① 経営環境
2022年以降、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の不安定化に伴い、「エネルギーの安定供給」の重要性が再認識されています。また、大幅な円安や物価のインフレーションの傾向に加え、将来の国際通商ルールの変更、自然災害・紛争等のリスクについても考慮しておく必要があります。
気候変動対応の観点からは、世界では、2050年ネットゼロ実現に向けた野心的な目標を堅持しながらも、各国の置かれた固有の状況や技術進展の度合いを踏まえ、経済合理性やエネルギーの安定供給との間でバランスを取る現実路線への転換が進んでいるという認識です。中長期的なエネルギー需要の視点に目を向けると、世界の人口の拡大、新興国を中心とした経済成長等により、エネルギー需要が持続的に増加する基調は変わらないものと想定しています。石油・天然ガスのうち特に天然ガス需要については、中長期的にもアジアを中心に堅調な需要が見込まれています。
日本では、2025年2月に第7次エネルギー基本計画が示され、エネルギー政策の大前提はS+3E(安全性の確保(Safety)、エネルギー安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合性(Environment))であり、これらの最適なバランスを追求していくことがエネルギー政策の基本的視点であることが再確認されました。同計画において、石油・天然ガスの自主開発比率目標は、第6次エネルギー基本計画の目標水準(2030年に50%以上、2040年には60%以上)が維持されており、引き続き自主開発の更なる推進が必要です。
このような状況下、当社としては、事業環境を考えるうえで特に以下の3つの点を考慮に入れて経営に取り組む必要があると考えています。
天然ガス/LNGの重要性が高まること:
ネットゼロへの移行過程において、天然ガス/LNGは他の化石燃料と比較してGHG排出原単位も相対的に小さいため、「現実的な移行期の燃料」として重要性が高まっていくものと考えています。
多様な低炭素対策を並行して進める必要があること:
ネットゼロへの移行には、地域ごとの事情や移行の段階に応じて適切な手段を選択することが重要です。再生可能エネルギーの導入を推進することに加えて、既存の石油・天然ガス生産施設へのCCS導入や、水素/アンモニアを活用していくこと等も、現実的なエネルギー・トランジションのための道筋となると考えています。
ネットゼロを見据えたエネルギー供給システムの強靭化と高度化が必要であること:
発展途上国での電力需要増加に加え、先進国でも半導体製造やAI需要により電力消費の再増加が予測されています。また、再生可能エネルギー導入拡大に伴う需給調整の課題から、電力供給システムの高度化が必要となっており、そのために必要となる鉱物や希少資源の重要性も高まっています。
② 経営方針
当社は、2025年2月に「INPEX Vision 2035 『責任あるエネルギー・トランジションの実現』」(以下、「INPEX Vision 2035」)を発表しました。「INPEX Vision 2035」では、上述の経営環境認識を踏まえつつ、2035年に向けた当社の長期戦略を示すとともに、2025年から2027年までの3年間の中期経営計画を策定し、当面の具体的な取組みと目標を示しています。
2050年ネットゼロ社会実現に向けて現実的な解決策を探る国内外の様々な動きは、当社にとって、更なる飛躍
の機会と捉えています。当社はこの「INPEX Vision 2035」に基づき、我が国及び世界のエネルギー需要に応えるべく取り組んでまいります。
<2025-2027年中期経営計画の進捗総括>
<INPEX Vision 2035>
2035年に向けてINPEXが実現していくこと
なお、本項の記載中、将来に関する事項については、別途記載する場合を除いて本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
当社は、エネルギーの安定供給とエネルギー・トランジションへの取組みを両輪で推進し、事業やバリューチェーンを通じて気候変動をはじめとしたサステナビリティの課題に取り組むことを、サステナビリティ経営の基本的な考え方としています。この考え方のもと、当社グループ及び当社グループのステークホルダー双方にとって重要度の高いサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を中心にサステナビリティ経営を実践しています。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
(a)組織体制
当社グループのサステナビリティ推進のためのガバナンス体制図は以下のとおりです。
2025年12月31日時点
1INPEX Value Assurance System(IVAS)審査会:プロジェクトの価値向上及び推進に関する当社グループの意思決定に資することを目的とした審査会
(b)サステナビリティ関連の課題に対する監督機能としての取締役会機関
取締役会は、グループ全体のサステナビリティ関連のリスク及び機会に対応するための経営戦略をはじめ、中長期的な企業価値の向上に向けた取組み監督機関として、責任を負っており、取締役会は、当社グループの重要なサステナビリティ課題を監督する立場にあります。取締役会メンバーはサステナビリティ分野のスキルを有しています。詳細は「
取締役会では定期的にサステナビリティに関するリスク及び機会に関する議題について、世界動向や事業とのトレードオフなど多角的な面から議論がなされており、2025年には、全15回開催された取締役会中13回でサステナビリティに関する議論が行われました。
サステナビリティに関連する目標については、年1回取締役会で報告されます。また、特に重要性が高い目標については、当社の代表取締役をはじめ全ての取締役(社外取締役を除く)の報酬のKPIとして採用しています。株式報酬のKPIとして温室効果ガス排出原単位、賞与のKPIとして安全指標(重大な事故ゼロ※1)を採用しています。
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項目 |
評価ウェイトに占める割合 |
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株式報酬のKPI |
温室効果ガス排出原単位 |
10% |
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賞与のKPI |
安全指標(重大な事故ゼロ) |
10% |
※1 オペレータープロジェクトにおける、死亡事故、重篤負傷、重大漏えい
(c)業務執行体制
イ)経営会議
サステナビリティを含む業務執行の決定に関しては、意思決定の迅速化の観点から、経営会議を設置し、取締役会の決議事項に属さない事項についての機動的な意思決定を行うとともに、取締役会の意思決定に資するための議論を行っています。経営会議は毎週ないし適宜開催されます。当社の経営会議は、常勤の取締役、本部長である執行役員及び議長が必要と判断し経営会議の決議によって選任された執行役員をもって構成されています。経営会議の議長は代表取締役社長が務めることとしています。
ロ)代表取締役社長並びに各部門及び子会社
代表取締役社長は、責任者として、当社グループを代表し当社グループのサステナビリティを含む業務を執行します。また、本部長又は担当役員である執行役員は、委嘱された特定の部門及び子会社に係る業務を執行します。委嘱された特定の部門及び子会社に係る各業務執行者は、サステナビリティ関連事項についての各種施策・取組みの進捗を管理し、経営会議に報告しています。
ハ)サステナビリティ推進委員会
当社グループの社会的責任を果たし、社会の持続可能な発展に貢献する取組みを推進することを目的としてサステナビリティ推進委員会を設置しています。本委員会は代表取締役社長を委員長とし、代表取締役、総務本部長、経営企画本部長、コンプライアンス委員会委員長、コーポレートHSE委員会委員長から構成され、サステナビリティに関する基本方針、同推進に関する重要事項等を審議しています。サステナビリティ推進委員会で議論された内容は、経営会議・取締役会でも決議・報告されています。また、サステナビリティ推進委員会の下部組織として、各本部の実務者レベルで構成するサステナビリティ推進ワーキンググループ及び気候変動対応推進ワーキンググループを設置し、全社横断的な協議推進体制を整備しています。
主な議題
・サステナビリティ経営の実績と取組み方針
・当社グループのマテリアリティ(重要課題)
・「気候変動対応の基本方針」の改定
・気候変動関連リスク及び機会の評価
・人権の対応状況と今後の取組み
・非財務情報のガバナンスとマネジメント
・社会貢献活動計画
②戦略
(a)方針
当社は、経営理念を踏まえた「サステナビリティ憲章」を定め、当社グループ及び当社グループのステークホルダーの双方にとって重要度の高いサステナビリティに関するマテリアリティ(重要課題)を特定しています。当社グループのマテリアリティは環境・社会が当社グループに与える財務影響及び当社グループが環境・社会へ与える影響を勘案の上、特定しています。特定された6つのマテリアリティの内、「気候変動対応」、「セーフティ」及び「人的資本」は、環境・社会が当社グループに与える財務影響が重大であることより財務マテリアリティとして選定しています。当社グループはマテリアリティごとに当社グループが優先的に行うべき課題について「アクションプラン」を定めた上で、当社グループの各部署のPDCAサイクルに組み込み、継続的に改善に取り組んでいます。各財務マテリアリティの詳細は、後掲のとおりです。財務マテリアリティ以外のマテリアリティの詳細に関しては2026年6月末発行予定の「
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経営理念 私たちは、エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献します。 |
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サステナビリティ憲章 当社グループは、事業活動を通じて社会的責任を果たす信頼される企業であり続けるとともに、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を図ります。経営トップの率先垂範の下、実効あるガバナンス体制を構築して社内・グループ企業に周知徹底を図り、ステークホルダーの関心に配慮しつつ、以下の原則に基づき、事業やバリューチェーンを通じてサステナビリティの課題に積極的に取り組んでいきます。 ・社会に不可欠なエネルギーを、よりクリーンな形で安定的かつ効率的に供給します。 ・気候変動対応やネットゼロカーボン社会への移行に貢献するべく、エネルギー構造の変革に積極的に取り組みます。 ・従業員をはじめ事業に関わる全ての人々の健康と安全を確保し、安全操業・管理を徹底します。また、地球環境課題に取り組み、環境価値の創造に努めます。 ・法令を遵守し、人権を含む各種の国際規範や操業地域における社会的規範に沿った良識ある行動をとります。 ・広くステークホルダーとのコミュニケーションを図り、企業情報を積極的かつ公正に開示します。 ・ダイバーシティを尊重するとともに、働きやすい環境や人材の能力を最大限に発揮する機会を提供し、活力とイノベーションの創出につなげます。 ・各国・各地域の文化・習慣に配慮し、当該国・地域の経済社会の発展に貢献します。 |
また、経営理念を体現するために、役員及び従業員が共通に大切にする価値観として「INPEXバリュー」を制定しています。
INPEXバリュー
(b)財務マテリアリティ
3つの財務マテリアリティ(「気候変動対応」、「セーフティ」及び「人的資本」)に対するアクションプランは下表のとおりです。なお、マテリアリティは毎年見直しを行っております。
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財務マテリアリティ |
アクションプラン |
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気候変動対応 |
気候変動対応目標達成の推進 |
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天然ガス/LNG事業の拡大 |
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低炭素ソリューションの取組み |
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電力事業とその周辺分野での事業展開 |
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セーフティ |
重大災害防止 |
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労働安全衛生の確保 |
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人的資本 |
エンゲージメントの強化とDE&Iの推進 |
(c)サステナビリティ関連のリスク及び機会
イ)リスク及び機会
各財務マテリアリティのリスク及び機会と、これに関連する対策状況等の詳細においては、後述の「
ロ)リスク及び機会のトレードオフ
当社グループでは各事業(石油・天然ガス上流事業、再生可能エネルギー事業及びCCS・水素事業)の各フェーズにおける技術的な評価及び環境・社会への影響評価を組織横断的に行う「INPEX Value Assurance System(IVAS)審査会」の実施や各事業における経済性評価及びリスク評価を定期的に行うことで、財務マテリアリティにおけるトレードオフの低減に努めています。
ハ)時間軸
リスク及び機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸については、当社グループが戦略的意思決定に用いる計画期間である中期経営計画に合わせて、「短期」を1年未満、「中期」を1年以上~3年未満、及び「長期」を3年以上と定義しています。
(d)レジリエンス
当社が2025年2月に発表した「INPEX Vision 2035」は、昨今の経営環境や社会情勢等の変化を踏まえつつ2035年に向けた当社グループの長期的な戦略を示したものです。「INPEX Vision 2035」の達成に影響を与える不確実性が高いリスクについては、毎年見直しを実施するとともに、レジリエンス評価の結果は当社の戦略の策定やビジネスモデルの調整に生かしております。当社の見通しへの影響が大きい気候レジリエンスの詳細については、「
③リスク管理
当社は、業務の効率的運営及び責任体制の確立を図るため取締役等を本部長とする本部制を採用しています。これに従い、初めに本部などの各担当部門が、社内規程やガイドラインに基づき緊密に連携したうえで、リスクの特定・識別・分析・評価を実施しています。このうち、個別プロジェクトにおける事業上の主要リスクは経営会議にて統合的管理・対処方針の討議・決定が行われます。また、必要に応じて取締役会にも報告され、十分な監督機能が果たされているほか、経営の公正性・透明性の確保がなされています。さらに、日常業務に係るリスク管理の運営状況等については、社長直属の内部監査部門による監査、その他社内担当部署あるいは社外専門家による監査等を通じ、これを検証・評価するとともに、環境の変化に応じた不断の見直しを行っています。
当社グループの具体的なリスク管理体制は、
リスク管理体制図
④指標及び目標
マテリアリティに関する指標及び目標、実績については、「
(2)気候変動対応
①ガバナンス
ガバナンスの体制については、「
②戦略
(a)方針
当社は、2015年12月に「気候変動対応の基本方針」を発行し、その後、パリ協定目標達成に向けた各国の取組みを支持するため、2021年1月に2050年自社排出量ネットゼロ(Scope1+2)目標を定めました。以降、外部環境の変化や長期戦略及び中期経営計画の更新に合わせて、方針及び2050年自社排出ネットゼロを目指すための目標を見直しています。2025年2月には「INPEX Vision 2035」の発表にあわせて「気候変動対応の基本方針」を改定しました。
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気候変動対応の基本方針 1.当社は、今後も増加する我が国及び世界のエネルギー需要に応え、長期にわたり引き続き、エネルギーの安定供給の責任を果たしつつ、2050年ネットゼロの実現に向けたエネルギー構造の変革に積極的に取組みます。 2.気候変動に関するパリ協定目標の実現に貢献すべく、2050年自社排出ネットゼロを目指す気候変動対応目標を設定します。 3.ネットゼロの実現に向けて、社会のニーズに応えるべく、低炭素化の取組みを確実に推進します。具体策として、「現実的な移行期の燃料」としての天然ガスをよりクリーンな形で供給していきます。加えて、第三者向けにCCSやクリーン水素・アンモニア等の低炭素化ソリューションを提供するとともに、電力関連分野の新たな取組みを強化します。 |
(b)リスク及び機会
当社では、毎年当社グループの気候変動関連リスク及び機会の評価を行っています。リスク及び機会の評価結果は以下のとおりです。
2025年末における気候変動関連リスク/機会の評価結果
(短期:1年未満、中期:1~3年未満、長期:3年以上)
移行リスク
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リスク区分 |
リスク評価対象 |
リスク発生時期見込 |
対策状況 |
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政策・法規制 |
IEA-NZEシナリオで世の中が推移し、プロジェクト所在国・地域が気候変動対策を強化した結果、カーボンプライシング制度やメタン排出管理規制及び環境法令等の 導入・強化により、Scope1,2排出量に対する直接的コストが増加するリスク |
短期~長期 |
・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・プロジェクト所在国・地域の政策や動向のモニタリング ・財務的評価、経済性評価の実施 ・プロジェクト操業におけるクリーン電力の導入 ・2030年までに通常操業時ゼロフレア ・メタン排出原単位0.1%を維持するための管理 ・OGMP2.0に加盟しノンオペレータープロジェクトも含めたMRV(Measurement, Reporting and Verification)を強化 ・カーボンクレジット戦略の策定・実行 ・関連するステークホルダーとのエンゲージメント |
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政策・法規制 |
石油ガス事業を進める上で生じる気候関連訴訟リスク |
短期~長期 |
・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・世界情勢の把握 ・社内ガバナンス体制の構築 ・適時・適切な開示 ・関連するステークホルダーとのエンゲージメント ・物理的リスク評価の実施 |
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技術・市場 |
IEA-NZEシナリオで世の中が推移したにもかかわらず、当社のCCS・水素の商業化がさらに遅延するリスク |
中期~長期 |
・プロジェクト所在国・地域の政策や動向、技術進展のモニタリング ・世界情勢の把握 ・新規技術開発への投資 ・技術向上への各施策 ・コスト削減の取組み ・営業活動の推進 ・関連するステークホルダーとのエンゲージメント |
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市場 |
投資家や金融機関から当社の事業内容や温室効果ガス排出量削減に向けた取組み及び情報開示が不十分とみなされ、資金調達に悪影響を及ぼすリスク |
短期~中期 |
・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・TCFD提言等に沿った情報開示の推進 ・投資家や金融機関との対話等エンゲージメントの実施 ・調達先とのエンゲージメントや資金調達先の多様化に向けた検討 |
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市場 |
再生可能エネルギーやEV等の低炭素エネルギー選好により、石油ガスの需要が減少するリスク |
長期 |
・事業ポートフォリオの見直し ・プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 ・プロジェクト所在国・地域の政策や動向、技術進展のモニタリング ・CCS等低炭素事業の取組みの加速 ・コスト削減の取組み |
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リスク区分 |
リスク評価対象 |
リスク発生時期見込 |
対策状況 |
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評判 |
Scope1、2の絶対排出量目標未設定による、当社グループの気候変動対応に対するレピュテーションが低下するリスク |
短期~長期 |
・プロジェクト所在国・地域の政策や動向のモニタリング ・脱炭素に向けた以下の取組みを社外のステークホルダーに丁寧に説明する。 -プロジェクトの温室効果ガス排出量削減に向けた取組みの推進 -2050年ネットゼロ、2035年排出量原単位60%低減目標の設定 -CCS等低炭素事業の取組みの加速 -メタン排出原単位0.1%を維持するための管理 -新規プロジェクトの温室効果ガス削減目標への影響を評価 |
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評判 |
Scope3の削減目標を設定しないことによる、当社グループの気候変動対応に対するレピュテーションが低下するリスク |
短期~長期 |
・脱炭素に向けた以下の取組みを社外のステークホルダーへ説明 -調達先とのエンゲージメントや調達先多様化の検討 -CCS等低炭素事業の取組みの加速 -削減貢献量の目標及び進捗の開示 ・カーボンオフセット商品の販売等による販売先の排出量削減に向けた取組みの推進 |
物理的リスク
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リスク区分 |
リスク評価対象 |
リスク発生時期見込 |
対策状況 |
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急性 |
極端な気象現象が操業に悪影響を及ぼすリスク |
短期 |
・定期的に急性物理的リスク評価を実施 ・防災対策を盛り込んだ設計、設備の修繕、改装 ・マニュアル策定、訓練、外部情報活用 |
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慢性 |
長期的な平均気温上昇、降雨パターンの変化、海面上昇が操業施設に悪影響を及ぼすリスク |
中期~長期 |
・定期的に慢性物理的リスク評価を実施 ・防災対策を盛り込んだ設計、設備の修繕、改装 ・マニュアル策定、訓練、外部情報活用 ・沿海部の施設における対海面上昇対策の実施 |
機会
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機会区分 |
機会評価対象 |
機会発生 時期見込 |
進捗状況 |
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資源の効率 |
生産プロセスでのエネルギー効率改善 |
短期 |
・イクシスLNGプロジェクトにおける生産時の燃料ガス・フレア削減イニシアチブ、ガス漏えい検知・修理(LDAR)プログラム等を通じた低炭素化操業を推進 |
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エネルギー源 |
再生可能エネルギー電源の生産プロセスでの活用 |
中期~長期 |
・イクシスLNGプロジェクトにおけるバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)の導入検討並びにオンサイトコンバインドサイクル発電プラントから再生可能エネルギー由来系統電力への切り替えに係る検討推進 |
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長期 |
・ノルウェーのウィスティング油田開発計画において、発生するCO2の圧入処分を前提とした海上でのガスタービン発電を検討 |
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製品及び サービス |
天然ガス/LNG |
長期 |
・イクシスLNGプロジェクトでの液化能力拡張の検討 ・アバディLNGプロジェクトの実現 |
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CCS/水素 |
長期
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・参画中のプロジェクトとCCSの組み合わせや第三者向けCCSの検討(イクシスCCS、アバディCCS) ・首都圏CCS等先進的CCS事業の推進 ・国内外における水素の事業及びサプライチェーン機会を検討(柏崎水素パーク等) |
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電力関連 |
短期~長期 |
・地熱、太陽光、風力等再生可能エネルギー発電事業の推進、及び再生可能エネルギー発電から需給管理、電力販売までの電力バリューチェーン構築の検討及び追求 |
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石油・天然ガス以外の地下資源等 |
中期 |
・成東水溶性ガス田からの副産物であるヨウ素の供給を通じペロブスカイト型の太陽電池の普及を側面支援 |
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市場 |
新しい市場へのアクセス |
短期 |
・カーボンオフセット商品の販売 ・LCAF(Low Carbon Aviation Fuel)のサプライチェーン構築に向けた関係各所との協議 |
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中期 |
・再生可能資源由来燃料であるリニューアブルディーゼル(低炭素軽油:RD)の国内提供及び、RD40(40%のRDを軽油に混ぜた燃料)の実証を実施 |
(c)気候レジリエンス
イ)気候関連のシナリオ分析
気候変動のリスク及び機会は不確実性が高いことから、当社では、複数のシナリオを活用しシナリオ分析を行っております。具体的には、2050年※1までの低炭素社会に向けたエネルギー需給などの事業環境の見通しについて、国際エネルギー機関(以下「IEA」)発行によるWorld Energy Outlookレポート(以下「WEO」)のIEA-STEPS、IEA-APS及びIEA-NZE等を参照しています。これらのシナリオから当社グループのビジネスにおける移行リスク及び物理的リスクを評価しています。また当社は、これらのシナリオを用いた分析を活用し、長期的な経営戦略として2025年2月に「INPEX Vision 2035」を策定しました。今後も複数のシナリオを活用しながら事業環境の変化をいち早く把握し、社会の動向に合わせ経営戦略・経営計画の見直しを行っていきます。
※1 IEAのWEOでは2050年までの国際エネルギー情勢について展望している
ロ)移行リスクの財務的評価
当社グループの移行リスクにおいて、WEO内のシナリオを活用し、以下2つの手法でリスクの財務的評価に取り組んでいます。
一つ目は、インターナルカーボンプライスを用いた当社グループの各プロジェクトの経済性評価です。世界では既に150以上の国・地域が2050年ネットゼロ宣言を行っており、今後更なる気候変動関連政策強化に伴い、各国においてカーボンプライス導入の法規制が進むと推測されることから、ベースケースからインターナルカーボンプライスを考慮した上で経済性を評価しています。ベースケースからの適用をルール化したことにより、社内では温室効果ガスにかかるコストが事業投資における重要な要素として認識されています。また、ステークホルダーに対しては、当社グループが移行リスクを考慮した上で経営判断を行っていることを示しています。財務的評価に用いているインターナルカーボンプライスについては、WEOのカーボンプライスを参考に毎年更新しています。プロジェクト所在国にカーボンプライス制度が存在する場合は、外部専門家の価格予想等を用いた当該国における当社グループの見積価格を参照しています。カーボンプライス制度が存在しない場合は、IEA-STEPSの前提から妥当性を検証して価格を決定しています。2025年はWEO2024のIEA-STEPS韓国価格を採用しており、2026年度も引き続きWEO2025のIEA-STEPS韓国価格(2035年US$ 52/tCO2e、2040年US$ 62/tCO2e、2050年US$ 75/tCO2e)を参照価格として設定します。
二つ目は、当社グループの事業ポートフォリオのレジリエンス評価です。これは、IEAが示す各シナリオにおける油価とカーボンプライスの推移が、当社グループのポートフォリオに与える影響を評価するものです。2025年時点では、WEO2024を参照し、IEA-STEPS、IEA-APS及びIEA-NZEのシナリオが提示している油価及びカーボンプライスをプロジェクトのNPV計算に適用し、簿価からの変化率を算出することで、将来の当社グループのポートフォリオが受ける影響を評価しています。2026年の評価では、WEO2025を参照し、IEA-STEPS及びIEA-NZEで評価する予定です。
今後も事業環境の変化を織り込みながら本手法の運用基準の深化を継続し、当社グループの事業ポートフォリオの競争力向上に努めていきます。
移行リスクの財務的評価への2つのアプローチ
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プロジェクト経済性評価 |
ポートフォリオレジリエンス評価 |
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評価手法 |
インターナルカーボンプライスを用いたプロジェクトの経済性を評価 |
下記シナリオによる油価及びカーボンプライスによる影響を評価 (2025年時点 – WEO2024参照) |
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IEA-STEPS |
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IEA-APS |
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IEA-NZE |
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指標 |
インターナルカーボンプライス適用によるIRR |
上記指標価格適用による簿価からの変化率 |
ハ)物理的リスクのレジリエンス評価
当社は、物理的リスクにおいて、急性リスクと慢性リスクに分けて当社グループのアセットのレジリエンス評価を行っています。2018年に物理的リスクについての評価プロセスを検討後、ロードマップを設定し、主要オペレータープロジェクトであるイクシスLNGプロジェクトと新潟県の国内アセットにおける評価を開始しました。これは、国内及び海外における操業中のオペレータープロジェクトにおける保険付保額を100%カバーしています。その後も、前提としていた日本の気象庁発行の観測・予測評価報告書が更新されたことを受け、当社グループの主要施設の一つである直江津LNG基地に対する物理的リスクを再評価しています。同報告書内RCP8.5シナリオでは、平均海面上昇幅を0.19m程度と予測されていますが、評価の結果、同基地はこの水面上昇に耐えうる構造です。さらに、国内アセットに対しては、社外の評価サービスを用いた河川氾濫及び高潮による直接損害額及び間接損害額を試算しています。企業総合補償保険における上位10地点の国内事業所、国内パイプライン及び主要子会社事業所を対象としており、2030年及び2050年時点の想定損害額は限定的であることを確認しています。これらの物理的リスク評価では、共通してIPCC第5次評価報告書のRCP8.5シナリオにおける21世紀半ばの平均気温上昇、海面上昇などの指標を利用しています。
これらの評価を踏まえて、イクシスLNGプロジェクトをはじめ沿岸部に立地する主要施設の慢性リスクは、海水位上昇などを織り込んで設計しているため、洪水リスクは低いと判断しています。また、今後の気温上昇により運転効率の低下などの影響が考えられますが、適宜施設の改善・メンテナンスを行っており、2030年までに大きな損害が出ないと評価しています。急性リスクに関しては、主要オペレーター案件で適切な計画、操業、訓練、外部情報活用などにより、台風やサイクロンなどの極端な気象現象に十分な備えを持って取り組んでいます。当社グループの主要な拠点である直江津LNG基地のLNG受け入れ桟橋設備では、施設の被害があった場合に備えて、近隣発電所との間に基地間を接続する連系配管を有しています。これにより、連系配管を利用して当該発電所の受け入れ桟橋からLNGを受け入れる体制を構築しています。加えて、当社グループの主要施設は、自然災害の財物保険の手配により、急性リスクによる財務的損失の軽減を図っています。また、国内での自然災害についてはパイプラインのリスク評価や対応策の検討の上、自然災害リスクの高い部分において引替え工事を実施しました。
なお、当社グループでは、HSEマネジメントシステム文書であるHAZID(Hazard Identification)ガイドラインにおいて、HAZIDワークショップを行う際のガイドワークの一つに気候変動による影響を定めており、新規プロジェクトを含め当社グループの事業活動のライフサイクルを通したリスク管理アプローチに物理的リスク評価を組み込んでいます。今後も組織横断的なチームで定期的に評価の実施や適切な開示を進めていくと同時に、分析手法を多様化させ、より多角的な評価を進めていきます。
物理的リスクへレジリエンス評価へのアプローチ
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アセット評価 |
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評価手法 |
急性リスクと慢性リスクにリスクを分け、プロジェクトごとにアセットの物理的リスク評価を実施 |
(d)気候移行計画
当社は「INPEX Vision 2035」、「2025-2027 中期経営計画」及び上記のシナリオ分析をもとに、限界削減コストカーブ(MACカーブ)※1を活用し、当社グループ事業の低炭素化ロードマップを作成しています。基準年である2019年から2025年までに省エネ設備の更新やメタン排出管理等のGHG削減活動により、温室効果ガス原単位を着実に削減しています。今後は、外部環境の変化や技術進展、政策的な支援等を踏まえ、GHG削減に伴う費用と削減効果のバランスを考慮・評価しながら、段階的に低炭素化の取組みを推進していく考えです。具体的には、豪州等の生産施設にCCSを設置することで油ガス生産時のCO2の削減や、自社が使用する電気を再生可能エネルギーに切り替えること等により計画的に温室効果ガス原単位を下げ、2035年に60%削減(基準年比)を目指します。2035年以降は、発電施設での水素燃焼タービンの採用、電化の推進やさらなる再エネの活動、技術進展に応じた最適な削減施策の採用により、2050年ネットゼロの達成を目指します。
※1 個別の削減対策について、削減ポテンシャル(対策の実施により想定される削減量)と削減コスト(CO2を1トン削減するために要するコスト)を把握し、削減コストの安い順に各対策の削減ポテンシャルを並べたもの。
③リスク管理
リスク管理体制は、「
リスク評価のプロセスは、国際的なリスク管理基準であるISO31000(2018)(図A)の手順に従って気候変動関連リスク及び機会の評価・管理を、年次サイクルで実施しています。気候変動に関する外部要因・内部要因をアップデートし、当社グループの状況を気候ワーキンググループメンバーに共有した上で、リスクを特定し、その原因、予防措置、低減措置、及び残存リスク(実施済みの予防措置及び低減措置を適用した後になお残るリスク及びリスクレベル)を分析(図B)しています。その後、残存リスクを当社で作成した「リスク評価マトリクス」(図C)を使用して評価しています。
なお、これらの評価や気候変動関連の方針改定は、サステナビリティ推進委員会で審議・決議後、内容に応じて経営会議や取締役会に上申する仕組みとなっています。
図A:ISO31000の手順
図B:リスク分析の手順
図C:リスク評価マトリクス
④指標及び目標
(a)目標
当社グループは、「気候変動対応の基本方針」に則り、パリ協定目標※1を支持し、低炭素社会の実現に貢献すべく、「当社事業の低炭素化」及び「社会の低炭素化への貢献」という2軸で目標を定めています。当社事業の低炭素化に関しては、2050年までに当社グループの排出量ネットゼロを実現すること及びそのプロセスとして、2035年時点で排出原単位を60%以上低減(2019年比)することを目標に掲げています。本目標の達成に向け、「2025-2027 中期経営計画」では、2027年に排出原単位を35%低減(2019年比)することを事業目標としています。事業目標は、中期経営計画の策定毎に見直しを行っており、前回の中期経営計画で掲げていた「2030年までに30%低減(2019年比)」を前倒しで達成したことにより、さらに目標値を引き上げたものです。次に、社会の低炭素化への貢献として、Scope3排出量の削減については、バリューチェーン全体の課題として関連する全てのステークホルダーと協働するとともに、CCSをはじめとする低炭素化ソリューションの提供及びクリーン電力供給を通じて、2035年時点には社会に対し、年間820万トン程度の削減貢献を創出することを目指します。加えて、メタン排出原単位(メタン排出量÷天然ガス生産量)を現状の低いレベル(約0.1%)で維持することを継続し、通常操業時のゼロフレア達成を目指します。
気候変動対応目標
※1 世界全体の平均気温の上昇を2℃を十分に下回る水準に抑える目標レベル
※2 当社グループ権益分
※3 2019年比の削減目標(現在の経済環境と合理的な予測を反映したものであり、技術進展、経済合理性、各国・地域の施策実現等の事業環境を前提としている)
※4 対象はオペレータープロジェクト
(b)実績
イ)当社グループの指標及び目標、その実績(排出原単位)
(単位:kg-CO2e/boe)
|
指標 |
目標 |
2024年12月期 |
|
温室効果ガス排出原単位1 |
2019年比35%減2 |
28 |
|
メタン排出原単位3 |
0.1以下 |
0.05 |
排出原単位計算式
1 持分割合アプローチにおけるオフセットを含めた排出原単位です。ここでいう原単位とは、当社グループの国内外石油・天然ガスの生産量及び再生可能エネルギー事業の発電量(熱量換算)当たりの温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2)を指しています。なお、温室効果ガスは7種類すべてを対象にしています。温室効果ガス排出原単位の計算式は上記のとおりです。
2 2035年までに2019年(原単位)比60%を削減する。その過程として、中期経営計画(2025-2027年)までに2019年比35%削減する。
3 経営支配力アプローチにおけるメタン排出量原単位です。ここでいう原単位とは、当社グループの国内外天然ガスの生産量におけるメタン排出量を指します。
4 オフセットには、当該事業の環境価値が当社に帰属すると考えられる再生可能エネルギー事業による削減貢献量と、カーボンクレジットによる無効化量が含まれます。再生可能エネルギーによる貢献量は「国際協力銀行の地球環境保全業務における温室効果ガス排出削減量の測定・報告・検証に係るガイドライン」(J-MRVガイドライン)に基づいて算出しています。
ロ)温室効果ガス排出絶対総量(GHG排出量)
GHG排出量実績
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項目 |
実績(2024年12月期) |
参照基準 |
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Scope1 |
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GHGプロトコル(2004年) |
|
Scope2 ロケーションベース |
|
GHGプロトコル(2015年) |
|
Scope2 マーケットベース |
|
GHGプロトコル(2015年) |
|
Scope3 カテゴリー1 |
2,725千トン-CO2e |
GHGプロトコル(2011年) |
|
Scope3 カテゴリー11 |
86,238千トン-CO2e |
GHGプロトコル(2011年) |
当社グループは、温室効果ガス排出の測定にGHGプロトコルを参照し、Scope1,2については、当社グループがオペレーターとなるプロジェクトにおけるGHGを算出していることから経営支配力アプローチをとっています。
Scope1においては、当連結会計年度における活動量に、当連結会計年度末において入手可能な各国法規等の固有の排出係数を乗じて算出しています。固有の排出係数を把握できない場合は、IPCCの排出係数を用いています。なお、Scope1の主な発生要因は、地下流体に付随して生産されるCO2及び施設での燃料使用によるものです。
Scope2のうち、ロケーションベースは、当連結会計年度における各拠点の電力使用量に、IEAの国別排出係数を乗じて算出しています。マーケットベースは、当連結会計年度における電力使用量に、電力契約ごとの排出係数を乗じて算出します。電力契約ごとの排出係数を把握できない場合は、GHGプロトコルのヒエラルキーに基づき算定しています。なお、Scope2の主な発生要因は、電力の使用によるものです。
Scope3においては、当社グループ事業における重要性を考慮し、カテゴリー1(購入した物品・サービス)及びカテゴリー11(販売した製品の使用)を測定対象としています。Scope3カテゴリー1では、当社グループの請負先(コントラクター)の排出量及び購入した物品の生産に係る上流排出量の合計値であるため、測定の不確実性の程度が高い情報です。カテゴリー11は、当社グループが販売した原油、天然ガス、LPGの全量が燃焼したと仮定し、販売量の合計値にIPCCの排出係数を乗じた値であり、これも測定の不確実性の程度が高い情報です。
産業別指標、2025年12月期の排出原単位及びその他気候変動対応に係る実績については、2026年6月末発行予定の「
(3)セーフティ
①ガバナンス
ガバナンス体制については「
<HSEマネジメントシステム規則>
「HSEマネジメントシステム規則」は、HSEマネジメントシステムを用いて、HSE担当役員が策定するHSE要領群を体系的に整備し、PDCAサイクルによってHSEパフォーマンスの組織的・体系的な改善に努めることを定めています。当社グループはHSE要領を順守した上で、必要に応じてグループや事業毎に個別に文書や要求事項を策定します。
<コーポレートHSE委員会>
HSE担当委員を委員長とし、委員は常設組織の本部長・当社役員で構成され、当社グループのHSE管理推進に関する基本方針や重要事項を審議します。 具体的には、当社グループ全体で取り組むべきHSEに係る中期計画、重点目標、プログラム、HSE監査による実情の把握・評価、及びHSEマネジメントシステムの維持、見直し、改善状況を審議するとともに、HSE担当役員はマネジメントレビューを通して必要な是正、見直し措置を中長期の重点目標、プログラム等へ反映するように諮ります。HSE委員会で審議された重要事項は、経営会議にて決議、その後取締役会にて決議・報告されます。当事業年度は4回開催され、HSE重点目標や前年度の重大事故・負傷事故の原因・傾向分析、当期上半期HSEパフォーマンス、HSE管理施策の進捗などが決議・報告されました。
②戦略
(a)方針
当社は、企業の事業活動におけるHSEに関する基本方針を定めております。
|
HSE方針 私たち株式会社INPEXグループは、取締役会決議のもと本HSE方針を策定し、当社のサステナビリティ憲章に基づいて、従業員の参画と協議のもと以下に定めた項目を実行します。 ・HSEが、あらゆる意思決定において必要不可欠な要素であるとみなされ、日々そのことが追求されるHSE文化を醸成します。 ・信頼、行動、ビジョン、説明責任、コミュニケーション、協働そしてフィードバックと評価に象徴されるHSEリーダーシップを発揮し、責任を持って業務を遂行します。 ・事業を展開するすべての地域で、適用される法令・規則を遵守するとともに、当社の事業すべてにHSEマネジメントシステムを一貫した方法で活用します。 ・監査、レビュー、事故調査等から得られた教訓を活用し、HSE活動を効果ある形で実践するとともに、継続的に改善します。 ・HSEパフォーマンスを継続的に改善するため、HSE目標を定量的・定性的に定め、優先順位を考慮し計画を策定します。HSE目標達成のために計画的に経営資源を投入し、特に人材については、十分な力量を確保するために教育訓練を実施します。 ・HSE上の危険要因を管理し、事故発生の予防に努めると同時に、健康、環境そして地域社会への負の影響を回避、低減することで、従業員、協力会社をはじめとするすべての人々の健康と安全を確保するとともに、社会との信頼関係を維持します。 ・プロセスセーフティ管理に重点的に取り組み、当社事業のすべてのフェーズにおいて、HSEリスクを「現実的な範囲で最小限のレベル(ALARP※1)」まで低減し、安全操業・管理を徹底します。 ・万が一、重大事故が発生した場合に、迅速かつ効果的な対応ができるよう、緊急時・危機管理対応プロセスを定期的に検証します。 ・当社の気候変動対応の基本方針に基づき、温室効果ガス排出量の管理及び削減に努めます。 ・生物多様性、水資源等の自然環境に関するリスクと機会を特定し、環境価値の創造に取り組むとともに、廃棄物の適正管理、資源の効率的利用等に取り組み、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を推進します。 ・強靭なセキュリティ管理プロセスに基づき、要員、操業そして資産を悪意ある行為から守ります。
以上の活動にあわせて、ステークホルダーに広くHSE関連情報を開示し、HSEパフォーマンスの改善に取り組んでいる会社と認められるよう日々努力します。 |
※1 As Low As Reasonably Practicableの略
(b)リスク及び機会
2025年末におけるセーフティ関連リスクの評価結果
(短期:1年未満、中期:1~3年未満、長期:3年以上)
|
リスク評価対象 |
リスク発生時期見込 |
対策状況 |
|
操業現場で火災や爆発により、人的被害、生産停止、工事遅延が起きるリスク |
短期~長期 |
・重大な影響を及ぼす漏えい・火災・爆発リスクをMAE※1リスクとして定義し、設計段階からリスクの特定・分析・評価を実施し、操業現場が安全に管理されるための施策を講じています。 ・操業においては、安全管理に関わる機器や作業を特定し、計画的な健全性の監視・管理を実施することで、事故の予兆に対して事前対策を講じ、事故を回避しています。 ・その他、全社的な取組みとして、HSEに関わる要求事項の見直しや、力量向上に係る施策を進めています。 |
※1 MAE (Major Accident Event):重大事故災害。大規模漏えいによる火災、爆発、毒性ガスの拡散などに代表される複数の死亡・重傷者を出したり周辺環境に深刻な被害を与えたりするような事象。
③リスク管理
サステナビリティ全般のリスク管理については、「
HSEリスクに関しては、当社のHSEマネジメントシステムに基づくリスク管理が適用されます。当社のHSEマネジメントシステムは、国際標準であるISO9001、14001及び45001を参照し、IOGP※1のOMS510※2に基づいています。OMS510は、リーダーシップ、リスク管理、継続的改善(PDCA)、実施を基本原則とし、HSEマネジメントシステムのパフォーマンスと有効性を向上させるための基礎となっています。当社はOMS510のHSEマネジメントシステムをベースとして、必要なHSE関連文書(規則、要領、指針など)の作成、HSE組織の整備、各事業本部へのHSE技術支援、HSE教育訓練、各種のHSEコミュニケーション活動、定期的なHSE監査やHSEレビューなど、HSEマネジメントシステムを実施する上で必要不可欠な構成要件をHSEマネジメントシステム要領に定めてマネジメントシステムに落とし込み、網羅的なHSEリスク管理を行っています。
※1 IOGP:国際石油・天然ガス生産者協会
※2 IOGPの報告書No.510 “System Framework for controlling risk and delivering high performance in the oil and gas industry”
また、主要なHSEリスクを企業の戦略や意思決定に反映する仕組みの一つとして、以下の定期報告を実施しております。
・経営会議(月次):当社グループのHSE指標の達成状況や事故等について、HSE担当役員及びHSEユニットから報告
・経営会議(四半期毎):全てのオペレータープロジェクトから重大なHSEリスクの報告を受け、その要旨をHSE担当役員及びHSEユニットから報告
④指標及び目標
(a)目標
当社グループは事業を行うにあたり、死亡事故、重篤負傷、重大漏えいを、絶対に起こしてはならない重大な事故と既定し、経営目標の一つとして「重大な事故ゼロ」を全従業員共通のセーフティ目標に定めています。
(b)実績
当社グループの指標及び目標、その実績(重大な事故ゼロ)
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指標 |
目標 |
2025年度実績 |
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死亡事故 |
0 |
1 |
|
重篤負傷 |
0 |
1 |
|
重大漏えい(PSE Tier1)1 |
0 |
0 |
1 可燃性流体などの物質の予期しない放出又は漏えいであり、IOGPの要求事項に従い、実際の事故の影響(人への被害、会社への損害額、放出物質の種類や漏えい量など)に応じてTierを区分したもののうち、最も影響が大きいもの。
セーフティに関するその他の指標及び目標、その実績については、2026年6月末発行予定の「
(4)人的資本
①ガバナンス
ガバナンス体制については「
②戦略
(a)方針
イ)人材戦略
当社グループの経営理念を実現するためには、「現場力」と「技術力」そして「国際性」という強みを一層磨き、激変する事業環境においても柔軟に対応できる組織と人材が必要と考えています。目指すべき組織文化として「既成概念に縛られず自由闊達に意見を出しあい、新たなことに挑戦し続け、イノベーションを起こせる組織文化」、求める人材として「多様性の受容、成長意欲、自律的行動をもとに、ビジネス現場で価値を創出する人材」と定義し、これを実現するために人材戦略基本方針に基づき、各種重点施策に取り組んでいます。
ロ)INPEX HR VISION
|
人材戦略基本方針の実現に向けて人事部門では、各国の人事部門責任者と協議を重ね策定した、4つの柱からなる「INPEX HR VISION」を当社グループ人事部門共通のビジョンとして制定しております。この4つの柱を中核として、人材戦略基本方針に基づく各種人事施策をグローバルな視点で推進し、従業員の能力向上とチームとしての成果の実現へとつなげることで、グローバル企業として責任ある経営を持続的に実施し、高い国際競争力を有する組織づくりに取り組んでおります。 |
|
(b)リスク及び機会
当社では、当社グループの求める人材と目指すべき組織文化の実現に向けてリスク及び機会を以下のとおり評価しています。
2025年末における人的資本関連リスク/機会の評価結果
(短期:1年未満、中期:1~3年未満、長期:3年以上)
リスク
|
リスク区分 |
リスクの評価対象 |
リスク発生時期見込み |
対策状況 |
|
人材確保・適所適材配置 |
必要な人員の質・量を確保できずビジネスチャンスを逸失するリスク |
短期~長期 |
・強化領域(成長領域や新事業領域)への重点的な人材配置 ・適所適材による事業成長と加速化を促進 ・ラインマネジメント職の任期制を採用し、後継者プランを作成して人材配置の硬直化や登用機会の減少を防止 ・希望する業務内容や異動部門を申告できる仕組みを設けて従業員の自律的なキャリア形成を支援 |
|
不適切な配置により従業員のモチベーションや労働生産性が低下するリスク |
短期~長期 |
||
|
人材育成・能力強化 |
学びの場や成長の機会を提供できないことによる優秀な人材が流出するリスク |
短期~長期 |
・各国の事情に沿ったリーダーシッププログラムやスキル系研修の実施 ・海外現地法人従業員の本社研修プログラム等の実施 ・海外現地法人を含めたリーダー人材の発掘・育成の推進 ・キャリア形成につながる適切な研修や業務機会の提供 |
|
コンプライアンス |
コンプライアンス違反により会社の評判が毀損されるリスク |
短期~長期 |
・ハラスメントや差別防止を含む業務別、階層別のコンプライアンス研修、心理的安全性セミナー、アンコンシャスバイアスセミナーの定期的実施 ・eラーニング、医師との連携、職場復帰フォローなどのメンタルヘルス対策の取組み強化 ・年1回のストレスチェック時に実施するエンゲージメント調査、定期的な1on1やパルスサーベイによる上司が部下の状況をモニタリング |
|
ハラスメントや心身の健康への悪影響による労働生産性の低下や人権侵害が誘発されるリスク |
短期~長期 |
機会
|
機会区分 |
機会の評価対象 |
機会発生時期見込 |
進捗状況 |
|
人材確保・適所適材配置に関する機会 |
適所適材な人員配置及び優秀な人材の確保、定着化 |
短期~長期 |
・当社従業員と海外子会社従業員が混在する組織構築やグローバルワークショップ開催等によるグループ連携の強化 ・組織改編の目的に沿った適所適材を推進 ・職務や役割に応じたジョブ型人事制度の導入 |
|
人材育成・能力強化に関する機会 |
従業員が成長を実感できる研修や業務機会の提供によるモチベーション・エンゲージメントの向上 |
短期~長期 |
・各国の事情に沿ったリーダーシッププログラムやスキル系研修の実施 ・海外現地法人等の従業員で将来を担う人材を対象とした本社研修プログラムの実施 ・社員の成長に繋がる国内外研修派遣先の拡充 ・本社採用の若手従業員を国内外の事業所・操業現場へ派遣する業務実践型研修の実施 |
|
職場環境整備・組織活性化に関する機会 |
多様な人材が活躍する職場環境の整備と組織の活性化及びイノベーション促進 |
短期~長期 |
・DE&I方針の制定 ・グローバルエンゲージメント調査実施に向けた検討開始 ・健康保持・推進、Well-beingへのニーズに応える職場づくりに向けた取り組み推進 ・INPEX Values浸透施策の継続実施 ・新設したDE&I推進ユニットによるDE&Iに関する社内浸透活動実施 |
③リスク管理
リスク管理については、「
④指標及び目標、その実績
(a)目標
当社は、人材戦略基本方針に基づき、エンゲージメントの強化及び多様性の推進に関する指標・目標を設定しています。
(b)実績
当社グループの指標及び目標、その実績(人的資本)
|
分類 |
指標 |
目標 ( |
実績 |
|
|
2024年度 |
2025年度 |
|||
|
エンゲージメントの強化 |
|
|
17.1 |
|
|
心理的安全性(偏差値)* |
50以上 |
51.9 |
52.4 |
|
|
多様性の推進 |
|
|
26.5 |
|
|
|
|
7.7 |
|
|
|
|
|
73.6 |
|
|
|
|
|
68.1 |
|
|
|
|
法定雇用率以上 |
3.0 |
|
|
注1 「*」は当社グループに属する全ての会社で実施しているものではなく、当社グループとしての記載が困難であるため、提出会社(提出会社から他社への出向者を含む)の目標及び実績を記載しています。
注2 特段の注記がない場合は、子会社を含んだ数値となります。
注3 「エンゲージメントの強化」の数値は、ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度と相関の高い8項目を含んだ委託先尺度で測定し、全従業員平均の実績値を偏差値で算出しています。高エンゲージメント者割合とは、ワークエンゲージメントの偏差値が62.0以上の人数割合となります。
人的資本に関するその他の2025年度実績については、2026年6月末発行予定の「
なお、本項の記載中、将来に関する事項については、別途記載する場合を除いて本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
以下には、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主要な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。なお、以下の記載は、当社グループの事業上のリスクをすべて網羅するものではありません。
また、本項の記載中、将来に関する事項については、別途記載する場合を除いて本書提出日現在での当社グループの判断であり、当該時点以後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
I.事業等の主要なリスク
1 石油・天然ガス開発事業の特徴及びリスクについて
(1)災害・事故・システム障害等のリスク
石油・天然ガス開発事業には、探鉱、開発、生産、輸送等の各段階において操業上の事故や災害等が発生するリスクがあります。また、操業に当たって様々な情報システムを利用していることから、これらの情報システムには安全対策が施されているものの、自然災害やサイバー攻撃等により、予期せぬ障害が発生し、操業が停止するリスクがあります。このような情報システムの予期せぬ障害、事故や災害等が生じた場合には、保険により損失補填される場合を除き設備の損傷によるコストが生じることがあり更には、人命にかかわる重大な事故又は災害等となる危険性があります。また、その復旧に要する費用負担や操業が停止することによる機会損失等が生じることがあります。
また、当社グループの関連プロジェクトで労働争議が行われた場合や、新型コロナウイルス感染症等の感染症の流行・拡大により、操業に必要な従業員等の不足、資機材・サービス等の調達や生産物の輸送の困難、産油国政府による操業停止の指示・命令、共同事業を行っている場合のパートナーの方針変更等が生じた場合には、一部又は全部の操業が停止・遅延する可能性があります。
国内天然ガス事業においては、2010年1月以降、輸入LNG気化ガスを原料ガスとして購入しており、更に2013年8月以降、直江津LNG基地において輸入LNGから気化ガスを製造しておりますが、当該輸入LNG気化ガス・輸入LNGの購入先及び直江津LNG基地における事故、トラブルなどにより輸入LNG原料ガスの調達ができない場合、国内ガス田のトラブルにより国産ガスの生産ができない場合、あるいはパイプラインネットワーク上における事故、災害などによりパイプラインの操業が困難になる場合には、当社顧客へのガス供給に支障をきたすなど、当社の国内天然ガス事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、環境問題に関しては、土壌汚染、大気汚染及び水質・海洋汚染等が想定されます。当社グループでは、「環境安全方針」を定め、当該国における環境関連法規、規則及び基準等を遵守することは勿論のこと、自主的な基準を設け環境に対して充分な配慮を払いつつ作業を遂行しておりますが、何らかの要因により環境に対して影響を及ぼすような作業上の事故や災害等が生じた場合には、その復旧等のための対応若しくは必要な費用負担が発生したり、民事上、刑事上又は行政上の手続等が開始されてそれに伴う手続関連費用や損害賠償等の金銭の支払い義務が生じたり、操業停止による損失等が生じたりすることがあります。さらに、当該国における環境関連法規、規則及び基準等(新エネルギー・再生可能エネルギー等の支援策を含む。)が将来的に変更や強化された場合には、当社グループにとって追加的な対応策を講じる必要やそのための費用負担が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらの災害・事故・システム障害等のリスクについては、かかるリスクが顕在化することがないよう事故等の発生の未然防止に努めておりますが、リスクは常時あり、顕在化した場合には当社グループの業績に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、作業を実施するにあたっては、可能かつ妥当な範囲において、損害保険を付保することとしておりますが、すべての損害を填補し得ない可能性があり、また、行政処分や当社グループの石油・天然ガス開発会社としての信頼性や評判が損なわれることによって、将来の事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)探鉱・開発・生産に成功しないリスク
一般的に、鉱区権益を取得するためには、対価の支払いが必要となります。また、資源の発見を目的とした探鉱活動に際して、調査・試掘等のための費用(探鉱費)が必要となり、資源を発見した場合には、その可採埋蔵量、開発コスト、産油国(産ガス国を含む。以下同じ。)との契約内容等の様々な条件に応じて一段と多額の開発費を投ずる必要があります。
しかしながら、開発・生産が可能な規模の資源が常に発見できるとは限らず、近年の様々な技術進歩をもってしてもその発見の確率はかなり低いものとなっており、また、発見された場合でも商業生産が可能な規模でないことも少なくありません。
当社グループでは、探鉱活動に係る支出について、成功成果法(サクセスフル・エフォート・メソッド)を用いて会計処理しております。権益取得費、探査井及び評価井に直接関連するすべての支出は、石油・ガス資産(探鉱・評価資産)として認識し、その後ドライホールと判断された場合には探鉱費を計上し、商業採算性を確保する見込みが損なわれた場合には減損損失を計上しております。地質調査及び地球物理探査費用、並びに探査井及び評価井に関連しない支出等のその他の探鉱段階において発生する支出は、発生時に探鉱費に計上しております。
当社グループでは、保有する可採埋蔵量及び生産量を増加させるために、有望な鉱区には常に関心を払い、今後も探鉱投資を継続する一方、既発見未開発鉱区や既生産鉱区の権益取得等を含めた開発投資を組み合わせることにより、探鉱・開発・生産各段階の資産の総合的なバランスの中で投資活動を行っていく方針です。
探鉱及び開発(権益取得を含む。)は、当社グループの今後の事業の維持発展に不可欠な保有埋蔵量を確保する上で必要なものでありますが、各々に技術的、経済的リスクがあり、探鉱及び開発が成功しない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)生産量の特定地域及び鉱区への依存度
当社グループは、豪州のイクシスガス・コンデンセート田、アラブ首長国連邦アブダビの海上・陸上油田、国内の南長岡ガス田等において安定的な原油・天然ガスの生産を行っております。当社グループの事業地域は、豪州、アブダビ、東南アジア、日本、欧州という5つのコアエリアに加え、カスピ海沿岸地域を含むユーラシア等に幅広く分散していますが、2025年度における当社グループの生産量の地域別構成比率は豪州及び東南アジア地域が約40%、アブダビ及びユーラシア等地域が約54%と、2つの地域でその大部分を占めております。
現状では当社グループの生産量は、特定地域及び鉱区への依存度が高いため、これらの鉱区において操業が困難になる等の問題が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)契約期限等
当社グループの海外における事業活動の前提となる鉱区権益にかかる契約においては、鉱区期限が定められているケースが多くあります。鉱区期限が定められている契約が延長、再延長又は更新等されない場合や延長、再延長又は更新等に際し現状よりも不利な契約条件(権益比率の減少を含みます。)となった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、これらの契約の延長、再延長又は更新等に向けてパートナーとともに努力する方針でありますが、産油国国営石油会社等との契約交渉の結果、既存の契約が延長、再延長又は更新等されない場合や延長、再延長又は更新等に際し現状よりも不利な契約条件(権益比率の減少を含みます。)となった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、鉱区期限が定められている契約が延長、再延長又は更新等された場合でも、その時点における残存可採埋蔵量は、生産の進展により減少することが見込まれます。当社グループでは、これに代替し得る鉱区権益の取得を図っておりますが、代替し得る油・ガス田の鉱区権益を十分取得できない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、現在探鉱中の鉱区においても契約に探鉱期間が設定されており、鉱区内において商業化の可能性がある原油・天然ガスの存在を確認している場合であっても、当該期間終了までに開発移行の決定ができない場合などにおいては、産油国政府との協議により当該期間の延長、猶予期間の設定などに向けて努力する方針ですが、かかる協議が不調に終わった場合には、当該鉱区からの撤退を余儀なくされる可能性があります。また、一般に、契約につき、一方当事者に重大な違反があるときには、契約期限の到来前に他方当事者から契約解除をすることができるのが通例ですが、これら主要事業地域における契約においても同様の規定が設けられております。当社グループにおいては、そのような事態はこれまで発生したことはなく、今後についても想定しておりませんが、もし契約当事者に重大な契約違反があった場合には、期限の到来前に契約が解除される可能性があります。
また、天然ガス開発・生産事業においては、多くの場合、長期の販売契約・供給契約に基づいて天然ガスを販売・供給しており、それぞれ契約期限が定められております。これらの契約における期限の到来までに、延長又は再延長に向けてパートナーとともに努力する方針ですが、延長又は再延長されない場合や延長された場合でも販売・供給数量の減少などがあった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、販売契約・供給契約の契約期間中に販売条件の変更があった場合や、プロジェクトの一部又は全部の操業が停止・遅延したこと、想定外の需要変動が発生したこと等により当社が第三者から追加の天然ガスを購入・調達する必要が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)原油、コンデンセート、LPG及び天然ガスの埋蔵量
① 確認埋蔵量(proved reserves)
当社は、当社グループの主要な確認埋蔵量(proved reserves)について自社にて評価を実施しました。確認埋蔵量の定義は、米国の投資家に広く知られている米国証券取引委員会規則S-X Rule 4-10(a)に従っており、評価に決定論的手法又は確率論的手法のいずれが用いられているかに関わらず、地質的・工学的データの分析に基づき、既知の貯留層から、現在の経済条件及び既存の操業方法の下で、評価日時点以降操業権を付与する契約が満了する時点まで(契約延長に合理的確実性があるという証拠がある場合は延長が見込まれる期間が満了する時点まで)の間に、合理的な確実性をもって経済的に生産することが可能である石油・ガスの数量となっております。また、確認埋蔵量に分類されるためには、炭化水素を採取するプロジェクトが開始されているか、妥当な期間内にプロジェクトを開始することにつき合理的な確信をオペレーターが持っていなければならず、埋蔵量の定義の中でも保守的な数値として広く認識されております。ただし、かかる保守的な数値ではあっても、将来にわたる生産期間中に、確認埋蔵量が全量生産可能であることを保証する概念ではないことに留意を要します。確率論的手法を用いて確認埋蔵量を算定する場合には、確認埋蔵量を回収することができる確率が少なくとも90%以上であることが必要とされております。
当社グループ(関連会社等分を含む)の原油、コンデンセート、LPG及び天然ガスの確認埋蔵量については「第1 企業の概況 3 事業の内容 (2)当社グループの埋蔵量」をご参照下さい。
② 推定埋蔵量(probable reserves)
主要な推定埋蔵量(probable reserves)についても自社にて評価を実施しており、石油技術者協会(SPE)などが策定した基準であるPRMS(Petroleum Resources Management System)に従い、評価・算定しています。なお、推定埋蔵量の算定に用いる将来の油価見通しについては、米国証券取引委員会規則S-X Rule 4-10(a)と同様の、期中の月初油価・ガス価平均価格を使用しております。確率論的手法を用いて推定埋蔵量を算定する場合には、確認埋蔵量と推定埋蔵量を合計した数量(2P)を回収できる確率が50%以上であることが必要とされています。推定埋蔵量の全量が確認埋蔵量と同様な確実性をもって開発・生産されると見込まれるわけではありません。また、主要プロジェクトの2P埋蔵量評価については、定期的に米国の独立石油コンサルティング会社であるDeGolyer and MacNaughtonの認証を受けております。
③ 埋蔵量の変動の可能性
埋蔵量の評価は、評価時点において入手可能な油・ガス層からの地質的・工学的データ、開発計画の熟度、経済条件等多くの前提、要素及び変数に基づいて評価された数値であり、今後生産・操業が進むことにより新たに取得される地質的・工学的データや開発計画及び経済条件等の変動に基づき将来見直される可能性があり、その結果、増加又は減少する可能性があります。また、生産分与契約に基づく埋蔵量は、同契約の経済的持分から計算される数量が生産量だけでなく、油・ガス価格、投下資本、契約条件に基づく投下資本の回収額及び報酬額等により変動する可能性があり、その結果、埋蔵量も増加又は減少する可能性があります。また、当社グループの想定を上回るスピードでネットゼロへの移行が進んだ場合には、埋蔵量が減少する可能性があります。このように埋蔵量の評価値は、各種データ、前提、定義の変更、ネットゼロへの移行等により変動する可能性があります。
(6)オペレーターシップ
石油・天然ガス開発事業においては、リスク及び資金負担の分散を目的として、複数の企業がパートナーシップを組成して事業を行う場合が多く見られます。実際の作業は、そのうちの1社がオペレーターとなり、パートナーを代表して操業の責任を負います。オペレーター以外の企業は、ノンオペレーターとしてオペレーターが立案・実施する探鉱開発計画や作業を吟味し、あるいは一部操業に参加しつつ、所定の資金提供を行うことで事業に参画します。
当社グループは、経営資源の有効活用やノンオペレーターのプロジェクトとのバランスに配慮しつつ、探鉱、開発、生産それぞれの段階での豊富な操業経験をもとに蓄積したノウハウ及び技術力をもとに、イクシス等の大型LNGプロジェクトを中心として積極的にオペレータープロジェクトを推進していく方針であります。当社は国内外で原油、天然ガスの開発、生産プロジェクトにおいてオペレーターとしての経験を有しているほか、豪州やインドネシアなどにおけるLNGプロジェクトなどに参加し長年ノウハウ、知見等を蓄積してきており、また、メジャーを含めた他の外国の石油会社が行っているのと同様、専門のサブコントラクターや経験豊富な外部コンサルタントを起用することなどにより、LNGプロジェクトを含めたオペレータープロジェクトを的確に遂行することが可能と考えております。
オペレーターとしてのプロジェクト推進は、技術力の向上や、産油国・業界におけるプレゼンスの向上等を通じて鉱区権益取得機会の拡大に寄与することになる一方で、オペレーションに関する各種専門能力を有する人材確保上の制約、資金面での負担増大等のリスクが存在しており、これらのリスクに的確に対応できない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)共同事業
石油・天然ガス開発事業では、前述のとおり、リスク及び資金負担の分散を目的として数社以上の企業が共同事業を行う場合も多くなっており、この場合、共同事業遂行のための意思決定手続やパートナーを代表して操業を行うオペレーター等を取り決めるために、共同操業協定をパートナー間で締結するのが一般的になっております。ある鉱区において当社グループが共同事業を行っているパートナーとの関係が良好であっても、他の鉱区権益の取得においては競争相手となり得る可能性があります。
また、共同事業の参加者は原則として、その保有権益の比率に応じて共同事業遂行のための資金負担をしますが、一部パートナーが資金負担に応じられない場合などには、プロジェクトの遂行に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)石油・天然ガス開発事業には巨額の資金が必要となり資金回収までの期間も長いこと
探鉱活動には相応の費用と期間とが必要であり、探鉱により有望な資源を発見した場合でも、生産に至るまでの開発段階においては、生産施設の建設費用等の多額の費用と長期に亘る期間が必要となります。このため、探鉱及び開発投資から生産及び販売による資金の回収までには10年以上の長い期間を要することになります。中でも、大型LNGプロジェクトの開発には巨額な投資が必要であり、経済金融情勢の変化によっては資金調達の内容に影響を及ぼす可能性があります。資源の発見後、生産及び販売開始までの開発過程において、政府の許認可の取得の遅延又はその変更、予測しえなかった地質等に関する問題の発生、油・ガス価及び外国為替レートの変動並びにその他資機材の市況の高騰などを含めた経済社会環境の変化や、LNGプロジェクトにおいて生産物購入候補者からの長期販売契約に関する合意が得られないことにより最終投資判断ができない等の要因により、開発スケジュールの遅延や当該鉱区の経済性が損なわれる等の事象が生じた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)将来の廃鉱に関するリスク
石油・天然ガス生産施設等について、産油国政府との石油契約や現地法令等に基づき、当社グループは、当該施設等の将来の操業・生産終了後に必要となる廃鉱作業に関連して発生する費用の現在価値の見積り額を、資産除去債務として計上しております。その後、廃鉱の作業方法の変更や掘削資機材の調達費用の高騰その他の理由により、当該見積り額が不足していることが判明した場合においては、当社グループの資産除去債務額の積み増しが必要となり、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2 原油価格(油価)、天然ガス価格、外国為替、及び金利の変動が業績に与える影響について
(1)油価、天然ガス価格の変動が業績に与える影響
油価並びに海外事業における天然ガス価格の大部分は国際市況により決定され、また、その価格は国際的又は地域的な需給(ネットゼロの進展による需要の下押し圧力の強まりを含みます。)、世界経済(感染症等の世界的な流行・拡大による経済活動の縮小の影響を含みます。)及び金融市場の状況、さらには、産油国政府の方針や産油国間における生産量等に関する合意の動向を含む多様な要素の影響も受け著しく変動します。かかる事象は当社により管理可能な性質のものではなく、将来の油価、天然ガス価格の変動を正確に予測することはできません。当社グループの売上・利益は、かかる価格変動の影響を大きく受けます。油価が1バレル当たり1米ドル変動すると、2026年12月期の損益は年間55億円増減することになると期初時点では試算されます。その影響は大変複雑で、その要因としては以下の点が挙げられます。
① 海外事業における大部分の天然ガスの販売価格は、油価に連動していますが正比例していません。
② 売上・利益は売上計上時の油価・天然ガス価格を基に決定されているため、実際の取引価格と期中の平均油価は必ずしも一致しません。
なお、当社は一部油価変動リスクを減じる手段を講じる場合がありますが、かかる手段は当社の油価変動リスクを全てカバーするものではなく、油価変動が与える影響を完全に取り除くものではありません。
国内における天然ガス事業は、国産天然ガス及び輸入LNGを原料としており、LNG市場価格の変動が原料価格及び販売価格に対して影響を及ぼします。また、電力・ガスシステム改革に伴う競争環境の変化が、天然ガス販売価格や天然ガス販売量に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループが保有する事業資産は、今後市況の変動等に基づく事業環境の変化等に伴い、その収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、その回収可能性の程度を反映させるように事業資産の帳簿価額を減額し、その減少額を減損損失とすることとなるため、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)外国為替の変動が与える業績への影響
当社グループの事業の多くは海外における探鉱開発事業であり、これに伴う収入(売上)・支出(原価)は外貨建て(主に米ドル)となっており、損益は外国為替相場の影響を受けます。円高時には、円ベースでの売上・利益が減少し、逆に円安時には、円ベースでの売上・利益が増加します。
米ドル・円の為替レートが1円変動すると、外貨建て売上及び原価等の増減により、2026年12月期の損益は年間30億円増減することになると試算されます。なお、当社は一部為替リスクを減じる手段を講じる場合がありますが、かかる手段は当社の為替リスクを全てカバーするものではなく、外国為替の変動が与える影響を完全に取り除くものではありません。
(3)金利の変動が与える業績への影響
当社グループでは事業資金の一部を借入金で賄っており、このうち大部分が米ドル建て変動金利ベースの長期借入です。従って、当社の利益は米ドル金利変動の影響を受けます。なお、当社は、一部金利リスクを減じる手段を講じておりますが、かかる手段は当社の金利変動リスクを全てカバーするものではなく、金利の変動が与える影響を完全に取り除くものではありません。
3 気候変動に関するリスクについて
パリ協定目標の達成に向けて、世界的な気候変動への対応に関心が高まるなか、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが世界的に進められています。当社グループでは、TCFD提言に沿って気候変動に関するリスクを特定、評価、管理しています。詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動対応 ②戦略 (b)リスク及び機会」に記載しております。
4 海外における事業活動とカントリーリスクについて
当社グループは、日本国外において多数の石油・天然ガス開発事業を遂行しております。鉱区権益の取得を含む当社グループの事業活動は、産油国政府等との間の諸契約に基づき行われていることから、産油国における自国の資源の管理強化の動きや紛争等による操業停止など、当該産油国やその周辺国等における、政治・経済・社会等の情勢(国際紛争、政府の関与、経済発展の段階、経済成長率、資本の再投下、資源の配分、国際社会による経済活動の規制、外国為替及び外国送金の政府統制、国際収支の状況を含みます。)の変化や、OPEC+加盟国における生産制限の適用、当該各国の法制度及び税制の変動(法令・規則の制定、改廃及びその解釈運用の変更を含みます。)、訴訟等により、当社グループの事業や業績は、保険で損失補填される場合を除き大きな影響を受ける可能性があります。
また、産油国政府は、開発コストの増加などの事業環境の変化、事業の遂行状況、環境への対応などを理由として、鉱区にかかわる石油契約の条件の変更などを含めた経済条件の変更などを求める可能性があり、仮にかかる事態が生じ、経済条件の変更などが行われた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
上記の1.~4.の各種リスクに対応するため、個別のプロジェクトにおける対応として、経済性評価及びリスク評価に係るガイドラインを導入し、主要リスクを認識しております。
石油・天然ガス上流事業における新規プロジェクトの取得に際しては、経営企画本部により一元的に採否の分析・検討を行うとともに、関係部署と連携の上でリスク対応を行っています。既存プロジェクトについても、探鉱、評価、開発等の各フェーズにおける技術的な評価等を組織横断的に行うための仕組みとして「INPEX Value Assurance System(IVAS)審査会」を運営するとともに、原則最低年1回は経済性評価とリスク評価を実施し、そのうち、主要プロジェクトについては毎年取締役会にリスク評価結果の概要を報告しております。
再生可能エネルギー事業や水素・CCUS事業に関しては、再生可能エネルギー・電力ソリューション事業本部及び低炭素ソリューション事業本部がそれぞれ担当する事業の総合調整をしており、経済性評価及びリスク評価・対応を実施しています。新規プロジェクトの取得に際しては、INPEX Value Assurance System(IVAS)審査会や外部専門家の検証を実施するとともに、重要なプロジェクトについてはリスク評価結果の概要を取締役会にて報告しております。
当社事業全般に係るリスク対応として、大規模な事故や災害等による緊急事態に対応できる能力を高めるため、緊急時・危機対応計画書を策定・維持するとともに、平時より緊急時対応訓練を定期的に実施する等、積極的にリスク管理に努めております。また、重要な業務を停止させないために事業継続計画(BCP)を策定し、適宜見直しを行っております。加えて、緊急事態レベルに応じた緊急時対応体制を整備しています。最も危機レベルの高い緊急事態が発生した場合においては、代表取締役社長を危機管理統括責任者とするコーポレート危機対策本部を設置し、当社全体で情報共有体制を確立し、全社的な対応策を定め実行します。
また、情報セキュリティ委員会を定期的及び随時に開催し、組織的・体系的な情報セキュリティ対策を講じるとともに、情報漏えい防止を含む教育・訓練を実施しております。
HSE(健康・安全・環境)リスクに関しては、当社の事業活動における安全衛生、プロセスセーフティ、環境保全の継続的改善を推進するため、HSEマネジメントシステムで定めるHSEリスク管理要領に基づき、事業所毎にHSEリスクの特定、分析・評価を行っています。また、リスク対応策を策定、実行するとともに、HSEリスクを監視するため、リスク管理状況を定期的に本社に報告させ、本社ではこれを確認しております。さらに、セキュリティに関するリスク等についても、関連する要領や指針をもとに全社的な管理に取り組んでおります。さらにノンオペレータープロジェクトのHSE管理についても、各プロジェクトのリスクに応じたHSE関与を推進しております。セーフティリスクに関しては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)セーフティ ②戦略 (b)リスク及び機会」に記載しております。
原油・天然ガス価格、為替、金利、及び有価証券価格に関しては、各変動リスクを特定し、それらの管理・ヘッジ方法を定めることで財務リスク管理を行っております。
気候変動対応に関しては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動対応 ②戦略 (b)リスク及び機会」に記載しております。
カントリーリスクに関しては、事業を行う国や地域のカントリーリスク管理に係るガイドラインを制定し、リスクの高い国には累積投資残高の限度額を設定する等の管理を行っております。
このほか、リーガルリスクについては、リーガルユニットを独立した組織とすることで、重要な契約や訴訟等について、事業部門及び経営陣へ適切に法的助言ができる体制を整備し、また国内外の事業への法務サポート機能を充実させております。
これらのリスク対応を講じることで、リスクの管理及び影響の低減に努めているものの、全てのリスク対象をカバーするものではなく、また、個々の事象において影響を完全に取り除くものではありません。
Ⅱ.事業等のその他のリスク
1 生産分与契約について
当社グループはインドネシア、カスピ海周辺地域などにおいて生産分与契約による鉱区権益を多数保有しております。
生産分与契約は、1社又は複数の会社がコントラクターとして、産油国政府や国営石油会社から探鉱・開発のための作業を自身のコスト負担で請負い、コストの回収分及び報酬を生産物で受け取ることを内容とする契約です。すなわち、探鉱・開発作業の結果、石油・天然ガスの生産に至った場合、コントラクターは負担した探鉱・開発コストを生産物の一部より回収し、さらに残余の生産物(原油・ガス)については、一定の配分比率に応じて産油国又は国営石油会社とコントラクターの間で配分します(このコスト回収後の生産物のコントラクターの取り分を「利益原油・ガス」と呼びます)。これに対して、探鉱作業の失敗や生産量の減少等により期待した生産を実現することができない場合には、コントラクターは投下した資金の全部又は一部を回収できないこととなります。
2 国との関係について
(1)当社と国との関係
本書提出日現在、当社の発行済普通株式(自己株式を除く)の約23.74%及び甲種類株式は経済産業大臣が保有しておりますが、当社の経営判断は民間企業として自主的に行っており、国との間で役員派遣等による支配関係もありません。また、今後もそのような関係が生じることはないものと考えております。さらに国との間での当社の役員の兼任及び国の職員の当社への出向もありません。
(2)経済産業大臣による当社株式の所有、売却
経済産業大臣は、現在当社の発行済普通株式数(自己株式を除く)の約23.74%の株式を保有しております。同株式は2005年4月1日付で解散した石油公団が保有していたものを、同公団の解散に伴い経済産業大臣が承継したものであります。2005年4月1日付で解散した石油公団が保有していた石油資源開発関連資産の整理・処分については、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の石油分科会開発部会「石油公団資産評価・整理検討小委員会」により、「石油公団が保有する開発関連資産の処理に関する方針」(以下「答申」という。)が2003年3月18日に発表されております。答申においては企業価値の成長を念頭に置きながら、適切なタイミングで市場を通じて株式を売却することが肝要とされております。また、2011年12月2日に施行された「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」(以下「復興財源確保法」という。)の附則第13条第1項第2号の規定においては、エネルギー政策の観点を踏まえつつ、その保有の在り方を見直すことによる処分の可能性について検討するとされております。このため、今後経済産業大臣は国内外で当社株式を売却する可能性があり、そのことが当社の株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。
また、経済産業大臣は当社甲種類株式1株を保有しておりますが、甲種類株主である経済産業大臣は、当社普通株主総会又は取締役会決議事項の一部について拒否権を有しております。甲種類株式に関する詳細については後記「4 甲種類株式について」に記載しております。
3 政府及び独立行政法人が保有する当社グループのプロジェクト会社の株式の取扱いについて
(1)石油公団が保有していた当社グループのプロジェクト会社の株式の取扱い
前述の答申において、国際石油開発(2008年10月1日付で当社が同社を吸収合併。以下同じ。)は中核的企業を構成すべきものと位置づけられ、ナショナル・フラッグ・カンパニーとして我が国のエネルギー安定供給の効率的な確保という政策目標の実現の一翼を担うことが期待されていることから、同社(及び2008年10月1日付で当社が国際石油開発を吸収合併して以降においては当社)ではこれを受け、政府による積極的な資源外交との相乗効果を生かし、我が国のエネルギー安定供給の効率的な確保という政策目標の実現を図るとともに、透明性・効率性の高い事業運営の推進により、株主価値の最大化を目指すこととしてまいりました。
その結果、答申において提言された石油公団保有株式の譲受け等による統合に関して、2004年2月5日付で「石油公団保有資産の国際石油開発株式会社への統合に関する基本合意書」(以下「統合基本合意書」という。)及び統合基本合意書に附属する覚書(以下「覚書」という。)を締結し、2004年3月29日付で、国際石油開発と石油公団は統合の対象となる会社、統合比率等に関する詳細について合意に達し、「石油公団保有資産の国際石油開発株式会社への統合に関する基本契約」ほか関連契約を締結しました。
統合基本合意書において国際石油開発への統合対象となった4つの会社のうち、ジャパン石油開発、インペックスジャワ株式会社(2010年9月30日に売却完了)及びインペックスエービーケー石油株式会社の3社については2004年に統合を完了しました。インペックス南西カスピ海石油株式会社(現株式会社INPEX南西カスピ海石油)については、株式交換により国際石油開発の完全子会社とすべく手続を進めましたが、株式交換契約の条件が成就しなかったため同契約は失効し、予定していた株式交換が取り止めとなり、その後、2005年4月1日付の石油公団の解散に伴い、同社の石油公団保有株式は、経済産業大臣に承継されております。経済産業大臣が保有する当該株式について、一般競争入札を経て、当社が取得することについて合意し、2026年2月に株式売買契約を締結しました。
2004年2月5日付の覚書においては、サハリン石油ガス開発株式会社(以下「サハリン石油ガス開発」という。)、インペックスマセラアラフラ海石油株式会社(現株式会社INPEXマセラ)、インペックス北カスピ海石油株式会社(現株式会社INPEX北カスピ海石油)、インペックス北マカッサル石油株式会社(2008年12月19日に清算結了)、インペックス北カンポス沖石油株式会社(当社含む民間株主が同社の全株式を取得したうえで、2019年10月に第三者に対して売却済み)についての取扱いが国際石油開発と石油公団の間で合意されております。サハリン石油ガス開発の株式の取扱いについては、後記「(2)政府が保有するサハリン石油ガス開発の株式の取扱いについて」に記載しております。サハリン石油ガス開発以外の上記各社の石油公団保有株式の国際石油開発への譲渡については、産油国や共同事業者の同意が得られること、適切な資産評価が可能となること等の前提条件が整い次第、現金を対価として譲渡することとなっておりましたが、2005年4月1日付の石油公団の解散に伴い、上記各社の石油公団保有株式は、経済産業大臣に承継されたインペックス北マカッサル石油株式会社に係る株式を除き、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下「資源機構」という。)に承継されております。資源機構は、同機構の中期目標、中期計画において、石油公団から承継した株式については、適切な時期に適切な方法を選択して処分することとしていますが、上記各社の資源機構保有株式のうち、当社による株式の取得が実現していないものについては、譲渡の時期、方法は未定となっており、今後、当社によるそれらの株式の取得が実現しない可能性もあります。
(2)政府が保有するサハリン石油ガス開発の株式の取扱い
経済産業大臣はサハリン石油ガス開発の普通株式の50%を保有しています。サハリン石油ガス開発は、サハリン島北東沖大陸棚における石油及び天然ガス探鉱開発事業を遂行するために1995年に設立された会社であり、当社は同社発行済み普通株式の約6.08%を保有しています。
なお、今後の本事業の在り方については、現下の国際情勢、政府等の動向を踏まえつつ、当社としても適切に対応してまいります。
4 甲種類株式について
(1)種類株式の概要
① 導入の経緯
当社は、国際石油開発と帝国石油の株式移転による経営統合により、2006年4月3日付で持株会社として設立されておりますが、これに伴い、国際石油開発が発行し、経済産業大臣が保有していた種類株式が当社に移転され、同時に当社が同等の内容の当社種類株式(以下「甲種類株式」という。)を経済産業大臣に対し交付しております。もともと、国際石油開発において発行された種類株式は、前記「3 政府及び独立行政法人が保有する当社グループのプロジェクト会社の株式の取扱いについて」において記述した答申において、国際石油開発が中核的企業を構成すべきものと位置づけられ、ナショナル・フラッグ・カンパニーとして我が国向けエネルギーの安定供給の効率的実現の一翼を担うことが期待され、かかる観点から、同答申を受け、投機的な買収や外資による経営支配等により、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われること又は否定的な影響が及ぶことがないよう、同社の役割を確保しつつ、経営の効率性・柔軟性を不当に阻害しないよう透明性を高くし、またその影響が必要最小限にとどまるよう設計され発行されたものです。
② 株主総会議決権、剰余金の配当、残余財産分配、償還
法令に別段の定めがある場合を除き、甲種類株式は当社株主総会において議決権を有しません。剰余金の配当及び残余財産の分配については2013年10月1日を効力発生日として普通株式1株につき400株の割合で株式分割を行っておりますが、甲種類株式(非上場)につきましては、株式分割を実施していないため、当該株式分割前の普通株式と同等になるよう、定款で定めております。甲種類株式は、当該甲種類株主から請求があった場合、又は甲種類株式が国若しくは国が全額出資する独立行政法人以外の者に譲渡された場合には当社取締役会の決議により償還されます。
③ 定款上の拒否権
当社経営上の一定の重要事項(取締役の選解任、重要な資産の処分、定款変更、統合、資本の減少及び解散)の決定については、当社株主総会又は取締役会の決議に加え、甲種類株主総会の承認決議を要する旨、当社定款に定められています。従って、甲種類株式を保有する経済産業大臣は、甲種類株主としてこれら一定の重要事項につき拒否権を有することとなります。甲種類株主の拒否権が行使可能な場合については、後記「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (1)株式の総数等 ②発行済株式の注記2」をご参照下さい。
④ 甲種類株式の議決権行使の基準に定める拒否権の行使の基準
かかる拒否権の行使については令和4年経済産業省告示第54号(以下「告示」という。)において基準が設けられており、以下の一定の場合にのみ拒否権を行使するものとされています。
・取締役の選解任及び統合に係る決議については、それらが否決されない場合、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われていく蓋然性が高いと判断される場合。
・重要な資産の全部又は一部の処分等に係る決議については、対象となっている処分等が、石油及び可燃性天然ガスの探鉱及び採取する権利その他これに類する権利、あるいは、当該権利を主たる資産とする当社子会社の株式・持分の処分等に係るものである場合であって、それが否決されない場合、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に否定的な影響が及ぶ蓋然性が高いと判断される場合。
・当社の目的の変更に関する定款変更、資本金の額の減少及び解散については、それらが否決されない場合、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に否定的な影響が及ぶ蓋然性が高いと判断される場合。
・当社普通株式以外の株式への議決権の付与に関する定款変更については、それが否決されない場合、甲種類株式の議決権行使に影響を与える可能性のある場合。
なお、上記の基準については、エネルギー政策の観点から告示を変更する場合についてはこの限りではないことが規定されております。
(2)甲種類株式のリスク
甲種類株式は、投機的な買収や外資による経営支配等により、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われること又は否定的な影響が及ぶことがないよう、当社の役割を確保しつつ、経営の効率性・柔軟性を不当に阻害しないよう透明性を高くし、またその影響が必要最小限にとどまるよう設計され発行されたものでありますが、甲種類株式に関連して想定されるリスクには、以下のものが含まれます。
① 国策上の観点と当社及び一般株主の利益相反の可能性
経済産業大臣は告示に規定された上記の基準に基づき拒否権を行使するものと予想されますが、当該基準は、我が国向けエネルギー安定供給の効率的実現の観点から設けられているため、経済産業大臣による拒否権の行使が当社又は当社の普通株式を保有する他の株主の利益と相反する可能性があります。また、エネルギー政策の観点から当該基準が変更される可能性があります。
② 拒否権の行使が普通株式の価格に与える影響
甲種類株式は、上記に述べたように当社の経営上重要な事項の決定について拒否権を持つものであるため、特に、実際にある事項について拒否権が発動された場合には、当社普通株式の市場価格に影響を与える可能性があります。
③ 当社の経営の自由度や経営判断への影響
前述のような拒否権を持つ甲種類株式を経済産業大臣が保有していることにより、当社は、上記各事項については甲種類株主総会の決議を要することとなるため、当社は経済産業大臣の判断によってはその経営の自由度を制約されることになります。また、上記各事項につき甲種類株主総会の決議を要することに伴い、甲種類株主総会の招集、開催及び決議等の各手続に、また必要に応じて異議申立の処理に一定期間を要することとなります。
5 兼任社外取締役について
当社は、2026年3月27日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として、「取締役10名選任の件」を提案しており、当該議案が承認可決されますと、取締役全10名中5名が独立社外取締役となる予定です。
社外取締役5名のうち2名は、当社の事業分野に関して長年の経験、知見を有する経営者経験者等であり、当社としては、専門的、客観的立場から当社の事業運営に意見を述べ、当社事業の発展に寄与することを期して、取締役を委嘱しております。なお、かかる取締役のうち1名は、三菱商事株式会社の顧問を兼任しております。
一方、三菱商事株式会社は当社グループの事業と同一分野の事業を行っている企業であることから、競業その他利益相反の可能性があり、コーポレート・ガバナンス上の特段の留意が必要であると認識しております。
このため、当社では、当社取締役が会社法上の競業避止義務、利益相反取引への適切な対処や情報漏えい防止等に関して、常に高い意識をもって経営にあたり、当社取締役としての職務を的確に遂行していくことの重要性に鑑み、上記1名の社外取締役を含む全取締役から、これらの点を確認する「誓約書」を受理しております。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況の概要及び分析
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(単位:百万円) |
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前期 |
当期 |
増減 |
増減率(%) |
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売上収益 |
2,265,837 |
2,011,351 |
△254,485 |
△11.2 |
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(うち、原油売上収益) |
1,712,064 |
1,530,291 |
△181,772 |
△10.6 |
|
(うち、天然ガス売上収益) |
525,180 |
448,053 |
△77,126 |
△14.7 |
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営業利益 |
1,271,789 |
1,135,440 |
△136,349 |
△10.7 |
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税引前利益 |
1,298,811 |
1,173,473 |
△125,338 |
△9.7 |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
427,344 |
393,836 |
△33,507 |
△7.8 |
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前期 |
当期 |
増減 |
増減率(%) |
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原油販売量(千bbl) |
138,978 |
144,673 |
5,696 |
4.1 |
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売上平均油価(米ドル/bbl) |
81.20 |
70.69 |
△10.51 |
△12.9 |
|
天然ガス販売量(百万cf) |
473,667 |
446,818 |
△26,849 |
△5.7 |
|
海外ガス販売量(百万cf) |
381,706 |
366,659 |
△15,048 |
△3.9 |
|
海外ガス単価(米ドル/千cf) |
5.73 |
5.10 |
△0.63 |
△11.0 |
|
国内ガス販売量(百万㎥) |
2,464 |
2,148 |
△316 |
△12.8 |
|
国内ガス売上平均単価(円/㎥) |
78.24 |
78.61 |
0.37 |
0.5 |
|
売上平均為替レート(円/米ドル) |
151.73 |
149.60 |
△2.13 |
△1.4 |
当期における我が国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果を背景に緩やかな回復基調にありますが、米国の通商政策の影響や、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響、国際紛争等による景気の下振れリスクには留意する必要があります。加えて、金融資本市場の変動等の影響は引き続き懸念されています。
当社グループの業績に大きな影響を及ぼす国際原油価格は、代表的指標の一つであるブレント原油(期近物終値ベース)で当期は1バレル当たり70米ドル台半ばから始まり、米国によるイランやロシアへの制裁による供給懸念から一時的に上昇する場面も見られましたが、米中の関税をめぐる対立等、相互関税による経済停滞懸念や、OPEC+による自主減産の段階的な緩和により、年間を通して下落傾向が見られ、期末には60.85米ドルとなりました。これらを反映して、当期における当社グループの原油の平均販売価格は、前期に比べ、1バレル当たり10.51米ドル下落し、70.69米ドルとなりました。
一方、業績に重要な影響を与えるもう一つの要因である為替相場ですが、当連結会計年度は1米ドル157円台で始まりました。年前半は、日米金利差の拡大を背景に、1月初旬に一時158円台まで円安が進行しましたが、米国の関税政策に伴う世界的な景気後退懸念が強まり、4月には141円台前半まで円高が進みました。その後は、米中の関税引き下げ合意を受けて反発しつつ、日銀の追加利上げ見送りやFRBの利下げ観測を背景に円安方向へ転じ、144円台で上半期を終えました。年後半は、日本の参院選後の政権交代を受け積極財政・金融緩和志向が意識され、一貫して円安基調で推移し、11月にはFRBの利下げ観測後退も相まって、157円台をつけました。年末にかけては、米国の雇用・物価指標の弱さに加え、日銀による早期利上げ観測の強まりから、一時円安がやや後退する場面もありましたが、積極財政による日本の財政健全性への懸念や、旅行収支頭打ち・デジタル赤字といった構造的な円需給の弱さ等を背景に、円安圧力はなお残り、期末公示仲値(TTM)は、前期末から1円63銭円高の156円54銭となりました。なお、当社グループ売上の期中平均レートは、前期に比べ、2円13銭円高の1米ドル149円60銭となりました。
このような事業環境の中、当社グループの当期連結業績につきましては、原油の販売価格の下落により、売上収益は前期比2,544億円、11.2%減の2兆113億円となりました。このうち、原油売上収益は前期比1,817億円、10.6%減の1兆5,302億円、天然ガス売上収益は前期比771億円、14.7%減の4,480億円となりました。当連結会計年度の販売数量は、原油が前期比5,696千バレル、4.1%増の144,673千バレルとなり、天然ガスは前期比26,849百万立方フィート、5.7%減の446,818百万立方フィートとなりました。このうち、海外天然ガスは、前期比15,048百万立方フィート、3.9%減の366,659百万立方フィート、国内天然ガスは、前期比316百万立方メートル、12.8%減の2,148百万立方メートル、立方フィート換算では80,159百万立方フィートとなりました。販売価格は、海外原油売上の平均価格が1バレル当たり70.69米ドルとなり、前期比10.51米ドル、12.9%下落、海外天然ガス売上の平均価格は千立方フィート当たり5.10米ドルとなり、前期比0.63米ドル、11.0%下落、また、国内天然ガスの平均価格は立方メートル当たり78円61銭となり、前期比0円37銭、0.5%上昇しております。売上収益の平均為替レートは1米ドル149円60銭となり、前期比2円13銭、1.4%の円高となりました。
売上収益の減少額2,544億円を要因別に分析しますと、販売数量の増加により365億円の増収、平均単価の下落により2,693億円の減収、売上の平均為替レートが円高となったことにより260億円の減収、その他の売上収益が44億円の増収となりました。
一方、売上原価は前期比507億円、5.5%減の8,645億円、探鉱費は前期比366億円、68.6%減の167億円、販売費及び一般管理費は前期比164億円、12.3%減の1,180億円、その他の営業収益は前期比482億円、134.7%増の841億円、その他の営業費用は前期比12億円、4.1%増の328億円、持分法による投資利益は前期比327億円、31.2%減の720億円となりました。以上の結果、営業利益は前期比1,363億円、10.7%減の1兆1,354億円となりました。なお、当連結会計年度のその他の営業収益には、イクシスLNGプロジェクトを構成するINPEX Holdings Australia Pty Ltdの資本金を一部有償減資したことに伴い、在外営業活動体の換算差額の累計額を資本から純損益に振り替えた影響347億円を含んでおります。
金融収益は前期比292億円、19.6%減の1,201億円、金融費用は前期比403億円、32.9%減の821億円となりました。以上の結果、税引前利益は前期比1,253億円、9.7%減の1兆1,734億円となりました。
法人所得税費用は前期比1,207億円、14.0%減の7,438億円、非支配持分に帰属する当期利益は前期比289億円、419.3%増の358億円となりました。以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比335億円、7.8%減の3,938億円となりました。
セグメント別の経営成績は以下のとおりであります。
① 国内石油・天然ガス事業(国内O&G)
販売数量の減少により、売上収益は前期比247億円、11.4%減の1,921億円となりましたが、売上原価の減少等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比87億円、64.3%増の224億円となりました。
② 海外石油・天然ガス事業(海外O&G)- イクシスプロジェクト
販売価格の下落により、売上収益は前期比581億円、15.6%減の3,150億円となりましたが、探鉱費の減少等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比225億円、9.1%増の2,708億円となりました。
③ 海外石油・天然ガス事業(海外O&G)- その他のプロジェクト
販売価格の下落により、売上収益は前期比1,709億円、10.3%減の1兆4,869億円となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比339億円、20.5%減の1,317億円となりました。
(2)財政状態の状況の概要及び分析
当連結会計年度末における資産合計は前連結会計年度末比3,543億円増の7兆7,351億円となりました。このうち、流動資産はその他の金融資産の増加等により、前連結会計年度末比2,388億円増の1兆1,090億円、非流動資産は持分法で会計処理されている投資の増加等により、前連結会計年度末比1,154億円増の6兆6,261億円となりました。
一方、負債合計は前連結会計年度末比4,692億円増の2兆7,122億円となりました。このうち、流動負債は前連結会計年度末比3,060億円増の8,396億円、非流動負債は前連結会計年度末比1,632億円増の1兆8,726億円となりました。
資本合計は前連結会計年度末比1,149億円減の5兆229億円となりました。このうち、親会社の所有者に帰属する持分は前連結会計年度末比746億円減の4兆7,471億円、非支配持分は前連結会計年度末比402億円減の2,757億円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況の概要及び分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フローの状況の概要及び分析
当社グループの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末の2,416億円から当連結会計年度中に減少した資金855億円を除き、換算差額123億円を加えた結果、当連結会計年度末において1,684億円となりました。
当連結会計年度における営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フローの状況及びそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益の減少等があったものの、営業債権及びその他の債権の減少や法人所得税の支払額の減少等により、営業活動の結果得られた資金は前期比391億円増の6,938億円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資の取得による支出の増加や定期預金の払戻による収入の減少等により、投資活動の結果使用した資金は前期比3,783億円増の6,687億円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
非支配持分への配当金の支払額の増加等があったものの、コマーシャル・ペーパーの純増加額の増加や短期借入金の増加等により、財務活動の結果使用した資金は前期比2,392億円減の1,107億円となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
石油・天然ガス・再生可能エネルギー等のプロジェクト取得、探鉱・開発活動及び天然ガス供給インフラ施設等の建設においては多額の資金を必要とするため、内部留保による手許資金のほかに、外部からも資金を調達しております。探鉱資金については手許資金及び外部からの出資により、また、プロジェクト取得、開発資金及び天然ガス供給インフラ施設等の建設資金については手許資金、銀行借入及び社債発行により調達することを基本方針としております。現在、プロジェクト取得及び開発資金については株式会社国際協力銀行及び市中銀行等から融資を受けており、これら融資に関しては、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の保証制度を適宜活用しております。また、国内の天然ガス供給インフラ施設等の建設資金借入については、株式会社日本政策投資銀行及び市中銀行からの融資を受けているほか、再生可能エネルギープロジェクト等の取得及び開発資金については、プロジェクトファイナンスやグリーンファイナンスでの調達も実施しております。なお、イクシスLNGプロジェクトでは、共同支配企業であるイクシス下流事業会社(Ichthys LNG Pty Ltd)を借入人として、国内外の輸出信用機関及び市中銀行からプロジェクトファイナンスの借入等を行っております。
当連結会計年度は、当社中期経営計画に沿って適切なレバレッジコントロールに努めております。このほか、探鉱投資・開発投資等に向けて、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の出資を受けております。
資金の流動性については、短期の運転資金のほかに油価の急な下落等に備え、一定の手許資金を保有することを基本方針としており、また複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結し、資金調達枠を確保しております。
③ 資金の配分方法
資金の配分方法については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性のある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
(5)生産、受注及び販売の状況
① 生産実績
セグメントごとの生産実績は以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
区分 |
当連結会計年度 (自 2025年1月1日 至 2025年12月31日) |
前年同期比 (%) |
|
|
国内O&G |
原油 |
763千バレル |
△5.0 |
|
|
(日量2千バレル) |
||||
|
天然ガス |
27,904百万CF |
△7.3 |
||
|
(日量76百万CF) |
||||
|
小計 |
5,847千BOE |
△7.0 |
||
|
(日量16千BOE) |
||||
|
ヨウ素 |
599t |
7.2 |
||
|
発電 |
69百万kWh |
△63.5 |
||
|
海外O&G |
イクシス プロジェクト |
原油 |
12,049千バレル |
1.8 |
|
(日量33千バレル) |
||||
|
天然ガス |
337,122百万CF |
△2.1 |
||
|
(日量924百万CF) |
||||
|
小計 |
77,193千BOE |
△1.1 |
||
|
(日量211千BOE) |
||||
|
その他の プロジェクト |
原油 |
132,320千バレル |
3.5 |
|
|
(日量363千バレル) |
||||
|
天然ガス |
95,396百万CF |
△5.7 |
||
|
(日量261百万CF) |
||||
|
小計 |
149,880千BOE |
2.3 |
||
|
(日量411千BOE) |
||||
|
硫黄 |
149千t |
△6.7 |
||
|
その他 |
発電 |
2,424百万kWh |
16.4 |
|
|
合計 |
原油 |
145,132千バレル |
3.3 |
|
|
(日量398千バレル) |
||||
|
天然ガス |
460,422百万CF |
△3.2 |
||
|
(日量1,261百万CF) |
||||
|
小計 |
232,920千BOE |
0.9 |
||
|
(日量638千BOE) |
||||
|
ヨウ素 |
599t |
7.2 |
||
|
硫黄 |
149千t |
△6.7 |
||
|
発電 |
2,493百万kWh |
9.7 |
||
(注)1 海外で生産されたLPGは原油に含みます。
2 原油及び天然ガス生産量の一部は、発電燃料として使用しております。
3 上記の生産量は関連会社等の持分を含みます。
4 当社グループが締結している生産分与契約にかかる当社グループの原油及び天然ガスの生産量は、正味経済的取分に相当する数値を示しております。なお、当社グループの権益比率ベースの生産量は、原油151,993千バレル(日量416千バレル)、天然ガス470,551百万CF(日量1,289百万CF)、合計241,746千BOE(日量662千BOE)となります。
5 BOE(Barrels of Oil Equivalent)原油換算量
6 ヨウ素は、他社への委託精製によるものであります。
7 数量は単位未満を四捨五入しております。
② 受注実績
当社グループの販売実績のうち、受注高が占める割合は僅少であるため受注実績の記載は省略しております。
③ 販売実績
セグメントごとの販売実績は以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
区分 |
当連結会計年度 (自 2025年1月1日 至 2025年12月31日) |
前年同期比 (%) |
|||
|
販売量 |
売上収益 (百万円) |
販売量 |
売上収益 |
|||
|
国内O&G |
原油 |
255千バレル |
2,657 |
△19.5 |
△28.7 |
|
|
天然ガス (LPGを除く) |
80,159百万CF |
168,835 |
△12.8 |
△12.4 |
||
|
その他 |
|
20,683 |
|
1.2 |
||
|
小計 |
|
192,176 |
|
△11.4 |
||
|
海外O&G |
イクシス プロジェクト |
原油 |
11,147千バレル |
118,392 |
△9.7 |
△21.5 |
|
天然ガス (LPGを除く) |
306,630百万CF |
196,676 |
△1.0 |
△11.6 |
||
|
小計 |
|
315,069 |
|
△15.6 |
||
|
その他の プロジェクト |
原油 |
133,271千バレル |
1,399,457 |
5.5 |
△9.4 |
|
|
天然ガス (LPGを除く) |
60,028百万CF |
82,329 |
△16.7 |
△24.9 |
||
|
その他 |
|
5,141 |
|
51.5 |
||
|
小計 |
|
1,486,928 |
|
△10.3 |
||
|
その他 |
原油 |
- |
9,783 |
- |
△22.7 |
|
|
天然ガス (LPGを除く) |
- |
211 |
- |
△25.4 |
||
|
その他 |
|
7,182 |
|
51.1 |
||
|
小計 |
|
17,176 |
|
△3.0 |
||
|
合計 |
原油 |
144,673千バレル |
1,530,291 |
4.1 |
△10.6 |
|
|
天然ガス (LPGを除く) |
446,818百万CF |
448,053 |
△5.7 |
△14.7 |
||
|
その他 |
|
33,006 |
|
15.4 |
||
|
合計 |
|
2,011,351 |
|
△11.2 |
||
(注) 販売量は、単位未満を四捨五入しております。
石油契約等
|
契約会社名 |
相手先 |
契約内容 |
契約期間 |
|
INPEX Ichthys Pty Ltd (子会社) |
オーストラリア連邦政府 ほか |
オーストラリア連邦西オーストラリア州WA-50-L/WA-51-L鉱区における生産ライセンス |
2012年3月1日から |
|
INPEX Oil & Gas Australia Pty Ltd (子会社) |
オーストラリア連邦政府 ほか |
オーストラリア連邦西オーストラリア州WA-44-L鉱区における生産ライセンス |
2011年5月20日から |
|
㈱INPEXアルファ石油(子会社) |
オーストラリア連邦政府 ほか |
オーストラリア連邦西オーストラリア州WA-43-L鉱区における生産ライセンス |
2009年11月18日から |
|
INPEX DLNGPL Pty Ltd (子会社) |
オーストラリア連邦政府 ほか |
オーストラリア連邦のダーウィンLNGプラントの操業ライセンス |
2001年4月27日から |
|
ジャパン石油開発㈱ (子会社) |
アラブ首長国連邦アブダビ首長国政府 ほか |
アラブ首長国連邦アブダビ沖合サター油田及びウムアダルク油田における利権契約 |
2018年3月9日から 2043年3月8日まで |
|
ADNOC(アブダビ国営石油会社) ほか |
アラブ首長国連邦アブダビ沖合上部ザクム油田に係る修正共同開発協定 |
2006年1月1日から 2051年12月31日まで |
|
|
JODCO Exploration Limited (子会社) |
アラブ首長国連邦アブダビ首長国政府 ほか |
アラブ首長国連邦アブダビ陸上鉱 区(Onshore Block4)における利 権契約 |
契約上の守秘義務に 基づき、契約期間は 非開示とさせていた だきます。 |
|
JODCO Onshore Limited (子会社) |
アラブ首長国連邦アブダビ首長国政府 ほか |
アラブ首長国連邦アブダビ陸上鉱区(ADCO鉱区)における利権契約 |
2015年1月1日から 2054年12月31日まで |
|
JODCO Lower Zakum Limited (子会社) |
アラブ首長国連邦アブダビ首長国政府 ほか |
アラブ首長国連邦アブダビ沖合下部ザクム油田における利権契約 |
2018年3月9日から 2058年3月8日まで |
|
㈱INPEXマセラ (子会社) |
インドネシア共和国政府 ほか |
インドネシア共和国マセラ鉱区における生産分与契約 |
1998年11月16日から 2055年11月15日まで |
|
㈱INPEX南マカッサル (子会社) |
インドネシア共和国政府 ほか |
インドネシア共和国南マカッサル海域セブク鉱区における生産分与契約 |
1997年9月22日から 2027年9月21日まで |
|
㈱INPEXコンソン (子会社) |
ベトナム共和国政府 ほか |
ベトナム共和国05-1b/05-1c鉱区における生産分与契約 |
2004年11月18日から 2034年11月17日まで |
|
INPEX Idemitsu Norge AS (子会社) |
ノルウェー王国政府 |
ノルウェー王国PL057/089鉱区等 における生産ライセンス |
2022年1月31日から |
|
㈱INPEX南西カスピ海石油 (子会社) |
ソカール(アゼルバイジャン共和国国営石油会社) ほか |
アゼルバイジャン共和国領カスピ海海域ACG油田における生産分与契約 |
1994年12月12日から 2049年12月31日まで |
|
㈱INPEX北カスピ海石油 (子会社) |
カザフスタン共和国エネルギー鉱物資源省、カズムナイガス(カザフスタン共和国国営石油会社) ほか |
カザフスタン共和国北カスピ海沖合鉱区における生産分与契約 |
1998年4月27日から 2031年12月31日まで (10年延長を1回可能) |
|
INPEX BTC Pipeline, Ltd. (子会社) |
アゼルバイジャン共和国/ジョージア/トルコ共和国 |
各国政府が協力して3カ国を通過するBTCパイプラインプロジェクトの遂行、各国通過を認める契約(IGA) |
2000年6月21日発効 |
|
契約会社名 |
相手先 |
契約内容 |
契約期間 |
|
|
INPEX BTC Pipeline, Ltd. (子会社) |
HGA (注) |
アゼルバイジャン共和国政府及びBTCプロジェクト当事者 |
BTCプロジェクトを遂行する権利付与等契約 |
2000年10月18日から、船積み開始後40年間(10年延長を2回可能) |
|
ジョージア政府及びBTCプロジェクト当事者 |
同上 |
2000年10月19日から、船積み開始後40年間(10年延長を2回可能) |
||
|
トルコ共和国政府及びBTCプロジェクト当事者 |
同上 |
2000年10月20日から、船積み開始後40年間(10年延長を2回可能) |
||
(注) HGA(Host Government Agreement)は、BTCパイプラインが通過する3カ国(アゼルバイジャン共和国、ジョージア及びトルコ共和国)の各国政府とBTCプロジェクト当事者との間で締結された各国政府の合意及び義務を定めた契約であります。
当社グループでは、「INPEX Vision 2035」及び「2025-2027 中期経営計画」を踏まえ、より低炭素なエネルギーの安定的な供給と、持続可能で地球環境に配慮した「責任あるエネルギー・トランジション」を目指し、主要エネルギー供給事業者としての責務を果たすために、事業の基盤となる技術、更には新事業開発の先鋒としての技術の在り方・方向性と将来達成すべき目標を「INPEX技術戦略」にまとめました。また、当社技術研究所に「INPEX Research Hub for Energy Transformation」(略称「I-RHEX(アイレックス)」)を2022年4月に新設したうえで、2024年1月の組織改編で設置したイノベーション本部の下に配置し、ネットゼロ分野の研究開発を進めております。また、2025年4月には、全社における専門技術の集約・向上と技術支援機能の強化を図ることを目的として技術統括本部を設置し、技術的課題の解決に取り組んでおります。当連結会計年度の研究活動費の総額は
(1) 水素・アンモニア
当社は、2050年のネットゼロ社会の実現に向け、低炭素ソリューション事業本部を中心として水素・アンモニア事業に注力しております。
取組みの一つとして、新潟県柏崎市にてブルー水素・アンモニア製造実証試験を進めており、2025年に試運転作業を開始し、2026年内の実証運転開始を目指しております。本実証試験では、天然ガスを原料として年間700トンの水素を製造し、その一部をアンモニア製造に使用、残りを水素発電に使用するとともに、副次的に発生するCO2を既にガス生産を終了した東柏崎ガス田平井地区の貯留層へ圧入するという計画です。なお、本実証試験のうち、水素・アンモニアの製造及びCO2回収については、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(New Energy and Industrial Technology Development Organization、以下「NEDO」という。)で採択された助成事業(※1)として、また、CO2の地中貯留の実施と評価については、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(Japan Organization for Metals and Energy Security、以下「JOGMEC」という。)との共同研究(※2)として実施しております。
また、水素サプライチェーンの重要要素である輸送・貯蔵技術については、イノベーション本部I-RHEXの技術課題の一つとして研究開発しています。
※1 NEDO課題設定型産業技術開発費助成事業「燃料アンモニア利用・生産技術開発/ブルーアンモニア製造に係る技術開発」
※2 「天然ガス利用等における低炭素化を目的とした国内枯渇油ガス田を活用した CO2貯留可能量把握に関する実証試験」
(2) CCS/CCUS(Carbon dioxide Capture and Storage/ Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)
CCSを構成する技術のうちCO2貯留技術に関しては、2016年度から二酸化炭素地中貯留技術研究組合に参画し、大規模CO2圧入・貯留の安全管理技術の開発・実証に取り組んでおります。また、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)を通じてCO2-EOR(CCUS)を含むCO2地下貯留の国際基準(ISO/TC265)策定活動に積極的に貢献すると共に、日本CCS調査株式会社(JCCS)の株主として日本国内におけるCCS実証プロジェクトに参加しております。
これらCCS/CCUS事業を安全かつ効率的に推進するため、CO2地下貯留層及び遮蔽層のモニタリング手法の開発、日本国内の地質特徴を加味した遮蔽層の健全性評価、地下貯留層に対するCO2圧入性評価、CO2地下貯留によるCO2鉱物化の評価手法の開発等の研究開発を進めております。
(3) メタネーション
当社は、2021年10月に新潟県長岡市の株式会社INPEX JAPAN長岡鉱場越路原プラントにて生産されるガスに随伴して排出されるCO2を利用した400 Nm3-CO2/hのメタネーション実用化技術開発事業(※3)を開始し、2026年内に既存パイプラインへ合成メタンを注入するという予定で、実証プラントの運転を開始しております。将来的には、大型化に向けた技術開発及びスケールアップを行い、当社のパイプラインで供給することを目指しております。
※3 NEDO課題設定型産業技術開発費助成事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減/有効利用実用化技術開発/気体燃料へのCO2利用技術開発/大規模なCO2-メタネーションシステムを用いた導管注入の実用化技術開発」
(4) CO2回収・DAC(Direct Air Capture)、E Fuel
イノベーション本部I-RHEXの主要研究テーマとしてCCSに関連して、CO2回収の効率化、船上CO2回収技術の開発、新コンセプトに基づくDAC技術の開発、CO2輸送技術の開発を実施しており、これらを通じ効率的なCCSサプライチェーン構築を目指しています。
また、国内大学との共同研究を通じFT(Fischer-Tropsch)合成によるE Fuel製造の研究開発も進めております。
(5) 石油・天然ガス
エネルギー構造の変革期においても引き続きエネルギーの安定供給の責任を果たし、事業の強靭化・クリーン化を推進するため、国内外の大学・研究機関・企業と連携を図りつつ研究開発を進めております。
在来型油ガス田の開発・生産に関する既保有技術の維持・向上の為に、具体的には、油井管やパイプラインの腐食防食技術の研究開発、ならびに次世代のEOR技術として難条件下でのEOR技術研究開発を進めております。
(6) DX
当社グループが関与する事業においてデジタル技術を最大限に活用し、生産・供給体制及び内外のステークホルダーに新たな付加価値を提供してまいります。具体的には以下を進めております。
① 油ガス田開発分野では、地震探査データ処理・解釈や貯留/シール層の岩相・化石種の自動判定等、地下評価への機械学習適用の取り組みを通じて作業効率の最大化と高精度化を進めております。
② 油ガス生産・処理施設の操業・保全分野では、デジタル/AI技術活用によるメンテナンス記録の分析・効率化、生産施設の省人化・無人化施策推進、IOTセンサーによるリモート監視、ロボットを利用した腐食状況検査等に取り組んでおります。
③ CCS/CCUS分野では、機械学習を活用した貯留層流動シミュレーターの高速代替ツールの整備やCCSデータモニタリングシステム構築等を進めております。