(1) 会社の経営の基本方針
<企業理念「鳥居薬品の志」>
当社は、長い歴史の中で培ってきた企業風土や各ステークホルダーからの信頼を受け継ぎつつ、将来へ向けても変わらない当社の志を「鳥居薬品の志」と定め、企業理念としております。
また、当社従業員が中心となり策定した「TORII’s POLICY」を「鳥居薬品の志」の実現のために大切にする価値観として位置づけるとともに、各ステークホルダーへの責任をバランスよく果たし、満足の総和を高めていくことを表す「4Sモデル」を経営の基本的考え方と位置づけ、「鳥居薬品の志」の実現に向けて取り組んでおります。
1)企業理念:鳥居薬品の志
2)大切にする価値観:TORII’s POLICY
3)経営の基本的考え方:4Sモデル
<中長期事業ビジョン「VISION2030」>
当社は、企業理念である「鳥居薬品の志」を実現するために、2030年に向けて当社が目指す姿として「VISION2030」を策定しております。
(中長期事業ビジョン:VISION2030)
(計数目標の更新)
既存製品及びJTE-061の売上予測の見直し、並びに新規導入品の獲得及び新薬開発が順調に進捗していることから、以下のとおり、「VISION2030」の売上高については、上方修正するとともに、営業利益については、2030年時点で、2032年の過去最高益(133億円)更新が射程に入っている状態を目指します。
※1:過去最高の売上高 641億円(2017年12月期)
※2:過去最高の営業利益 133億円(2001年3月期)
「VISION2030」の実現と、以降の持続的成長を確実なものとすべく、導入に向けた事業投資に従来以上に積極的に取り組むとともに、製品の価値を正しく医療関係者や患者さんに伝えるための社内体制整備や能力向上に取り組んでいく考えです。
以下2点を事業戦略とし、これに基づき中期経営計画の各施策を実施しております。
1)導入活動の強化
2)製品価値最大化のための仕組み作り
<「中期経営計画2023-2025」2023年度の進捗状況>
当社は、2023年度から2025年度までの3ヶ年を対象期間とする「中期経営計画2023-2025」を策定し、中長期事業ビジョン「VISION2030」の実現に向けて、成長戦略の各施策とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでおります。進捗状況は、以下のとおりです。
計数指標の進捗状況

※中期経営計画の利益面の計数指標としては、将来の導入品獲得に向けて、当面は研究開発投資を積極的に実施することから、研究開発費控除前営業利益を設定しております。
医薬品業界を取り巻く事業環境は、研究開発の高度化・難化による投資リスクが増大する中で、ウクライナ・中東情勢等地政学リスクの高まりに伴う資源・原材料価格の高騰、円安を背景とした物価上昇に加え、薬価制度の改革(毎年薬価改定等)、後発品の使用促進の影響等、厳しい事業環境が継続しましたが、「中期経営計画2023-2025」において計画していた各諸施策を着実に遂行し、売上高は546億円、営業利益(研究開発費控除前)は85億円とそれぞれ当初計画を上回ることができました。
また、新規導入品を新たに2件(NAC-GED-0507、GRAZAX)獲得するとともに、新薬開発の推進(JTE-061、TO-208)が計画通り進捗する等、中長期事業ビジョン「VISION2030」目標の達成、そして以降の持続的成長に向けた各施策についても着実に取り組んでおります。
主要施策の主なトピック(2024年2月9日時点)
<「中期経営計画2024-2026」の概要>
1)「中期経営計画2024-2026」の策定
当社は、中長期事業ビジョン「VISION2030」の達成に向け、2024年度から2026年度を対象期間とする「中期経営計画2024-2026」を策定しました。「VISION2030」の実現に向けて、前中期経営計画に引き続き成長戦略の各施策とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでまいります。
2)「中期経営計画2024-2026」主要施策
3)計数指標
「VISION2030」の目指す姿の実現に向け、「中期経営計画2024-2026」の計数指標としては、引き続き売上高及び研究開発費控除前の営業利益を設定します。

※1:中期経営計画の利益面の計数指標としては、将来の導入品獲得に向けて、当面は研究開発投資を積極的に実施することから、研究開発費控除前営業利益を設定しております。
※2:現時点での会社としての概算額を示す参考値であり、達成を目指す目標として位置づけるものではありません。
※3:中長期的な業績に影響を与えるリスクとして、シダキュア、ミティキュアについて、直近の売上高の伸長が続いた場合、今後数年以内に市場拡大再算定(薬価引き下げ)を受ける可能性がございます。当該リスクについては2026年度ガイダンス及び「VISION2030」に一定の想定の上、織り込み済みです。
※4:「VISION2030」計数目標としては、2030年以降も研究開発投資を継続的に実施するものの、集中的な投資は一定程度完了している予定であることから、営業利益を指標として設定しております。過去最高の営業利益133億円(2001年3月期)
<企業価値向上に向けた取り組み>
1)企業価値向上に向けた目標と取り組みについて
2023年12月28日付「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を含む企業価値向上に向けた取り組みについて」にて開示のとおり、当社は、更なる企業価値向上を実現するために、以下の目標を設定し、中長期事業ビジョン「VISION2030」の目指す姿の実現、ROE(自己資本利益率)の改善、株主還元、コーポレートガバナンスの充実等、様々な取り組みを実施しております。
※具体的な取り組みについては当社ホームページの「企業価値向上に向けた取り組み」
(https://www.torii.co.jp/ir/value/)をご参照ください。
2)株主還元について
当社は、株主の皆様に対する適正な利潤の還元を経営の重要課題と認識しております。株主還元については、継続的かつ安定的な配当の実施を基本方針としつつ、事業投資を通じた中長期的な企業価値の向上を実現することが株主の期待に応えることになると認識しております。
2023年度の配当につきましては、「中期経営計画2023-2025」の2023年度の主要施策の進捗として、新薬開発の推進が順調に進捗(JTE-061の製造販売承認申請の実施、TO-208の第Ⅲ相臨床試験の試験速報結果)、新規導入品を2件獲得(NAC-GED-0507、GRAZAX)したこと等により、中長期の業績の見通しとして将来の成長確度が上昇したことを踏まえ、株主還元の充実を図るという考えの下、1株当たり年間120円といたしました。
また、2024年度の配当につきましても、上記方針・考え方の下、1株当たり年間120円の配当を実施する予定です。
なお、株主還元につきましては、引き続き継続的かつ安定的な配当の実施を基本方針としつつ更なる充実を図る考えであり、今後、業績や投資の進捗等を勘案しながら中長期的なDOEの向上に努め、将来的に同業他社と遜色のないDOE水準(現時点では3.5%程度)を目指してまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月27日)現在において当社が判断したものです。
<サステナビリティ基本方針>
当社は、企業理念である「鳥居薬品の志」の恒久的な実現に向け、経営の基本的考え方である「4Sモデル」に基づき、各ステークホルダーに対する責任をバランス良く果たし、満足の総和を高めていく不断の努力により、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上だけでなく、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
当社は、サステナビリティに関する取り組みを推進するため、ステークホルダーの方々とのコミュニケーションや連携といった協働を通して得られた期待やニーズ等を踏まえ、社会の持続性と事業の持続性の両面からインパクトが大きく優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、課題解決に向け適切に対応します。
<マテリアリティ>
当社は、取締役会において、ステークホルダーからの信頼維持の観点、また、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現のため、サステナビリティの基本方針を策定するとともに、当社が取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定し、課題解決に向け適切に対応しております。特定したマテリアリティについては、事業戦略、中期経営計画主要施策等とのかかわりを整理するとともに、その対応状況につき、中期経営計画の策定に合わせ、取締役会にて確認しております。また、当社は、マテリアリティの推進計画の高度化に向け、2024年度のサステナビリティ委員会の設置、運営開始に向けた検討を進めております。
当社は、中期経営計画の策定に合わせ、事業戦略、中期経営計画主要施策等に影響を与えうる事業環境を確認・整理するとともに、事業戦略等の見直しの必要性について、取締役会にて議論しております。
当社のリスク管理については、「
1) 人的資本に関する取組み
<背景及び戦略>
「VISION2030」の実現・事業戦略遂行のために、当社の組織・人財には「専門性」「機動力」「共創」が必要と考えています。この考え方に基づき、人財育成及び組織・環境整備を行っています。
・専門性:価値ある医薬品を探索・獲得し、医療現場のニーズを正確に把握しつつその価値を高め、正しく医 療関係者や患者さんにお届けするために、当社の人財には高度な専門性が求められます。
・機動力:価値ある医薬品を少しでも早く医療関係者や患者さんにお届けするために、また、医療現場のニーズに即した適時適切な情報提供収集活動等のために、当社の組織には迅速な判断・行動が求められます。加えて当社の人財には生産性高く自律的に仕事に取り組むことが求められます。
・共創:自社資源はバリューチェーンのコア機能に集中し、環境変化に柔軟に対応しながら高い専門能力を持つ外部企業等と連携する当社のビジネスモデルにおいては、社外の多様な組織や関係者との適切な協働が求められます。また、社内の多様な組織や人財が相互に連携することも求められます。
<主要施策及び指標>
① 事業戦略上必要となる人財の確保
中長期の事業戦略遂行に必要となる人財の量・質を見通すとともに、現状とのギャップを可視化し、そのギャップを埋めるための採用・育成・配置施策を実施しています。これにより、高度な専門性を持った人財を安定的に確保できる環境整備を進めています。
② 医薬情報担当者(MR)の中長期的・体系的な育成体制整備
当社では中長期の事業計画を踏まえて、事業戦略遂行に必要と考えるMR人財が具備すべき知識やスキル項目及びそれらのレベルを体系的に整理し、ロードマップを作成した上で計画的な育成にあたっています。育成の成果や課題は定期的に検証し、より効果的な育成プログラムとなるよう毎年度見直しを行います。これらを通じ、高度な専門性を備え、価値の高い情報提供収集活動を行うMRの育成を進めています。
③ 多様な人財が活躍できる環境整備
社内外の多様な組織・関係者と関わりながら、価値を共創するためには、多様な人財が活躍できる環境が重要です。そのため当社は、性別や採用(新卒・キャリア)の違い等の個人の属性、育児や介護等の個人の事情に関わらず、多様な個が活躍できる環境整備に取り組んでいます。本施策に関連する指標及び実績は以下の通りです。
(注) 目標値11%以上
④ 経営戦略に沿った人事制度の整備
「VISION2030」の実現や社員と会社の持続的な成長に向けて、「社員の専門性伸長を促進と、現状以上に役割・成果に応じた処遇を実現する人事制度」を人事制度改定の方向性として検討を進めています。期待する役割・レベルをより適切に示すことや評価・処遇のメリハリをつけること等で、成長を促す仕組みとすることを目指しています。
⑤ 企業風土改革
当社は、多様な価値観を尊重しつつも、企業理念である「鳥居薬品の志」実現に向けて大切にすべき価値観として「TORII’s POLICY」を策定し、共有・実践に努めています。TORII’s POLICY実践度合の測定を含めた企業風土改革アンケートを毎年実施し、理解・実践状況を把握するとともに、得られた課題についての改善策を検討・実行しています。これにより、個人と組織が一貫してTORII’s POLICYを実践している状態を実現し、「鳥居薬品の志」の実現に向けた外部組織体制の整備・人財の育成を目指します。
⑥ 自律的なキャリア形成支援
当社では、社員が自律的にキャリア形成をするための支援を行っています。社員の自己理解・組織や職務に対する理解の促進・応募式の研修実施による機会提供等を通じて、自律的なキャリアプランの作成・実現を支援しています。階層・課題別の研修やライフプラン研修実施、通信教育・eラーニングの提供も実施しています。また、組織の計画的な人財育成を促し、個人の自律的なキャリア形成とのマッチングを行っています。
⑦ 健康経営の実践
会社と社員が持続的に成長を成し遂げるためには、社員一人ひとりが心身ともに健康に、いきいきと働ける環境作りが重要です。当社では「健康宣言」のもと、社員の健康保持増進施策(アブセンティーイズム・プレゼンティーイズムの低減等)を実施しています。本施策の実施により、将来にわたる労働損失の防止とワークエンゲージメントの向上を目指し、社員一人ひとりがいきいきと働ける環境の実現を目指しています。本施策に関連する指標及び実績は以下の通りです。
(注) 1.2022年4月~2023年3月実績
2.目標値14日以上
2) 気候変動に関する取組み
当社は「4Sモデル」に基づくサステナビリティへの取り組みを実践するとともに、マテリアリティの一つとして「環境保全に配慮した企業活動」を特定し、課題解決に向け適切に対応しております。気候変動が当社事業に及ぼす影響については気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosure:TCFD)に沿って取り組みを進めてまいります。
また、当社は、環境基本方針に基づき、経営会議の審議を経て、環境行動計画を策定し、環境負荷の低減に向けた活動を推進しております。環境行動計画においては、CO2排出量の削減、廃棄物再資源化率の維持・向上の2つの項目について数値目標を掲げ、その達成に向けて取り組んでおります。2023年度の環境行動実績及び2024年度の環境行動計画は以下のとおりです。
当社の業績は、今後起こりうる様々な要因により影響を受ける可能性があります。当社の業績に影響を及ぼす可能性のある主なリスクとしては、以下のようなものが考えられます。
なお、本項目における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月27日)現在において、当社が判断したものです。
医療用医薬品は、開発・製造・販売等において医薬品医療機器法等関連法規の規制を受けており、規制が強化された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の医療制度改正、後発品使用の促進及び薬価基準の改定等の行政施策の動向によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、各種規制、医療制度、行政制度に関する最新の情報を収集するとともに、各種規制等に対して適切に対応を行っております。
新薬の研究開発は、長期に亘りかつ多額な費用の投入を必要としますが、上市までの過程で、遅れや変更が生じる可能性や、断念しなければならない可能性があります。さらには、製造販売承認申請を行っても承認されない可能性もあります。このような場合には、将来の成長性・収益性が低下することとなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、開発ステージ移行時期において各種会議体を通じて研究開発の継続を確認し、適切にポートフォリオの管理を行うことにより、様々な不確実性への対応を行っております。
医薬品には副作用発現の可能性があります。重篤な副作用が発現した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、製商品に関する副作用などの安全性に関する情報を収集し、集積された安全性情報を評価・分析し、その結果から適正使用情報の追加が必要な場合は、RMP(医薬品リスク管理計画)や添付文書を改訂し、医薬品の情報を更新するとともに、医療関係者に情報提供することにより、製商品の安全性の確保や適正使用の推進を行います。
当社の販売する製商品は、国内又は海外における特定の製造元で生産しております。また、特定の製造元等から調達している原材料、スギ花粉等の天然由来の原材料から生産している製商品もあります。このため、技術上もしくは規制上の問題、又は火災、地震その他の災害等により、これらの製造元が閉鎖又は操業停止となった場合、あるいは、気候変動等の理由により原材料や光熱等の調達に支障が生じ生産の継続が困難となった場合、及び、物流機能等が停滞した場合には、製商品の供給が停止し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の製商品に関し、品質上の問題等が発生した場合、国又は地方自治体からの命令に基づき、あるいは当社が自主的に判断し、回収を行う場合があります。この場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、災害に対する事業継続計画(BCP)を定めることにより製商品の安定供給を確保する体制を整備し、原薬や原材料を複数社から調達可能にするなどの取り組みを進めるとともに、大規模災害の発生などを想定し、東日本・西日本の2拠点に物流センターを置き、一方が被災した場合に備えた体制を敷いております。また、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)に基づいた品質管理体制の下、工程ごとに品質を確認しながら製商品の製造を行うとともに、製商品の製造元を定期的に訪問し、製造管理及び品質管理の状況を確認しています。なお、製商品の回収が必要となる品質不良が発生した場合には、患者様の安全確保を最優先とし、総括製造販売責任者の指示の下、行政当局への報告、医療機関などへの情報提供及び当該製商品の回収を迅速に行うとともに、原因究明と改善措置を行い、供給スケジュールの見直しや代替品の情報提供などを行います。
当社が販売する製商品に関して、競合品や後発品の上市、新規治療法や新技術の登場等により、製商品を取り巻く環境が変化した場合、製商品に関する売上減少により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、競合状況や薬価制度等の情報をもとに製品ポートフォリオの見直しを図るとともに、製商品の効能追加、剤形等の開発に取り組むことにより影響の低減を図っております。
当社は、研究開発、製造、販売等において、他社と様々な形で業務提携を行っております。何らかの事情により提携関係が変更又は解消された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、業務提携に関する契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、リスクを低減する契約の締結に努めております。また、当社は提携先との連携を密にとり、提携におけるリスクの把握と管理を行っております。
当社は、親会社であるJTとの業務提携により、医療用医薬品事業における新薬の研究開発機能をJTへ集中化し、製造、販売機能は当社が担っております。また、JTと連携して新規導入品の探索及び共同開発も実施しております。何らかの事情により提携関係が変更又は解消された場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、JTとの新規導入品の探索、共同開発等を通じて、提携関係の維持・発展に努めております。
また、親会社との提携関係に変更等が生じる場合には、必要に応じて外部の有識者から見解を入手したうえ、親会社と利害関係を有しない社外取締役に意見を求める等の措置を講じます。
当社は、各種ITシステムを利用しているため、システムの障害やコンピューターウイルス等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有しており、予期せぬ事態によりその情報が社外に流出した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、ITセキュリティ及び情報管理に関する社内規則・マニュアル等の制定及び継続的な見直しを行うとともに、社内教育を継続的に実施することにより適切な管理、運用を行っております。
当社は、事業活動を継続して行っていく過程において、製造物責任(PL)、副作用の発現、特許侵害等に関わる訴訟を提起される可能性があります。これにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、弁護士等の専門家と連携、協議のうえで適切な対応を講じます。
(10) コンプライアンスに関するリスク
当社は、事業活動を行うにあたって、労務関連、独占禁止法、製造物責任等の様々な法令等の規制の適用を受けております。重大な法令等の違反が発生した場合、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、コンプライアンスの推進を、企業理念実現のための重要な経営課題の一つと位置づけ、取締役、グループリーダーで構成するコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス推進事項の審議等を行うほか、コンプライアンス推進部による、社員に対するコンプライアンスアンケートの実施、コンプライアンス研修、勉強会等を行い、コンプライアンスの徹底を図っています。また、社内通報・社外通報窓口(弁護士)を設置し、法令違反等の事実を早期認識し、違法行為等による当社のリスクの極小化に努めております。
(11) 感染症に関するリスク
当社は、感染症の大流行等により、製商品の供給停止や医療関係者への情報提供に支障をきたす等、事業活動に様々な影響を及ぼす可能性があります。
当社は、感染症に対する事業継続計画(BCP)を定めることにより、従業員の安全確保、製商品の安定供給の確保、事前に選定した重要業務(医療関係者への情報提供等を含む)を遂行するための体制を整備する等、必要な対応を行っております。
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、本項目における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月27日)現在において、当社が判断したものです。
(1) 経営成績
当事業年度の医薬品業界を取り巻く事業環境は、研究開発の高度化・難化による投資リスクが増大する中で、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクの高まりに伴う資源・原材料価格の高騰、急激な円安進行に伴う物価上昇に加え、医療費抑制策としての薬価制度の改革(毎年薬価改定等)、後発品の使用促進の影響等により大変厳しいものとなりました。
このような状況の下、当社では、「中期経営計画2023-2025」※を策定し、中長期事業ビジョン「VISION2030」の実現に向けて、成長戦略の各施策とステークホルダーからの信頼維持策に取り組んでまいりました。
※「中期経営計画2023-2025」2023年度の進捗状況につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
当事業年度の経営成績につきましては、以下のとおりです。
(注)中期経営計画の利益面の計数指標としては、将来の導入品獲得に向けて、当面は研究開発投資を積極的に実施することから、
研究開発費控除前営業利益を設定しております。
売上高は、薬価改定による減少があったものの、アレルゲン領域、皮膚疾患領域における販売数量の伸長等により、54,638百万円と前事業年度に比べ5,742百万円(11.7%)増加しました。
各フランチャイズ領域における主要な製品・商品の販売状況につきましては、以下のとおりです。
・腎・透析領域におきましては、「リオナ錠(高リン血症治療剤、鉄欠乏性貧血治療剤)」が7,515百万円と前事業年度に比べ575百万円(8.3%)増加しましたが、「レミッチ(透析患者における経口そう痒症改善剤)」は後発品の影響に加えて薬価改定もあり2,725百万円と前事業年度に比べ811百万円(22.9%)減少しました。
・皮膚疾患領域におきましては、「コレクチム軟膏(外用JAK阻害剤)」は小児向け処方を含む販売数量の伸長により7,450百万円と前事業年度に比べ1,981百万円(36.2%)増加し、「アンテベート(外用副腎皮質ホルモン剤)」は4,533百万円と前事業年度に比べ538百万円(13.5%)増加しました。
・アレルゲン領域におきましては、アレルゲン免疫療法のさらなる普及により「シダキュア スギ花粉舌下錠(アレルゲン免疫療法薬)」は11,356百万円と前事業年度に比べ1,748百万円(18.2%)増加し、「ミティキュア ダニ舌下錠(アレルゲン免疫療法薬)」は10,148百万円と前事業年度に比べ1,454百万円(16.7%)増加しました。
費用面におきましては、売上原価は販売数量が伸長したほか、仕入単価の上昇及び為替影響等により29,847百万円と前事業年度に比べ4,330百万円(17.0%)増加し、販売費及び一般管理費は主にライセンス契約一時金の支払により研究開発費が大幅に増加したことから19,755百万円と前事業年度に比べ1,916百万円(10.7%)増加しました。
(営業利益、経常利益、当期純利益)
以上の結果、営業利益は5,035百万円と前事業年度に比べ504百万円(9.1%)減少、経常利益は営業外収益の有価証券利息が増加したほか、前事業年度において営業外費用に製造委託契約の解約違約金を計上していたこと等により5,307百万円と前事業年度に比べ229百万円(4.1%)減少しました。当期純利益は政策保有株式の縮減に伴い特別利益の投資有価証券売却益が増加したほか、「研究開発税制」の適用に基づく法人税等の低減等により4,119百万円と前事業年度に比べ175百万円(4.4%)増加しました。
なお、研究開発費控除前営業利益は8,526百万円と前事業年度に比べ1,324百万円(18.4%)増加しました。
(2) 生産、受注及び販売の実績
生産実績は次のとおりです。
(注) 金額は正味販売価格換算によっております。
商品の仕入実績は次のとおりです。
(注) 金額は実際仕入価格によっております。
該当事項はありません。
販売実績は次のとおりです。
(注) 1.医薬品事業の販売実績には不動産賃貸収入203百万円が含まれております。
2.主な相手先別販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。
(3) 財政状態
当事業年度末の総資産は、133,432百万円と前事業年度末に比べ256百万円(0.2%)減少しました。流動資産につきましては、売掛金が5,623百万円、原材料及び貯蔵品が1,111百万円、商品及び製品が661百万円増加しましたが、その他に含まれるキャッシュ・マネージメント・システム預託金が7,539百万円、現金及び預金が4,198百万円減少したこと等により88,148百万円と前事業年度末に比べ3,454百万円(3.8%)減少しました。固定資産につきましては、投資有価証券が3,687百万円増加したこと等により45,284百万円と前事業年度末に比べ3,198百万円(7.6%)増加しました。
負債につきましては、13,298百万円と前事業年度末に比べ1,165百万円(8.1%)減少しました。これは、未払金が1,243百万円減少したこと等によるものです。
純資産につきましては、120,134百万円と前事業年度末に比べ909百万円(0.8%)増加しました。これは、剰余金の配当が3,540百万円、当期純利益が4,119百万円となったこと等によるものです。
当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、34,681百万円と前事業年度末に比べ10,738百万円(23.6%)減少しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期純利益が5,593百万円、減価償却費が459百万円、売上債権の増加額が5,638百万円、棚卸資産の増加額が1,772百万円、法人税等の支払額が1,803百万円となったこと等により3,123百万円の支出となりました。(前事業年度は2,420百万円の収入)
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却及び償還による収入が16,500百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入が6,527百万円となりましたが、投資有価証券の取得による支出が17,588百万円、有価証券の取得による支出が9,001百万円となったこと等により3,779百万円の支出となりました。(前事業年度は13,676百万円の支出)
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払額が3,540百万円となったことにより3,835百万円の支出となりました。(前事業年度は1,698百万円の支出)
当社の主な資金需要につきましては、製品製造に使用される原材料の調達、商品の仕入れ、営業活動で使用される財・サービス等の運転資金のほか、設備投資、持続的成長の実現に向けた新規導入品の獲得、JTとの共同開発等の戦略的投資、配当金の支払いであり、これらの必要資金は自己資金で賄っております。また、資金の流動性につきましては、運転資金、一定の戦略的投資に備えられる現預金等の流動性資産を確保しております。
なお、有価証券報告書提出日(2024年3月27日)現在における重要な資本的支出の予定はありません。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因を考慮して見積りを行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況 1財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社は、親会社であるJTと医薬事業の研究開発に係る機能分担を行っており、新規化合物の研究開発機能はJTに集中しております。また、当社は、JTと連携して新規導入品の探索及び開発も実施しております。
当事業年度の研究開発費の総額は
なお、研究(共同)開発・導入活動の主な進捗及び成果につきましては、以下のとおりです。
(皮膚疾患領域)
尋常性ざ瘡治療薬「NAC-GED-0507」
・2023年1月、当社は、Nogra Pharma Limited(以下、「Nogra社」)と、Nogra社が開発を進めてきた「NAC-GED-0507」について、尋常性ざ瘡を対象とした日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結しました。本契約の締結により、日本国内における「NAC-GED-0507」の開発及び上市後の販売・プロモーション活動については当社が独占的に行うこととなります。
外用JAK 阻害剤「コレクチム軟膏」(一般名:デルゴシチニブ、開発番号:JTE-052)
・2023年1月、JTと日本国内における共同開発及び販売に関する契約を締結した「コレクチム軟膏」につきまして、乳幼児アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験の結果を反映し、添付文書を改訂しております。
アリル炭化水素受容体(AhR)モジュレーター「JTE-061」(一般名:tapinarof)
・2023年8月、JTと日本国内における共同開発及び販売に関する契約を締結した「JTE-061」につきまして、小児アトピー性皮膚炎患者(2歳以上12歳未満)を対象とした国内第Ⅲ相臨床試験を開始しております。
・2023年9月、「JTE-061」につきまして、アトピー性皮膚炎(12歳以上)及び尋常性乾癬を適応症として、JTが日本国内における製造販売承認申請を実施しております。
皮膚疾患治療薬「TO-208」(Verrica Pharmaceuticals Inc. 開発番号:VP-102)
・2023年12月、Verrica Pharmaceuticals Inc.と日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結した「TO-208」につきまして、伝染性軟属腫を適応症とした日本国内における第Ⅲ相臨床試験の速報結果を得ました。得られた速報結果では、有効性の主要評価項目について、プラセボに対する「TO-208」の優越性が確認されました。また、安全性について確認し、特に大きな問題は認められませんでした。今後、本試験と並行して実施中の他の臨床試験の成績等をもとに、日本国内における製造販売承認申請を目指します。
(アレルゲン領域)
イネ科花粉症アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)薬「GRAZAX」
・2023年12月、当社は、ALK-Abello A/S(以下、「ALK社」)とALK社が保有する、イネ科花粉を原因抗原とする花粉症を対象としたアレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)薬「GRAZAX」について、日本国内における独占的開発・商業化権に関するライセンス契約を締結しました。本契約の締結により、日本国内における「GRAZAX」の開発及び上市後の販売・プロモーション活動については当社が独占的に行うこととなります。