当社グループは、企業理念として「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を定めております。
ミッションは、私たちがビジネスを行う上での使命です
すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します
ビジョンは、私たちのありたい姿を描いております
・すべてのお客さまから選ばれるパートナーであり続けます
・持続可能な成長により、市場で勝ちます
・常に学びながら成長します
・コカ・コーラに誇りを持ち、誰もが働きたいと思う職場をつくります
バリューは、ミッション・ビジョンを実現するために私たちが日々の活動で常に意識し、大切にしていることを表しております
・Learning:学ぶ向上心を忘れません
・Agility:変化を恐れず機敏に行動します
・Result-orientation:結果を見据え最後までやりきります
・Integrity:誠実と信頼に基づいた気高い志で行動します
2023年には、私たちが大切にしている価値観や未来に向けた想いをわかりやすく伝えるコーポレートメッセージ「ハッピーなひとときを、ボトルから。」を策定したほか、今後5年間で達成すべき事業目標およびそのために推進すべき施策をまとめた中期経営計画「Vision 2028」を発表しました。
当社は、企業理念に基づいた活動を実践することにより、中期経営計画「Vision 2028」の達成を目指してまいります。
コーポレートメッセージ

(2)主要な目標
当社は、2023年8月9日に発表した中期経営計画「Vision 2028」において、持続的な利益成長に向け、目標を次の通りに掲げております。
・売上収益成長:年率+2~3%
・事業利益率:5%以上 450~500億円
・変革によるコスト削減:250~350億円
・ROIC:5%以上
2024年は、2023年の力強い成果に基づくさらなる利益成長を目指し、利益の最大化を軸としたトップライン成長戦略の実行や、さらなる変革の推進、利益成長を支える事業基盤の構築に取り組んでまいります。
以上から、2024年12月期の連結売上収益は、当期比+0.5%の販売数量成長ならびにミックスおよびケース当たり納価の改善等により、当期比1.6%増の882,400百万円を見込んでおります。また連結事業利益は当期比393.8%増の10,000百万円、連結営業利益は当期比245.8%増の11,900百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は当期比268.8%増の6,900百万円を見込んでおります。
国内清涼飲料市場の今後の見通しにつきましては、引き続き人出の増加が飲料需要の増加に貢献すると予想されるものの、2023年の記録的な猛暑の反動や飲料の価格改定を含めた国内インフレの進展による消費マインドの低下などの影響を受けるものとみており、2024年の市場規模は数量ベースで2023年比微減を見込んでおります。また、原材料・資材価格や為替相場の見通しは引き続き不透明であり、外部要因によるコスト上昇圧力が想定されるなど、当社にとって厳しい環境が継続するものと考えられます。
このような状況のなか、当社は、2023年8月に発表した中期経営計画「Vision 2028」の初年度である2024年を「力強く利益を積み上げる年」と位置づけ、利益の最大化を軸としたトップライン成長戦略の実行や、全社横断的な変革の推進によるコスト削減、事業基盤のさらなる強化などに取り組んでまいります。
営業分野では、コアカテゴリーへの投資やイノベーションによる製品ポートフォリオの強化、テクノロジーを活用したベンディングチャネルのさらなる変革、価格改定を含めた収益性重視の営業活動の徹底、キーカスタマーとの戦略的パートナーシップの強化など、利益をともなうトップライン成長に向けた取り組みに注力してまいります。チャネル別の取り組みとしましては、当社にとって重要なベンディングチャネルでは、投資効率を重視した自動販売機の新規設置や、自動販売機1台当たりの売上収益成長に向けた各種施策の実行、将来の成長につながるテクノロジー基盤への投資など、変革の主要施策をこれまで以上に推し進めてまいります。手売りチャネルでは、消費者ニーズにあわせた製品展開や売場の拡大、マーケティング投資の最適化を含めた規律ある営業活動などの取り組みを、お得意さまの業種や特性にあわせて実施してまいります。フードサービスチャネルでは、お得意さまにおける当社製品の取り扱い拡大や、収益性を重視した販売機材・品揃えの最適化などに取り組んでまいります。また、2024年1月にこれら3つのチャネルを軸に組織再編を実施しており、営業組織の各部門における意思決定の迅速化や各チャネルの成長戦略の推進力向上を図ってまいります。加えて、成長のドライバーとなる強力なパートナーシップとして、引き続き日本コカ・コーラ株式会社との連携強化を図ってまいります。
製造・物流分野では、これまで構築してきた強固なサプライチェーン基盤を活用し、さらなるサプライチェーンネットワークの最適化に努めてまいります。具体的には、工場の生産性向上による製造キャパシティの拡大や柔軟な製造体制の構築、物流ネットワークの再編などにより、消費地に近い工場での製品製造をコンセプトとした「地産地消モデル」を推進し、エンドツーエンドのプロセスの全体最適を追求するとともに、ケース当たり輸送距離の削減などに取り組み、コスト削減と社会的課題への対応を図ってまいります。また、S&OP(Sales and Operations Planning)プロセスの精度向上やメガDCの活用により、安定的かつ低コストでの製品供給を目指すとともに、営業・物流拠点の統廃合や、既存設備の有効活用、在庫管理の精度向上による製品在庫の低減などを通じ、資産の回転率向上にも取り組んでまいります。
バックオフィスおよびITの分野では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として、テクノロジーを活用した業務プロセスの標準化や自動化のさらなる推進、各種ITシステムやデータの統合などに取り組み、データドリブン経営のさらなる推進を図ってまいります。
加えて、設備投資の適切な管理やバランスシートの改善などにも取り組み、資本効率の向上を図ることにより、「Vision 2028」で掲げるROIC(投下資本利益率)の改善を図ってまいります。持続的な成長に資するサスティナビリティー戦略や人的資本経営の推進にも注力してまいります。
当社グループのサスティナビリティーに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サスティナビリティー全般に関するガバナンス
当社グループでは、2023年1月より、サスティナビリティー委員会を新設し、非財務目標「CSV Goals」をベースに、気候変動や生物多様性を含むさまざまなサスティナビリティー課題について方針・戦略などを定める体制を強化しております。当委員会では、経営陣がサスティナビリティー課題について議論を行い、決定した方向性や戦略を速やかに各部門へフィードバックすることにより、各部門におけるサスティナビリティー活動の徹底と円滑化を図っております。2023年の当委員会では、環境施策、TCFDなどが議論されました。また、取締役会でもサスティナビリティー関連のリスク対策が重要だと考えており、経営方針を策定するにあたり、リスク選定および成長性において考慮してまいります。
(当社グループにおけるサスティナビリティー委員会推進体制図)

(2)サスティナビリティー全般に関する戦略
当社グループでは「すべての人にハッピーなひとときをお届けし、価値を創造します」というミッションを掲げております。当社グループはこの価値の創造において事業の成長による経済価値、そして社会課題の解決で生み出される社会価値、この2つの価値をともに向上させる共創価値(CSV:Creating Shared Value)を経営の根幹としております。これが当社グループのサスティナビリティー戦略の基礎となっております。
また、2019年に日本のコカ・コーラシステムにおいて合意された「サスティナビリティーフレームワーク」を推進する一方で、さらなる社会環境変化への対応が必要と判断し、2023年に当社グループ独自の13のマテリアリティを特定しました。これらを、ステークホルダーと当社グループにとっての重要度を軸にマテリアリティごとにマッピングし、「持続的価値提供における重要テーマ」「持続的社会における重要テーマ」「持続的組織運営における重要テーマ」に整理しました。マテリアリティの解決に向けて、当社グループは引き続きバリューチェーン全体で取り組みを推進しております。
(3)サスティナビリティー全般に関するリスク管理
サスティナビリティー全般に関するリスク管理については、
(4)サスティナビリティー全般に関する指標と目標
当社グループは、日本のコカ・コーラシステムの「サスティナビリティーフレームワーク」をベースに、より具体的な非財務目標「CSV Goals」を定め、持続可能な事業と社会、そしてミッションの実現に向けて取り組みを進めております。各項目の達成に向けては、バリューチェーン全体で取り組みを実施、進捗を確認し、着実に目標達成に歩みを進めております。
※1「ボトルtoボトル」によるリサイクルPET素材と、植物由来PET素材の合計
※2PETボトル回収率 (出典 :PETボトルリサイクル推進協議会PETボトルリサイクル年次報告書2023」)
※3記載のない限り、基準年は2015年、目標年は2025年
※4気候変動は2022年実績
(5)TCFD提言に基づく取り組み
当社グループは、気候変動の緩和・適応をマテリアリティの1つと捉え、2030年までにスコープ1, 2において50%、スコープ3において30%の温室効果ガス排出量削減を目指しております(共に2015年比)。また、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロの達成を目指しております。
また、2022年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、続けてTCFDコンソーシアム、気候変動イニシアティブにも参加、2023年にはGXリーグに参画し、温室効果ガス削減に向けた取り組みを進めております。
① ガバナンス
気候変動に関連するガバナンスについては、「(1)サスティナビリティー全般に関するガバナンス」に記載しております。
② 戦略
当社グループのリスク分析において、気候変動は重要な課題の1つとして特定されております。気候変動に対してはより詳細な分析が必要と判断し、2022年よりシナリオ分析を実施しております。分析は当社グループの主事業である飲料事業を対象に、1.5/2℃シナリオ、4℃シナリオの2つのシナリオごとに検討し、それに際して前提としたそれぞれの温度帯の世界観、および参照シナリオは下表のとおりです。
2023年はシナリオ分析の対象年次を2030年および2050年に拡大、2022年に重要度が低いと判断し、分析の対象外とした項目も対象に含め、定量分析を実施し直し、重要リスク・機会を再特定しました。主なリスク・機会は下記のとおりです。インパクトの開示に際しては、相対的に確度の高い推計ができると捉えたものに対してのみ2030/2050の年次を記載しております。複数シナリオ下におけるリスクを最小化し、機会を最大化していくためにも、今回検討した対応策は、経営戦略、中期経営計画に反映するとともに、年次計画に落とし込むことで気候変動のリスクの低減・機会の最大化を図ります。
移行リスク
物理リスク
機会
*インパクトの閾値:高:100億円以上、中:10-100億円、低:10億円未満
③リスク管理
気候変動に関連するリスク管理については、
さらに、リスクマネジメント体制では、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを将来の発生可能性と影響度の観点から抽出し、気候変動を主要なリスクの一つとして捉えております。気候変動に関しては、より詳細な分析が必要と考え、2022年、2023年に気候変動リスク・機会に関してシナリオ分析を行い、その影響度を評価しております。 移行リスク(政策、評判、技術、市場)、物理リスク(急性、慢性)、機会(製品およびサービス、市場、エネルギー源、資源効率、レジリエンス)に識別し、発生の可能性、発生時のインパクトを元に優先順位付けを行っております。
④指標と目標
気候変動に関連する指標と目標については、「(4)サスティナビリティー全般に関する指標と目標」に記載しております。
(6)人的資本・多様性に関する考え方および取り組み
当社グループでは、当社の掲げるミッション・ビジョン・バリュー(MVV)および中期経営計画「Vision 2028」に基づき「People Strategy(人事戦略)」を策定し、人材価値の最大化を目指しております。People Strategyは「採用」「人材育成」「キャリア」「リワード」の4つの柱とそれを支える「働く環境・制度の整備」から成り立っております。当社グループは日本のボトラー社の経営統合などによってさまざまな価値観をもった人材、文化が共存する企業グループです。こうした強みを最大限に活かすために、社員が働きやすい環境を整備するとともに、当社の持続的な成長の実現に向けた人材育成のための各種施策を立案し実行しております。

①ガバナンス
人的資本に関するガバナンスについては、定例の役員会議において随時「People Strategy」に基づいた課題と解決策について議論を行ってきました。今後は、「Vision 2028」の達成に向けて人的資本をさらに強化すべく、定例の役員会議の約4分の1の時間、月1回を人的資本の議論に充当します。また、人事データを活用し、主要施策のKPIをモニターするとともに、進捗の課題について議論します。
② 戦略
<組織を持続的に成長させるリーダー育成>
人材や価値観の多様化、またビジネス環境が大きく変化していく時代において、経営戦略を柔軟かつスピーディーに実行し、変革を進めることが重要です。そのためには変革を推進していくリーダー(キー人材)の存在が必要不可欠です。「People Strategy」の中核となる「人材育成」「キャリアパス」の施策としてキー人材を確保していくためのパイプラインを構築しております。パイプラインは経営戦略を率先して実行するキー人材と、その後継者候補となる次世代を担うリーダーで構成されております。各世代や役職でキー人材を輩出し続け、パイプラインを強固なものとし、その人材を育成する仕組みとして企業内大学の「コカ・コーラ ユニバーシティ ジャパン(CCUJ)」を設立し、経営戦略をふまえて変革をリードする人材育成を強化しております。
<変革推進のための能力向上の取り組み>
変革をさらに推し進めるべく、組織全体の能力向上にも取り組んでおります。社員の多くが所属する営業・物流・製造の部門向けにキャリアパスを明確化した「キャリアジャーニー」プログラムを実施し、自らがキャリアプランを意識し、成長を実感できる機会の創出に取り組んでおります。また、それぞれのキャリアプラン実現に向けた能力を見出すために、さまざまな内容を多様な方法で学べる自己啓発支援プログラム「ナレッジモール」を提供し、社員一人ひとりが主体的に学ぶ文化の醸成を図っております。加えて、「Vision 2028」の達成に向けた組織変革に必要なデジタルなどの必要なスキル向上のための取り組みも重点的に実施してまいります。
<パフォーマンスを軸にした仕組みの強化>
持続可能な組織の成長を目指し、個人の能力をより高めることで、個人の集合体としての組織力を強化すべく、よりパフォーマンスを軸にした育成・キャリア構築を加速させます。当社グループでは、社員が短期・中期で目指す自身のキャリアプランと、その実現に向けた能力開発のアクションプランを自ら考え、上司との面談を通して設定する制度を設けております。今後は、同制度をより個々の社員のパフォーマンス向上と結び付けるとともに、上司・部下の定期的な1on1による個人の成長促進、職務内容に応じたトレーニングの提供など、社員の自律的成長を支える環境を整えてまいります。
<ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン>
当社グループは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(以下「DE&I」)の推進を持続的社会の実現に向けたマテリアリティのひとつと位置付けております。環境やお客さま、お得意さまの多様なニーズに対応し、当社グループが持続的に成長していくために、多様性を重視し、さまざまなバックグラウンドや価値観を持つ社員一人ひとりが学ぶ向上心を忘れず能力を発揮できる職場環境を構築しております。
マネジメント体制については、国籍、性別、年齢や経歴など多様性を重視して構成しており、様々な角度から課題を捉え議論し、意思決定を行うなど、ダイバーシティ経営の実現に努めております。障がいのある人材の活躍に向けては、2019年に設立した特例子会社を中心に、社員がそれぞれの障がいに合わせた特性や能力を発揮できる就業環境を提供しております。また、DE&Iの全社施策を促進するために、人事総務部門に専任組織を設置し、企画・推進をリードしております。
その結果として、「女性管理職比率」「男女賃金格差」「男性育休取得率」「障がい者雇用率」が改善され、性別等に関係なく皆が働きたいと思え、より多様な働き方を実現できる環境がこれまで以上に整えられることを目指してまいります。
<社員のウェルビーイングの向上>
当社グループは、社員が各自の生活やワーキングスタイルに応じた働き方を選択し、持てる力を十分に発揮して働けるような制度や仕組みを設けております。柔軟な働き方の実現のため在宅勤務、サテライトオフィス勤務を推進するほか、営業部門はできる限りリモートでの商談や直行直帰を実施するなど、働きやすい制度を整備することにより、ワークライフバランスの実現に努めております。また、社員の健康保持・増進を重要な経営課題のひとつと捉え、「健康第一」の企業風土を醸成しております。運動、禁煙、睡眠、食事、メンタル、この5つの分野の改善に向けた「Sawayakaチャレンジ」というプログラムを提供し、社員自らが健康増進について考え具体的なアクションを起こす契機の提供・アクションの習慣化を図っております。このように社員の働きやすさ・健康安全を考慮した環境を提供することで、一人一人のウェルビーイング向上を目指していきます。
③リスク管理
人的資本に関連するリスク管理については、
④指標および目標
(注釈)
※1 表示数値は、第1企業の状況5.従業員の状況にある「(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性の育児休業等取得率および男女の賃金の格差」の「※1」に対応して算出しております。
※2 2023年に公共職業安定所長宛に提出した「障害者雇用状況報告書」(2023年6月1日時点)の数値を記載しております。
本項では、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性があると特定した主要なリスクを記載しております。
なお、本項に記載した将来の事象や想定に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものです。
(1)当社のリスクマネジメント体制
当社グループでは、収益性の高い成長を実現するため、リスクと機会の管理、社員と資産の保護、危機対応能力の強化および特定のリスクに対するリスク移転メカニズムとしての保険などを統合した、包括的なビジネスレジリエンスプログラムを導入しています。
このプログラムには、リスク管理責任者(HRM)が主導し、リスクマネジメントシニアグループ(RMSG)が行うエンタープライズリスクマネジメント(ERM)、危機対応、セキュリティ、事業継続計画、保険戦略が含まれます。当社のERMのPDCAフレームワークは、COSOとISO31000に基づいており、リスクに基づいた適切な意思決定を促進することで機会を活用し、予測可能なリスクの特定と対応能力を強化し、以て、収益性の高い成長を実現するプロセスを提供しています。HRMは、将来起こり得るリスクと機会についてすべての部門に関わる広い視野を保ち、定期的な報告を通じて、経営陣と取締役会に対してリスクが可視化されるようにしています。RMSGは、各部門のリスクオーナーと緊密に協力し、ビジネスリスクの評価と管理に取り組んでいます。
取締役会は、リスク管理と内部統制システムに対する説明責任を有し、グループのリスク選好を定め、監査等委員会を通じてその有効性を見直しています。当期においては、取締役会に対して、当社グループの戦略目標達成に関わる能力に影響を及ぼし得るリスクについての情報を提供し、重要なリスクについて積極的に検討しました。
当期も引き続き経営陣のERMプロセスへの関与を強化させることに注力しました。リスクマネジメントフォーラムを四半期ごとに開催して各部門のシニアリーダーとリスクの見直しを行うとともに、経営陣とのリスクインタビューを実施しました。また、コカ・コーラシステムの関係者と連携し、コカ・コーラシステム全体に影響を及ぼす主要なリスクを考慮に入れつつ、リスク管理プロセスを強化する体制を築きました。
特定したリスクは影響度と発生可能性の観点から評価し、またビジネスに対する主要なリスクと機会は経営陣による議論と評価を通じて決定しました。経営陣のリーダーシップの下、各リスクにそれぞれリスクオーナーが割り当てられ、これらのリスクに対処するために取るべき行動が決められています。
ERMには次のようなプロセスが含まれています。すなわち、当社の事業戦略、目的および原則との整合、戦略的な方向性、倫理および価値観に関する当社グループの声明への統合、事業計画サイクルへの統合、リスクプロファイルの変更または機会を創出する要因となる可能性があるような社内外の環境についての継続的な監視、全部門でのリスク管理に関する知識を高め、十分な知識に基づいてリスクをとれるリーダーを育成するためのトレーニング、ならびに、適切な財政的保護を確保するために購入する保険の種類と金額の年次評価を行っています。
また、業務計画に関わるリスクを特定するため、経営陣とともに毎月行うリスクに関わる議論を毎月行うとともに、より広範なリスクと機会を特定するためのセッションも毎年行っています。これらの定期的な議論と正式な循環プロセスにより、最新のリスクの傾向を把握し、主要なリスクを見直す機会を提供しています。当社グループの成長戦略を実現するために、主要なリスクへの対応を各機能の年間事業計画に織り込んでいます。ERMプロセスは、グローバルな基準でのベストプラクティスに対する内部監査の対象となっており、監査責任者は必要に応じて改善の提案を行っています。
(2)重要リスク
当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重要な影響を及ぼす可能性のある主要リスクは、下表のとおりです。当期は、他企業でもサイバー攻撃の被害が生じておりましたが、ITおよびサイバーセキュリティに関わるリスクを認識しています。また、気候変動に伴うリスクに引き続き注目しています。記載されているリスクは必ずしも事業に関わるすべてのリスクを網羅しているわけではなく、将来的に、新たな予期せぬリスクや現在は重要性が低いまたは業務上の優先度が低いと考えられるその他のリスクにより影響を受ける可能性があります。
当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日まで、以下「当期」)における国内の清涼飲料市場は、人出回復や経済活動活性化、猛暑等を背景に需要が増加したものの、清涼飲料各社の価格改定実施による需要へのマイナス影響もあり、数量ベースで前期比1%程度の増加となったものとみられます。また、原材料・資材・エネルギー価格の高騰や円安などが消費行動やビジネスに影響を及ぼすなど、事業環境は引き続き不透明な状況で推移いたしました。
このような中、当社は、2023年を「利益にこだわる年」と位置づけ、収益性改善に最優先に取り組んでまいりました。営業分野では、収益性改善に向けた最重要施策として、製品の価格改定を2回実施するとともに、改定後の出荷価格の維持に努めてまいりました。また、年間を通じて規律ある営業活動を徹底し、収益性および投資効率の改善効果の最大化を図ってまいりました。さらに、記録的な猛暑や人出回復により増加する需要を最大限に取り込むべく、新製品の展開や効率的かつ効果的なマーケティング活動の実施、継続的なカスタマーエンゲージメントの強化などに取り組み、販売数量の増加とケース当たり納価の改善による売上収益の成長を図ってまいりました。製造・物流分野では、原材料・資材・エネルギー価格の高騰や円安などの影響を受けるなか、需要増加の機会を販売数量および利益の成長につなげるべく、前期に刷新したS&OP(Sales and Operations Planning)プロセスの安定的な運用に取り組み、製品の安定供給および製造・物流トータルでのコストの低減を図ってまいりました。また、海老名工場の新ラインの稼働開始や製造プロセスの改善活動などにより製造キャパシティの拡大を図るとともに、エリアごとの供給体制の構築やメガDC(Distribution Center)の活用などによるケース当たり輸送距離の削減などにも取り組んでまいりました。
また、8月に、2024年から2028年までの中期経営計画「Vision 2028」を発表いたしました。主要指標として、年率2%から3%の売上収益成長ならびに2028年の事業利益率5%以上およびROIC(投下資本利益率)5%以上などの目標を掲げ、計画達成に向けた主要戦略およびコミットメントを示すとともに、「Vision 2028」を勢いよくスタートさせるべく、変革の主要施策の前倒しでの実施や、2024年以降の成長につながるマーケティング投資および人材投資の実行などに取り組んでまいりました。
社会との共創価値に基づくESG目標の実現に向けた活動にも継続して注力してまいりました。水資源保全やPETボトルリサイクルの強化に関し、お得意さまや行政との協業の取り組みを拡大し、循環型社会形成による環境負荷の低減や協業を通じたビジネス機会の拡大を図ってまいりました。また、ビジネスを通じた地域社会貢献として、フードバンクへの製品寄贈や、地域の活動を支援する自動販売機の展開などにも力を入れてまいりました。さらに、人的資本経営の一環として、DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)の推進に取り組んでおり、さまざまなバックグラウンドや価値観をもつ社員が働きやすい環境の整備を行ってまいりました。これらを含む当社のESGの取り組みは高く評価されており、当社は世界のESG投資の代表的指標「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に6年連続で選定されました。
当期の業績の詳細は次のとおりです。
(単位:百万円、販売数量を除く)
(参考)第4四半期(10月1日-12月31日)
*事業利益(△は損失)は、事業の経常的な業績をはかるための指標であり、売上収益から売上原価ならびに販売費及び一般管理費を控除するとともに、その他の収益およびその他の費用のうち経常的に発生する損益を加減算したものです。
*販売数量について、一部製品の集計範囲および区分等の変更にともない、2022年の実績値を遡って修正しております。
連結売上収益は、868,581百万円(前期と比べ61,150百万円、7.6%の増加)となりました。価格改定による需要へのマイナス影響があったものの、人出回復や猛暑等により増加する需要を取り込むべく、新製品の展開や効率的かつ効果的なマーケティング活動の実施、カスタマーエンゲージメントの強化などに取り組んだことにより、販売数量は前期比3%の増加となりました。また、2022年以降に実施してきた一連の価格改定を通じて、製品の出荷価格の改善と改定後の出荷価格の維持に取り組んだことにより、ケース当たり納価は全チャネルにおいて改善しており、売上収益は販売数量の成長率を上回って成長いたしました。
連結事業利益は、前期と比べ16,468百万円増加し、2,025百万円(前期は14,443百万円の損失)となりました。販売数量成長やケース当たり納価改善等による利益貢献に加え、費用対効果を重視したマーケティング活動による販促費の減少、供給ネットワーク改善による物流コストの低減などにより、原材料・資材・エネルギー価格の高騰や円安などの外部要因によるコスト増加の影響が続くなか、収益性の大幅な改善を実現いたしました。猛暑等の成長機会を捉えた営業活動や、収益性改善の主要施策の着実な実行、変革の取り組みの前倒しでの効果創出等により、通期の事業利益は黒字転換するとともに、2023年11月に上方修正した計画をさらに上回る形で着地いたしました。
連結営業利益は、前期と比べ14,954百万円増加し、3,441百万円(前期は11,513百万円の損失)となりました。これは、主に、事業利益が前期と比べ増加した一方で、前期に計上した一時帰休にともなう政府補助金収入の反動によりその他の収益(非経常)が減少したことによるものです。なお、当期のその他の収益(非経常)には、バランスシートの改善を進める過程で計上した有形固定資産売却益4,401百万円などが含まれております。また、その他の費用(非経常)には、抜本的な変革の実行に係る事業構造改善費用2,491百万円などが含まれております。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益が前期と比べ増加したことなどから、前期と比べ9,941百万円増加し、1,871百万円(前期は8,070百万円の損失)となりました。
<販売数量動向(増減率は前期比)>
通期の販売数量は、人出回復や猛暑等の貢献により3%増となりました。また、価格改定の効果として、ケース当たり納価は全チャネルで前期を2桁円以上上回る改善となりました。当第4四半期(2023年10月1日から2023年12月31日まで)につきましては、10月に実施した大型PETボトル製品等の価格改定による数量減少影響を受けたものの、前期に実施した小型パッケージ製品の価格改定影響の反動もあり、数量は1%増となりました。
チャネル別では、スーパーマーケットは、人出回復や猛暑等による需要増加の機会を捉えたキャンペーン実施や製品展開に努めたものの、2022年以降に実施してきた一連の価格改定による数量減少が響き、販売数量は4%減となりました。ドラッグストア・量販店は、価格改定による影響を受けたものの、消費者の節約志向等による当チャネルの市場拡大を背景に、大型および中型PETボトル製品の数量が増加し、販売数量は2%増となりました。ベンディングでは、小型PETボトル製品や缶製品の価格改定による数量減少影響を受けるなか、これまで構築してきたシェア基盤やスマホアプリ「Coke ON」でのキャンペーンの実施などが、猛暑や人出回復により増加する需要の取り込みに貢献し、販売数量は1%増となりました。また、ベンディングのケース当たり納価は、価格改定により前期と比べ大きく改善いたしました。コンビニエンスストアでは、厳しい競争環境が継続したものの、主力製品のお得意さま店舗への導入拡大やカスタマーエンゲージメントの強化など売場獲得に向けた活動の効果が当第3四半期以降に表れてきており、累計の販売数量は5%増となりました。リテール・フードでは、飲食店や娯楽施設等における人出の回復などにより、販売数量は10%増となりました。オンラインでは、競争環境の厳しさがみられるなか、品揃えの強化やオンラインカスタマーと連携した効果的なプロモーションの実施などが奏功し、販売数量は12%増となりました。
清涼飲料の製品カテゴリー別では、炭酸は、人出回復等により飲食店や自動販売機等で「コカ・コーラ」を中心に数量が増加したことや、リニューアルした「スプライト」等の貢献により、3%増となりました。茶系は、発売以降、売上を伸ばし続けている「やかんの麦茶 from 爽健美茶」や猛暑需要による貢献があったものの、価格改定による数量減少が響き、1%減となりました。コーヒーは、「ジョージア」のブランド刷新にともない発売した「ジョージア THE ブラック」等の新製品や、家庭内需要の獲得に向け展開している中型PETボトル製品等が貢献し、価格改定による数量減少影響を受けるなかでも、2%増となりました。スポーツは、新製品「アクエリアス NEWATER(ニューウォーター)」の貢献があったものの、価格改定による数量減少が響き、4%減となりました。水は、猛暑による需要増加に加え、2022年にボトルリニューアルを実施した「い・ろ・は・す 天然水」や「い・ろ・は・す もも」等の貢献により、13%増となりました。果汁は、飲食店における人出の回復に加え、新製品「ミニッツメイド ぎゅっ!とフルーツ」の貢献もあり、13%増となりました。
アルコールカテゴリーは、新製品「ジャックダニエル&コカ・コーラ」や、発売以降、好調なノンアルコール飲料「よわない檸檬堂」等の貢献があったものの、価格改定による数量減少影響もあり、12%減となりました。
(2)キャッシュ・フロー
当期における各キャッシュ・フローの状況等につきましては、次のとおりであります。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動によるキャッシュ・フローは、59,102百万円の収入(前期は42,717百万円の収入)となりました。これは、税引前利益3,224百万円を計上したことや「減価償却費及び償却費」、「営業債務及びその他の債務の増加」等があったことによるものです。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローは、14,287百万円の支出(前期は23,090百万円の支出)となりました。これは主に、バランスシート最適化に向けた取り組みのなかで、「有形固定資産、無形資産の売却による収入」や「その他の金融資産の売却による収入」があった一方で、「有形固定資産、無形資産の取得による支出」があったことによるものです。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローは、15,229百万円の支出(前期は46,050百万円の支出)となりました。これは主に、「配当金の支払額」によるものです。
以上の結果、当期末における現金及び現金同等物は前期末と比べ29,586百万円増加し、113,660百万円となりました。
生産、受注および販売の状況
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。
(注)金額は、主として製造原価によっております。
当連結会計年度の商品仕入実績は、次のとおりであります。
(注)金額は仕入価格によっております。
(3)受注状況
当社グループは見込み生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
(注)主要な相手先別の販売実績については、総販売実績に対する割合が10%を超える相手先がないため、記載を省略しております。
財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、引当金の計上など一部に将来見積りに基づいているものがありますが、これらの見積りは、当社グループにおける過去の実績や将来計画を考慮し合理的と考えられる事項に基づき判断しております。なお、会計基準につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定」に記載のとおりであります。
当社グループの当期末の親会社所有者帰属持分比率は55.6%であり、財務体質については引き続き健全性を確保しているものと考えております。
連結財政状態計算書の主要項目ごとの前連結会計年度末(以下「前期末」)との主な増減要因等は、次のとおりであります。
(資産)
当期末の総資産は844,832百万円となり、前期末と比べ18,096百万円増加しました。これは主に、バランスシートの最適化を進めたことにより「有形固定資産」が減少した一方、「現金及び現金同等物」や「営業債権及びその他の債権」が増加したことによるものです。
(負債)
当期末の負債は374,812百万円となり、前期末と比べ24,434百万円増加しました。これは主に、「営業債務及びその他の債務」や「未払法人所得税」等が増加したことによるものです。
(資本)
当期末の資本合計は470,021百万円となり、前期末と比べ6,338百万円減少しました。これは主に、当期利益が計上された一方、配当金の支払いにより「利益剰余金」が減少したことによるものです。
また、当期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末に比べ29,586百万円増加し、113,660百万円(同比35.2%増)となりました。キャッシュ・フローの状況につきましては、「業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
当期における経営成績の概況につきましては、「業績等の概要 (1) 業績」に記載のとおりであり、連結損益計算書の主要項目ごとの前期との主な増減は、次のとおりであります。
(売上収益)
当期における売上収益は、前期に比べ61,150百万円増加し、868,581百万円(前期比7.6%増)となりました。
(営業利益)
当期における営業損益は、前期に比べ14,954百万円増加し、3,441百万円の利益(前期は営業損失11,513百万円)となりました。
(当期利益)
当期における当期損益は、前期に比べ9,962百万円増加し、1,903百万円の利益(前期は当期損失8,059百万円)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当期における親会社の所有者に帰属する当期損益は、前期に比べ9,941百万円増加し、1,871百万円の利益(前期は親会社の所有者に帰属する当期損失8,070百万円)となりました。
当社グループの財政状態および経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
ボトラー契約
当社は、ザ コカ・コーラカンパニーおよび日本コカ・コーラ株式会社との間で、南東北、関東、甲信越、中部、近畿、中国、四国および九州地方の1都2府35県を販売地域として、コカ・コーラ、ファンタ、スプライト、リアルゴールド、ジョージア、アクエリアス、クー、爽健美茶、煌および紅茶花伝等の製造・販売ならびに商標使用等に関するボトラー契約を締結しております。また、この契約に基づき、当社は、ザ コカ・コーラカンパニーおよび日本コカ・コーラ株式会社との間で、委任許可契約を締結し、コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社にボトラー事業を委任しております。
該当事項はありません。