実施状況

「訪問看護eラーニング」の受講

受講完了者 61名(対象従業員の57%)

「ITパスポート試験」の資格取得

資格取得者 30名(対象従業員の30%)

 

 

3【事業等のリスク】

当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を与える可能性のある事項を以下に記載しております。

また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社は、これらのリスクに対し発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避および発生した場合の迅速な対応に努める方針であります。

なお、本記載事項の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業環境および事業内容に関するリスクについて

①医療保険制度・介護保険制度の改正対応について(影響度:大、発生可能性:低)

当社がサービス提供を行っている「iBow」については、医療保険制度・介護保険制度の影響を強く受けます。定期的に法律全般に関する検討が加えられ、2年に1度診療報酬の見直し、3年に1度介護報酬の見直しが行われることになっており、これらの改正に対応するための適時なシステム開発が必要となります。

こうした状況は、同業他社も同様の条件であるため、開発において他社に先んじることや差別化を図ることでシェアの拡大に直結することになりますが、逆に遅れをとった場合には当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

また、新たな市場動向の変化や医療保険・介護保険法の改正動向次第で当社や顧客である訪問看護の事業環境が大きく変わる場合があります。これらの事業環境の変化が顕在化し、また、当社が適時適切に対応できず、サービスの導入延期やサービス利用数の削減、他社サービスへの乗り換え等に繋がった場合は、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対する取組として、関連法令の動向等を捉え、それらを経営・事業の戦略に適時適切に反映しております。

 

②特定業界への依存について(影響度:大、発生可能性:低)

当社は、全売上が訪問看護ステーションを中心とする訪問看護業界向けという特定の業界に集中しております。過度に依存することがないよう訪問看護業界以外の分野への展開も視野に入れ、2021年12月期より在宅治験支援の取組を開始し、また、現在は三井住友信託銀行株式会社と「PHR利活用のビジネス化に関する協定」を締結し、現在は医療データビジネスを中心としたPHRに係る新サービスの共同開発を進めるなど、事業基盤の盤石化を図っておりますが、現在の訪問看護業界からの需要が大幅に縮小した場合や看護師等の不足に伴い、訪問看護ステーションが常勤換算等の要件を満たせず訪問看護ステーション数が大幅に減少した場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

③クラウド関連市場について(影響度:大、発生可能性:低)

当社が行っている訪問看護ステーション向けサービス提供事業は、売上高の大部分をクラウドサービスで提供しております。クラウドサービスに関連して、今後新たな法的規制の導入、技術革新の停滞等の要因により、クラウドサービスの導入が想定通りに進捗せず、クラウド関連市場の成長が阻害される場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対し、クラウド関連市場における新たな法的規制や技術革新等の動向について、常に情報収集に努め、クラウドサービスの提供に支障が生じないよう対策を検討できる体制を構築して参ります。

 

④特定のサービスへの依存について(影響度:大、発生可能性:低)

当社は、「iBow」、「iBow レセプト」、「iBow事務管理代行サービス」等を提供しておりますが、現在、全体の売上高に占める「iBow」の割合が多く(2025年12月期の売上高に対して70.5%を占めております。)、同サービスに依存しております。当社は、収益源の多様性を持つことにより、より安定した体制の構築を目指すべく、コンテンツサービスの拡大や、新たに当社の柱となる新規サービス、事業の開発に向け積極的に取り組んでおります。

しかしながら、現在時点において主要サービスである「iBow」が顧客のニーズと乖離した場合や競合他社に対する優位性を喪失する等の事態に陥った場合、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対して、第2の柱である「BPaaS」の強化、第3の柱としてPHRを中心とした医療データの利活用を進めていきます。

 

⑤他社との競合について(影響度:中、発生可能性:低)

現在、国内で介護・医療分野におけるクラウドサービス事業を展開する競合企業が複数存在しており、今後の市場規模拡大に伴い新規参入を検討する企業が増加する可能性があります。

その中で当社は訪問看護ステーション向けに特化し、利用者である看護師等の視点を重視し提供することで市場における優位性を構築し、競争力を向上させてまいりました。

今後も、利用者目線を重視し、UI/UXを追求しシステム構築を推進してまいりますが、新規参入等により競争が激化した場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対する取組として、徹底した利用者目線をもち、訪問看護という特定の分野に深化し続けることで、競合他社に対して十分な競争優位性を実現していきます。

 

⑥技術革新について(影響度:中、発生可能性:低)

当社のサービスは、インターネット関連技術に基づいて事業を展開しておりますが、インターネット関連分野は新技術の開発およびそれに基づく新サービスの導入が相次いで行われ、非常に変化の激しい業界となっております。このため、当社は技術者の採用・育成に関する技術やノウハウの取得に注力しております。

しかしながら、このような技術やノウハウの獲得に困難が生じた場合、また技術革新に対する当社の対応が遅れた場合には、当社の競争力が低下する可能性があります。さらに、新技術への対応のために追加的なシステム、人件費等の支出が拡大する可能性があり、その結果、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対する取組として、常に複数の外注先と情報交換を進め、企画・要件定義は自社内で進めるが開発等については積極的に外部を活用することで技術の陳腐化を回避しております。

また、当社が提供するクラウドサービスの一部の機能において、外部の生成AIプロバイダーの生成AIの技術を使用しています。AI技術の開発、利用、普及等を制限するような法規制や政策が強化された場合、使用する生成AIのサービスに何らかの障害が発生した場合、もしくは利用条件が変更された場合には、該当する一部機能が一時的に中断または制限される可能性があります。当社のクラウドサービスの一部機能に使用する生成AIは特定の1つに依存せず、より適した生成AIを複数から選択的に使用できる仕様にしておりますが、結果として、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑦システム障害について(影響度:中、発生可能性:低)

当社のサービスは、サービスの信頼性および取引の安全性の観点からも、当社の事業用ITインフラは障害に強い設計としております。また、管理を強化するため、情報システム開発および運用経験の豊富な人材の採用を積極的に実施しております。

しかしながら、このような体制による管理にもかかわらず、未知のコンピュータウイルスやテロ攻撃、通常使用時だけでなくシステム改修やシステムトラブル等により想定を超える事故が発生した場合、当社が保有する設備の損壊や電力供給、インターネットアクセスの制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生し、その結果、当社はサービス提供および営業取引に深刻な影響を受け、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対する取組として、十分なセキュリティ対策を施した上で、クラウド化を実施する等、有事の際にもサービスを提供できるよう対処しております。さらに、システム開発およびシステム運用経験の豊富な人材を採用すると共に、システムに関する従業員向け教育を積極的に実施する等、体制面での強化も継続して取り組んでおります。

 

⑧既存ユーザー企業の継続について(影響度:小、発生可能性:低)

当社のサービスは、サブスクリプション型のビジネスモデルであることから、当社の継続的な成長には、新規契約ステーションの獲得のみならず、既存契約ステーションの維持が重要と考えております。

しかしながら、当社サービスの魅力の低下、競合他社に対する競争力の低下、顧客ニーズに合致しない等により、当社の想定を大幅に下回る継続状態となった場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

現状においては、2025年12月期における解約率(レベニューチャーンレート)は0.17%(前期比0.02ポイント低下)であり、過去のこれまでの実績から当該リスクが顕在化する蓋然性は高くないと、当社では認識しておりますが、既存契約ステーションの維持については、機能の追加開発やサポートの充実により、契約の継続維持・向上を図っております。

 

⑨新規事業展開に伴うリスクについて(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、既存システムを活用した新規事業の開発を進めております。新規事業の展開にあたっては、当初見込み通りの展開ができず投資を回収できなくなる可能性があり、当社の業績に重要な影響を与える可能性があります。当社は新規事業の実現可能性を慎重に見極め、開発計画を立て進捗管理を適切に行っておりますが、開発が想定通りに立ち上がらなかった場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑩外注先への依存について(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、提供するサービスや機能を開発する場合、企画・要件定義を自社で行い、コーディング等の開発は外注を利用しております。外注先を十分に確保できない場合、または外注先の経営不振および納期遅延が発生する場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

当社では、このようなリスクに対して、新たな外注先の確保をすすめるとともに、コンポーネント化した開発(注)を行うことで不測の事態に備えております。外注先の選定にあたっては、その経営状態、技術力、評判および反社会的勢力との関係の有無等を調査し安全・品質管理の徹底等に十分に留意しております。

(注)コンポーネント化した開発とは、機能を部品化して開発することであります。プログラムをコンポーネント単位に分けることで、機能の追加・修正・削除等が発生した場合に、コンポーネント単位で対応することができます。当社ではコンポーネント単位で必要に応じて外注し、特定の外注先への依存を回避することができる仕組みとしております。

 

⑪為替変動に関するリスク(影響度:小、発生可能性:中)

当社の事業は、国内市場向けのサービスであり、すべての取引に係る決済は円建てで行っているため、為替相場の変動が当社の財政状態や業績に与える直接的影響は限定的であると認識しております。

しかしながら、当社のクラウドサービス事業においては、一部の外注先が海外ベンダーのサービスを利用して当社からの外注業務を遂行していることから、為替相場の変動により外注費単価が高騰した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)事業運営体制に関するリスクについて

①内部管理体制の整備に係るリスクについて(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。業務の適正性および財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、さらに法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追い付かない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

②人材育成・確保について(影響度:小、発生可能性:低)

当社が現在展開する事業は、医療保険制度および介護保険制度に係る高度な専門知識と顧客リレーション能力が求められ、またプロダクト部門においては情報システムに係る高度な専門スキルが求められます。このような経営環境の中、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い成長を続けていくために不可欠な要素の一つが、優秀な人材の確保であると考えております。

当社は今後の事業展開を見据えて、主に顧客リレーションおよびシステム分野のスキルを有する人材の確保を目指すとともに、教育研修制度の充実等、人材の育成に努めておりますが、当社が求める人材が十分に確保出来なかった場合や人材育成が円滑に進まない場合、または各部門において中心的役割を担う特定の従業員が万が一社外に流出した場合、内部管理体制や業務執行体制が有効に機能せず、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対して、社内研修の充実や各職務職位別の業務・目標の明確化を図り経営陣と従業員のミスマッチを防ぐ活動を行っております。

 

③特定人物への依存について(影響度:小、発生可能性:低)

当社の代表取締役社長中野剛人は、当社の創業者であり、設立以来、経営方針や事業戦略の立案・決定およびその遂行において取締役としての役割を果たしております。

当社では、経営会議を設け重要事項の審議を行うほか、各事業部門を統括する業務執行取締役に権限を委譲するなど同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難となった場合、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

④個人情報の管理について(影響度:大、発生可能性:低)

当社は、展開する各サービスの運営過程において、ユーザーよりユーザー自体の個人情報を取得することがあるほか、ユーザーの顧客である患者情報を当社にて取り扱うことがあります。当該個人情報の管理については、権限を有する者以外の閲覧をシステム上で制限しております。なお、患者情報に関しましては、当社はユーザーの承諾を得て閲覧することがあるものの、その情報は外部のサーバーにのみ保管され、当社システムには残らないようになっており、流出することがないよう厳格に管理・運用しております。またISO/IEC27001を取得し、情報セキュリティマネジメントの維持・強化を図っております。

しかしながら、外部からの不正なアクセス、その他想定外の事態の発生により個人情報が流出した場合には、当社の社会的信用を失墜させ、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

これに対する取組として、3省2ガイドライン(厚生労働省・総務省・経済産業省による医療機関向けクラウドサービス利用検討ガイドライン)を踏まえた仕組みとすることで、情報セキュリティ対応を行っております。

 

⑤知的財産権の保護について(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、特許権、商標権等の知的財産権の保護に努めており、当保護に当たっては当社の管理部門および弁理士等による事前調査を行っております。

しかしながら、第三者による当社の権利に対する侵害等により、企業・ブランドイメージの低下、サービス運営への悪影響等を招く等、その対応のために多額の費用が発生する可能性があります。

また、万が一当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求や差止請求等を受ける可能性があります。こうした場合、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

(3)その他

①自然災害について(影響度:小、発生可能性:低)

事業を展開する地域において、大規模な自然災害やパンデミック等が発生した場合、事業を継続することが困難な状況に陥ることが予想されます。当社では大阪本社のほか東京に拠点を置き営業活動を行っておりますが、リモートワーク環境を構築してこれら営業拠点に依存しない業務遂行体制を整備しております。

しかしながら、当該エリアにおいて地震、火災、津波、大型台風等の自然災害やパンデミック等が発生して営業活動や情報収集活動等が制約を受ける場合には、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

②訴訟について(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。

しかしながら、事業を展開するなかで、当社が提供するサービスの不備、当社が保有する個人情報および情報漏洩等により、何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。これらの訴訟により、当社の社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容および結果によっては、当社の事業および業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

③新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、当社の役員および従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値および議決権割合が希薄化する可能性があります。

また、当社は取締役および従業員に対し譲渡制限付株式報酬制度を導入しております。優秀な人材確保のために同様のインセンティブプランを実施する可能性もあり、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

④減損損失について(影響度:小、発生可能性:低)

当社は、有形固定資産やソフトウエア等の固定資産を保有しています。これらの資産については、減損会計を適用し、減損の兆候がある場合には当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかを検証しており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。

しかしながら、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、米国の通商政策等の影響により改善に足踏みがみられる一方、雇用・所得環境の改善の動きが続き、全体としては緩やかながらも回復基調が続きました。しかしながら、継続的な国内の物価上昇や米国の通商政策等の影響による景気の下振れリスクは依然として残っており、景気の先行きは不透明な状況が続いております。

当社の顧客が事業を展開する在宅医療業界におきましては、団塊の世代が75歳以上となり、国策として地域包括ケアシステムの構築が本格化し、また全国医療情報プラットフォームや電子カルテ情報共有サービスの本格稼働に向けた準備が進展する等、在宅医療現場での情報連携の基盤整備が進みました。在宅医療現場においては、看護師不足を背景とした業務効率化が喫緊の課題となっていることから、DX化が進展している一方で、地域や事業規模によるDXツールの導入格差の拡大が課題となっております。

このような状況の中、当社は、前事業年度に提供を開始した「AI訪問看護計画」、「AI訪問看護報告」のAI関連サービスに加え、当事業年度は「AI訪問予定・ルート」のサービス提供を開始し、AI技術を活用した在宅医療現場のDX化を推進し、また地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」の機能を拡充する等、利便性の向上に取組みました。

これらの結果、主力サービス「iBow」の新規顧客並びにAI関連のサービス利用者の獲得が順調に推移し、また低解約率を維持できたことから、当事業年度末における契約ステーション数は前事業年度末比15.6%増の3,501件となり、当事業年度の売上高は3,392,422千円(前期比31.9%増)、営業利益は1,537,470千円(前期比35.3%増)、経常利益は1,546,521千円(前期比35.8%増)、当期純利益は1,088,240千円(前期比34.6%増)となりました。

当社は、訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

売上高をサービスカテゴリー別に示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

カテゴリー区分

第14期(2025年12月期)

1Q

1-3月

2Q

4-6月

3Q

7-9月

4Q

10-12月

合計

1-12月

<クラウドサービス>

650,975

736,037

750,717

793,231

2,930,962

iBow

540,155

589,334

621,701

640,715

2,391,908

iBow レセプト

61,713

67,595

72,660

76,189

278,157

その他

49,107

79,107

56,355

76,326

260,896

<BPaaS>

94,994

107,668

115,155

123,105

440,924

iBow事務管理代行サービス

94,794

107,528

115,075

123,065

440,464

その他

200

140

80

40

460

<その他>

8,135

5,353

4,832

2,216

20,536

 

②財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における流動資産は3,590,159千円となり、前事業年度末に比べ1,063,426千円増加となりました。これは主に、当期純利益の増加による現金及び預金が891,567千円増加、売上高の増加に伴い売掛金が127,644千円増加したこと等によるものであります。

固定資産は693,323千円となり、前事業年度末に比べ149,469千円増加となりました。これは主に、減価償却等により有形固定資産が12,109千円減少した一方で、ソフトウエア投資により無形固定資産が48,602千円増加、敷金の差入れにより80,421千円増加、繰延税金資産が29,350千円増加したこと等により投資その他の資産が112,975千円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は4,283,483千円となり、前事業年度末に比べ1,212,895千円増加となりました。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は805,705千円となり、前事業年度末に比べ246,610千円増加となりました。これは主に、契約負債が26,356千円減少した一方で、未払金の53,504千円増加、税引前当期純利益の増加により未払法人税等が123,098千円増加したこと等によるものであります。

固定負債は102,728千円となり、前事業年度に比べ338千円増加しました。

この結果、負債合計は908,433千円となり、前事業年度末に比べ246,948千円増加いたしました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は3,375,049千円となり、前事業年度末に比べ965,946千円増加となりました。これは主に、譲渡制限付株式報酬としての新株発行および新株予約権の行使により資本金が29,693千円増加、資本準備金が29,585千円増加し、また繰越利益剰余金が当期純利益の計上により1,088,240千円増加、配当金の支払いにより181,455千円減少したこと等によるものであります。この結果、自己資本比率は前事業年度末の78.5%から78.8%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は2,857,496千円となり、前事業年度末と比較して891,567千円増加となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は、1,270,327千円(前事業年度は856,787千円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の増加127,644千円、法人税等の支払額369,079千円があったものの、業績が好調に推移したことによる税引前当期純利益の計上1,546,330千円、減価償却費の計上106,224千円があったこと等によります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、210,377千円(前事業年度は77,890千円の使用)となりました。これは有形固定資産の取得による支出42,193千円、無形固定資産の取得による支出79,590千円、敷金の差入による支出91,275千円があったこと等によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、168,383千円(前事業年度は225,875千円の使用)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入12,878千円があったものの、配当金の支払額181,143千円があったこと等によります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当事業年度(2025年12月期)の販売実績は3,392,422千円(前期比31.9%増)となりました。

前期比で増加した要因は、既存サービスのシェア拡大と追加機能のリリースなどサービスの拡充に努めた結果によるものであります。

なお、当社は訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。サービス別の売上高については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」を参照ください。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態の分析

前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

②経営成績の分析

a.売上高

当事業年度における売上高は、3,392,422千円(前期比31.9%増)となりました。これは「iBow」の契約ステーション数の増加、前事業年度に「iBow」への機能搭載を開始したAI関連サービスの利用拡大等による顧客平均単価の上昇に加え、「BPaaS」の利用者数が、当事業年度において順調に増加したことによるものです。

 

b.売上原価、売上総利益

当事業年度における売上原価は、737,849千円(前期比28.5%増)となりました。これは主に、戦略的な開発人材、BPaaS人材の採用に伴う労務費の増加、前事業年度にリリースした地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」に係る減価償却費の計上によるものです。

この結果、売上総利益は2,654,573千円(前期比32.9%増)となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ255,607千円増加し、1,117,103千円(前期比29.7%増)となりました。これは主に、事業の拡大に対応した人材採用による人件費および採用費用の増加、広告コンテンツの制作等による広告宣伝費の増加、並びにソフトウエア開発に係る研究開発費の増加等によるものです。

この結果、営業利益は、1,537,470千円(前期比35.3%増)となりました。

 

d.営業外損益、経常利益

当事業年度における営業外収益は、前事業年度に比べ4,184千円増加し、9,543千円(前期比78.1%増)となりました。また、営業外費用は、前事業年度に比べ1,850千円減少し491千円(前期比79.0%減)となりました。これは主に、前事業年度に借入金を返済したことによるものです。

この結果、経常利益は、1,546,521千円(前期比35.8%増)となりました。

 

e.特別損益、当期純利益

当事業年度における特別損失は、前事業年度に比べ387千円減少し、190千円となりました。

この結果、当期純利益は、1,088,240千円(前期比34.6%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析

当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性

当社の資金需要は、運転資金に加え、ソフトウエア開発費用や研究開発投資等があります。これらの資金需要に対して、主に自己資金を充当し、必要に応じて金融機関からの借入等により資金調達する方針としております。

 

⑤経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑥経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

当社は、経営上の目標の達成状況を「稼働ステーション数」「市場シェア」「四半期平均解約率」「月間平均単価」の指標で判断しております。

当社は、サブスクリプションでサービスを提供しており、既存収入の安定、新規顧客の獲得、低解約率の継続により今後の業績は順調に推移すると認識しております。当事業年度末までの各指標の状況は次のとおりであります。

 

・稼働ステーション数

(単位:件)

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

2,098

2,246

2,326

2,410

2,490

2,605

2,726

2,818

2,885

3,103

3,231

3,325

(注)前事業年度に提出した有価証券報告書においては、稼働ステーション数について、「iBow」のサービス利用中の四半期ごとの稼働ステーション数(サービス提供準備中のステーション数は除く。以下、本注釈において同じ。)の月末平均を表示しておりましたが、当事業年度から、稼働ステーションの各四半期末の数を表示する方法に変更しております。これにともない、2023年第1四半期以降の稼働ステーション数を遡及して修正しております。

 

・市場シェア

(単位:%、件)

 

2023年12月

2024年12月

2025年12月

市場シェア

16.4

17.5

18.7

契約ステーション数

2,575

3,028

3,501

市場ステーション数

15,697

17,329

18,754

(注)市場シェアは、毎年12月末における当社契約ステーション数を、毎年6月に一般社団法人全国訪問看護協会が公表する4月1日時点における稼働ステーション数で除して算出しております。

契約ステーション数は、稼働ステーションおよびサービス準備中のステーション数の合計であります。

 

・四半期平均解約率

(単位:%)

2023年12月期

2024年12月期

2025年12月期

通期 0.11%

通期 0.19%

通期 0.17%

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

1Q

2Q

3Q

4Q

0.11

0.14

0.09

0.11

0.15

0.27

0.20

0.13

0.11

0.24

0.18

0.15

(注)当社が平均解約率(レベニューチャーンレート)を重要な経営指標としているのは、SaaSやサブスクリクションの料金形態事業では、利益に直結する重要な数値であり、当該指標が低位で安定していることが、顧客の満足度を図る一つの指標であると考えているためであります。

 

 

・月間平均単価

(単位:千円)

 

2023年12月期

4Q

2024年12月期

4Q

2025年12月期

4Q

月間平均単価

76.3

81.3

88.8

(注)月間平均単価は、各年度の4Qにおける平均月間売上高(リカーリングレベニューの)を「iBow」の同期間における月末平均稼働ステーション数で除して算出しております。

 

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社は、在宅医療・看護・介護分野におけるICT化の強化を目的として研究開発を行っております。

研究開発活動の内容といたしましては、主に業界のDXを推進するため有償無償を問わず新たなサービスが提供できるよう研究開発を行っており、当事業年度における研究開発費は50,075千円となりました。

また、当社は訪問看護ステーション向けサービス提供事業の単一セグメントであり、セグメント別の記載を省略しております。