文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)が判断したものであります。
当社グループは、企業理念として
「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します。」
を掲げ、以下の行動方針のもと、事業を展開しております。
・安定した事業成長を実現します
・ユーザーに適したソリューションを提供します
・応援して頂ける企業を目指します
・積極的(Positively)に変化(Change)を求め、革新(Innovate)します
・全てのステークホルダーに満足して頂ける企業を目指します
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、収益の「質」向上の視点での「EBITDAマージン」、資本効率性の視点での「ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)」、市場評価の視点での「PBR(株価純資産倍率)」を重視いたします。
資本コストを意識した経営として、今後継続して資本コストを上回る資本収益性の達成を重視し、2026年9月期においてROE15%以上を目標としております。また株価を意識した経営として、2026年9月期においてはPBR2倍以上を目標としております。PBRは「ROE×PER(株価収益率)」により算出されます。ROE向上のために、収益の「質」向上への取組み及び適切な資本政策・株主還元を実施いたします。PERについては、株主・投資家に当社の事業内容や成長性を理解していただくようIR活動を充実させることで改善を図ってまいります。
(3) 経営環境
当社グループは、純粋持株会社である当社を中心に、ソフトウェア開発、産業用PC設計・製造、自社ソリューションの開発・保守、半導体の設計・テスト等の情報サービス事業を営む連結子会社6社(うち、孫会社3社)を傘下に構成されております。各事業会社それぞれの文化と独自性を尊重しながら、グループ全体のシナジー効果を発揮し、市場環境の変化や多様化する社会ニーズに機動的かつ柔軟に対応することで、更なる企業価値の向上を図っております。
新型コロナウイルス感染症の分類が2類から5類へ移行したことにより、経済活動の正常化が見込まれる一方で、地政学リスクの長期化・多面化、エネルギー資源や原材料の価格高騰及び円安による物価の上昇等による不透明な状況は継続するものと推定しております。
当社グループが属する情報サービス産業におきましては、当連結会計年度に引き続き社会全体で進展しているデジタル化やDXの推進加速を背景にIT投資需要は堅調に推移するものと見込んでおります。IT投資需要の拡大の一方で、IT人材は不足する見通しであり、特にAIやIoT等の先端技術を用いたITサービスを担う人材の不足が顕著となりつつあります。
イ.技術力
・組込みソフトウェア開発、組込PCの設計・製造・保守、半導体の設計・テスト、AI画像解析をはじめとする豊富な実績のある技術
ロ.リレーションシップ
・自動車関連業界や半導体業界をはじめとした強固な顧客基盤
・プラットフォーマー、パッケージベンダー、ソフトウェアハウス、エレクトロニクス商社等との幅広いパートナーネットワーク
ハ.迅速性・高付加価値性
・クラウドプラットフォームを活用した迅速なシステムインテグレーション
・AI画像解析技術やクラウド技術を応用した自社商材
(4) 中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2023年9月期を最終事業年度とする中期経営計画「PCI-VISION2023」に掲げた主要施策の実施状況の振り返りを行い、今後の対処すべき課題として「PCIブランドの確立」・「事業ポートフォリオの展開」・「資本効率の改善」等を認識いたしました。この振り返りを踏まえ、長期ビジョン及び新中期経営計画「PCI-VISION2026」を策定いたしました。
(長期ビジョンステートメント)
「ITの可能性を探求し続け、安心・安全・豊かな社会(=サステナブルな社会)の実現に貢献するとともに常に変化に対応し成長する企業でありたい」
当社グループは、2032年に向けて地球環境や社会が大きく変化する中で、グループの総力を結集し、ITの力で安心・安全・豊かな社会の実現を目指します。
(ありたい姿)
・企業ブランドの確立
当社グループは、今後の事業展開において、モビリティ関連のソフトウェア開発、クラウドサービスを組み合わせたサービスインテグレーション、環境に配慮したハードウェアの開発という3つの領域に注力します。また、人的資本経営の一環として人財教育にもさらに力を入れてまいります。これらの注力領域で高い評価を得られ、「モビリティのPCI」「教育のPCI」等と言われるように「ブランド」を高めていくことが当社グループの目指すところです。
・総合技術コンサルティング企業への進化
様々な情報技術(ハードウェア、ソフトウェア、半導体、先進技術)に精通した「総合技術コンサルティング企業」として、その技術を必要とする産業セクターへのリレーションシップマネジメントを強化し、高い価値のITソリューションを提供することで、社会をワクワクさせる企業集団となることが当社グループのありたい姿です。
(経営目標)
・PX2032においては500~700億円の売上高を目指すことにより、企業ブランドの確立を目指します
・「質」を伴った成長を実現するためROEは15%程度を持続的に維持する経営を行います
当社グループは、2015年8月の上場後、堅調なオーガニックグロースを実現するとともにM&Aによる企業規模の拡大を図ってまいりました。売上高については、これまで順調に推移していますが、利益率や資本効率性については十分とは言い難い状況であると認識しております。本中期経営計画期間は、第二の創業期のスタート期間と位置付け、更なる成長のための「基盤作り」に重点を置き、収益の「質」向上に向けた積極的な戦略投資を実行してまいります。
なお、本中期経営計画を進めるにあたり、2024年9月期より事業セグメントを変更し、以下の3つを設定しております。
エンジニアリング事業 :幅広い産業分野における顧客企業の要求・仕様を実現する情報技術サービス
プロダクト/デバイス事業:特定産業でのハードウェア製品・デバイスの設計・開発・販売
ICTソリューション事業:幅広い分野でのICTを活用したコンサルティング・サービス等による課題解決
(基本コンセプト)
・パーパス経営の実践
・高収益体質へのシフト
・人的資本経営の高度化
・サステナブル経営の深化
(基本戦略)
イ.競争力の強化とコストマネジメントの徹底
IT業界は、技術や事業が短期に変動する環境にあります。この中で成長を目指すには先を見据えた技術力の確保と事業の目利きが必要になります。この本中期経営計画期間では、技術はもとよりお客様とのリレーションを深化させ、当社が強みを持つ産業分野や技術分野をより強化し、お客様から「この分野・技術はPCIだよね」との評価を頂けることを目指し、競争力を高めてまいります。
また、DXによる省力化や効率化の推進、調達業務の最適化、間接機能のスリム化による販管費の削減等、コストマネジメントの徹底を図ります。
・エンジニアリング事業(安定コア事業)
当社の収益の屋台骨であるため持続的な利益の創出を第一に考え、市場変化への対応力並びにそれを踏まえた技術対応力を磨き、“ゆらぎ”の少ない堅実な成長を目指す
<競争力強化に向けた取組み項目>
・事業分野の選択と集中を図り、収益力の高い分野への人財シフト
・未来につながる技術力の確保(育成並びに先端的なスタートアップ企業との協業)
・集中する事業・技術分野への技術者の知識・スキルの再構成
・プロダクト/デバイス事業(安定コア事業)
技術力を磨き続けることによって医療機器メーカーや半導体メーカーをはじめとする優良な顧客を基盤として持続的な成長を実現する。また、“モノ”にまつわるサービスを強化することにより包括的な価値提供による差別化・高付加価値化を図る
<競争力強化に向けた取組み項目>
・製品・サービスの組み合わせにより、顧客のバリューチェーンの複数の工程をカバーする包括的な価値を提供
・製品開発能力や量産能力を活かしたIoT・Edge-AI分野等の新製品を開発・販売
・ICTソリューション事業(成長ドライバー事業)
AI関連やクラウド関連にフォーカスし、積極的に経営資源を投入し、迅速に高付加価値のソリューションを提供する
<競争力強化に向けた取組み項目>
・強みを有するサービスにフォーカスし、技術者リソースを集中投入
・顧客に提供したソリューションをパッケージ化・製品化し、同様ニーズを有する顧客に拡販
・顧客接点を通じたニーズの拡がりを常に捕捉し続け、新たなサービス領域の探索、必要技術の習得の積極化
ロ.人的資本投資の強化・人的資本経営の再構築
競争力を強化するには人的資本の最適化が必須です。人的資本の最適化とは、競争力のある領域を見据えて人財の能力や特性に応じた適切な配置を行うことです。スキル高度化教育、また、リスキリング教育等の教育投資はもとより、人事制度の高度化、企業文化の醸成、多様性・公平性・包摂性のある組織づくりなどへの投資を活性化させます。これにより、社員のエンゲージメントを高め、生産性向上やイノベーション創出を図ります。
ハ.サステナブルな成長
脱炭素社会を推進する各種活動を推し進めると共に、包摂性を持つ企業を目指し多様な人財による経営の実現を推進します。(ジェンダーを含めた様々な格差の是正、社会全体でのエネルギー効率改善等)
ニ.資本効率の極大化
PL/BS/CFの財務3表のバランスを念頭に置き、資本効率(ROE・ROIC)の極大化に向けた道筋を付けます。
(連結経営目標)
中期経営計画「PCI-VISION2026」における開始事業年度及び最終事業年度の経営目標は以下の通りです。
(注) 1.その達成を保証するものではありません。
2.EBITDAマージン=(連結営業利益+減価償却費+のれん償却費+その他償却費)÷連結売上高
3.ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷(期首・期末 連結自己資本の平均)×100
4.ROIC=税引後営業利益÷(期首・期末 有利子負債・連結純資産の平均)×100
5.PBR=株価÷1株当たり連結純資産
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
①サステナビリティ基本方針
当社グループは、サステナビリティに係る課題が、企業が対処すべきリスクであることを超えて、企業の長期的かつ持続的な価値創造に向けた経営の根幹をなす要素であることを強く認識しております。また、当社グループは、「企業理念」と「行動方針」をサステナビリティ経営の基本方針と位置づけ、サステナビリティ課題の解決に向けた取組みを積極的かつ継続的に実行することにより、持続可能な社会の実現と中長期的な企業価値の向上を目指します。
②サステナビリティ推進体制
当社は、2022年7月に取締役会の諮問機関である、サステナビリティ委員会を設置しました。
本委員会の構成は、当社代表取締役社長が委員長を務め、管理部門管掌取締役及び経営企画部門管掌取締役が副委員長を務めます。また、各グループ会社代表取締役(当社執行役員)及び当社関連部署責任者を委員とすることで事業との連動性を図る体制としています。加えて、サステナビリティ活動を推進するため、委員長の指名によりグループ会社役職員で構成されるワーキンググループを設置し、全グループを挙げて取組む体制を構築しています。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、「ITにより安心・安全・豊かな社会に貢献する」ため、かねてより事業活動と企業活動を通してサステナビリティ経営の推進に努めておりました。第二の創業期を迎え、さらにサステナビリティ課題への対応を強化するため、新たにサステナビリティに関する6つの重要課題(マテリアリティ)を特定するとともに、解決に向けた具体的な取組みを進めていきます。
(2)人的資本
当社グループは、2032年のありたい姿を示した長期ビジョン「PCI X-formation2032(PX2032)」のビジョンステートメントとして「ITの可能性を探求し続け、安心・安全・豊かな社会(=サステナブルな社会)の実現に貢献するとともに、常に変化に対応し成長する企業でありたい」を掲げています。
これを具現化するためには、当社グループの持ち味を活かせる産業分野で、すべての従業員が「積極的(Positively)」に「変化(Change)」と「革新(Innovate)」をし続け、PCIブランドの確立と総合技術コンサルティング企業への進化が不可欠です。
さらに、ワーキンググループの活動を通して人財面におけるマテリアリティを特定、まずは事業戦略と連動する人財の育成を最優先施策として取組み、ステップバイステップで評価、配置並びに採用に関する施策にも推進していきます。
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①人財育成方針
当社グループにとって「人」は財産であり、その「人財」を磨き上げ、適切な組織を組成し、機能させることが事業成長に直結するものと考えております。また、従業員は、各々の業務を通じて自ら学び自ら成長し、当社グループは、年齢・性別・国籍等に関係なく、自らの成長に向けて努力する従業員に対して支援する使命を担っていると考えております。
新中期経営計画「PCI-VISION2026」では、基本戦略の一つに「人的資本投資の強化、人的資本経営の再構築」を掲げており、「最先端技術の習得による技術者集団の育成」「顧客を知悉するリレーションシップマネジメント能力の蓄積」「多様性と一体感のある組織づくり」「働きがいと働きやすさ=従業員エンゲージメントの向上」を実行方針として、人財育成や社内環境整備に向けた具体的施策に取組んでいきます。
②社内環境整備方針
当社グループが持続的な成長を実現するためには、雇用を維持・増加させ、女性や多様な人財の活躍を促進し、イノベーティブな組織風土の醸成が必要であると認識しています。
そのためには、従業員一人ひとりが健全な状態で、安心していきいきと働ける社内環境を整備することが重要であると考えます。
(3)気候変動
当社グループは、気候変動問題への対応を重要課題の一つとして認識しております。当社グループにとってリスクにも機会にもなりうると考えております。2022年11月のTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言賛同に基づく情報開示の中で、①移行リスクシナリオ(1.5℃以下シナリオ)、②物理的リスクシナリオ(4.0℃シナリオ)、の2つの代表的なシナリオを想定し、2030年代までを中心に、当社の主力事業であるITソリューション事業(エンベデッドソリューション事業、ビジネスソリューション事業)、IoT/IoEソリューション事業、半導体トータルソリューション事業に及ぼすリスクと機会を検討いたしました。その選出と特定にあたっては、当社グループへの意識調査に加え、外部有識者の意見を踏まえながらサステナビリティ委員会を中心となって行っております。
①移行リスクシナリオ(1.5℃以下シナリオ)
2050年までに、地球規模で温室効果ガス排出量ゼロを実現する規範的シナリオ。政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「NZE2050シナリオ」、平均気温など気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP1-1.9シナリオ」に原則として準拠しています。
②物理的リスクシナリオ(4.0℃シナリオ)
現時点で公表されている温室効果ガス削減に関する政策や目標の撤回を含めて、気候変動問題に対する有効な政策が実施されないシナリオ。政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook 2021」の「STEPSシナリオ」、平均気温など気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP5-8.5シナリオ」に原則として準拠しています。
収益や資産など財務面への影響が大きいと考えられるリスクと機会について、当社グループはその対応策を改めて検討し、その主要な結果を下表に纏めております。
<リスク管理>
当社グループは、企業経営に関連する様々なリスクに対応するため、「サステナビリティ委員会」がリスク管理の充実に努めております。2022年7月にサステナビリティ委員会を設置するまで、当社グループでは、PCIホールディングス常務会の諮問機関である「コンプライアンス・リスク管理委員会」がその管理を行っておりました。しかしながら、昨今の経営環境の不確実性の高まりなどを受け、当社グループでは、サステナビリティ課題を含めた広範なリスクと機会を、新設したサステナビリティ委員会で管理する体制としました。(コンプライアンス・リスク管理委員会は「コンプライアンス委員会」と改称し、法令の順守や企業倫理の徹底などのコンプライアンス管理を中心とした、社内調査権のある組織に改編。)
サステナビリティ委員会では、事業環境等の個別リスク(詳細は
当社グループでは、サステナビリティに関する6つの重要課題(マテリアリティ)の解決に向けて事業面、環境、社会、ガバナンスのそれぞれについて具体的な施策に取組んでおりますが、その指標、具体的な目標数値並びに目標年度については、一部を除いて検討中であります。
(1)人的資本
<戦略>において記載した、人財育成方針及び社内環境整備方針に基づき、人財マテリアリティの解決に資する具体的な施策に取組んでおりますが、その指標、具体的な目標数値並びに目標年度については、ワーキンググループを中心に検討中であります。
(2)気候変動
気候変動に関する評価指標として温室効果ガス(GHG)排出量を選定しております。排出量につきましては、Scope1・Scope2の合計について2030年度までに46%削減すること、2050年度までにScope3を含めてカーボンニュートラルを目指すことを目標として、その削減に取組んでいきます。また、事業活動や領域の変遷に伴う温室効果ガス排出量の影響を考慮するため、売上高単位当たりの温室効果ガス排出量(排出原単位)を参照指標として、影響度の高い会社(以下、対象会社)を中心に削減目標を設定しております。
直近3か年における実績(Scope1+Scope2)及び基準年度比較は下表のとおりです。
(注)1.GHGプロトコルで定義されるScope1(化石燃料等の使用に伴う直接排出)、Scope2(購入した電気・熱の使用に伴う間接排出)の排出量合計を記載しております。
2.2023年9月期においては、期中に連結子会社となった2社の影響度の観点から、当社グループの96.7%の事業範囲(連結売上高に占める単体売上高の割合)で算定しております。
3.排出量の数値は、一定の仮定や前提を置いて導き出したものであり、独立した第三者による保証・検証を取得しているものではありません。今後、算定範囲の拡大、精度や粒度の向上、リスクシナリオ分析の高度化、適用する排出係数・排出原単位の変更、算定方法に係る国際的な基準の明確化に対する議論の動向等により、当社グループで把握・公表する数値についても将来的に変更となる可能性があります。
(注)Scope1・Scope2の合計の削減目標となる対象会社の範囲は、連結売上高の75%を目安としております。基準年度は、2017年9月期(対象会社:PCIホールディングス株式会社、PCIソリューションズ株式会社)、2021年9月期(対象会社:株式会社ソード)とし、合計値を記載しております。今後、集計対象及び基準年度の見直しをおこなう場合は、適宜公表いたします。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 事業環境について
① 経済・市場環境による顧客の設備投資意欲等の影響について
当社グループの事業は、その業容上、国内企業によるソフトウェア・半導体等の設備投資動向に一定の影響を受けます。経済情勢の変化及び国内の景気低迷等により、市場における設備投資意欲が減少した場合は、新規顧客開拓の低迷や既存顧客からの受注減少、保守・運用契約の解約等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは市場の動向を先んじて的確に把握しながら、市場における競争優位性の確保を図っております。
② グローバルな半導体需給の影響について
当社グループにおける半導体関連事業については、半導体メーカーとターンキーメーカー(※1)を主な顧客として、半導体設計の一端を担うと共に開発工程と量産工程で使用される良品・不良品の判別を行う検査プログラムの開発に携わっており、半導体を量産するために必要不可欠なテスト開発等を主とした半導体トータルソリューションビジネスを行っております。しかしながら半導体業界では近年グローバルな事業統合が活発化しており、今後、国内半導体メーカーの経営方針変更や国内半導体メーカーのコスト構造の見直しにより、開発委託先をアジア圏に代表される国外企業に発注を行う等、国内半導体開発市場の縮小が顕著となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは顧客の需要動向を常に把握し、事業ポートフォリオの最適化を推進しております。
③ 技術革新による影響について
当社グループが属する情報サービス業界は、技術革新の速度及びその変化が著しい業界であり、新技術、新サービスが次々と生み出されております。万が一、当社グループが変化する顧客ニーズや新しい技術に対応できなかった場合、あるいは当社グループが想定していない新技術、新サービスが普及した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは各事業に関わる技術の動向把握に努めながら、次世代技術の共同研究・他企業との共同開発等、技術革新への対応策を常に講じております。
④ 競合他社による影響について
当社グループは、市場動向を先んじて捉え、最先端の技術・サービスの開拓等に努めておりますが、当社グループが属する情報サービス業界では、大規模事業者から小規模事業者まで多数の事業者が存在しており、市場において当該事業者との競合が生じております。国内企業のIT化推進等に伴い、業界全体における開発需要は堅調であるものの、一部で価格競争等による競合激化が生じているため、開発需要の減少や新規参入増加等により更に競争が激化した場合、あるいは競合他社の技術力やサービス力の向上により当社のサービス力が相対的に低下した場合には、受注減少、保守・運用契約の解約等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクの対応策として、競合他社の動向を把握し、市場における競争優位性の確保を図ってまいります。
⑤ 部品調達について
当社グループにおける一部の事業分野では、海外より部品調達を行っております。調達部品の仕入れ価格は、為替相場に大きく左右されることから、為替相場の大きな変動がある場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループでは、徹底したコスト管理を通じてコストダウンに努めると共に、変動リスクを回避する目的で為替予約等によるリスクヘッジを行っております。
(2) 事業内容について
① 見積違い及び納期遅延等の発生可能性について
当社グループにおけるソフトウェア開発業務及び半導体のテスト・設計等については、作業工程等に基づき発生コストを予測し見積りを行っておりますが、すべてのコストを正確に見積もることは困難であり、実績額が見積額を超えた場合には、低採算又は採算割れとなる可能性があります。また、当社が顧客との間であらかじめ定めた期日までに作業を完了・納品できなかった場合には遅延損害金、最終的に作業完了・納品できなかった場合には損害賠償責任が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、赤字プロジェクトの発生を未然に防止するため、見積段階でのリスク洗い出しと対策の徹底を図り、受注時には、一定額以上の大型案件については事業会社毎に然るべき会議体に諮り見積りの適正性を検討しております。また、受注後にはプロジェクト進捗状況のモニタリングを徹底しております。加えて、プロジェクトマネジメント力の向上を図るための教育を実施しております。
② 納品後の不具合について
当社グループにおけるソフトウェア開発業務等については、顧客への納品時に様々なテストを行いますが、システムの運用段階に至ってから不具合等が発見される場合があります。当連結会計年度末現在において、システムの不具合に関して顧客から訴訟等の損害賠償を請求された事実はありません。しかしながら、当社の過失によるシステムの不具合が顧客に損害を与えた場合には、損害賠償負担及び当社グループの社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループはサービスの品質・信頼性に係るリスク管理とその対応を行うための体制を構築・運用し、顧客に提供するサービスの品質向上に取り組んでおります。
(3) 事業体制について
① 人材の確保と育成について
当社グループの中核事業は知識集約型の業務であり、一定水準以上の専門技術、知識を有する技術者要員を確保する必要があります。今後、計画通りの人材を確保できない場合や中核となる優秀な人材の流出等があった場合、あるいは想定通りの人材育成ができなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは、計画的な採用活動を通じて新卒採用及び中途採用を実施し、人材の確保を図ると同時に、人材育成面においても教育研修を計画的に実施し、専門性の高い技術を有する人材の育成に注力しております。
② 協力会社の確保及び連携体制について
当社グループにおけるソフトウェア開発業務等については、開発業務の効率化、受託開発業務における受注量拡大及びコスト低減等を目的として、また多種多様な顧客ニーズに対応するため、開発業務等の一部について当社社員の管理統括のもと、パートナーと位置付ける協力会社への外部委託を活用しております。当社グループが事業拡大を図る上で、協力会社活用の重要性は一層高まるものと認識しており、協力会社の確保及びその連携体制の強化を積極的に推進していく方針であります。しかしながら、協力会社から十分な開発人員を確保できない場合、あるいは協力会社における問題等に起因してのプロジェクトの品質低下、開発遅延又は不具合等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、定期的に協力会社との情報交換会を実施している他、中核的な協力会社に対してはコアパートナー制度として中長期的な契約を締結する等、協力会社との良好な関係構築に努めております。
③ 従業員の安全衛生について
当社グループが展開するソフトウェア等の開発プロジェクトにおいては、当初計画にない想定外の事象が発生すること等が原因で、品質や納期を厳守するために時間外労働や休日労働が連続することがあります。やむを得ない事情によりこのような事象が発生した場合には、それらを起因とする健康問題の発生や生産性の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループでは、労働時間管理の徹底、労働安全衛生法その他法令や通達の遵守等の安全衛生管理に努めております。また、内部監査を通じて、過度な超過勤務が認められる事業会社に対しては注意喚起を行っております。
(4) 法的規制等について
① 労働者派遣における法的規制等について
当社グループが展開する事業の一部において、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に基づく労働者派遣事業許可、並びに「職業安定法」に基づく有料職業紹介事業許可を取得して事業を運営しております。当社グループは法令遵守を徹底し、当該法的規制等に抵触する事実はないものと認識しておりますが、今後何らかの理由により派遣元事業主としての欠格事由及び当該許可の取消事由に該当し、業務の全部もしくは一部の停止処分を受けた場合、又は法的な規制が変更になった場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、顧問弁護士及び法務部門による関係部署に対する労働基準法等の指導に努めると共に、法律の改正や新規制定を確認しながら、法令遵守に努めております。
② 知的財産権の対応について
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することがないよう、第三者の知的財産権との抵触の有無について可能な限り確認し、その権利を侵害しないよう留意しております。当連結会計年度末現在において、過去に第三者から知的財産権の侵害訴訟を提起された事実はありません。しかしながら、当社グループの認識していない知的財産権が既に成立している可能性や、当社グループの事業分野で第三者による知的財産権が成立する可能性があること等から、当社グループによる第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性は否定できず、過失により当社グループの役員あるいは従業員が第三者の知的財産権を侵害する事態が発生した場合には、当社グループが損害賠償を含む法的責任を負う可能性がある他、当社グループの社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、新たに知的財産権の取得を行う際には適切な契約の締結・管理を行い、第三者の知的財産権を侵害する恐れがある場合には、事前に専門家による情報収集・調査等を行い、他社の知的財産権を侵害しないよう十分に配慮しております。
③ 情報管理について
当社グループは業務に関連して顧客の機密情報や個人情報を保有しているため、当該情報について社内規程に基づく厳格な管理を行っております。当社グループにおいて機密情報・個人情報を取り扱う事業会社については、「プライバシーマーク」使用の認証を取得しております。本書発表日現在において、過去に当社グループより個人情報あるいは機密情報の重大な漏洩が起きた事実はありません。また、これらに起因する損害賠償請求を受けた事実もありません。しかしながら、不正アクセスその他により、万が一情報漏洩が発生した場合には、当社グループの社会的信用の失墜により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループのうち個人情報を取り扱う事業会社についてはプライバシーマークを取得しております。また、情報漏洩、不正アクセスを防止するための環境整備、社内での定期的な情報セキュリティ研修を実施し、情報管理の徹底及びセキュリティ強化に努めております。また、近年より多様化・巧妙化するサイバーセキュリティ脅威に対して、コンピュータウィルス検知・除去システムの他、適切なサイバーセキュリティソフトを当社グループ全社で導入し、安全対策を行っております。
④ 安全規格について
当社グループの一部事業においては、直流電源装置等の電気用品に属する製品には、これを利用する消費者の安全を確保する目的で制定された電気用品安全法による規制等を受けております。また、海外では、消費者及び公共の安全を目的とする安全規格に関する法的規制等を受け、米国ではULマークの認証取得などそれぞれの国において安全基準に適合することが要求されております。安全規格に関する法的規制等に関して、予期しない新設、改正、変更等が行われた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクの対応策として、当社グループは、各国の法的規制及び安全規格に関する法令及び規制の改正等について恒常的に情報を収集しながら法令遵守に努めております。
(5) その他
① M&A等について
当社グループは、企業価値向上に向けた既存事業の拡大や有望市場への進出のため、事業戦略の一環としてM&Aや戦略的提携を推進していく方針であります。その実施に際しては、対象企業の事業内容や契約関係、財務内容等について、投資の規模やリスク等に応じて適切なデューデリジェンスを行ってリスクを回避するよう努めております。しかしながらデューデリジェンスにおいて未認識債務等を発見できなかった場合や、M&A等の実施後に当初期待した成果をあげられない場合には、のれんの減損処理を行う必要性が生じる等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、M&A等の意思決定においては、社外専門家による法務面・財務面及び事業内容についてのデューデリジェンスの実施結果を踏まえ、機関決定の場で慎重に審議しております。M&A等の実施後は、事業計画に対する実績達成度のモニタリングを行い、適宜適切なリスク管理に努めております。
② 保有投資有価証券及び貸付金について
当社グループでは、事業上の関係構築等を目的とした投資有価証券及び貸付金を保有しており、このような投融資等は今後も行う可能性があります。投資有価証券及び貸付金の評価は投融資先の財政状態や経営成績等の個別の事情又は株式市場等の動向に依存いたします。当社グループが保有する投資有価証券及び貸付金について、投融資先の企業価値が低下あるいは信用状態が悪化した場合、投資有価証券評価損あるいは貸倒引当金繰入の計上により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当該投資有価証券及び貸付金については、投融資先の財務状況等に関する定期的なモニタリング並びにタイムリーな情報収集を行うことでリスク低減に努めております。また、政策保有の目的で保有する株式については、年に一度、取締役会において個別に保有の適否を判断するとともに、非上場株式等については、当該会社の純資産、投資時からの事業計画の進捗、将来見込み等を継続的に精査し、リスクを軽減する施策を講じております。
③ 訴訟等について
当社グループの事業活動に関連して、前述の「(2)-① 見積違い及び納期遅延等の発生可能性について」、「(2)-② 納品後の不具合について」、「(4)-① 労働者派遣における法的規制等について」、「(4)-② 知的財産権の対応について」、「(4)-③ 情報管理について」において説明したリスク等により、当該第三者が当社グループに対して訴訟その他の請求を提起される可能性があります。これらの結果、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、新たに発生したリスクあるいは今まで顕在していなかったビジネスリスクによって、現時点で想定されない訴訟等が提起される可能性があります。一方、当社グループが第三者に何らかの権利を侵害され、又は損害を被った場合に、訴訟等による当社グループの権利保護のために多大な費用を要し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは法令遵守を徹底し、内部管理体制の構築及びコンプライアンス体制の充実に努めております。
④ 自然災害等について
地震、火災等の自然災害や、戦争、テロ、新型インフルエンザの流行等により、当社グループにおいて人的被害又は物的被害が生じた場合、又は、外部通信インフラ、コンピュータネットワークに障害が生じた場合等の事由によって当社グループの事業の継続に支障が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
本リスクへの対応策として、当社グループは、安否確認システムの導入、防災訓練、データセンターの分散等の災害発生時のリスクへの対応強化に努めております。
⑤ 気候変動について
当社グループでは、気候変動への対応をサステナビリティ経営上の最重要課題の一つと認識しております。気候変動に起因する自然災害の激甚化により、事業所やサプライチェーンが被災した場合には、生産活動の停止による機会損失等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動対策への取組みに関する社会的要請が高まる中、当該取組みが不十分であった場合やステークホルダーからの理解が十分に得られなかった場合には、社会的信用の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。加えて、気候変動対策に関連する新たな法令や規制の導入がなされた場合には、対応費用の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループとしては、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動に係るリスクと機会の事業への影響について、継続的に分析を行い、積極的な情報開示に努めてまいります。
⑥ 人権侵害について
当社グループ内のみならず、取引先を含めた当社グループ事業に関わる事業領域全体で人権を侵害する行為が発生した場合、当社グループの社会的信用の失墜やブランド価値の毀損等が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、2011年6月に国連人権理事会で採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「PCIグループ人権方針」を定め、これを人権に関する最上位の方針として位置付けております。
当社グループとしては、人権に関する社員教育や啓発、サステナビリティ委員会における定期的なモニタリング等を実施すると共に、社外仕入先等の取引先に対しても、直接的に確認・調査を行う体制を整備する等、当リスクの適切な管理に努めてまいります。
⑦ 各種感染症拡大について
社会経済活動全般に大きな影響を及ぼす感染症が発生し、拡大かつ長期化した場合には、顧客のIT投資活動の抑制や製品開発計画の中止等により、受注が減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、従業員や協力会社社員等への感染が著しく拡大した場合、納期遅延や開発スケジュール遅れ等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、リモートワークやWeb会議システムの積極的活用等、効率的な事業運営を実施しておりますが、有事の際には感染拡大を防止するため、オフィス入室時の手洗い及び手指消毒、マスク着用等の衛生管理の徹底や時差出勤の推奨等、事業リスクの最小化に向けた施策を推進いたします。
(※1) ターンキーメーカー:半導体の設計から製造までの各工程を複数の専門企業に委託し、これらの開発工程全般につきコーディネートする企業のこと
経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症に移行され、各種政策・行動制限の緩和により、経済活動の正常化に向けた動きが進みました。一方で、ウクライナ情勢をめぐる地政学リスクの長期化、エネルギー資源や原材料の価格高騰、円安による物価の上昇等により、依然として先行き不透明な状況下で推移いたしました。
当社グループが属する情報サービス産業におきましては、ICT、IoT、人工知能(AI)等の先端技術を活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進展し、それに伴うIT投資需要は堅調に推移いたしました。しかしながら、IT人材不足は常態化しており、特に先端IT人材の確保とリスキリングによる技術力向上が課題となっております。
このような状況下において、当社グループは、継続的な新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を講じつつ、2023年9月期を最終年度とした中期経営計画「PCI-VISION2023」を推進してまいりました。既存事業においては目標達成に向けて着実な推進を図るとともに、経営の合理化を目的としたグループ内再編を実施し、2022年10月1日付にてPCIソリューションズ株式会社(存続会社)による株式会社シー・エル・シーの吸収合併を行いました。また、新たな事業領域の獲得や拡充を企図して、2023年1月に生鮮流通業向けシステム開発事業及びERPソリューション事業を展開するパーソナル情報システム株式会社を、2023年7月には制御系システム開発に強みを持つ株式会社エヌエスアールを連結子会社化(孫会社)いたしました。なお、新たに連結子会社となったパーソナル情報システム株式会社の売上高及び損益は当連結会計年度の2月、株式会社エヌエスアールの売上高及び損益は7月より連結財務諸表に取り込んでおります。
2022年11月には、サステナビリティ委員会が中心となって議論し、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明いたしました。また、2023年6月にはマテリアリティを特定するとともに、「PCIグループ人権方針」を策定し、公表いたしました。当社は、これらに示した方針に基づき、持続的成長を目指して事業活動を推進しております。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は28,491百万円(前連結会計年度比13.2%増)、営業利益は1,709百万円(前連結会計年度比18.3%増)、経常利益は1,774百万円(前連結会計年度比14.6%増)となりました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益は、当社連結子会社であった株式会社りーふねっとの全株式の譲渡による関係会社株式売却益を特別利益として計上した他、保有する有価証券のうち簿価に比べて実質価額が著しく下落したものについて投資有価証券評価損を特別損失として計上したこと等により、1,008百万円(前連結会計年度比56.8%増)となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりであります。
ITソリューション事業につきましては、売上高は23,120百万円(前連結会計年度比12.7%増)となり、セグメント利益は1,160百万円(前連結会計年度比17.0%増)となりました。
以下では、ITソリューション事業における概況と売上高を主要区分別に示します。
ソフトウェア開発においては、CASE(※1)による次世代モビリティの牽引により、自動車及び重機・建機関連案件が堅調に推移した他、カメラ・センサー系開発案件、通信・専用装置開発案件が増大いたしました。ハードウェア開発においては、前連結会計年度からの部材高騰による影響が継続いたしましたが、徐々に販売価格の適正化が進み、収益性改善の兆しが見られました。また、医療向けシステムの大型案件を受注し、売上に寄与いたしました。
以上の結果、売上高は13,260百万円(前連結会計年度比6.7%増)となりました。
企業の継続的なデジタル化・DXの推進加速を背景に、産業・流通向け及び金融向けソフトウェア開発案件が堅調に推移した他、キッティング業務等の請負案件が収益に寄与いたしました。また、新たに連結子会社となったパーソナル情報システム株式会社の業績を第2四半期連結累計期間の2月より、株式会社エヌエスアールの業績を第4四半期連結累計期間の7月より計上しており、パーソナル情報システム株式会社が展開する生鮮流通業向けソリューション等が収益の拡大に貢献いたしました。
以上の結果、売上高は9,860百万円(前連結会計年度比21.8%増)となりました。
IoT/IoEソリューション事業につきましては、売上高は2,933百万円(前連結会計年度比21.4%増)となり、セグメント利益は341百万円(前連結会計年度比40.8%増)となりました。
利益率の高い事業者識別番号を活用した通信事業が収益に大きく寄与した他、重機・建機向けIoT関連開発が堅調に推移いたしました。また、これまで研究開発を進めてきたAI画像認識等の要素技術を活用したAIカメラ画像解析システムを開発し、売上に寄与いたしました。
半導体トータルソリューション事業につきましては、売上高は2,505百万円(前連結会計年度比7.8%増)となり、セグメント利益は228百万円(前連結会計年度比1.2%増)となりました。
当連結会計年度の前半は世界的な半導体需要の停滞感がありましたが、インフラ・IoT等に係る半導体潜在需要は引き続き強く、LSI設計・テスト開発における引き合いが継続したことに加え、グループ企業間及び協業企業との連携による案件の継続受注等、総じて堅調に推移いたしました。
(注)上記に用いられている用語の説明は以下のとおりであります。
(※1)CASE:「Connected」「Autonomous」「Shared」「Electric」の頭文字を取った造語。
今後の報告セグメントについて
当社は、2023年6月27日公表の「報告セグメント変更に関するお知らせ」に記載のとおり、2024年9月期から開始となる次期中期経営計画の実行に向け、より戦略的な経営資源配分の実施等を目的に、セグメント区分の見直しを行い、報告セグメントを変更することといたしました。これにより、2024年9月期第1四半期以降の当社報告セグメントは、「エンジニアリング事業」、「プロダクト/デバイス事業」及び「ICTソリューション事業」の3セグメントとなります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,417百万円増加し、4,035百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
営業活動により得られた資金は2,039百万円(前連結会計年度は736百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,932百万円、減価償却費169百万円、のれん償却額217百万円、棚卸資産の減少282百万円、未払金の増加193百万円、契約負債の増加235百万円があった一方で、売上債権及び契約資産の増加584百万円、法人税等の支払額572百万円があったことによるものであります。
投資活動により得られた資金は259百万円(前連結会計年度は193百万円の支出)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入1,435百万円があった一方で、有形固定資産の取得による支出128百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出679百万円、貸付けによる支出430百万円があったことによるものであります。
財務活動により使用した資金は884百万円(前連結会計年度は1,227百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出932百万円があったことによるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
(注) 金額は、製造原価によっております。
(2) 受注実績
当社グループの事業は、受注から売上計上までの所要日数が短く、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため、記載を省略しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき、合理的に判断して行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(2) 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度における総資産は、17,627百万円(前連結会計年度は16,915百万円)となり、712百万円増加しました。
流動資産は12,505百万円(前連結会計年度は11,205百万円)となり、1,299百万円増加しました。その主な要因は、現金及び預金の増加1,478百万円、電子記録債権の増加354百万円の一方で、棚卸資産の減少280百万円によるものであります。
固定資産は5,120百万円(前連結会計年度は5,709百万円)となり、589百万円減少しました。有形固定資産は854百万円(前連結会計年度は952百万円)となり、97百万円の減少、無形固定資産は1,847百万円(前連結会計年度は2,261百万円)となり、414百万円の減少、投資その他の資産は2,418百万円(前連結会計年度は2,495百万円)となり、76百万円減少しました。有形固定資産の減少の主な要因は、建物附属設備の減少34百万円であります。無形固定資産の減少の主な要因は、のれんの減少370百万円であります。投資その他の資産の減少の主な要因は、繰延税金資産の減少103百万円であります。
(負債)
当連結会計年度における負債は、8,528百万円(前連結会計年度は8,541百万円)となり、12百万円減少しました。流動負債は6,998百万円(前連結会計年度は6,509百万円)となり、489百万円増加しました。その主な要因は、契約負債の増加269百万円、未払法人税等の増加109百万円、その他の増加7百万円によるものであります。
固定負債は1,530百万円(前連結会計年度は2,031百万円)となり、501百万円減少しました。その主な要因は、長期借入金の減少371百万円によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産は、9,098百万円(前連結会計年度は8,374百万円)となり、724百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益1,008百万円の計上や配当金の支払322百万円等により利益剰余金が686百万円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は48.7%(前連結会計年度末は45.9%)となりました。
(3) 経営成績の分析
(売上高)
売上高は、28,491百万円(前連結会計年度比13.2%増)となりました。ITソリューション事業のうち、エンベデッドソリューション分野においては、自動車関連や、カメラ・センサー系の開発案件が堅調に推移しました。また、ビジネスソリューション分野においては、産業・流通や金融向けのソフトウェア開発が伸長したことに加え、新規連結2社の影響もあり、好調に推移しました。IoT/IoEソリューション事業では、株式会社りーふねっとの通信事業が継続して好調だったほか、AIによる画像解析のソリューションが寄与したことにより、売上が伸長しました。半導体トータルソリューション事業では、LSIの設計やテスト開発等のフェーズにおける根強い需要がある中、新規案件の掘り起こしにも努めたことで増収となりました。
(売上原価)
売上原価は、21,556百万円(前連結会計年度比14.5%増)となりました。特に株式会社ソードのハードウェア生産においては、上期に部材価格が昨年来高騰している影響があったものの、下期は取引先との交渉による価格転嫁が進み採算性が改善しております。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、5,225百万円(前連結会計年度比6.7%増)となりました。経営の合理化を進める中で人員効率の改善、再配置に努めた一方で、事業の積極的な拡大や将来への布石を目的として、販売促進費、採用・教育費等への支出は増加しました。
この結果、営業利益は1,709百万円(前連結会計年度比18.3%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は81百万円(前連結会計年度比31.9%減)、営業外費用は16百万円(前連結会計年度比8.4%増)となりました。
営業外収益の主な内訳は、受取利息及び配当金21百万円や保険解約返戻金43百万円であります。また、営業外費用の主な内訳は、支払利息8百万円や為替差損4百万円であります。
この結果、経常利益は1,774百万円(前連結会計年度比14.6%増)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)
特別利益は302百万円(前連結会計年度は計上なし)、特別損失は145百万円(前連結会計年度比228百万円減)となりました。
特別利益の主な内訳は投資有価証券売却益32百万円、株式会社りーふねっとの株式譲渡による関係会社株式売却益256百万円、特別損失の主な内訳は投資有価証券評価損138百万円であります。
この結果、税金等調整前当期純利益は1,932百万円(前連結会計年度比64.4%増)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税等合計は、前連結会計年度においてグループ内再編に伴う税金費用の減少があったこと等により、835百万円(前連結会計年度比133.4%増)となりました。
また、非支配株主に帰属する当期純利益は88百万円(前連結会計年度比49.0%減)となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,008百万円(前連結会計年度比56.8%増)となりました。
(4) 資本の財源及び資金の流動性
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要は主に運転資金需要と投資資金需要の2つがあります。
運転資金需要のうち主なものは、ビジネスパートナー獲得のための費用の他、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、IoT関連などを含む各種の事業開発投資に加えて、最先端技術の獲得、顧客基盤の強化、あるいは事業成長の加速に資するM&Aの検討を継続的に行っております。
これら資金需要につきましては、基本的には営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする自己資金にて対応する考えでおりますが、必要に応じて、後述の強固な財務基盤を背景にした多様な資金調達(金融機関からの借入、各種社債の発行等)にて対応する所存です。
なお、当社グループの2023年9月末時点における、銀行借入等を通じた有利子負債が1,595百万円であるのに対し、現金及び現金同等物は4,035百万円と有利子負債を上回る水準となっており、強固な財務基盤を実現しております。
手許の運転資金につきましては、当社及び連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネージメント・サービス)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理を行うことで、十分な流動性を確保するとともに、資金効率の最適化を図っております。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注3)キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を利用しております。
(注4)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。事業環境、事業内容、事業運営体制等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部監査体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
(6) 経営戦略の現状と見通し
経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(7) 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは、「我々は、お客様の満足を通じて全社員の幸せを追求し、そして社会の発展に貢献します」を企業理念として掲げております。この企業理念のもと、当社グループが今後さらなる成長と発展を遂げるためには、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した課題に適切に対処していくことが必要であると認識しております。
当社は、2023年6月27日開催の取締役会において、当社の完全子会社である株式会社りーふねっとの全株式を、同社の現代表取締役 岡丈詞が設立する特別目的会社へ譲渡することに関する基本合意契約を締結することを決議するとともに、同日、基本合意契約を締結いたしました。これに基づき、2023年8月25日付で、上記特別目的会社として設立された株式会社リーフホールディングスとの間で株式譲渡契約を締結し、2023年9月1日に本株式譲渡を実施いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当社グループでは、高度化・多様化する最新の情報技術を取り込み、新規サービス・製品の開発及び既存サービスの進化のための研究開発活動を推進しております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究の目的、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。
医療機器のMRIや超音波診断装置で利用されているコントローラーや、医療事務システム等で利用されている組込みパソコンの後継機の開発に取組み、最新主力後継機種として製品化を進めてまいりました。
多種多様なセンサを搭載したマルチセンシングモジュール(Multi Sensing Module)はSociety5.0に向けたIoTシステムに不可欠ですが、カスタム開発のコストや労力が大きいため、標準製品としてビジネス化に向けた検討を進めています。予防保全(メンテナンス)、故障予知(不良検知)をキーワードに、製品品質の確保や検査人員費抑制・技術技能者不足を補う生産性向上を目的としたソリューションの提案として、製品化に向けた現場検証を行っております。
③ インバーターボード(高電圧版/低電圧版)に係る研究開発
省エネ化、低炭素化を実現するには、モーターを高効率に制御することが不可欠であり、当社グループではエネルギーを無駄なく利用できるベクトル制御を用いたAC入力対応のモーター制御プラットフォームを開発いたしました。
ITソリューション事業に係る研究開発費は
防災・減災、観光サービス等においてリアルタイムな情報伝達を可能とする通信システム「V2X」の活用に係る研究開発に取組んでまいりました。V2X技術を適用し、当社グループの従前の研究開発の成果として既に社会実装された「バスロケーションシステム」に係る取組みを継続しております。
本基礎研究に関わる4つの柱である、「IoT・分散システム」「人工知能(AI) ・認識技術」「通信・コミュニケーション」「仮想空間」は、重要な役割を果たしている領域で、これらの領域における新技術の研究は、社会のさまざまな場面で活用されるようになることを期待して研究を進めております。
AI技術の分野においては、AIモデルの高い精度を維持するために継続的な変化に対応するためのAI学習を行う仕組みを確立し、AIモデルのパフォーマンスを安定的に維持することに成功しました。この技術は、すでに「太陽光発電所のスマート保安」「植物の育成状況モニタリング」等に活用されております。
長期における将来像を収集・分野毎にロードマップ、および調査レポートを作成いたしました。これらは、変化し続ける社会に対しての想定や技術の調査をし、それらを活用することで、将来を創造できるリーダーとして活躍することを目的にしております。
エリアの地図情報と位置情報活用アプリを連動させ、道路除雪状況や除雪作業実績の見える化を実現し、除雪車等位置情報システムの運用を開始しました。ICTの活用による産業の振興、市民生活環境の向上及び行政サービスの改善への取組みを継続しております。
IoT/IoEソリューション事業に係る研究開発費は
(注)上記に用いられる用語の説明は以下のとおりであります。
(※) V2X(Vehicle to X):
車と車(V2V)、車と交通インフラ(V2I)等、道路情報の提供や安全運転のための情報ネットワークです。