文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
当社は、 “はかる”技術のリーディングカンパニーとして、世界最高水準のソリューションをあらゆる産業分野に提供してきました。当社のすべての事業活動の礎となるのが、3つの企業理念です。この企業理念に基づいた事業活動を推進し、さまざまな研究開発分野で最先端の計測技術を提供する「計測ソリューションプロバイダー」として、すべてのステークホルダーとともに発展を目指します。
また、持続可能な社会の実現と環境の保全は企業の使命であり、当社の事業を通じて責任を果たしてまいります。
<企業理念>
“はかる”技術で未来を創る
はかる技術のリーディングカンパニーとして、豊かな社会、人と地球に優しい環境創りに貢献する
テクノロジーインターフェース
最先端の計測ソリューションを世界の産業界に提供し、技術革新を支援・促進する
企業価値の向上
計測システム・製品・サービスを創造し続けることで企業価値を向上させ、ステークホルダーと社員に繁栄をもたらす
当社グループは、中期経営計画“TY2024”(2022年9月期~2024年9月期)を推進中です。本計画にて、連結売上高300億円、連結営業利益35億円、ROE8.0%を最終年度に達成すべき数値目標として定めております。
事業戦略、財務・資本戦略、経営基盤強化の3本柱を軸に成長戦略を実行し、持続的に企業価値を向上させることでステークホルダーの皆様へ還元いたします。
事業戦略では、脱炭素社会の推進、高速通信環境の実現、リカーリングビジネス、技術開発投資の継続およびM&Aによる事業拡大を進めます。脱炭素社会の推進では電動化、次世代電池および再生可能エネルギー分野への注力、高速通信環境の実現では5G(第5世代移動通信システム)ソリューションおよびDX(デジタルトランスフォーメーション)分野への注力、リカーリングビジネスでは定期保守サービス、受託校正・試験サービスおよびサブスクリプション・コンサルティングサービスの拡充と新サービスの創出、技術開発投資の継続では自社開発・新技術分野への積極的な投資を行います。
財務・資本戦略では、積極的な株主還元政策の実行と資本効率の向上を進めます。配当方針については、中期経営計画“TY2024”(2022年9月期~2024年9月期)の期間、株主の皆様への利益還元をさらに推進するため、DOE(自己資本配当率)4%または連結配当性向60%のいずれか大きい配当額を選択して、安定かつ積極的な配当を行ってまいります。また、自己株式の取得についても、2022年8月12日から2023年6月15日までの期間、149万2,100株、19億9,994万円の自己株式取得を実施いたしました。
経営基盤強化では、多彩な人財の育成と活躍および健全で強固な経営基盤の確立を進めます。技術革新に貢献する企業として、専門性の高い技術力や柔軟な発想力を持つ人財の確保と育成は、当社の持続的な企業活動の根幹です。常に環境の変化に合わせて人財にかかる方針、制度を拡充することで、さまざまなバックグラウンド、経験、スキルを持つ人財が自分らしく働き、個人の能力や強みを存分に発揮できる職場環境の実現を目指します。加えて、企業が中長期的に企業価値を高め、持続的に成長するためには、健全で強固な経営基盤を確立することが不可欠です。当社は企業理念および行動指針に則り、長期的な視点でさまざまなステークホルダーとの間で公正かつ良好な関係を維持・強化するとともに、監視・監督機能が適切に組み込まれた健全で強固なガバナンス体制の実現を目指します。また、サステナビリティ経営への取り組みにおいては、当社の企業理念に基づいた事業活動そのものがサステナビリティ推進に寄与するという意識統一のもと、当社が注力すべき5つの優先課題に取り組んでおります。今後、この優先課題に全社一丸となり取り組むことで、持続的な企業価値の向上につなげ、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
当社グループを取り巻く環境は、急速な技術革新やグローバル化等による産業構造の変化、新型コロナウイルス感染症に対する各種制限緩和による社会経済活動の正常化が進む一方で、地球温暖化や自然災害の増加、ウクライナ情勢長期化や円安の進行による原材料価格の高騰など不安定な状況が続いており、持続可能な社会の実現への貢献が以前にも増して求められております。そのような状況下において、対処すべき課題を次のように捉えて取り組んでまいります。
当社グループは“はかる” 技術のリーディングカンパニーとして、さまざまな産業分野に先端技術の計測ソリューションを提供しています。2050年のカーボンニュートラル実現に向けては、再生可能エネルギーや電気自動車の普及など、大きく変化するエネルギーインフラにおいて当社の“はかる”技術が活用されています。次世代バッテリー、燃料電池のエネルギーデバイスの基礎研究からパワー半導体などの材料物性、各種電子部品・電装品などの製品開発、さらには洋上風力発電の分野まで、幅広く高精度な計測・評価システムを提供可能としています。
この優位性を活かして、以下の事業戦略を実行することにより、持続的な成長を実現してまいります。
① 製品戦略
既存事業の成長に加え、事業投資、自社開発製品や新技術分野への投資を積極的に行います。また、国内外の大学・企業・研究機関とオープンイノベーション『仲間づくり』を推進することで、成長が見込める新事業の確立を目指します。
② 市場戦略
各種社会課題の解決に向け、主要産業において官民での取り組みが進められております。自動車業界においても、EVの普及と自動運転の実現に向け、あらゆる側面からの性能評価需要に応えるため、当社グループではさまざまなソリューション提供に注力しております。
当期においては、自動車業界における試験研究機関である、一般財団法人日本自動車研究所(Japan Automotive Research Institute)において、当社が自社開発した「ドライビング&モーションテストシステム(Driving & Motion Test System)」が採用されました。
上記ソリューションをはじめ、今後自動車業界にとって重要な役割となる「CASE」(注)の技術開発領域においても、当社はいち早く国内・海外市場でのビジネスを加速してまいります。
(注)CASE:
次世代の自動車産業を指す言葉でConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、
Electric(電動化)の頭文字からなる、今後の新しい車の開発の軸となる考え方を表現したもの
③ サステナビリティ・マネジメント
持続可能な社会の実現は世界共通の最優先課題であり、経営上最も配慮すべき課題です。この点については、当社の企業理念に基づいて事業を進めることがサステナブルな未来創りにつながると確信しています。サステナビリティへの取り組みとして、技術革新と産業発展への貢献、環境保全の推進を目標に掲げ、脱炭素社会の推進、循環型社会の実現、安心・安全で豊かな暮らしの実現、多彩な人財の育成と活躍、健全で強固な経営基盤の確立を5つの優先課題に設定しています。これらの課題を社員一丸となって推進し、常にコンプライアンスに注意を払いながら公正で透明な会社経営によって社会的な責任を果たしていくことで、当社グループの企業価値を持続的に向上してまいります。
④ 人財戦略
当社グループにとって人財こそが最大の財産であり、その能力の向上が当社グループの成長に直結します。そのため、社員のキャリアアップ支援と評価制度の充実、グローバルに活躍できる人財の育成に投資していきます。働き方改革も積極的に推進しており、フレックス制度、テレワーク勤務制度と併せてマイスター/シニアマイスター制度(注)などの導入により、社員のモチベーションと生産性の向上、公平で働きやすい勤務体制・職場環境の整備にも取り組んでおります。
(注)マイスター/シニアマイスター制度:
社員の70歳までの就業を確保し、高年齢者の就労意欲向上と生活の安定を図ることを目的とした制度
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社のサステナビリティ全般に関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。なお、特に記載のない限り、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、サステナビリティに関しては、当社のホームページにも記載しております。ホームページアドレスは次の通りであります。(https://www.toyo.co.jp/sustainability/)
当社は、持続可能な未来を創る“はかる”技術のリーディングカンパニーとして、社会課題の解決につながる新たな価値創造を 目指しており、サステナビリティ方針を定めております。
【 企業理念 】
“はかる”技術で未来を創る
はかる技術のリーディングカンパニーとして、豊かな社会、人と地球に優しい環境創りに貢献する
テクノロジーインターフェース
最先端の計測ソリューションを世界の産業界に提供し、技術革新を支援・促進する
企業価値の向上
計測システム・製品・サービスを創造し続けることで企業価値を向上させ、ステークホルダーと社員に繁栄をもたらす
このサステナビリティ方針の実現に向け、事業を通じた社会課題解決と経営基盤の側面から5つの優先課題を設定しました。各優先課題に活動目標を設定し、取り組んでおります。
【 5つの優先課題 】

当社は、持続的な企業価値向上と持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進するために、サステナビリティ委員会を設置しております。
サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長、社外取締役を副委員長、関連部門の責任者を委員とし、当社のサステナビリティ施策の推進と進捗状況のモニタリングを行い、継続的な改善を図っています。サステナビリティ委員会は活動状況や計画などについて執行会議に定期的な報告を行い、執行会議はサステナビリティに関する重要課題の協議・決定及び進捗状況のモニタリングを実施しています。
取締役会は、執行会議が決定した重要課題について定期的な報告を受け、指示・監督を行っています。
【サステナビリティ推進体制図】

当社のサステナビリティに関するリスクはサステナビリティ委員会が管理しています。気候変動、サプライチェーン、人権等のサステナビリティに係る政策や規制等の動向について、定期的に情報収集を行い、それらの外部課題を基に、サプライチェーン及びバリューチェーン上の各段階で想定されるリスクを特定しております。その後、財務影響が大きいリスクや機会については執行会議および取締役会に報告し、全社的なリスク管理の観点から適切な対策を審議し決定することで、リスクの最小化のための管理や機会の最大化のための戦略を推進しています。
事業活動全般にわたり生じるさまざまなリスクは
当社は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、提言に基づく気候関連情報の開示を実施しております。
当社は、気候変動課題への対応を、企業の持続可能性を揺るがすリスクのみならず、収益機会の拡大につながる重要な経営課題と認識しております。
気候変動がもたらす影響について、当社のリスクと機会を把握した上で、影響のある項目について当社のインパクト分析を行い、そのシナリオに対応した戦略を検討し、レジリエンスを検証しました。
なお、事業に及ぼす財務影響度については、現時点では定量評価が難しいため大・中・小の三段階で、定性的に把握しています。今後は継続的にシナリオ分析を進めることで財務影響度の精度を高めながら 気候変動に伴うリスクと機会への対応力を強化し、サステナビリティ経営のレベルアップに努めてまいります。
【 気候関連のリスクおよび機会、当社事業への財務影響 】

採用シナリオ:
4℃シナリオ:IPCC/RCP8.5、IEA
1.5/2℃シナリオ:IPCC/RCP2.6、IEA
時間軸の定義:
短期:3年未満、中期:3年~10年未満、長期:10年~30年
【リスクへの対応策】

当社は、スコープ1、2に関する温室効果ガス排出量削減目標として、2030年度に2013年度比で46%削減することを目標とするとともに、日本政府が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」等に基づき、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。

【温室効果ガス排出量:スコープ1,2,3】
※1:カテゴリ11、12に関して、輸出入(外国間取引を含む)および国内取引の他、多くの種類の商品を取り扱うため、全ての商品について算定する体制がまだ整っていません。
当社が最も大切にしている財産は人です。社員の優れた技術力と発想で新たな価値を創造し続けることが、当社の企業価値そのものです。人的資本(人財)を最大化すべく、社員の挑戦を後押しするための環境づくりとして、「人財育成」および「社内環境整備」を次の通り推進しております。
技術革新に貢献する企業として、専門性の高い技術力や柔軟な発想力を持つ人財の確保と育成は、当社の持続的な企業活動の根幹です。
当社では教育中期計画を掲げ、個人の能力や強みを伸ばすことができるようなキャリアアップ支援と評価制度の拡充を推進しています。また、一人ひとりが自発的に能力開発できる環境を整え、自己啓発を推進しています。
・社員の育成―配置―評価のサイクルを機能させることにより、キャリアアップを図っています。
・人材育成委員会を設けて、社員教育の4本柱(階層別教育、職能別教育、語学研修、全社共通研修)を基軸とした社内教育を推進するとともに、育成―配置―評価の運用状況モニタリングを行っています。
・社内公募制度、新卒入社3年目社員異動希望実現プログラムを設けて、社員のキャリアアップ意欲に積極的に対応しています。
当社は全社方針実現に向けた優先課題の一つに「多彩な人財の育成と活躍」を掲げており、具体的に以下の取り組みを行っております。
性別、国籍、経験、年齢、性的指向、障がいの有無に関わらずすべての社員が自分らしく働くための組織づくりを、制度と風土の両面から推進しています。
視点の多様性が意思決定の質を高め、新たな発想を生み、当社の目指す「新たな価値の創造」へと繋がる大きな原動力となります。
・女性の活躍
女性の活躍促進のため、女性管理職比率向上の目標を定め、積極採用、育成および活躍を支援する職場環境づくりに努めています。また、従業員における女性採用比率も高まってきています。
・外国人の活躍
外国籍の社員も多数活躍しており、国籍に関わらず優秀な社員には重要なポジションを担ってもらっています。今後も当社の成長をささえる原動力として、外国籍社員の採用を継続します。
・中途採用者の活躍
多様な経験を活かし多くの中途採用社員が活躍しており、社員における中途採用比率は高く、管理職においては50%を超えています。今後も積極的な採用を推進していきます。
・シニア層の活躍
定年後再雇用の年齢を65歳から引き上げ、全社員を対象に希望に応じて70歳まで雇用を行っています。60歳から65歳までの従業員を「マイスター」、65歳以上の社員を「シニアマイスター」と位置づけ、経験や能力を活かしてもらうと共に社員の生活の安定を図っています。
・障がい者採用の推進
多様性のある企業文化を醸成し、一人ひとりがそれぞれの希望やスキルに合った仕事において活躍できる環境を整え、積極的な採用を推進しています。
各種教育・研修を強化するとともに、個人の能力や強みを伸ばすことができるようなキャリアアップ支援と評価制度の拡充を推進しています。
従業員それぞれの役割や専門性に対応した体系的かつ多様な研修プログラムを設けています。
【 教育体系図 】

働き方改革のさらなる取り組みにより、社員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスの実現と、心身の健康維持・促進で、社員全員が安心して働ける職場環境づくりを目指します。
・ワーク・ライフ・バランスの推進
従業員一人ひとりの生産性の向上や働きがいの実感が得られるよう、ワーク・ライフ・バランス推進や生産性向上のための取り組みを実施しています。
テレワーク制度、フレックスタイム制、育児・介護両立のための休業や短時間勤務制度等を整えています。
・従業員の健康と安全
従業員が心身ともに健康に安心して働くことができる職場環境を整備し、従業員の健康保持・増進に積極的、継続的に取り組んでいます。
産業医面談を通じた就業実態・心身の健康状態の把握と改善、メンタルヘルスに関する研修受講や産業医への相談窓口の設置、人間ドックや婦人科検診の促進などに取り組んでおります。
<指標および目標>
【 社内環境整備に関する指標および目標 】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を確認した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。
なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2023年12月22日)現在において当社グループが判断したものです。
(1)自然災害・社会的混乱について
当社グループは、国内及び海外に事業展開しております。大地震や津波、台風、大雨による洪水や河川氾濫などの自然災害、テロ、戦争、新型ウイルス等の感染症が発生した場合、企業活動全般や人的資源に重大な影響、損害を与え、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2)為替レートの変動について
当社グループは、海外から製品を輸入し国内外へ販売しております。従って、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。急激な円安、円高に対しては、販売価格の変更や、為替予約等により、為替レート変動の影響軽減に努めております。
また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)プロジェクトの長期化について
当社グループの事業におきましては、建設業法取得などで、よりプロジェクトが大型化する傾向にあります。そのため、設置が長期に渡るなど、顧客都合による遅延発生のリスクが生じやすくなっております。
このような事象から、計画段階において予測した売上の時期から変動することがあり、売上の期ずれが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)総代理店契約解消について
当社グループと総代理店契約を締結している海外メーカーが、日本法人を設立したり、他の会社に買収される等により、当社グループとの総代理店契約を解消する場合があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。海外メーカーへの投資によるパートナーシップの強化や、より多くの海外メーカーの総代理店となり、収益の柱の多極化を図る等、影響の軽減に努めております。
(5)金融商品の価格変動リスク
当社グループが保有する金融商品等については、金融商品に係る会計基準等に従い、定期的に保有資産の時価を算定し推移を確認しておりますが、時価が著しく下落し、当該金融商品等の減損損失等を計上する場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
経営成績の状況
当連結会計年度におきましては、カーボンニュートラル分野における企業の投資において年間を通じて活発な状況が続いており、物性/エネルギー事業が牽引いたしました。また、大型案件売上や受注残の納入が進んだEMC/大型アンテナ事業などを中心に堅調に売上高を伸ばしました。一方で、大型プロジェクトにおいて顧客都合による納入遅延なども発生し、当期の連結売上高は281億7千2百万円(前連結会計年度比6.4%増)となりました。この内、国内売上高は258億1千5百万円、中国や米国向けを中心とした海外売上高は23億5千7百万円となりました。
利益面におきましては、期初から第3四半期半ばまで影響した為替の変動による売上総利益率の低下に加え、成長戦略のための人材先行投資や活発化している営業活動などによる販売費及び一般管理費が想定より増加したことにより、前連結会計年度比で減少いたしました。その結果、営業利益は14億7千2百万円(前連結会計年度比36.9%減)、経常利益は18億円(前連結会計年度比35.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は15億3千4百万円(前連結会計年度比20.1%減)となりました。
受注については、カーボンニュートラル分野や海洋/特機分野などが順調に伸び、受注高は307億7千9百万円(前連結会計年度比1.8%増)、受注残高が181億5千4百万円(前連結会計年度比16.8%増)となりました。
また、当社グループは経営管理区分及び社内組織の見直しを行ったことに伴い、当連結会計年度より事業セグメント「ライフサイエンス/マテリアルズ」事業を「ライフサイエンス」事業に名称変更し、マテリアルサイエンス(材料評価)分野の製品ラインを事業活動にシナジーが見込まれる「物性/エネルギー」事業に移管しております。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の報告セグメントの区分方法により作成しており、以下の前連結会計年度比については、変更後のセグメント区分方法に組み替えた数値で比較しております。
事業セグメントごとの業績は、次のとおりです。
(情報通信/情報セキュリティ)
情報通信/情報セキュリティ事業におきましては、情報通信分野の5G商用サービス向けにおける試験や設備需要が足踏みする状況となり、売上高が減少いたしました。また、全体売上高の減少に加えて高利益率である自社開発製品の売上が減少したことにより、利益においても減少となりました。
一方、クラウドサービス分野においてはサービスプロバイダ向け案件が好調だったことにより、売上高、利益ともに前連結会計年度比で増加となっております。
この結果、売上高は66億5千万円(前連結会計年度比2.3%減)、セグメント利益は2億5千4百万円(前連結会計年度比63.3%減)となりました。
(機械制御/振動騒音)
機械制御/振動騒音事業におきましては、振動騒音分野における短納期の受注が減少し売上に貢献できませんでした。また、米国でのAD/ADAS開発向け大型案件の売上が客先都合で当期末までの納入に至らず、売上高は減少いたしました。また、期初からの為替変動の影響に加え、低利益率案件の増加により利益も減少いたしました。
この結果、売上高は46億9千9百万円(前連結会計年度比4.6%減)、セグメント利益は3億7千2百万円(前連結会計年度比58.4%減)となりました。
(物性/エネルギー)
物性/エネルギー事業におきましては、引き続きカーボンニュートラル分野における企業の研究開発投資が活況で、グリーンイノベーション基金関連に伴う大型案件など、全固体電池や燃料電池向けの製品及びEV充電評価システム関連の販売が好調に推移し売上高が増加しました。トータルソリューション提供による競合との差別化が進み、利益も増加いたしました。
この結果、売上高は68億9千7百万円(前連結会計年度比9.6%増)、セグメント利益は15億1千3百万円(前連結会計年度比12.7%増)となりました。
(EMC/大型アンテナ)
EMC/大型アンテナ事業におきましては、EMC分野において中国市場で積みあがった受注残の納入や大型案件の前倒し納品などが貢献し、売上高は大幅に増加いたしました。
利益につきましては、第3四半期に発生した中国における低利益率案件の影響が大きく、第4四半期には利益率が正常化しましたが、自社開発製品の投資拡大に加え、人件費が増加し、通期においては前連結会計年度比で減少いたしました。
この結果、売上高は54億2千9百万円(前連結会計年度比25.6%増)、セグメント利益は2億7千4百万円(前連結会計年度比4.8%減)となりました。
(海洋/特機)
海洋/特機事業におきましては、市場回復に伴い、特機分野での大型案件売上などが貢献し、売上高が増加いたしました。
利益につきましては、為替変動の影響を受けて低利益率案件売上が増加した事により減少となりました。
この結果、売上高は17億4千3百万円(前連結会計年度比1.8%増)、セグメント利益は2億7千2百万円(前連結会計年度比9.1%減)となりました。
(ソフトウェア開発支援)
ソフトウェア開発支援事業におきましては、期を通してゲーム開発やアプリケーションセキュリティ、車載ソフトウェア開発の分野が好調に推移し、売上高が増加しました。また、売上高の増加に伴い、利益も増加しております。
この結果、売上高は19億6千4百万円(前連結会計年度比7.0%増)、セグメント利益は4億2千2百万円(前連結会計年度比12.1%増)となりました。
(ライフサイエンス)
ライフサイエンス事業におきましては、市場の回復が限定的だったことから、既存ビジネスの販売が伸び悩みました。一方で、第3四半期からレキシー社が連結対象となったことにより売上高が増加しました。
既存ビジネスの売上減少に伴い売上総利益が減少したことに加え、販管費は前期並みに推移したため、営業利益についても減少いたしました。
この結果、売上高は7億8千7百万円(前連結会計年度比33.5%増)、セグメント利益は3千1百万円(前連結会計年度比30.9%減)となりました。
財政状態の状況
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、167億1千6百万円(前連結会計年度末は170億4千7百万円)となり、3億3千万円減少しました。これは商品及び製品の増加(31億1千6百万円から45億5千4百万円へ14億3千8百万円増)、電子記録債権の増加(2億6千2百万円から4億7千8百万円へ2億1千6百万円増)、流動資産のその他の増加(29億3千2百万円から31億2千3百万円へ1億9千万円増)、及び現金及び預金の減少(37億8千7百万円から26億5千9百万円へ11億2千8百万円減)、有価証券の減少(24億3千6百万円から13億6千7百万円へ10億6千8百万円減)が主な要因です。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産は、232億3千8百万円(前連結会計年度末は245億4千5百万円)となり、13億7百万円減少しました。これは建設仮勘定の増加(1億9千4百万円から57億1百万円へ55億7百万円増)、のれんの増加(9千3百万円から2億6千7百万円へ1億7千4百万円増)、及び土地の減少(115億7百万円から68億8百万円へ46億9千9百万円減)、投資有価証券の減少(60億5百万円から35億3千1百万円へ24億7千3百万円減)が主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、108億2千5百万円(前連結会計年度末は73億4千4百万円)となり、34億8千1百万円増加しました。これは前受金の増加(40億6千万円増)、流動負債のその他の増加(5億7千5百万円から9億7千7百万円へ4億2百万円増)、及び契約負債の減少(39億4千1百万円から28億5千5百万円へ10億8千5百万円減)が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債は、8億1千5百万円(前連結会計年度末は48億5千万円)となり、40億3千4百万円減少しました。これは退職給付に係る負債の増加(6億5千4百万円から6億7千2百万円へ1千7百万円増)、及び長期前受金の減少(40億6千万円減)が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、283億1千3百万円(前連結会計年度末は293億9千8百万円)となり、10億8千4百万円減少しました。これは利益剰余金の増加(236億6千4百万円から239億9千5百万円へ3億3千万円増)、退職給付に係る調整累計額の増加(4千6百万円のマイナスから8百万円へ5千5百万円増)、及び自己株式の増加(30億4千4百万円から44億9千6百万円へ14億5千1百万円増)、その他有価証券評価差額金の減少(3千万円のマイナスから5千3百万円のマイナスへ2千3百万円減)が主な要因です。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ11億2千8百万円減少し、26億5千9百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、税金等調整前当期純利益22億4千2百万円及び減価償却費8億3千5百万円です。一方、資金の主な減少要因は、棚卸資産の増加額14億4千1百万円、契約負債の減少額9億7千1百万円、法人税等の支払額4億1千7百万円及び投資有価証券売却益3億9千6百万円です。
この結果、営業活動によるキャッシュ・フローは1億5百万円の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な増加要因は、投資有価証券の売却による収入31億9千2百万円及び有価証券の売却による収入10億3千万円です。一方、資金の主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出13億9千1百万円及び無形固定資産の取得による支出4億7千9百万円です。
この結果、投資活動によるキャッシュ・フローは18億1千万円の増加となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
資金の主な減少要因は、自己株式の取得による支出16億6千1百万円及び配当金の支払額12億2百万円です。
この結果、財務活動によるキャッシュ・フローは28億6千4百万円の減少となりました。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 主な相手先別の売上実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略
しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営計画“TY2024”において、2024年9月期の経営指標を連結売上高300億円、連結営業利益35億円、ROE8.0%としております。
当連結会計年度は、売上高281億7千2百万円(前連結会計年度比6.4%増)、営業利益は14億7千2百万円(前連結会計年度比36.9%減)、経常利益18億円(前連結会計年度比35.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益15億3千4百万円(前連結会計年度比20.1%減)、ROE5.3%となりました。
以下、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。
(ⅰ) 売上高
売上高の分析は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
(ⅱ) 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は、166億3千1百万円(前連結会計年度比11.4%増)、売上総利益は115億4千1百万円(同0.2%減)となりました。販売費及び一般管理費は、従業員給与賞与の増加、退職給付費用の増加、旅費交通費の増加、諸手数料の増加、福利厚生費の増加、備消耗品費の増加、及び減価償却費の減少等に伴い100億6千9百万円(同9.1%増)となりました。
(ⅲ) 営業外損益
営業外損益は、前連結会計年度の4億4千5百万円の利益から、3億2千8百万円の利益へ1億1千6百万円減少しました。これは主に、和解金の増加1億1千9百万円、及び為替差益の減少1億5千2百万円、投資事業組合運用損の増加7千1百万円によるものです。
(ⅳ) 特別損益
特別損益は、前連結会計年度の4千6百万円の利益から、4億4千1百万円の利益へ3億9千5百万円増加しました。これは主に、投資有価証券売却益の増加3億9千6百万円によるものです。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社グループの資金需要のうち主なものは、売上原価、販売費及び一般管理費の営業費用、各種税金の納付及び配当金の支払です。また、成長戦略として、自社のオリジナル製品・ソリューションの開発投資を積極的に行うとともに、M&Aによる事業拡大を検討しており、有望なM&A案件があれば投資を実行してまいります。これらの必要な資金に関しては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金で賄うことを基本方針としております。
また、株主の皆様への利益還元を重要な経営政策と考えており、安定的かつ積極的な配当を行うとともに、自己株式の取得を積極的に推進し、事業拡大に伴う営業活動によるキャッシュ・フローの増加と合わせて、資本効率向上を目指した資金運営を行ってまいります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
その作成には、経営者による会計方針の採用や、資産・負債及び収益・費用の計上及び開示に関する経営者の見積りを必要とします。
経営者はこれらの見積りについて、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
当社は、2023年2月8日開催の取締役会において、株式会社レキシー(以下レキシー)の全株式を取得して子会社化することを決議し、2023年2月13日付でレキシーの親会社であるJSR株式会社とレキシーの株式を譲り受ける契約を締結いたしました。また、本株式譲渡契約に基づき、2023年3月31日に株式を取得しております。
なお、詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。
当社グループは、お客様の技術要求に対応した製品を独自に開発してまいりました。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は、各セグメントに配分していない全社費用
セグメント別の研究開発活動を示すと次のとおりです。
(1)情報通信/情報セキュリティ
該当事項はありません。
(2)機械制御/振動騒音
該当事項はありません。
(3)物性/エネルギー
有機材料評価システムの開発費用等として
(4)EMC/大型アンテナ
イミュニティ試験ソフトウェア等の開発費用として
(5)海洋/特機
該当事項はありません。
(6)ソフトウェア開発支援
該当事項はありません。
(7)ライフサイエンス
アガロースゲル・マイクロカプセル(AGM)試薬キット等の開発費用として