当社グループは使命である「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」に基づき、創立100周年となる2026年に向けて長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』を策定しました。『Kuraray Vision 2026』で掲げたありたい姿である「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を目指し、社会との価値共創を図りながら、他社と一味違うスペシャリティ製品及びサービスを世界に提供する企業であり続けます。
当社グループは長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』の実現に向けて、本年度よりスタートした中期経営計画『PROUD 2020』(2018年度~2020年度)において以下の4つの主要経営戦略を推進しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2018年12月31日)現在において当社が判断したものです。
① 競争優位の追求
顧客ニーズに基づく高付加価値製品・用途の開発推進や、今後、更に存在感が増す新興国・地域を、新たな機会創出の場として捉え、戦略的に取り組みを強化することや、IoTを活用した生産・業務プロセスの革新・改善を行うことで競争力の強化を行っていきます。
② 新たな事業領域の拡大
独自技術の研鑽と外部技術の取り込みによる新事業の創出やM&A・アライアンスによる新領域の獲得、技術とサービスを組み合わせたビジネスモデルの確立を行うことで事業領域を拡大していきます。
③ グループ総合力強化
ビジネスの拡大に合わせたグローバル経営基盤の構築、世界の多様な優秀人材を惹きつける働きがいのある職場づくり、クラレグループの更なる一体感の醸成を行っていくと同時に、コンプライアンス徹底の取り組みを強化していきます。
④ 環境への貢献
上記3つの経営戦略に基づく具体的施策の実施において、事業活動における環境負荷の低減、地球環境や社会問題の解決に貢献する製品やサービスの提供、安全・安心な製品やサービスの提供の拡大を通じ、自然環境や生活環境の向上に貢献します。
中期経営計画『PROUD 2020』の2年目となる2019年度は『PROUD 2020』で掲げた主要経営戦略の具体的施策を着実に実行していくとともに、2018年度に買収を完了したカルボン・カーボン事業の統合による成果の具現化や、投資を決定したタイにおけるブタジエン誘導品事業の遅延なき遂行に注力してまいります。また、世界経済、金融市場の不透明感が高まる中、不測の景気変動にも対応出来得る財務体質を維持しつつ、将来の安定した事業ポートフォリオ構築を目指し、成長事業への投資を継続して実施していきます。
当社グループは、持続的に成長するスペシャリティ化学企業として、大きく飛躍するために今後も挑戦し続けます。
当社グループの業績(経営成績及び財政状態)等に重要な影響を及ぼすリスクには以下のような項目があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2018年12月31日)現在において当社が判断したものです。
① 事業環境の変化に関わるリスク
当社グループは、多様な事業ポートフォリオを有しており、製品市場もグローバルかつ様々な用途分野に展開しています。さらに、当社の製品は特殊化学品が多く、一般に比べて商品市況の影響を受けにくい構成になっていますが、近年、用途分野を電気・電子、自動車、環境等の成長分野へシフトさせつつあり、業績の依存度も高まっています。これらの分野は、最終製品における業界標準の転換、短い製品寿命、グローバルな開発競争等、市場変化が激しいため、当社製品についても市場環境や競争条件が激変するリスクがあります。
また、当社グループの製品である化成品、合成樹脂、合成繊維の原料は、原油、天然ガスの市況に影響を受けるエチレン等の石油化学製品です。このため、予想を超えるこれらの市況の変動が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらの事業環境の変化により、重要な事業が縮小・撤退を余儀なくされるリスクがあります。
② 事故・災害に関わるリスク
当社グループは、日本及び欧州、北米、アジア、豪州に生産拠点を設けており、これらの多くは大規模な化学工場です。爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故・災害の未然防止、及び災害発生時には被害の極小化に努めるとともに、重要な生産設備については、拠点分散や損害保険によるリスク対応を行っていますが、重大な保安事故、環境汚染や自然災害が発生すれば、従業員や第三者への人的・物的な損害、事業資産の毀損、長期の生産停止が生じるリスクがあります。
また、重要な原材料、設備・メンテナンス部品やサービスの提供などを担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生により、当社グループの製品供給に影響が生じるリスクがあります。
③ 係争・法令違反に関わるリスク
当社グループは、独自技術による事業を数多く有しており、将来において、当社グループの知的所有権への重大な侵害や当社の権利に対する係争が発生するリスクがあります。
また、当社グループは、自動車、電気・電子材料、医療、食品包装等、最終製品の品質確保に重要な役割を担う製品を数多く供給しています。当社グループでは主に製造拠点単位で品質マネジメントシステムを導入し品質の向上に努めていますが、品質の欠陥に起因する大規模な製品回収が発生すると、PL保険でカバーできない損害賠償等の損失が発生するリスクがあります。
当社グループの各事業拠点においては、コンプライアンス体制を構築し、法令等の遵守に努めていますが、重大な法令違反を起こした場合、また現行の法規制の変更や新たな法規制等が追加された場合には、事業活動に制約を受けるリスクがあります。
④ 為替の変動に関わるリスク
当社グループは、日本国内及び欧州、北米、アジア、豪州などの海外諸地域で生産、販売を展開しています。当社グループが国内で生産し、海外へ輸出する事業では製品の輸出価格が為替変動の影響を受けます。一方、海外の事業拠点で生産、販売する事業では、異なる通貨圏との間の調達・販売価格及び外貨建て資産・負債の価額が為替変動の影響を受けます。このため想定を超える為替変動は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ その他のリスク
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、戦争・暴動・テロ、伝染病等、偶発的な外部要因によって事業活動に支障が生じるリスクがあります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2018年12月31日)現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の概況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、欧米を中心に安定的な成長を維持してきましたが、米国の通商政策による貿易摩擦の激化や、新興国からの資金流出による信用不安などにより、年度後半にかけ、減速局面に入ってまいりました。また、化学業界におきましては、年度を通じた原燃料価格の上昇が企業収益の圧迫要因となりました。かかる状況下、当社の業績においても第3四半期連結累計期間までは計画線上で推移していましたが、当第4四半期連結会計期間は前連結会計年度の業績を下回る結果となりました。当社グループは当連結会計年度より中期経営計画「PROUD 2020」をスタートさせました。初年度は、ありたい姿である「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を目指して、「PROUD 2020」で掲げた主要経営戦略の具体的施策を順次実施し、中長期的な視点に基づく、新たな事業ポートフォリオ構築への取り組みを開始しました。
当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は前年同期比84,553百万円(16.3%)増の602,996百万円、営業利益は10,557百万円(13.8%)減の65,794百万円、経常利益は13,067百万円(17.6%)減の61,167百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は20,898百万円(38.4%)減の33,560百万円となりました。なお、当連結会計年度より、たな卸資産のうち製品、原材料及び仕掛品の評価方法を先入先出法に統一しており、経営成績の前年比較の説明は、遡及処理後の数値を適用しています。さらに、当連結会計年度より有形固定資産の減価償却方法と耐用年数、及び全社共通費の各セグメントへの配賦方法の変更を行いました。
加えて、当社は、前連結会計年度においてクラリーノ事業を機能材料セグメントに区分していましたが、2018年1月1日付の組織改定に伴い繊維セグメントへ編入しました。当連結会計年度の比較及び分析は、変更後のセグメント区分に基づいています。
また、当社は2018年3月9日付でCalgon Carbon社の買収を完了し、当連結会計年度より連結対象に含めています。
[ビニルアセテート]
当セグメントの売上高は279,379百万円(前年同期比4.7%増)、営業利益は54,739百万円(同11.2%減)となりました。前述の有形固定資産の減価償却方法と耐用年数、及び全社共通費の配賦方法の変更により、当セグメントの営業利益はマイナスの影響を受けました。
① ポバール樹脂は販売量が減少しましたが、高付加価値化が進み堅調に推移しました。光学用ポバールフィルムは需要の順調な伸びにより、販売量が増加しました。また、ディスプレイ市場の拡大とパネルサイズ大型化のニーズに対応するため、第1四半期連結会計期間に倉敷事業所で新設備投資(2019年末稼動予定)を決定しました。水溶性ポバールフィルム及びPVBフィルムは、販売量が増加しましたが、原燃料価格上昇の影響を受けました。
② EVOH樹脂<エバール>は、米国工場における定期修理及び2018年5月に発生した火災の影響を受けました。
当セグメントの売上高は57,207百万円(前年同期比1.5%増)、営業利益は7,272百万円(同19.3%減)となりました。また、当第4四半期連結会計期間にタイにおけるブタジエン誘導品生産プラント建設の投資決定を行いました。
① イソプレン関連では、年度を通じて原燃料価格上昇の影響を受けました。また、年度後半にかけて出荷が減少し、前年並の販売量にとどまりました。
② 耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>は、自動車用途、コネクタ用途を中心に販売が拡大しましたが、原燃料価格上昇の影響を受けました。
当セグメントの売上高は131,533百万円(前年同期比138.3%増)、営業利益は4,396百万円(同34.0%減)となりました。なお、当連結会計年度より、Calgon Carbon社の業績を含んでいます。
① メタクリルは、好市況が継続したことに加え、高付加価値品の販売が拡大し順調でした。
② メディカルは、歯科材料の審美修復関連製品を中心に順調に推移しました。
③ カルゴン・カーボンは、当第4四半期連結会計期間に確定したのれん償却額等の影響を受けました。炭素材料は汎用用途の販売量が減少しました。
人工皮革<クラリーノ>は、スポーツシューズ向け出荷が減少しました。また、生活資材では<クラフレックス>で高付加価値品の販売が拡大しましたが、ビニロンは輸出が減少したことに加え、原燃料価格上昇の影響を受けました。その結果、売上高は64,716百万円(前年同期比2.5%減)、営業利益は6,279百万円(同16.8%減)となりました。
繊維関連事業は、ユニフォーム及びスポーツ衣料用途で堅調に推移し、海外縫製品も販売が拡大しました。また、樹脂・化成品関連事業は輸出を中心に順調であった結果、売上高は138,848百万円(前年同期比5.4%増)、営業利益は4,215百万円(同7.4%増)となりました。
その他事業は、売上高は58,025百万円(前年同期比12.9%増)、営業利益は研究開発費等の経費増加により、1,178百万円(同61.0%減)となりました。
(2) 当期の財政状態の概況
総資産は、のれんの増加及び有形固定資産の増加等により前連結会計年度末比170,381百万円増の947,116百万円となりました。負債は、社債及び長期借入金の増加等により前連結会計年度末比168,835百万円増の380,083百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末比1,545百万円増加し、567,033百万円となりました。自己資本は555,438百万円となり、自己資本比率は58.6%となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益50,041百万円及び減価償却費56,698百万円等の収入に対して、たな卸資産の増加9,096百万円及び法人税等の支払額21,804百万円等の支出により、営業活動によるキャッシュ・フローは75,171百万円の収入となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得119,814百万円、有形及び無形固定資産の取得65,957百万円等の支出により、投資活動によるキャッシュ・フローは186,982百万円の支出となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
短期借入金の純増額26,715百万円、長期借入れ90,000百万円及び社債の発行40,000百万円等の収入に対して、長期借入金の返済25,860百万円及び配当金の支払い額14,691百万円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは114,088百万円の収入となりました。
以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等により、当連結会計年度における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より1,110百万円増加して、71,345百万円となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標は以下のとおりです。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により計算しています。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
4.有利子負債は短期借入金、コマーシャル・ペーパー、長期借入金及び社債の合計額を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
5.2018年12月期より、たな卸資産の評価方法を変更しています。当該会計方針の変更は遡及適用されるため、2017年12月期の数値は遡及適用後を記載しています。
当社グループの必要資金は、当社グループ製品の製造販売に係る原材料費、経費、販売費及び一般管理費等の運転資金及び、設備投資、M&A等に係る投資資金が主なものです。
財務状況は健全性を保っており、現金及び現金同等物、有価証券などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金、社債等による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えています。また、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、金融機関とコミットメントライン契約、当座貸越契約等を締結し、資金流動性を確保しています。
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の概況及び分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(6) 経営成績に重要な影響を与える要因と対応
経営成績に重要な影響を与える要因と対応については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しています。
(合弁契約)
当社は、PTT Global Chemical Public Company Ltd.及び住友商事株式会社とタイにおけるブタジエン誘導品の製造販売事業に関する合弁契約を2018年3月7日付で締結しました。
当社グループにおける研究開発活動は、私たちの使命「私たちは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します。」に基づいて、社内カンパニー・事業部・連結子会社に所属するディビジョン研究開発とコーポレート研究開発との緊密な連携の下に推進されています。
コーポレート研究開発は、以下3点を通じて、クラレグループ全体の業容拡大・収益向上に資することを目指しています。
① 新事業の創出:素材事業を主に、あるいはそれらに加工技術を付加した部材事業をターゲットとし、早期創出を目指します。2018年度より開始した中期経営計画「PROUD 2020」の進行中に、部材事業の事業化を推進するとともに、当社における部材事業の立ち上げにおいて、何が必要かを見極めます。
② 既存事業の強化・拡大:コーポレート機能の抜本的見直しのもと、カンパニー・グループ会社との協働・支援を強化し、全社事業の盤石化を図るとともに、新事業開発を促進します。
③ 基盤技術の保有:新事業の創出及び既存事業の強化・拡大を通じて、必要とする基盤技術を構築し、深化・深耕を図ります。
研究開発体制として、コーポレート研究開発は、研究開発本部において、基礎段階のくらしき研究センター・つくば研究センター及びKAI Corporate R&D(米国)、事業化段階の機能製品開発部・成形部材事業推進部及びベクスター事業推進部を擁しています。生産技術に関しては、技術本部 技術開発センターにおいて「原理原則と現場感覚の最適融合」による生産技術開発を推進しています。また、IoTを活用した生産効率、及び品質向上への取り組みを進めています。
ディビジョン研究開発は、社内カンパニー・事業部・連結子会社が各事業所に研究開発部署を有しています。コーポレート研究開発とディビジョン研究開発を合わせた当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発人員数は1,029人です。
当連結会計年度のセグメントごとの研究開発費は、ビニルアセテート6,800百万円、イソプレン1,648百万円、機能材料3,333百万円、繊維1,916百万円、トレーディング158百万円、その他1,339百万円、全社共通(コーポレート研究開発)5,962百万円、合計21,160百万円になります。
セグメントごと及びコーポレートの研究開発活動を示すと次のとおりです。
[ビニルアセテート]
・ポバール樹脂、ポバールフィルム、PVBフィルム、<エバール>(樹脂、フィルム)の酢酸ビニルチェーンについては、世界のリーディングカンパニーとして、国内外の研究開発部署が連携し、新規用途開発、新商品開発、新規生産技術開発も併せて、研究開発活動を推進しています。
・ポバール樹脂は、当社ビニルアセテートチェーンの根幹に位置する事業として、日米欧亜の6工場を中心としたグローバルネットワークを強みとして市場開発を推進しています。自消・外販両面で安定かつ高い品質の原料供給を基本とし、クラレ発の新規技術を積極投入すると共に技術サービスネットワークの強化により付加価値の高いビジネス機会を提案します。
・ポバールフィルムは、液晶ディスプレイ向け光学フィルムのトップメーカーとして市場を牽引すべく、さらなる高性能化・高品質化に顧客と一体となって取り組んでいます。また、洗剤包装用途を中心にますます拡大する水溶性フィルムについても、ポバール樹脂メーカーである強みを活かし、原料まで遡った高性能化・多機能化を加速させます。
・PVBフィルムは、自動車用途・建築用途の高付加価値品の開発を進めています。その一環として、アイオノマー樹脂をシート化した<SentryGlas>の更なる高付加価値化やPVBフィルムとのシナジー効果の発現、新規用途開発を推進しています。
・<エバール>樹脂は、世界規模で食品廃棄ロスの削減や環境負荷の低減が求められるなか、日米欧の3拠点を中心に世界各地のニーズを把握しながら、バリア材料の新技術開発・用途開発を推進しています。また<エバール>フィルムは、省エネルギー・地球環境保全に貢献する用途へ積極的に展開していきます。さらにバイオマス由来のガスバリアフィルム<PLANTIC>については、CO2排出削減効果とガスバリア性を融合した新素材として、用途開発に取り組んでいます。
[イソプレン]
・エラストマー関連では、熱可塑性エラストマー及び液状ゴムの差別化・高付加価値化に取り組んでいます。植物由来原料のファルネセンを用いた液状ゴムは、高機能タイヤの改質剤として国内外のタイヤメーカーへ採用が広がっています。ファルネセンを用いた熱可塑性エラストマーの開発も進めており、更なる差別化製品の開発と市場拡大に向けて研究開発、マーケティング活動を推進しています。
・イソプレンケミカル関連では、独自性の高いC4ケミストリーをさらに進化させた化学品として、香料、溶剤や特殊インキ関連の材料開発ならびに精密有機合成技術を基盤にした新規材料など機能性化学品の創出に取り組んでいます。
・耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>では、自動車の軽量化に伴いエンジン冷却配管が金属製から樹脂製へ置き換わりつつあり、耐加水分解性と柔軟性を両立する押出グレードを開発し、自動車冷却配管メーカー各社で評価が進んでいます。また、PEEKやフッ素系樹脂を代替できる性能を持つ新規ポリマーの開発に取り組んでいます。
[機能材料]
・メタクリル樹脂については、差別化ポリマーの拡充とメタアクリル系樹脂を活用した新規用途開発、新商品開発を主体に研究開発活動を行っています。
・メディカル事業では、クラレノリタケデンタル株式会社の無機/有機の技術の融合による新規歯科材料の開発に注力し、CAD/CAM用ジルコニア、高強度レジン等のデジタル化の流れにも対応した開発、商品化を行っています。また、人工骨インプラント<リジェノス>、吸収性骨再生用材料<アフィノス>は、配向連通孔技術を特長に、多面的な展開を進めています。
・炭素材料では、買収したCalgon Carbon社との技術融合を進め、「水・環境・エネルギー」分野を重点戦略領域にグローバルな研究開発を推進し、活性炭及び吸着分野のイノベーションを創出していきます。
[繊維]
・PVA繊維<ビニロン>については、革新プロセス(VIP)によるゴム補強用フィラメントは、量産1号機が本格稼働を始め、AIやビッグデータ解析により高収率生産を目指しています。また、更なる拡大に向け、増速技術の研究や投資効率の優れた設備の検討を進めています。FRC(セメント補強材)は、脱アスベストが本格化する新興国を中心に拡販に努めていますが、中国競合品との競争が激化し、新規用途分野への開拓参入とビジネスポートフォリオの転換を目指しています。
・高強力繊維<ベクトラン>は、事業拡大のため、グローバルに知財戦略体制を強化し、また日米生産拠点の品質体制の整備と強化を行いました。高強度・低吸水性や耐切創性の特長が求められる高採算の中細繊度品が国内外で伸長し、収益を確保しました。
・人工皮革<クラリーノ>については、環境対応型革新プロセス(CATS)による特長を生かした新商品開発により、販売拡大が進んでいます。
・不織布<クラフレックス>については、メルトブローン技術とスパンレース技術を融合した高付加価値不織布をコスメ用途やマスクとして国内外で展開し、急速に販売が拡大しています。また食品用途については、製造環境の衛生管理を進め、東南アジアを始め国内外での拡販に努めています。
・ジェネスタ繊維(PA9T繊維)は、耐熱性、耐薬品性の特長を生かして、自動車のフィルターに採用されました。その特長を生かし、空調関係他の新たなフィルターや炭素繊維との複合による熱可塑性コンポジットの可能性が広がっています。
[トレーディング]
・ポリエステル長繊維<クラベラ>では、①熱水に溶解し、生分解性をも有する特殊水溶性樹脂<エクセバール>を用いた水溶性繊維<ミントバール>、②要求性能に応じた多様な断面構造で高い帯電防止性能を持つ導電性繊維<クラカーボ>、③高白度でありながら透け防止性能に優れる<エクステージ>など、環境に優しい、高機能性をキーワードにした独自素材の開発を推進しています。
[その他]
・アクア事業推進本部では、中空糸ろ過膜を用いた様々な水の製造・回収、ポリビニルアルコール(PVA)ゲルを用いた産業排水の処理・回収、海洋生態系保全のための海水処理などを通して、「高品質で安全な水の提供」と「環境負荷の低減」に貢献する素材・装置・プラント・技術開発に取り組んでいます。
・クラレプラスチックス株式会社では、スチレン系エラストマーを使用した機能性コンパウンド及び同コンパウンドをベースとしたメッシュシート等の二次製品、水溶性樹脂の特殊コーティング(PVAコート)加工を施したフィルム、成型加工技術を利用したゼロエネルギー住宅向け断熱換気・空調ダクトや機能性コンパウンドと高強力繊維 <ベクトラン>を使用した土木・産廃用途等向け繊維複合ホース等の開発を推進しています。
[コーポレート研究開発]
・コーポレート研究開発のミッションである ①新事業の創出 ②既存事業の強化 ③基盤技術の構築・深耕の達成に向けて、改革を進めています。また、当社事業の急速なグローバル化に対応し、グループ海外拠点との連携を強化しています。
・酢酸ビニルチェーンの更なる事業拡大を図るべく、これまで培ったコア技術に加え、内外から新たな技術を取り込み、優れた機能を有する酢ビ系新素材の開発を進めています。酢ビ系高分子の基本構造を精密に制御する技術や安価に機能化する技術を獲得し、顧客ニーズに合致した素材を早期に提案できる開発体制を構築することで、世界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を確立します。
・触媒開発技術を基盤技術と捉え、これまで長年培った均一系触媒技術のみならず固体触媒技術開発を進めています。これら技術開発を通じ、イソプレン事業、ビニルアセテート事業にかかわる既存事業の強化ならびに新規材料開発を展開していきます。
・カンパニー・グループ会社との連携を通じて、高分子化合物の重合・変性・成形材料化に関する基盤技術を拡充・深耕し、既存技術の強化・拡大と新事業の創出に資するための新規技術・新規材料を開発します。
・機械学習など、デジタル技術の研究開発分野での応用を進めています。
・リチウムイオン二次電池(LiB)の研究開発・市場開発に関し、植物を原料とした低吸湿、耐酸化性ハードカーボンに加え、炭素構造を見直し出力性能をより向上させ、黒鉛同等以上の体積容量を発現する新規炭素材の市場提案、新生産技術開発進めています。加えて、当社ポリマー技術により低抵抗・高接着性を特徴とする水系バインダー、高接着性を特徴とする溶剤系バインダーの開発、低抵抗・高温耐久性を有する新しい構造を有するセパレータの開発を進め、急速に市場進出が進むハイブリッド車や電気自動車などの車載用市場、急速充電コンシューマ市場向けの電池部材の開発を一層加速していきます。
・新規アクリル系の特殊フィルムの開発において、アクリルの透明性を生かしながら、新たな機能を付与させた製品の用途開拓を推進しています。展示会においては、多くの顧客からサンプル供給の要求を受けるなど、注目を集めています。光学や加飾分野では採用に向けた評価が進んでおり、更に市場展開を加速していきます。
・高周波回路基板用途の液晶ポリマーフィルム<ベクスター>は、車載用ミリ波レーダーや5Gアンテナなど高周波による高速伝送の需要が高まる中、フレキシブルプリント配線基板として高周波領域での伝送損失が低く、加工性に優れる点が評価され数量が拡大しました。この流れは今後も加速することが予想され、積極的に事業拡大を進めていきます。
・半導体用研磨パッド(CMPパッド)は、人工皮革で培ったポリウレタンの設計及び製造技術を駆使し、従来に無い高硬度ポリウレタンを原料にしています。当社CMPパッドの特長は、高硬度なため研磨するデバイスを平坦にする能力が優れること、高硬度でありながら研磨傷が少ないこと、耐磨耗性が優れるため長時間使えること、などで、複数の顧客・複数プロセスで採用されています。また、顧客のプロセスや種々の研磨対象に応じて適正な銘柄を選定・提案できる体制を整えています。現在、国内のみならず海外への展開も進めており、顧客の各種プロセスに対応していきます。
・微細パターン設計・加工技術を用いた微細パターン付きフィルムを開発し、次世代自動車ディスプレイ用途を中心に市場開拓活動を進めています。拡張現実(AR)を取り入れたヘッドアップディスプレイ(HUD)用途での評価が車載用部材供給メーカー各社で進み、2019年度からの採用を既に決めている自動車メーカーも現れつつあります。特に、欧州Car OEMでの採用が2020年以降加速する事が予想されています。この取組を足掛かりに新規用途創出と市場拡大を目指し、新しいニーズに合った商品開発を更に加速しています。