当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.会社の経営の基本方針
当社グループは「自分が関わること1つ1つに Impact を与え続けよう。人々の心に伝わる小さな Impact の積み重ねが、やがて世界を揺るがす大きなうねりとなるから。」という想いを「Impact On The World」というミッションに定め、データとテクノロジーによって世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業を目指して事業展開を行っております。
2.経営環境
当社グループは、拡大しているインターネット広告市場において、広告効果測定とともに、運用型広告の効果最大化及び運用効率化のニーズ、さらには広告効果測定から運用型広告の一連の動きを一貫して最適化するマーケティングDX分野のニーズが高まってくると考え、これらのニーズに応えるため、マーケティングプラットフォーム事業において、広告効果測定プラットフォームの「アドエビス」や運用型広告のレポートを自動作成するツール「アドレポ」等の、多様化・分散化する消費者行動をメディア・デバイスに関わらず横断的に測定、活用するためのサービスを展開してまいりました。
折しも、新型コロナウイルス感染症の拡大を機にDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されておりますが、マーケティングの業界におけるDX実現のためには、当社主力サービスである「アドエビス」の提供価値であるデータの計測や活用等が必要不可欠になってくるものと考えております。
また、商流プラットフォーム事業においては、EC構築のためのオープンプラットフォーム「EC-CUBE」を提供し、「EC-CUBE」と連携する各種サービス(決済代行等)の提供事業者からマージン収入を得ております。コロナウイルス感染症の拡大により外出機会が減少する中、巣ごもり消費としてEC市場の流通額が一時期急増いたしましたが、直近ではECカート市場の競争も激化していることから、「EC-CUBE」の展開に加えて、競争力強化のためにEC構築・運用支援領域への再参入を行い、ECサービスの垂直統合モデル構築に取り組んでおります。
3.経営戦略等
当社グループは、2023年11月に発表いたしました中期経営方針「VISION2027」において、マーケティングプロセス支援領域、EC構築・運用支援領域の2つの領域を柱に事業展開を行う方針を掲げております。
既存事業で培ってきた基盤を軸に、ツール提供に留まらず、顧客それぞれの状況に応じた課題を解決するために人的支援サービスの提供を行うなど、当社サービスを拡大していくことで、顧客企業のマーケティングDXの推進に貢献することを目指します。
4.目標とする経営指標
当社グループの売上の大半を占めるマーケティングプラットフォーム事業はサブスクリプション(継続課金)を主な契約形態とするビジネスであり、契約の積み上げが安定的な売上計上につながるビジネスモデルとなっております。このため、当社グループでは、最重要視する経営指標として売上高を掲げており、同時に適正な利益計上及び株主還元についても重視しております。
中期経営方針「VISION2027」では、既存事業の継続的な成長を推進するとともに、新たな収益の柱とするべくマーケティングプロセス支援領域、EC構築・運用支援領域の拡大で成長を加速し、連結売上高100億円達成への道のりを明確なものにしてまいります。
5.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、主にインターネット広告市場を中心に事業を行っており、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
(1) 事業展開について
中期経営方針「VISION2027」として、マーケティングプロセス支援領域、EC構築・運用支援領域の2つの領域を中心にサービス拡大を図ることを掲げております。マーケティングプロセス支援領域では、当社が強みを持つマーケティング施策の効果測定をはじめ、適応学習、投資選択、実行・管理に至るまでのマーケティングプロセスの円滑な循環を目指し、顧客のDX推進に貢献いたします。EC構築・運用支援領域においては、長年EC構築プラットフォームを提供してきた知見を活かし、カスタマイズ性に富んだECサイトの構築から運用伴走支援に至るまで、垂直統合モデルの実現に取り組んでまいります。
なお、重点戦略は以下のとおりであります。
① マーケティングプロセス支援領域の新サービスローンチ及びクロスセルの促進
② コマース支援事業の垂直統合と生産性の向上
(2) 環境変化への対応について
オンラインにおけるプライバシー保護とパーソナルデータの適切な活用への関心が高まるとともに、情報セキュリティに対する脅威も年々増大し、加えて個人情報保護に関する国内外の法規制も強化されております。このような状況下において、プライバシーへの配慮や情報セキュリティ強化とパーソナルデータの利活用を両立させるための技術開発を推進してまいります。
(3) 人財について
当社グループでは、これまで開発部門、営業部門、カスタマーサクセス部門の体制強化を行いながら業容を拡大してまいりましたが、今後の継続的な成長のためには、これらの部門のさらなる強化はもとより、新規事業開発の人員体制拡充も必要となります。
また、事業の成長拡大や多角化により、高い専門性を有する人財の獲得及び育成については重要な経営課題となっております。今後も、多様な働き方を支援する制度・環境の整備や、人財成長を促す教育の充実を行いながら、持続的な雇用の創出に取り組んでまいります。
(4) 研究開発について
昨今、AI*のビジネス活用が注目されておりますが、当社グループの事業領域であるマーケティングデータの計測、分析、活用の分野においても様々な可能性が考えられます。マーケティング分野におけるAI活用により新しい価値提供を実現するため、新技術の開発を推進してまいります。
* Artificial Intelligence:人工知能
(5) グループ経営管理について
当社グループのさらなる企業価値向上を目指すため、M&Aによる事業拡大や社内事業部の分社化等にも引き続き取り組んでまいります。この施策の効果を最大化するためにも、グループ経営管理体制の強化やコーポレート・ガバナンスの強化は必須のものとして取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループにおいては、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細につきましては、「
(2)戦略
当社グループは、サステナビリティについては「働きがい創出と事業成長を目指すと共に、マーケティングDX支援によって顧客企業の成長にも貢献し、豊かな社会づくりの一助となる」という戦略を掲げており、この戦略に基づき以下の目標達成に取り組んでおります。
・事業成長と共に、多様な働き方を支援する制度・環境の整備を行う
・人財成長を促す教育の充実により持続的な雇用の創出に取り組む
・データとテクノロジーでマーケティングDXを支援し、企業の成長基盤を創造する
・積極的なパートナーシップでインパクト創出を加速する
・マーケティングDX支援により、自社及び顧客企業における働きがい創出と事業成長に寄与する
また、人財の多様性の確保を含む人財育成方針としては、「一人ひとりが力を存分に発揮し、ともに成長できる組織へ」という基本的な考え方に基づき、当社の経営理念のもとでビジョンを実現するために、会社組織や従業員がどのようにあるべきかという基本方針として、以下のHRポリシーを策定しております。
・イルグルムの社員には、主体的に取り組み、強みを磨き、力をかけあわせ価値創出することを求めます。
・組織は、社員が力を最大限発揮し、キャリアビジョンを描ける機会・環境を提供します。
この基本方針に基づき、人財育成に取り組むとともに、従業員が力を発揮できるような職場環境の整備や、教育研修カリキュラムの充実、相互理解と相乗効果に寄与するようなコミュニケーションの機会創出等に取り組んでまいります。
(3)リスク管理
当社グループは、リスク管理を経営上の重要な活動と認識しており、各執行役員が自己の分掌範囲について責任をもって構築しており、その運用状況は監査等委員会及び内部監査室が監査を行っております。詳細につきましては、「
(4)指標及び目標
当社グループでは、ITを活用することで、ペーパーレス化やリモートワーク等環境負荷が少ない事業活動を進めていることから、サステナビリティ関連のリスク・機会を管理するための指標について、下記の人財の確保及び育成に関する指標以外については用いておりません。今後、当社において指標を定める目的や必要性を協議し、必要に応じて指標の策定を検討してまいります。
人的資本に関する指標としては、人財の多様性の確保を含む人財育成に関するものとして、次の指標を用いております。
|
指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
|
管理職に占める女性労働者の割合(%)(注) |
30.0 |
21.6 |
(注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。詳細は「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(計画期間 2022年4月1日~2027年3月31日)に記載のとおりであります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下とおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境に関するリスクについて
インターネット市場等の動向について
当社グループはインターネット広告市場及びEC市場を主たる事業領域としており、当社グループ事業の継続的な拡大・発展のためには、更なるインターネット環境の整備、インターネットの利用拡大に加えて、インターネット広告の需要拡大や、EC市場の発展が必要と考えております。
しかしながら、インターネットの普及に伴う環境整備やその利用に関する新たな規制の導入、技術革新等により、今後のインターネットサイト運営の遂行が困難になった場合や、急激な景気の変化等によりインターネット広告の需要やEC市場での取引が縮小した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うサプライチェーンの混乱や資源・エネルギー価格高騰、及び為替の円安傾向等を背景とした物価高の進行等により、わが国経済の先行きは不透明な情勢となっております。こうした環境変化が当社グループの顧客企業に及ぼす影響につきましては、高い緊張感をもって注視してまいります。
(2)事業内容に関するリスクについて
① マーケティングプラットフォーム事業について
インターネット業界においては日々新しい技術や機能が開発されており、当社グループもサービス機能の拡充のための開発や、新サービスや新事業の開発に取り組んでおります。また、主力事業である「マーケティングプラットフォーム事業」は月額課金型のサブスクリプションビジネスであり、業容拡大のためには契約件数の拡大が必須であることから、営業体制の拡充や広告宣伝の強化に努めております。
このようなシステム開発投資や、広告宣伝等への投資については先行投資となることから、投資先行の局面においては、利益率が低下する可能性があります。
また、これら先行投資を行ったにもかかわらず、想定どおりに事業拡大・成長が進まない場合には、結果として投資を回収できないこととなり、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 特定のサービスへの依存度について
当社グループは、高い利益率と成長性を得るために、自社開発サービスによる売上収益の比率を高める経営戦略を採っております。その中でも、主力サービス「アドエビス」関連の売上収益は、当期には売上収益の約61.3%を占めており、当期において当社グループの売上収益の多くが同サービス関連の売上に依存していることを示しております。市場環境の変化、内外の景気動向の変化などにより、同サービスの需要に大きな変化が現れた場合には、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
また、インターネット広告市場においては、多くの企業が事業展開していることもあり、競合サービスが増加する可能性があります。今後、十分な差別化や機能向上等を行えなかった場合や、新規参入等により競争が激化した場合には、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報取得に関する制限について
当社グループの「アドエビス」はインターネット広告の効果測定システムを基盤としてサービスを展開しておりますが、インターネット広告配信や媒体、ブラウザ閲覧サービス運営者等の方針転換により、情報の自動収集に制限が加わったり、禁止されたりする可能性があります。このような事象が生じた場合、当社グループは独自の方法により同様のデータ収集に努める方針ですが、現在収集できているデータを取得できなくなることでサービスの品質が低下したり、情報の収集に対して追加コストが発生したりする場合等には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 商流プラットフォーム事業について
当社グループの「商流プラットフォーム事業」では、EC構築のためのオープンプラットフォーム「EC-CUBE」の提供及び「EC-CUBE」をベースとしたEC受託開発を行う事業を行っております。「EC-CUBE」はフリーミアムモデルのオープンソース・パッケージとして提供しており、EC事業者のインフラ整備や売上向上に貢献する一方、連携する決済代行事業者等のオフィシャルパートナーから決済手数料収入を得るというビジネスモデルです。
したがって、オフィシャルパートナーの経営成績に影響が生じた場合、当社への決済手数料収入の減少へとつながり、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、EC受託開発につきましては、プロジェクト単位に進行・費用等の管理を実施しておりますが、何らかの要因により当初の計画から作業進捗の遅延や想定外の費用負担が発生し、採算性が悪化する可能性があります。さらに、顧客の検収後に予期せざる不具合が生じた場合は、適正化のための追加費用や損害賠償請求への対応を余儀なくされ、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)システム等に関するリスクについて
① 情報セキュリティやシステム障害について
当社グループの事業はインターネット環境に依存しており、サービス及びそれを支えるシステムやインターネット接続環境の安定した稼働を前提としております。また、事業展開を通じて収集・保管するビッグデータを分析基盤としてサービス提供や改善に活用しております。システムトラブルの発生可能性を低減して安定したサービス提供を行うために、安定的運用のためのシステム強化、セキュリティ強化を徹底しており、万が一トラブルが発生した場合においても短時間での復旧が可能な体制を整えております。
しかしながら、大規模なプログラム不良や、想定を大幅に上回るアクセス集中、コンピュータウィルス等により、開発業務やシステム設備等に重大な被害が発生し、正常に稼働できなくなった場合、及びその他何らかの理由によりシステム障害や保有するビッグデータの消失等が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障が生じることにより、ユーザーとの信頼関係に悪影響を及ぼし、賠償責任の発生等によって、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 技術革新について
当社グループが事業展開しているインターネット関連市場では、活発な技術革新が行われておりそのスピードが速いことから、技術革新に応じたシステムの拡充、及び事業戦略の修正等も迅速に行う必要があると考えております。そのため、当社グループでは業界の動向を注視しつつ、迅速に既存サービスにて新たな技術を展開できる開発体制を整えております。
しかしながら、予期しない技術革新等があった場合、それに伴いシステム開発費用が発生する可能性があります。また、適時に対応ができない場合、当社グループの技術的優位性やサービス競争力が低下し、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 事業拡大に伴う設備投資について
当社グループでは、サービスの安定稼働やユーザーの満足度向上を図るためには、サービスの成長に伴い先行的にシステムやインフラに投資を行っていくことが必要であると認識しております。
今後、現在展開している事業で予測されるユーザー数・アクセス数の拡大、新規事業への参入、及びセキュリティ強化のための継続的な設備投資を計画しておりますが、実際のユーザー数及びアクセス数が当初の予測から大幅に乖離する場合、設備投資の前倒しや当初計画を上回る投資を行わなければならず、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的規制及び知的財産等に関するリスクについて
① 一般的なインターネットにおける法的規制について
当社グループの事業を規制する主な法令等として「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」及び「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(青少年ネット規制法)」があります。
近年、インターネット上のトラブルへの対応として、インターネット関連事業を規制する法令は徐々に整備されてきており、今後、インターネットの利用や関連するサービス及びインターネット関連事業を営む事業者を規制対象とする新たな法令等の施行や既存法令等の解釈変更がなされた場合には、当社グループの事業が制約を受ける可能性があります。その場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 個人情報の取り扱いについて
当社グループでは、インターネット関連サービスの提供を通じ、各サービス利用者の関係者を識別することができる個人情報や、プライバシー情報を保有しております。
当社グループでは、個人情報やプライバシー情報を取り扱う際の業務フローや社内体制を明確化し、個人情報管理に関する規程を制定しております。併せて役員及び社員を対象とした社内教育を通じて、関連ルールの存在を周知徹底し、意識の向上を図っております。2006年12月より、財団法人日本情報処理開発協会(現一般財団法人日本情報経済社会推進協会)が発行するプライバシーマークを取得しております。
また、当社グループのコンピュータシステムは、外部からの不正アクセスを防止するためのファイヤーウォール等のセキュリティ手段によって保護されております。
しかしながら、個人情報やプライバシー情報が当社グループの関係者や業務提携先の故意又は過失により、外部へ流出もしくは悪用される事態が発生した場合や、欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)に意図せず違反した場合には、当社グループが損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があるほか、当社グループ並びに運営サービスの信頼性やブランドが毀損し、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 知的財産権の侵害等について
当社グループは、運営する事業に関する知的財産権の保護に努めております。第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制として、社内で侵害の有無について確認を行った上で、必要に応じて顧問弁護士及び弁理士と連携を取って可能な限り知的財産権侵害・被害等のリスクを軽減すべく活動しております。
しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴えを起こされる可能性があり、これらに対する支払いが発生する可能性があります。また、当社グループが保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があるほか、当社グループが保有する知的財産の法的権利化ができない場合、当社グループの事業及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5)事業運営体制に関するリスクについて
① 小規模組織であることについて
当社グループは、2023年9月30日現在において提出会社の取締役6名(うち、非常勤監査等委員3名)、執行役員5名(うち、取締役兼任2名)及び従業員236名(執行役員除く)と小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。
当社グループは、今後の急速な事業の拡大に応じて社員の育成、人財の採用を行うとともに、業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合、あるいは役員及び社員が予期せず退任又は退職した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 人財の確保及び育成について
当社グループは、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い、継続した人財の確保が必要であると考えております。特に新規事業を立ち上げ、拡大・成長させていくための事業開発力・マネジメント能力を有する人財や、システム技術分野のスキルを有する人財の確保に努めるとともに、教育体制の整備を進め人財の定着と能力の向上に努める所存であります。
しかしながら、当社グループの求める人財が必要な時期に十分に確保・育成できなかった場合や人財流出が進んだ場合には、経常的な業務運営及び新規事業の拡大等に支障が生じ、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定の人物への依存について
代表取締役社長執行役員CEOである岩田進は、当社の設立者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において極めて重要な役割を果たしております。
当社グループでは執行役員制度を導入しており、経営監督を担う取締役会と業務執行を担う執行役員の役割を区別していることや、事業運営のための定例会議等における役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図ることで、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
しかしながら、何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 内部管理体制の強化について
当社グループでは、企業価値の継続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識しております。
業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底して参りますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(6)災害・紛争・事故等に関するリスクについて
地震や台風等の自然災害や大規模な事故、国際紛争等が発生した場合には、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、このような事態に備え、定期的なバックアップや稼働状況の監視によりシステムトラブルの未然防止や回避及び速やかな復旧体制の構築に努めておりますが、各種災害等の発生による影響を完全に防止できる保障はなく、地震等の大規模災害の発生や事故により本社及びデータセンターが被害を受けた場合、当社グループが提供する事業の継続に支障をきたし、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の進展や経済活動の改善により、足元の景況感については改善がみられましたが、急速な金融引き締め等による景気後退懸念が高まっていることから、依然として国内外における経済先行きは不透明な状態が続いております。
一方、当社グループが事業を展開している国内のインターネット広告市場については、社会のデジタル化を背景に2022年のインターネット広告費は前年比114.1%の3兆912億円(株式会社電通「2022年日本の広告費」)と継続的に高い成長率を維持しており、総広告費に占める割合も43.5%まで拡大しております。
また、当社グループのもう一つの対面市場であるEC市場については、2022年国内BtoC-EC市場規模は前年比109.9%の22.7兆円となりました。分野別では、物販系分野に関して前年比105.4%と伸長しており、物販系分野におけるEC化率についてもBtoC-ECで9.1%(前年比0.3ポイント増)と伸長しております。BtoB-EC市場におけるEC化も37.5%(前年比1.9ポイント増)と増加傾向にあり(いずれも経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」)、国内のEC市場規模拡大は継続しております。
このような事業環境の下、当社グループは、データとテクノロジーによって世界中の企業によるマーケティング活動を支援し、売り手と買い手の幸せをつくる企業を目指して事業展開を行っております。当連結会計年度においては、前期中の新連結子会社による業績貢献が期首から発生することから増収となりましたが、利益率の高い主力サービス「アドエビス」の減収や、商流プラットフォーム事業の利益率が低下し前期比で減益となったこと等により、売上高3,626,276千円(前期比8.8%増)、営業利益318,932千円(前期比18.8%減)、経常利益329,476千円(前期比17.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益197,019千円(前期比16.5%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は以下のとおりとなりました。
(マーケティングプラットフォーム事業)
当事業は、インターネットにおける消費者行動を横断的に測定し、マーケティングに活用するためのクラウドサービスを提供する事業であります。当事業では、当期を最終年度とする中期経営方針「VISION2023」の戦略として、「アドエビス」を中心とする既存サービスを安定基盤としつつ、新サービスの複数展開により総合マーケティングDX支援企業集団へ進化し、LTV(ライフタイムバリュー)を最大化することを目指してまいりました。提供しているサービスは広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」を主力サービスとし、分析レポート自動作成サービス「アドレポ」を提供する広告代理店向けプラットフォームビジネスやインキュベーション領域として新サービス開発にも取り組んでおります。また、「アドエビス」につきましては、契約アカウント数の拡大を図るため、新たに低単価プランの「Growth Step Program」や、Cookieに依存しないコンバージョンAPIによる計測ソリューション「CAPiCO」の提供を開始しました。
当連結会計年度においては、インキュベーション領域の成長により売上高は前期に対して増加いたしましたが、主力の「アドエビス」の減収により営業利益は前期に対して減少することとなりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は2,933,066千円(前期比0.3%増)、セグメント利益は255,736千円(前期比8.5%減)と増収減益になりました。なお、当連結会計年度の売上高には、2022年1月31日に連結子会社化したファーエンドテクノロジー株式会社の売上高が含まれております。
(商流プラットフォーム事業)
当事業は、EC構築のためのオープンプラットフォーム「EC-CUBE」及びEC構築からマーケティング支援までのECソリューションを提供する事業であります。「EC-CUBE」はフリーミアムモデルのオープンソース・パッケージとして提供しており、EC事業者のインフラ整備や売上向上に貢献する一方、「EC-CUBE」と連携する各種サービス(決済代行等)の提供事業者から決済手数料収入を得るというエコシステムを構築しております。また、このオープンソース版「EC-CUBE」を用いたEC構築・運用支援領域にも参入し、従来のプラットフォーム開発からEC構築・運用支援までの垂直統合モデルのビジネスを展開しております。
当連結会計年度においては、垂直統合モデルを推進する中で大規模EC構築案件の受託開発にも取り組み、進捗に応じて売上計上を行っておりますが、従来の決済手数料収入と比べて受託開発事業の利益率は相対的に低く、また経営及び開発体制の強化によりコスト増になったこと等により、セグメント利益は前期に対して減少することとなりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は709,017千円(前期比71.2%増)、セグメント利益は66,629千円(前期比38.4%減)と増収減益になりました。なお、当連結会計年度の売上高には、2022年5月31日に連結子会社化した株式会社EC-CUBE Innovations(旧会社名 ボクブロック株式会社)の売上高が含まれております。
また、財政状態については次のとおりとなりました。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は2,101,313千円となり、前連結会計年度末に比べ267,265千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が131,058千円増加したことや、EC構築領域の受託開発案件の売上計上等により受取手形及び売掛金が109,056円増加したことによるものであります。
また、固定資産は1,063,254千円となり、前連結会計年度末に比べ206,361千円減少いたしました。これは主に償却によりのれんが122,224千円減少したことや繰延税金資産が32,888千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は3,164,568千円となり、前連結会計年度末に比べ60,904千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は1,018,203千円となり、前連結会計年度末に比べ134,833千円増加いたしました。これは主に未払金が100,443千円増加したことによるものであります。
また、固定負債は163,172千円となり、前連結会計年度末に比べ252,678千円減少いたしました。これは約定返済により長期借入金が252,678千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は1,181,375千円となり、前連結会計年度末に比べ117,844千円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,983,193千円となり、前連結会計年度末に比べ178,749千円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上197,019千円による利益剰余金の増加及び剰余金の配当43,825千円による利益剰余金の減少等によるものであります。
この結果、自己資本比率は61.4%(前連結会計年度は57.1%)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末と比べ115,584千円増加(前年同期は132,001千円減少)し、1,375,332千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローについては、564,845千円の収入(前年同期比30.3%増)となりました。主な増加要因は法人税等の支払額73,408千円(前年同期比62.4%減)や税金等調整前当期純利益319,940千円(前年同期比17.7%減)の計上等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローについては、156,650千円の支出(前年同期比39.4%減)となりました。これは主に、自社開発ソフトウェアの計上等の無形固定資産の取得による支出148,073千円(前年同期比14.9%減)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローについては、292,831千円の支出(前年同期比7.2%減)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出249,544千円(前年同期比7.4%増)及び配当金の支払額44,955千円(前年同期比30.8%増)によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の状況
a.生産実績
当社グループの事業内容は受注生産形態をとらない事業が多く、セグメント別に生産の規模を金額あるいは数量で示すことがなじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当社グループの事業内容は受注生産形態をとらない事業が多く、セグメント別に受注の規模を金額あるいは数量で示すことがなじまないため、記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
マーケティングプラットフォーム事業 |
2,933,066 |
100.3 |
|
商流プラットフォーム事業 |
709,017 |
171.2 |
|
調整額 |
△15,807 |
- |
|
合計 |
3,626,276 |
108.8 |
(注)調整額は、セグメント間取引消去額であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
(資産の分析)
当連結会計年度末における資産の合計は3,164,568千円となり、前連結会計年度末に比べ60,904千円増加いたしました。
当連結会計年度末における流動資産は2,101,313千円となり、前連結会計年度末に比べ267,265千円増加いたしました。これは主に売上高の増加により現金及び預金が131,058千円増加したこと等によるものであります。また、固定資産は1,063,254千円となり、前連結会計年度末に比べ206,361千円減少いたしました。これは主に償却によりのれんが122,224千円減少したこと等によるものであります。
なお、セグメント毎の内訳については、マーケティングプラットフォーム事業が2,692,204千円、商流プラットフォーム事業が504,731千円であります。
(負債の分析)
当連結会計年度末における負債の合計は1,181,375千円となり、前連結会計年度末に比べ117,844千円減少いたしました。
当連結会計年度末における流動負債は1,018,203千円となり、前連結会計年度末に比べ134,833千円増加いたしました。これは主に商流プラットホームのコスト増加により未払金が100,443千円増加したこと等によるものであります。また、固定負債は163,172千円となり、前連結会計年度末に比べ252,678千円減少いたしました。これは主に約定返済により長期借入金が252,678千円減少したことによるものであります。
(純資産の分析)
当連結会計年度末における純資産合計は1,983,193千円となり、前連結会計年度末に比べ178,749千円増加いたしました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益197,019千円の計上による利益剰余金の増加及び剰余金の配当43,825千円による利益剰余金の減少等によるものであります。この結果、自己資本比率は61.4%(前連結会計年度末は57.1%)となりました。
b.経営成績の分析
当連結会計年度における経営成績の概要については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。連結損益計算書の主要項目ごとの前連結会計年度との主な増減要因等は次のとおりであります。
(売上高、営業利益)
当連結会計年度の売上高は3,626,276千円(前年同期比8.8%増)、売上総利益は2,169,143千円(前年同期比4.0%減)営業利益は318,932千円(前年同期比18.8%減)となりました。
売上の8割近くをマーケティングプラットフォーム事業が占めており、同事業の売上高は2,933,066千円(前年同期比0.3%増)となりました。
また、商流プラットフォーム事業については、株式会社EC-CUBE Innovationsの案件増加により売上高は709,017千円(前年同期比71.2%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は、保険解約に伴う返戻金8,341千円及び持分法による投資利益2,645千円等を計上したことにより17,895千円(前年同期比9.6%増)となりました。また、営業外費用は借入金に係る支払利息3,996千円等を計上したことにより7,351千円(前年同期比18.5%減)となりました。この結果、経常利益は329,476千円(前年同期比17.6%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、一部ソフトウェアに係る減損損失9,535千円を計上したことにより319,940千円(前年同期比17.7%減)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は197,019千円(前年同期比16.5%減)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、当社グループの資本の財源については、営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入れによる資金調達によっております。今後の資金需要のうち主なものは運転資金及びシステム開発等にかかる設備投資等によるものであります。
なお、当連結会計年度末における借入金の残高は634,529千円(前年同期比28.2%減)であり、現金及び現金同等物の残高は1,375,332千円(前年同期比9.2%増)となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。これらの連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績等を勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2023年11月に発表いたしました中期経営方針「VISION2027」において、マーケティングプロセス支援領域、EC構築・運用支援領域の2つの領域を柱に事業展開を行う方針を掲げております。
既存事業で培ってきた基盤を軸に、ツール提供に留まらず、顧客それぞれの状況に応じた課題を解決するために人的支援サービスの提供を行うなど、当社サービスを拡大していくことで、顧客企業のマーケティングDXの推進に貢献することを目指します。
また、中期経営方針「VISION2027」では、既存事業の継続的な成長を推進するとともに、新たな収益の柱とするべくマーケティングプロセス支援領域、EC構築・運用支援領域の拡大で成長を加速し、連結売上高100億円達成への道のりを明確なものにしてまいります。
(株式会社EC-CUBE Innovationsの株式譲渡契約)
当社は、2023年9月15日開催の取締役会において、当社の連結子会社である株式会社EC-CUBE Innovationsの全株式を、2023年9月29日付けで当社の連結子会社である株式会社イーシーキューブに譲渡することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。