当社グループは使命である「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」に基づき、創立100周年となる2026年度に向けた長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』を2017年に策定しました。2022年度から始まる新中期経営計画「PASSION 2026」策定に際して、新たに「顧客、社会、地球に貢献する」というメッセージを加えることで幅広いステークホルダーに貢献していく姿勢を明確にしました。新しい『Kuraray Vision 2026』で掲げる「独自の技術に新たな要素を取り込み、顧客、社会、地球に貢献し、持続的に成長するスペシャリティ化学企業」を目指していきます。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2021年12月31日)現在において当社が判断したものです。
当社グループは、長期ビジョン『Kuraray Vision 2026』の実現に向けて、中期経営計画「PASSION 2026」で以下3つの挑戦を設定しています。
① 機会としてのサステナビリティ
サステナビリティを機会としてとらえ、グループ一丸となって推進していきます。
② ネットワーキングから始めるイノベーション
社内・社外を問わず、人と人、技術と技術をつなげることで、新たな成長のドライバーを生み出します。
③ 人と組織のトランスフォーメーション
デジタルでプロセスを変え、多様性で発想の幅を広げ、人と組織に変革をもたらします。
当社グループは、中期経営計画「PASSION 2026」の経営戦略を着実に実行することにより、創立100周年を迎える2026年度には、売上高7,500億円、営業利益1,000億円の目標を達成します。「PASSION 2026」期間中は、イソプレン タイ拠点、水溶性ポバールフィルム ポーランド生産拠点、Calgon Carbon Corporation新設備などの設備投資を確実に成果へと繋げるとともに、EVOH樹脂<エバール>、耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>、液晶ポリマーフィルム<ベクスター>、歯科材料、光学用ポバールフィルムなどの成長を目指す事業に重点的に資源配分を行うことで、事業ポートフォリオの高度化を図ります。当社グループは創立100周年となる2026年度に向け、持続的に成長するスペシャリティ化学企業として今後も挑戦し続けます。
また、2018年5月に米国子会社で外部委託業者の作業員に負傷を伴う火災事故が発生し、損害賠償を求める民事訴訟が提起されていますが、現在は一部の原告についてのみ係属中です。このような事故を起こさないために、2019年より開始した本社主導の海外主要化学プラントの安全監査を継続し、安全対策の見直し・強化を図っています。2022年度からは、新たにグローバルプロセスセーフティマネジメント監査チームを新設し、化学プラントと活性炭プラントを対象とした安全監査を強化していきます。
なお、当社が運営するサーバーに不正アクセスが行われ、保有する情報の一部が外部に流出したことを2021年10月に確認しました。その後の調査により、流出した可能性のある情報の一部に、取引先及び当社グループ従業員等の氏名・会社連絡先等の個人データが含まれていたことが判明し、関係先への連絡を含め必要な措置を講じました。外部の専門機関の協力も得て、更なる情報セキュリティ強化に取り組むとともに、情報管理体制の厳重化を徹底していきます。
当社グループは、重大な経営リスクの適切な管理、法令遵守・企業倫理の徹底、公正な企業活動の実践を目的に、社長直轄のリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。グループリスク管理規定に基づき、国内外の各組織においてリスクの自己評価を実施し、リスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、社長が重大な経営リスクを特定、リスク毎に統括責任者を選定し、リスクの回避・軽減のための対策を進め、取締役会は対策の進捗を確認しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、以下のような項目があります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2021年12月31日)現在において当社が判断したものです。
① 事業環境の変化に関わるリスク
当社グループは、多様な事業ポートフォリオを有しており、グローバルかつ様々な用途分野に展開しています。さらに、当社の製品は特殊化学品が多く、商品市況の影響を受けにくい構成になっていますが、近年、自動車(ガソリンタンク用<エバール>、フロントガラス用PVBフィルム、ブレーキホース補強用ビニロン等)、電気・電子(液晶パネル用ポバールフィルム、コネクタ用<ジェネスタ>等)、環境(水処理・空気浄化用活性炭等)などの成長分野へシフトさせつつあり、業績の依存度も高まっています。これらの分野は、最終製品における業界標準の転換、製品の短寿命化、グローバルな開発競争の激化等、環境変化が激しいため、当社においても重要な事業が縮小・撤退を余儀なくされる可能性があります。
② 原材料に関わるリスク
当社グループの製品である化成品、合成樹脂、合成繊維の主原料は、原油、天然ガスの市況に影響を受けるエチレン等の石油化学製品です。このため、予想を超える市況変動が生じた場合、製品価格への転嫁が遅れること等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
また、長期購買契約の締結や購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めていますが、重要な原材料の提供を担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生、物流の混乱、日本や諸外国における経済制裁や各種規制等により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
③ 製造物責任に関わるリスク
当社グループは、自動車、電気・電子材料、医療(歯科材料等)、食品包装(<エバール>、<PLANTIC>等)など、最終製品の品質に対して重要な役割を担う製品を数多く供給しています。当社グループでは主に製造拠点単位で品質マネジメントシステムを導入し品質の向上に努めていますが、品質の欠陥に起因する大規模な製品回収が発生すると、PL保険でカバーできない損害賠償等の損失の発生、顧客からの信頼や社会的信用の失墜等の可能性があります。
④ 事故・災害に関わるリスク
当社グループは、日本及び欧州、北米、アジア、豪州に生産拠点を設けており、これらの多くは大規模な化学工場です。当社グループは、安全に関する行動原則「安全は全ての礎」に従い、安全のマネジメントシステムを構築・運用し、爆発、火災、有害物質の漏洩などの事故・災害の未然防止、及び災害発生時の被害の極小化に努めるとともに、重要な生産設備については拠点分散や損害保険によるリスク対応を行っている他、気候変動に起因する激甚災害に対するリスク評価を実施し、その対策を進めています。しかしながら、重大な保安事故、環境汚染、自然災害、大規模な伝染病の流行等が発生すれば、従業員や第三者への人的・物的な損害、事業資産の毀損、長期の生産停止が生じる可能性があります。
また、原燃料、設備・メンテナンス部品やサービスの提供などを担っているサプライヤーにおける事故・災害の発生により、当社グループの製品供給に悪影響が生じる可能性があります。
新型コロナウイルスの流行については依然として予断を許さず、事態が長期化した場合は、需要の低迷やサプライチェーンの混乱、原材料の調達困難などにより、当社グループの業績にさらなる悪影響が生じる可能性があります。当社グループは、「安全と健康を事業の継続よりも優先する」というグループリスク管理方針のもと、国内・海外出張の禁止・制限、イベント・催事の主催や参加の自粛、時差通勤や在宅勤務の推奨といった対応を行い、グループ従業員やその家族などの安全確保を図った上で、顧客や取引先への影響を最小限にする努力をしています。
⑤ 法規制・コンプライアンスに関わるリスク
当社グループは、多様な社会との接点において遵守すべき事項を「私たちの誓約」として、またこれを企業活動の中で具体的に実践するためのガイドラインを「行動規範」として定めています。そして、法令及び「私たちの誓約」を厳守することを経営トップが宣言しています。この宣言を明記し「行動規範」をわかりやすく解説したコンプライアンス・ハンドブックを、世界中の当社グループ社員全員に配布し周知徹底を図っています。また、当社各地域拠点及びグループ各社において、コンプライアンス統括者を選任するとともに地域別にコンプライアンス委員会を設け、全社的なテーマの他、地域特有のテーマについても取り組んでいます。
独占禁止法遵守に向けた取り組みとしては、グローバルなコンプライアンスプログラムを構築しています。具体的には、独占禁止法遵守指針の定期的見直し、競合他社との接触に関するガイドラインの制定、競合他社との取引・会合の事前審査、役員・従業員向けセミナーの開催、遵守状況に関する社内聴取、入札情報の管理及び入札部署を対象とした法務部監査等の様々な施策を行っています。
以上のとおり、コンプライアンスの徹底を図っていますが、重大な法令違反を起こした場合、顧客からの信頼や社会的信用の失墜に加え、損害賠償責任や罰金が課されることなどにより、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、各国の様々な法規制の適用を受けています。将来的に法規制の大幅な変更や規制強化がなされた場合には、新たな対策コストの発生や事業活動の制約につながり、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑥ 知的財産に関わるリスク
当社グループは、独自技術による事業・製品を数多く有しています。当社グループの知的財産権への重大な侵害や当社の権利に対する係争が発生した場合、また当社グループが他社の知的財産権を侵害した場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑦ 訴訟に関わるリスク
当社グループは、国内及び海外事業に関連して、取引先や第三者との間で、訴訟その他法的手続きが発生するリスクがあります。重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
2018年5月に米国子会社で外部委託業者の作業員に負傷を伴う火災事故が発生し、損害賠償を求める民事訴訟が提起されています。本訴訟は一部の原告についてのみ現在も係属中で、弁護士の協力を得ながら対応を進めています。
⑧ 為替の変動に関わるリスク
当社グループは、日本国内及び欧州、北米、アジア、豪州などの海外諸地域で生産、販売を行っています。当社グループが国内で生産し、海外へ輸出する事業では製品の輸出価格が為替変動の影響を受けます。一方、海外の事業拠点で生産、販売する事業では、異なる通貨圏との間の調達・販売価格及び外貨建て資産・負債の価額が為替変動の影響を受けます。為替予約等によるリスク軽減措置を講じていますが、想定を超える為替変動により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑨ 海外事業展開に関わるリスク
当社グループは、グローバルな事業展開を行っており、海外売上高比率が約7割となっています。当社グループは、米国、ドイツ、中国、香港、シンガポール、タイ、インド、ブラジルに地域統括会社を設置し、各国・各地域のリスク情報収集並びにビジネス動向の分析を常時行い、当該地域を越えて対応が必要となる場合は地域統括会社、事業会社、本社の該当部署が連携する体制を構築しています。しかしながら、各国・各地域での大規模な伝染病の流行、戦争・暴動・テロ等、偶発的な要因や、国家や地域の対立による貿易戦争、予期せぬ現地法規制の変更等によって、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑩ 固定資産の減損に関わるリスク
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しています。経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、保有する固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑪ 環境に関わるリスク
当社グループは、「クラレグループ環境基本方針」を定め、環境に関する各種法規制を遵守するとともに、GHG排出量削減等の地球温暖化対策の推進、化学物質の排出抑制、資源の有効利用等の環境改善に継続して取り組んでいます。また、気候変動がもたらす異常気象や激甚災害へのリスク評価及び対策を強化しています。これらに加え、当社グループは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しており、情報開示の拡充に努めています。しかしながら、予期せぬ事故や自然災害等により環境汚染が生じた場合や、環境に関する規制が強化された場合は、事業活動の制限や対策費用の増加等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
⑫ 情報セキュリティに関わるリスク
当社グループは、事業活動の基盤である情報システム・ネットワークに、様々なセキュリティ対策を実施していますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセス等により情報システム等に障害が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流出した場合は、事業活動の停滞や信用の低下等により、当社グループの業績に悪影響が生じる可能性があります。
2021年に当社が運用するサーバーに不正アクセスが行われ、保有する情報の一部が外部に流出したことが確認 されました。それを受け、当社グループは外部の専門機関の協力も得て、ITセキュリティ強化と情報管理体制の厳重化に取り組んでいます。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析内容は以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2021年12月31日)現在において当社が判断したものです。
(1) 経営成績の概況及び分析
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナワクチン接種の進展による行動制限の緩和に伴い経済活動が活性化し、総じて回復基調が続きました。一方で、新たな感染拡大が起こり、また、原燃料価格の高騰、半導体の供給不足や物流の混乱が深刻化しました。かかる環境下、当社グループの業績は、売上高は前年同期比87,573百万円(16.2%)増の629,370百万円、営業利益は27,914百万円(63.0%)増の72,256百万円、経常利益は29,024百万円(73.0%)増の68,765百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は34,691百万円(1,349.5%)増の37,262百万円となりました。なお、当連結会計年度において、2018年5月に米国子会社で発生した火災事故などに関する訴訟関連損失として4,296百万円を、2021年2月に米国南部を襲った寒波の影響により米国子会社の一部設備で生産を停止したことから災害損失として3,284百万円を特別損失に計上しました。
(単位:百万円)
[ビニルアセテート]
当セグメントの売上高は304,690百万円(前年同期比18.5%増)、営業利益は57,726百万円(同41.6%増)となりました。

① ポバール樹脂は、原燃料高の影響を受けましたが、世界的に需要回復が進み、幅広い用途で販売量が増加しました。光学用ポバールフィルムは、前年後半から続く旺盛な液晶パネル需要を背景に好調に推移しました。PVBフィルムは、第3四半期以降は半導体不足による自動車減産の影響を受けましたが、前年同期比で販売量が増加しました。水溶性ポバールフィルムは、洗濯用及び食洗器用個包装洗剤向けの販売が順調に拡大しました。
② EVOH樹脂<エバール>は、ガソリンタンク用途の需要回復や食品用途の好調な需要継続により、前年同期比で販売量が増加したものの、年初から続く原燃料高と、第3四半期以降は自動車減産の影響を受けました。
[イソプレン]
当セグメントの売上高は61,940百万円(前年同期比22.9%増)、営業利益は5,694百万円(同49.5%増)となりました。

① イソプレン関連は、ファインケミカル、熱可塑性エラストマー<セプトン>ともに、需要の回復により販売量が増加しました。
② 耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>は、原燃料・物流費上昇の影響を受けたものの、旺盛な需要を背景に、電気・電子デバイス向け、自動車向けともに販売が順調に拡大しました。
[機能材料]
当セグメントの売上高は139,078百万円(前年同期比11.3%増)、営業利益は8,189百万円(同173.4%増)となりました。

① メタクリルは、好市況に加え、飛沫飛散防止用仕切板やディスプレイ向けなどの販売が堅調に推移しました。
② メディカルは、欧米を中心に歯科材料の新製品に対する需要が旺盛で、販売が拡大しました。
③ 環境ソリューションは、欧米の水処理用途を中心に需要が増え、活性炭の販売は堅調に推移しました。
[繊維]
当セグメントの売上高は61,082百万円(前年同期比12.3%増)、営業利益は5,302百万円(同146.1%増)となりました。

① 人工皮革<クラリーノ>は、シューズ用途を中心に販売が堅調に推移しました。
② 繊維資材は、ビニロン、<ベクトラン>ともに需要が拡大し、販売量が増加しました。
③ 生活資材は、<クラフレックス>で外食産業の需要が低調でした。
[トレーディング]
当セグメントの売上高は144,027百万円(前年同期比15.7%増)、営業利益は4,852百万円(同34.6%増)となりました。

① 繊維関連事業は、スポーツ衣料や人工皮革<クラリーノ>が好調に推移しました。
② 樹脂・化成品関連事業は中国市場を中心とした需要増に伴い販売が拡大しました。
[その他]
その他事業は、国内関連会社の販売が回復し、売上高は47,615百万円(前年同期比14.2%増)、営業利益は908百万円(同324.0%増)となりました。

(2) 当期の財政状態の概況
総資産は、たな卸資産の増加24,677百万円、建設仮勘定の増加19,868百万円及び受取手形及び売掛金の増加18,595百万円等の一方、現金及び預金の減少32,377百万円等により前連結会計年度末比39,429百万円増の1,091,014百万円となりました。負債は、支払手形及び買掛金の増加13,480百万円、未払法人税等の増加6,512百万円及び長期借入金の増加6,047百万円等の一方、コマーシャル・ペーパーの償還20,000百万円、社債の償還20,000百万円及び主として未払金の減少に伴うその他流動負債の減少13,610百万円等により前連結会計年度末比24,691百万円減の511,411百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末比64,121百万円増加し、579,602百万円となりました。自己資本は559,984百万円となり、自己資本比率は51.3%となりました。
[営業活動によるキャッシュ・フロー]
税金等調整前当期純利益58,697百万円に対して、減価償却費59,003百万円、売上債権の増加13,437百万円、たな卸資産の増加17,537百万円、仕入債務の増加12,244百万円、法人税等の支払額14,127百万円及び訴訟関連損失の支払額24,104百万円等により、営業活動によるキャッシュ・フローは78,221百万円の収入となりました。
[投資活動によるキャッシュ・フロー]
有形及び無形固定資産の取得による支出68,408百万円等により、投資活動によるキャッシュ・フローは65,595百万円の支出となりました。
[財務活動によるキャッシュ・フロー]
長期借入れ6,212百万円等の収入に対して、コマーシャル・ペーパーの償還20,000百万円、社債の償還20,000百万円及び配当金の支払額13,414百万円等の支出により、財務活動によるキャッシュ・フローは47,447百万円の支出となりました。
以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より30,596百万円減少して、151,487百万円となりました。
(単位:百万円)
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標は以下のとおりです。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1.各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により計算しています。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
3.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
4.有利子負債は短期借入金、コマーシャル・ペーパー、長期借入金及び社債の合計額を使用しています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
5.2018年12月期より、たな卸資産の評価方法を変更しています。当該会計方針の変更は遡及適用されるため、2017年12月期の数値は遡及適用後を記載しています。
当社グループの資金需要は、営業活動に必要となる運転資金や設備投資、M&A等に係る投資資金が主なものです。これらの資金需要に対しては、自己資金のほか、必要に応じ、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により資金調達を行っています。
また、資金需要に応じて柔軟に資金調達ができるよう、信用格付けの維持向上や金融機関、資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、金融機関とコミットメントライン契約を締結しています。
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。
このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績の概況及び分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。
(6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)に記載しています。
該当事項はありません。
当社グループにおける研究開発活動は、私たちの使命「私たちは、独創性の高い技術で産業の新領域を開拓し、自然環境と生活環境の向上に寄与します。」に基づいて、社内カンパニー・事業部・連結子会社に所属するディビジョン研究開発とコーポレート研究開発との緊密な連携の下に推進されています。
ディビジョン研究開発は、社内カンパニー・事業部・連結子会社が各事業所に研究開発部署を有しています。
コーポレート研究開発体制としては、研究開発本部において、新事業テーマの企画・提案・推進を目的にくらしき研究センターとつくば研究センターの2拠点を設置しています。オープンイノベーション推進を目的に、米国にはKAI Corporate R&Dを有しています。事業化段階として、機能製品開発部及びベクスター事業推進部・ベクスター生産開発部を擁しています。生産技術に関しては、技術本部 技術開発センターにおいてシミュレーション技術を活用した原理原則に基づく生産技術開発を推進しています。また、研究開発テーマの早期設備化を推進するための体制整備も進めています。一方で、デジタル技術を活用した生産効率、及び品質向上への取り組みも着実に進めています。
ディビジョン研究開発とコーポレート研究開発を合わせた当社グループ(当社及び連結子会社)の研究開発人員数は1,014人です。
当連結会計年度のセグメントごとの研究開発費は、ビニルアセテート
セグメントごと及びコーポレートの研究開発活動を示すと次のとおりです。
[ビニルアセテート]
・ポバール樹脂、ポバールフィルム、PVBフィルム、<エバール>(樹脂、フィルム)の酢酸ビニルチェーンについては、世界のリーディングカンパニーとして、国内外の研究開発部署が連携し、新規用途開発、新商品開発、新規生産技術開発も併せて、研究開発活動を推進しています。
・ポバール樹脂は、当社ビニルアセテートチェーンの根幹に位置する事業として、これまで培った技術開発力をベースに自消・外販両面で高品質かつ差別化された製品を提供します。日米欧亜の6工場をベースとしたグローバルネットワークを強みとして、ポバール樹脂の安全かつ環境に優しい特徴に注目し、新たな用途、ビジネス機会を提案します。
・ポバールフィルムは、液晶ディスプレイ向け光学フィルムの構成部材の一つとして、さらなる高性能化・高品質化に顧客と一体となって取り組んでいます。また、洗剤包装用途を中心にますます拡大する水溶性フィルムについても、ポバール樹脂メーカーである強みを活かし、原料まで遡った高性能化・多機能化を加速させます。
・PVBフィルムは、自動車・建築向け合わせガラス用中間膜の高付加価値品の開発を進めています。その一環として、アイオノマー樹脂をシート化した<セントリグラス>の更なる高付加価値化やPVBフィルムとのシナジー効果の発現、新規用途開発を推進しています。
・<エバール>樹脂は、世界規模で食品廃棄ロスの削減や環境負荷の低減が求められるなか、日米欧の3拠点を中心に世界各地のニーズを把握しながら、バリア材料の新技術開発・用途開発を推進しています。また<エバール>フィルムは、省エネルギー・地球環境保全に貢献する用途へ積極的に展開していきます。さらにバイオマス由来のガスバリア材料<PLANTIC>については、CO2排出削減効果とガスバリア性を併せ持つ新素材として、用途開発に取り組んでいます。
[イソプレン]
・イソプレンケミカル関連では、独自性の高いC4ケミストリーを展開しており、溶剤やウレタン原料、香粧品原料などを中心に材料・市場開発を推進しています。また、新規触媒の開発や既存技術の応用により、社会のニーズに応える機能性化学品の創出に取り組んでいます。
・エラストマー関連では、熱可塑性エラストマー及び液状ゴムの差別化・高付加価値化に取り組んでいます。その一環として、植物由来原料のファルネセンを用いた熱可塑性エラストマーを開発し、市場開発を推進しています。また液状ゴムは、主力のタイヤ用途で様々なタイプの製品を市場に提案し、高機能タイヤの改質剤として採用が広がっています。
・耐熱性ポリアミド樹脂<ジェネスタ>では、5G通信コネクタ及び高電圧用コネクタ等に適した電気・電子用途向けのグレード開発に注力するとともに、自動車の環境規制強化やCASEの加速に対応するためサーマルマネジメント部品や車載電装部品に適した材料の開発を加速しており、部品メーカー各社で評価が進んでいます。またPEEK代替をターゲットとし、さらに耐熱性及び耐久性に優れた新規ポリアミドの開発にも取り組んでいます。
[機能材料]
・メタクリル樹脂については、差別化ポリマーの拡充とメタアクリル系樹脂を活用した新規用途開発、新商品開発を主体に研究開発活動を行っています。
・メディカル事業では、クラレノリタケデンタル株式会社の無機/有機の技術の融合による新規歯科材料の開発に注力し、CAD/CAM用ジルコニア、高強度レジン等のデジタル化の流れにも対応した開発、商品化を行っています。また、人工骨インプラント<リジェノス>、吸収性骨再生用材料<アフィノス>は、配向連通孔技術を特長に、多面的な展開を進めています。
・環境ソリューション事業では、「水・環境・エネルギー」分野を重点戦略領域に、飲用水浄化材、オートモーティブ関連、ガス精製、蓄電において、吸着にイノベーションを創出、活性炭から成型材へ新たな商品群展開を推進しています。
[繊維]
・高強力繊維<ベクトラン>は、極低温域までの広い温度領域において、高強度、低誘電損失、低線膨張であることに加え、ほとんど吸水することがない特質を有していることから、海洋資材、光ファイバー等電材の他、医療用分野など高機能、高性能であることが求められる分野で広がっており、今年度もフル生産が続きました。さらなる用途拡大を目指し、性能向上、構成検討を進めています。
・PVA繊維<ビニロン>は、ゴム補強用フィラメントや防護材料の拡大に応じて、革新プロセス(VIP)を用いた生産機台を増設し、順調に稼働しています。国産第一号の合繊として2020年に70周年を迎えましたが、さらなる成長を目指し、生産技術、製品開発を続けています。
・人工皮革<クラリーノ>は、環境や健康意識の高まりにより、環境調和型革新プロセス(CATS)を使ったスポーツ向け製品需要が増加しており、RCS認証を取得した環境対応銘柄を開発、販売の拡大に取り組んでいます。また欧州ラグジュアリー用途向けに、バイオマス原料を使った新規開発商品を投入予定です。
・不織布<クラフレックス>は、2020年に新設されたメルトブローンと従来のスパンレース技術を融合した革新プロセスに取り組み新規用途の開拓を目指しています。また液晶ポリマーを用いた不織布<ベクルス>の用途拡大や、生活環境向上に寄与する製品開発、新規環境対応型製品の開発を続けています。
[トレーディング]
・ポリエステル長繊維<クラベラ>では、①地球環境に配慮した独自原糸(PETボトル再生樹脂を用いたスエード調繊維<エルモザ>、バイオEGを用いた<バイオスペース>、ヤシ殻炭練り込み繊維<アグリアス>)、②独自の樹脂を用いて糸自体に性能付与した衝撃吸収繊維<スパンドール>、③電子部品などへの静電気放電対策としてIEC基準にも対応する導電性繊維<クラカーボ>などの機能性原糸の開発を推進しています。
[その他]
・アクア事業推進本部では、中空糸ろ過膜を用いた様々な水の製造・回収を通して、「高品質で安全な水の提供」と「環境負荷の低減」に貢献する素材・技術開発に取り組んでいます。
・クラレプラスチックス株式会社では、スチレン系エラストマーを使用した機能性コンパウンド<アーネストン>及び同コンパウンドを原料とした不織布やフィルム(コンパウンド二次製品)、<エバール>をコーティング加工した特殊フィルム、成型加工技術による高気密高断熱住宅向け換気・空調ダクト、高強力繊維 <ベクトラン>を使用した土木用途向け繊維複合ホースの開発を推進しています。
[コーポレート研究開発]
研究開発本部では、以下3点を通じて、クラレグループ全体の業容拡大・収益向上に資することを目指しています。
① 新事業の創出:素材事業あるいはそれらに加工技術を付加した部材事業をターゲットとし、早期創出を目指します。種々の施策・改革を進め、当社の強み(技術・商流・市場)を活かした新規事業開発テーマの発掘・推進を継続します。
② 既存事業の強化・拡大:カンパニー・グループ会社との協働・支援を強化し、分析・解析・デジタルなど高度な技術を駆使して全社事業の盤石化を図るとともに、既存事業の拡大に貢献します。また当社事業の急速なグローバル化に対応し、グループ海外拠点との連携を強化しています。
③ 基盤技術の構築・深耕:新事業の創出及び既存事業の強化・拡大を通じて、必要とする基盤技術を構築し、深 化・深耕を図ります。
以下、研究開発活動を示します。
・当社基幹原料からの新規化学品開発や新規高分子素材原料の開発に資する触媒開発技術を基盤技術と捉え、これまで長年培った均一系触媒技術のみならず固体触媒技術開発を進めています。これら技術開発を通じ、イソプレン事業、ビニルアセテート事業にかかわる既存事業の強化並びに新規材料開発を展開していきます。
・酢酸ビニルチェーンの更なる業容拡大と新規展開を目指し、保有コア技術と内外から取り込んだ技術で新たな機能を有する素材の開発を進めています。環境親和性の高い酢ビ系高分子の精密な構造制御技術や高機能化プロセスを追及するとともに、酢ビ系高分子の研究開発を通じて獲得した知見や技術を酢ビ系高分子の枠を超えて展開することで顧客ニーズに合致した新素材を提案し続け、世界のリーディングカンパニーとして確固たる地位を確立します。
・カンパニー・グループ会社との連携を通じて、高分子化合物の設計・重合・変性に関する基盤技術を拡充・深耕し、既存技術の強化・拡大と新事業の創出に資するための新規技術・新規高分子材料を開発します。
・自社素材や高分子材料の成形・加工に関する基盤技術を拡充・深耕し、カンパニー・グループ企業と連携して、成形材料・成形体・シート・フィルムなどの機能性素材・部材に関する研究開発を推進しています。
・リチウムイオン二次電池の高性能化、及び開発が進む次世代電池に向け、植物を原料とした高容量負極材用ハードカーボンの開発を加速します。また、全社の電池材料開発の中心としてカンパニー・グループ企業と連携し、当社独自素材の電池部材への応用展開を進めます。
・高周波回路基板用途の液晶ポリマーフィルム<ベクスター>は、車載用ミリ波レーダーや5Gアンテナなど高周波による高速伝送の需要が高まる中、フレキシブルプリント配線基板として高周波領域での伝送損失が低く、加工性に優れる点が評価されています。さらにフィルムに加え銅張積層板を事業化しました。需要は今後も伸びると見られ積極的に事業拡大を進めていきます。
・半導体用研磨パッド(CMPパッド)は、独自のポリウレタン設計及び製造技術を駆使し、従来に無い高硬度ポリウレタンを原料にしています。当社CMPパッドの特長は、高硬度なため研磨するデバイスを平坦にする能力が優れること、高硬度でありながら研磨傷が少ないこと、耐磨耗性が優れるため長時間使えることなどで、複数の顧客・複数プロセスで採用されています。今後、各顧客のニーズに合った製品をタイムリーに提案することで、顧客の製品機能と品質の向上、コスト削減に貢献し、半導体市場の発展に寄与していきます。
・先進的かつ豊富な分析・解析技術、及びシミュレーションや機械学習などのデジタル技術を応用し、社内カンパニー・事業部・連結子会社に様々な技術ソリューションを提供することで、クラレグループの業績向上に貢献しています。