第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、取り巻く事業環境の変化に適切に対応しながら経営を進めるため、当社グループの存在意義を改めて定義し、揺るがない経営の志とするために、2022年に当社グループパーパス「人と創造力をつなぐ。」を制定しております。

当社グループは、100年にわたり、筆記具を作り、販売することで、創造力の一端である「書く」を通じ、世界中の人々が思索し、記し、描き、伝え、残すことを支えてきました。今後は、「人と創造力をつなぐ。」のもと、「書く」だけでなく、「書く」以外の領域でも、製品、モノづくりだけにとどまらない、サービスや体験、コトづくり等の提供や新たな価値の創造に取り組んでまいります。

 

〈パイロットグループ パーパス〉


 

(2) 経営環境

当社グループを取り巻く事業環境は、世界的に進む筆記具のデジタル化や消費者の購買チャネルの多様化等、激しい変化への対応、さらに世界的な紛争や自然災害の発生、原材料の高騰等による生産、物流のリスクをはじめとしたサプライチェーン上の様々なリスクへの対策や社会的課題の解決も求められております。

このような事業環境の変化の中で当社グループを持続的に成長させるため、パーパスをもとに、将来達成されるべき姿からバックキャストした2030年ビジョンを定め、この2030年ビジョンを実現するための中期経営計画を、創業の精神であり行動指針である社是を通じて、実行しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略・目標とする経営指標

① パーパスの浸透

当社グループは、世界中の従業員にパーパスを浸透し、一体感を持って歩みを進めることが、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために重要なことと考えております。

パーパス浸透の取組みとして、まずグループ中核となる当社での浸透活動に注力し、経営層と従業員の対話会等、経営層からの周知活動を実施し、心理的な距離を縮めました。さらに従業員へパーパスの理解を深めるブックの配布やワークショップの実施により、従業員自らがパーパスを中心に置いて、やってみたいことを考え、新しいことへ挑戦する風土改革が進んでおります。また、グループ子会社においても周知活動を開始いたしました。

今後も継続してパーパスの浸透を図り、当社グループの持続的な成長と環境、社会問題の解決に貢献する取組みを進めてまいります。

 

 

② 2030年の目指す姿

当社グループは、パーパス「人と創造力をつなぐ。」に基づいた将来達成されるべき姿からバックキャストし、2030年ビジョンを「世界中の書く、を支えながら、書く、以外の領域でも人と社会・文化の支えとなる」と定めております。

 

〈パイロットグループ 2030年ビジョン〉

世界中の書く、を支えながら、

書く、以外の領域でも人と社会・文化の支えとなる

グローバル筆記具市場№1 ~ 海外事業拡大・国内シェア堅持

非筆記具事業を第2の柱として成長 ~ 売上高構成比25%

環境・社会・従業員への価値提供 ~ 持続可能な地球・社会づくりへの貢献

 

筆記具事業においては、国内市場のシェアを堅持しつつ、海外市場での更なる事業拡大を実現し、揺るぎないグローバル筆記具市場№1の地位を確立します。また現在の玩具、産業資材に加え、新たな事業を創出・成長させることで、2030年までに非筆記具事業の売上高構成比を25%に拡大し、世界中の人々の人生のあらゆる局面で価値を提供できる存在を目指してまいります。

同時に、地球環境や地域社会に対する貢献・価値提供と、当社従業員が心身ともに健康に働くことができる職場環境を実現し、2030年へと向かってまいります。

 

③ 2022-2024中期経営計画

2030年ビジョンを実現するために、2022-2024中期経営計画を策定しております。

2022-2024年は“変革と挑戦”の3年間と位置づけ、5つの基本戦略を迅速に実行し、各基本戦略の2024年目標と経営指標及び財務指針を達成するための取組みを進めております。


 

 

④ 5つの基本戦略の進捗状況

 


 

 


 


 

 


 

⑤ 経営指標及び財務指針

2024年の経営指標及び財務指針の状況は以下のとおりです。


 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、世界的に進む筆記具のデジタル化や消費者の購買チャネルの多様化等、中核事業である筆記具事業を取り巻く環境が激しく変化している中、消費者へ更なる付加価値を提供していくために、グローバルマーケティング、知的財産・開発機能の強化、BCPの観点を含めた生産体制及びサプライチェーンの構築、販売チャネル・商流の強化を図っております。

また、非筆記具事業においては、筆記具で培った技術を活かした新規事業を創出、成長させ、世界中の人々の人生のあらゆる局面で価値を提供できる存在となるべく、他社との資本業務提携を積極的に検討、実行してまいります。

サステナビリティへの取組みにおいては、地球環境に配慮した製品開発、製造、販売を行い、地球規模での環境負荷低減への取組みを推進し、人々の暮らしや生活に役立つための行動や価値の提供をすることで、持続可能な社会に貢献してまいります。従業員においては、心身ともに健康で、当社グループで働くことに誇りと楽しさを感じることができる職場環境を構築し、また、多様性、専門性を強化し、教育研修制度を充実させ、人財育成の更なる充実に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する考え方

当社グループは、主力事業である筆記具の展開自体が教育や文化を通じて社会貢献につながっていると考え、この事業のグローバル展開を強化することが事業を通じた社会課題の貢献であると認識しております。そのうえで、さらに現在の社会や環境の変化に伴い、事業活動を通じて、グローバルな視点から様々なサステナビリティの課題解決に取り組む事が重要であると認識しております。ガバナンスにおいては、グループでのリスクマネジメント強化を推進し事業基盤の整備等を進めており、社会貢献においては、事業に関連した教育や文化を通じた活動を中心に展開強化しております。また、環境課題の解決に取り組む事が企業として重要であると認識し、製品の企画・設計・生産・販売等、事業活動のあらゆる面において地球環境への影響を低減するとともに、企業価値の向上を追求し、持続可能な社会の発展に貢献する事が企業の社会的責任であると考えております。当社グループパーパス「人と創造力をつなぐ。」を、従業員をはじめとするステークホルダーの皆様と共有し、当社グループの持続的な成長と、環境・社会問題の解決に貢献するために、当社グループは「気候変動」と「人的資本」をサステナビリティの重要な要素として捉え、以下の取組みを実施してまいります。

 

(2) 気候変動

 当社グループは、事業活動を通じてグローバルな視点から様々な環境課題の解決に取り組むことが重要であると認識し、事業活動のあらゆる面において環境への影響を低減するとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。当社グループは、「気候変動への対応」をサステナビリティ重要課題の一つとして特定し、気候変動対策に取り組んでおり、2023年3月、気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)提言に賛同を表明いたしました。

 

① ガバナンス

当社は、国内主要生産拠点において国際規格ISO14001に基づく環境マネジメント体制を構築・運用しております。担当執行役員のリーダーシップのもと、各拠点において気候変動を含む環境への取組みを推進しております。気候変動に関わる取組みの進捗状況は、取締役会に対して、サステナビリティ重要課題を含む中期経営計画の進捗状況と併せて定期的に報告を行っております。

 

 気候変動関連のガバナンス体制図


 

② 戦略

a. 気候変動関連リスク・機会の特定、シナリオ分析

気候変動関連リスク・機会は、TCFD提言で示された事例や筆記具業界におけるリスク・機会の情報を収集し、当社にとっての気候変動関連リスク・機会を特定いたしました。特定されたリスク・機会のうち、発生可能性と事業への影響の2軸で重要度を評価いたしました。重要度が高いと評価したリスク・機会は以下のとおりであります。なお、リスク・機会の整理において考慮した時間軸は、短期:0~1年、中期:1~3年、長期:3年以上です。

また、気候変動関連リスク・機会が事業にもたらす影響を考察するために、当社の国内筆記具事業を対象に、シナリオ分析を実施いたしました。分析対象年は当社グループの「2030年ビジョン」と合わせて2030年としております。分析においては、「脱炭素社会シナリオ(産業革命以前に比べて平均気温が1.5℃~2℃上昇)」と「成り行き社会シナリオ(同4℃上昇)」の2つのシナリオを設定いたしました。各シナリオの社会像の設定においては、2030年以降の社会動向に関するメガトレンドレポートやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の気温上昇シナリオを参考にいたしました。

 

シナリオ分析の前提

分析対象年

2030年

シナリオ(気候上昇)

・脱炭素社会シナリオ(+1.5℃~2℃)

  温暖化対策が積極的に実行され、脱炭素に向けて社会システムが

  構築されていく世界

・成り行き社会シナリオ(+4℃)

  温暖化対策が機能せず、気候変動が進行していく世界

・参考資料

 内閣府総合科学技術・

 イノベーション会議

将来像からのバックキャストの在り方

 国土交通省

「国土の長期展望」中間とりまとめ

 公益財団法人地球環境

 戦略研究機関

ネット・ゼロという世界:2050年日本(試案)

 野村総合研究所

NRI未来年表2021-2100

 三菱総合研究所

未来社会構想2050

 ニッセイ基礎研究所

若者の現在と10年後の未来~消費行動編

 EY Japan

未来を創りますかそれとも未来を待ちますか

 A.T.カーニー

未来の消費者像:「物質的な豊かさ」から「つながりや影響力」を重視する時代に

 Roland Berger

2050年世界をかたち作る6つのメガトレンド

 Mckinsey& Company

2030日本デジタル改革

 文部科学省、気象庁

日本の気候変動2020

 環境省

気候変動影響評価報告書

 

 


 

 


 

 

b. 気候関連リスク・機会への対応策

シナリオ分析を通じて特定された重要度の高い気候関連リスク・機会について、以下のとおり対応策を検討いたしました。対応策を推進・管理し、リスクの低減と事業機会の獲得を実現していきたいと考えております。

 


 


 

 

③ リスク管理

当社は、「経営リスク管理規程」及びこれに付帯して定めた細則やマニュアルに従い、組織横断的なリスク状況の監視を行い、経営上の重要事項に係るリスクに対応いたします。

また、必要に応じて関連する細則やマニュアル等の社内ルールの見直しを行い、社員に周知して危機管理の徹底とモラルの向上が実践できる体制の構築・整備に務めております。今後も継続して、気候変動関連を含むサステナビリティ全般の取組みを推進してまいります。

 

④ 指標及び目標

a. 温室効果ガス排出量の削減目標

当社では、2023年2月に気候変動関連の目標として、2030年までの温室効果ガス排出量の削減目標を取締役会の承認を経て新たに策定いたしました。なお、目標の対象範囲は、提出会社としております。

 

短期目標

2023年と2024年は、売上高あたりのスコープ1・2排出量を、前年比1%以上削減

中長期目標

2030年までに、スコープ1・2排出量(総量)を、2021比25%削減

 

 

b. 温室効果ガス排出量の実績(スコープ1・2)

当社では、温室効果ガス排出量について、スコープ1・2の算定を行っております。

 

[エネルギー使用量及びスコープ1・2排出量(2020年~2023年)]

(対象範囲:提出会社)

 

2020年

2021年

2022年

2023年

エネルギー使用量

都市ガス(千m3)

202

164

84

37

LPガス(ton)

216

231

244

250

ガソリン(千kl)

0

0

0

0

灯油(千kl)

0

0

0

0

軽油(千kl)

0

0

0

0

電力(MWh)

27,115

29,520

28,982

28,844

温室効果ガス排出量(t-CO2)

総排出量(スコープ1+2)

13,467

14,524

14,488

12,515

スコープ1

1,515

1,467

1,269

1,074

スコープ2

11,952

13,057

13,218

11,440

排出原単位(t-CO2/百万円)

売上高あたり排出量

0.228

0.194

0.168

0.158

 

 

 

(3) 人的資本

① 戦略

当社グループは、人的資本をグループの持続的な成長のための重要な要素の1つと考えております。2030年ビジョンにおいては、「環境・社会・従業員への価値提供」を掲げ、心身ともに健康に働くことができる環境を実現し、多様な人財が伝統や技術を受け継ぎつつ創造力や個性を発揮しあい、働くことに誇りと楽しさを感じることを目標としております。2022年には部門横断の若手従業員が主体となって未来人財構想会議を開催し、2030年ビジョン実現のために目指すべき人財、組織、働き方について議論いたしました。その提案内容を踏まえたうえで、「グローバル筆記具市場No.1」「非筆記具事業を第2の柱として成長」という他2つの2030年ビジョンの実現に向けて、次のとおり人財戦略を定めております。

 

 <パイロットグループ 人財戦略>

 ・多様な人財の獲得

 ・世界で活躍できる自律的で創造力に富んだ人財の育成

 ・従業員エンゲージメントの向上

 ・心身ともに健康に働ける環境の整備

 


 

 

② 指標及び目標

a.多様な人財の獲得

当社グループでは、イノベーションを生み出すために人財の多様性が必要との考えから、性別や国籍等を問わず、人財の新卒採用及びキャリア採用を行っております。

当社においては、会社が求める人財像を軸として、人員構成のアンバランス解消と技術・技能継承を重視することを採用基本方針とし、2021年以降、技術・開発系を中心に、計画的に採用を行っているところであります。

 

 <求める人財像>

 ・幅広い視野を持ち、グローバルな視点で自ら考え行動する人財

 ・異なる意見も認め合い、発展的コミュニケーションで組織に影響を与える人財

 ・今までにないアイデアで新しい価値を創造し、実現のため自ら行動する人財

 

また、少子高齢化に伴い労働力人口が減少する中で優秀な人財を確保するため、当社では2023年に退職者復職制度の創設や定年再雇用制度の改定を行いました。会社を離れた従業員が外部で新たな経験を積んで復職を希望した際に再度活躍できる機会を提供するとともに、定年を迎えた従業員が今までの経験や能力、技術を十分に活かしつつ、若手の育成に取り組めるよう、職務内容に応じた等級及び給与に再設定いたしました。

加えて、障がい者雇用を実施しており、2023年においても法定雇用率を上回る雇用を実現しております。

今後も引き続き多様な人財の獲得に積極的に取り組んでまいります。

(対象範囲:提出会社)

指標

実績

2024年目標

2022年

2023年

採用者に占める女性割合(注)

46.0%

45.2%

50%

外国人採用人数

4人

1人

1人

キャリア採用人数

20人

39人

50人

 

(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、目標を設定しております。

 

 

b.世界で活躍できる自律的で創造力に富んだ人財の育成

当社では、従業員一人一人の創造力を高めるため、業務の中で行うOJTだけではなく、入社年数や役職に応じた各種研修を実施しているところでありますが、近年、様々な課題に対応するため、特定の能力向上を目的とした研修を追加しております。2023年には、グローバルな視点と経験を持った人財育成の一環として、多様な人と協働する力やチャレンジ精神等を培うグローバルリーダーシップ育成研修を設けました。アジア新興国で短期間に複数のミッションを遂行する挑戦型体験プログラム、新興国のNGOや社会的企業の組織の一員として現地に赴き、英語で社会課題の解決に挑む海外越境プログラム等があり、2023年には6人の従業員による試験運用を実施いたしました。2024年からは社内公募又は部門推薦に基づき、参加者を選考する予定であります。

また、幹部候補育成のため、管理職等を対象とした研修等の充実も図っております。2023年には新任管理職を対象に社内留学研修を開始し、他部門での業務体験を通じて、人脈の構築や視野を広げる機会を設けました。さらに、役員サクセッションプロセスの再構築を行い、事業を先読みする力や判断力の強化にも取り組んでおります。今後は、特に女性管理職について、マインドセット研修等、育成プログラムを検討・実施をすることで、候補者の育成に取り組んでまいります。

一方、変化が激しい時代を乗り越えるためには、自ら考え行動する自律性も重要と考えております。そのため、当社では、各自の特性や傾向を把握するためのコンピテンシー診断を実施し、自己理解を深め、自らのキャリアを考える機会を設けております。そのうえで、営業やマーケティング、開発といった専門的分野のみならず、セルフマネジメントやペン習字といった、幅広い分野の通信教育講座である能力開発ガイドを準備することで、従業員に自己啓発を促しております。特に、推奨する語学や財務、IT、危険物取扱者等の業務に必要な国家資格の取得を目指すコースに対しては、一定の要件を満たした場合に会社が全額費用負担を行っているところであります。

今後も従業員の創造力及び自律性の向上に向けた施策を実施してまいります。

(対象範囲:提出会社)

指標

実績

2024年目標

2022年

2023年

社員1人当たりの教育研修費用

59千円

94千円

80千円

能力開発ガイド受講人数

425人

455人

500人

能力向上満足度(注)

41.1%

45.4%

50%

 

(注)従業員満足度調査において、「指標(項目)について満足している」という設問に対して、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した従業員の割合であります。

 

c.従業員エンゲージメントの向上

当社グループでは、従業員のエンゲージメントを高めることが、グループ全体の活性化、さらには生産性の向上につながると考えております。エンゲージメントの向上には、企業活動の根幹であるパーパスを全従業員と共有することが第一義的な意味を持つことから、様々な取組みを進めているところであります。その詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略・目標とする経営指標①パーパスの浸透」をご参照ください。

また、当社では、多様な人財がより活き活きと活躍できるよう、従業員の希望に基づいた異動を実施するとともに、2022年に専門職制度を創設し、ゼネラリストだけではなく、専門的な職務を極めるエキスパートとして、適性に応じた経験を積むことを可能にいたしました。 

さらに、評価の意義や目標設定、評価面談のポイント等を学ぶ評価者研修を毎年実施することで、従業員及び会社双方が納得できる適正な評価を目指すとともに、モチベーションアンケートを毎月、従業員満足度調査を毎年実施し、従業員と会社の相互理解や信頼感の醸成を図っております。

引き続き、全従業員の仕事に対する誇りややりがい、熱意を高める取組みを推進してまいります。

(対象範囲:提出会社)

指標

実績

2024年目標

2022年

2023年

経営の方向性納得度(注)

74.3%

72.8%

75%

満足度調査 総合満足度(注)

69.0%

69.6%

75%

 

(注)従業員満足度調査において、「指標(項目)について満足(納得)している」という設問に対して、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した従業員の割合であります。

 

d.心身ともに健康に働ける環境の整備

当社グループでは、従業員に能力を最大限に発揮してもらうためには、誰もが働きやすい環境を整備することが不可欠と考えております。

そのため、当社では、フレックスタイム制や裁量労働制、短時間勤務や在宅勤務といった多様な働き方を整備するとともに、役職で呼ばない「さんづけ運動」やITツールを活用したコミュニケーションの活性化、年次有給休暇を取得しやすい環境づくり、ハラスメント・メンタルヘルス対策等に取り組んでおります。

また、健康保険組合と連携して、健康増進施策も実施しております。各種健康診断の実施やストレスチェック、産業医・常勤保健師による指導はもちろんのこと、ウォーキングキャンペーンとして、2カ月間ウォーキングマップで進捗を管理しながら目標歩数達成を目指すことで、従業員の運動不足解消や心身のリフレッシュに寄与しております。

加えて、製造現場においては、安全衛生対策に力を入れております。主な製造拠点である平塚工場及び伊勢崎工場では、安全衛生委員会の下部組織として各種委員会を設置し、個別課題の検証を行っております。さらに、5S活動を推進し、整理・整頓・清掃・清潔・躾を通じて、労働環境の改善と生産効率の向上を図っているところであります。

引き続き、健康問題や事故・災害を未然に防ぎつつ、より働きやすい環境の整備を進めてまいります。

(対象範囲:提出会社)

指標

実績

2024年目標

2022年

2023年

コミュニケーション満足度(注)1

54.2%

52.1%

60%

年次有給休暇取得率(注)2

65.2%

70%

労働災害発生件数(注)3

4件

5件

0件

 

(注)1 従業員満足度調査において、「指標(項目)について満足している」という設問に対して、「非常にそう思う」「そう思う」と回答した従業員の割合であります。

2 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、目標を設定しております。算定期間は、対象年度の3月21日から翌年3月20日であります。2023年実績につきましては、後日、女性活躍推進企業データベースで公表予定であります。

3 派遣社員の発生件数を含みます。不休業災害及び通勤災害は含めておりません。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、本事項の文中に将来に関する事項が含まれておりますが、当連結会計年度末日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 市場の変化に関連するリスク

当社グループの主となる事業であるステイショナリー用品事業において、各国及び地域のそれぞれの市場における競合他社との競争激化、大手通販会社や流通による販売の寡占化や再編等の要因による販売価格の下落が予想を超えて進行した場合、また、エンドユーザーとして大きな割合を占める児童・学生向けの販売が各国において、出生率の増減等の影響を受け想定外に変動した場合や、筆記具の用途を代替するようなデジタル機器等の開発・普及により市場環境が急変した場合、加えて社会構造の変化等によるオフィス需要の低下が想定を超えて急進した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、玩具事業においては、国内の少子化傾向が継続した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループといたしましては、お客様に喜んでいただけるような付加価値の高い魅力的な製品の開発や、販路の整備による「企業価値、ブランド力の向上」に取り組んでおります。

 

(2) 原材料等調達に関連するリスク

当社グループの製品の主要原材料である金属及び樹脂等の購入価格は、国内及び海外の市況並びに為替相場の変動の影響を受けます。これらに予期せぬ異常な変動が生じた場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、一部の製造機械や原材料の仕入においては、効率的かつ安定的に調達するために、特定の取引先に大きく依存しており、その供給が断たれた場合は生産活動に大きな影響を受け、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 為替相場の変動に関連するリスク

当社グループは、全世界で販売活動を展開しており、海外における売上高の割合がおおよそ全体の4分の3程度と非常に高くなっております。反面、その製造の多くは国内で行われており、各国における製品の原価は為替により変動し販売に影響を及ぼします。また、連結財務諸表を作成するにあたり在外連結子会社の外貨建財務諸表を円換算しているため、為替レートの変動が当該外貨建財務諸表の換算に影響を与え、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、グループ内外の取引において、外貨建の通貨による決済も存在することから、為替相場の変動リスクを負っております。なお、当社グループでは、各社の決済金額に応じた為替変動リスクのヘッジを行っておりますが、想定の範囲を超え各国通貨に対して円高が進行した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 投資資本に関連するリスク

当社グループは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁、資本的支出及びその他の戦略的出資を行う可能性があります。その際、買収コスト又は統合費用の発生、シナジーが実現できないこと、期待された収益の創出とコスト改善の失敗、主要人員の喪失や債務の引き受けによって、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループが第三者と合弁会社を設立する、もしくは戦略的パートナーシップを構築する場合、パートナーとの戦略の相違又は文化的相違、利害の対立、シナジーが実現できないこと、合弁会社及びパートナーシップ維持のために必要となる追加出資や債務保証、合弁パートナーからの持分買取義務、当社グループが保有する合弁持分の売却義務、もしくはパートナーシップの解消義務、キャッシュ・フローの管理を含む不十分な経営管理、特許技術やノウハウの喪失、減損損失、及び合弁会社の行為又は事業活動から受ける風評被害により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(5) 事業展開に関連するリスク

当社グループは、日本、米州、欧州、アジア等、190以上の国と地域で事業展開しており、主要販売国である日本、米国、欧州主要国、中国及びその他の国と地域の政治・経済環境の変動、環境規制をはじめとした各国特有の法的規制、戦争・暴動・テロ等による社会の混乱、感染症の流行等予測不能な事態による事業活動の制約が発生した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響が及ぶ可能性があります。

 

(6) 研究開発投資に関連するリスク

当社グループは、競争力を維持し消費者の需要を喚起し、製品及びサービスの革新を実現するために研究開発投資を行う必要があり、そのための研究開発投資を継続的に行っております。しかしながら、当社製品群が陳腐化するような著しい成長可能性を持った製品及びサービスの出現、並びに市場動向を特定できなかった場合やそれらを把握できなかった場合は、研究開発投資が成功せず、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 人財の確保や育成及び退職に関するリスク

日本国内では恒常的な人手不足が問題となっており、人財の流動化は避けられないと懸念されております。当社グループでは、「今後も求人難が続き、退職者が増加する」という前提で、魅力ある会社・人事制度作りに取り組み、着実な人財確保を目指しております。しかしながら、このような取組みや施策にもかかわらず、計画通りに人財を確保、育成ができず、また、退職者が増加した場合は、当社企業グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 製品の品質及び安全性に関連するリスク

当社グループは、社内の品質管理基準に基づき、製品の品質向上や安全性確保に取り組んでおりますが、製品の安全・品質上の重大問題や製造物責任法に基づく損害賠償、リコール等が発生した場合は、当社グループが持つブランド価値の低下を招くとともに、多額の費用負担が発生し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 環境規制に関連するリスク

当社グループは、国内及び海外におけるエネルギー、温室効果ガス、大気、水、土壌汚染、有害化学物質、製品、電池、容器包装材のリサイクル、廃棄物等様々な環境に関する法令及び規制等の適用を受けております。法規制遵守のために必要な処置を講じておりますが、過去の環境への影響に対する責任が発生する可能性があります。また、気候変動抑制のため、世界的規模でのエネルギー使用量の大幅な削減や地球温暖化対策が求められた場合、当社グループにおいて、これら規制の強化に伴い、新たな税負担、事業活動における諸資材・燃料の変更、設備の変更等の対応費用が増加する可能性があります。これらに関する費用が多額となった場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、消費者の環境に関する意識が高まり、当社製品が消費者の購買志向に合致しなくなった場合、販売計画に乖離が生じ、売上及び利益計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報システムに関連するリスク

当社グループの事業展開において、各拠点間のコンピューターシステムを結ぶ通信ネットワークに依存しております。従って、予測不能な災害等の事由によりネットワークの機能が停止した場合、生産及び販売活動に多大な影響が出ることが予想されます。また、情報システムに対しては適切なセキュリティ対策を実施しておりますが、悪意を持って外部からの不正な手段によりコンピューターシステム内に侵入され、ホームページの改ざんや個人情報等重要なデータの搾取、破壊がなされた場合、あるいはランサムウエアへの感染等により当社の情報システムに大規模な障害が発生した場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 感染症の感染拡大に関連するリスク

感染症が長期にわたって蔓延することによる集団感染の発生や、国内を含めた各国及び地域における感染症に対する防疫措置が想定以上に厳格あるいは長期にわたる場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を与える場合があります。特に消費行動が大幅に制限される状況が長期にわたり継続した場合は売上及び利益計画に大きな乖離が発生する可能性があります。また、当社グループ内で大規模な感染が発生した場合は、生産をはじめとした業務遂行に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループといたしましては、当社グループで働く人々とその家族、ステークホルダーの皆様の健康と安全確保を最優先とし、各国政府等の要請に基づき適切に対処して感染拡大防止に努めるとともに、グループ子会社の資金の手当てや経費の削減を実施し、各国の状況にあわせた事業継続への取組みを進めております。

 

(12) 自然災害に関連するリスク

当社グループは、国内及び海外の各地で事業展開しており、大規模地震等予測不能の自然災害により、生産拠点、販売拠点、物流拠点に甚大な被害を受けた場合、製品の生産、販売及び物流サービス等に遅延や停止が生じる可能性があります。このような場合は、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 国際税務に関連するリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、グループ内でも相互に取引を行っていることから、移転価格税制等の国際税務リスクが伴います。各国の税法に準拠した適正な納税を行っており、国際税務リスクについて細心の注意を払っておりますが、各国の税制の変化や税務当局との見解の相違等により、予期せぬ税負担が発生し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 製造物責任に関するリスク

当社グループは、ステイショナリー用品事業や玩具事業及びその他の事業において、販売先の国や地域の法律に基づき、適正に製品を製造販売しておりますが、急速な環境の変化や、法制の変更に対応できない可能性があり、製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があります。その結果、当社グループの評判に影響を及ぼし、製品回収やアフターサービス等の費用が発生する可能性があります。同時に、当社グループの既存の製品及びサービスについて、顧客満足を維持できない可能性や、需要の減少、競争力の低下、あるいは陳腐化を招き、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 債権管理に関連するリスク

当社グループでは、製品及びサービスの提供後に代金を回収する取引が多いため、債権回収等の社内規程を整備するとともに、外部機関の信用情報等も活用し、適正な与信管理を行っております。しかしながら、予期せぬ事態により予測不能な貸倒損失が発生した場合は、当社グループの業績や財政状況に影響が及ぶ可能性があります。

 

(16) 年金債務に関連するリスク

当社グループでは、当社及び一部のグループ子会社において外部積立による退職年金制度を設けております。今後、金利の低下による退職給付債務に関する割引率の引き下げや、株価等の下落による年金資産の目減りの可能性があります。その結果、数理計算上の差異(損失)が発生し、将来にわたる退職給付費用が増加する可能性があります。

 

 

(17) 投資有価証券及び固定資産に関連するリスク

当社グループは、「金融商品に関する会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。投資有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについて、これらの時価が帳簿価額から著しく下落し回復の見込みがない場合は減損処理を行う必要があります。また、経営環境の著しい悪化等により、固定資産の収益性が低下した場合は減損損失を認識する必要が生じ、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 知的財産権の保護及び訴訟に関連するリスク

当社グループは、製品開発に伴って多くの知的財産権を取得し、重要な経営資源の1つとして保有するとともに、その知的財産権を他社にライセンス供与する場合もあります。

これら知的財産権の維持・保護については最善の努力をしておりますが、当社グループの知的財産権を他社が無断使用すること等に起因して提訴に至った場合、あるいは、当社グループが競合他社等から知的財産権を侵害したとして提訴された場合は、当社グループの業績と財政状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度(2023年1月1日~2023年12月31日)における経済環境は、国内においては新型コロナウイルス感染症に伴う各種制限が撤廃され、外国人観光客や行動制限のないイベントも増加する等、社会経済活動は緩やかに回復が進みました。一方、海外において、ウクライナ情勢の長期化をはじめとした地政学リスクの影響による物価の高止まりやそれを受けた金融引き締め等による世界経済の景気減速傾向が続く等、先行き不透明な状況となりました。

このような環境の下、当社グループにおきましては、国内では、筆記具需要が回復傾向となり、市場は堅調に推移しました。海外では、新興国の伸長や、米ドル及びユーロに対する円安がそれぞれ進み為替状況が追い風となりましたが、物価の高騰を受け、先進国の主要マーケットの需要は低調に推移しました。利益面では労務費その他の経費増加により、特に下期に苦戦しました。

この結果、当期間の連結売上高は1,185億90百万円(前期比105.1%)となりました。国内外別では、国内市場における連結売上高は289億23百万円(前期比108.5%)、海外市場における連結売上高は896億67百万円(前期比104.0%)となりました。中期経営計画に基づく事業別実績では、筆記具事業における連結売上高は1,062億73百万円(前期比104.5%)、非筆記具事業における連結売上高は123億17百万円(前期比110.3%)となりました。

また、損益につきましては連結営業利益が190億3百万円(前期比89.4%)、連結経常利益が208億40百万円(前期比92.1%)、親会社株主に帰属する当期純利益は136億61百万円(前期比86.6%)となりました。

(参考URL 当社中期経営計画 https://www.pilot.co.jp/company/ir/management/plan.html)

 

各セグメント別の状況は以下のとおりです。

なお、セグメント利益については、セグメント間取引消去前の金額で記載しております。

また、当連結会計年度より、管理体制の変更に伴い報告セグメントの区分方法を見直し、従来「アジア」の区分に含めていた連結子会社であるPilot Pen Australia Pty.Ltd.を「欧州」の区分に含めております。前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいております。

 

(日本セグメント)

ステイショナリー用品事業においては、国内販売ではインバウンドやノベルティ需要の回復が見られました。店頭需要では「フリクションボールノックゾーン」の定番化が進み、新たなターゲット層に向けた「フリクションWaai(ワーイ)」が好評を得ました。また、高価格シャープペンシルブームの先駆けとなった「S20(エストゥエンティ)」、「S30(エスサーティ)」の販売の好調も続いております。加えて、SNSを使った販促キャンペーン等で市場を活性化し、市場回復を促進しました。さらに、当期当社グループとなった、手帳・ノート類等のデザインステイショナリーの企画・製造を行う株式会社マークスグループ・ホールディングスの売上も貢献しました。輸出においては、フィリピン等のアセアン諸国やインドを中心に新興国向けの売上が伸長しました。

玩具事業においては、物価高騰により玩具業界全般が伸び悩む中、主力商品である「メルちゃん」シリーズや「おふろのおもちゃ」シリーズが年末商戦において健闘しましたが、売上は減少しました。

産業資材・その他事業においては、産業資材事業の主力のセラミックス製品が半導体市況低迷の影響を受け、減収となりましたが、その他事業でマークス商品が売上に貢献しました。

利益面では、連結子会社向けの売上高減少に伴う主要製品の生産数量減少等による原価率の上昇に加え、将来成長のための積極的な広告投資や人財投資を実施したことに伴う販管費等の増加により、減益となりました。

以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は390億62百万円(前期比111.4%)、セグメント利益は134億82百万円(前期比59.7%)となりました。

また、当セグメントにおける主要な事業の売上高につきましては、ステイショナリー用品事業は322億21百万円(前期比112.7%)となり、玩具事業は39億円(前期比92.2%)、産業資材・その他事業は29億40百万円(前期比131.9%)となりました。なお、ステイショナリー用品事業の内訳は、筆記具が286億21百万円(前期比111.0%)、文具・その他が35億99百万円(前期比128.9%)となりました。

 

(米州セグメント)

米州地域につきましては、米国市場においてゲルインキボールペン市場でトップシェアを維持している「G-2(ジーツー)」や「フリクション」シリーズ等の販売も堅調に推移しました。また、ブラジル市場においてはホワイトボード用マーカー「Vボードマスター」を中心に伸長しました。さらに、円安の影響も加わり、増収増益となりました。

以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は353億60百万円(前期比110.2%)、セグメント利益は11億82百万円(前期比195.3%)となりました。

 

(欧州セグメント)

欧州地域につきましては、物価高騰を受けて低調な市況が続きました。「フリクション」シリーズ等、比較的高価な付加価値商品群が買い控えられ、加えて労務費等の販管費増加もあり、円安の恩恵は受けたものの減収減益となりました。

以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は243億13百万円(前期比95.3%)、セグメント利益は16億87百万円(前期比95.2%)となりました。

 

(アジアセグメント)

アジア地域につきましては、中国においてゼロコロナ政策の解除後も景気が低調に推移し、特に学生の需要が伸び悩んだことから苦戦しました。その他の国においては日本製の細書きの筆記具の需要が高く、ゲルインキボールペン「ジュース」シリーズ等を中心に概ね好調に推移しましたが、セグメント全体としては減収減益となりました。

以上の結果、当セグメントにおける外部顧客に対する売上高は198億53百万円(前期比98.3%)、セグメント利益は8億9百万円(前期比81.2%)となりました。

 

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ99億26百万円増加し、1,664億68百万円(前期比106.3%)となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ5億31百万円増加し、1,071億38百万円(前期比100.5%)となりました。これは主に、「受取手形及び売掛金」が15億4百万円、棚卸資産(「商品及び製品」、「仕掛品」、「原材料及び貯蔵品」)が44億60百万円、「その他」が15億24百万円それぞれ増加した一方で、「現金及び預金」が69億56百万円減少したことによるものであります。

固定資産は前連結会計年度末に比べ93億94百万円増加し、593億30百万円(前期比118.8%)となりました。これは主に、有形固定資産が68億68百万円、「投資有価証券」が21億31百万円それぞれ増加したことによるものであります。

負債は、前連結会計年度末に比べ44億29百万円減少し、341億23百万円(前期比88.5%なりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ52億24百万円減少し、315億67百万円前期比85.8%)となりました。これは主に、「支払手形及び買掛金」が22億5百万円、「短期借入金」が27億13百万円、「未払法人税等」が30億88百万円それぞれ減少した一方で、「その他」が24億61百万円増加したことによるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ7億95百万円増加し、25億55百万円前期比145.2%)となりました。これは主に、「長期借入金」が4億78百万円、「繰延税金負債」が3億4百万円それぞれ増加したことによるものであります。

純資産は、前連結会計年度末に比べ143億55百万円増加し、1,323億45百万円(前期比112.2%)となりました。これは主に、「利益剰余金」が97億14百万円、「為替換算調整勘定」が28億64百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ71億15百万円減少し、383億29百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金の増加は、101億75百万円(前連結会計年度は137億53百万円の増加)となりました。収入の主な内訳は、「税金等調整前当期純利益」202億39百万円、「減価償却費」45億20百万円であり、支出の主な内訳は、「棚卸資産の増加額」14億62百万円、「仕入債務の減少額」39億10百万円、「法人税等の支払額」87億53百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金の減少は、107億7百万円(前連結会計年度は53億50百万円の減少)となりました。これは主に、「有形固定資産の取得による支出」89億86百万円、「投資有価証券の取得による支出」17億32百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金の減少は、73億80百万円(前連結会計年度は83億70百万円の減少)となりました。これは主に、「短期借入金の純減少額」30億76百万円、「配当金の支払額」39億41百万円によるものであります。

 

 

(生産、受注及び販売の実績)

(1) 生産実績

当社グループにおきましては、「日本」セグメントが当社の生産活動の中心となっております。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

44,791

102.0

 

(注) 1 上記の金額は工場出荷価格によっております。

2 上記の金額には外部への製造委託を含めております。

3 当社グループの生産は、当社、連結子会社であるパイロットインキ㈱及びパイロットファインテック㈱でその大半を占めているため、上記の金額は日本セグメントの金額を表示しております。

 

(2) 受注実績

見込生産を主体としており、受注生産は僅少であるため、記載を省略しております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

39,062

111.4

米州

35,360

110.2

欧州

24,313

95.3

アジア

19,853

98.3

合計

118,590

105.1

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主要な販売先については、総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はないため、記載を省略しております。

3 当連結会計年度より、管理体制の変更に伴い報告セグメント区分を見直し、従来「アジア」の区分に含めていた連結子会社であるPilot Pen Australia Pty.Ltd.を「欧州」の区分に含めております。なお、前期比(%)につきましては、前連結会計年度の数値を変更後の区分に組み替えて比較しております。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針並びに重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

連結財務諸表の作成におきましては、当社グループにおける過去の実績等を踏まえ合理的に見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

①  棚卸資産の評価

当社グループは、棚卸資産の評価基準として原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定)を採用しており、期末における正味売却価額が取得原価を下回っている場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。棚卸資産の収益性の低下、滞留、陳腐化が生じた場合、将来において追加の評価損の計上が必要となる可能性があります。

②  固定資産の減損

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

③  繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

④  退職給付に係る負債及び退職給付に係る資産

退職給付に係る負債、退職給付に係る資産及び退職給付費用は、数理計算上使用される前提条件に基づいております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①  売上高

当連結会計年度の連結売上高は前期比5.1%増加し1,185億90百万円となり、過去最高の売上高を達成することができました。

主力のステイショナリー用品事業においては、国内市場におけるインバウンド及びノベルティ需要の回復がみられたこと、米国市場のマスマーケットチャネルにおける販売が好調に推移したこと、マークス社のデザインステイショナリー用品の販売が加わったこと、これらに加えて前年と比較し、為替が円安に推移したことが主な増収要因となりました。

一方、年初に回復の期待された中国市場においては景気が低調に推移し、特に学生の需要が伸び悩んだことから苦戦いたしました。また、欧州においては上期における物価高騰を受け低調な市況が続き、「フリクション」シリーズ等、比較的高価な付加価値商品群が買い控えられる等、一時的な流通在庫の調整を受け減収要因として影響いたしました。

これらの強弱要因が入り交じった結果、ステイショナリー用品事業の外部顧客への売上高は、前期比5.0%増加し1,117億31百万円となりました。

また、玩具事業及びその他事業の売上高は、前期比5.8%増加し68億59百万円となりました。主な要因はその他事業における産業装置向けのセラミックス部品が半導体市況低迷の影響を受け減収となる一方、新たに連結グループに加わったマークス社商品が売上に貢献したことによるものであります。

②  営業利益

当連結会計年度の連結営業利益は前期比10.6%減少し190億3百万円となり、連結売上高営業利益率は前期より低下し16.0%となりました。物価高止まりによる原材料費の上昇や労務費等の増加による原価率の悪化、販売費及び一般管理費における労務費及び広告費等の増加から減益となりました。

③  経常利益

当連結会計年度の連結経常利益は前期比7.9%減少し208億40百万円となり、連結売上高経常利益率は17.6%となりました。営業外費用は主に米国における金利上昇により短期借入金に係る支払利息が増加した一方、営業外収益は関係会社からの受取配当金の増加、及び主に南米における金利上昇に伴い受取利息が増加したことにより、営業外収支は増加いたしました。

④  親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前期比13.4%減少し136億61百万円となりました。これは主に、連結経常利益に加え、特別利益として固定資産売却益、投資有価証券売却益、及び環境対策引当金戻入額を計上した一方、インドネシアにおける合弁契約の解消に伴う費用を計上したことによるものであります。

 

(3) 当連結会計年度の財政状態の分析

当連結会計年度の財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要)(2) 財政状態の状況」をご参照ください。

なお、連結ベースの財政状態に関する主な指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2022年12月

2023年12月

流動比率(%)

289.8

339.4

固定比率(%)

42.8

45.5

有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)(倍)

0.0

0.0

 

(注)流動比率               : 流動資産/流動負債

固定比率                     : 固定資産/自己資本

有利子負債自己資本比率      : 有利子負債/自己資本

・各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

・有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①  当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(経営成績等の状況の概要)(3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

なお、連結ベースのキャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2022年12月

2023年12月

自己資本比率(%)

74.5

78.3

時価ベースの自己資本比率(%)

121.1

99.6

債務償還年数(年)

0.4

0.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

125.4

49.8

 

(注)自己資本比率           : 自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率     : 株式時価総額/総資産

債務償還年数           : 有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー/利払い

・各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

・株式時価総額は、期末株価数値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

・有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

・営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。

②  財務政策

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及び設備投資によるものであります。

運転資金につきましては主に自己資金により充当しており、必要に応じて金融機関からの短期借入金による調達も行っております。設備投資資金につきましては自己資金及び金融機関からの長期借入金による調達を基本としております。

また、重要な設備投資の予定及びその資金の調達源につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」をご参照ください。

なお、資金の流動性を維持するため、主要取引金融機関と特定融資枠契約(コミットメントライン)及び当座貸越契約を締結しております。

 

(5) 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2030年ビジョンの実現に向け、2022-2024中期経営計画において掲げた5つの基本戦略に取り組んでおります。掲げた目標、経営指標及び財務指針を達成するため、迅速に取組みを進め、企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指してまいります。

2022-2024中期経営計画において設定した目標に対する当年度の取組み内容、経営指標及び財務指針の結果は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 中長期的な会社の経営戦略・目標とする経営指標」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「人と創造力をつなぐ。」企業として筆記具を中心とした品質重視の製品開発を行っております。

筆記具の開発と製造にて長年培った基礎技術を中心として、高品質かつ安全性と環境保全にも配慮した中で、お客様が「書く」ことを通じて、より「創造力」を発揮して高める事ができる製品の開発に取り組んでおります。

ステイショナリー用品事業におきましては、当社グループが長年開発・製造しているインキ技術、万年筆やボールペンをはじめとした各種筆記具の設計技術、万年筆やボールペンのペン先の加工及び開発技術、シャープ替芯等の固形芯の加工及び開発技術、これらの技術を応用して、高品質で付加価値の高い各種筆記具の開発を進めております。

その他事業におきましては、当社グループ独自のインキ技術を応用した新しい玩具の開発、当社グループの原点である万年筆の加工技術で培った貴金属加工技術を応用した宝飾リング製品の開発、シャープ替芯製造で培った技術を応用した高精度な微細孔・多孔のセラミックスの産業資材の開発を行っております。このセラミックの産業資材については、小型化が進む自動車部品、半導体製造装置等の市場に向けた付加価値の高い産業資材として、お客様にご愛顧いただいております。

なお、当社グループは日本国内においてのみ研究開発を行っており、当連結会計年度の研究開発費の総額2,065百万円を、全額日本セグメントにおいて計上しております。