第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの「経営方針」「経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」「報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」は以下のとおりであります。

 

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、文中の当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(以下「KPI」といいます。)の各数値については、本有価証券報告書提出日現在において、予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 経営方針

当社グループは、以下のグループ経営理念および当社グループが中長期的に実現を目指す社会および社会に提供する価値を示した「SOMPOのパーパス」を定めております。

 

(グループ経営理念)

SOMPOグループは、お客さまの視点ですべての価値判断を行い、保険を基盤としてさらに幅広い事業活動を通じ、お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスをご提供し、社会に貢献します。

 

(SOMPOのパーパス)


(2) 経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等

① 経営環境および経営戦略

地球温暖化等を要因とする気候変動によって常態化しつつある自然災害の激甚化、現役世代を中心とした国内人口の急速な減少や高齢化、インフレの継続、金利や為替の急激な変動等による金融市場の不確実性、消費性向の多様化など、当社グループを取り巻く事業環境の変化の速度はますます加速しており、対処すべき社会課題は複雑化しております。また、ウクライナ情勢等の地政学リスクや国際的な政治情勢の変化、新型コロナウイルス感染症の感染者数の再拡大による影響も引き続き注視する必要があります。当社グループはこうした環境下においても、事業活動を通じて社会に価値を提供しながら、自らも持続的な成長を遂げることで、「安心・安全・健康のテーマパーク」を具現化していくことが、当社グループの社会的価値、経済的価値を高めることにもつながると考えております。

「安心・安全・健康のテーマパーク」とは、当社グループが、安心・安全・健康という抽象的な概念を目に見える形に変え、社会の中心である「人」の人生に寄り添い、デジタルテクノロジーなどのあらゆる先進技術を適切に活用することで、事業を通じて社会課題を解決するとともに、お客さまの人生や暮らしをひとつなぎで支えていく存在として社会貢献を果たすことを意図しております。当社グループは、中期経営計画で掲げた「規模と分散」「新たな顧客価値の創造」「働き方改革」の3つの基本戦略を通じて、グループの成長を支えるレジリエントなポートフォリオの構築、RDP戦略を始めとした社会課題解決のプラットフォーマーへの進化、「MYパーパス」に突き動かされる社員のチャレンジがイノベーションを生み出す企業文化の醸成を目指してまいります。

 

② 中期経営計画(2021~2023年度)および経営数値目標の進捗状況

当社グループは、グループの実質的な収益力と資本効率を示すために、修正連結利益、修正連結ROE、リスク分散比率および海外事業比率を経営数値目標としております。当期の修正連結利益は1,522億円、修正連結ROEは5.5%、リスク分散比率は40%、海外事業比率は61%となりました。

中期経営計画の最終年度となる2023年度は、引き続き基本戦略に基づき、各事業が資本効率を高めながら、グループベストを追求し、コングロマリット・プレミアムの最大化を目指してまいります。

当社グループの中期経営計画におけるグループ経営数値目標は次のとおりであります。

 

<グループ経営数値目標(修正連結利益・修正連結ROE・リスク分散比率・海外事業比率)>


(注)2023年度以降の事業部門別修正利益、修正連結利益、修正連結ROE、リスク分散比率および海外事業比率(地域分散比率)の計算方法は、以下のとおりであります。


※1 事業部門別修正利益は、一過性の損益またはグループ会社配当等の特殊要因を除く。

※2 一過性の変動要素を除いたOperating Income(=当期純利益-為替損益-有価証券売却・評価損益-減損損失など)で定義

※3 国内生命保険事業修正純資産=国内生命保険事業純資産(日本会計基準)+危険準備金(税引後)+価格変動準備金(税引後)+責任準備金補正(税引後)+未償却新契約費(税引後)

 

③ グループガバナンス体制

当社は、指名委員会等設置会社として、社外取締役を中心とした監督体制を整備しており、指名委員会、監査委員会および報酬委員会の3つの法定委員会では、いずれも社外取締役が委員長を務め、グループガバナンスの強化に向けた公正かつ活発な議論が行われております。指名委員会は、劇的に変化する事業環境を踏まえた役員選任方針やサクセッション・プラン等の策定、グループ会社を含めた役員の選任を審議しております。監査委員会は、経営陣との定期的なコミュニケーションに加え、内部監査部門とも連携した監査を通じて収集した情報に基づき、経営に対して必要な意見・提言を行っております。報酬委員会は、ガバナンスを効かせつつ効果的なインセンティブとなる報酬制度を設計し、グループCEOをはじめ各役員個別の報酬を決定するとともに、目指すべき報酬制度のあり方を検討しております。当社ではさらに、取締役会による執行部門に対する監督機能が十分に発揮されるよう、取締役会以外の場においても執行情報共有の機会を確保するなど、能動的かつ積極的にガバナンスの健全性と透明性を高めるための取組みを行っております。

業務執行体制においては、グループCEOおよびグループCOOの全体統括のもと、事業オーナー制およびグループ・チーフオフィサー制を採用しており、敏捷かつ柔軟な意思決定および業務執行ならびに権限・責任の明確化を図っております。取締役会が選任した執行役および執行役員が自らのミッションに邁進し、グループ全体としては、グループCEOの諮問機関かつ執行部門の最上位の会議体であるGlobal Executive CommitteeおよびグループCOOの諮問機関である経営執行協議会(Managerial Administrative Committee)の機能を最大限に活用することで、適時適切な経営議論と、グループの持続的な成長を支える実効性の高い執行体制の構築を目指してまいります。

 

当社グループは、自らが果たすべき役割を進化させ、企業価値を向上させるとともに、多様なステークホルダーに真摯に向き合いながら、様々な課題解決やサステナブルな社会の実現を目指してまいります。

 

(3) 報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等

① 国内損害保険事業
ア.経営環境および経営戦略

国内損害保険事業を取り巻く環境は大きく変化しており、自然災害の頻発化や激甚化、建物や設備の老朽化進行による火災事故の増加、インフレーションの進行による保険金支払単価の上昇などが利益拡大に向けての重石となっております。

損害保険ジャパン株式会社は、このような厳しい環境変化の中においても、SOMPOグループの中核会社として、グループが目指す「安心・安全・健康のテーマパーク」を具現化するため、収益力の回復に取組み、グループの成長に寄与してまいります。

 

イ.中期経営計画(2021~2023年度)およびKPIの進捗状況

国内損害保険事業では事業規模や実質的な収益力を示すため、「修正利益」、主要事業会社である損害保険ジャパン株式会社の「正味収入保険料」および「E/Iコンバインド・レシオ」を主要なKPIとしております。

国内損害保険事業の2022年度修正利益については、自然災害や大口事故の多発、新型コロナウイルス感染症に対する補償による傷害保険等の保険金の増加、さらには自動車保険における事故率や支払保険金単価の上昇を主因として、2022年11月公表の通期業績予想(以下「通期予想」といいます。)を27億円下回る320億円となりました。一方、同社の2022年度の正味収入保険料(除く自賠責・家計地震)は、20,147億円となり通期予想を180億円下回ったものの、火災保険や新種保険の好調な販売などにより、前年度比で729億円増加しました。また、同社のE/Iコンバインド・レシオは、損害率の悪化により、前年度比で7.3%増加し100.9%となり、当期純利益については、通期予想を369億円下回る1,080億円となりました。

中期経営計画においては、2023年度に修正利益1,509億円、E/Iコンバインド・レシオ91.7%の達成を計画しておりましたが、2022年度に発現した自然災害の激甚化・頻発化や自動車事故の保険金増加などの環境変化を踏まえ、修正利益800億円、E/Iコンバインド・レシオ97.3%へそれぞれ計画を修正しました。

なお、正味収入保険料については、火災保険や新種保険の順調な伸びを踏まえて計画値を20,000億円から20,474億円へ修正しております。

 

<主要なKPIの推移>


※損害保険ジャパン株式会社単体(除く自賠責・家計地震)

 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

国内損害保険事業を取り巻く経営環境が大きく変化したことを踏まえ、中期経営計画の最終年度となる2023年度においては、中期経営計画の達成に向けてアンダーライティングやプライシングの見直しなどの収益改善策、生産性の向上による事業費の削減に注力してまいります。

 

② 海外保険事業
ア.経営環境および経営戦略

世界の損害保険マーケットは、気候変動等の影響による自然災害の多様化・頻発化、ウクライナ情勢などの地政学リスクの増大、予想を上回る物価上昇など、引き続き不確実性の高い状況にあると認識しております。一方、このような環境下で日々変化するリスクに対する保険カバーのニーズは増しており、企業分野では大規模自然災害やソーシャルインフレーションによる賠償額の高騰化などに伴い、いまだハードマーケット環境にあり、収入保険料の増加につながっております。

海外保険事業では引き続き、収益性向上を伴う業界トップクラスの成長、規模の拡大に伴うさらなるオペレーションの効率化、規律あるM&Aを通じてグループ利益に貢献してまいります。

 

イ.中期経営計画(2021~2023年度)およびKPIの進捗状況

海外保険事業では、実質的な収益力を示すため、「修正利益」をKPIとしております。また、コマーシャル分野につきましては、収益性を伴う成長、規模と分散への貢献を示す「グロス保険料成長率」と「E/Iコンバインド・レシオ」もKPIとして設定しております。2022年度の修正利益は、前年度を315億円上回る933億円となり、目標達成に向けて順調に推移しております。Sompo Internationalコマーシャル部門におけるグロス保険料成長率はマーケットのレートアップ環境が緩やかになっているものの、通期予想を5.1ポイント上回る伸びで9.9%となり、KPIは既に達成しております。E/Iコンバインド・レシオは米国で発生したハリケーン・イアンをはじめとする自然災害の影響を受けたものの、前年度比では0.4ポイント改善し、92.4%になりました。

 

<KPIの推移>


※1 2023年度のSIコマーシャルには、Sompoシゴルタ、Sompoセグロス、アジア各社のコマーシャル事業(グロス保険料:889百万ドル)を含む

※2 除く本社経費

※3 出典:S&P IQ Pro。同業他社は、Allianz SE、American International Group, Inc.、Arch Capital Group Ltd.、Agro Group International Holdings, Ltd.、Assicurazioni Generali S.p.A.、AXA SA、AXIS Capital Holdings Limited、Chubb Limited、Everest Re Group, LTD.、Markel Corporation、RenaissanceRe Holdings Ltd.、SCOR SE、Swiss Re AG、The Hartford Financial Services Group, Inc.、The Travelers Companies, Inc.、W.R. Berkley Corporation、Zurich Insurance Group AG

 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

規模と分散を通じたさらなる成長と収益性に資する取組みとして、引受地域の拡大によるグローバルな販売網のさらなる拡充により、市場でトップクラスのソリューションを提供するために強固な事業基盤の構築に取り組んでまいります。これに加えて、規律あるアンダーライティング能力を活かし、新規ビジネスの獲得、元受・再保険ポートフォリオの最適化やプライシングの改善、金融市場環境を捉えた最適な資産運用により収益性の向上を目指してまいります。また、非連続な成長と分散の加速を支えるボルトオンM&Aなどを実施してまいります。

 

③ 国内生命保険事業
ア.経営環境および経営戦略

生命保険業界の経営環境は、少子高齢化の進展による保険ニーズの多様化、デジタル技術進展、低金利の常態化など、大きく変化しております。また、政府が掲げる「健康寿命の延伸」のもと、国民一人ひとりの健康づくりや疾病等の予防をサポートするため、官民一体となった取組みが進められております。

このような環境のもと、国内生命保険事業は、保険本来の機能である「万が一」への備え(Insurance)に加えて「毎日」に寄り添い健康を応援する機能(Healthcare)を組み合わせた新たな価値「Insurhealth®(インシュアヘルス)」を提供することにより、お客さまが健康になることを応援する「健康応援企業」の確立を目指しております。「Insurhealth®」を原動力として着実な成長を実現するとともに、お客さま本位の業務運営方針に基づき、従来の保険会社にはない新たな価値の提供を行い、お客さまから選ばれる保険会社を目指してまいります。

 

イ.中期経営計画(2021~2023年度)およびKPIの進捗状況

国内生命保険事業では、生命保険の会計上の特性として契約初年度は会計上の損失が生じ次年度以降に利益が発生するため、新契約が増加するほど利益が圧縮されることから、費用の発生時期を是正し、利益を一定平準化させる「修正利益」をKPIに採用しております。その他、「Insurhealth®」を原動力とする成長を測定する「新契約年換算保険料」※1、お客さまの数の拡大を測定する「保有契約件数」およびグループ資本効率向上のための金利リスク削減の進捗を測定する「ALM資産投入額」※2をKPIに採用しております。

2022年度の修正利益は、新型コロナウイルス感染症による保険金等支払の影響△220億円(対通期予想△197億円)を主因として、通期予想を171億円下回る178億円となりました。新契約年換算保険料は通期予想を98億円下回る361億円、保有契約件数は通期予想を0.2万件下回る471万件、ALM資産投入額は通期予想を1,893億円上回る4,893億円となりました。

2023年度は、引き続き「Insurhealth®」を原動力とした成長を、働き方改革を含めた生産性向上によって後押ししていくことにより、修正利益400億円、新契約年換算保険料460億円、保有契約件数500万件、ALM資産投入額3,000億円を目指し、「健康応援企業」の確立に向けた中期経営計画の達成を目指しております。

※1 新契約年換算保険料は、営業成績ベースであります。

※2 ALM資産投入額は、購入から売却を除いたネット購入額であり、30年債換算であります。

 

<KPIの推移>


 

ウ.KPI達成に向けた主な取組み

国内生命保険事業のビジョンである「健康応援企業」の確立を目指し、その実現を加速化させるべく、次の戦略4本柱に取り組んでまいります。

a.「Insurhealth®」を原動力とした成長

これまでの取組みを徹底し、営業体制の筋肉質化を図るとともに、ニューマーケット・ニューチャネル開拓をベースとした高効率ビジネスモデルを確立し、飛躍的な成長を図ってまいります。

b.働き方改革

社員の成長とスキル発揮を支える基盤構築および競争力の高い事業費構造といった抜本的生産性・効率性向上を図ってまいります。

c.デジタル/データによる成長加速

ダイレクト、サービス起点のビジネス、CX等を発展させ、デジタル・データ活用を梃子とすることで新収益源を確立し、戦略の柱a.に織り込むことで成長加速を目指してまいります。

d.ひまわりブランドの確立

戦略の柱a.~c.を通じ、「Insurhealth®」を始めとしたSOMPOひまわり生命保険株式会社ならではのお客さまへの提供価値を明確化し発信することで、健康応援企業としての社会的認知向上と成長の後押しを図ってまいります。

 

④ 介護・シニア事業
ア.経営環境および経営戦略

急速に進展する高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者は増加し、今後も国内の介護市場は拡大することが見込まれております。その一方で、生産年齢人口の減少に伴い、介護を支える労働力の減少が見込まれており、持続可能な事業モデルを確立するためには、品質を伴う生産性の向上や人材確保・育成が喫緊の経営課題であると認識しております。

 

イ.中期経営計画(2021~2023年度)およびKPIの進捗状況

介護・シニア事業では、実質的な収益力を示す「修正利益」、成長力を示す「売上高」をKPIとしております。また、当社グループの介護事業における収益の多くを居住系サービスが占めていることから、併せて居住系サービスの「入居率」をKPIとしております。

2022年度のKPI進捗状況は、下半期に入居率が伸び悩んだ点や、原油高に伴う費用増などが影響し、修正利益は通期予想を1億円下回る59億円、売上高は通期予想を6億円下回る1,498億円、入居率は通期予想を1.3%下回る92.3%となりました。2023年度は施設・事業所の拡大、品質を伴った生産性向上などの取組みや23年2月に買収したエヌ・デーソフトウェア株式会社とのシナジー創出により、修正利益70億円、売上高1,788億円、入居率94.8%を目指しております。

 

※入居率は、年度末時点での数字であります。

 

<KPIの推移>


ウ.KPI達成に向けた主な取組み

介護・シニア事業では以下の3つの取組みにより、中期経営計画のKPIの達成と共に、社会価値の向上に努めてまいります。

a.介護オペレーターとして支える

感染症対策に十分留意しつつ営業活動を強化することにより、既存施設の入居率の向上を図ってまいります。また、新棟や新規事業所の開設、M&Aを効果的に組み合わせ、積極的な規模の拡大を目指すとともに、テクノロジー・リアルデータの活用を通じた圧倒的な品質・生産性向上へのチャレンジを通じて介護オペレーターとしてさらなる成長を目指してまいります。

b.エコシステムで支える

リアルデータを活用し、品質を伴った生産性向上に資するソリューションを他の介護事業者へ提供する「egaku」事業を開始しております。SOMPOのノウハウやサービスを提供するソリューション事業と併せて介護業界の持続可能性向上に貢献してまいります。

c.アクティブシニアを支える

デジタルを活用しながらシニアと接点を持つことで、各地域の特性に応じた地域包括ケアシステムの実現とDX化に貢献するスマートコミュニティ事業の事業化や、認知機能低下を早期に発見し、早期に対応が取れる社会の実現に向け、SOMPOスマイル・エイジングプログラム(SSAP)を一部の利用者向けに展開しております。今後は利用者の対象範囲を拡大するなど、健康寿命の延伸に貢献してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、以下のとおりであります。

 

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。また、文中の「マテリアリティKPI」の各数値については、本有価証券報告書提出日現在において、予測できる事情などを基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

当社グループでは、長期のスパンで目指す姿および社会に提供する価値を「SOMPOのパーパス」として定めております。「SOMPOのパーパス」実現を通じて、サステナビリティおよび当社グループのサステナブルな成長を目指してまいります。

 

(1)ガバナンス

① 取締役会の役割

当社グループは、「SOMPOのパーパス」実現に向けた重点課題として7つのマテリアリティを定めるとともに、その取組みを駆動させるための共通のフレームワークとして「価値創造サイクル」を構築しております。

取締役会は、グループ全体の戦略や方針を定めるとともに、これらのパーパス実現に向けた執行役および執行役員の業務遂行状況を監督する役割を担っております。

 

② 執行役・執行役員の役割

グループCSuO(Chief Sustainability Officer)は、サステナビリティ領域の最高責任者として、パーパス経営とサステナビリティの推進を通じたブランド価値向上戦略、サステナブル経営戦略の策定・実行を担っております。グループCSuOの役割のうち気候変動をはじめとするグループのサステナブル経営戦略については、グループ各社のCSuO(サステナビリティの統括責任者を含む)およびCSOから構成される「グループサステナブル経営推進協議会」において、関連するリスク・機会の状況を踏まえてこれらへの対応について協議することで、グループCSuOの意思決定を支援するなど、グループ全体のサステナビリティ推進体制を構築しております。また、グループCSuOの業務執行のサポート機能としてサステナブル経営推進部を設置しております。

「SOMPOのパーパス」実現の原動力である人的資本については、グループCHRO(Group Chief Human Resource Officer)が、人事領域の最高責任者として、人的資本の価値を最大化する役割を担っております。

リスク管理については、取締役会が定める「SOMPOグループERM基本方針」に基づいてリスクコントロールシステムを構築しており、グループCEOの諮問機関であるGlobal Executive Committeeの下部組織であるグループERM委員会などを通じて、グループCRO(Chief Risk Officer)が各事業の抱えるリスクを網羅的に把握・評価し、当社グループに重大な影響を及ぼす可能性があるリスクを「重大リスク」と定め、その管理状況を定期的に取締役会およびグループCOOの諮問機関である経営執行協議会(Managerial Administrative Committee)等に報告し、対策の有効性等を検証しております。

 

(2)戦略

① パーパス実現に向けた重点課題(マテリアリティ)

2021年度からの中期経営計画では、事業活動を通じて社会課題を解決し社会価値と経済価値の双方の創出に取り組む「SDGs経営」を経営基盤の1つに位置づけております。その実践のために優先的に取り組む社会課題を抽出し「SOMPOのパーパス」実現に向けた重点課題である「マテリアリティ」として特定しております。


それぞれのマテリアリティにKPIを設定し各事業・各社の推進計画にも反映することで、取組みの進捗の可視化や課題把握を行うなど、実効性の高いPDCAサイクルを構築しております。

マテリアリティおよびマテリアリティKPIの詳細については、「SOMPOホールディングス 統合レポート2022」59頁~63頁に記載のとおりであります。

 

② パーパス実現に向けた共通フレームワーク「価値創造サイクル」

当社グループは、「SOMPOのパーパス」実現に向けたグループ共通のフレームワークとして「価値創造サイクル」を定め、グループの各社はその実践に取り組んでおります。「MYパーパス」に突き動かされる社員がI&D(インクルージョン&ダイバーシティ)にあふれる環境で自分らしく働き、チャレンジを繰り返すカルチャーを醸成する「原動力ルート」、共創志向にもとづく高品質なサービス提供により、信頼・共感を生み出す「既存ビジネスルート」、既存ビジネスから生み出されたデータを駆使し、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やSOMPO独自のビジネスモデルを創出するRDP(リアルデータプラットフォーム)の活用により新たなソリューションを提供する「新たな価値創造ルート」の3つで構成されております。事業活動を通じてこの3つを循環させて価値を生み出し続けることがSOMPOならではの価値創造であり、この価値創造サイクルの循環を強く、大きくすることで、企業価値の向上と「SOMPOのパーパス」実現を目指してまいります。

 


 

③ 中期経営計画期間における取組み方針

中期経営計画ではマテリアリティの1つである「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」の実現に向け、気候変動リスク・機会に対する複合的なアプローチを実践する「SOMPO気候アクション」として気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」の3つのアクションを掲げております。

SOMPO気候アクションの取組みの詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動関連情報開示(TCFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

 

④ 原動力となる人的資本
ア.「SOMPOのパーパス」浸透のアプローチ

当社グループでは、「SOMPOのパーパス」実現に向けた原動力は社員一人ひとりであるという考えのもと、社員一人ひとりが自らの人生の目的である「MYパーパス」に突き動かされ会社と個人のパーパスを重ね合わせ、内発的動機に基づいてチャレンジを繰り返すことでイノベーションを創出するという企業文化の醸成に取り組んでおります。価値観の多様性を積極的に受け入れ、社員一人ひとりが働くうえでまずは自分自身の「MYパーパス」に向き合うことが重要であるというアプローチを採用し、その浸透に向けて、トップの発信、現場の取組み、浸透の測定という3つの施策を連動させて展開しております。

 

イ.人材育成方針

当社グループでは、「SOMPOのパーパス」実現に向けて、人を資本として捉える人的資本経営を実践しており、社員一人ひとりの「MYパーパス」の追求に加えて、3つのコア・バリューである、「ミッション・ドリブン」「プロフェッショナリズム」「ダイバーシティ&インクルージョン」を共有する人材集団を目指しております。


2021年度からスタートした中期経営計画の3つの基本戦略の1つである「働き方改革」では、様々なグループ共通施策を展開するとともに、取組みが財務価値ひいては企業価値につながる道筋として人的資本のインパクトパスを可視化し、進捗確認および改善につなげております。

「ミッション・ドリブン」や「プロフェッショナリズム」を浸透させていくため、当社では、2020年4月に「ジョブ型人事制度」を導入しております。全グループ社員に対して開示・公募しており、各ポストで得られるスキル・経験や、それらのスキル・経験を活かすことで就くことのできる将来的な職務やポストをイメージして「MYパーパス」に基づくキャリアを描きやすいよう工夫しております。

また、社員が「自律的な学び」を仕組化・促進していくことを目的として、損害保険ジャパン株式会社では2020年10月に企業内オンライン大学「損保ジャパン大学」を設立し、場所や時間、現在の業務にとらわれることなく、様々な知識を得る機会を均等に提供しております。さらにデジタル人材の育成にも注力しており、3つの人材タイプ(DX企画人材、DX専門人材、DX活用人材)ごとに適した研修制度による効果的なデジタル人材育成を通じて既存事業のDXとデジタル新規事業創出の両立を目指しております。

そして、イノベーションやチャレンジを通じた企業価値向上に向けて、「MYパーパス」を起点とした「ダイバーシティ&インクルージョン」醸成・浸透にも力を入れております。「MYパーパス」を相互に尊重し認め合うことは、ジェンダー・障害の有無・国籍・年齢・職歴など、多様なバックグラウンドや価値観が共存したインクルーシブなカルチャーを醸成させるほか、企業経営における健全なジェンダーバランスや多様なバックグランドを持つ人員構成とすることは、トークニズムの排除、ガバナンス強化、イノベーションを通じた持続的成長に寄与すると考えております。

 

当社グループでは、経営上の意思決定に影響力を持つ女性管理職比率を30%以上、障害者雇用率を2.5%とする数値目標を設定し、2024年4月1日までの達成にむけて取組みを進めており、最高経営責任者(CEO)や役員など、グループ主要キーポスト(計86ポスト)におけるサクセッション・プランを策定しております。上記で掲げている数値目標や男女賃金格差および男性労働者の育児休業取得率の改善に向けて、意識変革に資するソフト面の取組み(例:「MYパーパス」の浸透、アンコンシャス・バイアス研修等)と多様な働き方を可能とするハード面の取組み(例:仕事と育児の両立支援制度を含む人事制度の拡充等)を組み合わせて取り組んでまいります。

 

ウ.人的資本のインパクトパスの可視化

当社では、「MYパーパス」の追求および多様な働き方によるエンゲージメント向上やダイバーシティ&インクルージョン等を通じた人的資本(組織力と個人力)の向上が強力なドライバーとなって、チャレンジ・イノベーションを創出し、短期・中期・長期の「未実現財務価値」の向上を通じて、持続的に財務価値を高めてまいります。

 ※財務諸表に表れない価値は一般的に「非財務価値」と呼ばれていますが、当社ではこれらが中長期的に財務価値・企業価値につながるものであることを踏まえ、「未実現財務価値」と呼んでおります。

 

当社では、人的資本のインパクトパスの可視化に注力し、各パスについてKPIを設定し、その進捗を測定するとともに、それぞれのつながりや相関について外部機関が公表する客観的なデータや当社グループ内のデータを用いて検証を行っております。

 

<インパクトパスと相関分析事例>


 


人的資本向上の取組みおよびインパクトパスの詳細については、「SOMPOホールディングス 統合レポート2022」42頁~45頁に記載のとおりであります。

 

(3)リスク管理

サステナビリティ関連のリスクについても他のリスクと同様に、当社の戦略的リスク経営(ERM)を支えるリスクコントロールシステムを通じて管理を行っております。

当社のリスクコントロールシステムはリスクアセスメントを起点とし、当社グループを取り巻くリスクを、網羅的に特定、分析、評価しております。サステナビリティ関連のリスクは、それ自体が当社に重大な影響を及ぼすリスク(重大リスク)または他の重大リスクを顕在化させる要因と捉えており、重大リスク管理の枠組みにおいて当社に影響を及ぼす具体的なシナリオを想定・評価し、グループベースでのリスク抑制に努めております。重大リスク管理の詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

サステナビリティ関連のリスクのうち人権リスクに関しては、各事業の事業プロセス(バリューチェーン全体)を対象に発生する可能性のある「潜在的な影響とリスク」を特定し、評価を行っております。評価にあたっては、「人権への影響度(深刻度、影響を受ける人数、救済可能性)」とそのリスクと「企業(自社)とのつながり」を評価軸とした定量的な分析を行い、リスク軽減対策に取り組んでおります。

気候変動リスクに関しては、当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼし、その影響が長期かつ不確実性を伴うことを踏まえ、「気候変動リスクフレームワーク」を構築しております。気候変動リスクの詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動関連情報開示(TCFD提言に基づく情報開示)」に記載のとおりであります。

 

(4)指標と目標

当社グループでは、「価値創造サイクル」における重要なレバーを定め、7つのマテリアリティに設定したKPIの中から重要な指標と目標を特定し、これらの進捗を定期的に測定することで、「SOMPOのパーパス」実現に向けた取組みの進捗を把握しております。

マテリアリティKPIの詳細については、「SOMPOホールディングス 統合レポート2022」62頁~63頁に記載のとおりであります。

また、気候関連の指標と目標については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動関連情報開示(TCFD提言に基づく情報開示)」、提出会社および連結子会社ごとの「女性管理職比率」「男性育児休業等取得率」「男女間賃金格差」については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりであります。


 

① リスクと機会を評価するための重要な指標

項目

実績値

MYパーパス研修受講率

2022年度 当社および国内グループ会社の受講率90%

女性管理職比率

28.1%(2023年4月1日現在)

従業員エンゲージメントスコア

2022年度 (国内)3.50pt (海外)4.12pt

あらゆる人々への病気・ケガへの備えに資する重点販売商品

2022年度 販売件数1.5万件 保険料27.5億円

安心・安全な次世代モビリティ社会への貢献に資する重点販売商品

2022年度 販売件数38.3万件 保険料17.8億円

自動車事故の保険金支払に関するお客さま満足度

2022年度 対前年比△0.8pt

Insurhealth®商品

2022年度 販売件数44万件 保有件数110万件

マイリンククロス会員数

2022年度 77万人

介護利用者数

2022年度 9.2万人

リアルデータプラットフォーム(RDP)活用商品・サービスの外販・収益化

2022年度 実績なし(2023年4月より事業化)

介護RDP(egaku)の営業利益

2022年度 実績なし(2023年4月より事業化)

介護RDP(egaku)が創出する社会インパクト

2022年度 実績なし(2023年4月より事業化)

 

 

② リスクと機会を管理するための重要な目標

項目

目標値

MYパーパス研修受講率

2023年度までに全対象者が受講完了(当社および国内グループ会社)

女性管理職比率

30%(2024年4月1日時点)

従業員エンゲージメントスコア

2023年度Gallup Q12の平均得点

(国内)3.70pt (海外)4.10pt

あらゆる人々への病気・ケガへの備えに資する重点販売商品

2023年度 対前年比増加

安心・安全な次世代モビリティ社会への貢献に資する重点販売商品

2023年度 対前年比増加

自動車事故の保険金支払に関するお客さま満足度(国内損害保険事業)

2023年度 対前年比改善

Insurhealth®商品

2023年度 販売件数42万件 保有件数130万件

マイリンククロス会員数

2023年度 100万人

介護利用者数

2023年度 10万人

リアルデータプラットフォーム(RDP)活用商品・サービスの外販・収益化

2023年度末までに2事業以上

介護RDP(egaku)の展開事業所数

2023年度 100事業所

介護RDP(egaku)の営業利益

2030年度 100億円

介護RDP(egaku)が創出する社会インパクト

2040年度 3.7兆円

 

 

 

 

●気候変動関連情報開示(TCFD提言に基づく情報開示)

(1)ガバナンス

気候変動対応に関するガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)ガバナンス」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

「SOMPOのパーパス」実現に向けた重点課題である「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」の実現に向けて、2021年度からの中期経営計画では、気候変動リスク・機会に対する複合的なアプローチを実践する「SOMPO気候アクション」により気候変動への「適応」、「緩和」、「社会のトランスフォーメーションへの貢献」の3つのアクションを掲げ、様々な取組みを行っております。


① 気候関連のリスクと機会

気候変動の進展による自然災害の激甚化や発生頻度の上昇、干ばつや慢性的な海面水位の上昇などの「物理的リスク」のみならず、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や新技術の進展が産業構造や市場の変化をもたらし、企業の財務やレピュテーションに様々な影響を与える「移行リスク」が顕在化する可能性があります。また、これらのリスクに付随して、企業の事業活動に起因する気候変動影響や炭素集約度の高い事業への投資、不適切な開示などによる法的責任を追及する気候変動訴訟が米国を中心にグローバルに増加しており、当社の損害保険事業における賠償責任保険の支払保険金を増大させる可能性があります(「賠償責任リスク」)。一方で、自然災害リスクの認識の強まりや社会構造の変革は、新たなサービス需要の創出や技術革新などのビジネス機会をもたらします。

当社は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)、NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)など外部機関の研究成果を踏まえて、気候変動が事業に与えるリスクと機会を整理し、中期(5~10年後:2030年頃)および長期(10~30年後:2050年頃)の時間軸で評価・分析・対応を進めております。気候変動による物理的リスク、移行リスクに伴う主な変化と、当社にとって重大な影響を及ぼすと想定されるリスクと機会は下表のとおりであり、内外環境の変化を踏まえて継続的に見直しを行っております。

 


② シナリオ分析
ア.物理的リスク

当社グループの損害保険事業は、台風や洪水、高潮などを含む自然災害の激甚化や発生頻度の上昇に伴う想定以上の保険金の支払いによる財務的影響を受ける可能性があります。リスクの定量的な把握に向けては、2018年以降、大学等の研究機関と連携することで科学的知見を踏まえた取組みを進めており、「アンサンブル気候予測データベース:d4PDF※1(database for Policy Decision making for Future climate change)」などの気象・気候ビッグデータを用いた大規模分析によって、台風や洪水、海面水位の変化の影響を受ける高潮の平均的な傾向変化や極端災害の発生傾向について、平均気温が上昇した気候下での長期的な影響を把握するための取組みを行っております。また、5~10年後の中期的な影響を分析・評価し事業戦略に活用しております。

当社グループは、UNEP FI(国連環境計画・金融イニシアティブ)のTCFD保険ワーキンググループに参画し、同ワーキンググループが2021年1月に公表したガイダンスに基づく簡易な定量分析ツール※2を用いた台風に関する影響度の試算を行っております。気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するNGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)が検討を行っているシナリオ分析の枠組みも活用して、引き続き分析を進めてまいります。

<試算結果>

台風の発生頻度     約△30%~+30%

1台風あたりの損害額  約+10%~+50%

 

また、米国ハリケーンや洪水など含む海外の自然災害に関しては、外部のリスクモデル会社や研究機関との提携を通じて気候変動による影響分析を進めており、自社独自のシナリオを構築し、海外自然災害リスクモデルへ適用する取組みを進めております。

 

※1 文部科学省の気候変動リスク情報創生プログラムにて開発されたアンサンブル気候予測データベースです。多数の実験例(アンサンブル)を活用することで、台風や集中豪雨などの極端現象の将来変化を確率的にかつ高精度に評価し、気候変化による自然災害がもたらす未来社会への影響についても確度の高い結論を導くことができます。

※2 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:国連気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書のRCP8.5シナリオに基づき、2050年と現在との間の台風の発生頻度や風速の変化を捉え、頻度や損害額の変化を算出するモデル。

 

なお、損害保険契約や再保険契約は短期契約が中心であり、激甚化する気象災害の発生傾向を踏まえた保険引受条件や再保険方針の見直しによって、保険金支払が想定以上となるリスクの抑制が可能です。また、グローバルな地理的分散や短期・中期の気候予測に基づく定量化、長期的なシナリオ分析による重大リスクの特定・評価などの多角的なアプローチにより、物理的リスクに対するレジリエンスの確保を図っております。

 

イ.移行リスク

脱炭素社会への移行が当社に及ぼす中長期的なインパクトを把握するため、下表のNGFSシナリオ※3を前提に、脱炭素社会への転換に向けた法規制の強化や世界経済の変化が企業に及ぼす「政策リスク」と気候変動の緩和や適応に向けた取組みによる「技術機会」についてMSCI社が提供するClimate Value-at-Risk(CVaR)※4を用いて、当社グループの保有資産に及ぼす影響を分析しております。

加えて、移行リスク削減に向け、脱炭素化への取組みが進んでいない企業への働きかけを促進することが重要であることから、同社が提供するImplied Temperature Rise(ITR)※5を用いて、当社の投資先企業が2100年度までに2℃の温暖化に抑える目標と整合的なGHG排出量削減目標を設定しているのかを定量的に分析しております。

 

※3 NGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)シナリオ

・NGFSが公表している気候変動シナリオであり、Delayed transition、Net Zero 2050、Current Policiesの3シナリオを分析

カテゴリー

シナリオ

概要

  Disorderly

(無秩序)

Delayed transition

(遅延移行)

2030年まで年間排出量が減少しない。温暖化を2℃に抑えるには強力な政策が必要。CO2除去は限定的。

  Orderly

(秩序的)

Net Zero 2050

(2050ネットゼロ)

厳格な排出削減政策とイノベーションにより、地球温暖化を1.5℃に抑制し、2050年頃に世界のCO2排出量を正味ゼロにすることを目指す。米国、EU、日本等の一部の国では、すべての温室効果ガスについてネットゼロを達成。

  Hot House World

(温暖化進行)

Current Policies

(現行政策)

現在実施されている政策のみが保持される想定。物理的リスクが高くなる。

 

※4 Climate Value-at-Risk (CVaR)

・気候変動に伴う政策の変化や災害による企業価値への影響を測定する手法の一つ。

・気候変動関連のリスクと機会から生じるコストと利益の将来価値を現在価値に割り引いたものであり、当社グループの資産運用ポートフォリオにおける各銘柄の保有時価ウェイトを考慮し、2022年3月末時点における影響度を算出。

※5 Implied Temperature Rise(ITR)

・2100年までに2℃の温暖化をもたらす可能性の程度を、度数(℃)で評価するフォワードルッキングな評価手法の一つ。

・投資先企業のGHG予測排出量(足元の排出量および企業が設定した削減目標をもとに算出)とカーボンバジェットの差分をもとに温度上昇への寄与度を表したものであり、当社グループの資産運用ポートフォリオにおける各銘柄の保有時価ウェイトを考慮し、2022年3月末時点における影響度を算出。

 

a.Climate Value-at-Risk(CVaR)

すべての資産において、Delayed transition(Disorderly:脱炭素化への急激な移行)シナリオが最大となります。また、保有資産別の比較では、政策リスク、技術機会の影響はいずれも国内株式が最大となり、Delayed Transition下においてそれぞれ△54.76%、42.55%となります。ただし、政策リスクと技術機会は相殺し合うため、政策リスクと技術機会を合わせた全体的な影響は国内社債の△18.62%が最も大きい結果となっております。これは、債券は額面以上で償還されることはなく、機会の影響が限定的であるためです。

 

 

<SOMPOグループ 資産別・NGFSシナリオ別 政策リスクと技術機会のCVaR分析結果>


・政策リスク:温暖化ガス削減目標を達成するために必要となる費用をスコープ1、2、3と段階ごとに算出した数値

・技術機会 :低炭素経済への移行を背景に、企業が保有する環境関連技術が生み出す事業機会のポテンシャルを算出した数値

出所:MSCI Climate Value-at-Risk、Implied Temperature Riseを用いてSOMPOホールディングス作成

 

 

b.Implied Temperature Rise(ITR)

ITRが2℃未満の企業の割合は、国内株式、外国株式、国内社債、外国社債ポートフォリオの時価ベースでそれぞれ58%、8%、65%、69%となっており、保有高が少なく一部銘柄の影響を大きく受ける外国株式以外はパリ協定で掲げる「2℃目標」と整合的なGHG排出量削減目標を設定している企業が過半数を占めております。一方で、ポートフォリオ全体では、国内株式、外国株式、国内社債、外国社債のITRはそれぞれ2.11℃、2.38℃、1.90℃、2.21℃と、国内社債を除き2℃を超えております。当社では分析結果を活用し、投資先企業へのエンゲージメントを通じて移行リスクの削減を進めてまいります。

 

SOMPOグループ 資産別 ITR分析結果>


(補足)本レポートには、MSCI Inc.、その関連会社、情報提供者(以下「MSCI関係者」)から提供された情報(以下「情報」)が含まれており、スコアの算出、格付け、内部使用にのみ使用されている場合があり、いかなる形態でも複製/再販したり、金融商品や指数の基礎または構成要素として使用することはできません。MSCI関係者は、本サイトに掲載されているデータまたは情報の正確性および完全性を保証するものではなく、商品性および特定目的への適合性を含め、すべての明示または黙示の保証を明示的に否認します。MSCI関係者は、本サイトのデータまたは本情報に関連する誤りや脱落、あるいは直接的、間接的、仕様的(利益損失を含む)な損害について、たとえその可能性を通知されていたとしても、いかなる責任も負うものではありません。

 

 

③ レジリエンス向上の取組み
ア.リスクへの対応

当社グループでは、保険引受先や投融資先の企業に対するグリーン移行支援を通じて社会の変化に対する企業のレジリエンスを高めると同時に、資産運用ポートフォリオの管理等により、移行リスク軽減に取り組んでおります。

投資先については、株式保有先のうち温室効果ガス(GHG)高排出の上位20社を中心とするエンゲージメントの強化により、グリーン移行を促進してまいります。公社債については満期償還時にGHG高排出セクターから低排出セクターへの入れ替えの促進等を通じて、資産運用ポートフォリオにおけるGHG排出量を2025年までに25%削減(2019年度比、株式・社債のGHG総排出量ベース)する目標を掲げ、移行リスクの削減と機会の捕捉を行ってまいります。また、保険引受については、新設・既設の石炭火力発電や炭鉱開発(一般炭)への新規の保険引受停止や、オイルサンドおよび北極野生生物保護区(Arctic National Wildlife Refuge)でのエネルギー採掘プロジェクトへの新規保険契約を停止する方針を掲げ、ネットゼロ社会への移行を後押ししてまいります。ただし、二酸化炭素回収・利用・貯留技術(CCS、CCUS)やアンモニア混焼等の革新的な技術を有するなど、パリ協定の実現に資する削減効果が認められる場合には慎重に検討し対応する場合があります。

自社のGHG削減については、2030年までに2017年比で60%削減する目標を掲げております。その実現に向け、所有ビルの電力を再生可能エネルギー由来に切り替えるなど、目標達成に向けたロードマップに沿って着実に取組みを進めております。

 

イ.機会への対応

当社グループでは、「AgriSompo」による農業保険のグローバル展開を通じた食料安定供給への貢献や、気候リスクコンサルティングサービスの開発・提供等、製品・サービスを通じた自然災害レジリエンスの向上に取り組んでおります。

エネルギー源については、「ONE SOMPO WINDサービス」(洋上風力発電事業者向け保険・リスクマネジメントサービス)をはじめとする再生可能エネルギーの普及に貢献する商品・サービスを展開するとともに、取引先との協業等によるカーボンニュートラルに貢献する新たな商品・サービスの開発にも取り組んでまいります。

また、ネットゼロ社会の実現に向けて、世界の様々な組織や団体等において、規制やガイダンス策定等の議論が活発に行われております。当社グループでは、これらのルールメイキングに対して積極的に関与しリードすることにより、社会のトランスフォーメーションに貢献するとともに、これらの取組みを通じた知見の蓄積やレピュテーションの向上によってパートナーを呼び込むなどグループのビジネス機会の創出・拡大を図ってまいります。

 

(3)リスク管理

当社は、グループの経営理念・パーパスおよび経営計画における目指す姿の実現に向けて、その達成確度を高めるためにリスクアペタイトフレームワークを構築し、「取るリスク」、「回避するリスク」を明確にしております。

自然災害リスクについても、リスクアペタイトを明確化するとともに、自然災害が発生した場合に想定される保険金支払を気象学等の科学的知見や当社商品特性を踏まえて定量的に把握したうえで、財務健全性や収益性、利益安定性への影響、再保険マーケットの動向等をふまえて、再保険方針およびグループ全体のリスク保有戦略を策定し、管理しております。

気候変動リスクは、戦略的リスク経営(ERM)のリスクコントロールシステムの重大リスク管理、自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理の枠組みにおいて、多角的なアプローチでコントロールしております。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)主要なリスク」をご参照ください。

「SOMPOのパーパス」実現に向けた重点課題として挙げたマテリアリティの1つである「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」の実現に向け、「SOMPO気候アクション」の実践として気候変動リスクフレームワークを通じた中期・長期の気候関連のリスクと機会の評価、これらに基づくシナリオ分析(物理的リスク・移行リスク)を実施するとともに、これらのリスク機会へのレジリエンス向上を高めるための各種の取組みを行っております。

 

① 気候変動リスクフレームワーク(気候変動リスクの特定、評価および管理)

自然災害リスクを含む気候変動リスクに関しては、気候変動が保険事業以外を含めた当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼすこと、その影響が長期にわたり、不確実性が高いことを踏まえて、既存のリスクコントロールシステムを補完し、長期的な気候変動が様々な波及経路を通じて当社グループに影響を及ぼすシナリオを深く考察してリスクを特定・評価および管理するための気候変動リスクフレームワークを構築しております。

気候変動リスクフレームワークでは、気候変動の複雑な影響を捕捉するために、以下の3ステップで評価を行い、「(2)戦略 ① 気候関連のリスクと機会」で述べたリスクと機会を整理しております。

 


 

リスク評価にあたり、平均気温の変化を示すIPCCのシナリオと政策移行を示すNGFSのシナリオを組み合わせた「低位」「中位」「高位」の3つの環境変化のパターン(下表「環境変化のパターン」)を選定しました。また、当社に及ぼす影響の波及経路・内容をシナリオで想定したうえで(下図「リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)」、パターンごとにリスクを評価しております。

 

<表:環境変化のパターン(低位・中位・高位)>

 

IPCC

NGFS

低位

SSP1-1.9

Orderly / Net Zero 2050

中位

SSP-2-4.5

Disorderly/Delayed Transition

高位

SSP5-8.5

Hot House World/ Current Policy

 

 

<リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)>


 

アセスメント結果を踏まえて継続的なモニタリングが必要なリスクは「気候変動リスクマップ」として可視化し、主に保険引受および資産運用に影響を与えるリスクの影響度、可能性、発現時期、傾向などを俯瞰することで、取締役会および執行の諸機関における気候変動に関する議論の活発化を図っております。

 

<アセスメント結果を踏まえたリスクマップ>


 

② その他のリスク

アセスメントに用いたシナリオは保険引受と資産運用について実施しましたが、「訴訟等の法的な影響」については保険引受・資産運用以外の当社事業活動に影響を与える可能性があると考えております。リスク評価における影響度・可能性はそれぞれ中程度相当と想定しており、引き続き情報収集および分析を行い、リスクの把握に努めてまいります。

 

発生の原因

当社への影響

訴訟等のリスク

気候変動に対する取組みの遅れや不適切な情報開示

当社自身に対して賠償請求訴訟が起こされる、など

 

表:保険引受・資産運用以外の当社事業へのリスク。なお、保険引受や資産運用への影響についてはアセスメントを実施。

 

③ 既存のリスク管理フレームワークとの統合

気候変動リスクフレームワークで捉えたリスクの認識は、重大リスクの「主な想定シナリオ」に反映して管理を行い、また、気候変動との間で相互に影響を与える事象である「生物多様性の喪失」はエマージングリスクとして調査研究を行っております。(下表)

 

気候変動に関連する重大リスク等と主な想定シナリオ

重大リスク・エマージングリスク

気候変動に関連する主な想定シナリオ

気候変動リスク(物理的リスク)

台風・ハリケーンの激甚化または頻度増加による火災保険等の保険金支払、再保険コストの増大。

気候変動リスク(移行リスク)

脱炭素に向けた政策・法規制の強化、技術革新の進展による株式・債券の価格変動など。

事業中断リスク

想定シナリオを超える大規模自然災害等の発生に伴う重要業務停止の長期化、人命被害など。

パンデミック

森林減少や永久凍土の融解による重大な新興感染症パンデミックの発生増加。

生物多様性リスク

気候変動に伴う生態系の破壊などにより生物多様性が毀損、農作物の生育などに悪影響が及ぶ。

 

また、気候変動リスクフレームワークを通じて得られた知見を、既存のリスクコントロールシステムの枠組みである自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理に反映させていくことで、リスク管理全体の高度化を図ってまいります。

 

(4)指標と目標

① 気候関連リスクと機会を評価するための指標

項目

実績値

GHG排出量(2021年度)

温室効果ガス(GHG)総排出量

区分

総排出量

スコープ1、2、3(除く投融資)

[単位:t-CO2e]

228,051

 

 

投資先の温室効果ガス(GHG)総排出量※1

区分

株式

社債

スコープ3(投融資)

[単位:t-CO2e]

931,821

909,893

 

 

投資先の加重平均炭素強度(WACI: Weighted Average Carbon Intensity)※1、※2

区分

株式

社債

スコープ3(投融資)

[単位:t-CO2e/百万米ドル]

125.05

167.04

 

 

再生可能エネルギーの導入率

2021年度末 2.2%未満

その他環境指標

電力使用量(2021年度) 28,037万kWh

紙使用量(2021年度) 5,771トン

環境教育への参加人数(2022年度) 9,472人

サステナビリティ関連のイニシアティブ・ルールメイキングへの参画・活動

COP(気候変動枠組条締約国会議)への参画・発信等

 

※1 MSCI ESG Research社が提供するデータを使用し、国内外の上場株式と社債の投資先におけるスコープ1およびスコープ2を対象に算出(上場株式のカバー率は86%、社債のカバー率は82%、いずれも時価ベース)。GHG排出量は投資先のEVIC(Enterprise Value Including Cash:現金を含む企業価値)ベースに対する当社持分であり、WACIは、各投資先企業の売上高あたりのGHG排出量をポートフォリオの保有割合に応じて加重平均した値。なお、数値データは遡及修正される可能性があります。

※2 2021年度の数値からWACI算出方法が変更となりました。

 

② 気候関連リスクと機会を管理するための目標

項目

目標値

自社のGHG削減率

2030年60%削減(2017年比)

2050年実質排出ゼロ

※スコープ1,2,3(投融資を除きます。)が対象

投融資のGHG削減率

2025年25%削減(2019年比)、2050年実質排出ゼロ

※スコープ3カテゴリー15が対象(対象資産は上場株式と社債)

再生可能エネルギーの導入率

2030年導入率 70%

2050年導入率 100%

投融資先エンゲージメント数

対前年比増加

環境教育への参加人数

2023年度 10,500人

サステナビリティ関連のイニシアティブ・ルールメイキングへの参画・活動

活動実績を随時公表

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」といいます。)に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している「主要なリスク」および「当該リスクの管理体制・枠組み」は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 主要なリスクの管理体制・枠組み

① リスク管理の全体像

当社グループのリスク管理の枠組みである戦略的リスク経営(ERM)は、経営における高性能な『羅針盤』として、次の「3つの機能」を強化・高度化し、損失を未然に回避するだけでなく、新規事業投資などの機会損失を低減させることで、当社グループを最適な方向に導く取組みを実施しております。

ア. グループが置かれた現在地を正確に把握(現状の多面的な分析) 

イ. 将来起こりうるリスクを敏感に察知(重要なリスクの的確な把握と対策)

ウ.グループが取るべき航路を提示(最適な事業ポートフォリオの提示)

 

戦略的リスク経営(ERM)は、資本・リスク・収益のバランスを取りながら企業価値の最大化を図る一連の経営管理プロセスとして「戦略執行に係るリスクテイク」と「経営基盤の安定に資するリスクコントロール」の2つの側面を持っております。リスクテイクの側面では、リスクアペタイトフレームワークを中心に資本・リスク・収益に関する分析を重要な経営判断に活かし(上記ウ)、リスクコントロールの側面では、当社グループを取り巻く多様なリスクを特定、分析、評価する仕組み(リスクコントロールシステム)を活用して(上記ア、イ)、不測の損失の極小化と利益の安定を目指しております。

 


 

② リスク管理に関するガバナンス体制

当社では、取締役会が制定した「SOMPOグループERM基本方針」に基づき、「戦略的リスク経営(ERM)」の実効性を確保するため、グループ戦略・経営計画と合わせて、リスクテイクの指針としてリスクアペタイト原則、中期リスクテイク戦略およびリスクアペタイト指標からなる「SOMPOグループ リスクアペタイトステートメント」を定めております。

また、グループCEOの諮問機関であるGlobal Executive Committee (以下「Global ExCo」といいます。)の下部組織として、グループCROを委員長とするグループERM委員会を設置し、リスクテイク戦略や資本配賦などグループの戦略的リスク経営に関する重要な事項や当社グループを取り巻く重大リスク等について、グループ横断の経営議論を行っております。

グループCROは、「SOMPOグループERM基本方針」や「中期グループERM推進方針」をグループ会社に周知徹底し、また定期的なモニタリング、各社CROとのディスカッション等を通じ、グループ全体の戦略的リスク経営の実効性の向上を図っております。

 

<リスク管理に関するガバナンス体制>


③ リスクコントロールシステム、リスクと資本の状況

リスクコントロールシステムにおいては、リスクアセスメントを起点として、「重大リスク管理」の枠組みで当社グループを取り巻く重大リスクを網羅的に特定し、定性的・定量的な評価を行っております。

また、定量化が可能なリスクについては「自己資本管理」「ストレステスト」「リミット管理」「流動性リスク管理」の枠組みで自己資本、流動性などに与える影響を様々な定量指標により分析・評価し、財務健全性およびその向上に必要なリスクコントロールの施策に関する経営論議を行っております。

 

ア.重大リスク管理

当社グループは、「事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスク」を「重大リスク」と定義し、事業の抱えるリスクを網羅的に把握・評価しております。重大リスクは、グループCROがリスクアセスメントや専門家等の見解に基づいて網羅的に把握し、リスクが当社グループに及ぼす影響を具体的なシナリオで想定した上で、発生頻度および影響度(経済的損失、業務継続性およびレピュテーション毀損の3項目)でリスクを定性・定量の両面から評価し、管理状況を年2回以上、グループCOOの諮問機関である経営執行協議会(Managerial Administrative Committee)(以下「経営執行協議会(MAC)」といいます。)および取締役会に報告しております。

変化が大きいリスクや対策等に関する議論が必要なリスクについては、Global ExCoまたは経営執行協議会(MAC)において議論を行っております。また、長期の時間軸で当社グループのビジネスモデルへの影響を評価するために、今後10年以上増大トレンドが続くと想定されるリスクの観点を評価軸に加え、リスク対策の妥当性検証などへの活用を行っております。

また、現時点では重大リスクではないものの、環境変化などにより新たに発現または変化し、今後、当社グループに大きな影響を及ぼす可能性のあるリスクを「エマージングリスク」と定め、重大リスクへの変化の予兆を捉えて適切に管理をしております。国内外の専門家の知見も活用して洗い出したエマージングリスク候補をエマージングリスク・レジスターに登録し、そのうち、想定される影響度が一定以上のものをエマージングリスクに選定しております。

現在、「革新的な医療技術」、「生物多様性」などのエマージングリスクを選定し、損失軽減の観点だけではなく、新たな保険商品・サービスなどのビジネス機会の観点からモニタリングおよび調査研究を行っております。

<重大リスクおよびエマージングリスクの管理プロセス>


 

イ.自己資本管理

当社グループが保有する各種リスクを統一的な尺度(VaR:Value at Risk)で定量化し、自己資本がリスク量と比べて充分な水準を維持できるよう管理して、必要に応じ対応策を実施する態勢を整備しております。

リスクと資本の状況

 2023年3月期においては、事業の拡大などに伴うリスク増加の一方で、政策保有株式の計画的な売却やALMの推進による金利リスクの削減などのリスクコントロールを適切に実施した結果、同年3月末時点の当社グループのESR(注)は223%とターゲットレンジ(200~270%)の範囲内であり、十分な財務健全性を示す水準となっております。

 今後も、資本・リスク・リターンの適切なバランスのもとで、財務健全性を維持しつつ資本効率・利益安定性の更なる向上を目指すため、収益性向上とリスク分散を進めるとともに株・金利リスクの削減等に取り組んでまいります。

(注)ESR(Economic Solvency Ratio)は、リスクに対して確保している資本の十分性を示す指標であります。 

  ESR


 

 

ウ.ストレステスト

当社グループの経営に重大な影響を及ぼし得る事象を的確に把握・管理するために、グループベースで「シナリオ・ストレステスト」「リバース・ストレステスト」および「感応度分析」を実施し、資本およびリスクへの影響度を分析して、必要に応じ対応策を実施する態勢を整備しております。また、2023年3月末時点で、当社の想定するストレス下においても十分な資本を有していることを確認しております。

シナリオ・

ストレステスト

大規模な自然災害や金融市場の混乱など、経営に重大な影響を及ぼすストレスシナリオが顕在化した際の影響を評価し、資本の十分性やリスク軽減策の有効性検証などに活用することを目的として実施しております。なお、環境変化などに適切に対応するため、ストレスシナリオの妥当性を定期的に検証しております。

リバース・

ストレステスト

リスク許容度などに抵触する具体的な事象を探索することで脆弱性を特定し、あらかじめ具体的なストレス事象を想定した対策を検討することを目的として実施しております。

感応度分析

主なリスク要因の変動が資本とリスクに与える影響を把握するとともに、内部モデルが算出した理論値と実績値との比較を行い、内部モデルの妥当性を検証することを目的として実施しております。

 

 

エ.リミット管理 

特定事象の発現により多額の損失が生じることを回避するため、与信リスク、出再リスク、海外自然災害リスクの各々に対してグループベースで最大限度額を設定し管理しており、2023年3月末時点で各最大限度額に抵触していないことを確認しております。また、各限度額の枠内で予備的にリミット管理を行っております。

 

オ.流動性リスク管理

日々の資金繰り管理のほか、巨大災害発生時などの最大資金流出額を予想し、それに対応できる流動性資産が十分に確保されるよう管理しており、2023年3月末時点で当社に最大の資金流出をもたらすシナリオに対しても、十分な流動性資産を有していることを確認しております。

 

(2) 主要なリスク

① 重大リスクおよびその発生可能性・影響度の評価

経営者が当社グループの経営成績等に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している「主要なリスク」は、当社グループが定義する「重大リスク」であります。重大リスクおよびその発生可能性・影響度の評価は、下記のとおりであります。

<重大リスク一覧>

 

分類

No.

重大リスク

ア.経営戦略リスク

 

外部環境

1

競争環境の悪化・転換

2

大規模景気後退

3

地政学リスク

4

パンデミック

5

税制・規制の変更

事業戦略

6

ガバナンス不十分

7

新事業に係るリスクの見誤り

8

システム戦略

9

気候変動リスク(物理的リスク・移行リスク)

10

サステナビリティリスク

11

風評リスク

人材・要員

12

人材・人材力不足

イ.財務・運用リスク

 

市場リスク

13

市場の大幅悪化

信用集中リスク

14

投融資先、出再先の破綻

流動性リスク

15

大規模災害時の資金繰り

ウ.オペレーショナルリスクおよびコンプライアンスリスク

 

事務リスク

16

委託先管理の失敗

システムリスク

17

システム障害

18

サイバーセキュリティ

コンプライアンスリスク等

19

労務リスク

20

顧客情報漏えい(サイバー攻撃を除く)

21

不祥事・機密情報漏えい

22

コンダクトリスク

エ.事業固有リスク

 

 保険引受リスク

 

自然災害

23

国内巨大地震

24

国内巨大風水災

25

海外巨大自然災害

その他

26

サイバー集積リスク

 介護事業リスク

 

介護事業リスク

27

介護事業環境の見誤り

28

重大不祥事件

オ.その他リスク

 

29

事業中断リスク

 

 

       <重大リスクのヒートマップ(発生可能性・影響度)> 


 

影響度

発生可能性

 

経済的損失

業務継続性

レピュテーション毀損

極大

5,000億円以上

事業免許の取消し

信頼の極めて大幅な失墜

1年に1回以上

2,000億円以上

主要な業務の停止

信頼の大幅な失墜

(信頼回復に5年以上)

10年に1回以上

100億円以上

一部の業務の停止

信頼の失墜

(信頼回復に2~3年以上)

100年に1回以上

100億円未満

信頼の失墜の可能性は低い

100年に1回未満

 

 

変化が大きいリスク・・・変化の速度が速いまたはその幅が大きいと想定されるリスク

長期的増大トレンドにあるリスク・・・今後10年以上増大トレンドが続くと想定されるリスク

 

 

 

② 重大リスクの分類ごとのリスクの概要と評価、対応策の状況
ア.経営戦略リスク(No.1~12)
a.リスクの概要と評価

当社グループを取り巻く外部環境が変化し、経営戦略の前提条件が現実の事業環境と合わなくなる、またはガバナンス機能や人材ニーズ対応が不十分となったなどの場合に経営戦略に合致するビジネスモデルの構築ができないことにより、当社グループの経営成績等に重大な影響が生じるリスクを「経営戦略リスク」と認識しております。影響が大きいと考える環境変化等は以下のとおりであります。

短期的なリスクとしては、急激なインフレ進行による事業コストや支払保険金の増加を商品・サービス価格に転嫁できないリスクや金融資産の価値減少リスク、気候変動により想定を超える風水災損害が発生するリスク、サステナビリティ関連の取組みが不十分とみられることや、風評がマスコミ報道・インターネット上の記事等に流布された場合にブランド価値が毀損するリスク、デジタル関連等の異業種からの新規参入やAIをはじめデジタル技術進展への対応不十分により競争力・収益基盤が劣化・毀損するリスク、地政学的緊張の高まりによる制裁の応酬や重大事象の発生などによる波及的な影響が生じるリスクなどにより、当社グループの収益力が低下する可能性があります。

長期的なリスクとしては、シェアリング経済の拡大や少子・高齢化等を背景としたマーケット規模の縮小や技術革新に伴う事故の減少による保険ニーズの減少およびパンデミックによる人々の生活や産業活動への制約等が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴い、温室効果ガス(GHG)の高排出セクターの座礁資産化や信用リスクの悪化が、当社グループの保険事業や資産運用に影響を与える可能性があると認識しております。

 

b.対応策の状況

当社グループでは、外部環境の変化は脅威とともに機会をもたらすと捉えて、デジタル戦略、M&A等を実行し、「安心・安全・健康のテーマパーク」へのトランスフォーメーションを進めております。例えば、AI・ビッグデータ等の技術を活用した既存事業の生産性向上、デジタル技術を活用した新商品・サービスなどを通じた新たな顧客価値の創造、デジタル分野の専門人材の採用・育成によるデジタルトランスフォーメーション(DX)基盤の構築を進めております。経済環境の悪化については、インフレによる世界経済・金融市場の悪化などの日々の変化を注視したうえで、当社グループへの影響を分析し、対応策を講じております。地政学リスクについては、当社グループに悪影響を及ぼすシナリオの検討を行い、規制変更リスクについては、関連する国内外法規制等の動向の情報を収集するなどして、経営上の影響を見極められるよう注視しております。

デジタル戦略・M&Aや大規模システム開発等の大規模投資は取締役会等で妥当性を十分議論して実行しておりますが、環境変化や想定を超える困難などのために期待した成果が得られない可能性があるため、実行後も定期的に所定の基準に基づいて妥当性が失われていないことおよび撤退基準に抵触していないことを確認しております。

将来のパンデミックについては、新型コロナウイルス感染症拡大の経験を活かし、大きな変化から来る機会と脅威に柔軟に対応できるよう、環境変化への注視など続けてまいります。

また、気候変動による物理的なリスクについては、自然災害の激甚化などの影響に関して気候シナリオを活用した分析などに取り組んでおります。脱炭素社会への移行に伴うリスクについては、保険引受や資産運用を中心としたグリーントランジションプランを掲げ取組みを進めるとともに、グループCSuOを議長、国内損害保険、海外保険、国内生命保険、介護・シニアの各事業のCSuO(サステナビリティの統括責任者を含む)およびCSOをメンバーとする「グループサステナブル経営推進協議会」において、これらの取組みの状況把握、協議を行い、必要に応じてGlobal ExCoや経営執行協議会(MAC)に報告する体制を構築しております。

風評リスクについては、当社で定める規程に従い適時適切に対応することで、影響の極小化を図っております。

「気候関連財務情報開示タスクフォースの提言を踏まえた取組み(気候変動リスク)」については、リスクの影響および対応策が広範にわたることから、別途「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ●気候変動関連情報開示(TCFD提言に基づく情報開示)」に記載しております。

 

 

 

イ.財務・運用リスク(No.13~15)

a.リスクの概要と評価

市場変動や投融資先・保証保険の保証先・再保険の出再先の破綻、大規模災害時の資金繰り悪化等により業績・財政状態が悪化するリスクを「財務・運用リスク」と認識しております。当社グループにおいては特に、国内株式の価格変動や金利変動の影響が大きいと認識しております。

当社グループは、お客さまとの中長期的な関係維持の観点等から、多くの株式を保有しているほか、安定的な資産運用収益を得るため、国内外の有価証券等に幅広く投資しております。株式相場の下落等により、これらの資産の価値が減少した場合には、売却損や評価損の発生、評価差額金の減少等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは予定利率(契約時にお客さまにお約束する運用利回り)を設定した契約期間が長期の保険商品を販売しており、金利低下により、実際の運用利回りが予定利率を下回るリスクがあります。

さらに国内生命保険事業では、保有する有価証券のデュレーションに対して保険負債のデュレーションが長期であることから、金利低下により、経済価値ベースの保険負債の増加額が有価証券等時価の増加額を上回るため、実質自己資本を減少させるリスクがあります。

 

b.対応策の状況

当社グループは、政策保有株式を継続的に削減することにより、株式相場下落の影響を低減するよう努めております。

積立保険の満期返戻金や国内生命保険事業などの長期の保険負債に対しては、キャッシュ・フローに見合う長期の投融資を実行することで金利変動の影響を抑制するとともに、国内生命保険事業では、経済価値ベースの保険負債に対して金利低下の影響を受けにくい保障性商品の保有割合を高めることにも努めております。

投融資にあたっては、特定の与信先への集積を回避するためリミットを設定して管理しております。

資金繰りについては保険子会社ごとに管理しており、巨大災害時の資金ニーズや金利上昇に伴う解約増加等に対応できる流動性資産が十分確保されるようにして管理しております。

 

ウ.オペレーショナルリスク・コンプライアンスリスク(No.16~22)
a.リスクの概要と評価

各種法規制への違反、外部委託先や代理店の管理の失敗、システム障害、サイバーセキュリティ、長時間労働・ハラスメント等の労務トラブル、顧客情報の漏えい、不正行為、ミスコンダクトなどが発生するリスクを「オペレーショナルリスク・コンプライアンスリスク」と認識しております。当社グループは、保険業法をはじめとして各種事業に適用される法規制、事業を展開する各国で適用される法規制を遵守して事業を遂行しておりますが、これらの法規制へ違反した場合、金融庁等からの行政処分を受ける可能性があります。

人為的ミスによる情報システムの不備等の内部要因、サイバー攻撃による不正アクセス等の外部要因により、情報システムの停止、誤作動、不正使用等が発生するシステムリスクがあります。

また、当社グループは、多数のお客さまの情報を取り扱っているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しており、これらの情報に関しては、グループ各社において、情報管理態勢を整備し、厳重な管理を行っておりますが、サイバー攻撃による場合を含め、万一重大な情報漏えいが発生した場合には、当社グループの社会的信頼・信用が失墜する、あるいは対応費用の支払いが発生することにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

事務ミス、外部委託先管理の失敗、従業員の心身の不調、役職員等による不正行為、外部からの犯罪行為、訴訟に伴う賠償金の支払い等の発現により、直接・間接のコストおよび業務運営の支障発生、金融庁等による行政処分、当社グループの社会的信頼・信用の失墜等の影響を受ける可能性があります。 

社会意識やお客さまの嗜好・行動の変化によって当社グループの商品・サービスや業務慣行とステークホルダーの期待との間にギャップが生じて利用者保護などに悪影響を及ぼし、結果としてブランド価値を毀損するコンダクトリスクがあります。

 

b.対応策の状況

当社グループは、各事業の高い公共的使命および社会的責任を常に認識し、「SOMPOグループ コンプライアンス基本方針」をはじめとする各種方針の下、法令等のルールや社会規範および企業倫理に則った適正な企業活動を行う態勢を整備しております。また、「SOMPOグループ コンプライアンス行動規範」を定めて当社グループ内の役職員に周知徹底し、役職員一人ひとりのコンプライアンス意識を醸成しております。

システム障害のリスクについては、システムリスク管理態勢を整備し、継続的にシステムリスクの低減等を進めております。サイバー攻撃のリスクについては、サイバーセキュリティへの取組みが企業の社会的責任であるとの認識のもと「SOMPOグループ サイバーセキュリティ基本方針」を定め、グループ各社における対応態勢の整備を継続して進めるとともに、当社内に専門組織を設置し、グループ全体での包括的・横断的な対策を通してグループ会社と共にサイバーセキュリティの成熟度の向上を目指しております。

長時間労働等による労務リスクについては、適正な勤怠管理の徹底に加え、リモート環境下でのマネジメントスキルおよびリモートコミュニケーションの向上を図る体制整備を進めております。

コンダクトリスクに関しては、予兆把握・未然防止の取組みを実施し、外部委託先管理については、委託開始から委託の解除までプロセスに応じた適切な管理を行うことを定めるなど管理態勢を構築しております。

 

エ.事業固有リスク(No.23~28)

(保険引受リスク)

a.リスクの概要と評価

国内損害保険事業、海外保険事業および国内生命保険事業において想定外の支払保険金が発生するリスクを「事業固有リスク(保険引受リスク)」と認識しております。

当社グループは、国内外の地震・風水災・雪害等の自然災害による損害に対して巨額の保険金等を支払うことがあり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいては特に、気候変動に伴う風水災の頻発や激甚化による支払保険金増加の影響が大きいと認識しており、保険引受収支が悪化する等の影響が生じることにより、安定した保険の提供が難しくなる可能性もあります。

また、当社グループでは、サイバーリスクの補償を目的とした専用の保険商品を販売しておりますが、ソフトウェアの脆弱性を狙ったサイバー攻撃が大規模に発生した場合などに、同時多発的にお客さまのデータの破壊・窃取、事業中断等に関する保険金等を支払うことにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.対応策の状況

当社グループでは、国内の自然災害リスクに備えて、再保険の活用や異常危険準備金等の積み立てを行い、事業の安定化を図るとともに、自然災害による保険金支払のリスクについて気候変動を踏まえて定量的に評価することで、適切な料率設定・商品設計を目指しております。

なお、海外の自然災害リスクについては、集積が過大とならないよう、グループの資本や利益水準を踏まえたリミット金額を地域別・自然災害種類別に設定し、当該リミットを超えることがないように定期的にモニタリングを実施して適切に管理しております。

また、サイバー保険については、モデルや想定されるシナリオに基づき、予想最大損害額の算出を行っており、リスクの把握と適切な引受水準の維持に努めております。

 

(介護事業リスク)
a.リスクの概要と評価

当社グループは、多くの高齢者やそのご家族の多様なニーズにお応えするため、SOMPOケア株式会社が在宅介護から施設介護までフルラインナップの介護サービスを提供しており、介護事業戦略の遂行において介護事業環境を見誤ることや、重大不祥事が発生してブランド価値を毀損するリスクを「事業固有のリスク(介護事業リスク)」と認識しております。

介護事業においては、介護保険法の改正ならびに介護報酬の改定、介護市場における競争激化、介護人材の需給ギャップ拡大などに起因する従業員確保の困難、食中毒、集団感染症の発生、高齢者事業特有の事故等の発生およびそれらによる社会的信頼・信用の毀損、風評リスクの発生等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.対応策の状況

SOMPOケア株式会社では、ご利用者さまとの信頼を築くため、コーポレート・ガバナンス体制、事業所管理体制の構築に取り組んでおります。ガバナンス・リスク・クオリティ・コンプライアンス委員会を経営会議の諮問機関として設置し、リスク管理・品質にかかわる重大事象への対応や、内部監査結果などの内部統制に関する事項の審議を実施するとともに、本社リスク管理部門では事故情報を集約し、再発防止策の周知・徹底を図っております。また、リアルデータプラットフォームの技術を活用した介護事業者向けサービスである「egaku」、ICT・最先端テクノロジーの介護現場での有効活用を推進し、生産性向上および処遇改善を通じた介護人材の需給ギャップの解消を目指しております。さらに、生産性、品質の高い介護サービスのノウハウを活かした介護事業者へソリューションを提供するビジネスプロセスサポートの展開、認知機能低下予防サービスの推進を通じ、超高齢社会の日本が抱える社会的課題の解決を目指してまいります。

 

オ.その他リスク(No.29)
(事業中断リスク)
a.リスクの概要と評価

大規模地震等の自然災害、大規模テロ攻撃、新型感染症等のパンデミック(世界的な大流行)、サイバー攻撃等による大規模システム障害等が発生し、本社機能、保険金支払、介護サービスの提供などにおける円滑な業務運営が阻害されるリスクを「その他リスク(事業中断リスク)」と認識しており、当該リスクは当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.対応策の状況

当社グループでは、従来から大規模な地震などの自然災害、新型感染症等のパンデミックの発生、サイバー攻撃等による大規模システム障害発生の有事に備えた業務継続計画を策定し、定期的に訓練を実施するとともに、業務継続計画の有効性の検証を行っております。 

また、直近では、東京都防災会議の新たな「首都直下地震等による東京の被害想定」に基づくグループ各社の整備状況の点検およびサイバー対応の有事体制やグループ内連携フローの明確化などを通じ、更なる危機対応力向上へ向け、グループ各社の重要業務の継続のための改善を行っております。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態および経営成績の状況

■ 当社グループの経営成績の状況は、次のとおりであります。

当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症による影響が緩和され、緩やかな持ち直しが続きましたが、インフレ率の高止まりや金融引き締めが消費全般や設備投資に与える影響、ウクライナ情勢等の不透明感など、下振れリスクの高まりも見られました。わが国経済も、経済社会活動の正常化が進み、ウィズコロナの下で、個人消費や設備投資は持ち直し、企業収益も総じてみれば改善しましたが、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等下振れリスクには依然として注意が必要な状況にあります。

このような経営環境のもと、当連結会計年度における当社グループの業績は次のとおりとなりました。

経常収益は、保険引受収益が4兆907億円、資産運用収益が3,257億円、その他経常収益が1,907億円となった結果、前連結会計年度に比べて4,396億円増加して4兆6,071億円となりました。一方、経常費用は、保険引受費用が3兆5,979億円、資産運用費用が1,137億円、営業費及び一般管理費が5,984億円、その他経常費用が1,743億円となった結果、前連結会計年度に比べて6,326億円増加して4兆4,846億円となりました。

以上の結果、経常収益から経常費用を差し引いた当連結会計年度の経常損益は、前連結会計年度に比べて1,929億円減少して、1,225億円の経常利益となりました。経常利益に特別利益、特別損失、法人税等合計などを加減した親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて1,336億円減少して911億円の純利益となりました。

 

■ 当社グループの財政状態の状況は、次のとおりであります。

資産の部合計は、前連結会計年度末に比べて6,723億円増加し、14兆4,602億円となりました。負債の部合計は、前連結会計年度末に比べて8,442億円増加し、12兆5,913億円となりました。純資産の部合計は、前連結会計年度末に比べて1,718億円減少し、1兆8,689億円となりました。

 

■ 報告セグメントごとの経営成績の状況は、次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

正味収入保険料は、前連結会計年度に比べて734億円増加し、2兆2,905億円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて832億円減少し、550億円の純利益となりました。国内損害保険事業における保険引受および資産運用の状況は、以下のとおりであります。
 

 

 

ア.保険引受業務
(ア) 元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

火災

500,724

19.55

2.32

553,594

20.93

10.56

海上

49,065

1.92

10.45

59,117

2.24

20.49

傷害

236,459

9.23

△4.41

234,121

8.85

△0.99

自動車

1,147,521

44.79

0.05

1,149,439

43.46

0.17

自動車損害賠償責任

220,617

8.61

△7.62

225,489

8.53

2.21

その他

407,515

15.91

3.75

422,948

15.99

3.79

合計

2,561,904

100.00

0.08

2,644,710

100.00

3.23

(うち収入積立保険料)

(81,009)

(3.16)

(△13.36)

(70,773)

(2.68)

(△12.64)

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 「元受正味保険料(含む収入積立保険料)」とは、元受保険料から元受解約返戻金および元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含みます。)

 

(イ) 正味収入保険料

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

火災

328,029

14.80

6.91

385,476

16.83

17.51

海上

46,841

2.11

15.41

54,947

2.40

17.30

傷害

153,498

6.92

△0.39

155,352

6.78

1.21

自動車

1,141,991

51.51

0.12

1,143,902

49.94

0.17

自動車損害賠償責任

217,261

9.80

△8.77

211,113

9.22

△2.83

その他

329,525

14.86

4.19

339,804

14.83

3.12

合計

2,217,148

100.00

0.94

2,290,596

100.00

3.31

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

(ウ) 正味支払保険金

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

火災

216,465

17.92

0.79

286,787

21.25

32.49

海上

22,999

1.90

△7.75

22,956

1.70

△0.19

傷害

70,378

5.83

△2.33

87,443

6.48

24.25

自動車

567,452

46.98

1.09

617,608

45.77

8.84

自動車損害賠償責任

159,225

13.18

△9.45

144,986

10.74

△8.94

その他

171,450

14.19

△0.47

189,706

14.06

10.65

合計

1,207,972

100.00

△1.08

1,349,489

100.00

11.72

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

 

イ.資産運用業務
(ア) 運用資産

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

504,107

7.90

495,820

8.40

買現先勘定

73,999

1.16

69,999

1.19

買入金銭債権

20,104

0.31

20,366

0.35

金銭の信託

20,683

0.32

21,105

0.36

有価証券

4,291,143

67.21

3,874,601

65.68

貸付金

494,703

7.75

441,994

7.49

土地・建物

210,442

3.30

207,941

3.52

運用資産計

5,615,185

87.94

5,131,828

86.99

総資産

6,385,083

100.00

5,899,190

100.00

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

(イ) 有価証券

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

678,580

15.81

512,262

13.22

地方債

12,419

0.29

12,701

0.33

社債

646,357

15.06

514,550

13.28

株式

1,271,703

29.64

1,276,277

32.94

外国証券

1,455,844

33.93

1,319,952

34.07

その他の証券

226,237

5.27

238,856

6.16

合計

4,291,143

100.00

3,874,601

100.00

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 前連結会計年度の「その他の証券」の主なものは、投資信託受益証券212,389百万円であります。

当連結会計年度の「その他の証券」の主なものは、投資信託受益証券222,247百万円であります。

 

 

(ウ) 利回り

a.運用資産利回り(インカム利回り)

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

収入金額
(百万円)

平均運用額
(百万円)

年利回り
(%)

収入金額
(百万円)

平均運用額
(百万円)

年利回り
(%)

預貯金

13

513,791

0.00

19

493,775

0.00

買現先勘定

2

63,101

0.00

3

71,653

0.00

買入金銭債権

156

21,222

0.74

151

20,389

0.74

金銭の信託

592

16,223

3.66

602

16,172

3.73

有価証券

108,038

3,162,829

3.42

108,761

3,114,015

3.49

貸付金

4,880

541,421

0.90

4,401

467,601

0.94

土地・建物

2,915

223,822

1.30

2,768

210,937

1.31

小計

116,600

4,542,413

2.57

116,707

4,394,544

2.66

その他

229

――

――

363

――

――

合計

116,830

――

――

117,070

――

――

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 収入金額は、連結損益計算書における「利息及び配当金収入」に、「金銭の信託運用益」および「金銭の信託運用損」のうち利息及び配当金収入相当額を含めた金額であります。

3 平均運用額は原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、買現先勘定および買入金銭債権については日々の残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しております。

4 連結貸借対照表における有価証券には持分法適用会社に係る株式を含めておりますが、平均運用額および年利回りの算定上は同株式を除外しております。

 

b.資産運用利回り(実現利回り)

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

資産運用
損益
(実現ベース)
(百万円)

平均運用額
(取得原価
ベース)
(百万円)

年利回り
(%)

資産運用
損益
(実現ベース)
(百万円)

平均運用額
(取得原価
ベース)
(百万円)

年利回り
(%)

預貯金

4,018

513,791

0.78

3,628

493,775

0.73

買現先勘定

2

63,101

0.00

3

71,653

0.00

買入金銭債権

156

21,222

0.74

151

20,389

0.74

金銭の信託

1,307

16,223

8.06

3,103

16,172

19.19

有価証券

147,680

3,162,829

4.67

132,540

3,114,015

4.26

貸付金

5,652

541,421

1.04

5,193

467,601

1.11

土地・建物

2,915

223,822

1.30

2,768

210,937

1.31

金融派生商品

△2,604

――

――

△13,460

――

――

その他

1,512

――

――

818

――

――

合計

160,642

4,542,413

3.54

134,746

4,394,544

3.07

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 資産運用損益(実現ベース)は、連結損益計算書における「資産運用収益」および「積立保険料等運用益」の合計額から「資産運用費用」を控除した金額であります。

3 平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しております。ただし、買現先勘定および買入金銭債権については日々の残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しております。

4 連結貸借対照表における有価証券には持分法適用会社に係る株式を含めておりますが、平均運用額および年利回りの算定上は同株式を除外しております。

 

(エ) 海外投融資

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

外貨建

 

 

 

 

外国公社債

523,802

34.03

343,103

24.23

外国株式

50,062

3.25

45,404

3.21

その他

695,124

45.16

790,698

55.84

1,268,990

82.45

1,179,206

83.27

円貨建

 

 

 

 

外国公社債

20,190

1.31

22,794

1.61

その他

249,913

16.24

214,103

15.12

270,104

17.55

236,898

16.73

合計

1,539,094

100.00

1,416,104

100.00

海外投融資利回り

 

 

運用資産利回り(インカム利回り)

4.41%

3.64%

資産運用利回り(実現利回り)

4.86%

2.91%

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 金銭の信託として運用しているものを含めて表示しております。

3 「海外投融資利回り」のうち「運用資産利回り(インカム利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「(ウ) 利回り  a.運用資産利回り(インカム利回り)」と同様の方法により算出したものであります。

4 「海外投融資利回り」のうち「資産運用利回り(実現利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「(ウ) 利回り  b.資産運用利回り(実現利回り)」と同様の方法により算出したものであります。

5 前連結会計年度の外貨建「その他」の主なものは投資信託受益証券633,790百万円であり、円貨建「その他」の主なものは投資信託受益証券185,565百万円であります。

当連結会計年度の外貨建「その他」の主なものは投資信託受益証券727,439百万円であり、円貨建「その他」の主なものは投資信託受益証券158,285百万円であります。

 

[海外保険事業]

正味収入保険料は、前連結会計年度に比べて3,815億円増加し、1兆3,801億円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて58億円増加し、480億円の純利益となりました。

 

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

対前年増減
(△)率(%)

金額
(百万円)

対前年増減
(△)率(%)

正味収入保険料

998,565

37.36

1,380,120

38.21

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

 

 

[国内生命保険事業]

生命保険料は、前連結会計年度に比べて76億円減少し、3,108億円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて149億円減少し、10億円の純利益となりました。国内生命保険事業における保険引受および資産運用の状況は、以下のとおりであります。

ア.保険引受業務
(ア) 保有契約高

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額
(百万円)

対前年増減
(△)率(%)

金額
(百万円)

対前年増減
(△)率(%)

個人保険

23,301,172

△1.03

22,858,745

△1.90

個人年金保険

216,055

△3.22

208,801

△3.36

団体保険

2,700,035

△0.58

2,659,037

△1.52

団体年金保険

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 個人年金保険については、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金を合計したものであります。

 

(イ) 新契約高

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

新契約+転換
による純増加
(百万円)

新契約
(百万円)

転換による
純増加
(百万円)

新契約+転換
による純増加
(百万円)

新契約
(百万円)

転換による
純増加
(百万円)

個人保険

1,924,487

1,924,487

1,724,168

1,724,168

個人年金保険

団体保険

23,963

23,963

93,951

93,951

団体年金保険

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺前の金額であります。

2 新契約・転換による純増加の個人年金保険の金額は年金支払開始時における年金原資であります。

 

 

イ.資産運用業務
(ア) 運用資産

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

預貯金

137,951

3.71

79,308

2.02

有価証券

3,476,022

93.53

3,734,465

95.14

貸付金

41,428

1.11

42,150

1.07

土地・建物

432

0.01

433

0.01

運用資産計

3,655,835

98.37

3,856,357

98.24

総資産

3,716,323

100.00

3,925,327

100.00

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

(イ) 有価証券

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

国債

2,370,357

68.19

2,692,301

72.09

地方債

57,678

1.66

56,882

1.52

社債

421,119

12.11

380,316

10.18

株式

9,859

0.28

10,424

0.28

外国証券

611,887

17.60

587,130

15.72

その他の証券

5,120

0.15

7,409

0.20

合計

3,476,022

100.00

3,734,465

100.00

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

(ウ) 利回り

a.運用資産利回り(インカム利回り)

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

収入金額
(百万円)

平均運用額
(百万円)

年利回り
(%)

収入金額
(百万円)

平均運用額
(百万円)

年利回り
(%)

預貯金

124,249

76,004

有価証券

48,199

3,301,806

1.46

53,797

3,601,588

1.49

貸付金

1,248

41,526

3.01

1,270

41,788

3.04

土地・建物

449

438

小計

49,447

3,468,032

1.43

55,068

3,719,820

1.48

その他

――

――

――

――

合計

49,447

――

――

55,068

――

――

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る収益および資産については除いて記載しております。

2 収入金額は、連結損益計算書における「利息及び配当金収入」であります。

3 平均運用額は原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

 

b.資産運用利回り(実現利回り)

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

資産運用
損益
(実現ベース)
(百万円)

平均運用額
(取得原価
ベース)
(百万円)

年利回り
(%)

資産運用
損益
(実現ベース)
(百万円)

平均運用額
(取得原価
ベース)
(百万円)

年利回り
(%)

預貯金

124,249

76,004

有価証券

46,862

3,301,806

1.42

62,628

3,601,588

1.74

貸付金

1,248

41,526

3.01

1,270

41,788

3.04

土地・建物

449

438

金融派生商品

464

――

――

△4,773

――

――

合計

48,575

3,468,032

1.40

59,125

3,719,820

1.59

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る損益および資産については除いて記載しております。

2 資産運用損益(実現ベース)は、連結損益計算書における「資産運用収益」から「資産運用費用」を控除した金額であります。

3 平均運用額(取得原価ベース)は原則として各月末残高(取得原価または償却原価)の平均に基づいて算出しております。

 

(エ) 海外投融資

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

外貨建

 

 

 

 

外国公社債

567,076

93.95

543,789

93.94

その他

11,951

1.98

12,989

2.24

579,027

95.93

556,779

96.18

円貨建

 

 

 

 

外国公社債

8,820

1.46

8,604

1.49

その他

15,770

2.61

13,496

2.33

24,590

4.07

22,100

3.82

合計

603,618

100.00

578,879

100.00

海外投融資利回り

 

 

運用資産利回り(インカム利回り)

2.00%

2.28%

資産運用利回り(実現利回り)

2.16%

1.54%

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。なお、保険業法第118条に規定する特別勘定に係る損益および資産については除いて記載しております。

2 「海外投融資利回り」のうち「運用資産利回り(インカム利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「(ウ) 利回り  a.運用資産利回り(インカム利回り)」と同様の方法により算出したものであります。

3 「海外投融資利回り」のうち「資産運用利回り(実現利回り)」は、海外投融資に係る資産について、「(ウ) 利回り  b.資産運用利回り(実現利回り)」と同様の方法により算出したものであります。

4 前連結会計年度の外貨建「その他」は、すべて投資信託受益証券であり、円貨建「その他」は、すべて投資信託受益証券であります。

    当連結会計年度の外貨建「その他」は、すべて投資信託受益証券であり、円貨建「その他」は、すべて投資信託受益証券であります。

 

 

[介護・シニア事業]

経常収益は、前連結会計年度に比べて150億円増加し、1,516億円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて5億円減少し、7億円の純利益となりました。

 

■ 報告セグメントごとの財政状態の状況は、次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて4,858億円減少し、5兆8,991億円となりました。

 

[海外保険事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて8,152億円増加し4兆476億円となりました。

 

[国内生命保険事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて2,090億円増加し、3兆9,253億円となりました。

 

[介護・シニア事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、エヌ・デーソフトウェア株式会社およびその傘下の3社の新規連結による増加などにより、前連結会計年度末に比べて1,015億円増加し、2,652億円となりました。

 

(参考)全事業の状況

 

ア.元受正味保険料(含む収入積立保険料)

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

火災

698,230

19.16

9.29

811,188

19.89

16.18

海上

104,894

2.88

17.88

134,251

3.29

27.99

傷害

239,911

6.58

△4.05

238,659

5.85

△0.52

自動車

1,217,407

33.41

0.02

1,263,857

31.00

3.82

自動車損害賠償責任

220,617

6.05

△7.62

225,489

5.53

2.21

その他

1,163,307

31.92

41.11

1,404,014

34.43

20.69

合計

3,644,369

100.00

11.85

4,077,460

100.00

11.88

(うち収入積立保険料)

(81,009)

(2.22)

(△13.36)

(70,773)

(1.74)

(△12.64)

 

(注) 1 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

2 「元受正味保険料(含む収入積立保険料)」とは、元受保険料から元受解約返戻金および元受その他返戻金を控除したものであります。(積立型保険の積立保険料を含みます。)

 

イ.正味収入保険料

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

火災

524,266

16.30

14.14

627,013

17.08

19.60

海上

92,493

2.88

12.79

117,017

3.19

26.51

傷害

156,850

4.88

0.07

159,745

4.35

1.85

自動車

1,217,232

37.85

△0.03

1,263,943

34.43

3.84

自動車損害賠償責任

217,261

6.76

△8.77

211,113

5.75

△2.83

その他

1,007,609

31.33

30.90

1,291,883

35.19

28.21

合計

3,215,713

100.00

9.99

3,670,717

100.00

14.15

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

ウ.正味支払保険金

区分

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

金額
(百万円)

構成比
(%)

対前年増減(△)率(%)

火災

311,296

19.65

13.01

401,364

20.61

28.93

海上

45,867

2.89

1.44

48,789

2.51

6.37

傷害

71,164

4.49

△2.24

88,314

4.53

24.10

自動車

612,647

38.67

2.46

678,374

34.83

10.73

自動車損害賠償責任

159,225

10.05

△9.45

144,986

7.44

△8.94

その他

384,195

24.25

8.96

585,818

30.08

52.48

合計

1,584,397

100.00

4.25

1,947,647

100.00

22.93

 

(注) 諸数値はセグメント間の内部取引相殺後の金額であります。

 

 

■ 当社グループのソルベンシー・マージン比率の状況は、次のとおりであります。

[連結ソルベンシー・マージン比率]

当社は、保険業法施行規則第210条の11の3および第210条の11の4ならびに平成23年金融庁告示第23号の規定に基づき、連結ソルベンシー・マージン比率を算出しております。

保険会社グループは、保険事故発生の際の保険金支払や積立型保険の満期返戻金支払等に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生や、資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。こうした「通常の予測を超える危険」(表の「(B)連結リスクの合計額」)に対して「保険会社グループが保有している資本金・準備金等の支払余力」(表の「(A)連結ソルベンシー・マージン総額」)の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「(C)連結ソルベンシー・マージン比率」であります。

連結ソルベンシー・マージン比率の計算対象となる範囲は、連結財務諸表の取扱いに合わせますが、保険業法上の子会社(議決権が50%超の子会社)については、原則として計算対象に含めております。

連結ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。

当連結会計年度末の当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べ189.0ポイント低下して584.0%となりました。

 

(単位:百万円)

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

(A)

連結ソルベンシー・マージン総額

3,697,989

 

3,252,617

 

(B)

連結リスクの合計額

956,727

 

1,113,737

 

(C)

連結ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

773.0

584.0

 

 

 [単体ソルベンシー・マージン比率]

国内保険会社は、保険業法施行規則第86条および第87条ならびに平成8年大蔵省告示第50号の規定に基づき、単体ソルベンシー・マージン比率を算出しております。

保険会社は、保険事故発生や契約満期などの際における保険金・給付金や満期返戻金などの支払に備えて準備金を積み立てておりますが、巨大災害の発生、大幅な環境変化による死亡率の変動または保険会社が保有する資産の大幅な価格下落等、通常の予測を超える危険が発生した場合でも、十分な支払能力を保持しておく必要があります。こうした「通常の予測を超える危険」(表の「(B)単体リスクの合計額」)に対して「保険会社が保有している資本金・準備金等の支払余力」(表の「(A)単体ソルベンシー・マージン総額」)の割合を示す指標として、保険業法等に基づき計算されたものが、「(C)単体ソルベンシー・マージン比率」であります。

単体ソルベンシー・マージン比率は、行政当局が保険会社を監督する際に、保険会社の経営の健全性を判断するために活用する客観的な指標のひとつでありますが、その数値が200%以上であれば「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされております。

当事業年度末の国内保険子会社の単体ソルベンシー・マージン比率の状況は以下のとおりです。

 

a)損害保険ジャパン株式会社

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
(2022年3月31日)

当事業年度
(2023年3月31日)

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

3,042,067

 

2,952,779

 

(B)

単体リスクの合計額

872,214

 

947,373

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

697.5

623.3

 

 

b)セゾン自動車火災保険株式会社

 

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
(2022年3月31日)

当事業年度
(2023年3月31日)

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

21,775

 

19,323

 

(B)

単体リスクの合計額

8,841

 

9,442

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

492.5

409.2

 

 

c)SOMPOひまわり生命保険株式会社

 

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
(2022年3月31日)

当事業年度
(2023年3月31日)

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

389,628

 

309,186

 

(B)

単体リスクの合計額

57,302

 

58,712

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

1,359.8

1,053.2

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、正味支払保険金の増加などにより、前連結会計年度に比べて1,511億円減少し、4,488億円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却・償還による収入の増加などにより、前連結会計年度に比べて239億円増加し、△3,246億円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出があった一方で、社債の発行による収入があったことなどにより、前連結会計年度に比べて777億円増加し、△923億円となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べて637億円増加し、1兆2,710億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

「生産、受注及び販売の実績」は、保険持株会社における業務の特殊性のため、該当する情報がありませんので記載しておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

■ 当社グループの経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

当社は、グループ全体の持株会社として、事業計画の遂行および企業価値を持続的に高めていくための事業ポートフォリオの変革を推し進めております。当期は、グループ戦略の実行に必要な経営資源の配賦、ガバナンス体制の強化に加え、当社グループ独自の「リアルデータプラットフォーム(RDP)」の技術を活用した介護事業者向けサービス「egaku」の開発支援や、事業の垣根を越えたコングロマリット・プレミアム創出に向けた新たな施策等にも取り組みました。

当期の当社グループは、国内外における自然災害の発生や自動車事故率の上昇、新型コロナウイルス感染症の感染者数の拡大等に伴う支払保険金の増加等による収益の下振れ影響はありましたが、国内損害保険事業における収益構造の改善や海外保険事業におけるプライシング戦略等の取組み、国内生命保険事業における健康を軸とした商品・サービスの開発・提供、介護・シニア事業における介護施設・サービスの拡充等を着実に進めました。

これらの取組みの結果、連結主要指標は以下のとおりとなりました。

連結主要指標

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

増減

増減率

経常収益

4,167,496

4,607,134

439,638

10.5%

正味収入保険料

3,215,713

3,670,717

455,003

14.1%

生命保険料

325,183

316,752

△8,430

△2.6%

経常損益

315,512

122,530

△192,982

△61.2%

親会社株主に

帰属する当期純損益

224,842

91,156

△133,685

△59.5%

 

経常収益は、前連結会計年度に比べて4,396億円増加し、4兆6,071億円となりました。

正味収入保険料は、国内損害保険事業における火災保険で増収したことや、海外保険事業における先進国拠点での元受・再保険事業における増収などにより、前連結会計年度に比べて4,550億円増加し、3兆6,707億円となりました。

生命保険料は、新契約は増加するも貯蓄性商品の解約に伴う減少などにより、前連結会計年度に比べて84億円減少し、3,167億円となりました。

経常損益は、国内損害保険事業における保険引受利益の減益などにより、前連結会計年度に比べて1,929億円減少して、1,225億円の経常利益となりました。

経常利益に特別利益、特別損失、法人税等合計などを加減した親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて1,336億円減少して911億円の純利益となりました。

 

なお、目標とする経営指標であるKPIの進捗状況については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

■ 当社グループの財政状態の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[資産の部]

当連結会計年度末の資産の部合計は、外国証券などの有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて6,723億円増加し、14兆4,602億円となりました。

 

[負債の部]

当連結会計年度末の負債の部合計は、支払備金の増加などにより、前連結会計年度末に比べて8,442億円増加し、12兆5,913億円となりました。

 

[純資産の部]

当連結会計年度末の純資産の部合計は、その他有価証券評価差額金の減少などにより、前連結会計年度末に比べて1,718億円減少し、1兆8,689億円となりました。

 

■ 報告セグメントごとの経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

国内損害保険事業の主な取組みとして、料率適正化・アンダーライティング機能の強化・生産性向上といった収益構造改革や、収益性の高い新種保険を中心としたトップライン成長などに取り組んでまいりました。

これらの取組みの一方、自然災害の頻発や激甚化、建物や設備の老朽化進行による火災事故の増加、インフレーションの進行による保険金支払単価の上昇など、国内損害保険事業を取り巻く環境変化が利益拡大に向けての重石となり、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日
     至 2022年3月31日)

 当連結会計年度
(自 2022年4月1日
     至 2023年3月31日)

増減

増減率

正味収入保険料

2,217,148

2,290,596

73,448

3.3%

親会社株主に

帰属する当期純損益

138,288

55,084

△83,204

△60.2%

 

正味収入保険料は、火災保険の増収などにより、前連結会計年度に比べて734億円増加し、2兆2,905億円となりました。火災保険の増収は、料率改定や企業物件を中心としたプライシング適正化の効果発現が主な要因であると認識しております。

親会社株主に帰属する当期純損益は、保険引受利益が減益したことなどにより、前連結会計年度に比べて832億円減少し、550億円の純利益となりました。保険引受利益の減益は、自然災害や大口事故の多発、新型コロナウイルス感染症に対する補償による傷害保険等の保険金の増加、さらには自動車保険における事故率や支払保険金単価の上昇が主な要因であると認識しております。

 

[海外保険事業]

海外保険事業の主な取組みとして、アンダーライティングの強化によるレートアップや契約条件の見直しに加え、農業保険の保有割合を戦略的に引き上げる一方で収益性の乏しいブラジルの健康保険事業を売却するなどポートフォリオの最適化を図るとともに、グローバルに事業展開するお客さまに対するサービス提供基盤の構築を行ってまいりました。また、金融市場の環境変化を捉えた機動的な運用資産のアロケーションによる資産運用収益の向上に取り組んでまいりました。

これらの取組みの結果、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日
   至 2022年3月31日)

 当連結会計年度
(自 2022年4月1日
   至 2023年3月31日)

増減

増減率

正味収入保険料

998,565

1,380,120

381,555

38.2%

親会社株主に

帰属する当期純損益

42,168

48,032

5,863

13.9%

 

正味収入保険料は、Sompo International Holdings Ltd.における増収を主因に、前連結会計年度に比べて3,815億円増加し、1兆3,801億円となりました。これらは、レートアップや為替影響に加え、農業保険の保有割合を増加させたことが主な要因であると認識しております。

親会社株主に帰属する当期純損益は、Sompo International Holdings Ltd.における増益などにより、前連結会計年度に比べて58億円増加し、480億円の純利益となりました。これらは、コマーシャル事業における事業費率の低下や運用収益の増加が主な要因であると認識しております。

 

[国内生命保険事業]

国内生命保険事業の主な取組みとして、「健康応援企業」の確立を目指し、保険本来の機能である「万が一」への備え(Insurance)に加えて、「毎日」に寄り添い健康を応援する機能(Healthcare)を組み合わせた新たな価値「Insurhealth®(インシュアヘルス)」を提供する保険商品をこれまでに9つ発売し、その効果を後押しする働き方改革も含めた生産性の向上のための取組みを行ってまいりました。

これらの取組みの結果、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日
   至 2022年3月31日)

 当連結会計年度
(自 2022年4月1日
   至 2023年3月31日)

増減

増減率

生命保険料

318,501

310,834

△7,666

△2.4%

親会社株主に

帰属する当期純損益

15,949

1,006

△14,942

△93.7%

 

生命保険料は、貯蓄性商品の減収などにより、前連結会計年度に比べて76億円減少し、3,108億円となりました。これらは、貯蓄性商品の解約増加などによる保有契約の減少が主な要因であると認識しております。

親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて149億円減少し、10億円の純利益となりました。これらは、新型コロナウイルス感染症による保険金等支払の増加が主な要因であると認識しております。

 

[介護・シニア事業]

介護・シニア事業の主な取組みとして、新型コロナウイルスの感染拡大防止を最優先に、入居率の向上やソリューション事業などの営業活動を強化してまいりました。また、新卒社員や管理者向けの研修を充実させるなど、人材育成をさらに強化することで社員の働き甲斐や働きやすさの向上を後押しするとともに、質の高い人材の確保および育成に注力することでサービス品質の向上に努めました。さらに、拡大する介護需要を支えるための先行投資や施策を推進してまいりました。具体的には、Palantir Technologies Japan株式会社との協業によるegaku事業の立ち上げや、国立研究開発法人産業技術総合研究所との包括的な相互協力に関する協定に基づく品質を伴った生産性の高い介護モデル等の研究、認知機能低下の抑制に資するSOMPOスマイル・エイジングプログラムの実証、シニアの”Well-Being”実現に向けたスマートコミュニティ事業の実証、介護事業者向けにSOMPOのノウハウ等を提供するソリューション事業などに取り組みました。

これらの取組みの結果、経営成績は以下のとおりとなりました。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2021年4月1日
   至 2022年3月31日)

 当連結会計年度
(自 2022年4月1日
   至 2023年3月31日)

増減

増減率

経常収益

136,663

151,683

15,020

11.0%

親会社株主に

帰属する当期純損益

1,367

793

△573

△42.0%

 

経常収益は、前連結会計年度に比べて150億円増加し、1,516億円となりました。これらは積極的な営業活動の実施に伴い入居率が向上したことや、株式会社ネクサスケアとの合併などが主な要因であると認識しております。

親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べて5億円減少し、7億円の純利益となりました。これらは資源価格の上昇に伴う水道光熱費の高騰や新型コロナウイルス対策に伴う消耗品費などのコスト増が主な要因であると認識しております。

 

なお、目標とする経営指標であるKPIの報告セグメントごとの進捗状況については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 報告セグメントごとの経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

■ 報告セグメントごとの財政状態の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[国内損害保険事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、国債などの有価証券の減少などにより、前連結会計年度末に比べて4,858億円減少し、5兆8,991億円となりました。

 

[海外保険事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、外国証券などの有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて8,152億円増加し、4兆476億円となりました。

 

[国内生命保険事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、国債などの有価証券の増加などにより、前連結会計年度末に比べて2,090億円増加し、3兆9,253億円となりました。

 

[介護・シニア事業]

当連結会計年度末の資産の部合計は、エヌ・デーソフトウェア株式会社およびその傘下の3社の新規連結による増加などにより、前連結会計年度末に比べて1,015億円増加し、2,652億円となりました。

 

■ 当社グループのソルベンシー・マージン比率の分析の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

[連結ソルベンシー・マージン比率]

 

(単位:百万円)

区分

前連結会計年度
(2022年3月31日)

当連結会計年度
(2023年3月31日)

増減

(A)

連結ソルベンシー・マージン総額

3,697,989

 

3,252,617

 

△445,372

 

(B)

連結リスクの合計額

956,727

 

1,113,737

 

157,009

 

(C)

連結ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

773.0

584.0

△189.0

pt

 

連結ソルベンシー・マージン総額は、金利上昇によるその他有価証券評価差額金の減少等により、4,453億円減少し、3兆2,526億円となりました。

連結リスクの合計額は、海外子会社の増収による一般保険リスクや巨大災害リスクの増加等により、1,570億円増加し、1兆1,137億円となりました。

結果、連結ソルベンシー・マージン比率は、前連結会計年度末に比べて189.0ポイント低下して584.0%となりましたが、「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされる200%を上回る水準となっております。

 

[単体ソルベンシー・マージン比率]

 

 

(単位:百万円)

区分

前事業年度
(2022年3月31日)

当事業年度
(2023年3月31日)

増減

(A)

単体ソルベンシー・マージン総額

3,042,067

 

2,952,779

 

△89,288

 

(B)

単体リスクの合計額

872,214

 

947,373

 

75,158

 

(C)

単体ソルベンシー・マージン比率
[(A)/{(B)×1/2}]×100

697.5

623.3

△74.2

pt

 

損害保険ジャパン株式会社については、単体ソルベンシー・マージン総額は、金利上昇によるその他有価証券評価差額金の減少等により、892億円減少し、2兆9,527億円となりました。

単体リスクの合計額は、海外子会社への増資による資産運用リスクの増加等により、751億円増加し、9,473億円となりました。 

結果、単体ソルベンシー・マージン比率は、前事業年度末に比べて74.2ポイント低下して623.3%となりましたが、「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」とされる200%を上回る水準となっております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容ならびに資本の財源および資金の流動性に係る情報

■ 当連結会計年度における区分ごとのキャッシュ・フローの状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

当連結会計年度

(自  2022年4月1日

 至  2023年3月31日)

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

600,021

448,892

△151,129

投資活動によるキャッシュ・フロー

△348,540

△324,634

23,905

財務活動によるキャッシュ・フロー

△170,108

△92,364

77,743

現金及び現金同等物の期末残高

1,207,306

1,271,040

63,733

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、Sompo International Holdings Ltd.などの正味支払保険金の増加などにより、前連結会計年度に比べて1,511億円減少し、4,488億円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、損害保険ジャパン株式会社などの有価証券の売却・償還による収入の増加などにより、前連結会計年度に比べて239億円増加し、△3,246億円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、損害保険ジャパン株式会社などで社債の償還による支出があった一方で、損害保険ジャパン株式会社で社債の発行による収入があったことなどにより前連結会計年度に比べて777億円増加し、△923億円となりました。

 

■ 当社グループの資本の財源および資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。

  (経営資源の配分に関する考え方)

当社の事業計画は、グループCEOの諮問機関であるGlobal Executive Committeeでの協議を経て、策定しております。事業計画を踏まえ、事業毎に成長性や収益性を考慮して資本配賦を実施し、各事業では配賦された資本を元に事業運営を行い、事業計画における利益目標の達成を目指しております。また、経営環境の変化や計画の進捗状況等を定期的に確認し、必要に応じて事業計画や資本配賦について見直しを行っております。

 

       (資金需要の動向および資本の財源) 

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、成長事業分野への投資資金および株主還元であります。このうち、運転資金および株主還元については、主として営業活動および投資活動によるキャッシュ・フローを財源としております。また、成長事業分野への投資資金については、自己資金の活用に加え、必要に応じて社債や借入金等の外部から調達した資金を財源としております。

資金調達にあたっては、財務健全性の維持およびコストの低減に十分留意しながら、最適な手段を選択することとしております。リスクに対して適切な資本を確保しているかを示す指標であるEconomic Solvency Ratio(以下「ESR」といいます。)のターゲットレンジは200~270%としておりますが、当連結会計年度末のESRは223%であり、十分な財務健全性を維持しております。

株主還元については、中期経営計画(2021年度~2023年度)の株主還元方針として、修正連結利益の50%を基礎的な還元として維持し状況を踏まえて追加還元を実施すること、利益成長にあわせた増配を基本方針とし総還元に占める配当の割合を高めていくこととしております。当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。

 

    (資金の流動性) 

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,271,040百万円でありますが、日々の資金繰り管理のほか、巨大災害発生時などの最大資金流出量を想定しそれに対応できる水準の流動性資産が確保されるよう管理しております。

 

③ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。当社の連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5  経理の状況」に記載のとおりですが、以下の事項に関する会計上の見積りが当社グループの連結財務諸表の作成に大きな影響を及ぼすと考えております。

なお、翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響などの重要性を勘案して、「のれんの減損」および「支払備金」につきましては、「第5  経理の状況」の「注記事項(重要な会計上の見積り)」にも記載しております。

 

ア.金融商品の時価の算定方法

金融商品の時価は、原則として市場価格に基づいておりますが、一部の市場価格のない金融商品については、将来予想されるキャッシュ・フローの現在価値や、契約期間その他の契約を構成する要素を基礎として算定した価格等を時価としております。当該時価の算定においては一定の前提条件等を採用しているため、異なる前提条件等によった場合、当該時価が変動することもあります。

 

イ.有価証券の減損

その他有価証券(市場価格のない株式等および組合出資金等を除く。)については、原則として、期末日の時価が取得原価に比べて30%以上下落したものを減損の対象としております。今後、有価証券市場が変動した場合には、有価証券評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

ウ.固定資産の減損

固定資産については、資産または資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に、その差額を減損損失に計上しております。回収可能価額は、資産または資産グループの時価から処分費用見込額を控除した正味売却価額と割引後将来キャッシュ・フローとして算定される使用価値のいずれか大きい方としていることから、固定資産の使用方法を変更した場合もしくは不動産取引相場や賃料相場、その他経営環境が変動した場合またはのれんが認識された取引において取得した事業の状況に変動が生じた場合には、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

 

エ.繰延税金資産

当連結会計年度における繰延税金資産および繰延税金負債の内訳は、「第5  経理の状況」の「注記事項(税効果会計関係)」に記載したとおりであります。繰延税金資産の計上に際しては、将来の課税所得の見積りに基づき、回収可能性の見込めない部分を評価性引当額として、繰延税金資産から控除しております。将来、経営環境の変化等により課税所得の見積りが大きく変動した場合や、税制改正により税率の変更等が生じた場合には、繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。

 

オ.貸倒引当金

貸倒引当金の計上基準は、「第5  経理の状況」の「注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載したとおりであります。将来、貸付先等の財政状態が変化した場合には、貸倒引当金の計上額が変動する可能性があります。

 

カ.支払備金

支払備金は、支払義務が発生した保険金等のうち、まだ支払っていない金額の見積額を計上しております。このうち、既発生未報告の支払備金については、主として統計的な見積方法により算出しております。将来、インフレや為替の影響、さらには裁判の判例の動向などにより支払備金の必要額が変動する可能性があります。

 

キ.責任準備金等

保険契約に基づく将来の債務の履行に備え、責任準備金等を積み立てております。また、一部の長期の保険契約について標準責任準備金を積み立てております。当初想定した環境・条件等が大きく変動し予期せぬ損害の発生が見込まれる場合には、責任準備金等の必要額が変動する可能性があります。

 

ク.退職給付債務等

退職給付費用および退職給付債務の計算の基礎は、「第5  経理の状況」の「注記事項(退職給付関係)」に記載したとおりであります。これらの計算の基礎と実績値が異なる場合、または計算の基礎が変更された場合には、将来の退職給付費用および退職給付債務が変動する可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2022524日に、当社のブラジル保険子会社であるSompo Seguros S.A.(以下「SS」といいます。)のコンシューマー事業を、ドイツ保険グループ大手Talanx AGのブラジル保険子会社であるHDI Seguros S.A.(以下「HDI」といいます。)に売却することを決定しました。

SSが、孫会社Sompo Consumer Seguradora S.A.(以下「SCS」といいます。)を設立したうえで、SCSを承継会社とする会社分割(吸収分割)を行う方法によりコンシューマー事業をSSの完全子会社として分社化したのち、SCSの株式の全てをHDIに売却するものであり、同日付でSSHDIとの間でSCSの株式に関する株式譲渡契約を締結しました。

 

(1) 株式譲渡の目的

2014年にYasuda Seguros S.A.Maritima Seguros S.A.との合併によって誕生したSS(合併当時の社名はYasuda Maritima Seguros S.A.2016年に社名変更)は、ブラジルにおいてコマーシャルおよびコンシューマーの両分野で事業展開してきましたが、事業規模の重要性がますます高まりつつあるコンシューマー分野の競争環境下における戦略を再検討した結果、事業の選択と集中を進め、既に市場プレゼンスが高く、より成長性が見込めるコマーシャル分野に経営資源を集約することが、SSの更なる成長と収益向上に資するとの結論に至り、コンシューマー事業をHDIに売却することとしました。

SSは、コマーシャル分野に特化した保険会社へと事業転換し、ブラジル企業保険市場で更なる事業の拡大を図ってまいります。

 

(2) 株式譲渡の方法

SSの子会社として新たに保険会社(SCS)を設立し、SSが保有するコンシューマー事業に係る資産・負債一式を会社分割の方法によりSCSへ承継しました。今後、SSが保有するSCSの全株式をHDIに有償譲渡することでSSのコンシューマー事業をHDIに売却します。

 

(3) SSが売却する事業部門の概要

① 売却する事業内容

  コンシューマー事業

② 売却する部門の経営成績(202112月末)

  売上高   1,762 百万ブラジルレアル(約457億円)

③ 売却する部門の財産の状況(202112月末)

  総資産   2,177 百万ブラジルレアル(約564億円)

  総負債   1,794 百万ブラジルレアル(約465億円)

  総資本     383 百万ブラジルレアル(約99億円)

 

(4) 株式譲渡の相手先(HDI)の概要

① 商号          HDI Seguros S.A.

② 所在地       ブラジル

③ 事業内容     保険会社

④ 資本金       755百万ブラジルレアル(約196億円)

⑤ 設立年月日    198033

 

(5) 譲渡株式数および譲渡前後の所有株式の状況

① 異動前の所有株式数  9,300株(議決権所有割合100.0%

② 譲渡株式数      9,300

③ 譲渡価額(予定)   1,230百万ブラジルレアル(約319億円)

④ 異動後の所有株式数  0株(議決権所有割合0.0%

 

(6) 株式譲渡の時期

20236月以降(予定)

 

(注)日本円の為替レートは、1ブラジルレアル=25.93 円(2022428日時点)を使用しております。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。