当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「Redesigning The Future Life」というビジョンのもと、データとテクノロジーの力によって、マーケティングを変革し、人々の生活をより良いものに、より充実したものにすることを目指して事業を展開しております。スマートフォン等の個人携帯デバイスの進化や、IoT(Internet of Things)などによるセンシングデバイス(注1)の日常生活への浸透、5Gを始めとした通信インフラの劇的な能力の向上によって、人々の生活のデジタル化は急速に進んでおります。そのようなデジタル社会の到来によって、消費者の消費購買行動は常に変化・多様化しており、マーケティング施策においてもその変化に対応する様々なソリューションが日々新しく生み出され、急速に発展し続けております。これら多様化し分断されている各種マーケティング施策を、様々なデータとAIによる独自の分析基盤によって集約・統合することで、多様な消費行動やその変化を常に把握し、的確に企業の製品・サービスの情報を消費者に届け、人々の生活をより良いものに、より充実したものにすることが当社グループの使命であると考えております。
また、デジタルマーケティングの世界は、インターネットの誕生をきっかけに、様々な環境変化を経て進化してまいりました。特にその進化の過程において消費者の行動データをマーケティングに活用する動きが活発化しております。一方で、昨今、それらのデータ活用における消費者のプライバシー保護が社会問題化しております。当社グループでは創業来、独自に開発したテクノロジーによって、さまざまなデジタルマーケティングの環境変化に対応してまいりました。健全なデータ活用によるプライバシーの保護という社会問題に対しても、当社の積み上げたテクノロジーアセットを活用することで適切に対応し、様々な産業にデータドリブンなソリューションを提供したいと考えております。
(注)1.センシングデバイス:スマートフォンのGPSによる位置情報計測や、スマートウォッチなどによるラ
イフログの計測など、IoT(Internet of Things)と呼ばれるインターネットに接続された様々なデ
バイス及び、そのデバイスに内蔵される計測装置。
(2)経営戦略
当社グループの事業はデータプラットフォーム事業の単一セグメントでありますが、セグメントを構成する主要なサービスとして、①データプロダクトサービス、②コンサルティングサービスの2つのサービスによって事業展開しております。
「データプロダクトサービス」は、自社開発したプロダクト販売による収穫逓増型のビジネスモデルの事業にあたり、「コンサルティングサービス」は、主に他社の広告サービスの代理販売を軸とした労働集約的なビジネスモデルの事業になります。それぞれのビジネスモデルと、提供する事業の関係は下図のとおりです。特に当社では収益性の高い「データプロダクトサービス」のビジネスモデルに属する「UNIVERSE」へ注力しており、当該領域のプロダクト開発への投資を積極的に行うことで、データプラットフォーム事業の拡大を目指してまいります。
これらビジネスモデル毎の売上総利益率は「コンサルティングサービス」が約20%程度なのに対して、「データプロダクトサービス」は約40%の高い水準を維持しております。(2023年9月期の平均実績)。「コンサルティングサービス」は、労働集約型の広告代理店型ビジネスモデルであるため、人的リソースが豊富な競合他社の大手広告代理店との競争環境の中では、売上高の拡大や収益性の向上が相対的に困難であるのに対し、「データプロダクト」は当社の強みであるデータと分析力を生かし、業界業種に特化した多種多様なプロダクト展開によって、収穫逓増型の高い収益性のビジネスモデルを構築しております。このような収益性の違いから、当社は「データプロダクトサービス」の拡大に注力しております。「データプロダクトサービス」の2023年9月期第4四半期における、グループ連結売上高に占める割合は46%となっており、2023年9月期第4四半期における、グループ連結売上総利益に占める「データプロダクト」の割合は52%まで拡大しております。
以上から、当社グループでは、特に「データプロダクトサービス」に属する「UNIVERSE」へ注力しており、当該領域のプロダクト開発や人的リソースへの投資を積極的に行うことで、データプラットフォーム事業全体の拡大を目指してまいります。
(3)経営上目標とする客観的な指標
当社グループの継続的な企業価値向上を達成するために、経営指標としては売上高、営業利益の成長を重視しております。データプラットフォーム事業の普及・拡大による売上高の拡大と、データとAI技術を活用したサービス性能や効率性の向上によって、高収益な事業を展開していく方針です。
経営指標を達成する為に「(2)経営戦略」に記載の二つのサービスにおける、データプロダクトの「UNIVERSE」の売上高拡大に注力しており、特にその売上高を構成する要素として、UNIVERSEの「稼働アカウント数(発注件数)」を重視しております。「UNIVERSE」を利用する企業は、一般的に当該企業が提供する製品ブランドやサービス毎に広告宣伝費を設定しているケースが多いため、単一企業であっても製品ブランドやサービス毎に複数のアカウントを開設・利用いたします。アカウント開設後、実際に製品のマーケティングを行う月ごとに発注申し込みを行うことで、当該アカウントによる広告配信が可能になります。この際の月ごとの発注~利用の件数を「稼働アカウント数(発注件数)」として経営指標を達成する為に重視する指標としております。
また、当社サービスの「UNIVERSE」は、消費行動データを蓄積・分析することで、様々な業界業種に特化したマーケティングプロダクトを提供しております。外部企業から提供される消費行動データの拡大によって、新たな業界業種へ向けたプロダクトを開発することで、取引企業数の拡大を実現してまいりました。
そのような背景から、データ契約数の拡大により新たな業界業種に特化したプロダクト開発を推進することで、取引企業数の拡大を行いながら、同時にその企業内の取引ブランド数の横展開を戦略的に実現していくことで、アカウント数の拡大を図ってまいります。
これらのUNIVERSEにおける、業界業種に特化したプロダクトの稼働アカウント数の推移は、以下の通りです。
2023年9月期においては、前年比25%増の拡大となっております。
(4)経営環境
・当社グループのターゲットとする市場
当社グループが対象とする主要なマーケットとしては、インターネット広告市場になります。インターネット広告市場においては、2022年の広告費が前年度比で14.3%増の3兆912億円と順調に拡大しております。
(出典:株式会社電通「2022年 日本の広告費」)
当社グループにおいては、インターネット広告市場の中でも、特に「ディスプレイ広告市場(注1)」が中期的なターゲット市場と判断しております。ディスプレイ広告の市場規模は2022年に7,372億円となり、前年比7.5%増の成長となっております。(出典:株式会社電通「2022年日本の広告費」)加えて、マスコミ四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ広告費)においてもデジタルマーケティングへのシフトが進んでおり、当社では、今後5年で2,640億円程度の規模になると予測しております。(注2)
また、屋外広告、交通広告、POP広告(注3)、折り込みチラシ、ダイレクトメールなどの、プロモーションメディアと呼ばれる広告市場は、2022年で1兆6,124億円の規模(出典:株式会社電通「2022年日本の広告費」)となっておりますが、この領域も今後デジタル化が進行していくと判断しております。その中でも特に、屋外広告、交通広告、POP広告などが当社のデジタルサイネージサービスにおけるターゲット市場と考えておりその規模は、2023年で5,698億円となっております。
以上を総計し、1兆5,710億円が当社グループのターゲット市場であると考えております。
・当社のポジショニング
当社グループは、広告・マーケティング市場における様々な事業を展開しておりますが、当社はその市場における企業の中でも、様々な消費購買データを活用した、プロダクト化による事業展開に特徴があると考えております。
専門人材の人的リソースによって、個々の企業の課題を解決する労働集約型の事業モデルに対して、当社は、それらの課題解決に向けたソリューションを自社のシステム開発によってプロダクト化することで、収穫逓増型のビジネスモデルを実現しております。
また、消費者の生活のデジタル化に伴って、広告・マーケティング領域においても、マスコミ四媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ広告)などをはじめとする、旧来型の広告モデルのデジタル化が進んでおります。特にデータを活用した、データドリブンなソリューションを開発することで、旧来型のマーケティングプロダクトでは実現が難しかった、消費者一人一人に適したマーケティング製品の提供を実現しております。
・新型コロナウイルス感染症の影響に関して
当社グループが事業を展開する広告市場においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する経済活動の停滞から、企業の広告出稿の出し控えの影響によって、提供するサービス毎に、一定の影響を及ぼす可能性があります。
データプロダクトサービスにおいては、2020年4月に発令された初めての緊急事態宣言直後は、広告出稿の出し控えによって業績への影響が発生いたしましたが、2021年下半期にかけて新型コロナウイルス感染症の影響は減少し、2022年~2023年においてはその影響はほぼ確認できない状況まで回復いたしました。新型コロナウイルス感染症による広告出稿の出し控えの影響は、物理的移動を伴う、旅行業やイベント関連の広告などが直接的に影響を受ける一方で、各種インターネットサービスや、ゲーム関連などの広告出稿は増加する傾向にあり、様々な業界業種へのサービス提供を継続することで、新型コロナウイルス感染症の影響を最小限に止めるよう努めてまいります。
コンサルティングサービスにおいては、2020年以降、中国、ベトナムでの事業が、新型コロナウイルスの影響を受け業績が低迷しておりましたが、これら新型コロナウイルス感染症によって業績影響を受けやすい収益基盤の脆弱な海外拠点に関しては、2022年度時点で法人及び事業売却による撤退を致しました。
(注)1.ディスプレイ広告:インターネット広告の中でもバナー(画像)型の広告で、広告効果に
応じて配信設定や条件などを変更することで、広告効果を最大化させる運用が可能な運用型を含む
2.電通発表の『日本の広告費』におけるマスコミ四媒体の新型コロナウイルスの影響を受けていない2017
年~2019年の平均成長率をもとに、向こう5年間でデジタル化される市場規模を独自に算定
3.POP広告:小売店舗の店頭や商品棚などに設置された製品広告
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 自社サービスの継続的な強化
当社グループのデータプラットフォーム事業における各種サービスは、自社開発による当社 グループでしか提供できない独自の価値創造に注力してまいりました。特に顧客企業の業界・ 業種に特化したサービス展開を重視しており、業界・業種に最適な消費行動データの拡充、業 界・業種に特化したAIによるデータ分析モデルの構築、様々なデータ活用手段の開発など、 顧客企業の業界・業種毎に最適なサービスを提供できるよう努めております。今後も継続的な サービスの拡大を実現するために、それぞれの業界・業種の課題を的確に把握し、消費行動に 対する深い洞察と仮説設計を行い、AIによる分析モデルの構築につなげ、最適なマーケティ ングソリューションを開発し続け、競争力の強化と企業価値向上に努めてまいります。
② 新サービス等の継続的な事業創出
当社グループのデータプラットフォーム事業においては、業界・業種に特化したサービス開 発を推進していくことを事業戦略の中心に据えておりますが、より多くの顧客企業のマーケティングニーズに応え、事業を拡大していく上では、常に新しい業界・業種のサービス開発を行 っていく必要があると考えております。また、人々の生活のデジタル化が促進され、インター ネットがより身近になっていく環境において、時代に即した新しいデータの獲得手法の開発 と、スマートフォンやPCに限らず、新しいデバイスを活用した情報伝達手法の開発も重要で あると考えております。絶えず消費者の生活の変化、行動の変化を捉え、新しい事業・サービ スの創出に努めてまいります。
③ プライバシー保護に配慮したデータの利活用
当社グループでは、データプロダクトサービスを中心に、外部の提携企業から消費者の行動 データの提供をうけ、独自の分析を行うことで様々なサービス提供を行っております。データ の受領や利活用にあたっては、プライバシーに配慮した細心の注意を払って取り組む必要があると考えております。インターネット上のプライバシー保護にあたっては、継続的に様々な議 論が行われており、その動向は将来にわたって変化していく状態にあります。当社グループと しては、「個人情報の保護に関する法律」に基づく規制をはじめとして、諸外国の関連法制の 動向把握を積極的に行っていくことで、その変化に迅速に対応してまいります。また、そのような規制に基づいた、社内のデータ利活用及び情報セキュリティに関する規律の強化、社員教 育の徹底、プライバシー・バイ・デザインによるシステム設計を推進することで、プライバシー保護を前提としたサービス開発を推進してまいります。
④ 3rd Party Cookieの規制に向けた対応
当社グループでは、データプロダクトサービスにおいて、外部の提携企業から消費者の行動 データの提供をうける際に、主にWEBブラウザの3rd Party Cookieという技術を活用しております。現在、各WEBブラウザ提供企業において、プライバシー保護の目的の下、この3rd Party Cookieの利用を規制する動きがあります。具体的には、Google社が提供するChrome ブラウザにおいて、2024年後半から段階的に3rd Party Cookieの利用が停止される旨が公表 されています。一方で、Google社からは、当社のような広告事業を行っている企業向けに、 従来のビジネスモデルを継続するための代替技術が提供されます。すでに当社としては、その 代替技術への対応を順次進めており、一部の機能においては代替技術の利用が可能になっております。また、3rd Party Cookieに依存しない、新しいデータ活用技術や、広告配信技術の 開発や提供も開始しております。当社のようなインターネット広告に関連する事業を行っている企業は、全世界で等しく同様の影響を受けるため、いち早く対応することで市場における優 位性が確保できると見込んでおります。
⑤ アドフラウド、ブランドセーフティへの対策
デジタル広告市場の急速な拡大に伴って、近年はアドフラウド(広告不正)問題や、不適切なメディアへの広告掲載による広告主企業のブランド毀損問題など、デジタル広告特有の問題が指摘されています。当社はこれらの問題を深刻に受け止めており、一般社団法人デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)のガイドラインに準拠し、第三者による検証プロセスを経て、JICDAQのアドフラウド認証及びブランドセーフティ認証を取得しております。当社グループでは、引き続き迅速かつ継続的に適切な対策を講じる事で、安心安全なデジタルマーケティングサービスの実現を目指してまいります。
⑥ 人材の獲得及び、育成による生産性の向上
当社グループは、更なる事業拡大を実現していく上で、優秀な人材の採用と、継続的な人材育成、及び組織への長期的な定着が必要不可欠であると考えております。引き続き、中途入社・新卒入社合わせて、積極的な採用活動による優秀な人材確保を推進してまいります。また、従業員の心理的安全性を重視した社内コミュニケーションの制度設計、教育制度の充実、 個々人の能力開発の強化に取り組み、高い生産性を発揮できる組織体制の構築に努めてまいります。
⑦ 内部管理体制の強化
当社グループの更なる企業価値向上や事業拡大を実現する上で、各種業務プロセスの効率化や、適切なリスク管理を行うために、業容の拡大に応じた内部管理体制の強化が必要であると考えております。継続的な採用活動による管理部門の組織力強化を推進し、コーポレート・ガバナンスの充実に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループのサステナビリティ経営への取り組みは、取締役会が全般的な方針の決定及び監督に対する責任と権限を有しており、グループ規模の拡大に伴い、企業モラルの維持・コンプライアンスや社会的責任への貢献など一層の高度なコーポレート・ガバナンス体制の構築に取り組んでおります。
(2)戦略
当社グループは、持続可能な社会に貢献するため、「Redesigning the Future Life」というビジョンのもと、データとテクノロジーの力によって、マーケティングを変革し、人々の生活をよりよいものに、より充実したものにすることを実現するべく事業活動を行っております。
また、当社グループにおいては事業の拡大に伴い人員が増加しており、当社グループにとって人的資本に関する戦略を重要な戦略と位置付けております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
① 人材の多様性の確保
グループ間での転籍や出向などの推進を通し、従業員等に様々な活躍の機会を提供しております。また、働き方においても、ライフステージの変化や労働に対する意識の多様化を踏まえて、地方在住やリモートワークの一定の許容など柔軟な対応をとっております。
② 社内環境整備
当社グループは、社員の安全と心身の健康を守るとともに、働き甲斐のある職場環境の確保に取り組んでおります。具体的には、女性活躍推進に関連する産休及び育休取得時のサポート、持株会制度の充実、社員へのサーベイを通したフォローアップなど、様々な対応を行っております。
(3)リスク管理
当社グループでは、リスク管理委員会を定期的に開催し、各種リスク及び機会を識別、評価し、必要に応じて取締役会やグループ内関係者に報告しております。
(4)指標及び目標
当社グループでは、「(2) 戦略」において記載した社内環境整備に関する方針について、次の指標及び目標を掲げております。
|
指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
|
管理職に占める女性労働者の割合 |
15人以上(20%以上) |
15人(21.7%) |
以下、当社グループの事業展開において、リスク要因となる可能性がある主な事項を記載しています。また、投資判断上重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から追加しております。
なお、当該記載事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。
1.業界動向について
当社グループでは、データプラットフォーム事業を展開しており、インターネット広告市場を主たる事業対象としております。近年、インターネット広告の市場規模は順調に成長を続けており、今後も堅調に推移するものと予想をしておりますが、広告市場は景気動向や社会情勢の変化の影響を受けやすい傾向があります。様々な業界業種の企業との取引を行うことで、それらの影響を最小限に止めるよう努めてまいりますが、今後、景気悪化に伴う広告主の広告予算削減が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
2.競合について
当社グループが展開するデータプラットフォーム事業は、データの収集・集約から、独自のAIによる分析基盤の構築、その分析結果を活用した各種サービスの提供と、そのサービス利活用にあたってのコンサルティングまで、データを活用した一連の事業活動を総合的に展開しております。今後も、当社グループでは、このような総合的なサービスの拡充を進めることによって、強い競争力の獲得と、事業の拡大を実現していく方針です。これらの取り組みが予測通りの成果をあげられない場合や、同様の事業を展開する競合他社の出現によって、当社グループの競争力が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
3.技術革新について
当社グループは、インターネット関連技術に基づき事業展開しておりますが、当該分野は技術革新のスピードが速く、新たな技術に基づく新サービスが次々と生み出されております。当社グループにおいては、インターネット関連技術の最新動向を常に把握し、調査・研究を行う専門部署を設置することで、それらの技術革新へ対応してまいります。当社グループがこれらの変化への対応に遅れた場合、当社サービスの陳腐化や競争力の低下等が生じる場合があり、また、技術革新への対応のため、既存システムの改良、新規サービスの開発等のための費用支出が必要となる場合があります。これらによって当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
4.データの取り扱いに関する法的規制等について
当社グループは、Cookie(ウェブサイトを閲覧したユーザーのコンピューターに保存され、ユーザーの識別に利用される識別子)や各種デバイスの端末識別子を用いて消費者の行動データを取得・分析し、マーケティング目的で利用していますが、これらのデータの利活用に関しては、「個人情報の保護に関する法律」に基づく規制が存在します。当社は当該法令を遵守するため、担当業務や職位等に応じた保有データへのアクセス制限の実施、社内での勉強会の実施、取引先との契約書フォーマットの整備、取引先のサービス利用規約やプライバシーポリシーの確認などを実施しております。現時点で、当社グループの事業活動が当該法律によって大きく阻害される状況は生じておりませんが、インターネット上のプライバシー保護の在り方とそれを踏まえた「個人情報の保護に関する法律」の改正については、3年ごとの見直し規定に基づき、継続して検討が行われている状態にあります。また、法的規制に限らず、OSやブラウザを提供するプラットフォーム事業者においても、ユーザーのプライバシーを保護する為の様々な機能の検討が継続的に行われております。これらの関連諸法令や、プラットフォーム事業者による機能追加等の動向は法務部門やシステム開発部門の専門部署が常に動向を把握し、調査・研究を行うことで、適切に各種サービスにおける対応を行う体制を整えております。一方、当該法律や関連諸法令の制定・改正の動向、各OSやブラウザのプライバシー保護機能の動向によっては、新たな法令遵守体制の構築や現在提供しているサービスの見直しが必要となり、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
5.内部管理体制について
当社グループは、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、内部管理体制の整備を進めております。具体的には管理部門の人員の増員、会計・法務等に関する複数の外部専門家との契約、外部セミナーへの参加、専門雑誌の購読等による知見の蓄積などを行っております。現時点では一定の内部管理体制を整えており、業容の拡大に応じて今後も一層の充実を図る予定ですが、急速な新規事業の成長や海外での事業の拡大などにより、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
6.特定の役職員への依存及び人材の確保について
当社グループの役員、幹部社員等は専門的な知識、技術、経験を有しており、当社グループの経営戦略の立案・決定や事業開発等において重要な役割を果たしております。このため、何らかの理由によりこれらの役職員が当社グループから離脱するという事態になった場合には、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
また、当社グループが今後更なる成長を遂げるには、優秀な人材を確保し、育成していくことが重要であると考えており、当社グループでは、人材採用と人材育成の強化に力を入れております。しかしながら、インターネットビジネスにおいては人材の流動性が高く、今後退職者の増加や採用の不振等が生じた場合には、将来の事業拡大に必要な人材を十分に確保できず、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
7.システム障害について
当社グループは、サーバーその他のコンピュータシステムを利用し、インターネットを介してサービス提供を行っており、外部のデータセンターの利用や定期的バックアップ、稼働状況の監視等を行い、そのシステムトラブルの防止又は回避に努めております。しかしながら、外部事業者が提供するサービスの障害、役職員の過誤、ソフトウエア又はハードウエアの不具合、コンピュータウイルス、外部からのコンピュータネットワークへの不正アクセス、自然災害、偶発的事故、システムへの一時的な過負荷因等により、重要なデータの漏洩、コンピュータプログラムの不正改ざん、システムダウン、当社グループのサービス提供の停止等が発生する可能性があります。その結果、第三者からの損害賠償請求、当社グループの信用毀損、収益機会の損失等により、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
8.適切な広告配信を行うための体制について
当社グループでは広告主向けのインターネット広告配信事業を提供しておりますが、配信される広告に関しては、「不当景品類及び不当表示防止法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の各種法令や、監督官庁の指針、ガイドライン等による規制を受けております。また、広告主のブランドや信用を毀損しないよう、法令や公序良俗などに違反していない適切なメディアへと広告を配信する必要があります。
当社グループでは、法令に基づいた独自の基準を設け、営業部門から独立した監督部署をコーポレート本部内に設置し、適切な広告配信が行われるよう、当社のDSPを通じて配信されるすべての広告について配信前にチェックし、問題があると判断された広告については、問題点の修正が行われるまで配信されない仕組みを構築しております。しかしながら、これらの対応に不備が生じた場合、第三者からの損害賠償請求、当社グループの信用毀損等により、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
9.季節変動について
当社グループの事業は、広告主の月ごとの広告予算に影響を受け、多くの企業の決算月である12月及び3月に集中し、平時よりも約3割程度売上が増加する傾向があります。
このため、安定的に月次業績が推移する業種に比べ、売上及び利益の変動が起こりやすい傾向があります。当社では、季節変動の過去実績を踏まえて計画を策定することで、通期業績への影響を最小限に止めるよう努めております。一方で、季節変動による下振れ幅が想定よりも顕著な場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
10.固定資産の減損について
当社は、有形固定資産及び無形固定資産等の固定資産を保有しており、これらの資産の取得にあたっては事前に必要性や収益性を十分に検証した上で決定しております。しかしながら、経営環境や事業の状況の著しい変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
11.海外展開について
当社グループでは、台湾、中国、ベトナムなどのアジア地域に子会社を有しております。海外事業においては、各国毎に存在する法規制、商慣習、政府規制への対応が必要になるほか、予期しえない政治・社会情勢の変化、為替変動等のリスクが存在しており、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
12.配当政策について
当社グループは、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。現在当社グループは成長過程にあると認識しており、内部留保の充実を図り、収益力強化や事業基盤整備のための投資に充当することにより、なお一層の事業拡大をめざすことが、将来において安定的かつ継続的な利益還元に繋がるものと考えております。将来的には各期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案したうえで株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。
13.株式価値の希薄化について
当社グループでは、株主価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を一層高めることを目的として、役員及び従業員に対して新株予約権を付与しております。
本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は1,557,000株であり、発行済株式総数の5.7%に相当します。権利行使についての条件が満たされ、これらの新株予約権が行使された場合には、株式価値の希薄化や株式売買需給への影響をもたらし、当社株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
14.投資事業について
当社グループでは、事業ポートフォリオの多様化と事業規模の拡大を進めるべく、同業他社との資本業務提携やM&Aの実施に取り組んでおります。また、キャピタルゲインの獲得を主な目的として、スタートアップ企業へのマイノリティ投資も実施しております。投資先の選定にあたっては、当社グループとの事業上のシナジー、投資先企業による収益貢献等を慎重に検討した上で、投資実行前には財務・法務・ビジネス等に関するディーデリジェンスを行い、各種リスクの低減に努めております。しかしながら、これらの調査で確認・想定されなかったリスクが投資実行後に判明した場合や、事業計画が想定どおりに進捗しなかった場合等は、会計基準に従って投資先企業の価値の減損損失を計上するなどの必要が生じ、当社グループの業績、財政状況及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社では、保有するオルタナティブデータと独自のアルゴリズムを活用した上場企業株式投資を行っております。本投資の意思決定にあたっては、社内規程の定めに従い、適切な内部統制のもとで、リスクを抑えた安全かつ効率的な株式投資が行われるように努めております。しかしながら、投資先企業に想定外の事象が生じた場合や株式市場、経済情勢などが急激に変動した場合などは、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
15.その他の関係会社との関係について
本書提出日現在、株式会社サイバーエージェントは当社発行済株式総数の48.6%を保有しており、同社は当社のその他の関係会社に該当します。サイバーエージェントグループは、2023年9月末現在、メディア事業、ゲーム事業、インターネット広告事業、投資育成事業、その他事業を運営しております。また、当社とサイバーエージェントグループとは以下②のとおり直接取引が発生しております。当社はこれらの取引において、他の企業の取引条件との比較等によって、取引の適正性を確保しておりますが、当該取引条件の設定によっては、当社の利益が当社の他の株主の利益と一致しない可能性があります。なお、当社グループの経営方針、事業展開等の重要事項の意思決定において、株式会社サイバーエージェントに対して事前承認を要する事項等はなく、当社グループの経営の独立性は確保されております。
① サイバーエージェントグループにおける当社グループの位置付けについて
サイバーエージェントグループにおいて当社と類似したインターネット広告事業を展開しているグループ企業は存在しますが、当社グループとサイバーエージェントグループでは、顧客へのサービス提供にあたり担っている役割や商品特性等が異なるため類似性が低く、サイバーエージェントグループによって、当社グループの自由な事業活動や経営判断が阻害されるような状況は生じておらず、当社グループは自らの意思決定により事業展開しております。また、サイバーエージェントグループから当社に対する役員や出向者の派遣はなく、人的関係は存在しません。
② サイバーエージェントグループとの取引関係について
本書提出日現在において、当社グループとサイバーエージェントグループとの間には、広告売上取引及び広告媒体の仕入取引が存在しており、今後もこれらの取引を継続していく方針です。当該取引については、他の企業の取引条件との比較等により取引の適正性を確保できております。また、新規の取引を行うにあたっては、関連当事者取引管理規程に従って、定型的な売上取引や仕入取引などの取引条件の適正性が明らかな取引を行う場合は、コーポレート本部長の承認の上取締役会で報告を行い、定型的な売上取引や仕入取引以外の取引や特殊な取引条件の売上取引や仕入取引を行う場合は、取引の内容、当該相手先と取引を行う理由、取引開始の経緯、取引条件の妥当性、などについて、事前に取締役会において承認を得た上で取引を実施いたします。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社グループの事業は、データプラットフォーム事業の単一セグメントでありますが、セグメントを構成する主要なサービスとして、データプロダクトサービス、コンサルティングサービスの2つのサービスによって事業展開しております。当連結会計年度における、それぞれのサービスの経営状況は下記のとおりです。
データプロダクトサービスは「UNIVERSE」と、株式会社MADSが提供する「デジタルサイネージサービス」の2つのサービスが属しております。「UNIVERSE」とは企業のマーケティング活動を支援するデータプラットフォームです。様々な業界・業種に特化した多様なデータを保有し、それらを有機的に統合分析することで、消費者の購買プロセスの可視化と予測、そのデータを活用した広告配信から顧客属性等の分析レポート作成まで幅広く企業のマーケティング活動を支援しております。「UNIVERSE」の拡大にあたっては、2023年9月期より顧客属性に特化した営業組織へと改変することで、より顧客属性に応じた機動的な製品開発や製品提供体制を整えております。また、リモートワーク中心に変化している顧客企業に対して、オンラインセミナーの開催やオンラインでのリード獲得を目的としたインサイドセールスに特化する新しい営業組織を構築いたしました。
これらの顧客属性に応じた営業組織の強化に加え、新たなデータパートナーとの提携による業種別プロダクトの性能強化や、地方自治体向けの「まちあげ」や、2024年からはじまる新NISAの口座開設を支援する金融業種向けの製品、人材採用に向けた「マーブル」など、新しい業種に向けた製品の提供を開始しております。これらの施策によって、より顧客のニーズや規模に合致したサービス提供を行い、主要なKPIである稼働アカウント数の順調な拡大を実現しております。
デジタルサイネージサービスは、小売店舗や美容サロンなどに設置されたサイネージをネットワーク化し、一元的な広告配信を行うサービスとして「MONOLITHS」を提供しております。デジタルサイネージサービスは、期初からの計画通り一部のパートナーとの契約更改によって第3四半期より売上・粗利が減少しておりますが、スーパーマーケットやネイルサロン等のリテール領域への注力によって、再成長を狙ってまいります。
これらの結果、データプロダクトサービスの当連結会計年度の売上高は6,008百万円となりました。
コンサルティングサービスは、「メディア向けコンサルティングサービス」と、「海外コンサルティングサービス」の2つのサービスが属しております。メディア向けコンサルティングサービスは、日本国内においてインターネットメディアの広告枠を預かり、様々な広告を組み合わせることでメディア企業の広告収益を最大化するサービスを提供しております。特に当社が提供する「MicroAd COMPASS」においてはメディア企業に対する広告枠の企画提案などによるサポート体制の強化によって利益率が改善しております。
海外コンサルティングサービスは、台湾を中心としたデジタルマーケティングのコンサルティングサービスを提供しております。海外拠点の売却や、特定の大手広告主の予算削減等により、売上高は前年比でマイナス成長となっておりますが、新型コロナウイルス感染症の影響が縮小することで訪日観光客が増加しており、日系企業のインバウンド需要が拡大しております。加えて、日系企業の海外進出などのアウトバウンドの需要も増加しており、そのような需要の拡大に向け様々なサービスの提供を新たに開始しております。
これらの結果、コンサルティングサービスの当連結会計年度の売上高は6,859百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は12,868百万円(前年同期比5.2%増)、営業利益は833百万円(前年同期比32.9%増)、経常利益は738百万円(前年同期比24.6%増)となりました。また、今期より新たに開始したオルタナティブデータを使用した投資事業において、最適モデルの検証構築を進める過程において連結で有価証券運用損が24百万円発生しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は565百万円(前年同期比13.9%増)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は5,019百万円となり、前連結会計年度末に比べて9百万円減少いたしました。これは主に現金及び預金が310百万円減少したこと、並びに受取手形及び売掛金が130百万円減少したことによるものであります。固定資産は1,824百万円となり、前連結会計年度末に比べて928百万円増加いたしました。
これは主に投資有価証券が423百万円増加したこと、並びにソフトウエアが106百万円増加したことによるものであります。この結果、総資産は、6,844百万円となり、前連結会計年度末に比べ919百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は3,033百万円となり、前連結会計年度末に比べて36百万円増加いたしました。これは主に短期借入金が300百万円増加したことによるものであります。固定負債は81百万円となり、前連結会計年度末に比べて25百万円増加いたしました。この結果、負債合計は、3,114百万円となり、前連結会計年度末に比べ61百万円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,729百万円となり、前連結会計年度末に比べ857百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金も565百万円増加したことによるものであります。この結果、自己資本比率は45.4%(前連結会計年度末は39.2%)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べて310百万円減少し、2,984百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、266百万円の資金獲得(前年同期は713百万円の資金獲得)となりました。資金獲得の主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上並びに減価償却費の増加によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,019百万円の資金減少(前年同期は413百万円の資金減少)となりました。資金使用の主な要因は、投資有価証券の取得による支出並びに無形固定資産の取得による支出によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、421百万円の資金獲得(前年同期は681百万円の資金獲得)となりました。資金獲得の主な要因は、短期借入金の増加並びに株式の発行に伴う収入によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社グループの事業セグメントは、データプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。
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サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
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売上高(千円) |
前年同期比(%) |
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データプロダクトサービス |
6,008,812 |
126.8 |
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コンサルティングサービス |
6,859,655 |
91.6 |
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合計 |
12,868,467 |
105.2 |
(注)1.データプロダクトサービスとは、データプラットフォーム事業を構成する主要サービスである「UNIVERSE」と株式会社MADSが提供する「デジタルサイネージサービス」の2つのサービスを総称した名称です。
2.各サービス間の内部売上高は、調整後の金額を記載しております。
3.外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がいないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積もりを必要としております。経営者は、これらの見積もりについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
なお、当社の財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当連結会計年度における総売上高は12,868百万円(前年同期比105.2%)となりました。
当社グループの事業は、データプラットフォーム事業の単一セグメントでありますが、セグメントを構成する主要なサービスとして、データプロダクトサービス、コンサルティングサービスの2つのサービスによって事業展開しております。当事業年度における、それぞれのサービスの売上高の状況は下記のとおりです。
データプロダクトサービスは、主力製品である「UNIVERSE」の販売に注力しており、当該領域のプロダクト開発や販売リソースへの投資を積極的に行っております。2022年9月期より営業組織体制の見直しを実施し、下記の顧客属性毎に特化した営業組織へと改変することで、より顧客属性に応じた、機動的な製品開発や製品提供体制を整えております。
・顧客企業の製品やサービスの認知に重点を置くブランドマーケティング領域
・スマートフォンアプリやECサイトなどの直接的な広告効果を重視するダイレクトマーケティング領域
・その他の中小顧客を中心とした領域
これら3つの領域毎に製品開発~営業活動の戦略を策定し実行することで、より顧客のニーズや規模に合致したサービス提供を実現しております。加えて、リモートワーク中心に変化している顧客企業に対して、オンラインセミナー等を通じた新しい商品販売体制を構築することで、コロナ過以降の新しいワークスタイルに合わせた販売体制の強化を行っております。以上の施策により、当連結会計年度の「UNIVERSE」の売上高を構成する稼働アカウント数は5,978件となっており、前年比25%増まで拡大致しました。また、業種別製品の性能強化やリピート利用による発注金額の拡大によって、稼働アカウントの平均単価は前年比8%増となり、アカウント数の増加に加えて、顧客単価に関しても増加することで、UNIVERSE全体の売上高が拡大しております。
データプロダクトサービスに属する、「デジタルサイネージ」においては、屋外広告や交通広告をデジタル化し、インターネットを通じてネットワーク化することで、広告配信を行う事業となりますが、タクシー向けサイネージがパートナー企業との契約更改によって、売上および利益が減少しました。タクシーサイネージの減少分を補う目的で、美容サロン向けタブレットメディア「OCTAVE」を新たに開始することで、24年度に向けた再成長の準備を行っております。
コンサルティングサービスに属する「メディア向けコンサルティング」においては、メディア企業の広告収益最大化を実現するコンサルティングサービスですが、23年度においては緩やかな売上成長で推移いたしました。一方で提供するサービスの改善により、粗利率が向上し売上総利益は増加しております。
コンサルティングサービスに属する「海外向けコンサルティング」においては、当社グループが事業拠点を有する台湾を主とする海外各国でデジタル広告市場の成長に乗じて業績の拡大を目指してまいりました。台湾においては大手顧客の取引額減少の影響を受け、前年度をやや下回る水準で業績推移しました。訪日観光客向けのインバウンドマーケティングや、日本企業の海外進出におけるアウトバウンドマーケティングにおいて、複数のサービスを開始しており。24年度のインバウンド・アウトバウントの需要拡大に向けた準備を行っております。
b.売上原価、売上総利益
当連結会計年度の売上原価は8,739百万円(前年同期比103.5%)となりました。当連結会計年度は、利益率の高いデータプロダクトの売上に占める割合が拡大した結果、原価率は67.9%となりました。前連結会計年度の売上原価率69.0%より1.1ポイント減少しております。以上の結果、当連結会計年度におけ売上総利益は4,129百万円(前年同期比109.1%)となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3,296百万円(前年同期比104.3%)となりました。増加の主な要因は事業拡大のため採用を強化したことによる採用研修費の増加になります。売上高に対する割合は25.6%となり、前連結会計年度の25.8%より0.2ポイントの減少となりました。以上の結果、当連結会計年度における営業利益は833百万円(前年同期比132.9%)となりました。
d.営業外損益、経常利益
当連結会計年度において受取和解金等により営業外収益は18百万円、為替差損等により営業外費用は113百万円となりました。結果、当連結会計年度における経常利益は738百万円(前年同期比124.6%)となりました。
e.特別損益、親会社株主に帰属する当期純損失
当連結会計年度において主な特別利益として投資有価証券売却益42百万円を計上いたしました。結果、親会社株主に帰属する当期純利益は565百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益496百万円)となりました。
③ 経営上目標とする客観的な指標について
当社グループの継続的な企業価値向上を達成するために、経営指標としては売上高、営業利益の成長を重視しております。これら経営指標を達成する為に、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、データプロダクトサービスにおける「UNIVERSE」の稼働アカウント数の拡大を重視しております。UNIVERSEでは顧客企業のアカウント開設後、実際に製品やサービスのマーケティングを行う月ごとに発注申し込みを行うことで、当該アカウントによる広告配信が可能になります。この際の月ごとの発注~利用の件数を「稼働アカウント数」として経営指標を達成する為に重視する指標としております。
当該指標について、「② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載の通り、当連結会計年度においては、営業組織体制の見直し・強化によって稼働アカウント数(発注件数)は前年比125%の成長となり、順調に推移しているものと認識しております。
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重視する指標 |
当連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
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稼働アカウント (発注件数) |
件数 |
前年同期比(%) |
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5,978 |
125.0 |
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(注)UNIVERSEの稼働アカウントのうち、外部データを活用した広告配信を行うアカウントをデータプロダクトサ
ービスに分類し、外部データを活用しない旧来型の広告配信を行うアカウントをコンサルティングサービス
に分類しております。2022年9月期まではこれらを合算した稼働アカウント数を重視する指標としておりま
したが、2023年9月期以降は、注力しているデータプロダクトサービスに該当するアカウント数を重視する
指標として変更しております。
④ 財政状態に関する認識及び分析・検討内容
財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・
フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に含めて記載しております。
⑤ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る内容
a.キャッシュ・フローの状況分析
キャッシュ・フローの状況の詳細は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金需要のうち主なものは広告媒体の仕入れ費用及び人件費等の営業費用であります。当社は、運
転資金につきましては「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び銀行借入金にて賄う方針であります。今後
は、借入金の総額を減少させつつも、資金需要の必要性に応じて柔軟に対応し、流動性リスクを適切にコントロ
ールしてまいります。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2事業の状況 3事業等のリスク」をご参照下さい。
該当事項はありません。
当連結会計年度の研究開発活動は、データプラットフォーム事業におけるソフトウエアの開発等であり、当
連結会計年度における研究開発活動に関わる費用の総額は