第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出時点において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営方針

当社は、「デジタルトランスフォーメーションを加速する」というミッションのもと、製品・技術開発に尽力してまいりましたが、(3) 経営環境に記載した当社を取り巻く環境の変化に対応するため、再生可能エネルギー関連製品をワンストップで提供する「GXサービス事業」に参入し、「テクノロジーで持続可能な未来を築く会社」に変革してまいります。

この変革に伴い、これまでの事業領域の区分を見直し、再生可能エネルギー関連製品をワンストップで提供する「GXサービス事業」、AIとシステムで情報活用可能なサービスを提供する「DXサービス事業」、競争力の高い自社テクノロジー製品をライセンスする「テクノロジーライセンス事業」を展開してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、中長期的な事業拡大と企業価値向上のため、営業利益を重要な指標としております。また、顧客別、製品別の売上および出荷台数を重要な構成要素として重要な指標としております。

 

(3) 経営環境

当社は、自社保有技術を活用したテクノロジーソフトウェア・サービス開発を強みとし、ライセンス提供することを主な事業としてきました。しかしながら、当社の主戦場としているパソコン・デジタル家電領域では、消費者ニーズの変化や製品のコモディティ化が進んでいる状況にあり当社製品を搭載する顧客製品の出荷数が伸び悩んでいる現状があります。

一方で、社会全体は大きな変革期にはいり、AI、IoT、ビッグデータなどを活用した既存システムからの脱却や新たなビジネスモデルの創出(DX:デジタルトランスフォーメーション)、気候変動や環境破壊の抑制を目指す再生可能エネルギーの導入(GX:グリーントランスフォーメーション)が急速に進んでいます。

このような事業環境の中で、当社が対処すべき課題は次のようにまとめられます。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 収益モデルの移行

当社グループは、ハードウェア製品に搭載するソフトウェアを開発してきた経緯からPC等の電子機器の出荷数に応じて受け取るロイヤリティ収入を主な収益源としてきました。しかしながら、「GXサービス事業」と、「DXサービス事業」においては、サービスに対して料金を課金する収益モデルへの移行を進める必要があります。

② 製品構成の充実

サービスに対して料金を得るために必要な製品群の開発が必要になります。顧客ニーズを的確に捉えた製品・サービスを適宜、市場に投入していくことで、会社の永続的な成長基盤を強固にしていく必要があります。

③ 開発管理体制

当社グループは、自社開発の製品・サービスの販売を主として行ってきておりますが、「GXサービス事業」事業領域に参入するにあたり、社内開発者、外部協力者を合わせた開発管理体制を構築し、品質担保していく必要があります。

④ 知的財産管理体制

当社グループは、製品開発で生まれる独自の差別化できる知的財産を特許や登録商標の形で効率的に登録管理し、市場競争における優位性を一層確保する必要があります。

また、ソフトウェア業界においては、他社の知的財産を、主に有償で利用して、製品を完成させることが一般的となっていますが、他社の知的財産を侵害しないようにする必要があります。

⑤ 個人情報保護

当社グループが注力しようとしているAI、IoT分野では、個人情報を取り扱う機会をゼロにすることは現実的ではありません。

主要国・地域において、インターネット上も含めて、個人情報保護規制は強化される流れにあり、当社グループは、より一層、個人情報の管理体制を強化する必要があります。

 

⑥ 優秀な人材の確保

ソフトウェア業界では、ソフトウェア開発・技術者が慢性的に不足しており、特にAI、クラウド分野での優秀なソフトウェア開発・技術者の確保は難しい状況にあります。当社グループが、より競争力のあるソフトウェアを継続的に開発していくためには、国内外で優秀なソフトウェア開発・技術者および製品企画者を確保していく必要があります。

⑦ 内部管理体制の強化

コーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コード、フェアディスクロージャールールといった資本市場の健全な発展に資すると考えられる施策が導入される中、それらが意図する投資家及び資本市場との建設的な対話を実現するため、適切な情報を、適時、公平に開示することができるよう内部管理体制を強化していく必要があります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

(2) リスク管理

当社では、事業を取り巻く様々なリスクに対応するため、「リスク管理規程」を定め、リスクを的確に把握・対応する体制を構築しております。サステナビリティに関連するリスクにつきましても、当該規程に基づきリスク管理を行い、必要に応じて専門家の助言・指導を受けております。

 

(3) 戦略

当社グループが成長していくためには優秀な人材が必要不可欠であると考えております。一人ひとりが自律し、高い技術品質を提供するプロフェッショナル人材への成長を支え、グループ及び部署間の交流を促進し、相互の専門性やノウハウ・ナレッジの共有により新たな価値創造を組織にもたらす人材育成に取り組んでおります。また、年齢、国籍、性別等を問わず意欲・能力・実績に応じた平等な人事評価に基づき管理職登用を行っております。さらに、フレックスタイム制により柔軟な働き方を実現するなど、優秀な人材が定着するような環境整備を行っておりますが、今後も継続して働きやすい職場環境づくりを推進してまいります。

なお、当社グループは、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針については、具体的な指標及び目標を現時点では定めておりませんが、より良い人材育成、社内環境整備に努めてまいります。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項および本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に判断した上で行われる必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出時点において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のある全てのリスクを網羅したものではありません。

以下のリスクが顕在化した場合の影響度は、当該リスクが顕在化した際の内容・規模により異なるため、見積もりは困難であると考えております。

 

 

(1) 新規事業・新技術及び新製品の開発に関するリスクについて

祖業であるマルチメディア関連技術に関しては、技術が成熟しており、大きな成長性は見込めませんが、デジタル家電の買い替え需要に下支えされながら、漸減していくと見込んでいます。

建設DXサービス事業は、建設工事現場への浸透・採用には手応えを感じておりますが、通常のソフトウェア販売と違って、工期による影響が存在し、採用が短期間に一気に進むものでない反面、営業体制・開発体制の構築・強化に継続した投資が必要となります。

GXサービス事業は、営業・サポート体制の構築、開発投資が必要となります。

当社グループが属するソフトウェア業界は、技術革新のスピードが速く、また、陳腐化も早いため、①想定以上の技術進歩、②製品が市場ニーズに適応しない、③新製品・サービス開発の遅れや投入時期の遅れ等により、当社グループが保有する技術や製品が陳腐化し競争力を失い、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

新規事業・サービスの将来性・採算性を慎重に検討し、継続的な技術開発に取り組んでおります。

 

(2) 資産の評価減・減損等について

当社グループは、棚卸資産、有形固定資産(建物附属設備、工具器具備品等)、無形固定資産(ソフトウェア等)を保有しており、今後も事業進捗に応じて新規に取得してまいります。

当該資産に関して、収益性の低下や時価の著しい下落といった事象が生じた場合には、会計基準に基づき、評価減・減損の可否を判断しますが、特に、販売数量の見込みが、実際の販売数量を大きく下回ることになり、原材料(当連結会計期間末時点の簿価で1億円)の評価減・減損の必要が生じた場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

環境変化による収益性の低下を回避できるよう、過剰投資の防止に努めてまいります。

 

(3) 品質管理について

 当社グループが製品化しているソフトウェア製品は、プロジェクト毎に開発から納品までのプロジェクト管理を行っており、十分な品質管理を行っていると考えます。しかしながら、関連する製品および技術の複雑化、開発から納品までの短納期化、使用される環境の多様化、複雑化等、様々な理由で品質問題を起こし、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

品質管理を徹底するよう努めてまいります。

 

(4) 知的財産権について

当社グループが関係する業界は、国内外の大手企業やベンチャー企業等が様々な領域において特許等の知的所有権を保有している可能性があります。当社では関連技術における知的所有権やライセンスに関する情報収集に努め、また、自社における特許等の知的所有権確保を進めていきますが、他社の知的財産権の侵害等に関してすべてを網羅する事は現実的に不可能であり、他社からのライセンス料請求や損害賠償等の請求を受ける場合もありえるので、それらが当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

知的財産に関する情報収集に努めております。

 

(5) 個人情報等の漏洩について

当社グループは、保有する個人情報および個人識別情報の取扱いにつきまして、十分な注意を払っておりますが、不測の事態等での外部漏洩および結果として日本や欧州等における個人情報保護法令に違反したことなどに起因する信用失墜や損害賠償金、制裁金の支払等が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

個人情報保護方針を定め、個人情報保護の仕組みを構築し、全従業員に個人情報保護の重要性の認識と取組みを徹底させることにより、個人情報保護に努めております。

 

(6) 人材確保/小規模組織について

当社グループは、50名程度で事業を行っており、その人数は小規模になります。現在、ソフトウェア産業では、特に、ソフトウェア開発・技術者の不足が課題となっており、その影響は、直接・間接を問わず、当社グループにも及ぶものと考えております。開発拠点の複数化、優秀な人材確保のための開発拠点の選定を継続して行っていく考えではありますが、開発拠点における優秀な人材の流出や採用難が製品・サービスの納品、品質または競争力維持に影響を及ぼす可能性は否定できません。

また、当社グループは、今後の事業の拡大に伴い、優秀な人材を確保することおよび社内において育成することが必要不可欠と考えております。これらの人材確保・育成・定着がうまくいかない場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

人材確保・定着のための労働環境の整備に努めてまいります。

 

(7) 収益構造について

① 販売先の業績や経営方針の変更等について

当社グループは特定の国内外大手企業にソフトウェア製品を販売しております。令和5年12月期の実績では上位3社で売上の59.5%を占めております。顧客との関係は良好でありますが、主要販売先である顧客の業績不振、経営方針の変更、自然災害や事故を含む事業活動の停止や減速化、取巻く市場環境の変化等により将来の売上見込が大きく変動する可能性があります。

(リスクへの対応策)

主要販売先以外への売上を増やすよう、新製品や既存製品の採用に継続して取り組んでおります。

② 当社グループのロイヤリティ単価の変動

当社グループのロイヤリティ単価は各顧客との間で協議し、期間、数量、仕様等に基づいて決定されライセンス契約として締結されます。当社グループの属するソフトウェア業界では、顧客が販売する製品単価の下落、競合他社との競合による価格競争の激化、市場拡大と数量増加による価格改定等により想定の範囲以上にロイヤリティ単価が下落することがありえます。当社グループでは継続的な製品の付加価値向上により想定外のロイヤリティ単価の下落による業績への重大な影響がないよう企業努力を行っておりますが、前述したような理由により想定外のロイヤリティ単価の変動が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

継続的な製品の付加価値向上に努めてまいります。

③ 第三者へ支払うライセンス費用の変動

ブルーレイディスクをはじめとする当社グループが属する開発、製品分野では製品の開発、納入の為に第三者が権利を有する知的所有権に対してライセンス料を支払う必要があります。第三者とのライセンス利用許諾契約では通常1~5年の期間でライセンス価格等の条件を定め当該契約に基づき当社の売上からこれらのライセンス料を複数社に対して支払っております。当社グループでは、ライセンスホルダーの都合等の事由による、これらの契約の取消、更新の停止、重大な契約内容の変更要請等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

ライセンスホルダーとの良好な関係維持に努めてまいります。

 

(8) 業務提携、M&A等について

当社グループは、業務・資本提携、合弁事業、M&A等を事業拡大の有効な手段として活用する方針であります。

当社グループと対象企業の事業運営ノウハウ等を融合することによって、より大きなシナジーを生み出すことを目指しております。しかしながら、当初見込んだ効果が発揮されない場合やこれらの提携が解消された場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、M&A等は、対象企業の財務内容、契約関係等について詳細な事前審査を行い、十分にリスクを検討した上で決定しておりますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等事前の調査で把握できなかった問題が生じた場合、事業の展開等が計画通りに進まない場合、のれんの減損処理を行う必要が生じた場合等には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

業務提携、M&Aによるシナジー効果とリスクを慎重に検討しております。

 

(9) 外国為替の変動について

当社グループは、恒常的に外貨建取引をしている結果、為替相場の影響を受けることになります。保有外貨預金の圧縮、為替予約の活用を始め、その影響を軽減することに努めますが、為替変動が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応策)

保有外貨預金の圧縮や為替予約の活用に努めてまいります。

 

(10) 配当政策に関して

当社は、株主に対する利益還元を重要課題と位置付けていると同時に、経営体質の強化および将来の事業規模の拡大に備えて財務体質を強化することを重要課題として位置づけております。今後の事業への投資および研究開発のため、内部留保の充実を図り、将来の成長戦略と業績を勘案しつつ、配当の実施時期を定めたいと考えております。現在の当社の財務状況を勘案し、財務健全性を維持する観点をより重視し、配当実施の可能性およびその時期に関しましては未定であります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

(1) 業 績

当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が小さくなってきているものの、原材料価格の高止まりや、世界的な金融引き締めに伴う景気下振れリスクが高まり、先行きが不透明な状況になっております。一方で、生産性向上や社会のデジタル化への対応など、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進がますます重要視されており、当社は、引き続き、DXを推進する事業を展開してまいります。

 

当社グループのソフトウェア関連事業の概要は、下表のとおりであります。

関連事業

パソコン・デジタル家電組込ソフトウェア

建設DXサービス

セキュリティ&プライバシーソフトウェア

IoTソリューション

事業内容

映像(4K/8K)・音響再生・ブラウザ表示ソフトウェアを顧客製品に組込む。

映像の解析・分析をAIで行うサービスを顧客に提供する。

受託開発およびデータ移行・バックアップアプリを制作し、顧客に提供する。

センサーとゲートウェイ機器を組み合わせて、クラウドでデータ管理等のサービスを提供する。

顧客業界

デジタル家電メーカー、パソコンメーカー

建設業界

通信業界

流通・小売業界、建設業界

主力製品・サービス

VAlution BD

Tourbillon

切羽AI評価サービス

掘削サイクルAI解析サービス

覆工コンクリートAI評価サービス

濁水処理AI解析サービス

sMedio Cloud Backup

RiskFinder

JS記録保管

JS直接転送

温度管理ソリューション

CO2濃度モニタリングソリューション

主力アプリ

sMedio Smart Camera

sMedio Data Transfer

sMedio TV Suite

 

 

パソコン・デジタル家電組込ソフトウェア事業領域では、4月よりロジテック(株)に「sMedio TrueBD SE for Logitec」のライセンス提供を開始し、11月より富士通クライアントコンピューティング(株)に「FMVコントローラー」のライセンス提供を開始しました。

 

 

建設DXサービス事業領域で、当社が重要視している採用企業数(累計)と採用トンネル数(累計)の進捗は下記の通りになります。

 

前期末(実績)

当期末(実績)

来期末(目標)

採用企業数(社)

12

15社超

 

 

 

前期末(実績)

当期末(実績)

来期末(目標)

採用トンネル数(本)

32

49

70

 

 

当連結会計年度において、「切羽AI評価サービス」が(株)森本組、清水建設(株)、青木あすなろ建設(株)のトンネル工事現場で採用されたこと、「覆工コンクリートAI評価サービス」が(株)安藤・間のトンネル工事現場で採用されたことで、当社建設DXサービスの採用企業数(累積社数)は12社となり、採用トンネル数(累積本数)は49本に達しました。

 

セキュリティ&プライバシーソフトウェア事業領域では、「sMedio Cloud Backup」が2023年10月末時点の累計サブスクリプション(定期購読)契約者数が17,000名に到達しました。

 

① 売上の分析

当社グループの売上高は、ロイヤリティ収入と受託開発収入が中心となっております。

(ロイヤリティ収入)

当連結会計年度のロイヤリティ収入は、当社ソフトウェアが搭載されている顧客の製品種類が増えた一方で、一部の顧客製品の出荷数が計画値を下回ったこと等により、前年同期比24百万円の減収となりました。

(受託開発収入)

当連結会計年度の受託開発収入は、セキュリティ&プライバシー事業での受託開発案件が寄与し、前年同期比8百万円の増収となりました。

(保守・サポート収入)

当連結会計年度の保守・サポート収入は、後半にかけて受託開発案件での保守・サポートが増加したことで、前年同期比3百万円の増収となりました。

 

この結果、当社グループ全体としては、売上高は813百万円(前期比1.6%減)となりました。

売上形態別の売上高は、下表のとおりであります。

 (単位:百万円未満切捨て)

形態別売上高

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

 増減率(%)

ロイヤリティ収入

576

551

△24

△4.3

受託開発収入

190

199

8

4.3

保守・サポート収入

60

63

3

5.1

合計

827

813

△13

△1.6

 

 

② 売上原価の分析

当連結会計年度における売上原価は、450百万円(前期比25.3%減)となりました。

当社は、パソコン・デジタル家電組込ソフトウェア事業において、Valution BD(以下、製品)を大手メーカーに納品しており、その製品の中に第三者からライセンス提供を受けたソフトウェアライブラリ(以下、「原材料」)を組み込んで販売しております。そして、その原材料の将来の使用見込みを計算し、数年先の使用分まで前払いをして購入しています。

当該原材料については、令和4年12月期において、その時点の将来の使用見込に基づいて評価損を計上しましたが、当年度において消費者ニーズの変化や製品コモディティ化の影響が当初の想定よりも進んだことによって、将来使用見込みを再精査した結果、令和5年12月期において評価減70百万円を追加計上することとしました。

なお、原材料の評価減の影響を除くと、売上原価は380百万円(前期は原材料の評価減を除くと375百万円)となり、原価率はほぼ同じになっています。

 

③ 販売費及び一般管理費、営業損益の分析

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は404百万円(前期比3.7%減)となりました。減少額15百万円は、主に、研究開発費の減少15百万円によるものであります。その結果、営業損失は41百万円(前期は196百万円の損失)となりました。

 

④ 営業外損益、経常利益の分析

当連結会計年度における営業外収益は、為替差益7百万円の計上及び、債務勘定整理益36百万円を計上したこと等により44百万円(前期比178.9%増)となりました。その結果、経常利益は3百万円(前期は182百万円の損失)となりました。

 

⑤ 親会社株主に帰属する当期純損益の分析

当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損失は、和解金の支払146百万円の影響により163百万円(前期は185百万円の損失)となりました。

なお、原材料の評価減及び和解金の支払による影響を除くと、営業利益は28百万円、経常利益は73百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は53百万円の利益になっております。

 (単位:百万円未満切捨て)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

売上高

827

813

△13

営業損失(△)

△196

△41

154

経常利益又は経常損失(△)

△182

3

185

親会社株主に帰属する当期純損失(△)

△185

△163

21

 

 

(2) 資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末における純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失163百万円を計上したことなどで、前連結会計年度末に比べ、156百万円減少し、1,064百万円になりました。

当社グループは、現預金を781百万円保有しており、流動負債114百万円を差し引いても、666百万円相当の手元流動性があります。

現預金が、前連結会計年度末に比べ108百万円減少した主な要因は、和解金の支払いが146百万円あったことによるものであります。原材料の評価減及び和解金の支払による影響を除くと、各段階利益は黒字となっていたことから、当期の損失は、当社グループの構造的な赤字体質に起因するものではなく、翌連結会計年度のキャッシュ・フローにマイナスの影響が出てくるものではないため、その点でも、当社グループの手元流動性には支障はないと考えております。

また、当社グループの売上高は、ここ数年、販売先上位3社合計で6割弱程度を占めておりますが、いずれも販売代金回収に懸念するべき点はなく、その点においても、手元流動性には大きな懸念はないと考えております。

当社グループの投資は、主として、人材に対するものとなり、有形固定資産の取得に多額の支出をする予定はありませんが、企業価値向上に資すると考えるM&Aなどへの投資は必要に応じ適宜実施する意向であります。また、その際に必要となる資金には、保有する現預金を活用し、機動的に対応することを基本としますが、場合によっては、金融機関からの借入や新株発行を実施することも検討いたします。

(単位:百万円未満切捨て)

 

 前連結会計年度末

 当連結会計年度末

 増減

 増減率(%)

 総資産

1,394

1,189

△204

△14.7

 負債

173

125

△47

△27.6

 純資産

1,221

1,064

△156

△12.8

 

 

① 流動資産

当連結会計年度末の流動資産は1,144百万円であり、前連結会計年度末と比べ201百万円減少しました。これは、主に和解金の支払等により現預金が108百万円減少し、評価減の計上等により原材料が119百万円減少したことによるものです。

 

② 固定資産

当連結会計年度末の固定資産は、44百万円であり、前連結会計年度末と比べ3百万円減少しました。主な要因は、固定資産の償却が進んだことによるものです。

 

③ 流動負債

当連結会計年度末の流動負債は、114百万円であり、前連結会計年度末と比べ45百万円減少しました。これは、主に取引先に対する残高を整理したことで、その他流動負債が減少したことによるものです。

 

④ 固定負債

当連結会計年度末の固定負債は、10百万円であり、前連結会計年度末と比べ2百万円減少しました。これは、繰延税金負債が2百万円減少したことによるものです。

 

⑤ 純資産

当連結会計年度末の純資産は、1,064百万円であり、前連結会計年度末と比べ156百万円減少しました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純損失163百万円を計上したことによるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フローが108百万円のマイナス(支出超過)、投資活動によるキャッシュ・フローの5百万円のマイナス(支出超過)等によって、前連結会計年度末に比べ108百万円減少し、当連結会計年度末には781百万円となりました。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは、108百万円のマイナス(支出超過)となりました。これは、主に、税金等調整前当期純損益を143百万円計上したことに加え、売上債権34百万円の増加、棚卸資産121百万円の減少、法人税等の支払22千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは、5百万円のマイナス(支出超過)となりました。これは、有形固定資産の取得及び無形固定資産の取得によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローはありませんでした。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度の受託開発に係る生産実績は、次のとおりであります。

事業の種類

当連結会計年度

(自 令和5年1月1日

至 令和5年12月31日)

前年同期比(%)

ソフトウェア事業

(千円)

113,131

△32.1

 

(注) 1.金額は、仕入価格によっております。

 

(2) 受注状況

当連結会計年度の受託開発に係る受注状況は、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ソフトウェア事業

 

149,933

△15.1

15,068

△76.6

 

 

(注) 1.金額は、販売価格によっております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績を販売形態別に示すと、次のとおりであります。

販売形態

販売高(千円)

前年同期比(%)

ロイヤリティ収入

551,539

△4.3

受託開発

199,137

4.3

保守サービス・サポート

63,093

5.1

813,770

△1.6

 

(注) 1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相  手  先

前連結会計年度

(自 令和4年1月1日

至 令和4年12月31日)

当連結会計年度

(自 令和5年1月1日

至 令和5年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Microsoft Corp.

200,532

24.2

190,310

23.4

株式会社 NTTドコモ

157,075

19.0

182,496

22.4

シャープ株式会社

135,616

16.4

111,281

13.7

富士通クライアントコンピューティング株式会社

63,095

7.6

86,347

10.6

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

当連結会計年度の経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定の設定を行っております。当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる各種の要因に関して仮定設定、情報収集を行い、見積金額を算出しておりますが、実際の結果は見積り自体に不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(2) 財政状態の分析

財政状態の分析につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (2)資産、負債及び純資産の状況」をご参照下さい。

 

(3) 経営成績の分析

経営成績の分析につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (1)業績」をご参照下さい。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループは、主にマルチメディアとワイヤレスコネクティビティの要素技術を駆使した分野でスマートデバイス向けのソフトウェア製品を提供することにより、事業規模を拡大させてまいりました。当該市場は買い替え需要が下支えするものの漸減していくと見込んでいるため、新たな事業領域に、付加価値の高い製品・サービスをタイムリーに投入する必要があります。

また、経済のデジタル化が進み、モノからコトへと経済価値の源泉が移りつつあると言われておりますので、当社グループも、従来の受託開発収入、ライセンス収入また保守サポート収入以外に、サブスクリプションモデルやサービスモデルの収入を伸ばしていく必要性があると考えております。

当社グループでは、これらの市場環境の変化に迅速に対応し技術的な優位性を維持しつつ、かつ市場ニーズに適応した付加価値の高い競争力のある製品を投入することおよび変化した市場ニーズに応じた収益モデルの構築が重要であることを認識し、事業運営を行っておりますが、これらの市場の変化、事業環境の変化に当社グループが迅速かつ柔軟に対応できなければ、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

その他の経営成績に重要な影響をあたえるリスクに関しては、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

(5) キャッシュ・フローの分析
 キャッシュ・フローの分析につきましては、「(経営成績等の状況の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 

  (6) 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しにつきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 (7)経営者の問題意識と今後の方針

当連結会計年度は原材料の評価減70百万円、和解金の支払146百万円の計上にともない赤字となりました。しかしながら、自己資本比率は引き続き89.4%と健全な水準を保っており、翌連結会計年度(令和6年12月期)の親会社株主に帰属する当期純利益は34百万円の黒字への転換を見込んでおります。

当社グループが重要な指標と考えている営業損益は、当連結会計年度では41百万円の損失を計上しました。一時的な要因によって、損失額が大きくなったとはいえ、この水準の営業損失が続けば、財政状態の健全性は毀損することは避けられないと考えております。また、予期していない事態やリスクが顕在化した場合に、その影響を吸収するには、営業利益の水準を上げる必要があると考えております。翌連結会計年度(令和6年12月期)の営業利益は、46百万円を予想しております。

少数の顧客に対する売上高の、売上高全体に占める割合が依然高いため、全体の売上増加を目指しつつ、少数の顧客に対する依存度は低下させる必要があると考えております。

なお当連結会計年度においては、原材料の評価減、和解金の支払いなどの一時的な影響を除くと、営業利益で28百万円を計上していたことを考慮すると、ロイヤリティ収入の底上げ、原価低減や経費節減の効果が現れてきていると考えておりますが、新製品・新サービスを通じて、新規顧客の開拓を推進することに加え、既存製品の横展開による少数の顧客以外への販売の底上げを図り、少数の顧客への売上高の集中度合を減らすと同時に営業利益水準の向上を目指してまいります。

今後も、現在の保有技術、事業環境および入手可能な各種情報に基づき、最善の経営方針を立案するよう努めてまいります。

詳しくは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社の事業におきましては、以下の契約を「経営上の重要な契約」として認識しております。これらの契約が解除されたり、その他の理由により解除または終了した場合、または円滑にその契約が更新されなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(1) 当社が技術およびライセンス等を受け入れている契約

当社が、技術等を受け入れている重要な契約は、以下の通りです。

相手先

契約名

契約内容

契約期間

Oracle America, Inc.(米国)

THE ORACLE COMMUNITY SOURCE LICENSE AGREEMENT等

JAVAテクノロジーであるCDC Software
モジュールの使用許諾契約

主な契約は令和3年8月1日から

令和8年12月31日まで

Advanced Access Content
System Licensing
Administrator (AACS LA)
(米国)

Advanced Access Content System Adopter Agreement等

Advanced Access Content System
Licensing Administrator (AACS LA) がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成22年10月29日より1年ごとの自動更新

The Digital Transmission
Licensing Administrator
(DTLA)(米国)

Digital
Transmission
Protection License Agreement

The Digital Transmission Licensing
Administrator (DTLA) がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成22年 7月21日より1年ごとの自動更新

DTS Corporation (米国)

DTS-HD Manufacturer
Software License
Agreement

DTS Corporation がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成22年11月12日より1年ごとの自動更新

VIA Licensing (米国)

AAC Patent
License Agreement

VIA Licensing がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成22年 9月10日より1年ごとの自動更新

4C Entity (米国)

4C CPRM/CPPM
License Agreement

4C Entity がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成22年12月 6日より1年ごとの自動更新

Blu-ray Disc Association (米国)

Blu-ray Disc™ Read Only Format 2.0 and Logo License Agreement等

Blu-ray Disc Associationがライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成19年8月8日より5年ごとの自動更新

Dolby Laboratories Licensing Corporation (米国)

System License Agreement等

Dolby Laboratories Licensing Corporationがライセンスする技術使用の使用許諾契約

平成22年9月9日より1年ごとの自動更新

BD+ Technologies LLC (米国)

BD+ System Adopter Agreement等

BD+ Technologies LLCがライセンスする技術使用の使用許諾契約

平成19年11月6日より1年ごとの自動更新

MPEG LA, LLC (米国)

MPEG2 Patent Portfolio License等

MPEG LA, LLCが管理するパテントライセンスの使用許諾

平成24年12月5日より1年ごとの自動更新

DVD Copy Control Association, Inc. (米国)

CSS License Agreement

DVD Copy Control Association, Inc. (米国) がライセンスする技術使用の使用許諾契約

平成24年9月13日より1年ごとの自動更新

One-Blue, LLC (米国)

ENSE AGREEMENT FOR BD-SOFTWARE MANUFACTURER

One-Blue, LLCが管理するパテントライセンスの使用許諾

平成26年1月27日より1年ごとの自動更新

One-Red, LLC (米国)

License Agreement for DVD Software Manufacturer

One-Red, LLCが管理するパテントライセンスの使用許諾

平成26年10月1日より1年ごとの自動更新

Verance Corporation(米国)

Watermark Technology License Agreement for Verance Finished Detectors等

Verance Corporation(米国)がライセンスする技術使用の使用許諾契約

平成24年2月23日より自動更新

StarForce Technologies, Ltd.(キプロス)

License Agreement

StarForce Technologies, Ltd. (キプロス)がライセンスする技術使用の使用許諾契約

平成24年5月24日より1年ごとの自動更新

DVD Format/Logo Licensing Corporation(日本)

DVD FORMAT/LOGO LICENSE AGREEMENT

DVD Format/Logo Licensing Corporation(日本)がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

令和2年1月1日から

令和6年12月31日まで

Dynabook株式会社

TOSHIBA SOFTWARE LICENSE AGREEMENT for sMedio Product (License from Toshiba)

Dynabook株式会社がライセンスする技術仕様の使用許諾契約

平成26年4月1日より対象製品の出荷終了まで

株式会社デジオン

DiRAG SDK使用許諾契約書

株式会社デジオン(日本)がライセンスする技術使用の使用許諾契約

平成26年6月26日より1年ごとの自動更新

株式会社NTTドコモ

ソフトウェア利用許諾変更契約書

株式会社NTTドコモがライセンスするソフトウェアの利用許諾契約

令和3年7月19日より対象製品の出荷終了まで

 

 

 

 

(2) 業務提携契約

相手先

契約名

契約内容

契約期間

Kiwi Technology Inc.

資本業務提携契約

以下の各項目に関する業務提携

・Kiwi Tech社の製品・サービスの日本での展開での協力
・Kiwi Tech社の製品・サービスのカスタマイズ対応での協力

令和4年7月1日より期限の定めなし

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発費の総額は41百万円であります。

主な内容は、AI関連製品およびブラウザ関連製品(4K/8K高解像度関連製品等)の開発になります。