第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が制定されるなど国家戦略を背景に急激なデジタル化が進み、またインターネットサービスの利活用やデータ活用がコロナ禍でそのスピードが加速され国民生活におけるデジタル化や企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーション、公的分野におけるデジタル化と更にその領域は拡大しております。一方サイバー攻撃の増加等を背景に、特殊詐欺やクレジットカードの不正利用被害は増加傾向にあり社会経済活動に多大な影響を及ぼしています。当社は、「情報インフラを共創し、世界をより良くする」というミッションのもと誰もが安心・安全なデジタル社会での利益を享受できる情報インフラ構築を目指すことで企業価値の最大化を図ります。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための指標

 当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、当社の主力製品である「Fraud Alert」の月次経常収益(MRR)(注1)、契約社数(注2)、1社あたり平均単価(ARPU)(注3)を、業績の透明性を表すために契約残高(注4)を重要指標としております。詳細につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。

(注1)MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。MRRは対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額。

(注2)継続課金となる契約を締結している社数(概念実証契約は含まない)。

(注3)ARPU:Average Revenue per Userの略称。ARPUは課金している顧客(1社)あたりの平均売上金額。

(注4)契約残高は、前期獲得した全契約金額のうち翌期に売上高を繰り越した金額に当期獲得した全契約金額を加算し、当期に売上高として計上したものを控除した残額。

 

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略

当社が提供するFraud Alertは、大別して情報セキュリティの観点、マネー・ローンダリング対策の観点で導入促進が見込まれるものと考えております。情報セキュリティの観点では、インターネットサービスの利活用の普及及びこれに伴う技術革新が当社の業績に大きく影響します。インターネットサービス利活用のひとつであるキャッシュレス決済比率の推移(注5)は図1のとおりであり、クレジットカードを中心に電子マネーやコード決済など多種多様な決済方法が増え、キャッシュレス決済を通じた決済比率の伸びは顕著であり、キャッシュレス決済の拡大に伴う不正被害が増加傾向にあります(注6,図2)。

マネー・ローンダリング対策に関する事業は、日本市場では2022年に約2兆円(注7)、世界市場においては2020年~2027年の予測期間において年間平均成長率15.6%以上の健全な成長率で成長する市場と見込まれています(注8)。

 

(注5)出典:経済産業省 2024年のキャッシュレス決済比率(2025年3月31日公表)

https://www.meti.go.jp/press/2024/03/20250331005/20250331005.html

 

図1 キャッシュレス決済比率の推移

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(注6)出典:国立研究開発法人情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所「NICTER観測レポート2020」

(2021年2月16日公表)より当社作成

 

図2 サイバー攻撃関連通信推移

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(注7)出典: LexisNexis「『金融犯罪コンプライアンスの真のコスト』調査レポート」から引用

https://risk.lexisnexis.co.jp/insights-resources/research/true-cost-of-financial-crime-compliance-study-apac

(注8)出典: Report Ocean 「Global Anti Money Laundering Market Size study」(2022年1月22日公表)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004911.000067400.html

 

 当社の提供価値は、インターネットサービスの不正利用抑止と金融機関向けにマネー・ローンダリング口座の抽出及びサーバー空間の防護の3点があります。3者それぞれに外的要因があり、これにより獲得可能な市場規模が拡大することで高い成長率を継続できるように努めてまいります。

 

①インターネットサービスの不正利用抑止

2024年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、26.1兆円に拡大しています(注9)。また、クレジットカードの不正利用額が約555億円(注10)となり、その約0.2%の購入は不正購入となっています。

政府は2030年までにキャッシュレス決済比率を65%とすることを目指すこととし(注11)、キャッシュレス決済を推進していますが、一方、サイバー攻撃等のセキュリティリスクは年々高まり、実際に不正利用被害額も増加しています。このような中、クレジットカード・セキュリティガイドライン[6.0版]が改訂され(注12)、規制が強化されました。従来、Eコマース事業者、クレジットカード事業者において抑制されていたセキュリティ対策投資額が、規制強化により事業継続に必要な予算となることで、市場規模は拡大し当社のサービスにより安心・安全を提供することで高い成長率を継続できると予想しております。

 

②金融機関向けにマネー・ローンダリング口座の抽出

2019年にFATF(金融活動作業部会)の対日監査が金融機関に入りましたが、結果的に我が国は重点フォローアップ国に選別され、金融機関等へはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画が示されております(注13)。このうち「金融機関等による継続的顧客管理の完全実施」における「取引モニタリングの強化」は、当社のFraud Alertのサービスを通じて個人及び法人のマネー・ローンダリング口座を抽出し、日本のマネー・ローンダリング資金供与対策を一層向上させることにより実現することを目指します。また、2028年にFATF(金融活動作業部会)第5次審査が実施されることから中長期に市場規模が拡大していくことを予想しております。

 

③サイバー空間の防護について

 ロシアとウクライナ紛争の影響により経済安全保障推進が大きく打ち出され、国防費用を倍増する方針と、インフラ産業である14業種(金融、クレジットカードなどを含む)に対して、経済安全保障推進法に基づく制度が施行され(注14)、事前審査等の運用が本格化しております。その中では、サイバー攻撃があった場合でも、継続したサービス提供ができる体制作りや攻撃を検知するような体制作り等が含まれており、当社が立脚するサイバーセキュリティへの投資は国策として推進されており、今後の市場規模の拡大要因たり得ると予想しています。

 

(注9)出典:経済産業省 令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果報告書(2025年8月26日公表)

https://www.meti.go.jp/press/2025/08/20250826005/20250826005.html

(注10)出典:経済産業省「クレジットカード不正利用被害の状況について(2025年4月11日公表)」

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/measures_against_fraud/pdf/001_01_04.pdf

(注11)出典:経済産業省「キャッシュレス推進検討会とりまとめ(概要版)」(2025年12月26日公表)

(注12)出典:クレジット取引セキュリティ対策協議会(事務局 一般社団法人日本クレジット協会)「クレジットカード・セキュリティガイドライン[6.0版]<公表版>」

https://www.j-credit.or.jp/security/pdf/Creditcardsecurityguidelines_6.0_published.pdf

(注13)出典:金融庁 第1回金融審議会資金決済ワーキング・グループ 配付資料3(事務局説明資料)(2021年10月13日開催)

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/shikinkessai_wg/shiryou/20211013/siryou3.pdf

(注14)出典:内閣府 経済安全保障推進法の概要 https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/doc/gaiyo.pdf

 

 

 このような最近の業界動向及び事業環境の変化を踏まえ、当社では、本書「事業の内容」について営業体制の構築を進めてまいりました。また、このような背景から当社が商談を始めてから実際に当社サービスを導入いただくまでの期間は短縮傾向にあり、2018年から2022年の5年間でFraud Alertの導入期間は約16ヶ月短縮いたしました。この結果、重要な経営管理指標であるMRRを12倍とした年間経常収益(ARR)(注15)は、下図にあるように堅調に推移していることから2025年12月期は約14.3億円となりました。

(注15)ARR:Annual Recurring Revenueの略称。該当月のMRRを12倍して算出。

 

図3 当社のARRの推移

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図4 当社のMRRの推移

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図5 当社の契約社数の推移

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図6 当社のARPUの推移

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図7 当社の契約残高の推移

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 当社は、引き続き研究開発、Fraud Alertに関する開発とサービス開発を含めた営業体制の強化・構築を重点課題と位置づけ、持続的な成長を維持できるよう推進してまいります。

 

今後の具体的な取り組み

 主力サービスであるFraud Alertの深耕に加え、新規事業であるGrid Data KYCへの経営資源投下

 主力サービスである「Fraud Alert」に関して、オンライン決済における不正被害の増加や、法規制等を背景とした不正対策に対する社会的要請の高まりといった事業環境を受け、当社の不正検知サービスに対する需要は中長期的に高まるものと考えております。

 一方で、これまで当社が主に獲得してきた金融機関とは異なり、基幹システムを共同利用する金融機関等へのアプローチが中心となることから、意思決定に要する期間が長期化する傾向があることが判明しております。このため、短期的な新規顧客の獲得については、「Fraud Alert」における優先順位を見直す方針といたしました。

 よって、当面は既存事業の深耕に加え、新規事業である「Grid Data KYC」の販売に経営資源を重点的に配分することを優先してまいります。「Grid Data KYC」については、金融機関をはじめとする顧客の不正口座開設防止及び継続的顧客管理に対する関心が高まっていることから、今後の成長ドライバーの一つとして注力してまいります。

 

 当社の優位性、差別化の特徴は3点あります。

①顧客基盤

 セキュリティ投資額が大きい業界である金融機関を顧客セグメントとしている点が特徴であります。すでに、メガバンク、ネット系銀行、地方銀行の25行と、大手証券会社をはじめ証券会社9社、また、クレジットカード事業者等数社との取引があり、ARPUは2025年12月時点で2,498千円となっております。メガバンク等の金融機関リーディングカンパニーが外部クラウドサービスの利用を開始し始める黎明期に当社が参入できたことが奏功いたしました。金融機関は社内オペレーション上、サービス導入を容易にリプレイスすることは極めて難しく、後発参入社が当社既存顧客をリプレイスするには相当の時間を要することになります。その間に、さらに顧客にとって、簡易な業務オペレーションとなるようサービス開発を進めることによって、スイッチングコストを高められると考えております。また、他のセキュリティベンダーと異なる点に代理店を介さず、直接顧客と取引している点も差別化要因と捉えております。顧客と直接コミュニケーションを取ることにより、市場ニーズをダイレクトにサービス改善に繋げていることも、スイッチングコストを高める要因となっております。また、スイッチングコストが高まることが解約率の低さにつながっております。

 

②ネットワークの外部性

 当社サービスの差別化要因としては、当社の顧客が提供するサービスの利用者(以下、エンドユーザーという。)に関するアクセス情報の取得及び不正エンドユーザーに関する顧客間の情報共有を前提としたビジネスモデルとなっていることであります。

 当社が取得するエンドユーザーのアクセス情報は、原則として顧客において予め暗号化されており、当社は特定の個人を識別することはできないため当社の個人情報には該当しないものの、顧客においては個人情報に該当するため、顧客側で個人データの第三者提供に関し個人情報保護法が適用されます。

 個人情報保護法上の当社ビジネスの建付けは、顧客が犯罪収益移転防止法の特定事業者に該当する場合は、犯罪収益移転防止法第4条に定める取引時確認等への対応に該当、また第8条「疑わしい取引の届出等」にも該当すると警察庁に確認済であり、個人情報保護法第27条第1項第1号「法令に基づく場合」が適用され、顧客がエンドユーザーの同意を得ずに個人データを第三者に提供することが可能となっております。また、特定事業者に該当しない顧客については、顧客に対し個人データの第三者提供に関する本人同意の取得等の確認を行っております。

 以上の整理により、当社は顧客企業から受領したデータを顧客企業間で相互に共有するビジネスモデルを確立してまいりました。

 従来のAI(Artificial Intelligenceの略称。人工知能。)のように、委託で情報を預かる場合、個社ごとの部分最適になりますが、当社は同じデータベースを各顧客間で共有するという第三者提供型のビジネスモデルであるため、顧客が増えれば増えるほど、不正利用者の情報が集まり他社の情報が共有されることで不正利用者の検知率が上がり、既存顧客に対する不正利用が減少する構造になっております。その結果、職種特化型のSaaS企業のように広告宣伝費を投下することなく、顧客が顧客のグループ内、もしくは懇意にしている同業者に対し、当社サービスの紹介や営業支援を行っていただくことにより、更なる顧客基盤の構築につながっております。それにより変動費率が低い収益構造となっております。

 

③ガバメントリレーションシップを通じたサービス開発

 当社は2018年にJ Startupに選考されて以降、金融庁、経済産業省、警察庁、個人情報保護委員会などとのリレーションを構築し、サービス開発をしている点が他のセキュリティ企業と大きく異なります。これまでに2019年に新技術等実証制度(通称規制のサンドボックス制度)、また2024年4月にグレーゾーン解消制度により当社サービスが適法であると認められたことにより、電力契約情報を活用したサービスのリリースを実現しています。これは従来の個人情報保護法や電力事業者法で禁止されている電力会社の情報アセットの活用を認可いただいたもの(注16)(注17)であり、政府とのリレーションがあってこそ、実現しているサービスであります。

(注16)出典:内閣官房 規制のサンドボックス制度認定プロジェクト(なりすましによる不正な口座開設の防止に関する実証  株式会社カウリス、関西電力株式会社 認定日2019年3月6日)

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/s-portal/regulatorysandbox.html

(注17)出典:経済産業省「グレーゾーン解消制度への申請案件」「不正口座開設防止サービス及び継続的顧客管

理サービスについて」(2024年4月)

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社で認識している優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。なお、当社の収益構造の特徴として、フロー型収益とストック型の収益の両方を得ております。現状大部分がFraud Alert利用料等のストック型の収益であり、安定的な経営に寄与しております。また、フロー型収益は、Fraud Alertの初期導入にかかる売上や実証実験契約によるもの等であります。

また、当社は金融機関と1億円の当座貸越契約を締結しており、急な資金需要にも耐えられる体制を構築しているため、当社としては現状財務体質に重要な課題は無いと考えており、財務上の課題は記載しておりません。

 

①製品の強化について

 当社が属するマネー・ローンダリング対策の分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があり、新たな脅威に対する対策が求められます。当社では、顧客満足度を継続的に高めていくために、今後もマネー・ローンダリング対策に関する新たな技術開発に取り組み、顧客の声を広く収集しその要望と仕様を入念に吟味しながら各機能及びユーザビリティの向上した実効性のある製品をリリースしてまいります。

 

②組織体制の整備

 社内体制の構築への課題としては、主に管理層の人員不足及び開発体制の更なる充実という二点が挙げられます。当社が問題を解決するにあたり、各部門長に横断的な協力を仰ぎ、組織体制を整備しながら、適宜採用による人員獲得及び権限の委譲などを通じ、健全な組織作りに注力してまいります。

 

③人材の採用・育成について

 当社の属するマネー・ローンダリング対策業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、社内人材については、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、採用後は、当社の教育講座を無償で受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウ

ハウや経験の社内蓄積に努めております。

 

④新規事業の立ち上げについて

 急速な進化、拡大を続けているFintech業界において、当社が企業価値を向上させ、高い成長を継続させていくためには、事業規模の拡大と収益源の多様化を図っていくことが必要と認識しております。そのためには、積極的な新規事業の立ち上げが課題と認識しております。このような環境下において、当社は、2025年9月に金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービス「Grid Data KYC」の提供を開始いたしました。今後もマネー・ローンダリング対策におけるノウハウを活かした事業の創出に積極的に取り組んでまいります。

 

⑤情報管理の徹底

 当社は事業運営上、多数の個人情報を有しているため、それらの情報の管理が事業の持続可能性を担保するために最も重要な要素であると認識しております。現在、当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及びプライバシーマークの認証を取得しております。機密情報や個人情報について、以前より社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、セキュリティシステムの整備を行っておりますが、今後も引き続き情報管理の徹底及び体制の強化を図ってまいります。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものになります。

 

(1)ガバナンス

 当社においては、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様になります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

 短期、中期及び長期にわたり当社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組のうち、重要なものについては、該当事項はございませんので記載を省略しております。

 

 当社は、営業、エンジニアを中心とした人材の採用を積極的に進めていく方針であり、通常の採用活動に加え、リファラル採用を取り入れております。加えて、ビジネス研修やマネージャー研修プログラムの導入や資格手当の導入により資格取得を促進する等、継続的な人材育成に努めております。

 また、テレワーク勤務を基本とする就業形態やフレックスタイム制の導入などのワークライフバランスに配慮した働き方を推進することに加え、自己啓発目的の書籍購入補助やテレワーク環境整備のための物品購入補助等の福利厚生制度等により、働きやすい環境を整備しております。

 

(3)リスク管理

 サステナビリティ課題を含む事業へのリスクについての詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 また、リスク管理およびコンプライアンス規程に則り、社長を委員長とした「リスク管理・コンプライアンス委員会」を定期的に開催し、リスク事例の共有や、リスク対策課題の策定とその対応策について議論し、取締役会に報告する体制をとっております。

 

(4)指標及び目標

 当社は、経営理念に基づき、従業員の資質の向上と能力開発を行い、企業の発展、社会的信用の増大、社会への貢献を推進してまいります。また、従業員ひとりひとりのキャリアアップを目指し、専門的な教育や資格取得に向けて研修の機会を積極的に提供してまいります。同時に、従業員のキャリア形成に即した配置や雇用管理に配慮してまいります。

 

 なお、当該方針に関する指標、当該指標を用いた目標及び実績については、現時点において指標を定めていないため記載をしておりませんが、今後、指標を定めて取り込んでいく予定であります。

 

3【事業等のリスク】

 当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

1 事業環境・事業内容リスクについて

①マネー・ローンダリング対策市場について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 Fintechの普及により、換金手段が多様化し犯罪者にとっても利便性が向上する中、マネー・ローンダリング対策市場は全世界で大きく拡大しており、2020年から2027年には15.60%以上で成長すると予測されております。(注)当社は、国内におけるマネー・ローンダリング対策市場において、2016年12月に法人向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert(フロードアラート)」の提供を開始、2025年9月に金融機関等向け電力契約情報を活用したKYCサービス「Grid Data KYC」の提供を開始し、その方向性をリードしつつマネー・ローンダリング対策事業の拡大に努めておりますが、競合会社の積極参入による競争が激化した場合及び日本国民の消費活動がキャッシュレス決済から現金決済へ回帰してしまう場合、並びに当該市場を取り巻く新たな規制の導入やその他予期せぬトラブル等により、市場の成長が鈍化した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(注)出典: Report Ocean「Global Anti Money Laundering Market Size study」(2022年1月22日公表)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004911.000067400.html

 

②技術革新への対応について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社が属するマネー・ローンダリング対策の分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があります。今後、Google Inc.及びApple Inc.のプライバシーポリシーが強化されることで、端末識別の難易度が技術的に高まった場合、Fraud Alert(フロードアラート)単体での不正行為抑止効果が薄れていく可能性があります。当社では、顧客のニーズを的確に捉え、より実効性のあるサービスを提供すべく、新たな脅威や技術革新等に関する情報収集に努めております。しかし、これらの技術革新への対応が遅れ、他社に大きく先行された場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③法的規制について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、主要なビジネスに関係する犯罪による収益の移転防止に関する法律及び個人情報保護法等に関しては、関係当局及び法律専門家に照会・確認のうえ、適用関係を確認済であり、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日現在において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合、また、従来の法的規制の運用に変更がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。加えて、個人情報を活用した新しいサービス作りにおいては法的整備が絡む可能性があり、継続的なロビイング活動の強化が求められる可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育などを行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④競争状況について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社は、金融機関を主な顧客とし、マネー・ローンダリング対策領域で多角的なサービスを提供しており、独自のサービスポジションを獲得しております。これは、データ検知のサービスを提供するセキュリティ企業が多い中で、マネー・ローンダリング対策分野においては常に新しい犯罪手口が発生するために、データ検知サービスでは対応が後手になってしまうこと(当社想定)から、当社がデータモニタリングという独自の内容と価格でのサービス提供を実現させてきたことによると考えておりますが、新規参入等により競合が出現し競争が激化した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤当社が提供するサービスの瑕疵について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 不正検知サービス「Fraud Alert」等、当社が提供するサービスでは、ソフトウエアの開発から販売までの過程において数多くの品質チェックを行い、プログラムの動作確認には万全を期しておりますが、販売時には予想し得なかったソフトウエア特有のバグ(不具合)が販売後に確認されることもあります。その場合、当社では速やかにソフトウエアのアップデート(修正)プログラムを提供し対応しております。顧客の不正検知確認体制不備は一義的には顧客の責任であり当社の責任は限定的ではあるものの、こうしたバグによりサービスの提供ができなくなる場合、バグの解決に非常に長期間を要した場合、またはバグの解決に至らなかった場合は、サービスの売上の減少だけでなく、当社への信頼が低下する恐れがあり、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥マネー・ローンダリング対策特化による需要低下リスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社は、不正検知サービス「Fraud Alert」に代表されるマネー・ローンダリング対策事業に特化しております。今後、経済環境の悪化その他の要因により、マネー・ローンダリング対策市場の需要が低迷した場合等には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦SLA(サービスレベルアグリーメント)抵触によるリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、当社サービスの月間の稼働時間及び一定時間あたりの処理速度(一定時間あたりのアクセス数)等の技術的なサービス提供能力について、2025年12月末時点で15社に対して一定の保証水準を設けており、あらかじめこれを提示しております。当社は、SLAに定めるサービスコミットメントを達成できなかった場合には、SLAのサービスコミットメント条項に基づき、月次利用料金の範囲内で利用料金を減額しなければならず、かかる減額が多額になった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧システム等に関するリスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社の事業は、外部クラウドサーバー(Amazon Web Services、以下「AWS」という。)が提供する各種サービスをインターネットを介して顧客企業に提供することを前提としております。当社では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、リスクマネジメントに努め、また、システム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウン等を回避すべく、サーバー設備の強化や稼働状況の監視等により未然防止策を実施しております。しかしながら、サイバー攻撃や自然災害や事故などによる不測の事態が発生し、万が一、AWS自体にシステム障害が起こるような場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨特定顧客への依存について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

2025年12月期における当社の売上高に占める主要取引先上位10社の売上高合計の割合は63.0%であり、また、それら取引先は銀行、証券会社などの金融機関、クレジットカード事業者であることから、特定の業界・顧客企業への依存度が高い状況にあります。本書提出日現在において、マネー・ローンダリング対策市場は、将来の成長が見込まれており、他の業界・顧客企業との取引額の拡大を図り、特定顧客への依存リスクの分散に努めておりますが、今後、見込みどおりに顧客拡大が進まない場合や予期しない環境の変化により価格改定を余儀なくされる等、当該市場の成長に何らかの問題が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、現時点において、当該顧客企業と当社との関係は良好な状態でありますが、それらの顧客企業の経営方針に変更が生じ、契約条件の変更等があった場合は、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩研究開発リスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社では、既存事業の強化及び新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、技術革新のスピードが速くタイムリーに新製品の開発ができないなど、期待した成果が得られず計画を断念することになった場合には、投下した研究開発費を回収できないため、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの研究開発体制の維持・強化のためには、高度な技術を持った人材の確保が不可欠であり、技術者が十分に確保できない場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

2 経営管理体制に関するリスク

①人材の採用・育成について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社の属するマネー・ローンダリング対策業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、社内人材については、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、採用後は、当社の教育講座を受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウハウや経験の社内蓄積に努めております。

 

②特定人物への依存について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社の創業者であり大株主でもある代表取締役社長島津敦好は、当社の強みである事業の創出やノウハウを蓄積しており、事業の推進において重要な役割を果たしております。当社は、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指し、幹部人材の育成及び強化を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の業務執行ができない事態となった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③小規模組織であることのリスクについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は小規模な組織であり、現在の人員構成において最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び業務内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④コンプライアンス体制について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は企業倫理の確立による健全な事業活動を基本方針とする「コンプライアンスの基本方針」を制定し、当社の役員・従業員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上および法令遵守の強化に努めています。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤情報管理体制について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社のサービスでは個人情報または個人関連情報等の顧客の重要な情報を入手します。これらの情報は基本的には暗号化されており、当社単体では個人との紐づけは不可能となっておりますが、これらの顧客情報の漏洩は事業展開において大きなリスクであります。当社では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、社内教育の実践、各種データのアクセス権限による制約、書面情報の施錠管理、オフィスの入退室管理等、対策を講じて実践しておりますが、顧客情報の漏洩が発生した場合、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥知的財産権の管理について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、専門家と連携しながら調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに第三者の知的財産権を侵害してしまう可能性があります。この場合、使用料の請求や損害賠償請求等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社に対する知的財産権の使用料の請求や損害賠償請求等が発生することや、当社が保有している知的財産権が第三者により侵害された場合には、法的措置を含めた対応を要するなど、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦内部管理体制の整備状況にかかるリスクについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけ、多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 その他のリスクについて

①自然災害、事故等について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

 感染症の世界的な流行(パンデミック)や地震や天災といった災害、国内におけるテロ活動などの予期せぬ事態により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社としては、緊急事態に遭遇した場合において、損害を最小限に止めつつ、事業の継続を可能とするための対応を図っておりますが、大規模な地震や台風等の自然災害、火災などの事故災害やパンデミックが発生し、当社の業務に支障が生じた場合、また、このような緊急事態が長期化し、企業活動が長期間にわたり大幅に制限される等の理由により、景気が著しく悪化し、多くの顧客企業がセキュリティ投資を抑制した場合には、売上の減少や利益率の低下、回収サイトの長期化など、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、リモートワークを導入する等、柔軟に事業を継続できる体制の整備を図っております。

 

②訴訟について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社の事業運営にあたって、予期せぬトラブルや問題が生じた場合、当社の瑕疵にかかわらずこれらに起因する損害賠償の請求や、訴訟の提起を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合は、起訴内容や損害賠償額の状況及びその結果によっては当社の社会的信用が低下することに加え、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③大株主について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社創業者かつ代表取締役社長である島津敦好の本書提出日現在での議決権所有割合は、直接保有分として6.9%であります。また、島津敦好の資産管理会社である株式会社rhizomeの議決権を合算した所有割合は53.1%となっております。島津敦好及び当該資産管理会社は引き続き当社の株式を保有し、大株主となる見込みであります。島津敦好は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しています。

島津敦好は、当社の創業者かつ代表取締役社長であるため、当社としても安定株主であると認識していますが、将来的に何らかの事情により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④株式の追加発行等による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する時期:数年以内、影響度:小)

 当社は、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権を活用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は266,300株であり、発行済株式総数6,530,800株の4.1%に相当しております。

 

⑤資金使途について(発生可能性:低、発生する時期:数年以内、影響度:中)

 当社が調達した資金は、プロダクトであるFraud Alertの開発及び運用費及び借入金の返済に充当する予定です。しかしながら、外部環境等の影響により、目論見どおりに事業計画が進展せず、調達資金が上記の予定どおりに使用されない可能性があります。資金使途計画が変更となる場合には、速やかに開示いたします。また、予定どおりに使用された場合でも、想定どおりの効果を上げることができず、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産合計は1,596,763千円となり、前事業年度末に比べ231,220千円減少いたしました。これは主に、現金及び預金が246,031千円減少したこと等によるものであります。

 当事業年度末における固定資産合計は585,453千円となり、前事業年度末に比べ389,380千円増加いたしました。これは主に、投資有価証券が297,500千円増加、ソフトウェアが60,739千円増加したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度末における資産合計は2,182,217千円となり、前事業年度末に比べ158,159千円増加いたしました。

(負債)

 当事業年度末における流動負債合計は525,674千円となり、前事業年度末に比べ82,845千円減少いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が50,000千円減少、契約負債が38,396千円減少したこと等によるものであります。

 この結果、当事業年度末における負債合計は525,674千円となり、前事業年度末に比べ182,845千円減少いたしました。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は1,656,542千円となり、前事業年度末に比べ341,005千円増加いたしました。これは主に、資本金及び資本剰余金がそれぞれ34,546千円増加、当期純利益の計上により利益剰余金が276,442千円増加したこと等によるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、政策金利の引き上げなどを背景に緩やかな回復基調を維持したものの、高市首相の就任に伴う首相交代などにより、政局の先行きは不透明な状況となりました。海外においては、2025年1月に就任したトランプ米国大統領が高関税政策を導入するなど大幅な政策転換を行い、世界貿易の不確実性が高まりました。さらに、ウクライナをはじめとする地政学リスクが引き続き高い水準にあり、為替相場も不透明となるなど、世界経済は依然として先行き不透明な状況にあります。

 国内の情報セキュリティ市場においては、電子商取引の規模拡大に伴い決済のキャッシュレス化が進み、キャッシュレス決済が拡大することでクレジットカード等の不正利用が増加し、その被害抑制対策強化の流れが加速すると見込まれます。なお、2024年の消費者向け電子商取引は前年比5.1%増の26兆1,225億円(注1)となり、2024年の国内のキャッシュレス決済比率は42.8%(注2)まで到達するなど、いずれも順調に推移しております。

 マネー・ローンダリング対策市場においては、2021年8月30日にFATF(金融活動作業部会)(注3)による第4次対日相互審査報告書が公表され、わが国は、審査対象である有効性と法令遵守状況の双方で、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策における合格基準を下回り、「重点フォローアップ」に分類されました。わが国でも生成AIを悪用した高度な技術を悪用した事案も発生し、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺及びフィッシングに伴う犯罪等の被害額が2024年には約1,989.5億円(注4)と増加の一途を辿っております。さらには、2025年1月中旬以降、不正ログインによる証券口座乗っ取り被害が多発し、その被害額は2025年1月からのわずか1年間で総額約7,393億円(注5)と急増しました。これを受け、対面大手5社の証券会社は被害顧客への全面補償を、またネット系大手証券会社においても不正売買により発生した損失の一定額を補償することを決定しております。こうした状況を背景に、不正アクセス検知分野においては、取引モニタリングの利用シーン拡大の必要性が認識され、商談機会が増加しました。今後は法改正等の動きも見込まれ、マネー・ローンダリング対策市場は一層の拡大が進むものと考えております。

 このような状況のもと、当事業年度においては、主力サービスである「Fraud Alert」において新規に金融機関4行及びその他金融機関2社の計6社への導入があった一方、5社の解約が発生し、導入社数は純増1社となりました。特に、トラフィック増加に伴うアップセルによるストック売上の増加が堅調に推移しました。また、取引モニタリングの利用シーン拡大によるクロスセルについても、法人口座へ展開できたことで計画を上回って推移いたしました。

 さらには、新規事業として、全国10社の送配電事業者と連携し、電力契約情報を活用した不正口座開設防止及び継続的顧客管理の高度化、ならびに管理コストの低減を同時に実現する「Grid Data KYC」を提供開始し、規模は限定的ではあるものの、当事業年度より売上を計上することができました。

 利益面においては、サーバー費用の削減を目的としたインフラ再構築に係る開発が1月に完了し、その削減効果が想定どおり顕在化し始めております。当事業年度中は、不正取引の検知率向上及び品質向上を目的とした開発に注力いたしました。 一方で、期初の採用計画は達成したものの、退職者のリプレイス採用には至らず、一部費用が未消化となりました。加えて、採用した人材の早期戦力化を図るため、教育体制の整備及び育成に向けた準備にも注力いたしました。

 また、「Grid Data KYC」の提供開始に先立ち、同サービスに係る固定費については、同年9月より計上を開始しております。

 その一方で、2021年12月よりシステム運用を行っていた、一般社団法人キャッシュレス推進協議会が推進する不正利用関連情報確認データベース(CLUE)については、2025年9月をもって運用を終了いたしました。

 なお、当事業年度末時点のMRR(注6)は119,942千円(前年同期比13.6%増)、ARR(注7)は1,439,312千円(同13.6%増)、契約社数は48社(同2.1%増)(注8)、ARPU(注9)は2,498千円(同11.2%増)、契約残高(注10)は585,177千円(同11.9%減)、直近12ヶ月の平均月次契約解約率(グロスレベニューチャーンレート)は0.6%(同増減なし)(注11)となりました。

 この結果、当事業年度における経営成績は、売上高1,400,716千円(前年同期比14.3%増)、営業利益408,097千円(同1.1%減)、経常利益409,921千円(同5.6%増)、当期純利益276,442千円(同0.1%増)となりました。

 なお、当社はマネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(注1)出典:経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」(2025年8月)

(注2)出典:経済産業省「2024年度のキャッシュレス決済比率」(2025年3月)

(注3)FATF:Financial Action Task Force(金融活動作業部会)の略称。マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策の国際基準(FATF勧告)を策定し、その履行状況について相互審査を行う多国間の枠組み。1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された。現在、G7を含む38カ国・2地域機関が加盟しており、その他9つのFATF型地域体を加えると、FATF勧告は、世界200以上の国・地域に適用されている。

(注4)出典:警察庁サイバー警察局「令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」(2025年3月)

(注5)出典:金融庁「インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引による被害が急増しています」(2026年1月)

(注6)MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。MRRは対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額。

(注7)ARR:Annual Recurring Revenueの略称。該当月のMRRを12倍して算出。

(注8)契約社数は、前期末から1社増加しております。その内訳は新規顧客6社、解約顧客5社となっております。

(注9)ARPU:Average Recurring Revenue per Userの略称。該当月のMRRを契約社数で除して算出。

(注10)契約残高は、前期獲得した契約金額のうち翌期に売上高を繰り越した金額に当期獲得した契約金額を加算し、当期に売上高として計上したものを控除した残額。

(注11)月中に解約及びダウンセルとなったサブスクリプション額÷前月末時点でのMRRの対象期間12ヵ月の平均。推移は下記の通りとなります。

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③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は1,487,072千円となり、前事業年度末に比べ246,031千円減少いたしました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により得られた資金は、208,971千円(前年同期は266,220千円の収入)となりました。これは主に、法人税等の支払178,091千円、契約負債の減少38,396千円等により資金が減少した一方で、税引前当期純利益409,921千円等により資金が増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、373,803千円(前年同期は322千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出304,813千円、無形固定資産の取得による支出65,077千円等により資金が減少したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により使用した資金は、81,199千円(前年同期は512,504千円の収入)となりました。これは、長期借入金の返済による支出150,000千円により資金が減少した一方で、株式の発行による収入68,800千円により資金が増加したことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社が行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社はマネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載は省略しております。

セグメント名称

当事業年度

(自2025年1月1日

至2025年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

マネー・ローンダリング及び

サイバーセキュリティ対策事業

1,400,716

114.3

合計

1,400,716

114.3

 (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2024年1月1日

至2024年12月31日)

当事業年度

(自2025年1月1日

至2025年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社三井住友銀行

136,923

11.2

170,855

12.2

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる可能性があります。

 なお、当事業年度において、記載すべき重要な会計上の見積りはありません。

 

②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態の状況 ②経営成績の状況」をご参照ください。

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、当社サービスを拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、また研究開発に係る費用であります。これらの資金については自己資金にて充当する方針です。今後の更なる業容拡大に対応するための資金に関しては、自己資金に加えて、株式上場時の調達資金を用いて、成長投資の実行とともに財務基盤の強化を図ってまいります。

 

④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指しており、主な経営指標として月次経常収益(MRR)を特に重視しております。今後もこの指標を目標として経営を行うことにより、企業の成長性及び効率性の確保を図る所存であります。

 当事業年度においては、導入企業数が増加し、その結果月次経常収益は増加しております。

 

重視する指標の推移

期間

前事業年度末時点

 (2024年12月)

当事業年度末時点

 (2025年12月)

月次経常収益(MRR)

105,590千円

119,942千円

 

5【重要な契約等】

 業務提携契約

相手方の名称

国名

契約品目

契約締結日

契約内容

契約期間

北海道電力ネットワーク株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

東北電力ネットワーク株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

東京電力パワーグリッド株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

中部電力パワーグリッド株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

北陸電力送配電株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

関西電力送配電株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

中国電力ネットワーク株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

四国電力送配電株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

九州電力送配電株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

沖縄電力株式会社

日本

Grid Data KYC

2025年9月18日

電力契約情報を活用した本人確認支援のための業務提携

2025年9月18日から

2030年9月17日まで

以後1年ごとの自動更新

(注)上記については、売上高の一定割合と、固定費等を支払っております。

 

6【研究開発活動】

 当事業年度の研究開発活動は、引き続きサイバーセキュリティを目的としてインターネット上にある各端末とユーザーを識別し、不正検知精度を高めるための分析を進めてまいりました。加えて、新たにAML・不正送金ネットワーク分析を検証可能な研究基盤について調査・整理に取り組みました。当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は32,009千円であります。

 なお、当社はマネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。