独立監査人の監査報告書

 

 

 

2022年3月24日

株式会社クラレ

取 締 役 会  御 中

 

PwCあらた有限責任監査法人

 

東京事務所

 

指定有限責任社員
業務執行社員

 

公認会計士

河    瀬    博    幸

 

 

 

指定有限責任社員
業務執行社員

 

公認会計士

関    根   和   昭

 

 

 

監査意見

当監査法人は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査証明を行うため、「経理の状況」に掲げられている株式会社クラレの2021年1月1日から2021年12月31日までの第141期事業年度の財務諸表、すなわち、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、重要な会計方針、その他の注記及び附属明細表について監査を行った。

当監査法人は、上記の財務諸表が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、 株式会社クラレの2021年12月31日現在の財政状態及び同日をもって終了する事業年度の経営成績を、全ての重要な点において適正に表示しているものと認める。

 

監査意見の根拠

当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。当監査法人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。

 

 

監査上の主要な検討事項

監査上の主要な検討事項とは、当事業年度の財務諸表の監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項である。監査上の主要な検討事項は、財務諸表全体に対する監査の実施過程及び監査意見の形成において対応した事項であり、当監査法人は、当該事項に対して個別に意見を表明するものではない。

Kuraray Asia Pacific Pte. Ltd.に対する債権の貸倒見積高の算定

監査上の主要な検討事項の内容及び決定理由

監査上の対応

会社の子会社である、Kuraray Asia Pacific Pte. Ltd.は、シンガポールを拠点として、ポバール樹脂の製造やアジア太平洋地域における会社グループの製品の販売活動を行っている。ポバール樹脂は、会社のビニルアセテートチェーンの根幹に位置する事業として、日米欧亜の6工場を中心としたグローバルネットワークを強みとして市場開発が推進されており、その中でKuraray Asia Pacific Pte. Ltd.はアジアにおける製造拠点としての役割を果たしている。しかしながら、同社が扱っていた繊維や接着剤向けの汎用品は競合他社の価格攻勢もあり競争が激しく、同社の過去の業績は低迷し、債務超過に陥っていた。そのため、会社は同社製品の高付加価値化を進め、これにより低採算の汎用分野からのシフトを強めたことが寄与し、同社の業績は回復傾向にあるものの、債務超過の解消には至っていない。

 

会社は関係会社に対してキャッシュ・マネジメント・システムを通じて資金融資を行っており、財務諸表の【注記事項】(重要な会計上の見積り)に記載のとおり、当事業年度末時点において貸借対照表にKuraray Asia Pacific Pte. Ltd.に対する短期貸付金が8,255百万円計上されている他、売掛金が1,205百万円、未収入金が52百万円計上されている。会社は同社の業績回復が進み、債務超過額は縮小傾向にあるものの、当事業年度末において債務超過の解消には至っていないことから、同社に対する債権を貸倒懸念債権に区分し、財務内容評価法に基づき同社の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定し、当事業年度末において貸倒引当金825百万円を計上している。

 

財務内容評価法に基づくKuraray Asia Pacific Pte. Ltd.に対する債権の貸倒見積高の算定に際しては、同社の債務超過の程度の他、製品の高付加価値化と低採算の汎用品からのシフト等の販売戦略や、原燃料価格の上昇による影響を考慮した将来の売上高や利益の見積りなどの仮定に基づく同社の将来の事業計画を踏まえて、支払能力を総合的に判断することにより、貸倒見積高が算定されている。

 

この支払能力の総合的な判断には経営者による主観的な判断を伴い、また同社に対する債権は財務諸表において金額的重要性が高いことから、当監査法人はKuraray Asia Pacific Pte. Ltd.に対する債権の貸倒見積高の算定が監査上の主要な検討事項に該当するものと判断した。

 

当監査法人は、Kuraray Asia Pacific Pte. Ltd.に対する債権の貸倒見積高の算定に対して、主として以下の監査手続を実施した。

 

・貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定に関連する内部統制の整備及び運用状況の有効性を評価した。

・Kuraray Asia Pacific Pte. Ltd.の将来の事業計画について、同社の業績の回復傾向が継続することが見込まれるかどうか評価し、貸倒見積高の見積りの合理性を評価するため、以下の監査手続を実施した。

− 当事業年度を含む過年度の事業計画と実績を比較し、事業計画に基づく業績改善施策の進捗状況を検討した。

− 将来の売上高や利益の見積りに関して、過去の売上高及び利益の推移、製品の高付加価値化と低採算の汎用品からのシフト等の施策の詳細との整合性があるかを検討した。

− 製品の高付加価値化と低採算の汎用品からのシフトについて、主要顧客からの受注状況を検討し、その実現可能性を評価した。

− 原燃料価格の上昇による影響については、経営者等と議論するとともに、市場予測や利用可能な外部データとの比較、過去実績との趨勢分析を実施することにより、事業計画における見積りの合理性を検討した。

 

 

 

財務諸表に対する経営者並びに監査役及び監査役会の責任

経営者の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して財務諸表を作成し適正に表示することにある。これには、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用することが含まれる。

財務諸表を作成するに当たり、経営者は、継続企業の前提に基づき財務諸表を作成することが適切であるかどうかを評価し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて継続企業に関する事項を開示する必要がある場合には当該事項を開示する責任がある。

監査役及び監査役会の責任は、財務報告プロセスの整備及び運用における取締役の職務の執行を監視することにある。

 

財務諸表監査における監査人の責任

監査人の責任は、監査人が実施した監査に基づいて、全体としての財務諸表に不正又は誤謬による重要な虚偽表示がないかどうかについて合理的な保証を得て、監査報告書において独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにある。虚偽表示は、不正又は誤謬により発生する可能性があり、個別に又は集計すると、財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えると合理的に見込まれる場合に、重要性があると判断される。

監査人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、監査の過程を通じて、職業的専門家としての判断を行い、職業的懐疑心を保持して以下を実施する。

・不正又は誤謬による重要な虚偽表示リスクを識別し、評価する。また、重要な虚偽表示リスクに対応した監査手続を立案し、実施する。監査手続の選択及び適用は監査人の判断による。さらに、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手する。

・財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないが、監査人は、リスク評価の実施に際して、状況に応じた適切な監査手続を立案するために、監査に関連する内部統制を検討する。

・経営者が採用した会計方針及びその適用方法の適切性、並びに経営者によって行われた会計上の見積りの合理性及び関連する注記事項の妥当性を評価する。

・経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるかどうか、また、入手した監査証拠に基づき、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関して重要な不確実性が認められるかどうか結論付ける。継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合は、監査報告書において財務諸表の注記事項に注意を喚起すること、又は重要な不確実性に関する財務諸表の注記事項が適切でない場合は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明することが求められている。監査人の結論は、監査報告書日までに入手した監査証拠に基づいているが、将来の事象や状況により、企業は継続企業として存続できなくなる可能性がある。

・財務諸表の表示及び注記事項が、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠しているかどうかとともに、関連する注記事項を含めた財務諸表の表示、構成及び内容、並びに財務諸表が基礎となる取引や会計事象を適正に表示しているかどうかを評価する。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、計画した監査の範囲とその実施時期、監査の実施過程で識別した内部統制の重要な不備を含む監査上の重要な発見事項、及び監査の基準で求められているその他の事項について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会に対して、独立性についての我が国における職業倫理に関する規定を遵守したこと、並びに監査人の独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項、及び阻害要因を除去又は軽減するためにセーフガードを講じている場合はその内容について報告を行う。

監査人は、監査役及び監査役会と協議した事項のうち、当事業年度の財務諸表の監査で特に重要であると判断した事項を監査上の主要な検討事項と決定し、監査報告書において記載する。ただし、法令等により当該事項の公表が禁止されている場合や、極めて限定的ではあるが、監査報告書において報告することにより生じる不利益が公共の利益を上回ると合理的に見込まれるため、監査人が報告すべきでないと判断した場合は、当該事項を記載しない。

 

利害関係

会社と当監査法人又は業務執行社員との間には、公認会計士法の規定により記載すべき利害関係はない。

 

以  上

 

 

(注) 1.上記の監査報告書の原本は当社(有価証券報告書提出会社)が別途保管しております。

2.XBRLデータは監査の対象には含まれていません。

 

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