第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、創業の原点「お風呂は人を幸せにする」を大切にしつつ、今後の事業展開を見据えてグループミッションを策定しております。

グループミッション:「新しい幸せを、わかすこと。」

当社グループは、毎日の幸せにとって「なくてはならない」を届けつづけます。そして、領域に縛られず、「なくてはならない」を届けつづける。なければ、つくる。これが1951年の創業以来、当社グループが取り組んで来たことであり、これからも取り組んでいく使命です。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画『Vプラン26』目標

今回策定いたしました『Vプラン26』では、2030年のありたい姿を定め、そこからバックキャストした経営目標である、2026年度の連結営業利益90億円、ROE6%超を目指します。

 

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(3)経営環境及び当社グループの経営戦略等

経営環境

世界経済は、金融引き締めを背景とした減速局面を経て、緩やかな回復基調にありますが、地政学的な緊張は依然として高く、見通しは不透明です。また米国・中国の住宅市場景況感は、低調に推移すると見られます。

国内経済は、好調な企業業績、賃上げを背景に緩やかに回復に進むものと見通されますが、住宅市場においては、少子高齢化や人口減少により、新築住宅の市場規模は今後も縮小していくことが予想されます。

このような環境下においても、カーボンニュートラルの実現に向けた取組は加速しており、省エネルギーへのニーズに対応した環境配慮型商品の市場は堅調に推移するものと考えております。

当社グループは、2021年度から2023年度までの3カ年を対象とする中期経営計画『Vプラン23』を推進してまいりました。しかしながら、新型コロナウイルスの世界的流行に端を発するサプライチェーンの混乱等、計画策定時には想定できなかった急激な外部環境変化により、『Vプラン23』当初計画を達成することができませんでした。

このような経営環境の変化に対応し、持続的な成長と企業価値向上を目指すべく、新たな中期経営計画『Vプラン26』を策定いたしました。

 

中期経営計画『Vプラン26』については次のとおりです。

■中期経営計画『Vプラン26』全体像

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(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中期経営計画『Vプラン26』実現に向けたセグメント別の重点施策

・事業ポートフォリオの変革

国内事業は、非住宅分野や厨房分野の拡大に注力し、住宅向け温水分野に偏重した事業構造を変革します。また、環境配慮型商品を拡販することで、カーボンニュートラル実現に向けた持続可能な事業基盤を構築します。

海外事業は、北米エリアの事業拡大と東南アジアでの事業展開を加速させ、中国エリアに依存した構造から脱却し、事業全体としてリスクを軽減することで、更なる拡大と収益の安定化を図ります。

 

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・戦略投資の拡大と資本政策

事業戦略の実行に当たり、3年総額325億円の投資を計画し、その内235億円を海外事業や生産革新など成長事業や戦略課題に投入することで、持続的な成長を目指します。また、「株主還元策の強化」「政策保有株式の縮減」等、資本コストや株価を意識した経営への対応を推進します。

株主の皆様への利益還元を経営の重要課題の一つとして位置づけ、更なる株主還元の充実を図るために、連結配当性向50%または連結純資産配当率(DOE)2.5%(従来の2.0%から0.5%引き上げ)のいずれか高い額を目途として配当を行うことで、業績連動に安定性を加味した配当を実現します。自己株式の取得や借入による資金調達については、機動的に実施を検討いたします。

 

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・サステナビリティ経営の推進

当社グループは、70年を超える歴史の中で、時代の進化に合わせ、安全・安心、豊かで快適な暮しを提供し続けてまいりました。これからも「なくてはならない」を届けつづける企業として、環境・社会・経済の持続可能性に配慮することで、事業の持続可能性向上を図ってまいります。また、この「サステナビリティ経営」推進のために、次の4つを重点課題として取組みます。

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つながりによる長期的な安全・安心の提供としては、機器の点検・取替に加え、IoTリモコン等を通じたお客さまとのつながりにより、長期的な安心を提供いたします。

カーボンニュートラルに向けた取組としては、サプライチェーンを通じた排出をとらえるスコープ1からスコープ3までの各スコープにおいて、それぞれで設定するCO2排出量削減目標の達成を目指します。

社会課題解決に向けた無形資産の開発については、当社の価値創造において重要な要素である人的資本や知的資本(先行技術)などの無形資産に対し、積極的な投資と活用を推進いたします。

コーポレートガバナンスの強化については、取締役会の実効性評価を継続して実施するとともに、評価結果に基づき設定した課題に対する改善等を進めることにより、取締役会において将来の企業価値向上を見据えた中長期視点の議論をさらに充実させるよう努めてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

当社グループは、持続可能な事業活動を推進し、幸せをわかし続けるための仕組みとして、サステナビリティ推進体制を構築しています。サステナブル推進に基づく具体的な取組は、各担当部門が企画・実行し、サステナブル推進会議にて取組状況や結果の報告、進捗の確認を行います。また、サステナブル推進会議で報告・議論された事項及び顕著な各種リスク課題については、経営戦略統括本部長(取締役兼常務執行役員)を委員長とする「サステナブル委員会」に上程され、議論されます。サステナブル委員会の活動については、経営会議及び取締役会が適切に監督を行い、サステナブル委員会において審議された事項は、定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告されます。

■サステナブル推進体制

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②リスク管理

当社グループでは、危機発生時に被害を最小限に食い止める危機管理規程を定めているほか、企業リスクの特定・評価・対応・モニタリング及び各部門への対策指示を行い、経営戦略統括本部長を全社リスク統括責任者としたリスクマネジメント体制を構築しております。サステナブル委員会の下位に属する機関として、サステナブル推進会議を設置し、同会議においてリスクマネジメントに関わる事項の審議を行い、その結果をサステナブル委員会へ上程するなど、継続的なリスクマネジメントを行うための活動を推進しています。

なお、リスク詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

 

(2)気候変動

①ガバナンス

気候変動に関するガバナンスについては、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれておりますので、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

当社グループの温水空調機分野における気候関連リスクと機会の影響・対策気候変動関連の事業リスクについては、主に2℃シナリオの途上に起こる「低炭素経済への移行に関連したリスク」と、2℃~4℃シナリオに至った場合に発生する「気候変動に伴う物理的影響に関連したリスク」の2つのシナリオに関し、TCFDの分類に沿って検討しました。

また、常務以上の経営執行役で構成される経営会議において、エネルギー変換や環境規制の進行、需要等のシナリオを想定した上で事業の機会についても検討を行い、戦略的取組を推進しております。

 

■リスク:事業への影響度と発生頻度

リスク項目

リスク

発生

頻度

財務上の

影響度

移行

政策と

法規制

温室効果ガス価格の上昇

炭素税・排出権取引導入などによる原材料調達や製品製造のコスト負担増加

エネルギー政策

業務・家庭部門における再生可能エネルギー、脱炭素化された電源・熱源へのエネルギー転換

事業活動における再生可能エネルギー導入によるコスト負担増加(RE100対応)

物理的

急性的

生産拠点の損壊

風水害による明石本社工場の浸水や部品調達取引先の操業が停止することによる製品供給停止

慢性的

平均気温の上昇

平均気温の上昇によるお湯(給湯)の使用量減少

熱中症発症による操業阻害や空調コストの上昇

 

■機会

機会項目

機会

製品

(国内)

省エネルギーに関する建築物の規制強化

ZEH及びZEH-M※の普及促進に伴うハイブリッド給湯器など高効率給湯器の拡販

エネルギー消費機器への規制強化

環境規制が進んでいない業務用ボイラーから業務用高効率ガス給湯器への取替えニーズ増加

脱炭素対応商品の研究開発による販売拡大

製品

(海外)

気候変動への関心の高まりと環境規制の強化

エネルギー効率の低いタンク式給湯器からタンクレス給湯器や全一次給湯器への取替えニーズ増加

脱炭素対応商品の研究開発による販売拡大

※ZEH :net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語

断熱性・省エネ性能向上と創エネにより消費エネルギー量を実質的にゼロ以下にする住宅

ZEH-M:net Zero Energy House-Mansion (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)の略語

 

③リスク管理

気候変動に関するリスク管理については、サステナビリティ全般のリスク管理に組み込まれておりますので、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」をご参照ください。

 

④指標及び目標

カーボンニュートラル方針

価値創造ストーリー及びマテリアリティ分析にて、優先度の最も高い取組テーマである気候変動への対策を実践する具体的な計画として、パリ協定に整合した2030年度のCO2削減目標を策定しました。

■事業活動によるCO2排出量(単位:t-CO2)

 

2018年

(基準年)

2019年

(実績)

2020年

(実績)

2021年

(実績)

2022年

(実績)

2026年

(目標)

2030年

(目標)

Scope1

8,909

8,038

7,030

6,651

7,473

 

 

Scope2

17,297

13,559

11,750

10,990

11,150

 

 

Scope1,2 合計

26,206

21,597

18,780

17,641

18,623

15,724

13,100

2018年比較(%)

△17.6

△28.3

△32.7

△28.9

△40.0

△50.0

 

■製品使用によるCO2排出量(単位:万t-CO2)

 

2018年

(基準年)

2019年

(実績)

2020年

(実績)

2021年

(実績)

2022年

(実績)

2026年

(目標)

2030年

(目標)

CO2排出量

1,972

1,883

1,746

1,459

1,799

1,578

1,380

2018年比較(%)

△4.5

△11.5

△26.0

△8.8

△20.0

△30.0

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なお、温室効果ガス排出量詳細につきましてはノーリツコーポレートサイト(サスティナビリティページ)のESGデータブックに開示しております

https://www.noritz.co.jp/company/csr/pdf/esg_data_environment.pdf

 

中長期的に達成すべき目標を全従業員で共有し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献しながら、環境負荷低減と企業価値向上の両立を目指します。

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さらに、当グループは、製品の「CO2排出総量」の削減に加え、事業拡大により排出量を抑制できる「CO2削減貢献量」の向上にもこだわり、事業成長と環境への貢献の両立を図ります。

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なお、当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取組詳細をノーリツコーポレートサイト(サスティナビリティページ)に掲載しております。

https://www.noritz.co.jp/company/csr/pdf/carbon_neutral.pdf

 

(3)人的資本・多様性

①ガバナンス

人的資本に関するガバナンスについては、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれておりますので、「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」をご参照ください。

 

②戦略

当社グループは、人的資本、すなわち従業員を最も大切な資産と捉え、一人ひとりが能力を最大限発揮することで、お客さまと社会に価値を提供し、サステナブルな社会の実現に貢献することを目指しています。その推進に向けて、中期経営計画『Vプラン26』の人材戦略を策定し、「多様な人材を活かす」「成長実感を生み出す」「挑戦を後押しする」を、企業価値を高める重要な要素である従業員のエンゲージメントを向上させる重要なテーマとして掲げ、様々な人事施策に取り組んでいきます。

■中期経営計画『Vプラン26』実現に向けた人材戦略の全体像

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■重点施策(人材育成方針、社内環境整備方針)

<ダイバーシティ&インクルージョン>

少子高齢化で労働力が減少する中、企業が持続的に成長するためには多様な人材が集まり、その人材が力を発揮する事が重要だと捉えており、そのためには職場環境を整備し、従業員一人ひとりの個性や強みを最大限発揮することが必要だと考えております。女性・シニア・障がい者・外国人等、多様な人材の雇用や事業ポートフォリオに必要な人材の確保に向け、継続的に新卒採用活動を行うことに加え、経験者採用や専門職の採用を拡充しております。女性社員については、教育機会や社外交流会への積極的な参加を促進し、自らのキャリアや働き方を自律的に構築できるよう支援していきます。障がい者については、特例子会社のエスコアハーツだけでなく、個々のグループ会社でも直接雇用を進め、障がい者自身が能力を最大限発揮し、やりがいを持って仕事に取り組めるよう取り組んでいきます。

 

<ウェルビーイングの実現>

当社グループのMissionである「新しい幸せを、わかすこと。」を実現するためには、従業員一人ひとりもまた「健康」であり「幸せ」であることが必要であり、仕事のやりがいを感じ、いきいきと働いている状態の実現を目指します。2022年に「ノーリツ健康宣言」を刷新し、病気やケガの事後的対応にとどまらず、社員が病気やケガにより長期間休むことなく最大限に力を発揮できる環境づくりを目指して、疾患の未然防止、健康の保持・増進のための施策を会社、健康保険組合、労働組合が三位一体となって取り組んでいきます。

また、従業員のワークライフバランスを重視し、多様な人材が柔軟な働き方を選べるよう、様々な休暇や勤務時間に関する制度や環境を導入しております。

 

<個と組織の成長>

サクセッションプランにつながる次世代経営者育成プログラムを策定し、意図的な異動・抜擢配置によるタフアサイメントや選抜研修により、人材プールを構築していきます。

また、働く価値観が多様化していることを鑑み、パフォーマンスマネジメントや1on1を通じてやりがい創出やキャリア自立を支援するといったマネジメントへの変革や、従業員が自らのキャリアビジョンを考える機会を提供し、ありたい姿を実現する制度の充実に努めます。

 

<挑戦する組織への変革>

『Vプラン26』の実現に向けて刷新された理念体系のなかから、特に従業員の走り方を示した新Values「すべては挑戦から始まる」に関して、浸透から実践までの様々な施策を展開し、主体的な「挑戦」を通じて、従業員一人ひとりのやりがいを醸成していきます。社内取締役が現場を訪問する「わかす会議」を展開することに加え、各現場では「理念浸透ワークショップ」を開催し、挑戦について考える機会を提供します。また、個人の挑戦が称賛されるような報奨制度の導入も進めていきます。

 

③リスク管理

人的資本に関するリスク管理については、サステナビリティ全般のリスク管理に組み込まれておりますので、「(1)サステナビリティ全般 ②リスク管理」をご参照ください。

なお、少子高齢化に伴う生産労働人口の減少、将来の外部環境変化や当社グループの事業ポートフォリオの変革を見据え、経験者採用や専門職の採用に取組むほか、従業員のやりがい創出やキャリア支援に関する取組み、エンゲージメントサーベイの実施等を行い、潜在的なリスク管理にも取り組んでおります。

 

④指標及び目標

当社グループは、人材戦略の実効性をモニタリングするために、以下のとおり、人的資本に関する非財務指標を設定し、進捗を管理していきます。

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3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している全社重要リスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスクマネジメント活動の目的

当社グループは、新たに次期中期経営計画『Vプラン26』策定に伴い、ERM(統合的リスクマネジメント)体制を再構築しました。事業活動の継続・発展及び事業目標達成のために、ERM活動のコンセプトを取締役会にて決定し、経営戦略である『Vプラン26:Vision』と一体となったリスクマネジメント活動を進めていきます。事業活動の継続に関わるサステナビリティ経営の推進や、マテリアリティ(重点課題)に関わる新たな事業取組のリスクについて、ガバナンス体制(取締役会・サステナブル委員会)とERMが一体となり、リスク対応状況のモニタリングを実施します。ERMが正しく機能するために、「3つのラインモデルによる内部統制システム」を合わせて適切に運用し、経営体制として『ガバナンス-ERM-内部統制』を一体的に運用して参ります。

 

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(2)リスクマネジメント体制について

当社グループは、サステナブル委員会にてリスクマネジメントを含むESGに関わる内容を議論しており、委員長である経営戦略統括本部長を全社リスク統括責任者として、リスクマネジメント統轄部門である総務法務部の指示のもと、各本部の内部統制責任部門がリスクマネジメント活動を実施しています。当社の重要度の高いリスク項目はサステナブル委員会での審議を経たのち、主要なリスク項目の内容は「全社重要リスク」として、取締役会で報告しています。「全社重要リスク」は取締役会にてモニタリングを実施し、経営者が重要と認識しているリスク項目について、管轄部門の対応状況を確認することができる体制を構築しております。

 

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(3)リスクマネジメントのプロセス

リスクマネジメント活動のプロセスは、各本部の内部統制責任部門が事業活動に影響を与えるリスク項目を特定し、特定したリスク項目を発生頻度と影響度の2つの判断基準で評価します。次に、実施した評価をもとに、「リスクマップ」を作成し、重要度の高いリスク項目についてリスク対応計画を策定します。リスクマップは発生頻度と影響度に合わせて4つのエリアに分け、リスク回避・リスク低減・リスク移転・リスク保有をガイドラインとして指示し、各部門にてリスク対応計画の策定を進めています。策定された計画内容は、サステナブル委員会で報告し実施状況をモニタリングします。モニタリングを通して、次年度のリスクマネジメント活動のリスク項目の特定へ、サイクルを回していくことがリスクマネジメント活動のプロセスになります。

 

(4)全社重要リスクの決定

全社重要リスクの決定プロセスは、サステナブル委員会で報告しているリスクマネジメント活動における全社リスクマップをもとに、リスク回避エリアを中心に緊急で対応が必要となる重要リスクを抽出し、サステナブル委員会で報告をしています。サステナブル委員会での議論を経て、取締役会にて重要リスクの決定を最終決議しております。取締役会にて重要リスクへの対応状況のモニタリングは年2回実施し、当年度のリスクマネジメント活動状況の報告と合わせて行っており、重要リスクの対応状況と、当年度のリスクマネジメント活動から抽出された新たなリスク項目と合わせて、取締役会にて翌年度の重要リスクの決定決議を行います。モニタリング状況により、継続対応が必要なリスク項目は、引き続き重要リスクとしてモニタリング対象とし、対応の目途や、対応方針が固まったリスク項目については対象からは引き下げ、主管部門における通常の業務課題として対応を進めてまいります。

 

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(5)全社重要リスク対応

経営者が連結会社の財政状態、経営成績の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している「全社重要リスク」は以下のとおりであります。

 

全社重要リスク

リスク概要

前年比較

① サプライチェーンの分断

生産部品の供給停止による製品生産・販売活動の停止

継続

 

② IT・情報セキュリティ

機密情報の漏洩、ランサムウェアによる損害費用の発生

サイバー攻撃によるシステム障害の発生、生産・販売活動停止

継続

 

③ 品質不正リスク

製品品質の不正が発生する事による生産活動の停止

継続

 

④ 人材確保難

人材確保難化 業務後継者不足 開発・販売競争力低下影響

継続

 

⑤ 海外国基準対応

海外法規制基準変化 カーボンニュートラル対応

製品性能基準への対応

 

新規

⑥ 環境負荷物質対応

製品含有化学物質 サプライ部品調達の使用物質管理対応

 

新規

⑦ 新規国 商品展開

国内需要の減少するリスクへ、新規市場開拓対応

 

新規

※ 環境対応 低炭素経済

環境配慮型商品開発 事業活動における環境配慮への対応

引き下げ

※ 地政学リスク

地政学的有事によるサプライ影響 グループ社員へ危機対応

引き下げ

 

 

① サプライチェーンの分断

新型コロナウイルスの感染拡大による諸外国でのロックダウンや世界的な電子部品の供給不足により部品調達が困難となったことで、国内の生産活動や製品の出荷への多大な影響を経験し、サプライチェーンの再構築を優先課題として推し進めてまいりました。今後も、新型コロナウイルス感染症の様な重大な感染症が流行した場合に限らず、部品調達先での大規模な行動制限等のロックダウンの発生や世界各地での紛争の発生による地政学的リスク影響により、サプライチェーンが分断される可能性があります。また、国内外問わず、大規模な台風、地震等の自然災害が発生し、生産活動に関わる仕入先等の操業中止・被災・倒産、物流に支障が生じることによって、生産部品の調達が困難となり、製品の出荷ができなくなる可能性があり、サプライチェーンの分断は、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす重要なリスク項目として継続して対応に取り組んでまいります。

製品の安定供給を最優先に取り組み、部品の調達難に対しては、調達条件の変更や代替部品確保などの対策を進め、受注残は解消し納期も正常化致しました。部品調達体制を強化するため、主要部品ごとに「複社購買」「拠点分散」「単一国供給」「生産安定性」の項目を整理し、リスクが高い部品から優先的に、新規調達先の検討と性能品質の検査を行い、複社購買化を推進しました。調達リスクの低減は順調に進められておりますが、依然として対応の必要な部品が残っており、生産部品の中長期的な安定供給へ向けた体制構築に引き続き取り組んでまいります。

 

② IT・情報セキュリティ

当社グループは事業活動の大半において情報システムを利用しており、情報システムの通信ネットワークに生じる障害や情報システムのハードウェア、もしくはソフトウェアの不具合・欠陥、データセンターの機能停止等により事業活動が一時的に停止する可能性があります。また、国内企業においてもコンピューターウイルスやサイバー攻撃、サイバーテロなどによって情報システムの不具合が発生している事例が見受けられます。当社グループの生産活動に関連した情報システムが影響を受け、製品の出荷が停止することは、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす重要なリスクと認識しております。また、情報セキュリティ上の不備により、社内の重要な機密情報が外部に流出するリスクを抱えています。個人情報については、当社グループ関係者などの故意または過失による外部流出、またサイバー攻撃等により第三者へ不正取得された場合には、賠償責任の他、当社グループのブランドイメージの低下により、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。個人情報の他にも、製品情報や開発情報の漏洩、経営戦略情報や、インサイダー情報に関わる決算情報など、様々な重要情報の漏洩防止について、対応が必要となる重要なリスク項目と認識しております。

ファイアウォールなどのいわゆる出入口対策のほかにも、外部・内部からの不正アクセスやエンドポイントの常時監視など、多層的な情報保護対策を行っており、更なるセキュリティの強化に向け、グループ統一のクラウドストレージの導入を進めてまいりました。システムの導入により、ランサムウェア等のサイバー攻撃による不正アクセスの常時監視、バックアップによる情報資産の保護を実施するとともに、個人情報の流出対応強化に向けては、その他の重要機密情報も含め、機密レベルに応じたアクセス権限を設けることで、重要情報へのアクセスを一部の責任者のみに限定する体制の構築を進めます。システムの導入は既に開始しており、切り替えの運用は順調に行われておりますが、グループ全体で随時切り替えを進めている状態であり、体制構築の完了に向けた対応を継続して取り組んでまいります。

個人情報の取得・取り扱い・管理・開示・訂正・利用停止などの方法については、プライバシーポリシーを定めるとともに、社内規定の整備、個人情報の取り扱いを記した冊子の配布を実施し、個人情報の適正な管理を実施しています。また、情報セキュリティに関連する規定(「ノーリツグループ情報セキュリティ基本規定」「情報セキュリティ共通対策基準」等)の整備に加えて、情報セキュリティに関するEラーニングや標的型メール訓練を役職員に実施するなど教育・研修の徹底を図っております。

 

③ 品質不正リスク

近年社会からの品質への要求が高まる中、企業における品質不正事例が発生しております。品質データの不正書き換えや品質検査データの改ざん、性能偽装により環境基準等の認証の不正問題などが、発生した品質不正事例と確認しております。メーカーとして品質における不正が発生してしまった場合、当社グループのブランドイメージが低下し、ステークホルダーに与える影響が大きく、製品に関わる賠償費用やリコール対応費用の他、製品販売台数減少によって、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす重要なリスクと認識しております。経営からも改めて監査部門へ品質不正に関わる事例が無いか調査を指示し、ノーリツグループ内において発生事例は無いことを確認しております。

品質コンプライアンスに関わる内部統制の構築を推進しています。ISO内部監査で品質不正の観点を追加し、生産工程のFMEAにおいて、生産工程における品質不正の発生が起きないような仕組みを構築しました。又、品質を高めるためには、企画・開発・調達・製造・販売・施工・アフターサービスまで関わる全ての部門が品質に対する意識を持つことが必要となるため、ノーリツグループ『品質方針』を改定し、「品質=製品品質」という従来の考え方から脱却した、新たな『品質ガイドライン』を各部門へ展開しました。今後も、「品質コンプライアンスに関わる内部統制」を構築し、製品品質とサービス品質の両方を高め、各本部で品質不正が起こらない管理体制づくりを継続して進めてまいります。

 

④ 人材確保難

当社グループの事業活動において、従業員は大切な資産であり、会社の発展には多様な人材が必要と捉えています。国内は、労働人口減少や求人倍率の増加を背景とした人材不足が顕在化しており、劇的に変化する社会のニーズに対応し、多様な価値観・才能・ライフスタイルを持った人材が能力を最大限発揮出来る会社・職場にしなければ、有能な社員や将来を担う若手社員などの離職により、製品・サービスの品質が落ちることで、事業活動における競争力が低下することは、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす重要なリスクと認識しております。

経営戦略と連動した人材確保に向け、新卒採用だけではなく、経験者採用や専門職の採用の比率を増やし、あるべき人材ポートフォリオの形成を進めています。また、成果創出支援だけでなく、多様化する価値観をもった従業員のやりがい創出やキャリア自立支援を目的としたマネジメントへの変革や、従業員がありたいキャリアを考える機会の提供とそれを実現できる制度の充実に取り組むことで、従業員のエンゲージメントを向上させていきます。

 

⑤ 海外国基準対応

当社グループは、中国・香港・北米・豪州にグループ会社を設置しており、中期経営計画『Ⅴプラン26』事業ポートフォリオの変革においても、海外事業の拡大は重要な課題として位置づけております。世界的にカーボンニュートラルへの対応要請が高まる中、製品に関する電力等のエネルギー使用量の認証や燃焼機器における熱効率基準の他、製品や事業活動におけるCO2排出量等の基準への対応状況により、販売活動が制限される可能性があります。海外における各国の法令や基準等の変更に対応できなければ、海外での製品販売事業に重大な影響を与えるリスクとなるため、全社重要リスクとして新たに特定を致しました。

各国における製品・販売基準の情報収集を進め、各種基準への対応体制を構築してまいります。各国の法令や規定、認証、販売の基準等の変更が予想される時期をロードマップとして整理し、リスクが高い項目を優先対象として進めてまいります。

 

⑥ 製品含有化学物質対応

当社グループは、ガス・石油機器の製造及び販売を主力事業としており、サステナブル調達への要請が高まる中、サプライヤーからの調達部品が、材質や製品含有化学物質に関する規制の基準に違反していた場合や人権侵害等による不法行為による生産部品の他、紛争地域の資金源となる鉱物などが使用されていた場合、それらを使用して製造された製品は、今後の規制強化に伴い販売ができなくなる可能性があります。海外の国基準への対応とともに、サプライヤーからの調達部品の管理を進め、法令を遵守した調達活動を実施し対応しなければ、市場から排除され、将来的な事業活動に影響を及ぼすリスクとなるため、全社重要リスクとして新たに特定を致しました。

製品含有化学物質の規制基準の情報収集を進めるとともに、調達部品において使用されている物質について、サプライヤーと共同で情報管理を進め、対応体制構築を進めます。環境法令の基準変更の時期をロードマップとして整理し、リスクが高い項目を優先対象として進めてまいります。

 

⑦ 新規国 商品展開

中期経営計画『Vプラン26』の基本方針において、重要戦略「事業ポートフォリオの変革」を掲げております。今後、住宅着工数など国内の需要が減少していくことが予想され、事業活動に影響を与えるリスクと特定するとともに、住宅向け温水分野に偏重した事業構造の変革を進めていくことが、リスクマネジメント対応においても重要課題であると認識しております。それらの外部環境を踏まえ、海外事業において、中国エリアや北米エリアなど既存エリアでの事業拡大を継続しつつ、新規市場エリアの開拓も推進していかなければ、将来的な事業活動に影響を及ぼすリスクとなるため『新規国 商品展開』を新たに重要リスクとして特定致しました。

事業拡大を進めるにあたっての各国特有の規制や法令など社会情勢の他、市場情報と販売プロセスなどの項目から、リスク特定を実施します。特定されたリスク内容をもとに、優先的に対応が必要となるリスク項目について、取締役会でのモニタリングを通して、活動の進捗状況を確認します。

 

※ 環境対応 低炭素経済

前事業年度において、全社重要リスクとしておりました「環境対応 低炭素経済」について、製品においては環境配慮型商品の開発及び普及を進め、事業活動においては、「RE100」に加盟し、事業所での再生可能エネルギー100%化に向けて取組を進めてまいりました。

環境配慮型商品開発のPJが発足され、部門連携を図りながら活動が実施できる体制が整いましたので、今後は通常業務における事業課題として、取組を進めてまいります。

事業活動における「RE100」の推進については、「RE100推進PJ」による各事業所における再生可能エネルギー100%化に向けた試算と実施のロードマップが完成しましたので、全社重要リスクからは引き下げ、今後は省エネルギー設備への更新など、通常業務における事業課題として、取組を進めてまいります。

 

※ 地政学リスク

前事業年度において、全社重要リスクとしておりました「地政学リスク」について、サプライチェーンへの影響と海外で勤務をしているグループ社員への影響について、リスク対応を進めてまいりました。

地政学リスクに起因するサプライチェーンへの影響は、重要リスクである『サプライチェーンの分断』と統合し、複社購買政策と合わせて対応してまいります。

海外で勤務をしているグループ社員への影響につきましては、有事発生の際、安全に帰国できるようサポートサービスを付帯した海外危機管理に関わる保険への加入を進め、地政学的な有事の他、テロの発生や大規模な自然災害の発生時に、グループ社員の安全を確保できる体制構築の目途がたちましたので、重要リスクから引き下げることと致しました。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、行動制限の解除に伴い、インバウンドの回復や雇用環境の改善など、経済回復の兆しが見えましたが、物価上昇の影響を受け、消費者の大幅な購買意欲上昇には至りませんでした。海外においても、各国で国境封鎖が解除され、経済活動が改善に向かったものの、回復ペースは緩やかな状況が続いています。また、原材料価格やエネルギーコストの高騰、金融市場の引き締め、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、地政学的リスクの高まり等、依然として不透明な状況が継続しました。

このような状況のもと、当社グループは、2021年に始動した中期経営計画『Vプラン23』の最終年度を迎えました。当中期経営計画の3年間を「飛躍のための地盤固め」のフェーズと位置付け、国内事業は高収益体質への進化、海外事業は持続的成長を目指してまいりました。さらに、「盤石なサプライチェーンの構築」と「DX推進による企業活動の変革」を重点課題として加え、製品の安定供給と生産プロセスの最適化に取り組んでまいりました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ92億3百万円減少し、2,077億71百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ162億14百万円減少し、811億4百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ70億10百万円増加し、1,266億67百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度の売上高は2,018億91百万円(前年同期比4.3%減)、営業利益は38億40百万円(同44.3%減)、経常利益は12億45百万円(同84.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては8億68百万円(同81.9%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

国内事業は、売上高が1,313億49百万円(前年同期比7.1%減)、セグメント利益が3億20百万円(同90.4%減)となりました。

海外事業は、売上高が705億42百万円(前年同期比1.4%増)、セグメント利益が35億20百万円(同0.7%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、251億59百万円と前連結会計年度末と比べ99億87百万円の減少となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により支出した資金は18億68百万円(前年同期は24億3百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益30億36百万円、減価償却費74億38百万円、仕入債務の減少額97億10百万円、法人税等の支払額26億41百万円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は56億64百万円(前年同期比21億26百万円減)となりました。これは主に有価証券の売却及び償還による収入28億56百万円、有形固定資産の取得による支出77億20百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は32億35百万円(前年同期比15億42百万円減)となりました。これは主に配当金の支払額27億61百万円等によるものであります。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

国内事業(百万円)

117,579

89.7

海外事業(百万円)

50,565

95.4

合計(百万円)

168,145

91.3

 (注)1.金額は、販売価格によっております。

    2.金額は、セグメント間の取引について相殺消去しております(以下の各表についても同様であります。)。

 

b.仕入実績

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

国内事業(百万円)

18,949

88.2

海外事業(百万円)

4,246

88.5

合計(百万円)

23,195

88.2

 

c.受注実績

 見込生産体制をとっておりますので、受注生産は行っておりません。

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

国内事業(百万円)

131,349

92.9

海外事業(百万円)

70,542

101.4

合計(百万円)

201,891

95.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度の経営成績は、売上高2,018億91百万円(前年同期比4.3%減)、営業利益38億40百万円(同44.3%減)となりました。経常利益につきましては、2021年6月に株式を取得し持分法適用関連会社としたKangaroo International Joint Venture Company(以下、「Kangaroo社」)の業績が計画を下回ったためのれん等を減損処理し、持分法による投資損失を営業外費用に計上したこと等により、12億45百万円(同84.2%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、8億68百万円(同81.9%減)となりました。

当連結会計年度を最終年とした中期経営計画『Vプラン23』は、国内における想定を上回る需要の減少により、海外での暖房用・業務用機器の健闘にもかかわらず、目標を達成するに至りませんでした。しかしながら、環境配慮型商品などの高付加価値商品の構成比の向上、お客さまとのつながりの拡大及び海外事業における売上の拡大など、新中期経営計画『Vプラン26』に繋がる良化の兆しがあります。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(国内事業)

当連結会計年度の国内事業セグメントは、売上高が1,313億49百万円(前年同期比7.1%減)、セグメント利益が3億20百万円(同90.4%減)となりました。第2四半期以降継続する需要の低迷と原価高騰、為替の影響を受け、減収減益となりました。

温水空調分野では、政府の補助金の活用により、ガスと電気の2つのエネルギーで効率よくお湯をつくる「ハイブリッド給湯暖房システム」の販売台数を前年比1.6倍に拡大しました。また、IoTリモコンの販売台数及び保守契約数を増加させ、お客さまとの将来のつながりを強化しました。非住宅用においては、ボイラーから業務用ガス給湯器への取替を促進し、売上高を大幅に拡大するなど、カーボンニュートラル実現に向けた取組による成果がありました。一方、家庭用のガス・石油給湯機器においては、想定以上の需要低迷により、販売台数が大きく減少しました。

厨房分野では、8月に発売したビルトインコンロの新商品が順調に推移しているものの、当連結会計年度累計の販売台数は前年を下回る結果となりました。以上により、国内事業全体で減収減益となりました。

セグメント資産は、主に棚卸資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ26億78百万円増加し、1,039億97百万円となりました。

 

(海外事業)

当連結会計年度の海外事業セグメントは、売上高が705億42百万円(前年同期比1.4%増)、セグメント利益が35億20百万円(同0.7%減)となりました。

中国エリアにおいては、経済の低迷が継続する中、暖房用給湯器など高付加価値商品の拡販で収益を確保しました。北米エリアにおいては、需要低迷で苦戦しましたが、収益性の高い業務用及び暖房用機器の拡販により利益を確保しました。豪州エリアにおいては、ニュージーランド向けのタンクレス給湯器やホームセンター向けタンク式給湯器の販売が順調に推移したことに加え、業務用分野を前年比1.1倍に伸ばすなど、堅調に推移しました。海外の主要エリアは堅調に推移しましたが、国内からの内部取引に伴う輸出量の減少及び輸出品の原価が著しく高騰したため、海外事業全体では増収減益となりました。

セグメント資産は、主に現金及び預金の減少等により、前連結会計年度末に比べ79億33百万円減少し、685億88百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動におきましては、主に営業取引減少に伴う仕入債務の減少等により、営業活動により支出した資金は18億68百万円(前年同期は24億3百万円の収入)となりました。一方、投資活動におきましては、主に有形固定資産の取得による支出等により、投資活動により支出した資金は56億64百万円(前年同期比21億26百万円減)となりました。また、財務活動におきましては、主に前連結会計年度に発生した自己株式の取得による支出が当連結会計年度では発生しなかったため、財務活動により支出した資金は32億35百万円(前年同期比15億42百万円減)となりました。

この結果、当連結会計年度末における連結ベースの資金は、251億59百万円と前連結会計年度末と比べ99億87百万円の減少となりました。

 

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料や部品の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は主に設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金、設備投資及び長期運転資金については自己資金を基本としております。なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は71億86百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、経営者は見積りが必要な事項につきましては、過去の実績や現状等を考慮して合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。但し、将来に関する事項には不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる可能性があります。

当社グループの重要な会計方針は「第5経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、財政状態又は経営成績に対して特に重大な影響を与える会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。

 

a.関係会社株式の評価

当社グループは、取得した関係会社株式に含まれるのれん、商標権及び顧客関連資産について、被取得会社の事業計画・ロイヤリティ料率・既存顧客の減衰率等を基礎とした将来期待されるキャッシュ・フローを現在価値に割引いて算出しております。事業計画等は、経営者の判断及び見積りの不確実性を伴うものであり、見積りの前提や仮定に変更が生じた場合、関係会社株式の評価の判断に影響を及ぼす可能性があります。

関係会社株式の評価につきましては、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

b.繰延税金資産の回収可能性

当社グループは、繰延税金資産を将来の回収可能性に基づき計上しております。回収可能性を判断するに際し、将来の課税所得を慎重に見積もり、実現可能性の高い継続的な税務計画を作成検討し、回収可能性が低いと考えられるものについては評価性引当額を計上しております。繰延税金資産は、市場の動向や為替変動などの経済環境、会社の事業計画の悪化等により課税所得の見積りを減額した場合等には繰延税金資産を取り崩す必要が生じるため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

繰延税金資産の回収可能性につきましては、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

c.製品保証引当金

当社及び一部の連結子会社は、製品販売後のアフターサービス費用に備えるため、製品保証引当金を計上しております。製品保証引当金は、売上高を基準として過去の実績負担率により算定した額又は個別に見積もり可能なアフターサービス費用についてはその見積額を計上しておりますが、実際の発生実績率又は製品保証費用が見積りと異なる場合、引当金の変更が必要となる可能性があります。

 

d.固定資産の減損

当社グループは、事業用資産については、製品及び市場の類似性を考慮し、主として管理会計上の収支管理単位で区分しております。遊休資産については、個々の資産ごとにグルーピングしております。固定資産の回収可能価額については、各グループの単位で将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等を見積もっておりますが、市場の動向や為替変動などの経済環境、会社の事業計画の悪化等により将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、環境課題に向き合うとともに、事業活動を通じて付加価値を提供し持続可能な社会を実現し豊かな暮らしを実現するために研究開発の取組を進めています。そのため、各分野で最先端技術を駆使しながら熱源機器の多機能化、環境性能の向上等の更なる改善を推進し、先端技術分野で今後の事業の中心となる製品の研究開発を進めております。また、AI(人工知能)やIoT(Internet of things)に代表される情報化社会の進展に対応した技術革新に注力してまいりました。

当連結会計年度における研究開発費の総額は4,444百万円であり、製品分野別に記載しております。

 

(温水空調分野)

国内の給湯分野では、現代の日本人が抱える社会課題解決に向き合うことを目的に、衛生ニーズに対応した業界初※1の技術であるオゾン水を活用したオゾン水除菌ユニット“AQUA OZONE” を搭載した給湯器、高齢化社会に応えるため進化した“見まもり”機能、さらに現代人が抱える“睡眠”への課題にも向き合うために人体の深部体温を活用した技術である“HIITO” を搭載したリモコンを開発しました。

持続可能な社会への実現に向けた対応としては、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けて取組を加速しています。どのようなエネルギーにも対応できるように、給湯時にCO2を排出しない水素燃焼技術及び水素100%燃焼の家庭用給湯器を開発しました。当社は、2030年・2050年までのCO2削減目標として、「国内で製造・販売する製品使用時のCO2排出量を30%削減(2018年比)」、「2050年には海外を含む事業所・製品によるCO2排出量を実質ゼロ化し、カーボンニュートラルの実現」を目指し開発を加速しています。

また、非住宅分野でも、CO2排出量の多いボイラーに代わる熱源機として、使用量に応じた細かな能力に対応でき、効率的な運転が可能な業務用ガス給湯器の複数台連結設置(マルチシステム)への取り換えを加速させるため2021年に北海道、東京、名古屋、大阪、福岡で先行発売した屋内設置50号マルチ給湯器用の「集合排気システム」を全国展開しました。

海外市場においては、北米でタンク式給湯器と瞬間式タンクレス給湯器を組み合わせた業務用商品を開発し、レストランやホテルなど、短時間に大量のお湯を必要とする現場で、大型のタンク式給湯器を設置することなく安定したお湯の供給が可能となる「HYBRID HOT SERIES」を開発しました。

温水空調分野における研究開発費は2,844百万円であります。

※1 家庭用ガスふろ給湯器に対して(2023年3月現在)

 

(厨房分野)

ガスビルトインコンロは中級価格帯に「Orche(オルシェ)」を投入しました。厨房分野でも現代の日本人が抱える社会課題解決に向き合いました。コロナ禍を経て今まであまり料理をしなかった調理初心者から、慌ただしい毎日のなかで料理をする人までが“もっと楽しく”なるをコンセプトに経験や勘にたよらなくても、誰でも安定した調理が可能な、調理中の現在温度を見える化する独自の“温度クック機能”を搭載しました。

また、10年間ファンのお手入不要※2な、“サイレント・クリーンフィルター”を採用し、清掃性と静音性を両立させたレンジフード『easia(イージア)』を開発しました

厨房分野における研究開発費は233百万円であります。

※2「ファンのお手入れが10年間不要」は、レンジフード内部が汚れないということではありません。当社普及製品(NFG*B03シリーズ)の1年間相当の油が付着する期間が、S24シリーズでは約10年になるため、製品設計上の標準使用期間中はファンのお手入れが不要としています。 また、普及製品については1年に1回ファンのお手入れをすることを前提としています。

 

(先行技術開発)

先行技術開発については、技術領域の拡大に向け、包括連携協定を締結した国立大学法人神戸大学との共同開発で4つのプロジェクトを進めています。この包括連携協定では、脱炭素関連技術やDX・ウェルネス分野の技術など、社会課題解決につながる技術開発を進めると同時に、研究開発職の人材教育や新規事業の創出にも取り組んでいます。

また、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業に採択された「熱エネルギー循環型ハイブリッドヒートポンプ給湯システム」の開発が実用化フェーズに進みました。低炭素・脱炭素社会の実現に向け、当社が取り組む新たな技術領域として積極的に取り組んでまいります。

基礎的研究開発費は1,365百万円であります。