文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2024年度からの中期経営計画に先立ち、当社を取り巻く事業環境の変化や世界的な脱炭素社会実現への流れを汲み、10年後、20年後、更にその先の将来、どのような企業でありたいかを見据え、ビジョン・ミッション及びコア・バリューを刷新いたしました。フロンティア精神を忘れることなく、可能性に満ち溢れた海洋と人との持続可能な未来を切り拓いてまいります。
■ビジョン
海洋と人が調和しながら共生共栄できる世界を切り拓きます
■ミッション
持続可能な未来の実現に向けて、独創的なフローティング・ソリューションを通じ、海洋が持つその可能性を解き放ちます
■コア・バリュー
~我々は“OCEAN”にコミットします~
当連結会計年度におけるわが国経済は経済社会活動の正常化が続き、回復基調を維持しましたが、世界経済については地政学上のリスクもあり不透明感が高い状態が続いております。原油価格については、サウジアラビアによる自主的な追加減産が延長されたことなどを受け一時高騰したものの、中国経済の減速などにより、2023年末には前年と同等の価格に落ち着きました。
安定したエネルギー供給を維持することは依然重要な課題であり、石油会社による深海油田開発プロジェクトは継続して進められています。当社グループの主要事業である浮体式海洋石油・ガス生産設備に関する事業、特に当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトに対する需要も堅調に推移しております。
しかしながら、当社グループを取り巻く事業環境は、脱炭素化、再生可能エネルギーの更なる普及、デジタル技術の進化など大きく変化しております。こうした事業環境の変化を確実に捉え、既存事業で確実に収益を確保しつつ、浮体式洋上風力発電、環境に配慮したFPSOの開発、デジタル・ソリューション事業など、将来の新たな収益源の開拓を着実に進めてまいります。
2021-2023 前中期経営計画の総括
2021年にスタートした3カ年の中期経営計画においては、重要テーマとして①アセット・インテグリティの改善、②デジタライゼーション戦略推進、③研究開発:FPSOに次ぐ将来の収益源の育成、④環境・社会的要請への取組み、の4項目を掲げて、必要なリソースを確保し推進してまいりました。前中期経営計画期間中は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、建造工事の費用負担増加や、ブラジルで操業するFPSO等に対する追加の修繕費等が発生したことにより、当初設定した数値目標を下回る結果となりましたが、2022年以降は、当社の取組み並びに好調な市況を背景に、安定成長軌道に回復いたしました。
中期経営計画 2024-2026
2024年よりスタートした「中期経営計画 2024-2026」の策定に先立ち、まずは重要なサステナビリティ課題として6つのマテリアリティを特定いたしました。更にはビジョン・ミッション及びコア・バリューを刷新し、これを礎とした長期戦略『ビジョン2034』では、10年後のあり姿を「海洋と人をつなぐグローバル・リーディング・プレイヤー」と定めました。
当該新中期経営計画においては、スローガンとして「イノベーションで持続可能な未来を拓く」を掲げ、重点項目として、①収益力の強化、②戦略的な経営資源配分と獲得、事業推進のための③FPSO脱炭素化の推進及び④新事業具現化への布石、また事業基盤となる⑤グループコラボレーションとシナジーの深化及び⑥サステナビリティ・グループガバナンスの向上、を設定いたしました。
①収益力の強化:
大規模深海油田を中心とした新規プロジェクトも見込まれる中、受注済みのEPCI(設計、調達、建造、据付)、長期の操業並びにチャーター案件をベースに、FPSOのトッププレイヤーとしての卓越した事業運営により、安定した利益と資金を創出してまいります。
②戦略的な経営資源配分と獲得:
FPSO事業の脱炭素化推進や安全性の向上などの「FPSO事業の価値向上」、浮体式洋上風力発電や代替エネルギー生産システムを含む「新事業」、そして次世代リーダーの育成やDE&I(多様性、公平性、包括性)の促進などにより「人的資本」を強化すべく、上記の①で得た収益を、将来のために積極的に投じてまいります。
③FPSO脱炭素化の推進:
継続的なFPSOの炭素排出原単位削減の取組みに加えて、発電機排ガスからの二酸化炭素の回収・貯蔵技術や省エネのための機器運転の最適化を可能にするデジタルツール等の開発により、温室効果ガスの排出量を最小化した“Target Zero” FPSOの実現を目指し、温室効果ガスの抜本的な削減に向けた取組みを加速してまいります。
④新事業具現化への布石:
これまでFPSOを中心とする事業で培ってきた技術や知見を土台とし、「浮体式洋上風力」、「デジタル」そして「代替エネルギー」の分野での事業化に向けた取組みを推進してまいります。また、イノベーションの文化を浸透させ、浮体技術及びデジタル・ソリューションを活用した新事業の開拓・育成にもより一層注力いたします。
⑤グループコラボレーションとシナジーの深化:
ビジネスプロセスの標準化やデジタルを活用したマネジメントシステムの導入促進と、企業の礎となる人財の強化を図る人的資本経営の推進を軸に、グローバルに展開するグループでの相乗効果を拡大してまいります。
⑥サステナビリティ・グループガバナンスの向上:
新設したサステナビリティ委員会を通じてグループ横断でサステナビリティ課題に取り組むとともに、従前より企業責任として特に力を入れて組織的に取り組んできた「安全と人権」への更なる取組みを強化してまいります。
これらの活動の成果として、「2026年に達成すべき数値目標」は親会社の所有者に帰属する当期利益175百万米ドル等を掲げております。
(注) 一過性損益調整前
①操業中のFPSOに関し、新型コロナ感染症流行の期間中は十分な保守・修繕作業が行うことができなかったため、2000年代前半に受注した初期のFPSOの経年劣化が急速に進み安全性の確保を最優先で対応した結果、想定外の稼働率の低下やアセット・インテグリティの維持・強化費用の負担を余儀なくされておりました。その後これらの初期のFPSOの状況も改善し、また、順次チャーター期間の終了を迎えていくことから、こうした課題は徐々に解決しつつあります。しかしながら石油・ガスの安定かつ安全な生産とその操業は、引き続き当社グループの最重要課題の一つであり、一層のアセット・マネジメントの強化に努めてまいります。
②近年FPSOの大型化・複雑化が進んでおり、このような状況に対応するため、当社グループはプロジェクト・マネジメント力及びエンジニアリング力の強化、人材育成に注力してまいりました。一昨年設立した東洋エンジニアリング株式会社との合弁会社も順調に稼働を開始し、建造工事の遂行能力は着実に強化されてきております。建造、操業、リースというFPSO事業全体の管理体制を一層強化するとともに、より強固な内部統制を確立し、適切に対応してまいります。
③原油・天然ガスの安定的な確保に向けてFPSO等の浮体生産設備への潜在需要は底堅く、新規案件の開発も温室効果ガス排出量の削減等環境に配慮しながら着実に進むものと予想しております。一方で、脱炭素化に向けた世界的な取組みも地域・業界ごとに温度差があるものの加速していくものと考えております。当社としては、主力事業であるFPSOのコスト競争力強化だけではなく、浮体式洋上風力事業などの新規事業開拓にも注力し、脱炭素化の流れにも真摯に取り組み、社会からの要求に応えられる企業となることを目指します。
当社グループでは重要なサステナビリティ課題として6つのマテリアリティを特定いたしました。
これらのマテリアリティを当社グループの事業戦略と結び付け、組織と人材の両面から経営基盤を強化して、当社グループならではの価値を創造し、持続可能なエネルギー供給と気候変動対応というグローバルな社会課題の解決に貢献してまいります。

当社はサステナビリティ課題に関連した活動をグループ一丸となって企画・推進し、同時にそれらの管理・評価を行うことを目的とした「サステナビリティ委員会」を経営会議の諮問機関として設置しております。

(2) リスク管理
当社では、「リスクマネジメント規程」等に基づき、当社グループにおける全事業活動に対するリスク管理体制を整備・運用しております。また、経営への影響が特に大きいリスク又は特に注意をもって管理すべきリスクとして当社取締役会又は経営会議等で特定したリスク(特定リスク)を審議する機関として、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)会議を設置しております。また、取締役会は、ERM会議を監督し、定期的に特定リスク、及びそのリスク対応状況と審議結果について報告を受ける体制となっております。
①人的資本に関する基本的な考え方
当社は「人材が競争力の源泉である」との考えに基づき、グループ全体の従業員の力を結集し、ビジョンとして掲げているとおり「海洋と人が調和しながら共生共栄できる社会」の実現を目指しております。世界的な「脱炭素」への潮流など、当社を取り巻く環境はダイナミックに変化しておりますが、当社が将来にわたって社会から必要とされ、また持続的な成長を遂げていくためには、その環境変化に柔軟かつ速やかに対応していくことが必要となります。このような認識のもと、本年度策定した中期経営計画においてFPSOの脱炭素化や新事業具現化と共に、成長と変革の礎となる人的資本への投資を積極的に行う旨を記しており、それらに資する人材の育成・獲得を推進するとともに、そのような人材が活躍できる環境を整備してまいります。
②職場環境に関する方針
当社では「働きがい」、「働きやすさ」の2つの視点で職場環境づくりを進めております。前者については、2023年に人事制度の全面的な改定を行い、等級ごとに求められる役割、行動をより具体的に定義し、従業員一人ひとりが「自分に何が求められているか」を明確にするとともに、事業を牽引するValueの高い人材を惹きつけられるよう、報酬のメリハリを強化いたしました。後者については、従業員の就労ニーズが多様化する中、働き方の柔軟性を 高めるための施策として、月の半分を上限として自宅からのテレワークを可とするハイブリッド型の就業制度の導入や、フレックスタイム制の拡充(コアタイムの短縮、育児・介護 短時間勤務者への適用)などを実施しております。今後はよりフレキシブルな働き方、及び創造性を喚起するオフィス環境の整備なども検討してまいります。
③多様性の確保に関する方針
当社では、多様な視点により生まれる新たな発想が競争力のさらなる強化につながるとの考えにもとづき、性別、国籍、年齢等の属性にとらわれず、広く優秀な人材を獲得し、その活躍を促進することを目指しております。
[女性従業員]
上記考えに基づき、日本本社では、オフショア等に赴くエンジニアを除いた女性比率が同業種における水準と同等となるよう女性の採用を強化しております。また、女性従業員が中長期的に当社で活躍できる環境づくりのため、関連法を踏まえて「育児と仕事の両立支援」の取り組みを進めております。
[外国籍従業員]
グローバルでビジネスを展開する当社では、拠点ごとに、国籍によらない従業員一人ひとりの能力、成果を踏まえた育成・登用を行っております。
[中途採用]
当社では新卒採用/中途採用の入社形態に関わらず、従業員一人ひとりの能力、成果を踏まえた育成・登用を行っております。
(女性従業員に関する指標)
(注)提出会社を対象。オフショア等に赴くエンジニアを除く
④人材育成に関する方針
当社が既存事業でも新規事業でも安定的に価値を出し続けていくためには、常にアンテナを高く張り、どのような状況にも適応し続け、Sustainableな組織であり続けることが必要だと考えております。当社では、そのような組織を創り出す人材を育てるべく、人材育成を推進しようと考えております。
具体的には、Core Values「OCEAN」に基づく文化醸成のため、その要素である「Care」「Empowered」「Agile」を体現できるようなトレーニング施策や、チームワークを向上させ「One Team」を実現するためのコミュニケーションスキルの強化、企業人の根幹となる「iNtegrity」の強化等を推進しようと考えております。また、グループ全体をグローバルに率いていく人材を育成すべく、次世代リーダー候補の育成施策の強化にも着手しております。
⑤健康と安全に関する方針
当社は、従業員の健康・安全を確保し、自らの持てる力を最大限に発揮できる職場環境を提供することが、企業としての重要な責務の一つであると考えております。すべての役職員、コントラクター及びベンダーは、当社の労働安全衛生に関するポリシー及び手順を理解し、これに従うことが求められており、特に、洋上でFPSOやFSO等の操業に関わる従業員は、閉鎖的な環境の中での生活を余儀なくされることを考慮し、その健康と安全の確保に配慮しております。また、当社は、従業員の健康と安全の確保を目的とした「健康安全宣言」を策定し、その実現に努めております。
※出典:社会 | サステナビリティ | 三井海洋開発 MODEC
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
<特に重要なリスク>
(1) 新たな進出地域におけるプロジェクト遂行に伴うリスク
そのため、特に新たな進出地域におけるプロジェクトの遂行にあたっては、現地の法律や会計コンサルタント等からの情報収集及び顧客や取引先との間で最適な責任分担を図ることにより、これらリスクの低減に努めております。
海洋油田の発見が探査の行われていなかった大水深海域に拡大していることを背景として、浮体式海洋石油・ガス生産設備の稼働数は増加してきました。また、当社グループがFPSO等の建造を行う場合の受注額は1件につき少なくとも2千億円を超える大規模なものとなっております。
しかしながら、原油価格が下落すると、石油開発会社は投資を縮小します。石油開発会社はまず探鉱活動に対する投資から縮小するものの、原油価格の低迷が長期化すると新規プロジェクトが遅延するため、当社グループもプロジェクトの受注が一時的に減少するといった影響を受ける可能性があります。
また、当社グループが石油開発会社に提供しているFPSO等のリース、チャーター及びオペレーションに関わるサービスは、契約期間が長期にわたり、安定した収入を期待できる事業ですが、操業を行っている海域における台風等の自然災害の発生や、鉱区を保有する国の政情などによってサービス提供が中断するリスクがあります。これらについては、客先である石油開発会社との契約において当社グループの免責を明文化することや保険付保といった手段によってリスク回避に努めておりますが、事前に予期することが困難な事態の発生によりプロジェクトが中断した場合には、当社グループの業績に一時的な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 化石燃料需要の減少
気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが進み、化石燃料需要の減少により長期的には石油開発企業の化石燃料関連への投資抑制や事業内容の変更が予測されております。当社グループにおいても中期経営計画の中で、事業モデルの進化によりサステナブルな社会の実現に貢献することを長期ビジョンとして描き、FPSO等の低炭素化や独自の浮体式構造及び係留技術(TLP)を活用した浮体式洋上風力発電設備の事業化へむけた取り組みを推進しております。しかしながら、事業環境の変化に対し当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの事業及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
<その他の重要なリスク>
FPSO等の浮体式海洋石油・ガス生産設備の建造にあたっては多額の資金を要するほか、これを当社グループが保有して石油開発事業者にリース、チャーターを行う場合は、そのリース、チャーター期間が10年を超えるなど建造資金の回収に長期間を要することになります。
当社グループはこうした事業資金を主に社債及び借入金により調達しており、当連結会計年度末における社債及び借入金残高は570,754千米ドルとなり、負債及び資本合計に占める割合は14.7%となっております。
当社グループでは金利スワップを用いるなど借入に係る金利変動リスクの低減に努めておりますが、金利の変動によっては当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
また、今後もFPSO等に係る新規プロジェクトを開始する場合には、新たに資金調達を行う必要があります。当社グループは、プロジェクトの推進にあたり総合商社をはじめとする事業パートナーとの連携によって資金負担の低減を図るほか、プロジェクトファイナンスの利用によるリスクの遮断も行う方針であります。
しかしながら、入札にあたって所要資金を十分に調達することが困難な場合や、金利等の資金調達条件が悪化した場合には、プロジェクトの受注及び収益性に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 大規模災害について
当社グループは、地震、風水害、感染症の世界的流行(パンデミック)など各種災害に対して発生時の損失を最小限に抑えるため、危機発生時の対応体制や対応指針をまとめたグループ危機管理ガイドラインを策定しております。しかしながら、このような災害による物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等により、FPSO等の建造工事、リース、チャーター及びオペレーションといった当社グループの事業活動に影響が生じる可能性があります。
当社グループは、国内外での事業の遂行にあたり、それぞれの国での各種法令、行政による許認可や規制等を遵守しております。しかしながら、これら法令の改廃や新たな法的規制が設けられる等の場合には、その結果が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(業績等の概要)
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済社会活動の正常化が続き、インバウンド需要の戻りにも支えられて回復基調を維持しました。世界経済は、米国においては総じて堅調に推移したものの、欧州での停滞や中国の成長が 鈍化したことから全体としては減速局面となり、長期化するロシアによるウクライナ侵攻やイスラエル・ガザ 紛争といった地政学上のリスクも加わって更に不透明感が高い状態となりました。
原油価格は、サウジアラビアによる自主的な追加減産が延長されたことなどを受け、一時1バレル90米ドル超の高値をつけたものの、中国経済の減速などにより、2023年末の終値は1バレル70米ドル台となりました。 脱炭素の流れと並存しつつ、安定したエネルギー供給を維持することは依然重要な課題であり、石油会社による深海油田開発プロジェクトは継続して進められています。当社グループの主要事業である浮体式海洋石油・ガス生産設備に関する事業、特に当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトに対する需要も堅調に推移しております。
こうした状況のもと、当連結会計年度の連結業績は、中南米向け大型FPSOの建造プロジェクトを2件受注したことによって受注高は、8,740,646千米ドル(前年比497.8%増)となり、これらのプロジェクトを始めとする建造工事の進捗とグローバルに展開するオペレーションサービスの提供によって、売上収益は3,574,924千米ドル(前年比30.5%増)となりました。
利益面では、前述のFPSO建造工事の進捗及び安定したチャーター事業の収益積み上げなどにより、営業利益は192,938千米ドル(前年比156.1%増)となりました。
また、持分法適用会社向けの貸付金に対する損失評価引当金戻入益を計上したことによる金融収益の増加により、税引前利益は214,668千米ドル(前年比291.5%増)となりました。これらにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は96,536千米ドル(前年比158.3%増)となりました。
当社グループは、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスを提供する単一の事業を展開しているため、セグメント別の業績等の記載は省略しております。
(2) 財政状態について
当連結会計年度末の資産合計は、主に現金及び現金同等物の増加により、前連結会計年度末から751,707千米ドル増加し、3,887,921千米ドルとなりました。
負債合計は、主に営業債務及びその他の債務の増加により、前連結会計年度末から557,538千米ドル増加し、2,852,630千米ドルとなりました。
資本合計は、主に当期利益及び新株の発行により、前連結会計年度末から194,169千米ドル増加し、1,035,291千米ドルとなりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フロー及び財務活動によるキャッシュ・フロー収入が大きく増加したことにより、前連結会計年度末から521,286千米ドル増加し、1,013,912千米ドルとなりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度に比べて694,782千米ドル増加し、485,886千米ドルの収入となりました。これは主に、FPSO等の建造工事に関わる売上債権の回収時期と買掛金の支払時期のバランスによる変動であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に持分法で会計処理されている投資の取得による支出229,821千米ドルにより、210,542千米ドルの支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に社債の発行による収入195,518千米ドル及び株式の発行による収入107,549千米ドルにより、241,146千米ドルの収入となりました。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループは、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスを提供する単一の事業を展開しているため、セグメント別の記載は省略しており、以下の各項目は当社グループ全体の実績を記載しております。
(注)1 上記の金額は、FPSO、FSO及びTLPの設計・建造・据付並びにその他の工事に係る完成工事高であります。
2 金額は、販売価格によっております。
(注) 上記の他、持分法適用会社のリース及びチャーターに関する当社グループ持分相当の受注残高は、5,769,161千米ドルであります。
主な顧客の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
(注) 該当年度において売上収益の10%未満であるため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績に重要な影響を与える要因
① 関係会社への出資比率
FPSO等のリース、チャーター事業推進にあたっては多額の資金を必要とします。当社グループは、各々のプロジェクトごとに総合商社などと合弁で事業会社を設立することにより、資金負担の軽減を図っております。これらの事業会社に対する当社の出資比率は、プロジェクトの規模やリスク許容度等を総合的に勘案した上で決定しており、プロジェクトによって異なります。
連結財務諸表の作成にあたっては、議決権などから支配権を有していると判断される関係会社を連結子会社とし、支配権を有しないと判断される関係会社を持分法適用会社としております。
連結子会社を事業会社としたプロジェクトでは、FPSO等の建造工事をグループ内取引と認識するため、建造工事が完工し、リース及びチャーターサービスの提供が開始されてから連結損益計算書において損益を認識します。また、連結財政状態計算書にはFPSO等の有形固定資産を計上します。
一方、持分法適用会社を事業会社としたプロジェクトでは、建造工事期間における損益を収益認識基準に基づくインプット法(発生した原価の見積総原価に占める割合で収益認識)によって連結損益計算書に反映させます。ただし、期間損益のうち、当社グループの出資比率に相当する金額はグループ内取引と判断されるため、連結調整によって未実現利益として消去します。建造工事が完工し、リース及びチャーターサービスの提供を開始すると、当該関連会社の損益のうち当社グループの出資比率に相当する金額を、連結損益計算書において持分法による投資損益として計上します。
以上のとおり、事業会社に対する当社グループの出資比率等により、連結財務諸表への影響は大きく異なっております。
② 未実現損益の消去
プロジェクトの規模が大型化するに従い、リース及びチャータープロジェクトのために設立する事業会社に対する当社グループの出資比率は概ね50%以下に止まるケースが多く、事業会社は持分法適用会社となっております。前述のとおり、こうしたプロジェクトの建造工事期間中は収益認識基準に基づくインプット法によって連結損益計算書に売上収益を計上する一方、期間損益のうち当社グループの出資比率に相当する金額を未実現損益として消去しております。
消去した未実現損益は、FPSO等を所有する持分法適用会社において、リース及びチャーター事業の会計処理にファイナンス・リースを適用する場合は、リース及びチャーターの開始時期に一括して実現させております。一方、オペレーティング・リースを適用する場合は、減価償却期間に応じ未実現利益を実現させております。
なお、連結損益計算書における営業損益に影響を与える未実現損益の消去額及び未実現損益の実現額、並びに未実現損益残高の推移は、以下のとおりであります。
(単位:千米ドル)
(2) 経営成績に関する分析
① 受注の状況
当連結会計年度は、中南米向け大型FPSOの建造プロジェクトを2件受注したことにより8,740,646千米ドルの受注高となりました。受注残高は、前連結会計年度末から6,026,971千米ドル増加し、16,817,938千米ドルとなりました。また、持分法適用会社のリース及びチャーターに関する当社グループ持分相当の受注残高は、5,769,161千米ドルとなりました。
② 売上収益の状況
売上収益は、主にFPSO等の建造工事の進捗とチャーター及びオペレーションサービスの提供により3,574,924千米ドルとなりました。
③ 営業損益の状況
営業損益は、FPSO建造工事の進捗及び安定したチャーター事業の収益積み上げなどにより、192,938千米ドルの営業利益となりました。
④ 当期損益の状況
当期損益は、金融収益の増加により214,668千米ドルの税引前利益となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期損益の状況
以上の結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、96,536千米ドルの利益となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要)(3)キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 資本の財源
当社グループの資金の源泉は、主に営業活動からのキャッシュ・フローと外部からの借入となりますが、FPSO等の建造工事においては、工事代金の回収時期と工事費用の支払時期のずれにより当該建造工事に関わる債権債務が一時的に大きく変動し、営業キャッシュ・フローに大きな影響を与えます。当社グループではこれらの建造工事に関わる債権と債務のバランスを案件毎に管理することで資金効率の向上に努めております。また、当社グループは、「CMS預貸制度(キャッシュ・マネジメント・システム)」によりグループ内で資金融通を行うことで資金効率を高めております。
② 建造工事期間における資金負担
FPSO等を客先に売り渡すプロジェクトの場合、建造工事に要する費用は工事の進行度合いに応じて前受金にて回収しているため、当社グループでは運転資金の調達を必要としません。一方、リース及びチャータープロジェクトの場合、当社グループと総合商社等が合弁で設立する事業会社が建造工事の発注者となるため、当社グループには事業会社に対する出資比率に相当する建造工事費用の負担が生じます。
当社グループは、建造工事期間における必要資金を、主に当社の債務保証によって関係会社が借り入れる方法によって調達しております。
③ 総リスク額の管理
当社グループでは、建造工事費用にかかる関係会社での借入金を、チャーター開始後に、プロジェクトファイナンスによる調達へ切り替えております。それによって当社における大型プロジェクトのための長期且つ多額の資金負担と債務保証が不要となり、プロジェクト個々のリスクを軽減する効果をもたらします。
当社グループでは、プロジェクトファイナンスを活用すると共に、総合商社などの事業パートナーをプロジェクトに招聘する等の方策により、総リスク額をコントロールして事業を展開する方針であります。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、それぞれ合理的な方法により、会計上の見積りを行なっており、詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の「連結財務諸表注記」、「2. 作成の基礎 (4)判断及び見積りの使用」及び「3. 重要性がある会計方針」に記載しております。
当社グループの経営上の重要な契約は、以下のとおりであります。
当社グループでは、中期経営計画 2024-2026「イノベーションで持続可能な未来を拓く」の実現のため、①FPSO事業の価値向上、及び ②新規事業創出の2つの領域での研究開発活動を展開しております。
① FPSO事業の価値向上
当社グループが設計・建造・据付(EPCI)並びにリース・オペレーションを行うFPSOからエネルギー資源を安全かつ安定的に供給するという根本的な価値を維持・向上させるのみならず、温室効果ガス(GHG)をはじめとする大気中への排出や海洋への排水といった環境負荷の低減、更にはEPCIやオペレーションにおける省力化・省人化といった側面での事業価値向上に資する研究開発を実施しております。
FPSOの安定操業のためのアセット・インテグリティ向上に資する研究開発としては、高信頼性・省メンテナンス性・軽量化等の観点から導入を検討している新規要素技術の開発・評価、限られた洋上人員による効率的な設備保全を実現するコンディション・ベースド・メンテナンス(CBM)やプレディクティブ・メンテナンス(PdM)に関する研究開発、さらには火気工事を伴わない船体補修法であるCFRP補修手法等、洋上の環境においても適用が容易な補修技術の開発・評価といった活動を行っております。
環境負荷の低減、特にGHG排出量の把握・削減においては、ライフサイクルを遍く責任感を持って取り組む立場から、活動量が甚大かつ活動領域が広範に亘るFPSOのEPCIにおける排出量の算定モデルの構築を行い、更には操業中のFPSOからの排出量算定の精緻化及び漏洩箇所の継続的な検知・補修を実施するため実際にFPSO上でのGHG排出量計測及び計測技術の比較・評価を実施いたしました。
先行して把握できている操業中のFPSOからの排出については、主要なGHG発生源である発電機からの排出低減を目的とした、高発電効率を実現するコンバインドサイクル発電モジュールの開発、発電機排ガスからCO2を抽出するカーボンキャプチャー(CC)技術の開発、省エネのための機器運転最適化を提示するデジタルツールの開発といった活動をはじめ、その他の排出源であるフレア・ベント・漏洩についても低減のための研究開発、さらに関連する活動として、脱炭素技術の搭載に伴うトップサイド(原油・ガス生産プラント)の更なる大型化に対応した、次世代船体の開発も実施しております。
省力化・省人化の観点では、無人潜水機(ROV)/無人航空機(UAV)によるダイバー作業の代替、ドローンを活用した高所・閉所作業の代替といったドローン・ロボティクス技術の活用と、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の実現を主な研究開発対象としております。
一例として、プライベートLTE技術の試験導入によるIoT化、様々な能力・資格が求められるオペレーション人員の人員配置自動化、業務フロー・日報等の電子化及びテキストマイニング等によるデータ活用といったFPSO操業における活動から、上流工程であるFPSOの設計におけるタグ情報管理や設計データ整合性確認の自動化、3Dモデルを活用した建造工程の容易な確認の実現といった活動へと展開しております。さらに、Chat GPTベースの生成AIを活用した社内業務改善、独自開発の高速検索システムを活用した図面・書類等へのアクセス向上、データ統合プラットフォームの開発といった業務横断的な、全社員の業務改革を支援する研究開発活動を実施しております。
② 新規事業創出
再生可能エネルギーや代替燃料等のエネルギー・トランジションにおける浮体事業、社内開発したデジタル技術を用いたデジタル事業、及びその他事業の創出に資する研究開発を実施しております。
再生可能エネルギーにおいては、当社グループの強みである浮体・係留技術を活かしたTLP型及びセミサブ型の洋上風力発電設備を開発しており、特にTLP型に関しては漁業との親和性という観点から日本での導入が期待されております。また、グループ会社のSOFEC社は電力供給ブイ及び代替燃料の一つであるアンモニアの輸送システムの開発を行い、設計基本承認を取得しております。
デジタル事業においては、当社グループのFPSO事業における知見やデータを活用したデジタル・ソリューションをパッケージ化したサービスを、グループ会社のShape社を通じて石油ガス業界だけでなく他業界に対しても外販を実施しております。当社グループの操業を通じて開発した故障予測モデルを活用し、顧客プラントにおけるPdMの支援を行うツールである「Lighthouse」、設計データと操業データを統合し、顧客プラントに対してリアルタイムで省エネ・GHG排出削減のための運転最適化を支援する「Shape AURA」、当社グループのプロセスセーフティマネジメントシステムとデジタルツールにより顧客プラントの安全操業を支援する「DBMS」の3つのサービスが現在リリース済みとなっております。
当連結会計年度におけるこれらの研究開発に係る金額は
なお、当社グループは、浮体式石油生産設備の建造及びこれに関連する各種サービスを提供する単一の事業を展開しているため、セグメント別の記載は省略しております。