(1)経営方針・経営戦略等
ア 経営環境
当連結会計年度におきましては、欧米を中心としたインフレ抑制のための金融引き締め政策は概ね終了する見込みがたったものの、ウクライナ情勢・中東情勢の混迷や中国経済の回復鈍化が景気の下押し要因となり、引き続き世界経済の回復基調は足踏み状態となりました。
自転車人気の過熱感は一服したものの、長期的なトレンドとして自転車への関心は高いまま継続しました。また、世界的な消費者動向の変化に伴い、釣具の需要は落ち着きを見せました。
イ 経営方針
当社グループはチームシマノの基本理念の中に「人と自然のふれあいの中で、新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献する。」を使命として掲げております。自転車部品事業、釣具事業ともに、常に新しく、より優れた製品をお届けすることにたゆまぬ努力を続け、皆様の心身の健康に貢献していきたいと考えております。
経営の方針としては次の4項目に重点を置いて運営してまいります。
・お客様に信頼され、満足していただけるサービスと製品を提供する。
・企業価値を高め、開かれた経営を約束する。
・達成感と、よろこびを分かち合える、公正でいきいきとした職場づくりに努める。
・社会の一員として環境を大切にし、共に繁栄することを目指す。
ウ 経営戦略等
当社グループは、上記経営方針を踏まえ、「価値創造企業」を展望し、売上高・営業利益等を客観的な指標とし、次の3点を長期的な経営戦略として事業を展開しております。
①コア・コンピタンスの強化とマーケットの絞り込み: 卓越した発想力、デザイン力、技術力を磨き続け、そこから生まれる新しい製品アイディアを、現実の製品に造り上げる製造力の強化と明確なターゲットを定めたマーケティング。
②自転車文化・釣り文化の創造とブランド強化: 自転車・釣りを趣味、スポーツといった娯楽目的の行為としてではなく、豊かなライフスタイルを提供する文化としてとらえ、自転車・釣りの社会的価値向上を志す。その結果として、当社のプレゼンスが高まり、ブランド価値向上につながる。
③企業価値の向上: こころ躍る製品の継続的な提供を通じて、株主の皆様、顧客、従業員等の全てのステークホルダーにとっての企業価値が高まり続ける「善の循環」を維持する。
これら3点を基本方針とし、今後も、開発型デジタル製造業としての本分を忘れず、こころ躍る製品を提案し続ける価値創造企業としての成長を経営の基本に置き、当社グループの根幹となる競争力を高め、持続可能な事業活動を行ってまいります。
(2)対処すべき課題
当連結会計年度末以降につきましては、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化などの地政学リスクに起因する資源価格の高騰や物流の停滞がグローバルサプライチェーンの混乱をもたらし、更なる景気下押しの圧力となる可能性があります。また、2024年に予定されている主要国及び他地域での選挙結果や、各国の金利政策変更が景気に影響する可能性もあります。
このような経営環境のなか、当社グループは、自転車や釣具に対する需要動向を注視しつつ、日本発の「開発型デジタル製造業」として、多くの人々に感動していただける「こころ躍る製品」の開発・製造に邁進することはもとより、企業と社会の共有価値を創造し続ける「価値創造企業」として、一歩一歩、前進していくことが大切であると考えております。その実現に向けて、次の3点の強化を課題として取り組んでまいります。
・技術開発力:開発型デジタル製造業として、電動アシスト自転車用ドライブユニットをはじめ、独自の機能を軸とした高性能部品を開発するための体制強化と意識改革などによりデジタルマニュファクチャリングの体制を強化してまいります。
・コスト競争力:製造力を強化する目的で行ってきた投資設備を最大限に活用することは当然ながら、環境負荷の低減に配慮した生産工程の改善と内在する無駄の削減を着実に進めることでコスト競争力を強化してまいります。
・コーポレート・ガバナンス:経営の意思決定機能及び監督機能の強化のため執行役員制度を導入すると共に、取締役会の客観性、透明性の確保に努めております。また、事業がグローバルに広がるなか、当社グループが共有すべき価値観を改めて統一すべく、従業員一人一人が日々の事業活動で遵守すべき方針として「行動規範」を策定し、グループのガバナンスを統括する組織的な体制の強化を進めております。当規範が当社グループに広く浸透し、コンプライアンスがより一層徹底されるよう進めるとともに、当社グループの持続的な企業価値向上に根差した活動などの非財務情報の開示に努めます。
なお、本項に含まれる将来に関する事項につきましては、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する基本的な考え方
シマノグループは、「人と自然のふれあいの中で、新しい価値を創造し、健康とよろこびに貢献する。」という使命を実現するため、グローバル社会の企業市民として世界共通の倫理観と遵法精神に基づいて持続可能な経済成長と環境・社会課題の解決に貢献し、世界の人々に愛される「こころ躍る製品」を提供する「価値創造企業」であり続けたいと考えています。
当社グループは、企業価値、事業活動に影響を与える環境、社会に係るサステナビリティ課題を重要な経営課題と認識しています。
代表取締役副社長を委員長、執行役員を委員として構成する「ESG委員会」(2022年5月より設置)において、これら課題に関する重要な方針や施策について審議を行い、必要に応じて取締役会に報告します。取締役会は、報告内容に基づいて、対応と対策が適切に推進されるよう監督・指示を行います。
※2023年はESG委員会を3回開催し、気候変動、資源循環やサプライチェーンの人権に関する対応について議論を重ねました。
(3)気候変動への取組とTCFD提言に基づく情報開示
[ガバナンス]
ESG委員会において、CO2排出量とその削減活動のモニタリングを行うとともに、気候変動関連のリスク及び機会に対する対応方針、対策を審議し、取締役会に報告しております。
取締役会は、報告内容に基づいて気候変動関連のリスク及び機会に対する対策が適切に推進されるよう監督・指示を行います。
[戦略]
2022年に当社は、グループ全体に及ぶ影響を確認するため、2030年までの時間軸で財務に影響を与える可能性のある気候変動リスク及び機会を定性的に評価しました。2023年は、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ)を用いて、2030年を対象にシナリオ分析を実施しました。各シナリオの分析の中で、定性的に特定した気候変動リスク及び機会のうち、定量的に評価が可能なものに関しては事業への影響度を定量的にも検証・評価しております。
このうち、事業に大きな影響を与える気候変動リスク及び機会は下表のとおりです。
[リスク管理]
当社では、ESG委員会において気候変動問題のリスクを議論したうえで取締役会に報告しております。
取締役会は、議論内容の報告をうけ、必要に応じて見直しや指示を行うことで監督を行っております。
[指標]
現在気候変動関連のリスクと機会に関連する主要な指標の特定を進めています。参考情報として、スコープ1及びスコープ2の排出実績は下表のとおりです。なお、2023年のCO2排出量は1月から11月までは実績値、12月は推定値にて算出しています。
2023年度の排出実績における前年度比減少の主な要因は、2022年度比で生産が減少したこと、一部の海外子会社が再エネ証書を新規購入したことや省エネ効果などが挙げられます。

(4)人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について
[人的資本投資への基本的な考え方]
当社は創業以来、「和して厳しく」の精神のもと、多様な価値観・強みを持つ人材に応じたキャリア開発を推し進めております。一人ひとりの持つ技術や才能が存分に発揮される環境づくり、その上で、個々が高い志で切磋琢磨、鋭意努力することによる自律的な成長が重要と考えております。
上記の実現に向け、従業員一人ひとりの力を最大限に引き出し、必要な能力を伸ばし、中長期的な企業価値の向上に貢献するための人材への投資は、当社経営において重要と考えております。
[人材育成方針]
当社では、企業理念や志を体現する人材育成の基本的な考え方として「シマノコンピテンシー」を制定し、「企業」「組織」「個人」の3つの側面から「価値創造企業」を実現するための人材像を可視化しております。当コンピテンシーに基づく人材育成の一環として、従業員が自発的に学ぶ風土の醸成、新しい知識の発見・実践・実体験の場、さらには従業員同士のつながりを生む機会を創出しております。これらの取り組みが、「こころ躍る製品」の提供につながると考えております。
代表的な取り組みとして、社内大学(Shimano Campus)を創設し、会社の歴史や志などへの理解を浸透させるためのコンテンツや、従業員同士がつながり、互いの専門知識や経験を共有できる場をバーチャルとリアルの二つの側面で構築し、従業員が新たな知の創造を深めることができる機会を提供しております。具体的にバーチャルの場では、従業員がWEB上で一般教養や専門知識など様々なコンテンツにアクセスできる環境を整えております。リアルの場では、当社が主催する自転車イベントスタッフを募集し、計239名が自主的に参加しております。また世界各地の自転車・釣具販売店様に従業員を派遣し製品販売の現場や製品が使われる現場を体験する活動(Shimano Leadership Development)、海外拠点の次世代リーダーを対象にした育成プログラム(Learning Team Shimano Program)や、シマノの理念や自転車・釣り文化の魅力を講話等で伝える研修プログラムを年36講座開催し、計316名が手を挙げて参加いたしました。
その他にも、職位ごとに求められる資質やスキルの開発を目的とした階層別研修や、業務に関連したスキル、社会人として必要な知識に関する検定、語学研修や通信教育の充実に努めております。階層別研修には、対象となる入社1年目から3年目、各役職への登用者が計283名参加し、語学研修・通信教育には計485名が取り組み、これらの受講費用は会社が補助し活用の促進を図っております。
[社内環境整備方針]
当社は、経営の方針の1つである「達成感と、よろこびを分かち合える、公正でいきいきとした職場づくりに努める。」を実現するために、多様な経験・知見を持つ人材を積極的に取り入れ、従業員ごとの働き方のニーズに応え、健康に安心して働ける職場環境の構築が重要と考えております。
具体的には、時間や場所に捉われず、柔軟な働き方が可能となる在宅勤務制度・時差出勤制度や、育児・介護に対する休業制度・時短勤務制度などワークライフバランスを実現するための制度の拡充に努めております。有給休暇の取得日数は、目標が年間(2023年4月~2024年3月)12日/人に対し、2023年12月末時点で10.7日/人取得、育児休業の取得率は男性63.1%、育児休業からの復職率は男性100%でした。(なお2022年度における育児休業の取得率及び復職率は、育児休業取得率が男性53.2%、女性100%で、復職率は男性女性ともに100%になっております。)
また、職場の心理的安全性の確保は重要であり、コンプライアンス意識の浸透を目的としたE-ラーニングを従業員の97.3%が受講しており、その他、ストレスチェックの結果をもとに部署へのフィードバックやサポートなどを実施しております。
従業員の健康促進の観点では、自転車通勤の促進として、駐輪場、浴場、メンテナンス場の整備、自転車通勤手当の支給や、自転車・ヘルメット購入補助などを実施しております。現在では従業員の約4割にあたる656名が自転車通勤を選択し、社内においても自転車文化の向上、従業員の健康支援を促進しております。
なお、本項に含まれる将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、(4)は、提出会社のものを記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におきましては、欧米を中心としたインフレ抑制のための金融引き締め政策は概ね終了する見込みがたったものの、ウクライナ情勢・中東情勢の混迷や中国経済の回復鈍化が景気の下押し要因となり、引き続き世界経済の回復基調は足踏み状態となりました。
欧州では、エネルギーコストや原材料価格の高騰収束の兆しがみえましたが、景気は力強さを欠きました。
米国では、インフレが緩やかに減速しFRBによる利上げ見送りが続くなか、良好な雇用環境と家計資産により押し上げられた個人消費が景気を下支えしました。
中国では、移動制限措置解除後の個人消費は反動の域を出ず、長引く不動産市場の低迷を受け、景気回復は力強さを欠きました。
日本では、経済活動が正常化するなか、インバウンド需要が回復した一方、物価高に賃金上昇が追い付いておらず、個人消費が伸び悩んだことにより景気の回復は緩やかにとどまりました。
このような環境の下、自転車、釣具への需要は引き続き弱含みであり、当連結会計年度における売上高は474,362百万円(前年同期比24.6%減)、営業利益は83,653百万円(前年同期比50.5%減)、経常利益は103,369百万円(前年同期比41.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は61,142百万円(前年同期比52.3%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
自転車部品
自転車人気の過熱感は一服したものの、長期的なトレンドとして自転車への関心は高いまま継続しました。一方で、需給調整が続くなか、市場在庫は総じて高い水準で推移しました。
海外市場においては、欧州市場では、主要市場であるドイツやベネルクス諸国での自転車への高い関心は継続し、完成車の店頭販売は底堅く推移した一方、その他の国においては消費者需要がインフレや景気減速の影響も受けて冷え込み、市場在庫は高い水準で推移しました。
北米市場では、自転車への関心は底堅かったものの、サイクリングブームの反動もあり完成車の店頭販売は弱含みで推移し、市場在庫は依然高い水準で推移しました。
アジア・オセアニア・中南米市場では、自転車への関心は底堅かったものの、インフレの高進や経済不安の影響を受けて消費者マインドが冷え込み、完成車の店頭販売は低調に推移し、市場在庫は高い水準で推移しました。一方、中国市場では、アウトドアスポーツとしてのサイクリングの人気は継続し、ロードバイクを中心に販売は好調で、市場在庫は適正な水準を維持しました。
日本市場においては、円安による完成車価格の高騰や消費者の買い控えの影響を受けて店頭販売は低調となり、市場在庫は高めに推移しました。
このような市況の下、12段変速となった「105」やグラベル専用コンポーネント「SHIMANO GRX」などの新製品にご好評をいただきました。
この結果、当セグメントの売上高は364,679百万円(前年同期比29.5%減)、営業利益は65,251百万円(前年同期比55.0%減)となりました。
釣具
世界的な消費者動向の変化に伴い、釣具の需要は落ち着きを見せ、市場在庫が増加することとなり販売に少なからず影響を及ぼしました。
日本市場においては、コロナ禍が収束し、レジャーの選択肢が多様化するなか、販売は鈍化しました。
海外市場においては、北米市場では、当初弱含みだった販売は、新製品に対する需要の高まりも手伝い、堅調に推移しました。
欧州市場では、一部地域での安定した需要に支えられていたものの、市場在庫の調整局面により、販売は力強さを欠きました。
アジア市場では、中国市場において販売は好調に推移しましたが、先行き不透明な景況感から消費者マインドが冷え込み、需要は鈍化する兆しを見せました。
豪州市場では、良好な釣況と安定した天候により、販売は堅調でした。
このような市況の下、新製品のスピニングリール「STRADIC」や最高級モデルのルアーロッド「WORLD SHAULA」が高い評価を受けるとともに、引き続きスピニングリールの「VANQUISH」などの高価格帯製品に多くのご注文をいただきました。
この結果、当セグメントの売上高は109,225百万円(前年同期比1.6%減)、営業利益は18,413百万円(前年同期比23.8%減)となりました。
その他
当セグメントの売上高は457百万円(前年同期比4.6%減)、営業損失は11百万円(前年同期は営業利益1百万円)となりました。
財政状態は次のとおりであります。
当連結会計年度末における資産合計は871,731百万円(前連結会計年度末比45,317百万円増)となりました。これは、現金及び預金が63,504百万円、機械装置及び運搬具が7,404百万円、建設仮勘定が4,245百万円、投資有価証券が4,086百万円、ソフトウエアが3,165百万円、繰延税金資産が2,965百万円それぞれ増加し、受取手形及び売掛金が23,598百万円、仕掛品が10,962百万円、商品及び製品が5,673百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
負債合計は69,334百万円(前連結会計年度末比15,983百万円減)となりました。これは、製品保証引当金が14,624百万円増加し、未払法人税等が16,162百万円、買掛金が9,570百万円、流動負債のその他が2,912百万円、短期借入金が2,151百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
純資産合計は802,396百万円(前連結会計年度末比61,301百万円増)となりました。これは、為替換算調整勘定が39,015百万円、自己株式の消却により11,645百万円、利益剰余金が9,031百万円それぞれ増加したこと等によるものです。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の89.6%から91.9%となり、1株当たり純資産は8,166円35銭から8,905円21銭となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ64,715百万円増加し、481,982百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは114,567百万円の収入となりました(前連結会計年度は110,684百万円の収入)。主な収入要因は税金等調整前当期純利益83,438百万円、売上債権の増減額25,141百万円、減価償却費23,937百万円、利息及び配当金の受取額20,323百万円、棚卸資産の増減額20,251百万円、製品保証引当金の増減額15,459百万円等によるものです。主な支出要因は法人税等の支払額43,197百万円、受取利息及び受取配当金21,112百万円等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは31,760百万円の支出となりました(前連結会計年度は33,378百万円の支出)。主な収入要因は定期預金の払戻による収入9,756百万円によるものです。主な支出要因は有形固定資産の取得による支出24,783百万円、定期預金の預入による支出7,891百万円、無形固定資産の取得による支出6,532百万円等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは43,961百万円の支出となりました(前連結会計年度は58,422百万円の支出)。主な支出要因は配当金の支払額25,804百万円、自己株式の取得による支出14,724百万円、短期借入金の純増減額2,280百万円等によるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格による概算値であります。
当社グループは、自転車部品及び釣具については大部分を見込生産によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っております。但し、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社グループは、特に以下の事項が、当社グループの連結財務諸表の作成において適用される重要な判断と見積りに影響を及ぼすと考えております。
a. 固定資産の減損
当社グループは、事業の区分をもとに概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位として資産のグルーピングを行い、将来キャッシュ・フローを見積もっております。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損損失の算定に影響を与える可能性があります。
b. 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収見込額を計上しております。その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により利益が変動する可能性があります。
c. 製品保証引当金
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは、「「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(売上高)
自転車部品事業では、世界的な自転車ブームの落ち着きから、自転車の市場在庫は高い水準となり、各市場において在庫の調整が年間を通じて継続したこと、また、長期化したインフレや景況感の悪化から、店頭販売は低調に推移しました。釣具事業では、世界的なアウトドアブームに支えられた釣りへの関心は落ち着きが見られ、国内市場を中心に販売は鈍化しました。以上の結果、当連結会計年度の売上高は474,362百万円(前年同期比24.6%減)となりました。
(売上総利益)
自転車部品事業、釣具事業ともに各市場での市場在庫の調整が継続しており、当社製品の受注減による生産減少の影響から、当連結会計年度の売上総利益は182,515百万円(前年同期比31.3%減)となりました。売上総利益率は前連結会計年度より3.7ポイント減少し38.5%となりました。
(営業利益)
自転車部品事業、釣具事業の売上高減少に伴う運送費等の比例費が減少した一方で、インフレによる人件費増加や将来に向けた投資を含めたソフトウェア関連費用の増加、及び新型コロナウイルス感染拡大による活動制限の緩和を受けて広告宣伝費が増加したことにより、販売費及び一般管理費が98,861百万円(前年同期比2.5%増)となり、当連結会計年度の営業利益は83,653百万円(前年同期比50.5%減)となりました。営業利益率は前連結会計年度より9.3ポイント減少し17.6%となりました。
(経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
営業外収益から営業外費用を差し引いた純額は、受取利息の増加等により19,716百万円(前年同期は7,409百万円)となり、当連結会計年度の経常利益は103,369百万円(前年同期比41.5%減)となりました。
一方で、無償点検関連費用及び工場建替関連費用の計上等により、親会社株主に帰属する当期純利益は61,142百万円(前年同期比52.3%減)となりました。
資産、負債及び純資産の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び広告宣伝費、販売促進費等のマーケティング費用です。当社の研究開発費は様々な営業費用の一部として計上されていますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究開発費の重要な部分を占めています。
当社グループの運転資金および設備投資資金につきましては、一般的に、内部資金により調達することとしており、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社の成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。
当連結会計年度の達成状況は以下のとおりです。
当連結会計年度の売上高は計画比12,363百万円増(2.7%増)となりました。自転車部品事業では、完成車の市場在庫の調整を受けて当社製品のキャンセルを見込んでおりましたが、実績は想定より少なく、計画比で増収となりました。釣具事業では、海外の一部地域で販売が好調に推移したことにより、売上高は計画を上回りました。営業利益につきましては、増収による利益増により、計画比6,654百万円増(8.6%増)となり、営業利益率は計画比0.9ポイント増の17.6%となりました。
該当事項はありません。
当社グループは「人と自然と道具の美しい調和」を目指し、基礎的な研究開発から製品化及び生産技術分野まで幅広く研究開発活動を行っております。また、海外におきましても、Shimano(Singapore)Pte. Ltd.を核として、製品化及び生産技術分野の研究開発活動を積極的に行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
当セグメントにおける研究開発の目的は、より多くの人に、自然や日常の中で自転車に乗ることで健康的な生活を提案することです。それにより、環境にも人にもやさしい世界になっていくことを目指しています。
そのために、当社が開発のテーマとしてあげているのが、自転車を操作するときのストレスの軽減と自転車に乗る楽しさの追求です。
これまで電気制御の部品を多く展開していますが、単純にハードウエアを進化させるだけでなく、そのハードウエアをどのように動かしたら快適かを考えて、ソフトウエアのあり方も日々進化させています。また、人々の生活がデジタル化している中で、より楽しく快適に自転車に乗っていただけるようなアプリケーションも開発・提供しています。
2023年は、E-BIKEカテゴリーにおいて、ペダリング状態に関わらず自動で適切なギアに変速する「AUTOSHIFT」、「FREESHIFT」という革新的な機能を開発・提供しました。また、ハイエンド市場向けに、電気制御の部品を展開するだけでなく、幅広い自転車ユーザーの手が届きやすい価格設定で、新たな快適性を提供する機械式シフティングシステムの展開を開始し、より多くの人々が自然に触れる機会を楽しめるよう努めています。
なお、当セグメントにおける研究開発費は
① ロードバイク市場におきましては、2022年に105シリーズを12速化し、Di2システムを導入しました。2023年はこの105シリーズに操作性を一新した12速機械式シフティングシステムと快適なディスクブレーキシステムを採用した新製品を発表しました。
② グラベル市場におきましては、業界初のグラベル専用コンポーネントとして評価されているGRXシリーズに新たにRX820シリーズを追加。12速化された機械式シフティングシステムにより、多様な状況に対応するギアオプションと、あらゆる路面での使用に適したエルゴノミクスを提供しています。
③ ライフスタイルバイク市場向けには、アクティブなライフスタイルを求めるすべての人の道しるべとなる存在を目指した「SHIMANO CUES」という新ブランドを立ち上げ、幅広い自転車スタイルに対応する製品を提供しています。「SHIMANO CUES」はスムーズなシフティング、E-BIKE走行に適した耐久性、従来品と比べ最大3倍の長寿命を実現しています。
当セグメントにおける研究開発は、基本性能の向上と新機能の実現を目指すと共に、感性を具現化するテクノロジーを追求しております。
なお、当セグメントにおける研究開発費は
① 「TWINPOWER」(ツインパワー)
2024年、中小型スピニングリール「TWINPOWER」をリリースします。本ブランドは37年の長きにわたり質実剛健のコンセプトのもとにブラッシュアップを重ねてきたブランドであり、金属製のローターとボディから生み出される高い強度・パワーはそのままに、新機構が多数搭載されることでリールとしての基本性能が大きく進化しました。例えば高耐久ギア設計「インフィニティクロス」、ラインの放出抵抗を軽減する巻取り機構「インフィニティループ」、高負荷時でも安定して軽く巻き取れる動力伝達機構「インフィニティドライブ」、スプール周りのライントラブルを抑える「アンチツイストフィン」、優れた耐摩耗性能と滑らかな滑り出しを両立したドラグ「DURAクロス」などがあげられます。これらの機構の搭載により、新しい「TWINPOWER」は使い込むほどに真価を発揮し、アングラーの渾身のひと巻きをサポートします。
② 「NEW I-DC5」(ニューアイディーシーファイブ)
新製品「メタニウムDC」に搭載するデジタルコントロールブレーキです。従来の「I-DC5」からファームウェアを一新することで精度の高いブレーキ制御が可能になりました。それによりライントラブルを低減しながら、さらなるロングキャスト性能を発揮します。さらに従来ではサイドプレートの内側に組み込まれていたブレーキ調整用モードダイヤルを外側に配置することで、サイドプレートを開けることなく状況にマッチしたブレーキ設定を選択することが可能になりました。「NEW I-DC5」の登場で今までアングラーがアプローチできなかった範囲にルアーを届けることができるようになり、魚との出会いを増やします。
① 「NESSA LIMITED」(ネッサ リミテッド)
サーフキャスティングゲームのフラッグシップロッドである「NESSA LIMITED」は、「スパイラルXコア」による高強度化と、「マルチピースUBD(アルティメットブランクスデザイン)」による理想的なロッドパワー設計により、サーフキャスティングゲームで大きなアドバンテージとなる圧倒的な遠投性能を実現しました。更にタッチフリーチタンガイドを軸としたフルXガイド化によるスムーズなライン放出性能と、ライントラブルの軽減が、遠投性能の向上及び心地よいキャストの実現に貢献しています。
② リールシート「Xシートテクニカルガングリップ」、「シームレスファイティングシートCI4+」の展開
様々な釣りのために専用設計されたロッドと釣り人との接点であるリールシートは、快適かつ意図したロッド操作を実現する上で非常に重要なパーツです。2023年はボートフィッシング用の「Xシートテクニカルガングリップ」とルアーフィッシング用の「シームレスファイティングシートCI4+」を新たな高機能性オリジナルリールシートとして展開しました。
① ルアー
本来飛距離の出にくいジョイントルアーのボディをコンパクトに折りたたむことで飛行姿勢を安定させ、遠くに飛ばす新たなブーストコンセプトの一つであるアーマブースト機構。その機構を搭載したジャイアントジョイントベイトである「バンタム Btアーマジョイント 280SF アーマブースト」を2024年に展開します。これによりジャイアントベイトであきらめていた飛距離とキャスト精度の向上を実現しました。
② シューズ
2024年、ハイグリップデッキソールというシマノオリジナルのソールを搭載したボートゲーム ドライデッキシューズをリリースします。このソールは接地面積、素材、溝形状を徹底的に見直し、ボート上での耐滑性を高めたボート専用ソールです。加えて、ラストを見直すことで履き心地も改善し、さらに防水機能も盛り込むことで、より快適で安全にボートフィッシングを楽しんでもらえる製品になっています。
当セグメントでは主にロウイング関連用品等の開発を行っております。
なお、当セグメントにおける研究開発費は