第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

事業を取り巻く経済環境は依然として複雑に変化しており、厳しさが継続しております。withコロナからポストコロナ社会へシフトし、経済活動はパンデミック前に戻りつつあるものの、原材料不足による部品の価格高騰や供給遅延は終焉に至っておりません。ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰や物価上昇などは、一旦落ち着いたもののいまだにリスクをはらんでおります。海外においては、米国経済は比較的堅調であるものの、欧州における景気後退の懸念、中国経済の回復遅れ及びその世界経済への影響、中東及び東アジアでの地政学上のリスクなど、不透明な状況が続いております。

 

(1) 会社の経営の基本方針

住友重機械グループは、1888年(明治21年)、住友グループの祖業である別子銅山の工作方として創業以来、社会と産業の発展とともに歩んできました。住友グループ各社に共通の理念と位置付けられる「住友の事業精神」は、社会性が重要視される現在の環境との親和性も高く、当社グループにとっても経営の基本であり、この精神に則り企業活動を実践していきます。

また当社グループは、住友の事業精神のもと、従来の経営理念(企業使命+私たちの価値観)に加え、このたび企業の存在意義となるパーパスを次のとおり制定し、理念体系を整備いたしました。

 

パーパス

こだわりの心と、共に先を見据える力で、人と社会を優しさで満たします

Enhance society and those within it with compassion through our ownership and vision

 

当社グループはこれら理念に則り、製品及びサービスのさらなる深化を図り、顧客の声に応え続けるとともに、持続可能な社会実現に向けて、イノベーションにより社会課題解決へのソリューションとなる製品及びサービスを提供していくことで、社会価値および企業価値の拡大に引き続き取り組んでいきます。

 

(2) 中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題

①「中期経営計画2023」の総括

「中期経営計画2023」は、2030年の長期目標に向けた基礎固めの期間と位置付け、その大きな狙いの一つとして、企業価値と社会価値の両立を目指し、社会課題の解決にも取り組んでまいりました。売上は、建機関連の拡大などにより最終年度は計画目標を達成しましたが、受注は半導体やエネルギー関連の需要の減少により、また、営業利益は原材料費や調達品の価格状況やサプライチェーン混乱などの影響から、計画目標を達成することはできませんでした。しかしながら、厳しい外部環境のもとでも、セグメントの組替え、重要領域での製品開発など、長期的な成長に向けた準備を進めてまいりました。セグメントの組替えでは、新規事業を探索する「探索力の強化・追求」と、コアコンピタンスの結合やシナジーを発揮する「新たな深化力の獲得」を課題として掲げ、事業の共通の方向性や軸で事業ポートフォリオを見直し、メカトロニクスセグメント、インダストリアル マシナリーセグメント、ロジスティックス&コンストラクションセグメント及びエネルギー&ライフラインセグメントとして再編いたしました。複雑化する事業環境のもとで、将来の成長を目指し、既存事業体の枠を越えて相互のシナジーを発揮させ、新しい事業を創出してまいりました。

一方、関連するサステナビリティの取組みについては、社会価値の向上を目指し、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)のそれぞれの項目で課題を設定し、その課題に対する取組みを実施してまいりました。環境(E)では、2021年にTCFD*の提言に賛同し、2030年CO2排出量削減目標及び2050年カーボンニュートラル目標を設定いたしました。社会(S)では、人権方針策定、LGBT対応強化などジェンダー・ダイバーシティを推進し、働きやすい会社への変革を進めてまいりました。ガバナンス(G)では、取締役会の実効性強化につながる取組みに注力し、コーポレート・ガバナンスの充実・強化を行ってまいりました。

これらの施策を長期目標へ向けて、成果として結実させるべく、「中期経営計画2026」を策定いたしました。

 

 

②「中期経営計画2026」の概要、今後の施策等

「中期経営計画2026」は、「中期経営計画2023」よりつながる、「あるべき姿」からバックキャストして社会課題を導き、「製品・サービスによる社会課題解決を通じて持続的に企業価値を拡大する」という方針を継続しつつ、新たにパーパスを策定し、当社グループとして何を目指していくのかを共通認識として持つ、大事な道標といたしました。2030年の「あるべき姿」を「コア技術で豊かな社会を支え、CSV**を実現する企業」とし、成長力、収益力、信用力といった「企業価値」と、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の観点で示される「社会価値」をバランスさせ、環境に左右されない、変化に強い、「強靭な事業体の構築」を基本方針としております。本基本方針のもと、「収益力の改善」、「資本効率の向上」、「新事業探索の強化」を重点課題と位置付け、コーポレートとセグメントの両面から遂行する基本戦略とし、「深化による稼ぐ力の強化、利益にこだわる経営」、「ROIC経営の徹底」及び「探索による事業機会の発掘」を推進してまいります。〔図1〕

「中期経営計画2026」では、2026年度に売上高12,500億円、営業利益1,000億円、ROIC8.0%を達成することを財務目標とし、併せて、非財務目標としてESGの各項目に分類したサステナビリティ重要課題(E:環境負荷の低減、S:よりよい暮らし・働き方の実現、従業員の安全・健康・育成、地域との共存・共栄、持続可能なサプライチェーンの構築、G:ガバナンスの強化、製品品質の確保)の各目標値を設定しております。


 

コーポレート戦略

a.事業ポートフォリオ改革の推進〔図2〕

成長を見込む重点領域事業へ経営資源を集中し事業の拡大を図り、事業ポートフォリオ改革を推進してまいります。当社グループ製品を支える技術が多岐にわたるなかで、外部環境や当社グループの強みを踏まえて、コア技術をベースに、「ロボティクス・自動化」分野、「半導体」分野、「先端医療機器」分野及び「環境・エネルギー」分野の4つの「重点投資領域」を設けました。これらの「重点投資領域」へ、「中期経営計画2023」を上回る積極的な投資を行うことで、事業を伸長し新たな価値創造と企業価値向上を目指してまいります。

 


 

b.資本政策

「中期経営計画2026」ではROIC向上施策の推進によりキャッシュ・フロー創出力を強化するとともに、財務の健全性を損なわない範囲で有利子負債も活用し、重点投資領域を中心に投資へ1,900億円、研究開発費へ900億円、株主の皆様へ800億円の還元を計画しております。

今後の還元は中長期的にDOE***3.5%以上、最低配当125円、自社株買いを含めた総還元性向40%以上を基本方針とし、一層の充実に努めてまいります。2024年度は1株当たり配当予想を5円増配の125円とし、さらに100億円の自社株買い実施を決定しました。

「中期経営計画2026」の期間中はDOE3.5%への向上と自社株買いの継続で、総還元性向は50%以上の水準を想定しております。

 

c.新事業探索の強化

2023年に設置した新事業探索室を中心に、4つのセグメント及び本社部門と連携をとりながら、セグメントをまたぐ横断的な探索テーマの調整と推進、コーポレート視点でのテーマ発掘と事業化推進を行ってまいります。また、将来の当社グループを支える社内企業家人材の育成についても取り組む計画としております。

 

d.経営基盤強化

「中期経営計画2026」では、上記の取組みを支える経営基盤(サステナビリティ、人的資本、DX****)の強化を進めてまいります。

サステナビリティでは、SDGs、当社グループの2050年カーボンニュートラル目標達成に向けた対応を強化し、社会環境変化のリスクをチャンスへ変えて、企業価値向上を目指してまいります。具体的には、機械メーカーに対応が求められるサステナビリティ課題を抽出し、7つの重要課題を特定して、事業を通じた社会課題解決への貢献や、気候変動リスクをはじめとする中長期的なリスクへの対応に取り組んでまいります。

人的資本では、「人材育成基盤の強化」と「組織能力の強化」が事業の持続的成長を支えるとの人的資本経営の考え方のもと、人材確保、人材育成基盤の強化、グローバル人材マネジメントの基盤整備、組織能力強化、ダイバーシティ推進を重点課題と位置付け、人材戦略を遂行してまいります。

DXでは、デジタライゼーションを継続し、強靭な事業体実現を支えるDX推進基盤を構築してまいります。同時に、新たな顧客価値を創出する、一流の商品・サービスづくり及び設計・製造バリューチェーンなどの業務プロセスの変革を加速いたします。また、SDGs実現に向けて、環境・安全対策に取り組み、社会課題の解決を推進してまいります。

 

 

セグメント戦略

「中期経営計画2026」では、メカトロニクスセグメント、インダストリアル マシナリーセグメント、ロジスティックス&コンストラクションセグメント及びエネルギー&ライフラインセグメントのそれぞれの役割を以下のように位置付け、セグメント毎にROIC目標を設定し、成長戦略を遂行する計画としております。

 

メカトロニクス              : 高収益で成長牽引セグメント

インダストリアル マシナリー        : 高収益で成長牽引セグメント

ロジスティックス&コンストラクション    : 安定収益を確保する基盤セグメント

エネルギー&ライフライン          : 将来成長のための育成セグメント

 

各セグメントは、コーポレート戦略で設定された「重点投資領域」の4つの分野を踏まえ、深化による稼ぐ力の強化、探索による事業機会の発掘を行ってまいります。メカトロニクスセグメントは「ロボティクス・自動化」と「半導体」分野、インダストリアル マシナリーセグメントは「半導体」と「先端医療機器」分野、ロジスティックス&コンストラクションセグメントは「ロボティクス・自動化」分野、エネルギー&ライフラインセグメントは「環境・エネルギー」分野を軸に実行してまいります。

それぞれのセグメントは、セグメント内だけにとどまらず、セグメント間でシナジーを追求しつつ、同時にセグメント組織の効率化を図り、強靭な事業体の構築を目指し、目標達成へ向けて取り組んでまいります。
 


「中期経営計画2026」の詳細につきましては、当社ウェブサイトに掲載しております。

https://www.shi.co.jp/info/2024/6kgpsq000000myl5.html
 

*TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、G20からの要請を受けて、大手企業、信用格付機関など世界中の幅広い経済部門と金融市場のメンバーによって構成された民間主導の特別組織であり、気候変動によるリスクおよび機会が経営に与える財務的影響を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示することを推奨しています。

**CSV(共有価値の創造 Creating Shared Value)とは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで自社の持続的成長につなげるという考え方です。

***DOE(株主資本配当率 Dividend on Equity Ratio)とは、年間の配当総額を株主資本で割って算出する財務指標を指します。

****DX(デジタルトランスフォーメーション Digital Transformation)とは、ITの活用により、あらゆる活動をより良い方向に変化させることを指します。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

[ガバナンス]

当社グループは、サステナビリティへの取り組みを経営の基軸に据え、グループ一体となった活動を推進する為、取締役会での決議を経て住友重機械グループサステナビリティ基本方針を策定しております。このサステナビリティ基本方針の下、サステナビリティ委員会が、気候変動や人権リスクをはじめとする主要なESG諸課題への対応施策を決定し、進捗を管理する体制としております。サステナビリティ委員会は、原則、年2回開催され、社長を委員長、サステナビリティ担当役員である企画本部長を副委員長とし、本社担当執行役員、セグメント長、企画本部サステナビリティ推進部長で構成されます。

サステナビリティ委員会における審議事項は、経営の最高意思決定機関である取締役会に適宜報告し、重要事項については決議を受けております。

 

[リスク管理]

当社グループでは、中長期的な時間軸で経営に影響を及ぼし得るESG関連リスクを含め、主要なリスクをリスク管理委員会にて評価し特定しております。リスク管理委員会は、広い事業分野を有する当社グループのリスクについて、事業運営面や技術面、事業管理面など総合的に審議するため、委員長である社長の他、内部統制担当役員や財務担当役員、技術担当役員等の関連する執行役員で構成されております。特定されたESG関連のリスクのうち、「発生可能性」と「影響度」の2軸で評価した結果、対応の重要度が高いと判定されたリスクについては、サステナビリティ委員会にて責任部門や担当役員を決定の上、負の影響を軽減、回避するための取り組みを行っております。

全社のリスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

[戦略]

当社グループは、「社会・ステークホルダーにとっての重要度」と「当社グループにとっての重要度」の双方の視点から、重要課題を2020年に取締役会での決議を経て特定し、2024年1月に見直しました。特定された重要課題は、「環境負荷の低減」「よりよい暮らし・働き方の実現」「従業員の安全・健康・育成」「地域との共存・共栄」「持続可能なサプライチェーンの構築」「ガバナンスの強化」「製品品質の確保」の7項目であります。重要課題への対応を通じて、ステークホルダーの皆様の期待にお応えするとともに、当社グループの持続的な成長を追求しております。

なお、当社グループは、サステナビリティに関する社会動向や、当社グループの事業状況を踏まえ、重要課題を定期的に見直すこととしており、変更があった場合は、統合報告書等で見直し後の重要課題を公表いたします。 

 

[指標及び目標]

当社グループは、特定した7つの重要課題ごとに取り組み項目や、その進捗を図る指標や目標を設定し管理しております。その詳細は下表のとおりであります。

2023年度の実績については、2024年6月末発行予定の統合報告書等にて公表予定であります。 

重要課題

主な取り組み項目

関連する主な指標・目標

環境負荷

の低減

・製品の省エネ・省資源化・最適化
・事業活動における環境負荷低減

・CO2排出量・水使用量・廃棄物発生量

・環境事故発生件数・VOC排出量

 [目標]

・2030年における当社製品製造時のCO2排出量(Scope1、2):50%削減(2019年度比)

・2030年における当社製品使用時のCO2排出量(Scope3 Cat.11):30%削減(2019年度比)

・2050年のカーボンニュートラル達成を目指す

よりよい暮らし・働き方の実現

・製品の自動化、省人化

・製品の安全性向上

・先端技術の製品適用

・自動化、最適化を通した顧客現場の労働負荷軽減

・先端技術を活用した医療高度化、デジタル社会推進

従業員の

安全・健康・育成

・労働安全衛生・健康経営

・人材育成・組織開発

・ワークライフバランスの推進

・ダイバーシティ推進

・社員エンゲージメントの向上

・業務上死亡者数・労働災害度数率

・1人当たりの年間研修時間、費用

〈2027年1月1日までの目標〉

1.女性採用数の拡大

・新規学卒者の採用における女性比率:毎年20%以上

2.女性の積極登用

・取締役に占める女性数:2名

・管理職に占める女性数 

 単体:5.0%超 国内連結:3.7%

3.多様な人材の活用

・管理職に占めるキャリア採用者比率:30%以上

・管理職に占める外国籍社員比率:1.4%

・男性育児休業取得率(制度休暇含む):100%

地域との

共存共栄

・社会貢献活動・寄附

・NGO/NPOとの連携

[目標]

・社会貢献活動支出額:営業利益比1% (2030年)

 (現金寄附、現物寄附、人件費等)

持続可能なサプライチェーンの構築

・CSR調達ガイドラインの策定、サプライヤーへの遵守依頼

・サプライヤー調査の実施

・人権デュー・ディリジェンスの実施

 

[目標]

・潜在的高リスクサプライヤーへのエンゲージメント実施率:100%(2030年)
(高リスクサプライヤー:外国人労働者と当社向け売上高比率により判断、定期的に定義更新)

ガバナンス

の強化

・リスク管理強化

・コンプライアンス徹底

・コーポレート・ガバナンス強化

・BCM/BCP策定

・サプライチェーンマネジメント強化

・コンプライアンス研修受講率
[目標]
・2027年1月における取締役の女性数:2名

製品品質

の確保

 

・品質マネジメント強化

・製品安全の確保

・法令・規制遵守

・主要製造事業部門のISO9001取得率

[目標]

・製品に関する重大なインシデント件数:0件(2030年)

 

 

 

(2) 気候変動

[ガバナンス]

当社グループは、「(1)サステナビリティ全般 [ガバナンス]」に記載のとおり、サステナビリティ委員会にて気候変動関連の対応施策を決定し、進捗を管理する体制としております。サステナビリティ委員会にて決定した施策は、サステナビリティ担当役員である企画本部長を責任者とする、全社横断の気候変動プロジェクトにてグループ内に展開、実施しております。その結果についてはサステナビリティ委員会にて審議の上、経営の最高意思決定機関である取締役会に、原則、年2回報告し、監督を受けております。

[リスク管理]

「(1)サステナビリティ全般 [リスク管理]」に記載のとおり、気候変動リスクなどのESG関連リスクを含め、主要なリスクをリスク管理委員会にて評価・特定しております。その結果、気候変動リスクを全社の重要リスクの一つとして特定し、サステナビリティ委員会及び気候変動プロジェクトにて管理しております。

 

[戦略]

当社グループはパリ協定に沿った長期的な戦略を策定しております。戦略立案の最初のステップとして、気候変動が当社グループに及ぼす影響を評価するにあたり、当社グループ製品に対する気候変動の影響が既に顕在化していることから、直近10年間を対象期間として、1.5℃と4℃の2つのシナリオで分析を実施しております。その結果、規制強化による事業への影響を最大のリスクとして特定しております。詳細は下表のとおりであります。

 

リスクと機会の分析結果

シナリオ

影響度

リスク

機会

主な取り組み

1.5℃

シナリオ (脱炭素

シナリオ)

化石燃料発電規制強化

再生可能エネルギーの需要増加

・石炭火力発電の受注制限

・再生可能エネルギー市場への製品供給

省エネ性能要求増加

省エネ製品需要増加

・省エネ型製品の開発、提供

内燃機関規制強化

電動化、燃料転換

需要増加

・電動化や燃料転換への協力

炭素税、原材料費高騰

省エネ、省資源製品

需要増加

・生産、輸送などのさらなる効率化

・ICPの導入による省エネ設備投資の

 促進や脱炭素に向けた再エネの購入

4℃

シナリオ (温暖化進行シナリオ)

自然災害激甚化

防災インフラ整備

需要増加

災害復旧向け機械装置の需要増加

・製造拠点のBCP強化

海水面上昇(長期)

 

 

 

また、セグメント別の主な施策は以下のとおりであります。

 

セグメント別CO2削減施策

セグメント名称

Scope3定義で当社のCO2削減に

直接カウントできる取り組み

(狭義のCO2削減)

社会全体のCO2削減に

間接的に貢献可能な取り組み

(広義のCO2削減<当社独自の定義>)

メカトロニクス

・電動機の効率改善

・顧客の生産プロセスの電化支援

インダストリアル

マシナリー

・生産プロセスの省エネ化

・軽量化、極低温、超電導技術

・製品材料の削減支援(Scope3上流)

ロジスティックス&

コンストラクション

・内燃機関のエネルギー転換

・林業向け建設機械、木質チップ搬送の

 対応強化

・納入機の燃料転換支援

エネルギー&

ライフライン

・石炭火力発電プラントの受注停止

・蓄電システム事業の拡大

・多機能化による装置集約

 

 

[指標及び目標]

当社グループは、気候変動リスクへの対応の進捗を図る指標としてCO2排出量を設定し、2050年までに当社グループ全体でカーボンニュートラルの実現を目指すことを取締役会で決議しております。また、その実現に向けた中間目標として、2030年までのCO2排出量削減目標を設定しております。詳細は下記のとおりであります。

 

・2030年における当社製品製造時のCO2排出量(Scope1、2)50%削減(2019年度比)

・2030年における当社製品使用時のCO2排出量(Scope3 Cat.11)30%削減(2019年度比)

・2050年のカーボンニュートラル達成を目指す

 

2023年度の実績については、2024年6月末発行予定の統合報告書等にて公表予定であります。 

 


(3)人的資本・人材の多様性

①戦略

当社グループでは、「人材は最大の資本。人と組織の成長・発展こそが事業の持続的成長の源泉」と捉え、人材を経営・事業運営の中核に位置付けております。

特に、人材育成基盤及び組織能力の強化が、人材戦略の主軸であることから重点的に取り組んでおり、「人と組織が互いに成長・発展する環境・風土」への変革を目指して活動しております。これらの考え方の下、社員個人の個性と能力を伸長する教育機会の提供、さまざまな経験や価値観を有する多様な人材が活躍できる組織づくり、これらを実現する基盤となる環境整備のために、以下の施策を継続しております。

 

 

(ア)人の成長(人材育成基盤強化)

当社グループは、社員の自律的な成長やキャリア形成を支援する機会提供に努めると同時に、経営・事業戦略遂行に際して実践に活かせるプログラムの充実などにより人材育成基盤強化を図っていくことが重要であると考えております。加えて、当社グループが持続的に成長していくために、将来にわたり必要な人材を育成していくことが重要な経営課題であると認識しており、以下の取り組みを推進しております。

 
a.社員教育の充実

事業環境の変化に応じたリスキル、専門性深化のためのアップスキルが益々求められることから、組織の成長と社員自らの意思の尊重を同時に実現する社員教育の充実に取り組んでおります。事業戦略に基づくスキル獲得の機会、自ら選択して研修受講できる機会をともに充実させながら、スキルの実践及び定着の仕組を整備し、人材への投資を増やしております。具体的には、必須の階層別研修の最適化、公募式の「SHIオープンカレッジ」の講座数拡大の他、専門技術教育では、機械、電気、制御、情報、生産技術などの分野において、実習を組み込んだ講座を中心に 83講座を開講して拡充を図っております。年代別のキャリア開発研修は2024年度より更に充実して実施し、社員の自律的成長を促進してまいります。

 

b.グローバル人材育成

国内人材のグローバル化を目指し「グローバルタレントプログラム」の運用に着手いたしました。グローバルタレントプログラムでは、グローバルマインドの醸成、ビジネススキルや語学などの教育を通じて、グローバルに活躍できる人材育成に取り組んでまいります。

 

c.DX人材育成

当社グループの製品・サービスを通じて社会や顧客に価値を提供し続けるためには、あらゆる事業領域でDXに取り組むことが重要であると考えております。当社グループは「デジタルの力で、世界中の職場を快適に、携わる人々を幸せに」というDXビジョンを設定し、2022年度に開始したDXリテラシー教育を通じて、グループ全体で事業環境の変化に柔軟に対応するためにデジタル活用の有効性を学んでおります。

 

d.経営人材育成

当社グループ各部門から事業リーダー候補を選抜し「住友重機械グループ・ビジネス・スクール(SBS)」や「経営塾」などによる経営人材育成プログラムを継続しております。本プログラム内では、経営陣との対話、社外リーダーとのセッション、外部コーチの伴走、他社との交流などを通じ、経営リテラシーの習得、経営観の醸成に取り組んでおります。また、人材の資質を測定するアセスメントを実施しており、定量データを活用した適材の発掘、Off-JT教育、アサインメントにより経営人材育成を強化してまいります。

 

 

(イ) 組織の発展(組織能力強化)

当社グループが持続的に成長していくためには、事業戦略を達成するための組織能力の強化・向上が必要不可欠であると考えており、以下の取り組みを推進しております。

 

a.組織開発活動

2020年度より、組織内の当事者が、組織の成長・改善のために自ら考え、主体的に行動する風土の醸成を促進するため「PRIDE PJ(プライドプロジェクト)」と名付けた組織開発活動を全社横断的に行っております。38の事業部門・本社部門・関係会社それぞれに推進事務局を設置し、「対話」と「協働」をキーワードに活動を継続しております。

 

 

b.多様な人材が活躍できる組織づくり

ダイバーシティは当社グループの成長に不可欠な土台と捉え、一人ひとりの個性や属性(年齢、国籍、出身、性別、性自認や性的指向、性表現、障がいの有無など)の違いを尊重し、多様な社員が個人の能力を最大限に発揮しいきいきと活躍できる組織風土の醸成・職場環境整備に努めております。当社グループは「住友重機械グループダイバーシティ推進宣言」を策定し、「意識啓もう」、「制度改定」、「環境改善」の3つを施策の柱として取り組みを推進しております。

女性活躍推進

当社グループは、女性活躍推進は中長期的な成長の鍵であると考えており、経営課題の1つとしております。女性管理職育成強化のため、女性社員本人やその上司との面談を通じたキャリア形成支援活動を行っている他、管理職向けにダイバーシティマネジメント研修など学びの場を提供しております。加えて、女性管理職育成強化施策としてNPO法人J-Winへ社員を派遣し、キャリアアップ意識の向上を図っております。

男性社員の育休取得促進

当社グループは、男性社員の育児休業取得促進は働き方改革や多様な視点を持つことに繋がると考えており、重要な施策の1つと認識しております。男性社員が育児休業を取得しやすい社内風土醸成のため、2023年2月に株式会社ワーク・ライフバランスが推進する「男性育休100%宣言」に賛同するなど、活動を強化しております。

障がい者雇用

当社グループは、障がい者がいきいきと働くことができる職場づくりが多様性確保のための重要な施策だと考えております。障がい者が能力を発揮できる職場環境を作るため、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社の認定取得を前提として2023年9月に住重ウィル株式会社を設立しました。社名には、一人ひとりが『こうなりたい』『こうしたい』というWILLを持ち、仲間と目標を達成する喜びを分かち合い、お客様や社会への貢献を実感できる会社にしたいという想いが込められております。

LGBT当事者の働き

やすさのための取り組み

当社グループは、性自認・性的指向・性表現の違いも尊重し、セクシュアルマイノリティも含めた多様な人材が活躍できる職場づくりが成長の土台であると考えております。LGBT当事者が働きやすい環境づくりのため、全社員向けに理解促進のための小冊子の配布、社内報などでの関連情報の発信、希望者向けの講演会実施など教育・啓発を行うとともに、同性パートナーへの社内制度適用拡大を行いました。さらに、トランスジェンダーなどに配慮し多目的トイレを「だれでもトイレ」へと名称変更した上で、「だれでもトイレ」内に着替え用フィッティングボードを設置するなど、ジェンダーインクルーシブな社内設備の整備にも努めております。その結果、LGBTQ+に関する取り組みを評価する「PRIDE指標」で最高位であるゴールドを受賞しました。

 

 

 

(ウ)環境整備

不連続かつ不確実な時代において当社グループが持続的に成長していくには、人の成長と組織の発展を育む基盤となる環境整備が重要であると捉えており、以下の取り組みを推進しております。

 

a.人事諸制度改定の推進

①社員の主体的な行動を後押しすること、②多様な人材の活躍を推進すること、③役割・職務と成果に報いることの3点を基本方針とし、人事諸制度の改定を推進しております。具体的には、人事・賃金・退職金制度改定の他、社員の自己実現や自律的なキャリア形成、本業への還元・イノベーションを目的として、一定の要件を満たした場合に副業を認める「プラスキャリア制度」の導入、前述のとおりLGBT当事者が働きやすい環境づくりの一環として同性パートナーへの社内制度適用拡大などを行ってきました。

 

b.チャレンジ制度

当社グループは、「社員のチャレンジ精神の育成」及び「未来商品・技術への投資」を目的として、「チャレンジ制度」を全社に展開しております。会社が課題を与えるのではなく、社員自らが実現したいテーマで応募することで、当社グループの将来を担う技術、アイデア、商品の構想を持つ社員に対し「夢を実現する場」を提供し、社員のチャレンジ精神を育成するとともに、未来商品・技術の創出に挑戦しております。

 

c.社員の健康と安全に関する取り組み

当社グループが持続的に成長し続けるためには、社員一人ひとりが心身の健康を維持して働き続けられるよう、健康管理体制を整備することが不可欠だと考えております。当社グループでは「住友重機械グループ健康宣言」を定め、社長を健康経営責任者として、データヘルスやメンタルヘルス対策の推進、循環器疾患対策などのさまざまな健康支援施策を推進しております。また、当社グループの企業活動に関わるすべての人の安全、安心を守るため安全最優先の行動できるよう「住友重機械グループ安全衛生基本理念」を定め、一人ひとりがいきいきと働ける職場作りを推進しております。当社は社員の健康増進を目的とし、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人」(大規模法人部門)に2021年以来、連続して認定されております。

 

②指標及び目標

当社グループでは、上記「①戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。

 
(ア)人の成長(人材育成基盤強化)に関する指標及び目標

各指標はいずれも2026年度までの達成目標としております。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

a.社員教育の充実

一人当たりの研修時間

国内連結

2024年度比+20%

10.9時間(注)

一人当たりの研修費用

69,305円

b.グローバル人材育成

グローバルタレント

プログラム受講者数

国内連結:360名

2024年度より開始予定

c.DX人材育成

DXリテラシー教育

受講率

国内連結:毎年100%

97.9%

 

(注)2023年度は本社主催の主な研修を対象に算定、2024年度より国内連結の全研修を対象として算定する予定であります。

 

(イ)組織の発展(組織能力強化)に関する指標及び目標

各指標はいずれも2027年1月1日までの目標としております。

指標

目標

実績

(当連結会計年度)

a.女性取締役数

2名

1名

b.女性管理職比率

国内連結:3.7%

単体:5.0%超

国内連結:2.1%

単体:2.8%

c.管理職に占める

  キャリア採用者比率

30%以上

25.3%

d.管理職に占める

  外国籍社員比率

1.4%

0.2%

e.男性育休取得率

国内連結:100%

単体:100%の継続

国内連結:85.3%

単体:100.0%

 

 

(ウ)環境整備に関する指標及び目標

指標

目標

実績

(当連結会計年度)

a.社員エンゲージメントの向上

日本製造業平均(注1)

隔年調査のため当連結会計年度は実績なし(注1)

b.業務上死亡者数

連結:0件

連結:0件

c.喫煙率

国内連結:25%以下を維持

国内連結:26.4%

d.循環器疾患入院率

0.9%以下を維持

0.7%(注2)

 

(注1)直近調査である2022年度の実績は48%、日本製造業平均は55%(コーン・フェリー社グローバルエンゲージメント調査ベンチマークデータより)

(注2)2023年9月末実績

 

3 【事業等のリスク】

(1)当社グループのリスク管理活動について

当社グループでは、リスクの顕在化の低減に向けたリスクの未然防止・予防に重点を置き、リスク管理委員会の統括によりリスク抽出、リスク評価、リスク対策、リスク管理のモニタリングなどの全社的リスク管理体制を構築し、リスク管理を推進しています。

 

(2)事業等のリスク

当社グループの経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

  ① 経済状況

当社グループの売上高のうち大半を占める資本財に対する需要は、当社グループが販売している国内、海外諸地域の経済状況の影響を受けます。したがって日本、アジア、北米及び欧州その他の当社製品の主要市場における景気後退とそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策等の詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概況 ① 経営成績の状況」をご参照ください。

 

 ② 海外事業

当社グループは、北米、アジア及び欧州を中心にグローバルに事業を展開しており、当社グループ製品の海外需要の増加に対応するため、販売網の整備、生産設備とサプライチェーンの拡充を行っております。しかしながら、昨今の国際情勢は、変動が激しく、各国や各地域における紛争、政治的変動、法律・規制の制定や変更など地政学リスクや経済安全保障に係る問題が顕在化し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③ 為替相場の変動

当社グループの事業には、世界各国での製品の生産と販売が含まれております。各地域における売上、費用、資産及び負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。これらの項目は、現地通貨における価値が変わらなかったとしても、換算時のレートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、為替相場の変動は外貨建てで販売する製品及び調達する資材の価格に影響を与える可能性があります。これに対し当社グループはグローバルに生産拠点を配置して現地生産を行い、この変動リスクを軽減するよう努めております。さらに為替先物予約などを利用したリスクヘッジも行っておりますが、依然として当社グループの業績は為替変動により影響を受ける可能性があります。

 

 ④ 製品の品質

当社グループは、高い品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。しかし、全ての製品について欠陥が無く、これに起因する当社グループ負担の保証工事が発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償につきましては保険に加入しておりますが、この保険が全ての賠償額をカバーできるという保証はありません。品質問題から起こった当社グループ負担の保証工事や製造物賠償責任は、多額なコストの発生により当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑤ 個別受注契約

当社グループは、お客様と個別に受注契約を締結した後に製品を生産する場合が多く、請負金額が大きい工事等の重要な案件につきましては、受注契約締結前の多面的な受注検討を行っております。しかし、当初想定できなかった経済情勢の変動、設計や工程の混乱等による当初見積り以上のコストの発生、訴訟等の提起、製品の性能・納期上の問題によるペナルティーの支払い等の可能性があり、その結果として業績の悪化を招くおそれがあります。また、お客様都合による受注契約取り消しのケースでは、受注契約条件において違約金の設定などリスク回避の努力を最大限に行っておりますが、発生したコストの全額が回収できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑥ 減損会計の影響

当社は、「土地の再評価に関する法律」(1998年3月31日公布法律第34号)及び「土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律」(2001年3月31日公布法律第19号)に基づき、2002年3月31日に事業用の土地の再評価をしております。再評価を行った土地の当期末における時価と再評価後の帳簿価額との差額は174億円(下落率20%)でありますが、今後地価が一層下落した場合や、資産又は資産グループの帳簿価額が回収できない可能性を示す事象が発生した場合、固定資産の減損を認識する可能性があります。減損を認識した場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また海外でのM&Aなど成長のための投資を積極的に実施した結果、上記土地以外の有形固定資産、のれん及びその他無形固定資産を多額に計上しています。今後、収益性の低下等により、固定資産の減損を認識する可能性があります。

当連結会計年度に計上した減損損失につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結損益計算書関係)※7 減損損失」をご参照ください。

 

 ⑦ 法令・規制

当社グループは、事業活動を行っている国及び地域で各種の法令・規則の適用を受けており、これらの国及び地域での法令・規則を遵守し公正な企業活動に努めております。しかしながら、法令・規則の強化や改正に対する対応の不備等により法令・規制に違反した場合は、課徴金、営業停止等の行政処分、あるいはそれに伴う社会的信用の低下によって当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社の子会社である住友重機械搬送システム株式会社は、2023年9月12日に、機械式駐車装置の製造販売に関し独占禁止法違反の疑いがあるとして、公正取引委員会の立入検査を受けました。当社は、この事実を真摯に受け止め、公正取引委員会の調査に全面的に協力しております。

 

 ⑧ 情報セキュリティ

当社グループは、事業活動において、自社だけでなく顧客及び取引先の営業・技術情報や個人情報等を取り扱っております。これらの情報を伝達、処理、保存するために、当社グループではグローバルに様々な情報システムを構築するとともに、サイバー攻撃等による不正アクセスや情報漏洩等を防ぐため、管理体制を構築し適切なセキュリティ対策を講じております。

しかし、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃等により、情報システムの停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、競争優位性の低下、社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑨ 気候変動

世界のCO2の排出量の増加による地球温暖化は、大型台風や集中豪雨等の自然災害の激甚化・増加、平均気温の上昇による猛暑等による職場労働環境への影響等、様々な影響をもたらします。商品・設備の低炭素、脱炭素への移行に向けて、当社の商品やサービスの研究・開発、生産など、経営全般に亘って当社グループに影響をもたらします。又、これらは、当社グループのみならず、当社グループのサプライチェーンへの影響を通じて、当社グループに影響を及ぼす可能性もあります。

対応策等の詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

   自然災害への取組み及び環境保全への取り組みは⑩及び⑪をご参照ください。

 

 ⑩ 自然災害及び感染症

当社グループは火災、地震、台風、風水害及び感染症などの各種災害に対して損害の発生及び拡大を最小限に抑えるために点検、訓練及び連絡体制の整備を行っております。しかしながら、これら災害による物的・人的被害により当社グループの活動が影響を受ける可能性があります。これらによる損害額が損害保険等で十分にカバーされる保証はなく、当社グループの業績や財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ⑪ 環境保全

当社グループは「住友重機械グループ環境方針」のもと、環境リスクの回避や廃棄物のミニマム化など環境負荷低減に取り組んでおります。環境汚染防止に対しては万全の体制をもって臨んでおりますが、不測の事態等により環境汚染が発生する可能性があります。環境汚染が発生した場合は多額のコストの発生により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。


⑫ 人権

当社グループは「住友重機械グループ人権方針」を制定し、事業活動全般にわたる人権尊重の取組みを推進しております。しかしながら、当社グループの事業活動において、当社グループのみならずサプライチェーン含めて人権に関して適切な対応が取られていない事態が発生した場合は、社会的信用の失墜、お客様との取引停止、損害賠償請求などによって、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1)経営成績等の状況の概況

当社は前連結会計年度より決算日を3月31日から12月31日に変更しております。決算期変更の経過期間となる前連結会計年度は、当社及び3月決算であった連結子会社は2022年4月1日から2022年12月31日の9か月間を、12月決算であった連結子会社は2022年1月1日から2022年12月31日の12か月間を連結対象期間とする変則的な決算としております。このため、当連結会計年度と同一期間となるように組み替えた前期(以下「調整後前期」という。)による比較情報を記載しております。

 

① 経営成績の状況

 当期における当社グループを取り巻く経営環境は、国内においては、一部底堅い分野があるものの、製造業を中心に設備投資は力強さを欠き、半導体市況の調整局面が続くなど、全般に弱さが見られました。海外においては、米国などで景気が緩やかに回復し、設備投資も堅調に推移する一方、欧州ではインフレ進展による経済減速、東南アジアにおいても投資マインドの低下が見られました。中国においては、不動産市況の悪化により生産、消費の持ち直しの動きが鈍く、需要の減少が続いています。また、調達品の需給逼迫が緩和する中、一部資材の価格上昇は継続、加えてロシア・ウクライナ問題などの地政学上リスクが残るなど、依然として不透明感が高い状態でもありました。

 このような経営環境のもと、当社グループは「中期経営計画2023」を推進し、製品・サービスによる社会課題解決を通じて持続的に企業価値を拡大することをめざし、強靭な事業体の構築、企業価値向上のための変革、SDGsへの貢献拡大及び環境負荷低減への取組み強化などの施策を推進してまいりました。

 この結果、当社グループの受注高は1兆87億円、売上高は1兆815億円となりました。損益面につきましては、営業利益は744億円、経常利益は702億円となりましたが、多額の特別損失を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は327億円となりました。特別損失は主に、開発を進めていた基幹システムの開発計画の変更によって、ソフトウェア資産(建設仮勘定)の資産性を再検討した結果、減損損失として115億円計上したものであります。また、当社の連結子会社である住友建機(唐山)有限公司において、中国における事業環境の変化により、当初予定していた収益が見込めなくなったため、同社が保有する固定資産69億円について、減損損失として計上したものであります。

 また、ROICは7.0%となりました。

 

② セグメント別の状況

各部門の経営成績は次のとおりであります。

a.メカトロニクス
 中小型の減・変速機やモータの需要が、欧米での顧客の在庫調整の影響や、中国での市況の低迷により停滞したことから受注は減少しました。一方、受注残があったこともあり、売上、営業利益ともに増加しました。

 この結果、受注高は1,978億円(調整後前期比10%減)、売上高は2,200億円(調整後前期比11%増)、営業利益は124億円(調整後前期比35%増)となりました。

 

b.インダストリアル マシナリー

プラスチック加工機械事業は、中国では電気電子関連の需要が停滞し、国内や欧州においても投資の冷え込みにより受注、売上、営業利益は減少しました。

その他の事業は、半導体市況軟化に伴う顧客の在庫調整や投資先送りの影響などを受け、受注は減少しましたが、受注残があったこともあり、売上、営業利益ともに増加しました。

この結果、受注高は2,650億円(調整後前期比19%減)、売上高は2,798億円(調整後前期比6%増)、営業利益は256億円(調整後前期比3%減)となりました。

 

c.ロジスティックス&コンストラクション

油圧ショベル事業は、米国での前期の先行発注の反動減などにより受注は減少したものの、受注残があったこともあり売上、営業利益ともに増加しました。

その他の事業では、建設用クレーン事業が、北米の需要が底堅く推移したことから受注、売上ともに増加しました。営業利益は固定費の増加などにより前期並みとなりました。また、運搬機械事業は、港湾クレーンでの大型案件があったことから受注は増加したものの、当期売上対象となる案件が少なかったことから売上、営業利益とも減少しました。

この結果、受注高は3,936億円(調整後前期比5%減)、売上高は3,934億円(調整後前期比10%増)、営業利益は281億円(調整後前期比70%増)となりました。

 

d.エネルギー&ライフライン

 エネルギープラント事業は、国内のバイオマス発電設備の大型案件の減少により受注、売上は減少したものの、欧州での大型プロジェクトにおける不採算案件の減少などにより営業利益は増加しました。

 その他の事業は、前期に実施した一般廃棄物処理事業の譲渡の影響などにより受注、売上、営業利益とも減少しました。

 この結果、受注高は1,463億円(調整後前期比25%減)、売上高は1,822億円(調整後前期比6%減)、営業利益は63億円(調整後前期比13%増)となりました。

 

e.その他

受注高は調整後前期並みの60億円、売上高は61億円(調整後前期比9%増)、営業利益は19億円(調整後前期比11%減)となりました。

 

③ 財政状態の状況

総資産は、前連結会計年度末に比べて520億円増の1兆2,009億円となりました。これは、ソフトウェア資産(建設仮勘定)の減損等に伴い無形固定資産が110億円減少した一方で、売上規模の拡大に伴い棚卸資産が456億円、有形固定資産が151億円、それぞれ増加したことなどによるものであります。

負債合計は、契約負債が124億円減少した一方、未払法人税等が108億円増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて14億円増の5,734億円となりました。

純資産は、円安に伴い為替換算調整勘定が216億円、利益剰余金が200億円、それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて505億円増の6,275億円となりました。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.1ポイント増加し、51.6%となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ65億円増加し、1,002億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

なお、前連結会計年度は、決算期変更に伴い、当社及び3月決算であった連結子会社は2022年4月1日から2022年12月31日の9か月間を、12月決算であった連結子会社は2022年1月1日から2022年12月31日の12か月間を連結対象期間とする変則的な決算としております。このため、対前期増減については記載しておりません。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、654億円の資金の増加となりました。

収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益514億円、減価償却費364億円であります。支出の主な内訳は、売上規模の拡大に伴う棚卸資産の増加額377億円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、433億円の資金の減少となりました。支出の主な内訳は、有形及び無形固定資産の取得による支出395億円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、172億円の資金の減少となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額129億円であります。

 

(2)生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
なお、当社は前連結会計年度より決算日を3月31日から12月31日に変更しております。決算期変更の経過期間となる前連結会計年度は、当社及び3月決算であった連結子会社は2022年4月1日から2022年12月31日の9か月間を、12月決算であった連結子会社は2022年1月1日から2022年12月31日の12か月間を連結対象期間とする変則的な決算としております。このため参考値として、当連結会計年度と同一期間となるように組み替えた前期(以下「調整後前期比(%)」という。)による比較情報を下記に表示しております。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

調整後前期比(%)

メカトロニクス

225,137

△1.9

インダストリアル マシナリー

294,165

7.6

ロジスティックス&コンストラクション

437,212

21.3

エネルギー&ライフライン

179,237

△7.2

その他

5,965

△1.4

合計

1,141,715

7.5

 

(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

調整後前期比(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

メカトロニクス

197,786

△10.3

90,383

△19.8

インダストリアル マシナリー

264,958

△19.2

179,664

△7.6

ロジスティックス&コンストラクション

393,593

△5.4

253,244

0.1

エネルギー&ライフライン

146,350

△24.7

226,509

△13.6

その他

5,977

0.1

1,647

△6.0

合計

1,008,663

△13.4

751,447

△8.8

 

(注)セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

調整後前期比(%)

メカトロニクス

220,044

11.2

インダストリアル マシナリー

279,830

5.9

ロジスティックス&コンストラクション

393,422

10.2

エネルギー&ライフライン

182,155

△5.8

その他

6,081

9.3

合計

1,081,533

6.2

 

(注)セグメント間の取引につきましては、相殺消去しております。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討結果は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する分析・検討内容

当社グループの連結会計年度の経営成績等の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概況」に記載のとおりであります。

 

② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社は事業活動に必要な手元流動性について、現金及び現金同等物及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけています。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,002億円となりました。当社は複数の金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しており、当連結会計年度末の未使用のコミットメントラインの総額は900億円であります。現預金、未使用のコミットメントライン額の合計で1,902億円を確保しており、当社の手元流動性は十分に確保されていると考えております。
 当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、M&Aなどの長期資金需要と当社グループの製品製造のための材料及び部品の購入などの運転資金需要であります。
 資金の調達については、調達コストの低減と資金の安定調達の観点から、社債、コマーシャル・ペーパー等の直接金融と銀行借入等の間接金融の比率や、調達期間の分散を図りながら、その時々のマーケットの状況から有利な調達手段を機動的に選択・活用しております。その結果、有利子負債残高は前連結会計年度末より15億円増加し1,622億円となりました。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されており、連結財務諸表の作成にあたっての重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び、「第5 経理の状況 2 財務諸表等(重要な会計方針)」に記載しております。

また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。

会計上の見積りが必要となる項目のうち、特に当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は以下のとおりであります。

 

 

a.一定の期間にわたり充足される履行義務に係る工事原価総額

当社グループは、一定の期間にわたり充足される履行義務につきましては、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。進捗度の見積りは主に原価比例法を用いており、原価比例法においては、実施した工事に関して発生した工事原価が見積工事原価総額に占める割合をもって工事の進捗度としております。当初想定できなかった経済情勢の変動やプロジェクトごとの進捗状況等によって当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を与える可能性があります。

 

b.受注工事損失引当金

当社グループは、未引渡工事のうち、期末時点で大幅な損失の発生する可能性が高いと見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることが可能な工事について、翌期以降の損失見積額を受注工事損失引当として計上しております。受注工事損失引当金の見積りを行っていますが、当初想定できなかった経済情勢の変動やプロジェクトごとの進捗状況等により、受注工事損失引当金の金額に影響を与える可能性があります。

 

c.有形固定資産、のれん及びその他無形固定資産の減損

当社グループは、減損損失の認識の判定及び測定を行う単位として資産のグルーピングを行い、減損損失を認識する必要のある資産又は資産グループについて、その帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上することとしております。将来の当該資産又は資産グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動により、回収可能価額を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の金額に影響を与える可能性があります。

 

d.繰延税金資産

当社グループの繰延税金資産の回収可能性は、将来の収益力やタックスプランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得の発生状況等に基づき判断しております。当該見積り及び当該仮定において、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において認識する繰延税金資産の金額に影響を与える可能性があります。

 

e.貸倒引当金

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権につきましては、貸倒実績率により貸倒引当金を計上しております。また、貸倒懸念債権及び破産更生債権につきましては、個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しております。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、貸倒引当金又は貸倒損失の金額に影響を与える可能性があります。

 

④ 経営者視点による経営成績等の状況に関する分析・検討

当社グループは、2024年度を初年度とする3か年の中期経営計画「中期経営計画2026」に基づき、あらゆるステークホルダーの期待に応え、企業価値を持続的に高めるため、ROIC経営を継続してまいります。

「中期経営計画2026」の詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な経営戦略、目標とする経営指標及び会社の対処すべき課題」を参照ください。

「中期経営計画2026」財務目標及び、現時点での2024年12月期の業績予想は以下のとおりであります。

「中期経営計画2026」

2023年度実績

2024年度予想

2026年度目標

受注高

10,087億円

11,200億円

12,800億円

売上高

10,815億円

11,100億円

12,500億円

営業利益率

(営業利益)

6.9%

(744億円)

6.3%

(700億円)

8.0%
(1,000億円)

ROIC

7.0%

6.2%

8.0%

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 主要技術導入契約

(提出会社)

契約締結先(国籍)

契約項目

対価

契約有効期間

GE HealthCare

Technologies Inc.(米国)

医療診断用粒子加速器の
設計・製作技術

(1) イニシャルペイメント

(2) アディショナルペイメント

1998年12月29日~
無期限

Sumitomo SHI FW Energie
B.V.(オランダ)

循環流動層ボイラの設計・
製作技術

(1) イニシャルペイメント

(2) ロイヤルティ

(3) 技師招聘費

2021年12月13日~

2041年12月12日

BAE Systems Bofors AB
(スウェーデン)

40ミリ機関砲の設計・
製作技術

(1) イニシャルペイメント

(2) ロイヤルティ

(3) 技師招聘費

2003年6月18日~
2026年6月21日

 

 

(2) 主要技術供与契約

(連結子会社)

会社名

契約締結先
(国籍)

契約項目

対価

契約有効期間

住友建機㈱

CNH Industrial N.V.
(オランダ)

油圧ショベルの製造・
組立技術

(1) イニシャルペイメント

(2) ロイヤルティ

2014年5月12日~
2027年6月30日

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、一流の商品とサービスの提供を通して社会に貢献することを目指しております。持続的競争優位に向け、「品質」「性能」「収益性」「社会課題解決レベル」を確実に向上させる新商品開発、機種技術開発に取り組んでおります。技術開発の重点領域として「自動化・デジタライゼーション」「環境・エネルギー」に注力しております。また、「機種技術」「基盤技術」「未来商品技術」「生産技術」も継続して強化を行っております。
 当連結会計年度の研究開発投資総額は248億円であり、セグメントごとの主な研究開発成果は次のとおりであります。

 

(1) メカトロニクス

減・変速機事業につきましては、減速機の技術とサーボ制御技術を組み合わせたAGV/AMR用ドライブソリューション「smartris(スマートリス)」のプロジェクトチームが、昨年の「2022年"超"モノづくり部品大賞」での受賞に続き、日本電機工業会(JEMA)による「電機工業技術功績者表彰」において、重電部門優良賞を受賞しました。AGV/AMRの需要増加に伴って生じる新たな顧客ニーズに応えるべく、引き続き、シリーズの拡張・改良を行い、物流現場や製造工場における搬送の自動化、省人化に貢献してまいります。
 小型超精密XYステージにつきましては、スタック型真空エアサーボステージ「CS-230」を市場投入しました。従来のCAシリーズと同様のエアガイド機構とエア駆動制御で、スタック型を採用することで、高精度な位置決めとフットプリントの小型化を実現しました。半導体製造プロセスでの微細化と真空設備のCOO(Cost of Ownership)の低減に貢献いたします。
 外観検査装置につきましては、好評を頂いている「KITOV CORE」、「KITOV CORE+」に続いて、カメラユニットを独立させた「KITOV-S」の販売を開始しました。コンベア上部にカメラユニットを固定配置させることが可能で、お客さまの生産ラインの大幅な変更を行わずに製品の外観検査システムの導入が可能となり、製品歩留まり改善に貢献いたします。
 レーザ溶接モニターにつきましては、「Z'eye」後継機を販売開始しました。従来の溶接モニターに比べ、専用コントローラとタッチパネルを採用することで、小型化と操作性の改善を行いました。また、ガルバノスキャナーを用いた溶接にも対応が可能で、お客様での溶接品質確保に貢献いたします

当該部門に係る研究開発費は38億円であります。

 

(2) インダストリアル マシナリー

プラスチック加工機械につきましては、成形環境のサステナビリティを実現する全電動射出成形機「SE-EV-Sシリーズ(小型機)」と「SE-EV-S-HDシリーズ(中型機)」を市場投入しました。同製品は、一般的な電動機からの入替でも大きな節電効果を生む省エネ性能を追求し、かつ、不良低減と省エネ操業を支援するガイダンス機能や省エネに寄与する機能を拡充し、成形環境のサステナビリティ対応をさらに高めていきます。また、国際標準通信規格OPC-UAにも標準対応することで、より多様なシステム連携を可能にし、成形機と周辺機の連携を行う各種M2Mソリューションにより段取り時間の短縮や手間の低減、作業ミスを抑止します。さらに、新安全規格JIS B6711:2021(国際安全規格 ISO20430 2020)に適合します。安全性確保により、人と設備を守り、顧客の事業活動の持続に寄与します。

精密機器につきましては、従来の4KGM冷凍機と比較して4.2Kにて大容量冷凍能力かつ高効率であるGMJT冷凍機を開発しました。本機はGM冷凍機を予冷機としたJT冷凍サイクルを用いており、4.2Kでの冷凍能力9.0Wを達成しました。大型の超電導マグネットや加速器冷却用途などの先端技術分野にて、大容量冷凍能力と省エネ性での貢献が期待されます。

医療分野につきましては、「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のための中性子照射量の高精度制御装置の発明(特許第5410608号)」が、顕著な実施効果を挙げていることが評価され、令和5年度全国発明表彰発明賞を受賞しました。また、前立腺がん診断用標識化合物(PSMA)合成装置開発に成功しました。前立腺がん細胞の表面に存在する目印(PSMA)を検出することで、患者さんに適切な治療が提供できると期待されている診断手法で、本装置は第I相の医師主導治験において安全性を確認中であります。前立腺がんは本邦でも男性が罹患するがんの第1位であります。健康で長生きできる社会の実現を目指してがん治療に貢献していきます。

金属加工分野につきましては、自動車ボディ骨格構造を革新する新たな成形プロセス「STAF(Steel Tube Air Forming)」において、試作メーカへ導入したSTAF設備が稼働したことやSTAFパーツが実車搭載され、実用化された点を認められ、第52回日本産業技術大賞と第73回自動車技術会賞を受賞しました。

 

環境機器につきましては、高温ガス処理を可能とした集塵機用ろ材「アルテン350」を市場投入しました。従来品を100℃上回る布状のろ材で350℃までのガス処理が可能となりました。ケミカルリサイクル、熱回収など新たな分野での採用が期待されます。同ろ材を採用した省エネ集塵機「アルテンパルサー」と併せてサステナブルな社会に貢献していきます。

当該部門に係る研究開発費は109億円であります。

 

(3) ロジスティックス&コンストラクション

物流/運搬荷役機械や土木建設機械に対する社会課題解決(環境負荷軽減、働き方改革、オペレータ不足等)への要請は高まり、物流/運搬荷役機械で先行した電動化/省エネルギー化、遠隔・自動化、高効率化は土木建設機械へも広がり、新商品開発を更に推進し社会インフラを支えてまいります。

油圧ショベルにつきましては、新機能を搭載したフルモデルチェンジ機種である「220X4s(SH200-8)」を北米市場へ投入しました。ダンプトラックへの積込み作業の効率向上と過積載の防止を実現できるペイロード機能や、作業時の安全性を向上させる挙動安定化機能などを搭載し、お客様の施工効率と安全性の向上を実現しています。今後同機種を国内、欧州市場へ順次投入予定であります。また、北米向け林業機2機種、中国向け排ガス規制(GB4)対応機2機種の開発を行い市場投入しました。自動化、無人化に向けた取り組みとしては、遠隔操作・自律運転ショベルの研究開発、カーボンニュートラルへ向けた取り組みとしては、電動ショベルにおける高効率化(低電費化)と操作性向上に関する研究開発を進めております。CSPI-EXPO(建設・測量生産性向上展)にてショベルのダンプ自律積込みと自律法面整形作業のビデオ展示及び7.5tクラスの電動ショベル研究機を参考出展しました。来場者様から多くの質問、関心を頂き、当社の取り組みをアピールすることができました。

道路機械につきましては、市場要望に沿って仕様追加の改良をおこなった機械(HA90C-3)、中国排ガス規制(GB4)に対応した機種(HA60W/C-10)を中国へ市場投入しました。自動化、無人化や安全性向上へ向けた取り組みとしては、同CSPI-EXPOで自動ステアリング・自動スクリード伸縮の研究機のデモンストレーションを行いました。多くの業界関係者様から高評価を頂いており、実現場での実証の後、市場導入へと進める事を計画しております。

クローラクレーンにつきましては建設機械向けエンジンとして世界で最も厳しい規格であるEUstageV排ガス規制に適合した最大つり上げ能力275トンのSCX2800A-3を海外向けに発売しました。ECOウインチモードや自動アイドルストップ機能などのエネルギー効率を高める高度な制御システムと併せて、経済性・環境保全性に貢献します。また、SCX3500-3が日本製クローラクレーンとして初めてリニューアブルディーゼルを使用して稼働を開始しました。このリニューアブルディーゼルは当社のオフロード法2006年規制以降の基準に適合したエンジンを搭載するクローラクレーン及び基礎機械に使用可能で、サステナブルな社会の実現に向けて貢献します。

運搬荷役機械につきましては、コンテナ港湾荷役に使用されるタイヤ式門形クレーン(RTG)において、国内外で労働環境を改善するため遠隔自動化を実現する商品(ARTG)を提供する一方、省エネルギー化を実現するハイブリッド駆動装置(SYBRID SYSTEM)を市場投入し実績を多数積み重ね、改善を進めてきました。更に省エネルギー性能をブラッシュアップした新型ハイブリッド駆動装置を開発し市場投入しました。将来的に、搭載するエンジン発電機をFC(燃料電池)へ換装することでCO2排出ゼロを実現、カーボンニュートラルポートへ貢献していきます。

物流機械につきましては、好評を頂いている高密度自動倉庫に対して、その周辺工程を含めた作業効率を向上させるためのAGF(Automated Guided Forklift)を独自開発し市場投入しました。更に次ステップとして、人との協調作業も可能となる安全性を担保できる自律・自動化商品の開発を進めており、市場の要請に応えてまいります。

当該部門に係る研究開発費は66億円であります。

 

(4) エネルギー&ライフライン

発電用ボイラにつきましては、循環流動層(CFB)ボイラのプラント運用支援として、データ収集・解析、運転アドバイスや最適化を図れる「IZANA」を開発し、客先での運用を開始しました。異常検知やプロセスモニタリングによる運転評価等、客先の要求に応じたデータの提供が可能であります

排水処理設備につきまして、下水処理場における沈殿池設備向けかき寄せ機として耐硫酸性樹脂チェーンフライト式汚泥かき寄せ機「SRノッチ」の改良を行い市場へ投入しました。下水処理施設の劣悪な環境に強い装置として耐久性を向上することでさらなる顧客貢献が期待できます。

 

蒸気タービンにつきましては、21年度に10MW以下をターゲットとして市場投入した高性能で価格を抑えた小型長翼機(Mシリーズ)を、23年度は20MWクラスの中型領域まで拡大し市場投入、小型・中型それぞれの領域で受注に至りました。なお、中型領域では高圧段への反動翼搭載と合わせて高効率モデルとして受注しており、脱炭素に向けた高効率化ニーズへの対応力を更に高めたモデルになっております

化工機につきましては、中~高粘度液の粒子微粒化装置「NANOVisK」が、ラボ機からパイロット機へ着実に使用拡大しております。また、セルロースなどのバイオマス由来の素材やゲル素材の撹拌に優れた「HELIXBLEND」を市場投入しました。更なる商品力強化として、顧客の安定操業に貢献する状態監視サービスを開始いたしました。

船舶につきましては、中期的なタンカー市場の変化に対応し、かつ、厳しい新環境規則にも適合した顧客にとって収益性の高い中型タンカーが好評を得ております。新燃料につきましてはLNG、メタノール燃料船に対する船級の設計基本承認(AIP)を取得済みであります。また、塗装技術や溶接技術のほか、生産管理の高度化にも取り組み、更なる品質と生産性の向上を実現しました。船舶監視システム「AVEDAS」の機能拡張として開発済みであった船体応力モニタリングシステム「AVEDAS HULL」を建造船に搭載し、船体構造応力を常時監視することで運航安全性を高めると同時に、疲労強度の蓄積データから船体構造の残存寿命を予測することで中古船価値の見える化などの新しい顧客価値が期待されます。

当該部門に係る研究開発費は34億円であります。

 

(smartrisは、住友重機械工業㈱の登録商標であります)
 (Z'eyeは、住友重機械工業㈱の登録商標であります)

(STAFは、住友重機械工業㈱の登録商標であります)

(アルテン350及びアルテンパルサーは、商標出願中であります)

(SYBRID SYSTEMは、住友重機械搬送システム㈱の登録商標であります)

(IZANAは、住友重機械工業㈱の登録商標であります)

(SRノッチは、住友重機械エンバイロメント㈱の登録商標であります)

(NANOVisKは、住友重機械プロセス機器㈱の登録商標であります)

(AVEDASは、住友重機械マリンエンジニアリング㈱の登録商標であります)