第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、企業として目指す姿を表した「経営理念」を以下のとおり定めております。

① 自動化・省力化に貢献する

空気圧機器をはじめとする自動制御機器製品の製造販売を通じて、「産業界の自動化・省力化に貢献する」ことが、当社の社会的使命であると認識しております。

② 本業に専心する

「産業界の自動化・省力化に貢献する」要素部品メーカーとしての本分に徹し、本業である自動制御機器事業に経営資源を集中して、競争力の向上に努めてまいります。

③ グローバルに製品を供給する

世界各国・地域のルールやニーズに沿った製品、世界のどの市場でも通用する製品を供給してまいります。

 

(2) 経営環境

① 市場環境
 (a) お客様の多様性

当社グループの主要製品である空気圧機器をはじめとする自動制御機器は、自動化された工場の生産・搬送ライン、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボットなどのオートメーションを支える要素部品として、あらゆる産業分野で使用されております。

当社グループは、特定の業種、特定のお客様への依存度が低いため、産業構造の変化や需要環境の急変への耐性が相対的に高いと認識しております。

 (b) 製品の汎用性の高さ

空気圧機器は、汎用性が高く、お客様の創意工夫によって、用途が無限に拡大してまいります。当社グループは、お客様のニーズに応える製品開発を進めており、これを通じて新規需要の開拓が可能であります。

 (c) 環境保護への要請の高まり

環境保護の取組は人類共通の喫緊の課題であり、お客様の環境保護への要請は年々高まっております。

大気中に放出しても問題のない圧縮空気を動力源とする空気圧機器は、それ自体が環境にやさしい特性を備えております。

 (d) 労働力人口の減少と人件費の高騰

少子・高齢化は世界的に進んでおり、多くの先進国では、労働力人口の減少が始まっております。また、これまで労働集約型の生産活動を担ってきた新興国においては、経済発展に伴い人件費が高騰しつつあります。

空気圧機器は、人の手による作業の代替に適した自動制御機器であり、労働力人口の減少や人件費の高騰に対処するための自動化・省力化ニーズに合致しております。

 

② 当社グループの競争優位性

 (a) 空気圧機器の総合メーカー

空気圧機器は、空気配管上で使用される様々な機器でシステムを構成しております。当社グループは、それらの機器すべてを製造販売する総合メーカーであり、お客様に各種の空気圧機器をワンストップで供給することができます。

 (b) 環境性能に優れた製品開発

当社グループは、製品設計の段階から、環境負荷の少ない製品の開発に取り組んでおります。また、お客様のニーズに応じた製品開発を続ける中で技術力を培い、特に製品の小型化・軽量化を得意としております。

空気圧機器の小型化・軽量化は、空気圧機器を組み込んだ装置やロボットの重量を減らし、お客様の工場全体のエネルギー消費量の削減を可能にいたします。

 (c) 豊富な品揃えと潤沢な在庫

空気圧機器には、お客様の使用状況に応じた様々なバリエーションが要求されます。当社グループは、70万品目に及ぶ豊富な品揃えで、お客様のあらゆるニーズにお応えいたします。

空気圧機器は、お客様の工場の生産・搬送ライン等に組み込まれる要素部品であり、空気圧機器の不具合や欠品によってライン等が停止すれば、お客様は多大な損失を被ります。そのため当社グループは、製品の品質管理に万全を期すとともに、戦略的に厚めの在庫を保持することにより、お客様のご注文に迅速に対応できる短納期即納体制を整えております。

 

 (d) グローバルネットワーク

お客様の事業はグローバル化が進んでおります。

当社グループは80以上の国と地域に拠点を持ち、直販の営業人員を配置することで、お客様のニーズを的確にとらえ、ニーズに合った製品をグローバルに供給できる体制を構築しております。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 長期経営ビジョン

以上のような市場環境及び製品特性を踏まえて、当社グループは「中期経営計画」を策定せず、「長期経営ビジョン」という形で、より長期的な視点で継続的に取り組むべき課題を設定しております。

(a) お客様のニーズを的確にとらえた製品開発を進め、納期・品質・価格等においてお客様のご要望にお応えできる体制づくりに努める。
(b) 生産設備の新規拡充と既存設備の更新に集中的に取り組み、将来を見据えたグローバルな最適生産体制を確立するとともに、合理化・コストダウンを加速する。
(c) グローバル市場における競争に勝ち残り、より一層高いマーケットシェアの獲得を目指す。
 

② 事業上及び財務上の課題に対する具体的な取組の内容

 (a) 製品供給能力の確保

想定される中長期的な需要の伸長及び米中貿易摩擦など経済のブロック化の動きに備えて、当社グループは国内外において生産及び物流の体制を強化し、製品供給能力の確保に努めております。

 (b) 販売戦力の強化

お客様の事業のグローバル展開が進む中、ITを活用し、当社グループのグローバルネットワークを有機的に結合させることや、営業人員に対する教育研修プログラムを改善すること等を通じて、販売戦力のより一層の強化に取り組んでおります。

 (c) 保有資産の有効活用

当社グループの保有する現金は、経営の安定に寄与しておりますが、為替や金利の変動リスクに対応し、また機動的な資金の活用を可能にするため、グループ内での現金配分の見直しを実行しております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 考え方及び体制

[マテリアリティ]

当社グループは、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。

お客様や株主・投資家の皆様との対話を起点に、取締役会で議論を重ね、リスク及び収益機会の両面から、当社グループが持続的に成長する上での重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり特定いたしました。

 (a) 人権の尊重・ダイバーシティの推進・職場の安全安心確保

     ・当社グループはもとよりサプライチェーンにおいても、人権侵害のない環境づくりに取り組みます。

     ・ダイバーシティに取り組み、国籍・性別・年齢等に関わらず、多様な人材が活躍できる企業を目指します。

     ・従業員が安全・安心に働ける職場環境の維持に努めます。

 (b) 気候変動・環境課題への対応

・製造時及び使用時のCO2排出量を削減した環境配慮型製品(エコプロダクツ)の開発・供給を推進いたします。

・工場におけるCO2排出量削減、廃棄物の削減など(エコファクトリー)に取り組み、そのノウハウをお客様への提案にも活かします。

 (c) グローバルな製品の安定供給

・事業活動全般にわたるBCP(事業継続計画)を推進し、いかなる時にも製品供給を持続できる体制を構築いたします。

 (d) 人材の育成・自動制御技術の普及

     ・グローバルな人事評価制度・表彰制度・教育研修制度を整備し、人材の育成と活用に努めてまいります。

 ・奨学金や各種セミナーの開催等を通じて、自動制御技術の普及に努めるとともに、次世代を担う人材の育成に貢献いたします。

 

 

[ガバナンス]

取締役会の諮問機関として「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ課題に関する取組の進捗状況等の監督機能を強化しております。サステナビリティ委員会は、独立社外取締役が全体の過半数となるよう構成すること、委員長は独立社外取締役である委員の互選により選定することを、内規により定めております。

執行側の組織としては、同委員会を補佐する管掌取締役を置き、サステナビリティに関する取組を統括する「SDGs事務局」及びグループ内外への情報発信を担当する「コーポレートコミュニケーション室」が、事務局機能を担っております。また、各事業部門の責任者が管下組織における取組を統括管理し、サステナビリティ委員会及び取締役会への報告を行う体制としております。

環境関連のデータ収集並びに再生可能エネルギーの利用促進など気候変動対策としての具体的施策の企画立案・実施を担当する部署として、「エコファクトリー推進室」を設置しております。

 

 

取締役会

 

 

 

 

サステナビリティ委員会

 

 

 

 

事務局

(管掌取締役)

SDGs事務局

 

コーポレートコミュニケーション室

 

 

 

 

 

 

 

製造本部

 

技術本部

 

営業本部

 

管理本部

 

 

エコファクトリー推進室

 

 

 

[リスク管理]

サステナビリティ委員会は、各事業部門及び事務局から報告を受けたサステナビリティに関するリスクについて、分析、評価、対応策の妥当性を検証し、必要に応じて取締役会に報告することとしております。

気候変動に関しては、エコファクトリー推進室が中心となり、SDGs事務局及び各事業部門と連携して、リスク・機会を幅広く抽出し、重要なリスク・機会の特定・評価を行い、それぞれのリスク・機会に対して対応策を検討しております。その結果は、サステナビリティ委員会及び取締役会に定期的に報告しております。

 

(2) 気候変動に関する取組

[戦略]

当社グループは、2022年6月に賛同表明したTCFDの考え方に基づき、IEAやIPCCなどの報告書やパリ協定をはじめとする国際動向を踏まえ、低炭素社会へ移行する1.5℃シナリオと、温暖化が進行する4℃シナリオを選択し、シナリオ分析を実施いたしました。

シナリオ分析の結果は、当社グループの方針決定に反映しております。

また、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオの双方において、それぞれのリスク・機会に関する財務影響度及び対応策の観点から、当社グループの事業戦略はレジリエンスを有していると考えております。

今後も定期的にシナリオ分析を行い、リスク・機会を見直すとともに、対応策の着実な実行及び進捗状況のモニタリングを実施してまいります。

 

 

<シナリオの概要>

 

概  要

参照した主な参考文献

1.5℃シナリオ

2050年に温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロとするため、炭素税や排出量取引、リサイクル規制や地球温暖化防止規制など、脱炭素に向けた政策が強化される。

それに伴い、GHG排出量削減要請の高まり、低炭素技術の進展や低炭素製品の需要拡大が見込まれる。

なお、気温上昇が抑えられることから、物理的な影響は比較的大きくないことが想定される。

・IEA WEO NZEシナリオ、SDSシナリオ

・IPCC RCP1.9

・JEITA 「注目分野に関する動向調査」

・世界経済フォーラム

「Winning in Green Markets: Scaling Products for a Net Zero World」

4℃シナリオ

化石燃料への依存により経済が発展する中で、気候変動政策は十分に講じられず、脱炭素に関する技術はあまり進展しない。

一方で、気温上昇に伴い、洪水などの気象災害が激甚化し、物理的な被害の拡大が予想される。そのため、BCP対応や、熱中症・感染症等に備えるための工場設備の省人化・自動化の推進が想定される。

・IEA WEO STEPSシナリオ

・IPCC RCP8.5

・WRI Aqueduct Floods

・WRI Aqueduct Water Risk Atlas

・国土交通省 ハザードマップ

 

<定義>

時間軸

定  義

 

財務影響度

定  義

短期

0~3年

 

10億円未満

中期

4~10年

 

10~500億円未満

長期

11~30年

 

500億円以上

 

<1.5℃シナリオ>

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

政策・

法規制

炭素税・排出量取引制度の導入

炭素排出の負担が発生する

リスク

サプライヤーの炭素排出負担転嫁による調達費用の増加

中~

長期

・小型・軽量製品の開発(材料使用量削減)

・切粉・端材のリサイクル

・グローバル調達の最適化

リスク

Scope1・2に炭素排出負担が生じることによる製造・営業費用の増加

中~

長期

・太陽光発電の導入

・再生可能エネルギー由来電力の主力電源化

・HFCを温暖化係数の低い洗浄液へ切替

・高効率設備の導入と設備更新

・省エネ生産工法の研究と量産導入

・温調機器に温暖化係数の低い冷媒を採用

機会

Scope1・2削減に伴う炭素排出負担減少による製造・営業費用の減少

中~

長期

市場

顧客の低炭素意識の高まり

顧客から低炭素エネルギーの利用が要請される

リスク

Scope1・2削減施策の実行に伴う製造・営業費用の増加

中~

長期

 

 

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

市場

顧客の低炭素意識の高まり

顧客からカーボンフットプリント(CFP)等の詳しい情報開示を要請される

機会

CFP表示が義務付けられ、CFPの小さい製品が選定されることによる、当社製品の売上高の増加

中~

長期

・代表機種製造時のCO2排出量算定

・製品アセスメントの実施

・軽量・小型設計で製造時のCO2排出量削減

・工場電力を再エネ電力へ切替

・製造時CO2排出量算定対象製品の拡大

・省エネ・省エア・長寿命製品の開発拡大

低炭素製品を志向する顧客が増加する

機会

見える化に伴うセンサー類の需要増加による売上高の増加

中~

長期

・省エネ製品の開発

・生産/販売体制の強化

・製品バリエーションの充実

・無線化技術の拡充

機会

小型・軽量な空気圧機器の需要増加による売上高の増加

中~

長期

・製品バリエーションの充実

・小型・軽量製品の拡充

・生産/販売体制の強化

・省エネ・省エア製品の新規技術開発

・使用済み製品のリサイクルチェーン構築

動力が電化に移行する

機会

空気圧アクチュエータの市場の成長が鈍化する中での一定の売上高の増加

中~

長期

・省エネ・省エア製品の開発

・最適製品を選定できるプログラムの提供

・省エネ・省エア製品の市場普及活動

・省エネシステムの技術サポート

・カスタム製品の対応強化

リスク

空気圧アクチュエータ市場の成長率鈍化による売上高の逸失

中~

長期

機会

電動アクチュエータの市場が拡大することによる売上高の増加

中~

長期

・電動アクチュエータのバリエーションの充実

・省エネ製品の開発

・生産/販売体制の強化

・修理・リサイクル体制の構築

素材の価格上昇

低炭素社会移行に伴いアルミニウムの価格が上昇する

リスク

主要な原材料であるアルミニウムの価格上昇による調達費用の増加

中~

長期

・小型・軽量製品の開発によるアルミ使用量の削減

・樹脂材料への材質転化

・リサイクルチェーンの構築

・グローバル調達の最適化

低炭素社会移行に伴い銅合金・鋼材の価格が上昇する

リスク

主要な原材料である銅合金・鋼材の価格上昇による調達費用の増加

中~

長期

・小型・軽量製品の開発による銅合金・鋼材使用量の削減

・樹脂材料への材質転化

・リサイクルチェーンの構築

・グローバル調達の最適化

再生樹脂・ゴム材料価格が上昇する

リスク

主要な原材料である樹脂・ゴム材料の価格上昇による調達費用の増加

中~

長期

・小型製品の開発による材料使用量の削減

・ランナーレス金型構造の研究

・リサイクル原料の活用検討

・グローバル調達の最適化

 

 

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

市場

小売電力価格の上昇

電力会社が脱炭素エネルギーに基づく発電に移行することにより、小売電力価格が上昇する

リスク

サプライヤーの電気代価格転嫁による調達費用の増加

中~

長期

・連結Scope3排出量の算定

・省エネ生産工法の研究(プレス化、樹脂化など)

・省エネ生産工法の設計採用

・最適なグローバル生産拠点の検討

リスク

自社の電気代上昇による製造費用の増加

中~

長期

・太陽光発電の導入

・省エネ設備の導入

・高効率生産設備への更新

機会

省エネ・省エア製品の需要増による売上高の増加

中~

長期

・省エネ・省エア製品の開発

・最適製品を選定できるプログラムの開発と提供

・省エネ・省エア製品のバリエーション拡充と拡販

・省エネ・省エア製品の生産/販売体制強化

・省エネシステムの技術サポート

小売電力価格の下落

再生可能エネルギーが汎用化して小売電力価格が下落する

機会

自社の電気代下落による製造費用の減少

中~

長期

・再生可能エネルギー由来電力の主力電源化

・燃焼・空調設備の電化

機会

電気をエネルギー源とする製品の売上高の増加

中~

長期

・LCA関連団体(LCA日本フォーラム)への参加

・生産/販売体制の強化

・製品シリーズとバリエーションの拡充

・カスタム製品の対応強化

 

 

<4℃シナリオ>

分類

気候変動

ドライバー

想定

リスク

/機会

事業への影響

顕在

時期

2030年度

財務影響度

対応策

物理

(急性)

気象災害(洪水・大雨・台風等)の激甚化

気象災害に被災する

リスク

サプライヤーの気象災害被災に伴う納入遅延による損失

短~

長期

・複数購買の推進

・定期的な在庫保有日数の確認

・定期的な洪水・高潮リスクの把握

・新規サプライヤー選定時の洪水リスクの把握

リスク

自社の気象災害被災による棚卸資産・固定資産の災害損失

短~

長期

・生産/物流拠点の分散化

・事前の対策及び被災時のBCPの策定

・BCP対応予算の拡充

・損害保険契約

・在庫保管場所の見直し

・生産拠点の新設・移転時の気象災害リスクの評価

・洪水の影響を受けやすい拠点における洪水発生時の備えの検討

リスク

自社の気象災害被災に伴う操業停止による損失

短~

長期

物理

(慢性)

降雨パターンの変化

降雨の季節的な変動により、水不足が生じる

リスク

渇水による水不足に伴う操業停止による損失

短~

長期

・生産/物流拠点の分散化

・事前の対策及び被災時のBCPの策定

・BCP対応予算の拡充

・特に水不足のリスクが高い拠点における対策の実施や水不足発生時の備えの検討

・水使用量の削減

・水の再利用・循環の検討

 

 

 

[指標及び目標]

当社グループは、気候関連リスク及び機会を測定・管理するための指標として、国際的な基準である「GHGプロトコル」に基づくScope1及びScope2(*1)の排出量を用い、グループ全体(*2)を網羅するデータの収集を行っております。

将来の売上・生産規模の拡大も想定した上で、具体的な施策を積み上げて、GHG排出の絶対量を削減する中・長期目標(*3)を策定し、削減施策に取り組んでおります。

*1 Scope1: 自社の燃料消費によるCO2排出量

   Scope2: 他社から供給されたエネルギーの消費によるCO2排出量

*2 連結外部売上高の95%以上を構成する販売拠点、生産拠点、主要物流拠点34拠点

*3 2021年度を基準年として、SBTによる1.5℃シナリオの要求を満たす削減目標

 


 


 

 

(3) 人的資本に関する取組

[戦略]

当社グループは、ビジネスのグローバル化、顧客ニーズの多様化、少子高齢化・労働力人口の減少に伴い深刻化する人材不足といったビジネス環境の変化に対応するとともに、イノベーションの創出や生産性の向上など、ビジネスに新たな価値をもたらす効果が期待できるダイバーシティを推進し、人的資本の最大限の活用に取り組んでまいります。

 

① グローバル人事方針

当社グループの従業員約23,000名のうち75%が、海外のグループ会社に在籍しております。

当社グループがさらなる成長を遂げ、次のステージに進むためには、ダイバーシティの取組を推進し、グループが一体となって事業活動に取り組む体制を構築する必要があると考えております。具体的には、グループ間での連携・協働の深化、グループの優秀な人材が能力を発揮できる仕組みと環境の整備、人材育成の仕組みの整備に取り組みます。

当社グループは、こうした認識のもと、以下の人事方針を掲げております。

・従業員が会社に愛着と誇りを持ち、働きがいを感じることで、持てる力を存分に発揮できる環境を整備する。

・持続可能性と多様性を基軸とした人事施策を推進し、多様な個性を持った従業員を繋ぎ、グループとしての一体感を醸成する。

 

② 人材育成方針

(a) 基本的な考え方

当社グループは、空気圧機器をはじめとする自動制御機器の製造販売を通じて、「産業界の自動化・省力化に貢献する」という社会的使命を果たすために、人的資本を確保・育成していく必要があると考えております。

当社は設立以来、「働きがい」を重視した人事管理を行っております。自由闊達な企業風土を醸成し、実務経験を通じて人を育て、若い社員にも責任ある仕事を任せて成長を促しております。各自が自律的に活動することで持てる力を存分に発揮し、常に仕事に情熱を持ち、会社に誇りを持てる環境づくりに努めております。

当社グループは、持続可能性と多様性を基軸とした人事施策を推進するとともに、人材投資を惜しまず実行し、その効果の検証・改善を継続してまいります。

(b) 確保・育成していく人材像

・失敗を恐れずに積極的にチャレンジする人材

・グローバルな視点で活躍できる人材

・主体的に考え行動する自律型の人材

・専門性を高めスペシャリストを志向する人材

 

③ 社内環境整備方針
(a) 基本的な考え方

当社グループは、「SMCグループ行動規範」において、「従業員一人一人の人格、個性を尊重し、国籍、人種、民族、信条、宗教、性別等に基づくいかなる非合理な差別もなく、各自が意欲を持ち、能力を十分に発揮できる、安全で働きやすい職場環境の維持に努めます」と定めております。

(b) 安全・安心で健康的な職場環境の整備

事業活動のすべてにおいて安全・安心を優先いたします。各生産拠点に「安全道場」を設置し、研修を徹底するなど、万全な安全管理に努めております。また特に、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等のハラスメント行為は、人権を侵害し職場環境を害する行為であり、固くこれを禁じ、他人の行為も見逃しません。問題発生時には、迅速に調査し、被害者の救済と再発防止に向けた断固たる措置を取ります。全従業員を対象としたハラスメント防止研修を継続して実施し、組織としてハラスメントを起こさない職場風土づくりを進めております。

(c) 公平・公正で透明性のある人事評価と処遇

自由闊達な企業風土を醸成するとともに、明るく、働きがいのある職場環境の維持に努めます。公平・公正で透明性のある人事評価を行い、役割・能力・成果に基づいて処遇いたします。各自が意欲を持ち、能力を発揮できる環境を整備することで、生産性の向上を図り、会社に愛着や誇りを持って、働きがいを感じることができる職場環境づくりを進めております。

 

 

[指標及び目標]

① 女性の活躍推進

当社は、女性がキャリア形成をあきらめることなく活躍できる環境を整え、管理職へ昇進する機会も平等であることが重要だと考えております。積極的な採用活動により女性採用比率を向上させるとともに、出産や育児のための休暇・休業から復帰する際には、休業前と同一の職場に復職することとして、スムーズな復帰が可能となるよう配慮しております。また、仕事と家庭・育児等の両立支援策として、時短勤務制度や時差出勤制度などの諸制度を設け、働きやすい職場環境の整備に取り組んでおります。

将来的に組織の管理や経営の意思決定に携わる女性社員を増やしていくためには、中長期の視点でキャリア意識の醸成が必要であり、各自の特性や能力を最大限活かせる職場環境の整備や管理職の養成に関わる研修等の取組を進めております。

 

<当社における育児休業取得者の復職率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

育児休業取得者の復職率

98.9%

99.0%

96.7%

100.0%

99.0%

 

(注) 期間中に復職した者の数/期間中に休職を終了した者の数(退職者を含む)で算出いたしました。

 

<当社における大学新卒採用状況>

 

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

女性の

応募比率

技術職

2.3%

0.0%

4.2%

3.9%

7.2%

営業職・企画業務職

23.2%

21.0%

32.5%

31.3%

女性の

採用比率

技術職

(5年平均)

0.0%

(0.9%)

0.0%

(1.0%)

3.1%

(1.2%)

2.3%

(1.1%)

5.0%

(2.5%)

営業職・企画業務職

(5年平均)

15.0%

(16.7%)

22.7%

(17.1%)

(16.7%)

36.0%

(20.4%)

39.1%

(28.9%)

 

(注) 2020年度の営業職・企画業務職の女性の応募比率・採用比率につきましては、採用者が0名であったことから、算出しておりません。

 

<当社における女性管理職比率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

管理職層における女性比率

0.7%

0.9%

1.5%

1.8%

1.7%

 

 

<女性活躍推進法に基づく行動計画>

数値目標

(1) 技術職の新卒女性採用比率を5年平均で10%とする。

(2) 営業職・企画業務職の新卒女性採用比率を5年平均で35%とする。

(3) 社員1人当たりの年次有給休暇の取得率を80%以上とする。

 

 

② 男性の育児休業取得

当社は、男性の育児参加の促進を図るため、出生時育児休業制度の新設に合わせ、「出生時育児休業取得奨励金」を新設いたしました。職場全体が育児への理解を深めるとともに、育児を応援する職場風土の醸成と、育児休業を取得しやすい環境の整備を進めるために、社内報で男性の育児休業取得者の特集を組みました。これらの取組により、男性従業員の育児休業制度の利用が進んでおります。

また、育児を目的とした休暇の取得を促進するために、配偶者の出産時の特別有給休暇日数を増やしております。

 

<当社における男性従業員の育児休業取得率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

男性従業員の育児休業取得率

1.3%

0.7%

3.6%

11.0%

21.9%

 

 

<男性の育児休業取得の数値目標と施策>

数値目標

男性の育児休業取得率を2025年度に50%とする。

施  策

男性の育児休業取得状況を公表し、社内報等で取得者の声を紹介する。

管理職研修において周知徹底する。

 

 

③ 男女間の賃金格差

 

<男女間の賃金格差(男性を100とした場合の女性の値を表した指数)>

 

賃金格差指数

全従業員

48.5

正規雇用労働者

60.6

パート・有期労働者

89.0

 

 

<管理職層における男女間の賃金格差、平均勤続年数、従業員比率>

 

男 性

女 性

賃金格差

100.0

97.8

平均勤続年数(年)

31.0

27.4

従業員比率  (%)

98.3

1.7

 

 

当社の賃金制度は、同一労働同一賃金の原則に則り、同一の職群(職層や職階のカテゴリー)においては同一の賃金テーブルで運用しており、性別による支給格差は一切ございません。

賃金格差が生じている理由は、以下のとおりであると分析しております。

(a) 男女間の平均勤続年数の差

女性の平均勤続年数が男性より短い要因として、近年の新卒採用における女性の比率が上昇していることが挙げられます。

大学新卒で入社した40歳以上の従業員に占める女性の割合が2.9%であるのに対して、25歳以下での女性の比率は18.5%となっております。

(b) 男女間の管理職比率の差

当社では、相対的に賃金水準が高い職層(特に管理職層、技術職・営業職・企画業務職)で女性比率が低くなっております。

これらを踏まえた当社の対応策については、前記「① 女性の活躍推進」をご参照ください。

 

④ 人材の多様性確保

当社は、グローバル化への対応及び専門的知見を持つ人材の獲得を目的として、外国人や中途採用者の積極的な活用を推進しております。従業員全体の意識改革、組織の活性化といった効果も期待しております。

 

<当社における正規労働者に占める女性・外国人・中途採用者の比率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

女   性

28.3%

28.5%

28.1%

28.3%

28.2%

外 国 人

0.4%

0.5%

0.4%

0.4%

0.5%

中途採用者

16.6%

15.6%

16.2%

15.7%

13.8%

 

 

<当社における管理職に占める女性・外国人・中途採用者の比率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

女   性

0.7%

0.9%

1.5%

1.8%

1.7%

外 国 人

0.2%

0.2%

0.0%

0.2%

0.4%

中途採用者

29.2%

26.9%

25.9%

24.0%

23.1%

 

 

<当社における新規採用者に占める女性・外国人・中途採用者の比率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

女   性

32.8%

30.4%

20.7%

28.7%

18.7%

外 国 人

5.6%

0.6%

0.0%

0.6%

2.2%

中途採用者

2.1%

1.8%

22.4%

16.9%

43.5%

 

 

 

⑤ 従業員エンゲージメント

当社は、従業員が会社に愛着と誇りを持ち、働きがいを感じることで持てる力を存分に発揮できる環境の整備を進めております。従業員一人ひとりの意欲を高め、組織としての一体感を醸成することを目的に、従業員のエンゲージメントサーベイを実施しております。2022年度から、人事評価に関わる納得性調査を開始し、2023年度から「職務・仕事」「支援・上司」「環境・同僚」「風土・ビジョン」「処遇・報酬」の分類でエンゲージメントの調査を開始いたしました。従業員の「仕事に対する活力・熱意(ワークエンゲージメント)」と「組織に対する愛着、帰属意識(組織コミットメント)」の二軸で測定し、より良い職場環境づくりに活用するとともに、人事施策の評価に活用していく計画であります。

 

<当社における正規雇用労働者の離職率>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

正規雇用労働者の離職率

2.0%

1.8%

2.0%

2.0%

3.5%

 

(注) 期間中の離職者数/期初の在籍者数で算出いたしました。

 

<当社における新卒入社者3年以内離職率>

 

2021年4月1日

(2018年入社)

2022年4月1日
(2019年入社)

2023年4月1日
(2020年入社)

大学卒

2.0%

2.6%

0.0%

高校卒

8.4%

7.0%

 

(注)1 期間中の離職者数/期初の在籍者数で算出いたしました。

2 2023年4月1日時点における高校卒の数値については、2020年の新卒入社者が0名であったことから、算出しておりません。

 

⑥ 賃金水準の引上げ

当社は、従業員が働きがいを感じ、生産性の向上に取り組む意欲を高めることを目的として、賃金水準の向上に努めております。直近5期間の昇給率は、以下のとおりであり、平均年率3.9%であります。

また2023年4月から、従業員の資産形成を支援する目的も併せて、従業員持株会への拠出金に対して会社から支給する奨励金の支給率を、5%から15%に引き上げております。

 

<当社における正規労働者の昇給率の推移>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

正規労働者の昇給率

4.9%

4.0%

4.0%

2.6%

4.0%

 

(注) 2021年度は、住宅手当の制度拡充を別途実施したため、他の年度に比して昇給率が低くなっております。

 

<当社における正規労働者の平均年間給与の推移>

 

2018年度

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

正規労働者の平均年間給与(円)

7,857,240

7,499,525

7,753,221

8,529,285

8,646,196

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 海外での事業展開に伴うカントリーリスク

(リスクの内容)

当社グループは、顧客満足度の向上を通じた受注の拡大を目的として、世界各地域において研究開発から資材調達、生産、販売に至るまでの広範な事業活動を展開しております。特に中国においては、グローバルに製品供給を行うべく、生産拠点の充実・強化を進めてまいります。

 

中国をはじめ各国においては、以下のような不測の事態が発生するリスクがあります。

  ① 政治体制、経済環境の激変

  ② 法制、税制、為替政策、輸出入に関する規制などの急激な変更

  ③ 労働力の不足、人件費の高騰、大規模な労働争議の発生など労働環境の激変

  ④ 社会インフラの未整備に起因するエネルギー供給の不安定化

  ⑤ テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などによる社会的混乱

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

当該リスクが顕在化する可能性は10年から20年に一度程度と想定してまいりましたが、戦争や感染症の蔓延などリスクが顕在化したほか、経済面や安全保障面での米中対立も続いており、不透明感が高まっております。

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

当該リスクが顕在化した場合、現地従業員及び駐在員の安全並びに生産設備など現地資産の保全が危うくなるおそれがあるほか、グローバルな製品供給体制に支障が生じ、当社グループ全体の事業活動に深刻な悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスクへの対応策)

BCPの観点から、中国に匹敵する生産拠点をベトナムに整備することや、国内にも一定の供給能力を確保することで、不測の事態が発生しても早期に復旧できる体制の整備に努めております。

(当連結会計年度におけるリスクの顕在化について)

当連結会計年度においては、中国政府による新型コロナウイルス感染症対策の修正に伴う混乱、ロシアによるウクライナ侵攻の継続という形で当該リスクが顕在化いたしました。

当社グループの中国の生産拠点は、ロックダウンの対象とはならず、感染対策を徹底しつつ、稼働を継続することができました。お客様及びサプライヤー様の中には大きな影響を受けた先もありましたが、平素から潤沢な在庫を保持する戦略も奏功し、当社グループの製品供給に大きな支障は生じませんでした。また、ロシアによるウクライナ侵攻に関しては、紛争当事国における事業活動の規模は小さく、当社グループへの影響は限定的なものに止まりました。

 

(2) 外国為替相場の変動リスク

(リスクの内容)

当社グループは、世界各地域において研究開発から資材調達、生産、販売に至るまでの広範な事業活動を展開しております。

当社グループの外貨建取引及び外貨建資産等は、連結財務諸表作成時に円換算するため、外国為替相場の変動により業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

当社グループの海外ビジネスの拡大に伴い、リスクが顕在化する可能性は高まっており、過去の経験上、2~3年程度に一度は、為替変動により業績及び財政状態に比較的大きな影響を受けることが想定されます。

顕在化の時期としては、業績に対する影響は年間を通じて、財政状態に対する影響は決算期末となります。

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

円高方向への為替変動により、当社グループの外貨建売上高及び利益が減少いたします。外貨建の仕入及び費用も減りますが、相対的に影響は少額であります。また、当社グループの外貨建資産に関して、換算上のマイナスが発生いたします。

(リスクへの対応策)

外貨建の仕入を増やすことに努めておりますが、モノづくりの本拠が日本にあることから、対応には限界があります。現在、グループ内での現金配分を見直すことにより、特に為替変動の影響を受けやすい新興国通貨建の資産を減らす対応を進めております。

 

(3) 製品の欠陥に関するリスク

(リスクの内容)

当社グループは、製品の欠陥によってお客様に損害を与えた場合、製造物責任を問われるリスクがあります。

当社グループの主要製品である空気圧機器は、医療機器などの新しい分野に用途が拡大しており、これら機器に使用された製品に欠陥があったとして、損害賠償を求める訴訟が提起されるリスクもあります。

(リスクが顕在化する可能性の程度及び時期)

大規模な製品の欠陥という形で、当該リスクが顕在化する可能性は非常に低いと想定しております。顕在化の時期は特定できません。

 

(リスクが顕在化した場合の影響の内容)

当該リスクが顕在化した場合、損害賠償のための費用負担が発生するほか、お客様からの信頼を失うおそれがあり、イメージダウンに伴う他のお客様からの失注も含め、当社グループ全体の事業活動に悪影響が及ぶ可能性があります。

(リスクへの対応策)

当社グループは厳しい品質管理を行っておりますが、製品に欠陥が生じるリスクをゼロに低減することは不可能であります。生産物賠償責任保険には加入しておりますが、保険金によって賠償額のすべてを賄える保証はありません。

(当連結会計年度におけるリスクの変化について)

当社グループは、工場の生産設備などで使用される自動制御機器を製造販売しており、リスク管理の観点から、人体に直接触れるような医療機器の部品等としては、製品を供給しないことを原則としております。

しかし、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した際には、多数のお客様や各国政府からのご要請を受けて、半導体産業向けに実績のある製品を転用する形で人工呼吸器向けの製品供給を例外的に行いました。

他に同様の製品を短期間にかつ大量に供給できるメーカーはなく、人道的な見地から、ある程度のリスクは受容し、企業としての社会的責任を果たすべきであるとの経営判断を行ったものであります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績

当期においては、各国でコロナ禍からの正常化が進み、製造業全般において設備投資が回復いたしましたが、部品・原材料の調達難の継続、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化、米中の緊張の高まり、欧米の金融引き締めによる景気後退の懸念など、先行きの不透明な状況が続いております。

自動制御機器の需要は、半導体・電機関連は、年度前半は高水準でしたが、後半は世界的なインフレや景気後退の影響などにより、欧米を中心に設備投資先送りの動きが見られました。自動車関連は、半導体等部品不足の影響が継続し本格的な回復には至りませんでしたが、中国を中心にEVバッテリー関連需要が伸びました。工作機械関連、医療機器関連、食品機械関連及びその他の業種向けは、コロナ後の新たな省人化・自動化需要がありましたが、景気減速により一服感が見られます。

 

 (地域別の販売の状況)

日本では、スマートフォンやパソコン向け半導体メモリの生産調整の影響を受けた半導体・電機関連、半導体不足の影響が続いた自動車関連、年度後半にかけて減速した工作機械関連と、主要な需要業種向けで総じて受注は低調に推移いたしました。医療機器関連、食品機械関連の需要は底堅い動きを見せました。

北米では、半導体製造装置の対中輸出規制の影響などから、年度後半にかけて半導体関連の受注が大きく落ち込みました。自動車関連は、EV関連の設備投資が活況で、工作機械など関連する業種への波及効果が見られました。

欧州では、半導体関連では欧州域内での生産拡大に対応した生産拠点拡充の動きがありました。自動車関連では、半導体不足の影響はあったものの、車載用二次電池を中心としたEV関連の設備投資が活発でありました。製品供給能力や環境性能での優位性が、販売成績に好影響を与えております。

中国では、米中貿易摩擦の影響などから半導体関連は停滞しておりますが、EVを中心とした自動車関連が大きな伸びを示しました。医療機器関連は政策の後押しもあり好調が続きました。台湾では、半導体関連の設備投資が大幅な落ち込みを見せました。

その他アジアでは、年度後半にかけての半導体関連の需要減退に伴い、これらの分野の比率が高い韓国、シンガポール、マレーシアでは厳しい受注環境となりました。インドでは、自動車関連の大型投資がありました。

南米・オセアニアなどその他の地域では、コロナ禍の影響で延期されてきた設備投資が回復し、売上は前期を上回りました。

 

このような環境において当社グループは、自動化需要の伸長に対応した製品供給能力の拡大と、BCPに基づく生産の複線化を目的とした積極的な設備投資を進めました。さらに、お客様のCO2排出量削減に大きく貢献できる新製品開発や、販売活動におけるITを活用したグローバル連携の強化などの課題に引き続き注力いたしました。加えて、脱炭素社会の実現に向け、「GHGプロトコル」に基づくScope1とScope2のGHG排出量を、2030年度までに48%削減し、2050年度までにカーボンニュートラルを達成するという中長期目標を策定し、具体的な取組を開始いたしました。

 

この結果、当期の連結売上高は、販売数量の増加と、為替変動に伴う海外販売分の増収を主な要因として、824,772百万円(前期比13.4%増)となりました。運送費、人件費、IT関連費用等の増加により販売費及び一般管理費は増加いたしましたが、増収に伴う利益増加により営業利益は258,200百万円(同13.3%増)となりました。為替差益は減少いたしましたが、市場金利の上昇による受取利息の増加から、経常利益は305,980百万円(同12.1%増)投資有価証券売却益の計上により、税金等調整前当期純利益は308,777百万円(同13.2%増)親会社株主に帰属する当期純利益は224,609百万円(同16.4%増)となりました。

自己資本当期純利益率(ROE)は、前期に比べて0.6ポイント上昇して13.8%となりました。

 

② 財政状態

 (a) 資産の状況

資産合計は、1,927,940百万円(前期末比157,988百万円増)となりました。

現金及び預金は、事業活動による利益の獲得や、当社グループが保有する外貨建預金に係る為替換算の影響による増加がありましたが、主に米国債の購入や納税、自己株式取得、在庫積み増しや設備投資への資金充当により、603,570百万円(同81,263百万円減)となりました。

受取手形及び売掛金は、増収に伴う増加や、海外での外貨建販売分の為替換算による増加により、228,848百万円(同16,909百万円増)となりました。

棚卸資産は、売上の増加に伴う仕入の増加、及び制約が増している昨今のサプライチェーンの状況に対応するための部品・原材料在庫の戦略的な積み増しから、418,602百万円(同115,056百万円増)となりました。

有形固定資産は、売上の増加に対応するための生産能力確保や、製品供給の持続可能性を高めるBCPの強化を図る観点から、国内外で生産・物流設備への投資を拡大したほか、研究開発機能の向上や優秀な人材の確保を目的とした研究開発拠点の移転用地を取得したことなどにより、326,995百万円(同56,410百万円増)となりました。

 (b) 負債の状況

負債合計は、225,615百万円(前期末比14,937百万円増)となりました。

支払手形及び買掛金は、売上の増加に応じて仕入が増加したことや部品・原材料の仕入を戦略的に増やしたことから、73,636百万円(同11,534百万円増)となりました。

 (c) 純資産の状況

純資産は、自己株式の取得により55,030百万円減少したものの、当期純利益の獲得により利益剰余金が増加したこと、円安に伴い為替換算調整勘定が120,275百万円(前期末比32,381百万円増)となったことにより、1,702,325百万円(同143,051百万円増)となりました。

自己資本比率は、前期末の87.9%から当期末は88.1%となり、1株当たり純資産額は、前期末の23,808円08銭から当期末は26,331円72銭となりました。

 

③ キャッシュ・フロー

当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前期末比67,972百万円減491,324百万円となりました。

 (a) 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動により得られた資金は、101,617百万円(前期比54,476百万円の収入減)となりました。主な内容は、当期に計上した税金等調整前当期純利益308,777百万円(同35,925百万円の収入増)に、非資金損益項目である減価償却費25,767百万円(同5,210百万円増)、為替差益21,874百万円(同3,725百万円増)を加減算して求めた営業損益を基にしたキャッシュ・フロー、棚卸資産の増加による支出106,728百万円(同72,951百万円の支出増)、法人税等の支払による支出91,581百万円(同29,612百万円の支出増)であります。

 (b) 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動により使用した資金は、87,086百万円(前期比29,128百万円の支出減)となりました。主な内容は、生産能力増強を主な目的とした設備投資による支出72,180百万円(同5,408百万円の支出減)、資金運用を目的とした投資有価証券の取得及び売却による差引支出42,063百万円(前期12,804百万円の収入)であります。

 (c) 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は、113,299百万円(前期比24,366百万円の支出増)となりました。主な内容は、自己株式の取得による支出55,030百万円(同5,010百万円の支出増)、配当金の支払58,776百万円(同19,144百万円の支出増)であります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の状況

(a) 生産実績

当社グループは自動制御機器事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

自動制御機器事業

886,481

+22.5

 

(注)  金額は、販売価格によっております。

 

(b) 受注実績

当社グループは自動制御機器事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

自動制御機器事業

847,527

+3.7

179,170

+14.5

 

 

(c) 販売実績

当社グループは自動制御機器事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

自動制御機器事業

824,772

+13.4

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析

当期の売上高は、824,772百万円(前期比13.4%増)となりました。需要動向及び販売の状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績」に記載のとおりであります。

売上総利益は、421,159百万円(同15.8%増)となりました。原材料価格の高騰や人件費の増加、旺盛な受注に対応するための派遣社員費用の増加などのコストの増加を増収が補い、売上総利益率は前期比1.1ポイント上昇して51.1%となりました。

販売費及び一般管理費は、運送費、人件費、IT関連費用の増加を主因に162,958百万円(同19.8%増)となり、販管費負担率は前期比1.1ポイント上昇して19.8%となりました。営業利益は258,200百万円(同13.3%増)となり、営業利益率は前期と同じ31.3%となりました。

営業外損益では、為替差益が28,203百万円(同14.9%減)となりましたが、市場金利上昇による受取利息が11,722百万円(同74.6%増)となり、経常利益は305,980百万円(同12.1%増)となりましたが、経常利益率は前期比0.4ポイント低下して37.1%となりました。

特別損益では、投資有価証券売却益が増加となり、法人税等負担率が低下したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は224,609百万円(同16.4%増)となりました。

なお当期の期中平均為替レートは、1USドル=135円56銭、1ユーロ=141円05銭、1人民元=19円75銭、期末為替レートは、1USドル=133円54銭、1ユーロ=145円72銭、1人民元=19円42銭でありました。

(b) 財政状態の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態」に記載のとおりであります。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。作成に当たっては、経営者による会計方針の選択と適用並びに資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要といたします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等に基づき合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる可能性があります。

 

当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

(棚卸資産の評価に関する事項)
  (ⅰ) 当社グループの製品の特性(需要及び材質)

当社グループの主要製品である空気圧機器をはじめとする自動制御機器は、お客様の工場の生産・搬送ライン、半導体製造装置、工作機械、産業用ロボットなどに組み込まれる要素部品であります。自動制御機器製品の単価は比較的低廉ですが、その不具合や欠品によってラインの停止や稼働遅れが生じた場合、お客様は多大な損失を被ります。そのため、お客様のニーズに合致した製品を短納期で即納することができるかどうかが、競争上、極めて重要な要件となります。

当社グループの製品を採用してくださったお客様は、次にラインや装置の図面を更新するまで長期間にわたり継続して同一の製品を購入される傾向があります。

また、当社グループの製品の主要な材質は、アルミニウムや樹脂など腐食に強い素材であり、製品は経年劣化しにくい特性を持っております。

さらに、在庫の陳腐化リスクを低減するため、最終製品に組み上げる前の段階で在庫として保持する等の対応も行っております。

 (ⅱ) 当社グループの在庫保有方針

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境 ② 当社グループの競争優位性」に記載のとおり、豊富な品揃えと潤沢な在庫は当社グループの競争優位性の重要な要素であり、戦略的に厚めの在庫を保持するという方針を変更する予定はありません。

 (ⅲ) 棚卸資産の評価減金額の算定方法

当社は、上記の製品の特性及び在庫保有方針を踏まえつつ、時間の経過に応じた販売実績の減少に伴う収益性の低下を棚卸資産の評価に適切に反映するため、当社及び各連結子会社が保有する在庫の品番別の残高、過去の一定期間(概ね10年)の販売・使用の実績データ等を分析し、滞留状況に応じた評価減率を設定して、棚卸資産の評価減金額を算定しております。

 (ⅳ) 重要な会計上の見積りに関する注記との関係

「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」及び「2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性
① キャッシュ・フローの状況の分析

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。

 
② 資金需要

当社グループの運転資金需要の主なものは、原材料・部品等の購入費用、製造経費、販売費及び一般管理費、研究開発費であります。投資を目的とする資金需要の主なものは、土地、建物、機械設備等の購入など設備投資であります。

 

③ 財務政策

当社グループは、通常の事業活動に必要な流動性を確保しつつ、機動的な設備投資を実施するための資金需要にも対応できる資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

長期運転資金及び設備投資資金については自己資金により賄い、短期運転資金については自己資金のほか必要に応じて金融機関からの借入により調達することを基本としております。

 当期末における借入金の残高は12,187百万円、現金及び現金同等物の残高は491,324百万円であります。

なお当社は、2022年11月14日開催の取締役会の決議に基づき、当期中に839,200株、54,995百万円の自己株式の取得を実施いたしました。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

  「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(5) 経営戦略の現状及び見通し

  「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、世界各国・地域のルールやニーズに沿った製品開発を行い、IoTやスマートファクトリーの進展など市場環境の変化に対応するため、自動制御技術及びその周辺技術に関する研究開発活動を実施しております。

これら研究開発活動の中核を担うのは、当社の筑波技術センターであり、さらに米国、英国、ドイツ、中国に設けた技術センターが、各地のお客様のニーズや技術情報を収集し迅速に共有するなど、緊密な連携を図っております。

自動制御機器事業においては、半導体製造装置、自動車、工作機械、医療機器、食品機械、プラント、流体・粉末搬送、一般産業機械など多種多様な用途に適応した製品機種の拡充に加え、省エネ・省スペース・軽量化などの性能向上と、生産コスト及び環境負荷物質の削減を実現する新製品開発に取り組んでおります。

当該事業の主な研究開発テーマ及び開発機種等は下表のとおりであり、当期の研究開発費は27,361百万円(前期比16.6%増)であります。

 

研究開発テーマ

開発機種あるいは拡充機種

方向制御機器の開発

オールインワンマニホールド

小型・軽量化ソレノイドバルブ

ダンプバルブ

残圧排気弁付サプライストップ弁スペーサ付

低背型2・3ポートバルブ

新2ポートバルブ

パルスバルブ

薬液用エアオペレートバルブ

小型薬液用バルブ

駆動機器の開発

新型パワークランプシリンダ

耐環境シリンダ

長寿命シリンダ 各シリーズ化

コンパクトガイド付薄型シリンダ

ステンレスシリンダ 無調整クッションタイプ

エアスライドテーブル サイズ32追加

次世代ロータリアクチュエータ

電動アクチュエータ大型ロッドタイプ

電動アクチュエータコントローラ内蔵2点動作仕様

汎用温調機器の開発

半導体業界向けチラー

レーザ用チラー

小型サーモコン

高性能FA機器の開発

イオナイザ バーコントローラ一体型タイプ

簡単電動アクチュエータ一体型コントローラ

ワイヤレス小型無線

フィールドバス真空マニホールド

圧力センサ内蔵スペース形真空エジェクタ

金属プレス対応すべり止めパット

補器類・その他

パイロットチェックバルブ

減速コントローラ

2圧制御レギュレータ

ワンタッチ管継手付ステンレススピードコントローラ

金属エルボタイプ スピードコントローラ

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